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▶ クイーン メアリー ユニバーシティ オブ ロンドンの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】薬剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/497 20060101AFI20231120BHJP
   A61K 31/44 20060101ALI20231120BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231120BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20231120BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231120BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20231120BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231120BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20231120BHJP
   A61P 33/00 20060101ALI20231120BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20231120BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20231120BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20231120BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20231120BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20231120BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20231120BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20231120BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20231120BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20231120BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20231120BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20231120BHJP
【FI】
A61K31/497
A61K31/44
A61K45/00
A61P37/06
A61P43/00 105
A61P9/00
A61P29/00 101
A61P17/06
A61P33/00
A61P31/12
A61P31/04
A61P1/00
A61P3/10
A61P21/04
A61P19/02
A61P17/00
A61P17/04
A61P17/14
A61P43/00 121
C12N5/0783
A61K35/17
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2020514560
(86)(22)【出願日】2018-09-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-19
(86)【国際出願番号】 GB2018052603
(87)【国際公開番号】W WO2019053435
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2021-08-24
(31)【優先権主張番号】1714777.8
(32)【優先日】2017-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515200272
【氏名又は名称】クイーン メアリー ユニバーシティ オブ ロンドン
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】マレリ-バーグ フェデリカ マリア
【審査官】池上 文緒
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/112626(WO,A2)
【文献】国際公開第2012/007758(WO,A2)
【文献】特表2007-509917(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0288168(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1095401(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0047851(KR,A)
【文献】特表2009-506109(JP,A)
【文献】J. Korean Med. Sci. (2015) vol.30, no.3, p.233-239
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 45/00
A61K 31/497
A61K 31/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
疾患又は医学的状態の治療又は予防における使用のための、解糖活性化剤を含む医薬組成物であって、前記治療又は予防が、内因性制御性T細胞(Treg)の輸送を介して介在され、前記解糖活性化剤が
(a)AZD1656:
【化1】
若しくはその薬学的に許容される塩;又は
(b)GKA50:
【化2】
若しくはその薬学的に許容される塩;
である、前記医薬組成物。
【請求項2】
疾患又は医学的状態が、内因性制御性T細胞(Treg)の組織又は臓器への輸送によって緩和される、請求項1に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項3】
疾患又は医学的状態が、免疫介在性の疾患又は医学的状態である、請求項1又は2に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項4】
免疫介在性の疾患又は医学的状態が、自己免疫障害又は移植関連障害である、請求項3に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項5】
免疫介在性の疾患又は医学的状態の治療又は予防における使用のための、解糖活性化剤を含む医薬組成物であって、前記解糖活性化剤が
(a)AZD1656:
【化3】
若しくはその薬学的に許容される塩;又は
(b)GKA50:
【化4】
若しくはその薬学的に許容される塩;
である、前記医薬組成物。
【請求項6】
免疫介在性の疾患又は医学的状態が、移植拒絶反応、同種移植拒絶反応、移植片対宿主病(GVHD)、全身性エリテマトーデス(SLE)、多発性硬化症(MS)、乾癬、I型糖尿病、橋本甲状腺炎、自己免疫性甲状腺炎(AITD)、心筋炎、心筋梗塞(MI)、アレルギー、ウイルス、細菌又は寄生生物による感染症、がん、炎症性腸疾患(IBD)、関節リウマチ、自己免疫性胃炎、大腸炎、抗糸球体基底部腎炎、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、円形脱毛症、自己免疫性プロゲステロン皮膚炎、自己免疫性蕁麻疹、尋常性天疱瘡、自己免疫性多内分泌腺症候群(APS;3型APS、別名IPEX症候群を除く)、自己免疫性膵炎、グレーブス病、シェーグレン症候群、セリアック疾患、潰瘍性大腸炎、抗リン脂質症候群、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少性紫斑病、悪性貧血、混合性結合組織疾患(MCTD)、未分化結合組織疾患(UCTD)、乾癬性関節炎、再発性多発性軟骨炎、リウマチ熱、皮膚筋炎、重症筋無力症、多発性筋炎、急性播種性脳脊髄炎(ADEM)、ギランバレー症候群、橋本脳症、横断性脊髄炎、サルコイドーシス、自己免疫性ブドウ膜炎、自己免疫性内耳疾患(AIED)、ベーチェット病、巨細胞性動脈炎、多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)、血管炎、及び湿疹から選択される、請求項3~5のいずれかに記載の使用のための医薬組成物。
【請求項7】
免疫介在性の疾患又は医学的状態が、心筋炎である、請求項6に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項8】
免疫介在性の疾患又は医学的状態が、移植片対宿主病(GVHD)である、請求項6に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項9】
免疫介在性の疾患又は医学的状態が、移植拒絶反応である、請求項6に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項10】
免疫介在性の疾患又は医学的状態が、関節リウマチである、請求項6に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項11】
対象における免疫応答のモジュレートにおける使用のための、解糖活性化剤を含む医薬組成物であって、前記解糖活性化剤が
(a)AZD1656:
【化5】
若しくはその薬学的に許容される塩;又は
(b)GKA50:
【化6】
若しくはその薬学的に許容される塩;
である、前記医薬組成物。
【請求項12】
免疫応答が自己免疫応答である、請求項11に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項13】
免疫応答が抑制される、請求項11又は12に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項14】
疾患又は医学的状態が、移植後糖尿病及び虚血性再灌流傷害からなる群から選択される、請求項1~3のいずれかに記載の使用のための医薬組成物。
【請求項15】
Treg細胞が、炎症組織若しくは臓器又は移植された組織若しくは臓器へ遊走する、請求項1~14のいずれかに記載の使用のための医薬組成物。
【請求項16】
解糖活性化剤が、1又は2以上のさらなる治療剤と一緒に投与される、請求項1~15のいずれかに記載の使用のための医薬組成物。
【請求項17】
さらなる治療剤が、免疫抑制剤、細胞療法、寛容原性樹状細胞療法、抗炎症剤及びホルモン補充療法からなる群から選択される、請求項16に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項18】
解糖活性化剤が、1mg~500mgの単位剤形で投与される、請求項1~17のいずれかに記載の使用のための医薬組成物。
【請求項19】
解糖活性化剤が、1、10、20、50、100、200、250又は500mgの単位剤形で投与される、請求項18に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項20】
解糖活性化剤が、約100mgの単位剤形で投与される、請求項19に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項21】
解糖活性化剤が、経口経路を介して投与される、請求項1~20のいずれかに記載の使用のための医薬組成物。
【請求項22】
解糖活性化剤が、1日1回、2回、3回又は4回投与される、請求項1~21のいずれかに記載の使用のための医薬組成物。
【請求項23】
解糖活性化剤が、1日2回投与される、請求項22に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項24】
解糖活性化剤が、
(a)1週間~6カ月間、又は
(b)1~6カ月間、又は
(c)2~4カ月間、又は
(d)約3カ月間
投与される、請求項1~23のいずれかに記載の使用のための医薬組成物。
【請求項25】
解糖活性化剤が、1日1回又は2回、約1mg~20mg又は約1mg~50mgの単位剤形で経口経路を介して投与される、請求項1~24のいずれかに記載の使用のための医薬組成物。
【請求項26】
解糖活性化剤が、体重1kg当たり0.5mgの1日用量で経口経路を介して投与される、請求項1~24のいずれかに記載の使用のための医薬組成物。
【請求項27】
薬学的に許容される担体、媒体、希釈剤又は賦形剤を含む、請求項1~26のいずれかに記載の使用のための医薬組成物。
【請求項28】
Treg細胞を輸送又は動員するex vivoでの方法であって、前記Treg細胞を解糖活性化剤と接触させることによって前記Treg細胞における解糖を活性化するステップを含み、前記解糖活性化剤が
(a)AZD1656:
【化7】
若しくはその薬学的に許容される塩;又は
(b)GKA50:
【化8】
若しくはその薬学的に許容される塩;
である、前記方法。
【請求項29】
Treg細胞を炎症部位に局在化させる効率を増加させるex vivoでの方法であって、自己及び/又は同種異系Treg細胞を、
(a)AZD1656:
【化9】
若しくはその薬学的に許容される塩;又は
(b)GKA50:
【化10】
若しくはその薬学的に許容される塩;
を用いて前処理するステップを含む、前記方法。
【請求項30】
Treg細胞が、治療されることになる対象から及び/又は別の対象若しくは供給源から単離され、増幅されたものである、請求項28又は29に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的に医薬品の分野に関する。さらに、さまざまな実施形態は、医薬品に関する。特に本発明は、内因性制御性T細胞(Treg)の疾患又は医学的状態、特に免疫関連の疾患及び医学的状態に罹患した又はこれらに罹患するリスクがある対象における輸送において有用な薬剤及び組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
CD4CD25Foxp3T細胞として定義される胸腺制御性T細胞(Treg)は、自己抗原に対する寛容性を維持するための手段である。Tregは、リンパ系と非リンパ系組織の両方に局在することによって免疫モジュレートの役割を果たす。
【0003】
Treg細胞の炎症組織への遊走は、その免疫モジュレート機能の鍵である。Tエフェクター(Teff)細胞に対するTregの急速な蓄積(浸潤性リンパ球の30%超がTregである)は、免疫調節中に炎症組織において発生する(Tang, Q., Bluestone, J.A., and Kang, S.M. (2012). CD4(+)Foxp3(+) regulatory T cell therapy in transplantation. J Mol Cell Biol 4, 11-21)。対照的に、末梢血液におけるTregの割合が小さい(2~5%)ことは、Tregの顕著な遊走能力をさらに強調している。
【0004】
Teff及びTregの機能、増幅及び生存の生体エネルギー論は広く研究されている。Teff及びTreg細胞は、それらの生存及び分化を支えるための個別の代謝プログラムが必要であり、ヘルパーT(Th)1、Th2、及びTh17細胞は、表面に多量のグルコーストランスポーターGlut1を発現し、解糖性が高く、一方でTreg細胞は、少量のGlut1を発現し、インビトロでの脂質酸化率が高い(Michalek, R.D., Gerriets, V.A., Jacobs, S.R., Macintyre, A.N., MacIver, N.J., Mason, E.F., Sullivan, S.A., Nichols, A.G., and Rathmell, J.C. (2011). Cutting edge: distinct glycolytic and lipid oxidative metabolic programs are essential for effector and regulatory CD4+ T cell subsets. J Immunol 186, 3299-3303)。ラパマイシンの哺乳類の標的(mTOR)は、T細胞代謝応答を調節することによる細胞運命の決定において鍵となる役割を果たす。T細胞が活性化すると、mTORを刺激し、解糖を増加させ、脂質酸化を低減する(Wieman, H.L., Wofford, J.A., and Rathmell, J.C. (2007). Cytokine stimulation promotes glucose uptake via phosphatidylinositol-3 kinase/Akt regulation of Glut1 activity and trafficking. Molecular biology of the cell 18, 1437-1446)。対照的に、解糖をブロックすると、Treg細胞の生成を促進し、これは、転写因子である低酸素誘導因子(HIF1α)のmTOR介在性誘導の阻害を介して生じる(Dang, E.V., Barbi, J., Yang, H.Y., Jinasena, D., Yu, H., Zheng, Y., Bordman, Z., Fu, J., Kim, Y., Yen, H.R., et al. (2011). Control of T(H)17/T(reg) balance by hypoxia-inducible factor 1. Cell 146, 772-784、Shi, L.Z., Wang, R., Huang, G., Vogel, P., Neale, G., Green, D.R., and Chi, H. (2011). HIF1alpha-dependent glycolytic pathway orchestrates a metabolic checkpoint for the differentiation of TH17 and Treg cells. The Journal of experimental medicine 208, 1367-1376)。しかし、Tregは、酸化的代謝に主に依存するが、いくつかの特定の機能は、解糖への選択的なスイッチに依存する場合がある。Treg代謝は、環境要因に応答して、mTOR依存的経路とmTOR非依存的経路との間を行き来するようである(Procaccini, C., De Rosa, V., Galgani, M., Abanni, L., Cali, G., Porcellini, A., Carbone, F., Fontana, S., Horvath, T.L., La Cava, A., et al. (2010). An oscillatory switch in mTOR kinase activity sets regulatory T cell responsiveness. Immunity 33, 929-941)。Toll様受容体(TLR)シグナルは、mTORC1シグナル伝達、解糖及びGlut1上方調節を介してTreg細胞増殖を促進することが示されている。対照的にTLR誘発mTORC1シグナルも、Treg抑制能力を低下させる(Gerriets, V.A., Kishton, R.J., Johnson, M.O., Cohen, S., Siska, P.J., Nichols, A.G., Warmoes, M.O., de Cubas, A.A., MacIver, N.J., Locasale, J.W., et al. (2016). Foxp3 and Toll-like receptor signaling balance Treg cell anabolic metabolism for suppression. Nat Immunol 17, 1459-1466)。
【0005】
運動性は最もエネルギーを消費する細胞活動であり得るにもかかわらず(Bernstein, B.W., and Bamburg, J.R. (2003). Actin-ATP hydrolysis is a major energy drain for neurons. The Journal of neuroscience : the official journal of the Society for Neuroscience 23, 1-6)、T細胞の遊走に必要な代謝は一部が研究されているのみである。本発明者らは、Teffの遊走は、解糖経路に依存することを既に示している(Haas, R., Smith, J., Rocher-Ros, V., Nadkarni, S., Montero-Melendez, T., D'Acquisto, F., Bland, E.J., Bombardieri, M., Pitzalis, C., Perretti, M., et al. (2015). Lactate Regulates Metabolic and Pro-inflammatory Circuits in Control of T Cell Migration and Effector Functions. PLoS biology 13, e1002202)。しかし、Tregの遊走を促進する代謝プログラムは未知のままである。
【0006】
LFA-1などのインテグリンが介在する分子相互作用は、T細胞輸送の標準的なレギュレーターである。さらに、共刺激性及び共阻害性受容体CD28及びCTLA-4によって生成されるシグナルはそれぞれ、T細胞輸送の調節に積極的に関与する。リンパ節においてCD28が活性化すると、メモリーT細胞が出現し、標的組織に遊走するのを促進し(Jain, N., Miu, B., Jiang, J.K., McKinstry, K.K., Prince, A., Swain, S.L., Greiner, D.L., Thomas, C.J., Sanderson, M.J., Berg, L.J., et al. (2013). CD28 and ITK signals regulate autoreactive T cell trafficking. Nat Med 19, 1632-1637、Mirenda, V., Jarmin, S.J., David, R., Dyson, J., Scott, D., Gu, I., Lechler, R.I., Okkenhaug, K., and Marelli-Berg, F.M. (2007). Physiological and aberrant regulation of memory T cell trafficking by the costimulatory molecule CD28. Blood 109, 2968-2977)、同時にCTLA-4は、CD28遊走促進(pro-migratory)シグナルに拮抗する(Mirenda, V., Jarmin, S.J., David, R., Dyson, J., Scott, D., Gu, I., Lechler, R.I., Okkenhaug, K., and Marelli-Berg, F.M. (2007). Physiological and aberrant regulation of memory T cell trafficking by the costimulatory molecule CD28. Blood 109, 2968-2977)。エフェクターTreg細胞遊走も、CD28シグナルによって調節される(Muller, N., van den Brandt, J., Odoardi, F., Tischner, D., Herath, J., Flugel, A., and Reichardt, H.M. (2008). A CD28 superagonistic antibody elicits 2 functionally distinct waves of T cell activation in rats. J Clin Invest 118, 1405-1416)。重要なことには、共刺激受容体は、T細胞代謝リプログラミングも調節し、解糖を強化するが(Frauwirth, K.A., Riley, J.L., Harris, M.H., Parry, R.V., Rathmell, J.C., Plas, D.R., Elstrom, R.L., June, C.H., and Thompson, C.B. (2002). The CD28 signaling pathway regulates glucose metabolism. Immunity 16, 769-777、Parry, R.V., Chemnitz, J.M., Frauwirth, K.A., Lanfranco, A.R., Braunstein, I., Kobayashi, S.V., Linsley, P.S., Thompson, C.B., and Riley, J.L. (2005). CTLA-4 and PD-1 receptors inhibit T-cell activation by distinct mechanisms. Molecular and cellular biology 25, 9543-9553)、Treg細胞の解糖と遊走との間の関係は、まだ示唆されていない。
【0007】
解糖のプロセスは、酵素グルコキナーゼ(GCK又はGLK)によって一部制御される。グルコースの取り込み速度は、グルコースからグルコース-6-ホスフェート(G6P)へのリン酸化速度によって制限され、これは、GCKによって触媒されるプロセスである。
【0008】
国際公開第2008050101号パンフレットでは、有利な身体的及び/若しくは薬物動態特性、並びに/又は良好な毒性プロファイルを有するGCK活性化因子であるベンゾイルアミノヘテロシクリル化合物のグループが記載されている。
【0009】
国際公開第2008050117号パンフレットでは、水溶性が高く、透過性が高く、及び/又は血漿タンパク質結合性が低いGCK活性化因子としてのベンゾイルアミノヘテロシクリル化合物が記載されている。
【0010】
国際公開第2008075073号パンフレットでは、GCK活性化因子であり、インスリン分泌のためのグルコース閾値を減少させるのに有用である結晶形態が記載されている。
【0011】
国際公開第0058293号パンフレット及び国際公開第0144216号パンフレットにおいて、一連のベンジルカルバモイル化合物が、グルコキナーゼ活性化因子として記載されている。そのような化合物がGCKを活性化する機序は、GCK活性がNADH産生と関連しておりNADH産生が光学的に測定されるアッセイにおいてそのような化合物の直接的な効果を測定することによって評価される。
【0012】
さらなるGCK活性化因子は、国際公開第03095438号パンフレット(置換フェニルアセトアミド)、国際公開第03055482号パンフレット(カルボキサミド及びスルホンアミド誘導体)、国際公開第2004002481号パンフレット(アリールカルボニル誘導体)、及び国際公開第03080585号パンフレット(アミノ置換ベンゾイルアミノ複素環)に記載されている。
【0013】
国際公開第03000267号パンフレットでは、GCKの活性化因子であるベンゾイルアミノピリジルカルボン酸のグループが記載されている。国際公開第03015774号パンフレットでは、式(A)の化合物
【0014】
【化1】
【0015】
(式中、R3は、フェニル、又はカルボン酸置換ピリジル以外の置換複素環である)が記載されている。
【0016】
国際公開第2004076420号パンフレットでは、概して、国際公開第03015774号パンフレットに記載されているものの一部である化合物(例えば、R1は(置換)アルキルエーテルであり、R2は(置換)フェノキシである化合物)が記載されている。
【0017】
Grewal, A.S., Sekhon, B.S., and Lather, V. (2014). Recent Updates on Glucokinase Activators for the Treatment of Type 2 Diabetes Mellitus. Mini Rev Med Chem 14, 585-602では、2型糖尿病を治療するためのいくつかのGCK活性化因子(GKA)が記載されている。1型糖尿病とグルコキナーゼ遺伝子との間に関連がないことは既に認められている(Bain, S.C., Barnett, A.H. and Todd J.A. (1992). Lack of association between type 1 diabetes and the glucokinase gene. Lancet 340: 54-55)。
【0018】
Tregは、いくつかの病態において、標的部位にて認められているか又は標的部位に遊走することが示されている。Tregは、いくつかの病態の解消においても重要な役割を果たす。そのような病態としては、多発性硬化症(Denning, T.L., Kim, G. and Kronenberg, M. (2005). Cutting edge: CD4+CD25+ regulatory T cells impaired for intestinal homing can prevent colitis. J Immunol 174, 7487-91)、心筋炎(Stephenson, E., Savvatis, K., Mohiddin, S.A. and Marelli-Berg, F.M. (2016). T-cell immunity in myocardial inflammation: pathogenic role and therapeutic manipulation. Br J Pharmacol DOI: 10.1111/bph.13613 )、心筋梗塞(MI)(Weirather, J., Hofmann, U.D.W., Beyersdorf, N., Ramos, G.C., Vogel, B. Frey, A. Ertl., G., Kerkau, T and Frantz., S (2014) Foxp3+ CD4+ T Cells Improve Healing After Myocardial Infarction by Modulating Monocyte/Macrophage Differentiation. Circ Res 115: 55-67)、I型糖尿病(Chen, Z., Herman, A.E., Matos, M., Mathis, D. and Benoist, C. (2005). Where CD4+CD25+ T reg cells impinge on autoimmune diabetes. J Exp Med 202, 1387-97)、関節リウマチ(RA)(Cooles, F.A.H., Isaacs, J.D. and Anderson, A.E. (2013). Treg Cells in Rheumatoid Arthritis: An Update. Curr Rheumatol Reports 15: 352)、全身性エリテマトーデス(SLE)(Humrich, J.Y and Riemekasten, G. (2016). Restoring regulation - IL-2 therapy in systemic lupus erythematosus. Exp Rev Clin Immunol 12, 1153-1160)、乾癬(Deng, Y., Chang, C. and Lu, Q. (2016). The Inflammatory Response in Psoriasis: a Comprehensive Review. Clin Rev Allergy Immunol 50, 377-389)、移植片対宿主病(GVHD)(Zorn, E., Kim, H.T., Lee, S.J., Floyd, B.H., Litsa, D., Arumugarajah, S., Bellucci, R., Alyea, E.P., Antin, J.H., Soiffer, R.J. et al. (2005). Reduced frequency of FOXP3+ CD4+CD25+ regulatory T cells in patients with chronic graft-versus-host disease. Blood 106, 2903-2911)、大腸炎(Ding, Y., Xu, J. and Bromberg, J.S. (2012). T regulatory cell migration during an immune response. Trends Immunol 33, 174-180)及びアレルギー性疾患(Denning, T.L., Kim, G. and Kronenberg, M. (2005). Cutting edge: CD4+CD25+ regulatory T cells impaired for intestinal homing can prevent colitis. J Immunol 174, 7487-91)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【文献】国際公開第2008050101号パンフレット
【文献】国際公開第2008050117号パンフレット
【文献】国際公開第2008075073号パンフレット
【文献】国際公開第0058293号パンフレット
【文献】国際公開第0144216号パンフレット
【文献】国際公開第03095438号パンフレット
【文献】国際公開第03055482号パンフレット
【文献】国際公開第2004002481号パンフレット
【文献】国際公開第03080585号パンフレット
【文献】国際公開第03000267号パンフレット
【文献】国際公開第03015774号パンフレット
【文献】国際公開第2004076420号パンフレット
【非特許文献】
【0020】
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【文献】Ding, Y., Xu, J. and Bromberg, J.S. (2012). T regulatory cell migration during an immune response. Trends Immunol 33, 174-180
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】解糖は、Tregの遊走を促進する。表記の薬物又は媒体を用いて4時間前処理され、ex vivoで増幅されたTregを、IFN-γ処理された同系EC単層(A~B)と層をなす3μm孔のトランスウェルを通して遊走させるか、又はケモカインCCL22に応答してベアフィルターである5μm孔のトランスウェル(C~D)を通して遊走させた。結果は、24時間後(A~B、n=4、N=2)又は表記の時点(C、n=3)における遊走した細胞の百分率±SDとして示される。遊走における増加倍率±SDは、実験的遊走を、3連で行われた2つの同一設計の実験において6時間目に測定された自発的遊走で除算することによって算出した。
図2】活性化されたTreg表現型及び機能及び代謝改良薬物への曝露の効果。Tregを、既に記載の通りに増幅させた(Fu, H., Kishore, M., Gittens, B., Wang, G., Coe, D., Komarowska, I., Infante, E., Ridley, A.J., Cooper, D., Perretti, M., et al. (2014). Self-recognition of the endothelium enables regulatory T-cell trafficking and defines the kinetics of immune regulation. Nat Commun 5, 3436)。A-BTregを、代謝を標的とする表記の薬物で4~6時間処理し、非常によく洗浄した。薬物に曝露されたTregの、CXCL10(300ng/ml)に応答した遊走を、トランスウェルベースのアッセイによって評価した。結果は、表記の時点において遊走した細胞の平均百分率±SDとして示される。3つの独立した同一設計の実験から6時間目に得られ、自発的遊走によって正規化されたデータ±SDを、パネルBに示す。P<0.05。
図3】蛍光生体内色素PKH26で標識された、薬物又は媒体処理されたTregを、IFN-γで48時間前にi.p.処理された同系レシピエントにi.v.注射した。細胞を、表記の組織から24時間後に採取し、フローサイトメトリーによって分析した。3匹の動物からの代表的なドットプロットを、パネルA及びCに示す。4匹の動物において回収された標識細胞の平均絶対数±SDを、パネルB及びDに示す。(N=1)
図4】A:Tregを、代謝を表記の標的とする薬物で4~6時間処理してから、表記の表面分子の発現を、フローサイトメトリーによって分析した。表記の表面分子の代表的なヒストグラム及び平均蛍光強度を示す。N=2。B~C:表記の代謝を標的とする薬物で6時間処理されたTregのアポトーシス/壊死を、アネキシンV及びヨウ化プロピウム(PI)染色で分析することによって測定した。未処理のTreg及び熱誘発性アポトーシスを受けたTregを、それぞれ陰性及び陽性対照として使用した。棒グラフ(C)は、アポトーシス及び壊死Treg細胞の平均百分率±SDを示す。(n=4、N=3)。
図5】Tregを、表記の代謝を標的とする薬物で4~6時間処理し、非常によく洗浄し、培地単独中で一晩培養した。薬物に曝露されたTregの、CCL22(300ng/ml、A~B)CXCL10(300ng/ml、C~D)に応答した遊走を、6時間のケモキネシストランスウェルアッセイ(106/ウェル)によって評価した。結果は、3連で行った典型的な実験における遊走した細胞の平均百分率±SD(A、C)として示される。3つの独立した同一設計の実験から6時間目に得られ、自発的遊走によって正規化されたデータ±SDを、パネルB及びDに示す。P<0.05。
図6】Tregを、2-DG(A)又はエトモキシル(B)で4~6時間処理し、非常によく洗浄し、培地単独中で一晩培養した。次いで、Tregを、血清不含非緩衝XFアッセイ培地(Seahorse biosciences社)中で1時間静止させてから、Seahorse XF24細胞プレート中に播種して(6×10/ウェル)、フラックスメトリック分析(fluxometric analysis)を行った。最初にウェルにグルコースを注入した。さらに表記の時点(矢印)で表記の物質の注入を続けた。ECAR=細胞外酸性化速度、これは解糖を示す。
図7】A:プラスチック結合組換え(r)ICAM-1又はヒトIgGFcフラグメント(Fc)で45分間刺激され、次いでグルコース取り込み指標6-NBDG(代謝されないために取り込まれた場合に細胞を蛍光性にする、蛍光標識されたグルコースアナログ)を含む培地中に10分間再懸濁されたTregの代表的なヒストグラムである。3つの独立した実験からの平均MFI±SDをパネルBに示す。(n=3)。ICAM-1-(C)又はCCL22刺激(D)TregのECARを、細胞外フラックスアナライザー(Seahorse社)によって測定した。IgFc又は培地を、対照として使用し、組換え分子及びグルコースを、表記の時点において添加した(±SD n=5、N=2)、p<0.05、**p<0.005。
図8】インビトロで増幅させたTregを、血清不含非緩衝XFアッセイ培地(Seahorse biosciences社)中で1時間最初に静止させてから、Seahorse XF24細胞プレート中に播種して(6×10/ウェル)、フラックスメトリック分析を行った。最初にウェルに、組換えICAM-1(又は対照としてヒトFc、パネルA)又はCCL22(又は対照としてグルコース不含培地、パネルB)を注入した。さらに表記の時点(矢印)で表記の物質の注入を続けた。P<0.05;**p<0.01;***p<0.005。
図9】CD28及びCTLA4は、Treg細胞遊走を差次的に調節する。Tregを、アゴニスト抗体をライゲーションすることによって刺激し(Schneider, H., Valk, E., da Rocha Dias, S., Wei, B., and Rudd, C.E. (2005). CTLA-4 up-regulation of lymphocyte function-associated antigen 1 adhesion and clustering as an alternate basis for coreceptor function. Proc Natl Acad Sci U S A 102, 12861-12866、Wells, A.D., Walsh, M.C., Bluestone, J.A., and Turka, L.A. (2001). Signaling through CD28 and CTLA-4 controls two distinct forms of T cell anergy. J Clin Invest 108, 895-903)、37Cで45分間、CD28又はCTLA-4を認識した。A~C:IFN-γ処理された同系内皮細胞(EC)単層を通した(A)又はCXCL10ケモカインに応答した(B~C)抗体刺激Tregの遊走を、トランスウェルベースのアッセイにおいてモニターした。パネルAでは、結果は、3つの独立した同一設計の実験における遊走した細胞の平均百分率±SDとして示される。パネルBでは、結果は、3連で行った典型的な実験における遊走した細胞の平均百分率±SDとして示される。3つの独立した同一設計の実験から6時間目に得られ、自発的遊走によって正規化されたデータ±SDを、パネルCに示す。
図10】Tregを、CD28及び/又はCTLA-4抗体で刺激してから、それをIFN-γで48時間前にi.p.処理され、局部的な動員が促進された同系レシピエントに養子移植した(Fu, H., Kishore, M., Gittens, B., Wang, G., Coe, D., Komarowska, I., Infante, E., Ridley, A.J., Cooper, D., Perretti, M., et al. (2014). Self-recognition of the endothelium enables regulatory T-cell trafficking and defines the kinetics of immune regulation. Nat Commun 5, 3436)。Tregの腹膜腔への遊走を、16時間後に評価した。受動的様式で侵入が生じる脾臓への局在化を(Fu, H., Ward, E.J., and Marelli-Berg, F.M. (2016). Mechanisms of T cell organotropism. Cell Mol Life Sci 73, 3009-3033)対照として測定した。Treg母集団が養子移植されたことを考慮し、標識細胞の絶対数をデータ分析において使用した。有意に多数のTregが、CD28刺激後に腹膜腔に蓄積した。CTLA-4同時刺激は、CD28誘発性遊走を阻害し、同時にそれ自体が引き金となるCTLA-4は効果を一切有していなかった。3匹の動物からの代表的なドットプロットを、上のパネルに示す。下のグラフは、4匹の動物において回収された標識細胞の平均絶対数±SDを示す。(N=3)。
図11】Tregの遊走は、解糖の誘発を介した共刺激性受容体によって調節される。A~B:分析の前に6-NBDGと10分間インキュベートされた抗体刺激Tregの代表的なヒストグラムである。非蛍光性グルコースアナログ2-DGを、陰性対照として使用した。3つの独立した実験からの平均MFI±SDをパネルBに示す。
図12】抗体刺激TregのECAR±SDを、フラックスメトリー(fluxometry)によって測定した。抗体(Ab)及びD-グルコースを、表記の時点において注射した(A)。ECAR(±SD)を、刺激されていないWT又はCTLA-4KOTregにおいて測定した(B)。D-グルコースは、矢印で示される通りに注射した。
図13】ECAR(±SD)を、組換えCD80又はFcフラグメントで30分間予め刺激されたWT(A)又はCTLA-4KO(B)Tregにおいて測定した。D-グルコースは、矢印で示される通りに注射した。
図14】A:rCD80-又はFc刺激CTLA-4KO及びWT Tregの、同系IFN-γ処理されたEC単層を通過した遊走である。結果は、24時間で遊走した細胞の平均百分率±SDとして示される。n=3、N=4。B:グルコース不含又はグルコース復元培地中のいずれかに再懸濁された抗体刺激Tregの、IFN-γ処理された同系EC単層を通過した遊走であり、24時間後に遊走した細胞の百分率±SDとして示される。(n=3、N=4)。
図15】PKH26で標識化された抗体刺激Treg(2列目)を、48時間前にIFN-γをi.p.で与えられたC57BL/6マウスにi.p.注射した。直後に6-NBDG(3列目)をi.p.注射した。腹膜を1時間後に取り出し、DAPIを用いて対比染色し、広視野蛍光顕微鏡によって画像化し、浸潤細胞の数及び浸潤細胞による6-NBDG取り込みを判定した。代表的な画像を、パネルAに示す。4匹のレシピエントからの10個の10×視野で計数された細胞の平均数±SD及び3つの10×視野からの10~12個の細胞からの6-NBDGの平均総細胞蛍光±SDを、パネルB及びCにそれぞれ示す。(n=4、N=2)、p<0.05;**p<0.01;***p<0.005。
図16】遊走促進刺激は、Tregの代謝リプログラミングを誘発する。A~B:Tregにおける表記の酵素の発現を、抗体刺激の4時間後にウエスタンブロット法によって測定した。パネルBでは、3つの独立した実験において濃度分析によって測定される平均相対発現±SDを示す。
図17】A:CD28又はLFA-1刺激Tregによる表記の酵素の発現を、表記の時点においてウエスタンブロット法によって測定した。B~C:抗体刺激TregによるGCK(B)及びGCKR(C)の相対mRNA発現レベルを、RT-PCRによって測定した。GCKR=グルコキナーゼ調節タンパク質;GCKに結合し、酵素活性をブロックする。
図18】A~B:CD28又はLFA-1刺激Tregによる表記の酵素の発現を、表記の時点において共焦点顕微鏡検査によって測定した。抗体刺激Tregによる細胞タンパク質発現を、共焦点顕微鏡検査によって測定した。パネルBでは、Image Jソフトウェアを使用して測定された平均MFI±SEMを示す。N=3。スケールバー20μm。
図19】抗CD3及び抗CD28抗体を用いて24時間刺激されたCD4+T細胞のECAR及びOCRのリアルタイム分析を、フラックスメトリーを使用して行った。最初にウェルにCLT又は媒体を注入した。表記の時点で第2の注入を続け(破線)、D-グルコースをウェルに導入した。その後、解糖(A)又は細胞呼吸(B)のモジュレーターを表記の時点において連続的に注入した。(N=2)、**p<0.01、***p<0.005。OCR=酸素消費速度:ミトコンドリア呼吸及び脂肪酸酸化(FAO)の間接的な測定。
図20】A:AZD1656(GCK活性化因子、1μM)及び媒体処理されたTreg(インスリン不含培地中で2時間)を、異なる生体内蛍光色素を用いて標識し、48時間前にIFN-γをi.p.で与えられた同系レシピエントに同時に注射した。細胞を、腹膜又は脾臓から24時間後に回収し、フローサイトメトリーによって分析した。代表的なドットプロットを示す。棒グラフは、回収された標識細胞の平均絶対数±SDを示す(n=4 N=2)。B~C:AZD1656(B)又はクロトリマゾール(CLT、1μM、2時間、C)又は媒体単独のいずれかを用いた処理後に同種異系DCで刺激されたTregによるPCNAの発現を、フローサイトメトリーによって測定した。NS、非刺激対照Treg。代表的なヒストグラムを示す。(n=3、N=3)。
図21】A:Treg細胞のECARは、組換えICAM-1又はFc対照を用いて活性化された。CLT又は媒体、及び他の解糖に影響を与える薬物を、表示の通りに添加した。B:CLT又は媒体処理されたTregは、CD28又はアイソタイプが一致する抗体刺激を受け、異なる生体内蛍光色素を用いて標識化され、48時間前にIFN-γをi.p.で与えられた同系レシピエントにi.v.注射された。細胞は、24時間後に腹膜(P)又は脾臓(S)から回収し、フローサイトメトリーによって分析した。代表的なドットプロットを示す。棒グラフは、回収された標識細胞の平均絶対数±SDを示す。(n=3、N=2)。p<0.05***p<0.005;****p<0.001。
図22】GCKの薬理学的活性化は、皮膚同種移植拒絶反応を有意に遅延させる。C57Bl6マウスに、B6Kd皮膚移植片又は対照として同系皮膚を与えた。一部のレシピエントは、移植後に、GCK活性化因子AZD1656(20mg/kgで毎日)で2週間処理した。N=9。
図23】GCKR対立遺伝子の機能喪失を有するTreg細胞は、強化された運動性を示す。A:WT対立遺伝子(P446)を保有する個体と比較した、対立遺伝子P446LのキャリアにおけるTregの細胞数/mL(CD4CD25highCD127low)である。代表的なドットプロットを、パネルBに示す。n=25。2つの研究母集団におけるナイーブとして定義されるCD4リンパ球亜集団(CD45RA)、セントラルメモリー(CD45RO、CD62L、CCR7)及びエフェクターメモリー(CD45RO、CD62L、CCR7)をパネルに示す。
図24】8名のP446L-GCKRキャリア又はWT-GCKR個体からのTreg(A)及びTconv(B)のケモカインCCL19/21に対する遊走応答を、トランスウェルで測定した。
図25】パネルA~Bでは、P446L-GCKRキャリア(n=8)及びWT-GCKR(n=8)対象からの、図24における遊走アッセイで使用したケモカインCCL19/21に対する受容体であるCCR7を発現するT細胞の百分率を示す。p<0.05。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
活性化制御性T細胞(Treg)の炎症組織への遊走は、それらの免疫モジュレート機能にとって重要である。Tregが分化する間の代謝リプログラミングは広く研究されているが、Treg輸送の生体エネルギー論ははっきりとは分かっていないままである。本発明者らは、Treg遊走の代謝要求性を、インビトロ及びインビボで研究した。
【課題を解決するための手段】
【0023】
LFA-1及びCD28介在性遊走促進シグナルを研究モデルとして比較することによって、本発明者らは、Treg細胞遊走のインビトロ及びインビボでの生体エネルギー論を研究した。したがって、本発明者らは、Tregの遊走中に行われる代謝リプログラミングの新規な特異的経路をマウスとヒトの両方において本明細書で明らかにする。
【0024】
本発明者らは、解糖は、Tregの遊走の手段となり、酵素グルコキナーゼ(GCK)の誘導をもたらす遊走促進刺激によって開始されることを見出した。その後、GCKは、アクチンと結合することによって細胞骨格再構成を促進する。この経路がないTregは、機能的に抑制性であるが、皮膚同種移植片に遊走し、拒絶反応を阻害することができない。同様に、GCK調節タンパク質遺伝子において機能喪失変異し、GCK活性が増加したヒトキャリアは、循環する活性化Tregの数が減少している。これらのTregは、強化された遊走活性を示すが、同様の抑制機能を示し、同時に通常型T細胞(conventional T-cells)は影響を受けない。したがって、GCK依存的解糖は、Tregの遊走を調節する。したがって、本発明は、疾患及び医学的状態、特に免疫介在性のものを治療するか又は予防するためのTregにおける解糖の活性化に関する。
【0025】
したがって、1つの態様において、本発明は、疾患又は医学的状態の治療又は予防における使用のための解糖活性化剤であって、その治療又は予防が、内因性制御性T細胞(Treg)の輸送を介して介在される、解糖活性化剤を提供する。
【0026】
別の態様において、本発明は、疾患又は医学的状態に罹患した又はこれらに罹患するリスクがある対象における内因性制御性T細胞(Treg)の輸送における使用のための解糖活性化剤を提供する。
【0027】
別の態様において、本発明は、内因性制御性T細胞(Treg)の組織又は臓器への輸送によって緩和される疾患又は医学的状態の治療又は予防における使用のための解糖活性化剤を提供する。
【0028】
別の態様において、本発明は、対象における免疫応答のモジュレートにおける使用のための解糖活性化剤を提供する。
【0029】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載される使用のための解糖活性化剤及び薬学的に許容される担体、媒体、希釈剤又は賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0030】
別の態様において、本発明は、対象における免疫介在性の疾患又は状態を治療するか又は予防する方法であって、解糖活性化剤を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0031】
さらに別の態様において、本発明は、対象における免疫応答をモジュレートする方法であって、解糖活性化剤を対象に投与することを含む方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本明細書において使用する場合、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、単数形と複数形の両方の指示対象を含む。
【0033】
本明細書において使用する「含んでいる(comprising)」、「含む(comprises)」及び「から構成される(comprised of)」という用語は、「含んでいる(including)」、「含む(includes)」又は「含んでいる(containing)」、「含む(contains)」と同義であり、包含的又はオープンエンドであり、追加の列挙されない部材、要素又は方法ステップを除外しない。「含んでいる(comprising)」、「含む(comprises)」及び「から構成される(comprised of)」という用語は、「からなる(consisting of)」という用語も含む。
【0034】
解糖活性化剤
本発明の文脈において、「解糖活性化剤」は、細胞において解糖の生化学的プロセスを活性化、刺激、誘発、触媒又はその速度を増加することができる任意の薬剤又は化合物である。薬剤又は化合物は、本質的に、例えば生物学的又は化学的なもの、例えば小分子又は抗体であってもよい。薬剤又は化合物は、例えば、解糖プロセスを直接的に若しくは間接的に標的としてもよく、又は解糖経路に関与する酵素のうちの1若しくは2以上に直接作用してもよい。
【0035】
解糖プロセスに関与する1つのそのような酵素は、グルコキナーゼ(GCK、GLK又はGK)である。したがって、1つの実施形態において、本発明の解糖活性化剤はGCK活性化剤である(グルコキナーゼ活性化因子又はGKAとしても知られる)。1つの実施形態において、GKAは、GCKとGCK調節タンパク質(GCKR)との間の相互作用を予防するか又は阻害する。
【0036】
GCKなどの酵素の活性を判定するための方法及びアッセイは当業者に周知である。例えば、GCK活性を測定するための特定のアッセイは、国際公開第2008050101号パンフレットに記載されており、そこでは、組換えGCKの酵素活性を、GCKをATP及びグルコースとインキュベートすることによって測定している。生成物の形成速度は、アッセイをG6Pデヒドロゲナーゼ、NADP/NADPHシステムと合わせることによって判定し、340nmにおける光学密度の経時的線形増加を測定してもよい。
【0037】
いくつかのGCK活性化因子が当技術分野において公知であり、本明細書において引用する参考文献に記載されている。
【0038】
本発明の1つの実施形態において、GCK活性化剤は、式(I)の化合物
【0039】
【化2】
【0040】
又はその薬学的に許容される塩である
(式中、
は、イソプロピル、ブタ-2-イル、シクロペンチル、l,l,l-トリフルオロプロパ-2-イル、1,3-ジフルオロプロパ-2-イル、ブタ-l-イン-3-イル、l-ヒドロキシプロパ-2-イル、2-ヒドロキシブタ-3-イル、l-ヒドロキシブタ-2-イル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロピラニル、l-メトキシプロパ-2-イル、l-メトキシブタ-2-イル、2-ヒドロキシプロパ-1-イル、2-メトキシプロパ-l-イル、2-ヒドロキシブタ-l-イル、2-メトキシブタ-l-イル、1-フルオロメトキシプロパ-2-イル、l,l-ジフルオロメトキシプロパ-2-イル及びl-トリフルオロメトキシプロパ-2-イルから選択され、
HET-1は、2位において窒素原子を含み、O、N及びSから独立して選択される1又は2個のさらなる環ヘテロ原子を含んでいてもよい5又は6員C結合ヘテロアリール環であり、その環は、任意の窒素原子上でRから選択される置換基で及び/又は1つ若しくは2つの利用可能な炭素原子上でRから独立して選択される置換基で置換されていてもよく(ただし、それによって四級化されない)、
は、-C(O)NR及び-SONRから選択され、
は、メチル、トリフルオロメチル及びハロから選択され、
及びRは、それらが結合する窒素原子とともに、O、N及びSから独立して選択される1つ又は2つのさらなるヘテロ原子(結合しているN原子に加えて)を含んでいてもよい4~7員飽和又は部分不飽和ヘテロシクリル環を形成し、-CH-基は、-C(O)-で置き換えられていてもよい場合があり、環中の硫黄原子は、S(O)又はS(O)基に酸化されていてもよい場合があり、その環は、利用可能な炭素原子上でRから独立して選択される1つ若しくは2つの置換基で及び/又は利用可能な窒素原子上でRから選択される置換基で置換されていてもよいか、又はR及びRは、それらが結合する窒素原子とともに、1つのさらなる窒素原子を含んでいてもよい(結合しているN原子に加えて)6~10員二環式飽和又は部分不飽和ヘテロシクリル環を形成し、-CH2-基は、-C(O)-で置き換えられていてもよい場合があり、この環は、利用可能な炭素上でヒドロキシ及びRから選択される1つの置換基で又は利用可能な窒素原子上でメチルで置換されていてもよく、
は、(l-4C)アルキル、ハロ、ヒドロキシ(l-4C)アルキル、(l-4C)アルコキシ(l-4C)アルキル、(l-4C)アルキルS(O)p(l-4C)アルキル、アミノ(l-4C)アルキル、(l-4C)アルキルアミノ(l-4C)アルキル及びジ(l-4C)アルキルアミノ(l-4C)アルキルから独立して選択され、
は、(l-4C)アルキル、ハロ(l-4C)アルキル、ジハロ(l-4C)アルキル、トリハロ(l-4C)アルキル、ヒドロキシ(l-4C)アルキル、(l-4C)アルコキシ(l-4C)アルキル、(l-4C)アルキルS(0)p(l-4C)アルキル、アミノ(l-4C)アルキル、(l-4C)アルキルアミノ(l-4C)アルキル及びジ(l-4C)アルキルアミノ(l-4C)アルキルから独立して選択され、
は、ヒドロキシ、(l-4C)アルコキシ、(l-4C)アルキル、アミノカルボニル、(1-4C)アルキルアミノカルボニル、ジ(l-4C)アルキルアミノカルボニル、(l-4C)アルキルアミノ、ジ(l-4C)アルキルアミノ、(l-4C)アルコキシ(l-4C)アルキル、ヒドロキシ(l-4C)アルキル及び-S(O)p(l-4C)アルキルから選択され、
は、(l-4C)アルキル、-C(O)(l-4C)アルキル、アミノカルボニル、(1-4C)アルキルアミノカルボニル、ジ(1-4C)アルキルアミノカルボニル、(1-4C)アルコキシ(1-4C)アルキル、ヒドロキシ(l-4C)アルキル及び-S(O)p(l-4C)アルキルから選択され、
、X及びXのそれぞれは、CH、N、S及びOから独立して選択され、Xは、存在しない(5員環を構成する)か、又はCH、N、O及びSから選択され、ただし、X、X、X及びXのうちの少なくとも1つはCHであり、ただし、環内にO-O、O-S又はS-S結合は存在しない)。
【0041】
本発明の1つの実施形態において、GCK活性化剤は、AZD1656、ピラグリアチン(別名R1440又はRO4389620)、AZD6370、GKA50、YH-GKA、PSN-010、LY2121260、ガノデランB、ユーパチリン、グルコリプシンA、グルコリプシンB、シノグリアチン(sinogliatin)、GKM-001、TTP-399、SY-004、TMG-123、アルビグルチド、AM-9514、AMG-0696、AMG-1694、AMG-3969、LCZ-960、AZD-1092、AZD-5658、ARRY-403、BMS-820132、GKM-002、LY-2608204、MK-0941、R-1511、RO-281675、ZYGK-1、OP-286CR、CM-3、DS-7309、LY-2599506、PF-04937319、PF-04991532、TAK-329、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される。
【0042】
ピラグリアチンは、以下の構造式
【0043】
【化3】
【0044】
を有し、化学名(2R)-2-(3-クロロ-4-メチルスルホニルフェニル)-3-[(1R)-3-オキソシクロペンチル]-N-ピラジン-2-イルプロパンアミドで知られている。
【0045】
AZD1656は、以下の構造式
【0046】
【化4】
【0047】
を有し、化学名3-[5-(アゼチジン-1-カルボニル)ピラジン-2-イル]オキシ-5-[(2S)-1-メトキシプロパン-2-イル]オキシ-N-(5-メチルピラジン-2-イル)ベンズアミドで知られている。
【0048】
本発明の1つの実施形態において、GCK活性化剤は、3-{[5-(アゼチジン-1-イルカルボニル)ピラジン-2-イル]オキシ}-5-{[(1S)-1-メチル-2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}-N-(5メチルピラジン-2-イル)ベンズアミドである。
【0049】
AZD6370は、以下の構造式
【0050】
【化5】
【0051】
を有し、化学名3-(((1S)-2-ヒドロキシ-1-メチルエチル)オキシ)-N-(1-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)-5-(4-(メチルスルホニル)フェノキシ)ベンズアミドで知られている。
【0052】
GKA50は、以下の構造式
【0053】
【化6】
【0054】
を有し、化学名6-[[3-[(1S)-2-メトキシ-1-メチルエトキシ]-5-[(1S)-1-メチル-2-フェニルエトキシ]ベンゾイル]アミノ-3-ピリジンカルボン酸で知られている。
【0055】
YH-GKAは、以下の構造式
【0056】
【化7】
【0057】
を有する。
【0058】
PSN-010は、以下の構造式
【0059】
【化8】
【0060】
を有する。
【0061】
LY2121260は、以下の構造式
【0062】
【化9】
【0063】
を有し、化学名(1R,2S)-2-シクロヘキシル-1-(4-メチルスルホニルフェニル)-N-(1,3-チアゾール-2-イル)シクロプロパン-1-カルボキサミドで知られている。
【0064】
ユーパチリンは、以下の構造式
【0065】
【化10】
【0066】
を有し、アルテミシア・プリンセプス(Artemisia princeps)から誘導することができるフラボンである。
【0067】
グルコリプシンAは、以下の構造式
【0068】
【化11】
【0069】
を有し、ストレプトマイセス・パープロゲニスクレオティクス(Streptomyces purpurogeniscleroticus)から誘導することができる糖脂質である。
【0070】
グルコリプシンBは、以下の構造式
【0071】
【化12】
【0072】
を有し、ノカルディア・ワクチニイ(Nocardia vaccinii)から誘導することができる糖脂質である。
【0073】
好ましい実施形態において、GCK活性化剤はAZD1656である。好ましい実施形態において、GCK活性化剤はGKA50である。
【0074】
米国特許出願公開第20130252973A1号明細書、米国特許出願公開第20130165452A1号明細書、国際公開第2013086397A1号パンフレット、米国特許出願公開第20130131113A1号明細書、欧州特許出願公開第2582706A1号明細書、米国特許出願公開第20130029939A1号明細書、欧州特許出願公開第2543667A1号明細書、国際公開第2012150202A1号パンフレット、米国特許出願公開第20120277242A1号明細書、欧州特許出願公開第2513103A1号明細書、米国特許出願公開第20120252814A1号明細書、米国特許出願公開第20120225887A1号明細書、米国特許出願公開第20120214735A1号明細書、米国特許出願公開第20120184544A1号明細書、米国特許出願公開第20120178765A1号明細書、米国特許出願公開第20120165375A1号明細書、米国特許出願公開第20120149704A1号明細書、米国特許出願公開第20120142636A1号明細書、欧州特許出願公開第2444397A1号明細書、米国特許出願公開第20120088760A1号明細書、欧州特許出願公開第2406230A1号明細書及びGrewal, A.S., Sekhon, B.S., and Lather, V. (2014). Recent Updates on Glucokinase Activators for the Treatment of Type 2 Diabetes Mellitus. Mini Rev Med Chem 14, 585-602で挙げられるグルコキナーゼ活性化因子(GKA)も、当業者に公知であり、本発明において使用するものであり、これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0075】
本発明の解糖活性化剤の細胞標的は、アルドラーゼ、AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPキナーゼ)、CD28、CD80、CTLA-4、エノラーゼ、GCK、GCK調節タンパク質(GCKR)、ヘキソキナーゼI(HKI)、ヘキソキナーゼII(HKII)、ICAM-1及びLFA-1からなる群から選択される1又は2以上であってもよい。
【0076】
疾患又は医学的状態
本発明の解糖活性化剤及び化合物は、疾患及び医学的状態の治療又は予防における使用を見出す。
【0077】
1つの実施形態において、疾患又は医学的状態は免疫介在性の疾患又は医学的状態である。そのような疾患又は状態は、望ましくない又は異常な免疫応答の存在によって示される。したがって、1つの実施形態において、免疫介在性の疾患又は医学的状態は、自己免疫障害である。「自己免疫障害」は、それ自身の健常細胞又は組織に対する生物の免疫応答に起因する任意の疾患又は状態を意味するために本明細書において使用する。別の実施形態において、疾患又は医学的状態は、移植関連障害である。「移植関連障害」は、臓器、組織又は細胞移植を受けた患者又は対象の結果と関連する又は結果として生じる任意の障害を意味するために本明細書おいて使用し、これらとしては、モノクローナル抗体などの生物学的医薬品の免疫拒絶反応がある。移植関連障害の例としては、移植拒絶反応、同種移植拒絶反応、血管新生同種移植拒絶反応、細胞移植拒絶反応(すなわち幹細胞、膵臓ベータ細胞)及び移植片対宿主病(GVHD)がある。
【0078】
1つの実施形態において、免疫介在性の疾患又は医学的状態、例えば、自己免疫障害は、移植拒絶反応、同種移植拒絶反応、移植片対宿主病(GVHD)、全身性エリテマトーデス(SLE)、多発性硬化症(MS)、乾癬、I型糖尿病、橋本甲状腺炎、自己免疫性甲状腺炎(AITD)、心筋炎、心筋梗塞(MI)、アレルギー、ウイルス、細菌又は寄生生物による感染症、がん、炎症性腸疾患(IBD)、関節リウマチ、自己免疫性胃炎、大腸炎、抗糸球体基底部腎炎、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、円形脱毛症、自己免疫性プロゲステロン皮膚炎、自己免疫性蕁麻疹、尋常性天疱瘡、自己免疫性多内分泌腺症候群(APS;3型APS、別名IPEX症候群を除く)、自己免疫性膵炎、グレーブス病、シェーグレン症候群、セリアック病、潰瘍性大腸炎、抗リン脂質症候群、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少性紫斑病、悪性貧血、混合性結合組織疾患(MCTD)、未分化結合組織疾患(UCTD)、乾癬性関節炎、再発性多発性軟骨炎、リウマチ熱、皮膚筋炎、重症筋無力症、多発性筋炎、急性播種性脳脊髄炎(ADEM)、ギランバレー症候群、橋本脳症、横断性脊髄炎、サルコイドーシス、自己免疫性ブドウ膜炎、自己免疫性内耳疾患(AIED)、ベーチェット病、巨細胞性動脈炎、多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)、血管炎、湿疹から選択される。
【0079】
1つの実施形態において、免疫介在性の疾患又は医学的状態は心筋炎である。1つの実施形態において、免疫介在性の疾患又は医学的状態は移植片対宿主病(GVHD)である。1つの実施形態において、免疫介在性疾の患又は医学的状態は移植拒絶反応である。1つの実施形態において、免疫介在性の疾患又は状態は関節リウマチである。1つの実施形態において、免疫介在性の疾患又は医学的状態は1型糖尿病である。別の実施形態において、自己免疫障害などの免疫介在性の疾患又は医学的状態は1型糖尿病ではない。
【0080】
別の実施形態において、治療されることになる疾患又は医学的状態は、移植後糖尿病及び虚血再灌流傷害からなる群から選択される。
【0081】
自己免疫
インビボでは、Tregは、自己反応性T細胞の活性化を制限し、したがってそのエフェクター機能の分化及び獲得を予防する。活性病原性細胞の供給を制限することによって、Tregは自己免疫疾患の進行を予防するか又は減速する。しかし、この防御機序は、おそらくTreg細胞の欠乏(特定の部位において)並びに/又は長期の疾患経過にわたるTreg耐性病原性T細胞の発生及び蓄積のために、自己免疫個体において不十分であるようである。したがって、これらの患者における自己寛容の回復は、疾患部位にTregをホーミングするか又は病原性T細胞をパージし、Tregを注入し、進行中の組織傷害を制御する能力を高めることによって達成される場合がある。臓器特異的自己免疫状態、例えば甲状腺炎及びインスリン依存性糖尿病は、この寛容機序のブレークダウンに起因している。
【0082】
1型糖尿病
1型(若年性)糖尿病は、インスリン産生膵臓ベータ-細胞の破壊に起因する臓器特異的自己免疫疾患である。非糖尿病患者では、島細胞抗原特異的T細胞は、胸腺での発生において取り除かれるか、又は島細胞抗原に対するエフェクター応答を盛んに抑制する制御性T細胞へ変換される。若年性糖尿病患者では、かつ若年性糖尿病のNODマウスモデルでは、これらの寛容機序は失われている。それらが無ければ、島細胞抗原は、ヒト白血球抗原(HLA)クラスI及びII分子によって提示され、CD8(+)及びCD4(+)自己反応性T細胞によって認識される。これらの自己反応性細胞によって島細胞が破壊されると、最終的にはグルコース不寛容につながる。Tregのホーミング及び/又は現存する抗原特異的エフェクターT細胞の制御性表現型への変換によって、有害な自己免疫応答の方向性が変更され、抗原特異的適応寛容の誘発につながる。抗原特異的寛容の誘発によって自己エピトープに対する自己免疫応答をモジュレートすると、進行中のベータ細胞破壊を予防することができる。
【0083】
したがって、本発明は、1型糖尿病を予防するか又は治療するための方法において有用である。1型糖尿病を治療する場合、本発明の解糖活性化剤又はGCK活性化剤は、インスリン投与レジメンの一部として投与してもよい。別の実施形態において、薬剤は、インスリンと共に(例えば、同時に、連続的に又は個別に)投与されない。したがって、薬剤は、インスリン療法の代替であってもよい。
【0084】
移植
臓器特異的自己免疫を治療するためのAg特異的Treg細胞を誘導することは、重要な治療開発であり、全身的な免疫抑制を回避する。骨髄移植のネズミモデルでは、Tregは、ドナー骨髄生着を促進し、有益な移植片対腫瘍免疫学的効果を無効にすることなく移植片対宿主病の発生及び重症度を減少させる。これらの発見は、マウス及びヒトにおけるTregは、表現型及び機能特性を共有するという知見と合わせて、ヒト造血細胞移植と関連する合併症を減少させるためのこれらの細胞の使用を積極的に調査することにつながっている。Treg及びエフェクターT細胞の不均衡は、移植片対宿主病が発症する一因となる。しかし、Tregの免疫調節、特にアロ認識特性の機序、他の免疫細胞に対するその効果及びそれらとの相互作用、並びにそれらの抑制活性部位は、十分に理解されていない。
【0085】
ヒトと実験動物モデルの両方からのエビデンスの蓄積は、移植片対宿主病(GVHD)の発症におけるTregの関与を示唆している。Tregは、移植片対腫瘍(GVT)活性からGVHDを区別することができるという実証によって、その免疫抑制の潜在力を操作し、GVT効果に対して有害な結果を与えることなくGVHDを減少させることができることが示唆される。
【0086】
1つの実施形態において、本発明の薬剤は、対象における移植の成功率を増加させるために、又は対象における移植拒絶反応を遅延させるために使用してもよい。移植は、皮膚移植であってもよい。したがって、薬剤は、移植片生着率を増加させるか、又は対象における皮膚移植片拒絶反応を遅延させるために有用であり得る。1つの実施形態において、成功率の増加又は拒絶反応の遅延は、プラセボ、媒体、薬剤不含対照又は他の(従来の)免疫抑制薬剤、例えばエフェクター免疫機序(細胞性又は体液性)の作用を阻害することを目的とするものとの比較で測定される。
【0087】
移植後糖尿病
2型糖尿病は、英国における末期腎不全の最も一般的な原因である。腎臓移植は、末期腎疾患を有する患者に対する腎代替療法の最適な形態であることが広く認められており、透析を継続したものと比較して、腎移植を受けた患者における生存が長期となり、クオリティオブライフが改善される(Reese, P.P., Shults, J., Bloom, R.D., Mussell, A., Harhay, M.N., Abt, P., Levine, M., Johansen, K.L., Karlawish, J.T., and Feldman, H.I. Functional Status, Time to Transplantation, and Survival Benefit of Kidney Transplantation Among Wait-Listed Candidates. American journal of kidney diseases : the official journal of the National Kidney Foundation. 7 July 2015)。
【0088】
しかし移植によって、患者におけるグルコース負荷は高くなる。これは、急性拒絶反応、敗血症及び転帰の悪化と関連しており、患者は、移植後期間の初期に患者の抗糖尿病薬を頻繁に増加させる必要がある。このことに関する1つの理由は、免疫抑制薬(ステロイド及びカルシニューリン阻害剤)が、高血糖を直接もたらす場合があるということである。さらに、腎機能が改善するにつれ、抗糖尿病剤の腎クリアランスが高くなり、これらの医薬品の効力が低下する。これらの影響は移植後期間の初期に最も顕著である。この時期が、免疫抑制の負荷が最も強く、腎機能における変化が最も顕著である期間であるためである。
【0089】
解糖活性化剤(AZD1656など)の短期のクールは、免疫抑制負荷、したがって糖新生が最大である場合に、腎移植直後の糖尿病の制御において利点となる場合がある。さらに、解糖活性化剤は、免疫機能への影響を含むその抗糖尿病作用とは無関係の作用において、腎移植後に追加の利点を有する場合がある。
【0090】
理論に束縛されることを望むものではないが、解糖活性化剤(AZD1656など)を用いた治療は、術後クールの初期においてより多くのTreg輸送をもたらすことになり、その免疫抑制効果を通して虚血再灌流傷害を減少させ、続いて、改善された移植片の生着に関するマーカーである、移植された臓器(例えば腎臓)におけるTregの存在を増加させ、同時に初期の移植後糖尿病制御を制御する助けとなると考えられる。
【0091】
したがって、本発明は、移植後糖尿病、特に腎移植後糖尿病を予防するか又は治療するための方法において有用である。本発明は、腎移植を受けた患者における糖尿病を予防するか又は治療するための方法において有用である。1つの実施形態において、糖尿病に罹患した患者は、さらなる抗糖尿病薬を投与されている。本発明は、虚血再灌流傷害を予防するか又は治療するための方法において有用である。本発明は、移植後の移植片生着を改善するための方法において有用である。本発明は、治療中の臓器移植組織(腎移植組織など)においてTregの母集団を増加させるための方法において有用である。
【0092】
したがって、本項に記載のそのような予防/治療の有効性は、Treg遊走、例えば、腎移植組織におけるTreg浸潤の変化、例えば3カ月の治療にわたってFACS分析を使用して測定される、例えば末梢のTreg母集団における変化、又は当業者に公知の任意の適切な遊走アッセイを使用して測定されるインビトロでのTregの遊走における変化を検討することによって評価してもよい。
【0093】
したがって、効果的な治療法の副次的評価項目としては、ベースラインと治療生検終了時との間の腎生検組織におけるTreg細胞に対する組織学的染色、マーカーとしてHbA1cを使用したベースラインと治療終了時との間の糖尿病制御、ベースラインと治療終了時との間の他の抗糖尿病薬の用量、安全性評価項目、すなわち低血糖エピソード、HOMA IR定量化を使用したインスリン抵抗性、ベースラインと治療終了時との間の移植片機能、急性拒絶反応のエピソード、日和見感染症(細菌性とウイルス性の両方)のエピソード、12カ月目の移植片機能、及び遺産効果を評価するための糖尿病制御があり得る。
【0094】
免疫モジュレート
本発明の解糖活性化剤は、対象における免疫応答をモジュレートする(modulate)か又は調節する(regulate)ために、例えば、対象における免疫応答を抑制する(suppress)か又はリプレッスする(repress)ために使用してもよい。
【0095】
本発明の解糖活性化剤は、対象における自己免疫応答を抑制するか又は調節するために使用してもよい。
【0096】
特に、疾患又は医学的状態の治療又は予防は、内因性制御性T細胞(Treg)の、例えば組織又は臓器への、例えば疾患のある組織若しくは臓器又は移植された組織若しくは臓器への輸送を介して介在してもよい。
【0097】
したがって、本発明の解糖活性化剤及び化合物は、例えば、疾患又は医学的状態に罹患した又はこれらに罹患するリスクがある対象における(疾患)組織又は臓器への内因性レギュレーターT細胞(Treg)の輸送における使用を見出す。
【0098】
さらに、本発明の解糖活性化剤及び化合物は、内因性制御性T細胞の組織又は臓器、例えば疾患のある組織又は臓器への輸送によって緩和される疾患又は医学的状態の治療又は予防における使用を見出す。
【0099】
「疾患のある組織又は臓器」は、任意の異常な又は病理学的状態における組織又は臓器を意味する。例えば、組織又は臓器は、免疫疾患、障害又は医学的状態、例えば、自己免疫障害又は本明細書に記載される疾患又は状態のうちのいずれかによって影響を受ける場合がある。
【0100】
1つの実施形態において、Tregは、胸腺内で生成される自然発生Treg(ナチュラルTreg)である。別の実施形態において、Tregは、末梢で生成される誘導性Treg(誘導性Treg)である。
【0101】
関連する実施形態において、解糖活性化剤は、エフェクターT細胞応答、ヘルパーT細胞応答又はB細胞応答のうちのいずれかを同時に抑制する場合がある。有利には、解糖活性化剤は、エフェクターT細胞応答、ヘルパーT細胞応答又はB細胞応答のうちのいずれかを抑制する薬剤と共に投与してもよい。
【0102】
Tregの輸送
「Tregの輸送」という用語は、Tregの移動に全般的に関連し、例えば、その運動性又は遊走に関連し得る。そのような輸送、ホーミング又は遊走は、特定の方向であっても、又は特定の位置若しくは部位に向かっていてもよい。
【0103】
本発明の効果は、Tregの疾患部位への、例えば炎症組織への又は疾患のある組織若しくは臓器への、輸送、ホーミング又は遊走によって主に達成され得る。好ましい実施形態において、Treg細胞は、疾患のある組織又は臓器に遊走する。1つの実施形態において、Treg細胞は、脾臓又は腹膜に、有利には腹膜に遊走する。この様式でTregの輸送を可能にする細胞機序は当業者に公知である。
【0104】
Tregの遊走アッセイは当業者に公知であり、本明細書においてさらに詳細に記載する。
【0105】
治療方法
本発明は、対象における免疫介在性の障害又は状態を治療するか又は予防する方法であって、解糖活性化剤を対象に投与することを含む方法も包含する。
【0106】
「治療すること又は予防すること」という用語は、治療、予防又は診断の任意の形態を包含することを意図し、疾患を治癒するための治療と予防するための治療の両方を含む。したがって、健常対象の治療は治療法とみなすことができる。治療又は予防は、疾患のための治癒的治療に加えて、症状の緩和も含む。
【0107】
投与量及び投与
本発明は、本発明による使用のための解糖活性化剤、及び薬学的に許容される担体、媒体、希釈剤又は賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0108】
本発明の組成物は、経口使用(例えば、錠剤、トローチ剤、硬若しくは軟カプセル剤、水性若しくは油性懸濁剤、エマルション剤、分散性散剤(dispersible powders)若しくは顆粒剤、シロップ剤又はエリキシル剤として)、局所使用(例えば、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、又は水性若しくは油性液剤若しくは懸濁剤として)、吸入による投与(例えば、微粉化された粉末状又は液状エアロゾル剤として)、吹入剤による投与(例えば、微粉化された散剤として)又は非経口投与(例えば、静脈内、皮下、筋肉内若しくは筋肉内投薬用の滅菌水性若しくは油性液剤として、又は直腸投薬用の坐剤として)に適切な形態であってもよい。経口使用に適切な剤形が好ましい。
【0109】
本発明の組成物は、当技術分野において周知の従来の医薬賦形剤を使用し、従来の手順によって得てもよい。したがって、経口使用を意図する組成物は、例えば、1又は2以上の着色剤、甘味料、香味料及び/又は保存剤を含んでいてもよい。
【0110】
錠剤製剤のための適切な薬学的に許容される賦形剤としては、例えば、不活性希釈剤、例えばラクトース、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム又は炭酸カルシウム、造粒及び崩壊剤、例えばコーンスターチ又はアルギン酸;結合剤、例えばデンプン;滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルク;保存剤、例えばp-ヒドロキシ安息香酸エチル又はプロピル、並びに抗酸化剤、例えばアスコルビン酸がある。錠剤製剤は、コーティングされていなくても、その崩壊及びその後の胃腸管内での活性成分の吸収を改良するために、又はその安定性及び/若しくは外観を改善するためにコーティングされていてもよく、いずれの場合も、従来のコーティング剤及び当技術分野において周知の手順を使用する。
【0111】
経口使用のための組成物は、活性成分が、不活性固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム又はカオリンと混合されている硬ゼラチンカプセル剤の形態であっても、活性成分が、水又は油、例えば落花生油、液体パラフィン、又はオリーブ油と混合されている軟ゼラチンカプセル剤としての形態であってもよい。
【0112】
水性懸濁剤は、1又は2以上の懸濁化剤、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム及びアカシアゴム;分散又は湿潤剤、例えばレシチン、又はアルキレンオキシドと脂肪酸との濃縮生成物(例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン)、又はエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの濃縮生成物、例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール、又はエチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトールに由来する部分エステルとの濃縮生成物、例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール、又はエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの濃縮生成物、例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール、又はエチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトールに由来する部分エステルとの濃縮生成物、例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール、又はエチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトール無水物に由来する部分エステルとの濃縮生成物、例えば、モノオレイン酸ポリエチレンソルビタンとともに、活性成分を微粉末状形態で一般的に含む。水性懸濁剤は、1又は2以上の保存料(Q-ヒドロキシ安息香酸エチル又はプロピルなど)、抗酸化剤(アスコルビン酸など)、着色剤、香味剤、及び/又は甘味剤(スクロース、サッカリン又はアスパルテームなど)も含んでいてもよい。
【0113】
油性懸濁剤は、植物油(落花生油、オリーブ油、ゴマ油又はココナツ油など)中に又は鉱油(液体パラフィンなど)中に活性成分を懸濁することによって製剤化してもよい。油性懸濁剤は、増粘剤、例えば蜜蝋、固形パラフィン又はセチルアルコールも含んでいてもよい。上記のものなどの甘味剤、及び香味剤は、味の良い経口調製物を提供するために添加してもよい。これらの組成物は、アスコルビン酸などの抗酸化剤を添加することによって保存してもよい。
【0114】
水を添加することによる水性懸濁剤の調製に適切な分散性散剤及び顆粒剤は、分散又は湿潤剤、懸濁化剤及び1又は2以上の保存料とともに、活性成分を一般的に含む。適切な分散又は湿潤剤及び懸濁化剤は、既に上述のものによって例示されている。
【0115】
追加の賦形剤、例えば甘味剤、香味剤及び着色剤も存在していてもよい。
【0116】
本発明の医薬組成物はまた、水中油エマルションの形態であってもよい。油性相は、植物油、例えばオリーブ油若しくは落花生油、又は鉱油、例えば、液体パラフィン若しくはこれらのうちのいずれかの混合物であってもよい。適切な乳化剤は、例えば、天然に存在するゴム、例えばアカシアゴム又はトラガカントゴム、天然に存在するホスファチド、例えばダイズ、レシチン、脂肪酸及びヘキシトール無水物に由来するエステル又は部分エステル(例えば、モノオレイン酸ソルビタン)及び前記部分エステルとエチレンオキシドとの濃縮生成物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートであってもよい。エマルションは、甘味剤、香味剤及び保存剤も含んでいてもよい。
【0117】
シロップ剤及びエリキシル剤は、甘味剤、例えばグリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、アスパルテーム又はスクロースを用いて製剤化してもよく、粘滑剤、保存剤、香味剤及び/又は着色剤も含んでいてもよい。
【0118】
医薬組成物はまた、滅菌注射用水性又は油性懸濁剤の形態であってもよく、これらは、上述の適切な分散又は湿潤剤及び懸濁化剤のうちの1又は2以上を使用して、公知の手順に従って製剤化してもよい。滅菌注射用調製物はまた、非毒性の非経口で許容される希釈剤又は溶媒中の滅菌注射用溶液又は懸濁剤、例えば1,3-ブタンジオール中の溶液であってもよい。
【0119】
吸入による投与のための組成物は、微粉化された固形物又は液滴を含むエアロゾルとして活性成分を分注するように構成された従来の加圧エアロゾルの形態であってもよい。従来のエアロゾル噴射剤、例えば揮発性フッ化炭化水素又は炭化水素を使用してもよく、エアロゾルデバイスは、定量の活性成分を分注するように好都合に構成される。
【0120】
製剤のさらなる情報に関しては、Chapter 25.2 in Volume 5 of Comprehensive Medicinal Chemistry (Corwin Hansch; Chairman of Editorial Board), Pergamon Press 1990を参照されたい。
【0121】
単一の剤形を製造するために1又は2以上の賦形剤と組み合わせられる活性成分の量は、治療される宿主及び特定の投与経路によって必然的に変わる。例えば、ヒトへの経口投与を意図する製剤は、例えば、全組成物の約5重量パーセントから約98重量パーセントまで変わり得る適切なかつ好都合な量の賦形剤と混合された0.5mg~2gの活性薬剤を一般的に含むであろう。本発明の解糖活性化剤の単位剤形は、約1mg~約500mgの活性成分、例えば1、10、20、50、100、200、250又は500mgの活性成分を一般的に含むであろう。好ましくは、単位剤形は、約100mgの活性成分を含む。投与経路及び投与量レジメンに対するさらなる情報に関しては、Chapter 25.3 in Volume 5 of Comprehensive Medicinal Chemistry (Corwin Hansch; Chairman of Editorial Board), Pergamon Press 1990を参照されたい。
【0122】
治療又は予防目的の用量サイズは、周知の医療原理に従って、状態の性質及び重症度、動物又は患者の年齢及び性別、並びに投与経路によって当然異なる。1つの実施形態において、患者の年齢は18~75歳である。
【0123】
治療又は予防目的で、解糖活性化剤、例えば、GCK活性化剤、例えばAZD1656を使用する場合、例えば体重1kg当たり0.5mg~75mg、例えば体重1kg当たり1mg~50mg、例えば体重1kg当たり5mg~30mg、例えば体重1kg当たり10~25mg、例えば体重1kg当たり20mgの範囲の1日用量を与えられるように一般的に投与され、必要に応じて分割用量で与えられるであろう。非経口経路が用いられる場合、一般的に低用量が投与されることになる。したがって、例えば、静脈内投与に関しては、例えば体重1kg当たり0.5mg~30mgの範囲の用量が一般的に使用されることになる。同様に、吸入による投与に関しては、例えば体重1kg当たり0.5mg~25mgの範囲の用量が使用されることになる。しかし、経口投与が好ましい。好ましい実施形態において、本発明の解糖活性化剤(AZD1656など)は、体重1kg当たり20mgの投与量で毎日又は1日2回、1~3週間、例えば2週間投与してもよい。
【0124】
好ましい実施形態において、本発明の解糖活性化剤(AZD1656など)は、1日1回、2回、3回又は4回投与してもよい。解糖活性化剤のクールは、任意の期間であってもよいが、好ましい実施形態において、本発明の解糖活性化剤(AZD1656など)は、1週間~6カ月間、例えば、1~6カ月間、例えば、2~4カ月間、例えば3カ月間投与してもよい。
【0125】
好ましい実施形態において、本発明の解糖活性化剤(AZD1656など)は、経口経路を介して、約1mg~約500mg、例えば約100mgの単位剤形で、1日1回、2回、3回又は4回、1週間~6カ月間、例えば1~6カ月間、例えば2~4カ月間、例えば3カ月間投与してもよい。特に好ましい実施形態において、本発明の解糖活性化剤(AZD1656など)は、経口経路を介して100mgの単位剤形で、1日2回、3カ月間投与される。
【0126】

化合物は、塩、特に薬学的に許容される塩又はエステルとして存在していてもよい。
【0127】
化合物の薬学的に許容される塩としては、これらの適切な酸付加塩又は塩基塩がある。適切な薬学的塩のレビューは、Berge et al, J Pharm Sci, 66, 1-19 (1977)で見出すことができる。塩は、例えば、強無機酸、例えば鉱酸、例えば硫酸、リン酸又はハロゲン化水素酸を用いて;強有機カルボン酸、例えば置換されていないか又は(例えばハロゲンで)置換された1~4個の炭素原子のアルカンカルボン酸、例えば酢酸を用いて;飽和又は不飽和ジカルボン酸、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸又はテトラフタル酸を用いて;ヒドロキシカルボン酸、例えば、アスコルビン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸又はクエン酸を用いて;アミノ酸、例えば、アスパラギン酸又はグルタミン酸を用いて;安息香酸を用いて;又は有機スルホン酸、例えば置換されていないか又は(例えばハロゲンで)置換された(C1-C4)-アルキル-又はアリール-スルホン酸、例えばメタン-又はp-トルエンスルホン酸を用いて形成される。
【0128】
鏡像異性体/互変異性体
前述の本発明の全ての態様において、本発明は、必要に応じて本発明の化合物の全ての鏡像異性体及び互変異性体を含む。当業者であれば、光学特性(1又は2以上のキラル炭素原子)又は互変異性特性を有する化合物を認識するであろう。対応する鏡像異性体及び/又は互変異性体は、当技術分野において公知の方法によって単離/調製してもよい。
【0129】
立体異性体及び幾何異性体
本発明の化合物のうちのいくつかは、立体異性体及び/又は幾何異性体として存在していてもよく、例えばこれらは、1又は2以上の不斉及び/又は幾何中心を有していてもよく、したがって2又は3以上の立体異性体及び/又は幾何学的形態で存在する場合がある。本発明は、これらの阻害剤の全ての個々の立体異性体及び幾何異性体、並びにこれらの混合物の使用を企図する。特許請求の範囲において使用する用語は、前記形態が適切な機能活性を保持するという条件で(必ずしも同程度ではないが)これらの形態を包含する。
【0130】
本発明はまた、薬剤の全ての適切な同位体の変形形態又はその薬学的に許容される塩を含む。本発明の薬剤の同位体の変形形態は又はその薬学的に許容される塩は、少なくとも1つの原子が、同じ原子番号を有するが、自然界で通常認められる原子質量とは異なる原子質量を有する原子で置き換えられているものとして定義される。薬剤及びそれらの薬学的に許容される塩に組み込むことができる同位体の例としては、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素及び塩素の同位体、例えばそれぞれH、H、13C、14C、15N、17O、18O、31P、32P、35S、18F及び36Clがある。薬剤のある特定の同位体の変形形態及びそれらの薬学的に許容される塩、例えば放射性同位体、例えばH又は14Cが組み込まれたものは、薬物及び/又は基質の組織分布研究において有用である。トリチウム化、すなわち、H、及び炭素-14、すなわち14C、同位体は、その調製が容易で検出可能であるために特に好ましい。さらに、同位体、例えばジューテリウム、すなわちHで置換すると、より優れた代謝安定性に起因するある特定の治療的利点、例えばインビボでの半減期の増加又は必要投与量の減少が得られ、したがって、一部の状況で好ましいことがある。本発明の薬剤の同位体の変形形態及び本発明のそれらの薬学的に許容される塩は、適切な試薬の適切な同位体の変形形態を使用した従来の手順によって一般的に調製することができる。
【0131】
溶媒和物
本発明はまた、本発明の化合物の溶媒和物形態を含む。特許請求の範囲において使用する用語は、これらの形態を包含する。
【0132】
多形
本発明は、さらにそれらのさまざまな結晶形態、多形形態及び(無)水和形態の本発明の化合物に関する。化学的化合物は、そのような化合物の合成的調製において使用する溶媒から精製及び又は単離する方法をわずかに変更することによってそのような形態のうちのいずれかとして単離することができることが医薬産業界で十分に確立されている。
【0133】
プロドラッグ
本発明における使用のための化合物は、プロドラッグの形態で投与してもよい。プロドラッグは、本発明の化合物を生成するために体内において分解可能であるバイオ前駆体又は薬学的に許容される化合物である(本発明の化合物のエステル又はアミド、特にインビボ加水分解性エステルなど)。プロドラッグのさまざまな形態が当技術分野において公知である。
【0134】
プロドラッグの例は、以下の通りである。カルボキシ又はヒドロキシ基を含む本発明の化合物のインビボ加水分解性エステルは、例えば、ヒト又は動物体内で加水分解され、親酸又はアルコールを生成する薬学的に許容されるエステルである。カルボキシに適切な薬学的に許容されるエステルとしては、C1-C6アルコキシメチルエステル、例えば、メトキシメチル、C1-C6アルカノイルオキシメチルエステル、例えば、ピバロイルオキシメチル、フタリジルエステル、C3-C8シクロアルコキシカルボニルオキシ、C1-C6アルキルエステル、例えば、1-シクロヘキシルカルボニルオキシエチル;1,3-ジオキソレン-2-オンイルメチルエステル、例えば、5-メチル-1,3-ジオキソレン-2-オンイルメチル;及びCl-6アルコキシカルボニルオキシエチルエステルがある。
【0135】
ヒドロキシル基を含む本発明の化合物のインビボ加水分解性エステルとしては、無機エステル、例えばホスフェートエステル(ホスホロアミド環式エステルを含む)及びα-アシルオキシアルキルエーテル及び関連化合物があり、これらは、エステルのインビボ加水分解の結果的として分解して、親ヒドロキシ基を与える。α-アシルオキシアルキルエーテルの例としては、アセトキシメトキシ及び2,2-ジメチルプロピオニルオキシ-メトキシがある。
【0136】
ヒドロキシのための基を形成するインビボ加水分解性エステルの選択としては、アルカノイル、ベンゾイル、フェニルアセチル並びに置換ベンゾイル及びフェニルアセチル、(炭酸アルキルエステルを与えるための)アルコキシカルボニル、(カルバメートを与えるための)ジアルキルカルバモイル及びN-(ジアルキルアミノエチル)-N-アルキルカルバモイル、ジアルキルアミノアセチル並びにカルボキシアセチルがある。
【0137】
組合せ療法
本明細書に記載される解糖活性化活性は、単独療法として又は治療される適応症のための1若しくは2以上の他の物質及び/又は治療と組み合わせて適用することがある。そのような併用(conjoint)治療は、治療の個々の構成成分を同時に、連続的に又は個別に投与することによって達成される場合がある。同時治療は、単一の錠剤又は個別の錠剤とすることができる。
【0138】
1つの実施形態において、本発明の解糖活性化剤は、免疫抑制剤、細胞療法、寛容原性樹状細胞療法、抗炎症剤及び/又はホルモン補充療法、例えばインスリン又は甲状腺ホルモンと組み合わせて又は一緒に投与される。ホルモン補充療法は自己免疫障害の治療に特に有利であり、例えばI型糖尿病の治療のためのインスリンである。
【0139】
本明細書において使用する場合、「同時に」は、2つの薬剤が同時に投与されることを意味するために使用する。したがって、「連続的に」投与することは、最初に投与される薬剤の循環半減期が、治療有効量で両方とも同時に存在するようなものであるという条件で、1つの薬剤を、例えば、もう一方を投与してから5分、10分又は数時間以内に投与することを許容する場合がある。構成成分の投与間の時間の遅延は、構成成分の正確な性質、それらの間の相互作用、及びそれらのそれぞれの半減期によって変わることになる。
【0140】
「連続的に」とは対照的に、「個別に」は、一方の薬剤の投与ともう一方の投与との間の間隔が顕著であること、すなわち第2の薬剤を投与するときには、最初に投与された薬剤がもはや治療有効量で血流に存在しない場合があることを意味するために本明細書において使用する。1つの好ましい実施形態において、第2の薬剤は、第1の薬剤の少なくとも2時間、より好ましくは少なくとも4時間、さらにより好ましくは少なくとも8時間、またさらにより好ましくは少なくとも12又は24又は48又は72時間後に投与する。1つの特に好ましい実施形態において、第2の薬剤は、第1の薬剤の少なくとも24時間後に投与する。
【0141】
追加の態様
本明細書に記載される使用及び方法は、内因性Treg細胞に全般的に適用可能であるが、解糖経路の活性化を介するTregの輸送又は遊走の誘発は、自己及び/又は同種異系Treg細胞の初回抗原刺激における使用を見出すことも考えられる。
【0142】
例えば、患者自身のTreg細胞を単離し、解糖活性化剤を使用して活性化させ、患者に再導入できることが考えられる。Tregは、任意で増幅させてもよい。
【0143】
したがって、Treg細胞を輸送又は動員するex vivoでの方法であって、Treg細胞を解糖活性化剤と接触させることによってTreg細胞における解糖を活性化するステップを含む方法も本明細書において提供される。方法は、例えば解糖を活性化する前にTregの増殖を誘発するステップを含んでいてもよい。
【0144】
したがって、Treg細胞(例えば養子移植されるTreg)を炎症部位に局在化させる効率を増加させるex vivoでの方法であって、自己及び/又は同種異系Treg細胞を、GCK活性化剤を用いて前処理するステップを含む方法も本明細書において提供される。そのような前処理のステップは、Treg細胞とGCK活性化剤を含む培養培地とを、例えば37℃で少なくとも2時間インキュベートすることとして定義してもよい。方法は、例えば解糖を活性化する前に、Treg細胞の増殖を誘発する又はTreg細胞を増幅するステップを含んでいてもよい。増幅及び増殖のそのような方法は確立されており、当業者に公知である。
【0145】
上記の方法は、例えば治療されることになる対象から(すなわち自己の)又は別の対象若しくは供給源から(すなわち同種異系の)Treg細胞を任意で単離するステップを含んでいてもよい。
【0146】
したがって、本発明は、本明細書に記載される免疫介在性の疾患又は医学的状態を治療する方法であって、
a)治療されることになる対象からTreg細胞を単離する及び/又は別の対象若しくは供給源からTreg細胞を単離するステップ、
b)ステップ(a)からのTreg細胞を増幅させ、治療法に十分な数を得るステップ、
c)ステップ(b)からのTreg細胞を、GCK活性化剤と接触させるか又はそれで前処理するステップ、
d)ステップ(c)からのTreg細胞を、治療されることになる対象に投与するステップ
を含む方法も提供する。
【0147】
ステップ(c)からのTreg細胞は、任意の適切な投薬レジメンを使用して対象に投与又は注入してもよい。例えば、Tregは、体重1kg当たりのTreg数(no.Treg)で測定された投与量で、かつさまざまな投薬スケジュール(例えばさまざまな間隔の注入での1又は2以上の注入)で投与してもよい。
【0148】
したがって、単離された解糖活性化Treg細胞も本明細書において提供される。医薬品における使用のための解糖活性化Treg細胞であって、Tregが任意で単離されるTreg細胞も本明細書において提供される。1つの実施形態において、解糖活性化Tregは、GCK活性化Treg又はAZD1656処理Tregである。これらの態様の単離されたTreg細胞は、自己Treg細胞であってもよい。単離されたTreg細胞は、GCKR遺伝子において変異、例えばGCKR遺伝子において欠失を含んでいてもよく、例えば、GCKR遺伝子全体が欠失していることがある。そのような変異は、GCK及びTregの遊走の脱抑制につながる。
[実施例]
【0149】
本発明は、以下の非限定的な例によってここで説明することになる。
【0150】
材料
マウス。この研究の実験で使用する全てのマウスは、7~11週齢であった。C57BL/6、BALB/c及びCBA/Caマウスを、Charles River社(UK)から購入した。4週齢のCTLA-4KOマウス(H-2uハプロタイプの)から切除した二次リンパ器官は、Prof D Wraith(University of Birmingham)により提供された。
【0151】
微小血管内皮細胞の単離。ネズミ肺微小血管内皮細胞を、既に記載の通りに(Marelli-Berg, F.M., Peek, E., Lidington, E.A., Stauss, H.J., and Lechler, R.I. (2000). Isolation of endothelial cells from murine tissue. J Immunol Methods 244, 205-215)単離した。
【0152】
骨髄由来樹状細胞(BMDC)の単離。骨髄由来DCを、WT BALB/c(H2-d)マウスから得た。7~10週齢の雌マウスから大腿骨及び脛骨を取り出し、BM細胞を、27ゲージ針(Becton Dickinson社、カタログ番号302200)を使用してPBSで洗い流した。溶解緩衝液(Sigma-Aldrich社、カタログ番号R7757)を用いて細胞懸濁液から赤血球を溶解した。1ウェル当たりBM細胞(5×10)を、6ウェルプレート(Helena bioscience社、カタログ番号92006)のDC培地中に下記の通りに播種した。
【0153】
樹状細胞の培養。骨髄由来樹状細胞を、10%FCS、2mMグルタミン、50IU/mLペニシリン、50μg/mLストレプトマイシン、50μM2-ME、及びGMCSFハイブリドーマ(Dr.Jian-Guo Chai、Imperial College、London、UKから寄贈)の上澄みから得られた2%ネズミ顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)が補充されたRPMI1640培地(Gibco社、カタログ番号21875-034)中で培養した。細胞を、5%COの存在下、37℃で培養した。3日及び5日目に、新鮮な培養培地をプレートに添加した。
【0154】
Treg-DC共培養物に関しては、未成熟BMDCを収集し、培養の6日目に使用した。機能アッセイに関しては、未成熟DCを、100ng/mlリポポリサッカライド(LPS)(Invivogen社、カタログ番号tlrl-3pelps)とともに一晩成熟させ、単離してから7~10日の間で使用した。
【0155】
H2-d自己特異的Tregの培養。CD4+CD25+Treg細胞を、Dynabeads(登録商標)FlowComp(商標)マウスCD4+CD25+Treg細胞キット(Invitrogen Dynal社、カタログ番号11463D)を使用して脾臓及びリンパ節から単離した。極めて高純度のTreg細胞(>99%)に関しては、CD4+CD25+Foxp3+細胞を、蛍光活性化細胞ソーティングを介してFoxp3-GFPレポーターマウスから得た。増幅に関しては、C57BL/6(H2-b)マウスから単離したTreg細胞を、放射線照射又はマイトマイシンC(Sigma-Aldrich社、カタログ番号M4287)のいずれかで不活性化した未成熟BALB/c由来(H2-d)DCを5:1(Treg:DC)の比率で用いて毎週刺激した(Fu, H., Kishore, M., Gittens, B., Wang, G., Coe, D., Komarowska, I., Infante, E., Ridley, A.J., Cooper, D., Perretti, M., et al. (2014). Self-recognition of the endothelium enables regulatory T-cell trafficking and defines the kinetics of immune regulation. Nat Commun 5, 3436)。共培養物を、10U/ml IL-2が補充された完全T細胞培地中で維持した。細胞を収集し、24ウェル組織培養プレート(Helena bioscience社、カタログ番号92024)に1ウェル当たり1.5×10Tregの最適な密度で毎週播種した。2週間の培養後のCD4+Foxp3+細胞の百分率は、95%超であった。機能アッセイにおいて使用するために、Tregを刺激してから6~8日後に使用した。
【0156】
抗体介在性T細胞活性化。活性化T細胞は、LN細胞を、20U/mlの組換えIL-2(Roche社、WestSussex、UK)が補充された完全T細胞培地中でプレート結合抗CD3(1μg/ml、eBiosciences社、カタログ番号16-0032-85)及びプレート結合抗CD28(5μg/ml、eBiosciences社、カタログ番号16-0281-86)を用いて、37℃で7日間ポリクローナル刺激することによって得た。組織培養プレートの抗体コーティングを、トリス緩衝液(pH8.5)200μl中で抗体を37℃で1時間インキュベートすることによって行った。
【0157】
方法
リンパ球の経内皮遊走及び走化性アッセイ。IFN-γで48~72時間処理した一次微小血管ECを播種し(3×10)、EC培地中に3μm孔径(Costar社、カタログ番号CLS3472-48EA)ポリカーボネート膜を含む2%ゼラチン被覆トランスウェルインサート(直径、6.5mm)上で16時間培養し、単層を形成した。遊走培地(2%ウシ胎仔血清が補充されたRPMI1640)中に再懸濁したT細胞(5×10)を、各インサートに添加し、単層を通して遊走させ、ウェルの内容物も新鮮な遊走培地で置き換えた。遊走したT細胞の数を、24時間にわたる異なる時点においてウェル培地に存在する細胞を血球計で計数することによって判定した。走化性を測定するために、T細胞を、5又は3μm孔径(Costar社、カタログ番号CLS3421-48EA)ポリカーボネート膜を備えたTranswell(商標)ベアフィルター組織培養ウェルインサート(直径、6.5mm)上に播種し、ケモカイン含有遊走培地をウェルの底部に入れた。遊走した細胞の数を血球計によって判定した。
【0158】
CD28、CTLA-4及びLFA-1シグナル伝達の誘発。抗体刺激によるCD28及びCTLA-4シグナル伝達の誘発を、既に記載の通りに行った(Schneider, H., Valk, E., da Rocha Dias, S., Wei, B., and Rudd, C.E. (2005). CTLA-4 up-regulation of lymphocyte function-associated antigen 1 adhesion and clustering as an alternate basis for coreceptor function. Proc Natl Acad Sci U S A 102, 12861-12866、Wells, A.D., Walsh, M.C., Bluestone, J.A., and Turka, L.A. (2001). Signaling through CD28 and CTLA-4 controls two distinct forms of T cell anergy. J Clin Invest 108, 895-903)。CD28及びCTLA-4共受容体を介した共刺激性シグナルを誘発して機能アッセイを行うために、細胞を、共受容体の機能ドメインを標的とする抗体とともにインキュベートした。CD28シグナル伝達を誘発するために、T細胞を、各図に個別に記載するように異なる時点で、ハムスター抗マウスCD28(5μg/5×10細胞)(クローン:37.52、Bio-Rad社、カタログ番号MCA1363)及びヤギ抗ハムスター免疫グロブリン(Ig)(2.5μg/5×10細胞)(Bio-Rad社、カタログ番号STAR104)の混合物で処理した。同様に、CTLA-4シグナル伝達は、T細胞を、ハムスター抗マウスCTLA-4(5μg/5×10細胞)(クローン:UC10-4F10-11、Becton Dickinson社、カタログ番号553718)及びヤギ抗ハムスター免疫グロブリン(Ig)(2.5μg/5×10細胞)(Bio-Rad社、カタログ番号STAR104)の混合物とインキュベートすることによって達成した。ハムスターIgGアイソタイプ対照を使用し、抗体刺激(Bio-Rad社、カタログ番号MCA2356)の任意の非特異的効果を観察した。LFA-1シグナル伝達を誘発するために、細胞を、各図に個別に記載するように異なる時点で、マウス抗ヒトIgG(1μg/ml、MK1A6、Bio-Rad社、カタログ番号MCA647G)とプラスチック結合又はライゲーションされた、2μg/5×10細胞組換えマウスICAM-1-ヒトIgGFcキメラ(2μg/ml、R&D Systems社、カタログ番号796-IC-050)又は対照としてヒトIgG-Fcフラグメント(R&D Systems社、カタログ番号110-HG)とインキュベートした。T細胞を、PBS中で洗浄してから、実験に使用した。
【0159】
生存可能なT細胞の蛍光標識化。蛍光プローブを用いたT細胞の標識化に関しては、T細胞をPBSで洗浄し、計数し、10/mlの最終濃度でPBS中に再懸濁した。必要であれば、死滅細胞を、Ficoll-Paqueを用いた密度勾配遠心分離を使用して取り出してから再懸濁した。細胞膜用の細胞リンカー色素であるPKH26(Sigma-Aldrich社、カタログ番号PKH26GL-1KT)を用いたT細胞の標識化を、製造業者の使用説明書を使用して行った。PKH26を、5μΜの最終濃度で添加し、細胞を室温で5分間インキュベートした。反応を、等体積のFBSを細胞懸濁液に添加することによって不活性化し、細胞を、10%FBSを含むPBS中で10分間洗浄した。スクシンイミジルエステル色素CFSE(Invitrogen社、カタログ番号C1157)又はDDAO-SE(Invitrogen社、カタログ番号C34553)を用いたT細胞の標識化は、最終濃度の3.3μmCFSE又は1.3μmDDAO-SEを含むPBS中でT細胞を室温で10~15分間インキュベートすることによって行った。反応を、等体積のFBSを添加することによって終了させ、次いで細胞を、10%FBSを含むPBSを用いて10分間洗浄した。
【0160】
腹膜におけるT細胞動員。インビボでのT細胞動員を観察するために、既に記載のT細胞動員モデルを使用した(Mirenda, V., Jarmin, S.J., David, R., Dyson, J., Scott, D., Gu, I., Lechler, R.I., Okkenhaug, K., and Marelli-Berg, F.M. (2007). Physiological and aberrant regulation of memory T cell trafficking by the costimulatory molecule CD28. Blood 109, 2968-2977)。PKH26又はCFSE又はDDAO-SEのいずれかで標識化されたT細胞(10)を、48~72時間前に腹腔内注射(i.p.)を介してIFN-γ(600U)が与えられたマウスに静脈内(i.v.)注射した。腹腔洗浄を介して回収された標識されたT細胞を、フローサイトメトリーを使用して16時間後に分析した。さらに、侵入が受動的様式で生じるTregの脾臓への局在化(Fu, H., Ward, E.J., and Marelli-Berg, F.M. (2016). Mechanisms of T cell organotropism. Cell Mol Life Sci 73, 3009-3033)を分析し、同じ数/割合の標識された細胞が全てのレシピエント(内部対照)に注射されること又は同時に注射されることを確実にした。
【0161】
ザイモサン誘発腹膜炎。0日目に、マウスに滅菌生理食塩溶液中のザイモサンの腹腔内注射を与え(1mg/マウス、カタログ番号4250 SIGMA)、腹膜炎を誘発した。マウスを、注射してから72時間後に屠殺し、組織試料を得て、フローサイトメトリー分析を行った。
【0162】
広視野デコンボリューション蛍光顕微鏡検査。組織試料を切除し、Optimal Cutting Temperatureコンパウンド(OCT、Thermo Fisher Scientific社、カタログ番号12678646)に埋め込み、急速凍結(snap-frozen)し、分析を行うまで貯蔵した。凍結した組織切片を、Polysine被覆顕微鏡スライド(VWR International社、カタログ番号47100)上に載せ、空気乾燥し、次いで氷冷アセトン(Sigma社、カタログ番号534064)を用いて10分間固定した。組織切片をPBS中で洗浄し、血清を用いて3時間ブロックし、記載の一次抗体を使用して4℃で24時間染色した。過剰な抗体を、PBSを用いて洗い流し、組織を、表記の二次抗体及びDAPI(4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール)(Invitrogen/Life Technologies社、カタログ番号D1306)を用いて室温で30分間染色した。スライドを洗浄し、ProLong Gold Antifade試薬(Invitrogen/Life Technologies社、カタログ番号P36930)に載せ、AxioCam MRm Cooledモノクロデジタルカメラ及びApotome2イメージングユニットを備えたZeiss Z1蛍光顕微鏡(Carl Zeiss社、UK)を使用して可視化した。画像は、Plan Apochromat20×/0.8NA対物レンズ及びAxiovisionソフトウェアバージョン4.8(Carl Zeiss社、UK)を使用して得た。染色に関しては、Tregを、R10培地中で培養し、3.7%ホルムアルデヒドを用いて固定した。固定した後、これらを抗GCK、抗Na,K-ATPase及び1ng/mlテトラメチルローダミンBイソチオシアネートコンジュゲートファロイジン(Sigma-Aldrich社、カタログ番号P1951)を用いて37℃で30分間それぞれ染色した。続いて二次抗体Alexa Fluor(登録商標)555ヤギ抗マウスIg(Biolegend社、カタログ番号405324)及びFITC ロバ抗ウサギIgG(最小x-反応性(minimal x-reactivity))抗体(Biolegend社、406403)を用いた。カバーガラスを非常によく洗浄し、空気乾燥し、ガラススライド上でDAPI(Vector Laboratories社、カタログ番号z0603)を用いて蛍光用Vectorshield封入剤に載せた。
【0163】
インビトロでの6-NBDG取り込みアッセイ。単離したばかりのT細胞又は培養したT細胞をPBS中で洗浄し、さまざまな記載のシグナル伝達抗体を含むグルコース不含T細胞培地(Gibco社、カタログ番号11879-020)中に再懸濁し、5%CO2を用い、37℃で45分間インキュベートした。次いで、グルコース不含T細胞培地中の最終濃度の400μM6-NBDG(Life Technologies社、カタログ番号N23106)を細胞に添加し、細胞を追加で10~15分間さらにインキュベートした。最後に、細胞を加温PBSで2回洗浄し、フローサイトメトリー緩衝液中に再懸濁し、氷上に置いた。即時分析を、フローサイトメトリーを使用して行い、T細胞による蛍光取り込みを観察した。
【0164】
インビトロでの6-NBDG取り込みアッセイ(ヒト研究)。単離したばかりのCD3T細胞を、PBS中で洗浄し、組換えCCL19及びCCL21(200ng/mL、Peprotech社、カタログ番号300-29B及び300-35)を含むR2(2%ウシ胎仔血清が補充されたRPMI1640)中、5%COを用いて37℃で10/mLで培養した。最終濃度の400μM6-NBDG(Life Technologies社、カタログ番号N23106)を細胞に添加し、0、15、30及び60分間インキュベートした。最後に、細胞を加温PBSで2回洗浄し、CD4T細胞及びTregを染色し、氷上に置いた。即時分析を、フローサイトメトリーを使用して行い、Tregによる蛍光取り込みを観察した。
【0165】
インビボでの6-NBDG取り込みアッセイ。T細胞のグルコース取り込み活性をインビボで測定するために、PKH26標識化T細胞(3×10)をマウスにi.p.注射した。その直後に2回目の6NBDG(滅菌水中400μM)のi.p.注射をマウスに与えた。1時間後にマウスを屠殺し、フローサイトメトリーによる分析のために腸間膜(流入領域)リンパ節及び脾臓を収集した。腹膜の広視野顕微鏡検査を行い、標識化されたT細胞の腹膜への流入を観察した。膜に浸潤するPKH26+T細胞を、画像分析ソフトウェアImageJを使用して、6NBDG取り込み(緑色蛍光)に関してさらに分析した。倍率10倍の視野画像における標識化された細胞の数を手動で計数し、T細胞浸潤における差異を判定した。
【0166】
ECAR及びOCRの測定。抗体刺激を受けたT細胞の細胞外酸性化速度(ECAR)及び酸素消費速度(OCR)のリアルタイム生体エネルギー分析を、XFアナライザー(Seahorse biosciences社)を使用して行った。T細胞を、血清不含非緩衝XFアッセイ培地(Seahorse biosciences社、カタログ番号102365-100)中で1時間培養した。次いで、分析のために、細胞をseahorse XF24細胞プレートに播種した(6×10/ウェル)。T細胞による代謝経路の使用の変動(Perturbation)プロファイリングを、オリゴマイシン(1μM)、FCCP(1μM)、アンチマイシンA(1μM)、ロテノン(1μM)、D-グルコース(10mM)、2-デオキシ-D-グルコース(2DG、50mM、全てSeahorse biosciences社製、カタログ番号103020-100及び103015-100)を添加することによって達成した。Seahorseシステムを用いた実験を次のアッセイ条件:2分混合、2分待機、及び4~5分測定で行った。代謝パラメーターを算出した。実験を少なくとも3つのウェルで行った。
【0167】
表面染色。表面染色に関しては、細胞を再懸濁し(10/ml)、0.1%アジ化ナトリウム(Sigma-Aldrich社、カタログ番号S2002-25G)及び1%FBSを含むPBSで作製されたフローサイトメトリー緩衝液100μl中の蛍光色素コンジュゲート抗体を用いて4℃で30分間染色した。CCR7抗体染色を、37℃で30分間行った。染色に最適な抗体濃度を、製造業者の使用説明書に基づいて算出した。染色後、細胞を洗浄し、フローサイトメトリー緩衝液を用いて再懸濁し、ただちに分析した。あるいは、分析が遅くなる場合は、細胞を、固定緩衝液(1%ホルムアルデヒド(Sigma-Aldrich社、カタログ番号15,812-7)を含むフローサイトメトリー緩衝液)中、4℃で30分間固定し、洗浄し、フローサイトメトリー緩衝液中、4℃で貯蔵した。
【0168】
細胞内染色。細胞内Foxp3染色に関しては、eBioscience社の抗マウス/ラットFoxp3染色セットAPC(クローンFJK-16S、Thermo Fisher Scientific社、カタログ番号17-5773-82)キットを使用した。細胞を再懸濁し(10/ml)、上述のように表面抗原を用いて染色し、次いで1部の固定/透過処理濃縮液(eBioscience社、カタログ番号00-5123)を3部の固定/透過処理希釈液(eBioscience社、カタログ番号00-5223)に混合して作製した固定/透過処理希釈標準溶液を使用して4℃で30分間固定/透過処理を行った。次いで細胞を1×透過処理緩衝液(eBioscience社、カタログ番号00-8333)中で2回洗浄し、1×透過処理緩衝液中の蛍光色素コンジュゲートFoxp3抗体を用いて4℃で30分間染色した。最終的な洗浄を、1×透過処理緩衝液を用いて行い、次いで細胞を遠心分離し、フローサイトメトリー緩衝液200μl中に再懸濁した。T細胞増殖研究に関しては、Tregを未成熟Balb/cDCを用いて刺激した。3時間後にTregを固定し、氷冷70%エタノールを用いて透過処理してから、増殖細胞核抗原(PCNA、クローンPC10、BioLegend社、カタログ番号307908)を染色した。
【0169】
インビトロでのAKTリン酸化(ヒト研究)。単離したばかりの通常型CD4CD25T細胞(Tconv)及びCD4CD25(Treg)T細胞を、PBS中で洗浄し、R2(2%ウシ胎仔血清が補充されたRPMI1640)中で5×10/mLで培養した。0.5×10CD4CD25(Tconv)及びCD4CD25(Treg)を、96ウェルプレート中に播種し、ケモカインCCL19及びCCL21(1μg/mL、Peprotech社、カタログ番号300-29B及び300-35)を用いて5%CO、37℃で15分間刺激するか、又は刺激しなかった。細胞をただちに固定し、刺激を、2%ホルムアルデヒドを用いて暗所において室温で10分間中止した。細胞を洗浄し、100%氷冷メタノール中に再懸濁し、氷上で30分間インキュベートした。その後、細胞をPBS2%FBSで2回洗浄し、pAKT-s473(eBioscience社、カタログ番号17-9715-41)を、暗所において4℃で30分間染色した。細胞を洗浄し、PBS+2%FBS中で再懸濁し、ただちにフローサイトメトリーによって分析した。
【0170】
ウエスタンブロット法及び共免疫沈降。全細胞溶解物を、Nonidet P-40溶解緩衝液[50mM Hepes(pH8.0)、350mM NaCl、1%Nonidet P-40、1mM EDTA、1mM Na3VO4、1mM NaF、20mMグリセロール-2-ホスフェート、1mM PMSF、1mM DTT、10μg/mLアプロチニン、10μg/mLロイペプチン、及びプロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche社、カタログ番号11836145001)中に溶解した。標準的なブラッドフォードアッセイ(Bio-Rad社、カタログ番号5000001)によって判定された当量のタンパク質をSDS/PAGEによって分離し、ニトロセルロース膜(GE Healthcare Life Sciences社、カタログ番号10600002)に転写した。膜を5%ミルク/TBS-Tween20(Sigma社、カタログ番号P1379)中、室温で2時間ブロックし、以下に挙げる一次抗体と4℃で一晩インキュベートした。その後、HRPコンジュゲート二次抗体(1:5000、Amersham Bioscience社、カタログ番号NA934)を添加した。次いで、膜を展開した。バンドの強度を、ImageJ(NIH社)を使用して定量化した。共免疫沈降実験に関しては、細胞抽出物をRIPA緩衝液中で調製した。全タンパク質抽出物250μgを、タンパク質G-アガロースビーズ(Sigma社、カタログ番号P3296)を用いて4℃で1時間、最初に予め清澄化し、抗GCK Ab(Santa Cruz Biotechnology社、カタログ番号SC7908)5μgと4℃で一晩、次いでタンパク質Gビーズと4℃でさらに16時間インキュベートした。最終的なペレットを、1mM PMSFが補充されたpH7.4の10mMトリスHCl中に再懸濁し、Bアクチン(Santa Cruz社、カタログ番号SC161)に対するウエスタンブロットによって分析した。
【0171】
定量リアルタイムPCR(qRT-PCR)。組織を採取し、プロセシングするまでRNA-later(Qiagen社、カタログ番号76104)中、-80℃で貯蔵した。RNAを、製造業者の使用説明書に従ってTrizol試薬(Life Technologies社、カタログ番号15596)を使用して精製し、吸収測定値を使用して品質及び量に関して評価した。製造業者の使用説明書(Applied Biosystems社、カタログ番号4374966)に従って逆転写を行った。遺伝子発現分析を、CFX connect light cycler(Biorad社、カタログ番号1855200)においてSYBR Green Supermix(Biorad社、カタログ番号1725120)を使用して行った。発現を、ΔΔCt法(Livak, K.J., and Schmittgen, T.D. (2001). Analysis of relative gene expression data using real-time quantitative PCR and the 2(-Delta Delta C(T)) Method. Methods 25, 402-408)を使用して算出し、ハウスキーピング遺伝子(GAPDH)に対して正規化した。オンラインツール(Primer 3Plus)の助けを借り、少なくとも1つのエクソン接合結合部位を用いてプライマー対ごとにqPCR用プライマーを設計した。増幅に関する熱サイクリングプロファイルは、95℃で10分間、続いて95℃で15秒間及び54℃で1分間を40サイクルであった。増幅は、95℃で10分間、続いて95℃で15秒間を40サイクル及び60℃で1分間であった。増幅特異性を確実にするために、融解曲線プログラムを次の通りに設定した:95℃で15秒間、60℃で1分間、及び95℃で15秒間、PCRサイクルの直後。実験を3連で行った。
【0172】
遺伝子サイレンシングのためのレンチウイルスの調製。HEK293T細胞を10cm細胞培養皿で70%コンフルエンスまで増殖させ、上記プラスミドを用い、リン酸カルシウム法を使用してトランスフェクトした。上澄みを、トランスフェクトしてから48及び72時間後に収集し、超遠心分離機で100分の1に濃縮した。アリコートを-80℃で貯蔵した。Tregの伝達に関しては、細胞を6ウェルプレートに播種し、DMEM中で60~70%コンフルエンスまで培養した。レンチウイルスを、5μg/mLポリブレン(Sigma-Aldrich社、カタログ番号107689)の存在下で細胞に添加し、6ウェルプレートを2,300rpm、室温で90分間遠心分離し、続いて5%CO、37℃で8時間インキュベートした。ウイルスを24時間後に除去し、T細胞をPBSで2回洗浄し、完全DMEM(Life Technologies社、カタログ番号1852730)中で24時間インキュベートした。
【0173】
研究母集団。頸動脈内膜病変進行(PLIC,Progressione della Lesione Intimale Carotidea)研究(CHECK研究のサブ研究)は、Center for the Study of Atherosclerosis, Bassini Hospital(Cinisello Balsamo、Milan、Italy)で追跡されたミラノ北部の一般的な母集団の(n=2.606)(Baragetti, A., Palmen, J., Garlaschelli, K., Grigore, L., Pellegatta, F., Tragni, E., Catapano, A.L., Humphries, S.E., Norata, G.D., and Talmud, P.J. (2015). Telomere shortening over 6 years is associated with increased subclinical carotid vascular damage and worse cardiovascular prognosis in the general population. Journal of internal medicine 277, 478-487、Lorenz, M.W., Polak, J.F., Kavousi, M., Mathiesen, E.B., Volzke, H., Tuomainen, T.P., Sander, D., Plichart, M., Catapano, A.L., Robertson, C.M., et al. (2012). Carotid intima-media thickness progression to predict cardiovascular events in the general population (the PROG-IMT collaborative project): a meta-analysis of individual participant data. Lancet 379, 2053-2062、Norata, G.D., Garlaschelli, K., Grigore, L., Tibolla, G., Raselli, S., Redaelli, L., Buccianti, G., and Catapano, A.L. (2009). Circulating soluble receptor for advanced glycation end products is inversely associated with body mass index and waist/hip ratio in the general population. Nutrition, metabolism, and cardiovascular diseases : NMCD 19, 129-134、Norata, G.D., Garlaschelli, K., Ongari, M., Raselli, S., Grigore, L., and Catapano, A.L. (2006). Effects of fractalkine receptor variants on common carotid artery intima-media thickness. Stroke 37, 1558-1561)の大規模調査である。研究は、the Scientific Committee of the Universita degli Studi di Milano("Cholesterol and Health: Education, Control and Knowledge - Studio CHECK ((SEFAP/Pr.0003) - reference number Fa-04-Feb-Ol)によって2001年2月4日に承認された。インフォームドコンセントは、ヘルシンキ宣言に従って対象から得た。
【0174】
ゲノムDNAを、既に記載の通りにFlexigene DNAキット(Qiagen社、Milan、Italy)を使用して抽出した(Norata, G.D., Ongari, M., Garlaschelli, K., Tibolla, G., Grigore, L., Raselli, S., Vettoretti, S., Baragetti, I., Noto, D., Cefalu, A.B., et al. (2007). Effect of the -420C/G variant of the resistin gene promoter on metabolic syndrome, obesity, myocardial infarction and kidney dysfunction. Journal of internal medicine 262, 104-112)。p.Leu446Pro GCKRミスセンス変異に関する遺伝子タイピングは、TaqMan対立遺伝子識別試験を使用して全母集団において利用可能であった。実験分析は、16名の対象のサブグループで行い、8名のLeu 446-GCKR及び8名のPro 446-GCKRが、年齢及び性別に関して一致した。病歴及び継続中の治療法に関する情報を得、ボディマス指数(BMI、Kg/m2)を算出し、一晩の絶食後、肘前静脈から血液試料を採取して、脂質プロファイル、グルコースレベル、肝臓酵素、白血球数及びサブフラクションの判定を既に記載の通りに行った(Ammirati, E., Cianflone, D., Vecchio, V., Banfi, M., Vermi, A.C., De Metrio, M., Grigore, L., Pellegatta, F., Pirillo, A., Garlaschelli, K., et al. (2012). Effector Memory T cells Are Associated With Atherosclerosis in Humans and Animal Models. Journal of the American Heart Association 1, 27-41、Baragetti, A., Palmen, J., Garlaschelli, K., Grigore, L., Pellegatta, F., Tragni, E., Catapano, A.L., Humphries, S.E., Norata, G.D., and Talmud, P.J. (2015). Telomere shortening over 6 years is associated with increased subclinical carotid vascular damage and worse cardiovascular prognosis in the general population. Journal of internal medicine 277, 478-487、Norata, G.D., Garlaschelli, K., Ongari, M., Raselli, S., Grigore, L., and Catapano, A.L. (2006). Effects of fractalkine receptor variants on common carotid artery intima-media thickness. Stroke 37, 1558-1561)。
【0175】
血液表面及び細胞内染色(ヒト研究)。表面染色に関しては、全血100μLを、2%FBS及び2μM EDTAを含むPBSで作製されたMACS緩衝液50μL中の蛍光色素コンジュゲート抗体を用いて暗所において、RT(室温)で30分間染色した。染色に最適な抗体濃度を、製造業者の使用説明書に基づいて算出した。染色後、赤血球を、1ステップ固定/溶解溶液(eBioscience社、カタログ番号00-5333-54)2mLを用いて室温で20分間溶解し、洗浄し、MACS緩衝液を用いて再懸濁し、ただちに分析した。
【0176】
あるいは、細胞内染色に関しては、末梢血単核細胞(PBMC)を単離し(下記の通りに)、染色のために使用した(1ステップ固定/溶解溶液はいくつかの細胞内染色に適合しない)。細胞を再懸濁し(10/mL)、表面抗原を含むMACS緩衝液50μL中で染色した。細胞内Foxp3及びKi67染色に関しては、eBioscience社の抗マウス/ラットFoxp3染色キットを使用した(カタログ番号77-5775-40)。細胞は、1部の固定/透過処理濃縮物を3部の固定/透過処理希釈液と混合して作製した固定/透過処理希釈標準溶液を使用して終夜4℃で固定/透過処理を行った。次いで細胞を1×透過処理緩衝液で2回洗浄し、1×透過処理緩衝液中の蛍光色素コンジュゲート-Foxp3及び-Ki67抗体を用いて4℃で30分間染色した。最終的な洗浄を、1×透過処理緩衝液を用いて行い、次いで細胞を遠心分離し、MACS緩衝液200μL中に再懸濁した。
【0177】
PBMC単離及びCD4CD25Treg精製(ヒト研究)。各対象に関しては、血液(EDTAが補充された)30mLを、15mLの2つのファルコン(falcon)に分割し、1000×gで12分間回転させた。血漿を廃棄し、白血球及び血小板が豊富な血漿と赤血球との間の界面(バフィーコート)を、慎重に収集し、冷却PBSで希釈し、Ficoll-Plaque(商標)PREMIUM(GE-Healthcare社、カタログ番号17-5442-03)3mLで層を形成した。250×gで35分の遠心分離後、PBMC層を慎重に収集し、冷却PBS10mLを用いて3回180×gで12分間行い、血小板を除去した。PBMCを計数し、製造業者の使用説明書に従ってCD4+CD25+制御性T細胞単離キット、ヒト(Miltenyi Biotec.社、カタログ番号130-09-301)を用いてCD4CD25Treg精製のために使用した。精製したCD4CD25Treg又はCD4CD25Tconvを、血球計を用いて計数し、遊走及び抑制アッセイのために使用した。
【0178】
Treg及びTconv遊走アッセイ(ヒト研究)。各対象のTreg及びTconv(1×10)300μLを、遊走培地(2%ウシ胎仔血清が補充されたRPMI1640)中に再懸濁し、5μm孔径(Costar社、カタログ番号CLS3421-48EA)ポリカーボネート膜を有するTranswell(商標)インサート(直径、6.5mm)上で培養した。細胞を、ウェルの底部に置かれた遊走培地又はケモカインCCL19及びCCL21(200ng/mL、Peprotech社、カタログ番号300-29B及び300-35)に対して1、2、4及び12時間遊走させた。遊走した細胞の数を、血球計によって判定し、データを、培養した細胞と比較した遊走の百分率として示した。
【0179】
Treg抑制アッセイ(ヒト研究)。CD4CD25Tconvを、MACS緩衝液(10/mL)中に再懸濁し、スクシンイミジルエステル色素CFSE(2μM、Invitrogen社、カタログ番号C1157)を用いて暗所において室温で10分間標識した。細胞を、MACS緩衝液で3回洗浄し、360×gで5分間遠心分離した。96ウェルU底プレートを、抗ヒトCD3精製抗体(5μg/mL、eBioscience社、カタログ番号14-0039-82)を用いて37℃で1時間被覆した。Tconvを、完全培地(10%FBS、1mM ピルビン酸Na、10mM Hepes、50μMβ-MeOH及びpen/strep/グルタミンが補充されたRPMI 1640)及びIL-2(Peprotech社、カタログ番号200-02)50U/mL、抗ヒトCD28精製抗体(eBioscience社、カタログ番号14-0289-82)2μg/mL中に再懸濁し(10/mL)、播種した(1×10/100μL)。CD4CD25Tregを洗浄し、完全培地中に再懸濁し、完全培地を用いてTregの連続希釈を行うことによって次の割合(Tconv:Treg):1:1、1:0.5、1:0.25及び1:0に従ってTconvに添加した。96ウェルプレートを、120×gで1分回転させ、細胞を底部に収集し、4日間増殖させた。次いで細胞を収集し、各対象に関しては、Tregの存在下で増殖した細胞の百分率を、Tconv:Treg1:0(100%増殖)の状態と比較した。
【0180】
定量化及び統計分析。qPCRデータは、ハウスキーピング遺伝子から目的の遺伝子のCT値を得、続いて野生型対照試料に対して正規化することによってデルタデルタCT法を使用して分析した。結果をプリズムに転送してから、グラフィック表示及び統計分析を行った。結果は、1群当たりの平均±SDとして得られる。データは、両側不対スチューデントt検定(two-tailed unpaired Student's t test)及びマンホイットニー試験を使用して分析した。0.05未満のp値を有意と考えた。seahorseからの実験データセットを、ボンフェローニ補正を用いた一元ANOVA、又はダンの事後検定を用いたクラスカルウォリスを使用して分析し、多重比較を考慮した。表記の「n」は生物学的複製の数を表す。ヒトデータは、rs1260326GCKR多型のTT遺伝子型とCC遺伝子型との間のANCOVA(共分散分析法)モデルによって分析した(年齢及び性別によって調整する)。変数は、正規分布の場合は平均(標準偏差、S.D.)として又は非正規分布の場合は中央値(四分位範囲、IQR)として示される(シャピロウィルク試験)。正規分布変数を比較するためのT検定及び非正規分布変数のためのマンホイットニーのU検定を行った(各変数に関するP値を報告する、p0.05未満は有意である)。外れ値を検出するためのグラブの検定を各変数に関して行った。ヒトの結果に関しては、データを、群当たりの平均±SEMとして報告する。データは、両側不対スチューデントのt検定及びマンホイットニー検定を使用して分析した。0.05未満のp値を有意と考えた。
【実施例1】
【0181】
解糖経路の関与は、Tregの遊走に必須である
Tregが通常型T細胞(Tconv)のように遊走するために解糖を利用する可能性を、グルコースアナログ2-デオキシグルコース(2-DG)を用いてこの経路を阻害することによって検討した。2-DGに曝露されたTregは、インビトロ(図1A、C~D及び図2A~B)とインビボ(図3A~B)の両方で非効率的に遊走した。薬物に曝露した後の広範な洗浄に加えて、被覆されていないトランスウェルを介したTreg走化性の阻害によって、これらの条件における内皮に対する薬物の間接的な効果を除外する。対照的に、AMPキナーゼを介して解糖を刺激するメトホルミンを使用して解糖を活性化すると、Tregの運動性(図1B、C~D及び図2A~B)及び輸送(図3C~D)が増加した。どの薬物も、使用した用量において、遊走関連受容体のTreg発現又は生存率に影響を与えなかった(図4A~C)。これらの化合物のそれぞれの効果は、インビトロで処理されたT細胞がレシピエントマウスに一度注射されると保持されることを確認するために、Treg細胞を、さまざまな薬物に4時間曝露し、非常によく洗浄し、培養培地単独中でさらに16時間インキュベートした。薬物処理されたTreg運動性に対する効果は、化合物無しでの長期にわたるインキュベート後でも依然として明白であった(図5A~D、図6A~B)。エトモキシルはアセチル-CoAカルボキシラーゼ(ACC)リン酸化阻害剤であり、Tregの遊走が脂肪酸酸化(FAO)を必要としないことを示すのに役立つ。
【0182】
遊走促進刺激による解糖経路の誘発を確認するために、その後、TregにおけるT細胞遊走の鍵となるメディエーターである接着分子インテグリンLFA-1の好気的解糖に対する関与の効果を試験した。LFA-1のリガンドである、固定化又は抗体連結組換えマウスICAM-1(rICAM-1)をこの目的のために使用した。
【0183】
最初に、ヘキソキナーゼによってリン酸化されず、その蛍光形態で細胞質中に蓄積するグルコースアナログ6-[N-(7-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール-4-イル)アミノ]-2-デオキシグルコース(6-NBDG)を使用して、LFA-1誘発性グルコース取り込みを評価した。Tregを、プラスチック結合rICAM-1又はヒトIgGFcフラグメント(対照)を用いて刺激し、30分後、6-NBDG取り込みをフローサイトメトリーで測定した。図7A~Bで示すように、LFA-1を刺激すると、6-NBDG取り込みが顕著に増加した。
【0184】
次に、乳酸産生の代用としてのプロトン産生を定量化し、したがって全体的な解糖フラックス(glycolytic flux)を反映する、細胞外酸性化速度(ECAR)に対するLFA-1の関与又はケモカインCCL22(CCR4リガンド)への曝露の影響を測定した。ECARは、LFA-1又はCCR4(図7C~D)刺激の後にグルコース供給が顕著に強化された場合に増加した。ミトコンドリア呼吸の測定値である酸素消費速度(OCR)は影響を受けなかった(図8A~B)。
【実施例2】
【0185】
CD28及びCTLA-4は、解糖経路のモジュレートを介してTreg遊走を調節する
最初に、CD28の抗体活性化は、関連する受容体の発現に影響を与えることなく、Treg TEMのex vivoでの増幅(図9A)及びインビトロでの走化性(図9B~C)及びインビボでの遊走(図10)を促進することを確認した(データは示さない)。また、CTLA-4トリガー単独ではTregの遊走に影響を与えないが、CD28とコライゲーションすると、CD28誘発性遊走が予防されることを観察した(図9A~B)。
【0186】
次に、Tregにおける解糖経路に対するCD28及びCTLA-4シグナルの影響を測定した。CD28トリガーは、アイソタイプ対照及び二次抗体を用いた治療と比較して、6-NBDG取り込み(図11A~B)及び解糖フラックス(図12A)を顕著に増加させた。しかし対照的に、CTLA-4刺激は、単独では、グルコース取り込みにもECARにも影響を与えなかったが、コライゲーションされた場合、CTLA-4シグナルは、CD28誘発性グルコース取り込み及びECAR増加を阻害した。酸素消費速度(OCR)は、どの共刺激受容体のトリガーによる影響も受けなかった(データは示さない)。
【0187】
CTLA-4欠損Tregの代謝活性及び遊走を分析することによって、共刺激シグナルと運動性の代謝調節との間の関連性をさらに検討した。これらの実験において、CD28及びCTLA-4によって共有されるリガンドである組換え(r)CD80を刺激因子として使用した。WT Tregと比較して、CTLA-4欠損Tregは、酸性化ベースラインが高いことを考慮したとしても、グルコースに応答したECARの長期にわたる増加を自然に示した(図12B)。予想通り、CD28及びCTLA-4が同時に関与するために、組換えCD80で活性化されたWT Treg細胞のECARは変化しないままであるが(図13A)、CTLA-4-欠損Tregは、グルコース添加に対するその解糖応答をさらに増加させた(図13B)。CTLA-4 KO Treg OCRは、そのWT同等物のものよりも自然に高いにもかかわらず、CD28又はCTLA-4シグナルによる影響を受けなかった(データは示さない)。
【0188】
並行して、IFN-γ活性同系ECを介したrCD80刺激CTLA-4 KO TregによるTEMを試験した。図14Aで示すように、組換えCD80で刺激されたCTLA-4KO Tregは、ECを介して強化された遊走を示したが、CTLA-4発現Tregは、そのような刺激に対して応答せず、CTLA-4シグナルは、CD28誘発性解糖及び遊走を阻害するという結論を支持した。
【0189】
CD28及びCTLA-4によるTregの遊走の制御は、解糖のモジュレートを介して生じるかどうかを調べるために、グルコース枯渇培地におけるTEM中のCD28及び/又はCTLA-4刺激の効果を分析した。図14Bで示すように、グルコースの枯渇は、CD28シグナルにより誘発される運動性の増加を予防した。ベースラインの低レベルの遊走は、グルコースが十分な状態と欠損状態の両方において同じままであるため、結果はグルコース欠乏と関連する細胞ディストレスによる影響を受けなかった。
【0190】
インビボで、CD28-解糖-遊走系を、CD28刺激遊走Tregによる6-NBDG取り込みをモニタリングすることによって分析した。この目的のために、腹膜腔に注射されたTregが腹膜に浸潤する能力を定量化する組織浸潤モデルを使用した(Mirenda, V., Jarmin, S.J., David, R., Dyson, J., Scott, D., Gu, I., Lechler, R.I., Okkenhaug, K., and Marelli-Berg, F.M. (2007). Physiological and aberrant regulation of memory T cell trafficking by the costimulatory molecule CD28. Blood 109, 2968-2977)。6-NBDG蛍光が時間とともに急速に損失し、静脈内で長期にわたり移動したT細胞を追跡することが技術的に不可能であるために、このモデルを選択した。Tregは、48時間前にIFN-γで処理された同系マウスにおいてi.p.注射する前に、PKH26を用いて標識し(赤色蛍光、図15A、2列目)、次いでCTLA-4トリガーとともに若しくは無しでCD28ライゲーションを行うか、又はアイソタイプ一致及び二次抗体を対照として与えられた。6-NBDG(緑色蛍光、図15A、3列目)を、細胞の直後にi.p.注射し、したがって標識されたTregによる組織浸潤及びグルコース取り込みをインビボで並行して評価することができる。図15A~Cで示すように、CD28を活性化すると、腹膜に浸潤するTregの数が実質的に増加し、6-NBDG取り込みを示し(黄色蛍光、マージ、図15A、4列目)、Tregの遊走は、インビボでのグルコース取り込みと直接相関することを示す。これら両方の効果は、CTLA-4コライゲーションによって予防された。
【実施例3】
【0191】
遊走促進刺激は代謝リプログラミングを誘発する
本発明者らは、Tconv細胞では、遊走中の解糖の活性化は、酵素ヘキソキナーゼ(HK)Iの転写及び転写後調節を介して生じることを以前に示している(Haas, R., Smith, J., Rocher-Ros, V., Nadkarni, S., Montero-Melendez, T., D'Acquisto, F., Bland, E.J., Bombardieri, M., Pitzalis, C., Perretti, M., et al. (2015). Lactate Regulates Metabolic and Pro-inflammatory Circuits in Control of T Cell Migration and Effector Functions. PLoS biology 13, e1002202)。したがって、CD28及びCTLA-4で刺激してから4時間後の、増幅したTregによるいくつかの解糖酵素の発現を分析した。CD28刺激は、TregによるHKI、エノラーゼ及びアルドラーゼ発現において中程度の増加をもたらした(図16A~B)。予想外に、肝細胞及び膵臓ベータ細胞機能に対して鍵となる律速酵素であり、T細胞によるその発現はまだ報告されていないHKアイソエンザイムグルコキナーゼ(HKIV又はGCK)の発現において最も顕著な増加が観察された。付随するCTLA-4トリガーは、CD28誘発性酵素発現を阻害した。
【0192】
分析を、HKIIにまでも広げ、この酵素の実質的に強化された発現は、GCKのそれと同様に、CD28シグナルによる刺激後だけではなく、組換えICAM-1によるLFA-1トリガーからも早ければ5分で生じることを観察し(図17A)、これは、両刺激が、転写後の機序によっても酵素発現を強化することを示唆した。
【0193】
次いで、LFA-1又はCD28刺激によって実際に増加したGCK、HKI及びHKII遺伝子の転写を測定した(図17B、HKI及びHKIIに関するデータは示していない)。予想通り、CD28による酵素誘発は、CTLA-4トリガーによって予防された。この一連の実験では、遊離細胞質GCKをブロックする(Farrelly, D., Brown, K.S., Tieman, A., Ren, J., Lira, S.A., Hagan, D., Gregg, R., Mookhtiar, K.A., and Hariharan, N. (1999). Mice mutant for glucokinase regulatory protein exhibit decreased liver glucokinase: a sequestration mechanism in metabolic regulation. Proc Natl Acad Sci U S A 96, 14511-14516)転写後レギュレーターであるGCK調節タンパク質(GCKR)遺伝子の転写(図17C)。CD28及びLFA-1活性化後の、GCK及びGCKRの発現及び同時局在化の共焦点分析によって、CD28とLFA1の両方の刺激が、GCKアベイラビリティーの実質的な増加に付随してGCKR発現を減少させることが確認された(図18A~B)。
【0194】
Treg運動性に対するHKII及びGCK活性の相対的な寄与に取り組むために、Tregを、CD3/CD28刺激Tconv細胞における解糖フラックス及び呼吸を阻害するGCK活性化因子AZD1656(Bonn, P., Brink, D.M., Fagerhag, J., Jurva, U., Robb, G.R., Schnecke, V., Svensson Henriksson, A., Waring, M.J., and Westerlund, C. (2012). The discovery of a novel series of glucokinase activators based on a pyrazolopyrimidine scaffold. Bioorganic & medicinal chemistry letters 22, 7302-7305)又はHKII選択的阻害剤クロトリマゾール(CLT)(van der Windt, G.J., O'Sullivan, D., Everts, B., Huang, S.C., Buck, M.D., Curtis, J.D., Chang, C.H., Smith, A.M., Ai, T., Faubert, B., et al. (2013). CD8 memory T cells have a bioenergetic advantage that underlies their rapid recall ability. Proc Natl Acad Sci U S A 110, 14336-14341)のいずれかで処理した(図19A~B)。GCK活性化は、炎症組織へのTregの遊走を顕著に強化したが(図20A)、Treg分裂には影響を与えなかった(図20B)。逆もまた同様、CLTは、同種異系DCに応答したTregによるPCNA上方調節の阻害に効果的であったが(図20C)、解糖のrICAM-1介在性誘発(図21A)、又はインビボでの炎症腹膜へのTregの遊走(図21B)には影響を与えなかった。
【実施例4】
【0195】
皮膚移植片拒絶反応に対するGCK活性化の効果
その運動性を持続するためのTregによるGCK使用の選択性を確立するために、C57BL/6レシピエントに移植されたB6Kd由来皮膚移植片の生着に対するGCKの薬理学的活性化の効果を比較した。一部のレシピエントを、選択的GCK活性化因子AZD1656(10mg/kg1日2回)を用いて移植後2週間毎日治療した。このスケジュールは、異種応答(alloresponse)の初期ステージ中の内因性Tregの遊走を促進するために設計された。対照群は、媒体を単独で含む生理食塩溶液が与えられた。図22で示すように、AZD1656単独による短期治療は、皮膚移植片拒絶反応を顕著に遅延させるのに十分であった。
【実施例5】
【0196】
機能喪失GCKR遺伝子のホモ接合性キャリアからのヒトTregは、運動性の強化を示す
ヒト系における上記同定された経路の生理学的関連性を試験するために、GCKR遺伝子(C~T、P446L)における機能喪失多型のホモ接合性キャリアからの循環Treg(CD25highCD127lowとして定義される)の数及び機能的挙動を分析した。P446L-GCKR遺伝子は、GCKに対する阻害活性が低く、空腹時血漿グルコースの低下及び肝臓におけるGCK活性の増加を介したトリグリセリド合成の強化と関連していた(Beer, N.L., Tribble, N.D., McCulloch, L.J., Roos, C., Johnson, P.R., Orho-Melander, M., and Gloyn, A.L. (2009). The P446L variant in GCKR associated with fasting plasma glucose and triglyceride levels exerts its effect through increased glucokinase activity in liver. Hum Mol Genet 18, 4081-4088)。
【0197】
循環するTregの数は、WT対立遺伝子のキャリアと比較して、GCKR遺伝子の希少対立遺伝子P446Lのキャリアにおいて顕著に減少したが(図23A~B)、他のCD4T細胞母集団は影響を受けなかった(データは示さない)。重要なことには、P446L-GCKR Tregは、WT-GCKR Tregと比較してケモカイン誘発性運動の顕著な増加を示したが、Tconv細胞遊走は影響を受けなかった(図24A~B)。遊走アッセイにおいて使用されるケモカインに対する受容体であるCCR7の発現を含むP446L-GCKR Tregの抑制能力及び表現型は、WT-GCKR Tregのもの(データは示さない)と顕著に異なることはなかった(図25A~B)。さらに、グルコース取り込み及びセリン473におけるRictor依存的AKTリン酸化を含む、GCK活性化の上流にあるケモカイン誘発分子イベントは、P446L-及びWT-GCKR Treg及びTconv(データは示さない)において同等であり、これは、P446L Treg運動性の強化におけるGCKアベイラビリティーの増加の鍵となる役割をさらに支持する。
【0198】
考察
本発明者らは、胸腺Tregの遊走を維持する代謝経路、及びこれらの経路がどのように遊走促進シグナルに関与するかを研究した。
【0199】
データによって、遊走刺激が、Tregの好気的解糖へ向かう代謝リプログラミングを誘発することが示される。Treg増殖中の解糖の調節と遊走との間の二分性は、これらの細胞応答に関与する酵素的過程に反映される。通常型T細胞の抗原活性化に続く代謝リプログラミングは、HKIからHKIIへのHKアイソザイム発現における転写スイッチに依存し、グルコースに対するより高い親和性を有するヘキソキナーゼ活性の実質的な増加を含む(Bosca, L., Mojena, M., Diaz-Guerra, J.M., and Marquez, C. (1988). Phorbol 12,13-dibutyrate and mitogens increase fructose 2,6-bisphosphate in lymphocytes. Comparison of lymphocyte and rat-liver 6-phosphofructo-2-kinase. Eur J Biochem 175, 317-323、Marjanovic, S., Eriksson, I., and Nelson, B.D. (1990). Expression of a new set of glycolytic isozymes in activated human peripheral lymphocytes. Biochim Biophys Acta 1087, 1-6、Wang, R., Dillon, C.P., Shi, L.Z., Milasta, S., Carter, R., Finkelstein, D., McCormick, L.L., Fitzgerald, P., Chi, H., Munger, J., et al. (2011). The transcription factor Myc controls metabolic reprogramming upon T lymphocyte activation. Immunity 35, 871-882)。さらに、おそらくmTORC2活性化の結果として、遊走促進シグナルは、GCK発現を実質的に強化する。GCKは、肝臓におけるmTORC2介在性シグナル伝達の下流の主要な標的のうちの1つであることが示されている(Hagiwara, A., Cornu, M., Cybulski, N., Polak, P., Betz, C., Trapani, F., Terracciano, L., Heim, M.H., Ruegg, M.A., and Hall, M.N. (2012). Hepatic mTORC2 activates glycolysis and lipogenesis through Akt, glucokinase, and SREBP1c. Cell Metab 15, 725-738)。
【0200】
本発明者らは、この経路がヒト免疫系において操作可能であるというエビデンスを提供する。循環Tregの数は、GCKR機能喪失バリアントのキャリアにおいて顕著に減少し、変異体Tregは顕著に強化された運動性を示し、組織における局在化の増加を示唆する。重要なことには、Tconvの遊走は、GCKR阻害の損失及びGCK活性の増加による影響を受けない。
【0201】
Tregの遊走によるGCKの優先的な利用は興味深い特徴である。他のヘキソキナーゼとは異なり、GCKは、グルコースに対してさらに低い親和性を有し、これは生理学的血漿グルコースの範囲(S0.5≒7mM)内にあり、解糖代謝産物グルコース6-ホスフェートによる阻害に対する感受性が低い(Lenzen, S. (2014). A fresh view of glycolysis and glucokinase regulation: history and current status. The Journal of biological chemistry 289, 12189-12194)。TregによるGCKの使用は、CD28刺激に応答したTreg細胞の分極速度がTconv細胞と比較して遅いという以前の報告を説明することができる(Muller, N., van den Brandt, J., Odoardi, F., Tischner, D., Herath, J., Flugel, A., and Reichardt, H.M. (2008). A CD28 superagonistic antibody elicits 2 functionally distinct waves of T cell activation in rats. J Clin Invest 118, 1405-1416)。CD28刺激Tregでは、遊走の早い波と遅い波とが起きることが示された。これは、本発明者らが観察したGCK発現における転写後及び転写の増加を反映する可能性がある。
【0202】
免疫応答中、CD28及びCTLA-4が代謝スイッチとして機能する能力は、少なくとも部分的にT細胞分裂及び機能に対するそれらの反対の効果を説明する。例えば、活性化後の一過性のCTLA-4発現は、解糖を停止させる働きをし、したがって寿命が長いメモリーCD8T細胞のFAOへのリプログラミングを支持し(O'Sullivan, D., van der Windt, G.J., Huang, S.C., Curtis, J.D., Chang, C.H., Buck, M.D., Qiu, J., Smith, A.M., Lam, W.Y., DiPlato, L.M., et al. (2014). Memory CD8(+) T cells use cell-intrinsic lipolysis to support the metabolic programming necessary for development. Immunity 41, 75-88)、したがってT細胞応答の収縮期を促進し、アネルギーの誘発に有利に働くことによってホメオスタシス維持する(Zheng, Y., Delgoffe, G.M., Meyer, C.F., Chan, W., and Powell, J.D. (2009). Anergic T cells are metabolically anergic. J Immunol 183, 6095-6101)。
【0203】
エフェクター免疫の調節におけるCTLA-4の機能的効果は、十分に確立されたが、CTLA-4のTreg機能への寄与は完全に理解されていない。CTLA-4欠損マウスは、正常な数のTregを示すが、インビボではその抑制機能に欠損があり(Wing, K., Onishi, Y., Prieto-Martin, P., Yamaguchi, T., Miyara, M., Fehervari, Z., Nomura, T., and Sakaguchi, S. (2008). CTLA-4 control over Foxp3+ regulatory T cell function. Science 322, 271-275)、しかしインビトロではこの欠損は無い(Tang, Q., Boden, E.K., Henriksen, K.J., Bour-Jordan, H., Bi, M., and Bluestone, J.A. (2004). Distinct roles of CTLA-4 and TGF-beta in CD4+CD25+ regulatory T cell function. European journal of immunology 34, 2996-3005)ようである。本明細書における観察は、CD28誘発性遊走シグナルに拮抗することによって、CTLA-4が、それらの抑制活性にではなく、むしろインビボでのTreg局在化の組織保持に(例えば)必須であることを示す。
【0204】
自然免疫の活性化に対する応答におけるCD28Y170FTreg遊走障害も、CD28シグナルが、CD28の関与が活性化DCとの相互作用中に生じる可能性が高いリンパ系組織から、血流へのTreg動員及び再分布を指示することを示す。
【0205】
要約すると、この研究では、遊走促進刺激によってTregにおいて誘発される運動性及び遊走の代謝調節に関する新規な経路を記載する。増殖Treg細胞の代謝リプログラミングに関与するシグナル伝達メディエーターは、運動性を調節するものとは異なるため、これらの酵素を選択的に標的化すると、治療背景において異なるTreg機能のモジュレートが可能になる。
【0206】
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