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特許7387127樹脂シートの製造方法、および樹脂シート
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  • 特許-樹脂シートの製造方法、および樹脂シート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】樹脂シートの製造方法、および樹脂シート
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20231120BHJP
   D06N 3/00 20060101ALI20231120BHJP
   D06N 7/02 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
C08J5/18 CEV
C08J5/18 CFF
D06N3/00
D06N7/02
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022573551
(86)(22)【出願日】2022-10-11
(86)【国際出願番号】 JP2022037929
【審査請求日】2022-11-29
(31)【優先権主張番号】P 2022105549
(32)【優先日】2022-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522263345
【氏名又は名称】ステータシー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】田中 比呂達
【審査官】福井 弘子
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-2163344(KR,B1)
【文献】中国特許出願公開第113185848(CN,A)
【文献】特開2018-111304(JP,A)
【文献】特開2014-156638(JP,A)
【文献】特開2010-121002(JP,A)
【文献】特開2010-121003(JP,A)
【文献】特開昭56-129157(JP,A)
【文献】特開平10-314286(JP,A)
【文献】特開平05-277460(JP,A)
【文献】特表2015-511648(JP,A)
【文献】特開2000-264734(JP,A)
【文献】特開2015-073462(JP,A)
【文献】特開2019-194303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00-5/02
C08J 5/12-5/22
D06N 3/00
D06N 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物由来の原料(トチュウを除く)を凍結粉砕して平均粒径が250μm以下の粉末を生成する第1の工程と、
前記粉末を樹脂原料と混ぜ合わせて混合原料を生成する第2の工程と、
前記混合原料をシート材に加工する第3の工程と、
を含む樹脂シートの製造方法であって、
前記植物由来の原料には、コーヒー滓および/またはコーヒー豆が含まれる、樹脂シートの製造方法
【請求項2】
植物由来の原料(トチュウを除く)を凍結粉砕して平均粒径が250μm以下の粉末を生成する第1の工程と、
前記粉末を樹脂原料と混ぜ合わせて混合原料を生成する第2の工程と、
前記混合原料をシート材に加工する第3の工程と、
を含む樹脂シートの製造方法であって、
前記植物由来の原料には、種子または前記種子由来の原料が含まれる、樹脂シートの製造方法。
【請求項3】
植物由来の原料(トチュウを除く)を凍結粉砕して平均粒径が250μm以下の粉末を生成する第1の工程と、
前記粉末を樹脂原料と混ぜ合わせて混合原料を生成する第2の工程と、
前記混合原料をシート材に加工する第3の工程と、
を含む樹脂シートの製造方法であって、
前記植物由来の原料には、果実が含まれる、樹脂シートの製造方法。
【請求項4】
植物由来の原料(トチュウを除く)を凍結粉砕して平均粒径が250μm以下の粉末を生成する第1の工程と、
前記粉末を樹脂原料と混ぜ合わせて混合原料を生成する第2の工程と、
前記混合原料をシート材に加工する第3の工程と、
を含む樹脂シートの製造方法であって、
前記樹脂原料には、塩ビ樹脂および/またはポリウレタン樹脂が含まれる、樹脂シートの製造方法。
【請求項5】
植物由来の原料(トチュウを除く)を凍結粉砕してなる平均粒径が250μm以下の粉末と、
樹脂原料と、
を含むヴィーガンレザー用樹脂シートであって、
前記植物由来の原料には、コーヒー滓および/またはコーヒー豆が含まれる、ヴィーガンレザー用樹脂シート
【請求項6】
植物由来の原料(トチュウを除く)を凍結粉砕してなる平均粒径が250μm以下の粉末と、
樹脂原料と、
を含むヴィーガンレザー用樹脂シートであって、
前記植物由来の原料には、種子または前記種子由来の原料が含まれる、ヴィーガンレザー用樹脂シート
【請求項7】
植物由来の原料(トチュウを除く)を凍結粉砕してなる平均粒径が250μm以下の粉末と、
樹脂原料と、
を含むヴィーガンレザー用樹脂シートであって、
前記植物由来の原料には、果実が含まれる、ヴィーガンレザー用樹脂シート
【請求項8】
植物由来の原料(トチュウを除く)を凍結粉砕してなる平均粒径が250μm以下の粉末と、
樹脂原料と、
を含むヴィーガンレザー用樹脂シートであって、
前記樹脂原料には、塩ビ樹脂および/またはポリウレタン樹脂が含まれる、ヴィーガンレザー用樹脂シート
【請求項9】
前記植物由来の原料に含まれる油分および/または水分が、前記粉末に閉じ込められている、請求項5~8の何れか一項に記載のヴィーガンレザー用樹脂シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂シートの製造方法、および、塩ビレザー、ヴィ―ガンレザーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、動物の皮革を原料としない代替素材として、樹脂シートを基布に貼り合わせて形成される合成皮革や基布に合成樹脂を含浸させることにより形成される人工皮革などのヴィ―ガンレザーがより知られている。
【0003】
また、持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の観点などから廃棄予定の食品などを再利用した植物由来の材料を樹脂層に含有するヴィ―ガンレザーや樹脂シートの開発が検討されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなヴィ―ガンレザーの原料として、コーヒー豆や使用済みのコーヒー豆(コーヒー滓とも表現できる)など植物由来の原料をヴィ―ガンレザーや樹脂シートとして用いようとした場合、充分な引張強度が得られないという問題がある。
【0005】
本発明は、引張強度を向上させることが可能な樹脂シートの製造方法、および、塩ビレザー、ヴィ―ガンレザーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の樹脂シートの製造方法は、植物由来の原料を凍結粉砕して粉末を生成する第1の工程と、粉末を樹脂原料と混ぜ合わせて混合原料を生成する第2の工程と、混合原料をシート材に加工する第3の工程と、を含むものである。
【0007】
本発明の樹脂シートの製造方法において、植物由来の原料には、種子または種子由来の原料が含まれてもよい。
【0008】
本発明の樹脂シートの製造方法において、植物由来の原料には、果実が含まれてもよい。
【0009】
本発明の樹脂シートの製造方法において、植物由来の原料には、植物の茎が含まれてもよい。
【0010】
本発明の樹脂シートの製造方法において、シート材を基材と張り合わせる第4の工程を含んでもよい。
【0011】
本発明の樹脂シートの製造方法において、粉末は、平均粒径が少なくとも250μm以下となるように粉砕処理されてなる粒子により構成されてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の樹脂シートの製造方法によれば、凍結粉砕により生成された粉末を用いて樹脂シートを製造することができる。これにより、樹脂シートの引張強度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態におけるヴィ―ガンレザー(塩ビレザーシート)の製造方法の流れを示すフローチャートを示す図である。
図2図1に示す粉砕工程に含まれる凍結粉砕処理の流れを示す模式図である。
図3図1に含まれる調整工程、混練工程、圧延工程、圧着工程、回収工程における各処理の流れを示す模式図である。
図4】第2実施形態における乾式合成皮革シートの製造方法の流れを示すフローチャートである。
図5図4に示すフローチャートに含まれる各工程のうち加工工程、貼り付け工程、回収工程における各処理の流れを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の第1実施形態であるヴィ―ガンレザーの製造方法について、図面を参照しながら説明する。ヴィ―ガンレザーとは動物の革を用いずに革の外観や質感を人工的に再現した素材である。ヴィ―ガンレザーには、例えば、塩ビレザーや人工皮革、合成皮革などが含まれる。
【0017】
図1は、ヴィ―ガンレザー(塩ビレザー)の製造方法10の流れを示すフローチャートである。図2は、粉砕工程S1における凍結粉砕処理の流れを示す模式図である。図1および図2に示すように、ヴィ―ガンレザーの製造方法10は、コーヒー滓CSを凍結粉砕する粉砕工程(第1の工程)S1と、塩ビ樹脂混合原料Qの調製工程S2と、粉砕工程S1で生成したコーヒー滓の粉末CPと調製工程S2で生成した塩ビ樹脂混合原料Qとを混ぜ合わせてコーヒー滓入り混合物Rを生成する混練工程(第2の工程)S3と、混練工程S3で生成されたコーヒー滓入り混合物Rを塩ビシート材SHに加工する圧延工程(第3の工程)S4と、塩ビシート材SHを基布BSと貼り合わせて塩ビレザーシートPHを生成する圧着工程(第4の工程)S5と、塩ビレザーシートPHを回収する回収工程S6と、を備える。コーヒー滓CSは、湯または水を用いてコーヒー豆やコーヒー豆の粉末から成分を抽出した後の残滓(換言すると、搾りかすとも表現できる)である。また、コーヒー滓CSは、種子由来の原料に相当する。
【0018】
図2に示すように、本実施形態における凍結粉砕では、液体窒素タンク22より供給管P1を経て原料タンク20に供給される液体窒素を用いて原料タンク20に投入されたコーヒー滓CSを予備冷却する。そして、予備冷却されたコーヒー滓CSはスクリューフィーダ24を介して凍結粉砕機26に搬送される。この凍結粉砕機26には液体窒素タンク22より供給管P2を介して液体窒素が供給されており、スクリューフィーダ24から供給管P3を介して供給されるコーヒー滓CSを所定の低温下で凍結した状態で粉砕する機能を有する。凍結粉砕機26としては、一例として、ホソカワミクロン株式会社製リンレックスミル(登録商標)などを用いるのが好適である。
【0019】
本実施形態では、植物由来(換言すると、種子由来とも表現できる)の原料としてコーヒー滓CSを用いているが、コーヒー滓CSに代えてコーヒー豆やカカオ豆、ピーナッツ、落花生などの種子を用いてもよい。また、植物由来の原料として、リンゴやミカン、ブドウ、バナナなどの果実を用いてもよい。より具体的には、これらの果実を、そのまま全て用いてもよいし、果実の一部のみを用いてもよい。この果実の一部には、例えば、リンゴの皮や、ミカンの皮、ブドウの皮、バナナの皮などが含まれる。さらに、植物由来の原料として、廃棄された果実や廃棄予定の果実を用いるようにしてもよい。この場合には、廃棄食品を有効活用できる。さらに、植物由来の原料として、バナナの茎やサボテンなどから得られる植物繊維を用いてもよい。
【0020】
ここで、発明者が検討を行ったところ、コーヒー滓を摺り子木やすり鉢などを用いてすり潰すことにより粉末化しようとした場合、コーヒー滓に含まれる油分の影響によりコーヒー滓がペースト状になり粉末状とすることが難しいことが判明した。また、上記ペースト状のコーヒー滓を塩ビ樹脂原料と混ぜ合わせて塩ビシート材を製作した場合には、同シート材の引張強度が著しく低く実用に耐えないことも判明した。
【0021】
そこで、発明者が鋭意検討を行ったところ、本実施形態のように液体窒素などを用いて凍結粉砕処理を行うことによりコーヒー滓を粉末化することが可能であるとの知見を得た。そして、粉末化したコーヒー滓を用いて塩ビシート材を製作した場合、同シートの引張強度も向上することが判明した。
【0022】
また、発明者が鋭意検討を行ったところ、コーヒー滓の代りにコーヒー豆やカカオ豆、落花生などを摺り子木やすり鉢などを用いてすり潰すとペースト状になりやすくコーヒー滓の場合と同様の問題が生じやすいことが判明した。そこで、発明者が追加検討したところ、上述したコーヒー滓の場合と同様に凍結粉砕処理を用いることで塩ビシートの引張強度を向上させることができるとの知見を得るに至った。
【0023】
さらに、発明者が検討を行ったところ、リンゴやミカン、ブドウ、バナナなどの果実や、これら果実の皮を摺り子木やすり鉢などを用いてすり潰して粉砕しようとする場合には、これらの果実や果実の皮に含有される水分の影響などにより粉砕して微粉化(細粒化とも表現できる)するのが難しいということも判明した。しかしながら、これらの場合においても、上述したコーヒー滓の場合と同様に凍結粉砕処理を行うことで微粉化(細粒化)し、塩ビシートの引張強度を向上させることができるとの知見を得るに至った。
【0024】
また、コーヒー滓の粉末CPの平均粒径が250μm以下となるように粉砕処理を行った上で上述した塩ビシート材SHを製作することにより同シート材SHの引張強度を向上させることができることが分かった。さらに、コーヒー滓の粉末CPの平均粒径が150μm以下となるようにコーヒー滓CSを粉砕処理することがより好ましい。これにより、塩ビシート材SHの引張強度をさらに向上させることができる。また、コーヒー滓CSを粉末化して塩ビシート材SHや塩ビレザーシートPHに含有させることによって、同シート材SH,PHに含まれるコーヒー滓CSの含有量(率)を増加させた場合においても充分な引張強度を得ることができるという利点もある。
【0025】
また、コーヒー滓、コーヒー豆、カカオ豆、落花生などの種子や、リンゴ、ミカン、ブドウ、バナナなどの果実や、上記果実の皮をコーヒー滓CSの代りに用いる場合においても、コーヒー滓の粉末CPの場合と同様、細粒化(微粉化)することによって塩ビシート材SHの引張強度を向上させることができることが発明者の研究で判明している。具体的には、コーヒー滓、コーヒー豆、カカオ豆、落花生などの種子や、リンゴ、ミカン、ブドウ、バナナなどの果実や、これら果実の皮を用いる場合には、粉末の平均粒径が100μm以下となるように粉砕処理を行うことが好ましい。これにより、塩ビシート材SHの引張強度のバラツキを充分に抑制することが可能となる。なお、塩ビシート材SHの引張強度をさらに向上させたい場合には、上述した粉末の平均粒径が50μm以下となるように粉砕処理を行えばよい。
【0026】
続いて、上述した粉砕工程S1を除く他の工程S2~S6について図3をさらに参照しつつ説明を行う。調製工程S2(図1参照)では、不図示のリボンブレンダーなどの混合装置を用いて塩ビ樹脂粉末(レジン)に安定剤、滑剤、可塑剤、着色剤、改質剤などを混ぜ合わせて塩ビ樹脂混合原料Qを生成する。図3に示すように、混練工程S3では、例えば、バンバリーミキサー(密閉式の混練機)32やミキシングロール対(開放式の混練機)34A,34B、ウォーミングロール対36A,36Bなどを用いて塩ビ樹脂混合原料Qを餅(ゲル)状のコーヒー滓入り混合物Rとする。
【0027】
より具体的には、塩ビ樹脂混合原料Qをバンバリーミキサー32に投入してゲル状となるまで混練した後、ミキシングロール対34A,34Bに投入するとともに粉砕工程S1(図2参照)で生成したコーヒー滓の粉末CPを投入して混ぜ合わせることによりコーヒー滓入り混合物Rを生成する。その後、加熱機能を有するウォーミングロール対36A,36Bにコーヒー滓入り混合物Rを搬送し、コーヒー滓入り混合物Rが冷えないように加熱しつつ同混合物Rの粘度を調節する。
【0028】
図3に示すように、圧延工程S4では、コーヒー滓入り混合物Rをカレンダー装置38によって圧延してシート状に成型しコーヒー滓を含有する塩ビシート材SHを生成する。カレンダ―装置38は、コーヒー滓入り混合物Rを挟み込む挟持ローラ対38A,38Bや送りローラ39A,39Bなどを含む圧延装置である。
【0029】
また、圧着工程S5では、上流側のカレンダー装置38から送り出されるコーヒー滓入り塩ビシート材SHと、送り出し装置40から複数のローラ42,44を介して供給される基布BSとを圧延ローラ対52,54の間に挟み込んで圧着し、塩ビレザーシートPHを生成する。基布BSは、例えば、編物や織物、不織布などにより構成される。本実施形態では、圧着工程S5において、基布BSと塩ビシート材SHを貼り合わせているが、基布BSを貼り合わせずに塩ビシート材SHとして用いてもよい。この場合には、圧着工程S5を設ける必要はない。
【0030】
図3に示すように、回収工程S6では、圧着工程S5から送り出される塩ビレザーシートPHを複数の搬送ローラ61,62,63の間を搬送しつつ冷却した上で、巻き取り装置70で巻き取り回収する。
【0031】
本実施形態のヴィ―ガンレザー(塩ビレザーシートPH)の製造方法10によれば、凍結粉砕により生成されたコーヒー滓の粉末CPを用いてヴィ―ガンレザー(換言すると、塩ビレザーシートPH)を製造することができる。これにより、ヴィ―ガンレザーの引張強度を向上させることが可能となる。
【0032】
上記実施形態では、ヴィ―ガンレザー(塩ビレザーシートPH)の製造方法10を例に挙げて説明しているが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、乾式合成皮革シートの製造方法80として実現してもよい。この場合の第2実施形態に係る乾式合成皮革シートの製造方法80について図4および図5を用いて説明を行う。なお、乾式合成皮革シートもヴィーガンレザーに含まれる素材である。
【0033】
以下の説明では、上記第1実施形態の製造方法10と共通する部分については適宜説明を省略しつつ同一の符号を付して示すとともに、製造方法10と構成の異なる部分について主に説明を行うものとする。図4は、製造方法80における各工程の流れを示すフローチャートである。図5は、図4に示すフローチャートに含まれる各工程のうち加工工程S12、貼り付け工程S13、回収工程S14における各処理の流れを模式的に示す図である。
【0034】
図4および図5に示すように、乾式合成皮革シートの製造方法80は、上述した粉砕工程S1(図2参照)と、混合工程(第2の工程)S11と、加工工程(第3の工程)S12と、貼り付け工程(第4の工程)S13と、回収工程14とを備える。図4に示すように、混合工程S11では、例えば、1液型のポリウレタン樹脂溶液T1に粉砕工程S1において生成したコーヒー滓の粉末CPを混合させる。
【0035】
図5に示すように、加工工程S12では、送り出しローラ81から搬送ローラ82および塗布ローラ83を介して離型紙Uを下流側に搬送しつつ混合工程S11でコーヒー滓の粉末CPを混合したポリウレタン樹脂溶液T1を塗布(塗工とも表現できる)する。これにより、表皮層用樹脂フィルムPU1を離型紙U上に形成する。そして、表皮層用樹脂フィルムPU1が形成された離型紙Uを下流側に搬送しつつ乾燥機HT1を用いて乾燥処理を実施する。
【0036】
貼り付け工程S13では、搬送方向における上流側の送りローラ84A,84B,85,86,87を介して下流側に離型紙Uを搬送しつつ、例えば、2液型のポリウレタン樹脂溶液T2を表皮層用樹脂フィルムPU1の上に塗布し接着剤層PU2を形成する。これにより、離型紙U上に表皮層用樹脂フィルムPU1および接着剤層PU2を積層させることができる。
【0037】
次に、表皮層用樹脂フィルムPU1および接着剤層PU2を積層させた離型紙Uを下流側に搬送しつつ乾燥機HT2内を通過させる。これにより、接着剤層PU2に含まれる溶剤等を揮発させる。
【0038】
そして、図5に示すように、送り出しローラ88から送り出される基布TS(基体TSとも表現できる)と上流側の乾燥機HT2を通過した離型紙Uとを熱プレスロール対89A,89Bで挟み込みつつ下流側に送り出す。これにより、離型紙U上に形成されている接着剤層PU2に基布TSが貼り合わされる。この結果、乾式合成皮革シートPUが形成される。ここで、基布TSは、編物、織物、不織布などにより構成されたシート材である。
【0039】
回収工程S14では、乾式合成皮革シートPUが形成された状態の離型紙Uを搬送ローラ91A,91B,91C,91Dで下流側に搬送し巻取ローラ92によって巻き取って回収する。なお、離型紙Uは、巻取ローラ92で回収した後に乾式合成皮革シートPUから取り外せばよい。この第2実施形態の場合にも、上記第1実施形態と同様の効果を有する乾式合成皮革(樹脂)シートPUを得ることができる。
【0040】
上記第2実施形態では、混合工程S11では、ポリウレタン樹脂溶液T1に粉砕工程S1において生成したコーヒー滓の粉末CPを混合させているが、本発明はこれに限定されるものではない。混合工程S11において、ポリウレタン樹脂溶液T1の代りにポリウレタン樹脂溶液T2に粉砕工程S1において生成したコーヒー滓の粉末CPを混合させてもよい。また、混合工程S11において、ポリウレタン樹脂溶液T1およびポリウレタン樹脂溶液T2の双方に粉砕工程S1で生成したコーヒー滓の粉末CPを混合させるようにしてもよい。
【0041】
また、本発明に係る製造方法は、上述したヴィ―ガンレザーの製造方法10や乾式合成皮革シートの製造方法80に限定されるものではなく、湿式合成皮革シートの製造方法として実現してもよい。この場合においても、塗料配合液(ポリウレタン樹脂溶液)に上述した粉砕工程S1において生成したコーヒー滓の粉末CPを混合させてなる混合溶液を利用することにより、上記第1および第2実施形態と同様の効果を有する湿式合成皮革シートまたは湿式人工皮革シートを得ることができる。
【0042】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々なる改良、修正、又は変形を加えた態様でも実施できる。また、同一の作用又は効果が生じる範囲内で、何れかの発明特定事項を他の技術に置換した形態で実施しても良い。
【符号の説明】
【0043】
10 ヴィ―ガンレザー(塩ビレザーシート)の製造方法
80 乾式合成皮革シートの製造方法
S1 粉砕工程(第1の工程)
S2 調製工程(第2の工程)
S3 混練工程(第3の工程)
S4 圧延工程
S5 圧着工程(第4の工程)
S6 回収工程
S11 混合工程(第2の工程)
S12 加工工程(第3の工程)
S13 貼り付け工程(第4の工程)
S14 回収工程
Q 塩ビ樹脂混合原料
R コーヒー滓入り混合物
U 離型紙
CS コーヒー滓
CP コーヒー滓の粉末
BS,TS 基布
SH コーヒー滓入り塩ビシート材
PH 塩ビレザーシート
PU 乾式合成皮革シート
【要約】
【課題】引張強度を向上させることが可能な樹脂シートの製造方法および、塩ビレザー、ヴィ―ガンレザーを提供する。
【解決手段】ヴィ―ガンレザーの製造方法10は、コーヒー滓を凍結粉砕して粉末を生成する粉末工程S1と、粉砕工程S1で生成した粉末と調整工程S2で生成した塩ビ樹脂原料とを混ぜ合わせて混合原料を生成する混練工程S3と、混練工程S3で生成された混合原料をシート材に加工する圧延工程S4と、を備える。
【選択図】図1

図1
図2
図3
図4
図5