IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日東電工株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-熱伝導性シート 図1
  • 特許-熱伝導性シート 図2
  • 特許-熱伝導性シート 図3
  • 特許-熱伝導性シート 図4
  • 特許-熱伝導性シート 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】熱伝導性シート
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20231120BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20231120BHJP
   C08L 33/00 20060101ALI20231120BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20231120BHJP
   C08F 20/18 20060101ALI20231120BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20231120BHJP
   C09K 5/14 20060101ALI20231120BHJP
   H01L 23/373 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
C08J5/18 CEY
C08L101/00
C08L33/00
C08K3/22
C08F20/18
C08F2/44 A
C09K5/14 E
H01L23/36 M
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019132703
(22)【出願日】2019-07-18
(65)【公開番号】P2020023672
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-06-13
(31)【優先権主張番号】P 2018141176
(32)【優先日】2018-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100154449
【弁理士】
【氏名又は名称】谷 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100174159
【弁理士】
【氏名又は名称】梅原 めぐみ
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 立也
(72)【発明者】
【氏名】仲野 武史
(72)【発明者】
【氏名】家田 博基
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-035022(JP,A)
【文献】特開2003-152147(JP,A)
【文献】特開2008-239782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/18
C08L 101/00
C08L 33/00
C08K 3/22
C08F 20/18
C08F 2/44
C09K 5/14
H01L 23/373
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂および熱伝導性フィラーを含有する樹脂層を備える熱伝導性シートであって、
前記樹脂は、ベースポリマーとしてアクリル系ポリマーを含み、
前記アクリル系ポリマーは、炭素数1~20の直鎖または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、モノマーAと、を含むモノマー成分の重合物であり、
前記モノマーAは、その単独重合体が屈折率1.50以上の高屈折率ポリマーであるモノマーであり、
前記モノマーAは、フルオレン系(メタ)アクリレート、フェニルフェノール(メタ)アクリレートおよびベンジル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも一種を含み、
前記モノマー成分全量のうち前記炭素数1~20の直鎖または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合は10重量%以上であり、
前記モノマー成分全量のうち前記モノマーAの割合は50重量%以上であり、
前記樹脂の屈折率npと前記熱伝導性フィラーの屈折率nfとが、次の関係式:-0.04≦(np-nf)≦0.04;を満たす、熱伝導性シート。
【請求項2】
前記熱伝導性フィラーの含有量が、前記樹脂100重量部に対して50重量部以上250重量部以下である、請求項1に記載の熱伝導性シート。
【請求項3】
前記熱伝導性フィラーは水和金属化合物を含む、請求項1または2に記載の熱伝導性シート。
【請求項4】
前記樹脂の屈折率npが1.49以上1.65以下である、請求項1~のいずれか一項に記載の熱伝導性シート。
【請求項5】
前記樹脂層は、粘着性を有する層である、請求項1~のいずれか一項に記載の熱伝導性シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱伝導性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子デバイス(例えば半導体素子)製品等の高機能化が進むにつれて、電子デバイス等からの発熱量が増加する傾向がある。このため、放熱性を持たせた電子デバイス製品等の設計の重要性が増している。このような背景のもと、熱伝導性シートは、例えば、電子デバイス製品における発光ダイオード(LED)、有機発光ダイオード(OLED)等の発熱体となり得る電子デバイスと、筐体、ヒートスプレッダー等の放熱体との間に配置されて、発熱体から発生する熱を放熱体に効果的に伝達する目的で使用されている。熱伝導性シートの代表的な構成として、樹脂中に熱伝導性フィラーが分散した形態の熱伝導層を備える構成が挙げられる。熱伝導性シートに関する先行技術文献として特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-176980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の熱伝導性シートでは、可視光線に対する透明性は特に考慮されていない。熱伝導性シートの透明性(光透過性)を高めることができれば、例えば、デバイス構築の工程において当該熱電伝導性シートを発熱体と放熱体との間に配置する際に、熱伝導性シートが本来配置されるべき適切な位置を熱伝導性シートの厚み方向に透過して確認しやすくなり、デバイス構築における精度向上、作業効率の向上等の有利な効果が発揮され得る。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、光透過性が向上した熱伝導性シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、樹脂および熱伝導性フィラーを含有する樹脂層を備える熱伝導性シートが提供される。ここで、上記樹脂と上記熱伝導性フィラーの屈折率差は、0.04以下である。すなわち、上記樹脂の屈折率npと上記熱伝導性フィラーの屈折率nfとが、次の関係式:-0.04≦(np-nf)≦0.04;を満たす。かかる構成によると、熱伝導性シートの透過率(光透過率)が向上し得る。
【0007】
ここに開示される好ましい一態様に係る熱伝導性シートによると、上記熱伝導性フィラーの含有量が、上記樹脂100重量部に対して50重量部以上250重量部以下である。樹脂100重量部に対して50重量部以上250重量部以下の熱伝導性フィラーを含み、かつ上記樹脂の屈折率npと上記熱伝導性フィラーの屈折率nfとが次の関係式:-0.04≦(np-nf)≦0.04;を満たす樹脂層を備える熱伝導性シートによると、良好な透明性と高い熱伝導性とを好適に両立し得る。
【0008】
ここに開示される好ましい他の一態様に係る熱伝導性シートによると、上記樹脂は、ベースポリマーとしてアクリル系ポリマーを含む。かかる樹脂を含む樹脂層を備える構成によると、光透過性のよい熱伝導性シートが実現しやすい。
【0009】
ここに開示される好ましい他の一態様に係る熱伝導性シートによると、上記アクリル系ポリマーは、その単独重合体が屈折率1.50以上の高屈折率ポリマーであるモノマーAを含むモノマー成分の重合物である。かかる構成によると、上記熱伝導性フィラーと上記樹脂の屈折率差が小さい樹脂層が実現されやすくなり、熱伝導性シートの光透過性が向上し得る。
【0010】
ここに開示される好ましい他の一態様に係る熱伝導性シートによると、上記モノマーAは、フルオレン系(メタ)アクリレート、フェニルフェノール(メタ)アクリレートおよびベンジル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも一種を含む。かかるモノマーAを用いると、上記熱伝導性フィラーと上記樹脂の屈折率差が小さい樹脂層が実現されやすくなり、熱伝導性シートの光透過性が向上し得る。
【0011】
ここに開示される好ましい他の一態様に係る熱伝導性シートによると、上記モノマー成分全量のうち上記モノマーAの割合は50重量%以上である。かかる構成によると、上記熱伝導性フィラーと上記樹脂の屈折率差が小さい樹脂層が実現されやすくなり、熱伝導性シートの光透過性がより向上し得る。
【0012】
ここに開示される好ましい他の一態様に係る熱伝導性シートによると、上記熱伝導性フィラーは、水和金属化合物(例えば、水酸化アルミニウム)を含む。かかる構成によると、高い熱伝導性を有しながら、光透過性が向上した熱伝導性シートが実現し得る。
【0013】
ここに開示される好ましい他の一態様に係る熱伝導性シートによると、上記樹脂の屈折率npが1.49以上1.65以下である。かかる屈折率npを有する樹脂を用いると、上記熱伝導性フィラー(例えば、水酸化アルミニウム等の水和金属化合物)と上記樹脂の屈折率差が小さい樹脂層が実現されやすくなり、熱伝導性シートの光透過性がより向上し得る。
【0014】
ここに開示される熱伝導性シートの好ましい一態様において、上記樹脂層は、粘着性を有する層(粘着層)である。かかる構成の熱伝導性シートは、上記樹脂層を被着体に直接貼り付けて使用される態様において、当該熱伝導性シートを被着体に対して密着性よく配置することができるので、被着体からの熱伝導性が向上し得る。また、かかる構成によると、熱伝導性シートは被着体の放熱、熱伝導等の用途に加えて、被着体の固定、接合等の用途にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、一実施形態に係る熱伝導性シートの構成を示す模式的断面図である。
図2図2は、他の一実施形態に係る熱伝導性シートの構成を示す模式的断面図である。
図3図3は、さらに他の一実施形態に係る熱伝導性シートの構成を示す模式的断面図である。
図4図4は、さらに他の一実施形態に係る熱伝導性シートの構成を示す模式的断面図である。
図5図5(a)は、実施例において熱抵抗値の測定に使用した熱特性評価装置の正面概略図であり、図5(b)は、図5(a)に示す装置の側面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、本明細書に記載された発明の実施についての教示と出願時の技術常識とに基づいて当業者に理解され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明することがあり、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、実際に提供される製品のサイズや縮尺を必ずしも正確に表したものではない。
【0017】
<熱伝導性シートの構造例>
ここに開示される熱伝導性シートは、樹脂層を含んで構成されている。上記樹脂層は、粘着層(粘着性を有する層)であってもよく、非粘着層であってもよい。上記樹脂層が粘着層である場合、第一面および第二面該の一方または両方が上記樹脂層の表面(粘着面)により構成された熱伝導性シートは、熱伝導性粘着シートとしても把握され得る。
ここで、本明細書において「粘着層」とは、JIS Z0237(2004)に準じて、SUS304ステンレス鋼板を被着体とし、23℃の測定環境下において2kgのローラを1往復させて上記被着体に圧着してから30分後に引張速度300mm/分の条件で180°方向に剥離した場合の剥離強度が0.1N/20mm以上である層をいう。また、本明細書において「非粘着層」とは、上記粘着層に該当しない層をいい、典型的には上記剥離強度が0.1N/20mm未満である層をいう。23℃の測定環境下において2kgのローラを1往復させてSUS304ステンレス鋼板に圧着した場合に該ステンレス鋼板に貼り付かない層(実質的に粘着性を示さない層)は、ここでいう非粘着層の概念に含まれる典型例である。
【0018】
ここに開示される熱伝導性シートは、上記樹脂層から構成されたものであってもよい。すなわち、ここに開示される熱伝導性シートは、上記樹脂層の一方の表面により構成された第一面と、上記樹脂層の他方の表面により構成された第二面と、を備える基材レス樹脂シートの形態であってもよい。
【0019】
一実施形態に係る熱伝導性シートの構造を図1に模式的に示す。この熱伝導性シート10は、非粘着層である樹脂層12からなる基材レスの熱伝導性シート10として構成されている。熱伝導性シート10は、樹脂層12の一方の表面により構成された非粘着面である第一面12Aと、樹脂層12の他方の表面により構成された非粘着面である第二面12Bとを備える。熱伝導性シート10は、第一面12Aと第二面12Bを、他の部材の異なる箇所にそれぞれ密着するように配置して用いられる。第一面12Aと第二面12Bが密着するように配置される箇所は、異なる部材のそれぞれの箇所であってもよく、単一の部材内の異なる箇所であってもよい。
【0020】
他の一実施形態に係る熱伝導性シートの構造を図2に模式的に示す。この熱伝導性シートは、粘着性を有する樹脂層(粘着層)22からなる基材レスの熱伝導性粘着シート(両面粘着シート)20として構成されている。熱伝導性粘着シート20は、樹脂層22の一方の表面により構成された第一粘着面22Aと、樹脂層22の他方の表面により構成された第二粘着面22Bとを備える。熱伝導性粘着シート20は、粘着面22A,22Bを、被着体の異なる箇所に貼り付けて用いられる。粘着面22A,22Bが貼り付けられる箇所は、異なる部材のそれぞれの箇所であってもよく、単一の部材内の異なる箇所であってもよい。使用前(すなわち、被着体への貼付け前)の熱伝導性粘着シート20は、図2に示すように、第一粘着面22Aおよび第二粘着面22Bが、少なくとも樹脂層22に対向する側がそれぞれ剥離面となっている剥離ライナー24,26によって保護された形態の剥離ライナー付き熱伝導性粘着シート200の構成要素であり得る。剥離ライナー24,26としては、例えば、シート状の基材(ライナー基材)の片面に剥離処理剤による剥離層を設けることで該片面が剥離面となるように構成されたものを好ましく使用し得る。あるいは、剥離ライナー26を省略し、両面が剥離面となっている剥離ライナー24を用い、これと熱伝導性粘着シート20とを重ね合わせて渦巻き状に巻回することにより第二粘着面22Bが剥離ライナー24の背面に当接して保護された形態(ロール形態)の剥離ライナー付き熱伝導性粘着シートを構成していてもよい。
【0021】
あるいは、ここに開示される熱伝導性シートは、樹脂層が支持基材の片面または両面に積層された基材付き熱伝導性シートの形態であってもよい。以下、支持基材のことを単に「基材」ということもある。かかる形態の熱伝導性シートにおいて、上記樹脂層は粘着性を有する粘着層であってもよいし、粘着性を有しない(非粘着性の)非粘着層であってもよいが、基材との密着性を向上させる観点から、上記樹脂層は粘着層であることが好ましい。
【0022】
一実施形態に係る熱伝導性シートの構造を図3に模式的に示す。この熱伝導性シートは、第一面32Aおよび第二面32Bを有するシート状の支持基材(例えば樹脂フィルム)32と、その第一面32A側に固定的に設けられた粘着性を有する第一樹脂層34と、第二面32B側に固定的に設けられた粘着性を有する第二樹脂層36と、を備える基材付き熱伝導性粘着シート(両面粘着シート)30として構成されている。使用前の熱伝導性粘着シート30は、図3に示すように、第一樹脂層34の表面(第一粘着面)34Aおよび第二樹脂層36の表面(第二粘着面)36Aが剥離ライナー38,39によって保護された形態の剥離ライナー付き熱伝導性粘着シート300の構成要素であり得る。あるいは、剥離ライナー39を省略し、両面が剥離面となっている剥離ライナー38を用い、これと熱伝導性粘着シート30とを重ね合わせて渦巻き状に巻回することにより第二粘着面36Aが剥離ライナー38の背面に当接して保護された形態(ロール形態)の剥離ライナー付き熱伝導性粘着シートを構成していてもよい。
【0023】
かかる構成の熱伝導性シート30において、支持基材32を構成する材料は特に限定されない。光透過性のよい熱伝導性シート30を得る観点から、支持基材32としては、透明な樹脂フィルムを好ましく用いることができる。樹脂フィルムの非限定的な例としては、ポリプロピレンやエチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィンを主成分とするポリオレフィンフィルム;ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート等のポリエステルを主成分とするポリエステルフィルム;ポリ塩化ビニルを主成分とするポリ塩化ビニルフィルム;等が挙げられる。一好適例において、透明性の観点からPETフィルムを好ましく採用し得る。
【0024】
あるいは、ここに開示される熱伝導性シートは、樹脂層の片面または両面に粘着剤層が積層された熱伝導性粘着シートの形態であってもよい。かかる形態の熱伝導性シート(熱伝導性粘着シート)において、上記樹脂層は粘着層であってもよいし、非粘着層であってもよい。かかる構成によると、たとえ非粘着層である樹脂層を含む熱伝導性シートであっても、当該樹脂層の片面または両面に積層された粘着剤層により熱伝導性シートの片面または両面に粘着面を形成することができる。
【0025】
一実施形態に係る熱伝導性シートの構造を図4に模式的に示す。この熱伝導性シートは、第一面42Aおよび第二面42Bを有する樹脂層42と、その第一面42A側に固定的に設けられた第一粘着剤層44と、第二面42B側に固定的に設けられた第二粘着剤層46と、を備える熱伝導性粘着シート(両面粘着シート)40として構成されている。使用前の熱伝導性粘着シート40は、図4に示すように、第一粘着剤層44の表面(第一粘着面)44Aおよび第二粘着剤層46の表面(第二粘着面)46Aが剥離ライナー48,49によって保護された形態の剥離ライナー付き熱伝導性粘着シート400の構成要素であり得る。あるいは、剥離ライナー49を省略し、両面が剥離面となっている剥離ライナー48を用い、これと熱伝導性粘着シート40とを重ね合わせて渦巻き状に巻回することにより第二粘着面46Aが剥離ライナー48の背面に当接して保護された形態(ロール形態)の剥離ライナー付き熱伝導性粘着シートを構成していてもよい。
【0026】
なお、第一粘着剤層44および第二粘着剤層46に含まれる粘着剤は、特に限定されない。例えば、アクリル系ポリマー、ゴム系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、ポリエーテル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、フッ素系ポリマー等の、各種のポリマーの一種または二種以上をベースポリマー(すなわち、ポリマー成分の50重量%以上を占める成分)として含む粘着剤であり得る。
【0027】
なお、ここでいう粘着シートの概念には、粘着テープ、粘着フィルム、粘着ラベル等と称されるものが包含され得る。粘着シートは、ロール形態であってもよく、枚葉形態であってもよく、用途や使用態様に応じて適宜な形状に切断、打ち抜き加工等されたものであってもよい。樹脂層の片面または両面に粘着剤層が積層された熱伝導性粘着シートの形態である熱伝導性粘着シートにおいて、上記粘着剤層は、典型的には連続的に形成されるが、これに限定されず、例えば点状、ストライプ状等の規則的あるいはランダムなパターンに形成されていてもよい。
【0028】
<熱伝導性シートの特性>
ここに開示される熱伝導性シートの熱伝導率(定常熱流法による。以下同じ。)は、特に限定されないが、典型的には0.15W/m・K以上である。熱伝導率が高いほど、放熱または熱伝導が所望される部材間に配置されて、当該部材の放熱、熱伝導等の目的に好適に用いられ易くなる。上記熱伝導率は、0.2W/m・K以上であることが好ましく、より好ましくは0.25W/m・K以上、さらに好ましくは0.28W/m・K以上、例えば0.3W/m・K以上であってもよく、0.35W/m・K以上であってもよく、0.4W/m・K以上であってもよく、0.48W/m・K以上であってもよい。熱伝導性シートの熱伝導率の上限は特に制限されない。透明性等、他の特性とのバランスを考慮して、いくつかの態様において、熱伝導性シートの熱伝導率は、例えば2.0W/m・K以下であってよく、1.5W/m・K以下であってもよく、1.0W/m・K以下であってもよく、0.8W/m・K以下であってもよく、0.5W/m・K以下であってもよく、0.5W/m・K未満であってもよい。いくつかの態様において、熱伝導性シートの熱伝導率は、0.45W/m・K以下であってもよく、0.40W/m・K以下でもよく、0.35W/m・K以下でもよく、0.32W/m・K以下でもよい。
【0029】
なお、この明細書において、熱伝導性シートの熱伝導率とは、定常熱流法により測定される値をいう。より具体的には、後述する実施例に記載の方法により、熱伝導性シートの熱伝導率を測定することができる。
【0030】
上記のような好適な熱伝導性を有する熱伝導性シートは、電子デバイス製品等において部材間(典型的には発熱体と放熱体との間)に当該部材と密着するように配置されて、熱を効率的に伝導させることができる。このような態様で使用される熱伝導性シートとしては、部材の凸凹に追従して密着させることにより当該部材と熱伝導性シートの界面における熱抵抗を低下させることができるため、所定の柔軟性を有する樹脂等の媒体に主に熱伝導性に寄与する熱伝導性材料を含ませた(典型的には、分散させた)構成のものが好適に採用され得る。しかしながら、かかる構成の熱伝導性シートは、例えば、媒体および当該媒体に含まれる熱伝導性材料の界面等における光の屈折、分散、反射、回折等の作用により、熱伝導性シート自体の光透過性(透明性)が低下しがちであった。
【0031】
ここに開示される技術によると、樹脂層に含まれる樹脂と熱伝導性フィラーの屈折率差を0.04以下とすることにより、透過率が好適に向上した熱伝導性シートが実現し得る。
【0032】
ここに開示される熱伝導性シートの透過率は、特に限定されない。例えば、熱伝導性シートの透過率は、60%以上であることが好ましく、より好ましくは70%以上であり、さらに好ましくは80%以上(例えば85%以上)である。熱伝導性シートの透過率の上限は特に限定されないが、熱伝導性、粘着性等の他の特性とバランスをとる観点から、通常は99%以下であることが適当であり、95%以下であってもよく、90%以下であってもよい。
【0033】
なお、この明細書において、熱伝導性シートの透過率は、市販の透過率計(例えば、高速積分球式分光透過率測定器、型式「DOT-3」、村上色彩技術研究所社製)を使用して、温度条件23℃、測定波長400nmにて測定することができる。より具体的には、後述する実施例に記載の方法により、熱伝導性シートの透過率を測定することができる。
【0034】
<樹脂層>
ここに開示される熱伝導性シートは、樹脂層を含む。ここで、上記樹脂層に含まれる樹脂の屈折率npは、特に限定されない。上記樹脂層に樹脂とともに含まれる熱伝導性フィラーの屈折率nfは、粘着シートの分野で汎用される樹脂の屈折率と比較して、相対的に高い傾向にある。このため、比較的屈折率の高い樹脂を用いると、熱伝導性フィラーとの屈折率差が好適に低下しやすくなる。
【0035】
樹脂層に含まれる樹脂の屈折率npは、当該樹脂とともに用いられる熱伝導性フィラーの種類にも依存するが、いくつかの態様において、1.49以上であることが好ましく、より好ましくは1.51以上であり、さらに好ましくは1.53以上である。いくつかの態様において、樹脂の屈折率npは、1.55以上であってもよく、1.56以上でもよく、1.57以上でもよい。樹脂の屈折率npの上限は、用いられる熱伝導性フィラーの種類にも依存するが、いくつかの態様において、1.65以下であることが好ましく、より好ましくは1.63以下、さらに好ましくは1.61以下である。他の特性とのバランスを取る観点から、いくつかの態様において、樹脂の屈折率npは、1.59以下であってもよく、1.57以下でもよく、1.55以下でもよく、1.54以下でもよい。
【0036】
なお、この明細書において、樹脂の屈折率npは、市販のアッベ屈折率計(例えば型式「DR-M2」、ATAGO社製)を使用して測定することができる。より具体的には、後述する実施例に記載の方法により、樹脂の屈折率npを測定することができる。後述する熱伝導性フィラーの屈折率nfも同様である。
【0037】
ここに開示される技術において、上記樹脂層に含まれる樹脂は特に限定されない。上記樹脂は、例えば、アクリル系ポリマー、ゴム系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、ポリエーテル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、フッ素系ポリマー等の、各種のポリマーの一種または二種以上をベースポリマー(すなわち、ポリマー成分の50重量%以上を占める成分)として含む樹脂であり得る。ここに開示される技術における樹脂層は、このようなベースポリマーを含む樹脂組成物から形成されたものであり得る。樹脂組成物の形態は特に制限されず、例えば水分散型、溶剤型、ホットメルト型、活性エネルギー線硬化型(例えば光硬化型)等の、各種の形態の樹脂組成物であり得る。
【0038】
本明細書において「活性エネルギー線」とは、重合反応、架橋反応、開始剤の分解等の化学反応を引き起こし得るエネルギーをもったエネルギー線を指す。ここでいう活性エネルギー線の例には、紫外線(UV)、可視光線、赤外線のような光や、α線、β線、γ線、電子線、中性子線、X線のような放射線等が含まれる。
【0039】
特に限定するものではないが、上記ベースポリマーの重量平均分子量(Mw)は、例えば凡そ5×10以上であり得る。かかるMwのベースポリマーによると、良好な凝集性を示す樹脂が得られやすい。いくつかの態様において、ベースポリマーのMwは、例えば10×10以上であってよく、20×10以上でもよく、30×10以上でもよい。また、ベースポリマーのMwは、通常、凡そ500×10以下であることが適当である。かかるMwのベースポリマーは、凹凸追従性のよい樹脂層の形成に適している。
【0040】
ベースポリマーのMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算の値として求めることができる。GPC測定は、例えば、東ソー社製のGPC装置、HLC-8220GPCを使用して、以下の条件で行うことができる。
[GPC測定]
・サンプル濃度:0.2wt%(テトラヒドロフラン(THF)溶液)
・サンプル注入量:10μl
・溶離液:THF・流速:0.6ml/min
・測定温度:40℃
・カラム:
サンプルカラム;TSKguardcolumn SuperHZ-H(1本)+TSKgel SuperHZM-H(2本)
リファレンスカラム;TSKgel SuperH-RC(1本)
・検出器:示差屈折計(RI)
【0041】
(高屈折率モノマーA)
上記ベースポリマーは、その単独重合体が屈折率1.50以上の高屈折率ポリマーであるモノマー(以下「高屈折率モノマーA」とも呼ぶ)により構成されたモノマー単位を含むことが好ましい。即ち、上記ベースポリマーは、その単独重合体が高屈折率ポリマーとなる高屈折率モノマーAを含むモノマー成分の重合物であることが好ましい。ベースポリマーのモノマー成分に高屈折率モノマーAを含ませることにより、ベースポリマーの屈折率を好適な範囲に調整しやすくなる。ベースポリマーの屈折率の調整は、当該ベースポリマーを主成分として含む樹脂の屈折率npの調整に寄与するため、かかる高屈折率モノマーAの使用により、熱伝導性フィラーとの屈折率差が小さい樹脂を含む樹脂層が好適に実現し得る。
【0042】
ここに開示される技術において、好適に用いられ得る高屈折率モノマーAについて、その単独重合体(高屈折率ポリマー)の屈折率は、1.51以上であることが好ましく、より好ましくは1.52以上、さらに好ましくは1.53以上(例えば1.54以上)であり、1.55以上であってもよく、1.56以上であってもよく、1.57以上であってもよい。単独重合体(高屈折率ポリマー)の屈折率が高い高屈折率モノマーAを用いると、樹脂の屈折率npを広い範囲で調整しやすくなる。高屈折率モノマーAの単独重合体(高屈折率ポリマー)の屈折率の上限は特に限定されない。他の特性とバランスをとる観点から、高屈折率モノマーAの単独重合体(高屈折率ポリマー)の屈折率は、凡そ1.7以下であることが適当であり、1.65以下が好ましく、より好ましくは1.63以下、さらに好ましくは1.61以下であり、1.60以下であってもよく、1.60未満でもよく、1.59以下でもよく、1.58以下でもよい。
【0043】
ここに開示される技術において、好適に用いられ得る高屈折率モノマーAとしては、例えば、硫黄原子、ハロゲン原子(好ましくはフッ素以外のハロゲン原子、例えば臭素またはヨウ素)、リン原子および芳香族環から選ばれる少なくとも一種を含有するモノマーが挙げられる。このような高屈折率モノマーAを用いると、比較的高屈折率なベースポリマーが得られやすい。なかでも、芳香族環を含有するモノマーが好ましい。
芳香族環を有するモノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン等のスチレン誘導体、べンジル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシブチル(メタ)アクリレート、エトキシ化されていてもよいフェニルフェノール(メタ)アクリレート、フルオレン系(メタ)アクリレート等の芳香族環を有する(メタ)アクリレート、ビニルトルエン、α-ビニルトルエン等のトルエン誘導体等が挙げられる。芳香族環を有しかつ硫黄原子を含有するモノマーとしては、例えば、フェニルビニルスルフィド等が挙げられる。これらは、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
ベースポリマーの屈折率を好適に調整し得る観点から、当該ベースポリマーのモノマー成分全量のうち高屈折率モノマーAの割合は、50重量%以上であることが好ましい。モノマー成分に占める高屈折率モノマーAの含有量は、55重量%以上であることがより好ましく、60重量%以上であってもよい。いくつかの態様において、モノマー成分全量のうち高屈折率モノマーAの割合は、70重量%以上が好ましく、80重量%以上であってもよく、90重量%以上でもよく、99重量%以上でもよい。粘着性等、他の特性のバランスをとりやすいことから、モノマー成分全量のうち高屈折率モノマーAaの割合は、いくつかの態様において、80重量%以下であってもよく、75重量%以下でもよく、70重量%以下でもよく、65重量%以下でもよい。
【0045】
なお、ベースポリマーのモノマー成分が二種以上の高屈折率モノマーAを含む場合において、上記モノマー成分に占める高屈折率モノマーAの含有量は、当該二種以上の高屈折率モノマーAの合計量を指す。
【0046】
ここに開示される技術において、ベースポリマーはアクリル系ポリマーであることが好ましい。
なお、この明細書において「アクリル系ポリマー」とは、(メタ)アクリル系モノマーに由来するモノマー単位をポリマー構造中に含む重合物をいい、典型的には(メタ)アクリル系モノマーに由来するモノマー単位を50重量%を超える割合で含む重合物をいう。
また、(メタ)アクリル系モノマーとは、1分子中に少なくとも一つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマーをいう。ここで、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基およびメタクリロイル基を包括的に指す意味である。したがって、ここでいう(メタ)アクリル系モノマーの概念には、アクリロイル基を有するモノマー(アクリル系モノマー)とメタクリロイル基を有するモノマー(メタクリル系モノマー)との両方が包含され得る。同様に、この明細書において「(メタ)アクリル酸」とはアクリル酸およびメタクリル酸を、「(メタ)アクリレート」とはアクリレートおよびメタクリレートを、それぞれ包括的に指す意味である。
【0047】
上記アクリル系ポリマーは、高屈折率モノマーAであるアクリル系モノマー(以下、アクリル系高屈折率モノマーAaともいう。)で構成されたモノマー単位を含有するポリマーであり得る。アクリル系高屈折率モノマーAaとしては、芳香族環を有する(メタ)アクリレート、硫黄含有(メタ)アクリレート、ハロゲン化(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
なかでも、芳香族環を有する(メタ)アクリレートが好ましく用いられ得る。
【0048】
芳香族環を有する(メタ)アクリレートの非限定的な例としては、べンジル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシブチル(メタ)アクリレート、エトキシ化されていてもよいフェニルフェノール(メタ)アクリレート、フルオレン系(メタ)アクリレートが挙げられる。なかでも、フルオレン系(メタ)アクリレート、フェニルフェノール(メタ)アクリレートおよびベンジル(メタ)アクリレートが好ましく、フルオレン系アクリレート、エトキシ化されていてもよいフェニルフェノールアクリレート(例えば、エトキシ化o-フェニルフェノールアクリレート)およびベンジルアクリレートがより好ましい。
【0049】
ここで、上記フルオレン系(メタ)アクリレートは、分子中にフルオレン骨格および(メタ)アクリロイル基を有する化合物(モノマー)であり、フルオレン骨格に、直接またはオキシアルキレン鎖(モノオキシアルキレン鎖又はポリオキシアルキレン鎖)を介して、(メタ)アクリロイル基が結合してなる構造の化合物であることが好適である。このようなフルオレン系(メタ)アクリレートの中でも、フルオレン骨格に対する(メタ)アクリロイル基(オキシアルキレン鎖を介する場合を含む。)の結合数が2以上の、いわゆる、多官能フルオレン系(メタ)アクリレートが好ましい。上記フルオレン系(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、大阪ガスケミカル社製の製品名「オグソールEA-0200」、「EA-0500」、「EA-1000」等が挙げられる。
【0050】
硫黄含有(メタ)アクリレートの好適例としては、1,2-ビス(メタ)アクリロイルチオエタン、1,3-ビス(メタ)アクリロイルチオプロパン、1,4-ビス(メタ)アクリロイルチオブタン、1,2-ビス(メタ)アクリロイルメチルチオベンゼン、1,3-ビス(メタ)アクリロイルメチルチオベンゼン等が挙げられる。
ハロゲン化(メタ)アクリレートの好適例としては、6-(4,6-ジブロモ-2-イソプロピルフェノキシ)-1-ヘキシルアクリレート、6-(4,6-ジブロモ-2-s-ブチルフェノキシ)-1-ヘキシルアクリレート、2,6-ジブロモ-4-ノニルフェニルアクリレート、2,6-ジブロモ-4-ドデシルフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0051】
ベースポリマーの屈折率を好適に調整し得る観点から、当該ベースポリマーのモノマー成分全量のうちアクリル系高屈折率モノマーAaの割合は、50重量%以上であることが好ましい。モノマー成分に占めるアクリル系高屈折率モノマーAaの含有量は、55重量%以上であることがより好ましく、60重量%以上であってもよい。いくつかの態様において、モノマー成分全量のうちアクリル系高屈折率モノマーAaの割合は、70重量%以上が好ましく、80重量%以上であってもよく、90重量%以上でもよく、99重量%以上でもよい。粘着性等、他の特性のバランスをとりやすいことから、モノマー成分全量のうちアクリル系高屈折率モノマーAaの割合は、いくつかの態様において、80重量%以下であってもよく、75重量%以下でもよく、70重量%以下でもよく、65重量%以下でもよい。
【0052】
なお、ベースポリマーのモノマー成分が二種以上のアクリル系高屈折率モノマーAaを含む場合において、上記モノマー成分に占めるアクリル系高屈折率モノマーAaの含有量は、当該二種以上のアクリル系高屈折率モノマーAaの合計量を指す。
【0053】
いくつかの態様において、アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来するモノマー単位を含有するポリマーであってもよい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、炭素数1~20の(すなわち、C1-20の)直鎖または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく用いられ得る。特性のバランスをとりやすいことから、モノマー成分全量のうち(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルの割合は、いくつかの態様において、例えば10重量%以上であってよく、20重量%以上でもよく、30重量%以上でもよい。同様の理由から、モノマー成分全量のうち(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルの割合は、例えば50重量%以下であってよく、45重量%以下でもよく、40重量%以下でもよい。
【0054】
(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルの非限定的な具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル等が挙げられる。
【0055】
これらのうち、少なくとも(メタ)アクリル酸C1-18アルキルエステルを用いることが好ましく、少なくとも(メタ)アクリル酸C1-14アルキルエステルを用いることがより好ましい。いくつかの態様において、アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸C4-12アルキルエステル(好ましくはアクリル酸C4-10アルキルエステル、例えばアクリル酸C6-10アルキルエステル)から選択される少なくとも一種を、モノマー単位として含有し得る。例えば、アクリル酸n-ブチル(BA)およびアクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)の一方または両方を含むアクリル系ポリマーが好ましく、少なくとも2EHAを含むアクリル系ポリマーが特に好ましい。好ましく用いられ得る他の(メタ)アクリル酸C1-18アルキルエステルの例としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸n-ブチル(BMA)、メタクリル酸2-エチルヘキシル(2EHMA)、アクリル酸イソステアリル(ISTA)等が挙げられる。
【0056】
アクリル系ポリマーを構成するモノマー単位は、必要に応じて、高屈折率モノマーAaおよび(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外であって、高屈折率モノマーAaまたは(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な他のモノマー(以下、共重合性モノマーともいう。)を含んでいてもよい。上記共重合性モノマーとしては、極性基(例えば、カルボキシ基、水酸基、アミド基等)を有するモノマーを好適に使用することができる。極性基を有するモノマーは、アクリル系ポリマーに架橋点を導入したり、アクリル系ポリマーの凝集力を高めたりするために役立ち得る。共重合性モノマーは、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0057】
共重合性モノマーの非限定的な具体例としては、以下のものが挙げられる。
カルボキシ基含有モノマー:例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等。
酸無水物基含有モノマー:例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸。
水酸基含有モノマー:例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、(4-ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル等。
スルホン酸基またはリン酸基を含有するモノマー:例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸、2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等。
エポキシ基含有モノマー:例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルや(メタ)アクリル酸-2-エチルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有アクリレート、アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジルエーテル等。
シアノ基含有モノマー:例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
イソシアネート基含有モノマー:例えば、2-イソシアナートエチル(メタ)アクリレート等。
アミド基含有モノマー:例えば、(メタ)アクリルアミド;N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(n-ブチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(t-ブチル)(メタ)アクリルアミド等の、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド;N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチル(メタ)アクリルアミド等の、N-アルキル(メタ)アクリルアミド;N-ビニルアセトアミド等のN-ビニルカルボン酸アミド類;水酸基とアミド基とを有するモノマー、例えば、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(1-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(3-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N-(3-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N-(4-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド等の、N-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド;アルコキシ基とアミド基とを有するモノマー、例えば、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等の、N-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド;その他、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-(メタ)アクリロイルモルホリン等。
窒素原子含有環を有するモノマー:例えば、N-ビニル-2-ピロリドン、N-メチルビニルピロリドン、N-ビニルピリジン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルピリミジン、N-ビニルピペラジン、N-ビニルピラジン、N-ビニルピロール、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルオキサゾール、N-(メタ)アクリロイル-2-ピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-ビニルモルホリン、N-ビニル-3-モルホリノン、N-ビニル-2-カプロラクタム、N-ビニル-1,3-オキサジン-2-オン、N-ビニル-3,5-モルホリンジオン、N-ビニルピラゾール、N-ビニルイソオキサゾール、N-ビニルチアゾール、N-ビニルイソチアゾール、N-ビニルピリダジン等(例えば、N-ビニル-2-カプロラクタム等のラクタム類)。
スクシンイミド骨格を有するモノマー:例えば、N-(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-6-オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-8-オキシヘキサメチレンスクシンイミド等。
マレイミド類:例えば、N-シクロヘキシルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-フェニルマレイミド等。
イタコンイミド類:例えば、N-メチルイタコンイミド、N-エチルイタコンイミド、N-ブチルイタコンイミド、N-オクチルイタコンイミド、N-2-エチルへキシルイタコンイミド、N-シクロへキシルイタコンイミド、N-ラウリルイタコンイミド等。
(メタ)アクリル酸アミノアルキル類:例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t-ブチルアミノエチル。
アルコキシ基含有モノマー:例えば、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸3-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシプロピル等の、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル類;(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコール等の、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキレングリコール類。
ビニルエステル類:例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等。
ビニルエーテル類:例えば、例えば、メチルビニルエーテルやエチルビニルエーテル等のビニルアルキルエーテル。
芳香族ビニル化合物:例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等。
オレフィン類:例えば、エチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレン等。
脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル:例えば、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等。
芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル:例えば、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等。
その他、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル等の複素環含有(メタ)アクリレート、塩化ビニルやフッ素原子含有(メタ)アクリレート等のハロゲン原子含有(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等のケイ素原子含有(メタ)アクリレート、テルペン化合物誘導体アルコールから得られる(メタ)アクリル酸エステル等。
【0058】
いくつかの態様において好ましく使用し得る共重合性モノマーとして、下記一般式(M1)で表されるN-ビニル環状アミドおよび水酸基含有モノマー(水酸基と他の官能基とを有するモノマー、例えば水酸基とアミド基とを含有するモノマーであり得る。)からなる群から選ばれる少なくとも一種のモノマーが挙げられる。
【0059】
【化1】
ここで、上記一般式(M1)中のRは、2価の有機基である。
【0060】
N-ビニル環状アミドの具体例としては、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピペリドン、N-ビニル-3-モルホリノン、N-ビニル-2-カプロラクタム、N-ビニル-1,3-オキサジン-2-オン、N-ビニル-3,5-モルホリンジオン等が挙げられる。特に好ましくはN-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-カプロラクタムである。
【0061】
水酸基含有モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド等を好適に使用することができる。なかでも好ましい例として、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)、アクリル酸4-ヒドロキシブチル(4HBA)、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド(HEAA)が挙げられる。
【0062】
上述のような共重合性モノマーを使用する場合、その使用量は特に限定されないが、通常はモノマー成分全量の0.01重量%以上とすることが適当である。共重合性モノマーの使用による効果をよりよく発揮する観点から、共重合性モノマーの使用量をモノマー成分全量の0.1重量%以上としてもよく、1重量%以上としてもよい。また、共重合性モノマーの使用量は、モノマー成分全量の50重量%以下とすることができ、40重量%以下とすることが好ましい。これにより凹凸追従性が向上し得る。
【0063】
アクリル系ポリマーを得る方法は特に限定されず、溶液重合法、エマルション重合法、バルク重合法、懸濁重合法、光重合法等の、アクリル系ポリマーの合成手法として知られている各種の重合方法を適宜採用することができる。いくつかの態様において、溶液重合法または光重合法を好ましく採用し得る。
【0064】
重合に用いる開始剤は、重合方法に応じて、従来公知の熱重合開始剤や光重合開始剤等から適宜選択することができる。重合開始剤は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用することができる。
熱重合開始剤としては、例えば、アゾ系重合開始剤、過硫酸塩、過酸化物系重合開始剤、レドックス系重合開始剤等が挙げられる。熱重合開始剤の使用量は、特に制限されないが、例えば、アクリル系ポリマーの調製に用いられるモノマー成分100重量部に対して0.01重量部~5重量部、好ましくは0.05重量部~3重量部の範囲内の量とすることができる。
【0065】
光重合開始剤としては、特に制限されないが、例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α-ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤等を用いることができる。光重合開始剤の使用量は、特に制限されないが、例えば、アクリル系ポリマーの調製に用いられるモノマー成分100重量部に対して0.01重量部~5重量部、好ましくは0.05重量部~3重量部の範囲内の量とすることができる。
【0066】
いくつかの態様において、アクリル系ポリマーは、上述のようなモノマー成分に重合開始剤を配合した混合物に紫外線を照射して該モノマー成分の一部を重合させた部分重合物(アクリル系ポリマーシロップ)の形態で、樹脂層を形成するための樹脂組成物に含まれ得る。かかるアクリル系ポリマーシロップを含む樹脂組成物を所定の被塗布体に塗布し、紫外線を照射して重合を完結させることができる。すなわち、上記アクリル系ポリマーシロップは、アクリル系ポリマーの前駆体として把握され得る。ここに開示される樹脂層は、例えば、ベースポリマーとしてのアクリル系ポリマーを上記アクリル系ポリマーシロップの形態で含み、必要に応じて後述する多官能性モノマーを適量含む樹脂組成物を用いて形成され得る。
【0067】
(架橋剤)
樹脂層には、凝集力の調整等の目的で、必要に応じて架橋剤が用いられ得る。架橋剤としては、粘着剤を含む樹脂の分野において公知の架橋剤を使用することができ、例えば、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、シリコーン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、シラン系架橋剤、アルキルエーテル化メラミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等を挙げることができる。特に、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート系架橋剤を好適に使用することができる。架橋剤は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0068】
架橋剤を使用する場合における使用量は、特に限定されず、例えばベースポリマー100重量部に対して0重量部を超える量とすることができる。また、架橋剤の使用量は、ベースポリマー100重量部に対して、例えば0.01重量部以上とすることができ、0.05重量部以上とすることが好ましい。架橋剤の使用量の増大により、より高い凝集力が得られる傾向にある。いくつかの態様において、ベースポリマー100重量部に対する架橋剤の使用量は、0.1重量部以上であってもよく、0.5重量部以上であってもよく、1重量部以上であってもよい。一方、過度な凝集力向上による凹凸追従性の低下を避ける観点から、ベースポリマー100重量部に対する架橋剤の使用量は、通常、15重量部以下とすることが適当であり、10重量部以下としてもよく、5重量部以下としてもよい。ここに開示される技術は、架橋剤を使用しない形態でも好適に実施され得る。
【0069】
上述したいずれかの架橋反応をより効果的に進行させるために、架橋触媒を用いてもよい。架橋触媒としては、例えばスズ系触媒(特にジラウリン酸ジオクチルスズ)を好ましく用いることができる。架橋触媒の使用量は特に制限されないが、例えば、ベースポリマー100重量部に対して凡そ0.0001重量部~1重量部とすることができる。
【0070】
樹脂層には、必要に応じて多官能性モノマーが用いられ得る。多官能性モノマーは、上述のような架橋剤に代えて、あるいは該架橋剤と組み合わせて用いられることで、凝集力の調整等の目的のために役立ち得る。例えば、光硬化型の樹脂組成物から形成される樹脂層において、多官能性モノマーが好ましく用いられ得る。
多官能性モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ブチルジオール(メタ)アクリレート、ヘキシルジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートを好適に使用することができる。多官能性モノマーは、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0071】
多官能性モノマーの使用量は、その分子量や官能基数等により異なるが、通常は、ベースポリマー100重量部に対して0.01重量部~3.0重量部程度の範囲とすることが適当である。いくつかの態様において、多官能性モノマーの使用量は、ベースポリマー100重量部に対して、例えば0.02重量部以上であってもよく、0.03重量部以上であってもよい。多官能性モノマーの使用量の増大により、より高い凝集力が得られる傾向にある。一方、過度な凝集力向上による凹凸追従性の低下を避ける観点から、多官能性モノマーの使用量は、ベースポリマー100重量部に対して2.0重量部以下であってよく、1.0重量部以下でもよく、0.5重量部以下でもよい。
【0072】
(粘着付与樹脂)
樹脂層には、必要に応じて粘着付与樹脂を含ませることができる。粘着付与樹脂としては、特に制限されないが、例えば、ロジン系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、フェノール系粘着付与樹脂、炭化水素系粘着付与樹脂、ケトン系粘着付与樹脂、ポリアミド系粘着付与樹脂、エポキシ系粘着付与樹脂、エラストマー系粘着付与樹脂等が挙げられる。粘着付与樹脂は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0073】
粘着付与樹脂としては、軟化点(軟化温度)が凡そ80℃以上(好ましくは凡そ100℃以上、例えば凡そ120℃以上)であるものを好ましく使用し得る。軟化点の上限は特に制限されず、例えば凡そ200℃以下(典型的には180℃以下)であり得る。なお、粘着付与樹脂の軟化点は、JIS K2207に規定する軟化点試験方法(環球法)に基づいて測定することができる。
【0074】
粘着付与樹脂を用いる場合におけるその含有量は特に限定されず、目的や用途に応じて適切な粘着性能が発揮されるように設定することができる。ベースポリマー100重量部に対する粘着付与樹脂の含有量(二種以上の粘着付与樹脂を含む場合には、それらの合計量)は、例えば5重量部以上であってよく、10重量部以上でもよい。一方、凹凸追従性向上の観点から、いくつかの態様において、粘着付与樹脂の含有量は、ベースポリマー100重量部に対して100重量部以下とすることが適当であり、50重量部以下でもよく、25重量部以下でもよい。あるいは、粘着付与樹脂を用いなくてもよい。
【0075】
(フィラー)
ここに開示される樹脂層には、熱伝導性フィラーが含有される。また、ここに開示される樹脂層には、本発明の効果を著しく阻害しない範囲において、熱伝導性フィラー以外の他のフィラーが含有されてもよい。以下では、まず、本発明で用いられ得るフィラー全般について説明し、次いで、本発明で用いられ得る熱伝導性フィラーの説明をする。
【0076】
フィラーとしては、特に制限されず、例えば、粒子状や繊維状のフィラーを用いることができる。フィラーは、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0077】
フィラーの構成材料は、例えば、銅、銀、金、白金、ニッケル、アルミニウム、クロム、鉄、ステンレス等の金属;酸化アルミニウム、酸化ケイ素(典型的には二酸化ケイ素)、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、アンチモン酸ドープ酸化スズ、酸化銅、酸化ニッケル等の金属酸化物;水酸化アルミニウム[Al・3HO;またはAl(OH)]、ベーマイト[Al・HO;またはAlOOH]、水酸化マグネシウム[MgO・HO;またはMg(OH)]、水酸化カルシウム[CaO・HO;またはCa(OH)]、水酸化亜鉛[Zn(OH)]、珪酸[HSiO;またはHSiO;またはHSi]、水酸化鉄[Fe・HOまたは2FeO(OH)]、水酸化銅[Cu(OH)]、水酸化バリウム[BaO・HO;またはBaO・9HO]、酸化ジルコニウム水和物[ZrO・nHO]、酸化スズ水和物[SnO・HO]、塩基性炭酸マグネシウム[3MgCO・Mg(OH)・3HO]、ハイドロタルサイト[6MgO・Al・HO]、ドウソナイト[NaCO・Al・nHO]、硼砂[NaO・B・5HO]、ホウ酸亜鉛[2ZnO・3B・3.5HO]等の、水和金属化合物;炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化窒素、炭化カルシウム等の炭化物;窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化ガリウム等の窒化物;炭酸カルシウム等の炭酸塩;チタン酸バリウム、チタン酸カリウム等のチタン酸塩;カーボンブラック、カーボンチューブ(典型的にはカーボンナノチューブ)、カーボンファイバー、ダイヤモンド等の炭素系物質;ガラス;等の無機材料;ポリスチレン、アクリル樹脂(例えばポリメチルメタクリレート)、フェノール樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド(例えばナイロン等)、ポリイミド、ポリ塩化ビニリデン等のポリマー;等であり得る。あるいは、火山シラス、クレイ、砂等の天然原料粒子を用いてもよい。また、繊維状フィラーとしては、各種合成繊維材料や天然繊維材料を使用することができる。
【0078】
樹脂層への含有量を比較的多くしても樹脂層の表面の平滑性を損ないにくいことから、粒子状フィラーを好ましく採用し得る。粒子の形状は特に限定されず、バルク状、針形状、板形状、層状であってもよい。バルク形状には、例えば、球形状、直方体形状、破砕状またはそれらの異形形状が含まれる。粒子の構造は特に制限されず、例えば、緻密構造、多孔質構造、中空構造等であり得る。
【0079】
光硬化型(例えば紫外線硬化型)の樹脂組成物を用いる場合には、該樹脂組成物の光硬化性(重合反応性)の観点から、無機材料からなるフィラーを用いることが好ましい。
【0080】
ここに開示される技術において、熱伝導性フィラーとしては、無機材料からなるフィラーを好ましく用いることができる。熱伝導性フィラーの好適例として、水和金属化合物、金属酸化物、金属等からなる緻密構造のフィラーが挙げられる。熱伝導性フィラーを含む樹脂層は、熱伝導性が向上する傾向がある。
【0081】
いくつかの態様において、水和金属化合物から構成された熱伝導性フィラーを好ましく使用し得る。上記水和金属化合物は、一般に、分解開始温度が概ね150~500℃の範囲であり、一般式M・nHO(Mは金属原子、x,yは金属の原子価によって定まる1以上の整数、nは含有結晶水の数)で表される化合物または上記化合物を含む複塩である。水和金属化合物の一好適例として、水酸化アルミニウムが挙げられる。
【0082】
水和金属化合物は、市販されている。水酸化アルミニウムの市販品としては、例えば、商品名「ハイジライトH-100-ME」(一次平均粒径75μm)(昭和電工社製)、商品名「ハイジライトH-10」(一次平均粒径55μm)(昭和電工社製)、商品名「ハイジライトH-32」(一次平均粒径8μm)(昭和電工社製)、商品名「ハイジライトH-31」(一次平均粒径20μm)(昭和電工社製)、商品名「ハイジライトH-42」(一次平均粒径1μm)(昭和電工社製)、商品名「B103ST」(一次平均粒径7μm)(日本軽金属社製)等が挙げられる。また、水酸化マグネシウムの市販品としては、例えば、商品名「KISUMA 5A」(一次平均粒径1μm)(協和化学工業社製)等が挙げられる。
【0083】
水和金属化合物以外の熱伝導性フィラーの市販品としては、例えば、窒化ホウ素として、商品名「HP-40」(水島合金鉄社製)、商品名「PT620」(モメンティブ社製)など、例えば、酸化アルミニウムとして、商品名「AS-50」(昭和電工社製)、商品名「AS-10」(昭和電工社製)等;例えば、アンチモン酸ドープスズとして、商品名「SN-100S」(石原産業社製)、商品名「SN-100P」(石原産業社製)、商品名「SN-100D(水分散品)」(石原産業社製)等;例えば、酸化チタンとして、商品名「TTOシリーズ」(石原産業社製)等;例えば、酸化亜鉛として、商品名「SnO-310」(住友大阪セメント社製)、商品名「SnO-350」(住友大阪セメント社製)、商品名「SnO-410」(住友大阪セメント社製)等;が挙げられる。
【0084】
ここに開示される技術において、樹脂層に含まれる熱伝導性フィラーの屈折率nfと、樹脂層に含まれる樹脂の屈折率npと、の差は0.04以下である。このように屈折率差が小さい樹脂と熱伝導性フィラーとを組み合わせて含む樹脂層を備えた構成によると、光透過性が高い熱伝導性シートが実現しやすい。
【0085】
樹脂の屈折率npと、熱伝導性フィラーの屈折率nfは、その屈折率差が上記の関係を満たす限りにおいて、大小関係は問われない。すなわち、ここに開示される技術において、樹脂の屈折率npから熱伝導性フィラーの屈折率nfを減じた値(np-nf)は、±0.04以内である。いくつかの態様において、np-nfは、-0.02以上0.04以下であることが好ましく、0以上0.03以下であってもよく、0以上0.02以下でもよい。また、他のいくつかの態様において、np-nfは-0.04以上0以下であってもよく、-0.04以上-0.01以下でもよく、-0.04以上-0.02以下でもよい。樹脂の屈折率npから熱伝導性フィラーの屈折率nfを減じた値が上記の範囲であると、光透過性が高い熱伝導性シートが実現しやすい。
【0086】
熱伝導性フィラーの屈折率nfは、樹脂の屈折率npと上記の関係を満たす限りにおいて、特に限定されない。熱伝導性フィラーの屈折率nfは、いくつかの態様において、1.70以下であることが好ましく、より好ましくは1.65以下であり、さらに好ましくは1.60以下である。熱伝導性フィラーの屈折率nfの下限は、特に限定されないが、通常、1.45以上であることが適当であり、好ましくは1.50以上、さらに好ましくは1.55以上である。
【0087】
樹脂層における熱伝導性フィラーの含有量は特に限定されず、熱伝導性シートに所望される熱伝導率等に応じて設定され得る。熱伝導性フィラーの含有量は、樹脂層に含まれる樹脂100重量部に対して、5重量部以上であってよく、10重量部以上でもよく、33重量部以上でもよい。熱伝導性フィラーの含有量は、樹脂100重量部に対して、50重量部以上であることが好ましく、より好ましくは66重量部以上であり、さらに好ましくは100重量部以上である。熱伝導性フィラーの含有量の増大により、樹脂層の熱伝導性は向上する傾向がある。いくつかの態様において、熱伝導性フィラーの含有量は、樹脂層に含まれる樹脂100重量部に対して、120重量部以上でもよく、150重量部以上でもよく、185重量部以上でもよい。また、樹脂層の光透過性の低下を抑制する観点、または、樹脂層の表面平滑性の低下を防いで部材(例えば被着体)との良好な密着状態を得やすくする観点から、熱伝導性フィラーの含有量は、通常、樹脂層に含まれる樹脂100重量部に対して900重量部以下であることが適当であり、400重量部以下が好ましく、より好ましくは300重量部以下または250重量部以下であり、200重量部以下であってもよい。
【0088】
熱伝導性フィラーの平均粒径は、特に限定されない。上記平均粒径は、通常、100μm以下であることが適当であり、50μm以下であることが好ましく、20μm以下でもよい。平均粒径が小さくなると、樹脂層の表面平滑性が向上し、部材(例えば被着体)に対する密着性が向上する傾向にある。いくつかの態様において、熱伝導性フィラーの平均粒径は、10μm以下であってもよく、5μm以下でもよく、3μm以下でもよい。また、フィラーの平均粒径は、例えば0.1μm以上であってよく、0.2μm以上でもよく、0.5μm以上でもよい。平均粒径が小さすぎないことは、熱伝導性フィラーの取扱い性や分散性の観点から有利となり得る。
【0089】
いくつかの態様において、熱伝導性フィラーの平均粒径は、樹脂層の厚さTaに対して、0.5Ta未満であることが好ましい。ここで、本明細書において熱伝導性フィラーの平均粒径とは、特記しない場合、篩分け法に基づく測定により得られた粒度分布において、重量基準の累積粒度が50%となる粒径(50%メジアン径)をいう。熱伝導性フィラーの平均粒径が樹脂層の厚さTaの50%未満であれば、該樹脂層に含まれる熱伝導性フィラーの50重量%以上が樹脂層の厚さTaよりも小さい粒径を有するといえる。樹脂層に含まれるフィラーの50重量%以上が樹脂層の厚さTaよりも小さい粒径を有することにより、樹脂層の表面(当該樹脂が粘着剤である場合には、粘着面)において良好な表面状態(例えば平滑性)が維持される傾向が大きくなる。このことは、接触体(例えば、被着体)との密着性向上による熱伝導性向上の観点から好ましい。
【0090】
ここに開示される熱伝導性シートは、上記篩分け法に基づく測定により得られた粒度分布において、樹脂層に含まれる熱伝導性フィラーの60重量%以上が該樹脂層の厚さTa(より好ましくは0.7Ta、さらに好ましくは0.5Ta)よりも小さい粒径を有する態様で好ましく実施され得る。熱伝導性フィラーのうち該樹脂層の厚さTa(より好ましくは0.7Ta、さらに好ましくは0.5Ta)よりも小さい粒径を有する粒子の割合は、例えば70重量%以上であってよく、80重量%以上でもよく、90重量%以上でもよい。樹脂層に含まれる熱伝導性フィラーの実質的に全量が上記樹脂層の厚さTa(より好ましくは0.7Ta、さらに好ましくは0.5Ta)よりも小さい粒径を有していることがより好ましい。ここで、実質的に全量とは、典型的には99重量%以上100重量%以下、例えば99.5重量%以上100重量%以下のことをいう。
【0091】
(分散剤)
樹脂層を形成するための樹脂組成物には、該樹脂組成物においてフィラーを良好に分散させるために、必要に応じて分散剤を含有させることができる。フィラーが良好に分散した樹脂組成物によると、熱伝導性の均一性が向上した樹脂層が形成され得る。
【0092】
分散剤としては、公知の界面活性剤を使用することができる。上記界面活性剤には、ノニオン性、アニオン性、カチオン性および両性のものが包含される。分散剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0093】
好ましい分散剤の一例として、リン酸エステルが挙げられる。例えば、リン酸のモノエステル、リン酸のジエステル、リン酸のトリエステル、これらの混合物等を用いることができる。リン酸エステルの具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルまたはポリオキシエチレンアリールエーテルのリン酸モノエステル、同じくリン酸ジエステル、同じくリン酸トリエステル、およびこれらの誘導体等が挙げられる。好適例として、ポリオキシエチレンアルキルエーテルまたはポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸モノエステル、およびポリオキシエチレンアルキルエーテルまたはポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸ジエステルが挙げられる。このようなリン酸エステルにおけるアルキル基の炭素原子数は、例えば6~20であり、好ましくは8~20、より好ましくは10~18、典型的には12~16である。
【0094】
上記リン酸エステルとして、市販品を用いることができる。例えば、第一工業製薬社製の商品名「プライサーフA212E」、「プライサーフA210G」、「プライサーフA212C」、「プライサーフA215C」、東邦化学社製の商品名「フォスファノールRE610」、「フォスファノールRS710」、「フォスファノールRS610」等が挙げられる。
【0095】
分散剤の使用量は、フィラー100重量部に対して、例えば0.01~25重量部とすることができ、通常は0.1~25重量部とすることが適当である。フィラーの分散不良による樹脂組成物の塗工性低下や表面の平滑性低下を防止する観点から、フィラー100重量部に対する分散剤の使用量は、0.5重量部以上が好ましく、1重量部以上がより好ましく、2重量部以上がさらに好ましく、5重量部以上としてもよい。また、分散剤の過剰使用による粘着性等の性能低下を避ける観点から、フィラー100重量部に対する分散剤の使用量は、20重量部以下が好ましく、15重量部以下がより好ましく、12重量部以下または10重量部以下としてもよい。
【0096】
分散剤の使用量は、熱伝導性フィラー100重量部に対して、例えば0.01~25重量部とすることができ、通常は0.1~25重量部とすることが適当である。熱伝導性フィラーの分散不良による樹脂組成物の塗工性低下や表面の平滑性低下を防止する観点から、熱伝導性フィラー100重量部に対する分散剤の使用量は、0.15重量部以上が好ましく、0.3重量部以上がより好ましく、0.5重量部以上がさらに好ましく、1重量部以上としてもよい。また、分散剤の過剰使用による樹脂の粘着性等の性能低下を避ける観点から、熱伝導性フィラー100重量部に対する分散剤の使用量は、20重量部以下が好ましく、15重量部以下がより好ましく、12重量部以下または10重量部以下としてもよい。
【0097】
その他、ここに開示される技術における樹脂層は、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、レベリング剤、可塑剤、軟化剤、着色剤(染料、顔料等)、帯電防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、防腐剤等の、粘着剤等の樹脂に使用され得る公知の添加剤を必要に応じて含んでいてもよい。
【0098】
(樹脂層の形成)
ここに開示される熱伝導性シートに含まれる樹脂層は、樹脂組成物の硬化層であり得る。すなわち、該樹脂層は、樹脂組成物を適当な表面に付与(例えば塗布)した後、硬化処理を適宜施すことにより形成され得る。二種以上の硬化処理(乾燥、架橋、重合等)を行う場合、これらは、同時に、または多段階にわたって行うことができる。モノマー成分の部分重合物(例えば、アクリル系ポリマーシロップ)を用いた樹脂組成物では、典型的には、上記硬化処理として、最終的な共重合反応が行われる。すなわち、部分重合物をさらなる共重合反応に供して完全重合物を形成する。例えば、光硬化型の樹脂組成物であれば、光照射が実施される。必要に応じて、架橋、乾燥等の硬化処理が実施されてもよい。例えば、光硬化型樹脂組成物で乾燥させる必要がある場合は、乾燥後に光硬化を行うとよい。完全重合物を用いた樹脂組成物では、典型的には、上記硬化処理として、必要に応じて乾燥(加熱乾燥)、架橋等の処理が実施される。
【0099】
樹脂組成物の塗布は、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等の慣用のコーターを用いて実施することができる。
【0100】
ここに開示される熱伝導性シートの樹脂層の厚さは、特に限定されない。熱伝導性および光透過性を向上させる観点から、樹脂層の厚さは、通常、600μm以下であることが適当であり、300μm以下であることが好ましく、より好ましくは100μm以下であり、100μm未満であってもよく、80μm以下であってもよく、70μm以下であってもよく、60μm以下であってもよく、55μm以下であってもよい。熱伝導性シートの凹凸追従性(凹凸吸収性としても把握され得る。)向上の観点から、いくつかの態様において、樹脂層の厚さは、例えば5μm以上であってもよく、10μm以上であってよく、20μm以上でもよく、30μm以上でもよく、40μm以上でもよい。
【0101】
いくつかの態様において、上記樹脂層は、無溶剤型の樹脂組成物から形成されたものであり得る。ここで無溶剤型とは、溶剤の含有量が5重量%以下、典型的には1重量%以下である樹脂組成物のことをいう。なお、上記溶剤とは、最終的に形成される樹脂層には含まれない成分を指す。したがって、例えばアクリル系ポリマーシロップに含まれ得る未反応のモノマー等は、上記溶剤の概念から除かれる。無溶剤型の樹脂組成物としては、例えば、光硬化型やホットメルト型の樹脂組成物を使用することができる。なかでも光硬化型(例えばUV硬化型)樹脂組成物から形成された樹脂層が好ましい。光硬化型樹脂組成物を用いた樹脂層の形成は、該樹脂組成物を二枚のシートの間に挟んで空気を遮断した状態で光を照射して硬化させる態様で行われることが多い。
【0102】
<用途>
ここに開示される熱伝導性シートは、当該熱伝導性シートを接触させた部材(例えば被着体)の放熱または該熱伝導性シートを介しての伝熱の用途に用いることができる。ここに開示される熱伝導性シートは透明性に優れるため、当該熱伝導性シートを含んで構築されるデバイスについて、デバイス構築の精度が向上しやすい。したがって、ここに開示される熱伝導性シートは、高度な精度が求められる精密機器、小型精密機器等における部品の放熱または該熱伝導性シートを介しての伝熱に適する。
【0103】
また、ここに開示される熱伝導性シートが熱伝導性粘着シートとして構成されている場合において、当該熱伝導性粘着シートは、透明性が高くかつ粘着性を有するため、被着体の放熱または該熱伝導性シートを介しての伝熱に加えて、精密機器等における部品の固定、接合および支持にも適する。
【0104】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「部」および「%」は、特に断りがない限り重量基準である。
【0105】
<例1>
(樹脂組成物の調整)
モノマー成分としてのフルオレン系アクリレート(大阪ガスケミカル社製、商品名「オグソールEA-0300」)58部およびフェニルフェノールアクリレート(新中村化学工業製、エトキシ化o-フェニルフェノールアクリレート、商品名「A-LEN-10」)42部と、上記モノマー成分の合計100部に対して、熱伝導性フィラーとしての水酸化アルミニウム(日本軽金属株式会社製、商品名「水酸化アルミニウムB103」、平均粒径7μm)200部と、フィラー分散剤としての商品名「プライサーフA212E」(第一工業製薬社製)1.25部と、光重合開始剤としての1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製、商品名「イルガキュア184」)0.05部および2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(BASF社製、商品名「イルガキュア651」)0.05部とを配合し、1000rpmで5分間撹拌を行い、樹脂組成物C1を作製した。
【0106】
(樹脂層の形成)
ポリエステルフィルムの片面がシリコーン系剥離処理剤による剥離面となっている二種類の剥離ライナーR1,R2を用意した。剥離ライナーR1としては、三菱樹脂株式会社製の商品名「ダイアホイルMRF」(厚さ38μm)を使用した。剥離ライナーR2としては、三菱樹脂株式会社製の商品名「ダイアホイルMRE」(厚さ38μm)を使用した。
【0107】
上記で調製した樹脂組成物C1を剥離ライナーR1の剥離面に塗布して厚さ50μmの塗布層を形成した。次いで、上記塗布層の表面に剥離ライナーR2を、その剥離面が上記塗布層側になるようにして被せることにより、上記塗布層を酸素から遮断した。この積層シート(剥離ライナーR1/塗布層/剥離ライナーR2の積層構造を有する。)に、東芝社製のケミカルライトランプを用いて照度3mW/cmの紫外線を360秒間照射することにより、上記塗布層を硬化させて樹脂層を形成した。このようにして、上記樹脂層からなる熱伝導性シートを作製した。なお、上記照度の値は、ピーク感度波長約350nmの工業用UVチェッカー(トプコン社製、商品名「UVR-T1」、受光部型式UD-T36)による測定値である。
【0108】
<例2>
水酸化アルミニウムの添加量を、モノマー成分の合計100部に対して100部に変更したこと以外は、例1と同様にして、本例に係る熱伝導性シートを作製した。
【0109】
<例3>
フルオレン系アクリレートの配合量を17部に変更し、フェニルフェノールアクリレートの配合量を83部に変更したこと以外は、例2と同様にして、本例に係る熱伝導性シートを作製した。
【0110】
<例4>
フルオレン系アクリレートの配合量を83部に変更し、フェニルフェノールアクリレートの配合量を17部に変更したこと以外は、例2と同様にして、本例に係る熱伝導性シートを作製した。
【0111】
<例5>
モノマー成分としてのアクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)50部、ベンジルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製、商品名「ビスコート#160」)50部、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)5部、アクリル酸(AA)2部およびアクリル酸4-ヒドロキシブチル(4HBA)1部と、光重合開始剤としての1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製、商品名「イルガキュア184」)0.05部および2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(BASF社製、商品名「イルガキュア651」)0.05部とを配合し、窒素雰囲気下で紫外線を照射して、粘度(BH粘度計、No.5ロータ、10rpm、測定温度30℃)が約10Pa・sになるまで重合し、重合率5%の部分重合物を作製した。作製した部分重合物70部に対して、希釈用モノマーとしてベンジルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製、商品名「ビスコート#160」)を30部添加して、アクリル系ポリマーシロップの形態のアクリル系ポリマーA5を調製した。
【0112】
上記で調製したアクリル系ポリマーA5(アクリル系ポリマーシロップ)100部に対して、多官能性モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名「KAYARAD DPHA-40H」、日本化薬社製)を0.08部、フィラー分散剤として商品名「プライサーフA212E」(第一工業製薬社製)を1.25部、熱伝導性フィラーとして水酸化アルミニウム(日本軽金属株式会社製、商品名「水酸化アルミニウムB103」、平均粒径7μm)を200部添加し、均一に混合して樹脂組成物C5を調製した。
【0113】
樹脂組成物C1の代わりに、上記で調製した樹脂組成物C5を用いたこと以外は、例1と同様にして、本例に係る熱伝導性シートを作製した。なお、本例に係る熱伝導性シートに含まれる樹脂層は粘着性を有しており、換言すると、本例に係る熱伝導性シートは、両面粘着シートの形態を有する熱伝導性粘着シートであった。
【0114】
<例6>
水酸化アルミニウムおよびフィラー分散剤を添加しなかったこと以外は、例1と同様にして、本例に係る熱伝導性シートを作製した。
【0115】
<例7>
希釈用モノマーとしてベンジルアクリレートに代えてアクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)を30部使用したこと以外は、例5と同様にして、本例に係る熱伝導性シートを作製した。
【0116】
<例8>
モノマー成分としてのアクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)80部、アクリル酸2-メトキシエチル(MEA)12部、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)7部およびN-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド(HEAA)1部と、光重合開始剤としての1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製、商品名「イルガキュア184」)0.05部および2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(BASF社製、商品名「イルガキュア651」)0.05部とを配合し、窒素雰囲気下で紫外線を照射して、粘度(BH粘度計、No.5ロータ、10rpm、測定温度30℃)が約20Pa・sになるまで重合し、上記モノマー成分の一部が重合した部分重合物(アクリル系ポリマーシロップ)の形態でアクリル系ポリマーA8を調製した。
【0117】
上記で調製したアクリル系ポリマーA8(アクリル系ポリマーシロップ)100部に対して、多官能性モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名「KAYARAD DPHA-40H」、日本化薬社製)を0.05部、フィラー分散剤として商品名「プライサーフA212E」(第一工業製薬社製)を0.9部、熱伝導性フィラーとして水酸化アルミニウム(日本軽金属株式会社製、商品名「水酸化アルミニウムB103」、平均粒径7μm)を100部添加し、均一に混合して樹脂組成物C8を調製した。
【0118】
樹脂組成物C1の代わりに、上記で調製した樹脂組成物C8を用いたこと以外は、例1と同様にして、本例に係る熱伝導性シートを作製した。
【0119】
<例9>
水酸化アルミニウムの添加量を、アクリル系ポリマー100部に対して250部に変更したこと以外は、例8と同様にして、本例に係る熱伝導性シートを作製した。
【0120】
<屈折率>
各例に係る熱伝導性シートを作製するのに使用した樹脂組成物から、熱伝導性フィラーとしての水酸化アルミニウムを除いた樹脂組成物を上記の熱伝導性シート作製方法と同様にして硬化させた樹脂について、その屈折率を、多波長アッベ屈折率計(ATAGO社製、型式「DR-M2」)を使用し、波長589nmおよび23℃の測定条件(以下の熱伝導性フィラーの屈折率測定においても同じ)で測定し、得られた値を表1の「屈折率np」の欄に示した。また、各例に係る熱伝導性シートを作製するのに使用した熱伝導性フィラーとしての水酸化アルミニウムの屈折率を測定し、得られた値を表1の「屈折率nf」の欄に示した。また、各例に係る熱伝導性シートについて、上記測定した樹脂屈折率npからフィラー屈折率nfを減じた値を算出し、得られた値を表1の「屈折率差np-nf」の欄に示した。
【0121】
<透過率の測定>
各例に係る熱伝導性シートの透過率を、村上色彩技術研究所社製の高速積分球式分光透過率測定器(型式「DOT-3」)を用いて、23℃の温度条件下において、波長が400nmの光を熱伝導性シートの一方の面に垂直に照射し、他方の面に透過した光の強度を測定することにより求め、得られた値を表1の「透過率」の欄に示した。
【0122】
<熱伝導率の測定>
各例に係る熱伝導性シートについて、厚み方向に対する熱伝導性を、図5(a),(b)に示す熱特性評価装置を用いて実施した。ここで、図5(a)は熱特性評価装置の正面概略図であり、図5(b)は該熱特性評価装置の側面概略図である。なお、測定の際に剥離ライナーR1,R2は除かれている。
【0123】
具体的には、1辺が20mmの立方体となるように形成されたアルミニウム製(A5052、熱伝導率:140W/m・K)の一対のブロック(「ロッド」と称する場合もある。)L間に、熱伝導性シートS(縦20mm、横20mmの正方形状)を挟み込み、一対のブロックLを熱伝導性シートSに密着させた。そして、一対のブロックLが上下となるように、発熱体(ヒーターブロック)Hと放熱体(冷却水が内部を循環するように構成された冷却ベース板)Cとの間に配置した。具体的には、上側のブロックLの上に発熱体Hを配置し、下側のブロックLの下に放熱体Cを配置した。
このとき、熱伝導性シートSと密着した一対のブロックLは、発熱体Hおよび放熱体Cを貫通する一対の圧力調整用ネジJの間に位置している。なお、圧力調整用ネジJと発熱体Hとの間にはロードセルRが配置されており、圧力調整用ネジJを締めこんだ際の圧力が測定されるように構成されている。この圧力を熱伝導性シートSに加わる圧力として用いた。具体的には、この試験において、圧力調整用ネジJを、熱伝導性シートSに加わる圧力が25N/cm(250kPa)となるように締め込んだ。
また、下側のブロックLおよび熱伝導性シートSを放熱体C側から貫通するように接触式変位計の3本のプローブP(直径1mm)を設置した。この際、プローブPの上端部は、上側のブロックLの下面に接触した状態になっており、上下のブロックL間の間隔(熱伝導性シートSの厚み)を測定可能に構成されている。
発熱体Hおよび上下のブロックLに温度センサーDを取り付けた。具体的には、発熱体Hの1箇所に温度センサーDを取り付けた。また、各ブロックLの5箇所に、上下方向に5mmの間隔で、温度センサーDをそれぞれ取り付けた。
測定にあたっては、まず圧力調整用ネジJを締めこんで熱伝導性シートSに圧力を加え、発熱体Hの温度を80℃に設定するともに、放熱体Cに20℃の冷却水を循環させた。
そして、発熱体Hおよび上下のブロックLの温度が安定した後、上下のブロックLの温度を各温度センサーDで測定し、上下のブロックLの熱伝導率[W/m・K]と温度勾配から熱伝導性シートSを通過する熱流束を算出するとともに、上下のブロックLと熱伝導性シートSとの界面の温度を算出した。そして、これらを用いて上記圧力における熱伝導率[W/m・K]を、下記の熱伝導率方程式(フーリエの法則)を用いて算出した。得られた値を表1の「熱伝導率」の欄に示した。
【0124】
Q=-λgradT
ただし、上記式において、
Q:単位面積あたりの熱流速
gradT:温度勾配
λ:熱伝導率
【0125】
【表1】
【0126】
熱電伝導性フィラーとしての水酸化アルミニウムを含み、かつ、樹脂の屈折率npから水酸化アルミニウムの屈折率nfを減じた値(np-nf)が±0.04以内である例1~例5の熱伝導性シートは、例6の熱伝導性シートと比べて熱伝導率が明らかに高く、また、例7~9の熱伝導性シートと比べて高い透過率を示すことが確認された。
【0127】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0128】
10 熱伝導性シート
12 樹脂層
12A 第一面
12B 第二面
20 熱伝導性粘着シート(両面粘着シート)
22 樹脂層(粘着層)
22A 第一粘着面
22B 第二粘着面
24 剥離ライナー
26 剥離ライナー
30 熱伝導性粘着シート(両面粘着シート)
32 支持基材
32A 第一面
32B 第二面
34 第一樹脂層
34A 第一樹脂層の表面(第一粘着面)
36 第二樹脂層
36A 第二樹脂層の表面(第二粘着面)
38 剥離ライナー
39 剥離ライナー
40 熱伝導性粘着シート(両面粘着シート)
42 樹脂層
42A 第一面
42B 第二面
44 第一粘着剤層
44A 第一粘着剤層の表面(第一粘着面)
46 第二粘着剤層
46A 第二粘着剤層の表面(第二粘着面)
48 剥離ライナー
49 剥離ライナー
200 剥離ライナー付き熱伝導性粘着シート
300 剥離ライナー付き熱伝導性粘着シート
400 剥離ライナー付き熱伝導性粘着シート
図1
図2
図3
図4
図5