(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】エンジンキーの抜き忘れ防止装置および抜き忘れ防止システム
(51)【国際特許分類】
F02D 29/02 20060101AFI20231120BHJP
【FI】
F02D29/02 K
(21)【出願番号】P 2023080506
(22)【出願日】2023-05-16
【審査請求日】2023-07-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523101903
【氏名又は名称】株式会社徳島機械センター
(74)【代理人】
【識別番号】100085316
【氏名又は名称】福島 三雄
(74)【代理人】
【識別番号】100171572
【氏名又は名称】塩田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100213425
【氏名又は名称】福島 正憲
(74)【代理人】
【識別番号】100221707
【氏名又は名称】宮崎 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100099977
【氏名又は名称】佐野 章吾
(74)【代理人】
【識別番号】100104259
【氏名又は名称】寒川 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100229116
【氏名又は名称】日笠 竜斗
(72)【発明者】
【氏名】新田 国男
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-144183(JP,A)
【文献】特開2002-013425(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0217444(US,A1)
【文献】特開2010-159108(JP,A)
【文献】国際公開第2005/045778(WO,A1)
【文献】特開2003-034954(JP,A)
【文献】特開平03-176252(JP,A)
【文献】特開2021-109518(JP,A)
【文献】特開2023-005818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 29/00
E02F 9/00
G08B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンキーシリンダの操作によって始動するエンジンと、前記エンジンを制御するエンジン制御手段とを備えた車両において、
前記エンジンの作動状態を検知するエンジン状態検知手段と、
前記車両の運転席からの離席を検知する離席検知手段と、
所定の警報を出力する警報手段と、
前記車両のエンジン始動時に運転者識別用の情報を入力する情報入力手段と、
所定の情報を外部に送信する送信手段と、
制御手段と、を有し、
前記制御手段は、前記エンジン状態検知手段でエンジンの作動が検知されているときに、前記離席検知手段によって運転席からの離席が検知されると、前記警報手段を介して所定の警報を出力させる
とともに、離席の検知を示す離席検知情報と前記情報入力手段に入力された運転者識別用の情報とを対応付けて前記送信手段から送信する制御構成を備えた
ことを特徴とするエンジンキーの抜き忘れ防止装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記エンジン状態検知手段でエンジンの作動が検知されているときに、前記離席検知手段によって運転席からの離席が検知されると、離席の検知から所定時間経過後に
、前記エンジン制御手段に前記エンジンの停止を指令するエンジン停止信号を送信する制御構成を備えた
ことを特徴とする請求項1に記載のエンジンキーの抜き忘れ防止装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記離席検知情報を送信する前に、前記エンジンの始動から離席が検知されるまでの燃費情報を前記エンジン制御手段から取得するとともに、取得した燃費情報を前記離席検知情報とともに前記送信手段から送信する制御構成を備えた
ことを特徴とする請求項
1または2に記載のエンジンキーの抜き忘れ防止装置。
【請求項4】
1または複数の請求項
1から3のいずれかに記載のエンジンキーの抜き忘れ防止装置と、前記送信手段から送信される情報の受信手段を備えた管理装置とからなるエンジンキーの抜き忘れ防止システムであって、
前記管理装置は、前記受信した情報を表示する表示手段を備えている
ことを特徴とするエンジンキーの抜き忘れ防止システム。
【請求項5】
前記エンジンキーの抜き忘れ防止装置と前記管理装置とは、コンピュータネットワークを介して通信接続されている
ことを特徴とする請求項
4に記載のエンジンキーの抜き忘れ防止システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジンキーの抜き忘れ防止装置および抜き忘れ防止システムに関し、より詳細には、工事現場などで使用される作業用車両におけるエンジンキーの抜き忘れを防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ブルドーザ、油圧ショベル、クレーン車、フォークリフトなどの作業用車両のなかにはエンジンキーシリンダを備えた車両が多く存在する。この種の車両では、周知のとおり、エンジンで発生する動力は、車両を走行させるために用いられるほか、車載機材(たとえば、排土板、バケット、クレーン、フォークなど)の駆動源としても用いられることから、走行中のみならず作業中においても、エンジンキーはエンジンキー用のキーシリンダ(エンジンキーシリンダ)に差し込まれている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、このような作業用車両について、車載機材のオペレータである作業員が作業中に車両を離れる場合、安全管理上、作業員は車両のエンジンを停止させて、エンジンキーシリンダからエンジンキーを抜き取ることが奨励されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来のやり方には以下のような問題があった。
すなわち、従来のようにエンジンキーの抜き取りを作業員の自発的行動に委ねるやり方では、エンジンキーの抜き忘れを防止することは困難であった。すなわち、従来のやり方では、たとえ作業員が細心の注意を払っていても、うっかりミスの発生を防止することはできない。また、エンジンキーの抜き取り前にエンジンを停止させることで油断が生じ、エンジンキーを抜き忘れるといったこともあった。そのため、エンジンキーの抜き忘れによる事故、たとえば、作業員の服が車載機材の操作レバーに引っかかって車載機材が誤動作するといったような事故、特に誤動作による重篤事故が年に一度程度の割合で生じており、その解消が強く望まれていた。
【0006】
さらに、雇用主には作業員の安全に配慮する義務(安全配慮義務)があることから、エンジンキーの抜き忘れ防止を作業員の自覚だけに委ねるのは好ましくない。エンジンキーシリンダにエンジンキーが残ったままであると、意図しないタイミングで車載機材が作動するおそれがあることから、安全管理上、作業員の自発的行動に頼らないエンジンキーの抜き忘れを防止策が望まれていた。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、作業員の意思を介さずにエンジンキーの抜き忘れを防止し、それにより車載機材の誤動作による事故の発生を防止し得るエンジンキーの抜き忘れ防止装置および抜き忘れ防止システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係るエンジンキーの抜き忘れ防止装置は、エンジンキーシリンダの操作によって始動するエンジンと、上記エンジンを制御するエンジン制御手段とを備えた車両において、上記エンジンの作動状態を検知するエンジン状態検知手段と、上記車両の運転席からの離席を検知する離席検知手段と、所定の警報を出力する警報手段と、上記車両のエンジン始動時に運転者識別用の情報を入力する情報入力手段と、所定の情報を外部に送信する送信手段と、制御手段と、を有し、上記制御手段は、上記エンジン状態検知手段でエンジンの作動が検知されているときに、上記離席検知手段によって運転席からの離席が検知されると、上記警報手段を介して所定の警報を出力させるとともに、離席の検知を示す離席検知情報と上記情報入力手段に入力された運転者識別用の情報とを対応付けて上記送信手段から送信する制御構成を備えたことを特徴とする。
【0009】
この発明では、エンジン作動中に運転席からの離席が検知されると、警報手段を通じてエンジンキーの抜き忘れを報知する所定の警報(たとえば、警報音)が出力されるので、作業員はエンジンキーを抜き忘れていることを確実に認識することができ、エンジンキーの抜き忘れを防止できる。
また、この発明では、エンジン作動中に運転席からの離席が検知されると、離席の検知を示す離席検知情報と運転者識別用の情報とが対応付けられて外部に送信されるので、車両の管理者は、送信された情報からどの作業員がエンジンを作動させたまま離席したかを正確に把握することができる。そのため、たとえば、エンジンを作動させたままの離席を常習的に繰り返すような作業員を容易に特定することができるので、対象者を絞った安全教育を実施するなど安全管理を徹底できる。
【0010】
そして、本発明はその好適な実施態様として、上記制御手段は、上記エンジン状態検知手段でエンジンの作動が検知されているときに、上記離席検知手段によって運転席からの離席が検知されると、離席の検知から所定時間経過後に、上記エンジン制御手段に上記エンジンの停止を指令するエンジン停止信号を送信する制御構成を備えたことを特徴とする。
【0011】
この発明では、エンジン作動中に運転席からの離席が検知されてから所定時間が経過すると、エンジン制御手段に対してエンジンの停止を指令するエンジン停止信号が送信され、強制的にエンジンが停止させられる。したがって、運転席に作業員がいない状態でエンジンが作動状態のまま放置されるといった不適切な事態が発生が防止される。そのため、この発明によれば、作業員不在時における車載機材の誤操作、誤動作を防止することができる。
【0014】
また、他の好適な実施態様として、上記制御手段は、上記離席検知情報を送信する前に、上記エンジンの始動から離席が検知されるまでの燃費情報を上記エンジン制御手段から取得するとともに、取得した燃費情報を上記離席検知情報とともに上記送信手段から送信する制御構成を備えたことを特徴とする。
【0015】
この発明では、運転者識別用の情報を送信する際、運転者識別用の情報とともに燃費情報も送信されるので、車両の管理者は、送信された情報からエンジンを作動させたまま離席した作業員に関して、車両操作時の燃費を把握することができる。そのため、車両操作時の燃費が悪い作業員を特定することができるので、対象者を絞った作業効率改善(燃費改善)に向けた作業指導を実施することができる。
【0016】
また、本発明に係るエンジンキーの抜き忘れ防止システムは、1または複数のエンジンキーの抜き忘れ防止装置と、上記送信手段から送信される情報の受信手段を備えた管理装置とからなるエンジンキーの抜き忘れ防止システムであって、上記管理装置は、上記受信した情報を表示する表示手段を備えていることを特徴とする。
【0017】
この発明では、エンジンキーの抜き忘れ防止装置の送信手段から送信される情報の受信手段を備えた管理装置に対して、1または複数のエンジンキーの抜き忘れ防止装置によってエンジンキーの抜き忘れ防止システムが構成されるので、たとえば、工事現場のように複数の作業用車両が配置される現場において、各車両のエンジンキーの抜き忘れ防止措置を図るとともに、エンジンを作動させたままの離席を常習的に繰り返す作業員の特定などを一元管理することができる。
【0018】
そして、他の好適な実施態様として、上記エンジンキーの抜き忘れ防止装置と上記管理装置とは、コンピュータネットワークを介して通信接続されていることを特徴とする。
【0019】
この発明では、エンジンキーの抜き忘れ防止装置と管理装置とがコンピュータネットワークを介して通信接続されるので、たとえば、コンピュータネットワークとしてインターネットを利用することで、遠隔地から複数の工事現場の作業用車両を管理することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、エンジン作動中に運転席からの離席が検知されると、エンジンキーの抜き忘れを報知する所定の警報が出力されるので、エンジンキーの抜き忘れを確実に防止できる。また、エンジンキーの抜き忘れを有効に防止できることにより、車載機材の誤動作による事故の発生についても効果的に防止し得る。
【0021】
また、エンジン作動中に運転席からの離席が検知されてから所定時間が経過すると、強制的にエンジンが停止させられるので、エンジンが作動状態のまま車両が放置されるといった事態の発生が防止され、車載機材の誤操作、誤動作を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係るエンジンキーの抜き忘れ防止システムの概略構成の一例を示すシステム構成図である。
【
図2】同システムにおけるエンジンキーの抜き忘れ防止装置の概略構成の一例を機能的に示したブロック図である。
【
図3】同エンジンキーの抜き忘れ防止装置における処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、図面全体にわたって同一の符号は同一の構成部材または要素を示している。
【0024】
図1は、本発明に係るエンジンキーの抜き忘れ防止システムの概略構成を示している。
本発明に係るエンジンキーの抜き忘れ防止システム1は、主として、ブルドーザ、油圧ショベル、クレーン車、フォークリフトなどの作業用の車両4において、エンジンキーの抜き忘れを防止するためのシステムであって、エンジンキーの抜き忘れ防止装置2を搭載した車両4,4,…と、車両4,4,…に搭載されたエンジンキーの抜き忘れ防止装置2から送信される情報を受信する管理装置3と、これらを通信接続するネットワークNとを主要部として構成されている。
【0025】
ここで、車両4は、エンジンキー100の操作によってエンジン41が始動するように構成された車両であって、たとえば、ブルドーザ、油圧ショベル、ダンプトラック、クレーン車、フォークリフト、ロードローラーなどの作業用の車両が例示される。作業用の車両4は、車両としての走行機能に加えて、作業を実施するための車載機材を備えている。たとえば、ブルドーザであれば、走行機能を実現するための無限軌道機構に加えて、作業用の排土板とその駆動機構、油圧ショベルであれば、走行機能を実現するための無限軌道機構に加えて、作業用のバケットとその駆動機構、ダンプトラックであれば、走行機能を実現するタイヤを備えた走行機構に加えて、荷台とその駆動機構を備えている。
【0026】
本発明に係るエンジンキーの抜き忘れ防止システム1は、このような作業用の車両4を対象としたシステムであって、1または複数の車両4がネットワークNを介して管理装置3と通信接続される。なお、
図1では、車両4として、油圧ショベル、ブルドーザ、クレーン車を図示している。
【0027】
図2は、車両4とエンジンキーの抜き忘れ防止装置2の構成を示している。
図2に示すように、車両4は、動力源となるエンジン41と、エンジン始動用のエンジンキー100によって操作されるエンジンキーシリンダ42と、主にエンジン41の制御を行うエンジン制御手段43と、クラクション44と、圧力センサ45とを有している。
【0028】
エンジン41は、主として、ガソリン、軽油などを燃料とする原動機で構成される。車両4は、このエンジン41で発生するエネルギを動力源として、走行と車載機材の駆動とを行うように構成されている。
【0029】
エンジンキーシリンダ42は、エンジン41の始動/停止の操作部を兼ねたキーシリンダである。エンジンキーシリンダ42には、たとえば、エンジン停止位置、セルモータ(図示せず)の作動準備を兼ねたエンジン作動位置、セルモータ作動位置などが備えられ、エンジンキーシリンダ42に差し込まれたエンジンキー100をエンジン停止位置からエンジン作動位置を経てセルモータ作動位置まで回すことでセルモータが作動してエンジン41が始動する。また、エンジン作動位置にあるエンジンキー100をエンジン停止位置まで回すことでエンジン41が停止する。
【0030】
エンジン制御手段43は、主として、エンジン41の制御を行う制御装置であって、たとえば、エンジン制御用のプログラム、燃費計算用のプログラムなどの各種プログラムを備えたマイクロコンピュータ(たとえば、ECU:Electronic Control Unit)で構成される。なお、本実施形態に示すエンジン制御手段43は、このようなエンジン41の制御に加えて、エンジンキーの抜き忘れ防止装置2と情報のやり取りを行えるようになっており、そのためのプログラムも備えられている(詳細は後述する)。
【0031】
図2において、符号44は車両4に備えれられたクラクション機構を示しており、このクラクション機構44は外部から与えれられる所定の電気信号によって鳴動可能に構成されている。また、符号45は後述する離席検知手段と協働する圧力センサであり、たとえば、車両4の運転席下に配置され、運転席への着座の有無を検出できるように構成されている。
【0032】
エンジンキーの抜き忘れ防止装置2は、エンジン41の作動中に、エンジンキー100を抜かないまま作業員が運転席から離席するのを防止するための装置であって、エンジン41の作動状態を検知するエンジン状態検知手段21と、車両4の運転席からの離席を検知する離席検知手段22と、所定の警報を出力する警報手段23と、エンジン始動時に運転者識別用の情報を入力する情報入力手段24と、所定の情報を外部に送信する通信手段(送信手段)25と、制御手段26とを主要部として有している。
【0033】
エンジン状態検知手段21は、車両4のエンジン制御手段43と通信可能に構成されており、エンジン制御手段43からエンジン41の作動状態(エンジン41が作動中であるか否か)に関する情報を取得する。また、離席検知手段22は、車両4の運転席に配置された圧力センサ45の検知信号に基づいて、運転席からの離席を検出する。
【0034】
警報手段23は、後述する離席検知時などに車両4の運転者(作業員)に対して注意を促す警報を出力する手段である。本実施形態では、警報手段23は、車両4のクラクション44を鳴動させる電気信号を出力可能に構成されており、制御手段26からの指令によってクラクション44を鳴動させるように構成されている。
【0035】
情報入力手段24は、運転者識別用の情報を入力するための入力手段であって、本実施形態では、非接触で運転者の情報を取得可能な情報読取装置が用いられる。たとえば、運転者を識別する情報として社員IDが用いられる場合、情報入力手段24としては、社員IDが格納されたICカード(社員証など)から社員IDを読み取ることができるカードリーダが用いられ、このカードリーダにICカードをかざすことで、運転者の情報となる社員IDが読み取られる(入力される)ようになっている。なお、情報入力手段24で読み取った社員IDは、制御手段26の記憶領域に記憶される。
【0036】
通信手段25は、情報入力手段24に入力された情報など、所定の情報を外部に送信する送信手段を構成するものである。本実施形態では、この通信手段25としては、ネットワークNと無線による通信接続が可能な通信装置が用いられる。
【0037】
制御手段26は、エンジンキーの抜き忘れ防止装置2の各部を制御する制御装置であって、たとえば、後述するエンジンキーの抜き忘れ防止処理を実行するためのプログラムを備えたマイコンで構成される。なお、本実施形態では、上述したエンジン状態検知手段21、離席検知手段22および警報手段23は、制御手段26に備えられたプログラムによってその機能が実現される。
【0038】
管理装置3は、ネットワークNを介してエンジンキーの抜き忘れ防止装置2から送信される情報を受信する受信手段を備えた装置であって、本実施形態では、ネットワークNと通信接続可能なコンピュータで構成される。具体的には、管理装置3としては、受信した情報を表示する表示手段(たとえば、液晶ディスプレイなど)を備えたコンピュータが用いられる。なお、本実施形態では、この管理装置3には、社員IDと社員(たとえば、社員の氏名)とを対応付けたデータテーブルが備えられており、社員IDから社員の氏名などを特定できるようになっている。
【0039】
ネットワークNは、エンジンキーの抜き忘れ防止装置2と管理装置3とを通信接続する通信ネットワークであって、インターネットなどのWAN(Wide Area Network)やLAN(Local Area Network)などのコンピュータネットワークが例示される。たとえば、本発明に係るエンジンキーの抜き忘れ防止システム1を用いて、遠隔地にある車両4の管理を行う場合にはネットワークNとしてインターネットが好適に用いられる。また、工場内など比較的狭いエリア内にある車両4の管理を行う場合にはLANなどのコンピュータネットワークが用いられる。
【0040】
次に、このように構成されたエンジンキーの抜き忘れ防止システム1によるエンジンキーの抜き忘れ防止処理について
図3を参照しながら説明する。
【0041】
(1)本発明に係るエンジンキーの抜き忘れ防止システム1では、車両4のエンジン41を始動する場合、エンジンキーの抜き忘れ防止装置2の情報入力手段24に、社員IDが格納された社員証(ICカード)をかざして、運転者の情報となる社員IDを読み取らせてからエンジン41を始動する。
【0042】
(2)エンジン41が始動すると、エンジン状態検知手段21において、エンジン41の作動が検知される(
図3ステップS1で「Yes」参照)。
【0043】
(3)エンジン状態検知手段21においてエンジン41の作動が検知されると、次に、制御手段26は、離席検知手段22を介して、車両4の運転席からの離席の有無を判断する(
図3ステップS2参照)。
【0044】
(4)離席検知手段22において運転席からの離席が検知される(すなわち、エンジン41の作動が検知されている状態で運転席からの離席が検知される)と、制御手段26は、警報手段23を介して所定の警報を出力するとともに、所定時間T(たとえば、数十秒乃至数分)の経過をカウントするタイマのカウントを開始させる(
図3ステップS3参照)。
【0045】
本実施形態では、警報手段23は車両4のクラクション44を使って警報を出力するように構成されているので、運転席からの離席を検知した時点で、警報手段23はクラクション44を鳴動させる電気信号を出力する。これにより、車両4のクラクション44が鳴動し、エンジン41の作動中の離席であることがクラクションの鳴動によって作業員に伝達される。
【0046】
ここで、警報によりエンジンキー100の抜き忘れに気付いた作業員が運転席に戻った場合には、
図3ステップS2の判断が否定的になり警報は停止する。また、エンジンキーシリンダ42からエンジンキー100を抜き取った場合には、
図3ステップS1の判断が否定的になりこの場合も警報は停止する。
【0047】
(5)これに対し、運転席への復帰やエンジンキー100の抜き取りがないまま所定時間Tが経過すると(
図3ステップS4で「Yes」参照)、次に、制御手段26は、エンジン制御手段43に対して、エンジン41の停止を指令するエンジン停止信号を送信するとともに、離席検知手段22において離席が検知されたことを示す離席検知情報と情報入力手段24に入力された運転者識別用の情報(社員ID)とを対応付けて、これらの情報を通信手段25を通じて管理装置3に送信する(
図3ステップS5参照)。
【0048】
これにより、エンジン制御手段43は、受信したエンジン停止信号に従って作動中のエンジン41を停止させる。そのため、車両4の運転席に作業員がいない状態でエンジン41が作動状態のまま放置されるといった不適切な事態が解消され、作業員不在による車載機材の誤操作、誤動作が防止される。
【0049】
また、離席が検知された車両4からは、離席検知情報とともにエンジン41を始動させた作業員の社員IDが送信されるので、管理者側は、受信したこれらの情報を管理装置3の表示手段に表示することで、誰がエンジンキー100を抜かずに離席したかを正確に把握することができる。そのため、たとえば、エンジン41を作動させたままの離席を常習的に繰り返す作業員を特定することができる。
【0050】
このように、本発明に係るエンジンキーの抜き忘れ防止システム1によれば、エンジン41の作動中に運転席からの離席が検知されると、エンジンキーの抜き忘れを報知する所定の警報が出力されるので、エンジンキー100の抜き忘れを確実に防止できる。
【0051】
また、エンジン41が作動中に運転席からの離席が検知されてから所定時間Tが経過すると、強制的にエンジン41が停止させられるので、エンジン41が作動状態のまま車両4が放置されるといった事態が防止され、車載機材の誤操作、誤動作を防止することができる。
【0052】
なお、上述した実施形態はあくまでも本発明の好適な実施態様を示すものであって、本発明はこれらに限定されることなくその範囲内で種々の設計変更が可能である。
【0053】
例えば、上述した実施形態では、警報手段23は、車両4のクラクション44を利用して警報を出力するように構成した場合を示したが、クラクション44以外を通じて警報を出力するように構成することも可能である。たとえば、エンジンキーの抜き忘れ防止装置2に音声出力手段を備えさせておき、エンジンキーの抜き忘れを報知する音声メッセージを出力するように構成することができる。また、音声以外の振動や回転灯などによって警報を出力するように構成することも可能である。
【0054】
また、上述した実施形態では、エンジンキーの抜き忘れ防止装置2では、警報を出力してから所定時間Tが経過した時点で、エンジン停止信号の送信と離席検知情報の送信とを行うように構成したが、いずれか一方のみを行うように構成することも可能である。
【0055】
また、上述した実施形態では、離席検知情報に対応付けて運転者識別用の情報を送信する場合を示したが、運転者識別用の情報とともに、たとえば、制御手段26が、エンジン41の始動から離席が検知されるまでの間の燃費情報をエンジン制御手段43から取得し、取得した燃費情報を送信するように構成することも可能である。このように、運転者識別用の情報とともに燃費情報も送信することで、車両の管理者は、送信された情報からエンジン41を作動させたまま離席した作業員に関して、車両操作時の燃費を把握することができる。そのため、車両操作時の燃費が悪い作業員を特定することができるので、対象者を絞った作業効率改善(燃費改善)に向けた作業指導を実施することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 エンジンキーの抜き忘れ防止システム
2 エンジンキーの抜き忘れ防止装置
3 管理装置
4 車両
21 エンジン状態検知手段
22 離席検知手段
23 警報手段
24 情報入力手段
25 通信手段(送信手段)
41 エンジン
42 エンジンキーシリンダ
43 エンジン制御手段
44 クラクション
45 圧力センサ
【要約】
【課題】作業員の意思を介さずにエンジンキーの抜き忘れを防止し、それにより車載機材の誤動作による事故の発生を防止し得るエンジンキーの抜き忘れ防止装置および抜き忘れ防止システムを提供する。
【解決手段】エンジンキーシリンダ42の操作によって始動するエンジン41と、エンジン41を制御するエンジン制御手段43とを備えた車両4において、エンジン41の作動状態を検知するエンジン状態検知手段21と、車両4の運転席からの離席を検知する離席検知手段22と、クラクション44を通じて警報を出力する警報手段23と、制御手段26とを有する。制御手段26は、エンジン状態検知手段21でエンジン41の作動が検知されているときに、離席検知手段22によって運転席からの離席が検知されると、警報手段23を介して所定の警報を出力して、エンジンキー100の抜き忘れを報知する。
【選択図】
図2