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特許7387325プラント監視装置、プラント監視方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】プラント監視装置、プラント監視方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20231120BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20231120BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
G05B23/02 302S
G05B23/02 V
F01D25/00 W
F02C7/00 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019142330
(22)【出願日】2019-08-01
(65)【公開番号】P2021026393
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】永野 一郎
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 真由美
(72)【発明者】
【氏名】江口 慶治
(72)【発明者】
【氏名】青山 邦明
【審査官】西井 香織
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-113964(JP,A)
【文献】特開2018-081523(JP,A)
【文献】特開2018-173948(JP,A)
【文献】特開昭58-189708(JP,A)
【文献】特開2011-238148(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0012651(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
F01D 25/00
F02C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントの運転状態を監視するためのプラント監視装置であって、
前記プラントの複数の特性項目それぞれの状態量を取得する状態量取得部と、
前記プラントの監視タイミングで取得された前記状態量について、前記特性項目ごとに予め設定された制限値を基準とした異常側への接近度合い示す異常度を算出する異常度算出部と、
前記監視タイミングで取得された前記状態量及び前記異常度の、前記プラントの正常時の運転状態からの離れ度合いを示す距離を統計的手法を用いて算出する距離算出部と、
算出された前記距離に基づいて、前記プラントの運転状態を判定する判定部と、
を備え、
前記距離算出部は、前記プラントの運転状態が正常なときに取得された前記状態量からなる単位空間を基準として、前記監視タイミングで取得された前記状態量のマハラノビス距離を算出するとともに、算出された複数の前記異常度のうち最大値に基づいて前記マハラノビス距離を補正した合成距離を前記距離として算出し、
前記判定部は、前記合成距離が所定の閾値よりも大きい場合、前記プラントの運転状態が異常であると判定する、
プラント監視装置。
【請求項2】
プラントの運転状態を監視するためのプラント監視装置であって、
前記プラントの複数の特性項目それぞれの状態量を取得する状態量取得部と、
前記プラントの監視タイミングで取得された前記状態量について、前記特性項目ごとに予め設定された制限値を基準とした異常側への接近度合い示す異常度を算出する異常度算出部と、
前記監視タイミングで取得された前記状態量及び前記異常度の、前記プラントの正常時の運転状態からの離れ度合いを示す距離を統計的手法を用いて算出する距離算出部と、
算出された前記距離に基づいて、前記プラントの運転状態を判定する判定部と、
を備え、
前記距離算出部は、前記監視タイミングで取得された前記状態量を前記異常度で補正し、前記プラントの運転状態が正常なときに取得された前記状態量からなる単位空間を基準として、補正後の前記状態量のマハラノビス距離を前記距離として算出し、
前記判定部は、前記マハラノビス距離が所定の閾値よりも大きい場合、前記プラントの運転状態が異常であると判定する、
プラント監視装置。
【請求項3】
プラントの運転状態を監視するためのプラント監視装置であって、
前記プラントの複数の特性項目それぞれの状態量を取得する状態量取得部と、
前記プラントの監視タイミングで取得された前記状態量について、前記特性項目ごとに予め設定された制限値を基準とした異常側への接近度合い示す異常度を算出する異常度算出部と、
前記監視タイミングで取得された前記状態量及び前記異常度の、前記プラントの正常時の運転状態からの離れ度合いを示す距離を統計的手法を用いて算出する距離算出部と、
算出された前記距離に基づいて、前記プラントの運転状態を判定する判定部と、
を備え、
前記距離算出部は、前記プラントの運転状態が正常なときに取得された前記異常度からなる単位空間を基準として、前記異常度のマハラノビス距離を前記距離として算出し、
前記判定部は、前記マハラノビス距離が所定の閾値よりも大きい場合、前記プラントの運転状態が異常であると判定する、
プラント監視装置。
【請求項4】
前記異常度算出部は、前記状態量が前記制限値に到達したときの前記異常度の値が、前記閾値に一致するように、前記異常度を算出する、
請求項からの何れか一項に記載のプラント監視装置。
【請求項5】
前記監視タイミングで取得された前記状態量及び前記異常度に基づいて前記特性項目ごとのSN比を算出するSN比算出部と、
前記判定部により前記プラントの運転状態が異常であると判定された場合、算出された前記SN比に基づいて前記プラントの異常の原因を推定する原因推定部と、
更に備える、請求項1からの何れか一項に記載のプラント監視装置。
【請求項6】
プラントの運転状態を監視するためのプラント監視方法であって、
前記プラントの複数の特性項目それぞれの状態量を取得するステップと、
前記プラントの監視タイミングで取得された前記状態量について、前記特性項目ごとに予め設定された制限値を基準とした異常側への接近度合い示す異常度を算出するステップと、
前記監視タイミングで取得された前記状態量及び前記異常度の前記プラントの正常時の運転状態からの離れ度合いを示す距離を、統計的手法を用いて算出するステップと、
算出された前記距離に基づいて、前記プラントの運転状態を判定するステップと、
を有し、
前記距離を算出するステップは、前記プラントの運転状態が正常なときに取得された前記状態量からなる単位空間を基準として、前記監視タイミングで取得された前記状態量のマハラノビス距離を算出するとともに、算出された複数の前記異常度のうち最大値に基づいて前記マハラノビス距離を補正した合成距離を前記距離として算出し、
前記プラントの運転状態を判定するステップは、前記合成距離が所定の閾値よりも大きい場合、前記プラントの運転状態が異常であると判定する、
プラント監視方法。
【請求項7】
プラントの運転状態を監視するためのプラント監視装置のコンピュータを機能させるプログラムであって、前記コンピュータに、
前記プラントの複数の特性項目それぞれの状態量を取得するステップと、
前記プラントの監視タイミングで取得された前記状態量について、前記特性項目ごとに予め設定された制限値を基準とした異常側への接近度合い示す異常度を算出するステップと、
前記監視タイミングで取得された前記状態量及び前記異常度の前記プラントの正常時の運転状態からの離れ度合いを示す距離を、統計的手法を用いて算出するステップと、
算出された前記距離に基づいて、前記プラントの運転状態を判定するステップと、
を実行させ
前記距離を算出するステップは、前記プラントの運転状態が正常なときに取得された前記状態量からなる単位空間を基準として、前記監視タイミングで取得された前記状態量のマハラノビス距離を算出するとともに、算出された複数の前記異常度のうち最大値に基づいて前記マハラノビス距離を補正した合成距離を前記距離として算出し、
前記プラントの運転状態を判定するステップは、前記合成距離が所定の閾値よりも大きい場合、前記プラントの運転状態が異常であると判定する、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラント監視装置、プラント監視方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービン発電プラント、原子力発電プラント、あるいは化学プラントといった各種のプラントでは、複数の評価項目(温度、圧力等)それぞれの検出値(状態量)の束を取得し、これら検出値の傾向に基づいて、プラントが正常に運転されているか否かを監視している。例えば、特許文献1には、複数の検出値の束により構成される単位空間を基準として、評価時点において取得された検出値の束のマハラノビス距離を算出し、このマハラノビス距離が予め定められた閾値を超える場合は、プラントの運転状態が異常である、又は、異常となる予兆があると判断する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-67757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プラントが有する設備には、センサによる検出値(例えばボイラータンクの容量、水位等)について、正常な範囲を規定した制限値が設けられている場合がある。しかしながら、マハラノビス距離を用いて異常の有無を検出する従来の方法では、これら検出値の制限値は異常検出に用いられていない。そうすると、あるセンサの検出値が制限値に近い場合であっても、マハラノビス距離が閾値以内である場合は、プラントの異常の予兆を検出できない可能性があった。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであって、プラントの異常を早期に検出することができるプラント監視装置、プラント監視方法、及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、プラントの運転状態を監視するためのプラント監視装置は、前記プラントの複数の特性項目それぞれの状態量を取得する状態量取得部と、前記プラントの監視タイミングで取得された前記状態量について、前記特性項目ごとに予め設定された制限値を基準とした異常側への接近度合い示す異常度を算出する異常度算出部と、前記監視タイミングで取得された前記状態量及び前記異常度の、前記プラントの正常時の運転状態からの離れ度合いを示す距離を統計的手法を用いて算出する距離算出部と、算出された前記距離に基づいて、前記プラントの運転状態を判定する判定部と、を備える。
【0007】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様に係るプラント監視装置において、前記距離算出部は、前記プラントの運転状態が正常なときに取得された前記状態量からなる単位空間を基準として、前記監視タイミングで取得された前記状態量のマハラノビス距離を算出するとともに、算出された複数の前記異常度のうち最大値に基づいて前記マハラノビス距離を補正した合成距離を前記距離として算出し、前記判定部は、前記合成距離が所定の閾値よりも大きい場合、前記プラントの運転状態が異常であると判定する。
【0008】
本発明の第3の態様によれば、第1の態様に係るプラント監視装置において、前記距離算出部は、前記監視タイミングで取得された前記状態量を前記異常度で補正し、前記プラントの運転状態が正常なときに取得された前記状態量からなる単位空間を基準として、補正後の前記状態量のマハラノビス距離を前記距離として算出し、前記判定部は、前記マハラノビス距離が所定の閾値よりも大きい場合、前記プラントの運転状態が異常であると判定する。
【0009】
本発明の第4の態様によれば、第1の態様に係るプラント監視装置において、前記距離算出部は、前記プラントの運転状態が正常なときに取得された前記異常度からなる単位空間を基準として、前記異常度のマハラノビス距離を前記距離として算出し、前記判定部は、前記マハラノビス距離が所定の閾値よりも大きい場合、前記プラントの運転状態が異常であると判定する。
【0010】
本発明の第5の態様によれば、第2から第4の何れか一の態様に係るプラント監視装置において、前記異常度算出部は、前記状態量が前記制限値に到達したときの前記異常度の値が、前記閾値に一致するように、前記異常度を算出する。
【0011】
本発明の第6の態様によれば、第1から第5の何れか一の態様に係るプラント監視装置において、前記監視タイミングで取得された前記状態量及び前記異常度に基づいて前記特性項目ごとのSN比を算出するSN比算出部と、前記判定部により前記プラントの運転状態が異常であると判定された場合、算出された前記SN比に基づいて前記プラントの異常の原因を推定する原因推定部と、更に備える。
【0012】
本発明の第7の態様によれば、プラントの運転状態を監視するためのプラント監視方法は、前記プラントの複数の特性項目それぞれの状態量を取得するステップと、前記プラントの監視タイミングで取得された前記状態量について、前記特性項目ごとに予め設定された制限値を基準とした異常側への接近度合い示す異常度を算出するステップと、前記監視タイミングで取得された前記状態量及び前記異常度の前記プラントの正常時の運転状態からの離れ度合いを示す距離を、統計的手法を用いて算出するステップと、算出された前記距離に基づいて、前記プラントの運転状態を判定するステップと、を有する。
【0013】
本発明の第8の態様によれば、プラントの運転状態を監視するためのプラント監視装置のコンピュータを機能させるプログラムは、前記コンピュータに、前記プラントの複数の特性項目それぞれの状態量を取得するステップと、前記プラントの監視タイミングで取得された前記状態量について、前記特性項目ごとに予め設定された制限値を基準とした異常側への接近度合い示す異常度を算出するステップと、前記監視タイミングで取得された前記状態量及び前記異常度の前記プラントの正常時の運転状態からの離れ度合いを示す距離を、統計的手法を用いて算出するステップと、算出された前記距離に基づいて、前記プラントの運転状態を判定するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0014】
上述の何れか一の態様に係るプラント監視装置、プラント監視方法、及びプログラムによれば、プラントの異常を早期に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る監視対象の一例であるプラントの概略図である。
図2】本発明の一実施形態に係るプラント監視装置の機能構成を示す図である。
図3】マハラノビス距離の概念を示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係るプラント監視装置の処理の一例を示すフローチャートである。
図5】本発明の一実施形態に係る異常度の一例を示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係るプラント監視装置におけるマハラノビス距離の一例を示す図である。
図7】本発明の一実施形態に係るプラント監視装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係るプラント監視装置について、図1図7を参照しながら説明する。
本実施形態に係るプラント監視装置20は、所定の監視タイミング(例えば、1時間)ごとにプラント1の運転状態を監視するための装置である。プラント監視装置20は、マハラノビス・タグチ法(以下、MT法とも記載する)を利用してプラント1の運転状態が正常であるか異常であるかを判定するとともに、異常の原因を推定する。
【0017】
(プラントの概略)
図1は、本発明の一実施形態に係る監視対象の一例であるプラントの概略図である。
図1に示すように、本実施形態に係るプラント1は、ガスタービンコンバインドサイクル発電プラントであり、ガスタービン10と、ガスタービン発電機11と、排熱回収ボイラ12と、蒸気タービン13と、蒸気タービン発電機14と、制御装置40と、を備える。なお、他の実施形態では、プラント1は、ガスタービン発電プラント、原子力発電プラント、化学プラント等であってもよい。
【0018】
ガスタービン10は、圧縮機101と、燃焼器102と、タービン103と、を備えている。圧縮機101は、吸気口から取り込んだ空気を圧縮する。燃焼器102は、圧縮機101から導入された圧縮空気に燃料Fを混合して燃焼させ、燃焼ガスを生成する。タービン103は、燃焼器102から供給された燃焼ガスにより回転駆動する。ガスタービン発電機11は、タービン103のロータ104と、圧縮機101を介して連結され、ロータ104の回転により発電する。排熱回収ボイラ12は、タービン103から排出された燃焼ガス(排ガス)で水を加熱して、蒸気を生成する。蒸気タービン13は、排熱回収ボイラ12からの蒸気で駆動する。また、蒸気タービン13から排出される蒸気は、復水器132で水に戻されて、給水ポンプを介して排熱回収ボイラ12に送られる。蒸気タービン発電機14は、蒸気タービン13のロータ131と連結され、ロータ131の回転により発電する。
【0019】
また、プラント1の各部には、不図示の複数のセンサが取り付けられる。各センサが検出するセンサ値は、例えば、大気圧、大気温度、圧縮機101の車室の入口空気温度及び出口空気温度、圧縮機101の車室内の圧力、燃焼器102に供給される燃料Fの圧力、タービン103の車室の入口燃焼ガス温度及び出口燃焼ガス温度、タービン103の車室内の圧力、ガスタービン発電機11の出力、排熱回収ボイラ12の水位レベル、蒸気タービン13の車室内の温度、蒸気タービン発電機14の出力、ロータ104及びロータ131の回転速度及び振動等である。
【0020】
制御装置40は、プラント1の運転状態に応じて自動的に、又は、作業者の操作を受け付けて、プラント1の各部の動作を制御する。
【0021】
(プラント監視装置の機能構成)
図2は、本発明の一実施形態に係るプラント監視装置の機能構成を示す図である。
図2に示すように、プラント監視装置20は、CPU21と、入出力インタフェース22と、表示部23と、操作受付部24と、記憶部25と、を備えるコンピュータである。
【0022】
入出力インタフェース22は、プラント1の各部に取り付けられたセンサから、複数の特性項目ごとの状態量の入力を受け付ける。
【0023】
表示部23は、プラント1の監視に関する各種情報を表示するためのディスプレイである。例えば、表示部23は、プラント1の異常が異常であると判定された場合、異常の原因と推定される特性項目に関する情報を含む異常情報を表示する。
【0024】
操作受付部24は、プラント1の監視を行う作業者による操作を受け付けるためのキーボード、マウス等の装置である。
【0025】
CPU21は、プラント監視装置20全体の動作を司るプロセッサである。CPU21は、予め用意されたプログラムに従って各種演算処理を実行することにより、状態量取得部211、異常度算出部212、距離算出部213、判定部214、SN比算出部215、原因推定部216、出力部217としての機能を発揮する。
【0026】
状態量取得部211は、プラント1の各部に設けられた複数のセンサそれぞれが計測したセンサ値、及びプラント1の制御信号の値(指令値)を、入出力インタフェース22を介して取得する。センサ値及び指令値は、本実施形態における特性項目ごとの状態量の一例である。状態量取得部211は、所定時間(例えば1分)ごとに状態量を取得して、記憶部25に記憶して蓄積する。
【0027】
異常度算出部212は、プラント1の監視タイミングで取得された状態量について、特性項目ごとに予め設定された制限値を基準とした異常側への接近度合い示す異常度を算出する。
【0028】
距離算出部213は、プラント1の監視タイミングで取得された状態量及び異常度の、プラント1の正常時の運転状態からの離れ度合いを示す距離を統計的手法を用いて算出する。距離算出部213が算出する距離は、具体的には、マハラノビス距離である。マハラノビス距離とは、単位空間として表される基準(正常時)の標本と、監視タイミングで取得した新たな標本(状態量及び異常度)との違いの大きさを表す尺度である。
【0029】
判定部214は、距離算出部213により算出された距離(マハラノビス距離)に基づいて、プラント1の運転状態を判定する。具体的には、判定部214は、マハラノビス距離が所定の閾値以上である場合、プラント1の運転状態が異常であると判定する。なお、閾値は、予め固定値が設定されていてもよいし、評価時点から所定時間過去までの期間におけるプラント1の運転状態に基づいて、監視タイミングごとに新たな値に更新されるようにしてもよい。
【0030】
SN比算出部215は、距離算出部213により算出された距離に基づいて特性項目ごとに、タグチメソッドに係るSN比(Signal-Noise Ratio)を算出する。
【0031】
原因推定部216は、判定部214によりプラント1の運転状態が異常であると判定された場合、SN比算出部215により算出されたSN比に基づいてプラント1の異常の原因を推定する。
【0032】
出力部217は、プラント1の監視に関する各種情報を出力する。例えば、出力部217は、監視タイミングごとの状態量、異常の有無の判定結果等を表示部23に出力して表示させる。また、出力部217は、プラント1の運転状態が異常であると判定された場合、異常の原因と推定される特性項目に関する情報を含む異常情報を表示部23に出力して表示させる。また、出力部217は、電子メール等により作業者の端末装置(不図示)に異常情報を送信してもよい。
【0033】
記憶部25には、CPU21の各部の処理において取得、生成されたデータ等が記憶される。
【0034】
(マハラノビス距離)
図3は、マハラノビス距離の概念を示す概念図である。
本実施形態に係るプラント監視装置20は、MT法を利用してプラント1の運転状態が正常であるか異常であるかを判定する。まず、MT法によるプラント監視方法の概要について、図3を用いて説明する。
【0035】
図3に示すように、プラント監視装置20の状態量取得部211が、プラント1のセンサ値1(y1)及びセンサ値2(y2)を状態量B(y1,y2)として取得すると仮定する。MT法では、プラント1の正常時に取得された複数の状態量Bの集合体を、正常時の標本である単位空間Sとし、ある時点で取得された状態量A(y1,y2)のマハラノビス距離MDを算出する。
【0036】
マハラノビス距離MDは、単位空間Sにおけるセンサ値の分散や相関に応じて重み付けがなされた距離であり、単位空間Sを構成するデータ群との類似度が低いほど大きい値となる。ここで、単位空間Sを構成する状態量Bのマハラノビス距離MDの平均は1となり、プラント1の運転状態が正常である場合、状態量Aのマハラノビス距離MDは概ね4以下に収まる。しかしながら、プラント1の運転状態が異常となると、異常の程度に応じてマハラノビス距離MDの値は大きくなる。このように、マハラノビス距離MDは、プラント1の異常の程度(単位空間Sからの離れ度合い)に応じて、値が大きくなるという性質を有している。なお、図3には、マハラノビス距離MDの値が1~5のときの等距離線(破線)の例が表されている。図3の例では、単位空間Sの中心B0から離れるほど、マハラノビス距離MDの値は1、2、・・・と大きくなる。
【0037】
このため、MT法では、プラント1の運転状態について、マハラノビス距離MDが予め定められた閾値Dc(例えば、「5」)以上である場合は異常であると判定し、閾値Dc未満である場合は正常であると判定する。例えば、ある時刻t1に取得された状態量A1のマハラノビス距離MD_A1の値は閾値Dc未満であるため、時刻t1におけるプラント1の運転状態は正常であると判定される。また、ある時刻t2に取得された状態量A2のマハラノビス距離MD_A2は閾値Dc以上であるため、時刻t2におけるプラント1の運転状態は異常であると判定される。
【0038】
ここで、センサ値1及びセンサ値2には、センサ値同士の分散及び相関とは無関係に、それぞれ制限値(上限値及び下限値)が予め設定されているとする。図3の範囲Rcは、この制限値の範囲を模式的に表したものである。例えば、時刻t2に取得した状態量A2は、センサ値1及びセンサ値2とも、制限値の範囲Rc内に含まれている。このため、制限値のみでプラント1の異常の有無を監視した場合、時刻t2におけるプラント1の運転状態は正常と判断されてしまう。一方、マハラノビス距離MD_A2の値は閾値Dc以上となるため、マハラノビス距離MD_A2を参照することにより、プラント1の異常の予兆を検出することができる。このように、従来のプラント監視手法では、作業者は制限値による監視と、マハラノビス距離による監視とを別個に行う必要があったため、監視作業が煩雑となっていた。
【0039】
また、ある時刻t3に取得された状態量A3については、センサ値1及びセンサ値2とも制限値の範囲Rc内であるが、センサ値2の値は上限値に近いため、何らかの異常の兆候が生じている可能性がある。しかしながら、制限値による監視では、センサ値2は閾値未満であるため正常であると判断される。同様に、従来のMT法による監視手法では、状態量A3のマハラノビス距離MD_A3は閾値Dc未満であるため、プラント1の運転状態は正常であると判定される。そうすると、従来の監視手法ではプラント1の異常の予兆を検出するタイミングが遅れてしまう可能性があった。
【0040】
以上を踏まえ、本実施形態に係るプラント監視装置20は、プラント1の異常の予兆を早期に検出できるように、制限値とマハラノビス距離との双方を組み合わせた監視処理を実施する。
【0041】
(プラント監視装置の処理フロー)
図4は、本発明の一実施形態に係るプラント監視装置の処理の一例を示すフローチャートである。
本実施形態に係るプラント監視装置20は、プラント1の運転中、状態量取得部211によりプラント1の状態量(センサ値及び指令値)を収集して記憶部25に蓄積する。プラント監視装置20は、このように記憶部25に蓄積した状態量から、正常時の標本となる単位空間を作成して記憶部25に記憶する。また、プラント監視装置20は、所定の監視タイミング(例えば、1時間)ごとに図4に示すプラント1の運転状態を監視する一連の処理を実行する。
【0042】
プラント監視装置20がプラント1の運転状態の監視処理を開始すると、状態量取得部211は、プラント1の状態量を取得する(ステップS1)。
【0043】
次に、異常度算出部212は、ステップS1で取得した状態量それぞれについて、異常度を算出する(ステップS2)。ここでは、センサ値1(例えば、ガスタービン出力)及びセンサ値2(例えば、ボイラ水位)をそれぞれ状態量として取得したとする。また、センサ値1及びセンサ値2には、それぞれ制限値(上限値及び下限値)が予め設けられている。この場合、異常度算出部212は、センサ値1及びセンサ値2それぞれの異常度を算出する。
【0044】
具体的には、まず、異常度算出部212は、センサ値が制限値以上となる異常側に接近している度合いを示す接近度を算出する。例えば、接近度は、以下の式(1)を用いて求められる。
【0045】
【数1】
【0046】
式(1)で表されるように、接近度は、センサ値が正常側(センサ平均値)に近付くほど小さな値(「0」)となり、異常側に近付くほど大きな値となる。なお、制限値が上限値及び下限値の双方を含む場合、異常度算出部212は、上限値に対する接近度と、下限値に対する接近度の双方を算出する。
【0047】
また、異常度算出部212は、算出した接近度に基づいてセンサ値それぞれの異常度を算出する。
図5は、本発明の一実施形態に係る異常度の一例を示す図である。
異常度算出部212は、例えば図5に示すように、接近度を異常度に変換するための関数Fx予め有しており、この関数Fxから接近度に対応する異常度を算出する。なお、本実施形態では、異常度は、センサ値が制限値に達したときの値がマハラノビス距離の閾値と一致するように調整される。例えば、マハラノビス距離の閾値が「5」である場合、図5に示すように、センサ値が制限値に達したときの接近度(「1」)が、異常度「5」に変換されるように関数Fxが規定されている。つまり、マハラノビス距離及び異常度の閾値は同じ値となる。このように、異常度算出部212は、異常度をマハラノビス距離と同一の尺度で扱えるようにしている。
【0048】
次に、距離算出部213は、ステップS1で取得した状態量と、ステップS2で算出した異常度とに基づいて、監視タイミングにおけるプラント1の運転状態が正常時の運転状態からどの程度離れているかを示す距離を算出する(ステップS3)。
【0049】
具体的には、まず、距離算出部213は、記憶部25に記憶されている単位空間を基準として、ステップS1で取得した状態量のマハラノビス距離を算出する。次に、距離算出部213は、ステップS2で算出した異常度に基づいてマハラノビス距離を補正した合成距離を算出する。このとき、距離算出部213は、以下の式(2)を用いて合成距離を算出する。式(2)において、「MD」は「マハラノビス距離」を示す。「MD’」は「合成距離」を示す。「x」は、ステップS2において算出された、特性項目1~nそれぞれの状態量の異常度を示す。
【0050】
【数2】
【0051】
つまり、上式(2)は、異常度のうち最も大きい値と、マハラノビス距離MDとのユークリッドノルムとして合成距離MD’を求めるものである。なお、上式(2)は一例であり、他の実施形態では、距離算出部213は、異なる式を用いて合成距離MD’を算出するようにしてもよい。また、このとき、距離算出部213は、ユークリッドノルム以外の他の距離(マンハッタン距離等)を求めるようにしてもよい。
【0052】
次に、判定部214は、ステップS3で判定された合成距離MD’が所定の閾値以上であるか判定する(ステップS4)。閾値は、例えば「5」に設定されているとする。判定部214は、合成距離MD’が閾値未満(5未満)である場合(ステップS4:NO)、プラント1の運転状態は正常であると判定し、処理を終了する。一方、判定部214は、合成距離MD’が閾値以上(5以上)である場合(ステップS4:YES)、プラント1の運転状態は異常であると判定し、次の処理に進む。
【0053】
図6は、本発明の一実施形態に係るプラント監視装置におけるマハラノビス距離の一例を示す図である。
図6は、マハラノビス距離MD、合成距離MD’、及び異常度xそれぞれの値が「5」のときの等距離線の一例を重畳表示したものである。合成距離MD’は、マハラノビス距離MDと異常度xの最大値とのユークリッドノルムで表されるため、マハラノビス距離MD及び異常度xの何れよりも大きな値となる。このため、図6に示すように、合成距離MD’の等距離線は、マハラノビス距離MDの等距離線よりも単位空間Sの中心に近付き、且つ、異常度xが5未満となる範囲Rc内に含まれる。
【0054】
MT法を用いた従来の監視手法では、マハラノビス距離MDのみに基づいて異常の有無を判定していた。そうすると、図6の例では、ある時刻t3に取得された状態量A3のマハラノビス距離MDは閾値未満(例えば、「3」)であるため、この時刻t3におけるプラント1の運転状態は正常であると判定される。また、このときの状態量A3の異常度xの最大値が「3」であったとする。この場合、異常度xの最大値も閾値未満であるため、従来の監視手法では、センサ値2の異常度xをチェックしていたとしても異常は発生していないと判定される。
【0055】
一方、本実施形態に係るプラント監視装置20は、マハラノビス距離MDと異常度xの最大値とのユークリッドノルムである合成距離MD’に基づいて異常の有無を判定している。そうすると、図6の例では、ある時刻t3に取得された状態量A3のマハラノビス距離MD_A3の値が「3」、異常度xの最大値が「4」であった場合、上式(2)により合成距離MD’の値は「5」となる。従って、合成距離MD’は閾値以上となるため、判定部214は、この時刻t3におけるプラント1の運転状態は異常である(異常の可能性がある)と判定する。
【0056】
このように、本実施形態に係るプラント監視装置20は、従来のマハラノビス距離では正常と判定されていた領域であって、センサ値が制限値に接近している異常度の高い領域(図6の斜線で示す領域L)についても、プラント1の運転状態が異常である(異常となる可能性がある)と判断することができる。つまり、プラント監視装置20は、合成距離MD’に基づいて判定を行うことにより、従来のマハラノビス距離よりも異常度の高い(制限値に近い又は制限値を超過している)状態量に対する感度を向上させることができる。従って、プラント監視装置20は、実際にセンサ値が制限値を超える異常が発生するよりも前の段階で、プラント1の異常の予兆を検出することが可能となる。
【0057】
判定部214によりプラント1の運転状態が異常であると判定された場合(ステップS4:YES)、SN比算出部215は特性項目ごとのSN比を算出する(ステップS5)。
【0058】
具体的には、SN比算出部215は、ステップS1で取得した状態量(センサ値及び指令値)に基づいて、直交表分析による項目有無の望大SN比を求める。SN比が大きいほど、その状態量(計測値、指令値)の項目に異常がある可能性が高いと判断できる。
【0059】
また、本実施形態に係るSN比算出部215は、異常度xが閾値以上である特性項目について、更にSN比を補正する。例えば、SN比算出部215は、異常度xが閾値以上である特性項目のSN比を規定の値(例えば、「6db」)に補正してもよい。また、SN比算出部215は、異常度xの値に応じた所定値を加算してSN比を補正してもよい。
【0060】
次に、原因推定部216は、ステップS5で算出したSN比に基づいて、プラント1の異常の原因を推定する(ステップS6)。例えば、記憶部25には、これまでにプラント1で発生した異常時の特性項目ごとのSN比のパターンと、異常の発生要因とを関連付けた履歴情報が記憶されているとする。原因推定部216は、履歴情報から、ステップS5で算出した特性項目ごとのSN比のパターンと類似するパターンをパターンマッチング等の技術を使って抽出する。そして、原因推定部216は、類似度が高い順に所定数(例えば、10個)のパターンを抽出して、抽出したパターンと関連付けられた発生要因を、現在生じているプラント1の異常原因の候補であると推定する。
【0061】
また、出力部217は、ステップS6で推定された異常の原因を含む異常情報を出力する(ステップS7)。例えば、出力部217は、異常情報を表示部23に出力して表示させる。また、出力部217は、電子メール等により作業者の端末装置(不図示)に異常情報を送信してもよい。これにより、作業者は、表示部23又は端末装置を介してプラント1の運転状態が異常である(又は、異常の予兆がある)ことを認識するとともに、推定される異常原因を容易に知ることができる。また、異常情報には、特性項目ごとの状態量及びSN比、推定される異常原因ごとの対処方法等が更に含まれていてもよい。
【0062】
(プラント監視装置のハードウェア構成)
図7は、本発明の一実施形態に係るプラント監視装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
以下、図7を参照して、本実施形態に係るプラント監視装置20のハードウェア構成について説明する。
【0063】
コンピュータ900は、CPU901、主記憶装置902、補助記憶装置903、インタフェース904を備える。
【0064】
上述のプラント監視装置20は、コンピュータ900に実装される。そして、上述したプラント監視装置20の各部の動作は、プログラムの形式でそれぞれのコンピュータ900が有する補助記憶装置903に記憶されている。CPU901は、プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU901は、プログラムに従って、処理に伴い取得、生成した各種情報を記憶するための記憶領域を主記憶装置902に確保する。また、CPU901は、プログラムに従って、処理中のデータを記憶する記憶領域を補助記憶装置903に確保する。
【0065】
なお、コンピュータ900は、インタフェース904を介して、外部記憶装置910と接続されており、上記記憶領域は、外部記憶装置910に確保されてもよい。
【0066】
なお、少なくとも一つの実施形態において、補助記憶装置903は、一時的でない有形の媒体の一例である。一時的でない有形の媒体の他の例としては、インタフェース904を介して接続される磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等が挙げられる。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムを主記憶装置902に展開し、上記処理を実行しても良い。
【0067】
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、当該プログラムは、前述した機能を補助記憶装置903に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【0068】
(作用効果)
以上のように、本実施形態に係るプラント監視装置20は、プラント1の複数の特性項目それぞれの状態量を取得する状態量取得部211と、プラント1の監視タイミングで取得された状態量について、特性項目ごとに予め設定された制限値を基準とした異常側への接近度合い示す異常度を算出する異常度算出部212と、監視タイミングで取得された状態量及び異常度の、プラント1の正常時の運転状態からの離れ度合いを示す距離を統計的手法を用いて算出する距離算出部213と、算出された距離に基づいて、プラント1の運転状態を判定する判定部214と、を備える。
このようにすることで、プラント監視装置20は、状態量が異常側にどの程度接近しているかを示す異常度を加味して、プラント1の異常の有無を早期に検出することができる。
【0069】
また、距離算出部213は、プラント1の運転状態が正常なときに取得された状態量からなる単位空間を基準として、監視タイミングで取得された状態量のマハラノビス距離MDを算出するとともに、算出された複数の異常度のうち最大値に基づいてマハラノビス距離MDを補正した合成距離MD’を算出する。判定部214は、合成距離MD’が所定の閾値よりも大きい場合、プラント1の運転状態が異常であると判定する。
従来のMT法を用いた監視手法では、監視タイミングにおける状態量が制限値を超えたか否かは監視されていなかった。そうすると、図3の例(状態量A3)のように、状態量が制限値に到達しそうな場合であっても、マハラノビス距離では正常と判断される場合があるため、プラント1の異常の予兆を早期に検出できない可能性があった。
しかしながら、本実施形態では、プラント監視装置20は、上述のように異常度で補正された合成距離MD’に基づいて異常の有無を判定することにより、従来のマハラノビス距離よりも異常度の高い(制限値に近い又は制限値を超えている)状態量に対する感度を向上させることができる。従って、プラント監視装置20は、実際にセンサ値が制限値を超える異常が発生するよりも前の段階で、プラント1の異常の予兆を検出することが可能となる。
更に、作業者は従来のようにマハラノビス距離による判定結果と、制限値による判定結果とをそれぞれ別個に確認することなく、合成距離MD’による判定結果のみを参照すればよい。このため、本実施形態に係るプラント監視装置20は、作業者の監視負荷を低減することができる。
【0070】
また、異常度算出部212は、状態量が制限値に到達したときの異常度の値が、マハラノビス距離MDの閾値に一致するように、異常度を算出する。
このように、プラント監視装置20は、異常度をマハラノビス距離MDと同一の尺度で扱えるようにして、距離算出部213における計算を容易にすることができる。
【0071】
また、プラント監視装置20は、監視タイミングで取得された状態量及び異常度に基づいて特性項目ごとのSN比を算出するSN比算出部215と、判定部214によりプラント1の運転状態が異常であると判定された場合、算出されたSN比に基づいてプラント1の異常の原因を推定する原因推定部216と、を更に備える。
このようにすることで、プラント監視装置20は、異常度を加味してSN比を算出することにより、異常の原因をより精度よく推定することができる。
【0072】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の技術的思想を逸脱しない限り、これらに限定されることはなく、多少の設計変更等も可能である。
【0073】
例えば、上述の実施形態において、プラント監視装置20は、異常度に基づいてマハラノビス距離MDを補正した合成距離MD’を算出し(図4のステップS3)、合成距離MD’に基づいてプラント1の運転状態が正常であるか否かを判定する(図4のステップS4)態様について説明したが、これに限られることはない。
【0074】
他の実施形態では、プラント監視装置20は、ステップS3~S4において、以下のような処理を行うようにしてもよい。まず、距離算出部213は、ステップS1で取得した状態量をステップS2で算出した異常度で補正する。次に、距離算出部213は、単位空間を基準として、この補正後の状態量のマハラノビス距離を算出する(ステップS3)。また、判定部214は、マハラノビス距離が閾値以上であるか否かに基づいて、プラント1の運転状態が異常であるか否かを判定する(ステップS4)。
【0075】
また、更に他の実施形態では、プラント監視装置20は、ステップS3~S4において、以下のような処理を行うようにしてもよい。まず、距離算出部213は、単位空間を基準として、ステップS2で算出した異常度のマハラノビス距離を算出する(ステップS3)。この場合、記憶部25には、プラント1の正常時に収集された状態量に基づいて算出された異常度からなる単位空間が予め記憶されているものとする。また、判定部214は、マハラノビス距離が閾値以上であるか否かに基づいて、プラント1の運転状態が異常であるか否かを判定する(ステップS4)。
【0076】
このような態様であっても、上述の実施形態と同様の効果を得ることが可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 プラント
20 プラント監視装置
21 CPU
211 状態量取得部
212 異常度算出部
213 距離算出部
214 判定部
215 SN比算出部
216 原因推定部
217 出力部
22 入出力インタフェース
23 表示部
24 操作受付部
25 記憶部
40 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7