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特許7387298医用画像診断システムおよび医用画像診断装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】医用画像診断システムおよび医用画像診断装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/10 20060101AFI20231120BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
A61B6/10 350
A61B6/03 321G
A61B6/03 321Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019096016
(22)【出願日】2019-05-22
(65)【公開番号】P2020188953
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-04-01
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】船木 達也
【審査官】下村 一石
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-130929(JP,A)
【文献】特開2014-151085(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0168528(US,A1)
【文献】特開2017-113083(JP,A)
【文献】特開2009-160270(JP,A)
【文献】特開2015-213613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面を自走し、スキャノ撮影または本スキャン撮影を行う医用画像診断装置及び前記医用画像診断装置とともに利用されるIVR装置を備える医用画像診断システムであって、
前記医用画像診断装置で実行するスキャンプロトコルを取得する第1取得部と、
前記スキャンプロトコルに基づいて、前記医用画像診断装置及び前記IVR装置の移動範囲を特定する特定部と、
前記医用画像診断装置の移動範囲を含む領域における前記IVR装置の移動範囲の情報を取得する第2取得部と、
前記情報に基づいて、前記医用画像診断装置の移動範囲における前記IVR装置との干渉の発生を予測する検出部と、
を備える医用画像診断システム。
【請求項2】
前記特定部は、前記スキャンプロトコルに含まれるスキャン範囲に関する情報に基づいて、前記移動範囲を特定する、
請求項1に記載の医用画像診断システム。
【請求項3】
前記スキャン範囲は、スキャノ撮影時におけるスキャン範囲乃至は本スキャン撮影時におけるスキャン範囲である、
請求項2に記載の医用画像診断システム。
【請求項4】
前記医用画像診断装置の移動範囲における前記IVR装置との干渉の発生が予測された場合に、警告情報を出力部に出力させる警告出力部を更に備える、
請求項1から3のうちいずれか1項に記載の医用画像診断システム。
【請求項5】
前記検出部は、スキャン実行時及びスキャン実行後の医用画像診断装置のホームポジションへの退避時における前記移動範囲での干渉物の有無を予測する、
請求項1から4のうちいずれか1項に記載の医用画像診断システム。
【請求項6】
前記特定部は、前記移動範囲に加えて当該移動範囲を前記医用画像診断装置が通過するタイミングを更に特定し、
前記検出部は、前記タイミングに基づいて前記移動範囲における前記IVR装置との干渉の発生の有無を予測する、
請求項1から5のうちいずれか1項に記載の医用画像診断システム。
【請求項7】
前記第2取得部は、移動方向と直交する方向から観察した空間情報を取得する、
請求項1から6のうちいずれか1項に記載の医用画像診断システム。
【請求項8】
前記本スキャン撮影は、前記医用画像診断装置が自走することで実行されるヘリカルスキャンまたはステップアンドシュートスキャンの形式で行われる、
請求項1から7のうちいずれか1項に記載の医用画像診断システム。
【請求項9】
床面を自走し、スキャノ撮影または本スキャン撮影を行い、IVR装置とともに利用される医用画像診断装置であって、
スキャンプロトコルを取得する第1取得部と、
前記スキャンプロトコルに基づいて、前記医用画像診断装置及び前記IVR装置の移動範囲を特定する特定部と、
前記医用画像診断装置の移動範囲を少なくとも含む領域における前記IVR装置の情報に基づいて、前記医用画像診断装置の移動範囲における前記IVR装置との干渉の発生を予測する検出部と、
を備える医用画像診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用画像診断システムおよび医用画像診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線管を保持する保持装置が室内を移動して被検体を撮像する医用画像診断装置が知られている。これに関する従来の技術では、医用画像診断装置を配置した室内に複数のカメラを設置し、撮影した画像から室内の干渉物の位置を算出し、干渉物に衝突しないように保持装置を移動させていた。しかしながら、他装置が組み合わされた医用画像診断装置(例えば、IVR-CT装置)に適用することについては十分考慮されておらず、特に、医用画像診断装置が他装置と接触することを予防したり、接触を回避したりすることについては十分考慮されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-205681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、医用画像診断装置が他装置と接触することを予防したり、接触を回避したりすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の医用画像診断システムは、医用画像診断装置と、第1取得部と、特定部と、第2取得部と、検出部とを備える。医用画像診断装置は、床面を自走し、スキャノ撮影または本スキャン撮影を行う。第1取得部は、前記医用画像診断装置で実行するスキャンプロトコルを取得する。特定部は、前記スキャンプロトコルに基づいて、前記医用画像診断装置の移動範囲を特定する。第2取得部は、少なくとも前記移動範囲を含む領域に関する情報を取得する。検出部は、前記情報に基づいて、前記移動範囲における干渉物の有無を検出または予測する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態の医用画像診断システムMGSの概要を示す図。
図2】IVR-CT装置1を含む、医用画像診断システムMGSの構成図。
図3】カメラ60の構成図。
図4】動作予測機能51の構成図。
図5】メモリ41に格納されるデータの一例を示す図。
図6】センサ62の設置例を説明するための図。
図7】動作予測機能51による干渉物予測の処理の内容について説明するための図。
図8】IVR-CT装置1を設置した室内を模式的に示す図。
図9】撮影室におけるIVR-CT装置1の各装置の配置の一例を示す上面図。
図10】撮影室におけるIVR-CT装置1の各装置の配置の他の一例を示す上面図。
図11】IVR-CT装置1による撮影処理の流れの一例を示すフローチャート。
図12】IVR装置70が干渉物となる場合の撮影処理の流れの一例を示すフローチャート。
図13】IVR-CT装置1による撮影処理の流れの他の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の医用画像診断システムおよび医用画像診断装置を、図面を参照して説明する。医用画像診断装置は、被検体を寝台装置に載置して医用画像を取得し、その医用画像に対する処理を行って被検体を診断する装置である。医用画像診断装置は、例えば、X線CT(Computed Tomography:コンピュータ断層診断)装置と、X線診断装置とが組み合わされたIVR(Interventional Radiology)-CT装置である。
【0008】
IVR-CT装置では、X線CT装置によるCT検査とX線診断装置による治療とが併用される。例えば、医師等の術者(以下、「操作者」と称する)は、X線CT装置により撮影された被検体のX線CT画像(断層像)を参照して、狭窄等治療が必要な部位の特定を行う。そして、操作者は、例えば、X線診断装置により撮影される狭窄部位のX線画像(透視画像)を参照しながら、カテーテルによる血管内インターベンション治療を行う。以下の説明において、医用画像診断装置はX線CT装置であるものとして説明するが、これに限定するものではない。
【0009】
図1は、実施形態の医用画像診断システムMGSの概要を示す図である。医用画像診断システムMGSは、例えば、IVR-CT装置1と、1以上のカメラ60とを備える。IVR-CT装置1は、例えば、架台装置10と、寝台装置30と、コンソール装置40(不図示)と、IVR装置70とを備える。カメラ60は、架台装置10、寝台装置30、IVR装置70や、他装置(例えば、ポータブル医療装置や医療カートなど)、操作者をリアルタイムに認識し、それらの位置を検出できるような位置に配置される。
【0010】
架台装置10は、寝台装置30の上に載置される被検体の撮影を行う際に、図中Z軸方向に設置された移動レール19に沿って移動し、被検体のX線CT画像(断層像)を撮影する。架台装置10は、撮影条件に応じて、図示のTilt+の方向、またはTilt-の方向に自装置を傾ける場合がある。
【0011】
以下の説明において、架台装置10を寝台装置30に接近させることを指して、「IN方向に移動する」と称し、架台装置10を寝台装置30から離間させることを指して、「OUT方向に移動する」と称する場合がある。例えば、被検体のX線CT画像を撮影する場合には、架台装置10はIN方向に移動させ、撮影が終了すると架台装置10をOUT方向に移動させる。
【0012】
IVR装置70は、寝台装置30の周辺に配置され、寝台装置30に載置される被検体の狭窄部位のX線画像(透視画像)の撮影を行う。IVR装置70は、寝台装置30に載置される被検体の狭窄部位に合わせて、図中Y軸方向に移動したり、Z軸方向に移動したりすることができる。また、IVR装置70は、架台装置10による撮影時には、架台装置10と接触しないように退避させることができる。
【0013】
カメラ60は、IVR-CT装置1の架台装置10が設置される部屋(例えば、手術室)の室内を撮影する。カメラ60は、図示のように室内の天井部分に取付けられてもよいし、架台装置10やIVR装置70などに取り付けられてもよい。カメラ60の設置場所、設置数について特に制約はなく、架台装置10およびIVR装置70が移動する範囲内における室内の干渉物(例えば、室内に居るIVR-CT装置1の操作者、室内に置かれている周辺機器、備品など)を撮影できる場所、数であればよい。
【0014】
図2は、IVR-CT装置1を含む、医用画像診断システムMGSの構成図である。医用画像診断システムMGSは、例えば、IVR-CT装置1と、カメラ60と、センサ62と、スピーカ64とを備える。
【0015】
カメラ60は、IVR-CT装置1の設置空間の天井付近などに1以上設置される。カメラ60は、複数のカメラ60が離間した位置に設置されたり、異なる高さに設置されているなど、撮像対象の高さ方向(図2のY軸方向)の空間情報を導出可能であることが望ましい。高さ方向の空間情報については後述する。
【0016】
センサ62は、架台装置10の任意の場所に設置され、各装置同士の接触や、装置と被検体の接触、装置と操作者の接触、装置と備品の接触などを検知する。センサ62は、主としてカメラ60により撮像される画像からは各装置の接触や干渉状態が分かり辛い箇所に設置される。
【0017】
なお、センサ62は、寝台装置30やIVR装置70、他装置にも設置されてもよい。センサ62は、例えば、被設置装置に対する接触を検出する圧力センサであってもよい。
【0018】
スピーカ64は、後述するコンソール装置40の処理の結果、接触の可能性が高い場合に警告音声やブザーなどを発する。スピーカ64は、「出力部」の一例である。
【0019】
IVR-CT装置1は、例えば、架台装置10と、寝台装置30と、コンソール装置40と、IVR装置70とを有する。図2では、説明の都合上、架台装置10をZ軸方向から見た図とX軸方向から見た図の双方を掲載しているが、実際には、架台装置10は一つである。実施形態では、非チルト状態での回転フレーム17の回転軸または寝台装置30の天板33の長手方向をZ軸方向、Z軸方向に直交し、床面に対して水平である軸をX軸方向、Z軸方向に直交し、床面に対して垂直である方向をY軸方向とそれぞれ定義する。
【0020】
架台装置10は、例えば、X線管11と、ウェッジ12と、コリメータ13と、X線高電圧装置14と、X線検出器15と、データ収集システム(以下、DAS:Data Acquisition System)16と、回転フレーム17と、制御装置18とを有する。
【0021】
X線管11は、X線高電圧装置14からの高電圧の印加により、陰極(フィラメント)から陽極(ターゲット)に向けて熱電子を照射することでX線を発生させる。X線管11は、真空管を含む。例えば、X線管11は、回転する陽極に熱電子を照射することでX線を発生させる回転陽極型のX線管である。
【0022】
ウェッジ12は、X線管11から被検体Pに照射されるX線量を調節するためのフィルタである。ウェッジ12は、X線管11から被検体Pに照射されるX線量の分布が予め定められた分布になるように、自身を透過するX線を減衰させる。ウェッジ12は、ウェッジフィルタ(wedge filter)、ボウタイフィルタ(bow-tie filter)とも呼ばれる。ウェッジ12は、例えば、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウムを加工したものである。
【0023】
コリメータ13は、ウェッジ12を透過したX線の照射範囲を絞り込むための機構である。コリメータ13は、例えば、複数の鉛板の組み合わせによってスリットを形成することで、X線の照射範囲を絞り込む。コリメータ13は、X線絞りと呼ばれる場合もある。
【0024】
X線高電圧装置14は、例えば、高電圧発生装置と、X線制御装置とを有する。高電圧発生装置は、変圧器(トランス)および整流器などを含む電気回路を有し、X線管11に印加する高電圧を発生させる。X線制御装置は、X線管11に発生させるべきX線量に応じて高電圧発生装置の出力電圧を制御する。高電圧発生装置は、上述した変圧器によって昇圧を行うものであってもよいし、インバータによって昇圧を行うものであってもよい。
X線高電圧装置14は、回転フレーム17に設けられてもよいし、架台装置10の固定フレーム(不図示)の側に設けられてもよい。
【0025】
X線検出器15は、X線管11が発生させ、被検体Pを通過して入射したX線の強度を検出する。X線検出器15は、検出したX線の強度に応じた電気信号(光信号などでもよい)をDAS18に出力する。X線検出器15は、例えば、複数のX線検出素子列を有する。複数のX線検出素子列のそれぞれは、X線管11の焦点を中心とした円弧に沿ってチャネル方向に複数のX線検出素子が配列されたものである。複数のX線検出素子列は、スライス方向(列方向、row方向)に配列される。
【0026】
X線検出器15は、例えば、グリッドと、シンチレータアレイと、光センサアレイとを有する間接型の検出器である。シンチレータアレイは、複数のシンチレータを有する。それぞれのシンチレータは、シンチレータ結晶を有する。シンチレータ結晶は、入射するX線の強度に応じた光量の光を発する。グリッドは、シンチレータアレイのX線が入射する面に配置され、散乱X線を吸収する機能を有するX線遮蔽板を有する。なお、グリッドは、コリメータ(一次元コリメータまたは二次元コリメータ)と呼ばれる場合もある。光センサアレイは、例えば、光電子増倍管(フォトマルチプライヤー:PMT)等の光センサを有する。光センサアレイは、シンチレータにより発せられる光の光量に応じた電気信号を出力する。X線検出器15は、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器であってもかまわない。
【0027】
DAS16は、例えば、増幅器と、積分器と、A/D変換器とを有する。増幅器は、X線検出器15の各X線検出素子により出力される電気信号に対して増幅処理を行う。積分器は、増幅処理が行われた電気信号をビュー期間(後述)に亘って積分する。A/D変換器は、積分結果を示す電気信号をデジタル信号に変換する。DAS16は、デジタル信号に基づく検出データをコンソール装置40に出力する。検出データは、生成元のX線検出素子のチャンネル番号、列番号、及び収集されたビューを示すビュー番号により識別されたX線強度のデジタル値である。ビュー番号は、回転フレーム17の回転に応じて変化する番号であり、例えば、回転フレーム17の回転に応じてインクリメントされる番号である。従って、ビュー番号は、X線管11の回転角度を示す情報である。ビュー期間とは、あるビュー番号に対応する回転角度から、次のビュー番号に対応する回転角度に到達するまでの間に収まる期間である。DAS16は、ビューの切り替わりを、制御装置18から入力されるタイミング信号によって検知してもよいし、内部のタイマーによって検知してもよいし、図示しないセンサから取得される信号によって検知してもよい。フルスキャンを行う場合においてX線管11によりX線が連続曝射されている場合、DAS16は、全周囲分(360度分)の検出データ群を収集する。ハーフスキャンを行う場合においてX線管11によりX線が連続曝射されている場合、DAS16は、半周囲分(180度分)の検出データを収集する。
【0028】
回転フレーム17は、X線管11、ウェッジ12、およびコリメータ13と、X線検出器15とを対向支持する円環状の部材である。回転フレーム17は、固定フレームによって、内部に導入された被検体Pを中心として回転自在に支持される。回転フレーム17は、更にDAS16を支持する。DAS16が出力する検出データは、回転フレーム17に設けられた発光ダイオード(LED)を有する送信機から、光通信によって、架台装置10の非回転部分(例えば固定フレーム)に設けられたフォトダイオードを有する受信機に送信され、受信機によってコンソール装置40に転送される。なお、回転フレーム17から非回転部分への検出データの送信方法として、前述の光通信を用いた方法に限らず、非接触型の任意の送信方法を採用してよい。回転フレーム17は、X線管11などを支持して回転させることができるものであれば、円環状の部材に限らず、アームのような部材であってもよい。
【0029】
IVR-CT装置1は、例えば、X線管11とX線検出器15の双方が回転フレーム17によって支持されて被検体Pの周囲を回転するRotate/Rotate-TypeのX線CT装置(第3世代CT)であるが、これに限らず、円環状に配列された複数のX線検出素子が固定フレームに固定され、X線管11が被検体Pの周囲を回転するStationary/Rotate-TypeのX線CT装置(第4世代CT)であってもよい。
【0030】
制御装置18は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサを有する処理回路と、モータやアクチュエータなどを含む駆動機構とを有する。制御装置18は、コンソール装置40または架台装置10に取り付けられた入力インターフェース43からの入力信号を受け付けて、架台装置10および寝台装置30の動作を制御する。
【0031】
制御装置18は、例えば、回転フレーム17を回転させたり、架台装置10をチルトさせたり、寝台装置30の天板33を移動させたりする。架台装置10をチルトさせる場合、制御装置18は、入力インターフェース43に入力された傾斜角度(チルト角度)に基づいて、Z軸方向に平行な軸を中心に回転フレーム17を回転させる。制御装置18は、図示しないセンサの出力等によって回転フレーム17の回転角度を把握している。また、制御装置18は、回転フレーム17の回転角度を随時、処理回路50に提供する。制御装置18は、架台装置10に設けられてもよいし、コンソール装置40に設けられてもよい。
【0032】
制御装置18は、架台装置10を移動レールに沿って自走させ、本スキャン撮影を行ったり、本スキャン撮影の実行前に行う位置決め撮影であるスキャノ撮影を行う。
【0033】
寝台装置30は、スキャン対象の被検体Pを載置して、架台装置10の回転フレーム17の内部に導入する装置である。寝台装置30は、例えば、基台31と、寝台駆動装置32と、天板33と、支持フレーム34とを有する。基台31は、支持フレーム34を鉛直方向(Y軸方向)に移動可能に支持する筐体を含む。寝台駆動装置32は、モータやアクチュエータを含む。寝台駆動装置32は、被検体Pが載置された天板33を、支持フレーム34に沿って、天板33の長手方向(Z軸方向)に移動させる。天板33は、被検体Pが載置される板状の部材である。
【0034】
コンソール装置40は、例えば、メモリ41と、ディスプレイ42と、入力インターフェース43と、メモリ41と、ネットワーク接続回路44と、処理回路50とを有する。実施形態では、コンソール装置40は架台装置10とは別体として説明するが、架台装置10にコンソール装置40の各構成要素の一部または全部が含まれてもよい。
【0035】
メモリ41は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。メモリ41は、例えば、検出データや投影データ、再構成画像、CT画像等を記憶する。これらのデータは、メモリ41ではなく(或いはメモリ41に加えて)、IVR-CT装置1が通信可能な外部メモリに記憶されてもよい。外部メモリは、例えば、外部メモリを管理するクラウドサーバが読み書きの要求を受け付けることで、クラウドサーバによって制御されるものである。
【0036】
ディスプレイ42は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ42は、処理回路によって生成された医用画像(CT画像)や、操作者による各種操作を受け付けるGUI(Graphical User Interface)画像等を表示する。ディスプレイ42は、例えば、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)、有機EL(Electroluminescence)ディスプレイ等である。ディスプレイ42は、架台装置10に設けられてもよい。ディスプレイ42は、デスクトップ型でもよいし、コンソール装置40の本体部と無線通信可能な表示装置(例えばタブレット端末)であってもよい。ディスプレイ42は、「出力部」の他の一例である。
【0037】
入力インターフェース43は、操作者による各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作の内容を示す電気信号を処理回路50に出力する。例えば、入力インターフェース43は、検出データまたは投影データ(後述)を収集する際の収集条件、CT画像を再構成する際の再構成条件、CT画像から後処理画像を生成する際の画像処理条件などの入力操作を受け付ける。例えば、入力インターフェース43は、マウスやキーボード、タッチパネル、ドラッグボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、フットペダル、カメラ、赤外線センサ、マイク等により実現される。入力インターフェース43は、架台装置10に設けられてもよい。また、入力インターフェース43は、コンソール装置40の本体部と無線通信可能な表示装置(例えばタブレット端末)により実現されてもよい。
【0038】
ネットワーク接続回路44は、例えば、プリント回路基板を有するネットワークカード、或いは無線通信モジュールなどを含む。ネットワーク接続回路44は、接続する対象のネットワークの形態に応じた情報通信用プロトコルを実装する。ネットワークは、例えば、LAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)、インターネット、セルラー網、専用回線等を含む。
【0039】
処理回路50は、IVR-CT装置1の全体の動作を制御する。処理回路50は、例えば、動作予測機能51、システム制御機能52、前処理機能53、再構成処理機能54、画像処理機能55、スキャン制御機能56、表示制御機能57などを実行する。処理回路50は、例えば、ハードウェアプロセッサがメモリ41に記憶されたプログラムを実行することにより、これらの機能を実現するものである。
【0040】
ハードウェアプロセッサとは、例えば、CPU、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit; ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device; SPLD)または複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device; CPLD)や、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array; FPGA))などの回路(circuitry)を意味する。メモリ41にプログラムを記憶させる代わりに、ハードウェアプロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、ハードウェアプロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。ハードウェアプロセッサは、単一の回路として構成されるものに限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのハードウェアプロセッサとして構成され、各機能を実現するようにしてもよい。また、複数の構成要素を1つのハードウェアプロセッサに統合して各機能を実現するようにしてもよい。
【0041】
コンソール装置40または処理回路50が有する各構成要素は、分散化されて複数のハードウェアにより実現されてもよい。処理回路50は、コンソール装置40が有する構成ではなく、コンソール装置40と通信可能な処理装置によって実現されてもよい。処理装置は、例えば、一つのX線CT装置と接続されたワークステーション、あるいは複数のX線CT装置に接続され、以下に説明する処理回路50と同等の処理を一括して実行する装置(例えばクラウドサーバ)である。
【0042】
動作予測機能51は、IVR-CT装置1の設置空間の架台装置10、寝台装置30、IVR装置70、その他装置、操作者などの動作を予測する。また、動作予測機能51は、操作者の位置を併せて予測する。動作予測機能51による予測は、主として、架台装置10を移動の開始直前および移動中に行われる。動作予測機能51の詳細は後述する。
【0043】
システム制御機能52は、入力インターフェース43が受け付けた入力操作に基づいて、処理回路50の各種機能を制御する。
【0044】
前処理機能53は、DAS16により出力された検出データに対して対数変換処理やオフセット補正処理、チャネル間の感度補正処理、ビームハードニング補正等の前処理を行って、投影データを生成し、生成した投影データをメモリ41に記憶させる。前処理機能53の処理の詳細については後述する。
【0045】
再構成処理機能54は、前処理機能53によって生成された投影データに対して、フィルタ補正逆投影法や逐次近似再構成法等による再構成処理を行って、CT画像を生成し、生成したCT画像をメモリ41に記憶させる。再構成処理機能54は、「再構成部」の一例である。
【0046】
画像処理機能55は、入力インターフェース43が受け付けた入力操作に基づいて、CT画像を公知の方法により、三次元画像や任意断面の断面像データに変換する。三次元画像への変換は、前処理機能53によって行われてもよい。また、画像処理機能55は、断面像データの画像を解析して、解析結果に基づいて被検体の体型を分類してもよい。
【0047】
スキャン制御機能56は、X線高電圧装置14、DAS16、制御装置18、および寝台駆動装置32に指示することで、架台装置10における検出データの収集処理を制御する。スキャン制御機能56は、スキャノ画像を収集する撮影、および診断に用いる画像を撮影する際の各部の動作をそれぞれ制御する。
【0048】
表示制御機能57は、ディスプレイ42の表示態様を制御する。
【0049】
上記構成により、IVR-CT装置1は、ヘリカルスキャンやステップアンドシュートスキャンなどの形式で被検体Pの本スキャン撮影を行う。ヘリカルスキャンとは、天板33を移動させながら回転フレーム17を回転させて被検体Pをらせん状にスキャンする態様である。ステップアンドシュートスキャンとは、天板33の位置を一定間隔で移動させてコンベンショナルスキャンを複数のスキャンエリアで行う態様である。
【0050】
IVR装置70は、例えば、X線管71と、X線検出器72と、Cアーム73と、制御装置74とを備える。
【0051】
X線管71は、架台装置10のX線管11と同様の機能を持つ。X線管71は、さらに架台装置10のウェッジ12およびコリメータ13の機能を併せ持ってもよい。X線検出器72は、架台装置10のX線検出器15およびDAS16と同様の機能を持つ。Cアーム73は、X線管71およびX線検出器72を対向させて支持する。X線管71およびX線検出器72の対は、幾何学的な回転中心(アイソセンタ)の周りに回転するように構成されている。
【0052】
制御装置74は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサを有する処理回路と、モータやアクチュエータなどを含む駆動機構とを有する。制御装置74は、コンソール装置40または入力インターフェース43からの入力信号を受け付けて、Cアーム73の動作を制御する。制御装置74は、架台装置10の制御装置18に内包されてもよい。
【0053】
図3は、カメラ60の構成図である。カメラ60は、例えば、撮像部60-1と、データ送信部60-2とを備える。撮像部60-1は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。また、撮像部60-1は、赤外線カメラであってもよい。データ送信部60-2は、コンソール装置40と有線または無線で通信して、撮像部60-1による撮像結果をコンソール装置40に送信する。撮像部60-1による撮像結果は、例えば、メモリ41に記憶され、処理回路50による処理において参照される。
【0054】
図4は、動作予測機能51の構成図である。動作予測機能51は、例えば、第1取得機能51-1と、特定機能51-2と、第2取得機能51-3と、検出機能51-4と、警告出力機能51-5とを備える。
【0055】
第1取得機能51-1は、IVR-CT装置1の架台装置10によるX線CT撮影のスキャンプロトコルを取得する。スキャンプロトコルには、X線CT撮影の撮影条件、造影条件、画像表示法などの情報が含まれる。第1取得機能51-1は、「第1取得部」の一例である。
【0056】
特定機能51-2は、第1取得機能51-1により取得されたスキャンプロトコルに基づいて、IVR-CT装置1の移動範囲を特定する。IVR-CT装置1の移動範囲には、架台装置10の移動範囲や、IVR装置70の移動範囲が含まれる。特定機能51-2は、「特定部」の一例である。
【0057】
特定機能51-2は、第1取得機能51-1により取得されたスキャンプロトコルに含まれるスキャン範囲(例えば、被検体Pの胸部など)に関する情報に基づいて移動範囲を特定する。なお、スキャンプロトコルに含まれるスキャン範囲は、スキャノ撮影時におけるスキャン範囲であってもよいし、本スキャン撮影時におけるスキャン範囲であってもよい。
【0058】
第2取得機能51-3は、少なくとも特定機能51-2により特定された移動範囲を含む領域に関する情報を取得する。第2取得機能51-3は、例えば、移動範囲を含む領域内の寝台装置30の天板33の位置、他装置の位置や操作者の位置に関する情報をカメラ60により撮像された画像を解析することで取得する。第2取得機能51-3は、「第2取得部」の一例である。
【0059】
第2取得機能51-3は、複数のカメラ60が異なる高さに設置されているなど、架台装置10の移動方向と直交する方向から観察した空間情報であり、架台装置10の設置水平面と直交する高さ方向(図2のY軸方向)の空間情報が取得可能である場合、IVR-CT装置1、特に架台装置10の設置空間内の高さ方向の空間情報を取得可能な画像を設置空間画像41-5から取得してもよい。
【0060】
検出機能51-4は、第2取得機能51-3により取得された領域に関する情報に基づいて、移動範囲における干渉物があるか否かを検出または予測する。検出機能51-4による干渉物の検出処理および予測処理の詳細については後述する。検出機能51-4は、「検出部」の一例である。
【0061】
警告出力機能51-5は、検出機能51-4により干渉物が検出された場合または干渉物の発生が予測された場合、ディスプレイ42やスピーカ64を介して警告情報を出力するように制御する。警告出力機能51-5は、「警告出力部」の一例である。
【0062】
また、検出機能51-4は、IVR装置70を干渉物として検出した場合、警告出力機能51-5に警告情報を出力させる代替として、IVR装置70を特定領域から遠ざける方向、且つ空間内の人物や他装置に干渉しない位置に移動させるようにシステム制御機能52に指示を出力してもよい。
【0063】
図5は、メモリ41に格納されるデータの一例を示す図である。図4に示すように、メモリ41には、例えば、処理回路50により生成される撮影情報41-1、検出データ41-2、投影データ41-3、再構成画像41-4、設置空間画像41-5、移動経路予測モデル41-6、移動経路予測結果41-7などの情報が格納される。
【0064】
撮影情報41-1には、例えば、被検体Pの身体情報(例えば、性別、年齢、身長、体重)や、被検体Pの天板33の載置位置、被検体Pの撮影条件や造影条件などである。撮影情報41-1は、IVR-CT装置1の操作者により入力インターフェース43を介して数値や推定値などが入力されてもよいし、外部装置(例えば、電子カルテシステムなど)から入手するものであってもよい。また、撮影条件41-1には、第1取得機能51-1により取得されたスキャンプロトコルの情報が含まれてもよい。
【0065】
再構成画像41-4には、位置決め時に撮影された画像や、本撮影時に撮影された画像が含まれてもよい。
【0066】
設置空間画像41-5は、カメラ60により撮像された、IVR-CT装置1が設置された室内の画像である。設置空間画像41-5には、被検体Pが寝台装置30に載置されていない状態(空室状態)の室内の画像や、被検体Pが寝台装置30に載置された状態の室内の画像が含まれる。
【0067】
図6は、センサ62の設置例を説明するための図である。センサ62は、例えば、架台装置10のFRONT側(図6左図)と、REAR側(図6右図)とにそれぞれ設置される。FRONT側は架台装置10のうち寝台装置30の設置箇所に近接する側面であり、REAR側は架台装置10のうち寝台装置30の設置箇所よりも離間した方の側面である。被検体Pを載置した天板33は、架台装置10のFRONT側から挿入される。
【0068】
例えば、FRONT側にはテープスイッチセンサ62-1と、前面MATスイッチセンサ62-2とが設置され、REAR側には背面MATスイッチセンサ62-3が設置される。テープスイッチセンサ62-1、前面MATスイッチセンサ62-2および背面MATスイッチセンサ62-3は接触センサ(圧力センサ)である。架台装置10の移動中にテープスイッチセンサ62-1、前面MATスイッチセンサ62-2および背面MATスイッチセンサ62-3のうち少なくともいずれか一つが接触を検知した場合、架台装置10は移動を停止し、ディスプレイ42やスピーカ64に警告情報を出力させる。
【0069】
動作予測機能51は、図6に示したセンサ62の設置箇所以外の、センサ62により接触を検知できない領域への干渉物の接触を予防するために、架台装置10の移動経路を予測して、干渉物の発生の有無を予測する。
【0070】
図7は、動作予測機能51による干渉物予測の処理の内容について説明するための図である。移動経路予測モデル41-6は、撮影情報41-1に含まれる情報の一部または全部をパラメータとして受け付けるモデルであり、あらかじめIVR-CT装置1を設置する室内の空間情報、IVR-CT装置1の架台装置10、IVR装置70の可動領域などの特性を反映し作成されたものである。
【0071】
移動経路予測モデル41-6は、撮影情報41-1の一部または全部と設置空間画像41-5を受け付け、スキャンプロトコルに応じた架台装置10の移動経路や、架台装置10の移動中にIVR装置70や他装置、操作者等との干渉物との接触の有無(干渉物との接触可能性)を予測する。移動経路予測モデル41-6は、算出結果および干渉物との接触の有無の予測結果を、移動経路予測結果41-7としてメモリ41に記憶させる。
【0072】
〔動作検出・予測例1〕
図8は、IVR-CT装置1を設置した室内(以下、撮影室)を模式的に示す図である。撮影室には、IVR-CT装置1の架台装置10、寝台装置30、IVR装置70、ディスプレイ42に加え、撮影に要する他装置(以下、他装置C)が配置される場合がある。また、撮影室には、被検体Pと操作者に加え、他の医療スタッフ(操作者の補助者など)が入室した状態で撮影が行われる。
【0073】
なお、コンソール装置40は、撮影室外に配置されてもよいし、撮影室内の各装置の可動範囲外に配置されてもよい。以下の動作予測例の記載においては、コンソール装置40の記載を省略する。
【0074】
図9は、撮影室におけるIVR-CT装置1の各装置の配置の一例を示す上面図である。図9の例において、動作予測機能51は、架台装置10、寝台装置30、IVR装置70、ディスプレイ42が動作予測の対象となる。なお、図示の架台装置10の位置は、動作開始前でありホームポジションに該当する。
【0075】
図示の特定領域Aは、特定機能51-2により特定された、架台装置10が移動レール19に沿って移動した場合に通過する移動範囲の領域である。特定領域Aは、架台装置10が撮影を開始してから終了するまでの可動領域の全てであってもよいし、所定時間(例えば、10[sec]程度)の可動領域であってもよい。第2取得機能51-3は、少なくとも特定機能51-2により特定された特定領域Aの内側に干渉物となり得るものが存在するか否かを検出するための情報を取得する。
【0076】
図9の例においては、IVR装置70の一部が特定領域Aの内部に入り込んでいるため、検出機能51-4はIVR装置70を干渉物であると検出する。なお、寝台装置30は、IVR装置70と同様に特定領域Aの内部に入り込んでいるが、天板33は架台装置10の穴部分に侵入可能であるため、干渉物となり得ないものとして対象から除外してもよい。なお、カメラ60により撮像された画像により天板33が架台装置10と干渉するか否かの判定が困難である場合、天板33が架台装置10と干渉することの検出は、専らセンサ62に行わせるものとしてもよい。
【0077】
警告出力機能51-5は、IVR装置70を退避させるように警告情報を出力する。このとき、架台装置10の移動は一時的に停止されてもよい。
【0078】
〔動作検出・予測例2〕
また、動作予測機能51は、連続したタイミングで取得された複数の設置空間画像41-5に基づいて、干渉物となり得るものがあるか否かを予測してもよい。
【0079】
その場合、特定機能51-2は、移動範囲に加えて、当該移動範囲を架台装置10が通過するタイミングを更に特定する。検出機能51-4は、特定機能51-2により特定されたタイミングに基づいて、移動範囲における干渉物の発生を予測する。
【0080】
図10は、撮影室におけるIVR-CT装置1の各装置の配置の他の一例を示す上面図である。図10の例において、動作予測機能51は、架台装置10、寝台装置30、IVR装置70、ディスプレイ42、被検体P、作業者W1および作業者W2、他装置Cが動作予測の対象となる。なお、図中の「(t=0)」は、ホームポジションに架台装置10がある状態(撮影開始時点)を説明するものである。
【0081】
動作予測機能51は、複数の設置空間画像41-5に基づいて、撮影室内の他装置Cや操作者等の人物の移動ベクトルを導出して、それぞれの装置や人物が架台装置10の干渉物となり得るか否かを予測してもよい。例えば、第2取得機能51-3は、複数の設置空間画像41-5に基づいて、作業者W2の移動ベクトルV(W2)を導出する。
【0082】
検出機能51-4は、第2取得機能51-3により導出された移動ベクトルV(W2)に基づいて、作業者W2が特定領域Aの内側に入るか否かを予測する。検出機能51-4は、作業者W2が特定領域Aの内側に入ると予測される場合、作業者W2を干渉物として検出する。なお、この場合において、検出機能51-4は、システム制御機能52に、架台装置10の移動を停止させてもよいし、架台装置10の移動速度を遅くさせてもよい。
【0083】
なお、寝台装置30と、天板33に載置された被検体Pは、特定領域Aの内部に入り込んでいるが、架台装置10の穴部分に侵入可能であるため、干渉物となり得ないものとして対象から除外してもよい。
【0084】
また、移動経路予測モデル41-6が、より詳細な人物の動作予測に対応可能である場合、検出機能51-4は、移動経路予測モデル41-6による動作予測に基づいて検出を行ってもよい。
【0085】
特定機能51-2は、架台装置10の移動ベクトルV(10)と、作業者W2の移動ベクトルV(W2)とに基づいて、架台装置10のFRONT側が他装置Cの位置まで到達するタイミング(以下、タイミングt1と称する)を特定する。次に、検出機能51-4は、タイミングt1において架台装置10のFRONT側と他装置Cとが干渉するか否かを予測する。
【0086】
検出機能51-4は、図示の例においては他装置Cがタイミングt1に干渉物となり得るため、干渉すると予測する。また、検出機能51-4は、例えば、作業者W2が他装置Cを特定領域Aの外側に避けるために移動していることが予測される(例えば、作業者W2が他装置Cの方向に手を伸ばしながら移動しており、移動ベクトルV(W2)の変化量から作業者W2自身は停止傾向であると予測されるなど)場合、干渉しないと判定する。干渉しないと判定された場合には、警告出力機能51-5に警告出力をさせるタイミングを遅くしたり、警告の度合を弱めたりしてもよい。
【0087】
なお、上述のような干渉物の検出処理は、スキャノ撮影または本スキャン撮影における、スキャン開始時からスキャン終了後に架台装置10がホームポジションに退避するまで継続して行われるものであってもよい。
【0088】
[処理フロー1]
図11は、IVR-CT装置1による撮影処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0089】
まず、IVR-CT装置1を用いる操作者は、寝台装置30の天板33に被検体Pを載置して、撮影のセッティングを行った状態で、入力インターフェース43を介してIVR-CT装置1の動作指示を行う(ステップS100)。次に、第1取得機能51-1は、システム制御機能52がステップS100において受け付けた動作指示のうち、スキャンプロトコルの情報を取得する(ステップS102)。
【0090】
次に、システム制御機能52は、IVR-CT装置1の動作を開始させ(ステップS104)、カメラ60による監視を開始させる(ステップS106)。次に、特定機能51-2は、架台装置10の移動範囲を特定する(ステップS108)。次に、第2取得機能51-3は、特定機能51-2により特定された移動範囲を含む領域に関する情報を取得する(ステップS110)。
【0091】
次に、システム制御機能52は、ステップS100において入力された動作指示に応じた動作が終了したか否か(動作指示が撮影である場合には、撮影が終了したか否か)を判定する(ステップS112)。動作が終了したと判定した場合、システム制御機能52は、処理を本フローチャートの処理を終了する。動作が終了したと判定しなかった場合、検出機能51-4は、IVR-CT装置1の特定範囲に干渉物が検出されるか否かを判定する(ステップS114)。干渉物が検出されなかった場合、検出機能51-4は、ステップS106に処理を戻す。干渉物が検出された場合、検出機能51-4は、システム制御機能52にIVR-CT装置1の動作を停止させ、警告出力機能51-5に警告情報を出力させる(ステップS116)。以上、本フローチャートの処理の説明を終了する。
【0092】
[処理フロー2]
図12は、IVR-CT装置1のうち、架台装置10に着目し、IVR装置70が干渉物となる場合の撮影処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0093】
まず、IVR-CT装置1を用いる操作者は、寝台装置30の天板33に被検体Pを載置して、撮影のセッティングを行った状態で、入力インターフェース43を介してIVR-CT装置1、特に架台装置10の動作指示を行う(ステップS200)。次に、第1取得機能51-1は、システム制御機能52がステップS100において受け付けた動作指示のうち、スキャンプロトコルの情報を取得する(ステップS202)。
【0094】
次に、システム制御機能52は、IVR-CT装置1の動作を開始させ(ステップS204)、カメラ60による監視を開始させる(ステップS206)。次に、特定機能51-2は、架台装置10の移動範囲を特定する(ステップS208)。次に、第2取得機能51-3は、特定機能51-2により特定された移動範囲を含む領域に関する情報を取得する(ステップS210)。
【0095】
次に、システム制御機能52は、ステップS200において入力された動作指示に応じた動作が終了したか否か(動作指示が撮影である場合には、撮影が終了したか否か)を判定する(ステップS212)。動作が終了したと判定した場合、システム制御機能52は、処理を本フローチャートの処理を終了する。動作が終了したと判定しなかった場合、検出機能51-4は、特定範囲にCアーム73等のIVR装置70が検出されるか否かを判定する(ステップS214)。Cアーム73が干渉物として検出されなかった場合、検出機能51-4は、ステップS206に処理を戻す。Cアーム73が干渉物として検出された場合、検出機能51-4は、システム制御機能52に架台装置10の動作を停止させる、またはCアームを退避させる(ステップS216)。なおステップS216において、警告出力機能51-5による警告情報の出力が行われてもよい。以上、本フローチャートの処理の説明を終了する。
【0096】
[処理フロー3]
図13は、IVR-CT装置1による撮影処理の流れの他の一例を示すフローチャートである。図13に示すフローチャートの処理は、図11に示すフローチャートの処理と比較して、検出機能51-4による干渉物の予測能力がより高い場合を想定した例である。図13に示すステップS300~ステップS310は、図11に示すフローチャートのステップS100~ステップS110にそれぞれ対応するため、以下の説明においてはステップS312以降の処理の説明を中心に行う。
【0097】
ステップS310の処理において、動作が終了したと判定しなかった場合、検出機能51-4は、特定範囲に干渉物が検出されると予測されるか否かを判定する(ステップS312)。干渉物が検出されると予測されない場合、システム制御機能52は、動作開始(既に動作開始されている場合には動作継続)して、ステップS304に処理を戻す。干渉物が検出されると予測される場合、検出機能51-4は、IVR-CT装置1の動作予測と、干渉物の動作方向・動作スピードの予測を行い、警告度合の設定を行う(ステップS316)。次に、警告出力機能51-5は、ステップS316において設定された警告度合の警告情報を出力する(ステップS318)。なお、ステップS318において、IVR-CT装置1のうち架台装置10の移動スピードを遅くするなどの動作変更や、動作停止が行われてもよい。以上、本フローチャートの処理の説明を終了する。
【0098】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、第1取得機能51-1が架台装置10で実行するスキャンプロトコルを取得し、特定機能51-2が取得されたスキャンプロトコルに基づいて、架台装置10の移動範囲を特定し、第2取得機能51-3が少なくとも架台装置10の移動範囲を含む領域に関する情報を取得し、検出機能51-4が第2取得機能51-3により取得された情報に基づいて、特定機能51-2により特定された移動範囲における干渉物の有無を検出したり予測したりすることによって、床面を自走し、スキャノ撮影または本スキャン撮影を行う架台装置10が他装置と接触することを予防したり、接触を回避したりすることができる。
【0099】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の軽減、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0100】
MGS…医用画像診断システム、1…IVR-CT装置、10…架台装置、11…X線管、12…ウェッジ、13…コリメータ、14…X線高電圧装置、15…X線検出器、16…データ収集システム、17…回転フレーム、18…制御装置、30…寝台装置、31…基台、32…寝台駆動装置、33…天板、34…支持フレーム、40…コンソール装置、50…処理回路、51-1…第1取得機能、51-2…特定機能、51-3…第2取得機能、51-4…検出機能、51-5…警告出力機能、52…システム制御機能、53…前処理機能、54…再構成処理機能、55…画像処理機能、56…スキャン制御機能、57…表示制御機能、60…カメラ、62…センサ、64…スピーカ、70…IVR装置、71…X線管、72…X線検出器、73…Cアーム、74…制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13