(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】成膜用冶具及び常圧気相成長装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/673 20060101AFI20231120BHJP
C23C 16/458 20060101ALI20231120BHJP
C23C 16/44 20060101ALI20231120BHJP
C23C 14/56 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
H01L21/68 U
C23C16/458
C23C16/44 F
C23C14/56 G
(21)【出願番号】P 2018231016
(22)【出願日】2018-12-10
【審査請求日】2021-09-14
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510052285
【氏名又は名称】株式会社 天谷製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104776
【氏名又は名称】佐野 弘
(72)【発明者】
【氏名】関口 勝美
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-56171(JP,A)
【文献】特開2001-210597(JP,A)
【文献】特開2012-227246(JP,A)
【文献】特開平6-61328(JP,A)
【文献】特開2011-238731(JP,A)
【文献】国際公開第2011/151996(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/673
C23C 16/458
C23C 16/44
C23C 14/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハが移載ロボットによって水平方向から受け渡されて載置され、搬送手段で搬送されて前記載置したウェハに反応ガスを吹き付けて成膜する成膜用冶具であって、
上面から下面にかけて貫通する開口部が形成された基材と、
前記基材の開口部を閉止可能に設置するとともに、少なくとも受け渡し時に上面に
前記ウェハが載置され、搬送時に前記開口部を閉止する閉止部材と、
前記閉止部材を上下動させる3本のウェハリフトピンを有し、これら3本のウェハリフトピンで前記基材の上面に対して前記閉止部材の上面が所定の高さとなるように前記閉止部材を上昇させ、この上昇状態で、前記閉止部材の上面に対して、前記移載ロボットを水平方向に移動させて前記ウェハを載置又は回収する一方、前記閉止部材を前記3本のウェハリフトピンで下降させた時に前記基材の開口部を前記閉止部材で閉止するリフトアップ部と、を備え、
前記3本のウェハリフトピンは、それぞれピン固定部の上面に突出して設けられたピン土台と、該ピン土台に取り付けられて該ピン土台よりも小径のピン本体とを有し、
前記閉止部材の下面に前記3本のウェハリフトピンのそれぞれの
前記ピン本体上端が嵌り込む嵌合用凹部が3つ形成され、
前記ウェハの前記閉止部材への水平方向からの受け渡し時、前記3つの嵌合用凹部に前記3本のウェハリフトピンのそれぞれの
前記ピン本体上端が嵌り込んで、前記閉止部材が前記3本のウェハリフトピンで保持されていることを特徴とする成膜用冶具。
【請求項2】
前記基材の開口部の周囲上面側に前記ウェハを保持する保持用凹部が形成されていることを特徴する請求項1に記載の成膜用冶具。
【請求項3】
前記基材の開口部は、前記保持用凹部に連続して前記上面に拡がるように傾斜する傾斜面が形成される一方、前記閉止部材の外周面にテーパが形成されていることを特徴とする請求項2に記載の成膜用冶具。
【請求項4】
前記基材の開口部は、前記保持用凹部に連続して段付部が形成される一方、前記閉止部材の外周面に前記段付部と同形状の段部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の成膜用冶具。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の成膜用冶具が複数設置され、これらの成膜用冶具にそれぞれウェハを載置して水平方向に順次搬送する搬送装置と、
前記搬送装置によって順次搬送される前記ウェハに反応ガスを吹き付けて成膜するガスヘッドと、
を備えることを特徴とする常圧気相成長装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体基板等のウェハに膜を形成するための成膜用冶具及び常圧気相成長装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、常圧気相成長装置には、ウェハに連続的に成膜を行う装置がある。この装置は、搬送手段、加熱手段、及びガス供給手段を備えている。ウェハは、成膜用冶具としてのウェハトレーに搭載される。このウェハトレーは、上側面にウェハを保持する保持用凹部が形成されている。
【0003】
ウェハを保持したウェハトレーは、上記搬送手段によって搬送され、上記加熱手段によって数百度に加熱される。そして、ウェハトレーが所望の温度になってからウェハが上記ガス供給手段から供給された反応ガスに晒され、ウェハ上面側に薄い膜が形成される。
【0004】
ところで、従来のウェハトレーには、例えば特許文献1に記載されたものがある。
図9及び
図10に示すように、このウェハトレー1は、上側面にウェハ2を保持する保持用凹部1aが形成されている。この保持用凹部1aの底面の中央部には、
図9に示す3本のウェハリフトピン3を挿通させるためのリフトピン挿通孔1bが3つ貫通して形成されている。これらのリフトピン挿通孔1bは、保持用凹部1aの底面とウェハトレー1の下側面とを連通させている。
【0005】
図9に示す3本のウェハリフトピン3は、シリンダ4を駆動することで、シリンダロッド4a、ピン固定部5を介して上下方向に移動可能に構成されている。これら3本のウェハリフトピン3、シリンダ4、シリンダロッド4a、及びピン固定部5は、リフトアップ部6を構成している。
【0006】
3本のウェハリフトピン3は、上昇時に成膜されたウェハ2を上昇させて図示しない移載ロボットによりウェハ2を回収する一方、成膜されていないウェハ2を載置する。したがって、3本のウェハリフトピン3は、ウェハ1の受け渡しのため用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載されたウェハトレー1は、リフトピン挿通孔1bが3つ貫通して形成されているので、ウェハ2を保持していない場合、3つのリフトピン挿通孔1bを通して保持用凹部1aの底面と下側面とが連通状態となる。
【0009】
このように連通状態になったウェハトレー1が上記搬送手段によって上記ガス供給手段に搬送されると、そのガス供給手段から供給された反応ガスがリフトピン挿通孔1bを通して下側面に達し、その反応生成物が付着することになる。その結果、ウェハトレー1の下側面にウェハ2の汚染の原因となるパーティクルが発生するという不具合がある。
【0010】
また、上記反応ガスがリフトピン挿通孔1bを通して搬送手段や加熱手段に入り込むと、全体の気流の乱れが発生し、
図11に示すようにウェハトレー1の搬送方向に対して先頭(最も上流側のウェハ番号1)及び最後(最も下流側のウェハ番号25)のウェハ2の膜厚分布が中間のウェハ2に比べて不均一になるという問題がある。
【0011】
さらに、上記反応ガスが加熱手段に入り込むと、加熱手段に反応生成物が付着し、さらには堆積することから、伝熱性能が著しく低下する。そして、上記加熱手段に部分的に反応生成物が堆積した場合には、加熱手段の温度分布が不均一になる。これにより、ウェハ2の膜厚分布が不均一になるという問題がある。
【0012】
そこで、本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、パーティクルの発生を未然に防止するとともに、複数のウェハの膜厚分布を均一に形成可能な成膜用冶具及び常圧気相成長装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ウェハが移載ロボットによって水平方向から受け渡されて載置され、搬送手段で搬送されて前記載置したウェハに反応ガスを吹き付けて成膜する成膜用冶具であって、上面から下面にかけて貫通する開口部が形成された基材と、前記基材の開口部を閉止可能に設置するとともに、少なくとも受け渡し時に上面に前記ウェハが載置され、搬送時に前記開口部を閉止する閉止部材と、前記閉止部材を上下動させる3本のウェハリフトピンを有し、これら3本のウェハリフトピンで前記基材の上面に対して前記閉止部材の上面が所定の高さとなるように前記閉止部材を上昇させ、この上昇状態で、前記閉止部材の上面に対して、前記移載ロボットを水平方向に移動させて前記ウェハを載置又は回収する一方、前記閉止部材を前記3本のウェハリフトピンで下降させた時に前記基材の開口部を前記閉止部材で閉止するリフトアップ部と、を備え、前記3本のウェハリフトピンは、それぞれピン固定部の上面に突出して設けられたピン土台と、該ピン土台に取り付けられて該ピン土台よりも小径のピン本体とを有し、前記閉止部材の下面に前記3本のウェハリフトピンのそれぞれの前記ピン本体上端が嵌り込む嵌合用凹部が3つ形成され、前記ウェハの前記閉止部材への水平方向からの受け渡し時、前記3つの嵌合用凹部に前記3本のウェハリフトピンのそれぞれの前記ピン本体上端が嵌り込んで、前記閉止部材が前記3本のウェハリフトピンで保持されていることを特徴とする。
【0015】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記基材の開口部の周囲上面側に前記ウェハを保持する保持用凹部が形成されていることを特徴する。
【0016】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の構成に加え、前記基材の開口部は、前記保持用凹部に連続して前記上面に拡がるように傾斜する傾斜面が形成される一方、前記閉止部材の外周面にテーパが形成されていることを特徴とする。
【0017】
また、請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の構成に加え、前記基材の開口部は、前記保持用凹部に連続して段付部が形成される一方、前記閉止部材の外周面に前記段付部と同形状の段部が形成されていることを特徴とする。
【0018】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の成膜用冶具が複数設置され、これらの成膜用冶具にそれぞれウェハを載置して水平方向に順次搬送する搬送装置と、前記搬送装置によって順次搬送される前記ウェハに反応ガスを吹き付けて成膜するガスヘッドと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載の発明によれば、基材の上面から底面にかけて貫通する開口部が形成され、この開口部に閉止可能に閉止部材が設置され、この閉止部材に少なくとも受け渡し時に上面にウェハが載置され、搬送時に開口部を閉止することにより、ウェハが載置されずに搬送手段によってガス供給部に搬送された場合でも、基材の開口部が閉止部材によって閉止されている。
【0020】
そのため、ガス供給部から供給された反応ガスが下側面に達することがなくなるので、下側面にパーティクルが発生するのを未然に防止することができる。また、反応ガスが搬送手段等に入り込んで全体の気流が乱れるのを防止することができる。そのため、複数のウェハの膜厚分布を均一に形成することが可能になる。
【0022】
また、請求項2に記載の発明によれば、基材の開口部の周囲上面側にウェハを保持する保持用凹部が形成されているので、ウェハを確実に保持することができる。
【0023】
また、請求項3に記載の発明によれば、基材の開口部に上面側に拡がるように傾斜する傾斜面が形成される一方、閉止部材の外周面にテーパが形成されているので、基材の開口部に閉止部材が嵌り込み、開口部を確実に閉止することができる。
【0024】
また、請求項4に記載の発明によれば、基材の開口部に段付部が形成される一方、閉止部材の外周面にその段付部と同形状の段部が形成されているので、基材の開口部に閉止部材が嵌り込み、開口部を確実に閉止することができる。
【0025】
また、請求項5に記載の発明によれば、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の成膜用冶具が複数設置され、これらの成膜用冶具にそれぞれウェハを載置して搬送装置により水平方向に順次搬送し、これら搬送されるウェハにガス供給部から反応ガスを吹き付けて成膜することにより、パーティクルの発生を未然に防止するとともに、複数のウェハの膜厚分布を均一に形成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の第1実施形態の成膜用冶具を適用した常圧気相成長装置を示すシステム構成図である。
【
図2】
図1のリフトアップ部の概略構成を示す部分断面構成図である。
【
図3】
図1のリフトアップ部へのウェハの受け渡しを示す概略説明図である。
【
図4】
図2の成膜用冶具の閉止部材が閉止した状態を示す概略断面図である。
【
図5】第1実施形態の成膜用冶具の具体的な構成を示す平面図である。
【
図6】
図5の成膜用冶具の閉止部材でウェハをリフトアップした状態を示す部分断面構成図である。
【
図7】本発明の第2実施形態の成膜用冶具を適用したリフトアップ部の概略構成を示す部分断面構成図である。
【
図8】
図7の成膜用冶具の閉止部材が閉止した状態を示す概略断面図である。
【
図9】従来の成膜用冶具を適用したリフトアップ部の概略構成を示す部分断面構成図である。
【
図10】
図9の成膜用冶具を示す概略断面図である。
【
図11】従来の成膜用冶具を用いて順次成膜したウェハ番号と、膜厚分布及び膜厚との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0028】
[第1実施形態]
図1~
図6には、本発明の第1実施形態を示す。
図1は、本発明の第1実施形態の成膜用冶具を適用した常圧気相成長装置を示すシステム構成図である。
図2は、
図1のリフトアップ部の概略構成を示す部分断面構成図である。
図3は、
図1のリフトアップ部へのウェハの受け渡しを示す概略説明図である。
図4は、
図2の成膜用冶具の閉止部材が閉止した状態を示す概略断面図である。
図5は、第1実施形態の成膜用冶具の具体的な構成を示す平面図である。
図6は、
図5の成膜用冶具の閉止部材でウェハをリフトアップした状態を示す部分断面構成図である。
【0029】
なお、以下の実施形態では、従来の構成と同一の部分には、同一の符号を用いて説明する。
【0030】
本実施形態の常圧気相成長装置10は、
図1に示すように搬送手段としての複数の搬送ローラ11と、加熱手段としてのヒータ12と、ガス供給部13と、を備える。
【0031】
複数の搬送ローラ11には、例えばセラミックスローラが用いられる。これらの搬送ローラ11上には、成膜用冶具を構成するウェハトレー20が載置されて順次搬送される。本実施形態では、搬送ローラ11上に12枚のウェハトレー20が載置されて順次搬送される。
【0032】
なお、本実施形態では、搬送手段としての複数の搬送ローラ11を用いたが、これ以外に、例えば離間して配置された一対のプーリに無端状のコンベアを回転可能に巻き掛けて構成したものでもよい。
【0033】
ヒータ12は、複数の搬送ローラ11の下方に配置されている。ヒータ12の加熱温度は、例えばウェハトレー20が430℃程度になるように500~600℃程度に設定されている。したがって、ヒータ12は、ウェハトレー20上のウェハ2を均一に目的温度まで上昇させる。
【0034】
ガス供給部13は、複数の搬送ローラ11により搬送され、ヒータ12により加熱されたウェハ2に反応ガスを吹き付けて成膜する。具体的には、ガス供給部13は、3つのディスパージョンヘッド14と、これら3つのディスパージョンヘッド14にそれぞれ連結された排出管15と、これらの排出管15が接続されたマニホールド16と、このマニホールド16から排出されるガスの圧力を自動的に調整する自動圧力調整装置17と、を備える。
【0035】
3つのディスパージョンヘッド14は、複数の搬送ローラ11により搬送され、ヒータ12により加熱されたウェハトレー20上に載置されたウェハ2に反応ガスを吹き付けて成膜するものである。具体的には、ディスパージョンヘッド14は、例えばキャリアガス(N2)、原料ガス(反応ガス)であるSiH4、ドーピング用のガスであるPH3、及びB2H6の混合ガスを供給する第1のガス供給パイプと、キャリアガスN2と、酸化ガスである酸素ガス(O2)と、オゾンガス(O3)との混合ガスを供給する第2のガス供給パイプと、キャリアガス(N2)のみを供給する第3のガス供給パイプと、使用済のガスを排出する排出口が両側に設けられ、さらに、N2ガスをウェハ2に吹き付けて遮断するガスセパレータ部が、同じく上記排出口の外側に配置されている。
【0036】
ウェハトレー20を構成する基材21は、珪化物セラミックス又は炭化物セラミックスからなり、本実施形態では、このようなセラミックスとして、高密度、高熱伝導率の緻密質からなるSiCを用いている。なお、このSiCは、不純物濃度が低いものが望ましい。
【0037】
ウェハトレー20は、
図2乃至
図6に示すように矩形板状に形成され、角部が面取りされている。ウェハトレー20の基材21の上面中央には、ウェハ2を保持するための円形の保持用凹部22が形成されている。この保持用凹部22内には、基材21の上面から底面にかけて貫通する円形の開口部23が形成されている。この開口部23は、保持用凹部22に連続して基材21の上面側に拡がるように傾斜する傾斜面23aが形成されている。この開口部23には、閉止部材24が閉止可能に設置される。
【0038】
閉止部材24は、外周面にテーパ部24aが形成されている。閉止部材24が基材21の開口部23を閉止したときは、閉止部材24のテーパ部24aが開口部23の傾斜面23aに嵌り込み、開口部23を閉止する。閉止部材24は、底面に
図2に示す3本のリフトピン3の上端がそれぞれ嵌り込む嵌合用凹部24bが3つ形成されている。
【0039】
閉止部材24は、嵌合用凹部24bにリフトピン3の上端が嵌り込んだ状態で、リフトピン3の上下動に伴って上下動可能に構成されている。閉止部材24は、ウェハ2の受け渡し時に3本のリフトピン3が上昇して上面にウェハ2を載置する。閉止部材24の上面にウェハ2を載置してリフトピン3が下降して閉止部材24が開口部23を閉止すると、ウェハトレー20の保持用凹部22でウェハ2を保持する。
【0040】
3本のウェハリフトピン3は、シリンダ4を駆動することで、シリンダロッド4a、ピン固定部5を介して上下方向に移動可能に構成されている。これら3本のウェハリフトピン3、シリンダ4、シリンダロッド4a、及びピン固定部5は、リフトアップ部6を構成している。
このリフトアップ部6は、ウェハトレー20とともに、本実施形態の成膜用冶具を構成する。なお、ピン固定部5は、
図5に示すように略三角形状に形成されている。また、各部材の形状及び大小関係は、概ね
図5及び
図6に示す通りである。
【0041】
3本のウェハリフトピン3は、上昇時に成膜されたウェハ2を、閉止部材24を介して上昇させて移載ロボット26によりウェハ2を回収する一方、成膜されていないウェハ2をウェハカセット27から取り出して載置する。
【0042】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0043】
本実施形態の常圧気相成長装置10では、ウェハトレー20は、閉止部材24が開口部23を閉止した状態で、
図1に示すように複数の搬送ローラ11上に順次移載される。これらの搬送ローラ11上には、ウェハトレー20が載置されて順次搬送される。ウェハトレー20は、ヒータ12上を搬送することで、ウェハ2が目的温度まで加熱された後、ガス供給部13まで搬送される。このガス供給部13に搬送されたウェハ2は、ガス供給部13から反応ガスが吹き付けられて成膜する。
【0044】
そして、排気されたガスは、排出管15、マニホールド16、及び自動圧力調整装置17を経て排気されるとともに、ヒータ12の周囲を経て排気される。
【0045】
次に、ガス供給部13によって成膜されたウェハ2を保持したウェハトレー20は、図示しないダウンリフトによって垂直下方に移動された後、ウェハトレー20がトレー返送部により図示しないアップリフトまで搬送される。このアップリフトで上方の定位置へと搬送される。
【0046】
そして、上方の定位置では、シリンダ4が駆動することで、シリンダロッド4a、ピン固定部5を介して
図1及び
図2に示すリフトピン3が上昇する。すると、リフトピン3の上端が閉止部材24の嵌合用凹部24bに嵌り込む。この状態で、リフトピン3がさらに上昇すると、閉止部材24が上昇してウェハ2がリフトアップされる。リフトアップされたウェハ2は、移載ロボット26により回収され、加熱されたウェハ2が図示しない冷却部に移載されて冷却される。
【0047】
その後、移載ロボット26は、ウェハカセット27から成膜されていないウェハ2を取り出してウェハトレー20の閉止部材24の上面に載置する。その後、リフトピン3が下降して閉止部材24が開口部23を閉止すると、ウェハトレー20の保持用凹部22でウェハ2を保持する。このウェハ2を載置したウェハトレー20は、複数の搬送ローラ11に順次移載される。
【0048】
このように本実施形態によれば、基材21の上面から底面にかけて貫通する開口部23が形成され、この開口部23に閉止可能に閉止部材24が設置され、この閉止部材24に少なくとも受け渡し時に上面にウェハ2が載置され、搬送時に開口部23を閉止することにより、ウェハ2が載置されずに搬送ローラ11によってガス供給部13に搬送された場合でも、基材21の開口部23が閉止部材24によって閉止されている。
【0049】
そのため、ガス供給部13から吹き付けられた反応ガスがウェハトレー20の下側面に達することがなくなるので、その下側面にウェハ2の汚染の原因となるパーティクルが発生するのを未然に防止することができる。また、反応ガスが搬送ローラ11等に入り込んで全体の気流が乱れるのを防止することができる。そのため、複数のウェハ2の膜厚分布を均一に形成することが可能になる。
【0050】
さらに、本実施形態によれば、反応ガスがヒータ12に入り込むことがなくなるので、ヒータ12に反応生成物が付着し、さらには堆積することがなくなる。そのため、伝熱性能を低下させることなく、ヒータ12の温度分布が不均一になるのを未然に防止することができる。
【0051】
また、本実施形態によれば、閉止部材24が上下動可能に構成され、下降時に基材21の開口部23を閉止することにより、閉止部材24の構造を簡素化することができる。
【0052】
さらに、本実施形態によれば、基材21の開口部23の周囲上面側にウェハ2を保持する保持用凹部22が形成されているので、ウェハ2を確実に保持することができる。
【0053】
そして、本実施形態によれば、基材21の開口部23に上面側に拡がるように傾斜する傾斜面23aが形成される一方、閉止部材24の外周面にテーパ部24aが形成されているので、基材21の開口部23に閉止部材24が嵌り込み、開口部23を確実に閉止することができる。
【0054】
本実施形態の常圧気相成長装置10によれば、上記の構成のウェハトレー20が複数設置され、これらのウェハトレー20にそれぞれウェハ2を載置して搬送ローラ11により水平方向に順次搬送し、これら搬送されるウェハ2にガス供給部13から反応ガスを吹き付けて成膜することにより、パーティクルの発生を未然に防止するとともに、複数のウェハ2の膜厚分布を均一に形成することが可能になる。
【0055】
[第2実施形態]
図7は、本発明の第2実施形態の成膜用冶具を適用したリフトアップ部の概略構成を示す部分断面構成図である。
図8は、
図7の成膜用冶具の閉止部材が閉止した状態を示す概略断面図である。
【0056】
なお、前記第1実施形態と同一の部分には、同一の符号を付して重複する説明を省略し、異なる構成及び作用について説明する。
【0057】
本実施形態では、主として基材21の開口部23の形状と、閉止部材24の外周面の形状が前記第1実施形態と異なる。具体的には、本実施形態の基材21の開口部23は、
図7及び
図8に示すように保持用凹部22に連続して段付部30が形成されている。また、閉止部材24の外周面には、段付部30と同形状の段部31が形成されている。
【0058】
したがって、本実施形態では、基材21の開口部23に段付部30が形成される一方、閉止部材24の外周面にその段付部30と同形状の段部31が形成されているので、基材21の開口部30に閉止部材24が嵌り込み、開口部23を確実に閉止することができる。その他の構成及び作用は、前記第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0059】
なお、本実施形態では、保持用凹部22と段付部30とで合わせて2段形成した例について説明したが、これに限らずより多く段数を形成してもよい。
【0060】
[他の実施形態]
本発明の各実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これらの実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0061】
例えば、上述した各実施形態では、図示しないが、基材21の開口部23と閉止部材24との間に、Oリングやパッキン等の封止部材を設置することで、基材21の開口部23を密封することが可能になる。そのため、ウェハトレー20の下側面に反応ガスが達することがなくなることから、パーティクルの発生と、全体の気流の乱れをさらに一段と未然に防止することができる。
【0062】
また、上記各実施形態では、常圧気相成長装置10用の成膜用冶具について説明したが、これに限らず、それ以外の半導体製造装置のための冶具、例えばPVD(Physical Vapor Deposition)装置用冶具、イオンプレーティング用冶具、エピタキシャル成長用冶具にも適用することができる。
【0063】
さらに、上記各実施形態では、閉止部材24をブロック状に形成した例について説明したが、これに限らず基材21の開口部23を閉止する閉止板に形成したものでもよい。このように閉止部材24を板状に形成した場合には、閉止部材24を極めて容易に製造することが可能になる。
【符号の説明】
【0064】
1 ウェハトレー
1a 保持用凹部
1b リフトピン挿通孔
2 ウェハ
3 ウェハリフトピン
4 シリンダ
4a シリンダロッド
5 ピン固定部
6 リフトアップ部
10 常圧気相成長装置
11 搬送ローラ(搬送手段)
12 ヒータ(加熱手段)
13 ガス供給部
14 ディスパージョンヘッド
15 排出管
16 マニホールド
17 自動圧力調整装置
20 ウェハトレー(成膜用冶具)
21 基材
22 保持用凹部
23 開口部
23a 傾斜面
24 閉止部材
24a テーパ部
24b 嵌合用凹部
26 移載ロボット
27 ウェハカセット
30 段付部
31 段部