(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】医用画像処理装置、学習方法、X線診断装置、医用画像処理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/02 20060101AFI20231120BHJP
A61B 6/00 20060101ALI20231120BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
A61B6/02 300M
A61B6/00 330Z
A61B6/00 350P
A61B6/00 350D
G06T1/00 290A
(21)【出願番号】P 2019040876
(22)【出願日】2019-03-06
【審査請求日】2022-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 由昌
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-512669(JP,A)
【文献】国際公開第2018/048507(WO,A1)
【文献】Shuyue Guan, et al.,Breast cancer detection using synthetic mammograms from generative adversarial networks in convolutional neural networks,PROCEEDINGS VOLUME 10718 14th International Workshop on BreastImaging(IWBI 2018) Table of Contents,2018年,2/4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体のトモシンセシス撮影に対応する医用画像データを第1の医用画像データとして取得する画像取得部と、
前記第1の医用画像データに基づいて2次元画像データである第2の医用画像データを生成する学習済みモデルに対して、前記第1の医用画像データを入力することで、前記被検体の第2の医用画像データを生成する画像生成部と、を備え、
前記学習済みモデルは、トモシンセシス撮影に基づく
複数の画像データ
に含まれる一部の画像データと、当該トモシンセシス撮影された人物と同一人物に対するマンモグラフィ撮影に基づく画像データとを組にしたデータセットを学習することにより生成されたモデルであ
り、前記一部の画像データは、前記マンモグラフィ撮影の角度に対応する角度の画像データであり、
前記画像取得部は、前記トモシンセシス撮影により取得された複数の投影データから前記被検体のマンモグラフィ撮影の角度に対応する角度の一部の投影データを抽出するか、或いは、前記複数の投影データを再構成したボリュームデータから前記被検体のマンモグラフィ撮影の角度に対応する角度の一部の断層画像データを抽出することにより、前記第1の医用画像データを取得し、
前記画像生成部は、前記学習済みモデルに対して、抽出された前記一部の投影データまたは前記一部の断層画像データである前記第1の医用画像データを入力することで、前記被検体のマンモグラフィ画像である前記第2の医用画像データを生成する、
医用画像処理装置。
【請求項2】
前記画像生成部は、
前記学習済みモデルに対して、前記複数の投影データと抽出された前記一部の投影データとを組み合わせたデータ、或いは、前記ボリュームデータと前記一部の断層画像データとを組み合わせたデータを入力することで、前記被検体の第2の医用画像データを生成する、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記画像取得部により取得された前記第1の医用画像データに含まれる注目部位を抽出する抽出部と、
前記画像生成部により生成された前記被検体の第2の医用画像データにおいて、前記抽出部により抽出された前記注目部位に対応する部位を強調する強調部と、をさらに備える、
請求項1または2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記抽出部は、コンピュータ支援診断(CAD;Computer Aided Detection)によって検出される病変を前記注目部位として抽出する、
請求項3に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記画像生成部は、前記学習済みモデルの出力と、前記第1の医用画像データの断層画像データとを所定割合でブレンドして前記被検体の第2の医用画像データを生成する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
被検体のトモシンセシス撮影により取得された投影データ、または、当該投影データを再構成したボリュームデータを第1の医用画像データとし、前記被検体のマンモグラフィ撮影により取得された2次元画像データを第2の医用画像データとして、当該第1の医用画像データと前記第2の医用画像データとを組にしたデータセットに基づき、前記第1の医用画像データに基づいて前記第2の医用画像データを出力する学習済みモデルを生成する、
学習方法であって、
前記学習済みモデルは、トモシンセシス撮影に基づく
複数の画像データ
に含まれる一部の画像データと、当該トモシンセシス撮影された人物と同一人物に対するマンモグラフィ撮影に基づく画像データとを組にしたデータセットを学習することにより生成され
、前記一部の画像データは、前記マンモグラフィ撮影の角度に対応する角度の画像データであり、
前記学習済みモデルは、前記トモシンセシス撮影により取得された前記投影データまたは前記ボリュームデータから抽出された、前記被検体のマンモグラフィ撮影の角度に対応する角度の一部の投影データまたは一部の断層画像データが入力されたときに、前記被検体のマンモグラフィ画像である前記第2の医用画像データを出力する、
学習方法。
【請求項7】
前記2次元画像データは、前記被検体のトモシンセシス撮影において照射されたX線よりも大きい線量で前記マンモグラフィ撮影が行われることにより取得される、
請求項6に記載の学習方法。
【請求項8】
被検体に対して複数の角度からX線を照射することによりトモシンセシス撮影を行う撮影部と、
前記トモシンセシス撮影により取得された投影データ、または、当該投影データを再構成したボリュームデータを第1の医用画像データとして取得する画像取得部と、
前記第1の医用画像データに基づいて2次元画像データである第2の医用画像データを生成する学習済みモデルに対して、前記第1の医用画像データを入力することで、前記被検体の第2の医用画像データを生成する画像生成部と、を備え、
前記学習済みモデルは、トモシンセシス撮影に基づく
複数の画像データ
に含まれる一部の画像データと、当該トモシンセシス撮影された人物と同一人物に対するマンモグラフィ撮影に基づく画像データとを組にしたデータセットを学習することにより生成されたモデルであ
り、前記一部の画像データは、前記マンモグラフィ撮影の角度に対応する角度の画像データであり、
前記画像取得部は、前記トモシンセシス撮影により取得された複数の投影データから前記被検体のマンモグラフィ撮影の角度に対応する角度の一部の投影データを抽出するか、或いは、前記複数の投影データを再構成したボリュームデータから前記被検体のマンモグラフィ撮影の角度に対応する角度の一部の断層画像データを抽出することにより、前記第1の医用画像データを取得し、
前記画像生成部は、前記学習済みモデルに対して、抽出された前記一部の投影データまたは前記一部の断層画像データである前記第1の医用画像データを入力することで、前記被検体のマンモグラフィ画像である前記第2の医用画像データを生成する、
X線診断装置。
【請求項9】
コンピュータが、被検体のトモシンセシス撮影により取得された投影データ、または、当該投影データを再構成したボリュームデータを第1の医用画像データとして取得し、
コンピュータが、前記第1の医用画像データに基づいて2次元画像データである第2の医用画像データを生成する学習済みモデルに対して、前記第1の医用画像データを入力することで、前記被検体の第2の医用画像データを生成する、
医用画像処理方法であって、
前記学習済みモデルは、トモシンセシス撮影に基づく
複数の画像データ
に含まれる一部の画像データと、当該トモシンセシス撮影された人物と同一人物に対するマンモグラフィ撮影に基づく画像データとを組にしたデータセットを学習することにより生成されたモデルであ
り、前記一部の画像データは、前記マンモグラフィ撮影の角度に対応する角度の画像データであり、
前記トモシンセシス撮影により取得された複数の投影データから前記被検体のマンモグラフィ撮影の角度に対応する角度の一部の投影データを抽出するか、或いは、前記複数の投影データを再構成したボリュームデータから前記被検体のマンモグラフィ撮影の角度に対応する角度の一部の断層画像データを抽出することにより、前記第1の医用画像データを取得し、
前記学習済みモデルに対して、抽出された前記一部の投影データまたは前記一部の断層画像データである前記第1の医用画像データを入力することで、前記被検体のマンモグラフィ画像である前記第2の医用画像データを生成する、
医用画像処理方法。
【請求項10】
コンピュータを、
被検体のトモシンセシス撮影により取得された投影データ、または、当該投影データを再構成したボリュームデータを第1の医用画像データとして取得する画像取得部、
前記第1の医用画像データに基づいて2次元画像データである第2の医用画像データを生成する学習済みモデルに対して、前記第1の医用画像データを入力することで、前記被検体の第2の医用画像データを生成する画像生成部、として機能させる、
プログラムであって、
前記学習済みモデルは、トモシンセシス撮影に基づく
複数の画像データに含まれる一部の画像データと、当該トモシンセシス撮影された人物と同一人物に対するマンモグラフィ撮影に基づく画像データとを組にしたデータセットを学習することにより生成されたモデルであ
り、前記一部の画像データは、前記マンモグラフィ撮影の角度に対応する角度の画像データであり、
前記トモシンセシス撮影により取得された複数の投影データから前記被検体のマンモグラフィ撮影の角度に対応する角度の一部の投影データを抽出するか、或いは、前記複数の投影データを再構成したボリュームデータから前記被検体のマンモグラフィ撮影の角度に対応する角度の一部の断層画像データを抽出することにより、前記第1の医用画像データを取得させ、
前記学習済みモデルに対して、抽出された前記一部の投影データまたは前記一部の断層画像データである前記第1の医用画像データを入力することで、前記被検体のマンモグラフィ画像である前記第2の医用画像データを生成させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用画像処理装置、学習方法、X線診断装置、医用画像処理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
被検体に対して複数の角度からX線を照射することによって複数の投影データを順次取得するトモシンセシス撮影が知られている。トモシンセシス撮影により取得された複数の投影データを再構成して得られるボリュームデータによれば、基準方向(例えば撮影台の法線方向)と直交する方向の複数の断層像(スライス画像)が得られる。乳房のトモシンセシス撮影の場合、乳腺の重なりが少ない断層像が得られるため、マンモグラフィ撮影では描出困難な高濃度乳腺に臨床的な有用性がある。
【0003】
一方、トモシンセシス撮影により取得された複数の断層像から1枚の2次元画像(合成2D画像)を生成する技術が知られている。例えば、複数の断層像のスライス方向に並ぶ各画素について、当該スライス方向と直交する方向に並ぶ画素群の中で最小値を投影することにより2次元画像を生成する、いわゆるMinIP(Minimum Intensity Projection)と呼ばれる技術が知られている。この種の技術により生成される2次元画像によれば、トモシンセシス撮影により得られた複数の断層像を1枚の要約画像として提供できる。
【0004】
しかし、上記技術により生成される2次元画像(合成2D画像)は、複数の断層像のスライス方向に並ぶ各画素について、当該スライス方向と直交する方向に並ぶ画素群の中で1つの画素値(MinIPの場合は最小値)のみが反映され、その他の画素値は反映されない。そのため、例えば石灰化の背景にある乳腺の情報等が含まれない。また、トモシンセシス撮影で照射されるX線はマンモグラフィ撮影で照射されるX線よりも低い。そのため、上記技術により生成される2次元画像は、マンモグラフィ撮影により得られる画像と比べてコントラストが大きく異なる。さらに、トモシンセシス撮影は、X線管を移動させながらX線を照射させて行うので、トモシンセシス撮影により得られる断層像には、X線管の移動に伴うアーチファクトが含まれてしまう。これは、上記技術により生成される2次元画像にも影響を与える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、トモシンセシス撮影に対応する画像から高画質な2次元画像を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の医用画像処理装置は、画像取得部と、画像生成部とを備える。画像取得部は、被検体のトモシンセシス撮影に対応する医用画像データを第1の医用画像データとして取得する。画像生成部は、前記第1の医用画像データに基づいて2次元画像データである第2の医用画像データを生成する学習済みモデルに対して、前記第1の医用画像データを入力することで、前記被検体の第2の医用画像データを生成する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態に係る医用画像処理装置10の一構成例を示すブロック図。
【
図2】第1の実施形態に係る学習機能24の学習時におけるデータフローの一例を示す図。
【
図3】第1の実施形態に係る学習機能24の学習時におけるデータフローの他の一例を示す図。
【
図4】第1の実施形態に係る画像生成機能22の運用時におけるデータフローの一例を示す図。
【
図5】第1の実施形態に係る画像生成機能22の運用時におけるデータフローの他の一例を示す図。
【
図6】第2の実施形態に係る学習機能24の学習時におけるデータフローの一例を示す図。
【
図7】第2の実施形態に係る画像生成機能22の運用時におけるデータフローの一例を示す図。
【
図8】第3の実施形態に係る学習機能24の学習時におけるデータフローの一例を示す図。
【
図9】第3の実施形態に係る画像生成機能22の運用時におけるデータフローの一例を示す図。
【
図10】第3の実施形態に係る画像生成機能22の運用時におけるデータフローのより詳細な一例を示す図。
【
図11】第4の実施形態に係る医用画像処理装置10の一構成例を示すブロック図。
【
図12】第4の実施形態に係る画像生成機能22の運用時におけるデータフローの一例を示す図。
【
図13】第5の実施形態に係る画像生成機能22の運用時におけるデータフローの一例を示す図。
【
図14】ミニバッチ領域について説明するための図。
【
図15】第6の実施形態に係る学習機能24の学習時におけるデータフローの一例を示す図。
【
図16】第6の実施形態に係る画像生成機能22の運用時におけるデータフローの一例を示す図。
【
図17】第7の実施形態に係るX線診断装置100Fの構成の一例を示す図。
【
図18】X線診断装置1による投影データの取得手法の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、実施形態の医用画像処理装置、学習方法、X線診断装置、医用画像処理方法、およびプログラムを説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置10の一構成例を示すブロック図である。医用画像処理装置10は、入力回路11、ディスプレイ12、記憶回路13、ネットワーク接続回路14および処理回路15を備える。
【0011】
入力回路11は、たとえばトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、テンキーなどの一般的な入力装置により構成され、ユーザの操作に対応した操作入力信号を処理回路15に出力する。ディスプレイ12は、たとえば液晶ディスプレイやOLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイなどの一般的な表示出力装置により構成される。
【0012】
記憶回路13は、たとえば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等の、プロセッサにより読み取り可能な記録媒体を含んだ構成を有し、処理回路15が利用するプログラムやパラメータデータやその他のデータを記憶する。なお、記憶回路13の記録媒体内のプログラムおよびデータの一部または全部は、ネットワーク100を介した通信によりダウンロードされてもよいし、光ディスクなどの可搬型記憶媒体を介して記憶回路13に与えられてもよい。
【0013】
また、記憶回路13は、ネットワーク100を介して取得した被検体のトモシンセシス撮影にもとづく投影データまたはこの投影データにもとづいて再構成されたボリュームデータを記憶してもよい。
【0014】
ネットワーク接続回路14は、ネットワーク100の形態に応じた種々の情報通信用プロトコルを実装する。ネットワーク接続回路14は、この各種プロトコルに従ってネットワーク100を介して他の電気機器と接続する。ネットワーク100は、電気通信技術を利用した情報通信網全般を意味し、病院基幹LAN(Local Area Network)などの無線/有線LANやインターネット網のほか、電話通信回線網、光ファイバ通信ネットワーク、ケーブル通信ネットワークおよび衛星通信ネットワークなどを含む。
【0015】
医用画像処理装置10は、X線診断装置101および画像サーバ102とネットワーク100を介して互いにデータ送受信可能に接続される。
【0016】
X線診断装置101は、例えば、乳房のトモシンセシス撮影やマンモグラフィ撮影を行うマンモグラフィ装置や、長尺のトモシンセシス撮影を行うX線TV装置等から構成される。
【0017】
処理回路15は、医用画像処理装置10を統括制御する機能を実現する。また、処理回路15は、記憶回路13に記憶されたプログラムを読み出して実行するプロセッサである。処理回路15は、トモシンセシス撮影に対応する医用画像データに基づいて2次元画像データを生成する。トモシンセシス撮影に対応する医用画像データは、具体的には、トモシンセシス撮影により取得された投影データ、または、当該投影データを再構成したボリュームデータである。
【0018】
図1に示すように、処理回路15は、画像取得機能21、画像生成機能22、出力機能23、学習機能24を実現する。これらの各機能は、それぞれプログラムの形態で記憶回路13に記憶されている。画像取得機能21、画像生成機能22は、学習済みモデル32が生成された後に機能し、出力機能23、学習機能24は、学習済みモデル32の生成のために機能する。
【0019】
画像取得機能21は、X線診断装置101または画像サーバ102から、被検体のトモシンセシス撮影に対応する医用画像データを第1の医用画像データとして取得する。なお、画像取得機能21は画像取得部の一例である。
【0020】
画像生成機能22は、画像取得機能21により取得された第1の医用画像データに基づいて、被検体の2次元画像データを第2の医用画像データとして生成する。画像生成機能22は、第1の医用画像データを入力することで第2の医用画像データを出力する学習済みモデル(後述の学習済みモデル32)を用いる。画像生成機能22は、学習済みモデルに対して、被検体のトモシンセシス撮影に対応する医用画像データ(第1の医用画像データ)を入力することで、当該被検体の2次元画像データを生成する。なお、画像生成機能22は画像生成部の一例である。
【0021】
出力機能23は、X線診断装置101で行われた、被検体のトモシンセシス撮影に対応する医用画像データ(第1の医用画像データ)と、同一被検体のX線撮影に対応する2次元画像データである医用画像データ(第2の医用画像データ)とを学習用のデータセットとして出力する。
【0022】
例えば、乳房のマンモグラフィ撮影は、乳房のトモシンセシス撮影において照射されるX線よりも大きい線量で行われる。また、一般的に、乳房のトモシンセシス撮影が行われる場合には、乳房のマンモグラフィ撮影も行われる。そのため、従来のワークフローにより得られる第1および第2の医用画像データを学習用データセットとして利用することができ、効率がよい。なお、出力機能23は出力部の一例である。
【0023】
学習機能24は、出力機能23により出力された学習用データセットに基づき深層学習を行う。
図2に示すように、学習機能24は、トレーニング入力データとして、被検体のトモシンセシス撮影に対応する複数の投影データ(第1の医用画像データ)を用いる。また、学習機能24は、トレーニング出力データとして、同一被検体のX線撮影に対応する2次元画像データ(第2の医用画像データ)を用いる。
【0024】
なお、トレーニング入力データとして用いられる第1の医用画像データは、トモシンセシス撮影により取得された投影データに代えて、当該投影データを再構成したボリュームデータでもよい。つまり、
図3に示すように、学習機能24は、トレーニング入力データとして、被検体の複数の投影データを再構成したボリュームデータ(第1の医用画像データ)を用いてもよい。また、トレーニング入力データとして用いられる第1の医用画像データは、トモシンセシス撮影により取得された投影データと、当該投影データを再構成したボリュームデータとの組み合わせでもよい。
【0025】
学習機能24は、学習用データセットが入力されるごとに、トレーニング入力データ(被検体のトモシンセシス撮影に対応する医用画像データ)をニューラルネットワーク31で処理した結果がトレーニング出力データ(同一被検体のX線撮影に対応する2次元画像データ)に近づくようにニューラルネットワーク31のパラメータデータを更新していく、いわゆる学習を行う。ニューラルネットワーク31のパラメータデータは、例えば、CNN(Convolution Neural Network)の誤差逆伝播(バックプロパゲーション)等の手法によって調整され、更新される。学習機能24は、パラメータデータの変化割合が閾値以内に収束すると、学習が終了したと判断する。学習機能24は、学習後のパラメータデータに基づいて、例えば、DNN(Deep Neural Network)の形態を有する学習済みモデル32を生成する。なお、学習済みモデル32は、記憶回路13に記憶され、運用時に記憶回路13から読み出される。また、学習済みモデル32は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路によって構築されてもよい。
【0026】
また、トレーニング入力データの種類と
図4や
図5に示す運用時の入力データの種類とは一致させるべきである。たとえば、学習時のトレーニング入力データとしての投影データ群の角度範囲および角度刻み(たとえばマイナス7.5度からプラス7.5まで1度刻みで計16枚など)は、運用時の入力データの角度範囲および角度刻みと一致させるべきである。
【0027】
以上のように構成された医用画像処理装置10について、運用時における動作を以下に説明する。
【0028】
画像取得機能21は、X線診断装置101または画像サーバ102から、被検体のトモシンセシス撮影に対応する医用画像データを第1の医用画像データとして取得する。画像生成機能22は、画像取得機能21により取得された第1の医用画像データに基づいて、被検体の2次元画像データを第2の医用画像データとして生成する。
【0029】
例えば、
図4に示したように、画像生成機能22は、学習済みモデル32に対して、被検体のトモシンセシス撮影に対応する複数の投影データ(第1の医用画像データ)を入力することで、当該被検体の2次元画像データを生成する。なお、
図5に示したように、画像生成機能22は、学習済みモデル32に対して、被検体の複数の投影データを再構成したボリュームデータ(第1の医用画像データ)を入力することで、当該被検体の2次元画像データを生成してもよい。
【0030】
画像生成機能22により生成される2次元画像データは、マンモグラフィ撮影等の2次元画像のX線撮影に対応しているので、実際にマンモグラフィ撮影により得られる画像と比べてもコントラストは同様である。また、画像生成機能22により生成される2次元画像データは、MinIP等の技術により生成される2次元画像(合成2D画像)と比べて、スライス方向と直交する方向に並ぶ情報量は多く、例えば石灰化の背景にある乳腺の情報等も確認できる。さらに、画像生成機能22により生成される2次元画像データは、トモシンセシス撮影におけるX線管の移動に伴うアーチファクトの影響も除外されている。
【0031】
以上、第1の実施形態によれば、被検体のトモシンセシス撮影に対応する医用画像データを第1の医用画像データとして取得する画像取得機能21と、第1の医用画像データに基づいてX線撮影に対応する2次元画像データである第2の医用画像データを生成する学習済みモデル32に対して、第1の医用画像データを入力することで、同一被検体の第2の医用画像データを生成する画像生成機能22と、を備えることにより、トモシンセシス撮影に対応する画像から高画質な2次元画像を得ることができる。
【0032】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、第1の医用画像データの内容が第1の実施形態と異なるものである。
【0033】
第2の実施形態における出力機能23は、X線診断装置101で行われた、被検体のトモシンセシス撮影に対応する医用画像データ、より具体的には、トモシンセシス撮影により取得された複数の投影データのうち、2次元画像データに対応する角度が0度付近の一部の投影データ(第1の医用画像データ)と、同一被検体のX線撮影に対応する2次元画像データである医用画像データ(第2の医用画像データ)とを学習用のデータセットとして出力する。なお、出力機能23は、被検体のトモシンセシス撮影により取得された複数の投影データを再構成したボリュームデータから抽出される、2次元画像データに対応する角度が0度付近の一部の断層画像データを第1の医用画像データとして出力してもよい。
【0034】
学習機能24は、出力機能23により出力された学習用データセットに基づき深層学習を行う。
図6に示すように、学習機能24は、トレーニング入力データとして、被検体のトモシンセシス撮影により取得された複数の投影データのうち、2次元画像データに対応する角度が0度付近の一部の投影データ(第1の医用画像データ)を用いる。また、学習機能24は、トレーニング出力データとして、同一被検体のX線撮影に対応する2次元画像データ(第2の医用画像データ)を用いる。なお、学習機能24は、トレーニング入力データとして、被検体のトモシンセシス撮影により取得された複数の投影データを再構成したボリュームデータから抽出される、2次元画像データに対応する角度が0度付近の一部の断層画像データ(第1の医用画像データ)を用いてもよい。
【0035】
学習機能24は、学習用データセットが入力されるごとに、トレーニング入力データ(被検体のトモシンセシス撮影により取得された複数の投影データのうち、2次元画像データに対応する角度が0度付近の一部の投影データ)をニューラルネットワーク31で処理した結果がトレーニング出力データ(同一被検体のX線撮影に対応する2次元画像データ)に近づくようにニューラルネットワーク31のパラメータデータを更新していく、いわゆる学習を行う。ニューラルネットワーク31のパラメータデータは、例えば、CNNの誤差逆伝播等の手法によって調整され、更新される。学習機能24は、パラメータデータの変化割合が閾値以内に収束すると、学習が終了したと判断する。学習機能24は、学習後のパラメータデータに基づいて、例えば、DNNの形態を有する学習済みモデル32を生成する。なお、学習済みモデル32は、記憶回路13に記憶され、運用時に記憶回路13から読み出される。また、学習済みモデル32は、ASIC、FPGAなどの集積回路によって構築されてもよい。
【0036】
また、トレーニング入力データの種類と
図7に示す運用時の入力データの種類とは一致させるべきである。たとえば、学習時のトレーニング入力データとしての一部の投影データまたは断層画像データにおける角度(たとえばマイナス1.5度、マイナス0.5度、プラス0.5度、プラス1.5度など)は、運用時の入力データの角度と一致させるべきである。
【0037】
以上のように構成された医用画像処理装置10について、運用時における動作を以下に説明する。
【0038】
画像取得機能21は、X線診断装置101または画像サーバ102から、被検体のトモシンセシス撮影により取得された複数の投影データのうち、2次元画像データに対応する角度が0度付近の一部の投影データを、第1の医用画像データとして取得する。画像生成機能22は、画像取得機能21により取得された第1の医用画像データに基づいて、被検体の2次元画像データを第2の医用画像データとして生成する。なお、画像取得機能21は、X線診断装置101または画像サーバ102から、被検体のトモシンセシス撮影により取得された複数の投影データを再構成したボリュームデータから抽出される、2次元画像データに対応する角度が0度付近の一部の断層画像データを、第1の医用画像データとして取得してもよい。
【0039】
例えば、
図7に示すように、画像生成機能22は、学習済みモデル32に対して、被検体のトモシンセシス撮影により取得された複数の投影データのうち、2次元画像データに対応する角度が0度付近の一部の投影データ(第1の医用画像データ)を入力することで、当該被検体の2次元画像データを生成する。なお、画像生成機能22は、学習済みモデル32に対して、被検体のトモシンセシス撮影により取得された複数の投影データを再構成したボリュームデータから抽出される、2次元画像データに対応する角度が0度付近の一部の断層画像データ(第1の医用画像データ)を入力することで、当該被検体の2次元画像データを生成してもよい。
【0040】
画像生成機能22により生成される2次元画像データは、マンモグラフィ撮影等の2次元画像のX線撮影に対応しているので、実際にマンモグラフィ撮影により得られる画像と比べてもコントラストは同様である。また、画像生成機能22により生成される2次元画像データは、MinIP等の技術により生成される2次元画像(合成2D画像)と比べて、スライス方向と直交する方向に並ぶ情報量は多く、例えば石灰化の背景にある乳腺の情報等も確認できる。さらに、画像生成機能22により生成される2次元画像データは、トモシンセシス撮影におけるX線管の移動に伴うアーチファクトの影響も除外されている。
【0041】
以上、第2の実施形態によれば、被検体のトモシンセシス撮影により取得された複数の投影データのうち、2次元画像データに対応する角度が0度付近の一部の投影データを第1の医用画像データとして取得する画像取得機能21と、第1の医用画像データに基づいてX線撮影に対応する2次元画像データである第2の医用画像データを生成する学習済みモデル32に対して、第1の医用画像データを入力することで、同一被検体の第2の医用画像データを生成する画像生成機能22と、を備えることにより、トモシンセシス撮影に対応する画像から高画質な2次元画像を得ることができる。
【0042】
また、第2の実施形態によれば、被検体のトモシンセシス撮影により取得された複数の投影データを再構成したボリュームデータの断層画像のうち、2次元画像データに対応する角度が0度付近の一部の断層画像データを第1の医用画像データとして取得する画像取得機能21と、第1の医用画像データに基づいてX線撮影に対応する2次元画像データである第2の医用画像データを生成する学習済みモデル32に対して、第1の医用画像データを入力することで、同一被検体の第2の医用画像データを生成する画像生成機能22と、を備えることにより、トモシンセシス撮影に対応する画像から高画質な2次元画像を得ることができる。
【0043】
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態は、第1の医用画像データの内容が第1または第2の実施形態と異なるものである。
【0044】
第3の実施形態における出力機能23は、X線診断装置101で行われた、被検体のトモシンセシス撮影に対応する医用画像データ、および、トモシンセシス撮影により取得された複数の投影データのうち、2次元画像データに対応する角度が0度付近の一部の投影データ(第1の医用画像データ)と、同一被検体のX線撮影に対応する2次元画像データである医用画像データ(第2の医用画像データ)とを学習用のデータセットとして出力する。なお、出力機能23は、被検体のトモシンセシス撮影に対応する医用画像データ、および、被検体のトモシンセシス撮影により取得された複数の投影データを再構成したボリュームデータから抽出される、2次元画像データに対応する角度が0度付近の一部の断層画像データを第1の医用画像データとして出力してもよい。
【0045】
学習機能24は、出力機能23により出力された学習用データセットに基づき深層学習を行う。
図8に示すように、学習機能24は、トレーニング入力データとして、被検体のトモシンセシス撮影により取得された複数の投影データと、複数の投影データのうち、2次元画像データに対応する角度が0度付近の一部の投影データとを第1の医用画像データとして用いる。また、学習機能24は、トレーニング出力データとして、同一被検体のX線撮影に対応する2次元画像データ(第2の医用画像データ)を用いる。なお、学習機能24は、トレーニング入力データとして、複数の投影データを再構成したボリュームデータと、ボリュームデータから抽出される、2次元画像データに対応する角度が0度付近の一部の断層画像データとを第1の医用画像データとして用いてもよい。
【0046】
学習機能24は、学習用データセットが入力されるごとに、トレーニング入力データ(被検体のトモシンセシス撮影に対応する医用画像データ、および、トモシンセシス撮影により取得された複数の投影データのうち、2次元画像データに対応する角度が0度付近の一部の投影データ)をニューラルネットワーク31で処理した結果がトレーニング出力データ(同一被検体のX線撮影に対応する2次元画像データ)に近づくようにニューラルネットワーク31のパラメータデータを更新していく、いわゆる学習を行う。ニューラルネットワーク31のパラメータデータは、例えば、CNNの誤差逆伝播等の手法によって調整され、更新される。学習機能24は、パラメータデータの変化割合が閾値以内に収束すると、学習が終了したと判断する。学習機能24は、学習後のパラメータデータに基づいて、例えば、DNNの形態を有する学習済みモデル32を生成する。なお、学習済みモデル32は、記憶回路13に記憶され、運用時に記憶回路13から読み出される。また、学習済みモデル32は、ASIC、FPGAなどの集積回路によって構築されてもよい。
【0047】
また、トレーニング入力データの種類と
図9に示す運用時の入力データの種類とは一致させるべきである。たとえば、学習時のトレーニング入力データとしての一部の投影データまたは断層画像データにおける角度(たとえばマイナス1.5度、マイナス0.5度、プラス0.5度、プラス1.5度など)は、運用時の入力データの角度と一致させるべきである。
【0048】
以上のように構成された医用画像処理装置10について、運用時における動作を以下に説明する。
【0049】
画像取得機能21は、X線診断装置101または画像サーバ102から、被検体のトモシンセシス撮影により取得された複数の投影データ、および、複数の投影データのうち、2次元画像データに対応する角度が0度付近の一部の投影データを、第1の医用画像データとして取得する。画像生成機能22は、画像取得機能21により取得された第1の医用画像データに基づいて、被検体の2次元画像データを第2の医用画像データとして生成する。なお、画像取得機能21は、X線診断装置101または画像サーバ102から、被検体のトモシンセシス撮影により取得された複数の投影データを再構成したボリュームデータ、および、ボリュームデータから抽出される、2次元画像データに対応する角度が0度付近の一部の断層画像データを、第1の医用画像データとして取得してもよい。
【0050】
例えば、
図9に示すように、画像生成機能22は、学習済みモデル32に対して、被検体のトモシンセシス撮影により取得された複数の投影データ、および、複数の投影データのうち、2次元画像データに対応する角度が0度付近の一部の投影データ(第1の医用画像データ)を入力することで、当該被検体の2次元画像データを生成する。なお、画像生成機能22は、学習済みモデル32に対して、被検体のトモシンセシス撮影により取得された複数の投影データを再構成したボリュームデータ、および、ボリュームデータから抽出される、2次元画像データに対応する角度が0度付近の一部の断層画像データ(第1の医用画像データ)を入力することで、当該被検体の2次元画像データを生成してもよい。
【0051】
画像生成機能22により生成される2次元画像データは、マンモグラフィ撮影等の2次元画像のX線撮影に対応しているので、実際にマンモグラフィ撮影により得られる画像と比べてもコントラストは同様である。また、画像生成機能22により生成される2次元画像データは、MinIP等の技術により生成される2次元画像(合成2D画像)と比べて、スライス方向と直交する方向に並ぶ情報量は多く、例えば石灰化の背景にある乳腺の情報等も確認できる。さらに、画像生成機能22により生成される2次元画像データは、トモシンセシス撮影におけるX線管の移動に伴うアーチファクトの影響も除外されている。
【0052】
以上、第3の実施形態によれば、被検体のトモシンセシス撮影により取得された複数の投影データと、複数の投影データのうち、2次元画像データに対応する角度が0度付近の一部の投影データとを第1の医用画像データとして取得する画像取得機能21と、第1の医用画像データに基づいてX線撮影に対応する2次元画像データである第2の医用画像データを生成する学習済みモデル32に対して、第1の医用画像データを入力することで、同一被検体の第2の医用画像データを生成する画像生成機能22と、を備えることにより、トモシンセシス撮影に対応する画像から高画質な2次元画像を得ることができる。
【0053】
また、第3の実施形態によれば、被検体のトモシンセシス撮影により取得された複数の投影データを再構成したボリュームデータと、ボリュームデータの断層画像データのうち、2次元画像データに対応する角度が0度付近の一部の断層画像データとを第1の医用画像データとして取得する画像取得機能21と、第1の医用画像データに基づいてX線撮影に対応する2次元画像データである第2の医用画像データを生成する学習済みモデル32に対して、第1の医用画像データを入力することで、同一被検体の第2の医用画像データを生成する画像生成機能22と、を備えることにより、トモシンセシス撮影に対応する画像から高画質な2次元画像を得ることができる。
【0054】
(第3の実施形態の詳細例)
第3の実施形態における学習済みモデル22は、例えば、以下のような形態で生成される。
図10は、第3の実施形態に係る学習済みモデル22の内容の一例を示す図である。学習済みモデル22は、CNNを利用したネットワークである。図示するように、学習済みモデル22は、例えば、コンボリューション層とプーリング層を有するCNNのパラメータをバックプロパゲーションによって求めるディープラーニングによって生成される。コンボリューション層とプーリング層の間には、ReLUなどの活性化関数が挟まれてもよい。学習済モデル22は、例えば、入力層において、被検体のトモシンセシス撮影に対応する医用画像データに適用するCNNと、参照投影データに適用するCNNとを分離させている。参照投影データとは、検体のトモシンセシス撮影により取得された複数の投影データのうち、2次元画像データに対応する角度が0度付近の一部の投影データ、または、被検体のトモシンセシス撮影により取得された複数の投影データを再構成したボリュームデータの断層画像データのうち、2次元画像データに対応する角度が0度付近の一部の断層画像データである。そして、出力層までの任意の層(ある程度、特徴が抽出されてきた層)において、それぞれのCNNの出力が結合(コンカチネット)され、結合されたデータを更にCNNに入力することで2次元画像データが得られるように学習されたものである。図では、被検体のトモシンセシス撮影に対応する医用画像データに適用されるCNNはn層で構成され、参照投影データに適用されるCNNはm層で構成されるものとしている。層の数nとmは同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。また、参照投影データにはCNNが適用されず、被検体のトモシンセシス撮影に対応する医用画像データ側のCNNの中間層に参照投影データが結合されるようにしてもよい。なお、一般的なCNNでは、出力層に近づくにつれて次元が小さくなるが、実施形態では、適宜、外枠部分を外挿により追加していくことで、同じ次元を維持して処理を進行させてよい。
【0055】
(第4の実施形態)
以下、第4の実施形態について説明する。
図11は、第4の実施形態に係る医用画像処理装置10の一構成例を示すブロック図である。医用画像処理装置10は、入力回路11、ディスプレイ12、記憶回路13、ネットワーク接続回路14および処理回路15を備える。処理回路15以外の構成要素は、第1~第3の実施形態で説明したものと同様である。
【0056】
図11に示すように、第4の実施形態に係る処理回路15は、画像取得機能21、画像生成機能22、出力機能23、学習機能24、抽出機能25、強調機能26を実現する。
これらの各機能は、それぞれプログラムの形態で記憶回路13に記憶されている。画像取得機能21、画像生成機能22は、学習済みモデル32が生成された後に機能し、出力機能23、学習機能24は、学習済みモデル32の生成のために機能する。また、抽出機能25、強調機能26は、学習済みモデル32を用いて二次元画像データを生成する際に機能する。
【0057】
画像取得機能21、画像生成機能22、出力機能23、学習機能24は、第1~第3の実施形態のいずれかと同様の構成および機能を有する。すなわち、第1の医用画像データおよび学習済みモデルは、第1~第3の実施形態のいずれかと同様であってよい。従って、学習時の処理についての説明を省略する。
【0058】
図12に示すように、運用時において抽出機能25は、被検体のトモシンセシス撮影により取得された複数の投影データ(第1の医用画像データ)に対して画像処理を行い、画像中の病変候補の位置を抽出し、病変種類を特定する。抽出機能25の画像処理においては、機械学習、モルフォロジー演算、エッジ抽出など任意の手法が用いられてよい。なお、抽出機能25は、被検体のトモシンセシス撮影により取得された複数の投影データを再構成したボリュームデータ(第1の医用画像データ)に対して画像処理を行い、画像中の病変候補の位置を抽出し、病変種類を特定してもよい。
【0059】
強調機能26は、画像生成機能22によって、被検体のトモシンセシス撮影により取得された複数の投影データを学習済みモデル22に入力することで生成された2次元画像データに対して、抽出機能25によって抽出された病変候補の位置を認識可能にするための画像処理を行い、処理後の画像をディスプレイ12に表示させる。強調機能26による画像処理は、病変候補の位置を強調するエフェクト画像を画像に追加したり、病変種類を示す情報(文字、図形等のアノテーションを含む)を付加したりする処理である。係る処理を行うことで、より分かりやすい形態で2次元画像データをディスプレイ12に表示させることができる。
【0060】
以上、第4の実施形態によれば、抽出機能25および強調機能26を更に備えることにより、より分かりやすい形態で2次元画像データをディスプレイ12に表示させることができる。
【0061】
(第5の実施形態)
以下、第5の実施形態について説明する。第5の実施形態の医用画像処理装置10は、第4の実施形態の医用画像処理装置10と同様の構成を有する。但し、第5の実施形態の医用画像処理装置10は、強調機能26を有してもよいし、有さなくてもよい。また、
第5の実施形態において、第1の医用画像データおよび学習済みモデルは、第1~第3の実施形態のいずれかと同様であってよい。従って、学習時の処理についての説明を省略する。
【0062】
図13に示すように、第5の実施形態に係る画像生成機能22は、出力画像を生成する際に、学習済モデル32によって出力された2次元画像データに、トモシンセシス撮影により得られた複数の投影データを再構成したボリュームデータの任意の断層画像データを所定のブレンド比でブレンドして2次元画像データを生成する。任意の断層画像データとは、例えば、抽出機能25によって抽出された病変候補の位置を含む断層画像データである。病変候補の位置がある程度の大きさを有する場合、例えば、病変候補の位置の範囲の中心部を貫通する断層画像のデータが、任意の断層画像データとして選択される。なお、これに限らず、利用者によって選択された断層画像データが選択されてもよいし、一律にボリュームデータの中心部を貫通する断層画像データが選択されてもよい。
【0063】
画像生成機能22は、抽出機能25によって抽出された病変候補の位置を含む断層画像データにαを乗算した画像データと、学習済モデル22が出力した2次元画像データに1マイナスαを乗算した画像データと、を加算して、ブレンドされた2次元画像データを生成する。αは、ゼロから1の間の値をとる係数である。
【0064】
以上、第5の実施形態によれば、トモシンセシス撮影により得られた複数の投影データを再構成したボリュームデータの断層画像をブレンドすることで、被検体Pの内部状態の視認性を向上させることができる。
【0065】
(第6の実施形態)
以下、第6の実施形態について説明する。第6の実施形態では、被検体のトモシンセシス撮影により得られた複数の投影データ、または複数の投影データを再構成したボリュームデータと、複数の投影データのうち2次元画像データに対応する角度が0度付近の一部の投影データ、またはボリュームデータから抽出される、2次元画像データに対応する角度が0度付近の一部の断層画像データとのそれぞれを、スライス平面で分割したミニバッチ領域を対象として学習時および運用時の処理を行う。
【0066】
図14に示すように、第6の実施形態における出力機能23は、トレーニング入力データを生成するために、被検体の被検体のトモシンセシス撮影により得られた複数の投影データと、複数の投影データのうち2次元画像データに対応する角度が0度付近の一部の投影データとのそれぞれについて、k個のミニバッチ領域に対応するデータを切り出す処理を行う。kは自然数である。これに代えて、出力機能23は、複数の投影データを再構成したボリュームデータと、ボリュームデータから抽出される、2次元画像データに対応する角度が0度付近の一部の断層画像データとのそれぞれについて、k個のミニバッチ領域に対応するデータを切り出す処理を行ってもよい。ミニバッチ領域t(1)~t(k)は、それぞれが、スライス方向に直交する方向の情報を全て包含するように、複数の投影データをスライス平面内で分割した空間領域である。また、ミニバッチ領域r(1)~r(k)は、スライス平面においてミニバッチ領域t(1)~t(k)に対応する位置にある領域である。また、出力機能23はトレーニング出力データを生成するために、同一被検体のX線撮影に対応する2次元画像データについても同様に、ミニバッチ領域o(1)~o(k)に対応するデータを切り出す処理を行う。ミニバッチ領域o(1)~o(k)は、スライス平面においてミニバッチ領域t(1)~t(k)に対応する位置にある領域である。
第6の実施形態に係る学習機能24は、ミニバッチ領域のそれぞれについて、学習処理を行う。
図15に示すように、第6の実施形態におけるニューラルネットワーク31は、被検体のトモシンセシス撮影により得られた複数の投影データにおけるミニバッチ領域t(n)が入力される部分と、複数の投影データのうち2次元画像データに対応する角度が0度付近の一部の投影データにおけるミニバッチ領域r(n)が入力される部分とで入力層が分かれており、任意の層までは別々に情報が伝播するモデルである。図中、nは1~kであり、ミニバッチ領域の識別子である。ニューラルネットワーク31は、任意の層において、両方向から伝播する情報が結合され、以降は、結合データから例えば全結合で情報が伝播するようになっている。学習機能24は、学習用データセットが入力されるごとに、トレーニング入力データ(ミニバッチ領域t(n)およびミニバッチ領域r(n)のデータ)をニューラルネットワーク31で処理した結果がトレーニング出力データ(ミニバッチ領域o(n)のデータ)に近づくようにニューラルネットワーク31のパラメータデータを更新していく、いわゆる学習を行う。ニューラルネットワーク31のパラメータデータは、例えば、CNNの誤差逆伝播等の手法によって調整され、更新される。学習機能24は、パラメータデータの変化割合が閾値以内に収束すると、学習が終了したと判断する。学習機能24は、学習後のパラメータデータに基づいて、例えば、DNNの形態を有する学習済みモデル32を生成する。なお、学習済みモデル32は、記憶回路13に記憶され、運用時に記憶回路13から読み出される。また、学習済みモデル32は、ASIC、FPGAなどの集積回路によって構築されてもよい。
【0067】
以上のように構成された医用画像処理装置10について、運用時における動作を以下に説明する。
【0068】
図16に示すように、画像生成機能22は、被検体のトモシンセシス撮影により得られた複数の投影データにおけるミニバッチ領域t(n)のデータと、複数の投影データのうち2次元画像データに対応する角度が0度付近の一部の投影データにおけるミニバッチ領域r(n)のデータとを学習済みモデル22に入力することで、当該被検体の2次元画像データのミニバッチ領域o(n)の部分を生成する。
【0069】
以上、第6の実施形態によれば、、第1~第3の実施形態と同様の効果を奏するのに加えて、学習データの数を増やすことができ、更に、プロセッサの処理負担を軽減することができる。
【0070】
また、第6の実施形態によれば、画像における特徴部分が、周辺領域との関係で隠蔽されてしまうのを抑制することができる。
【0071】
(第7の実施形態)
以下、第7の実施形態について説明する。第7の実施形態は、上記説明した第1~第6の実施形態の医用画像処理装置を、X線診断装置に内蔵させたものである。以下の説明では、代表して第1の実施形態の医用画像処理装置1がX線診断装置に内蔵された例について説明する。
【0072】
図17は、第7の実施形態に係る医用画像処理を含むX線診断装置100Fの構成の一例を示す図である。X線診断装置100Fは、例えば、スタンド110と、X線管120と、高電圧発生器122と、撮影台130と、圧迫板132と、昇降駆動回路134と、X線検出器140と、信号処理回路142と、入力装置150と、表示装置160と、処理回路200とを備える。
【0073】
スタンド110は、撮影台130と、圧迫板132と、X線検出器140及び信号処理回路142とを、上下方向に(図中、Z方向に)移動可能に支持する。
【0074】
X線管120は、高電圧発生器122から供給される高電圧を用いて、X線を発生させる。X線管120により発生させられたX線は、被検体Pの乳房の位置(照射目標位置)に照射される。X線管120は、照射目標位置に対する照射角度を変化させられるように、図中、Y軸回りに円弧を描くように移動可能である。高電圧発生器122は、X線管120に接続され、処理回路200による制御に従って、X線を発生するための高電圧をX線管120に供給する。
【0075】
撮影台130は、被検体Pの乳房を支持する台である。撮影台130は、被検体Pの乳房が載せられる支持面を有する。圧迫板132は、撮影台130の指示面に対向するように、撮影台130上方に(図中、+Z方向に)取り付けられている。圧迫板132は、撮影台130の指示面に対向する状態を維持したまま、撮影台130に対して離間または接近する方向に(図中、Z方向に)移動可能である。
【0076】
撮影台130と圧迫板132との間には、被検体Pの乳房が載置される。このため、圧迫板132が撮影台130に接近する方向に移動すると、被検体Pの乳房が圧迫される。これによって、被検体Pの乳房が薄く押し広げられ、乳腺の重なりが減少することで、より鮮明な画像を得ることができる。
【0077】
昇降駆動回路134は、撮影台130に接続され、処理回路200による制御に従って、撮影台130を上下方向に移動させる。また、昇降駆動回路134は、圧迫板132に接続され、処理回路200による制御に従って、圧迫板132を上下方向に移動させる。
【0078】
X線診断装置100Fは、撮影台130及び圧迫板132の位置を、MLO(Mediolateral-Oblique:内外斜位)方向やCC(Cranio-Caudal:頭尾)方向で固定し、被検体Pの乳房への照射角度を一定に保った状態でX線を照射して収集された投影データに基づいて、MLO画像やCC画像等のマンモグラフィ画像を生成することができる。
【0079】
X線検出器140は、例えば、FPD(Flat Panel Detector)である。X線検出器140は、被検体Pを透過したX線を検出して電気信号に変換する。X線検出器140は、例えば、TFT(Thin Film Transisor)センサ画素を有する。X線検出器140は、検出結果である電気信号を内部に保持する。信号処理回路142は、X線検出器140によって変換された電気信号を読み出し、電気信号に基づいて投影データを生成し、記憶回路170に格納する。
【0080】
入力装置150は、X線診断装置100Fを操作するオペレータによる入力操作を受け付ける。例えば、入力装置150は、マウス、キーボード、ボタン、トラックボール、ジョイスティック、タッチパネルなどを有する。入力装置150は、入力操作の内容を電気信号に変換して処理回路200に出力する。
【0081】
表示装置160は、処理回路200によって生成された各種画像を表示する。各種画像には、オペレータのタッチ操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)画像や、トモシンセシスから生成される断面画像、2次元画像などが含まれる。
【0082】
記憶回路170は、例えば、HDDやフラッシュメモリ、ROMなどの非一時的記憶媒体を有する記憶回路と、RAMやレジスタなどの記憶回路とを含む。記憶回路170は、投影データやトモシンセシス、2次元画像の、処理回路200が実行するプログラム、学習済モデル172などを記憶する。なお、学習済モデル172はプログラムに埋め込まれる形で記述されてもよい。
【0083】
処理回路200は、例えば、システム制御機能210と、画像取得機能220と、画像再構成機能230と、画像生成機能240と、表示制御機能250とを備える。処理回路200は、例えば、ハードウェアプロセッサが記憶回路170に記憶されたプログラムを実行することにより、これらの機能を実現するものである。ハードウェアプロセッサに関しては前述の通りである。
【0084】
システム制御機能210は、X線診断装置100Fの全体を制御する。例えば、システム制御機能210は、高電圧発生器122や昇降駆動回路134、X線検出器140などに対する制御信号を生成し、これらに出力する。
【0085】
システム制御機能210による制御内容の一例について説明する。
図18は、X線診断装置100Fによるトモシンセシス撮影の動作の一例を示す図である。例えば、撮影段階において、X線管120は、X線検出器140の検出面のX方向に関する中心点40Aを通る、検出面に対する法線CL上にある位置(中立位置)を中心に、マイナス7.5度からプラス7.5度の範囲内で円弧を描いて移動するように、図示しない駆動機構によって駆動される。前述した「角度がゼロ度」とは、X線管120が中立位置にある状態を指している。この過程で、X線検出器140および信号処理回路142は、X線管120の中心点40Aに対する角度幅が均等になるように、17枚の投影データを生成する。この17枚の投影データには、例えば、X線管120が法線CL上にある場合に生成される投影データが含まれる。このような動作によって、トモシンセシスを生成するための複数の投影データが取得される。
【0086】
画像取得機能220は、記憶回路170から各種画像を読み出し、他の機能に提供する。例えば、画像取得機能220は、信号処理回路142によって記憶回路170に格納された投影データに対し、対数変換処理、オフセット補正処理、感度補正処理、ビームハードニング補正処理の処理を行なって、補正済の投影データを他の機能に提供する。
【0087】
画像再構成機能230は、画像取得機能220により補正処理が行われた補正済の投影データに対して再構成処理を行い、トモシンセシスを生成する。例えば、画像再構成機能230は、例えば、複数の投影データに対して、逆ラドン変換に基づく画像逆投影処理を行うことで、トモシンセシスを生成する。画像逆投影処理の具体例としては、フィルタ補正逆投影法、逐次近似法(期待値最大化)、シフト加算法などが知られており、その具体的手法に関してX線診断装置100Fは、任意の手法を採用することができる。
【0088】
画像生成機能240は、被検体のトモシンセシス撮影に対応する医用画像データを学習済モデル172に入力することで、2次元画像を生成する。
【0089】
表示制御機能250は、画像生成機能240によって生成された2次元画像などを表示装置160に表示させるための画像信号を生成し、表示装置160に出力する。
【0090】
以上説明した第7の実施形態によれば、X線診断装置を第1~第6の実施形態のいずれかの医用画像処理装置として動作させることができる。
【0091】
(その他)
上記実施形態では、X線診断装置としてマンモグラフィ装置を例に説明したが、X線TV装置に適用する場合、X線TV装置において行われるトモシンセシス撮影で得られたデータから2次元画像(0度のX線撮影により得られるX線画像に相当する画像)を生成するようにしてもよい。
【0092】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
プログラムを記憶した記憶装置と、
ハードウェアプロセッサと、を備え、
前記ハードウェアプロセッサは、前記プログラムを実行することにより、被検体のトモシンセシス撮影に対応する医用画像データを第1の医用画像データとして取得し、前記第1の医用画像データに基づいて2次元画像データである第2の医用画像データを生成する学習済みモデルに対して、前記第1の医用画像データを入力することで、前記被検体の第2の医用画像データを生成する、
ように構成されている、医用画像処理装置。
【0093】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、被検体のトモシンセシス撮影に対応する医用画像データを第1の医用画像データとして取得する画像取得部21と、前記第1の医用画像データに基づいて2次元画像データである第2の医用画像データを生成する学習済みモデル32に対して、前記第1の医用画像データを入力することで、前記被検体の第2の医用画像データを生成する画像生成部22と、を持つことにより、より視認性の良い2次元画像を生成することができる。
【0094】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0095】
10 医用画像処理装置
10 入力回路
12 ディスプレイ
13 記憶回路
14 ネットワーク接続回路
15 処理回路
21 画像取得機能
22 画像生成機能
23 出力機能
24 学習機能
25 抽出機能
26 強調機能
100、100F X線診断装置
120 X線管
140 X線検出器
142 信号処理回路
170 記憶回路
172 学習済モデル
200 処理回路
220 画像取得機能
230 画像再構成機能
240 画像生成機能