(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】シート状態切換機構およびそれを備えたシート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/20 20060101AFI20231120BHJP
B60N 2/22 20060101ALI20231120BHJP
B60N 2/08 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
B60N2/20
B60N2/22
B60N2/08
(21)【出願番号】P 2019146681
(22)【出願日】2019-08-08
【審査請求日】2022-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000109738
【氏名又は名称】デルタ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】池田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】西田 陽治
【審査官】近藤 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特許第6318611(JP,B2)
【文献】国際公開第2013/027798(WO,A1)
【文献】特開2010-012810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/20
B60N 2/22
B60N 2/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートの前後方向に傾倒可能なシートバックを所定の傾倒角度であるウォークイン位置にロックするウォークイン状態と前記ロックが解除されて前記シートバックが最前傾の位置まで傾倒可能なリクライニング状態とを切り換えることが可能なシート状態切換機構であって、
前記シートバックに固定され、前記シートバックとともに傾倒可能な可動ブラケットと、
ウォークイン操作により前記可動ブラケットが傾倒したときに前記可動ブラケットを前記シートバックが前記ウォークイン位置になる所定のウォークインロック位置にロックするロック部材と、
リクライニング操作によりリクライニング操作力を受けたときに前記ロック部材のロックを解除してリクライニング状態に切り換える解除部と
を備え
、
前記可動ブラケットは、当該可動ブラケットが傾倒したときに前記ロック部材に当接する当接部を有し、
前記ロック部材は、前記解除部が前記リクライニング操作力を受けないときに前記当接部に係合して前記可動ブラケットを前記ウォークインロック位置にロックする係合部と、前記解除部が前記リクライニング操作力を受けたときに前記当接部に当接する外周面とを有し、
前記外周面は、前記当接部に当接したときに前記ロック部材がロック解除位置へ向かう方向に前記当接部によって押されるように構成されている
シート状態切換機構。
【請求項2】
前記解除部は、
前記ロック部材に対してロック位置からロック解除位置へ向かう方向に付勢する第1付勢部材と、
前記リクライニング操作力を受ける入力部材であって、前記リクライニング操作力を受けない状態では前記ロック部材をロック位置に保持し、前記リクライニング操作力を受けた状態では前記ロック部材の保持を解除する入力部材と
を備える、
請求項
1に記載のシート状態切換機構。
【請求項3】
前記解除部は、前記入力部材を前記ロック部材の保持を解除する解除位置から前記ロック部材を保持する保持位置に向けて付勢する第2付勢部材をさらに備え、
前記入力部材は、前記リクライニング操作力を受けたときには前記第2付勢部材からの付勢力に抗して、前記保持位置から前記解除位置へ移動するように構成されている、
請求項
2に記載のシート状態切換機構。
【請求項4】
前記ロック部材は、前記解除部が前記リクライニング操作力を受けないときには、前記可動ブラケットを前記ウォークインロック位置にロック可能な位置に配置されている、
請求項1~
3のいずれか1項に記載のシート状態切換機構。
【請求項5】
前記ロック部材は、前記可動ブラケットを前記ウォークインロック位置にロックするときにおいて、前記シートの前後方向へのスライド移動をロックするスライドロック機構のスライドロック状態を解除することが可能な構成を有する、
請求項1~
4のいずれか1項に記載のシート状態切換機構。
【請求項6】
請求項1記載のシート状態切換機構を備えたシートであって、
前記シートバックと、
前記シートバックにおける幅方向両側のうちの一方の側に設けられ、請求項1記載のシート状態切換機構からなるシート状態切換機構と、
前記シートバックにおける幅方向両側のうちの他方の側に設けられた既存のシート状態切換機構であって、前記シートバックを初期の傾倒角度でロックしてリクライニングロック状態にするリクライニングロック機能と、前記リクライニング操作力を受けたときに前記リクライニング状態にするリクライニング機能と、ウォークイン操作力を受けたときに前記シートバックを前記ウォークイン状態にするウォークイン機能とを奏することが可能な構成を有する前記既存のシート状態切換機構と、
前記リクライニング操作力を前記シート状態切換機構および前記既存のシート状態切換機構に伝達するリクライニング操作力伝達部と、
前記ウォークイン操作力を前記既存のシート状態切換機構に伝達するウォークイン操作力伝達部と、
を備えているシート。
【請求項7】
前記リクライニング操作力伝達部は、
前記シートバックにおける幅方向両側のうちの他方の側に設けられ、前記リクライニング操作力が入力されるリクライニング操作力入力部であって、前記既存のシート状態切換機構へ前記リクライニング操作力を伝達することが可能なリクライニング操作力入力部と、
前記リクライニング操作力入力部から前記シート状態切換機構へ前記リクライニング操作力を伝達する伝達部材と
を備える、
請求項
6に記載のシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状態切換機構およびそれを備えたシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用のシートなどでは、シートの前後方向に傾倒可能なシートバックを、所定の傾倒角度であるウォークイン位置にロックするウォークイン状態とシートバックが最前傾の位置まで傾倒可能なリクライニング状態とを切り換えることが可能なシート状態切換機構が種々提案されている。
【0003】
特許文献1記載のシート状態切換機構は、
図14~15に示されるように、シートのシートクッションのフレームに固定されたクッション側フレーム51と、シートバックのフレームに固定され、傾倒軸52aを回転中心として傾倒可能なシートバック側フレーム52と、レバー53と、リンク54と、ストッパ55と、回動部材61とを有する。回動部材61は、シートバック側フレーム52に固定されている。
【0004】
レバー53は、クッション側フレーム51に固定されたピン56に揺動自在に支持されている。レバー53の下端部は、ストラップ59に連結されている。リクライニング操作時にストラップ59が
図14~15の左方向に引っ張られることにより、レバー53が時計回りの方向で揺動する。
【0005】
ストッパ55は、クッション側フレーム51に固定されたピン58を回転中心として上下方向に揺動自在に支持されている。ストッパ55は、図示しないバネによって上方位置に付勢され、上方位置で回動部材61の凹部61aに係合している。ストッパ55に設けられたピン57は、クッション側フレーム51のスリット51aに挿入されて上下方向に案内されている。さらに、ピン57は、レバー53の屈曲した形状のスリット53aに挿入され、レバー53の傾斜位置に応じて上下方向への移動が制限されている。リンク54は、ピン58を回転中心として上下方向に揺動自在に支持されている。リンク54の一方の端部(
図14~15の左側の端部)は、シートのスライドロック機構を解除操作するためのスライドケーブル60に連結されている。リンク54の他方の端部(
図14~15の右側の端部)には、回動部材61が回転したときに回動部材61に設けられたピン62に当たる位置まで突出する突出部54aが設けられている。
【0006】
上記のように構成されたシート状態切換機構では、通常の着座可能なシート状態からウォークイン状態に移行する場合には、シートの肩口などに設けられたウォークイン操作用のレバーなどを操作して図示しないリクライニング装置を操作してシートバックの傾動規制を解除し、
図15に示されるように、シートバック側フレーム52を傾倒させることにより、ストッパ55が回動部材61の凹部61aに係合し、シートバック側フレーム52およびシートバックを所定の傾倒角度であるウォークイン位置にロックする。このとき、リンク54の突出部54aが回動部材61のピン62に押され、リンク54が時計回りに回動してスライドケーブル60を引っ張ることにより、スライドロック機構を解除操作する。
【0007】
ウォークイン状態からリクライニング状態に移行する場合には、ストラップ59を引いてレバー53を時計回りに揺動させることにより、ストッパ55と回動部材61との係合か解除されてリクライニング状態になる。これにより、シートバック側フレーム52およびシートバックをウォークイン位置からさらに傾倒させることが可能になる。このとき、回動部材61のピン62がリンク54の突出部54aを通過して突出部54aを押さなくなることにより、リンク54およびスライドケーブル60が初期位置に戻り、スライドロック機構はロック状態に戻る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1に示されるシート状態切換機構では、ウォークイン状態に移行するときに必要な部材(例えば、操作レバー、操作力伝達部材、リクライニング装置の傾動規制を解除する機構など)、およびウォークイン状態からリクライニング状態に移行するときに必要な部材(例えば、上記のストッパ55、回動部材61、レバー53など)のそれぞれの部材が必要である。そのため、シート状態切換機構の部品点数の低減が難しく、当該機構の構造が複雑になるという問題がある。
【0010】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、少ない部品点数でありながらウォークイン状態とリクライニング状態とを切換えを実現することが可能なシート状態切換機構およびそれを備えたシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明のシート状態切換機構は、シートの前後方向に傾倒可能なシートバックを所定の傾倒角度であるウォークイン位置にロックするウォークイン状態と前記ロックが解除されて前記シートバックが最前傾の位置まで傾倒可能なリクライニング状態とを切り換えることが可能なシート状態切換機構であって、前記シートバックに固定され、前記シートバックとともに傾倒可能な可動ブラケットと、ウォークイン操作により前記可動ブラケットが傾倒したときに前記可動ブラケットを前記シートバックが前記ウォークイン位置になる所定のウォークインロック位置にロックするロック部材と、リクライニング操作によりリクライニング操作力を受けたときに前記ロック部材のロックを解除してリクライニング状態に切り換える解除部(具体的には、入力部材、ねじりコイルバネ(第1付勢部材)、および引張コイルバネ(第2付勢部材)で構成された解除部)とを備え、前記可動ブラケットは、当該可動ブラケットが傾倒したときに前記ロック部材に当接する当接部を有し、前記ロック部材は、前記解除部が前記リクライニング操作力を受けないときに前記当接部に係合して前記可動ブラケットを前記ウォークインロック位置にロックする係合部と、前記解除部が前記リクライニング操作力を受けたときに前記当接部に当接する外周面とを有し、前記外周面は、前記当接部に当接したときに前記ロック部材がロック解除位置へ向かう方向に前記当接部によって押されるように構成されていることを特徴とする。
【0012】
かかる構成では、例えばウォークインレバーの操作によりリクライニングが解除されてシートバックを傾倒する動作だけで、シートバックの可動ブラケット(具体的には可動ブラケットに取り付けられた第1ピン)がロック部材により(具体的にはロック部材が第1ピンに係合することにより)シートバックが所定の傾倒角度であるウォークイン位置になるように所定のウォークインロック位置にロック(すなわち、傾動規制)される。これによってシートバックをウォークイン位置にロックするウォークイン状態に移行することが可能である。したがって、ウォークイン状態へ移行する際にウォークイン操作力を受けてロック部材を操作するための部材が必要なくなり、シート状態切換機構の部品点数を低減することが可能であり、当該機構の構造が簡単になる。
【0013】
一方、例えばリクライニングレバーの操作によりリクライニングが解除された際、その操作力が前記解除部に伝達されると、前記ロック部材のロックを解除して最前傾の位置までリクライニング状態に切り換えることができ、前記シートバックが最前傾の位置まで傾倒可能なリクライニング状態に移行することが可能である。その結果、上記の構成のシート状態切換機構では、少ない部品点数でありながらウォークイン状態とリクライニング状態とを切換えを実現することが可能である。
【0014】
また、上記のシート状態切換機構では、前記可動ブラケットは、当該可動ブラケットが傾倒したときに前記ロック部材に当接する当接部(具体的には、可動ブラケットに取り付けられた第1ピン)を有し、前記ロック部材は、前記解除部が前記リクライニング操作力を受けないときに前記当接部に係合して前記可動ブラケットを前記ウォークインロック位置にロックする係合部と、前記解除部が前記リクライニング操作力を受けたときに前記当接部に当接する外周面とを有し、前記外周面は、前記当接部に当接したときに前記ロック部材がロック解除位置へ向かう方向に前記当接部によって押されるように構成されている。
【0015】
かかる構成により、前記解除部がリクライニング操作力を受けないときには、ロック部材の係合部が可動ブラケットの当接部(具体的には、可動ブラケットに取り付けられた第1ピン)に係合し、可動ブラケットをウォークインロック位置に確実にロックすることが可能である。一方、前記解除部がリクライニング操作力を受けたときには、ロック部材の外周面が当接部に当接し、それによって、ロック部材がロック解除位置へ向かう方向に当接部によって押される。これにより、ロック部材をロック解除位置へ確実に移動させることが可能である。その結果、少ない部品点数でありながら、ロック部材による可動ブラケットのウォークインロック位置でのロック、およびロック解除動作の両方を確実に行うことが可能である。
【0016】
上記のシート状態切換機構において、前記解除部は、前記ロック部材に対してロック位置からロック解除位置へ向かう方向に付勢する第1付勢部材と、前記リクライニング操作力を受ける入力部材であって、前記リクライニング操作力を受けない状態では前記ロック部材をロック位置に保持し、前記リクライニング操作力を受けた状態では前記ロック部材の保持を解除する入力部材とを備えるのが好ましい。
【0017】
かかる構成により、入力部材は、リクライニング操作力を受けない状態ではロック部材をロック位置に保持し、リクライニング操作力を受けた状態ではロック部材の保持を解除する。入力部材によるロック部材の保持が解除されたとき、ロック部材は、第1付勢部材の付勢力によって、ロック位置からロック解除位置へ向かうことが可能である。これにより、ロック部材をロック位置からロック解除位置へ確実に移行することが可能である。
【0018】
上記のシート状態切換機構において、前記解除部は、前記入力部材を前記ロック部材の保持を解除する解除位置から前記ロック部材を保持する保持位置に向けて付勢する第2付勢部材をさらに備え、前記入力部材は、前記リクライニング操作力を受けたときには前記第2付勢部材からの付勢力に抗して、前記保持位置から前記解除位置へ移動するように構成されているのが好ましい。
【0019】
かかる構成により、入力部材はリクライニング操作力を受けないときには、第2付勢部材からの付勢力を受けて、ロック部材をロック位置に確実に保持することが可能である。しかも、入力部材は、リクライニング操作力を受けたときには第2付勢部材からの付勢力に抗して、保持位置から解除位置へ移動するので、入力部材によるロック部材の保持を確実に解除することが可能である。
【0020】
上記のシート状態切換機構において、前記ロック部材は、前記解除部が前記リクライニング操作力を受けないときには、前記可動ブラケットを前記ウォークインロック位置にロック可能な位置に配置されているのが好ましい。
【0021】
かかる構成によれば、ロック部材は、解除部がリクライニング操作力を受けない初期状態では、可動ブラケットをウォークインロック位置にロックすることが可能であり、リクライニング操作力を受けないときにシートバックがリクライニング状態になって最前傾の位置まで傾倒するおそれを回避することが可能である。
【0022】
上記のシート状態切換機構において、前記ロック部材は、前記可動ブラケットを前記ウォークインロック位置にロックするときにおいて、前記シートの前後方向へのスライド移動をロックするスライドロック機構のスライドロック状態を解除することが可能な構成を有するのが好ましい。
【0023】
かかる構成によれば、ロック部材が、可動ブラケットをウォークインロック位置にロックするときに、スライドロック機構のスライドロック状態を解除することが可能であり、スライドロック機構を操作するための部品点数を低減することが可能である。
【0024】
本発明のシートは、上記のシート状態切換機構を備えたシートであって、前記シートバックと、前記シートバックにおける幅方向両側のうちの一方の側に設けられ、上記のシート状態切換機構からなるシート状態切換機構と、前記シートバックにおける幅方向両側のうちの他方の側に設けられた既存のシート状態切換機構であって、前記シートバックを初期の傾倒角度でロックしてリクライニングロック状態にするリクライニングロック機能と、前記リクライニング操作力を受けたときに前記リクライニング状態にするリクライニング機能と、ウォークイン操作力を受けたときに前記シートバックを前記ウォークイン状態にするウォークイン機能とを奏することが可能な構成を有する既存のシート状態切換機構と、前記リクライニング操作力をシート状態切換機構および前記既存のシート状態切換機構に伝達するリクライニング操作力伝達部と、前記ウォークイン操作力を前記既存のシート状態切換機構に伝達するウォークイン操作力伝達部と、を備えていることを特徴とする。
【0025】
かかる構成では、シートバックの幅方向両側においてシート状態切換機構および既存のシート状態切換機構がそれぞれ設けられているので、幅広のシートにおいてもウォークイン状態ではシートバックを安定して傾倒した状態で維持することが可能である。
【0026】
上記のシートにおいて、前記リクライニング操作力伝達部は、前記シートバックにおける幅方向両側のうちの他方の側に設けられ、前記リクライニング操作力が入力されるリクライニング操作力入力部であって、前記既存のシート状態切換機構へ前記リクライニング操作力を伝達することが可能なリクライニング操作力入力部と、前記リクライニング操作力入力部から前記シート状態切換機構へ前記リクライニング操作力を伝達する伝達部材とを備えるのが好ましい。
【0027】
かかる構成によれば、リクライニング操作力入力部をシートバックにおける幅方向両側のうちの他方の側だけに設けた構成においても、伝達部材によって、リクライニング操作力入力部からシートバックを挟んで反対側に位置するシート状態切換機構へリクライニング操作力を伝達することが可能である。これにより、リクライニング操作力入力部をシートバックにおける幅方向両側にそれぞれ設ける必要が無くなり構造が簡単である。しかも、シートバックにおける幅方向両側に設けられたシート状態切換機構を同時にリクライニング状態へ移行することが可能であり、2つの切換機構の同調性が高い。
【発明の効果】
【0028】
本発明のシート状態切換機構およびそれを備えたシートによれば、少ない部品点数でありながらウォークイン状態とリクライニング状態とを切換えを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明のシート状態切換機構の実施形態に係るシート状態切換機構がシートの一方の側に設けられ、他方の側に他のシート状態切換機構としての既存のシート状態切換機構が設けられたシートの全体構造を概略的に示す斜視図である。
【
図2】
図1のシート状態切換機構の主要構成を示す正面図である。
【
図3】
図2のシート状態切換機構の分解斜視図である。
【
図7】
図2のシート状態切換機構における可動ブラケットの第1ピンと第2ピン、ロック部材、および入力部材の周辺部分を示す斜視説明図である。
【
図8】
図2のシート状態切換機構のリクライニング状態への移行動作を説明するための説明図である。
【
図9】
図2のシート状態切換機構のリクライニング状態への移行動作を説明するための説明図である。
【
図10】
図2のシート状態切換機構のリクライニング状態への移行動作を説明するための説明図である。
【
図11】
図2のシート状態切換機構のウォークイン状態への移行動作を説明するための説明図である。
【
図12】
図2のシート状態切換機構のウォークイン状態への移行動作を説明するための説明図である。
【
図13】
図2のシート状態切換機構のウォークイン状態への移行動作を説明するための説明図である。
【
図14】従来のシート状態切換機構の主要構成を示す正面図である。
【
図15】従来のシート状態切換機構のウォークイン状態への移行動作を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。
【0031】
図1に示されるシート1は、車両のリアシートを構成する車幅方向に長いロングシートである。シート1は、シートバック3の幅方向両側にそれぞれシート状態切換機構5(第1シート状態切換機構)と既存のシート状態切換機構6(第2シート状態切換機構)とを備え、さらに、シートバック3の幅方向両側のうち既存のシート状態切換機構6が設けられた側(
図1における右側)にリクライニング操作レバー7およびウォークイン操作レバー8を備えた構成を有している。
【0032】
具体的には、シート1は、シートクッション2と、シート1の前後方向に傾倒可能なシートバック3と、シートバック3における幅方向両側のうちの一方の側(
図1における左側)に設けられたシート状態切換機構5と、シートバック3における幅方向両側のうちの他方の側(
図1における右側)に設けられた既存のシート状態切換機構6と、リクライニング操作力伝達部と、ウォークイン操作力伝達部とを備えている。
【0033】
シート状態切換機構5および既存のシート状態切換機構6は、シートバック3を所定の傾倒角度であるウォークイン位置にロックするウォークイン状態とロックが解除されてシートバック3が最前傾の位置まで傾倒可能なリクライニング状態とを切り換えることが可能な機能及び構成を有している。このシート状態切換機構5についての具体的な構成については、後段で詳細に説明する。
【0034】
リクライニング操作力伝達部は、リクライニング状態に移行するための操作力であるリクライニング操作力を、シート状態切換機構5および既存のシート状態切換機構6に伝達する構成を有している。リクライニング操作力伝達部は、具体的には、リクライニング操作レバー7と、リクライニング操作力伝達ケーブル9とを有する。
【0035】
リクライニング操作レバー7は、シートバック3における他方の側、すなわち、既存のシート状態切換機構6が設けられた側(
図1における右側)に設けられている。リクライニング操作レバー7は、リクライニング操作力が入力されるリクライニング操作力入力部であり、既存のシート状態切換機構6へリクライニング操作力をケーブルまたはリンクなどで伝達することが可能である。リクライニング操作力伝達ケーブル9は、リクライニング操作レバー7からシート状態切換機構5へリクライニング操作力を伝達する伝達部材である。
【0036】
ウォークイン操作力伝達部は、ウォークイン状態に移行するための操作力であるウォークイン操作力を、既存のシート状態切換機構6もしくはリクライニング機構に伝達する構成を有し、具体的には、ウォークイン操作レバー8と、ウォークイン操作力伝達ケーブル10とを有する。
【0037】
以下、シート状態切換機構5の構成および動作について、さらに詳しく説明する。
【0038】
(シート状態切換機構5の構成)
シート状態切換機構5は、シートバック3を所定の傾倒角度であるウォークイン位置にロックするウォークイン状態とロックが解除されてシートバック3が最前傾の位置まで傾倒可能なリクライニング状態とを切り換えることが可能な構成を有する。
【0039】
具体的には、シート状態切換機構5は、
図2~3に示されるように、シートクッション2(
図1参照)(具体的には、シートクッション2を支持するフレーム)に固定されたベース部材11と、当該ベース部材11に回転自在に取り付けられた可動部材として、ロック部材12、入力部材13、および可動ブラケット14と、入力部材13を
図2からみて時計回りの方向に付勢する引張コイルバネ17(第2付勢部材)と、ロック部材12を
図2からみて反時計回りの方向に付勢するねじりコイルバネ18(第1付勢部材)とを備えている。
【0040】
可動ブラケット14は、シートバック3の側面に固定され、シートバック3とともに傾倒可能な構成を有している。具体的には、可動ブラケット14は、
図4に示されるように、貫通孔14cが形成された本体部14aと、アーム部14bとを有する。アーム部14bの下端部は、本体部14aと連結されている。本体部14aおよびアーム部14bは一体形成されている。アーム部14bは、ネジなどによってシートバック3の側面に固定される。本体部14aには、貫通孔14cの周囲に第1ピン20および第2ピン21が固定されている。
【0041】
可動ブラケット14は、
図2~3に示されるように、ベース部材11の上部に固定された軸部材16を貫通孔14cに挿入した状態で、当該軸部材16に回転自在に支持されている。さらに、軸部材16には、渦巻バネ19が取り付けられている。渦巻バネ19の外側端部は、可動ブラケット14に設けられたピン23に係合している。したがって、可動ブラケット14は、渦巻バネ19の回転付勢力によって、シートバック3とともにシート1の前方に倒れる方向(
図2の反時計回りの方向)に付勢されている。
【0042】
可動ブラケット14の第1ピン20および第2ピン21は、可動ブラケット14が前方に倒れるとき(
図2において反時計回りに回転するとき)に第1ピン20が第2ピン21よりも先にロック部材12に到達するように、配置されている。本実施形態の第1ピン20は、可動ブラケット14が傾倒したときにロック部材12に当接する当接部として機能する。
【0043】
ロック部材12は、可動ブラケット14が傾倒したときに可動ブラケット14をシートバック3がウォークイン位置になる所定のウォークインロック位置にロックする構成を有する。具体的には、ロック部材12は、
図5に示されるように、貫通孔12dを有する本体部12aと、本体部12aから互いに異なる方向に延びるアーム部12bおよびフック部12cとを有する。
【0044】
本体部12aには、ピン12eが当該本体部12aを貫通した状態で設けられている。ピン12eの一方の端部(
図5の紙面奥側の端部)は、ベース部材11の曲線状のスリット11b(
図3参照)に挿入され、ロック部材12の回転可能な範囲が規制されている。ピン12eの他方の端部(
図5の紙面手前側の端部)には、ねじりコイルバネ18(
図3参照)の一対の端部のうちの1つが下方から係合している。
【0045】
フック部12cは、曲がった形状を有しており、具体的には、凹部12g(係合部)と、外周面12hとを有する。シート状態切換機構5がウォークイン状態(
図11~13参照)では、凹部12gは、可動ブラケット14の第1ピン20に係合することが可能である。一方、リクライニング状態(
図8~10参照)では、外周面12hが第1ピン20に当接してロック部材12は下方へ押し下げられ、第1ピン20と凹部12gとの係合はなされない。
【0046】
ロック部材12のアーム部12bの端部には、ピン12fが設けられている。ピン12fは、ベース部材11の曲線状のスリット11c(
図3参照)に挿入されている。ピン12fは、シート1を前後方向にスライドするためのスライド機構(図示せず)のロックを解除する部分にケーブルなどを介して連結されている。ロック部材12が第1ピン20と係合するウォークイン状態に移行したときには、ロック部材12が時計回りの方向に回転するのに伴ってピン12fが上昇し、スライド機構のロックを解除する。
【0047】
本実施形態のシート状態切換機構5は、上記のリクライニング操作レバー7およびリクライニング操作力伝達ケーブル9を介してリクライニング操作力を受けたときにロック部材12の付勢状態(すなわち、ロック部材12のロック)を解除してリクライニング状態に切り換える解除部を有する。解除部は、上記の入力部材13、ねじりコイルバネ18(第1付勢部材)、引張コイルバネ17(第2付勢部材)によって構成されている。
【0048】
入力部材13は、リクライニング操作力伝達ケーブル9を介して操作レバー7によるリクライニング操作力が入力される部材である。入力部材13は、リクライニング操作力を受けない状態ではロック部材12を、可動ブラケット14をウォークインロック位置にロックするロック位置(
図11~13のウォークイン状態参照)に保持し、リクライニング操作力を受けた状態ではロック部材12の保持を解除する(
図8~10のリクライニング状態参照)ように構成されている。
【0049】
入力部材13は、具体的には、
図6に示されるように、貫通孔13eを有する本体部13aと、リクライニング操作力伝達ケーブル9に連結するケーブル連結部13bと、山形に膨らんだ膨出部13cと、引張コイルバネ17が係合可能なフック形状もしくは孔のバネ係合部13dとを有する。膨出部13cの外周面には、可動ブラケット14の第1ピン20および第2ピン21が当接可能な直線部13fおよび膨出面13gが形成されている。ケーブル連結部13bおよびバネ係合部13dは、貫通孔13eを挟んだ両側に配置されている。
【0050】
入力部材13は、
図3および
図7に示されるように、ロック部材12と共通の支持軸、すなわち、ベース部材11に固定された軸部材15に回転自在に支持されている。入力部材13とロック部材12とは、互いに重ね合された状態でありながらそれぞれ独立して回転できるように軸部材15に支持されている。
【0051】
引張コイルバネ17の両端部が入力部材13のバネ係合部13dとベース部材11のバネ係合部11a(
図3参照)とにそれぞれ係合することにより、入力部材13は、引張コイルバネ17によって、軸部材15を回転中心として時計回りに付勢されている。すなわち、入力部材13は、引張コイルバネ17(第2付勢部材)によって、入力部材13によるロック部材12の保持を解除する解除位置からロック部材12を保持する保持位置に向けて付勢されている。
【0052】
さらに、ねじりコイルバネ18の両端部が入力部材13のケーブル連結部13bとロック部材12のピン12eとにそれぞれ係合することにより、ロック部材12は、ねじりコイルバネ18によって、軸部材15を回転中心として反時計回りに付勢されている。すなわち、ロック部材12は、ねじりコイルバネ18(第1付勢部材)によって、当該ロック部材12のロック位置(ウォークインロック位置)からロック解除位置(リクライニング位置)へ向かう方向に付勢されている。この状態では、ロック部材12のピン12eは、ねじりコイルバネ18の端部とロック部材12の下面との間に挟まれた状態になっているので、ロック部材12は、入力部材13の回転に追随して回転することが可能である。
【0053】
したがって、ロック部材12は、解除部の入力部材13がリクライニング操作力を受けないときには、可動ブラケット14をウォークインロック位置にロック可能な位置に配置されている。
【0054】
(シート状態切換機構5の動作)
<リクライニング状態への移行動作>
以上のように構成されたシート状態切換機構5では、
図1に示されるシート1が着座可能な初期の状態からリクライニング状態(すなわち、シートバック3がシートクッション2近くの最前傾の位置まで傾倒可能な状態)に移行する場合には、
図8~10に示されるように、リクライニング操作力伝達ケーブル9を介して操作レバー7によるリクライニング操作力が入力部材13に入力される。(なお、このとき、シート1は、リクライニングロックが解除され、シートバック3は傾倒可能な状態になっている。)
【0055】
図8~11に示されるように、入力部材13は、リクライニング操作力伝達ケーブル9によって下方に引っ張られることにより、入力部材13は、軸部材15を中心として反時計回りに回転する。すなわち、入力部材13は、リクライニング操作力を受けたときに引張コイルバネ17(第2付勢部材)からの付勢力に抗して、ロック部材12を保持する保持位置から解除位置へ移動する。
【0056】
ロック部材12は、入力部材13による保持から解放され、ねじりコイルバネ18の付勢力によって、軸部材15を中心として反時計回りに回転する。(このとき、ロック部材12は、入力部材13の回転に追随して、入力部材13とほぼ同時のタイミングで反時計回りに回転する。)
【0057】
ロック部材12が反時計回りに回転した状態では、可動ブラケット14は最前傾の位置まで傾倒が可能になる。すなわち、可動ブラケット14は、渦巻バネ19(
図2~3参照)の付勢力によって反時計回りに傾倒し、それとともに第1ピン20が
図8~9に示される入力部材13の直線部13fに当接する初期位置から反時計回りに移動する。このとき、第1ピン20は、入力部材13の膨出面13gおよびロック部材12のフック部12cの外周面12hに当接しながら入力部材13およびロック部材12を押し下げるので、第1ピン20はロック部材12の凹部12gと係合しない。
図10に示されるように可動ブラケット14がさらに傾倒すると、第1ピン20は入力部材13およびロック部材12を通過し、代わりに、後続の第2ピン21が入力部材13およびロック部材12に押し下げる。その結果、可動ブラケット14およびシートバック3は、最前傾の位置まで傾倒可能なリクライニング状態に円滑に移行することが可能である。
【0058】
なお、利用者が手動でシートバック3を再びリクライニング状態から初期状態まで戻した際には、
図8~10に示され可動ブラケット14が時計回りに回転し、それとともに、第1ピン20が入力部材13の膨出面13gおよびロック部材12のフック部12cの外周面12hに当接しながら
図8の初期位置まで円滑に戻ることが可能である。したがって、初期位置への復帰動作も容易かつ確実に行うことが可能である。
【0059】
また、シートバック3を後傾した際には、可動ブラケット14が時計回りに回転し、それとともに、第1ピン20が入力部材13の直線部13fに当接することで円滑かつ確実に動作することが可能である。
【0060】
<ウォークイン状態への移行動作>
シート状態切換機構5では、
図1に示されるシート1が着座可能な初期の状態からウォークイン状態、すなわち、シートバック3を所定の傾倒角度であるウォークイン位置に傾倒した状態に移行する場合には、
図11~13に示されるように、シートバック3および可動ブラケット14を傾倒させる動作だけでウォークイン状態に移行することが可能である。
【0061】
すなわち、シート状態切換機構5におけるウォークイン状態への移行動作では、
図11~13に示されるように、シートバック3の傾倒に伴って可動ブラケット14を反時計回りに傾倒させると、可動ブラケット14の第1ピン20は、入力部材13の膨出面13gに当接して入力部材13を下方へ押し下げながら反時計回りに回転する。しかし、第1ピン20のみによる入力部材13の下方への押し下げ量は小さいため、ロック部材12は、ウォークインロック位置の範囲に配置されたままとなるので、第1ピン20は、ロック部材12のフック部12cの下側に潜り込んで凹部12gに係合する。このとき、ロック部材12は、第1ピン20に押されて時計回りに回転するが、ロック部材12の当接面12jと可動ブラケット14に取り付けられている第2ピン21が当接したときにロック部材12の回転は規制される。これにより、可動ブラケット14およびシートバック3は、所定の傾倒角度で傾倒したウォークイン状態に移行することが可能である。
【0062】
また、
図13に示されるように、ロック部材12が時計回りに回転したときに、ロック部材12に固定されたピン12fが所定の距離Sだけ上昇する。これにより、ピン12fに連結されたケーブル(図示せず)などを介してシート1のスライドロック機構を解除する動作をすることが可能である。
【0063】
(本実施形態の特徴)
(1)
本実施形態のシート状態切換機構5は、シートバック3に固定され、シートバック3とともに傾倒可能な可動ブラケット14と、可動ブラケット14が傾倒したときに可動ブラケット14をウォークインロック位置にロックするロック部材12と、リクライニング操作力を受けたときにロック部材12のロックを解除してリクライニング状態に切り換える解除部(具体的には、入力部材13、ねじりコイルバネ18(第1付勢部材)、および引張コイルバネ17(第2付勢部材)で構成された解除部)とを備えている。
【0064】
かかる構成では、シートバック3を傾倒させる動作だけで、シートバック3に固定された可動ブラケット14がロック部材12によってシートバック3が所定の傾倒角度であるウォークイン位置になるように所定のウォークインロック位置にロック(すなわち、傾動規制)される。これによってシートバック3をウォークイン位置にロックするウォークイン状態に移行することが可能である。したがって、ウォークイン状態へ移行する際にウォークイン操作力を受けてロック部材12を操作するための部材が必要なくなり、シート状態切換機構5の部品点数を低減することが可能であり、当該機構の構造を構成する部品点数を低減できる。
【0065】
一方、入力部材13がリクライニング操作力をうけたときには、ロック部材12のロックを解除してリクライニング状態に切り換えることができ、シートバック3が最前傾の位置まで傾倒可能なリクライニング状態に移行することが可能である。その結果、上記の構成のシート状態切換機構5では、少ない部品点数でありながらウォークイン状態とリクライニング状態とを切換えを実現することが可能である。
【0066】
(2)
本実施形態のシート状態切換機構5では、可動ブラケット14は、当該可動ブラケット14が傾倒したときにロック部材12に当接する当接部として第1ピン20を有する。ロック部材12は、入力部材13がリクライニング操作力を受けないときに当接部に係合して可動ブラケット14をウォークインロック位置にロックする係合部である凹部12gと、解除部がリクライニング操作力を受けたときに第1ピン20(当接部)に当接する外周面12hとを有する。外周面12hは、第1ピン20に当接したときにロック部材12がロック解除位置へ向かう方向に第1ピン20によって押されるように構成されている。
【0067】
かかる構成により、入力部材13がリクライニング操作力を受けないときには、ロック部材12の凹部12g(係合部)が可動ブラケット14の第1ピン20(当接部)に係合し、可動ブラケット14をウォークインロック位置に確実にロックすることが可能である。一方、解除部がリクライニング操作力を受けたときには、ロック部材12の外周面12hが第1ピン20に当接し、それによって、ロック部材12がロック解除位置へ向かう方向に当接部によって押される。これにより、ロック部材12をロック解除位置へ確実に移動させることが可能である。その結果、少ない部品点数でありながら、ロック部材12による可動ブラケット14のウォークインロック位置でのロック、およびロック解除動作の両方を確実に行うことが可能である。
【0068】
(3)
本実施形態のシート状態切換機構5では、解除部は、ロック部材12に対してロック位置からロック解除位置へ向かう方向に付勢する第1付勢部材であるねじりコイルバネ18と、リクライニング操作力を受ける入力部材13であって、リクライニング操作力を受けない状態ではロック部材12をロック位置に保持し、リクライニング操作力を受けた状態ではロック部材12の保持を解除する入力部材13とを備える。
【0069】
かかる構成により、入力部材13は、リクライニング操作力を受けない状態ではロック部材12をロック位置に保持し、リクライニング操作力を受けた状態ではロック部材12の保持を解除する。入力部材13によるロック部材12の保持が解除されたとき、ロック部材12は、第1付勢部材の付勢力によって、ロック位置からロック解除位置へ向かうことが可能である。これにより、ロック部材12をロック位置からロック解除位置へ確実に移行することが可能である。
【0070】
(4)
本実施形態のシート状態切換機構5では、解除部は、入力部材13をロック部材12の保持を解除する解除位置からロック部材12を保持する保持位置に向けて付勢する第2付勢部材である引張コイルバネ17をさらに備える。入力部材13は、リクライニング操作力を受けたときには引張コイルバネ17からの付勢力に抗して、保持位置から解除位置へ移動するように構成されている。
【0071】
かかる構成により、入力部材13はリクライニング操作力を受けないときには、引張コイルバネ17(第2付勢部材)からの付勢力を受けて、ロック部材12をロック位置に確実に保持することが可能である。しかも、入力部材13は、リクライニング操作力を受けたときには引張コイルバネ17からの付勢力に抗して、保持位置から解除位置へ移動するので、入力部材13によるロック部材12の保持を確実に解除することが可能である。
【0072】
(5)
本実施形態のシート状態切換機構5では、ロック部材12は、解除部がリクライニング操作力を受けないときには、可動ブラケット14をウォークインロック位置にロック可能な位置に配置されている。
【0073】
かかる構成によれば、ロック部材12は、解除部がリクライニング操作力を受けない初期状態では、可動ブラケット14をウォークインロック位置にロックすることが可能であり、リクライニング操作力を受けないときにシートバック3がリクライニング状態になって最前傾の位置まで傾倒するおそれを回避することが可能である。
【0074】
すなわち、本実施形態のシート状態切換機構5では、
図2および
図7に示されるように、リクライニング操作力が入力されない初期の状態では、ロック部材12および入力部材13が常にウォークインロック位置にある。そのため、
図11~13に示されるように、リクライニング操作力を受けない状態で、シートバック3が前傾(反時計回りに回転)した際には、可動ブラケット14に取り付けられた第1ピン20が常にロック部材12の凹部12g(係合部)に係合し、ロック部材12を時計回りに回転させ、それとともに第1ピン20によって入力部材13を押し下げることが可能である。その結果、リクライニング操作力が入力されない状態では、シートバック3がリクライニング状態になって最前傾の位置まで傾倒するおそれを回避することが可能である。
【0075】
(6)
本実施形態のシート状態切換機構5では、ロック部材12は、可動ブラケット14をウォークインロック位置にロックするときにおいて、シートの前後方向へのスライド移動をロックするスライドロック機構のスライドロック状態を解除することが可能な構成(具体的には、ロック部材12のピン12fの上昇によってケーブルを介してスライドロック装置のロックを解除する構成)を有する。
【0076】
かかる構成によれば、ロック部材12が、可動ブラケット14をウォークインロック位置にロックするときに、スライドロック機構のスライドロック状態を解除することが可能であり、スライドロック機構を操作するための部品点数を低減することが可能である。
【0077】
(7)
本実施形態のシート状態切換機構5では、シートバック3を後傾した際には、可動ブラケット14が時計回りに回転し、それとともに、第1ピン20が入力部材13の直線部13fに当接することで円滑かつ確実に動作することが可能である。
【0078】
(8)
本実施形態のシート状態切換機構5は、モジュール化することが可能であり、容易に既存のシート構造に組み込むことが可能である。
【0079】
(9)
本実施形態のシート1は、シートバック3と、シートバック3における幅方向両側のうちの一方の側に設けられ、請求項1記載のシート状態切換機構からなるシート状態切換機構5と、シートバック3における幅方向両側のうちの他方の側に設けられた既存のシート状態切換機構6もしくはリクライニング機構であって、シートバック3を初期の傾倒角度でロックしてリクライニングロック状態にするリクライニングロック機能と、リクライニング操作力を受けたときにリクライニング状態にするリクライニング機能と、ウォークイン操作力を受けたときにシートバック3をウォークイン状態にするウォークイン機能とを奏することが可能な構成を有する既存のシート状態切換機構6と、リクライニング操作力をシート状態切換機構5および既存のシート状態切換機構6に伝達するリクライニング操作力伝達部と、ウォークイン操作力を既存のシート状態切換機構6に伝達するウォークイン操作力伝達部とを備えている。
【0080】
かかる構成では、シートバック3の幅方向両側においてシート状態切換機構5および既存のシート状態切換機構6をそれぞれ設けられているので、幅広のシート1においてもウォークイン状態ではシートバック3を安定して傾倒した状態で維持することが可能である。
【0081】
(10)
本実施形態のシート1では、リクライニング操作力伝達部は、シートバック3における幅方向両側のうちの他方の側に設けられ、リクライニング操作力が入力されるリクライニング操作力入力部であって、既存のシート状態切換機構6へリクライニング操作力を伝達することが可能なリクライニング操作力入力部であるリクライニング操作レバー7と、リクライニング操作レバー7からシート状態切換機構5へリクライニング操作力を伝達する伝達部材であるリクライニング操作力伝達ケーブル9を備える。
【0082】
かかる構成によれば、リクライニング操作レバー7(リクライニング操作力入力部)をシートバック3における幅方向両側のうちの他方の側だけに設けた構成においても、リクライニング操作力伝達ケーブル9(伝達部材)によって、リクライニング操作レバー7からシートバック3を挟んで反対側に位置するシート状態切換機構5へリクライニング操作力を伝達することが可能である。これにより、リクライニング操作レバー7をシートバック3における幅方向両側にそれぞれ設ける必要が無くなり構造が簡単である。しかも、シートバック3における幅方向両側に設けられたシート状態切換機構5および既存のシート状態切換機構6を同時にリクライニング状態へ移行することが可能であり、2つの切換機構の同調性が高い。
【0083】
(11)
本実施形態のシート1では、リクライニング操作を行わない場合は、シート状態切換機構5においては、常にウォークイン時の初期配置となるようにロック部材12および入力部材13が配置されている。このシート状態切換機構5へウォークイン操作レバー8の操作力を伝達する経路は、シートバック3を経由する径路になっている。そのため、シート状態切換機構5への操作力を伝達するための部材は、リクライニングの操作力を伝達するワイヤーケーブル(すなわち、リクライニング操作力伝達ケーブル9)のみである。このシート1の構成では、ウォークイン操作時には、リクライニング機構のロックが解除されるだけでシート状態切換機構5へのワイヤーケーブルを介した操作力の伝達は不要となり、従来のシート状態切換機構の構造で必要としたウォークイン操作のためのケーブルとリンクを廃することができ、部品点数の大幅な削減が可能となっている。
【0084】
(12)
従来のリアシートなどの幅広なシートでは、シートの一方の側にリクライニング機構や切換機構などが集中して配置され、他方の側は回転自由なヒンジ構造のみで構成されている場合が多い。このようなシートでは、ウォークイン操作でシートバック3が前傾している状態でリクライニング機構等の機構がない側に荷重を加えた場合にシートバック3がねじれて変形してしまう可能性がある。一方、本実施形態のシート1では、
図1に示されるように、シートバック3の幅方向両側には、シート状態切換機構5および既存のシート状態切換機構6がそれぞれ配置され、これらの切換機構が、シートバック3の両サイドにおいて当該シートバック3を所定の傾倒角度であるウォークイン位置に規制する機能を発揮する。これにより、シートバック3をウォークイン動作時の傾倒状態を安定的に維持することができる。
【0085】
(13)
本実施形態のシート1は、上記のように構成されているので、リクライニングロック機構の無い側(すなわち、リクライニングロック機能もしくはウォークイン位置切換機能、またはその両方の機能を有する既存のシート状態切換機構6の反対側)において、既存のシート状態切換機構の構造を流用しつつ少ない部品で構成されたシート状態切換機構5を追加することで幅広のシート1にも対応し、かつ安定したウォークイン時の傾倒を維持することを可能にしている。
【符号の説明】
【0086】
1 シート
2 シートクッション
3 シートバック
5 シート状態切換機構
6 既存のシート状態切換機構
7 リクライニング操作レバー
8 ウォークイン操作レバー
9 リクライニング操作力伝達ケーブル
10 ウォークイン操作力伝達ケーブル
12 ロック部材
12c フック部
12g 凹部(係合部)
12h 外周面
13 入力部材
14 可動ブラケット
17 引張コイルバネ(第2付勢部材)
18 ねじりコイルバネ(第1付勢部材)
20 第1ピン(当接部)
21 第2ピン