(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】シートスライドアジャスタ
(51)【国際特許分類】
B60N 2/07 20060101AFI20231120BHJP
【FI】
B60N2/07
(21)【出願番号】P 2019141841
(22)【出願日】2019-07-31
【審査請求日】2022-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000109738
【氏名又は名称】デルタ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101742
【氏名又は名称】麦島 隆
(72)【発明者】
【氏名】梅崎 幾世紀
(72)【発明者】
【氏名】藤田 悦則
【審査官】内山 隆史
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-058576(JP,A)
【文献】特開2014-159197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 - 2/90
F16C 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロアレールと、
前記ロアレールにスライド可能に設けられ、シートフレームが連結されるアッパーレールと、
前記ロアレール及び前記アッパーレール間に両者の摺動抵抗を低減するため、前記ロアレールの長手方向に直交する幅方向中心を挟んだ左右にそれぞれ設けられる摺動抵抗低減部材と
を有するシートスライドアジャスタであって、
前記摺動抵抗低減部材が、
前記ロアレールと前記アッパーレールの各縦壁部間に位置する第1保持壁部と、前記ロアレールと前記アッパーレールの各底壁部間に位置し、幅方向に沿った断面で、前記第1保持壁部の下部から前記幅方向中心に向かって延びる第2保持壁部とを備えた断面略L字状のリテーナーと、
前記第1保持壁部に支持され、前記ロアレールと前記アッパーレールの各縦壁部に当接可能な第1ボール部材と、
前記第2保持壁部に支持され、前記ロアレールと前記アッパーレールの各底壁部に当接可能な第2ボール部材と
を有し、
前記第1ボール部材が、前記ロアレールの上壁部及び底壁部のいずれからも離間した位置に支持され、前記第2ボール部材が、前記ロアレールの縦壁部から幅方向中心に向かって離間した位置に支持され
、
前記第1ボール部材が、前記第2ボール部材よりも大径であることを特徴とするシートスライドアジャスタ。
【請求項2】
前記第1ボール部材及び前記第2ボール部材が、それぞれ前記長手方向に沿って複数設けられている請求項
1記載のシートスライドアジャスタ。
【請求項3】
前記摺動抵抗低減部材は、前記長手方向に所定間隔をおいて複数設けられ、
後部寄りに配置される前記リテーナーに支持される前記第2ボール部材の配設数が、前部寄りに配置される前記リテーナーに支持される前記第2ボール部材の配設数よりも多い請求項1
又は2記載のシートスライドアジャスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、航空機、列車、船舶、バスなどの乗物用シートにおいて用いられるシートスライドアジャスタに関する。
【背景技術】
【0002】
シートスライドアジャスタは、乗物のフロアに取り付けられるロアレールと、該ロアレールに対して摺動可能に設けられ、シートフレームに連結されるアッパーレールとを備えてなる。シートスライドアジャスタには、ロアレールに対するアッパーレールの摺動抵抗を低減させるため、両者間に、摺動抵抗低減部材が設けられている。摺動抵抗低減部材は、例えば特許文献1に示されているように、ロアレール及びアッパーレールの前方付近及び後方付近のそれぞれに配設されており、略長方形で平板な合成樹脂等からなるリテーナーと、このリテーナーに回転可能に支持される鋼球等のボール部材とを有して構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の摺動抵抗低減部材は、略長方形のリテーナーの上部及び下部のそれぞれに、ロアレールの長手方向に沿って2個ずつ、計4個のボール部材を備えている。リテーナーの上部に設けられるボール部材は、ロアレールの縦壁部と上壁部との境界の角部、リテーナーの下部に設けられるボール部材は、ロアレールの縦壁部と底壁部との境界の角部に対応して配設されている。すなわち、各ボール部材はロアレールのうち剛性の高い部分に対応して配設されている。これに対し、かかるボール部材は、アッパーレールにおいては角部ではなく、縦壁部上方の面、あるいは、ロアレールの下部の角部に対向するように傾斜させた傾斜面が対応している。従って、ボール部材は、ロアレールでは剛性の高い部位に当接し、アッパーレールでは相対的に剛性の低い部位に当接することになり、使用により、アッパーレールにおけるボール部材に局部的な変形が生じ、それが両者間のガタつきや異音の発生の要因となる場合がある。これを解決する手段としてアッパーレール等を形成する素材の板厚を増加して剛性を高めることも考えられるが、その場合には、シートスライドアジャスタの重量が増す。
【0005】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、アッパーレール及びロアレール間におけるガタつきや異音を低減し、より円滑に摺動させることができ、さらには、アッパーレールやロアレールを形成する素材の板厚を低減し軽量化にも貢献できるシートスライドアジャスタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のシートスライドアジャスタは、
ロアレールと、
前記ロアレールにスライド可能に設けられ、シートフレームが連結されるアッパーレールと、
前記ロアレール及び前記アッパーレール間に両者の摺動抵抗を低減するため、前記ロアレールの長手方向に直交する幅方向中心を挟んだ左右にそれぞれ設けられる摺動抵抗低減部材と
を有するシートスライドアジャスタであって、
前記摺動抵抗低減部材が、
前記ロアレールと前記アッパーレールの各縦壁部間に位置する第1保持壁部と、前記ロアレールと前記アッパーレールの各底壁部間に位置し、幅方向に沿った断面で、前記第1保持壁部の下部から前記幅方向中心に向かって延びる第2保持壁部とを備えた断面略L字状のリテーナーと、
前記第1保持壁部に支持され、前記ロアレールと前記アッパーレールの各縦壁部に当接可能な第1ボール部材と、
前記第2保持壁部に支持され、前記ロアレールと前記アッパーレールの各底壁部に当接可能な第2ボール部材と
を有し、
前記第1ボール部材が、前記ロアレールの上壁部及び底壁部のいずれからも離間した位置に支持され、前記第2ボール部材が、前記ロアレールの縦壁部から幅方向中心に向かって離間した位置に支持されていることを特徴とする。
【0007】
前記第1ボール部材が、前記第2ボール部材よりも大径であることが好ましい。
前記第1ボール部材及び前記第2ボール部材が、それぞれ前記長手方向に沿って複数設けられていることが好ましい。
【0008】
前記摺動抵抗低減部材は、前記長手方向に所定間隔をおいて複数設けられ、
後部寄りに配置される前記リテーナーに支持される前記第2ボール部材の配設数が、前部寄りに配置される前記リテーナーに支持される前記第2ボール部材の配設数よりも多いことが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のシートスライドアジャスタは、摺動抵抗低減部材が、ロアレールとアッパーレールの各縦壁部間と各底壁部間に位置する第1保持壁部と第2保持壁部を有する断面略L字状に形成されたリテーナーを有し、第1保持壁部におけるロアレールの上壁部及び底壁部のいずれからも離間した中途部に第1ボール部材が設けられ、第2保持壁部におけるロアレールの縦壁部から幅方向中心に向かって離間した位置に第2ボール部材が設けられている。すなわち、第1ボール部材は、ロアレールの縦壁部において、上壁部や底壁部との角部という剛性の高い部位ではなく、角部よりも相対的に剛性の低い位置に配設されている。第2ボール部材も、剛性の高い角部に接触するのではなく、幅方向中心寄りに配設されており、かつ、アッパーレールの底壁部を支えている。これにより、本発明では、従来のボール部材を角部に配置する場合のようにアッパーレールに局所的な変形が生じることがなく、しかも、ボール部材を剛性の高い角部に配置していないにも拘わらず、断面略L字状のリテーナーとそれに保持された第1及び第2ボール部材が一体になって所定の剛性を発揮する。このため、外力入力時には、摺動抵抗低減部材が、ロアレール及びアッパーレールの横方向の剛性を確保すると共に、上下方向では第2ボール部材が力を受けることになり、摺動抵抗低減部材の配設場所に直接対応していない、アッパーレールの側壁部や、ロアレールの底壁部のうち中央範囲等における撓みによって力を受ける。それにより、アッパーレール及びロアレール間のガタつきが解消され、摺動時の円滑性が確保され、異音を防止できる。また、第1ボール部材を第2ボール部材よりも大径とすることで、横方向の剛性をより高く保つことができ好ましい。
【0010】
従って、上記の断面略L字状の摺動抵抗低減部材を有することにより、ロアレール又はアッパーレールを構成する素材としてより肉厚の薄いものを用いたとしても、摺動性の大きな低下を抑制でき、軽量化にも貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の一の実施形態に係るシートスライドアジャスタを左右一対配置してシートフレームを支持した状態を示した斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1のシートフレームを取り外して、左右一対のシートスライドアジャスタを示した斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1~
図3で用いたシートスライドアジャスタの一方を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4のシートスライドアジャスタの分解斜視図である。
【
図6】
図6は、
図4のシートスライドアジャスタの側面図である。
【
図8】
図8(a)は、ロアレール及びアッパーレールに横方向への負荷がかかる前の状態の前部側摺動抵抗低減部材における第1及び第2ボール部材の動き示す図であり、
図8(b)は、ロアレール及びアッパーレールに横方向への負荷がかかった時の前部側摺動抵抗低減部材における第1及び第2ボール部材の動き示す図であり、
図8(c)は、ロアレール及びアッパーレールに横方向への負荷がかかる前の状態の後部側摺動抵抗低減部材における第1及び第2ボール部材の動き示す図であり、
図8(s)は、ロアレール及びアッパーレールに横方向への負荷がかかった時の後部側摺動抵抗低減部材における第1及び第2ボール部材の動き示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に示した実施形態に基づき、本発明をさらに詳細に説明する。
図1~
図3に示すように、シートフレームSは、車体の幅方向に所定間隔をおいて左右一対配設される本実施形態のシートスライドアジャスタ10,10によって前後にスライド調整可能に設けられている。シートクッションフレームS1の前縁部の下方には、左右に配置されるシートスライドアジャスタ10,10間に跨がるスライドバー17が配設されている。このスライドバー17は、後述する左右のシートスライドアジャスタ10,10に設けられるロック機構16,16のリリースレバー161,161同士を連結するもので、人が該スライドバー17を操作することでロック解除がなされる構造となっている。
【0013】
以下の説明では、
図4~
図8を中心として、一方のシートスライドアジャスタ10のみを示してその詳細構造を説明するが、
図1~
図3に示した左右のシートスライドアジャスタ10,10はいずれも同じ構造である。
【0014】
本実施形態のシートスライドアジャスタ10は、ロアレール11と、ロアレール11の長手方向にスライド可能なアッパーレール12等を有して構成され、ロアレール11が車体フロアに固定され、アッパーレール12にシートフレームSのシートクッションフレームS1のサイドフレームS11が連結される。
【0015】
ロアレール11は、底壁部11aと、底壁部11aの両側から立ち上がって互いに対向する一対の縦壁部11b,11bと、各縦壁部11b,11bの上縁から互いに内方に曲げられていると共に、対向縁同士が所定間隔離間している一対の上壁部11c,11cと、上壁部11c,11cの内端縁から下方に曲成された内壁部11d,11dを有し、長手方向に直交する幅方向断面で上面開口の略コ字状に形成されている(
図4、
図5及び
図7(a),(b)参照)。
【0016】
アッパーレール12は、上壁部12aと、上壁部12aの両側から下方に曲げられて互いに対向する一対の側壁部12b,12bとを有する、幅方向断面が下面開口の略コ字状に形成されている。また、各側壁部12b,12bの下端部からは、外方に所定幅略水平方向に折り曲げられた底壁部12c,12cがそれぞれ形成され、さらに各底壁部12c,12cの外縁からは上方に折り返される縦壁部12d,12dが形成されている(
図4、
図5及び
図7(a),(b)参照)。そして、アッパーレール12の各縦壁部12d,12dが、ロアレール11の各縦壁部11b,11bにそれぞれ対向するように、該アッパーレール12の各縦壁部12d,12dを、該ロアレール11の各縦壁部11b,11bと各内壁部11d,11dとの間に位置させて配設される(
図7(a),(b)参照)。
【0017】
ロアレール11とアッパーレール12との間には、
図5、
図6及び
図7(a),(b)に示したように、摺動抵抗低減部材14,15が介在される。摺動抵抗低減部材14,15は、好ましくは、ロアレール11の長手方向に所定間隔をおいて複数設けられ、本実施形態では、ロアレール11の前部寄りと後部寄りとに設けられている。
【0018】
前部寄りに配置される摺動抵抗低減部材(以下、「前部側摺動抵抗低減部材)14,14は、
図7(a)に示したように、ロアレール11の幅方向中心Zを挟んで略対向して、ロアレール11の左右の縦壁部11b,11bのそれぞれに対応して一対設けられている。
図5及び
図7(a),(b)に示したように、前部側摺動抵抗低減部材14,14は、幅方向に沿った断面で略L字状であると共に、ロアレール11の長手方向に沿った長さが数cm(シートスライドアジャスタ10のサイズにもよるが通常2~5cm程度)のリテーナー(前部側リテーナー)141,141を有している。断面略L字状の前部側リテーナー141,141は、縦方向に延びる第1保持壁部1411,1411と、第1保持壁部1411,1411の下部からロアレール11の幅方向中心に向かって横方向に延びる第2保持壁部1412,1412とを有している。前部側摺動抵抗低減部材14,14は、好ましくは合成樹脂から形成され、第1保持壁部1411,1411が第2保持壁部1412,1412に対して相対的に撓む可撓性を有している。
【0019】
前部側リテーナー141,141は、第1保持壁部1411,1411をロアレール11の各縦壁部11b,11bとアッパーレール12の各縦壁部12d,12dとの間に位置させ、第2保持壁部1412,1412をロアレール11の底壁部11aとアッパーレール12の底壁部12c,12cとの間に位置させて配設される。
【0020】
第1保持壁部1411,1411には、ボール部材保持部1411a,1411aが1以上形成されている。本実施形態では、ロアレール11の長手方向に沿って2箇所にボール部材保持部1411a,1411aが形成されており、そのそれぞれに第1ボール部材142,142が回転可能に配設されている。第1保持壁部1411,1411は、ボール部材保持部1411a,1411aが形成される部位付近が厚み方向に膨出しており、ボール部材保持部1411a,1411aは、この膨出している部分に厚み方向に貫通された孔からなる。この孔は、各開口端の直径が第1ボール部材142,142の直径より小さく、第1ボール部材142,142が各開口端から外部に臨み、ロアレール11の各縦壁部11b,11bとアッパーレール12の各縦壁部12d,12dに接触して回転可能となっている。
【0021】
第2保持壁部1412,1412にもボール部材保持部1412a,1412aが1以上形成されている。ボール部材保持部1412a.1412aは、本実施形態では、ロアレール11の長手方向に沿って2箇所に形成されている。そして、この第2保持壁部1412,1412のボール部材保持部1412a,1412aには、第2ボール部材143,143が回転可能に配設されている。第2保持壁部1412,1412も、ボール部材保持部1412a,1412aが形成される部位付近が厚み方向に膨出しており、ボール部材保持部1412a,1412aは、この膨出している部分に厚み方向に貫通された孔からなる。この孔は、各開口端の直径が第2ボール部材143,143の直径より小さく、第2ボール部材143,143が各開口端から外部に臨み、ロアレール11の底壁部11a及びアッパーレール12の各底壁部12c,12cに接触して回転可能となっている。
【0022】
ここで、前部側摺動抵抗低減部材14,14は、
図7(a)に示した幅方向断面で見て、第1保持壁部1411,1411に配設される第1ボール部材142,142が、ロアレール11の縦壁部11b,11bの範囲の中で、ロアレール11の上壁部11c,11c及び底壁部11aのいずれからも離間した位置で支持され、かつ、第2ボール部材143,143が、ロアレール11の縦壁部11b,11bからそれぞれ幅方向中心Zに向かって離間した位置で支持されている。換言すれば、断面略L字状のリテーナー141,141の第1保持壁部1411,1411及び第2保持壁部1412,1412、並びに、それらに形成されるボール部材保持部1411a,1411a,1412a,1412aは、ロアレール11及びアッパーレール12間に配設した際に、このような位置関係となる大きさで形成される。
【0023】
なお、第1ボール部材142,142の配設位置となるロアレール11の縦壁部11b,11bの範囲の中で、ロアレール11の上壁部11c,11c及び底壁部11aのいずれからも離間した中途部11b1,11b1は外方に膨出して形成され、これに対応するアッパーレール12の縦壁部12d,12dの中途部12d1,12d1は内方に膨出して形成されている。これにより、ボール部材142,142が所定位置に配置される。また、第1ボール部材142,142が、ロアレール11の縦壁部11bにおいて外方に膨出している中途部11b1,11b1及びアッパーレール12の縦壁部12dにおいて内方に膨出している中途部12d1,12d1に挟まれて配設されるため、該第1ボール部材142,142によりロアレール11及びアッパーレール12の横方向の剛性が補われる。この横方向の剛性をより高めるためには、第1ボール部材142,142の直径が、第2ボール部材の直径よりも大きいことが好ましい。
【0024】
後部寄りに配置される摺動抵抗低減部材(以下、「後部側摺動抵抗低減部材)15,15も、
図7(b)に示したように、前部側摺動抵抗低減部材14,14と同様、ロアレール11の幅方向中心を挟んで略対向して、ロアレール11の左右の縦壁部11b,11bのそれぞれに対応して一対設けられている。後部側摺動抵抗低減部材15,15は、前部側摺動抵抗低減部材14,14とほぼ同様の構造を有しており、幅方向断面が略L字状で、ロアレール11の長手方向に沿った長さも同様のリテーナー(後部側リテーナー)151,151を有し、縦方向に延びる第1保持壁部1511,1511と、第1保持壁部1511,1511の下部からロアレール11の幅方向中心Zに向かって横方向に延びる第2保持壁部1512,1512とを有している。また、好ましくは合成樹脂から形成され、可撓性を有し、第1保持壁部1511,1511が第2保持壁部1512,1512に対して相対的に撓むようになっていることも同様である。
【0025】
後部側リテーナー151、151も、第1保持壁部1511,1511をロアレール11の各縦壁部11b,11bとアッパーレール12の各縦壁部12d,12dとの間に位置させ、第2保持壁部1512,1512をロアレール11の底壁部11aとアッパーレール12の底壁部12c,12cとの間に位置させて配設される。
【0026】
後部側リテーナー151,151の第1保持壁部1511,1511には、ボール部材保持部1511a,1511aが1以上形成され、本実施形態では、ロアレール11の長手方向に沿って2箇所に形成されている。そして、そのそれぞれに、ロアレール11の各縦壁部11b,11bとアッパーレール12の各縦壁部12d,12dに接触して回転可能に第1ボール部材152,152が配設されている。また、第2保持壁部1512,1512にもボール部材保持部1512a,1512aが1以上形成されている。
【0027】
また、後部側摺動抵抗低減部材15,15は、
図7(b)に示した幅方向断面で見て、第1保持壁部1511,1511に配設される第1ボール部材152,152が、ロアレール11の縦壁部11b,11bの範囲の中で、ロアレール11の上壁部11c,11c及び底壁部11aのいずれからも離間した位置で支持され、かつ、第2ボール部材153,153が、ロアレール11の縦壁部11b,11bからそれぞれ幅方向中心Zに向かって離間した位置で支持されている。すなわち、断面略L字状のリテーナー151,151の第1保持壁部1511,1511及び第2保持壁部1512,1512、並びに、それらに形成されるボール部材保持部1511a,1511a,1512a,1512aが、ロアレール11及びアッパーレール12間に配設した際に、このような位置関係となる大きさで形成されている。これらの点も前部側摺動抵抗低減部材14,14と同様である。
また、第1ボール部材152,152が、ロアレール11の縦壁部11bにおいて外方に膨出している中途部11b1,11b1及びアッパーレール12の縦壁部12dにおいて内方に膨出している中途部12d1,12d1に挟まれて配設されることも同様であり、断面略L字状のリテーナー151,151を介して第1ボール部材152,152及び第2ボール部材153,153が支持されていることで、ロアレール11及びアッパーレール12の横方向の剛性を高める。
【0028】
但し、
図5及び
図7(b)に示したように、後部側リテーナー151,151の第2保持壁部1512,1512のボール部材保持部1512a,1512aは、本実施形態では3箇所に形成されている。具体的には、ロアレール11の縦壁部11b,11bからロアレール11の幅方向中心Zに向かって所定距離離間した位置にまずロアレール11の長手方向に沿って2箇所に形成されていると共に、さらにロアレール11の幅方向中心寄りに1箇所形成されている。なお、これに対応して、後部側リテーナー151,151の第2保持壁部1512,1512は、平面視で略三角形で、その頂点側がロアレール11の幅方向中心Zに向かう形状となっている。
【0029】
また、第2ボール部材153,153は、第2保持壁部1512,1512に形成されるこれら3箇所のボール部材保持部1512a,1512aのそれぞれに配設され、計3個配設される。シートスライドアジャスタ10にかかる荷重は、前部寄りよりも後部寄りの方が、10~30%程度大きい。そのため、後部側リテーナー151,151の第2保持壁部1512,1512に配設される第2ボール部材153,153の数は、前部側リテーナー141,141に配設される第2ボール部材143,143よりも多くし、支持圧を分散することが好ましい。
【0030】
本実施形態のシートスライドアジャスタ10は、上記の摺動抵抗低減部材14,15を有している。前部側リテーナー141,141及び後部側リテーナー151,151のいずれも断面略L字状で、それぞれ、第1ボール部材142,142,152,152が配設される第1保持壁部1411,1411,1511,1511と、第2ボール部材143,143,153,153が配設される第2保持壁部1412,1412,1512,1512を有している。そして、第2保持壁部1412,1412,1512,1512が、ロアレール11の底壁部11aとアッパーレール12の底壁部12c,12cとの間に配設され、第1保持壁部1411,1411,1511,1511が、ロアレール11の各縦壁部11b,11bとアッパーレール12の各縦壁部12d,12dとの間に配設されている。しかも、第1ボール部材142,142,152,152が、ロアレール11の縦壁部11b,11bの範囲の中で、ロアレール11の上壁部11c,11c及び底壁部11aのいずれからも離間した位置で支持され、かつ、第2ボール部材143,143,153,153が、ロアレール11の縦壁部11b,11bからそれぞれ幅方向中心Zに向かって離間した位置で支持されている。すなわち、ロアレール11の縦壁部11b,11bと上壁部11c,11cとの角部、及び、ロアレール11の縦壁部11b,11bと底壁部11aとの角部といった剛性の高い部位に対応させずに、それらの中間である剛性の低い部位に第1ボール部材142,142,152,152を配設している。また、第2ボール部材143,143,153,153は、それぞれ断面略L字状のリテーナー141,141,151,151により第1ボール部材142,142,152,152と接続している。
【0031】
図8(a),(c)に示した通常の着座状態から、
図8(b),(d)に示したように、姿勢変化、振動入力等により、上下方向や横方向から外力が作用した場合には、断面略L字状で、幅方向中心Zを挟んで対称配置されるリテーナー141,141,151,151とそれに保持された第1ボール部材142,142,152,152及び第2ボール部材143,143,153,153が一体になって所定の剛性を発揮する。これにより、ロアレール11及びアッパーレール12の横方向への撓みを抑制して、それらの横方向の剛性を確保する。特に、上記のように第1ボール部材142,142,152,152の直径が第2ボール部材143,143,153,153の直径よりも大きいことにより、かかる横方向の剛性をより高く確保できる。上下方向では第2ボール部材143,143,153,153が力を受けることになる。この結果、摺動抵抗低減部材14,15の配設場所に直接対応していない、アッパーレール12の側壁部12b,12bや、ロアレール11の底壁部11aのうち中央範囲における撓みによって力を受ける。それにより、アッパーレール12及びロアレール11間のガタつきが解消され、摺動時の円滑性が確保され、異音を防止できる。
【0032】
本実施形態の摺動抵抗低減部材14,15を用いることにより、外力負荷時のガタつきや異音の発生が抑制され、摺動時も第1ボール部材142,142,152,152及び第2ボール部材143,143,153,153がアッパーレール12の縦壁部12d,12d及び底壁部12c,12cの各面に対して転動し、高い摺動性を確保できる構成である。すなわち、ロアレール11及びアッパーレール12の剛性を補う機能を有しており、ロアレール11及びアッパーレール12を構成する素材として、同じ材料でもより薄いものを用いることが可能となり、シートスライドアジャスタ10の軽量化に貢献できる。
【0033】
なお、
図5において、符号16はロック機構である。このロック機構16は、リリースレバー161とロック部材162とを備えてなる。リリースレバー161は、所定の長さを有し、ロアレール11及びアッパーレール12の内側に配設される。リリースレバー161は、その前端部161aがアッパーレール12の前端から突出し、この前端部161aに人が操作する上記のスライドレバー17が連結される。リリースレバー161は、長手方向中途部を中心として、前端部161aが上下に変位すると、後端部161bが逆方向に変位する。そのため、後端部にロアレール11に形成した被係合部11e(本実施形態では、内壁部11d,11dに櫛歯状に設けた複数の突片から構成される)に係合する係合部162b(本実施形態では、突片が挿入される孔から構成される)を備えたロック部材162を連係させるようにすれば、スライドレバー17を上方に持ち上げてリリースレバー161の前端部161aを上方向に変位させると、ロック部材162の係合部162bが被係合部11eから離脱してロック解除状態となり、前後へのスライド移動が可能となる。リリースレバー161が逆方向に変位すると、係合部162bが被係合部11eに係合してロック状態となるが、この逆方向への動きは、リリースレバー161を係合方向に付勢する板ばね部材163の弾性力によってなされる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明のシートスライドアジャスタは、上記実施形態で説明したように、自動車において用いられることが好適であるが、航空機、列車、船舶、バスなどの各種の乗物用シートにおいても適用可能である。
【符号の説明】
【0035】
10 シートスライドアジャスタ
11 ロアレール
11a 底壁部
11b 縦壁部
11c 上壁部
12 アッパーレール
12a 上壁部
12b 側壁部
12c 底壁部
12d 縦壁部
14 摺動抵抗低減部材(前部側摺動抵抗低減部材)
141 リテーナー(前部側リテーナー)
1411 第1保持壁部
1411a ボール部材保持部
1412 第2保持壁部
1412a ボール部材保持部
142 第1ボール部材
143 第2ボール部材
15 摺動抵抗低減部材(後部側摺動抵抗低減部材)
151 リテーナー(後部側リテーナー)
1511 第1保持壁部
1511a ボール部材保持部
1512 第2保持壁部
1512a ボール部材保持部
152 第1ボール部材
153 第2ボール部材
16 ロック機構
17 スライドレバー