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特許7387146動釣合い試験機および動釣合い試験機における不釣合いの補正方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】動釣合い試験機および動釣合い試験機における不釣合いの補正方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 1/38 20060101AFI20231120BHJP
【FI】
G01M1/38
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019183998
(22)【出願日】2019-10-04
(65)【公開番号】P2021060254
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000150729
【氏名又は名称】株式会社長浜製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 錚
(72)【発明者】
【氏名】稲田 圭志郎
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-247351(JP,A)
【文献】特公平07-050011(JP,B2)
【文献】特開昭57-111428(JP,A)
【文献】実開昭57-112229(JP,U)
【文献】特表2017-504042(JP,A)
【文献】特開平10-123001(JP,A)
【文献】特開2001-124666(JP,A)
【文献】特開昭62-223639(JP,A)
【文献】特開2000-234980(JP,A)
【文献】国際公開第2005/022107(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 1/00 - 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験体が取り付けられるアダプタを有して所定の回転軸線まわりに回転可能なスピンドルを少なくとも備える駆動ユニットと、
前記駆動ユニットを振動可能に支持する支持部と、
前記駆動ユニットの振動を検出する検出部と、
前記検出部の検出値に基づいて被試験体の不釣合いを測定する制御部とを含み、
前記制御部は、
所定の基準被試験体が前記アダプタに取り付けられた状態で前記スピンドルが所定の第1回転数で定常回転しているときの前記検出部の検出値に基づいて、前記基準被試験体の1回目不釣合いを測定し、
前記アダプタに対する前記回転軸線まわりの周方向における前記基準被試験体の取付位置が変更された状態で前記スピンドルが前記第1回転数で定常回転しているときの前記検出部の検出値に基づいて、前記基準被試験体の2回目不釣合いを測定し、
前記アダプタから前記基準被試験体が取り外された状態で前記スピンドルが前記第1回転数で定常回転しているときの前記検出部の検出値に基づいて、前記駆動ユニットに固有の固有不釣合いを測定し、
前記基準被試験体の不釣合いについて前記駆動ユニットに起因する補正量を、前記1回目不釣合いおよび前記2回目不釣合いを下記関係式(1)に代入することによって求め、
前記駆動ユニットに起因する前記補正量に基づいて得られた値を係数としかつ被試験体の質量を変数とする変数項と、前記固有不釣合いからなる定数項と含んで、当該被試験体の質量から補正量が得られる関数として下記関係式(2)を求め、
新たな被試験体が前記アダプタに取り付けられた状態で前記スピンドルが前記第1回転数で定常回転しているときの前記検出部の検出値に基づいて当該新たな被試験体の不釣合いを測定する際に、当該新たな被試験体の質量を前記関数に代入して得られる補正量に基づいて当該新たな被試験体の不釣合いを補正する、動釣合い試験機。
OPa=(OP 1a +OP 2a )/2…式(1)
OP=(OPa-OU )/Ma・M+OU …式(2)
(式中、OPaは、基準被試験体の不釣合いについて駆動ユニットに起因する補正量、OP 1a は1回目不釣合い、OP 2a は2回目不釣合い、OU は固有不釣合い、Maは基準被試験体の質量、OPは被試験体の不釣合いについての補正量、Mは新たな被試験体の質量をそれぞれ示す。)
【請求項2】
被試験体が取り付けられるアダプタを有して所定の回転軸線まわりに回転可能なスピンドルを少なくとも備える駆動ユニットと、前記駆動ユニットを振動可能に支持する支持部と、前記駆動ユニットの振動を検出する検出部とを含み、前記検出部の検出値に基づいて被試験体の不釣合いを測定する動釣合い試験機における不釣合いの補正方法であって、
所定の基準被試験体が前記アダプタに取り付けられた状態で前記スピンドルが所定の第1回転数で定常回転しているときの前記検出部の検出値に基づいて、前記基準被試験体の1回目不釣合いを測定する1回目測定ステップと、
前記アダプタに対する前記回転軸線まわりの周方向における前記基準被試験体の取付位置が変更された状態で前記スピンドルが前記第1回転数で定常回転しているときの前記検出部の検出値に基づいて、前記基準被試験体の2回目不釣合いを測定する2回目測定ステップと、
前記アダプタから前記基準被試験体が取り外された状態で前記スピンドルが前記第1回転数で定常回転しているときの前記検出部の検出値に基づいて、前記駆動ユニットに固有の固有不釣合いを測定する固有不釣合い測定ステップと、
前記基準被試験体の不釣合いについて前記駆動ユニットに起因する補正量を、前記1回目不釣合いおよび前記2回目不釣合いを下記関係式(1)に代入することによって求める補正量取得ステップと、
前記駆動ユニットに起因する前記補正量に基づいて得られた値を係数としかつ被試験体の質量を変数とする変数項と、前記固有不釣合いからなる定数項と含んで、当該被試験体の質量から補正量が得られる関数として下記関係式(2)を求める関数取得ステップと、
新たな被試験体が前記アダプタに取り付けられた状態で前記スピンドルが前記第1回転数で定常回転しているときの前記検出部の検出値に基づいて当該新たな被試験体の不釣合いを測定する際に、当該新たな被試験体の質量を前記関数に代入して得られる補正量に基づいて当該新たな被試験体の不釣合いを補正する補正ステップとを含む、動釣合い試験機における不釣合いの補正方法。
OPa=(OP 1a +OP 2a )/2…式(1)
OP=(OPa-OU )/Ma・M+OU …式(2)
(式中、OPaは、基準被試験体の不釣合いについて駆動ユニットに起因する補正量、OP 1a は1回目不釣合い、OP 2a は2回目不釣合い、OU は固有不釣合い、Maは基準被試験体の質量、OPは被試験体の不釣合いについての補正量、Mは新たな被試験体の質量をそれぞれ示す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、動釣合い試験機および動釣合い試験機における不釣合いの補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記非特許文献1では、被試験体であるロータとつりあい試験機の回転軸におけるアダプタとの間で偏心が生じている場合におけるロータの不釣合いの補正方法が開示されている。具体的には、図3に示すように、偏心によってアダプタtの回転中心oと被試験体rの本来の回転中心qとが一致していない場合において、つりあい試験機では、アダプタtおよび被試験体rが一体回転されて1回目の不釣合いopが測定値として得られる。次に、被試験体rをアダプタtに対して180°反転して取り付けて再測定することによって、2回目の不釣合いopが測定値として得られる。これら2つ測定値のベクトルの先端pと先端pとを結ぶ線の中点pを求めて補正量opを不釣合いopから差し引くと、被試験体rの純粋な不釣合いppが得られる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】三輪修三および下村玄共著、「回転機械のつりあわせ」コロナ社、昭和51年7月30日初版発行、p.146-148(「3・8・3偏心補償装置」の項)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アダプタtが同一であっても被試験体rの質量が種類に応じて異なれば、補正量opも異なる。非特許文献1では、被試験体rの種類が変わる度に、前述したように2回の不釣合い測定を行ったうえで補正量opを求めるという作業(以下「偏心補正作業」という。)が毎回必要であると記載されているし、実際の測定現場でも、被試験体rの種類が変わる度に偏心補正作業が実施されている。しかし、偏心補正作業には時間がかかる。
【0005】
この発明は、かかる課題を解決するためになされたもので、不釣合いの補正に関して時間短縮を図れる動釣合い試験機、および、動釣合い試験機における不釣合いの補正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、被試験体(R)が取り付けられるアダプタ(T)を有して所定の回転軸線(J)まわりに回転可能なスピンドル(4)を少なくとも備える駆動ユニット(10)と、前記駆動ユニットを振動可能に支持する支持部(3)と、前記駆動ユニットの振動を検出する検出部(7)と、前記検出部の検出値に基づいて被試験体の不釣合いを測定する制御部(8)とを含動釣合い試験機(1)を提供する。前記制御部は、所定の基準被試験体(R)が前記アダプタに取り付けられた状態で前記スピンドルが所定の第1回転数で定常回転しているときの前記検出部の検出値に基づいて、前記基準被試験体の1回目不釣合い(OP1a)を測定し、前記アダプタに対する前記回転軸線まわりの周方向(S)における前記基準被試験体の取付位置が変更された状態で前記スピンドルが前記第1回転数で定常回転しているときの前記検出部の検出値に基づいて、前記基準被試験体の2回目不釣合い(OP2a)を測定し、前記アダプタから前記基準被試験体が取り外された状態で前記スピンドルが前記第1回転数で定常回転しているときの前記検出部の検出値に基づいて、前記駆動ユニットに固有の固有不釣合い(OU)を測定し、前記基準被試験体の不釣合いについて前記駆動ユニットに起因する補正量(OP)を、前記1回目不釣合いおよび前記2回目不釣合いに基づいて求め、前記固有不釣合いを定数項として含んで被試験体の質量(M)から前記補正量が得られる関数を求め、新たな被試験体(R)が前記アダプタに取り付けられた状態で前記スピンドルが前記第1回転数で定常回転しているときの前記検出部の検出値に基づいて当該新たな被試験体の不釣合いを測定する際に、当該新たな被試験体の質量を前記関数に代入して得られる補正量(OP)に基づいて当該新たな被試験体の不釣合いを補正する。なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素などを表す。以下、この項において同じ。
前記基準被試験体の不釣合いについて前記駆動ユニットに起因する前記補正量を、前記1回目不釣合いおよび前記2回目不釣合いを下記関係式(1)に代入することによって求めてもよい。また、前記関数が、前記駆動ユニットに起因する前記補正量に基づいて得られた値を係数としかつ被試験体の質量を変数とする変数項と、前記固有不釣合いからなる定数項とを含んで、当該被試験体の質量から補正量が得られる関数であって、下記関係式(2)として示されてもよい。
OPa=(OP 1a +OP 2a )/2…式(1)
OP=(OPa-OU )/Ma・M+OU …式(2)
(式中、OPaは、基準被試験体の不釣合いについて駆動ユニットに起因する補正量、OP 1a は1回目不釣合い、OP 2a は2回目不釣合い、OU は固有不釣合い、Maは基準被試験体の質量、OPは被試験体の不釣合いについての補正量、Mは新たな被試験体の質量をそれぞれ示す。)
【0007】
この構成によれば、基準被試験体の取付位置が異なるという測定条件で基準被試験体の1回目不釣合いおよび2回目不釣合いを測定すれば、不釣合いについて駆動ユニットに起因する補正量が、これらの不釣合いに基づいて求められる。そして、基準被試験体を取り外して固有不釣合いを測定すれば、固有不釣合いを定数項として含んで被試験体の質量から補正量が得られる関数が求められる。この関数を求めておけば、その後に新たな被試験体の不釣合いを測定する際において、前述した偏心補正作業を被試験体の種類毎に実施しなくても、当該被試験体の質量を関数に代入するだけで、当該被試験体に対応する補正量が得られるので、この補正量に基づいて当該被試験体の不釣合いを速やかに補正することができる。そのため、不釣合いの補正に関して時間短縮を図れる。
【0008】
また、本発明の一実施形態は、被試験体(R)が取り付けられるアダプタ(T)を有して所定の回転軸線(J)まわりに回転可能なスピンドル(4)を少なくとも備える駆動ユニット(10)と、前記駆動ユニットを振動可能に支持する支持部(3)と、前記駆動ユニットの振動を検出する検出部(7)とを含み、前記検出部の検出値に基づいて被試験体の不釣合いを測定する動釣合い試験機(1)における不釣合いの補正方法を提供する。前記補正方法は、所定の基準被試験体(R)が前記アダプタに取り付けられた状態で前記スピンドルが所定の第1回転数で定常回転しているときの前記検出部の検出値に基づいて、前記基準被試験体の1回目不釣合い(OP1a)を測定する1回目測定ステップと、前記アダプタに対する前記回転軸線まわりの周方向(S)における前記基準被試験体の取付位置が変更された状態で前記スピンドルが前記第1回転数で定常回転しているときの前記検出部の検出値に基づいて、前記基準被試験体の2回目不釣合い(OP2a)を測定する2回目測定ステップと、前記アダプタから前記基準被試験体が取り外された状態で前記スピンドルが前記第1回転数で定常回転しているときの前記検出部の検出値に基づいて、前記駆動ユニットに固有の固有不釣合い(OU)を測定する固有不釣合い測定ステップと、不釣合いについて前記駆動ユニットに起因する補正量(OP)を、前記1回目不釣合いおよび前記2回目不釣合いに基づいて求める補正量取得ステップと、前記固有不釣合いを定数項として含んで被試験体の質量(M)から前記補正量が得られる関数を求める関数取得ステップと、新たな被試験体(R)が前記アダプタに取り付けられた状態で前記スピンドルが前記第1回転数で定常回転しているときの前記検出部の検出値に基づいて当該新たな被試験体の不釣合いを測定する際に、当該新たな被試験体の質量を前記関数に代入して得られる補正量(OP)に基づいて当該新たな被試験体の不釣合いを補正する補正ステップとを含む。
前記補正量取得ステップにおいて、前記基準被試験体の不釣合いについて前記駆動ユニットに起因する前記補正量を、前記1回目不釣合いおよび前記2回目不釣合いを下記関係式(1)に代入することによって求めてもよい。また、前記補正ステップにおいて、前記関数が、前記駆動ユニットに起因する前記補正量に基づいて得られた値を係数としかつ被試験体の質量を変数とする変数項と、前記固有不釣合いからなる定数項とを含んで、当該被試験体の質量から補正量が得られる関数であって、下記関係式(2)として示されてもよい。
OPa=(OP 1a +OP 2a )/2…式(1)
OP=(OPa-OU )/Ma・M+OU …式(2)
(式中、OPaは、基準被試験体の不釣合いについて駆動ユニットに起因する補正量、OP 1a は1回目不釣合い、OP 2a は2回目不釣合い、OU は固有不釣合い、Maは基準被試験体の質量、OPは被試験体の不釣合いについての補正量、Mは新たな被試験体の質量をそれぞれ示す。)
【0009】
この構成によっても、動釣合い試験機にて説明した同様の手順により、不釣合いの補正に関して時間短縮を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】この発明の一実施形態に係る動釣合い試験機の正面図である。
図2】この発明の一実施形態に係る動釣合い試験機におけるアダプタと、アダプタに取り付けられた被試験体との位置関係を示す模式図である。
図3】非特許文献1で開示された内容を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、この発明の実施形態について詳細に説明をする。図1は、この発明の一実施形態に係る動釣合い試験機1の正面図である。動釣合い試験機1は、床面Yに固定される本体フレーム2と、本体フレーム2に固定された例えば板状の支持部3と、例えば垂直軸線を有する円柱状に形成されて支持部3を上下に貫通したスピンドル4とを含む。スピンドル4と、スピンドル4を回転自在に支持する軸受部等(図示せず)とは、動釣合い試験機1における駆動ユニット10を構成する。駆動ユニット10は、支持部3に設けられたバネ状の弾性支持部5によって振動可能に支持される。スピンドル4の上端部は、ロータ等の被試験体Rが取り付けられるアダプタTを構成している。アダプタTとして、被試験体Rの中心穴に圧入される円筒状のコレット等を用いた公知のチャック機構を採用できる。スピンドル4は、その中心を通る垂直軸線を所定の回転軸線Jとして、回転軸線Jまわりに回転可能である。スピンドル4は、この実施形態のように縦に配置されるのに代えて、横に配置されてもよい。
【0012】
動釣合い試験機1は、ダイレクトドライブやベルトドライブ等によってスピンドル4を回転させるモータ6と、スピンドル4の回転中における駆動ユニット10の振動を検出する検出部7と、マイクロコンピュータやメモリ等によって構成された制御部8とを含む。この実施形態では、モータ6は、駆動ユニット10に含まれる。検出部7として、公知の振動検出器を採用できる。制御部8は、モータ6および検出部7に対して電気的に接続されている。制御部8は、モータ6への印加電圧を制御することによって、モータ6の動作を制御する。駆動ユニット10の振動に関する検出部7の検出値は、制御部8に入力される。
【0013】
図2は、アダプタTと、アダプタTに取り付けられた被試験体Rとの位置関係を回転軸線Jの軸線方向から見た模式図である。次に、動釣合い試験機1における被試験体Rの不釣合いの測定手順について説明する。
【0014】
まず、最初の測定対象となる被試験体Rが、所定の基準被試験体Rとして、作業者によってアダプタTに取り付けられる。アダプタTの回転中心O(スピンドル4の回転軸線Jと同じ)と基準被試験体Rの本来の回転中心Qとが完全に一致するように基準被試験体Rを取り付けることは難しい。そのため、基準被試験体RがアダプタTに取り付けられた状態では、回転中心Oと回転中心Qとの間隔を偏心量eとする偏心がどうしても発生する。なお、アダプタTに取り付けられた基準被試験体Rは、アダプタTによってチャックされた状態にあり、スピンドル4と一体回転可能である。
【0015】
次に、制御部8は、モータ6を制御して、基準被試験体RがアダプタTに取り付けられた状態にあるスピンドル4を所定回転数(第1回転数)で定常回転させる。スピンドル4の回転中に駆動ユニット10に生じる振動は、検出部7によって検出され、制御部8は、検出部7の検出値に基づいて、基準被試験体Rの1回目不釣合いOP1aを測定する(1回目測定ステップ)。検出部7の検出値から不釣合いを算出する方法は、公知なので、その説明を省略する。また、不釣合いOP1aは、「OP1a」における1つ目の記号「O」から2つ目の記号「P1a」に向かうベクトルであり、以下の他の不釣合いの向きについても同様に解釈する。不釣合いの一般的な単位は、g・mmである。
【0016】
次に、停止した状態のスピンドル4において、アダプタTに対する回転軸線Jまわりの周方向Sにおける基準被試験体Rの取付位置が作業者によって変更される。一例として、基準被試験体Rは、180°反転されるが、理論的には基準被試験体Rの取付位置は、180°以外の任意の角度(例えば1°)変わるだけでもよい。その後、制御部8は、1回目不釣合い測定時とは異なる取付位置で被試験体RがアダプタTに取り付けられた状態にあるスピンドル4を所定回転数(例えば、1回目不釣合い測定時と同じ回転数)で定常回転させる。制御部8は、スピンドル4の回転中に駆動ユニット10に生じる振動についての検出部7の検出値に基づいて、基準被試験体Rの2回目不釣合いOP2aを測定する(2回目測定ステップ)。
【0017】
次に、停止した状態のスピンドル4において、基準被試験体Rが作業者によってアダプタTから取り外される。その後、制御部8は、アダプタTに被試験体Rが取り付けられていない状態にあるスピンドル4を所定回転数(例えば、1回目不釣合い測定時や2回目不釣合い測定時と同じ回転数)で定常回転させる。制御部8は、スピンドル4の回転中に駆動ユニット10に生じる振動についての検出部7の検出値に基づいて、駆動ユニット10に固有の固有不釣合いOUを測定する(固有不釣合い測定ステップ)。なお、固有不釣合い測定ステップは、1回目測定ステップよりも前に実施されてもよい。
【0018】
制御部8は、基準被試験体Rの不釣合いについて駆動ユニット10に起因する補正量OPを、1回目不釣合いOP1aおよび2回目不釣合いOP2aに基づいて求める(補正量取得ステップ)。具体的には、制御部8は、1回目不釣合いOP1aにおけるベクトルの先端P1aと、2回目不釣合いOP2aにおけるベクトルの先端P2aとを結ぶ線P1a2aの中点Pを求める。被試験体Rの回転中心Oから中点Pに向かうベクトルが、補正量OP(=(1回目不釣合いOP1a+2回目不釣合いOP2a)/2)である。制御部8は、不釣合いOP1aから補正量OPを差し引く補正によって、基準被試験体Rの純粋な不釣合いP1aを算出する。
【0019】
制御部8は、以下の式(1)を記憶しており、補正量OPと、固有不釣合いOUと、基準被試験体Rの質量M(単位:例えばkg)とを式(1)に代入して、前述した偏心量eを求める。補正量OPおよび質量Mは、基準被試験体Rに固有の定数であり、固有不釣合いOUも定数なので、これらから得られる偏心量eも定数であり、その一般的な単位は、μmである。
偏心量e=(補正量OP-固有不釣合いOU)/質量M…式(1)
【0020】
以上のように固有不釣合いOUおよび偏心量eを取得した制御部8は、任意の被試験体Rの質量Mと、この被試験体Rの不釣合い測定の際に誤差となる補正量OPとの関係をあらわす関数として以下の式(2)を求めて記憶する(関数取得ステップ)。
補正量OP=(偏心量e・質量M)+固有不釣合いOU…式(2)
式(2)における第1項は、アダプタTと被試験体Rとの間で生じる偏心による不釣合いOWであり、偏心量eを係数として質量Mを変数としている。式(2)における第2項は、固有不釣合いOUによる定数項である。このように、補正量OPは、偏心による不釣合いOWと、固有不釣合いOUとに分離できる。そして、式(2)の質量Mに質量Mを代入すれば、補正量OPが得られる。同様に、任意の被試験体Rの質量Mを式(2)に代入すれば、この被試験体Rに対応する補正量OPが得られる。なお、質量Mを、被試験体Rだけの質量でなく、被試験体Rとスピンドル4(アダプタTも含む)等とを含む駆動ユニット10全体の質量とみなしてもよい。
【0021】
このように式(2)が得られると、作業者によって基準被試験体RがアダプタTから取り外されて、新たな被試験体RがアダプタTに取り付けられる。そして、作業者によるキーボード等の公知の入力部9(図1参照)の操作によって被試験体Rの質量Mが制御部8に入力される。制御部8は、モータ6を制御して、新たな被試験体RがアダプタTに取り付けられた状態にあるスピンドル4を所定回転数で定常回転させる。制御部8は、スピンドル4の回転中に駆動ユニット10に生じる振動についての検出部7の検出値に基づいて、新たな被試験体Rの不釣合いOP1bを測定する。その際、制御部8は、質量Mを式(2)の質量Mに代入して補正量OPを求め、得られた補正量OPに基づいて被試験体Rの不釣合いを補正する(補正ステップ)。具体的には、制御部8は、不釣合いOP1bから補正量OPを差し引く補正によって、被試験体Rの純粋な不釣合いP1bを算出する。
【0022】
以上のように、動釣合い試験機1では、最初の被試験体Rである基準被試験体Rの1回目不釣合いOP1aおよび2回目不釣合いOP2aを別々の取付位置で測定すれば、不釣合いについて駆動ユニット10に起因する補正量OPが、これらの不釣合いに基づいて求められる。そして、基準被試験体Rを取り外して固有不釣合いOUを測定すれば、固有不釣合いOUを定数項として含んで被試験体Rの質量Mから補正量OPが得られる関数である式(2)が求められる。初期設定として式(2)を求めておけば、その後に新たな被試験体R(被試験体Rや被試験体R等)の不釣合いを測定する際において、前述した偏心補正作業を被試験体Rの種類毎に実施しなくても、当該新たな被試験体Rの質量Mを式(2)に代入するだけで、当該被試験体Rに対応する補正量OPが得られるので、この補正量OPに基づいて当該被試験体Rの不釣合いOPを速やかに補正して純粋な不釣合いPPを得ることができる。そのため、不釣合いの補正に関して時間短縮を図れる。質量が異なる多機種の被試験体Rのそれぞれの不釣合いの補正する場合には、特に有効である。
【0023】
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項に記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【0024】
例えば、前述した式(2)の偏心量eに式(1)を代入して得られる下記の式(3)を用いて質量Mから補正量OPを算出してもよい。
補正量OP=(補正量OP-固有不釣合いOU)・質量M/質量M+固有不釣合いOU…式(3)
【符号の説明】
【0025】
1…動釣合い試験機
3…支持部
4…スピンドル
7…検出部
8…制御部
10…駆動ユニット
J…回転軸線
M…質量
OP1a…1回目不釣合い
OP2a…2回目不釣合い
OP…補正量
OP…補正量
OU…固有不釣合い
R…被試験体
…基準被試験体
…新たな被試験体
S…周方向
T…アダプタ
図1
図2
図3