(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】抗がん剤用の調製キット
(51)【国際特許分類】
A61J 1/20 20060101AFI20231120BHJP
A61J 1/00 20230101ALI20231120BHJP
【FI】
A61J1/20 314C
A61J1/00 A
(21)【出願番号】P 2019229021
(22)【出願日】2019-12-19
【審査請求日】2022-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000206185
【氏名又は名称】大成化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】堀田 泰治
(72)【発明者】
【氏名】堀 未来
(72)【発明者】
【氏名】染川 剛
【審査官】岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0074148(US,A1)
【文献】特表2002-501790(JP,A)
【文献】国際公開第2015/046170(WO,A1)
【文献】特表2006-504455(JP,A)
【文献】国際公開第2014/087935(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/20
A61J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗がん剤を充填したプレフィルドシリンジと、
前記プレフィルドシリンジに取り付けられた状態で、
前記プレフィルドシリンジのプランジャの押操作可能な分量を定めることによって前記プレフィルドシリンジから吐出する抗がん剤の分量を設定可能な
プレフィルドシリンジ用の使用量調整具と、
前記プレフィルドシリンジのノズルに取り付けられたシリンジ側閉鎖式薬剤移送コネクタと、
輸液バッグと、
該輸液バッグに取り付けられているバッグ側閉鎖式薬剤移送コネクタと、
を備え、
シリンジ側閉鎖式薬剤移送コネクタとバッグ側閉鎖式薬剤移送コネクタとは互いに連結可能であり、且つ連結状態で抗がん剤の流路が開かれ、非連結状態で該流路が閉鎖されるように構成されている、
抗がん剤用の調製キット。
【請求項2】
前記使用量調整具は、
前記プランジャの押操作可能な分量を定めることによって、前記プレフィルドシリンジに充填されている液剤のうち使用可能とする分量を定めるための使用量設定部と、
前記使用量設定部で定めた前記分量の設定の変更を規制した規制状態と、前記使用量設定部による前記分量の設定を許容した許容状態とに切り替え可能な設定規制部とを有する、
請求項1に記載の抗がん剤用の調製キット。
【請求項3】
前記シリンジ側閉鎖式薬剤移送コネクタを覆うカバーであって、前記シリンジ側閉鎖式薬剤移送コネクタに着脱可能なカバーを備える、
請求項1又は請求項2に記載の抗がん剤用の調製キット。
【請求項4】
前記シリンジ側閉鎖式薬剤移送コネクタを覆うカバーであって、前記シリンジ側閉鎖式薬剤移送コネクタに着脱可能なカバーを備え、
前記使用量調整具には、前記シリンジのバレルの後端側が挿通され、
前記使用量調整具の外径と前記カバーの外径は、前記シリンジの外径よりも大きくなっている、
請求項2又は請求項3に記載の抗がん剤用の調製キット。
【請求項5】
前記シリンジ側閉鎖式薬剤移送コネクタに連結可能な閉鎖式エア抜きコネクタを備える、
請求項1~4の何れか1項に記載の調整キット。
【請求項6】
前記バッグ側閉鎖式薬剤移送コネクタは、前記輸液バッグの溶着部に対して着脱不能に取り付けられる取付部を有する、
請求項1に記載の抗がん剤用の調整キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンジを用いて輸液バッグ内に液剤を移して薬液を調製する、抗がん剤用の調製キットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の抗がん剤の調整方法として、溶解液を収容した輸液バッグからディスポーザブルシリンジに溶解液の一部を吸引し、薬剤を収容したバイアルに注入することで混合した後、混合液をバイアルからシリンジに再度吸引し輸液バッグに戻すことで調整する方法が一般的である。
【0003】
また、例えば、特許文献1に示すような、薬剤を収容したバイアルと、溶解液が充填されているプレフィルドシリンジと、バイアルとプレフィルドシリンジとを液密に接続する移注器具(以下、第一移注器具と称する)と、輸液バッグと、輸液バッグとプレフィルドシリンジとを液密に接続する移注器具(以下、第二移注器具と称する)と、を備えた抗がん剤用の調製キットが用いられることがある(例えば特許文献1参照)。
【0004】
前記抗がん剤用の調製キットでは、プレフィルドシリンジとバイアルを第一移注器具で接続した状態でバイアル内の薬剤とプレフィルドシリンジ内の溶解液とをバイアル内で混合した後、混合液をシリンジ内に再引き込みし、続いてプレフィルドシリンジと輸液バッグとを第二移注器具で接続した状態でプレフィルドシリンジから輸液バッグへと混合液を充填している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来の調整方法や調製キットにおいては、バイアル内の混合液を使用する量だけシリンジに表示された目盛りを確認しながら引き込む必要があり、正確な量を引き込むことは困難であった。また、バイアル内で薬剤と溶解液を混合した後、バイアルから混合液をシリンジ内に再度引き込む工程、輸液バッグに注入する工程を行う必要がある。次にバイアル内に残った混合液を使用する際も、前記工程と同様の工程を行う必要があったため、移送工程が多く曝露するリスクが高かった。
【0007】
そこで、本発明は、かかる実情に鑑み、抗がん剤の曝露を防止した状態で、シリンジ内の抗がん剤を複数回に分けて正確な分量を輸液バッグに注入できる抗がん剤用の調製キットの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の抗がん剤用の調製キットは、
抗がん剤を充填したプレフィルドシリンジと、
該プレフィルドシリンジに取り付けられた状態で、該プレフィルドシリンジから吐出する抗がん剤の分量を設定可能な使用量調整具と、
前記プレフィルドシリンジのノズルに取り付けられたシリンジ側閉鎖式薬剤移送コネクタと、
輸液バッグと、
該該輸液バッグに取り付けられているバッグ側閉鎖式薬剤移送コネクタと、
を備え、
シリンジ側閉鎖式薬剤移送コネクタとバッグ側閉鎖式薬剤移送コネクタとは互いに連結可能であり、且つ連結状態で抗がん剤の流路が開かれ、非連結状態で該流路が閉鎖されるように構成されている。
【0009】
上記構成の抗がん剤用の調製キットによれば、プレフィルドシリンジには予め抗がん剤が充填されているため、プレフィルドシリンジから輸液バッグに抗がん剤を移す前の段階において、プレフィルドシリンジと別の器具との間で抗がん剤を移し替える作業をなくすことによって被爆リスクを抑えることができる。
【0010】
また、使用量調整具によってプレフィルドシリンジからの抗がん剤の吐出量を調整することで、プレフィルドシリンジから輸液バッグへの抗がん剤の正確な分量の注入を複数回行うことができる。また、シリンジ側閉鎖式薬剤移送コネクタとバッグ側閉鎖式薬剤移送コネクタとは互いに連結されている状態においてのみ抗がん剤が流通可能となるため、プレフィルドシリンジを輸液バッグに付け外しする際における調製者の被爆リスクも抑えることができ、複数回に分けてプレフィルドシリンジ内の抗がん剤を使用する場合も、一度使用したシリンジを保管している間も曝露するおそれがない。
【0011】
本発明の抗がん剤用の調製キットにおいて、
前記使用量調整具は、
前記プレフィルドシリンジに充填されている液剤のうち使用可能とする分量を定めるための使用量設定部と、
前記使用量設定部で定めた前記分量の設定の変更を規制した規制状態と、前記使用量設定部による前記分量の設定を許容した許容状態とに切り替え可能な設定規制部とを有する、ようにしてもよい。
【0012】
このようにすれば、使用量設定部が使用者の意図しないタイミングで動いてしまうことで設定した分量が変更されて吐出されてしまうことを防止できる。
【0013】
本発明の抗がん剤用の調製キットは、
前記シリンジ側閉鎖式薬剤移送コネクタを覆うカバーであって、前記シリンジ側閉鎖式薬剤移送コネクタに着脱可能なカバーを備えるようにしてもよい。
【0014】
上記構成の抗がん剤用の調製キットによれば、シリンジ側閉鎖式薬剤移送コネクタにカバーを装着すれば、シリンジ側閉鎖式薬剤移送コネクタが露出しない状態になるため、抗がん剤が残っているプレフィルドシリンジを保管する場合に、プレフィルドシリンジからの抗がん剤の漏出を防止できる。
【0015】
本発明の抗がん剤用の調製キットは、
前記使用量調整具には、前記シリンジのバレルの後端側が挿通され、
前記使用量調整具の外径と前記カバーの外径は、前記シリンジの外径よりも大きくなっていてもよい。
【0016】
このようにすれば、プレフィルドシリンジを載置した際にバレルが載置面に直接触れないようにすることによって、バレルの破損、すなわち、抗がん剤が漏出するリスクを抑えることができる。
【0017】
また、本発明の抗がん剤用の調製キットは、
前記シリンジ側閉鎖式薬剤移送コネクタに連結可能な閉鎖式エア抜きコネクタを備えていてもよい。
【0018】
かかる構成によれば、閉鎖式エア抜きコネクタをシリンジ側閉鎖式薬剤移送コネクタに連結することにより、プレフィルドシリンジを使用する前に、曝露のリスク無くプレフィルドシリンジ内に残った気体を排出することができる。これにより、使用量調整具で設定した分量を正確に吐出することができるようになる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明の抗がん剤用の調製キットは、抗がん剤の曝露を防止した状態で、シリンジ内の抗がん剤を複数回に分けて輸液バッグに注入できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る抗がん剤用の調製キットの外観図である。
【
図2】
図2において、(a)は同実施形態に係る調製キットが備えるプレフィルドシリンジの側面図であり、(b)は該プレフィルドシリンジの縦断面図である。
【
図3】
図3は、同実施形態に係る調製キットの使用量調整具の斜視図である。
【
図4】
図4は、同実施形態に係る使用量調整具の分解斜視図である。
【
図5】
図5は、同実施形態に係る調製キットのプレフィルドシリンジ及び使用量調整具の断面図である。
【
図6】
図6は、同実施形態に係る使用量調整具の可動受部の動きをガイドする構造の説明図であって、(a)は外観図、(b)は縦断面図である。
【
図7】
図7は、同実施形態に係る使用量調整具による分量設定の変更及び分量設定の変更に対する規制と規制の解除を行うための機構の説明図であり、(a)は外観図、(b)は縦断面図である。
【
図8】
図8は、同実施形態に係る使用量調整具の可動受部の動きを規制する構造の説明図であり、(a)は可動受部の動きを規制する前の状態の説明図、(b)は可動受部のスライドを規制した状態の説明図である。
【
図9】
図9は、同実施形態に係る調製キットのシリンジ側閉鎖式薬剤移送コネクタとカバーの外観図である。
【
図10】
図10は、同実施形態に係る調製キットのシリンジ側開閉栓とバッグ側開閉栓の非連結状態の説明図である。
【
図11】
図11は、同実施形態に係る調製キットのシリンジ側開閉栓とバッグ側開閉栓の連結状態の説明図である。
【
図12】
図12は、同実施形態に係る調製キットの使用量調整具の使用方法の説明図であって、(a)は未使用時の説明図、(b)は分量設定の変更を許容している状態の説明図、(c)は分量設定を変更している状態の説明図、(d)は分量設定の変更を規制した状態の説明図、(e)は分量設定の変更を規制したまま、設定した分量の薬剤を吐出完了した状態の説明図、(f)は再び分量設定を変更している状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態にかかる抗がん剤用の調製キット(以下、調整キットと称する)について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0022】
調製キット1は、
図1に示すように、抗がん剤を充填したプレフィルドシリンジ2と、該プレフィルドシリンジ2に取り付けられた状態で、該プレフィルドシリンジ2から吐出する抗がん剤の分量を設定可能な使用量調整具3と、前記プレフィルドシリンジ2のノズルに取り付けられているシリンジ側閉鎖式薬剤移送コネクタ4と、輸液バッグ5と、該輸液バッグ5に取り付けられているバッグ側閉鎖式薬剤移送コネクタ6と、梱包材7と、シリンジ側閉鎖式薬剤移送コネクタ4に被せられたカバー8と、閉鎖式エア抜きコネクタ9を備えている。
【0023】
プレフィルドシリンジ2は、
図2(a)に示すように、薬剤等の液体が充填されるバレル20と、該バレル20内に充填されている液剤を押し出すためのプランジャ21とを備えている。
【0024】
バレル20は、筒状部200と、該筒状部200の軸線方向における一端部に設けられているノズル201と、該筒状部200の軸線方向における他端部の外周全周から外方(筒状部200の径方向外方)に向かって延出する円環状のフランジ部202とを有する。
【0025】
プランジャ21は、
図2(b)に示すように、軸状のロッド部210と、該ロッド部210の先端部(長手方向における一端)に取り付けられたガスケット211であって、筒状部200の内周面全周に亘って密接するガスケット211(
図2(b)参照)と、ロッド部210の後端部(長手方向における他端部)に形成された操作部212と、を有する。
【0026】
操作部212は、ロッド部210に対して鍔状に形成されており、一方の板面はプランジャ21の進退方向における前方側に向けて配置され、他方の板面はプランジャ21の進退方向における後方側に向けて配置されている。より具体的に説明すると、操作部212の一方の面はプランジャ21の進退方向における前方側に向けて配置され、操作部212の他方の面はプランジャ21の進退方向における後方側に向けて配置されている。また、操作部212の外形は、ロッド部210の外形よりも大きくなっており、操作部212の外周縁部は、全周に亘ってロッド部210よりも外側に位置している。
【0027】
本実施形態では、プランジャ21の進退方向を進退方向と称し、該進退方向のうちプランジャ21が前進する方向(プランジャ21がバレル20内に押し込まれる方向)を前進方向、該進退方向のうちプランジャ21が後退する方向(プランジャ21がバレル20から引き抜かれる方向)を後退方向と称して以下の説明を行うこととする。
【0028】
使用量調整具3は、例えば、医師や処方箋等により指定された用量に合わせてプレフィルドシリンジ2に充填されている液剤のうち使用可能とする分量を定めるために使用される器具である。なお、前記液剤のうち使用可能とする分量とは、一回のプランジャ21の押操作に対して吐出可能とする液剤の分量のことである。
【0029】
使用量調整具3は、
図3に示すように、プレフィルドシリンジ2に充填されている液剤のうち使用可能とする分量の設定を定めるための使用量設定部30と、使用量設定部30で定めた分量の設定の変更を規制した規制状態と、使用量設定部30による分量の設定の変更を許容した許容状態とに切替可能な設定規制部31と、を備えている。
【0030】
なお、本実施形態においては、プレフィルドシリンジ2に充填されている液剤のうち使用可能とする分量の設定を分量設定と称して以下の説明を行うこととする。
【0031】
使用量設定部30は、
図4に示すように、プランジャ21を中心とする周方向での回転操作により前記分量設定を変更する設定操作部300と、操作部212の前面に対向配置され、且つ前記進退方向において移動可能である可動受部301と、該可動受部301とバレル20とを接続する接続部302と、設定操作部300の回転動作に連動させて前記可動受部301を前記進退方向で移動させる連動機構303と、可動受部301の前記進退方向前方側への移動量(すなわち、使用可能とする分量)を計るための目盛部304とを有する。
【0032】
設定操作部300は筒状であり、軸線方向を前記進退方向に合わせた状態で配置されている。
図5に示すように、設定操作部300内にはロッド部210が挿通された状態で収容されている。また、設定操作部300は、プレフィルドシリンジ2に対して相対回転可能となるように構成されている。そのため、設定操作部300は、ロッド部210の周囲を取り囲んだ状態で該ロッド部210を中心とする周方向で回転(自転)するように構成されている。
【0033】
本実施形態の設定操作部300は、
図4に示すように、筒状の操作筒3000と、操作筒3000の外周面から操作筒3000の径方向外方向に向かって延出する掛止鍔部3001と、を有する。
【0034】
操作筒3000の軸線方向における一端はノズル201側に配置される先端であり、操作筒3000の軸線方向における他端はプランジャ21の操作部212側に配置される後端である。
【0035】
掛止鍔部3001は、操作筒3000の周方向全周に亘って連続しているため円環状であり、操作筒3000の後端側に形成されている。
【0036】
可動受部301は、筒状であり且つ内部にロッド部210が挿通されるロッド挿通部3010と、ロッド挿通部3010に設けられ、且つ前記進退方向後方側でプランジャ21の操作部212を受け止めるための受止部3011と、を有する。
【0037】
ロッド挿通部3010の内周面とロッド部210の外周面とは互いに接しているが、ロッド挿通部3010は、ロッド部210に対して前記進退方向において相対移動可能である。また、ロッド挿通部3010の軸線方向は、前記進退方向と一致している。
【0038】
受止部3011は、
図5に示すように、ロッド挿通部3010の後端(前記進退方向における後端)に形成されている。受止部3011の前記進退方向における後端面は操作部212の前面と対向しており、操作部212に対してロッド挿通部3010を前進させると受止部3011の後端面と操作部212の前面との間にはスペースが形成され、ロッド挿通部3010に対して操作部212(プランジャ21)を前進させると前記スペースが縮まり、受止部3011の後端面と操作部212の前面とが当接する。
【0039】
すなわち、受止部3011の前記進退方向における配置位置により、1回の押操作でプランジャ21を押操作できる分量(以下、押操作許容量と称する)が定まる。
【0040】
接続部302は、
図6(a)に示すように、回転が規制された状態でバレル20に固定される固定部3020と、固定部3020に設けられ且つ可動受部301を前記進退方向でガイドするためのガイド部3021と、連動機構303(より具体的には、後述の連動回転部3030)を回転可能な状態で取り付ける取付部3022と、を有する。
【0041】
本実施形態に係る固定部3020は、
図6(b)に示すように、バレル20の後端部(より具体的にはバレル20のフランジ部202)を抱持するように構成されている。
【0042】
ガイド部3021は、固定部3020から前記進退方向後方に向かって延出しており、ロッド挿通部3010に形成されている長孔3010a内に入るように形成されている。
【0043】
ここで、長孔3010aは、ロッド挿通部3010の軸線方向(長手方向)に沿って延びるように形成されている。なお、本実施形態のロッド挿通部3010には2つの長孔3010aが形成されているが、長孔3010aの数は、1つであっても3つ以上であってもよい。
【0044】
本実施形態のガイド部3021は、取付部3022から前記進退方向後方に向かって延出する延出部3021aと、延出部3021aから内側に向かって突出する突出部3021bと、を有しており、突出部3021bがロッド挿通部3010の長孔3010a内に入るように構成されている。
【0045】
突出部3021bは、前記周方向において長孔3010aを形成している縁部(長辺縁部)に当接するように構成されている。そのため、突出部3021bは、ロッド挿通部3010の前記周方向での回り止めをする一方で、前記進退方向での移動を許容するように構成されている。このように、接続部302は、可動受部301を回り止めした状態で前記進退方向に沿って移動させるための構成である。
【0046】
なお、接続部302にはロッド挿通部3010の長孔3010aと同数のガイド部3021が形成されているため、ロッド挿通部3010の長孔3010aのそれぞれには、別々のガイド部3021が挿通されている。
【0047】
取付部3022は、円筒状に形成されており、連動機構303(より具体的には、後述の連動回転部3030)が回転可能且つ抜止した状態で外嵌されている。
【0048】
連動機構303は、
図8(a)に示すように、設定操作部300内に配置された状態で設定操作部300の回転と連動して前記周方向で回転する(すなわち、設定操作部300と供回りする)連動回転部3030と、連動回転部3030とロッド挿通部3010に設けられ且つ回転する連動回転部3030を前記周方向で受けるロッド挿通部3010を前記進退方向に移動させる動力伝達部3031と、を有する。
【0049】
連動回転部3030には、設定操作部300の内周面から径方向内側に向かって突出する突起部3004(
図7(b)参照)が嵌入される嵌入溝3030a(
図7(a)参照)が形成されている。
【0050】
嵌入溝3030aは、前記進退方向に沿って延びるように形成されている。また、嵌入溝3030aに嵌入された突起部3004は、前記進退方向での動きが許容される一方で、設定操作部300の回転方向と同方向での動きは嵌入溝3030aを形成する側面によって規制される。そのため、設定操作部300は、連動回転部3030に対する前記進退方向でのスライド動作が許容される一方で、連動回転部3030に対する回転動作を規制して連動回転部3030を供回りさせるように構成されている。
【0051】
動力伝達部3031は、
図5に示すように、連動回転部3030の内周面に形成された内向螺合部3031aと、ロッド挿通部3010の外面に形成され、且つ内向螺合部3031aに螺合する外向螺合部3031bと、を有する。
【0052】
内向螺合部3031aは雌ねじ部で構成され、外向螺合部3031bは雄ねじ部で構成されている。また、ロッド挿通部3010は、ガイド部3021により前記周方向での回転が規制されている状態であるため、連動回転部3030を回転させると、ロッド挿通部3010は回転せずに前記進退方向で移動するようになっている。
【0053】
目盛部304は、
図2に示すように、プランジャ21のロッド部210に形成されている。また、目盛部304は、操作部212の位置を基準として前方側に向かうにつれて値(使用可能となる液剤の分量を示す値)が大きくなるように形成されている。
【0054】
設定規制部31は、
図7(a)に示すように、前記進退方向においてプレフィルドシリンジ2に対してスライド操作可能な規制操作部310と、規制操作部310の前記後退方向へのスライドに伴い設定操作部300の回転動作を規制する回止部311と、規制操作部310の前記後退方向へのスライドに伴い可動受部301の前記進退方向での移動を規制する進退規制部312と、を有する。
【0055】
本実施形態の規制操作部310は、操作筒3000によって構成されている。すなわち、規制操作部310は、液剤の分量設定の変更及び、分量設定の変更に対する規制と規制の解除とを行う場合に操作する部分である。
【0056】
回止部311は、筒状であり、前記プランジャ21を中心とする周方向での回転(自転)が規制された状態で接続部302に固定される先端部3110と、操作筒3000がスライド可能な状態で挿し込まれる後端部3111と、を有する。
【0057】
また、回止部311は、操作筒3000が先端部3110側に前進している状態では操作筒3000の前記周方向での回転を許容し、操作筒3000が後端部3111側に後退している状態で操作筒3000の前記周方向での回転を規制するように構成されている。
【0058】
本実施形態に係る回止部311において、
図7(b)に示すように、後端部3111の内周面には、径方向内側に向かって突出し、且つ軸線方向に沿って直線状に延びる回止凸部3112が形成されており、該回止凸部3112は、
図8(a)が示すように、操作筒3000が前進している状態においては、回止凸部3112と、操作筒3000の先端部の外周面から径方向外方向に突出する干渉用凸部3002とが周方向において非係合となっているが、
図8(b)が示すように、操作筒3000が後退している状態においては、回止凸部3112と干渉用凸部3002とが前記周方向で干渉する(当接する)。
【0059】
進退規制部312は、
図8(a)、
図8(b)に示すように、可動受部301の外周面に対向配置されている。そのため、操作筒3000の内側には連動回転部3030と進退規制部312とが配置され、該連動回転部3030と進退規制部312の内側には可動受部301が配置され、さらに、この可動受部301の内側にプランジャ21のロッド部210が挿通されている。
【0060】
また、進退規制部312は、操作筒3000の後退に伴って可動受部301に接近する方向に向けて押し付けられ、操作筒3000の前進に伴って該操作筒3000からの押し付けが解除される。さらに、進退規制部312は、操作筒3000に押し付けられると可動受部301の外面に当接し、操作筒3000からの押し付けが解除されると可動受部301の外面から離間するように構成されている。
【0061】
本実施形態に係る進退規制部312は、連動回転部3030の後端から前記進退方向における後方側に向かって延出するように形成され且つ可撓性を有する可撓片部3120と、可撓片部3120の外面から外方に膨出する膨出部3121と、を有する。
【0062】
そのため、操作筒3000が後退すると、膨出部3121が操作筒3000の後端側の内周縁部によって径方向内側に向けて押され、これにより、可撓片部3120が可動受部301の外周面に当接するように構成されている。
【0063】
シリンジ側閉鎖式薬剤移送コネクタ4は、
図10、及び
図11に示すように、ノズル201に外嵌させる外嵌部40と、外嵌部40の前方に位置する外ノズル41と、外ノズル41内に挿入されている密栓部42と、バッグ側閉鎖式薬剤移送コネクタ6を連結するための連結部43と、を有する。
【0064】
外嵌部40がノズル201に外嵌されている状態においては、外嵌部40の内部と外ノズル41の内部とがノズル201の内部に連通する。
【0065】
密栓部42の先端部の外周面と外ノズル部41の先端部の内周面とは周方向全周に亘って互いに密接しているため、外ノズル41は密栓部42によって閉じられているが(
図10参照)、密栓部42が外ノズル41の先端側から押圧されて変形すると、外ノズル41と密栓部42との間に隙間ができ、これにより、外ノズル41が開かれるようになっている(
図11参照)。
【0066】
連結部43は、外ノズル41を取り囲むように環状に形成されており、内部にはねじ溝が形成されている。
【0067】
輸液バッグ5は、
図1に示すように、薬剤を収容する収容袋部50と、輸液バッグ5内の薬剤を使用する際に外部の器具が接続される接続ポート51と、を有する。
【0068】
収容袋部50は、2枚のシート材を重ね合わせた状態でそれぞれのシート材の外周縁部を溶着することにより形成されている。
【0069】
収容袋部50の外周縁部は、2枚のシート材を溶着した溶着部500となっており、この溶着部500の内側が薬剤を収容する収容空間501となっている。
【0070】
バッグ側閉鎖式薬剤移送コネクタ6は、中空であり且つ内部が収容空間501に連通するようにして輸液バッグ5に着脱不能に取り付けられる取付部60と、取付部60と内部が連通している筒状の外装部61と、外装部61内にスライド可能(外装部61の軸線方向でスライド可能)に配置された可動管部62と、可動管部62の後端側の開口を開閉する後端側開閉部63、可動管部62の前端側の開口を開閉する前端側開閉部64と、を有する。
【0071】
取付部60は、輸液バッグ5と連通可能な連通路を有し、輸液バッグ5の溶着部500に溶着されている。なお、取付部60は、前記2枚のシート材に挟まれた状態で該2枚のシート材とともに溶着されている。
【0072】
外装部61は、先端部側の外周面上に凸部が形成されており、連結部43の内側に螺合可能である。また、外装部61の先端部側の開口は、シリンジ側閉鎖式薬剤移送コネクタ4の外ノズル41を受け入れ可能となっている。
【0073】
可動管部62は、前端部621に可動管部62がスライドする方向に直交する方向に開口する前端開口6210と、後端部622に可動管部62がスライドする方向に開口する後端開口6220と、先端部621と後端部622との間に配置され、且つ外装部61にスライド可能に接する摺接部623を有する。可動管部62の前端部621は、シリンジ側閉鎖式薬剤移送コネクタ4の外ノズル41内に挿通可能であり、後端部622は取付部60の連通路内に挿通可能となっている。
【0074】
後端側開閉部63は、可動管部62の後端に対向配置され、且つ可動管部62の後端部を抜差可能な後側切込線6300が形成された後端側対向部630と、弾性を有し且つ該後端側対向部630の前方で可動管部62の摺接部623を受けるように配置されている後側受部631とを有する。
【0075】
後端側対向部630の後側切込線6300は、可動管部62の後端部622が挿通されていない状態においては閉じており、液体を通さないようになっている。そのため、可動管部62は、後端部622が後側切込線6300に挿入されていない状態においては後端側対向部630によって後端開口6220が閉じられており(
図10参照)、後端部622が後側切込線6300に挿入されることで後端開口6220が開放されるように構成されている(
図11参照)。
【0076】
前端側開閉部64は、可動管部62の前端に対向配置され、且つ可動管部62の前端部621を抜差可能な前側切込線6400が形成された前端側対向部640と、弾性を有し且つ前端側対向部640と可動管部62の摺接部623との間に配置される前側受部641とを有する。
【0077】
前端側対向部640の前側切込線6400は、可動管部62の前端部621が挿通されていない状態においては閉じており、液体を通さないようになっている。そのため、可動管部62は、前端部621が前側切込線6400に挿入されていない状態においては前端側対向部640によって前端開口6210が閉じられており(
図10参照)、前端部621が前端側切込線6400に挿入されることで前端開口6210が開放されるように構成されている(
図11参照)。
【0078】
そして、シリンジ側閉鎖式薬剤移送コネクタ4とバッグ側閉鎖式薬剤移送コネクタ6とは、互いに連結されていない状態においては、それぞれの流路が閉じた状態となっているが、互いに連結すると、外ノズル41の先端が前端側開閉部64の前端側対向部640を後端側に押圧することで、前端部621が前側切込線6400に挿入され、前端開口6210と外ノズル41の内部が連通可能となる。同時に、前端側対向部640の押圧により前側受部641が圧縮変形し且つ可動管部62の摺接部623を押圧し、これにより、可動管部62が外装部61内を後端側へスライド移動することで、後端部622が後側切込線6330に挿入され、後端開口6220が取付部60の連通路と連通可能となる。これにより、シリンジ側閉鎖式薬剤移送コネクタ4とバッグ側閉鎖式薬剤移送コネクタ6との間から抗がん剤を漏れないようにした状態でそれぞれの流路を連通させることができるようになっている。
【0079】
このように、シリンジ側閉鎖式薬剤移送コネクタ4とバッグ側閉鎖式薬剤移送コネクタ6とは互いに連結可能であり、且つ連結状態で薬剤の流路が開かれ、非連結状態では流路が閉鎖されるように構成されている。そして、シリンジ側閉鎖式薬剤移送コネクタ4とバッグ側閉鎖式薬剤移送コネクタ6とを連結させた際に、輸液バッグ5の収容空間501内で薬剤が構成される。
【0080】
このように、シリンジ側閉鎖式薬剤移送コネクタ4とバッグ側閉鎖式薬剤移送コネクタ6とは、連結されていない状態においてはそれぞれの流路が閉鎖されているが、連結された状態においてはそれぞれの流路が外部に対する液密性を保ったまま開かれて互いに連通するようになっている。
【0081】
梱包材7は、
図1に示すように、上面から輸液バッグ5、プレフィルドシリンジ2(使用量調整具3、シリンジ側閉鎖式薬剤移送コネクタ4とその先端部に取り付けたカバー8を含む)、閉鎖式エア抜きコネクタ9を嵌め込む凹部700が複数形成されているトレー70と、トレー70の上面とともに輸液バッグ5、プレフィルドシリンジ2、閉鎖式エア抜きコネクタ9を覆うシートカバー(図示しない)と、を有する。
【0082】
トレー70の凹部700のうち、プレフィルドシリンジ2を収容するシリンジ用凹部700aには、バレル20を収容するバレル20収容領域が含まれており、このバレル収容領域は、使用者が指を入れてバレル20を掴める程度の広さを有する部分を含んでいる。
【0083】
シートカバーは、透明である。そのため、梱包材7は、シートカバーの下側の様子を視認できるように構成されている。シートカバーの一部には滅菌ガスが透過可能な不織布(例えば、タイベック(R))を使用することができ、シートカバーで覆った状態で滅菌工程を行うことができる。
【0084】
カバー8は、シリンジ側閉鎖式薬剤移送コネクタ4の先端部を挿し込む挿込凹部80が形成されており、挿込凹部80の内周面には、周方向全周に亘って内側に突出する抜止突出部800が形成されている。カバー8の挿込凹部80にシリンジ側閉鎖式薬剤移送コネクタ4を挿し込むと、抜止突出部800がシリンジ側閉鎖式薬剤移送コネクタ4の外周面全周に亘って連続し且つ外方に突出する環状凸部45に係合するため、これにより、カバー8がシリンジ側閉鎖式薬剤移送コネクタ4に対して抜止される。また、カバー8の外形は、多角形等の転がりを防止した形状であることが好ましい。
【0085】
閉鎖式エア抜きコネクタ9は、シリンジ側閉鎖式薬剤移送コネクタ4と連結可能であり、且つ連結状態で流路が開かれ、非連結状態では流路が閉鎖されるように構成されており、流路の途中には、気体は通過できるが液体は通過できないフィルターを備えている。閉鎖式エア抜きコネクタ9をシリンジ側閉鎖式薬剤移送コネクタ4に連結することにより、プレフィルドシリンジ2の使用前に、曝露のリスク無くプレフィルドシリンジ2内に残った気体を排出することができる。これにより、使用量調整具3で設定した分量を正確に吐出することができる。また、プレフィルドシリンジ2が、凍結乾燥剤と溶解液が収容されたデュアルチャンバー式シリンジである場合も、凍結乾燥剤と溶解液を混合した後に、曝露のリスク無くシリンジ内の気体を排出することができる。
【0086】
なお、閉鎖式エア抜きコネクタ9におけるシリンジ側閉鎖式薬剤移送コネクタ4との連結構造は、バッグ側閉鎖式薬剤移送コネクタ6と同様の構造である。
【0087】
本実施形態に係る調製キット1の構成は、以上の通りである。続いて、調製キット1を用いた抗がん剤の調製方法を説明する。
【0088】
調製キット1を使用する場合は、まず、カバーシート越しにプレフィルドシリンジ2から抗がん剤が漏れていないかを目視する。抗がん剤が漏れてない場合は、プレフィルドシリンジ2に取り付けられたシリンジ側閉鎖式薬剤移送コネクタ4からカバー8を外す。次に、シリンジ側閉鎖式薬剤移送コネクタ4に閉鎖式エア抜きコネクタ9を取り付けた後に、エア抜きを行う。エア抜きを行った後、閉鎖式エア抜きコネクタ9を取り外し、プレフィルドシリンジ2に取り付けられた使用量調整具3により分量設定を行う。
【0089】
分量設定を行う場合は、
図12(a)に示すように、未使用時の使用量調整具3では、設定規制部31の状態が前記規制状態に切り替えられているため、
図12(b)に示すように、操作筒3000を前方にスライドさせて設定規制部31の状態を前記規制状態から前記許容状態に切り替える。
【0090】
続いて、操作筒3000を回転させることによって、
図12(c)に示すように、可動受部301を操作部212に対して前進させ、プランジャ21の押込許容量、すなわち、液剤の分量設定を定める。しかる後に、
図12(d)に示すように、操作筒3000を後退方向にスライドさせて設定規制部31の状態を前記許容状態から前記規制状態に切り替える。
【0091】
そして、シリンジ側閉鎖式薬剤移送コネクタ4とバッグ側閉鎖式薬剤移送コネクタ6とを連結した後に、
図12(e)に示すように、操作部212が可動受部301に当接するまでプランジャ21を前進させることによって、設定された分量の液剤をプレフィルドシリンジ2から輸液バッグ5に注入することができる。なお、プランジャ21を前進させる場合は、操作部212に親指を添えて他の指を掛止鍔部3001に掛けた状態でプランジャ21を押し操作すればよい。
【0092】
プレフィルドシリンジ2を一度使い終わった後は、設定規制部31の状態が前記規制状態であることを確認し、カバー8を取り付け、安全キャビネット内等で保管する。
【0093】
プレフィルドシリンジ2内の液剤を再び使用したい場合は、操作筒3000を前方にスライドさせて設定規制部31の状態を前記規制状態から前記許容状態に切り替えた後に、操作筒3000を回転させて液剤の分量設定を行い、操作筒3000を後退方向にスライドさせて設定規制部31の状態を前記許容状態から前記規制状態に切り替え、操作部212が可動受部301に当接するまでプランジャ21を前進させることによって、新たに設定した分量の液剤をプレフィルドシリンジ2から吐出することができる。
【0094】
以上のように、本実施形態に係る調整キット1によれば、プレフィルドシリンジ2には予め抗がん剤が充填されているため、プレフィルドシリンジ2から輸液バッグ5に抗がん剤を移す前の段階において、プレフィルドシリンジ2と別の器具との間で抗がん剤を移し替える作業をなくすことによって被爆リスクを抑えることができる。
【0095】
また、使用量調整具3によってプレフィルドシリンジ2からの抗がん剤の吐出量を調整することで、プレフィルドシリンジ2から輸液バッグ5への抗がん剤の正確な分量の注入を複数回行うことができるうえに、シリンジ側閉鎖式薬剤移送コネクタ4とバッグ側閉鎖式薬剤移送コネクタ6とは互いに連結されている状態においてのみ抗がん剤が流通可能となるため、プレフィルドシリンジ2を輸液バッグ5に付け外しする際における調製者の被爆リスクも抑えることができる。複数回に分けてプレフィルドシリンジ内の抗がん剤を使用する場合も、一度使用したシリンジを保管している間も曝露するおそれがない。
【0096】
このように、本実施形態の調製キットは、抗がん剤の曝露を防止した状態で、シリンジ内の抗がん剤を複数回に分けて輸液バッグに注入できるという優れた効果を奏し得る。
【0097】
また、使用量調整具3は、使用量設定部30で定めた前記分量の設定の変更を規制した規制状態と、前記使用量設定部30による前記分量の設定を許容した許容状態とに切り替え可能な設定規制部31を有するため、使用量設定部30が使用者の意図しないタイミングで動いてしまうことで設定した分量が変更されて吐出されてしまうことを防止できる。
【0098】
また、シリンジ側閉鎖式薬剤移送コネクタ4にカバー8を被せれば、シリンジ側閉鎖式薬剤移送コネクタ4が露出しない状態になるため、抗がん剤が残っているプレフィルドシリンジ2を保管する場合に、プレフィルドシリンジ2からの抗がん剤の漏出を防止できる。
【0099】
さらに、バレル20の後端側に挿通されている使用量調整具3の外径と、ノズル201に取り付けられたシリンジ側閉鎖式薬剤移送コネクタ4に被せるカバー8の外径とがシリンジ2(バレル20)の外径よりも大きくなっているため、プレフィルドシリンジ2を載置した際にバレル20が載置面に直接触れないようにすることによって、バレル20の破損、すなわち、抗がん剤が漏出するリスクを抑えることができる。
【0100】
また、バレル20の後端側に挿通されている使用量調整具3の外径と、ノズル201に取り付けられたシリンジ側閉鎖式薬剤移送コネクタ4に被せるカバー8の外径とは、略同じサイズかカバー8の外径の方が大きくなっている。そのため、プレフィルドシリンジ2を載置した際にバレル20の姿勢を載置面に対して水平に保つか、ノズル201側が斜め上方を向くようにすることもできる。また、カバー8の外形は、多角形等の転がりを防止する形状とすることが可能である。
【0101】
なお、本発明に係る抗がん剤用の調製キットは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0102】
上記実施形態において、掛止鍔部3001は、円環状に形成されていたが、この構成に限定されない。例えば、掛止鍔部3001は、プランジャ21を押し操作する際に使用者が指を掛けることができれば、片状や多角形に形成されていてもよい。
【0103】
上記実施形態において、ロッド挿通部3010は、前記進退方向において前進方向、後退方向のいずれにも移動可能であったがこの構成に限定されない。例えば、ロッド挿通部3010は、前記進退方向前方側への移動(すなわち、前進)のみできるように構成されていてもよい。但し、ロッド挿通部3010は、前記進退方向において前進方向、後退方向のいずれにも移動可能である方が、分量設定の操作性が高まる。
【0104】
上記実施形態において、特に言及しなかったが、受止部3011の形状は、ロッド挿通部3010の外周面全周からロッド挿通部3010の径方向外方向に向かって延出した形状、すなわち、鍔状とは別の形状であってもよい。但し、受止部3011の後端面は、プランジャ21の押操作量(分量設定)を指し示す部位となるため、平坦面であることが好ましい。
【0105】
上記実施形態において、設定規制部31は、設定操作部300の回転動作と、可動受部301のスライド動作とを規制することによって、分量設定の変更を規制するように構成されていたが、この構成に限定されない。例えば、設定規制部31は、設定操作部300と連動回転部3030との周方向での係合を解除する、すなわち、設定操作部300と連動回転部3030とが供回りしないようにすることで分量設定の変更を規制するように構成されていてもよい。
【0106】
上記実施形態において、特に言及しなかったが、梱包材7には、プレフィルドシリンジ2からの液漏れを知らせる液漏報知部を設けてもよい。なお、液漏報知部は、シリンジ用凹部700a内の見える位置等に設けられていればよい。また、液漏報知部には、例えば、水分を含むことで通信状態が変化するRFIDタグや、水分を含むことで変色する資材等を採用し得る。
【0107】
設定操作部300と連動回転部3030の回転とは、ロッド部210を中心とする自転である。
【0108】
このように、使用可能とする分量の設定に対する規制は、可動受部301の前記前進方向での動きを規制できるようになっていればよい。
【0109】
上記実施形態において、規制操作部310は、前記後退方向への移動に伴って前記許容状態を前記規制状態に切り替え、前記前進方向への移動に伴って前記規制状態を前記許容状態に切り替えるように構成されていたが、この構成に限定されない。例えば、規制操作部310は、前記後退方向への移動に伴って前記規制状態を前記許容状態に切り替え、前記前進方向への移動に伴って前記許容状態を前記規制状態に切り替えるように構成されていてもよい。
【0110】
また、上記実施形態において、規制操作部310は、前記進退方向でのスライド操作により前記規制状態と前記許容状態とを切り替えるように構成されていたが、この構成に限定されない。例えば、規制操作部310は、プランジャ21を中心とする周方向での回転操作により前記規制状態と前記許容状態とを切り替えるように構成されていてもよい。なお、このようにする場合、設定操作部300が前記進退方向でスライド操作可能であり、且つ該スライド操作に伴い分量設定がなされるように構成されていることが好ましい。
【0111】
上記実施形態において、梱包材7は、バッグ側閉鎖式薬剤移送コネクタ6付きの輸液バッグ5、シリンジ側閉鎖式薬剤移送コネクタ4とカバー8を取り付けたプレフィルドシリンジ2、閉鎖式エア抜きコネクタ9を一括して梱包するように構成されていたが、この構成に限定されない。例えば、バッグ側閉鎖式薬剤移送コネクタ6付きの輸液バッグ5と、シリンジ側閉鎖式薬剤移送コネクタ4とカバー8を取り付けたプレフィルドシリンジ2、閉鎖式エア抜きコネクタ9を閉鎖式薬剤移送コネクタ4とを別々に梱包してもよい。
【0112】
上記実施形態において、プレフィルドシリンジ2は、1室式シリンジで液剤が充填されていたが、この構成に限定されない。例えば、粉剤や固形剤等の凍結乾燥剤が充填されていてもよく、凍結乾燥剤と溶解液を充填した2室式のデュアルチャンバー式シリンジによってシリンジ内で混合可能な構成であってもよい。
【符号の説明】
【0113】
1…調製キット、2…プレフィルドシリンジ、3…使用量調整具、4…シリンジ側閉鎖式薬剤移送コネクタ、5…輸液バッグ、6…バッグ側閉鎖式薬剤移送コネクタ、7…梱包材、8…カバー、9…閉鎖式エア抜きコネクタ、20…バレル、21…プランジャ、30…使用量設定部、31…設定規制部、40…外嵌部、41…外ノズル、42…密栓部、43…連結部、50…収容袋部、51…接続ポート、60…取付部、61…外装部、62…可動管部、63…後端側開閉部、64…前端側開閉部、70…トレー、80…挿込凹部、200…筒状部、201…ノズル、202…フランジ部、210…ロッド部、211…ガスケット、212…操作部、300…設定操作部、301…可動受部、302…接続部、303…連動機構、304…目盛部、310…規制操作部、311…回止部、312…進退規制部、500…溶着部、501…収容空間、621…先端部、622…後端部、623…摺接部、700…凹部、700a…シリンジ用凹部、800…抜止突出部、3000…操作筒、3001…掛止鍔部、3002…干渉用凸部、3004…突起部、3010…ロッド挿通部、3010a…長孔、3011…受止部、3020…固定部、3021…ガイド部、3021a…延出部、3021b…突出部、3022…取付部、3030…連動回転部、3030a…嵌入溝、3031…動力伝達部、3031a…内向螺合部、3031b…外向螺合部、3110…先端部、3111…後端部、3112…回止凸部、3120…可撓片部、3121…膨出部、6210…前端開口、6220…後端開口、6300…後側切込線、6400…前側切込線