(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】アクティブ電流位置(ACL)パッチの直交セットの識別
(51)【国際特許分類】
A61B 5/367 20210101AFI20231120BHJP
A61B 5/06 20060101ALI20231120BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20231120BHJP
A61M 25/095 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
A61B5/367 100
A61B5/06
A61M25/00 520
A61M25/095
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019111759
(22)【出願日】2019-06-17
【審査請求日】2022-05-11
(32)【優先日】2018-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
【審査官】山口 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-082446(JP,A)
【文献】特開2006-187634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/367
A61B 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポジション追跡システムであって、
電気的インターフェースであって、
患者の心臓内に挿入されたプローブの遠位端に連結されている1つ又は2つ以上の電極と通信するように、かつ
前記患者の
胸部及び背部のそれぞれの皮膚に
少なくとも3つずつ取り付けられた複数の電極パッチから、前記心臓内の前記1つ又は2つ以上の電極
と各電極パッチとの間の電圧又はインピーダンスを示すポジション信号を受信するように構成された、電気的インターフェースと、
プロセッサと、を備え、前記プロセッサは、
前記ポジション信号に基づいて、前記ポジション信号が互いに最小相関である前記電極パッチの部分サブセットを選択するように、かつ
前記電極パッチ
の選択された
前記部分サブセットから受信された前記ポジション信号に基づいて、前記心臓内の前記
1つ又は2つ以上の電極のうちの少なくとも1つの
位置を推定するように構成さ
れ、
前記部分サブセットは、(i)前記複数の電極パッチのうち前記遠位端が前記心臓内を移動する際の前記ポジション信号の変化が最も大きい1つの電極パッチ、及び、(ii)前記複数の電極パッチのうち前記ポジション信号の前記変化が小さい2つの電極パッチ、を少なくとも含むように選択される、ポジション追跡システム。
【請求項2】
前記プロセッサが、前記心臓内の異なる領域に対して、
前記ポジション信号が互いに最小相関
である前記電極パッチの異なる
部分サブセットを選択するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
プロセッサを備えるポジション追跡
システムの作動方法であって、
前記プロセッサが、患者の心臓内に挿入されたプローブの遠位端に連結されている1つ又は2つ以上の電極と通信することと、
前記プロセッサが、前記患者の
胸部及び背部のそれぞれの皮膚に
少なくとも3つずつ取り付けられた複数の電極パッチから、前記心臓内の前記1つ又は2つ以上の電極
と各電極パッチとの間の電圧又はインピーダンスを示すポジション信号を受信することと、
前記ポジション信号に基づいて、
前記プロセッサが、前記ポジション信号が互いに最小相関である前記電極パッチの部分サブセットを選択することと、
前記電極パッチ
の選択された
前記部分サブセットから受信された前記ポジション信号に基づいて、
前記プロセッサが、前記心臓内の前記
1つ又は2つ以上の電極のうちの少なくとも1つの
位置を推定することと、を含
み、
前記部分サブセットが、前記複数の電極パッチのうち前記遠位端が前記心臓内を移動する際の前記ポジション信号の変化が最も大きい1つの電極パッチ、及び、前記複数の電極パッチのうち前記ポジション信号の前記変化が小さい2つの電極パッチを少なくとも含むように前記プロセッサが前記部分サブセットを選択する、ポジション追跡システムの作動方法。
【請求項4】
前記プロセッサが前記部分サブセットを選択することが、前記心臓内の異なる領域に対して、
前記プロセッサが、前記ポジション信号が互いに最小相関
である前記電極パッチの異なる
部分サブセットを選択することを含む、請求項
3に記載の
ポジション追跡システムの作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、患者の心臓内のカテーテルポジションを追跡するためのシステム及び方法に関し、具体的には、インピーダンスに基づいた心臓ポジション追跡システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
体内マッピングカテーテルのポジションを追跡することが、多くの心臓手術で求められる。例えば、米国特許出願公開第2017/0079542号は、電極組織接触品質を識別する方法であって、カテーテルに取り付けられた少なくとも第1の電極及び第2の電極の配列を含み、かつ心臓組織の近傍の既知の電極間隔を有する、カテーテルを配置することを含み、各電極対が、心臓組織基質の表面に対して直交するように構成されている、方法を説明する。この方法は、第1の電極からの電位図振幅の第1の変化率を測定することと、第2の電極からの電位図振幅の第2の変化率を測定することと、電位図振幅の第1の変化率と電位図振幅の第2の変化率との間の差を計算して、変化率間の差を取得することと、変化率の差の値を、第1の電極が心臓組織と接触しているか否かに相関させることと、を含む。
【0003】
別の例として、米国特許第5,983,126号は、カテーテル位置マッピング、及び関連する手術のためのシステム及び方法を説明する。3つの実質的に直交する交流信号が、患者の心臓などの、マッピング対象の領域に実質的に向けられて、患者を通じて印加される。カテーテルは、少なくとも測定電極を備え、この測定電極は、心臓手術のために患者の心臓壁に接して、又は冠状静脈若しくは動脈内で、様々な位置に配置される。カテーテル先端部と、基準電極、好ましくは患者の表面電極との間で電圧が検知され、この電圧信号は、3つの直交して印加された電流信号に対応する成分を有する。3つの成分をx信号、y信号、及びz信号として分離するために3つの処理チャンネルが使用され、これらの信号から、体内のカテーテル先端部の三次元位置を判定するために計算が行われる。
【0004】
米国特許第8,611,991号は、被験者身体の体外の選択されたポジションに位置する複数の電極を使用して電気インピーダンス断層撮影測定を行うための方法を説明する。複数の直交又は略直交信号は、選択された異なる電極によって同時に導入され、受信電極における結果として生じる既定の応答(もしあれば)が記録又は判定される。信号は、符号分割多重化の技術を使用して符号化され、各受信電極で受信された信号は、元の信号と相互相関されて、複合受信信号に対する各元の信号の寄与を判定する。
【0005】
米国特許第5,899,860号は、患者の体内のカテーテルのポジションを判定するためのシステムを説明する。受信した位置信号から導出した較正ポジションと既知の真の較正ポジションとの間の差から補正関数が判定されると、受信したポジション信号から導出したカテーテルポジションは、補正関数に従って後の測定段階で修正される。
【0006】
米国特許第5,697,377号は、カテーテル位置マッピングのための技術を記載している。3つの実質的に直交する交流信号が、マッピング対象の領域に実質的に向けられて、患者を通じて印加される。カテーテルは、少なくとも測定電極を備えている。カテーテル先端部と、基準電極、好ましくは患者の表面電極との間で電圧が検知され、この電圧信号は、3つの直交して印加された電流信号に対応する成分を有する。3つの成分をx信号、y信号、及びz信号として分離するために3つの処理チャンネルが使用され、これらの信号から、体内のカテーテル先端部の三次元位置を判定するために計算が行われる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で説明される本発明の一実施形態は、電気的インターフェースと、プロセッサと、を含む、ポジション追跡システムを提供する。電気的インターフェースは、患者の心臓内に挿入されたプローブの遠位端に連結されている1つ又は2つ以上の電極と通信するように構成されている。電気的インターフェースは、患者の皮膚に取り付けられた複数の電極パッチから、心臓内の1つ又は2つ以上の電極のポジションを示すポジション信号を受信するように更に構成されている。プロセッサは、ポジション信号に基づいて、ポジション信号が互いに最小相関である電極パッチの部分サブセットを選択するように、かつ電極パッチの選択された部分サブセットから受信されたポジション信号に基づいて、心臓内の電極のうちの少なくとも1つのポジションを推定するように構成されている。
【0008】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、電極パッチの各可能な対から1つの電極パッチを順次選択することによって、最小相関電極パッチを選択するように構成されており、それにより、対のうちの1つの電極パッチは、他方の電極パッチが、遠位端が心臓内を移動する間に変化するポジション信号を測定する際、ポジション信号の最小変化を測定する。
【0009】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、心臓内の異なる領域に対して、最小相関ポジション信号の異なるサブセットを選択するように構成されている。
【0010】
一実施形態では、プロセッサは、3×3行列の要素として3つの最小相関ポジション信号を提供するように構成されている。
【0011】
別の実施形態では、電気的インターフェースは、プローブの遠位端に連結されている1つ又は2つ以上の電極からポジション信号を受信するように更に構成されている。
【0012】
本発明の一実施形態によると、ポジション追跡方法が追加的に提供され、方法は、患者の心臓内に挿入されたプローブの遠位端に連結されている1つ又は2つ以上の電極と通信することを含む。心臓内の1つ又は2つ以上の電極のポジションを示すポジション信号は、患者の皮膚に取り付けられた複数の電極パッチから受信される。ポジション信号に基づいて、ポジション信号が互いに最小相関である電極パッチの部分サブセットが選択される。電極パッチの選択された部分サブセットから受信されたポジション信号に基づいて、心臓内の電極のうちの少なくとも1つのポジションが推定される。
【0013】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮すると、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態による、インピーダンスに基づくアクティブ電流位置(Active Current Location、ACL)ポジション追跡システムの概略描写図である。
【
図2A】本発明の一実施形態による、インピーダンスACL方法の3つの最小相関ACLパッチの選択プロセスの概略描写図である。
【
図2B】本発明の一実施形態による、インピーダンスACL方法の3つの最小相関ACLパッチの選択プロセスの概略描写図である。
【
図3】本発明の実施形態による、心臓内の電極のポジションを取得するための方法を模式的に例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
概論
いくつかの手法が、患者の体内のポジションを追跡するために使用され得る。例えば、インピーダンスに基づくポジション追跡方法は、1つ又は2つ以上の体内検知電極と表面電極との間の測定されたインピーダンスがそれぞれの距離に比例すると推測し得るか、又は測定されたインピーダンスを、予め測定されたそれぞれの座標と相関させることによって較正し得る。一方で、電圧に基づく検知方法は、表面電極を検知するための1つ又は2つ以上の体内検知電極を使用する。
【0016】
インピーダンスに基づくポジション追跡システムは、典型的には、検知電極と皮膚に取り付けられた表面電極(以下、「電極パッチ」と称される)との間のインピーダンスを測定し、かつこれらの測定値から、検知電極の三次元ポジション座標を導出する。原則として、3つの電極パッチは、例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,756,576号に説明されている公知の方法を使用して、検知電極のポジションを三角測量するために十分である。
【0017】
電圧に基づくポジション追跡システムは、典型的には、検知電極と電極パッチとの間の電圧を測定する(即ち、検知電極は、ACLパッチ間に誘起される電圧を測定するために使用される)。この場合、4つの電極パッチは、検知電極のポジションを三角測量するために十分であり、その結果、検知電極が測定する3つの異なる電圧勾配を生成する。
【0018】
実際には、インピーダンスに基づく方法を用いた3電極パッチ方式、又は電圧に基づく方法を用いた4電極パッチ方式のいずれかは、不十分なポジション精度を達成する。したがって、検知電極の体内ポジションを正確に測定するために、アクティブ電流位置(ACL)システム(Biosense Webster,Inc.製)等のインピーダンスに基づくポジション追跡システムは、より多数のパッチを使用する。CARTO4(登録商標)(Biosense Webster,Inc.製)等の電圧に基づくポジション追跡システムもまた、より多数のパッチを使用する。ACLシステムは、例えば、インピーダンスに基づくか、又は電圧に基づくかのいずれかであり、以下「ACLパッチ」と称される、6つ又は7つ以上のパッチを使用し得る。ACLパッチは、心臓内の任意の所与の三次元ポジションを一貫してかつ確実に三角測量することが見出された配置である、胸部及び背部の患者の皮膚に取り付けられる。検知電極のポジションは、6つのACLパッチによって画定される座標系及び三次元空間内の任意の原点で与えられる。
【0019】
インピーダンスに基づく測定からリアルタイムの正確な電極ポジションを導出することは、複数のパッチ追跡ポジションシステムに対する計算要件を要求する。拡張的なコンピューティングハードウェアが採用されない場合、関係する複雑な計算は、例えば、ディスプレイ上で医師に提示されるポジションマップの必要な更新の間に、妨害的な遅延を引き起こし得る。かかる遅延は、マップ、特に心臓の心室のような、動いている器官のマップとの不正確さを結果としてもたらし得る。
【0020】
本明細書に説明される本発明の実施形態は、ポジション追跡システムを使用して、検知電極のポジションを十分正確に、かつ計算の複雑さの低減を伴って、測定することを可能にする方法を提供する。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の検知電極が心臓内の複数の領域を通って移動されている間に、全てのACLパッチ(例えば、6つ又は7つ以上)で測定されたポジション信号(例えば、電流又はインピーダンス)が記録される。任意の所与の領域について、ポジション追跡システム内のプロセッサは、最小相関電極パッチ(本説明において「最も直交する」と称されるが、両方の用語は、同一の意味である)の部分サブセットを選択する。例として、6つ又は7つ以上のACLパッチのうちの3つの「最も直交する」ACLパッチが選択される。原則として、3つを超える「最も直交する」ACLパッチが存在することが可能である。しかしながら、実際には、3つのパッチを超える効果は、小さい(即ち、「費用効果」が計算的に賢明ではない)。
【0021】
所与の領域毎の最小相関電極パッチのサブセットを形成するパッチの識別情報は、インピーダンス及び電圧ACL方法に関して異なり得る。この理由は、インピーダンスACL法では、パッチは、検知電極に対して選択されるが、電圧ACL方法では、3つのパッチは、共通の接地として機能する第4のパッチに対して選択され、その識別情報も、保存されることである。いくつかの実施形態では、第4のパッチが一度選択され、そのためその識別情報が既知であり、3つの新たに選択されたACLパッチが、記憶されたそれらの識別情報を有するたびに復元される必要はない。
【0022】
心臓の所与の領域に関して、プロセッサは、典型的には、ポジション信号が互いに最小相関である(即ち、「最も直交する」)電極パッチの部分サブセットを選択する。「最も直交する」ACLパッチは、カテーテルが所与の領域の周囲を移動する際に、互いに最小相関であるポジション信号を提供するACLパッチの対がどれかを検査することによって選択される。換言すれば、1つのACLパッチが、検知電極が移動する際に信号の変化を示すが、別のパッチが、信号変化をほとんど又は全く示さないとき、2つのACLパッチのうちの一方は、所与の領域に対する略直交する三つ組のサブグループのうちの1つとして選択される。
【0023】
「最も直交する」ACLパッチの識別情報は、典型的には、考慮されている領域に従って変化することになり、また、時間と共に変化し得る。それにもかかわらず、例えば、全ての(例えば、6つの)ACLパッチからのデータを使用する代わりに、カテーテルポジションを見つけるためにかかる最小相関ACLパッチサブグループ(例えば、3つ)を使用することは、「最も直交する」ACLパッチが、他の重要ではないパッチが依然として追加するであろう追加の測定誤差によって測定を劣化させずに、必要とされる精度を提供するので、精度を改善することになる。更に、より少ないACLパッチを使用することは、リアルタイムの計算の複雑さを低減する。計算の視点から、例として、これは、6×6行列の代わりに3×3行列を処理することに大部分が帰することになり、これは、必要とされる計算能力の著しい低減をもたらし得る。
【0024】
したがって、開示された技術は、(a)ポジション追跡精度を改善すること、及び(b)リアルタイム計算を実質的に簡略化すること、という明確な利点を有する。第2の利点は、例えば、各ポジション測定ステップと、その後続のディスプレイ上のマップに対する更新との間の妨害的な遅延の発生の低減に現れる。遅延の排除は、心臓等の動いている器官の結果として得られる電気解剖学的マップの精度を改善するために特に有益であり得る。別の可能な利点は、ポジション追跡システムの計算ハードウェア上の低減された要件であり、これは、かかる医療システムのコストを低減させ得る。
【0025】
システムの説明
図1は、本発明の一実施形態による、インピーダンスに基づくアクティブ電流位置(ACL)ポジション検知システム36の概略描写図である。ACLシステム36は、挿入
図25に見られるように、シャフト22の遠位端に固定されているマッピングカテーテル30のポジションを判定するために使用される。マッピングカテーテル30は、医師56によって、患者40の心臓38の心室等の体内の体腔内に挿入される。典型的には、マッピングカテーテル30は、心臓を空間的にマッピングすること、及び心臓組織のアブレーションを行う前に心臓内の電位をマッピングすること等の、診断に使用される。他の種類のカテーテル又は他の体内装置を、単独で、又は他の治療装置と併せて、他の目的のために代替的に使用してもよい。
【0026】
マッピングカテーテル30は、挿入
図25に見られるように、複数の検知電極32を備える。検知電極32は、コンソール24に含まれるプロセッサ46に接続された駆動回路44に、シャフト22を介して配線によって接続され、駆動回路44は、プロセッサ46によって命令されたように検知電極32を駆動する。プロセッサ46は、典型的には、好適なフロントエンド、ACLパッチ60Pからの信号を受信するためのインターフェース回路、及び適切な信号処理回路を含む、汎用コンピュータである。それについて、駆動回路44は、ケーブル39を介して配線によって患者の皮膚に取り付けられた6つのACL電極に接続され、これらは、以下、ACLパッチ60、62、64、66、68及び70と称されるか、又は以下「ACLパッチ60P」と総称される。分かるように、ACLパッチ60Pは、患者40の心臓38の周囲で胸部及び背部に配置される。
【0027】
6つのACLパッチ60Pの各々は、マッピングカテーテル30に固定された1つ又は2つ以上の検知電極32の各々から、1つ又は2つ以上の検知電極32のポジションを示す、ポジション信号を受信する。6つのポジション信号は、プロセッサ46によって更に処理されて、心臓38内のマッピング電極32の各々のポジションを導出する(ACL方法と称される)。ドライバ回路44は、心臓38内のマッピング電極32の各々のポジションを示し得る、ディスプレイ52を駆動する。
【0028】
ACLシステム36を使用する電極ポジション検知の方法は、例えば、Biosense Webster Inc.(Irvine、California)製のCARTO(商標)システムにおいて、様々な医療アプリケーションに実装され、その開示が参照により本明細書に全て組み込まれる、米国特許第7,756,576号、同第7,869,865号、同第7,848,787号、及び同第8,456,182号に詳細に説明されている。ACLパッチの数は、6よりも大きくてもよいが、6つのACLパッチを使用して、例として説明する。
【0029】
プロセッサ46は、典型的には、本明細書に説明される機能を実行するソフトウェアがプログラムされている、汎用コンピュータを備える。ソフトウェアは、例えばネットワーク上で、コンピュータに電子形態でダウンロードすることができるか、又は代替として、又は更には、磁気メモリ、光学メモリ又は電子メモリなどの、非一過性の有形媒体上で提供及び/又は記憶されてもよい。
【0030】
ポジション検知システム36は、他の体腔において、マッピングカテーテル30と同様のプローブと共に使用されてもよい。典型的には、システム36は、他の要素を含み、それらは、簡略化のために図に示されておらず、必要に応じて以下の説明で言及される。例えば、システム36は、ECG同期信号をコンソール24に提供するために、1つ又は2つ以上の身体表面のECG電極から信号を受信するように連結されたECGモニタを含んでもよい。別の例として、システム36は、アブレーションカテーテル及び/又は追加の検知カテーテル等の1つ又は2つ以上の追加のカテーテルを備えてもよいが、これらは、上記のように、明瞭化のために示されていない。したがって、
図1の構成は、単に概念を明瞭化するために選択された、例示的な構成である。代替的な実施形態では、他の任意の好適な構成もまた用いることができる。
【0031】
プロセッサ46は、典型的には、本明細書に説明される機能を実行するようにソフトウェアにプログラムされている、汎用プロセッサを備える。そのソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して電子形式でプロセッサにダウンロードしてもよく、あるいは、それに代えて若しくはそれに加えて、磁気的メモリ、光学的メモリ、又は電子的メモリなどの有形のメディア上に提供及び/又は記憶されてもよい。
【0032】
ACLパッチの「最も直交する」セットの識別
図2A及び
図2Bは、本発明の一実施形態による、インピーダンスACL方法の3つの最小相関ACLパッチの選択プロセスの概略描写図である。
図2Aでは、明瞭化のために、患者の胴体31は、簡略化された円筒形の図によって表される。胴体31内のポジション87は、P1~P6として
図2Aに列挙された、6つのACLパッチによって測定される。パッチP1、P2及びP3は、胴体31の上面(即ち、「胸部」)に位置し、一方でパッチP4、P5及びP6は、胴体31の底面(即ち、「背部」)に位置する。かかる配置では、2つのパッチグループは、「h」として
図2Aに示される典型的な高さによって分離される。この分離は、胴体31の容積内の任意のポジション34が、6つのACLパッチ及び空間内の任意の原点によって画定される座標空間によって確実に広がり得ることを確実にする。
【0033】
プロセッサ46が3つのACLパッチを選択する前に、ポジション信号は、全てのACLパッチP1~P6を用いて測定され、カテーテルが心臓内の領域87の周囲を移動されている際に記録される。以下に説明されるように、マッピングカテーテル30がとる体内経路上の任意の所与の領域87について、プロセッサ46は、カテーテルが移動する際にポジション信号の最小相関変化を測定する、3つのACLパッチを選択する。換言すれば、カテーテル30が移動する際に1つのACLパッチが変化するポジション信号を示すが、別のパッチがポジション信号の変化をほとんど又は全く示さないとき、これらのACLパッチのうちの1つは、所与の領域のサブグループのうちの3つのうちの1つとしてプロセッサ46によって選択される。
【0034】
幾何学的視点から、検知電極が移動するときにほとんど又は全く変化しない、パッチと検知電極との間の距離は、好適なパッチを示す。実際に、距離がほとんど又は全く変化しないことは、そのパッチから測定されるポジション信号の変化がほとんど又は全く変化しないことを現し、これは、かかる信号の変化が、距離の変化に大きく比例するためである。
【0035】
図2Bは、6つのACLパッチP1~P6のうち、領域87A及び87Bの3つのACLパッチの選択を例示する。1つの例示される場合では、領域87Aは、ACLパッチP1及びP3を接続する線と共直線的に移動するカテーテル30によって画定される線上にある。ポジション信号の最大変化は、電極P1/P3上で予想される(反相関信号を示すことになる)。分かるように、接続領域87A、並びに線によるパッチP2及びP5のポジションは、パッチP1及びP3の位置によって画定される線軸に対して、2つの大きい相互直交軸を形成することになる。したがって、結果として生じる略直交座標系88は、パッチP1/P3、P2、及びP5によって画定され、これは、領域87Aを正確に三角測量するためにプロセッサに対して十分であるはずである。
【0036】
別の例示的な場合では、領域87Bは、ACLパッチP1及び点89を、パッチP5及びP6を接続する線上で接続する線と共直線的に移動するカテーテル30によって画定される線上にある。ポジション信号の最大変化は、電極P1上で予想される。分かるように、領域87Bでは、電極パッチP2及びP4は、P1及び点89を接続する線軸に対して、2つの略相互直交線軸を形成することになる。したがって、略直交座標系90は、P1、P2、及びP4によって画定され、これは、領域87Bを正確に三角測量するためにプロセッサ46に対して十分であるはずである。
【0037】
図2A及び
図2Bに示される描写図の例は、単に概念的な明瞭化のために選択されている。例えば、ACLパッチの数は、変更することができ、6つよりも多くてもよい。選択された部分サブセットの最小相関ACLパッチは、3つを超えるパッチを含んでもよい。したがって、
図2A及び
図2Bに説明される6つのACLパッチのうちの3つの「最も直交する」パッチを選択することは、例としてもたらされている。上記のように、電圧に基づく追跡システムについて、3つの最小相関パッチは、共通の接地として機能する第4のパッチに関して選択されることになる。
【0038】
図3は、本発明の実施形態による、心臓内の電極のポジションを取得するための方法を模式的に例示するフローチャートである。プロセスは、抽出段階110で開始し、その後、システムが、追跡段階112で動作される。2つの段階は、少なくとも一部の時間で並列に実行し、利用可能な計算リソースの対象となり得る。
【0039】
抽出段階110は、受信ステップ92において、心臓38内の検知電極32のポジションを示す、6つのポジション信号をACLパッチ60Pから受信するプロセッサ46によって開始する。
【0040】
次に、プロセッサ46は、識別ステップ94において、3つの「最も直交する」ACLパッチのサブセットを識別する。以下の抽出ステップ96において、プロセッサ46は、元の6つの信号のうちの3つの最小相関信号(「直交」信号と総称される)を維持する。プロセッサ46は、検査ステップ98において、符号化された基準に対する「最も直交する」信号の有効性又は品質を更にテストする。検査が結果的に拒絶であった場合、プロセッサ46は、「最も直交する」信号を無視し、プロセスは、決定ステップ100において、新しい6つの従属的ポジション信号を受信するようにループする。検査が結果的に容認であった場合、プロセッサ46は、記憶ステップ102において、将来の使用のために「最も直交する」信号を更に記憶する。プロセスは、次いで、ステップ92に戻るようにループして、別の6つのポジション信号を、例えば、別の検知電極から、又は心臓38の新しい領域から、マッピングが完了するまで受信する。
【0041】
追跡段階112において、プロセッサ46は、ステップ82で記憶された3つの「最も直交する」パッチを各所与の領域毎に選択する(即ち、取り出す)。システムは、測定ステップ104において、電流及び「最も直交する」パッチを注入してインピーダンスを測定するために、カテーテル上の検知電極32を動作させる。測定されたインピーダンスに基づいて、プロセッサ46は、判定ステップ108において、正確な電極ポジションを導出する。
【0042】
図3に示されるフローチャートの例は、単に概念的な明瞭化のために選択されている。代替的な実施形態では、較正ステップ及び/又は調整ステップなどの更なるステップを実行することもできる。ACLパッチの数は、変更することができ、6つよりも多くてもよい。選択された部分サブセットの最小相関ACLパッチは、3つを超えるパッチを含んでもよい。電圧に基づく追跡が使用されるとき、プロセッサ46は、開始のために、共通の接地として機能するように選択された第4のパッチの識別情報を更に記憶することになる。
【0043】
本明細書に説明される実施形態は、心臓内の心臓カテーテルのインピーダンスに基づくポジション追跡の改善に主に対処するが、本明細書に説明される方法及びシステムはまた、他の用途で使用されてもよい。
【0044】
したがって、上で説明された実施形態は、例として引用したものであり、また本発明は、上で具体的に図示及び説明したものに限定されないことが理解されよう。むしろ本発明の範囲は、上述の様々な特徴の組み合わせ及びその一部の組み合わせの両方、並びに上述の説明を読むことで当業者により想到されるであろう、また従来技術において開示されていないそれらの変形及び修正を含むものである。参照により本特許出願に援用される文献は、これらの援用文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部とみなすものとする。
【0045】
〔実施の態様〕
(1) ポジション追跡システムであって、
電気的インターフェースであって、
患者の心臓内に挿入されたプローブの遠位端に連結されている1つ又は2つ以上の電極と通信するように、かつ
前記患者の皮膚に取り付けられた複数の電極パッチから、前記心臓内の前記1つ又は2つ以上の電極のポジションを示すポジション信号を受信するように構成された、電気的インターフェースと、
プロセッサと、を備え、前記プロセッサは、
前記ポジション信号に基づいて、ポジション信号が互いに最小相関である前記電極パッチの部分サブセットを選択するように、かつ
前記電極パッチの前記選択された部分サブセットから受信された前記ポジション信号に基づいて、前記心臓内の前記電極のうちの少なくとも1つのポジションを推定するように構成されている、ポジション追跡システム。
(2) 前記プロセッサが、前記電極パッチの各可能な対から1つの電極パッチを順次選択することによって、前記最小相関電極パッチを選択するように構成されており、それにより、前記対のうちの前記1つの電極パッチは、他方の電極パッチが、前記遠位端が前記心臓内を移動する間に変化するポジション信号を測定する際、ポジション信号の最小変化を測定する、実施態様1に記載のシステム。
(3) 前記プロセッサが、前記心臓内の異なる領域に対して、最小相関ポジション信号の異なるサブセットを選択するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(4) 前記プロセッサが、3×3行列の要素として3つの最小相関ポジション信号を提供するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(5) 前記電気的インターフェースが、前記プローブの前記遠位端に連結されている前記1つ又は2つ以上の電極から前記ポジション信号を受信するように更に構成されている、実施態様1に記載のシステム。
【0046】
(6) ポジション追跡方法であって、
患者の心臓内に挿入されたプローブの遠位端に連結されている1つ又は2つ以上の電極と通信することと、
前記患者の皮膚に取り付けられた複数の電極パッチから、前記心臓内の前記1つ又は2つ以上の電極のポジションを示すポジション信号を受信することと、
前記ポジション信号に基づいて、ポジション信号が互いに最小相関である前記電極パッチの部分サブセットを選択することと、
前記電極パッチの前記選択された部分サブセットから受信された前記ポジション信号に基づいて、前記心臓内の前記電極のうちの少なくとも1つのポジションを推定することと、を含む、方法。
(7) 前記最小相関電極パッチを選択することが、前記電極パッチの各可能な対から1つの電極パッチを順次選択することを含み、それにより、前記対のうちの前記1つの電極パッチは、他方の電極パッチが、前記遠位端が前記心臓内を移動する間に変化するポジション信号を測定する際、ポジション信号の最小変化を測定する、実施態様6に記載の方法。
(8) 前記最小相関ポジション信号を選択することが、前記心臓内の異なる領域に対して、最小相関ポジション信号の異なるサブセットを選択することを含む、実施態様6に記載の方法。
(9) プロセッサにおいて、3×3行列の要素として3つの最小相関ポジション信号を提供することを含む、実施態様6に記載の方法。
(10) 前記プローブの前記遠位端に連結されている前記1つ又は2つ以上の電極からも前記ポジション信号を受信することを含む、実施態様6に記載の方法。