(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】RPEメラニンレベルに基づいて網膜光線療法用の処置パラメータを調節するためのシステムおよびプロセス
(51)【国際特許分類】
A61F 9/008 20060101AFI20231120BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
A61F9/008 120Z
A61F9/008 130
G01N21/27 Z
(21)【出願番号】P 2021520162
(86)(22)【出願日】2019-09-27
(86)【国際出願番号】 US2019053553
(87)【国際公開番号】W WO2020112234
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-06-29
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516120205
【氏名又は名称】オーハイ レチナル テクノロジー,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラトラル,ジェフリー ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】チャン,デイビッド ビー.
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-510694(JP,A)
【文献】特開2009-142597(JP,A)
【文献】米国特許第05549596(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0074221(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/008
G01N 21/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
網膜光線療法を安全に提供するためのシステム(100)であって、前記システムは、
眼(10)の網膜色素上皮(24)および脈絡膜(26)に適用される550nm~900nmの間の波長を有する第1の光線を生成する第1のレーザーコンソール(102)
であって、第1の光線の少なくとも一部が前記網膜色素上皮および前記脈絡膜によって反射される、第1のレーザーコンソールと、
550nm~900nmの間の波長を有する第2の光線を生成する第2のレーザーコンソール(104)であって、ここで、前記第1の光線と前記第2の光線は異なる波長を有しており
、前記第2の光線は、眼(10)の網膜色素上皮(24)および脈絡膜(26)に適用され、第2の光ビームの少なくとも一部分は、網膜上皮および脈絡膜によって反射される、第2のレーザーコンソールと、
眼の網膜色素上皮内のメラニン含有量を決定するために、
網膜色素上皮(24)および脈絡膜(26)によって反射された第1および第2の光線の光の量を測定する反射率計(110)と、
眼(10)の網膜色素上皮(24)内のメラニン含有量があらかじめ定められた量を超える場合、パルス網膜治療光線の1つ以上のパラメータを調節する手段と
を含むことを特徴とする、システム。
【請求項2】
前記パルス網膜治療光線の1つ以上のパラメータは、パルス網膜治療光線の網膜スポットサイズ、パルス網膜治療光線のパルス列持続時間、パルス網膜治療光線のデューティサイクル、またはパルス網膜治療光線の出力の少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記パルス網膜治療光線の1つ以上のパラメータは、パルス網膜治療光線の網膜スポットサイズを拡大させること、パルス網膜治療光線の出力を減少させること、パルス網膜治療光線のデューティサイクルを減少させること、またはパルス網膜治療光線のパルス列持続時間を減少させることによって調節される、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1の光線と前記第2の光線は、波長が少なくとも25nm異なっていることを特徴とする、請求項1-3のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項5】
前記第1の光線と前記第2の光線はそれぞれ、600nm~850nmの間の波長を有することを特徴とする、請求項1-4のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項6】
前記反射率計(110)は、網膜色素上皮(24)および脈絡膜(26
)によって、反射された
前記第1の光線と前記第2の光線の光の量を識別することを特徴とする、請求項1-5のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項7】
0.2秒~0.5秒の範囲のパルス網膜治療光線のパルス列持続時間にわたり、眼(10)の網膜色素上皮(24)内のメラニン
含有量が、眼の網膜色素上皮の正常なメラニン含有量の4~8倍であると決定される場合、前記1つ以上のパラメータが調節されることを特徴とする、請求項
1-6のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項8】
眼(10)の網膜色素上皮(24)内のメラニン含有量が8×10
10cm
-3よりも大きいと決定される場合、前記1つ以上のパラメータが調節されることを特徴とする、請求項1-
7のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項9】
眼の網膜色素上皮(24)および脈絡膜(26)上に前記第1の光線と前記第2の光線を適用するプロジェクター(108)を含む、請求項1-
8のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項10】
前記プロジェクター(108)と前記第1のレーザーコンソール(102)および前記第2のレーザーコンソール(104)との間に配置される光学系(106)を含む、請求項
9に記載のシステム。
【請求項11】
前記光学系(106)は、前記第1の光線および/または前記第2の光線を集め、前記第1の光線および/または前記第2の光線をフィルタリングし、ならびに/あるいは、前記第1の光線および/または前記第2の光線から複数の光線を生成する、請求項
10に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、網膜光線療法を安全に提供するシステムおよびプロセスに関する。より具体的には、本発明は、単純な反射率測定プロセスを用いるなどして決定された網膜色素上皮(RPE)メラニンレベルに基づいて、網膜光線療法の処置パラメータを調節することによって、網膜光線療法を安全に提供することに関する。
【背景技術】
【0002】
眼の健康に対する黄斑色素の重要性は、網膜内のその密度または濃度を測定する方法の開発および関心を促している。しかし、従来のシステムおよび方法は、一般に利用可能ではないか、時間がかかるか、または複雑かつ高価である設備に基づくものである。
【0003】
ここで、
図1を参照すると、参照番号(10)によって一般に参照される眼の概略図が示されている。眼(10)は、虹彩を覆う眼の透明な前部である角膜(12)と、眼に入る光の量を調節する虹彩の中心にある可変サイズの黒い丸形またはスリット形の開口部である瞳孔(14)と、を含んでいる。水晶体(16)は、角膜(12)とともに、光を網膜(18)上に集中するように屈折させるのを助ける、眼内の透明な両凸構造である。網膜は、眼球の後部にある神経細胞の薄い層であり、光を捕捉して脳への電気信号に変換する。網膜は、栄養を与えるための多くの血管(20)を有している。参照番号(22)によって参照される中心窩/黄斑の領域は、色覚と細かい詳細な視覚のために使用される眼の一部である。網膜色素上皮(RPE)(24)は、網膜視細胞に栄養を与える網膜神経感覚上皮(18)のすぐ外側にある色素細胞層である。それは、網膜(18)と強膜との間にある眼(10)の血管板である脈絡膜(26)の下層に密着している。脈絡膜(26)は、網膜(18)の外側層に酸素および栄養を供給する。
【0004】
眼の多くの疾患が網膜に関連しており、そのような疾患および疾病を処置するために、網膜の光凝固および光刺激などの方法論が開発されてきた。光凝固および光刺激は、網膜組織の加熱に依存して治療効果を生み出す。過度の加熱は、網膜組織を破損するか、さらには破壊する可能性があり、これは、ある処置方法論では意図的な場合もあるが、他の処置方法論では回避される場合もある。異常なレベルの色素沈着、特に、RPE内のメラニンのレベルまたは濃度により、そのような処置中に予期しない過度の熱が引き起こされ、潜在的に網膜組織を破損する可能性があることが分かっている。
【0005】
眼内のメラニンは、まだ完全には理解されていない多くの重要な機能を有する。眼内のメラニンは、有害な紫外線を吸収することによって目を保護する。メラニンは、杆体および錐体から離れて迷光を散乱させ、眼の後部から反射された光を吸収することによって視力を向上させる。メラニンは、加齢黄斑変性症などの網膜疾患の予防を助ける抗酸化剤としても機能する。
【0006】
これらの特性の多くは、メラニンの吸収スペクトルが非常に広いという事実に起因する。この点で、メラニンは色素の中でもユニークである。このユニークな性質について多くのメカニズムが示唆されている。例として、広帯域吸収は、化学的不均質性、非晶質半電導性、および散乱に起因している。しかし、散乱損失は、広帯域減衰の数パーセントしか占めていないことが示されている。化学的不均質性および非晶質半電導性の仮説に関する問題もある。重合体の電荷ホッピング(polymeric charge hopping)を提案している者もいれば、水和作用およびメラニンに遊離基を導入することの重要性を指摘している者もいる。さらに、メラニン励起子がその広帯域吸収に役割を果たす可能性を示唆している者もいる。任意の特定の説明がメラニンの電気的性質および光学的性質のすべてを説明することができるという、普遍的な合意はないようである。
【0007】
上に示されるように、眼内のメラニンは多くの重要な機能を果たしている。眼内のメラニンのレベルまたは濃度の決定は、確認に重要であり得る。例えば、眼疾患のレーザー療法は、RPEの温度上昇を引き起こすことに基づき、これは眼の自然な修復機構を活性化する。近赤外線では、これは、RPE中のメラニン色素による赤外線の吸収に起因する。相当なメラニンがRPEの後部の脈絡膜にも存在するが、脈絡膜のメラニンによる吸収は、比較的短い治療時間中のRPEへの拡散性熱伝達の不足により、および、脈絡膜ならびに脈絡毛細管中の血管による対流冷却により、RPEの温度の上昇に重要な役割を果たさない。
【0008】
眼疾患のレーザーの閾値以下の損傷治療において、温度上昇が約10℃を超えない限り、レーザー療法は有効である。この温度上昇の制限は、治療時間中にRPEによって吸収することができる最大のレーザーエネルギーを決定する。しかし、ほとんどの患者に適したレーザー出力では、患者のRPEメラニン含有量あるいは濃度が異常に高い場合、温度上昇が損傷の閾値を越える可能性があることが考慮され得る。
【0009】
したがって、眼内の、特に、眼のRPE内のメラニンのレベルまたは濃度を決定し、それにより、RPE内のメラニンの異常に高い含有量あるいは濃度を有する患者の目を破損しないように必要に応じて、網膜光線療法処置の1つ以上の処置パラメータを調節することができる、単純で比較的安価なプロセスが引き続き必要とされている。本発明はこうした必要性を満たし、他の関連する利点を提供する。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、眼のRPE内のメラニンの含有量または濃度があらかじめ定められた量を超える場合に、網膜光線療法の1つ以上の処置パラメータを調節することによって、網膜光線療法を安全に提供するためのシステムおよびプロセスに関する。本発明は、比較的単純で安価である、眼のRPE内および脈絡膜内のメラニンのレベルまたは濃度を決定するための2つの波長の反射率測定プロセスを使用する。
【0011】
網膜光線療法を安全に提供するためのシステムは、各々が550nm~900nmの間の波長を有する第1の光線と第2の光線であって、ここで、上記第1の光線と上記第2の光線は異なる波長を有しており、ここで、上記第1の光線と上記第2の光線は、眼の網膜色素上皮および脈絡膜に適用される、第1の光線と第2の光線と、眼の網膜色素上皮内のメラニンの含有量を決定するために、上記第1の光線と上記第2の光線によって網膜色素上皮(24)および脈絡膜(26)から反射した光の量を測定する反射率計と、を含む。上記システムは、眼の網膜色素上皮内のメラニンの含有量が、あらかじめ定められた量を超える場合に、パルス網膜療法の光線の1つ以上のパラメータを調節することを特徴とする。
【0012】
より具体的には、本発明に従って、550nm~900nmの間の波長を有する第1の光線が生成される。第1の光線は、600nm~850nmの間の波長を有し得る。第1の光線は、眼の網膜色素上皮(RPE)および脈絡膜に適用されるように、眼に適用される。第1の光線からの眼から反射された光の量が測定される。これは、反射率計を使用して、第1の光線からの眼から反射された光の量を測定することによって行われ得る。
【0013】
550nm~900nmの間の波長を有する第2の光線が生成される。第2の光線は、600nm~850nmの間の波長を有し得る。第2の光線は、第1の光線とは異なる波長のものである。第1の光線と第2の光線は、波長が少なくとも25nm異なっていることが好ましい。第2の光線は、眼のRPEおよび脈絡膜など、眼に適用される。第2の光線からの眼から反射された光の量は、反射率計を用いるなどして測定される。
【0014】
眼内のメラニンのレベルは、第1の光線と第2の光線からの眼から反射された、測定された光の量を使用して計算される。より具体的には、計算工程は、RPEおよび脈絡膜から第1の光線と第2の光線によって反射された光の量を識別する工程を含む。
【0015】
眼のRPE内のメラニンの含有量または濃度が、あらかじめ定められた量を超える場合、網膜光線療法の1つ以上の処置パラメータが調節される。調節は、処置光線の網膜スポットサイズ、処置光線のパルス列持続時間、処置光線のデューティサイクル、または処置光線の出力の少なくとも1つを調節することを含み得る。例えば、処置光線の網膜スポットサイズが増大され得る。処置光線のパルス列持続時間が減少され得る。処置光線のデューティサイクルが減少され得る。処置光線の出力が減少され得る。
【0016】
眼のRPE内のメラニン含有量がRPE内のメラニンの正常な含有量より少なくとも4倍高いと決定される場合、1つ以上の処置パラメータが調節される。0.2~0.5秒の範囲のパルス光線網膜療法のパルス列持続時間にわたって、例えば、RPE内のメラニン含有量が、RPEの正常なメラニン含有量の4~8倍であると決定される場合、1つ以上の処置パラメータが調節される。例えば、RPE内のメラニン含有量が8x1010cm-3より高いと決定される場合、1つ以上の処置パラメータが調節される。
【0017】
眼のRPE内のメラニン含有量があらかじめ定められた量を超える場合、網膜療法システムの1つ以上の処置パラメータが自動的に調節され得る。1つ以上の網膜の処置パラメータが調節されていることが通知され得る。
【0018】
本発明の他の特徴および利点は、例として、本発明の原則を例証する添付の図面と共に、以下の詳細な説明から明白になるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
添付図面は本発明を例証する。そのような図面では:
【
図2】眼の部分内のメラニンの濃度を決定するために、本発明に従って使用されるシステムについての線図である。
【
図3】主要な眼の色素の吸収の波長依存を例示するグラフである。
【
図4】波長の関数としてのユーメラニンの吸光度を例証するグラフである。
【
図5】通常の濃度でのRPEメラニンを介した双方向の透過を示すグラフである。
【
図6】異なる波長でのRPEメラニン透過の変化を例証するグラフである。
【
図7】長球および球体からの散乱について、微分断面積に比例する強度関数の角度分布を例証するグラフである。
【
図8】RPEメラニン吸収係数、メラニン散乱係数、および構造マトリックス散乱係数の比較を示すグラフである。
【
図9】脈絡膜のメラニン吸収係数、脈絡膜のメラニン散乱係数、および脈絡膜の構造マトリックス散乱係数の比較を示すグラフである。
【
図10】正常な脈絡膜のメラノソーム密度における波長の関数としての脈絡膜の反射率を示すグラフである。
【
図11】正常なRPEおよび脈絡膜のメラノソーム密度における波長の関数としてのRPEの反射率を示すグラフである。
【
図12】網膜前部の透過率対波長を示すグラフである。
【
図13】RPEおよび脈絡膜のメラノソーム密度が正常と異なる場合、波長の関数としての全反射率の変化率を示すグラフである。
【
図14】本発明における、2つの波長の反射率測定による全反射率の変化率の第1の波長での等高線図である。
【
図15】本発明における、2つの波長の反射率測定による全反射率の変化率の第2の波長での等高線図である。
【
図16】パルス光光線療法のパルス列持続時間と比較した、損傷が生じる可能性のある、正常なRPEメラニン含有量に対する異常なRPEメラニン含有量の損傷比を示すグラフである。
【
図17】光光線療法パルス列持続時間の200ミリ秒~500ミリ秒の範囲での損傷比を例証する、
図16に類似するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
例証目的のために、本発明は、眼内の、および特に、眼の網膜色素上皮(RPE)および脈絡膜内のメラニンの濃度を決定することによって、網膜光線療法を安全に提供するためのシステムおよびプロセスに関する。眼のRPEおよび脈絡膜内のメラニンの濃度またはレベルの決定は、眼の健康の決定において重要であり得る。例えば、メラニンは、加齢黄斑変性症などの網膜疾患の予防を助ける、酸化防止剤として機能する。眼のRPEまたは脈絡膜内のメラニンの濃度を決定することは、眼疾患の処置の決定においても重要となり得る。例えば、個体がRPE内のメラニンの異常に上昇した濃度またはレベルを有している場合、光凝固または光刺激などの網膜光線療法で使用されるような、赤外線あるいは近赤外線レーザー光線などの光源を用いて、眼、特に、網膜を処置すると、予期しない加熱の上昇が引き起こされ、したがって組織が破壊される可能性がある。
【0021】
脈絡膜内のメラニン層は著しく変化する場合がある。しかし、メラニン層は、網膜が光凝固または光刺激の処置中に光源にさらされる場合に、過度の加熱および損傷を引き起こす可能性がある層であるため、RPE内のメラニンのレベルまたは濃度を決定することがしばしば重要となる。本発明は、RPE内のメラニンの量を正確に把握するために、RPEおよび脈絡膜の層の両方によって吸収および散乱された光を考慮に入れる。本発明は、本明細書で十分説明されるように、メラニンが吸収および反射する波長のあらかじめ定められた範囲内の2つの波長を利用する。上記2つの波長は、好ましくは、あらかじめ定められた波長範囲の上端および下端にむかって互いに異なり、および、本発明は、反射の量あるいは程度を測定し、その後、2つの波長の吸収および散乱または反射を考慮に入れることによって、RPEまたは脈絡膜内のメラニンのレベルあるいは濃度を決定する。
【0022】
ここで、
図2を参照すると、本発明に従って使用されるシステム(100)が示される。レーザーコンソール(102)は、あらかじめ定められた範囲内の波長を有する第1の光線を生成する。上記範囲は、550nm~900nmの間、典型的には600nm~850nmの間であり得る。あらかじめ定められた波長の範囲より下の波長は、他の色素からの光を吸収および散乱し始め、本発明の波長のあらかじめ定められた範囲より上の波長は、水によってますます吸収される。しかし、本発明のあらかじめ定められた波長の範囲は、RPEおよび脈絡膜のメラニンレベルの測定には理想的である。
【0023】
その後、生成された光線は、光学系(106)を通過する(光学系(106)は、光線を集め、光線をフィルタリングし、生成された第1の光線などから複数の光線を生成するなどために使用され得る)。次に、光線は、眼(10)に投影するために、より具体的には、眼(10)のRPE(24)および脈絡膜(26)に第1の光線を適用するために、網膜カメラなどであり得るプロジェクター(108)を通過する。RPEおよび脈絡膜からの反射は検出器(110)によって検出される。光干渉断層撮影(OCT)装置などの干渉法を使用するものなど、他の検出器装置を利用することも可能であるが、特に好ましい実施形態では、検出器(110)は反射測定器である。
【0024】
図2への参照を続けると、第2の光線がレーザーコンソール(104)などによって生成される。第2の光線は、550nm~900nmの間、好ましくは600nm~850nmの波長を有し、これは第1の光線とは異なる波長である。第1の光線と第2の光線は、好ましくは、波長が少なくとも25nm異なっており、より好ましくは、各々によって反射された光が検出される際に、より容易に互いと区別することができるように、波長範囲の両端または範囲の近くにある。
【0025】
上述されるように、第2の光線は光学系(106)を通り抜け、その後、プロジェクター(108)を通って眼(10)に、特に、眼(10)のRPEおよび脈絡膜(24)および(26)に入ることができる。第2の光線によって散乱および反射された光は、検出器(110)によって検出され、測定される。コンソール(102)および(104)によって生成された第1の光線と第2の光線が、眼(10)に順次にまたは同時に適用され得ることが理解されるだろう。
【0026】
第1の光線と第2の光線によってRPEおよび脈絡膜から反射された光の量が測定され、次に、第1の光線と第2の光線からのRPEおよび脈絡膜から反射された、測定された光の量を使用して、眼のRPEおよび脈絡膜内のメラニンの濃度が決定される。本発明は、RPEおよび脈絡膜から第1の光線と第2の光線によって反射された光の量を識別し、脈絡膜内の、より具体的には、RPE内のメラニンのレベルまたは濃度を決定するために、第1の光線と第2の光線から反射された光の量の測定値は、計算、および/またはグラフあるいは表に適用され得る。その後、RPE内のメラニンの決定されたレベルまたは濃度が、RPE内のメラニンの予想されたレベルまたは平均レベルと比較されて、その眼のRPE内のメラニンレベルが上昇しているかどうか、または、予測される範囲の外にあるかどうかが判定される。
【0027】
眼内のメラニンは主にユーメラニンであり、そのモノマーは、化学式C18H10N2O4および318.283の分子量を有し、1.7g/ccの密度および1.772の屈折率を有する。RPEおよび脈絡膜の両方において、メラニンは、メラノソームと呼ばれる、タンパク質でコードされた細胞小器官に含まれている。メラノソームの内部で、10オングストローム未満の大きさのメラニンモノマーが結合して、凝集体を形成する。凝集体は、数十オングストロームの寸法を有しており、共有結合されたモノマーのシートが重なってできており、そのシートの間隔は、3.4オングストロームである。上記シートは、より弱いpi-pi結合力で結合している。
【0028】
RPE中のメラニンは神経外胚葉に由来するが、脈絡膜のメラニンは神経冠に由来する。RPE中のメラノソームは脈絡膜中のメラノソームとは異なる。RPEでは、メラノソームは主にRPE細胞の頂端領域に位置し、杆体および錐体に密接に接触するために、長手寸法が頂端領域に位置合わせされた細長い形状をしている。すべての異質な(foreign)RPEメラノソームの典型的な幅は、250~500nmであり、典型的な長さは640~800nmである。このことから、典型的なメラノソームの体積は、6.5x10-14立方センチメートルとなる。メラニンは、RPEメラノソーム中でかなり密集しており、モノマー中のメラニン密度は1.7g/ccである。
【0029】
脈絡膜では、メラノソームは細長い形状である必要がなく、球形であると考えられる。脈絡膜中のメラニンの密度は、RPE中のメラニンの密度よりも小さく、その範囲は、RPEメラニンで3.61~8.05ミリモル/L、および脈絡膜メラニンで0.07~9.15ミリモル/Lである。しかし、脈絡膜の深さは、REPの6~10ミクロンと比較して、200ミクロンであるため、脈絡膜にはRPEよりはるかに多くのメラニンが存在する。
【0030】
前述の数値から、RPEでは、メラニンの数密度は3.38x1018cm-3であり、質量密度は1.8x10-3g/ccであり、メラニンがすべてメラノソーム内に含まれているため、RPE中のメラノソームの対応する数密度は10x1010cm-3となる。これにより、RPE中のメラノソーム間の直線的な分離は3.68ミクロンとなる。一方、脈絡膜では、メラニンの密度は、0.49x10-3g/ccであり、5.4x109cm-3のメラノソーム数密度に対応する。したがって、脈絡膜では、メラノソーム間の直線的な間隔は5.7x10-4cm、または5.7ミクロンである。
【0031】
ここで、
図3を参照すると、主に波長の可視域内の血液、メラニン、黄斑色素、水晶体、水、長波長感受性視覚色素(LWS)、および中波長感受性視覚色素(MWS)の吸収が説明されている。血液層の厚さは23ミクロンであり、酸素化は95%である。メラニンの密度は500nmで1.32であり、黄斑の密度は460nmで0.54である。水晶体の密度は420nmで0.54であり、水の密度は740nmで0.025である。視覚色素の密度は両方とも、ピークで0.57である。眼では、
図3に示されるように、メラニンは、一般に550n~900nmの間、より具体的には、600nm~850nmの間の波長範囲のレーザー光の吸収を支配している。
【0032】
人間の眼のスペクトル反射率の以前のモデル化では、RPEメラニンで3.61~8.05ミリモル/Lの値、および脈絡膜のメラニンで0.07~9.15ミリモル/Lの値を使用した。RPE中のメラニン層の厚さは、10ミクロン未満で、典型的には、約6ミクロンであるが、脈絡膜の厚さは約200ミクロン、つまり、およそ30倍厚い。したがって、非常に多くのメラニンが通常、RPEよりも脈絡膜に存在する。さらに、RPE中のメラニン含有量は通常、患者ごとにあまり変化しないが、脈絡膜のメラニンは大きく変化する場合があることが分かっている。
【0033】
図3で見られるように、メラニンの吸収係数は、波長が増加するにつれて大きく減少する。したがって、メラニンにより支配される吸収ウィンドウの下端600nmでのRPEメラニン吸収は、波長の特に好ましい範囲の上端850nmでの吸収よりもはるかに大きくなる。しかし、メラニン吸収が波長によってどのように変化するかに関しては、一般な合意はない。
【0034】
図4は、特に250nm~700nmの間の波長の関数としてのユーメラニンの吸光度を例証するグラフである。ユーメラニンは眼内のメラニンの主成分である。波長による光学密度の変化に関する一般的な合意はないが、本発明は、exp[-0.062λ(nm)の指数関数的な依存性を仮定しており、これが
図4に反映されている。この結果を、500nmで0.22という光学密度の以前の結果と組み合わせると、RPEを介した双方向の透過率は以下になる:
【0035】
【0036】
一方、500nmで0.29という光学密度を使用すると、結果は以下になる:
【0037】
【0038】
方程式[1]および[2]が
図5にプロットされ、
図5は、通常の濃度でのRPEメラニンを介した双方向の透過率(大きな吸収断面積によって決定される)を示すグラフである。上の曲線は、500nmでの光学密度が0.22であると仮定し、下の曲線は、500nmでの光学密度が0.29であると仮定する。メラニンにより支配される吸収ウィンドウの850nmの限界に向かって、RPEメラニンの吸収係数が小さくなり、脈絡膜から反射された信号を検出器(110)に通過させることが可能になることが理解され得る。しかし、600nmの下限では、RPEメラニンの吸収係数は十分に大きくなり、脈絡膜から反射された信号のうち、検出器を通り抜けることができる信号が少なくなる。RPEメラニンの上昇した、潜在的に危険なレベルでは、600nmで脈絡膜から反射された信号はRPEを通り抜ける際に大幅に減少するが、800nmではほとんど減少しない。
【0039】
図6は、RPEメラニンの濃度が、正常値(n=1)から、正常値の3倍である上昇した危険な閾値(n=3)まで変化するときの、750nm(上の曲線)、および600nm(下の曲線)でのRPEメラニンの透過(大きな吸収係数によって決定される)の変化を例証するグラフである。
図6では、正常なRPE濃度の場合、500nmの光学密度が0.22であると仮定している。引き続き
図6を参照すると、グラフは、濃度が正常値(n=1)から正常値の3倍の危険なレベル(n=3)まで変化するときの、600nmおよび750nmでのRPEメラニンの透過率の挙動を示す。
図6のグラフは、600nmでは、透過信号が4倍近く減少するが、750nmでは、透過信号がおよそ1.5倍にしか減少しないことを示す。しかし、この大きな差は、反射率の式における他の要因によって多少軽減される場合もある。
【0040】
対照的に、脈絡膜中のメラニンの光路はより大きい。RPE中のメラニンの典型的な密度が5.82ミリモル/Lであると推測され、および、メラニンモノマーの分子量が318.283であるため、重量密度は1.86x10-3g/ccになる。これは、6~10ミクロンの厚さの領域を占める。脈絡膜の場合、典型的な密度は1.59ミリモル/L、つまり、0.51x10-3g/ccであるが、脈絡膜の厚さは200ミクロンである。したがって、RPEメラニンの光学密度が500nmで0.22である場合、脈絡膜メラニンは500nmで2.00の光学密度を有している。したがって、脈絡膜の後部から前部への一方向の透過は、わずか、exp[-2.303x2.00]=0.01である。したがって、ほとんどの放射線が吸収される。このことは、強膜からの反射線が反射信号にそれほど寄与しないことを意味する。しかし、眼および患者ごとに脈絡膜のメラニン含有量にかなりの変化があり、したがって、一般に、強膜からの反射の寄与を考慮に入れることが重要である。
【0041】
メラニンは、メラノソーム内で密集している。上述されるように、RPEでは、メラノソームは、細長い形状をしており、杆体および錐体と密接に接触している。他方で、脈絡膜では、メラノソームは球形であると考えられる。メラノソームは、基本的な散乱体と考えられる。メラノソームは対象となる600nm~850nmの波長に匹敵する大きさを有する。典型的なRPEのメラノソームは、幅250~400nm(平均300nm)×長さ640nm~800nm(平均720nm)の寸法を有する。球状の脈絡膜のメラノソームは、RPEのメラノソームに匹敵する体積を有し、そのため、2.5x10-5cm、つまり、250nmの半径を有すると仮定される。
【0042】
誘電性の球状の散乱体(scatterers)について、放射線の波長が散乱体のサイズよりはるかに大きい場合、散乱の断面積は以下のレイリー(Rayleigh)式で得ることができる:
【0043】
【0044】
一方、波長が散乱体のサイズに匹敵する場合、断面積は、ルジャンドル多項式の無限級数のミー和(Mie sum over an infinite series of Legendre polynomials)で表される。小さな波長では、全散乱断面積のミー式は漸近値まで減少する:
【0045】
【0046】
方程式[3a]および[3b]において、波数kは以下のとおりである:
【0047】
【数5】
および
・a=散乱球体の半径であり、
・n
med=球体が浸される媒体の屈折率であり
・λ=放射線の真空波長であり、
・K
rel=n
sphere/n
medであり、
・nsphere=球体の屈折率であり、
【0048】
ka=O(1)であるとき、断面積は、σsphere=2πa2というその漸近値に近づくにつれ、多少変動(oscillates)する。
【0049】
長波長と短波長の散乱挙動における他の重要な差異は、長波長では、後方と同じくらい多くの散乱現象が前方に存在するということである。しかし、短波長では、ka>1であるとき、これは劇的に変化し、散乱は主に前方になる。散乱角は主に、以下の角度の錐体に含まれている:
【0050】
【0051】
したがって、半径aの球状の散乱体にボルン近似を適用すると、以下のように示すことができる:
【0052】
【0053】
【0054】
ka>>1のとき、これは以下まで減少し:
【0055】
【0056】
これにより、短波長では散乱角が非常に小さいことが示される。
【0057】
球体が後方に散乱する断面積σsは、ka>>1のとき、以下であり:
【0058】
【0059】
これは、ボルン近似では、その半径と無関係であり、波長の二乗にちょうど比例する。方程式[5d]はボルン近似を使用して導き出されるため、0.08の係数は正確ではない可能性がある。しかし、λ2への依存性は、半径aの球体上の回折に起因するため信頼することができる。
【0060】
RPE中のメラノソームは球状の形状ではないが細長く、長手寸法が杆体および錐体の軸に対して並行に配向される。メラノソームは、共有結合したメラニンモノマーのシートが積み重なって構成された、メラニン凝集体で構成される。
【0061】
図7を参照すると、グラフは、RPEメラノソームの寸法を有する長球の散乱断面積を推定するために必要な情報を提供する。
図7は、a/b=2およびkc=5を有する長球(破線)からの、および比較用の3つの球体(実線)からの散乱の微分断面積に比例する強度関数の角度分布を示す。「2」で標識される実線の曲線は、長球と同じ体積の球体に関するものである。上記図は、球体からのミー散乱によって説明される散乱挙動の類似点を示す。
【0062】
図7では、長球の軌道長半径は「a」によって示され、RPEメラノソームの720nm(640~800nm)の寸法の半分に相当する。長球の軌道短半径は「b」によって示され、RPEメラノソームの300nm(250~400nm)の寸法の半分に相当する。方程式[3c]中で定義される波数は「k」である。準焦点距離はc=(a
2-b
2)
1/2である。放射線は、その主軸に沿って長球に入射すると仮定される。
図7中の長球のアスペクト比(a/b=2)は、RPEメラノソームのアスペクト比(平均でa/b=2.4)に匹敵する。
【0063】
散乱の微分断面積は、図中の縦座標の強度係数に比例する。したがって、図中の等しい体積の球体(「2」で標識される)の破線の曲線下面積および実線の曲線下面積を測定すると、長球における前方散乱(0~90度)の断面積が、等しい体積の球体からの前方散乱の断面積の1.45倍であることが明らかになる。さらに、長球における後方散乱(90~180度)の断面積は、等しい体積の球体からの後方散乱の断面積の0.6倍である。このことは、脈絡膜のメラノソームが、後方への散乱放射線においてRPEメラノソームよりも1.65倍効果的であることを意味する。球体の場合、全散乱断面積に対する後方散乱断面積の比は0.018であり、つまり、散乱放射線の1.8%のみが後方である。このことは、放射線の大部分が、小さな錐体において前方に散乱されるという我々の以前の観察と一致している(方程式[4])。
【0064】
球体(sphere)の全散乱断面積を2πa2(方程式[3b])とすると、最後の観察により、球体の後方散乱の断面積が以下であると言うことができる:
【0065】
kc=5に対応する波長で、
【0066】
【0067】
方程式[6]に適用する波長を決定するために、以下のkc=5の式を検討する:
【0068】
【0069】
【0070】
これにより、λ=39nmとなる。したがって、後方散乱断面積がλ2に比例するべきであることが、方程式[5d]によって示されるため、2πa=1571nm未満の一般的な波長について、以下を求める。
【0071】
【0072】
これは、方程式[5d]の0.08λ
2cm
2というボルン近似結果よりも少し小さい。
図7中の同じ体積の長球および球体の後方散乱断面積の測定された0.6という比率、およびλ
2依存の予測される回折関連の起源から、RPEメラノソームの後方散乱断面積について以下に記載する:
【0073】
【0074】
λがnmで表されるとき、方程式[8]および[9]は、以下になる:
【0075】
【0076】
【0077】
吸収は600nm~800nmの波長範囲のメラニンによって支配されるが、散乱はメラノソームが埋め込まれている構造マトリックスからも生じる場合がある。先行研究では、OCT走査から網膜および脈絡膜の散乱特性が決定された。855nmの波長について:
【0078】
網膜:
・散乱係数1.64x10-4λnm
2 tRET=120cm-1
・異方性係数gRET=<cosθ>=0.97
【0079】
脈絡膜:
・散乱係数μscatCH=275cm-1
・異方性係数gCH=0.90
【0080】
大きい異方性係数では、散乱係数に(1-g)を乗じて後方散乱係数を求める。
【0081】
散乱は、細胞膜から細胞全体に至るまで、様々な組織成分の屈折率の不一致により生じる。細胞核およびミトコンドリアは、最も重要な散乱体である。細胞核およびミトコンドリアの大きさは100nm~6μmの範囲であり、したがって、近赤外線ウィンドウ内に収まる。これらの細胞小器官のほとんどはミー領域内に属し、高度に異方性の前方指向性の散乱を示す。
【0082】
上記により、網膜の奥の層を個々に形成するRPE層ではなく、網膜全体の散乱係数および異方性係数のみが得られるため、RPEの散乱係数および異方性係数は、網膜の総量を使用することによって近似される。散乱係数が単一の波長のみで得られ、散乱が主にミー領域にあると決定されるため、
【0083】
方程式[5.9]のλ2係数を適用して、他の波長での散乱係数を決定する:
【0084】
【0085】
【0086】
これらは、正常なメラノソーム密度(NRPE=2x1010cm-3およびNCH=5.4×109cm-3)のメラニンからの散乱係数と比較することができる。
【0087】
【0088】
【0089】
RPE中の構造マトリックスからの散乱がメラニンからの散乱よりも小さい一方、脈絡膜では、構造マトリックスからの散乱が一桁大きいことがわかる。
【0090】
散乱係数は、正常なメラニン密度での吸収係数より小さい。
【0091】
【0092】
【0093】
メラノソームの数密度および散乱断面積は、600~800nmの波長範囲の波長を有する放射線がRPEまたは脈絡膜のいずれかを横断する際に、散乱がそれほど生じないことを示す。200ミクロンの厚さの脈絡膜の場合、典型的なメラノソーム密度は5.4×109cm-3であり、後方散乱係数は方程式[10b]および[11b]の和と等しく、これにより、800nmの光子の散乱のための効果的な以下の平均自由行程が得られる:
【0094】
【0095】
これは、脈絡膜の厚さよりも大きい。脈絡膜における散乱(scattering in choroid)の光学密度は以下の通りである:
【0096】
【0097】
これは、メラニンによる吸収の光学密度よりはるかに小さい。さらに、網膜前部における散乱光学密度も小さい。
【0098】
2x1010cm-3の正常なメラノソーム密度を有するRPEにおいて、方程式[10a]および[11a]によって得られた平均自由行程は以下の通りである:
【0099】
【0100】
これは、RPEの厚さ6~10ミクロンよりはるかに大きいため、RPEを横断する際に光子が散乱される可能性は非常に小さい。RPEにおける散乱(scattering in RPE)の光学密度は以下の通りである:
【0101】
【0102】
これは、脈絡膜のように、メラニンによる吸収の光学密度よりも非常に小さい。
【0103】
したがって、600~850nmの波長範囲では、吸収は、RPEと脈絡膜の両方において散乱よりも重要である。これにより、単純な光子輸送方程式が導き出される。
【0104】
ここでは、反射率測定結果が適切なパラメータに依存することを簡単に理解するために、単純なクベルカ・ムンク方程式を使用する。
【0105】
初めにRPEについて考える。定常状態の近似的な輸送方程式は以下の通りである:
【0106】
【0107】
【0108】
ここで、
・I(+)は、入力された放射線がRPEを通過するときの強度である。
・I(-)は、反射された放射線がRPEを通ってRPEの前面へと戻るときの強度である。
・xは、RPEの前部から測定されたRPE内までの距離である。
・y=w-xであり、式中、wはRPEメラニン層の厚さである。
・Nは、放射線を吸収および散乱するメラニン凝集体の数密度である。
・σsは、後方散乱のためのメラニン凝集体の断面積を表す。
・σaは、吸収のための凝集体のメラニンの断面積を表す。
・μback scatは、構造マトリックスの後方散乱の係数である。
【0109】
σa/(σs+σa)は非常に大きく、紫外線範囲および光学範囲のすべての波長にわたって、全光減衰に対する散乱の寄与率は6%未満であることが、以前に実験的に実証されている。
【0110】
N(σs+σa)wという量は、単純に、RPEメラニン層の全減衰(散乱および吸収)の光学密度の2.303倍である。
【0111】
方程式[16]および[17]は、方程式[16]中の項+NσsI(-)を無視することによりさらに単純化することができ、この論理的根拠は、反射信号I(-)が入力信号I(+)よりはるかに小さいということである。次に、以下であることを必要とする:
【0112】
【0113】
【0114】
ここで、
・RCHは、ROEと脈絡膜との間の界面での反射係数である。
【0115】
血液を多く含む10ミクロンの厚さの脈絡毛細管はメラニンを含んでおらず、600nm~750nmの波長範囲では無視することができる。
【0116】
上記式を直接解くと、x=0での反射係数RRPEが得られる。
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
数量がRPEに関するものであることを示すために、方程式[19]において下付き文字「RPE」が加えられている。
【0121】
同じ方法で、RPE/脈絡膜の界面における反射係数RCHのための式を得ることができる:
【0122】
【0123】
【0124】
最後に、全反射係数(網膜の前部での)は、以下となる同じ式によって得られる:
【0125】
【0126】
式中、μback scatRETは、網膜の構造マトリックスの後方散乱係数である。
【0127】
これらの式では、
・対応する数量が脈絡膜について評価されるものであることを示すために、下付き文字「CH」が加えられている。
・dCHは、脈絡膜の厚さ(200ミクロン)を表す。
・dRETは、網膜前部の厚さ(200ミクロン)である。
・RSC=0.5exp[-0.00261(λnm-675)]は、脈絡膜の後部の強膜での反射係数を表す。
【0128】
方程式[19]および[20]を方程式[21]に代入すると、所望の全体的な反射係数が得られる。
【0129】
反射率では、RPE中のメラノソームの断面積と、脈絡膜のメラノソームの断面積の両方が示される。上に示されるように、これらのメラノソームはかなり異なっている。RPE中のメラニンは神経外胚葉に由来するが、脈絡膜のメラニンは神経冠に由来する。RPE中のメラノソームは、脈絡膜中のメラノソームとは異なることが分かった。RPEでは、メラノソームは主に、RPE細胞の頂端領域に位置し、および、杆体および錐体と密接に接触するために長手寸法が頂端領域に位置合わせされた、非常に細長い形状をしている。RPEメラノソームの典型的な幅はおよそ300nmであることが分かっているが、典型的な長さは720nmである。脈絡膜では、メラノソームは細長い形状である必要はなく、主に球状である。上記形状の差は、上に示されるような断面積の差をもたらす。メラニンシートは、積み重なってメラノソーム中の凝集体を形成し、したがって、RPEメラノソームは、損失のある誘電性の長球として表される。脈絡膜の球状のメラノソームは、損失のある球状の誘電体によって表される。
【0130】
眼の数値結果に関して、反射係数中の波長依存量を以下にまとめる:
【0131】
構造マトリックスから:
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
メラニン関連:
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
【0141】
関連寸法:
【0142】
【0143】
【0144】
反射率のための方程式[23]は、5つのパラメータの組み合わせのみに依存することは興味深い:
【0145】
{σs/2(σs+σa)}CH
【0146】
{σs/2(σs+σa)}RPE
【0147】
exp[-2μbackscatRET)dRET]
【0148】
exp[-2({N(σs+σa)}RPE+μbackscatRPE)w]
【0149】
exp[-2{N(σs+σa)}CH+μbackscatCH)dCH]
【0150】
4つ目(指数関数)のパラメータの組み合わせは、RPEメラニン濃度NRPEの所望の感度の高い測定を提供する。
【0151】
図8~15は、網膜前部、RPE、および脈絡膜の全体的な反射率についての方程式[19]~[21]の、特に、方程式[21]の意義を提供するグラフである。それらは、波長、RPE、および脈絡膜のメラノソームの数密度を有するパラメータの変化を示す。
【0152】
図8に関して、RPEメラニン吸収係数(上の曲線)、RPEメラニン散乱係数(中央の曲線)、およびRPEの構造マトリックス散乱係数(下の曲線)の比較が示される。係数の対数(底を10とする)が示され、係数がcm-1で表される。対数は、600nm~800nmの間の波長およびナノメーターに対してプロットされる。2x10
10cm
-3の正常なRPEメラノソーム濃度が仮定された。
図8は、正常なメラノソーム密度でのRPEにおいて、吸収係数が最大となり、次にメラニンによる散乱係数、および構造マトリックスの散乱係数が続くことを示す。散乱係数が吸収係数と同じくらい大きくなる前に、メラノソーム密度の大幅な減少が生じなければならない。
【0153】
次に
図9を参照すると、脈絡膜メラニン吸収係数(上の曲線)、脈絡膜メラニン散乱係数(下の曲線)、および脈絡膜の構造マトリックス散乱係数(中央の曲線)の比較が示される。係数の対数(底を10とする)が示され、係数がcm
-1で表される。対数は、600nm~800nmの間のナノメーターの波長に対してプロットされる。5.4x10
9cm
-3の正常な脈絡膜メラノソーム濃度を、これらのプロットにおいて仮定した。正常なメラノソーム密度での脈絡膜において、メラノソームによる吸収係数が最大となり、次に、構造マトリックスからの散乱係数が続き、メラノソームからの散乱係数はるかに小さくなる。しかし、メラノソーム吸収係数とマトリックス散乱係数の差は、800nmにおいて小さい。脈絡膜メラノソーム密度が減少する場合、マトリックス散乱係数はメラノソーム吸収係数より大きくなる可能性がある。これは、800nmに近い波長で特に当てはまる。
【0154】
方程式[19]~[21]から分かるように、全反射率はRPEの反射率および脈絡膜の反射率、つまり、R
RPEおよびR
CHによって決定される。これらは
図10および11に示される。
【0155】
図10は、正常な脈絡膜メラノソーム密度(5.4x10
9cm
-3)で、波長(nm)の関数としての脈絡膜の反射率R
CH(上の曲線)を例証するグラフである。他の2つの曲線も示され、1つはR
CHを含む方程式[20]の成分の各々についてのものである。中央の曲線は、分子に脈絡膜散乱係数を含み、分母に散乱係数と吸収係数の和を含む分数項である。下の曲線は、その係数を有する指数項である。
図10は、波長が増加するにつれて反射率が増加することを示す。このことは、散乱のミー領域(Mie regime)における波長とともに、(後方の)散乱係数が増加することに起因する。正常な脈絡膜メラノソーム密度での脈絡膜の反射率に大きく寄与するのは、圧倒的に、散乱係数と吸収係数の比を含む部分である。指数項はほとんど無視できる。
【0156】
図11は、正常なRPEおよび脈絡膜のメラノソーム密度(それぞれ、2x10
10cm
-3および5.4x10
9cm
-3)での、波長(nm)の関数としてのRPEの反射率R
RPE(上の曲線)を示すグラフである。他の2つの曲線も示され、1つはR
RPEの式を含む方程式[19]の成分の各々についてである。中央の曲線は、分子にRPE散乱係数を含み、分母に散乱係数および吸収係数の和を含む分数項である。下の曲線は、R
CHを含むその係数を持つ指数項である。
図11は、脈絡膜からの反射率と同様に、波長が増加するにつれて反射率が増加することを示す。さらに、このことは、散乱のミー領域(Mie regime)における波長とともに、(後方の)散乱係数が増加することに起因する。正常なRPEおよび脈絡膜のメラノソーム密度でのRPEの反射率に大きく寄与するのは、圧倒的に、RPE散乱係数と吸収係数の比を含む部分である。指数項は、メラノソームによる大きなRPE吸収係数のため、はるかに小さい。
【0157】
図12は、方程式[21]が、RPE R
RPEの反射率から全反射率R
TOTがどのように導き出されるかを示し、網膜前部での散乱による吸光係数を含む指数減衰係数を含んでいることを示す。
図12は、ナノメーターの波長に対する方程式[21]の指数係数から得られる、網膜前部の指数係数を説明する。網膜前部を介する反射放射線の透過率は非常に良好であり、600nmで93+%から800nmで88+%の範囲である。
【0158】
RPEメラニン濃度が眼内の横方向位置(lateral position)によって変化することに注目されたい。そのメラニン濃度は黄斑部の中心でピークに達し、その後、いずれかの側で約5°の範囲で減少して、いずれかの側で約10°の比較的一定な値になり、その後、赤道に向かって-20°および+15°で再び上昇する。一貫した結果を得るために、濃度が比較的一定の領域で、あるいは言いかえれば、黄斑部の中心から約10°ほど離れて、検出器(110)、好ましくは、本発明による反射率計を操作することが最適である。
【0159】
図5~12を含む前述の図は、正常なRPEおよび正常な脈絡膜のメラノソーム密度(それぞれ、2x10
10cm
-3および5.4x10
9cm
-3)での挙動を示す。本発明は、RPEメラノソーム密度が変化するにつれて、全反射率R
TOTがどのように変化するかに特に関心がある。これは、
図13~15に関連して例証および説明される。
【0160】
図13は、RPEおよび脈絡膜のメラノソーム密度が正常なn
RPE=2x10
10cm
-3およびn
CH=5.4x10
9cm
-3とは異なっているため、ナノメーターの波長の関数としての全反射率R
TOTの変化率を例証する。4つの曲線が示される。上の曲線は、正常なRPE密度、および正常の6分の1の脈絡膜密度(n
RPEおよび(1/6)n
CH)についてのものである。上の方の中央曲線は(1/6)n
RPEおよびn
CHについてのものである。下の方の中央曲線はn
RPEおよび6n
CHについてのものである。一番下の曲線(600nm)は、6n
RPEおよびn
CHについてのものである。
図13は、RPEメラノソーム密度および脈絡膜メラノソーム密度の同等の変化からR
TOTにおける同等の変化率が生じるが、RPE密度からの変化は脈絡膜密度の変化とは異なる波長依存を有していることを示す。したがって、2つの異なる波長の全反射率における変化率を測定することで、RPEおよび脈絡膜のメラノソーム密度の変化がどのようなものであるのかを一意に決定することができる。
【0161】
RPEメラノソームの密度または濃度、および脈絡膜メラノソームの密度または濃度の両方を決定するための二重波長の反射率測定の使用が、
図14および15でさらに例証される。
図14および15は、横座標(X軸)上のr=n
RPE(異常)/n
RPE(正常)、および縦座標(Y軸)上のc=n
CH(異常)/n
CH(正常)の関数としての全反射率の変化率についての等高線図である。
図14は600nmでのプロットを示し、
図15は800nmでのプロットを示す。600nmでの変化率の等高線が800nmでの等高線とは異なる形状を有することは明らかである。次に、600nmでの所与の変化率および800nmでの別の所与の変化率は、2つの異なる等高線を提供し、これらの2つの等高線の交差は、RPEと脈絡膜の両方に関する異常なメラノソーム密度を一意に提供する。2つの波長で測定された反射率を与える、一意のRPEおよび脈絡膜メラノソームの密度についての式を解く1つの方法は、単純に、600~800nmの波長範囲の2つの異なる波長の反射率の等高線のルックアップテーブルをコンピュータメモリーに保存し、および、測定値に対応する2つの等高線を探して、RPE密度および脈絡膜密度の1つの共通ペアを見つけることであり得る。あるいは、上記の関連式は、コンピューターまたは他の電子装置を使用するなどして解くことができる。
【0162】
本明細書における図中の曲線は近似式を用いて生成され、したがって、示される反射係数の絶対値(absolute magnitudes)(数パーセントほど)は、実際の反射係数の推定値として考えられるべきである。実際の値は、検出器の光学系および幾何学の特性に依存するだろう。基線は正常な患者の個体群から確立することができ、そこから偏差を確立することができる。したがって、
図14および15は、反射率の絶対値の等高線ではなく、異常についての変化率の等高線を示す。
【0163】
以下の表1は、RPEメラニン含有量が異なる値をとる場合、HSP活性化のためのアレニウスの積分を保守的な値1(conservative value of unity)に維持する、ピークレーザーパワーを示す。スポット半径、列持続時間、デューティサイクル、および異常なRPEメラニン比率含有量の様々な値に対するピーク出力が示される。この表は、810nmでの処置パルス波長を仮定する。
【0164】
【0165】
【0166】
【0167】
【0168】
【0169】
上記表1に示されるように、正常なRPEメラニン含有量に対する異常なRPEメラニン含有量の比の範囲は、1~8の間の範囲にとられている。ピークのレーザー出力は、網膜でのレーザーのスポット半径、マイクロパルス列持続時間、およびデューティサイクルに依存する。これらのケースのそれぞれについて、正常なRPEメラニン含有量に対する異常なRPEメラニン含有量の比は、1、3、5、および8であると考えられている。
【0170】
異常なRPEメラニン含有量は、入射するレーザー放射線に対するRPEの吸収係数の変化を通じて現れる:吸収係数はRPEメラニン含有量の合計に比例する。したがって、上記表では、RPEメラニン含有量は、正常な吸収係数αnormalに対する吸収係数αの比の以下の4つの値によって表される:
【0171】
α/αnormal=1、3、5、8。
【0172】
ピークのレーザー処置出力Psdmに対するメラニン含有量の影響は、レーザーの網膜のスポット半径(R)、マイクロパルス列の持続時間(tF)、およびマイクロパルス列の持続時間(tF)のデューティサイクル(dc)に依存する。上記表では、以下のあらゆる組み合わせのPsdm(ワット)の例が示されている:
【0173】
R=100ミクロン、200ミクロン
【0174】
tF=0.2秒、0.3秒、0.4秒、および0.5秒
【0175】
dc=2%、3%、4%、5%
【0176】
上記は、比α/αnormalの4つの値の各々についてのものである。
【0177】
示されるλnmの値は、以下のように、熱ショックタンパク質(HSP)活性化のためのアレニウスの積分Ωhspを(保守的な)処置値である1(treatment value of unity)に維持する、ピーク出力の値である:
【0178】
Ωhsp=1。
【0179】
および、処置レーザーの波長を810nm-とし、αnormal=104cm-1であると仮定している。
【0180】
任意の近赤外線の波長(ナノメートル)λnmの場合、上記表の処置出力に以下の係数ξ(λnm)を乗じなければならない:
【0181】
ξ(λnm)=Exp[0.0062(810-λnm)]
【0182】
つまり、
【0183】
Psdm(λnm)=Psdmξ(λnm)=Psdm(表値)xExp[0.0062(810-λnm)]。
【0184】
以上のことから、α/αnormalが大きくなるにつれてPsdmが小さくなり、スポット半径(R)が大きくなるほど、Psdmの値は大きくなり、列持続時間tFが小さくなるほど、Psdmの値は大きくなり、デューティサイクル(dc)が小さくなるほど、Psdmの値は大きくなることが分かる。
【0185】
図16および17は、損傷が生じる可能性のある、正常なRPEメラニン含有量に対する異常なRPEメラニン含有量の比r
damageを示すグラフである。これらのグラフは、HSP活性化および損傷についてのアレニウスの積分のおおよその近似式に基づいており、この近似式は正確な式と驚くほど一致している。両方のグラフは、比r
damage対パルス持続時間t
Fをプロットする。
図16のグラフは、0.01秒~1秒までtFの範囲をカバーする。
図17のグラフは、0.2~0.5秒というtFのより現実的な臨床範囲をカバーする。
【0186】
図16および17で見られるように、損傷が生じる可能性のある、正常なRPEメラニン含有量に対する異常なRPEメラニン含有量の臨界比r
damageは、0.2秒~0.5秒の範囲のパルス列持続時間にわたり、4から約8まで変化する。したがって、RPE中のメラニンの含有量がRPE中の正常なメラニン含有量より少なくとも4倍大きいと決定される場合は、1つ以上の処置パラメータが上述のように調節される。したがって、正常なRPE密度が2x10
10cm
-3であると仮定すると、RPE中のメラニンの含有量が8x10
10cm
-3より大きいと決定される場合、1つ以上の処置パラメータが調節される。
【0187】
この臨界比では、それらの正常値から処置パラメータを変更することによって、損傷を回避することができ、効果的なHSP活性化を保証することができる。例えば、対象のほとんどの臨床処置パラメータについて:
【0188】
ピーク出力Pを、以下の範囲内に収まるようにその正常値Pnormalから減少させることができる:
【0189】
Pnormal/rdamage<P<Pnormal
【0190】
ただし、デューティサイクルおよび網膜のスポット半径がそれらの正常値のままであることとする。
【0191】
デューティサイクルdcを、以下の範囲に収まるようにその正常値dcnormalから減少させることができる:
【0192】
dcnormal/rdamage<dc<dcnormal
【0193】
ただし、レーザーピーク出力および網膜のスポット半径が、それらの正常値のままであることとする。
【0194】
網膜のスポット半径Rを、正常値Rnormalから以下の範囲に収まるまで増加させることができる:
【0195】
Rnormal<R<Rnormal rdamage
【0196】
ただし、レーザーピーク出力およびデューティサイクルが、それらの正常値のままであることとする。
【0197】
単一のレーザー光線療法パラメータが調節される場合もあるが、これらのパラメータの2つ以上を同時に調節することが可能であることが理解されるだろう。例えば、レーザースポット半径の直径を大きくして、出力を小さくすることができるが、出力のみを小さくした場合に必要となる程度までには半径を小さくすることはできない。同様に、パラメータはすべてわずかに調節することができ、例えば、処置光線の網膜スポットサイズをわずかに増加させること、処置光線のパルス列持続時間を減少させること、処置光線のデューティサイクルを減少させること、および処置光線の出力を減少させることができ、それにより、RPE中のメラニンの濃度と量が異常に大きい患者の網膜および眼への損傷を回避するために、アレニウスの積分の1(unity in the Arrhenius integral)を達成する。
【0198】
いくつかの実施形態は例示目的のために詳細に記載されているが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更を行ってもよい。これに応じて、本発明は、添付の請求項による場合を除けば、限定されないものとする。