(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】パネル支持治具
(51)【国際特許分類】
E04F 13/08 20060101AFI20231120BHJP
E04C 2/04 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
E04F13/08 101D
E04C2/04 C
(21)【出願番号】P 2019189397
(22)【出願日】2019-10-16
【審査請求日】2022-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】519371909
【氏名又は名称】株式会社アトリエクオーレ
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】弁理士法人森特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100114535
【氏名又は名称】森 寿夫
(74)【代理人】
【識別番号】100075960
【氏名又は名称】森 廣三郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155103
【氏名又は名称】木村 厚
(74)【代理人】
【識別番号】100194755
【氏名又は名称】田中 秀明
(72)【発明者】
【氏名】白神 昭
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-352176(JP,A)
【文献】特開2009-091733(JP,A)
【文献】特開2005-120809(JP,A)
【文献】実開昭60-040610(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/00-13/30
E04C 2/04
E04H 17/14
E04B 2/56
E04B 1/41
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロックを積層させて構成する壁本体に壁面パネルを取り付けて装飾壁面を構築する際に壁本体に固定されるパネル支持治具であって、
上段及び下段のブロックの間に挟まれる水平板から
下段のブロックの孔に差し込む抜け止め板と、
下段のブロックのフロントシェルの表面に当接させる基準板と、
下段のブロックのフロントシェルに添えて設置される壁面パネルの上面に掛合させる掛合板とを下ろし
た板部材で
、
分離自在な断面コ字状の板部材である第1本体及び第2本体から構成され、
第1本体は、水平部分が第1水平板、水平部分の後縁から下ろした垂直部分が抜け止め板、水平部分の前縁から下ろした垂直部分が連結板で、連結板は下部を後方から上方へ折り返してフック板を形成し、
第2本体は、水平部分が第1本体の第1水平板に下方から接面させる第2水平板、水平部分の後縁から下ろした垂直部分が基準板、水平部分の前縁から下ろした垂直部分が掛合板で、
掛合板をフック板に上方から掛合させることにより第1本体及び第2本体を一体にする
パネル支持治具。
【請求項2】
第1本体は、少なくとも抜け止め板を、ブロックの孔の並行な辺の幅より狭くした請求項
1記載のパネル支持治具。
【請求項3】
第2本体は、少なくとも掛合板を、左右方向に隣り合うブロックにわたって長くした請求項
1又は
2いずれか記載のパネル支持治具。
【請求項4】
第2本体は、少なくとも第2水平板を、左右方向に隣り合うブロックにわたって長くした請求項
1~
3いずれか記載のパネル支持治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロックを積層させて構成する壁本体に壁面パネル(例えば自然石又は石風パネル等)を取り付けて装飾壁面(壁面パネルを並べて装飾された壁面)を構築する際に壁本体に固定されるパネル支持治具に関する。
【背景技術】
【0002】
装飾壁面を構築する際に壁本体に固定されるパネル支持治具は、例えば壁面パネル(石板又は石板付パネル)の上面及び下面(側面)に設けたスリット状の凹部に掛合させる一方の端部と、壁本体(セメントを含む層)に埋設させるもう一方の端部とを、板状の中間部で結んで構成される(特許文献1・[請求項1])。壁面パネルのスリット状の凹部に掛合させる一方の端部は、中間部と共にL字形又はT字形の断面を形成する板状である(特許文献1・[請求項2])。壁本体に埋設又は載置させるもう一方の端部は、V字形の断面を有する屈曲部である(特許文献1・[請求項4])。
【0003】
特許文献1が開示するパネル支持治具は、個々の壁面パネルに対応させて、上下方向及び左右方向に複数設置される。壁面パネルは、上面のスリット状の凹部に上段のパネル支持治具の一方の端部を掛合させ、下面のスリット状の凹部に下段のパネル支持治具の一方の端部を掛合させる(特許文献1・
図12ほか参照)。これにより、特許文献1が開示するパネル支持治具は、壁面パネルの落下防止しながら壁面パネルの設置を簡便にし、壁面パネルをコンクリート壁等に固定して構成される装飾壁面(多層構造の構造物)を簡便に製造できる効果をもたらす(特許文献1・[0013])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1が開示するパネル支持治具は、支持すべき壁面パネルの上面及び下面にスリット状の凹部を予め形成しておく必要がある。このため、壁面パネルの上面及び下面に形成されるスリット状の凹部が前後にずれたり、斜めにずれたりすると、複数のパネル支持治具が上下方向や左右方向に綺麗に並んでいても、壁面パネルをうまく支持できなかったり、壁面パネルが綺麗に並ばなかったりする場合が生ずる。また、壁面パネルは多数に及ぶため、上面及び下面両方にスリット状の凹部を形成することは、手間及び費用がかかり、好ましくない。
【0006】
また、特許文献1が開示するパネル支持治具は、上段の壁面パネルの下面のスリット状の凹部と、下段の壁面パネルの上面のスリット状の凹部とに、一方の端部を対応させるため、一方の端部をT字形の断面としている。T字形の断面は、押出成形により一体に形成したり、一方の端部を三分割して互い違いに折り曲げて形成したりするほかない。これは、パネル支持治具の製造にかかる手間及び費用を増やし、パネル支持治具の製造コストを高くする問題を招く。
【0007】
壁本体は、壁面パネルに隠されるため、セメントだけで構築する必要はなく、例えばブロック(コンクリートブロック)を積層して構築すれば、構築の手間も簡単になり、施工費用も廉価にできる。そこで、壁面パネルに対する加工をできるだけ少なくしながら、施工費用が廉価になるブロックを積層させた壁本体を利用することとして、ブロックを積層させて構成する壁本体に壁面パネルを取り付けて装飾壁面を構築する際に壁本体に固定されるパネル支持治具を提供するため、検討した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
検討の結果開発したものが、ブロックを積層させて構成する壁本体に壁面パネルを取り付けて装飾壁面を構築する際に壁本体に固定されるパネル支持治具であって、上段及び下段のブロックの間に挟まれる水平板から下段のブロックの孔に差し込む抜け止め板と、下段のブロックのフロントシェルの表面に当接させる基準板と、下段のブロックのフロントシェルに添えて設置される壁面パネルの上面に掛合させる掛合板とを下ろして構成されるパネル支持治具である。本発明のパネル支持治具は、壁本体を構成する上段及び下段のブロックに、水平板が挟まれて状態で固定される。
【0009】
抜け止め板は、下段のブロックの孔に差し込まれ、ブロックの孔に充填されるモルタルの固化により位置固定させる。抜け止め板は、折れ曲がった屈曲板や水平板から下方に下ろした平板である。基準板は、下段のブロックのフロントシェルの表面に当接させ、前方の掛合板を位置決めする。掛合板は、下段の壁面パネルの上面に掛合させ、壁面パネルの傾倒を防止する。掛合板は、壁面パネルの上面に直接掛合させるほか、上面に形成されたスリットに差し込んで掛合させる。壁面パネルは、下段のパネル支持治具の水平板に載せ、上段のパネル支持治具の掛合板に上面を掛合させて、位置固定される。
【0010】
本発明のパネル支持治具は、分離自在な断面コ字状の第1本体及び第2本体から構成され、第1本体は、水平部分が第1水平板、水平部分の後縁から下ろした垂直部分が抜け止め板、水平部分の前縁から下ろした垂直部分が連結板で、連結板は下部を後方から上方へ折り返してフック板を形成し、第2本体は、水平部分が第1本体の第1水平板に下方から接面させる第2水平板、水平部分の後縁から下ろした垂直部分が基準板、水平部分の前縁から下ろした垂直部分が掛合板で、掛合板をフック板に上方から掛合させることにより第1本体及び第2本体を一体にするとよい。第1水平板は、上段及び下段のブロックの間に挟まれ、上段の壁面パネルを載せるが、第2水平板は、上段及び下段のブロックの間に挟まれず、上段の壁面パネルを載せるだけである。
【0011】
断面コ字状の第1本体及び第2本体は、既製のチャンネル材を利用しつつ、第1本体の連結板にフック板を形成するだけで製造できる。第1本体は、少なくとも抜け止め板を、ブロックの孔の並行な辺の幅より狭くすると、ブロックの孔の並行な辺に抜け止め板全体を接面できる。第1本体は、抜け止め板の幅で全体を構成してもよい。第2本体は、少なくとも掛合板を、左右方向に隣り合うブロックにわたって長くすると、隣り合う壁面パネルを同一の掛合板に掛合できる。また、第2本体は、少なくとも第2水平板を、左右方向に隣り合うブロックにわたって長くすると、隣り合う壁面パネルを同一の第2水平板に載せられる。第2本体は、掛合板又は第2水平板の幅で全体を構成してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のパネル支持治具は、ブロックを積層させた廉価な壁本体に簡単に固定できる。そして、壁面パネルは、下段のパネル支持治具の水平板(第1水平板及び第2水平板)に載せ、上段のパネル支持治具の掛合板に上面を掛合させて、簡単に位置固定される。仮に壁面パネルを加工する場合でも、上面にスリットを設けるだけで済む。このように、ブロックを積層させた廉価な壁本体に固定し、加工の少ない壁面パネルを簡単に位置固定できる本発明のパネル支持治具は、装飾壁面の施工を容易かつ廉価にする効果がある。
【0013】
本発明のパネル支持治具は、基準板をブロックのフロントシェルの表面に当接させることにより掛合板の位置決めができるため、積層されたブロックの並びに沿って綺麗に並べることができる。これにより、本発明のパネル支持治具に支持される壁面パネルは、壁本体の表面に沿って綺麗に並べて取り付けることができる。このように、本発明のパネル支持治具は、施工される装飾壁面の見栄えをよくする効果がある。
【0014】
第1本体及び第2本体からなるパネル支持治具は、既製のチャンネル材を利用して廉価に製造できる。第1本体は、抜け止め板をブロックの孔の並行な辺の幅より狭くし、ブロックの孔の並行な辺に抜け止め板全体を接面させてパネル支持治具の向きを特定することにより、壁本体に対する壁面パネルの姿勢を揃える。第2本体は、左右方向に隣り合うブロックにわたって長い掛合板や第2水平板に、隣り合う壁面パネルを掛合させたり、載せたりすることにより、隣り合う壁面パネルを面一に整列させる。このように、第1本体及び第2本体からなるパネル支持治具は、施工される装飾壁面の見栄えをよくする効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明を適用したパネル支持治具の一例を表す斜視図である。
【
図2】本入れのパネル支持治具の構成を表す側面図である。
【
図3】並べた最下段のブロックに本例のパネル支持治具を取り付ける施工手順1を表す斜視図である。
【
図5】別例1のパネル支持治具を取り付けた状態を表す
図4相当斜視図である。
【
図6】別例2のパネル支持治具を取り付けた状態を表す
図4相当斜視図である。
【
図7】本例のパネル支持治具を取り付けながらブロックを積層していく施工手順2を表す斜視図である。
【
図8】施工手順2における壁本体の縦断面図である。
【
図9】本例のパネル支持治具を取り付けて壁本体を完成させ施工手順3を表す斜視図である。
【
図11】壁面パネルを壁本体に取り付ける施工手順4の差し込み段階を表す壁本体の縦断面図である。
【
図12】壁面パネルを壁本体に取り付ける施工手順4の引き下げ段階を表す壁本体の縦断面図である。
【
図13】壁面パネルを壁本体に取り付け終えた施工手順4を表す斜視図である。
【
図14】壁面パネルの隙間を埋め、化粧板を天面及び側面に取り付けて装飾壁面を完成させた施工手順5を表す斜視図である。
【
図15】施工手順5における壁本体の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。本発明のパネル支持治具1は、水平板から抜け止め板、基準板、掛合板を下ろした一体構成とすることもできるが、
図1及び
図2にみられるように、分離自在な断面コ字状の板部材である第1本体11及び第2本体12から構成されるとよい。これにより、第1本体11及び第2本体12の大きさ(特にブロック31の並び方向の幅)を異ならせることができ、両者を分離して保管、運搬ができるようになる。
【0017】
第1本体は、ブロック31のフロントシェル311(後掲
図4参照)の厚みに第2本体12の第2水平板121の長さを加えたよりも長い平面視長方形の水平部分を第1水平板111とし、第1水平板111の後縁から下ろした正面視長方形の垂直部分を抜け止め板112、第1水平板111の前縁から下ろした正面視長方形の垂直部分を連結板113とし、連結板の下部を後方から上方へ折り返してフック板114を形成した断面コ字状の金属製板部材である。
【0018】
第1本体11の板幅は、第1水平板111、抜け止め板112、連結板113、フック板114がすべて同幅で、約20mmである。第1水平板111の長さは約50mm、抜け止め板112及び連結板113の長さは同じ約20mm、フック板114の長さは約7mmである。また、第1本体11は、1枚の金属板を折り曲げて形成することから、第1水平板111、抜け止め板112、連結板113、フック板114がすべて同厚で、約0.5mm厚である。第1水平板111、抜け止め板112、連結板113、フック板114は、板厚が異なってもよい。
【0019】
第2本体12は、壁面パネル21(後掲
図10参照)の厚みの半分程度の長さである平面視長方形の水平部分を第2水平板121とし、第2水平板121の後縁から下ろした正面視長方形の垂直部分を基準板122、第2水平板121の前縁から下ろした正面視長方形の垂直部分を掛合板123とした断面コ字状の金属製板部材である。第2本体12は、掛合板123を第1本体11のフック板114に上方から掛合させた際、第2水平板121を第1水平板111の下方から接面させる(
図2参照)。
【0020】
第2本体12の板幅は、第2水平板121、基準板122、掛合板123がすべて同幅で、約2000mm(5個のブロック31と目地幅との合計)である。第2水平板111の長さは約13mm、基準板122及び掛合板123の長さは同じ約20mmである。また、第2本体12は、第1本体11同様、1枚の金属板を折り曲げて形成することから、第2水平板121、基準板122、掛合板123がすべて同厚で、第1本体と同じ約0.5mm厚である。第2水平板121、基準板122、掛合板123は、板厚が異なってもよい。
【0021】
本例の第1本体11及び第2本体12は、いずれも金属製であるが、壁面パネル21を支持できる強度を有すれば、樹脂製、セラミックス製又は木製でもよく、これら素材を組み合わせた複合構造でもよい。第1本体11及び第2本体12が一体化されたパネル支持治具1も、金属製、樹脂製、セラミックス製又は木製のほか、これら素材の複合構造とすることもできる。また、第1本体11及び第2本体は、同じ素材である必要はなく、例えば第1本体11が金属製としながら、第2本体12を樹脂製とすることもできる。
【0022】
本発明のパネル支持治具1を用いた装飾壁面2の構築方法の一例を説明する。まず、施工手順1として、基礎(図示略)から縦筋33を延ばし、壁本体3を構成するブロック31の最下段を並べた段階で、
図3に見られるように、複数の第1本体に第2本体12が支持されたパネル支持治具1を上方から取り付ける。本例の壁本体3は、長さ39cm、高さ19cm、幅15cmで、前後のフロントシェル311を4枚のウェブシェル312で繋いで3個の孔313を形成したコンクリート製のブロック(CB)31を長手方向に5個並べる構成で、モルタル32で形成される目地の幅が1cmである。本例は、手前側のフロントシェル311に対して装飾壁面2を形成する。
【0023】
本例のパネル支持治具1は、ブロック31の左右の孔313毎に1個の第1本体11を割り当てており、合計10個の第1本体11を用いている。また、第2本体12は、並べられる5個のブロック31に目地幅を加えた約2000mmの幅(左右方向長さ)である。第1本体11及び第2本体12は、強固に結合されているものではなく、第2本体12に対して第1本体を左右にずらすことができる。これにより、第1本体11及び第2本体12を結合したパネル支持治具1をブロック31に取り付けた後、第1本体11を左右にずらして位置調整できる。
【0024】
第2本体12は、基準板122をブロック31のフロントシェル311の表面に当接させ、ブロック31のフロントシェル311の表面に対する掛合板123の前後位置が特定される。第1本体11は、掛合板123と連結板113とを掛合、一体化しているので、ブロック31のフロントシェル311の表面に対する連結板113の前後位置が特定される。そして、連結板113と第1水平板により繋がる抜け止め板111の前後位置が特定される。本例のパネル支持治具1は、抜け止め板111がブロック31のフロントシェル311の内面から少し離れた前後位置にある。
【0025】
第1本体11は、
図4に見られるように、抜け止め板112の幅W1がブロック31の孔313の並行な辺の幅HWより狭いので、第2本体12に対して左右にずれても、抜け止め板112がブロック31の孔313の円弧部分に干渉しない。本例のパネル支持治具1は、基準板122をブロック31のフロントシェル311の表面に当接させた状態で、抜け止め板112がフロントシェル311の内面から離れているので、抜け止め板112がブロック31の孔313の円弧部分に干渉せずに第1本体を左右に動かせる範囲は大きい。
【0026】
第2本体12は、第2水平板121及び掛合板123がいずれもブロック31の幅BWを超える幅W2(5個のブロック31相当)である。このため、上段の壁面パネル21は、すべて同じ第2水平板121に載ることで高さを揃えることができ、また下段の壁面パネル21は、すべて同じ掛合板123に掛合することで前後位置を揃えることができる。壁面パネル21は、外形の整った形状だけでなく、自然石を利用できる。本発明のパネル支持治具1は、こうした自然石からなる壁面パネル21の並んだ高さや前後位置を整えることにより、装飾壁面2の審美性を高める。
【0027】
第1本体11及び第2本体12は、別々に構成できる。これから、例えば
図5に見られるように、幅広の第1本体11に、ブロック31毎の短い第2本体12を組み合わせて別例1のパネル支持治具1を構成してもよい。ブロック31毎の短い第2本体12は、例えばブロック31の並びが曲がっていたり、ブロック31のフロントシェル311の表面が面一でない壁本体3にパネル支持治具1を取り付けたりする場合に用いることができる。別例1のパネル支持治具1は、第1本体11を広幅として左右の位置ずれの幅を狭くし、第2本体12の位置ずれを制約している。
【0028】
また、
図6に見られるように、第2水平板121の長さを長くした第2本体12と、本例の第1本体11とを組み合わせた別例2のパネル支持治具1を構成してもよい。パネル支持治具1は、第2本体12の第2水平板121の長さ(前後幅)が、壁面パネル21のスリット214に差し込む掛合板123の前後位置を決めることから、第2水平板121の長さを加減すると、壁本体3に取付可能な壁面パネル21の厚みを加減できる。厚みの異なる壁面パネル21を混在させる場合、別例1のパネル支持治具1における第2本体12の水平板121の長さを個々に異ならせてもよい。
【0029】
こうして、最下段のブロック31にパネル支持治具1を取り付けると、
図7及び
図8に見られるように、施工手順2として、パネル支持治具1の第1本体11を挟むように、上段のブロック31を積層する。こうして、パネル支持治具1は、上段及び下段のブロック31の目地を構成するモルタル32から第1本体11の前半を突出させ、基準板122をブロック31のフロントシェル311の表面に当接させた第2本体12を支持する格好で、ブロック31に取り付けられていく。
【0030】
パネル支持具1は、第1本体11を介して壁本体3に固定される。第1本体11は、抜け止め板112が下段のブロック31の孔313に差し込まれ、孔313に充填されたモルタル32が固化し、また下段のブロック31の平面に接面する第1水平板111が上段及び下段のブロック31に挟まれ、上段及び下段のブロック31を接合する目地のモルタル32が固化することにより、壁本体3に固定される(
図8参照)。実際には、上段のブロック31に第1水平板111が押さえつけられることにより、第1本体11は、モルタル32が固化する前からほとんど動かない程に位置拘束されている。
【0031】
第2本体12は、壁本体3に固定された第1本体11を介して、壁本体3に対して固定される。第2本体12は、基準板122をブロック31のフロントシェル311の表面に当接させ、第2水平板121を第1水平板111に下方から当接させ、掛合板123を後方から連結板113に当接させた状態で第1本体11のフック板114に上方から掛合しているので、第1本体1に対して位置拘束されている。このように、第2本体12は、第1本体11と物理的に一体化されていないが、第1本体11と組付関係をずらすことなく、安定して壁本体3に対して固定される。
【0032】
こうして、施工手順3として、
図9に見られるように、上段及び下段のブロック31に挟まれた下4段のパネル支持治具1と、第1本体11の抜け止め板112が孔313内で固化したモルタル32に固定された最上段のパネル支持治具具が取り付けられた壁本体3が完成する。既述したように、モルタル32が固化する前からパネル支持治具1はほとんど動かない程に位置拘束されているが、安全面の配慮から、壁本体3のモルタル32が固化した後、壁面パネル21を取り付けていくとよい。
【0033】
本発明のパネル支持治具1により壁本体3に取り付けられる壁面パネル21は、外形の整った形状だけでなく、自然石を利用することもできる。自然石を利用する場合、
図10に見られるように、概略上面211、側面212及び下面213の区別がつく程度の正面視長方形に整えるとよい。上面は、左右方向に延びるスリット214を設ける。また、下面213は、基礎やパネル支持具1の第1水平板111及び第2水平板121に安定して乗せることができるように、水平に成形したり、少なくとも複数の接地点を設けたりすると好ましい。
【0034】
壁面パネル21は、施工手順4として、
図11に見られるように、下面213を手前に引いて傾けた姿勢でスリット214を上段のパネル支持具1の連結板113及び掛合板123に近づけ、パネル支持具1の連結板113及び掛合板123をスリット214に差し込むように、徐々に起こしながら持ち上げる。このとき、スリット214がパネル支持具1の連結板113及び掛合板123より長ければ、壁面パネル21は、スリット214深くにパネル支持具1の連結板113及び掛合板123が差し込まれ、下面213を下段のパネル支持具1の第1水平板111及び第2水平板121から浮かせた状態となる。
【0035】
下面213を下段のパネル支持具1の第1水平板111及び第2水平板121から浮かせた状態の壁面パネル21は、
図12に見られるように、そのまま下ろして下面213を下段のパネル支持具1の第1水平板111及び第2水平板121に接地させる。最下段の壁面パネル21は、基礎の上に下面213に接地させ、最下段のパネル支持治具1の連結板113及び掛合板123にスリット214を掛合させる。また、2段~最上段の壁面パネル21は、下段のパネル支持治具1に下面213に載せ、上段のパネル支持治具1にスリット214を掛合させた状態で取り付けられる。
【0036】
こうして、壁本体3は、順次壁面パネル21を取り付けていき、
図13に見られるように、パネル支持治具1により5段×5列の壁面パネル21が並んで取り付けられた状態となる。この段階の壁面パネル21は、パネル支持治具1に仮置きされているような状態にあり、上下方向の位置調整こそできないものの、左右方向にずらして位置調整できる。本例のパネル支持治具1は、壁本体3の幅に等しい長い第2水平板121を有している。このため、壁面パネル21は、パネル支持治具1の第2水平板121に沿って左右方向に位置調整され、隣り合う壁面パネル21の高さのずれる虞がない。
【0037】
壁面パネル21の位置調整を終えたら、施工手順5として、
図14に見られるように、壁面パネル21の隙間にモルタル32を充填して壁面パネル21を固定すると共に、ブロック31が露出する壁本体3の天面及び側面にそれぞれ化粧板22を取り付けて、装飾壁面2を完成させる。パネル支持治具1は、壁面パネル21の隙間を埋めるモルタル32に隠れ、表面に現れない。モルタル32に埋められるパネル支持治具1は、装飾壁面2の構造強度を高める構造材としても機能する。
【0038】
本発明のパネル支持治具1は、ブロック31を積層して構成される壁本体3であれば、壁本体3に特別な加工を施すことなく、容易に取り付けることができる。また、壁面パネル21は、上面211にスリット214を設けるのみで、そのほかに特別な加工を要しないので、廉価かつ容易に準備できる。とりわけ、外形の不揃いな自然石を壁面パネル21として利用する場合、上下一対の凹溝等の加工が必要なく、上面211にスリット214を設けるのみで利用可能となる利点がある。こうして、本発明のパネル支持治具1は、自然石を壁面パネル21として利用する場合に好適な治具となる。
【符号の説明】
【0039】
1 パネル支持治具
11 第1本体
111 第1水平板
112 抜け止め板
113 連結板
114 フック板
12 第2本体
121 第2水平板
122 基準板
123 掛合板
2 装飾壁面
21 壁面パネル
211 上面
212 側面
213 下面
214 スリット
22 化粧板
3 壁本体
31 ブロック
311 フロントシェル
312 ウェブシェル
313 孔
32 モルタル
33 縦筋
W1 第1本体の幅
HW ブロックの孔の並行部分の幅
W2 第2本体の幅
BW ブロックの幅