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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】電池監視システム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/36 20200101AFI20231120BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20231120BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20231120BHJP
   B60L 3/00 20190101ALN20231120BHJP
【FI】
G01R31/36
H01M10/48 P
H02J7/00 P
H02J7/00 Y
B60L3/00 S
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018009101
(22)【出願日】2018-01-23
(65)【公開番号】P2019128207
(43)【公開日】2019-08-01
【審査請求日】2020-12-18
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】刀根 健豪
(72)【発明者】
【氏名】山野 槙一
【合議体】
【審判長】岡田 吉美
【審判官】田邉 英治
【審判官】後藤 慎平
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-150621(JP,A)
【文献】特開2016-116276(JP,A)
【文献】特開2010-286445(JP,A)
【文献】特開2010-200574(JP,A)
【文献】特開2010-148252(JP,A)
【文献】特開2007-225562(JP,A)
【文献】特開平10-253682(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0058276(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第106291427(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36-31/396
G01R 31/28-31/3193
H01M 10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池の充電率を演算する演算装置と、前記電池が充電又は放電されるときの電流値を検出する電流センサと、前記電池の電圧値を検出する電圧センサとを備え、前記演算装置が故障したか否かを監視する電池監視システムであって、
前記電流センサから取得する前記電流値と前記電圧センサから取得する前記電圧値に基づいて前記演算装置が演算した前記電池の第1充電率を取得する第1充電率取得手段と、
前記第1充電率を取得した後、前記電流センサから取得する前記電池の前記電流値を所定時間分積算した積算電流量が所定値に達した際に、前記電流センサから取得する前記電流値と前記電圧センサから取得する前記電圧値に基づいて前記演算装置が演算した前記電池の第2充電率を取得する第2充電率取得手段と、
前記第1充電率、及び前記第2充電率に基づいて前記演算装置の故障を判定する判定手段と、
を備え
前記所定値は、前記電池の充電率を最小分解能値だけ変化させる電流量値であり、
前記判定手段は、前記第1充電率と前記第2充電率との差の絶対値が前記充電率の変化を示す前記最小分解能値未満のときに、前記演算装置の故障を判定す
ことを特徴とする電池監視システム。
【請求項2】
前記判定手段により前記演算装置の故障であると判定した後、前記第1充電率取得手段により前記第1充電率、及び前記第2充電率取得手段により前記第2充電率を取得し、前記判定手段による判定を繰り返す判定ループ手段を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の電池監視システム。
【請求項3】
前記判定手段による判定結果が前記演算装置の故障であると判定した場合、表示部にアラートを表示する指示を送信するアラート送信手段と、
前記演算装置の故障であると判定した後に、前記演算装置の故障でないと判定した場合、前記表示部に表示しているアラートを停止させる指示を送信するアラート停止手段と、
を備えることを特徴とする請求項に記載の電池監視システム。
【請求項4】
電池の充電率を演算する演算装置と、前記電池が充電又は放電されるときの電流値を検出する電流センサと、前記電池の電圧値を検出する電圧センサとを備え、前記演算装置が故障したか否かを監視する電池監視システムであって、
前記電流センサから取得する前記電流値と前記電圧センサから取得する前記電圧値に基づいて前記演算装置が演算した前記電池の第1充電率を取得する第1充電率取得手段と、
前記第1充電率を取得した後、前記電流センサから取得する前記電池の前記電流値を所定時間分積算した積算電流量が所定値に達した際に、前記電流センサから取得する前記電流値と前記電圧センサから取得する前記電圧値に基づいて前記演算装置が演算した前記電池の第2充電率を取得する第2充電率取得手段と、
前記第2充電率を取得した後、前記第1充電率が取得されてから所定時間経過した際に、前記電流センサから取得する前記電池の前記電流値と前記電圧センサから取得する前記電圧値に基づいて前記演算装置が演算した前記電池の第3充電率を取得する第3充電率取得手段と、
前記第1充電率、前記第2充電率、及び前記第3充電率を比較し、前記演算装置の故障を判定する判定手段と、を備え、
前記判定手段は、前記第1充電率、前記第2充電率、及び前記第3充電率が実質的に同一値である場合に、前記演算装置の故障を判定する、
ことを特徴とする電池監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、二次電池の充放電電流値を測定する電流センサの異常を検出する技術が知られている。
【0003】
具体的には、電池ECUが、第1の算出回路により算出されたSOCと第2の算出回路により算出されたSOCとの差の絶対値が予め定められたしきい値を越えると、電流センサが異常であると判断することにより、電流センサの異常を的確にかつ広範囲に検出する技術である(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-251744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電動車両等に用いられる電池では、一般に電池の充電率(SOC:State Of Charge)を演算する演算装置が搭載されている。例えば、このように演算されるSOCを用いて電動車両は、モーターのみで走行可能な残りの走行時間や走行距離をドライバに表示したり、又は走行モードを変更する。
【0006】
このため、常時、正確なSOCを取得する必要がある。しかし、SOCを演算する演算装置も何らかの要因で故障する場合がある。このように演算装置に故障が発生すると、正確なSOCを演算できなくなるため、電動車両の各種制御に支障をきたすことになる。
【0007】
ここで、特許文献1に記載の技術は、電流センサの異常を的確にかつ広範囲に検出する技術であり、電池のSOCを演算する演算装置の故障を検出する技術ではない。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、電池の充電率を演算する演算装置の故障を確実に検出することができる電池監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、電池の充電率を演算する演算装置と、前記電池が充電又は放電されるときの電流値を検出する電流センサと、前記電池の電圧値を検出する電圧センサとを備え、前記演算装置が故障したか否かを監視する電池監視システムであって、前記電流センサから取得する前記電流値と前記電圧センサから取得する前記電圧値に基づいて前記演算装置が演算した前記電池の第1充電率を取得する第1充電率取得手段と、前記第1充電率を取得した後、前記電流センサから取得する前記電池の前記電流値を所定時間分積算した積算電流量が所定値に達した際に、前記電流センサから取得する前記電流値と前記電圧センサから取得する前記電圧値に基づいて前記演算装置が演算した前記電池の第2充電率を取得する第2充電率取得手段と、前記第1充電率、及び前記第2充電率に基づいて前記演算装置の故障を判定する判定手段と、を備え、前記所定値は、前記電池の充電率を最小分解能値だけ変化させる電流量値であり、前記判定手段は、前記第1充電率と前記第2充電率との差の絶対値が前記充電率の変化を示す前記最小分解能値未満のときに、前記演算装置の故障を判定することを特徴とする。
【0010】
このように、第1充電率、及び第2充電率に基づいて演算装置の故障を判定するため、電池監視システムは、演算装置の故障を確実に検出することができる。
【0012】
また、電池監視システムは、前記判定手段により前記演算装置の故障の判定をした後、前記第1充電率取得手段により前記第1充電率、及び前記第2充電率取得手段により前記第2充電率を取得し、前記判定手段による判定を繰り返す判定ループ手段を備えるようにしてもよい。
【0013】
このように構成すると、繰り返し判定を行うことができるため、電池監視システムは、車両が起動している期間中、演算装置の故障を判定することができる。
【0014】
さらに、前記判定手段による判定結果が前記演算装置の故障であると判定した場合、表示部にアラートを表示する指示を送信するアラート送信手段と、前記演算装置が故障であると判定した後に、前記演算装置が故障でないと判定した場合、前記表示部に表示しているアラートを停止させる指示を送信するアラート停止手段と、を備えるようにしてもよい。
【0015】
このように構成すると、例えば、演算装置の故障を判定したときに表示したアラートを、その故障が解消された場合に、取り消すことが可能になる。
【0016】
さらに、前記第2充電率を取得した後、前記第1充電率が取得されてから所定時間経過した際に、前記電流センサから取得する前記電池の前記電流値と前記電圧センサから取得する前記電圧値に基づいて前記演算装置が演算した前記電池の第3充電率を取得する第3充電率取得手段を更に備え、前記判定手段は、前記第1充電率、前記第2充電率、及び前記第3充電率を比較し、前記演算装置の故障を判定するようにしてもよい。
【0017】
このように構成すると、時間的に異なる3つの充電率(第1充電率、第2充電率、及び第3充電率)を比較し、演算装置の故障を判定するため、電池監視システムは、より正確な判定を行うことが可能になる。
【0018】
また、前記判定手段は、前記第1充電率、前記第2充電率、及び前記第3充電率が実質的に同一値である場合に、前記演算装置の故障を判定するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電池の充電率を演算する演算装置の故障を確実に検出することができる電池監視システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施形態に係る電動車両の概略的な構成の一例を示す図。
図2】同実施形態に係る演算部の故障を判定する処理の一例を示すフローチャート。
図3図2の故障判定処理の一例を示すサブフローチャート。
図4】本発明の第2の実施形態に係る電動車両の概略的な構成の一例を示す図。
図5】同実施形態に係る演算部の故障を判定する処理の一例を示すフローチャート。
図6図5の故障判定処理の一例を示すサブフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の各実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態では、本発明を電動車両に適用した場合で説明する。
(第1の実施形態)
図1は、電動車両の概略的な構成の一例を示す図である。
【0022】
図1に示すように、電動車両1は、電池監視システムを構成する電池ECU(Electronic Control Unit)11、電流センサ12、電圧センサ13、電池部(電池)14、及び表示部15が設けられている。なお、電動車両1は、電動車両としての機能を実現するための他の構成も含んでいるが、これら他の構成については図示及び説明を省略している。
【0023】
電池EUC11は、演算部(演算装置)16を含み、さらにROM、RAM、メモリ等を備えた電子制御装置であり、ROM等に記憶されたプログラムを実行することにより電動車両1の各種制御を実行し、例えば演算部16を監視する処理を実行する。演算部16を監視する処理の詳細については、後述する。演算部16は、電流センサ12から取得する電流値(言い換えれば、充電量、及び放電量)、及び電圧センサ13から取得する電圧値に基づいて電池部14のSOCを検出する。なお、本実施形態では、演算部16は電池ECU11に含まれる構成で説明するが、演算部16は、電池ECU11外に設けられ、当該演算部16を含む装置からSOCを取得するように構成してもよい。
【0024】
また、電池ECU11は、第1RAM21、第2RAM22、第1RAM記憶完了フラグ31を有している。第1RAM21、及び第2RAM22は、それぞれSOCを記憶する領域である。第1RAM記憶完了フラグ31は第1RAM21にSOCを記憶したか否かを示すフラグであり、第1RAM21にSOCが記憶されたときはONになり、第1RAM21にSOCが記憶されていないときはOFFになる。
【0025】
電流センサ12は、電池部14が充電、又は放電されるときの電流値を検出し、検出結果を電池ECU11に出力する。電流センサ12は、電池部14が放電する時においてはマイナスの電流値を検出し、電池部14が充電する時においてはプラスの電流値を検出する。電圧センサ13は、電池部14の電圧値を検出し、検出結果を電池ECU11内の演算部16に出力する。なお、本実施形態では、電流センサ12、及び電圧センサ13を電池部14と別構成としているが、電池部14内に電流センサ12、及び電圧センサ13が含まれる構成でもよい。
【0026】
電池部14は、複数の電池から構成されており、モータ部(図示省略)に電力を供給し、また、回生動作時にはエンジン(図示省略)によって発電された電力を蓄電する。表示部15は、例えばLEDランプである。電池ECU11が演算部16の故障であると判定したときに、電池ECU11から送信される指示に基づいて、例えば、LEDランプが赤点灯する。これにより、ドライバに演算装置16の故障を報知する。
【0027】
次に、演算部16の故障を監視する処理について説明する。図2は、電池ECU11が実行する演算部16の故障を監視する処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、電動車両1が起動して停止するまで、言い換えれば、電池部14が起動してから停止するまで実行される。
【0028】
図2に示すように、電池部14が起動すると、電池ECU11は、電流センサ12及び電圧センサ13とCAN(Communication Area Network)通信を開始する(ST101)。これにより、電池ECU11は、電流センサ12及び電圧センサ13から電池部14の電流値及び電圧値を取得することが可能になる。
【0029】
そして、起動時の演算処理として、電池ECU11は、READYフラグをONする(ST102)。READYフラグを格納する領域は、例えば、電池ECU11内の所定の記憶装置に設けられる。次に、電池ECU11の演算部16は、SOC演算処理を実行する(ST103)。以降は、常時、SOCの演算処理が実行される。
【0030】
次に、電池ECU11は、第1RAM記憶完了フラグ31がONか否かを確認する(ST104)。第1RAM記憶完了フラグ31がONでないと判定した場合(ST104:NO)、電池ECU11は、第1RAM21にSOCを記憶し、第1RAM記憶完了フラグ31をONする(ST105:第1充電率取得手段)。これにより、第1RAM21には、起動時のSOC(以下、「第1SOC」という。)が記憶される。
【0031】
このように第1RAM記憶完了フラグ31をONにした場合、又は、第1RAM記憶完了フラグ31がONであると判定した場合(ST104:YES)、電池ECU11は、Δ積算電流量演算処理を実行する(ST106)。つまり、電池ECU11は、電流センサ12から取得する電流値を所定時間分積算する。具体的には、電池部14が放電した場合はマイナスの電流値が積算され、電池部14が充電された場合はプラスの電流値が積算される。
【0032】
次に、電池ECU11は、Δ積算電流量が所定値以上であるか否かを判定する(ST107)。Δ積算電流量が所定値以上でないと判定した場合(ST107:NO)、処理はステップST103に戻る。これにより、Δ積算電流量が所定値に達するまで、このΔ積算電流量が加算され(ST106)、SOCの演算処理が実行される(ST103)。ここで、所定値は、例えば、後述するSOCの最小分解能値だけSOCを変化させる電流量値とすることができる(参照:後述するST202)。
【0033】
そして、Δ積算電流量が所定値以上であると判定した場合(ST107:YES)、電池ECU11は、SOCを第2RAM22に記憶する(ST108:第2充電率取得手段)。これにより、第2RAM22には、Δ積算電流量が所定値になったときのSOC(以下、「第2SOC」という)が記憶される。
【0034】
次に、電池ECU11は、演算部16の故障判定を実行する(ST109)。この故障判定については、図3を参照して説明する。図3は、故障判定の処理の一例を示すフローチャートである。図3に示すように、電池ECU11は、第1RAM記憶完了フラグ31がONであるか否かを判定する(ST201)。第1RAM記憶完了フラグ31がONでない場合(ST201:NO)、処理は終了する。これにより、時間的に前に第1RAM21に記憶された第1SOCが何らかの理由により消失し、第1RAM記憶完了フラグ31がOFFになっている場合、故障判定処理が実行されない。このため、間違った第1SOCで故障判定処理が実行されることを防止することができる。
【0035】
また、第1RAM記憶完了フラグ31がONであると判定した場合(ST201:YES)、電池ECU11は、第1SOCと、第2SOCとの差の絶対値が閾値より低いか否かを判定する(ST202)。ここで、閾値は、電池部14の充電状態の変化を示す最小分解能値とすることができ、本実施形態では、SOCの満充電状態を100%とした場合、1%以下の単位で充電状態の変化を検出するため、この値を閾値に設定する。
そして、電池ECU11は、第1SOCと、第2SOCとの差の絶対値が閾値未満であると判定した場合(ST202:YES)、演算部16の故障であると判定して故障を確定し(ST203)、第1SOCと、第2SOCとの差の絶対値が閾値未満でないと判定した場合(ST202:NO)、SOCの正常を確定する(ST204)。このように、演算部16の故障を判定することができるのは、Δ積算電流量が所定値に到達した場合にもかかわらず第1SOCと、第2SOCとの差の絶対値が閾値未満である場合には、第2SOCが正確な計算がされておらず、演算部16が故障していると想定することができるためである。
【0036】
図2に戻り、説明を続ける。正常を確定した場合(ST204)、電池ECUは、第1RAM21、第2RAM22をリセットすると共に、第1RAM記憶完了フラグ31をリセットし、さらにΔ積算電流量をリセットする(ST110)。そして、処理はステップST103に戻る。したがって、今度は、電池部14が起動した後、Δ積算電流量が所定値となったときのSOCが第1SOCとして第1RAM21に記憶され(ST103)、さらにΔ積算電流量が所定値となったときのSOCが第2SOCとして第2RAM22に記憶され、これら第1SOC、第2SOCを用いて演算部16の故障の判定が実行される。このように、Δ積算電流量が所定値に達する毎に演算部16の故障の判定が繰り返される(判定ループ手段)。一方、故障を確定した場合(ST203)、電池ECU11は、アラートを行う(ST111)。本実施形態では、電池ECU11は、表示部15を点灯させる。
【0037】
以上のように、電池ECU11は、第1SOC、及び第2SOCに基づいてSOCの演算部16の故障を判定する。具体的には、第1SOCと、第2SOCとの差の絶対値が充電率の変化を示す最小分解能値未満のときに演算部16の故障を判定する。これにより、電池ECU11は、演算部16の故障を検出することができる。
【0038】
また、電池ECU11は、第1SOC、及び第2SOCを取得し、演算部16の故障を判定する処理を繰り返すようにしている。このように繰り返し判定を行うことができるため、電池ECU11は、電池部14が起動している期間中、演算部16の故障を判定することができる。
【0039】
なお、上記実施形態では、電池ECU11が演算部16の故障を判定した後、アラートを表示し、処理を終了する場合で説明したが、これに限るものではない。例えば演算部16の故障を検出してアラートを表示した後(ST111)、処理がステップST103へ戻り、演算部16の故障を検出する処理を継続するようにしてもよい。つまり、判定ループ手段を、故障判定を行った場合にも適用してもよい。このように構成すると、演算部16の故障を検出した後でも、さらに、演算部16の故障の判定を行うことができるため、演算部16の故障をより確実に判定することが可能になる。演算部16の故障を検出した場合、電池ECU11は表示部15にアラートを表示させる指示を送信するため、表示部15にアラートが表示されている。この状態から、演算部16が正常であることを確定した場合、電池ECU11は、表示部15にアラートの表示を停止する指示を送信し、表示部15に表示されているアラートを停止させることができる。このため、電池ECU11は、電動車両1のドライバに演算部16が故障しているか否かを正確に報知することができる。
【0040】
また、上記実施形態では、1回の判定で演算部16の故障を確定しているが、例えば、複数回連続して演算部16の故障を検出した場合に、電池ECU11が演算部16の故障を確定するようにしてもよい。このように構成しても演算部16の故障の誤検出を防止することができる。
(第2の実施形態)
第1の実施形態は、第1SOC、及び第2SOCの2つのSOCを用いて演算部16の故障の判定を行っているが、第2の実施形態は、第1SOC、第2SOC、及び第3SOCの3つのSOCを用いて演算部16の故障の判定を行っている点が異なっている。したがって、以下では、第1の実施形態と異なる点について詳細な説明をする。なお、第1の実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、これらの構成については詳細な説明を省略する。
【0041】
図4は、電動車両1の概略的な構成の一例を示す図である。
【0042】
図4に示すように、図1に示す電動車両1と比較すると、電池ECU11内に第2RAM記憶完了フラグ32と、第3RAM23とが追加されている点が異なっている。第2RAM記憶完了フラグ32は、第2RAM22にSOCが記憶されたことを示すフラグであり、第2RAM22にSOCが記憶されるとONになり、第2RAM22にSOCが記憶されていないとOFFになる。第3RAM23はSOCを記憶する領域である。
【0043】
次に、演算部16の故障を監視する処理について説明する。図5は、電池ECU11が実行する演算部16の故障を監視する処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、電動車両1が起動して停止するまで、言い換えれば、電池部14が起動してから停止するまで実行されるのは第1の実施形態と同様である。また、ステップST301からST306の処理は、既述のステップST101からST106の処理とそれぞれ同一なので説明は省略し、以下ではステップST307の処理から説明をする。
【0044】
電池ECU11は、Δ積算電流量が所定値以上であるか否かを判定する(ST307)。Δ積算電流が所定値以上であると判定した場合(ST307:YES)、電池ECU11は、第2RAM記憶完了フラグ32がONか否かを判定する(ST308)。第2RAM記憶完了フラグ32がONでないと判定した場合(ST308:NO)、電池ECU11は、SOCを第2RAM22に記憶し、第2RAM記憶完了フラグ32をONする(ST309:第2充電率取得手段)。これにより、第2RAM22には、Δ積算電流量が所定値になったときのSOC(以下、「第2SOC」という)が記憶される。なお、第1SOCとしては、第1の実施形態と同様に、起動時のSOCが第1RAM21に記憶される(ST305:第1充電率取得手段)。
【0045】
ステップST309の処理が終了した場合、ステップST307でΔ積算電流量が所定値以上でないと判定した場合(ST307:NO)、又は、ステップST308で第2RAM完了フラグがONであると判定した場合(ST308:YES)、電池ECU11は、第1RAM記憶完了フラグ31のON状態が所定時間継続したか否かを判定する(ST310)。所定時間継続していないと判定した場合(ST310:NO)、処理はステップST303に戻る。これにより、第1RAM記憶完了フラグ31のON状態が所定時間継続したと判定されるまでSOCの演算処理が継続される。
【0046】
また、第1RAM記憶完了フラグ31のON状態が所定時間継続したと判定した場合(ST310:YES)、電池ECU11は、SOCを第3RAM23に記憶する(ST311:第3充電率取得手段)。これにより、第3RAM23には、既述の所定時間経過後のSOC(以下、「第3SOC」という。)が記憶される。
【0047】
次に、電池ECU11は、故障判定を実行する(ST312)。この故障判定については、図6を参照して説明する。図6は、故障判定の処理の一例を示すフローチャートである。図6に示すように、電池ECU11は、第1RAM記憶完了フラグ31、及び第2RAM記憶完了フラグ32が共にONであるか否かを判定する(ST401)。第1RAM記憶完了フラグ31及び第2RAM記憶完了フラグ32が共にONでない場合(ST401:NO)、処理は終了する。これにより、既述の所定時間が継続する前に第1RAM21、及び第2RAM22に記憶された第1SOC、及び第2SOCがそれぞれ何らかの理由により消失し、第1RAM記憶完了フラグ31及び第2RAM記憶完了フラグ32がOFFになっている場合、故障判定処理が実行されない。これにより、間違った第1SOC,第2SOCで故障判定処理が実行されることを防止することができる。
【0048】
また、第1RAM記憶完了フラグ31、及び第2RAM完了フラグ32が共にONであると判定した場合(ST401:YES)、電池ECU11は、第1SOCと、第2SOC、第3SOCがそれぞれ同一であるか否かを判定する(ST402)。ここで、同一か否かは実質的に同一であればよく許容値の範囲内で僅かな差異はあってもよい。電池ECU11は、第1SOC、第2SOC、第3SOCがそれぞれ同一であると判定した場合(ST402:YES)、演算部16の故障であると判定して故障を確定し(ST403)、第1SOCと、第2SOC、第3SOCがそれぞれ同一でないと判定した場合(ST402:NO)、SOCの正常を確定する(ST404)。
【0049】
図5に戻り、説明を続ける。正常を確定した場合(ST404)、電池ECU11は、第1RAM21、第2RAM22、及び第3RAM23をリセットすると共に、第1RAM記憶完了フラグ31、及び第2RAM記憶完了フラグ32をリセットし、さらにΔ積算電流量をリセットする(ST313)。そして、処理はステップST303に戻る。したがって、次は、電池部14が起動した後、第1RAM記憶完了フラグ31のON状態が所定時間継続した後のSOCが第1SOCとして第1RAM21に記憶され(ST303)、さらにΔ積算電流量が所定値となったときのSOCが第2SOCとして第2RAM22に記憶され、第1RAM記憶完了フラグ31のON状態が所定時間継続したときのSOCが第3SOCとして第3RAM23に記憶され、これら第1SOC、第2SOC、第3SOCが同一か否かに基づいて演算部16の故障の判定が繰り返される(判定ループ手段)。一方、故障を確定した場合(ST403)、電池ECU11は、アラートを行う(ST314)。本実施形態では、第1の実施形態と同様に電池ECU11は、表示部15を点灯させる。
【0050】
この実施形態の電池ECU11によると、時間的に異なる3つの充電率(第1SOC、第2SOC、及び第3SOC)を比較し、演算部16の故障を判定するため、より正確な判定を行うことが可能になる。
【0051】
なお、上記各実施形態では、第1SOCを電動車両1の起動時に取得する場合で説明したが、これに限るものではない。また、上記各実施形態では、電池監視システムを電動車両1の電池ECU11に適用した場合で説明したが、これに限るものではなく、電池部14を搭載し、且つ、電池部14のSOCを取得する構成を有するシステムに適用することが可能である。
【0052】
また、上記各実施形態において、電動車両1に、走行中のスイッチ操作で電池部14の電池容量をキープすることができるバッテリセーブモードが設定されている場合がある。バッテリセーブモード中は、目標SOC付近にてSOCが上下変動するように電動車両1の走行制御を行うため、バッテリセーブモード中であっても、電池ECU11は、既述の演算部16の故障を監視する処理を行うことができる。さらに、電動車両1に、エンジン発電により電池部14のSOCをほぼ満充電付近まで増加させることができるバッテリチャージモードが設定されている場合がある。バッテリチャージモードは、SOCがほぼ満充電状態になると電池部14への充電がされなくなる。このためバッテリチャージモード中であっても、電池ECU11は、既述の演算部16の故障を検出する処理を実行することができる。このように、電動車両1にバッテリセーブモードやバッテリチャージモードが設定されている場合であっても、電池ECU11は、演算部16の故障の検出を確実に行うことができる。
【0053】
この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。さらに、異なる実施形態の構成を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…電動車両、11…電池ECU、12…電流センサ、13…電圧センサ、14…電池部、15…表示部、21…第1RAM、22…第2RAM、23…第3RAM、31…第1RAM記憶完了フラグ、32…第2RAM記憶完了フラグ
図1
図2
図3
図4
図5
図6