(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】エンジンシステム
(51)【国際特許分類】
F01N 3/18 20060101AFI20231120BHJP
H05H 1/24 20060101ALI20231120BHJP
F01N 3/028 20060101ALI20231120BHJP
F01N 11/00 20060101ALI20231120BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20231120BHJP
B01D 53/44 20060101ALI20231120BHJP
B01D 53/56 20060101ALI20231120BHJP
B01D 53/38 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
F01N3/18 C ZAB
H05H1/24
F01N3/028
F01N11/00
F01N3/08 C
B01D53/44
B01D53/56
B01D53/38
(21)【出願番号】P 2019063633
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2022-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】間所 和彦
(72)【発明者】
【氏名】谷口 昌司
(72)【発明者】
【氏名】内藤 一哉
【審査官】山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-098931(JP,A)
【文献】特開2017-152341(JP,A)
【文献】特開2018-018777(JP,A)
【文献】特表2009-512814(JP,A)
【文献】特開2014-055822(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0052464(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/18
H05H 1/24
F01N 3/028
F01N 11/00
F01N 3/08
B01D 53/44
B01D 53/56
B01D 53/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
バッテリーと、
前記バッテリーから電力が供給され、前記エンジンから排出される排ガスに含まれる成分を分解するプラズマリアクターと、
前記バッテリーから前記プラズマリアクターへの電力供給を制御する制御部と、
前記プラズマリアクターに接続され、前記プラズマリアクターに供給された前記電力における電流の積算としての電荷量を検知する電荷センサと
を備え、
前記制御部は、
前記プラズマリアクターに対して電力が供給され、かつ、放電が開始する前
の非放電区間において、
前記電荷センサにより検知される電荷量と、前記プラズマリアクターに対する電力の供給開始からの通電時間とに基づいて、単位時間あたりの電荷上昇量を示す電荷上昇係数を算出し、
前記プラズマリアクターの非放電区間において、前記電荷上昇係数が所定値以上である場合に、前記プラズマリアクターが水濡状態であると判断して、前記プラズマリアクターに対する電力の供給を停止し、
前記電荷上昇係数は、前記プラズマリアクターに対して電力が供給された通電時間に対する、前記プラズマリアクターに供給された前記電力における電流の積算としての電荷量の上昇の度合いを示す
ことを特徴とする、エンジンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排ガスに含まれる粒子状物質(PM)などの有害成分を分解する装置として、プラズマリアクターが知られている。プラズマリアクターは、一対の電極パネルの間にプラズマを発生させ、そのプラズマによって有害成分を分解する。
【0003】
このようなプラズマリアクターは、排ガスが供給されるとともに、温度が上下されるため、排ガスに含まれる水分がプラズマリアクター内で結露する場合があり、電極パネルが水濡する場合がある。水濡した電極パネルは、継続的な排ガス(高温ガス)の供給により乾燥されるが、運転状況によっては、十分に乾燥できない場合がある。そして、電極パネルが多量に水濡している状態で、プラズマリアクターを起動させると、漏電などを惹起する場合がある。そのため、プラズマリアクターの漏電などの異常を検知することが要求されている。
【0004】
プラズマリアクターの漏電などを検出する方法としては、例えば、プラズマリアクターに印加される電流値を一定周期で取得し、異常放電(漏電)によって電流値が所定範囲から外れた回数をカウントし、カウント回数が閾値以上である場合に、異常であると検出する異常検出装置が、提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の異常検出装置では、異常放電(漏電)によって電流値が所定範囲から外れた回数をカウントすることにより、放電開始後において、プラズマリアクターの異常を検出することができる。
【0007】
しかし、異常放電(漏電)が発生する前の段階では、プラズマリアクターの異常を検出できないため、異常放電が発生することは回避できず、漏電を防止することができないという不具合がある。
【0008】
本発明は、プラズマリアクターが水濡状態である場合に、放電の開始前にプラズマリアクターを停止することができ、漏電を防止できるエンジンシステムである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明[1]は、エンジンと、バッテリーと、前記バッテリーから電力が供給され、前記エンジンから排出される排ガスに含まれる成分を分解するプラズマリアクターと、前記バッテリーから前記プラズマリアクターへの電力供給を制御する制御部と、前記プラズマリアクターに接続され、前記プラズマリアクターの電荷量を検知する電荷センサとを備え、前記制御部は、前記プラズマリアクターに対して電力が供給され、かつ、放電が開始する前に、前記電荷センサにより検知される電荷量と、前記プラズマリアクターに対する電力の供給開始からの通電時間とに基づいて、単位時間あたりの電荷上昇量を示す電荷上昇係数を算出し、前記電荷上昇係数が所定値以上である場合に、前記プラズマリアクターが水濡状態であると判断して、前記プラズマリアクターに対する電力の供給を停止する、エンジンシステムを含んでいる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のエンジンシステムでは、プラズマリアクターに電圧が印加された後、放電が開始する前に、プラズマリアクターの電荷量と、プラズマリアクターに対する電力の供給開始からの通電時間とに基づいて、単位時間あたりの電荷上昇量を示す電荷上昇係数が算出される。この放電前における電荷上昇係数は、プラズマリアクターの水濡の度合いに応じて高くなるため、電荷上昇係数から、プラズマリアクターの水濡の度合いを予測することができる。
【0011】
そして、本発明のエンジンシステムでは、放電前の電荷上昇係数が、所定の閾値以上である場合には、プラズマリアクターの水濡の度合いが高いと判断して、プラズマリアクターへの電力の供給を停止する。
【0012】
このようにして、本発明のエンジンシステムでは、プラズマリアクターが水濡状態である場合に、放電が開始する前にプラズマリアクターを停止して、漏電を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明のエンジンシステムの一実施形態の概略構成図である。
【
図2】
図2は、
図1のエンジンシステムの一実施形態の制御を説明するための電荷-時間グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.エンジンシステムの構成
図1に示すように、エンジンシステム1は、例えば、車両100に搭載される。エンジンシステム1は、エンジン2と、バッテリー3と、プラズマリアクター5と、制御部7と、電荷センサ10とを備える。
【0015】
(1)エンジン
エンジン2は、例えば、車両100のエンジンルーム内に配置される。エンジン2には、図示しない吸気系、および、図示しない燃料噴射系が接続される。吸気系、および、燃料噴射系は、制御部7によって制御される。エンジン2は、図示しないスターターモーターによって始動運転され、図示しない各種センサ(回転数センサなど)からの電気信号に基づいて、制御部7により制御される。また、エンジン2は、排気管11を有しており、エンジン2において生じる排ガスが、排気管11を介して排出される。
【0016】
(2)バッテリー
バッテリー3は、例えば、車両100のエンジンルーム内に配置される。バッテリー3としては、例えば、鉛蓄電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池などの公知の二次電池が挙げられる。
【0017】
(3)プラズマリアクター
プラズマリアクター5は、エンジン2から排出される排ガスに含まれる有害成分を分解する。プラズマリアクター5には、バッテリー3から電力が供給される。
【0018】
詳しくは、プラズマリアクター5は、排ガスが供給されるケース(図示せず)と、そのケース内に配置される少なくとも1対の電極パネル(図示せず)とを有する。1対の電極パネルは、互いに間隔を隔てて対向する金属電極と、金属電極を被覆する誘電体とを備えている。また、プラズマリアクター5の電極パネル(図示せず)は、電源配線9を介して、バッテリー3に電気的に接続されている。
【0019】
このようなプラズマリアクター5は、排気管11の途中に介在される。つまり、プラズマリアクター5は、排気管11を介して、エンジン2に接続される。これにより、プラズマリアクター5には、エンジン2から排出された排ガスが、導入される。
【0020】
そして、プラズマリアクター5は、後述する制御部7により、運転および停止が切り替えられる。
【0021】
より具体的には、電源配線9の途中には、電源装置4が介在される。電源装置4は、例えば、図示しないスイッチと、図示しない昇圧回路(例えば、フライバックコンバーターなど)とを有しており、スイッチが、信号配線6を介して、制御部7に電気的に接続される。制御部7は、電源装置4のスイッチをオンすることにより、バッテリー3から、電源装置4を中継して、プラズマリアクター5に電力を供給する(ON状態)。また、制御部7は、スイッチをオフすることにより、電源装置4を介して、バッテリー3からプラズマリアクター5への電力供給を停止する(OFF状態)。
【0022】
そして、プラズマリアクター5がON状態である場合、プラズマリアクター5の電極パネルに、バッテリー3から電源配線9を介して、電力が供給され、1対の電極パネルの間で放電が生じる。これにより、1対の電極パネルの間の気体が、プラズマ状態となる。すなわち、プラズマリアクター5内にプラズマが発生する。
【0023】
このようにして、プラズマリアクター5(ON状態)が所定の電力で運転(定常運転)されると、プラズマリアクター5に導入された排ガスに含まれる有害成分(例えば、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)、粒子状物質(PM)など)は、プラズマリアクター5内のプラズマにより、分解される。そして、プラズマリアクター5を通過した排ガスは、排気管11を介して、車外に排出される。
【0024】
一方、プラズマリアクター5がOFF状態である場合には、上記の電力は供給されず、プラズマは発生しない。
【0025】
(4)制御部
制御部7は、バッテリー3からプラズマリアクター5への電力供給を制御する。制御部7は、車両100における電気的な制御を実行するECU(Electronic Control Unit)であり、CPU、ROMおよびRAMなどを備える。制御部7は、電源配線13を介して、バッテリー3に接続される。制御部7は、車両100のイグニションスイッチがオンされたときに、バッテリー3から電源配線13を介して電力が供給されることにより、起動する。
【0026】
このような制御部7は、エンジンシステム1の作動中において、プラズマリアクター5を運転状態(ON状態)と停止状態(OFF状態)とに切り替え可能としている。
【0027】
また、制御部7は、水濡判定プログラム(図示せず)を備えている。
【0028】
水濡判定プログラムは、後述するように、プラズマリアクター5の電荷量および通電時間から、プラズマリアクター5の水濡を検知するためのプログラムである。
【0029】
より具体的には、水濡判定プログラム(図示せず)は、後述する電荷センサ10により検知されるプラズマリアクター5の電荷量と、プラズマリアクター5に対する電力の供給開始からの通電時間に基づいて、プラズマリアクター5の電荷上昇係数を算出して、その電荷上昇係数が所定の閾値未満であるか閾値以上であるかを判断する。そして、プラズマリアクター5の電荷上昇係数が所定の閾値以上(異常値)である場合、制御部7は、プラズマリアクター5が水濡状態であると判断する。
【0030】
一方、プラズマリアクター5の電荷上昇係数が閾値未満(正常値)である場合、制御部7は、プラズマリアクター5が水濡状態ではないと判断する。
【0031】
(5)電荷センサ10
電荷センサ10は、高圧配線11を介してプラズマリアクター5に接続され、プラズマリアクター5の電荷量を検知するためのセンサである。
【0032】
電荷センサ10としては、公知の電荷センサを用いることができる。電荷センサ10により電荷量を検知する方法としては、例えば、電源装置4の昇圧トランスの電流値を電流センサで測定し、その積算量を、プラズマリアクター5の電荷量として検出する方法などが挙げられる。
【0033】
また、電荷センサ10は、信号配線12を介して、制御部7に電気的に接続されており、検出された電荷量を、制御部7に入力可能としている。
【0034】
2.プラズマリアクターの運転
プラズマリアクター5の運転について、
図1および
図2を参照して説明する。
【0035】
車両100では、エンジン2から排出される排ガスが、排気管11を通過し、プラズマリアクター5に供給される。これにより、排ガスに含まれる有害成分(例えば、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)、粒子状物質(PM)など)が、プラズマリアクター5に流入する。
【0036】
一方、プラズマリアクター5には、バッテリー3から電源装置4を介して、電力が供給される。
【0037】
バッテリー3から電源装置4を介してプラズマリアクター5に電力が供給されると、電源装置4のスイッチの通電時間tの経過に伴って、印加電圧Vが上昇する。そして、プラズマリアクター5に対する印加電圧Vが上昇すると、プラズマリアクター5の電荷量Qが上昇する(
図2参照)。
【0038】
このように、上記のプラズマリアクター5では、通電時間tの経過(上昇)に伴って印加電圧Vが上昇するため、非放電区間(後述)では、通電時間tと印加電圧Vとが比例関係となる。また、印加電圧Vの上昇(通電時間tの経過)に伴って電荷量Qが上昇するため、通電時間t(印加電圧V)と電荷量Qとが比例関係となる。
【0039】
その後、上記のプラズマリアクター5では、通電開始から所定の時間tが経過し、所定の電圧値に到達すると、プラズマリアクター5の電極パネル間で放電が開始される(以下、放電開始点P)。
【0040】
そして、プラズマリアクター5の電極パネル間に放電が生じると、プラズマリアクター5内にプラズマが発生し、プラズマリアクター5に流入した有害成分(例えば、炭化水素(HC)など)は、プラズマにより分解(プラズマ分解)される。
【0041】
なお、放電開始前(非放電区間)に比べて、放電中(放電区間)には、プラズマリアクター5の電荷量Qの上昇が急激になり、上記した通電時間tと電荷量Qとの比例関係が解消される。
【0042】
3.水濡検出
上記のプラズマリアクター5は、排ガスが供給されることによって、内部温度が上下されるため、排ガスに含まれる水分が、プラズマリアクター5内で結露する場合があり、電極パネルが水濡する場合がある。水濡した電極パネルは、継続的な排ガス(高温ガス)の供給により乾燥される。しかし、エンジン2の運転状況によっては、電極パネルを十分に乾燥できない場合があり、そして、電極パネルの水濡れの度合いが大きい状態で、プラズマリアクター5において放電を惹起すると、漏電する場合がある。
【0043】
そこで、上記のエンジンシステムでは、プラズマリアクター5の水濡状態を以下の方法で判断する。
【0044】
より具体的には、放電開始点Pより前の領域(非放電区間)では、上記したように、通電時間tと電荷量Qとが比例関係となる。
【0045】
このような比例関係において、通電時間tに対する電荷量Qの上昇の度合い(つまり、電荷量Q-通電時間tの相関を示す一次関数グラフの傾き)は、プラズマリアクター5内の水濡の度合いによって異なる。
【0046】
より具体的には、例えば、
図2において太実線で示されるように、プラズマリアクター5内が非水濡状態(乾燥状態、または、水分が微量である状態)には、非放電区間において、単位時間あたりの電荷量Qの上昇量は、比較的少ない。
【0047】
これに対して、
図2において2点鎖線で示されるように、プラズマリアクター5内が水濡状態(水分が多量である状態)には、非放電区間において、単位時間あたりの電荷量Qの上昇量が、比較的多い。
【0048】
換言すれば、プラズマリアクター5が非水濡状態であれば、非放電区間での単位時間あたりの電荷上昇量(以下、電荷上昇係数)が比較的小さく、また、プラズマリアクター5が水濡状態であれば、非放電区間での電荷上昇係数は比較的高くなる。
【0049】
そこで、この制御では、水濡状態と非水濡状態とを区別するため、電荷上昇係数の閾値を予め設定して、電荷上昇係数が所定の閾値未満である場合には、プラズマリアクター5が非水濡状態であると判断する。また、電荷上昇係数が所定の閾値以上である場合には、プラズマリアクター5が水濡状態であると判断する。
【0050】
より具体的には、上記のプラズマリアクター5では、予め、通電開始点(t=0)と、放電開始点Pとの関係が測定され、放電しない時間(非放電区間)が特定される。そして、その非放電区間において、種々の水濡の度合いにおける電荷上昇係数が、予め測定される。一方、種々の水濡の度合いに応じて、漏電の生じ易さが観測される。そして、漏電を生じ易い水濡の度合いが特定され、その水濡れの度合いに対応する電荷上昇係数が、制御部7において、閾値として設定される。
【0051】
このようなエンジンシステム1において、上記したように、バッテリー3から電源装置4を介してプラズマリアクター5に電力が供給されと、プラズマリアクター5内で放電が開始するまでの間(非放電区間)において、プラズマリアクター5の電荷量Qが、電荷センサ10によって検知される。
【0052】
次いで、このエンジンシステム1では、制御部7によって、電荷センサ10により検知される電荷量Qと、電源装置4のスイッチの通電時間t(電力の供給開始からの通電時間t)とに基づいて、単位時間あたりの電荷上昇量を示す電荷上昇係数が算出される。
【0053】
つまり、電荷上昇係数は、非放電区間において、電荷量Q-通電時間tの相関を示す一次関数グラフの傾きに相当する。より具体的には、非放電区間における電荷量Qと通電時間tとの関係式は、Q=at(a:電荷上昇係数、Q:電荷量、t:通電時間)で示される。
【0054】
その後、この制御では、プラズマリアクター5の電荷上昇係数が閾値以上であるか否かが、制御部7によって判断される。なお、電荷上昇係数の閾値は、例えば、乾燥状態における電荷上昇係数の1.5倍である。
【0055】
このとき、プラズマリアクター5の電荷上昇係数が、予め設定された閾値未満であると判断された場合には、プラズマリアクター5は、非水濡状態であると判断される。つまり、電荷上昇係数が所定値未満である場合には、プラズマリアクター5内が乾燥状態であるか、または、プラズマリアクター5内を濡らす水分が微量であると判断(予測)される。
【0056】
この場合、漏電の可能性が低いと判断され、プラズマリアクター5の作動が継続される。
【0057】
一方、プラズマリアクター5の電荷上昇係数が、予め設定された閾値以上であると判断された場合、制御部7は、プラズマリアクター5が水濡状態であると判断する。つまり、電荷上昇係数が所定値以上である場合には、プラズマリアクター5内を濡らす水分が多量であると判断(予測)される。
【0058】
この場合、漏電の可能性が高いと判断され、プラズマリアクター5に対する電力の供給が停止される。これにより、漏電を生じやすい状態のプラズマリアクター5において、放電が中止されるため、漏電の発生が抑制される。
【0059】
なお、上記のように水濡状態を判断(予測)するタイミングは、エンジンシステム1の作動中であれば、特に制限されない。
【0060】
例えば、プラズマリアクター5の使用前(排ガス浄化前)に、予備運転として、プラズマリアクター5に電力を供給して、上記の制御により水濡状態を判断してもよい。
【0061】
また、例えば、プラズマリアクター5の使用時(排ガス浄化時)に、本運転として、プラズマリアクター5に電力を供給して、上記の制御により水濡状態を判断してもよい。
【0062】
好ましくは、プラズマリアクター5の使用前(排ガス浄化前)に、予備運転として、プラズマリアクター5に電力を供給して、上記の制御により水濡状態を判断する。
【0063】
4.作用効果
以上のように、エンジンシステム1では、プラズマリアクター5に電圧が印加された後、放電が開始する前に、プラズマリアクター5の電荷量Qと、プラズマリアクター5に対する電力の供給開始からの通電時間tとに基づいて、単位時間あたりの電荷上昇量を示す電荷上昇係数が算出される。この放電前における電荷上昇係数は、プラズマリアクターの水濡の度合いに応じて高くなるため、電荷上昇係数から、プラズマリアクターの水濡の度合いを予測することができる。
【0064】
そして、上記のエンジンシステム1では、放電前の電荷上昇係数が、所定の閾値以上である場合には、プラズマリアクター5の水濡の度合いが高いと判断して、プラズマリアクター5への電力の供給を停止する。
【0065】
このようにして、上記のエンジンシステム1では、プラズマリアクター5が水濡状態である場合に、放電が開始する前にプラズマリアクター5を停止して、漏電を防止することができる。
【0066】
なお、上記のプラズマリアクター5では、通電時間tと電荷量Qとが比例関係であるが、一方、通電時間tと、プラズマリアクター5に印加されている電圧Vとも比例関係である。つまり、通電時間tの経過に伴って印加電圧Vが上昇しており、また、印加電圧Vと電荷量Qとが比例関係である。
【0067】
そのため、印加電圧Vと電荷量Qとの比例定数である静電容量Cは、上記の電荷上昇係数と同じ傾向を示しており、具体的には、静電容量Cが、プラズマリアクター5の水濡の度合いに応じて異なる。
【0068】
そのため、上記のプラズマリアクター5において、電荷量Qおよび印加電圧Vを計測して、静電容量Cを算出し、その静電容量Cが所定値以上であるか所定値未満であるかを判断すれば、プラズマリアクター5が水濡状態であるか非水濡状態であるかを判定することもできる。
【0069】
しかし、プラズマリアクター5に印加されている電圧Vを実測するには、高電圧プローブなどの高価な計測器が必要であるため、エンジンシステム1の高コスト化を惹起する。
【0070】
これに対して、上記のエンジンシステムでは、電荷量Qと通電時間tに基づいて電荷上昇係数を算出することにより、プラズマリアクター5が水濡状態であるか非水濡状態であるかを判定するため、プラズマリアクター5に印加されている電圧Vを測定する必要がない。つまり、高価な計測器が必要ではなく、コスト性に優れる。
【符号の説明】
【0071】
1 エンジンシステム
2 エンジン
3 バッテリー
5 プラズマリアクター
7 制御部
10 電荷センサ