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特許7387122場所打ちコンクリート杭補強用ネット及び場所打ちコンクリート杭
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】場所打ちコンクリート杭補強用ネット及び場所打ちコンクリート杭
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/34 20060101AFI20231120BHJP
【FI】
E02D5/34 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020040594
(22)【出願日】2020-03-10
(65)【公開番号】P2021143462
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2022-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390027856
【氏名又は名称】大亜ソイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087491
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 享
(74)【代理人】
【識別番号】100104271
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 保子
(72)【発明者】
【氏名】豊島 徹
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-026226(JP,U)
【文献】特開2007-002550(JP,A)
【文献】特開昭53-045004(JP,A)
【文献】実開昭56-048619(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
場所打ちコンクリート杭に配筋される鉄筋かごに取り付けられる補強用ネットであって、前記鉄筋かごの外周を覆う透水性ネットと当該透水性ネットに形成された複数の補強リブとを備え、前記補強リブはヒダ部と当該ヒダ部の上に取り付けられた補強テープとから形成され、前記ヒダ部は前記透水性ネットの一部が前記鉄筋かごの周方向または軸方向に折り込まれることにより形成され、前記補強テープは前記ヒダ部の断面形状に沿ってU形状に折り込まれ、かつ前記ヒダ部と共に前記透水性ネットに縫い糸によって縫い付けられていることを特徴とする場所打ちコンクリート杭の補強用ネット。
【請求項2】
請求項1記載の場所打ちコンクリートの補強用ネットにおいて、前記透水性ネットの端部どうしの接続部に補強テープが取り付けられ、前記透水性ネットの端部どうしの接続部は前記鉄筋かごの周方向または軸方向に互いに重ね合わせられ、前記補強テープは前記透水性ネットの端部どうしの接続部の断面形状に沿ってU形状に折り込まれ、かつ前記透水性ネットの端部どうしの接続部に縫い糸によって縫い付けられていることを特徴とする場所打ちコンクリート杭の補強用ネット。
【請求項3】
請求項2記載の場所打ちコンクリートの補強用ネットにおいて、前記補強テープは前記透水性ネットの端部どうしの接続部と共に前記透水性ネットに縫い糸によって縫い付けられていることを特徴とする場所打ちコンクリート杭の補強用ネット。
【請求項4】
請求項2または3記載の場所打ちコンクリート杭の補強用ネットにおいて、前記補強テープは、前記鉄筋かごの周方向または軸方向に連続して形成されていることを特徴とする場所打ちコンクリート杭の補強用ネット。
【請求項5】
コンクリートと当該コンクリート内に配筋された鉄筋かごと当該鉄筋かごの外周に配置された補強用ネットを備えた場所打ちコンクリート杭であって、前記補強用ネットは、前記鉄筋かごの外周を覆う透水性ネットと当該透水性ネットに形成された複数の補強リブとを備え、前記補強リブはヒダ部と当該ヒダ部の上に取り付けられた補強テープとから形成され、前記ヒダ部は前記透水性ネットの一部が前記鉄筋かごの周方向または軸方向に折り込まれることにより形成され、前記補強テープは前記ヒダ部の断面形状に沿ってU形状に折り込まれ、かつ前記ヒダ部と共に前記透水性ネットに縫い糸によって縫い付けられていることを特徴とする場所打ちコンクリート杭。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、場所打ちコンクリート杭補強用ネットおよび当該補強用ネットを備えた鉄筋かごが配筋された場所打ちコンクリート杭に関し、特にコンクリート打設時の衝撃や側圧等による補強用ネットの破断を未然に防止して均一断面の場所打ちコンクリート杭を容易に形成できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、場所打ちコンクリート杭は、建設工事現場において、機械または人力によって地盤を所定径、所定深さに掘削して縦穴を形成し、その中に円筒形状に組み立てられた鉄筋かごを立て込み、コンクリートを打設することにより形成される。
【0003】
ところで、埋立地などの超軟弱層地盤の建設工事現場においては、掘削時やコンクリート打設時に孔壁崩壊を引き起こしたり、或いはコンクリートの打設中にコンクリートが孔壁側に流動して杭体が側方に膨出したり、或はコンクリートが孔壁の崩壊に伴って土砂などを巻き込むことがあった。
【0004】
このため、埋立地などの軟弱地盤の建設工事現場においては、鉄筋かごの外周に透水性のネットを配置することにより、コンクリート打設時の孔壁崩壊やコンクリートの側方流動に伴う杭体の側方への膨出等に備えている。
【0005】
ところで、この種の透水性ネットは、ポリエチレン等の化学繊維樹脂を素材とし、通常、鉄筋かごの外周に鉄筋かごの径および/または長さに応じて周方向および/または軸方向に複数配置すると共に、鉄筋かごの周方向および/または軸方向に隣接する各透水性ネットの端部どうしを縫い糸で縫い付けることにより円筒形状に形成されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、円筒形に組み立てられた鉄筋かごの縦鉄筋の外側に鉄筋かごの外方に膨出する複数のスペーサを取り付け、当該スペーサの外側に前記鉄筋かごの周方向に沿ってネット取付けリングを取り付け、当該ネット取付けリングの外側に透水性ネットを取り付けることにより構成された場所打ちコンクリート杭施工用鉄筋かごの発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2007-2550号公報
【文献】特許第3963921号
【文献】特開2006-241919号公報
【文献】特開2005-264522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、前述の補強用ネットは、ポリエチレン等の化学繊維樹脂製の細い繊維から形成されているため、コンクリート打設時の衝撃や側圧を拘束する強度には自ずと限界があり、このため、補強用ネット内に打設されたコンクリートの一部が側方に膨出して均一断面のコンクリート杭を形成できないことがあった。
【0009】
また、特に透水性ネットの端部どうしの接続部が、コンクリート打設時の衝撃や側圧によって破断し、ネット内のコンクリートが杭孔内に流出してしまうおそれもあった。
【0010】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、コンクリート打設時の衝撃や側圧等による透水性ネットの端部どうしの接続部の破断を防止して均一断面の場所打ちコンクリート杭を確実に施工できるようにした場所打ちコンクリート杭補強用ネットおよび当該補強用ネットを使用した場所打ちコンクリート杭を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、場所打ちコンクリート杭に配筋される鉄筋かごに取り付けられる補強用ネットの発明であり、前記鉄筋かごの外周を覆う透水性ネットと当該透水性ネットに形成された複数の補強リブとから構成され、前記補強リブは前記透水性ネットの外側および/または内側に、前記鉄筋かごの周方向および/または軸方向に連続して配置され、かつ縫い糸によって前記鉄筋かごの周方向および/または軸方向に縫い付けられた補強テープを備えてなることを特徴とするものであり、最も簡単な構成によってコンクリート打設時の衝撃や側圧による透水性ネットの破断や膨出等を防止して、均一断面の場所打ちコンクリート杭を容易に形成することができる。
【0012】
補強テープは、透水性ネットの外側または内側、或いは透水性ネットの両側に前記透水性ネットを挟み込むように縫い付けてあればよい。また、複数の補強テープを重ねて縫い付けることにより補強リブの厚さを調整することができる。補強リブの幅は特に限定されないが、杭径に応じて3~5cm程度あればよい。
【0013】
透水性ネットには透水性化学繊維(ポリエステル製)網状布を用いることができ、また、補強テープの素材は特に限定されないが、ナイロンテープ等であって、少なくとも透水性ネットより引張り強度の大きい素材からなるテープを用いるのが望ましい。
【0014】
さらに、縫い糸には少なくとも透水性ネットより引張り強度の大きい縫い糸、例えばビニロン製の縫い糸(♯8程度(直径約3.3mm程度))またはポリエステル製の縫い糸(♯5程度(直径約4.5mm程度))等が適している。
【0015】
前記補強リブは、前記透水性ネットの一部を前記鉄筋かごの周方向または軸方向に折り込むことにより形成されたヒダ部(プリーツ)と、当該ヒダ部の上に取り付けられた補強テープとから形成することもできる。
【0016】
この場合、前記ヒダ部を前記鉄筋かごの周方向または軸方向に二乃至三回程度交互に折り込んで形成することにより、必要に応じて補強リブの厚さを自由に調整することができる。補強テープは、前記ヒダ部の断面形状に沿ってU形状に折り込み、かつ前記ヒダ部と共に前記透水性ネットに縫い糸によって縫い付ければよい。
【0017】
また、補強リブは、鉄筋かごの軸方向または周方向に連続させ、かつ鉄筋かごの周方向または軸方向に離間して複数形成することができ、さらに補強リブのピッチは必ずしも等間隔である必要はなく、自由に設定することができる。
【0018】
また、前記透水性ネットの端部どうしの接続部に補強テープを取り付けて、前記透水性ネットの端部どうしの接続部を補強することができる。この場合、前記透水性ネットの端部どうしを前記鉄筋かごの周方向または軸方向に互いに重ね合わせると共に、前記補強テープを前記透水性ネットの端部どうしの接続部の断面形状に沿ってU形状に折り込み、かつ前記透水性ネットの端部どうしの接続部に縫い糸によって縫い付けてあればよい。
【0019】
また、前記補強テープを前記透水性ネットの端部どうしの接続部と共に、前記鉄筋かごの周方向または軸方向に折り込み、かつ前記透水性ネットに縫い糸によって縫い付けることにより、前記透水性ネットの端部どうしの接続部に補強リブを形成することができ、またこれにより杭孔内に鉄筋かごを立て込む際、透水性ネットの端部どうしの接続が障害になるようなことはなく、鉄筋かごの立込み作業を円滑に行うことができる。
【0020】
また、前記透水性ネットの端部どうしの接続部を前記鉄筋かごの周方向または軸方向に二乃至三回程度交互に折り込んで形成することにより、必要に応じて接続部の補強リブの厚みを自由に調整することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、場所打ちコンクリート杭に配筋される鉄筋かごに取り付けられる補強用ネットの発明であり、前記鉄筋かごの外周を覆う透水性ネットと当該透水性ネットに形成された複数の補強テープとから構成され、前記補強テープは前記透水性ネットの外側および/または内側に、前記鉄筋かごの周方向および/または軸方向に連続して配置され、かつ縫い糸によって前記鉄筋かごの周方向および/または軸方向に縫い付けられていることで、きわめて簡単な構成によりコンクリート打設時の衝撃や側圧による透水性ネットの破断や膨出等を防止して、均一断面の場所打ちコンクリート杭を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態であって、外周に補強用ネットが配置された鉄筋かごを配筋して構成された場所打ちコンクリート杭であり、図(a)は平面図、図(b),(c)は正面図である。
図2図1に図示する場所打ちコンクリートであって、図(a)は図1(a)における一部拡大図、図(b)は図2(a)におけるイ部拡大図である。
図3】透水性ネットの端部どうしの接続部が、鉄筋かごの軸方向に連続するように配置された透水性ネットの端部どうしの接続部を図示したものであり、図(a)は鉄筋かごの周方向に折り込まれる前の断面図、図(b),(c)は透水性ネットの端部どうしの接続部の変形例の断面図である。
図4】透水性ネットの端部どうしの接続部が、鉄筋かごの周方向に連続するように配置された透水性ネットの端部どうしの接続部を図示したものであり、図(a)は鉄筋かごの軸方向に折り込まれる前の断面図、図(b)は鉄筋かごの軸方向に折り込まれた後の断面図である。
図5図1(a)に図示する場所打ちコンクリートであって、図(a)は図1(a)における一部拡大図、図(b)は図5(a)におけるロ部拡大図、図(c)は折り込まれる前のヒダ部を図示したものである。
図6】透水性ネットの端部どうしの接続部が、鉄筋かごの周方向に連続するように配置された透水性ネットの端部どうしの接続部を図示したものであり、図(a)は鉄筋かごの軸方向に折り込まれる前の断面図、図(b)は鉄筋かごの軸方向に折り込まれた後の断面図である。
図7】透水性ネットの端部どうしの接続部が、鉄筋かごの軸方向に連続するように配置された透水性ネットの端部どうしの接続部を図示したものであり、図(a)は鉄筋かごの周方向に折り込まれる前の断面図、図(b),(c)は透水性ネットの端部どうしの接続部の変形例の断面図である。
図8図1に図示する場所打ちコンクリート杭であって、図(a)は平面図、図(b)は正面図である。
図9】本発明の他の実施形態を図示したものであり、鉄筋かごの外周に透水性ネットが二重に配置されることにより構成された場所打ちコンクリート杭であり、図(a)はその一部横断面図、図(b)、(c)は、それぞれ図9(a)におけるハ部、ニ部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1図7は、本発明の一実施形態を図示したものであり、鉄筋かごの外周に補強用ネットを配置し、その中にコンクリートを打設することにより場所打ちコンクリート杭が形成されている。
【0024】
場所打ちコンクリート杭1は、鉄筋かご2と当該鉄筋かご2の外周に配置された補強用ネット3と当該補強用ネット3内に打設されたコンクリート4とから一体に形成されている。
【0025】
鉄筋かご2は、平面視所定径の円形状に等間隔に配筋された複数の縦鉄筋5と、当該複数の縦鉄筋5の外周に配筋された複数のフープ筋6とから円筒形状に構成されている。フープ筋6は縦鉄筋5の軸方向(長手方向)に所定間隔に離間して配筋されている。
【0026】
平面視円形状に隣り合う複数の縦鉄筋5のうち、一または複数おきに隣り合う各縦鉄筋5に複数の第一スペーサ7がそれぞれ鉄筋かご2の軸方向(長手方向)に所定間隔に離間し、かつ周方向に平面視円形状に互いに隣り合って取り付けられている。
【0027】
また、平面視円形状に隣り合う複数の第一スペーサ7,7間に、第二スペーサ8が鉄筋かご2の周方向にリング状に、かつ鉄筋かご2の軸方向に所定間隔に離間して取り付けられている。
【0028】
第一スペーサ7は、縦鉄筋5の軸方向に伸びる一対の溶接部7a,7aと、当該溶接部7a,7a間にこれらと一体に形成され、かつ鉄筋かご2の外方に側面視略矩形状に張り出して形成された張出部7bとから側面視略ハット形状に形成されている(図4参照)。
【0029】
また、第一および第二スペーサ7と8は、一本の長尺プレート(帯鋼)または鉄筋を曲げ加工する等の方法によって形成され、特に図示する第一および第二スペーサ7と8は、それぞれ長尺プレートを曲げ加工することにより形成されている。また、第一スペーサ7は、溶接部7a,7aを縦鉄筋5に結束線による結束または溶接することにより取り付けられ、第二スペーサ8は第一スペーサ7,7の張出し部7bに結束線または溶接などによって取り付けられている。
【0030】
補強用ネット3は、鉄筋かご2の外周に当該鉄筋かご2の全周を覆うように配置され、かつ当該補強用ネット3と鉄筋かご2との間に第一スペーサ7と第二スペーサ8によって、鉄筋かご2に対するコンクリート4の被り厚wが確保されている(図2(a),4(a)参照)。
【0031】
また、補強用ネット3は、鉄筋かご2の外周をその全周に渡って覆う透水性ネット9と当該透水性ネット9を補強する複数の補強テープ10または11とから構成されている。
【0032】
補強テープ10と11にはテント用生地に類似するもので、少なくとも透水性ネット9より引張り強度の大きい網状ネットまたは生地(布)からなるテープが用いられている。
【0033】
前記透水性ネット9のうち、図1(b)に図示するように、透水性ネット9の端部9a,9aどうしの接続部aが、鉄筋かご2の軸方向に連続するように配置された透水性ネット9の端部9a,9aどうしは、鉄筋かご2の周方向に互いに所定長重ね合わせられている(図3(a)参照)。
【0034】
また、図1(c)に図示するように、透水性ネット9の端部9a,9aどうしの接続部bが、鉄筋かご2の周方向に連続するように配置された透水性ネット9,9の端部9b,9bどうしは、鉄筋かご2の軸方向に互いに所定長重ね合わせられている(図4(a)参照)。
【0035】
また、透水性ネット9の端部9a,9aどうしの接続部aに補強テープ10が取り付けられ(図3(a)参照)、また、透水性ネット9,9の端部9b,9bどうしの接続部bに補強テープ11が取り付けられている(図4(a)参照)。
【0036】
また、透水性ネット9の端部9a,9aどうしの接続部aは、鉄筋かご2の周方向の一方向に折り込まれ、かつ補強テープ10と共に透水性ネット9の上に密着された状態に添い付けられている(図2(b)参照)。
【0037】
なお、図の上では、透水性ネット9の端部9a,9aと補強テープ10との重なり具合が理解できるように、接続部aに隙間を設けて図示してあり、図3以降の図についても同じである。
【0038】
また、透水性ネット9,9の端部9b,9bどうしの接続部bは、鉄筋かご2の軸方向の一方向に折り込まれ、かつ補強テープ11と共に透水性ネット9の上に密着された状態に添い付けられている(図4(b)参照)。
【0039】
補強テープ10は、互いに重ね合わせられた透水性ネット9の端部9a,9aどうしの接続部aの断面形状に沿って、接続部aを挟み込むように折り込まれることで、鉄筋かご2の軸方向に連続する断面略U字状に形成されている(図2(a),(b)参照)。
【0040】
補強テープ11は、互いに重ね合わせられた透水性ネット9,9の端部9b,9bどうしの接続部bの断面形状に沿って、接続部bを挟み込むように折り込まれることで、鉄筋かご2の周方向に連続する断面略U字状に形成されている(図4(a),(b)参照)。
【0041】
また、補強テープ10は、透水性ネット9の端部9a,9aの接続部aに縫い糸12によって鉄筋かご2の軸方向に複数列に連続して縫い付けられ、また、補強テープ11は透水性ネット9の端部9b,9bの接続部bに縫い糸12によって鉄筋かご2の周方向に複数列に連続して縫い付けられている(図4(a),(b)参照)。
【0042】
さらに、補強テープ10と11は、それぞれ透水性ネット9の端部9a,9a、透水性ネット9,9の端部9b,9bと共に透水性ネット9の上に縫い糸12によって一体的に縫い付けられていてもよい。
【0043】
なお、縫い糸12には少なくとも透水性ネット9より引張り強度の大きい縫い糸、例えばビニロン製の糸(♯8程度)またはポリエステル製の糸(♯5程度)が用いられている。
【0044】
このように、透水性ネット9の端部9a,9aどうし、9b,9bどうしが、それぞれ、前述するような構成によって接合され、かつ端部9a,9aどうしおよび9b,9bどうしの接続部a,bに補強テープ10と11がそれぞれ取り付けられていることで、コンクリート打設時の衝撃や側圧によって透水性ネット9の端部9a,9aおよび9b,9bどうしの接続部a,bの破断を未然に防止することができる。
【0045】
また、互いに接合された透水性ネット9の端部9a,9aおよび9b,9bどうしの接続部a,bが、それぞれ透水性ネット9の上に密着する状態に縫い付けられていることで、透水性ネット9の端部9aと9bが補強用ネット3の表面に長く突出することがないので、鉄筋かご2の杭孔内への立込み作業が容易になる。
【0046】
さらに、透水性ネット9の端部9a,9aおよび9b,9bどうしの接続部a,bが、それぞれ補強テープ10と11と共に透水性ネット9の上に縫い糸12によって一体的に縫い付けられていることで、単に透水性ネット9の端部どうしの接続部a,bが補強されるだけでなく、透水性ネット9の端部9a,9a、9b,9bと補強テープ10,11とからそれぞれ形成される補強リブ16と17によって補強用ネット3の全体を補強することができる。
【0047】
なお、透水性ネット9の端部9a,9aどうしの接続部aは、鉄筋かご2の周方向の両方向に交互に二重乃至三重に折り込まれ、その上に補強テープ10が取り付けられていてもよい(図3(b)参照)。
【0048】
同様に、透水性ネット9の端部9b,9bどうしの接続部bが、鉄筋かご2の軸方向の両方向に交互に二重乃至三重に折り込まれ、その上に補強テープ11が取り付けられていてもよい(図省略)。
【0049】
図3(c)は、透水性ネット9の端部どうしの接続部の変形例を図示したものであり、透水性ネット9の端部9a,9a間に一または複数の補強テープ13を介在すると共に、透水性ネットの端部9a,9aの外側に補強テープ10を取り付け、かつ透水性ネットの端部9a,9a、補強プレート13および補強プレート10を縫い糸12によって鉄筋かご2の軸方向に一体的に縫い付けることにより透水性ネット9の端部9a,9aどうしの接続部aの強度を高めることができる。
【0050】
同様にして、透水性ネット9,9の端部9b,9b間に一または複数の補強テープ13を介在すると共に、透水性ネットの端部9b,9bの外側に補強テープ11を取り付け、かつ透水性ネットの端部9b,9b、補強テープ13および補強テープ11を縫い糸12によって鉄筋かご2の周方向に一体に縫い付けることにより(図省略)、鉄筋かご2の軸方向に隣接する透水性ネットの端部9b,9bどうしの接続部bの強度を高めることができる。
【0051】
また、透水性ネット9の端部9a,9aどうしの接続部aが、鉄筋かご2の軸方向に連続するように配置された透水性ネット9には、鉄筋かご2の軸方向に連続するヒダ部(プリーツ)14が形成されている(図5(a),(b),(c)参照)。
【0052】
また、透水性ネット9の端部9b,9bどうしの接続部bが、鉄筋かご2の周方向に連続するように配置された透水性ネット9,9に、鉄筋かご2の周方向に連続するヒダ部(プリーツ)15が形成されている(図1(c)、図6(a),(b)参照)。
【0053】
ヒダ部14は鉄筋かご2の周方向に所定間隔に離間して形成され(図5(a)参照)、ヒダ部14は鉄筋かご2の軸方向に所定間隔に離間して形成されている(図5(a)参照)。
【0054】
ヒダ部14は、透水性ネット9の一部が鉄筋かご2の周方向に所定長、折り込んで重ね合わせることにより形成され(図5(b),(c))、ヒダ部15は、透水性ネット9の一部が鉄筋かご2の軸方向に所定長、折り込んで重ね合わせることにより形成されている(図6(a),(b)参照)。そして、各ヒダ部14に補強テート10が取り付けられ、各ヒダ部15に補強テープ11が取り付けられている。
【0055】
また、ヒダ部14は、鉄筋かご2の周方向の一方側に折り込まれ、かつ透水性ネット9の上に補強テープ10と共に密着するように添い付けられている(図5(b)参照)。
【0056】
このような構成によって透水性ネット9にヒダ部14と補強テープ10とからなる複数の補強リブ16が、鉄筋かご2の周方向に所定間隔に離間し、かつ鉄筋かご2の軸方向に連続して形成されている(図1(a)参照)。
【0057】
また、ヒダ部15は、鉄筋かご2の軸方向の一方側に折り込まれ、かつ透水性ネット9の上に補強テープ11と共に密着するように添い付けられている(図1(b)参照)。また、ヒダ部15は補強テープ11と共に透水性ネット9の上に縫い糸12によって鉄筋かご2の周方向に複数列に連続して縫い付けられている。
【0058】
このような構成により透水性ネット9にヒダ部15と補強テープ11とからなる複数の補強リブ17が、鉄筋かご2の周方向に連続し、かつ鉄筋かご2の軸方向に所定間隔に離間して形成されている(図1(c)参照)。
【0059】
図7(a),(b)は、ヒダ部14の片側面に補強テープ13が縫い糸12によって縫い付けることにより取り付けられた例を図示したものであり、透水性ネット9に補強リブ16を簡易に形成することができると共に、透水性ネット9自体を全体にわたって補強することができる。
【0060】
なお、ヒダ部14は、鉄筋かご2の周方向の両方向に、また、ヒダ部15は、鉄筋かご2の軸方向の両方向にそれぞれ交互に二重乃至三重に折り込まれ、その上に補強テープ10と11がそれぞれ取り付けられていてもよい(図7(c)参照)。
【0061】
図8(a),(b)は、本発明の他の実施形態を図示したものであり、補強テープ10と11が、それぞれ、透水性ネット9の外側および/または内側に、鉄筋かご2の周方向および軸方向に連続して配置され、かつ透水性ネット9に縫い糸によって鉄筋かご2の周方向と軸方向に縫い付けられており、鉄筋かご2の外周に配置された透水性ネット9が最も簡単な構成によりを補強することができる。
【0062】
この場合、補強テープ10が取り付けられることにより、鉄筋かご2の縦方向に連続する補強リブ16が形成され、補強テープ11が取り付けられることにより、鉄筋かご2の周方向に連続する補強リブ17が形成される。
【0063】
図9(a)~(c)は、鉄筋かご2の外周に透水性ネット9が二重(ダブル)に配置されることにより構成された補強用ネット3を図示したものであり、鉄筋かご2の周方向および軸方向に隣接する各透水性ネットの端部9a,9a間および9b,9b間の接続部は、透水性ネットが二重に配置されている以外は図1図7で説明した実施形態とほぼ同じである。
【0064】
また、透水性ネット9に鉄筋かご2の周方向および軸方向に連続して形成されたヒダ部14と15も、透水性ネットが二重になっている以外は図1図7で説明した実施形態とほぼ同じように構成されている。
【0065】
なお、本発明の実施形態の補強用ネットにおける透水性ネットの接続部(縫い目部)について、以下の仕様で引張試験を行った。
【0066】
(1)試験片(透水性ネット)の生地として透水性化学繊維(ポリエステル製繊維)からなる網状生地、補強テープとしてナイロンテープをそれぞれ使用し、また、縫い糸としてポリエステル♯5で、透水性化学繊維(ポリエステル製繊維)からなり、かつ網状生地より引張り強度の大きい縫い糸を使用した。
【0067】
(2)試験片の生地はシングルとダブル(二重)で、補強テープによる補強ありと無しの組み合わせ4種類を用意した。
【0068】
(3)試験方法(JIS1093 A-1法)は、試験機で試験片の生地の両端をつかみ、引っ張っていき、接続部の縫い糸または試験片の生地が破断したところで引張り試験を終了した。
【0069】
(4)引張り試験の結果、シングルで補強テープ無し、補強テープ有りの場合の接続部(縫い目)の強さ(N)は、それぞれ487N、500Nであった。
【0070】
また、ダブル(二重)で補強テープ無し、補強テープ有りの場合の接続部(縫い目)の強さ(N)は、それぞれ943N、1050Nであった。
【0071】
引張り試験の結果、シングル生地、ダブル生地のいずれの場合においても、接続部(縫い目)の強さは、補強テープ有りの方が補強テープ無しの場合よりも20%程度大きいことが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、コンクリート打設時の衝撃や側圧等による透水性ネットの破断を防止して均一断面の場所打ちコンクリート杭を容易に施工することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 場所打ちコンクリート杭
2 鉄筋かご
3 補強用ネット
4 場所打ちコンクリート
5 縦鉄筋
6 フープ筋
7 第一スペーサ
7a 溶接部
7b 張出し部
8 第二スペーサ
9 透水性ネット
9a 透水性ネットの端部
9b 透水性ネットの端部
10 補強テープ
11 補強テープ
12 縫い糸
13 補強テープ
14 ヒダ部(プリーツ)
15 ヒダ部(プリーツ)
16 補強リブ
17 補強リブ
a 透水性ネットの端部どうしの接続部
b 透水性ネットの端部どうしの接続部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9