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特許7387188電磁弁及び減圧弁が設置された蒸気配管系
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  • 特許-電磁弁及び減圧弁が設置された蒸気配管系 図1
  • 特許-電磁弁及び減圧弁が設置された蒸気配管系 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】電磁弁及び減圧弁が設置された蒸気配管系
(51)【国際特許分類】
   F16L 53/32 20180101AFI20231120BHJP
   F16L 55/00 20060101ALI20231120BHJP
   F16L 1/00 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
F16L53/32
F16L55/00 M
F16L1/00 F
F16L1/00 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021188400
(22)【出願日】2021-11-19
(65)【公開番号】P2023075472
(43)【公開日】2023-05-31
【審査請求日】2022-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】500439962
【氏名又は名称】株式会社ボイラエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100104330
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 誠二
(72)【発明者】
【氏名】鳴海 直衛
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-034812(JP,A)
【文献】特開平04-270801(JP,A)
【文献】特開平07-115923(JP,A)
【文献】特開平07-124054(JP,A)
【文献】特公平06-033880(JP,B2)
【文献】特開昭56-075525(JP,A)
【文献】特開昭61-252356(JP,A)
【文献】特開昭57-186477(JP,A)
【文献】特開昭56-068362(JP,A)
【文献】特開2006-349287(JP,A)
【文献】特開2012-087989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 53/32
F16L 55/00
F16L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧の蒸気が供給される小径の配管で形成される蒸気配管本管と、蒸気使用機器と、前記蒸気配管本管から分岐し、前記蒸気使用機器に至る少なくとも1本の蒸気配管枝管とを備えた蒸気配管系において、
前記蒸気配管枝管の上流側の前記蒸気配管本管に配置され、前記蒸気使用機器の手前において蒸気を減圧することにより潜熱の大きい乾燥蒸気を前記蒸気使用機器に供給するように構成された減圧弁と、
前記減圧弁の上流側の前記蒸気配管本管に配置された電磁弁と、
前記蒸気使用機器槽内の温度上昇を所定値以下に保持するように前記電磁弁の作動を制御するコントローラとを備えていることを特徴とする蒸気配管系。
【請求項2】
前記コントローラが、タイマと、前記蒸気使用機器内に設置され、前記蒸気使用機器内の温度を検知する温度センサからの温度情報を受信する温度情報受信部と、前記タイマからの時間情報と前記温度情報受信部からの温度情報に基づいて温度勾配を計算するための演算部と、前記温度勾配と予め設定した値との大小を比較する比較部と、前記温度勾配が前記値よりも大きい場合に前記電磁弁を閉鎖する信号を送信する電磁弁開閉部とを有することを特徴とする請求項1に記載された蒸気配管系。
【請求項3】
前記減圧弁と前記電磁弁との距離が少なくとも700mmであることを特徴とする請求項1又は2に記載された蒸気配管系。
【請求項4】
前記電磁弁の配置個所の上流側から分岐し、前記減圧弁の配置個所と前記蒸気配管枝管の分岐個所との間の個所で前記蒸気配管本管に合流するバイパス回路をさらに備えていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載された蒸気配管系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料コストを低減させ、かつ潜熱の有効活用を可能にする電磁弁及び減圧弁が設置された蒸気配管系に関する。
【背景技術】
【0002】
工場等では加熱や動力源等の種々の用途に蒸気が用いられており、このような場合には、工場内に蒸気配管(本管および枝管)を張り巡らせ、蒸気配管を介して、ボイラで生成された蒸気が使用箇所に供給されている。このような蒸気配管としては通常、工場内の全ての所望個所に所定量の蒸気を供給する必要があるため、比較的大径の配管が用いられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、比較的大径の配管で形成される蒸気配管系では、配管自体および配管を被覆する保温材の材料コストが嵩むうえ、加熱に使用するエネルギー(潜熱)が相対的に低下するという課題がある。
【0004】
本発明は、このような状況に鑑みて開発されたものであって、配管および保温材の材料コストを低減させるとともに、加熱に使用するエネルギー(潜熱)を有効活用する蒸気配管系を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、蒸気使用機器に至る蒸気配管枝管の手前の蒸気配管本管に減圧弁を配置することにより、材料コストの低減と潜熱の有効活用の両方を実現することを着想した。より詳細に説明すると、蒸気圧力と蒸気温度が一定の関係にあり、蒸気ボイラにおいて蒸気圧力が上昇すると、蒸気温度も上昇することが知られているが、蒸気圧力が高いほど蒸気の体積が小さくなるので、同じ熱エネルギーの蒸気を送るのに、小径の配管で足りることになる。したがって、工場内の配管(蒸気配管本管)内の蒸気を高圧にすることで、蒸気配管本管の配管径を小さくして配管及び保温材の材料コストを低減するとともに、蒸気使用機器の手前において減圧弁で蒸気を減圧することにより潜熱の大きい乾燥蒸気を蒸気使用機器に供給することを可能にした。なお、電磁弁の作動を制御することにより、蒸気使用機器における急激な温度上昇を防止することができるので、食品加工等の用途において最適である。
【0006】
本願請求項1に記載された、高圧の蒸気が供給される小径の配管で形成される蒸気配管本管と、蒸気使用機器と、前記蒸気配管本管から分岐し、前記蒸気使用機器に至る少なくとも1本の蒸気配管枝管とを備えた蒸気配管系は、前記蒸気配管枝管の上流側の前記蒸気配管本管に配置され、前記蒸気使用機器の手前において蒸気を減圧することにより潜熱の大きい乾燥蒸気を前記蒸気使用機器に供給するように構成された減圧弁と、前記減圧弁の上流側の前記蒸気配管本管に配置された電磁弁と、前記蒸気使用機器槽内の温度上昇を所定値以下に保持するように前記電磁弁の作動を制御するコントローラとを備えていることを特徴とするものである。
【0007】
本願請求項2に記載された蒸気配管系は、前記請求項1の蒸気配管系において、前記コントローラが、タイマと、前記蒸気使用機器内に設置され、前記蒸気使用機器内の温度を検知する温度センサからの温度情報を受信する温度情報受信部と、前記タイマからの時間情報と前記温度情報受信部からの温度情報に基づいて温度勾配を計算するための演算部と、前記温度勾配と予め設定した値との大小を比較する比較部と、前記温度勾配が前記値よりも大きい場合に前記電磁弁を閉鎖する信号を送信する電磁弁開閉部とを有することを特徴とするものである。
【0008】
本願請求項3に記載された蒸気配管系は、前記請求項1又は2の蒸気配管系において、前記減圧弁と前記電磁弁との距離が少なくとも700mmであることを特徴とするものである。
【0009】
本願請求項4に記載された蒸気配管系は、前記請求項1から請求項3のいずれか1項の蒸気配管系において、前記電磁弁の配置個所の上流側から分岐し、前記減圧弁の配置個所と前記蒸気配管枝管の分岐個所との間の個所で前記蒸気配管本管に合流するバイパス回路をさらに備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の蒸気配管系によれば、蒸気配管本管に減圧弁および電磁弁を設置したことにより、減圧弁の設置個所までの配管を従来よりも小径にでき、配管の材料コストおよび配管の保温材の材料コストを低減することができるとともに、潜熱の有効活用を実現することができる。また、電磁弁の作動を制御することにより、蒸気使用機器における急激な温度上昇を防止することができるので、食品加工等の用途において最適である。さらに、バイパス回路を設けることにより、故障時に迅速に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の好ましい実施形態に係る蒸気配管系の全体を示した模式図である。
図2図1の蒸気配管系が設置されたボイル槽を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態に係る電磁弁及び減圧弁が設置された蒸気配管系について詳細に説明する。図1は、本発明の好ましい実施の形態に係る蒸気配管系の全体を示した模式図である。図1において全体として参照符号10で示される蒸気配管系では、蒸気配管本管が、蒸気ボイラおよび蒸気ヘッダ(いずれも図示せず)から延び、A、B、Cを経てトラップ24に至っているとともに、蒸気使用機器に至る蒸気配管枝管D、Eが、蒸気配管本管Cから分岐している。なお、2本の蒸気配管枝管D、Eが図示されているが、蒸気配管枝管は1本でもよく、3本以上でもよい。
【0013】
本発明の蒸気配管系10は、蒸気使用機器に至る蒸気配管枝管D、Eの上流側に配置された減圧弁12と、減圧弁の上流側に配置された電磁弁14とを備えている。なお、本明細書において「上流側」とは、蒸気が流れてくる方向を意味し、「下流側」とは、蒸気が流れていく方向を意味する。
【0014】
本発明の蒸気配管系10はまた、電磁弁14の作動を制御するためのコントローラ16を備えている。コントローラ16は、タイマと、ボイル槽内に設置され、ボイル槽内の温度を検知する温度センサ18からの温度情報を受信する温度情報受信部と、タイマからの時間情報と温度情報受信部からの温度情報に基づいて温度勾配を計算するための演算部と、前記温度勾配と予め設定した値との大小を比較する比較部と、前記温度勾配が前記値よりも大きい場合に電磁弁14を閉鎖する信号を送信する電磁弁開閉部とを有している。なお、温度情報受信部と温度センサ18の接続、電磁弁開閉部と電磁弁14との接続は、無線、有線のいずれでもよい。
【0015】
コントローラ16は、前記温度勾配が予め設定した値よりも大きくならないように電磁弁14の開閉を制御するので、ボイル槽内の急激な温度上昇を防ぐように構成されている。
【0016】
減圧弁12と電磁弁14との距離は、少なくとも距離700mmとするのが好ましい。これは、本発明者の実施した実験により、前記距離を700mm以下にすると減圧弁12が故障し易くなることに基づくものである。
【0017】
好ましくは、本発明の蒸気配管系10は、蒸気配管本管から分岐した蒸気配管枝管Fを備えている。より詳細には、蒸気配管枝管Fは、電磁弁14の配置個所の上流側から分岐し、減圧弁12の配置個所と蒸気配管枝管D、Eの分岐個所との間の個所で蒸気配管本管に合流している。蒸気配管枝管Fには、上流側から下流側に向かって、バイパス弁20および圧力計22が配置されている。蒸気配管枝管Fは、蒸気配管本管A、B、Cが故障などのために使用不可になったときの緊急時に使用されるバイパス回路となる。
【0018】
次に図2を参照して、以上のように構成された蒸気配管系10の作動について説明する。図2は、本発明の蒸気配管系10が設置されたボイル槽(蒸気使用機器)を模式的に示した図である。図2に示される例では、ボイル槽に、温度センサ18が設置されている。温度センサ18は、ボイル槽内の平均温度を測定することができる個所に設置するのが好ましい。蒸気配管枝管D、Eがボイル槽内に延びているが、蒸気配管枝管Dと蒸気配管枝管Eの先端高さが異なっている(蒸気配管枝管Dの先端が蒸気配管枝管Eの先端よりも相対的に高所に位置している)のは、ボイル槽内での蒸気の対流を良好にするためである。蒸気配管枝管D、Eの先端には、蒸気放出時の騒音を減少させるためのサイレンサD1、E1がそれぞれ装着されている。サイレンサD1、E1は、市販品を使用してよい。なお、トラップ24のドレン水も、蒸気の有効活用のため、ボイル槽内に入れるのが好ましい。
【0019】
蒸気配管系10においては、コントローラ16により電磁弁14の作動(開閉)を制御することにより、ボイル槽内の温度が急激に上昇しないようになっている。
【0020】
減圧弁12を使用することによって得られる定量的な効果について検証する。0.7MPaG、乾燥度90%の蒸気(蒸気1)が、減圧弁12によって、0.2MPaG、乾燥度92.5%(蒸気2)又は0.05MPaG、98%(蒸気3)に減圧されたと仮定する。蒸気1の潜熱は490kcal/kg、蒸気2の潜熱は517kcal/kg、蒸気3の潜熱は531kcal/kgであるので、蒸気2については、517÷490≒1.055、蒸気3については、531÷490≒1.083の潜熱のエネルギーが増大する。換言すると、同じ潜熱のエネルギーを得るのに要する燃料を、蒸気2では約5.5%、蒸気3では約8.3%低減することができる。なお、上記低減値は、あくまでも計算上の数値であって、シート、ボイル槽の扉からの蒸気の漏洩などに注意を払うことにより、実際には、上記低減値以上の燃料の低減ができると予想される。
【0021】
本発明の蒸気配管系10は、急激な温度上昇が好ましくない製品(例えば、急激に温度上昇すると、溶けてしまって歩留まりが悪くなる、豆腐、ゆでそば、ゆでうどんなどの加工食品、急激に温度上昇すると、クラックの発生を惹起しがちなコンクリート二次製品の水中養生)には最適である。
【0022】
本発明は、以上の発明の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0023】
たとえば、図示された蒸気配管の形状、本数、寸法等は、単なる例示なものであり、図示された以外の形状、本数、寸法等を採用してもかまわない。
【符号の説明】
【0024】
10 蒸気配管系
12 減圧弁
14 電磁弁
16 コントローラ
18 温度センサ
20 バイパス弁
22 圧力計
24 トラップ
A、B、C 蒸気配管本管
D、E 蒸気配管枝管(蒸気使用機器用)
D1、E1 サイレンサ
F 蒸気配管枝管(バイパス回路用)
図1
図2