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特許7387195圃場管理システム、圃場管理方法およびドローン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】圃場管理システム、圃場管理方法およびドローン
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20231120BHJP
   A01M 7/00 20060101ALI20231120BHJP
   B64D 47/08 20060101ALI20231120BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20231120BHJP
   B64C 27/08 20230101ALI20231120BHJP
   B64D 1/18 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
A01G7/00 603
A01M7/00 H
B64D47/08
B64C39/02
B64C27/08
B64D1/18
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021566398
(86)(22)【出願日】2019-12-23
(86)【国際出願番号】 JP2019050370
(87)【国際公開番号】W WO2021130817
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】515019537
【氏名又は名称】株式会社ナイルワークス
(74)【代理人】
【識別番号】100103872
【弁理士】
【氏名又は名称】粕川 敏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100139778
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100149456
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 喜幹
(74)【代理人】
【識別番号】100194238
【弁理士】
【氏名又は名称】狩生 咲
(72)【発明者】
【氏名】黒川 圭一
(72)【発明者】
【氏名】和氣 千大
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】加藤 宏記
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/208538(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/044663(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/003082(WO,A1)
【文献】特開2019-170217(JP,A)
【文献】国際公開第2019/106733(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00
A01M 7/00
B64D 47/08
B64C 39/02
B64C 27/08
B64D 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場に生育する作物の画像を取得する病理情報取得部と、
取得した前記画像に基づいて前記作物に発生している病気の進行具合を判断する病理判定を行う病理診断部と、
前記進行具合に応じて、前記圃場に行うべき対応策を複数出力し、作業者が実施した対策の入力を受け付ける結果出力部と、
前記対応策を講じるべき対策期限を算出する対策時期算出部と、
を備え
前記対策時期算出部は、前記圃場を飛行するドローンの飛行計画を参照し、前記対策期限に含まれる範囲において飛行が予定されている時点において前記対応策を講じることを決定する、
圃場管理システム。
【請求項2】
前記結果出力部は、複数の前記対応策を推奨順に表示する、
請求項1記載の圃場管理システム。
【請求項3】
前記結果出力部は、前記対策期限を表示する、
請求項1又は2記載の圃場管理システム。
【請求項4】
前記対策時期算出部は、前記病気の進行具合に基づいて、対策期限を算出する、
請求項3記載の圃場管理システム。
【請求項5】
前記結果出力部は、前記圃場に生育する前記作物の前記画像と、前記病気が発生している領域を示す病理領域特定マークとを重ね合わせて表示し、前記病理領域特定マークの選択を受け付け、前記病理領域特定マークが選択されると、当該病理領域特定マークに対応する領域における前記作業者の目視確認が完了した旨を記録する、
請求項1乃至のいずれかに記載の圃場管理システム。
【請求項6】
前記対応策は、株元目視確認指示、再撮影、静観、農薬散布、病理葉の除去、病理株の除去、および病理株発生エリアの株の除去の少なくともいずれかを含む、
請求項1乃至のいずれかに記載の圃場管理システム。
【請求項7】
前記進行具合に基づいて対策判断する対策決定部をさらに備え、
前記対策決定部は、前記進行具合を初期および後期を含む少なくとも2段階以上で判断し、
前記結果出力部は、前記進行具合が前記初期の場合に「静観」を出力し、前記進行具合が前記初期よりも進行した後期の場合に「農薬散布」、「病理葉の除去」又は「病理株の除去」を出力する、
請求項1乃至のいずれかに記載の圃場管理システム。
【請求項8】
前記結果出力部は、前記圃場の湿度が所定以下、温度が所定以上、および風速が所定以上の少なくともいずれかの場合、判定された前記進行具合に対応付けられる対応策より軽度な対応策を出力する、
請求項1乃至のいずれかに記載の圃場管理システム。
【請求項9】
少なくとも前記病理情報取得部は、前記圃場の上空を飛行可能なドローンに搭載されている、
請求項1乃至のいずれかに記載の圃場管理システム。
【請求項10】
圃場に生育する作物の画像を取得する病理情報取得ステップと、
取得した前記画像に基づいて前記作物に発生している病気の進行具合を判断する病理判定を行う病理診断ステップと、
前記進行具合に応じて、前記圃場に行うべき対応策を複数出力し、作業者が実施した対策の入力を受け付ける結果出力ステップと、
前記対応策を講じるべき対策期限を算出する対策時期算出ステップと、
み、
前記対策時期算出ステップでは、前記圃場を飛行するドローンの飛行計画を参照し、前記対策期限に含まれる範囲において飛行が予定されている時点において前記対応策を講じることを決定する、
圃場管理方法。
【請求項11】
ドローンを圃場の上空に飛行させる飛行制御部と、
前記圃場に生育する作物の画像を取得する病理情報取得部と、
取得した前記画像に基づいて前記作物に発生している病気の進行具合を判断する病理判定を行う病理診断部と、
前記進行具合に応じて、前記圃場に行うべき対応策を複数出力し、作業者が実施した対策の入力を受け付ける結果出力部と、
前記対応策を講じるべき対策期限を算出する対策時期算出部と、
を備え
前記対策時期算出部は、前記圃場を飛行する前記ドローンの飛行計画を参照し、前記対策期限に含まれる範囲において飛行が予定されている時点において前記対応策を講じることを決定する、
ドローン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、圃場管理システム、圃場管理方法およびドローンに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にドローンと呼ばれる小型ヘリコプター(マルチコプター)の応用が進んでいる。その重要な応用分野の一つとして農地(圃場)への農薬や液肥などの散布が挙げられる(たとえば、特許文献1)。比較的狭い農地においては、有人の飛行機やヘリコプターではなくドローンの使用が適しているケースが多い。
【0003】
特許文献2には、飛行中の撮像画像を取得する画像解析手段と、画像解析した手段に基づいて、作物に付着している害虫を検出する害虫検出手段と、害虫が付着している作物の位置情報に基づいて害虫駆除剤を散布するように移動体を制御する移動体制御手段と、を備える移動体制御アプリケーションが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許公開公報 特開2001-120151
【文献】特許公報 特許6427301
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
作物の病気の感染拡大を効果的に防止する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一の観点に係る圃場管理システムは、圃場に生育する作物の画像を取得する病理情報取得部と、取得した前記画像に基づいて前記作物に発生している病気の進行具合を判断する病理判定を行う病理診断部と、前記進行具合に応じて、前記圃場に行うべき対応策を決定する対策決定部と、を備える。
【0007】
前記対応策は、株元目視確認指示、再撮影、静観、農薬散布、病理葉の除去、病理株の除去、および病理株発生エリアの株の除去の少なくともいずれかを含むものとしてもよい。
【0008】
前記対策決定部は、前記進行具合を初期および後期を含む少なくとも2段階以上で判断し、前記進行具合が前記初期の場合に「静観」を出力し、前記進行具合が前記初期よりも進行した後期の場合に「農薬散布」、「病理葉の除去」又は「病理株の除去」を出力するものとしてもよい。
【0009】
前記対策決定部は、前記進行具合を初期および後期を含む少なくとも2段階以上で判断し、前記進行具合が前記初期の場合に「農薬散布」を出力し、前記進行具合が前記初期よりも進行した後期の場合に「病理葉の除去」又は「病理株の除去」を出力するものとしてもよい。
【0010】
前記対策決定部は、前記進行具合を初期および後期を含む少なくとも2段階以上で判断し、前記進行具合が「初期」の場合に「病理葉の除去」を出力し、前記進行具合が「後期」の場合に「病理株の除去」を出力するものとしてもよい。
【0011】
前記対策決定部は、前記進行具合を初期、中期および後期を含む少なくとも3段階以上で判断し、前記進行具合が前記初期の場合に「静観」を出力し、前記進行具合が前記初期よりも進行した前記中期の場合に「農薬散布」を出力し、前記進行具合が前記中期よりも進行した後期の場合に「病理葉の除去」又は「病理株の除去」を出力するものとしてもよい。
【0012】
前記対策決定部は、前記進行具合を初期、中期および後期を含む少なくとも3段階以上で判断し、前記進行具合が前記初期の場合に「農薬散布」を出力し、前記進行具合が前記初期よりも進行した前記中期の場合に「病理葉の除去」を出力し、前記進行具合が前記中期よりも進行した後期の場合に「病理株の除去」を出力するものとしてもよい。
【0013】
前記対策決定部は、気候情報を参照して前記対応策を決定するものとしてもよい。
【0014】
前記気候情報は、前記圃場の湿度、温度、および風速の少なくともいずれかの情報を含み、前記対策決定部は、湿度が所定以下、温度が所定以上、および風速が所定以上の少なくともいずれかの場合、判定された前記進行具合に対応付けられる対応策より軽度な対応策を出力するものとしてもよい。
【0015】
少なくとも前記病理情報取得部は、前記圃場の上空を飛行可能なドローンに搭載されているものとしてもよい。
【0016】
前記対策決定部は、前記進行具合に応じて、農薬の散布濃度を決定するものとしてもよい。
【0017】
前記対策決定部は、前記病気の進行具合に応じて散布する農薬の種類を決定するものとしてもよい。
【0018】
前記対策決定部の決定結果を表示部に表示する結果出力部をさらに備えるものとしてもよい。
【0019】
前記結果出力部は、前記表示部に、前記対応策を推奨順に複数表示するものとしてもよい。
【0020】
前記結果出力部は、前記病気の有無の判定結果、前記進行具合、前記対応策、前記対応策を講じるべき対策期限の少なくともいずれかを出力するものとしてもよい。
【0021】
前記圃場に農薬を散布する散布制御部と、前記対策決定部の決定結果を前記散布制御部に送信する第2結果出力部と、をさらに備えるものとしてもよい。
【0022】
上記目的を達成するため、本発明の別の観点に係る圃場管理方法は、圃場に生育する作物の画像を取得する病理情報取得ステップと、取得した前記画像に基づいて前記作物に発生している病気の進行具合を判断する病理判定を行う病理診断ステップと、前記進行具合に応じて、前記圃場に行うべき対応策を決定する対策決定ステップと、を含む。
【0023】
上記目的を達成するため、本発明のさらに別の観点に係るドローンは、ドローンを圃場の上空に飛行させる飛行制御部と、前記圃場に生育する作物の画像を取得する病理情報取得部と、取得した前記画像に基づいて前記作物に発生している病気の進行具合を判断する病理判定を行う病理診断部と、前記進行具合に応じて、前記圃場に行うべき対応策を決定する対策決定部と、を備える。
【発明の効果】
【0024】
作物の病気の感染拡大を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本願発明に係る圃場管理システムに含まれるドローンの平面図である。
図2】上記ドローンの正面図である。
図3】上記ドローンの右側面図である。
図4】上記ドローンの背面図である。
図5】上記ドローンの斜視図である。
図6】本願発明に係る圃場管理システムの全体概念図である。
図7】上記ドローンが有する機能ブロック図である。
図8】上記圃場管理システムが有するドローン、ユーザインターフェース装置、診断装置および計画装置の機能ブロック図である。
図9】上記圃場管理システムにより出力される結果出力画面の例である。
図10】上記圃場管理システムにより出力される、散布エリアを表示する結果出力画面の例である。
図11】上記圃場管理システムにより出力される結果出力画面のさらに別の例である。
図12】上記圃場管理システムが、作物の病理診断を行うフローチャートである。
図13】上記ドローンが備える赤色光カメラで、いもち病に感染した稲の葉を撮影して得られる撮影画像のイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図を参照しながら、本願発明を実施するための形態について説明する。図はすべて例示である。以下の詳細な説明では、説明のために、開示された実施形態の完全な理解を促すために、ある特定の詳細について述べられている。しかしながら、実施形態は、これらの特定の詳細に限られない。また、図面を単純化するために、周知の構造および装置については概略的に示されている。
【0027】
まず、本発明にかかるドローンの構成について説明する。本願明細書において、ドローンとは、動力手段(電力、原動機等)、操縦方式(無線であるか有線であるか、および、自律飛行型であるか手動操縦型であるか等)を問わず、複数の回転翼を有する飛行体全般を指すこととする。
【0028】
図1乃至図5に示すように、回転翼101-1a、101-1b、101-2a、101-2b、101-3a、101-3b、101-4a、101-4b(ローターとも呼ばれる)は、ドローン100を飛行させるための手段であり、飛行の安定性、機体サイズ、および、電力消費量のバランスを考慮し、8機(2段構成の回転翼が4セット)備えられている。各回転翼101は、ドローン100の筐体110からのび出たアームにより筐体110の四方に配置されている。すなわち、進行方向左後方に回転翼101-1a、101-1b、左前方に回転翼101-2a、101-2b、右後方に回転翼101-3a、101-3b、右前方に回転翼101-4a、101-4bがそれぞれ配置されている。なお、ドローン100は図1における紙面下向きを進行方向とする。
【0029】
回転翼101の各セットの外周には、略円筒形を形成する格子状のプロペラガード115-1,115-2,115-3,115-4が設けられ、回転翼101が異物と干渉しづらくなるようにしている。図2および図3に示されるように、プロペラガード115-1,115-2,115-3,115-4を支えるための放射状の部材は水平ではなくやぐら状の構造である。衝突時に当該部材が回転翼の外側に座屈することを促し、ローターと干渉することを防ぐためである。
【0030】
回転翼101の回転軸から下方には、それぞれ棒状の足107-1,107-2,107-3,107-4が伸び出ている。
【0031】
モーター102-1a、102-1b、102-2a、102-2b、102-3a、102-3b、102-4a、102-4bは、回転翼101-1a、101-1b、101-2a、101-2b、101-3a、101-3b、101-4a、101-4bを回転させる手段(典型的には電動機だが発動機等であってもよい)であり、一つの回転翼に対して1機設けられている。モーター102は、推進器の例である。1セット内の上下の回転翼(たとえば、101-1aと101-1b)、および、それらに対応するモーター(たとえば、102-1aと102-1b)は、ドローンの飛行の安定性等のために軸が同一直線上にあり、かつ、互いに反対方向に回転する。
【0032】
ノズル103-1、103-2、103-3、103-4は、散布物を下方に向けて散布するための手段であり4機備えられている。なお、本願明細書において、散布物とは、農薬、除草剤、液肥、殺虫剤、種、および、水などの圃場に散布される液体または粉体を一般的に指すこととする。
【0033】
タンク104は散布物を保管するためのタンクであり、重量バランスの観点からドローン100の重心に近い位置でかつ重心より低い位置に設けられている。ホース105-1、105-2、105-3、105-4は、タンク104と各ノズル103-1、103-2、103-3、103-4とを接続する手段であり、硬質の素材から成り、当該ノズルを支持する役割を兼ねていてもよい。ポンプ106は、散布物をノズルから吐出するための手段である。
【0034】
図6に本願発明に係るドローン100の飛行制御システムの全体概念図を示す。本図は模式図であって、縮尺は正確ではない。同図において、ドローン100、操作器401、基地局404およびサーバ405が移動体通信網400を介して互いに接続されている。これらの接続は、移動体通信網400に代えてWi-Fiによる無線通信を行ってもよいし、一部又は全部が有線接続されていてもよい。また、構成要素間において、移動体通信網400に代えて、又は加えて、直接接続する構成を有していてもよい。
【0035】
ドローン100および基地局404は、GPS等のGNSSの測位衛星410と通信を行い、ドローン100および基地局404座標を取得する。ドローン100および基地局404が通信する測位衛星410は複数あってもよい。
【0036】
操作器401は、使用者の操作によりドローン100に指令を送信し、また、ドローン100から受信した情報(たとえば、位置、散布物の貯留量、電池残量、カメラ映像等)を表示するための手段であり、コンピューター・プログラムを稼働する一般的なタブレット端末等の携帯情報機器によって実現されてよい。操作器401は、ユーザインターフェース装置としての入力部および表示部を備える。本願発明に係るドローン100は自律飛行を行なうよう制御されるが、離陸や帰還などの基本操作時、および、緊急時にはマニュアル操作が行なえるようになっていてもよい。携帯情報機器に加えて、緊急停止専用の機能を有する非常用操作器(図示していない)を使用してもよい。非常用操作器は緊急時に迅速に対応が取れるよう大型の緊急停止ボタン等を備えた専用機器であってもよい。さらに、操作器401とは別に、操作器401に表示される情報の一部又は全部を表示可能な小型携帯端末、例えばスマートホンがシステムに含まれていてもよい。小型携帯端末は、例えば基地局404と接続されていて、基地局404を介してサーバ405からの情報等を受信可能である。
【0037】
圃場403は、ドローン100による散布の対象となる田圃や畑等である。実際には、圃場403の地形は複雑であり、事前に地形図が入手できない場合、あるいは、地形図と現場の状況が食い違っている場合がある。通常、圃場403は家屋、病院、学校、他の作物圃場、道路、鉄道等と隣接している。また、圃場403内に、建築物や電線等の侵入者が存在する場合もある。
【0038】
基地局404は、RTK-GNSS基地局として機能し、ドローン100の正確な位置を提供できるようになっている。また、Wi-Fi通信の親機機能等を提供する装置であってもよい。Wi-Fi通信の親機機能とRTK-GNSS基地局が独立した装置であってもよい。また、基地局404は、3G、4G、およびLTE等の移動通信システムを用いて、サーバ405と互いに通信可能であってもよい。基地局404およびサーバ405は、営農クラウドを構成する。
【0039】
サーバ405は、典型的にはクラウドサービス上で運営されているコンピュータ群と関連ソフトウェアであり、操作器401と携帯電話回線等で無線接続されていてもよい。サーバ405は、ハードウェア装置により構成されていてもよい。サーバ405は、ドローン100が撮影した圃場403の画像を分析し、作物の生育状況を把握して、飛行ルートを決定するための処理を行ってよい。また、保存していた圃場403の地形情報等をドローン100に提供してよい。加えて、ドローン100の飛行および撮影映像の履歴を蓄積し、様々な分析処理を行ってもよい。
【0040】
小型携帯端末は例えばスマートホン等である。小型携帯端末の表示部には、ドローン100の運転に関し予測される動作の情報、より具体的にはドローン100が発着地点406に帰還する予定時刻や、帰還時に使用者が行うべき作業の内容等の情報が適宜表示される。また、小型携帯端末からの入力に基づいて、ドローン100の動作を変更してもよい。
【0041】
通常、ドローン100は圃場403の外部にある発着地点から離陸し、圃場403に散布物を散布した後に、あるいは、散布物の補充や充電等が必要になった時に発着地点に帰還する。発着地点から目的の圃場403に至るまでの飛行経路(侵入経路)は、サーバ405等で事前に保存されていてもよいし、使用者が離陸開始前に入力してもよい。発着地点は、ドローン100に記憶されている座標により規定される仮想の地点であってもよいし、物理的な発着台があってもよい。
【0042】
図7に本願発明に係る散布用ドローンの実施例の制御機能を表したブロック図を示す。フライトコントローラー501は、ドローン全体の制御を司る構成要素であり、具体的にはCPU、メモリー、関連ソフトウェア等を含む組み込み型コンピュータであってよい。フライトコントローラー501は、操作器401から受信した入力情報、および、後述の各種センサーから得た入力情報に基づき、ESC(Electronic Speed Control)等の制御手段を介して、モーター102-1a、102-1b、102-2a、102-2b、102-3a、102-3b、104-a、104-bの回転数を制御することで、ドローン100の飛行を制御する。モーター102-1a、102-1b、102-2a、102-2b、102-3a、102-3b、104-a、104-bの実際の回転数はフライトコントローラー501にフィードバックされ、正常な回転が行なわれているかを監視できる構成になっている。あるいは、回転翼101に光学センサー等を設けて回転翼101の回転がフライトコントローラー501にフィードバックされる構成でもよい。
【0043】
フライトコントローラー501が使用するソフトウェアは、機能拡張・変更、問題修正等のために記憶媒体等を通じて、または、Wi-Fi通信やUSB等の通信手段を通じて書き換え可能になっている。この場合において、不正なソフトウェアによる書き換えが行なわれないように、暗号化、チェックサム、電子署名、ウィルスチェックソフト等による保護が行われている。また、フライトコントローラー501が制御に使用する計算処理の一部が、操作器401上、または、サーバ405上や他の場所に存在する別のコンピュータによって実行されてもよい。フライトコントローラー501は重要性が高いため、その構成要素の一部または全部が二重化されていてもよい。
【0044】
フライトコントローラー501は、通信機530を介して、さらに、移動体通信網400を介して操作器401とやり取りを行ない、必要な指令を操作器401から受信すると共に、必要な情報を操作器401に送信できる。この場合に、通信には暗号化を施し、傍受、成り済まし、機器の乗っ取り等の不正行為を防止できるようにしておいてもよい。基地局404は、移動体通信網400を介した通信機能に加えて、RTK-GPS基地局の機能も備えている。RTK基地局404の信号とGPS等の測位衛星410からの信号を組み合わせることで、フライトコントローラー501により、ドローン100の絶対位置を数センチメートル程度の精度で測定可能となる。フライトコントローラー501は重要性が高いため、二重化・多重化されていてもよく、また、特定のGPS衛星の障害に対応するため、冗長化されたそれぞれのフライトコントローラー501は別の衛星を使用するよう制御されていてもよい。
【0045】
6軸ジャイロセンサー505はドローン機体の互いに直交する3方向の加速度を測定する手段であり、さらに、加速度の積分により速度を計算する手段である。6軸ジャイロセンサー505は、上述の3方向におけるドローン機体の姿勢角の変化、すなわち角速度を測定する手段である。地磁気センサー506は、地磁気の測定によりドローン機体の方向を測定する手段である。気圧センサー507は、気圧を測定する手段であり、間接的にドローンの高度も測定することもできる。レーザーセンサー508は、レーザー光の反射を利用してドローン機体と地表との距離を測定する手段であり、IR(赤外線)レーザーであってもよい。ソナー509は、超音波等の音波の反射を利用してドローン機体と地表との距離を測定する手段である。これらのセンサー類は、ドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよい。また、機体の傾きを測定するためのジャイロセンサー(角速度センサー)、風力を測定するための風力センサーなどが追加されていてもよい。また、これらのセンサー類は、二重化または多重化されていてもよい。同一目的複数のセンサーが存在する場合には、フライトコントローラー501はそのうちの一つのみを使用し、それが障害を起こした際には、代替のセンサーに切り替えて使用するようにしてもよい。あるいは、複数のセンサーを同時に使用し、それぞれの測定結果が一致しない場合には障害が発生したと見なすようにしてもよい。
【0046】
流量センサー510は散布物の流量を測定するための手段であり、タンク104からノズル103に至る経路の複数の場所に設けられている。液切れセンサー511は散布物の量が所定の量以下になったことを検知するセンサーである。
【0047】
生育診断カメラ512aは、圃場403を撮影し、生育診断のためのデータを取得する手段である。生育診断カメラ512aは例えばマルチスペクトルカメラであり、互いに波長の異なる複数の光線を受信する。当該複数の光線は、例えば赤色光(波長約650nm)と近赤外光(波長約774nm)である。また、生育診断カメラ512aは、可視光線を受光するカメラであってもよい。
【0048】
病理診断カメラ512bは、圃場403に生育する作物を撮影し、病理診断のためのデータを取得する手段である。病理診断カメラ512bは、例えば赤色光カメラである。赤色光カメラは、植物に含有されるクロロフィルの吸収スペクトルに対応する周波数帯域の光量を検出するカメラであり、例えば波長650nm付近の帯域の光量を検出する。病理診断カメラ512bは、赤色光と近赤外光の周波数帯域の光量を検出してもよい。また、病理診断カメラ512bとして、赤色光カメラおよびRGBカメラ等の可視光帯域の少なくとも3波長の光量を検出する可視光カメラの両方を備えていてもよい。なお、病理診断カメラ512bはマルチスペクトルカメラであってもよく、波長650nm乃至680nm付近の帯域の光量を検出するものとしてもよい。
【0049】
植物に発生する病気には、葉、葉鞘、茎又は穂に病斑が発生するものが知られている。病斑が発生する病気は、例えば、いもち病、ごま葉枯病、もん枯れ病、しま葉枯病等である。病斑の発生機序としては、まずクロロフィルが変質、分解又は欠乏し、次いで当該部位が枯れて視認できる病斑となり、その後病斑が拡大する。そのため、マルチスペクトルカメラによれば、視認できない段階の初期の病斑の画像を取得することができる。
【0050】
図13は、いもち病に感染した稲の葉を赤色光カメラで撮影して得られる葉の撮影画像のイメージ図を示している。赤色光カメラで撮影を行うと、赤色の光を吸収するクロロフィルが存在する部分は黒く映り、いもち病等の病気が発生したことにより葉のクロロフィルが破壊されている部分は、赤色の光を吸収しないため白く映る。いもち病等の病気が発生した場合には、葉のクロロフィルが斑点状に破壊されるため、図13のように葉Lの中に斑点L1が現れた画像が得られる。
【0051】
また、可視光カメラによれば、視認できる病斑の画像、および葉、茎および穂の色および形状を解析可能な画像を取得することができる。
【0052】
なお、生育診断カメラ512aおよび病理診断カメラ512bは、1個のハードウェア構成により実現されていてもよい。
【0053】
障害物検知カメラ513はドローン侵入者を検知するためのカメラであり、画像特性とレンズの向きが生育診断カメラ512aおよび病理診断カメラ512bとは異なるため、生育診断カメラ512aおよび病理診断カメラ512bとは別の機器である。スイッチ514はドローン100の使用者402が様々な設定を行なうための手段である。障害物接触センサー515はドローン100、特に、そのローターやプロペラガード部分が電線、建築物、人体、立木、鳥、または、他のドローン等の侵入者に接触したことを検知するためのセンサーである。なお、障害物接触センサー515は、6軸ジャイロセンサー505で代用してもよい。カバーセンサー516は、ドローン100の操作パネルや内部保守用のカバーが開放状態であることを検知するセンサーである。注入口センサー517はタンク104の注入口が開放状態であることを検知するセンサーである。
【0054】
これらのセンサー類はドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよく、二重化・多重化してもよい。また、ドローン100外部の基地局404、操作器401、または、その他の場所にセンサーを設けて、読み取った情報をドローンに送信してもよい。たとえば、基地局404に風力センサーを設け、風力・風向に関する情報を移動体通信網400経由又はWi-Fi通信経由でドローン100に送信するようにしてもよい。
【0055】
フライトコントローラー501はポンプ106に対して制御信号を送信し、吐出量の調整や吐出の停止を行なう。ポンプ106の現時点の状況(たとえば、回転数等)は、フライトコントローラー501にフィードバックされる構成となっている。
【0056】
LED107は、ドローンの操作者に対して、ドローンの状態を知らせるための表示手段である。LEDに替えて、または、それに加えて液晶ディスプレイ等の表示手段を使用してもよい。ブザーは、音声信号によりドローンの状態(特にエラー状態)を知らせるための出力手段である。通信機530は、3G、4G、およびLTE等の移動体通信網400と接続されており、移動体通信網400を介して基地局、サーバで構成される営農クラウド、操作器と通信可能に接続される。通信機に替えて、または、それに加えて、Wi‐Fi、赤外線通信、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)、NFC等の他の無線通信手段、または、USB接続などの有線通信手段を使用してもよい。スピーカー520は、録音した人声や合成音声等により、ドローンの状態(特にエラー状態)を知らせる出力手段である。天候状態によっては飛行中のドローン100の視覚的表示が見にくいことがあるため、そのような場合には音声による状況伝達が有効である。警告灯521はドローンの状態(特にエラー状態)を知らせるストロボライト等の表示手段である。これらの入出力手段は、ドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよく、二重化・多重化してもよい。
【0057】
●制御システムの概要
図8に示すように、圃場管理システム1000は、例えばドローン100、ユーザインターフェース装置200、測定器500、診断装置600および計画装置700を含むシステムであり、これらはネットワークNWを通じて互いに通信可能に接続されている。診断装置600および計画装置700は、ハードウェア構成であってもよいし、サーバ405上に構成されていてもよい。ドローン100、ユーザインターフェース装置200、診断装置600および計画装置700は、無線で互いに接続されていてもよいし、一部又は全部が有線により接続されていてもよい。診断装置600および計画装置700は、本発明にかかる散布管理装置を構成する。
【0058】
なお、図8に示した構成は例示であり、ある構成要素が別の構成要素を包含していてもよいし、各構成要素が有する機能部は、別の構成要素が有していてもよい。例えば、診断装置600および計画装置700の機能の一部および全部がドローン100に搭載されていてもよい。
【0059】
ユーザインターフェース装置200は、作業者による入力部および表示部を備えていればよく、操作器401の機能により実現されてもよい。また、ユーザインターフェース装置200は、パーソナルコンピュータであってもよく、パーソナルコンピュータにインストールされたWebブラウザを介して、Web上のUIに情報を入力し、表示させてもよい。
【0060】
●ドローンの機能部
ドローン100は、情報処理を実行するためのCPU(Central Processing Unit)などの演算装置、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などの記憶装置を備え、これによりソフトウェア資源として少なくとも、飛行制御部1001、散布制御部1002、生育情報取得部1003および病理情報取得部1004を有する。
【0061】
飛行制御部1001は、モーター102を稼働させ、ドローン100の飛行および離着陸を制御する機能部である。飛行制御部1001は、例えばフライトコントローラー501によって実現され、飛行高度、飛行速度、および飛行経路を制御して、ドローン100を圃場の上空に飛行させる。
【0062】
散布制御部1002は、ポンプ106を稼働させ、ノズル103-1、103-2、103-3、103-4からの散布物の散布を制御する機能部である。散布制御部1002は、例えばフライトコントローラー501によって実現される。
【0063】
生育情報取得部1003は、ドローン100が圃場の上空を飛行中に、当該圃場に生育する作物の生育情報を取得する機能部である。生育情報は、作物の生育状態を診断するための、作物の画像を含む。
【0064】
窒素吸収量により葉の葉緑素(クロロフィルa、クロロフィルb、カロテノイド等)の密度が変化することを利用し、葉の反射光の特性を分析することで、葉緑素の密度を推定して葉への窒素吸収量を推定し、この窒素吸収量に基づいて作物の生長度を測定できることが知られている。そこで、生育情報取得部1003は、圃場403から得られる日光の反射光を受信することで、作物の生育状況の分析に用いるデータを取得する。
【0065】
生育情報取得部1003は、生育診断カメラ512aにより作物の画像を取得する。生育情報取得部1003は、ビームスプリッタを有し、光源から所定の周波数範囲の光線のみを取得する。生育情報取得部1003が受信する光線は、日光を入射光とした場合の主に作物から反射される反射光を含む。ドローン100は、飛行制御部1001により圃場403を飛行しながら、生育情報取得部1003により圃場403から反射される反射光を受信することで、圃場403に生育する作物の生育情報を取得する。
【0066】
なお、生育情報取得部1003は、これに代えて、又はこれに加えて、分げつ数、茎又は稲穂の色、稲穂の量、もしくは茎の長さ又はたわみ量等の視覚的な情報を取得してもよい。この視覚的な情報のみを取得する場合、生育情報取得部1003は、可視光線を受光可能なカメラを利用することができる。
【0067】
病理情報取得部1004は、ドローン100が圃場の上空を飛行中に、当該圃場における作物の病気の罹患情報、すなわち病理情報を取得する機能部である。病理情報取得部1004は、病理診断カメラ512bにより、作物の病理状態を診断するための、作物の画像を取得する。病理情報取得部1004は、病斑が表れる部位、例えば葉、葉鞘、茎及び穂の少なくともいずれかの画像を取得する。また、病理情報取得部1004は、茎又は穂の色又は形を撮影してもよい。病気により、変色又は変形の可能性があるためである。
【0068】
なお、本実施形態においては、ドローン100が散布制御部1002、生育情報取得部1003および病理情報取得部1004を備えている構成としたが、本発明の技術的思想はこれに限られるものではなく、ドローン100は、少なくとも飛行制御部1001および病理情報取得部1004を備えていればよい。また、散布制御部1002は、圃場管理システム1000が有する陸上走行機械が有していてもよい。
【0069】
●診断装置の機能部
図8に示すように、診断装置600は、ドローン100が取得する情報に基づいて、当該ドローン100が飛行する圃場403に生育する植物、すなわち作物を診断する機能部である。診断装置600は、情報処理を実行するためのCPU(Central Processing Unit)などの演算装置、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などの記憶装置を備え、これによりソフトウェア資源として少なくとも、病歴記憶部601、生育診断部602、気候情報取得部603、斑点測定部604および病理診断部605を備える。
【0070】
病歴記憶部601は、過去に当該圃場403で発生した病気の病歴を記憶する機能部である。病歴は、圃場403内における病気の発生エリア、発生した病気の種類、および発生時期の少なくともいずれかを含む。また、病歴は、当該発生時期における発生エリアの気候情報を含んでいてもよい。
【0071】
病歴記憶部601は、当該圃場403に実施した、病気への対応実績を記憶してもよい。対応実績は、発生エリアへの薬剤散布、病理葉又は病理株の除去を含む。対応実績は、散布された薬剤の種類又は濃度を含んでいてもよい。病歴記憶部601は、計画装置700により決定された対応策を受信し、対応実績として記憶してよい。また、病歴および対応実績は、例えば作業者により、ユーザインターフェース装置200から入力されてもよい。
【0072】
生育診断部602は、生育情報取得部1003により取得される生育情報に基づいて、当該圃場における作物の生育状況を診断する機能部である。生育診断部602は、赤色光(波長約650nm)と近赤外光(波長約774nm)の反射光による画像に基づいてNDVI(Normalized Difference Vegetation Index)を計算し、赤色光の吸収率を求める。また、NDVIにより、有効受光面積を推定することができる。一般に、NDVIは(IR-R)/(IR+R)という計算式により求められる(ここで、IRは近赤外光の反射率、Rは赤色光の反射率である。)。IRとRは圃場の画像を周波数帯域毎に分析することにより得られる。
【0073】
生育診断部602は、生育情報取得部1003が受光する光線に対してハード的又はソフト的に周波数フィルタを掛けることで、生育状況に関連のある所定の周波数範囲の光線の光量、例えばパワースペクトル密度を取得する。なお、光量の計算処理は、生育情報取得部1003で行い、生育診断部602は受信される光量に基づいて生育状況を診断してもよい。
【0074】
生育診断部602は、あらかじめ記憶された、所定の周波数帯域における光量と生育量とを対応付ける情報に基づいて、当該圃場の生育状況を診断する。生育診断部602は、生育状況に基づいて、当該圃場における収穫量を予測してもよい。
【0075】
気候情報取得部603は、圃場403の気候情報を取得する機能部である。気候情報は、温度、湿度および風速の少なくともいずれかの情報を含む。また、気候情報は、風向きの情報を含んでいてもよい。気候情報取得部603は、例えば圃場403に配設された測定器500、例えば温度計、湿度計、および風速計からそれぞれの計測値を受信してもよい。また、測定器500が有する各構成の一部又は全部は、ドローン100が備えていてもよい。
【0076】
気候情報取得部603は、圃場管理システム1000の外部から発信される情報を受信してもよい。気候情報取得部603は、気象衛星からの情報を取得してもよい。気象衛星は、たとえばひまわりである。気候情報取得部603は、気象庁等の各種機関、特に公的機関により加工された情報(公示情報)を気候情報として取得してもよい。
【0077】
斑点測定部604は、病理情報取得部1004により取得される画像に基づいて、作物に発生している斑点の様子を測定する機能部である。斑点測定部604は、当該画像に基づいて、作物に発生する斑点の大きさ、密度、および数の少なくともいずれかのパラメータを測定する。すなわち、斑点測定部604は、斑点計数部604a、斑点サイズ測定部604bおよび斑点密度測定部604cの少なくともいずれかを備える。
【0078】
斑点計数部604aは、画像解析により植物の葉、茎および穂の少なくともいずれかに発生している斑点を計数する機能部である。斑点計数部604aは、斑点数を、発生している部位ごとに計数してもよい。発生部位ごとの計数は、例えば葉、葉鞘および茎を区別して計数する。また、葉先、葉の中腹および元を区別して計数してもよい。斑点サイズ測定部604bは、画像解析により斑点の大きさを測定する機能部である。斑点密度測定部604cは、所定領域あたりに発生している斑点の個数、すなわち斑点の密度を測定する機能部である。斑点密度測定部604cは、斑点間の距離を測定することで斑点の密度を求めてもよい。
【0079】
病理診断部605は、当該圃場における植物の病気の罹患状況を診断する機能部である。病理診断部605は、斑点の大きさ、斑点密度、および斑点数の少なくともいずれかのパラメータの測定結果に基づいて、病気か否かの病理判定を行う。すなわち、病理診断部605は、斑点が所定以上の大きさであるとき、病気である旨判定してもよい。この場合、例えば斑点の面積が100平方ミリメートル以上であることを条件として病気であると判定することができる。病理診断部605は、斑点密度が所定以上であるとき、病気である旨判定してもよい。この場合、例えば斑点の間の距離が10cm以下である場合に、病気が発生していると判断してもよい。病理診断部605は、斑点数が所定以上であるとき、病気である旨判定してもよい。この場合、例えば、斑点の面積が4平方ミリメートル以上となる斑点の数が、所定領域辺りに10個以上である場合に病気が発生していると判断してもよい。または、病理診断部605は、斑点の大きさ、斑点密度、および斑点数のうち複数のパラメータに基づいて病理判定を行ってもよい。
【0080】
斑点の大きさ、斑点密度、および斑点数のうち1つ以上のパラメータに基づいて病理判定を行う場合、一つのパラメータの値、もしくは複数のパラメータの値の組合せにより尤度分布表に基づいて病理発生尤度を生成することも可能である。この場合には、生成された病理発生尤度の値を出力してもよいし、生成された病理発生尤度の値が所定の閾値を超えた場合に病理発生を検知した旨を出力してもよいし、病理発生尤度と前記病理発生検知の情報の双方を出力してもよい。
【0081】
病理診断部605は、植物の株ごとに病理診断してもよい。また、病理診断部605は、圃場403を複数の領域に細分化し、当該領域ごとに病理診断してもよい。病理診断部605は、例えば圃場403をメッシュ状に細分化する。各領域は、例えば1m四方の矩形状である。さらに、病理診断部605は、病理診断カメラ512bにより撮影される画像ごとに病理診断してもよい。
【0082】
病理診断部605は、斑点の大きさ、斑点密度又は斑点数に基づいて、植物が罹患している病気の種類を診断してもよい。病理診断部605は、斑点が発生している部位に基づいて病気の種類を診断してもよい。例えば、病理診断部605は、病気の種類と、発生する斑点の形状、大きさ、密度、斑点数又は斑点発生部位もしくは範囲とを対応付けて記憶していて、当該情報を参照して病気の種類を診断する。
【0083】
また、病理診断部605は、病歴記憶部601に記憶されている過去の病歴情報に基づいて、病理判定を行ってもよい。例えば、昨年の同エリアに病気の発生履歴がある場合、当該エリアに病気が発生している蓋然性が高いと判定してもよい。具体的には、斑点の測定結果の一部又は全部が第1閾値を満たしていない場合にも、発生履歴に基づいて病気である旨判定してもよい。また、斑点の測定結果につき当該第1閾値より小さい第2閾値をあらかじめ規定し、測定結果が第2閾値以上第1閾値未満であって、かつ発生履歴がある場合には、当該エリアに病気が発生している旨判定してもよい。又は、過去の病歴情報を考慮して上述した病理発生尤度を計算するようにしてもよい。
【0084】
病理診断部605は、気候情報に基づいて病理判定を行ってもよい。具体的には、温度が低く、湿度が高く、風速が低いほど、病気が発生している蓋然性が高いと判定してもよい。当該条件は、病気が発生し、進行しやすい気候であることが知られているためである。病理診断部605は、温度、湿度および風速の少なくともいずれかに関し閾値を有し、取得される気候情報が閾値以上であるとき、斑点の測定結果の一部又は全部が第1閾値を満たしていない場合にも、病気である旨判定してもよい。又は、気候情報を考慮して上述した病理発生尤度を計算するようにしてもよい。
【0085】
病理診断部605は、病気の進行具合を判定してもよい。進行具合は、例えば初期、中期および後期の3段階であるが、2段階でもよいし、さらに多段階に細分化されてもよい。また、病気の旨診断されない状態であっても、病気の可能性がある状態を「病理発生疑惑」状態として判定してもよい。病理診断部605は、斑点の形状および大きさの少なくともいずれかに基づいて、病気の進行具合を判定する。斑点の形状は、例えば斑点の長さである。斑点の長さは、長円状の斑点の短径および長径を取得し、短径と長径との比により算出してもよい。病気が進行するにつれ、斑点は伸長することが知られているためである。病理診断部605は、斑点の長さが所定の第3閾値以上である場合、最も発生初期の段階よりも進行した状態、例えば「中期」又は「後期」と判定する。
【0086】
病理診断部605は、可視光カメラにより得られる情報に基づいて、病気の進行具合を判定してもよい。例えば、クロロフィルが破壊されて病斑が発生した後、病気が進行するにつれ、病斑の周辺が黒く変色する症状が知られている。可視光カメラによれば当該変色領域を検出することができる。病斑周辺の変色は病斑発生の後に生じるため、病理診断部605は、当該変色領域が検出される場合、最も発生初期の段階よりも進行した状態、例えば「中期」又は「後期」と判定する。
【0087】
なお、病理診断部605は、植物の生育状況を病理判定又は病気の進行具合の判定に利用してもよい。例えば、病理診断部605は、特定の生育状況の場合に罹患する可能性が高い病気の判定にあたって、特定の生育状況であることを参照して病気である旨判定してよい。
【0088】
また、病理診断部605は、茎又は穂の色又は形に基づいて、病理診断を行ってもよい。
【0089】
診断装置600が病理判定を行う対象植物は水稲を想定しているが、本発明の技術範囲はこれに限られず、主に上空からの撮影により病理診断可能な別の植物であってもよい。診断装置600は、クロロフィルを有する葉、茎および果実等の画像に基づいて、病理診断が可能である。診断装置600は、複数種類の植物の病理判定を行ってもよく、植物の種類ごとに異なる病理判定基準を記憶していて、植物の種類ごとに異なる判定基準により病理判定を行ってもよい。
【0090】
●計画装置の機能部
図8に示すように、計画装置700は、情報処理を実行するためのCPU(Central Processing Unit)などの演算装置、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などの記憶装置を備え、これによりソフトウェア資源として少なくとも、対策決定部701および結果出力部704を有する。
【0091】
対策決定部701は、病理診断の結果に基づいて、病気への対応要否を決定する機能部である。対策決定部701は、株ごと又は領域ごとに病気への対応要否を決定する。対策決定部701は、診断装置600により病気である旨判定されているとき、対応策を講じることを決定する。
【0092】
対策決定部701は、病気の進行具合に基づいて、圃場に行うべき対応策を決定する。対応策は、例えば、株元目視確認指示、再撮影、静観、農薬散布、病理葉の除去、病理株の除去、および病理株発生エリアの株の除去の少なくともいずれかを含む。
【0093】
株元目視確認指示は、株元を目視確認するよう促す対策である。圃場403においては、株元周辺の方が葉周辺より湿度が高く、病気が発生する確率が高い一方、株元は上方から見えにくいため、上空からの撮影では病気を発見できない場合がある。株元目視確認指示によれば、ドローン100による発見が難しい病態であっても、初期段階に病気を発見することができる。
【0094】
農薬散布は、病気が発見された植物を含む所定領域に農薬を散布する作業である。散布される領域、農薬の種類および濃度は、後述する散布態様決定部702により決定される。
【0095】
病理葉の除去は、病気になっている葉、すなわち病理葉のみを取る作業である。病理株の除去は、病気になっている株、すなわち病理株を取る作業である。病理株発生エリアの株の除去は、病理株を含む所定エリアに生育する作物をすべて除去する作業である。
【0096】
病気の除去にあたっては、病気が進行するにつれ重度な対応策が必要となる。具体的には、病気が進行するにつれ、株元目視確認指示、再撮影、静観、農薬散布、病理葉の除去、病理株の除去、病理株発生エリアの株の除去の順に推奨される。なお、株元目視確認指示、再撮影、静観は順不同であり、対応策として同時に提示されてもよい。例えば、対策決定部701は、病気の進行具合を「初期」および「後期」を含む少なくとも2段階以上で判断する機能を備える場合において、進行具合が「初期」の場合に「静観」を出力し、進行具合が初期よりも進行した「後期」の場合に「農薬散布」、「病理葉の除去」又は「病理株の除去」を出力する。
【0097】
また、対策決定部701は、進行具合が「初期」の場合に「農薬散布」を出力し、進行具合が「後期」の場合に「病理葉の除去」又は「病理株の除去」を出力するものとしてもよい。
【0098】
さらに、対策決定部701は、進行具合が「初期」の場合に「病理葉の除去」を出力し、進行具合が「後期」の場合に「病理株の除去」を出力するものとしてもよい。
【0099】
対策決定部701は、病気の進行具合を「初期」、「中期」および「後期」を含む少なくとも3段階以上で判断する場合において、進行具合が「初期」の場合に「静観」を出力し、進行具合が初期よりも進行した「中期」の場合に「農薬散布」を出力し、進行具合が中期よりも進行した「後期」の場合に「病理葉の除去」又は「病理株の除去」を出力してもよい。
【0100】
また、対策決定部701は、進行具合が「初期」の場合に「農薬散布」を出力し、進行具合が「中期」の場合に「病理葉の除去」を出力し、進行具合が「後期」の場合に「病理株の除去」を出力してもよい。
【0101】
対策決定部701は、気候情報を参照して、対応策を決定してもよい。天候により、病気進行せず、周りの作物に広がらない場合があるためである。例えば、対策決定部701は、病気が進行しにくい気候条件であるとき、判定された進行具合に対応付けられている対応策より軽度な対応策を出力してもよい。より具体的には、対策決定部701は、湿度が所定以下、温度が所定以上、および風速が所定以上の少なくともいずれかの場合、判定された進行具合に対応付けられている対策より軽度な対応策を出力してもよい。すなわち、例えば、対策決定部701は、進行具合が「初期」と判定され、「初期」に「農薬散布」が対応付けられている態様において、上述の条件を満たす場合には「静観」を出力してもよい。病気が治癒するのは初期段階のみであると仮定して、気候情報が所定条件を満たす場合に、進行具合が初期である場合にのみ、より軽度な対応策を出力するものとしてもよい。この構成によれば、病気の特性を利用して、適切な対応策をより正確に決定できる。特に、過剰な対策を抑制し、過度な農薬散布や、過度な除去による収量の減少を予防できる。
【0102】
また、対策決定部701は、気候情報を参照し、病気が進行しやすい気候条件であるとき、判定された進行具合に対応付けられている対応策より重度な対応策を出力してもよい。より具体的には、対策決定部701は、湿度が所定以上、温度が所定以下、および風速が所定以下の少なくともいずれかの場合、判定された進行具合に対応付けられている対策より重度な対応策を出力してもよい。この構成によれば、病気の特性を利用して、病気の拡大をより効果的に防止できる。
【0103】
対策決定部701によれば、圃場403の病気拡散を止めるために適した対策を決定できる。また、対策決定部701によれば、病気の進行具合に応じて適切な対応策を決定することができるので、過剰な農薬散布を防ぐことができる。ひいては、農薬コストを抑えることができ、農薬量の少ない作物を生育させることができる。また、対策決定部701によれば、適切な病理葉の除去および病理株の除去が行えるため、過剰な除去作業を防ぐことができる。ひいては、除去作業の人件費を抑えることができる。また、葉および株が過剰に除去されることがないから、収量を維持できる。
【0104】
対策決定部701は、散布態様決定部702および対策時期算出部703を備える。
【0105】
散布態様決定部702は、圃場403に薬剤を散布する態様を決定する機能部である。散布態様決定部702は、散布エリア決定部702a、農薬決定部702bおよび濃度決定部702cを有する。
【0106】
散布エリア決定部702aは、病気と判定された病理株を含む所定範囲を散布エリアとして決定する機能部である。散布エリア決定部702aは、病理株の周辺環境を示す情報および病理株の態様の少なくともいずれか1つに基づいて、散布エリアを決定する。病理株の周辺環境を示す情報は、風速情報又は風向情報を含む。また、病理株の周辺環境を示す情報は、温度又は湿度を含んでもよい。病理株の態様を示す情報は、病理株における病気の進行具合を含む。なお、病理株の態様は、発生している斑点の大きさ、密度、又は数を含んでいてもよい。
【0107】
散布エリア決定部702aは、病気が広がるリスクの高いエリアに農薬散布を行う。植物が罹患する病気の原因として、菌の繁殖がある。菌の胞子は風に飛ばされて移動することから、風速が大きいほど、広範囲に胞子が広がっていると推定される。また、風下に胞子が広がっていると推定される。さらに、発見された病理株における病気が進行している場合、病気の発生から時間が経過していると推定され、すなわち広範囲に胞子が広がっていると推定される。
【0108】
そこで、散布エリア決定部702aは、病理株のある圃場およびその周辺における風速情報に基づいて農薬散布を行う病理株からの距離を決定する。すなわち、散布エリア決定部702aは、風速が大きいほど、農薬散布を行う病理株からの距離を大きくする。散布エリア決定部702aは、病気の発生前後における風速情報に基づいて、農薬散布を行う病理株からの距離を決定してもよい。また、散布エリア決定部702aは、風向情報に基づいて農薬散布を行うエリアを決定する。すなわち、散布エリア決定部702aは、病理株から風下に向かって広がるエリアに農薬散布を行うことを決定する。言い換えれば、散布エリア決定部702aは、風下方向における病理株から散布エリア端までの距離を、風上方向における病理株から散布エリア端までの距離よりも長くする。散布エリア決定部702aは、病気の発生前後における風向情報に基づいて、農薬散布を行うエリアを決定してもよい。風速情報および風向情報は、測定器500からの情報を受信してよい。
【0109】
散布エリア決定部702aは、発見された病理株における病気の進行具合に基づいて、農薬散布を行うエリアを決定する。すなわち、散布エリア決定部702aは、病理株の病気が進行しているほど、散布するエリアの面積を大きくする。言い換えれば、散布エリア決定部702aは、病気が進行しているほど、病理株から散布エリア端までの距離を長くする。
【0110】
散布エリア決定部702aは、病気の進行具合に基づいて、病気発生からの経過時間を推定し、経過時間に基づいて農薬散布を行うエリアを決定してもよい。散布エリア決定部702aは、経過時間が長いほど、散布するエリアを大きくする。経過時間の推定は、進行具合の他、温度、湿度、および風速情報を参照して行ってもよい。例えば、温度が低く、湿度が高く、又は風速が低いほど、病気が速く進行したものとして、病気発生からの経過時間を短く推定してもよい。
【0111】
なお、対策決定部701は、散布エリア決定部702aが散布を決定するエリアを、株の除去を要するエリア、すなわち「病理株発生エリアの株の除去」における対象範囲の情報として決定してもよい。
【0112】
散布エリア決定部702aが散布を決定するエリアは、ドローン100の飛行範囲に限られず、飛行範囲周辺の領域も含んでよい。当該エリアは、当該圃場管理システム1000を利用する作業者が直接的に管理する圃場に関わらず、別の作業者の管理圃場であってもよい。地域の圃場の包括管理者により散布を要するエリアの情報が管理され、包括管理者から各作業者に通知されてもよい。また、決定される散布エリアの情報を、連携する別のシステムに出力してもよい。
【0113】
農薬決定部702bは、病気の進行具合に応じて、農薬の種類を決定する機能部である。農薬決定部702bは、病気の進行具合と、適した農薬とを対応付けるテーブルを有し、当該テーブルを参照して農薬の種類を決定してよい。なお、本説明において、農薬は、病気の対策として散布が有効な各種液体、粉体および粒剤などを広く含む概念である。
【0114】
濃度決定部702cは、病気の進行具合に応じて、散布する農薬の濃度を決定する機能部である。濃度決定部702cは、病気が進行しているほど、高濃度の農薬を散布することを決定する。なお、高濃度の農薬を散布するにあたり、ドローン100により散布する場合においては、高濃度の農薬をあらかじめタンク104に充填して散布する他、標準濃度の散布時よりも低速で飛行しながら散布する、ノズル103からの吐出量を多くする、同一箇所を複数回ずつ飛行して散布する、といった飛行態様の変更により、圃場における農薬の濃度を担保してもよい。この場合、濃度決定部702cは、散布濃度に応じたドローン100の飛行態様を決定する機能を有していてもよい。
【0115】
対策時期算出部703は、対応策を講じるべき期限を算出する機能部である。作物の病気は日ごとに進行し、初期段階で対応策を講じることで、軽度な対策で病気を除去することができる。例えば、病気の発生から所定時間以内に対策を講じるとよい。そこで、対策時期算出部703は、病気の進行具合に基づいて、病気発生からの経過時間を推定し、病気発生時点に所定時間を足した時点を対策期限として算出する。対策期限は、例えば病気発生から48時間以内である。また、対策時期算出部703は、ドローン100の飛行時期を決定してもよい。対策時期算出部703は、ドローン100の飛行計画を参照し、飛行が予定されているタイミングで対策することを決定してもよい。対策時期算出部703は、飛行するタイミングを新たに決定し、作業者に促してもよい。
【0116】
結果出力部704は、対応策の決定結果を出力する機能部である。結果出力部704は、病気の有無の判定結果、病気の進行具合、推奨される対応策、および対応策を講じるべき対策期限の少なくともいずれかを出力する。結果出力部704は、ユーザインターフェース装置200に決定結果を表示させてもよい。また、結果出力部704は、パーソナルコンピュータの画面に決定結果を表示させてもよく、パーソナルコンピュータにインストールされたWebブラウザを介して、Web上のUIに決定結果を表示させてもよい。
【0117】
結果出力部704は、推奨する対応策を複数表示させ、実行する対応策を作業者に選択させてもよい。結果出力部704は、推奨する対応策を推奨順に表示してもよい。作業者は、作業都合等に合わせて対策を柔軟に講じることができる。ユーザインターフェース装置200は、推奨する対応策を複数表示した後、実際に行う対応策の選択入力を受け付け、対応策が入力されると、入力された対応策を対応実績として病歴記憶部601に記録する。
【0118】
結果出力部704は、決定結果をドローン100の飛行制御部1001又は散布制御部1002に送信してもよい。ドローン100は、決定結果に基づいて病理診断のための飛行をしてもよいし、薬剤散布のための飛行をしてもよい。また、ドローン100は、それらの飛行のために必要な準備動作を行ってもよい。
【0119】
●結果出力画面
図9に示すように、ユーザインターフェース装置200には、結果出力画面G1が表示される。結果出力画面G1は、圃場403a、403b、403cおよび403dと、各圃場をメッシュ状に分割する仮想線が表示されている。分割された各エリアのうち、病理株の存在エリア403a-1、403b-1は、他のエリアとは異なる態様で表示されている。本実施形態では、圃場403a乃至403dは網掛けで示され、病理株が存在するエリア403a-1、403b-1は、白く示されている。
【0120】
言い換えれば、結果出力画面G1は、圃場の形状と、病理株の存在エリアとを重ね合わせて表示する。圃場の形状は、航空写真又は農地バンクのデータを参照してもよいし、作業者により入力されるデータを使用してもよい。結果出力画面G1に表示される圃場は、写真であってもイラストであってもよい。病理株の存在エリアは、例えば、ドローン100が飛行時に取得するRTK-GPSの情報により特定される。この構成によれば、病理株の存在位置を一覧することができる。
【0121】
また、結果出力画面G1には、病理株における病気の進行具合を示す進行具合表示欄g10、および進行具合表示欄g10に表示されている病理株に対する対応策を表示する対応策表示欄g11が表示されている。病理株の存在エリアが複数ある場合、進行具合表示欄g10および対応策表示欄g11に表示される病理株の存在エリア403a-1は、他の存在エリア403b-1とは区別可能になっている。例えば、存在エリア403a-1にはピンPが表示されている。結果出力画面G1上で存在エリア403a-1、403b-1が選択されることで、進行具合および対応策を表示する存在エリアが切り替わる。
【0122】
対応策表示欄g11には、1又は複数の対応策欄g12、g13が表示されている。対応策欄g12、g13は、押下されることで、対応策の詳細や対応期限が表示されてもよい。また、ユーザインターフェース装置200は、対応策欄g12、g13に対する操作に基づいて、作業者が当該対応策を実施したことを入力可能になっていてもよい。
【0123】
農薬散布を示す対応策欄g13が押下されると、図10に示す、散布エリアの判定結果を表示する結果出力画面G2に遷移する。
【0124】
図10に示すように、結果出力画面G2には、散布期限および散布する農薬の期限を表示する散布情報表示欄g21、および病理株のある圃場とその周辺の環境情報を示す環境情報表示欄g22が表示される。環境情報表示欄g22には、風向および風速、ならびに風向および風速を示すイラストが表示されている。
【0125】
また、結果出力画面G2には、結果出力画面G1と同様に表示される圃場403a乃至403dに重ね合わせて、農薬を散布すべき散布エリア403eの範囲が示されている。散布エリア403eは、散布エリア決定部702aにより決定される。散布エリア403eは、病理株の存在エリア403d-1を含むエリアである。散布エリア403eは、病気の発生前後における風速が大きいほど、農薬散布を行う病理株からの距離が長く表示される。また、風下方向における病理株から散布エリア403e端までの距離d1は、風上方向における病理株から散布エリア403e端までの距離d2よりも長い。
【0126】
図9又は図10に示す結果出力画面G1において存在エリア403a-1、403b-1、403d-1が指定されると、図11に示す、存在エリア内の病理株を拡大表示する詳細な結果出力画面G3に遷移する。
【0127】
図11に示すように、結果出力画面G3には、病理診断カメラ512bにより取得された画像g30が表示されている。また、病理葉又は病理株を示す病理領域特定マークg31が画像g30に重ね合わされて表示されている。この構成によれば、圃場中から病理葉又は病理株を探すのが容易である。特に、目視確認又は病理葉もしくは病理株の除去の際に有用である。病理領域特定マークg31を選択することで、目視確認が完了したことが入力可能になっていてもよい。この構成によれば、病理株への対策実績の管理が簡便である。
【0128】
●病理診断を行うフローチャート
図12に示すように、まず、ドローン100が圃場の上空を飛行して、作物の画像を取得する(S11)。次いで、取得される画像に基づいて、斑点の大きさ、密度および数の少なくともいずれかのパラメータを測定する(S12)。次いで、パラメータの測定結果が所定範囲内であるかを判定する(S13)。パラメータの測定結果が所定範囲内であるとき、判定対象は病気ではないと判定する(S14)。パラメータの測定結果が所定範囲外であるとき、判定対象は病気であると判定する(S15)。次いで、病気の進行具合を判定する(S16)。進行具合に基づいて対応策を決定し、出力する(S17)。なお、ステップS12における判定は株ごとに行ってもよいし、画像ごとに行ってもよい。判定を株ごとに行う場合であって、1個の取得画像に複数株が映り込んでいる場合は、1個の取得画像に対しステップS12乃至S17の処理を繰り返す。
【0129】
各パラメータの閾値判定による病理発生判断ではなく、各パラメータの値に基づく病理発生尤度を生成して、当該病理発生尤度に基づいて病理発生の有無を判断するようにしてもよい。この場合には、S13~S15を下記のように置き換えられる。つまり、S13において、パラメータの計測結果に基づいて病理発生尤度を生成する(S13)。次に、S14において、生成した病理発生尤度が所定値未満の場合に判定対象は病気ではないと判断する(S14)。また、S15において、生成した病理発生尤度が所定値以上である場合に判定対象は病気であると判定する(S15)。
【0130】
(本願発明による技術的に顕著な効果)
本発明にかかる圃場管理システムにおいては、作物の病気の感染拡大を効果的に防止することができる。

図1
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