(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】液体圧送装置
(51)【国際特許分類】
F16T 1/45 20060101AFI20231120BHJP
F16T 1/22 20060101ALI20231120BHJP
F04F 5/20 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
F16T1/45
F16T1/22 Z
F04F5/20 A
(21)【出願番号】P 2020007392
(22)【出願日】2020-01-21
【審査請求日】2022-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【氏名又は名称】河部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】谷元 啓示
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-112496(JP,A)
【文献】特開平9-250887(JP,A)
【文献】特開2007-332861(JP,A)
【文献】特開2010-116898(JP,A)
【文献】米国特許第6224345(US,B1)
【文献】特開昭59-28100(JP,A)
【文献】特開平10-73098(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/18-31/34
F16T 1/45
F16T 1/22
F04F 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の流入口と、該流入口に連通する液体の貯留空間とが設けられたケーシングを備え、液体が前記流入口から流入し前記貯留空間に貯留される流入動作と、作動気体を前記貯留空間に導入し該作動気体の圧力によって前記貯留空間から液体を圧送する圧送動作とを交互に行う液体圧送装置であって、
前記貯留空間に連通し、前記流入動作および前記圧送動作のうち流入動作時に前記貯留空間の前記作動気体を吸引する吸引口を有するエゼクタを備え
、
前記エゼクタは、駆動流体として前記作動気体が流通するように構成されており、
前記ケーシングには、前記貯留空間に連通し、前記流入動作時に前記貯留空間の前記作動気体が排出される気体の排出口が設けられており、
前記エゼクタは、前記ケーシングの外部に設けられており、
一端が前記吸引口に接続され、他端が前記貯留空間に開口し、前記貯留空間の前記作動気体が吸引される吸引管を備えている
ことを特徴とする液体圧送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、液体圧送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されているように、蒸気システム等で発生した液体を回収し利用側に圧送する液体圧送装置が知られている。この液体圧送装置は、液体の貯留空間が設けられたケーシングを備えている。液体圧送装置では、液体が流入し貯留空間に貯留される流入動作と、作動気体を貯留空間に導入し該作動気体の圧力によって貯留空間から液体を圧送する圧送動作とが交互に行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蒸気システム等では、発生した液体をできるだけ早く回収することが好ましく、そのため、上述した液体圧送装置では、液体の流入動作を促進させたいという要望がある。
【0005】
本願に開示の技術は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、液体の流入動作を促進させることができる液体圧送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に開示の技術は、液体の流入口と、該流入口に連通する液体の貯留空間とが設けられたケーシングを備え、液体が前記流入口から流入し前記貯留空間に貯留される流入動作と、作動気体を前記貯留空間に導入し該作動気体の圧力によって前記貯留空間から液体を圧送する圧送動作とを交互に行う液体圧送装置である。そして、前記液体圧送装置は、前記貯留空間に連通し、前記流入動作および圧送動作のうち流入動作時に前記貯留空間の前記作動気体を吸引する吸引口を有するエゼクタを備えている。
【発明の効果】
【0007】
本願に開示の技術によれば、液体圧送装置において、液体の流入動作を促進させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る液体圧送装置を示す概略の構成図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る液体圧送装置のケーシング内を示す断面図である。
【
図3】
図3は、給気弁および排気弁を拡大して示す断面図である。
【
図4】
図4は、その他の実施形態に係る液体圧送装置を示す概略の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本願の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本願に開示の技術、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0010】
本実施形態の液体圧送装置1は、例えば蒸気システムに設けられ、蒸気の凝縮によって発生したドレン(復水)を回収してボイラーや廃熱利用装置に圧送するものである。
図1に示すように、液体圧送装置1は、密閉容器であるケーシング10と、エゼクタ65と、吸引管75とを備えている。ドレンは、液体の一例である。
【0011】
ケーシング10には、液体流入口14、液体排出口15、気体導入口16および気体排出口17が設けられている。液体流入口14は、ドレンが流入する液体の流入口であり、液体排出口15は、ドレンが圧送される液体の排出口である。気体導入口16は、蒸気が導入される気体の導入口であり、気体排出口17は、蒸気が排出される気体の排出口である。蒸気は、作動気体の一例であり、蒸気システム内の高圧蒸気が用いられる。
【0012】
具体的には、
図2に示すように、ケーシング10は、本体部11と蓋部12とがボルトによって結合され、内部に貯留空間13が形成されている。貯留空間13は、液体流入口14から流入したドレンが貯留される。液体流入口14は蓋部12の上部寄りに設けられ、液体排出口15は蓋部12の下部に設けられている。気体導入口16および気体排出口17は、何れも蓋部12の上部に設けられている。液体流入口14、液体排出口15、気体導入口16および気体排出口17は、何れも貯留空間13と連通している。
【0013】
さらに、ケーシング10内には、給気弁20および排気弁30と、弁作動機構40とが設けられている。
【0014】
図3にも示すように、給気弁20は気体導入口16に設けられ、排気弁30は気体排出口17に設けられている。給気弁20および排気弁30は、それぞれ気体導入口16および気体排出口17を開閉するものである。給気弁20は、蒸気を気体導入口16から貯留空間13に導入し、該蒸気の圧力によって貯留空間13のドレンを液体排出口15から排出させる。排気弁30は、貯留空間13に導入された蒸気を気体排出口17から排出させる。
【0015】
給気弁20は、弁ケース21、弁体22および昇降棒23を有する。弁ケース21は軸方向に貫通孔を有し、該貫通孔の上側には弁座24が形成されている。弁ケース21の中間部には、貫通孔と外部とが連通する開口25が形成されている。弁体22は、球状に形成されており、昇降棒23の上端に一体的に設けられている。昇降棒23は、弁ケース21の貫通孔に上下動可能に挿入されている。
【0016】
排気弁30は、弁ケース31、弁体32および昇降棒33を有する。弁ケース31は軸方向に貫通孔を有し、貫通孔のやや上側には弁座34が形成されている。弁ケース31には、貫通孔と外部とが連通する開口35が形成されている。弁体32は、略半球状に形成されており、昇降棒33の上端に一体的に設けられている。昇降棒33は、弁ケース31の貫通孔に上下動可能に挿入されている。
【0017】
給気弁20は、昇降棒23が上昇すると弁体22が弁座24から離座して気体導入口16が開放され、昇降棒23が下降すると弁体22が弁座24に着座して気体導入口16が閉鎖される。排気弁30は、昇降棒33が上昇すると弁体32が弁座34に着座して気体排出口17が閉鎖され、昇降棒33が下降すると弁体32が弁座34から離座して気体排出口17が開放される。
【0018】
排気弁30の昇降棒33の下端には、弁操作棒36が連結されている。つまり、排気弁30の昇降棒33は弁操作棒36の上下動に伴って上下動する。また、弁操作棒36には、給気弁20の昇降棒23の下方領域まで延びる連設板37が取り付けられている。給気弁20の昇降棒23は、弁操作棒36が上昇すると連設板37によって押し上げられて上昇し、弁操作棒36が下降すると連設板37も下降するので自重で下降する。
【0019】
つまり、弁操作棒36が上昇すると、給気弁20は開く(開弁する)一方、排気弁30は閉じる(閉弁する)。また、弁操作棒36が下降すると、給気弁20は閉じる(閉弁する)一方、排気弁30は開く(開弁する)。
【0020】
弁作動機構40は、弁操作棒36を上下動させて給気弁20および排気弁30を開弁および閉弁させるものである。弁作動機構40は、フロート41およびスナップ機構50を有する。
【0021】
フロート41は、中空球形に形成され、レバー42が取り付けられている。レバー42は、ブラケット44に設けられた軸43に回転可能に支持されている。レバー42には、フロート41側とは反対側の端部に軸45が設けられている。スナップ機構50は、フロートアーム51、副アーム52、コイルばね53、2つの受け部材54,55を有する。フロートアーム51は、一端部がブラケット59に設けられた軸58に回転可能に支持されている。なお、両ブラケット44,59は互いにねじによって結合され蓋部12に取り付けられている。フロートアーム51の他端部は、溝51aが形成されており、その溝51aにレバー42の軸45が嵌っている。この構成により、フロートアーム51はフロート41の上昇下降に伴い軸58を中心として揺動する。
【0022】
また、フロートアーム51には軸56が設けられている。副アーム52は、上端部が軸58に回転可能に支持され、下端部に軸57が設けられている。受け部材54はフロートアーム51の軸56に回転可能に支持され、受け部材55は副アーム52の軸57に回転可能に支持されている。両受け部材54,55の間には、圧縮状態のコイルばね53が取り付けられている。また、副アーム52には軸61が設けられ、その軸61に弁操作棒36の下端部が連結されている。
【0023】
こうして構成された弁作動機構40は、フロート41の上昇下降に伴って変位し、弁操作棒36を上下動させて給気弁20および排気弁30を開閉させる。そして、液体圧送装置1では、給気弁20および排気弁30が開閉する、即ち気体導入口16および気体排出口17が開閉されることにより、ドレンの流入動作とドレンの圧送動作とが交互に行われる。流入動作および圧送動作の詳細については後述する。
【0024】
エゼクタ65は、貯留空間13に連通し、上述した流入動作および圧送動作のうち流入動作時に貯留空間13の蒸気を吸引する吸引口68を有している。
【0025】
より詳しくは、エゼクタ65は、ケーシング10の外部に設けられている。エゼクタ65は、吸引口68以外に、流入口66および流出口67を有している。エゼクタ65は、駆動流体として蒸気(作動気体)が流通するように構成されている。つまり、エゼクタ65は、蒸気が流入口66から流入して流出口67から流出することにより、吸引口68に吸引作用が生じるように構成されている。
【0026】
エゼクタ65の吸引口68は、吸引管75を介して気体排出口17に接続されている。つまり、エゼクタ65の吸引口68は、吸引管75および気体排出口17を通じて貯留空間13に連通している。
【0027】
また、
図1に示すように、液体流入口14には、ドレンの流入管71が接続され、液体排出口15には、ドレンの圧送管72が接続される。エゼクタ65の流入口66および流出口67には、蒸気の流通管73が接続される。流通管73は、蒸気システム内の高圧蒸気が流れる。気体導入口16には、エゼクタ65よりも上流側の流通管73から分岐した導入管74が接続される。
【0028】
〈流入動作〉
流入動作は、ドレンが液体流入口14から流入し貯留空間13に貯留される動作である。流入動作時には、気体導入口16は閉鎖され、気体排出口17は開放されている。
【0029】
具体的に、液体圧送装置1では、ドレンが貯留空間13に溜まっていない場合、フロート41は貯留空間13の底部に位置する。この状態において、弁操作棒36は下降しており、給気弁20は閉じられ排気弁30は開いている。そして、蒸気システムでドレンが発生すると、そのドレンは流入管71を通じて液体流入口14から流入し貯留空間13に溜まる。
【0030】
一方、エゼクタ65では、流通管73の蒸気が流入口66から流出口67へと流通し、吸引口68に吸引作用が生じる。そのため、貯留空間13の蒸気が吸引口68に吸引され、貯留空間13が負圧状態になる。つまり、貯留空間13の蒸気がエゼクタ65によって強制的に気体排出口17から排出される。これにより、液体流入口14からのドレンの流入動作が促進される。なお、気体導入口16は閉鎖されているので、導入管74から蒸気は貯留空間13に導入されない。
【0031】
貯留空間13にドレンが溜まっていくに従って、フロート41は上昇する。また、貯留空間13では、ドレンが溜まっていくにつれて蒸気が気体排出口17から排出される。そして、フロート41が所定高位(通常反転高位)まで上昇すると、スナップ機構50によって弁操作棒36が上昇する。そうすると、給気弁20が開くと共に排気弁30が閉じる。これにより、流入動作が終了し、圧送動作が開始される。
【0032】
〈圧送動作〉
圧送動作は、蒸気を貯留空間13に導入し該蒸気の圧力によって貯留空間13からドレンを圧送する動作である。圧送動作時には、気体導入口16は開放され、気体排出口17は閉鎖されている。
【0033】
具体的に、給気弁20が開くと、蒸気システム内の蒸気(高圧蒸気)が気体導入口16から流入して貯留空間13の上部(ドレンの上方空間)に導入される。そうすると、貯留空間13に溜まっているドレンは、導入された蒸気の圧力によって下方へ押されて液体排出口15から圧送(排出)される。なお、気体排出口17は閉鎖されているので、貯留空間13に導入された蒸気は気体排出口17から排出されない。液体圧送装置1によって圧送されたドレンは、例えばボイラーや廃熱利用装置に供給される。
【0034】
ドレンの圧送によって貯留空間13のドレン液位が低下すると、フロート41は下降する。そして、フロート41が所定低位(通常反転低位)まで下降すると、スナップ機構50によって弁操作棒36が下降する。そうすると、給気弁20が閉じると共に排気弁30が開く。これにより、圧送動作が終了し、上述した流入動作が再び開始される。こうして、液体圧送装置1では、ドレンの流入動作とドレンの圧送動作とが交互に行われる。
【0035】
以上のように、上記実施形態の液体圧送装置1は、液体流入口14と、液体流入口14に連通するドレンの貯留空間13とが設けられたケーシング10を備え、ドレンが液体流入口14から流入し貯留空間13に貯留される流入動作と、作動気体(蒸気)を貯留空間13に導入し該作動気体の圧力によって貯留空間13からドレンを圧送する圧送動作とを交互に行う。そして、液体圧送装置1は、貯留空間13に連通し、流入動作および圧送動作のうち流入動作時に貯留空間13の作動気体を吸引する吸引口68を有するエゼクタ65を備えている。
【0036】
上記の構成によれば、貯留空間13の作動気体がエゼクタ65によって吸引されるので、貯留空間13を負圧状態にすることができる。そのため、液体流入口14からのドレンの流入動作を促進させることができる。したがって、蒸気システム内に発生したドレンを速やかに回収することができる。
【0037】
また、上記実施形態の液体圧送装置1において、エゼクタ65は、駆動流体として作動気体(蒸気)が流通するように構成されている。この構成によれば、圧送動作時に用いる作動気体を利用しているので、エゼクタ65の駆動用に別の流体を用意する必要がない。
【0038】
また、上記実施形態の液体圧送装置1において、ケーシング10には、貯留空間13に連通し、流入動作時に貯留空間13の作動気体(蒸気)が排出される気体排出口17が設けられている。エゼクタ65は、ケーシング10の外部に設けられ、吸引口68は、気体排出口17に接続されている。
【0039】
上記の構成によれば、従来より設けられている気体排出口17を利用して、エゼクタ65の吸引口68と貯留空間13とを連通させることができる。そのため、液体圧送装置1のコンパクト化を図ることができる。
【0040】
(その他の実施形態)
なお、本願に開示の技術は、上記実施形態のドレントラップ1について、以下のような構成としてもよい。
【0041】
例えば、上記実施形態の液体圧送装置1では、エゼクタ65の吸引口68を気体排出口17に接続して貯留空間13と連通させるようにしたが、これに代えて、
図4に示すようにエゼクタ65の吸引口68を貯留空間13と連通させてもよい。
【0042】
具体的に、この例の液体圧送装置1は、ケーシング10を内外に貫通する吸引管77を備えている。吸引管77は、一端がエゼクタ65の吸引口68に接続され、他端が貯留空間13に開口している。吸引管77の他端は、貯留空間13の上部(ドレンの上方空間)に開口している。この例では、流入動作時に、貯留空間13の作動気体(蒸気)が吸引管77を介して吸引口68に吸引される。なお、気体排出口17には、例えば大気に開口する排気管76が接続される。この例においても、流入動作時に、貯留空間13を負圧状態にすることができる。
【0043】
また、上記実施形態の液体圧送装置1では、エゼクタ65をケーシング10の外部に設けるようにしたが、ケーシング10の内部に設けるようにしてもよい。その場合、エゼクタの流入口および流出口には蒸気の流通管が接続される。エゼクタの吸引口は、吸引管が接続され該吸引管を介して貯留空間13と連通するようにしてもよいし、直接貯留空間13に開口するようにしてもよい。
【0044】
また、上記実施形態の液体圧送装置1では、流通管73と導入管74との接続部に流路切換弁を設けるようにしてもよい。流路切換弁は、流入動作時には蒸気がエゼクタ65側にのみ流れ、圧送動作時には蒸気が導入管74にのみ流れるように流路を切り換える。
【0045】
また、上記実施形態の液体圧送装置1では、作動気体として蒸気を用いたが、本願に開示の技術は、その他の気体を用いてもよいことは勿論である。
【0046】
また、上記実施形態の液体圧送装置1では、圧送する液体をドレンとしたが、本願に開示の技術は、その他の液体を圧送するものでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本願に開示の技術は、液体圧送装置について有用である。
【符号の説明】
【0048】
1 液体圧送装置
10 ケーシング
13 貯留空間
14 液体流入口(液体の流入口)
17 気体排出口(気体の排出口)
65 エゼクタ
68 吸引口
77 吸引管