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特許7387197ウレイレン-ジ(ヒドロキシ安息香酸エステル)誘導体、及びそれを用いた感熱記録材料
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  • 特許-ウレイレン-ジ(ヒドロキシ安息香酸エステル)誘導体、及びそれを用いた感熱記録材料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】ウレイレン-ジ(ヒドロキシ安息香酸エステル)誘導体、及びそれを用いた感熱記録材料
(51)【国際特許分類】
   C07C 309/73 20060101AFI20231120BHJP
   B41M 5/333 20060101ALI20231120BHJP
   B41M 5/41 20060101ALI20231120BHJP
   B41M 5/323 20060101ALI20231120BHJP
   C07C 309/74 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
C07C309/73 CSP
B41M5/333 220
B41M5/41 200
B41M5/323 220
C07C309/74
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022102475
(22)【出願日】2022-06-27
(65)【公開番号】P2023007483
(43)【公開日】2023-01-18
【審査請求日】2023-05-31
(31)【優先権主張番号】P 2021106854
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391052574
【氏名又は名称】三光株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】木西 良一
(72)【発明者】
【氏名】石橋 良三
【審査官】奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭48-019545(JP,A)
【文献】スイス国特許発明第00322815(CH,A)
【文献】Justus Liebigs Annalen der Chemie,1922年,429,163-74
【文献】Collection of Czechoslovak Chemical Communications,1968年,Vol.33, No.6,p.1948-54
【文献】Database REGISTRY [online] ,2015年,RN 860510-27-6,(検索日:2023年8月1日)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
B41M
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

(式中、2個のR1は、それぞれ独立して、炭素数1~12の直鎖状、分岐鎖状、若しくは脂環状のアルキル基;炭素数7~12のアラルキル基;または炭素数6~14のアリール基であり、
2個のR2は、それぞれ独立して、-S(=O)R3(R3は、無置換、または、炭素数1~12のアルキル基若しくは炭素数1~8のアルコキシ基でそれぞれ置換された、炭素数7~12のアラルキル基または炭素数6~14のアリール基である。)で表される基である。)
で表される化合物。
【請求項2】
一般式(1)の化合物が、下記一般式(2)
【化2】

(R3は、請求項1で定義したものと同義である。)
で表される化合物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
一般式(2)の化合物が、下記式(3)
【化3】

、式(4)
【化4】

、式(5)
【化5】

、および式(6)
【化6】

のいずれかで表される化合物である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物を含有する顕色剤。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物を含有する感熱記録塗料。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物を含有する感熱記録層。
【請求項7】
請求項5に記載の感熱記録塗料を支持体に塗布してなる感熱記録体。
【請求項8】
支持体が、紙、プラスティックフィルム、または加工紙である、請求項7に記載の感熱記録体。
【請求項9】
常温で無色ないし淡色の塩基性染料と、加熱により該塩基性染料と接触して呈色し得る顕色剤とを含有する感熱記録層を支持体上に設けた感熱記録材料であって、前記顕色剤として、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物を含有することを特徴とする感熱記録材料。
【請求項10】
顕色剤として、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物と、非フェノール顕色剤及びフェノール系顕色剤からなる群より選択される顕色剤を併用することを特徴とする、請求項9に記載の感熱記録材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレイレン-ジ(ヒドロキシ安息香酸エステル)誘導体、及びそれを用いた感熱記録材料に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、感熱記録材料は常温で無色ないし淡色の塩基性染料と有機顕色剤とをそれぞれ微細な粒子に粉砕分散した後、両者を混合し、これと増感剤、バインダー、滑剤、その他各種添加剤等を添加して得た塗工液を、紙、プラスティックフィルム、加工紙等の支持体上に塗布して感熱記録層を形成したものであり、感熱ヘッド、熱ペン等の熱エネルギー(ジユール熱)を加えることにより発色記録が得られるものである。このような感熱記録材料は、すでに広く実用化されている。
【0003】
その感熱記録材料に求められる性能として、未印字部の白色度と種々の環境条件における未印字部の白色度、印字部の発色濃度とその印字部の保存性等が挙げられる。特に印字部の保存性に関しては、種々の試験耐性、例えば耐湿熱性、耐水性、耐光性、耐油性、耐可塑剤性等が求められる。
【0004】
これまで感熱記録材料の顕色剤として数多くの顕色剤が提案されてきた。例えば、4,4’-イソプロピリデンジフェノール、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4-アリルオキシ-4’-ヒドロキシ-ジフェニルスルホン(特許文献1)、4-ヒドロキシ-4’-イソプロピルオキシ-ジフェニルスルホン等のフェノ-ル系顕色剤;4-(p-トルエンスルホニルアミノ)サリチル酸(特許文献2)、4-オクチルオキシカルボニルアミノサリチル酸及び亜鉛塩(特許文献3)、4-(4-カルボキシブチル)ウレイドサリチル酸(特許文献4)、(フェニルウレイド)安息香酸(特許文献5)等のアミノ安息香酸やアミノサリチル酸系顕色剤;N-3-[(p-トルエンスルホニル)オキシ]フェニル-N’-(p-トルエンスルホニル)-尿素(特許文献6)、N-(2-(3-フェニルウレイド)フェニル)ベンゼンスルホンアミド(特許文献7)、N-3-[(p-トルエンスルホニル)オキシ]フェニル-N’-フェニル-尿素(特許文献8)、N,N’-ジ{[3-(p-トルエンスルホニル)オキシ]フェニル}尿素(特許文献9)等の非フェノ-ル系顕色剤等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-052842号公報
【文献】特開平07-246772号公報
【文献】特開平09-263058号公報
【文献】特開2005-145935号公報
【文献】特開平08-216526号公報
【文献】特表2002-532441号公報
【文献】国際公開第2014/080615号
【文献】国際公開第2017/111032号
【文献】国際公開第2019/044462号
【非特許文献】
【0006】
【文献】大饗茂編著、「有機硫黄化学」、化学同人社、1982年9月、p349
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、フェノール系顕色剤や、安息香酸、およびアミノサリチル酸系顕色剤は印字部、非印字部の各種保存安定性が十分でなく、非フェノール系顕色剤であるN-3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル-N’-(p-トルエンスルホニル)-尿素(特許文献6)は、発色感度や保存性は改善されているものの、十分なものでなく、更に改善が求められている。加えて、N-3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル-N’-(p-トルエンスルホニル)-尿素はトルエンスルホニルイソシナネ-トから誘導されるトルエンスルホニル尿素基、およびトルエンスルホニルクロライドから誘導される芳香族スルホン酸アリールエステル基の2つの官能基を有し、芳香族スルホン酸アリールエステル基は、水に対して安定であるものの(非特許文献1)、一方のトルエンスルホニル尿素基は元来アミノ基等の保護基として活用されてきたものであるが、水によって容易に加水分解される欠点がある。
【0008】
一方、N-(2-(3-フェニルウレイド)フェニル)ベンゼンスルホンアミド(特許文献7)や、N-3-[(p-トルエンスルホニル)オキシ]フェニル-N’-フェニル-尿素(特許文献8)、N,N’-ジ{[3-(p-トルエンスルホニル)オキシ]フェニル}尿素(特許文献9)は、未だ記録部の保存性に課題があり、感熱記録材料としての要求性能に関しては充分満足できるものでなく、特に印字部の保存性、中でも耐油性や耐可塑剤性に更なる向上が求められている。
【0009】
更に近年は、4,4’-イソプロピリデンジフェノール、4,4’-ビスフェノールスルホン等は、環境ホルモン、変異原性等の環境衛生上の問題が指摘されているため、これらの問題のない顕色剤が求められている。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みて為されたものであり、特に耐油性や耐可塑剤性の保存性能に優れた感熱記録材料の顕色剤として好適なN,N’-ウレイレン-ビス(ヒドロキシ安息香酸エステル)誘導体、及び、それを顕色剤として用いた感熱記録材料を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
即ち、本発明は、以下の態様を包含するものである。
【0012】
[1]一般式(1)
【0013】
【化1】
【0014】
(式中、2個のR1は、それぞれ独立して、炭素数1~12の直鎖状、分岐鎖状、若しくは脂環状のアルキル基;炭素数7~12のアラルキル基;または炭素数6~14のアリール基であり、
2個のR2は、それぞれ独立して、水素原子;または-S(=O)R3(R3は、無置換、または、炭素数1~12のアルキル基若しくは炭素数1~8のアルコキシ基でそれぞれ置換された、炭素数7~12のアラルキル基または炭素数6~14のアリール基である。)で表される基である。)
で表される化合物(以下、「本発明の化合物」または「本発明のウレイレン-ジ(ヒドロキシ安息香酸エステル)誘導体」と称することもある。)。
[2]一般式(1)の化合物が、下記一般式(2)
【0015】
【化2】
【0016】
(R3は、前記[1]で定義したものと同義である。)
で表される化合物である、前記[1]に記載の化合物。
[3]一般式(2)の化合物が、下記式(3)
【0017】
【化3】
【0018】
、式(4)
【0019】
【化4】
【0020】
、式(5)
【0021】
【化5】
【0022】
、および式(6)
【0023】
【化6】
【0024】
のいずれかで表される化合物である、前記[2]に記載の化合物。
[4]前記[1]~[3]のいずれかに記載の化合物を含有する顕色剤。
[5]前記[1]~[3]のいずれかに記載の化合物を含有する感熱記録塗料。
[6]前記[1]~[3]のいずれかに記載の化合物を含有する感熱記録層。
[7]前記[5]に記載の感熱記録塗料を支持体に塗布してなる感熱記録体。
[8]前記[5]に記載の感熱記録塗料を支持体に塗布してなる感熱記録材料。
[9]支持体が、紙、プラスティックフィルム、または加工紙である前記[7]に記載の感熱記録体。
[10]支持体が、紙、プラスティックフィルム、または加工紙である前記[8]に記載の感熱記録材料。
[11]常温で無色ないし淡色の塩基性染料と、加熱により該塩基性染料と接触して呈色し得る顕色剤とを含有する感熱記録層を支持体上に設けた感熱記録材料であって、前記顕色剤として、前記[1]~[3]のいずれかに記載の化合物を含有することを特徴とする感熱記録材料。
[12]顕色剤として、前記[1]~[3]のいずれかに記載の化合物と、非フェノール顕色剤及びフェノール系顕色剤からなる群より選択される顕色剤を併用することを特徴とする、前記[11]に記載の感熱記録材料。
【発明の効果】
【0025】
本発明のウレイレン-ジ(ヒドロキシ安息香酸エステル)誘導体を顕色剤として用いることにより、非印字部の白色度が高く、良好な発色濃度を示し、印字部の保存性が高く、耐油性、耐可塑剤性に優れた感熱記録材料を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係る4,4’-ウレイレン-ジ(2-ヒドロキシ安息香酸メチル)(合成例1)のIRチャートを示す
図2】本発明に係る4,4’-ウレイレン-ジ[2-(p-トルエンスルホニルオキシ)安息香酸メチル](合成例2)のIRチャートを示す。
図3】本発明に係る4,4’-ウレイレン-ジ[2-(p-トルエンスルホニルオキシ)安息香酸メチル](合成例2)のH-NMRスペクトルを示す。
図4】本発明に係る4,4’-ウレイレン-ジ[2-(p-トルエンスルホニルオキシ)安息香酸メチル](合成例2)のFDマススペクトルを示す。
図5】本発明に4,4’-ウレイレン-ジ[2-(1-ナフタレンスルホニルオキシ)安息香酸メチル](合成例3)のIRチャートを示す。
図6】本発明に係る4,4’-ウレイレン-ジ[2-(о-トルエンスルホニルオキシ)安息香酸メチル](合成例5)のIRチャートを示す。
図7】本発明に係る4,4’-ウレイレン-ジ[2-(2-ベンゼンスルホニルオキシ)安息香酸メチル](合成例6)のIRチャートを示す。
図8】本発明に係る4,4’-ウレイレン-ジ[2-(2-ナフタレンスルホニルオキシ)安息香酸メチル](合成例4)のIRチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(本発明のウレイレン-ジ(ヒドロキシ安息香酸エステル)誘導体)
本発明のウレイレン-ジ(ヒドロキシ安息香酸エステル)誘導体は、前記一般式(1)~(2)で表される。
【0028】
一般式(1)中、2個のR1は、それぞれ独立して、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ラウリル基である炭素数1~12の直鎖状または分岐鎖状アルキル基(C1~C12のアルキル基);
【0029】
ベンジル基、p-メチルベンジル基、p-イソプロピルベンジル基、p-tert-ブチルベンジル基、p-メトキシベンジル基、m-メトキシベンジル基、m, p-ジメトキシベンジル基、フェネチル基、α-フェネチル基、フェニルプロピル基等の炭素数7~12(C7~C12)のアラルキル基;
【0030】
フェニル基、トリル基、p-エチルフェニル基、p-キシリル基、m-キシリル基、1,2,3-トリメチルフェニル基、1,3,5-トリメチルフェニル基(メシチレン基)、1,2,4-トリメチルフェニル基(プソイドクメン基)、1-ナフチル基、2-ナフチル基、ビフェニル基、ジメチルビフェニル基等の炭素数6~14(C6~C14)のアリール基等が挙げられる。
【0031】
好ましいR1は、C1~C4のアルキル基である。
【0032】
2個のR2は、それぞれ独立して、水素原子、または-S(=O)R3で表される基である。
【0033】
好ましいR2は、-S(=O)R3で表される基である。
【0034】
R3は、例えば、ベンジル基、p-メチルベンジル基、p-イソプロピルベンジル基、p-tert-ブチルベンジル基、p-メトキシベンジル基、m-メトキシベンジル基、m, p-ジメトキシベンジル基、フェネチル基、α-フェネチル基、フェニルプロピル基等の無置換、または、炭素数1~12のアルキル基若しくは炭素数1~8のアルコキシ基で置換されたC7~C12のアラルキル基;
【0035】
フェニル基、トリル基、p-エチルフェニル基、p-キシリル基、m-キシリル基、1,2,3-トリメチルフェニル基、1,3,5-トリメチルフェニル基(メシチレン基)、1,2,4-トリメチルフェニル基(プソイドクメン基)、1-ナフチル基、2-ナフチル基、ビフェニル基、ジメチルビフェニル基等の無置換、または、炭素数1~12のアルキル基若しくは炭素数1~8のアルコキシ基で置換されたC6~C14のアリール基等が挙げられる。
【0036】
好ましいR3は、フェニル基、トリル基、メシチレン基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられる。
【0037】
本発明の一般式(1)で表される化合物として、下記一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
【0038】
【化7】
【0039】
(R3は、前記式(1)で定義したものと同様である。)
【0040】
本発明のウレイレン-ジ(ヒドロキシ安息香酸エステル)誘導体として、以下に、具体例を挙げるがこれらに限定されるものではない。
【0041】
4,4’-ウレイレン-ジ[2-(p-トルエンスルホニルオキシ)安息香酸メチル]、4,4’-ウレイレン-ジ[2-(ベンゼンスルホニルオキシ)安息香酸メチル]、4,4’-ウレイレン-ジ[2-(m-トルエンスルホニルオキシ)安息香酸メチル]、4,4’-ウレイレン-ジ[2-(o-トルエンスルホニルオキシ)安息香酸メチル]、4,4’-ウレイレン-ジ[2-(キシレンスルホニルオキシ)安息香酸メチル]、4,4’-ウレイレン-ジ[2-(メシチレンスルホニルオキシ)安息香酸メチル]、4,4’-ウレイレン-ジ[2-(1-ナフタレンスルホニルオキシ)安息香酸メチル]、4,4’-ウレイレン-ジ[2-(2-ナフタレンスルホニルオキシ)安息香酸メチル]、
【0042】
4,4’-ウレイレン-ジ[2-(ベンジルスルホニルオキシ)安息香酸メチル]、4,4’-ウレイレン-ジ[2-(p-トルエンスルホニルオキシ)安息香酸n-プロピル]、4,4’-ウレイレン-ジ[2-(1-ナフタレンスルホニルオキシ)安息香酸n-プロピル]、4,4’-ウレイレン-ジ[2-(1-ナフタレンスルホニルオキシ)安息香酸i-プロピル]、4,4’-ウレイレン-ジ[2-(2-ナフタレンスルホニルオキシ)安息香酸n-ブチル]、4,4’-ウレイレン-ジ[2-(ベンゼンスルホニルオキシ)安息香酸フェニル]、4,4’-ウレイレン-ジ[2-(ベンジルスルホニルオキシ)安息香酸ベンジル]、
【0043】
2,2’-ウレイレン-ジ[5-(p-トルエンスルホニルオキシ)安息香酸メチル]、2,2’-ウレイレン-ジ[5-(1-ナフタレンスルホニルオキシ)安息香酸メチル]、
【0044】
3,3’-ウレイレン-ジ[6-(p-トルエンスルホニルオキシ)安息香酸メチル]、3,3’-ウレイレン-ジ[6-(ベンゼンスルホニルオキシ)安息香酸メチル]、3,3’-ウレイレン-ジ[6-(m-トルエンスルホニルオキシ)安息香酸メチル]、3,3’-ウレイレン-ジ[6-(o-トルエンスルホニルオキシ)安息香酸メチル]、3,3’-ウレイレン-ジ[6-(キシレンスルホニルオキシ)安息香酸メチル]、3,3’-ウレイレン-ジ[6-(メシチレンスルホニルオキシ)安息香酸メチル]、3,3’-ウレイレン-ジ[6-(1-ナフタレンスルホニルオキシ)安息香酸メチル]、3,3’-ウレイレン-ジ[6-(2-ナフタレンスルホニルオキシ)安息香酸メチル]、3,3’-ウレイレン-ジ[6-(ベンジルスルホニルオキシ)安息香酸メチル]、
【0045】
3,3’-ウレイレン-ジ[4-(p-トルエンスルホニルオキシ)安息香酸メチル]、
【0046】
3,3’-ウレイレン-ジ[2-(p-トルエンスルホニルオキシ)安息香酸メチル]、3,3’-ウレイレン-ジ[2-(ベンゼンスルホニルオキシ)安息香酸メチル]、3,3’-ウレイレン-ジ[2-(m-トルエンスルホニルオキシ)安息香酸メチル]、3,3’-ウレイレン-ジ[2-(o-トルエンスルホニルオキシ)安息香酸メチル]、3,3’-ウレイレン-ジ[2-(キシレンスルホニルオキシ)安息香酸メチル]、3,3’-ウレイレン-ジ[2-(メシチレンスルホニルオキシ)安息香酸メチル]、3,3’-ウレイレン-ジ[2-(1-ナフタレンスルホニルオキシ)安息香酸メチル]、3,3’-ウレイレン-ジ[2-(2-ナフタレンスルホニルオキシ)安息香酸メチル]、3,3’-ウレイレン-ジ[2-(ベンジルスルホニルオキシ)安息香酸メチル]、3,3’-ウレイレン-ジ[4-(p-トルエンスルホニルオキシ)安息香酸メチル]、
【0047】
N-(3-ヒドロキシ-4-メトキシカルボニル)フェニル-N’-(3-p-トルエンスルホニルオキシ-4-メトキシカルボニル)フェニル-尿素、N-(3-ヒドロキシ-4-メトキシカルボニル)フェニル-N’-(3-m-トルエンスルホニルオキシ-4-メトキシカルボニル)フェニル-尿素、N-(3-ヒドロキシ-4-メトキシカルボニル)フェニル-N’-(3-o-トルエンスルホニルオキシ-4-メトキシカルボニル)フェニル-尿素、N-(3-ヒドロキシ-4-メトキシカルボニル)フェニル-N’-(3-ベンゼンスルホニルオキシ-4-メトキシカルボニル)フェニル-尿素、N-(3-ヒドロキシ-4-メトキシカルボニル)フェニル-N’-(3-メシチレンスルホニルオキシ-4-メトキシカルボニル)フェニル-尿素、N-(3-ヒドロキシ-4-メトキシカルボニル)フェニル-N’-[3-(1-ナフタレンスルホニルオキシ)-4-メトキシカルボニル]フェニル-尿素、N-(3-ヒドロキシ-4-メトキシカルボニル)フェニル-N’-[3-(2-ナフタレンスルホニルオキシ)-4-メトキシカルボニル]フェニル-尿素、
【0048】
N-(4-ヒドロキシ-5-メトキシカルボニル)フェニル-N’-(4-p-トルエンスルホニルオキシ-5-メトキシカルボニル)フェニル-尿素、N-(4-ヒドロキシ-5-メトキシカルボニル)フェニル-N’-(4-m-トルエンスルホニルオキシ-5-メトキシカルボニル)フェニル-尿素、N-(4-ヒドロキシ-5-メトキシカルボニル)フェニル-N’-(4-o-トルエンスルホニルオキシ-5-メトキシカルボニル)フェニル-尿素、N-(4-ヒドロキシ-5-メトキシカルボニル)フェニル-N’-(4-ベンゼンスルホニルオキシ-5-メトキシカルボニル)フェニル-尿素、N-(4-ヒドロキシ-5-メトキシカルボニル)フェニル-N’-(4-メシチレンスルホニルオキシ-5-メトキシカルボニル)フェニル-尿素、N-(4-ヒドロキシ-5-メトキシカルボニル)フェニル-N’-[4-(1-ナフタレンスルホニルオキシ)-5-メトキシカルボニル]フェニル-尿素、N-(4-ヒドロキシ-5-メトキシカルボニル)フェニル-N’-[4-(2-ナフタレンスルホニルオキシ)-5-メトキシカルボニル]フェニル-尿素、
【0049】
4,4’-ウレイレン-ジ(2-ヒドロキシ安息香酸メチル)、4,4’-ウレイレン-ジ(2-ヒドロキシ安息香酸エチル)、4,4’-ウレイレン-ジ(2-ヒドロキシ安息香酸n-プロピル)、4,4’-ウレイレン-ジ(2-ヒドロキシ安息香酸i-プロピル)、4,4’-ウレイレン-ジ(2-ヒドロキシ安息香酸ブチル)、4,4’-ウレイレン-ジ(2-ヒドロキシ安息香酸ベンジル)、4,4’-ウレイレン-ジ(2-ヒドロキシ安息香酸フェネチル)、4,4’-ウレイレン-ジ(2-ヒドロキシ安息香酸フェニル)、4,4’-ウレイレン-ジ(2-ヒドロキシ安息香酸2-ナフチル)、
【0050】
3,3’-ウレイレン-ジ(2-ヒドロキシ安息香酸メチル)、3,3’-ウレイレン-ジ(2-ヒドロキシ安息香酸エチル)、
【0051】
5,5’-ウレイレン-ジ(2-ヒドロキシ安息香酸メチル)、5,5’-ウレイレン-ジ(2-ヒドロキシ安息香酸エチル)、5,5’-ウレイレン-ジ(2-ヒドロキシ安息香酸n-プロピル)、5,5’-ウレイレン-ジ(2-ヒドロキシ安息香酸i-プロピル)、5,5’-ウレイレン-ジ(2-ヒドロキシ安息香酸ブチル)、5,5’-ウレイレン-ジ(2-ヒドロキシ安息香酸ベンジル)、5,5’-ウレイレン-ジ(2-ヒドロキシ安息香酸フェニル)、5,5’-ウレイレン-ジ(2-ヒドロキシ安息香酸2-ナフチル)、
【0052】
4,4’-ウレイレン-ジ(3-ヒドロキシ安息香酸メチル)、4,4’-ウレイレン-ジ(3-ヒドロキシ安息香酸エチル)等が挙げられる。
【0053】
(本発明のウレイレン-ジ(ヒドロキシ安息香酸エステル)誘導体の製造方法)
本発明の一般式(1)で表されるウレイレン-ジ(ヒドロキシ安息香酸エステル)誘導体は、各種方法により合成することができる。例えば、一般式(8)の化合物は、下記反応式(1)で示される様に、一般式(7)で表されるアミノ置換されたヒドロキシ安息香酸エステル化合物に尿素結合形成試剤(例えば、尿素あるいはホスゲン、およびホスゲン誘導体、具体的にはトリホスゲン、カルボニルビスイミダゾール、N-置換カルバミン酸エステル)を作用させて合成することができる。
【0054】
(反応式1)
【0055】
【化8】
【0056】
一般式(7)
【0057】
【化9】
【0058】
(Rは、前記と同義である。)
【0059】
更に一般式(2)の化合物は、反応式(2)に示すように、反応式(1)の生成物である一般式(8)の化合物に、一般式(9)で表されるハロゲン化スルホニル化合物を塩基の存在下に反応させることによっても容易に得ることができる。
(反応式2)
【0060】
【化10】
【0061】
一般式(8)
【0062】
【化11】
【0063】
(Rは前記と同じである。)
【0064】
一般式(9)
【0065】
【化12】
【0066】
(R3は、前記と同義であり、Xは、F,Cl,Br,I等のハロゲン原子を表す。)
【0067】
一般式(7)で表されるアミノ置換されたヒドロキシ安息香酸エステル化合物としては、例えば、4-アミノサリチル酸メチル、4-アミノサリチル酸エチル、4-アミノサリチル酸プロピル、4-アミノサリチル酸イソプロピル、4-アミノサリチル酸ブチル、4-アミノサリチル酸ベンジル、4-アミノサリチル酸フェニル、4-アミノサリチル酸p-クレジル、4-アミノサリチル酸m-クレジル、
【0068】
5-アミノサリチル酸メチル、5-アミノサリチル酸エチル、5-アミノサリチル酸プロピル、5-アミノサリチル酸イソプロピル、5-アミノサリチル酸ブチル、5-アミノサリチル酸ベンジル、5-アミノサリチル酸フェニル、5-アミノサリチル酸p-クレジル、5-アミノサリチル酸m-クレジル、
【0069】
3-ヒドロキシアントラニル酸メチル、3-ヒドロキシアントラニル酸エチル、3-ヒドロキシアントラニル酸プロピル、3-ヒドロキシアントラニル酸ブチル、3-ヒドロキシアントラニル酸ベンジル、3-ヒドロキシアントラニル酸フェニル、
【0070】
5-ヒドロキシアントラニル酸メチル、5-ヒドロキシアントラニル酸エチル、5-ヒドロキシアントラニル酸プロピル、5-ヒドロキシアントラニル酸ブチル、5-ヒドロキシアントラニル酸ベンジル、5-ヒドロキシアントラニル酸フェニル、
【0071】
3-アミノ-4-ヒドロキシ安息香酸メチル、3-アミノ-4-ヒドロキシ安息香酸エチル、3-アミノ-4-ヒドロキシ安息香酸プロピル、
4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸メチル、4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸エチル、
【0072】
3-アミノ-5-ヒドロキシ安息香酸メチル、3-アミノ-5-ヒドロキシ安息香酸ブチル等が挙げられる。
【0073】
式(9)で表されるハロゲン化スルホニル化合物としては、例えば、ベンジルスルホニルクロライド、フェネチルスルホニルクロライド、4-メチルベンジルスルホニルクロライド、ベンゼンスルホニルクロライド、4-メトキシベンゼンスルホニルクロライド、3,4-ジメトキシベンゼンスルホニルクロライド、p-トルエンスルホニルクロライド、m-トルエンスルホニルクロライド、o-トルエンスルホニルクロライド、p-エチル-ベンゼンスルホニルクロライド、p-t-ブチルベンゼンスルホニルクロライド、メシチレンスルホニルクロライド、p-キシレンスルホニルクロライド、4-ビフェニルスルホニルクロライド、1-ナフタレンスルホニルクロライド、2-ナフタレンスルホニルクロライド等が挙げられる。
【0074】
(本発明の感熱記録材料)
本発明の感熱記録材料は、常温で無色ないし淡色の塩基性染料と、加熱により該塩基性染料と接触して呈色し得る顕色剤とを含有する感熱記録層を支持体上に設けた感熱記録材料であって、前記顕色剤として、本発明の化合物を含有することを特徴とする。また、本発明の化合物は、既存の顕色剤と併用して用いてもよく、既存の顕色剤と併用して用いる場合、本発明の化合物は、既存顕色剤と任意の割合で用いる事ができ、既存の顕色剤の保存性能を補填する顕色機能を有する保存向上剤としても活用できる。
【0075】
既存の顕色剤として、例えば、N-3-[(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]-N’-(p-トルエンスルホニル)-尿素(PF-201)、N-[2-(3-フェニルウレイド)フェニル]-ベンゼンスルホンアミド(NKK-1304)、N-3-[(p-トルエンスルホニル)オキシ]フェニル-N’-フェニル-尿素(TGMD)、N,N’-ジ{[3-(p-トルエンスルホニル)オキシ]フェニル}尿素、N-3-[(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]-N’-(フェニル)-尿素、ジ-[3-メチル-N-{5-(フェノキシカルボニルアミノ)フェニル}ウレイド]フェニルスルホン(UU)、N-(m-トリルアミノカルボニル)-メチオニン、N-(m-トリルアミノカルボニル)-フェニルアラニン、N-(フェニルアミノカルボニル)-フェニルアラニン、5-(N-3-メチルフェニル-スルホニルアミド)-(N’,N’’-ビス-(3-メチルフェニル)-イソフタル酸ジアミド(PF-425)等の公知の非フェノール顕色剤;
【0076】
4,4’-イソプロピリデンジフェノール(BPA)、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン(BPS)、4-アリルオキシ-4’-ヒドロキシジフェニルスルホン(BPS-MAE)、ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン(TGSA)、4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシスルホン(D-8)等のフェノール系顕色剤等の化合物が挙げられる。これらの顕色剤と併用して用いることにより、これら顕色剤の課題である保存性を更に向上させることが可能となる。中でも、好ましい、併用し得る既存の顕色剤は、非フェノール顕色剤である。
【0077】
本発明の感熱記録材料の感熱記録層は、例えば、前記塩基性染料と前記式(1)~式(6)で表されるウレイレン-ジ(ヒドロキシ安息香酸エステル)誘導体を微細な粒子に粉砕分散し、バインダー、増感剤、充填剤、滑剤、その他各種添加剤等を添加して得た塗工液または塗布液(感熱記録塗料)として調製され、これを紙、プラスティックフィルム、加工紙等の支持体上に塗工することにより、本発明の感熱記録材料が形成される。後述する実施例に記載されるとおり、支持体上に塗布する感熱記録塗料としては、分散液を混合することにより得られる塗布液である場合が多いが、液状の塗料だけではなく、ペースト状であってもよく、また、ジェル、又は固形のインキであってもよい。
【0078】
また、本発明の感熱記録材料として、本発明の化合物を含有するサーマルインクを包装材であるフィルムに部分コーティングした感熱記録材料も用いることができる。当該部分コーティングした部位にサーマルヘッドやレーザー装置で熱を加えることにより、高精度な印字をフィルムに直接印字することができる。
【0079】
本発明の感熱記録材料の感熱記録層に使用される、常温で無色ないし淡色の塩基性染料としてトリフェニルメタン系、フルオラン系、ジフェニルメタン系、スピロ系、フルオレン系、チアジン系化合物が挙げられ、従来公知のロイコ染料から選ぶことができる。
【0080】
ロイコ染料としては、例えば、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)フタリド、3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインド-ル-3-イル)-4-アザフタリド、3,3-ビス(p-メチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、
【0081】
3-ジエチルアミノ-7-ジベンジルアミノベンゾ[α]フルオラン、3-(1-エチル-2-メチルインド-ル-3-イル)-3-(4-ジエチルアミノ-2-n-ヘキシルオキシフェニル)-4-アザフタリド、3-(1-エチル-2-メチルインド-ル-3-イル)-3-(4-ジエチルアミノ)-2-メチルフェニル-4-アザフタリド、3-(4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインド-ル-3-イル)フタリド、3-(2-メチル-1-n-オクチルインド-ル-3-イル)-3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-4-アザフタリド、
【0082】
3-(N-エチル-N-イソペンチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(o,p-ジメチルアニリノ)フルオラン、3-(N-エチル-N-p-トルイジノ)-6-メチル7-アニリノフルオラン、3-ピロリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-シクロヘキシル-N-メチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(m-トリフロロメチルアニリノ)フルオラン、3-ジ(n-ペンチル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-[N-(3-エトキシプロピル)-N-エチルアミノ]6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N,N-ヘキシル-N-エチルアミノ)-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン、3-(N-エチル-N-2-テトラヒドロフルフリルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、
【0083】
2,2-ビス{4-[6’-(N-シクロヘキシル-N-メチルアミノ)-3’-メチルスピロ[フタリド-3,9’-キサンテン]-2’-イルアミノ]フェニル}プロパン、3-ジブチルアミノ-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン、3,6-ジメトキシフルオラン、3-ピロリジノ-6-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-7,8-ジベンゾフルオラン、3-ジエチルアミノ-6,7-ジメチルフルオラン、3-(N-メチル-p-トルイジノ)-7-メチルフルオラン、3-(N-メチル-N-イソアミルアミノ)-7,8-ベンゾフルオラン、3,3’-ビス(1-n-アミル-2-メチルインド-ル-3-イル)フタリド、3-(N-メチル-N-イソアミルアミノ)-7-フェノキシフルオラン、3,3’-ビス(1-n-ブチル-2-メチルインド-ル-3-イル)フタリド、3,3’-ビス(1-エチル-2-メチルインド-ル-3-イル)フタリド、3,3’-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)フタリド、3-(N-エチル-N-p-トリルアミノ)-7-(N-フェニル-N-メチルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-ベンジルアミノフルオラン、3-ピロリジノ-7-ジベンジルアミノフルオラン等からも選ぶことができ、本発明は、これらに限定されるものではなく、単独でも2種類以上を併用してもよい。
【0084】
本発明の感熱記録材料の感熱記録層において、必要に応じ増感剤を使用することができ、増感剤としては、従来公知の増感剤が使用できる。
【0085】
増感剤として、例えば、ステアリン酸アミド、ビスステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド等の脂肪酸アミド、p-トルエンスルホンアミド、ステアリン酸、ベヘン酸、パルミチン酸等のカルシウム、亜鉛、アルミニウム等の脂肪酸金属塩、p-ベンジルビフェニル、ジフェニルスルホン、ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、2-ベンジルオキシナフタレン、1,2-ビス(p-トリルオキシ)エタン、1,2-ビス(フェノキシ)エタン、1,2-ビス(3-メチルフェノキシ)エタン、1,3-ビス(フェノキシ)プロパン、シュウ酸ジベンジル、シュウ酸p-メチルベンジル、m-ターフェニル、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸等が挙げられる。
【0086】
特に、1,2-ビス(p-トリルオキシ)エタン、1,2-ビス(フェノキシ)エタンが感度の面で好適である。
【0087】
本発明のウレイレン-ジ(ヒドロキシ安息香酸エステル)誘導体は、特に耐油性、耐可塑剤性が良好であり、従来公知の顕色剤の保存安定剤としても使用ができる。
【0088】
更に、本発明の感熱記録材料の感熱記録層には、従来公知の保存安定剤を併用することもできる。
【0089】
保存安定剤として、例えば、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(2-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(6-tert-ブチルm-クレゾ-ル)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1,1、3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-シクロヘキシルフェニル)ブタン、4,4’-ビス[(4-メチル-3-フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド]ジフェニルスルホン、トリス(2,6-ジメチル-4-tert-ブチル-3-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’-チオビス(3-メチルフェノール)、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’,5,5’-テトラブロモジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシ3,3’,5,5’-テトラメチルジフェニルスルホン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン等のヒンダードフェノール化合物、1,4-ジグリシジルオキシベンゼン、4,4’-ジグリシジルオキシジフェニルスルホン、4-ベンジルオキシ-4’-(2-メチルグリシルオキシ)ジフェニルスルホン、テレフタル酸グリシジル、ビスフェノールA型エポキシ樹脂型、クレゾ-ルノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂等のエポキシ化合物、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフェイトのナトリウム塩または多価金属塩、ビス(4-エチレンイミンカルボニルアミノフェニル)メタン、4-[2-(p-メトキシフェノキシ)エチルオキシ]サリチル酸亜鉛、4-[3-(p-トリルスルホニル)プロピルオキシ]サリチル酸亜鉛、5-[2-(p-メトキシフェノキシエトキシ)クミル]サリチル酸亜鉛塩、4-(n-オクチルオキシカルボニルアミノ)サリチル酸の亜鉛塩、更に、下記一般式(10)で表されるジフェニルスルホン架橋型化合物等が挙げられる。
【0090】
特に、1,1、3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1,1、3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-シクロヘキシルフェニル)ブタン、4,4’-ビス[(4-メチル-3-フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド]ジフェニルスルホン、および一般式(10)で表されるジフェニルスルホン架橋型化合物が更なる保存性改良に好適である。
【0091】
【化13】
【0092】
(式中、nは1~7の整数を表す。)
【0093】
また、本発明の感熱記録材料の感熱記録層において、必要に応じ助剤を使用することができ、助剤としては、例えば、ジオクチオルコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルアルコール硫酸エステルナトリウム、脂肪酸金属塩等の分散剤;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、および高級脂肪酸金属塩、ステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド、パラフィン、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、カスタ-ワックス、エステルワックス等の滑剤;アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物;グリオキザ-ル、ホウ酸、ジアルデヒドスタ-チ、メチロ-ル尿素、グリオキシル酸塩、エポキシ系化合物等の耐水化剤;消泡剤;着色染料;蛍光染料;顔料等が挙げられる。
【0094】
本発明で感熱記録層に使用されるバインダーとしては、例えば、酸化澱粉、エステル化澱粉、エ-テル化澱粉等の澱粉類;メチルセルロ-ス、カルボキシメチルセルロ-ス、メトキシセルロ-ス、ヒドロキシエチルセルロ-ス等のセルロ-ス類;カゼイン、ゼラチン、完全(または部分)鹸化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、珪素変性ポリビニルアルコール、アミド変性ポリビニルアルコール、スルホン酸変性ポリビニルアルコール、ブチラ-ル変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類;スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体樹脂および酢酸ビニル樹脂;ウレタン樹脂;アクリルアミド樹脂;アクリル酸エステル樹脂;ビニルブチラ-ル・スチロール、およびそれらの共重合体樹脂;アミド樹脂;シリコ-ン樹脂;石油樹脂;テルペン樹脂;ケトン樹脂;クロマン樹脂等が挙げられる。これらのバインダーは、単独または2種以上を使用でき、溶剤に溶解して使用するほか、水または他の媒体中に乳化あるいはペースト状に分散した状態で使用することもできる。
【0095】
感熱記録層に配合される顔料としては、例えば、非晶性シリカ、非晶性珪酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、ケイソウ土、タルク、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、コロイダルシリカ、ポリスチレンパウダー、ナイロンパウダー、尿素-ホルマリン樹脂フィラー、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体や中空プラスチックピグメント等の無機または有機顔料等が挙げられる。
【0096】
本発明において、感熱記録層に使用される塩基性染料、顕色剤、増感剤、バインダー、顔料、およびその他助剤等の添加剤の種類や使用量は、感熱記録層に要求される品質性能に応じて当業者が適宜決定することができる。
【0097】
本発明における感熱記録層において、顕色剤としての本発明のウレイレン-ジ(ヒドロキシ安息香酸エステル)誘導体の含有量は、発色濃度の観点から、感熱記録層の塩基性染料1質量部に対して、0.3~5質量部が好ましく、更には0.4~3質量部がより好ましい。
【0098】
また、感熱記録層における増感剤の含有量は、塩基性染料(ロイコ染料)1質量部に対し0.2~4質量部、バインダーは感熱記録層の全固形分中5~50質量%が適当である。
【0099】
本発明における支持体としては、紙、再生紙、合成紙、プラスティックフィルム、不織布、金属箔等が使用可能である。また、これらを組み合せた複合シートも使用可能である。ここで、複合シートとしては、例えば、樹脂混合物からなるシート、ラミネートフィルム、樹脂フィルムへの樹脂コーティング、樹脂フィルムへの樹脂印刷等の複数の樹脂からなるシート、積層した複合基材、従来のタック紙等の基材として使用されている各種基材等を用いることができる。
【0100】
本発明における支持体の別の態様としては、カードや、板紙、段ボール等の厚みがあるものでもよく、ウェハ等の剛性を有する基板でもよい。さらに別の態様として、支持体は、フレキシブル(折り曲げ可能)な記録媒体を実現するために、可撓性を有する薄層ガラス、フィルム、紙等により構成されていてもよい。
【0101】
本発明における支持体の素材としては、特に限定されないが、例えば、紙;ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、スチレンブタジエンコポリマー(SBR)、ポリアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂等の樹脂;等が挙げられる。また、支持体であるプラスティックフィルムには、上記に記載した合成樹脂だけでなく天然樹脂を用いることもできる。
【0102】
さらに、保存性を高める目的で有機顔料を含有する高分子物質からなるオーバーコート層を設けても良い。さらにサーマルヘッドヘの粕付着を防止、印字画質向上、感度を向上させる目的で有機顔料、無機顔料、中空微粒子、発泡粒子等を含有するアンダーコート層を設けても良い。
【0103】
本発明において感熱記録層に使用される塩基性染料、顕色剤、増感剤、および必要に応じて添加される保存安定剤等は、例えば、水を分散媒体として、ボールミル、アトライター、サンドミル等の攪拌粉砕機によって平均粒子径が2μm以下になるように微分散され使用される。
【0104】
このように微分散された分散液に、必要に応じて、顔料、バインダー、助剤等を混合撹拌することにより感熱記録塗料は調製される。
【0105】
このようにして得られた感熱記録塗料を、乾燥後の塗布量が1.0~20g/m程度、好ましくは1.5~12g/m程度、より好ましくは2.0~7.0g/m程度、特に好ましくは3~7g/m程度になるように、支持体上に塗布し、乾燥することにより、感熱記録材料は形成される。
【0106】
感熱記録材料を形成するための塗布方法は、特に限定されるものではなく、例えば、エアーナイフコーティング、バリバーコーティング、ピュアーブレードコーティング、ロッドブレードコーティング、カーテンコーティング、ダイコーティング、スライドビロードコーティング、オフセットグラビアコーティング、5本ロールコーティング等の適当な塗工方式により塗布することができる。
【0107】
このようにして調製される感熱記録塗料を、支持体上に直接塗布することにより、支持体上に感熱記録層を積層してもよいし、支持体上にまず下塗り層を形成し、形成された下塗り層上に感熱記録層を形成してもよい。下塗り層の設けることにより、感度、画質の改善、印字粕吸収機能の改善ができる。
下塗り層の組成は、目的により適宜選択すればよいが、一般に、バインダー、顔料等が含まれる。
【0108】
下塗り層に用いられるバインダーは、感熱記録層で使用するような樹脂を用いることができる。すなわち、酸化澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉等の澱粉類;メチルセルロース、カルボキシセルロース、メトキシセルロース、メトキシセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース樹脂;カゼイン、ゼラチン、完全(または部分)鹸化ポリビニアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、珪素変性ポリビニルアルコール、アミド変性ポリビニルアルコール、スルホン酸変性ポリビニルアルコール、ブチラール変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類;スチレン-無水マレイン酸共重合体系ラテックス、スチレン-ブタジエン共重合体系ラテックス、酢酸ビニル樹脂系ラテックス、ウレタン樹脂系ラテックスおよびアクリル樹脂系ラテックス等を用いることができる。
【0109】
下塗り層に含有される無機顔料としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、珪酸アルミニウム、炭酸カルシウム等の金属酸化物、金属水酸化物、硫酸塩、炭酸塩等の金属化合物;無定形シリカ、焼成カオリン、タルク等の無機白色顔料等が挙げられる。これらのうち、特に焼成カオリンは、発色感度および粕吸収性に優れていることから、好ましく用いられる。なお、無機顔料の粒子径としては0.5~3.0μm程度のものが好ましい。
【0110】
また、下塗り層に含有される有機顔料としては、球状樹脂粒子(所謂、密実型樹脂粒子)、中空粒子、貫通孔を有する樹脂粒子、中空樹脂粒子の一部を変面で裁断して得られるような開口部を有する樹脂等が挙げられる。記録濃度を高めるには中空樹脂が、好ましく使用される。
【0111】
発色感度と粕吸着性を両立させるため、無機顔料系と有機樹脂系を併用することが一般的に行われ、無機顔料と有機顔料の使用比率が、質量比で90:10~30:70程度が好ましく、更には70:30~50:50がより好ましい。
【0112】
更に、感度の向上を図るため、発泡系樹脂を使用することもできる。
【0113】
下塗り層は、一般に水を分散媒体とし、無機顔料および有機顔料からなる群より選ばれる少なくとも1種とバインダーを混合攪拌して得られる下塗り層塗料を、支持体上に乾燥後の塗布量が1~20g/m、好ましくは5~15g/m程度となるように塗布乾燥して形成される。前記バインダー及び顔料の使用量としては、下塗り層全固形分に対してバインダーが5~40質量%程度、顔料が10~95質量%程度が好ましい。さらに、下塗り層用塗料には、必要に応じて、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、パラフィンワックス等の滑剤、蛍光染料、着色染料、界面活性剤、架橋剤等の各種助剤を添加することもできる。
【0114】
下塗り層は、1層でもよく、場合によっては2層以上設けてもよい。
【0115】
感熱記録層上に、成膜性を有するバインダーを主成分とする保護層を設けてもよい。保護層用塗料は、例えば、水を媒体とし、バインダー成分、顔料、および、必要に応じて、助剤とを混合攪拌することにより調製される。
【0116】
保護層に用いられるバインダー、顔料、および助剤としては、上記の感熱記録層で用いられるものが使用される。
【0117】
また、保護層上に光沢層を設けてもよい。光沢層としては、例えば、電子線または紫外線硬化性化合物を主成分とする塗工液を塗布後、電子線や紫外線を照射して硬化させる方法や超微粒子のコアシェル型アクリル樹脂を使用する方法等が挙げられる。さらに、支持体の裏面側に帯電防止層を設けてもよい。
【0118】
下塗り層、保護層、光沢層等を形成するための塗料は、感熱記録層と同様に、ピュアーブレードコーティング、ロッドブレードコーティング、カーテンコーティング、オフセットグラビアコーティング等の適当な塗工方式により塗布することができ、乾燥により各層が形成される。
【0119】
各層を形成した後、スーパーキャレンダー処理する等の感熱記録材料製造分野における各種の公知処理技術を適宜付加してもよい。
【実施例
【0120】
以下、合成例、実施例、および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例中、特段の記載がない限り、「部」及び「%」は、「質量部」及び「質量%」を表わす。
【0121】
(合成例1)4,4’-ウレイレン-ジ(2-ヒドロキシ安息香酸メチル)の合成
【0122】
【化14】
【0123】
温度計、攪拌機を付した四ツ口フラスコに4-アミノサリチル酸メチル100.4g(600mM)、酢酸ブチル600g、およびカルボニルジ(イミダゾール)49.6g(306mM)を仕込み、攪拌した。70℃で4時間攪拌反応した。反応液は、反応の進行にともなって一度溶解するが、再度結晶が析出しスラリー状態になる。次に、反応液を18℃まで冷却して水200g注加し、2時間攪拌した後、結晶を濾別した。濾別結晶を希塩酸、水、重層水、水で順次洗浄し、乾燥することにより、4,4’-ウレイレン-ジ(2-ヒドロキシ安息香酸メチル)の結晶49.9gを得た。図1にIRチャートを示す。
【0124】
(合成例2)4,4’-ウレイレン-ジ[2-(p-トルエンスルホニルオキシ)安息香酸メチル]の合成
【0125】
【化15】
【0126】
温度計、攪拌機を付した四ツ口フラスコに合成例1で得られた4,4’-ウレイレン-ジ(2-ヒドロキシ安息香酸メチル)7.2g(20mM)、酢酸エチル80g、およびトリエチルアミン4.8g(48mM)を仕込み、70℃に加温した。次に、p-トルエンスルホニルクロライド8.4g(44mM)を溶解した酢酸エチル溶液を滴下し、6時間攪拌した。反応終了後、有機層を塩酸、重曹水、および水で順次洗浄した。溶媒を留去した後、メタノールで結晶化させて濾別することにより、結晶を得た。
【0127】
この結晶は、4,4’-ウレイレン-ジ[2-(p-トルエンスルホニルオキシ)安息香酸メチル]であることを確認した。図2にIRチャート、図3H-NMRスペクトルチャート、図4にFDマスペクトルチャートを示す。
【0128】
(合成例3)4,4’-ウレイレン-ジ[2-(1-ナフタレンスルホニルオキシ)安息香酸メチル]の合成
【0129】
【化16】
【0130】
合成例2のp-トルエンスルホニルクロライド8.4gを1-ナフタレンスルホニルクロライド10.9g(48.1mM)に代えた以外は、合成例2と同様にして4,4’-ウレイレン-ジ[2-(1-ナフタレンスルホニルオキシ)安息香酸メチル]を合成した。図5にIRチャートを示す。
【0131】
(合成例4)4,4’-ウレイレン-ジ[2-(2-ナフタレンスルホニルオキシ)安息香酸メチル]の合成
【0132】
【化17】
【0133】
合成例3の1-ナフタレンスルホニルクロライド10.9gを2-ナフタレンスルホニルクロライド10.9g(48.1mM)に代えた以外は、合成例3と同様にして4,4’-ウレイレン-ジ[2-(2-ナフタレンスルホニルオキシ)安息香酸メチル]を合成した。図8にIRチャートを示す。
【0134】
(合成例5)4,4’-ウレイレン-ジ[2-(o-トルエンスルホニルオキシ)安息香酸メチル]の合成
【0135】
【化18】
【0136】
合成例2のp-トルエンスルホニルクロライド8.4gをo-トルエンスルホニルクロライド8.4gに代えた以外は、合成例2と同様にして4,4’-ウレイレン-ジ[2-(o-トルエンスルホニルオキシ)安息香酸メチル]を合成した。図6にIRチャートを示す。
【0137】
(合成例6)4,4’-ウレイレン-ジ[2-(ベンゼンスルホニルオキシ)安息香酸メチル]の合成
【0138】
【化19】
【0139】
合成例2のp-トルエンスルホニルクロライド8.4gをベンゼンスルホニルクロライド7.7g(43.6mM)に代えた以外は、合成例2と同様にして4,4’-ウレイレン-ジ[2-(ベンゼンスルホニルオキシ)安息香酸メチル]を合成した。図7にIRチャートを示す。
【0140】
[アンダーコート用塗料の調製]
プラスチック中空粒子(商品名:ローペイクSN-1055:中空率:55体積%、固形分26.5%)100部、焼成カオリンの50%分散液100部、スチレン-ブタジエン系ラテックス(商品名:L-1571 固形分48%)25部、酸化澱粉の10%水溶液50部、および水20部を混合して、アンダーコート用塗料を作成した。
【0141】
(実施例1)
[感熱記録塗料の作成]
A液(染料分散液の調製)
3-(N,N-ジブチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン
10部
10%ポリビニルアルコール水溶液 10部
水 16.7部
【0142】
B液(顕色剤分散液の調製)
4,4’-ウレイレン-ジ[2-(1-ナフタレンスルホニルオキシ)
安息香酸メチル](合成例3) 20部
10%ポリビニルアルコール水溶液 20部
水 33.3部
【0143】
C液(増感剤分散液の調製)
1,2-ビス(m-トリルオキシ)エタン 15部
10%ポリビニルアルコール水溶液 15部
水 25部
【0144】
上記A液、B液、およびC液の分散液をサンドグラインダーで平均粒子径が1μm以下になるまで粉砕し、下記割合で分散液を混合して塗布液とした。
A液(染料剤分散液) 36.7部
B液(顕色剤分散液) 73.3部
C液(増感剤分散液) 55.0部
【0145】
水酸化アルミニウム(商品名:ハイジライトH-42)27部、無定形シリカ(商品名:ミズカシルP-527)10部、酸化澱粉の10%溶解物100部、ステアリン酸亜鉛分散液:(商品名:ハイドリンZ-8-36)19.4部、および水50部からなる組成分を混合して感熱記録塗料を作製した。
【0146】
[感熱記録材料の作成]
支持体として坪量が53g/mの上質紙にアンダーコート用塗料を乾燥後の面積当たりの質量が6g/mとなるように塗布、および乾燥し、その後、感熱記録塗料を、乾燥後の面積当たりの質量が3.8g/mになるように塗布乾燥した。このシートをスーパーカレンダーで平滑度(JISP8155:2010)が900~1200sになるように処理して感熱記録材料を作成し、各種試験(感熱記録性試験(発色試験)、耐湿熱性試験、耐熱性試験、耐水性試験(2種類の試験法による)、および耐可塑剤性試験を下記記載の方法により実施した。試験結果は、表1に記載の通りであった。
【0147】
1.感熱記録性試験(発色試験)
作成した感熱記録材料について、感熱記録紙印字試験機(大倉電気社製TH-PMD)を用いて、印加エネルギー0.38mJ/dotで印加した。記録部の印字濃度と未印字部はマクベス反射濃度計RD-914で測定した。これを試験前サンプル(ブランク)とした。
【0148】
2.耐湿熱性試験
感熱記録性試験で印加エネルギー0.38mJ/dotで記録した感熱記録材料を試験温度40℃、90%RHの環境下に24時間放置した後、試験片の画像濃度と未印字部の濃度をマクベス反射濃度計で測定した。
【0149】
3.耐熱性試験
感熱記録性試験で印加エネルギー0.38mJ/dotで記録した感熱記録材料を試験温度60℃の恒温環境下に24時間放置した後、試験片の画像濃度と未印字部の濃度をマクベス反射濃度計で測定した。
【0150】
4.耐水性試験
感熱記録性試験で印加エネルギー0.38mJ/dotで記録した感熱記録材料を水中に15時間浸漬しその後、試験片を風乾させ、画像濃度と未印字部をマクベス反射濃度計で測定した。
【0151】
5.耐油性試験1
感熱記録性試験で印加エネルギー0.38mJ/dotで記録した感熱記録材料にサラダオイル中に10分間浸漬しその後、試験片の油をふき取り、画像濃度と未印字部をマクベス反射濃度計で測定した。
【0152】
6.耐油性試験2
感熱記録性試験で印加エネルギー0.38mJ/dotで記録した感熱記録材料にサラダオイル中に3時間浸漬し、その後、試験片の油をふき取り、画像濃度と未印字部をマクベス反射濃度計で測定した。
【0153】
7.耐可塑剤性試験
感熱記録性試験で印加エネルギー0.38mJ/dotで記録した感熱記録材料に、ポリカーボネートパイプ(48mmφ)上にラップフィルム(商品名:ハイラップ(登録商標)KMA、三井化学製)を3重に巻き付け、感熱記録材料を乗せ、更にその上にラップフィルムを3重に巻き付け20℃、65%RHの環境下で24時間放置し、その後、画像濃度と未印字部をマクベス反射濃度計で測定した。
【0154】
(実施例2)
実施例1のB液の4,4’-ウレイレン-ジ[2-(1-ナフタレンスルホニルオキシ)安息香酸メチル](合成例3)を4,4’-ウレイレン-ジ[2-(p-トルエンスルホニルオキシ)安息香酸メチル](合成例2)に代えた以外は、実施例1と同様の操作をおこなった。
【0155】
(実施例3)
実施例1のB液の4,4’-ウレイレン-ジ[2-(1-ナフタレンスルホニルオキシ)安息香酸メチル](合成例3)を4,4’-ウレイレン-ジ[2-(2-ナフタレンスルホニルオキシ)安息香酸メチル](合成例4)に代えた以外は、実施例1と同様の操作をおこなった。この実施例による感熱記録材料の各種試験結果は、表1に記載の通りであった。
【0156】
(実施例4)
実施例1のB液の4,4’-ウレイレン-ジ[2-(1-ナフタレンスルホニルオキシ)安息香酸メチル](合成例3)を4,4’-ウレイレン-ジ[2-(ベンゼンスルホニルオキシ)安息香酸メチル](合成例6)に代えた以外は、実施例1と同様の操作をおこなった。この実施例による感熱記録材料の各種試験結果は、表1に記載の通りであった。
【0157】
(実施例5)
実施例1のB液の4,4’-ウレイレン-ジ[2-(1-ナフタレンスルホニルオキシ)安息香酸メチル](合成例3)を4,4’-ウレイレン-ジ[2-(o-トルエンスルホニルオキシ)安息香酸メチル](合成例5)に代えた以外は、実施例1と同様の操作をおこなった。この実施例による感熱記録材料の各種試験結果は、表1に記載の通りであった。
【0158】
(比較例1)
実施例1のB液の4,4’-ウレイレン-ジ[2-(1-ナフタレンスルホニルオキシ)安息香酸メチル](合成例3)をN-3-[(p-トルエンスルホニル)オキシ]フェニル-N’-(p-トルエンスルホニル)-尿素に代えた以外は、実施例1と同様の操作をおこなった。この比較例による感熱記録材料の各種試験結果は、表1に記載の通りであった。
【0159】
(比較例2)
実施例1のB液の4,4’-ウレイレン-ジ[2-(1-ナフタレンスルホニルオキシ)安息香酸メチル](合成例3)をN-(2-(3-フェニルウレイド)フェニル)ベンゼンスルホンアミドに代えた以外は、実施例1と同様の操作をおこなった。この比較例による感熱記録材料の各種試験結果は、表1に記載の通りであった。
【0160】
(比較例3)
実施例1のB液の4,4’’-ウレイレン-ジ[2-(1-ナフタレンスルホニルオキシ)安息香酸メチル](合成例3)をN-3-[(p-トルエンスルホニル)オキシ]フェニル-N’-フェニル-尿素に代えた以外は、実施例1と同様の操作をおこなった。この比較例による感熱記録材料の各種試験結果は、表1に記載の通りであった。
【0161】
(比較例4)
実施例1のB液の4,4’-ウレイレン-ジ[2-(1-ナフタレンスルホニルオキシ)安息香酸メチル](合成例3)をN,N’-ジ-[3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素に代えた以外は、実施例1と同様の操作をおこなった。この比較例による感熱記録材料の各種試験結果は、表1に記載の通りであった。
【0162】
(比較例5)
実施例1のB液の4,4’-ウレイレン-ジ[2-(1-ナフタレンスルホニルオキシ)安息香酸メチル](合成例3)をビスフェノールAに代えた以外は、実施例1と同様の操作をおこなった。この比較例による感熱記録材料の各種試験結果は、表1に記載の通りであった。
【0163】
(比較例6)
実施例1のB液の4,4’-ウレイレン-ジ[2-(1-ナフタレンスルホニルオキシ)安息香酸メチル](合成例3)をビスフェノールSに代えた以外は、実施例1と同様の操作をおこなった。この比較例による感熱記録材料の各種試験結果は、表1に記載の通りであった。
【0164】
実施例1~5、および比較例1~6の試験結果は、表1に記載の通りであった。
【0165】
【表1】
【0166】
実施例、および表1より明らかなように、本発明のウレイレン-ジ(ヒドロキシ安息香酸エステル)誘導体から作製される感熱記録材料は、非印字部の白色度が高く、良好な発色濃度を示し、印字部の耐湿熱性、耐熱性、耐水性、耐油性、および耐可塑剤性の全ての保存性試験に於いても良好であり、特に耐油性および耐可塑剤性にすぐれていた。
【産業上の利用可能性】
【0167】
本発明のウレイレン-ジ(ヒドロキシ安息香酸エステル)誘導体から作製される感熱記録材料は、使用する顕色剤が、一般式(1)で表されるウレイレン-ジ(ヒドロキシ安息香酸エステル)誘導体であるため、非印字部の白色度が高く、良好な発色濃度を示し、更に全ての保存性試験で良好な保存性が得られ、従来の感熱記録材料に代わるものとして産業上の利用可能性は極めて有望である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8