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特許7387348機械の運動を検出するためのポジション検出システム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】機械の運動を検出するためのポジション検出システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20231120BHJP
   G01D 5/244 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
G01D5/245 110B
G01D5/245 H
G01D5/245 M
G01D5/245 110M
G01D5/244 K
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019168326
(22)【出願日】2019-09-17
(65)【公開番号】P2020046430
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】10 2018 215 783.9
(32)【優先日】2018-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ゲアハート ブント
(72)【発明者】
【氏名】シュテファニー シュトルベアガー
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特許第6339307(JP,B1)
【文献】特開2018-132357(JP,A)
【文献】特開2007-024863(JP,A)
【文献】特表2014-529064(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0076060(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00- 5/62
G01B 7/00- 7/34
H02P 1/00ー 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械(10)の運動を検出するためのポジション検出システム(20;20A)であって、
前記機械(10)の運動により生成される第1の磁界(H1)の変化を検出するための第1のポジションセンサ(21)と、
前記機械(10)の運動により生成される、前記第1の磁界(H1)とは異なる第2の磁界(H2)の変化を検出するための第2のポジションセンサ(22)であって、当該第2のポジションセンサ(22)の検出結果は、前記機械(10)の部材(11;13)の特定すべきポジションについて前記第1のポジションセンサ(21)の検出結果よりも低い分解能を有する、第2のポジションセンサ(22)と、
前記機械(10)の部材(11;13)の1回の電気的回転内での絶対ポジション特定のために前記第2のポジションセンサ(22)の前記検出結果を用いるように並びに前記機械(10)の前記部材(11;13)の機械的回転に関連づけられた増分ポジションの特定、及び、前記第2のポジションセンサ(22)のエラーの識別のために前記第1のポジションセンサ(21)の前記検出結果を用いるように構成されている評価装置(205)と、
を備えており、
両方の前記ポジションセンサ(21、22)各々は、当該ポジションセンサの検出結果を前記評価装置(205)へ送出するために、別個の通信コネクション(217;227)を介して前記評価装置(205)に接続されている、
ポジション検出システム(20;20A)。
【請求項2】
少なくとも2つの第1の磁石(211、212)であって、当該第1の磁石(211、212)において、前記第1のポジションセンサ(21)は前記第1の磁界(H1)を検出する、少なくとも2つの第1の磁石(211、212)と、
第2の磁石(221、222)であって、当該第2の磁石(221、222)において、前記第2のポジションセンサは前記第2の磁界(H2)を検出する、第2の磁石(221、222)と、
をさらに備えており、
前記少なくとも2つの第1の磁石(211、212)と前記第2の磁石(221、222)とは、予め定められた固定的な相互配列で配置されている、
請求項1に記載のポジション検出システム(20;20A)。
【請求項3】
前記少なくとも2つの第1の磁石(211、212)は、それぞれ異なる極性の磁極(211、212)同士が互いに並置されて一列に配置された複数の磁極ペア(211、212)を有しており、
前記第2の磁石(221、222)は、前記少なくとも2つの第1の磁石(211、212)の中央に、前記一列に配置された前記複数の磁極ペア(211、212)から離間して配置されている、
請求項2に記載のポジション検出システム(20;20A)。
【請求項4】
前記評価装置(205)は、前記第1のポジションセンサ(21)の少なくとも1つの検出結果と前記第2のポジションセンサ(22)の少なくとも1つの検出結果とを評価するための制御ユニット(210)を有している、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のポジション検出システム(20;20A)。
【請求項5】
前記評価装置(205)は、
前記第1のポジションセンサ(21)の少なくとも1つの検出結果(215)を評価するための第1の制御ユニット(210)と、
前記第2のポジションセンサ(22)の少なくとも1つの検出結果(225)を評価するための第2の制御ユニット(220)と、
を有しており、
前記第1及び第2の制御ユニット(210、220)は、前記検出結果(215、225)又は評価結果をデータ(230)として当該制御ユニット(210、220)間で伝送するために互いに接続されている、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のポジション検出システム(20;20A)。
【請求項6】
前記評価装置(205)は、前記第1のポジションセンサ(21)の前記少なくとも1つの検出結果と、前記第2のポジションセンサ(22)の前記少なくとも1つの検出結果とを、前記ポジションセンサ(21、22)の前記検出結果の評価におけるエラーの識別のために利用するように構成されている、
請求項1乃至のいずれか一項に記載のポジション検出システム(20;20A)。
【請求項7】
前記第1の磁界(H1)の変化を検出するために、複数の第1の磁石(211、212)に2つ以上の第1のポジションセンサ(21)が設けられている、
請求項1乃至のいずれか一項に記載のポジション検出システム(20;20A)。
【請求項8】
前記第1のポジションセンサ(21)及び前記第2のポジションセンサ(22)は、それぞれTMRセンサであり、又は、
前記第1のポジションセンサ(21)は、TMRセンサであり、前記第2のポジションセンサ(22)は、パラメータ設定可能なホールセンサである、
請求項1乃至のいずれか一項に記載のポジション検出システム(20;20A)。
【請求項9】
機械(10)によって運動させられるように駆動可能な少なくとも1つの可動部材(11;13)と、
前記少なくとも1つの可動部材(11;13)の運動を検出するための、請求項1乃至のいずれか一項に記載の少なくとも1つのポジション検出システム(20;20A)と、
を備えた機械(10)。
【請求項10】
当該機械(10)の前記少なくとも1つの部材(11;13)は、当該機械(10)のロータ(11)又はシャフト(13)である、及び/又は、
当該機械(10)は、同期モータである、
請求項に記載の機械(10)。
【請求項11】
少なくとも1つの被駆動装置部材(40)と、
前記少なくとも1つの被駆動装置部材(40)を回転運動又は直線運動させるように駆動する少なくとも1つの機械(10)と、
機械(10)の少なくとも1つの部材(11;13)の運動を検出するための、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の少なくとも1つのポジション検出システム(20;20A)と、
を備えた装置(1)。
【請求項12】
第1のポジションセンサ(21)と第2のポジションセンサ(22)と評価装置(205)とを有するポジション検出システム(20;20A)によって、機械(10)の運動を検出するための方法であって、
前記第1のポジションセンサ(21)によって、前記機械(10)の運動により生成される第1の磁界(H1)の変化を検出し、第1の通信コネクション(217)を介して検出結果を前記評価装置(205)へ送出するステップと、
前記第2のポジションセンサ(22)によって、前記機械(10)の運動により生成される、前記第1の磁界(H1)とは異なる第2の磁界(H2)の変化を検出し、第2の通信コネクション(227)を介して検出結果を前記評価装置(205)へ送出するステップであって、前記第2のポジションセンサ(22)の検出結果は、前記機械(10)の部材(11;13)の特定すべきポジションについて前記第1のポジションセンサ(21)の検出結果よりも低い分解能を有する、ステップと、
前記機械(10)の部材(11;13)の1回の電気的回転内での絶対ポジション特定のために、及び、前記第1のポジションセンサ(21)の前記検出結果を用いた前記第2のポジションセンサ(22)のエラーの識別のために、前記第2のポジションセンサ(22)の少なくとも1つの検出結果を前記評価装置(205)によって評価するステップと
前記機械(10)の前記部材(11;13)の機械的回転に関連づけられた増分ポジションの特定のため前記第1のポジションセンサ(21)の少なくとも1つの検出結果前記評価装置(205)によって評価するステップと、
を有する、機械(10)の運動を検出するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に同期モータのための、機械、例えば回転機の運動を検出するためのポジション検出システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、物体を運動させる目的、電気エネルギーを発生させる目的などのために、電気機械、モータ、発電機、回転機、リニアドライブなどのような機械が、多くの技術分野において使用される。適用事例によっては、運転中、規定された運動を機械によって実施することができるようにする目的で、機械の運転中及び/又は機械の運転開始時に、機械がどのような姿勢にあるのかを把握するのが重要である。
【0003】
斯かる機械は、特に同期モータは、機械によって駆動される部材の位置を調整する目的で、また、パワーエレクトロニクスの動作制御のために最適な転流角を可能にする目的で、求められたポジションを必要とする。スイッチオン後にさらなるアクションをとることなくこのことが可能となるようにするためには、機械の1回転内でのポジションが明確でなければならない。
【0004】
問題点として挙げられるのは、ポジション検出システムのために機械の中にほとんどスペースがなく、ポジション検出システムは、機械的負荷及び周囲の影響に対しロバストなものでなければならず、かつ、製造において有利であるのが望ましく、高品質及び高分解能をもたらすべきであり、さらに対人保護のために信頼に足るポジション形成が可能でなければならない、ということである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の課題は、上述の問題点を解決することができるようにした、機械の運動を検出するためのポジション検出システム及び方法を提供することである。特に、ロバストかつコンパクトであり、製造において有利である機械のためのポジション検出システムを実現することができるようにした、機械の運動を検出するためのポジション検出システム及び方法を提供したい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1に記載の機械の運動を検出するためのポジション検出システムによって解決される。ポジション検出システムは、機械の運動により生成される第1の磁界の変化を検出するための第1のポジションセンサと、機械の運動により生成される、第1の磁界とは異なる第2の磁界の変化を検出するための第2のポジションセンサであって、第2のポジションセンサの検出結果は、機械の部材の特定すべきポジションについて第1のポジションセンサの検出結果よりも低い分解能を有する、第2のポジションセンサと、機械の部材のポジションの機能上の特定のために、及び、予め定められた安全基準に従った部材のポジションの特定のために、第1のポジションセンサの少なくとも1つの検出結果及び/又は第2のポジションセンサの少なくとも1つの検出結果を評価するための評価装置と、を備えており、両方のポジションセンサ各々は、当該ポジションセンサの検出結果を評価装置へ送出するために、別個の通信コネクションを介して評価装置に接続されている。
【0007】
このポジション検出システムは、著しくコンパクトな磁気検出システムであり、このシステムは、種々の機能のために種々の品質及び分解能のポジションを供給し、しかもこれと共に高い安全レベルを達成する。この場合、ポジション検出システムは、機械的負荷及び周囲の影響に対し著しくロバストである。しかもこのポジション検出システムは、省スペースであり製造において有利である。
【0008】
このポジション検出システムによってもたらされる大きな利点とは、機械のシャフトの姿勢若しくはポジション及び/又は機械のロータの姿勢若しくはポジションを、常に大きな安全性を伴って検出することができる、ということである。この場合、機械のシャフトの運動又は機械のロータの姿勢を検出するための2つのセンサによって、確実な増分ポジションだけでなく、確実な絶対ポジションも提供される。その際にこれに伴ってもたらされる冗長性は、確実な増分ポジションの形成に必要とされるが、確実な絶対ポジションにおけるエラーの識別のために、この冗長性を利用することができる。
【0009】
ポジション検出システムのさらなる利点は、その高い信頼性にある。これによってポジション検出システムを、ポジションの信頼に足る特定が要求される回転機のために特に使用することができる。
【0010】
従属請求項には、ポジション検出システムの有利なさらなる実施形態が記載されている。
【0011】
1つの実施形態によれば、ポジション検出システムはさらに、少なくとも2つの第1の磁石であって、当該第1の磁石において、第1のポジションセンサは第1の磁界を検出する、少なくとも2つの第1の磁石と、第2の磁石であって、当該第2の磁石において、第2のポジションセンサは第2の磁界を検出する、第2の磁石と、をさらに備えており、少なくとも2つの第1の磁石と第2の磁石とは、予め定められた固定的な相互配列で配置されている。ここで、少なくとも2つの第1の磁石は、それぞれ異なる極性の磁極同士が互いに並置されて一列に配置された磁極ペアを有しており、第2の磁石は、少なくとも2つの第1の磁石の中央に、一列に配置された複数の磁極ペアから離間して配置されている。
【0012】
1つの実施例によれば、評価装置は、第1のポジションセンサの少なくとも1つの検出結果と第2のポジションセンサの少なくとも1つの検出結果とを評価する制御ユニットを有している。
【0013】
他の実施例によれば、評価装置は、第1のポジションセンサの少なくとも1つの検出結果を評価するための第1の制御ユニットと、第2のポジションセンサの少なくとも1つの検出結果を評価するための第2の制御ユニットと、を有しており、第1及び第2の制御ユニットは、検出結果又は評価結果をデータとして当該制御ユニット間で伝送するために互いに接続されている。
【0014】
場合によっては、評価装置は、機械の部材の1回の電気的回転内でのポジションを特定するために、第2のポジションセンサの検出結果を用いるように構成されている。これに加えて、評価装置は、場合によっては、機械の部材の1回の機械的回転に関連づけられたポジションを特定するために、第1のポジションセンサの検出結果を用いるように構成されている。この場合には、第2のポジションセンサは、機械のスイッチオン後に、1回の機械的回転内での明確なポジションを有するが、第1のポジションセンサはそれを有さない、ということが利用される。これらのセンサの両方の検出結果の既述の妥当性チェックによって、第2のポジションセンサのエラーを明らかにすることができ、従って、スイッチオン後の1回転内での確実なポジションを保証することができる。
【0015】
評価装置を、第1のポジションセンサの少なくとも1つの検出結果と、第2のポジションセンサの少なくとも1つの検出結果とを、これらのポジションセンサの検出結果の評価におけるエラーの識別のために利用するように、構成することができる。
【0016】
1つの実施例によれば、第1の磁界の変化を検出するために、複数の第1の磁石に2つ以上の第1のポジションセンサが設けられている。
【0017】
ここで考えられるのは、第1のポジションセンサ及び第2のポジションセンサは、それぞれTMRセンサであり、又は、第1のポジションセンサは、TMRセンサであり、第2のポジションセンサは、パラメータ設定可能なホールセンサである、ということである。
【0018】
少なくとも1つの既述のポジション検出システムを、機械の一部分とすることができ、この機械は、さらに少なくとも1つの可動部材を有し、この可動部材は、機械によって回転運動させられるように駆動可能であり、この場合、少なくとも1つのポジション検出システムは、少なくとも1つの可動部材の運動を検出するために設けられている。この場合、機械の少なくとも1つの部材は、機械のロータ又はシャフトである。これに加えて又は選択的に、機械は、同期モータである。
【0019】
少なくとも1つの既述のポジション検出システムを、装置の一部分とすることができ、この装置はさらに、少なくとも1つの被駆動装置部材と、少なくとも1つの被駆動装置部材を回転運動させるように駆動する少なくとも1つの機械と、を有する。この場合、少なくとも1つのポジション検出システムは、機械の少なくとも1つの部材の運動を検出するために設けられている。
【0020】
さらに上述の課題は、第1のポジションセンサと第2のポジションセンサと評価装置とを有するポジション検出システムによって機械の運動を検出するための請求項13に記載の方法によって解決される。この方法は、第1のポジションセンサによって、機械の運動により生成される第1の磁界の変化を検出し、第1の通信コネクションを介して検出結果を評価装置へ送出するステップと、第2のポジションセンサによって、機械の運動により生成される、第1の磁界とは異なる第2の磁界の変化を検出し、第2の通信コネクションを介して検出結果を評価装置へ送出するステップであって、第2のポジションセンサの検出結果は、機械の部材の特定すべきポジションについて第1のポジションセンサの検出結果よりも低い分解能を有する、ステップと、機械の部材のポジションの機能上の特定のために、及び、予め定められた安全基準に従った部材のポジションの特定のために、第1のポジションセンサの少なくとも1つの検出結果及び/又は第2のポジションセンサの少なくとも1つの検出結果を、評価装置によって評価するステップとを有する。
【0021】
この方法によって、ポジション検出システムに関連してこれまでに挙げたものと同様の利点が達成される。
【0022】
本発明のさらなる可能な具現化には、実施例に関してこれまでに説明した又は以下において説明する特徴又は実施形態の、明示的には挙げなかった組合せも含まれる。その際に、当業者であれば、本発明の個々の基本形態に対する改善又は補足として、個別の態様も付け加えるであろう。
【0023】
次に、添付の図面を参照しながら実施例に基づき本発明について詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】部分断面図として描かれ第1の実施例によるポジション検出システムが組み込まれた、機械を備えた装置を示す概略図である。
図2】3次元で見たポジション検出システムを、第1の実施例によるブロック回路図においてこのシステムの電気的な構造と共に示す図である。
図3】3次元で見たポジション検出システムを、第2の実施例によるブロック回路図においてこのシステムの電気的な構造と共に示す図である。
【0025】
特段の記載がない限り、これらの図面において、同一の又は機能的に同等の要素には、同一の参照符号が付されている。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1には、機械10、ポジション検出システム20、巻線温度センサ30、及び、機械10によって運動可能な装置部材40を備えた装置1が示されている。
【0027】
装置1を、物体を搬送するための装置とすることができ、又は、装置1は、物体を搬送するための装置を有することができ、この装置は、例えば、2つ以上の機械10を有するロボット、回転機及び/又はリニアドライブが使用される搬送ベルトなどである。特に装置1は機械10として、ポンプ及び/又はタイムスイッチであり、又は、ポンプ及び/又はタイムスイッチを有する。装置1は、選択的に、ミキサー用の機械10を有することができる。さらに、選択的に装置1は、回転台駆動用の機械10を有することができる。さらに、選択的に、装置1を車両とすることができ、この車両には機械10として、例えば、オルタネータ又はその他の駆動装置が設けられている。装置1について、さらに他の任意の可能な用途が考えられる。
【0028】
機械10において相応の磁界が生成される場合、ロータ11はステータ12に対し、ロータ11が取り付けられた機械軸即ちシャフト13を中心に回転可能である。シャフト13は、機械10のハウジング16におけるベアリング15によって、旋回可能に支承されている。巻線温度センサ30によって、ステータ12のコイル巻線の温度を検出可能である。これに加えて、任意選択的に、例えば、周囲温度検出用センサ及び/又は加速度センサなど、さらに他のセンサが設けられている。
【0029】
ポジション検出システム20は、シャフト13の回転を検出するために、つまりはロータ11の回転も検出するために、図1の機械10に設けられ配置されている。このためにポジション検出システム20は2つのポジションセンサ21、22を有し、これらのセンサは、磁極ホイール200における磁石の運動を識別することができる。磁極ホイール200は、磁気分離ユニット135において固定的にシャフト13と機械的に連結されている。磁気分離ユニット135は、非強磁性材料から形成されている。これにより分離ユニット135は、シャフト13との機械的連結が行われていても、磁気的な分離を生じさせる。ポジションセンサ21、22は、ポジション検出システム20の電子モジュール203に取り付けられている。以下において説明する機能に加えて、電子モジュール203はさらに、巻線温度センサ30の検出結果を処理するように構成されている。
【0030】
機械10は、特に、以下において挙げる機械のうちの1つであり、即ち、モータ、発電機、交流機、三相交流機、液圧機械、空気圧機械などのうちの1つである。ただし、機械10は、必ずしも回転機でなくてもよく、選択的にリニアドライブとすることができ、この場合には、ロータがステータの上を直線的に移動する。特に機械10は、同期モータ又は非同期モータである。
【0031】
図2には、ポジション検出システム20の構造が、1つの特別な実施例に従ってより詳しく示されている。この場合、図2の左側には、ポジション検出システム20の機械的な構造が示されている。ポジション検出システム20は、シャフト13に配置された磁極ホイール200を有する。
【0032】
シャフト13は、回転軸130を中心に回転可能である。シャフト13の回転軸130は、図2の実施例の場合には磁極ホイール200の回転軸と同一である。斯かる配置は、最小の所要スペースという点で最適化されている。より多くのスペースを利用可能であるならば、又は、用途によってそのことが要求されているならば、回転軸130の運動を選択的に他のシャフトによって測定することができ、この他のシャフトはここには図示されておらず、特に伝動装置を介して、回転軸130と連結されている。
【0033】
図2の右側には、概略的なブロック回路図において電子モジュール203の電気的な構造が描かれている。第1のポジションセンサ21及び第2のポジションセンサ22に加えて、ポジション検出システム20は、電子モジュール203において、第1及び第2の制御ユニット210、220を備えた評価装置205を有する。
【0034】
第1のポジションセンサ21は、多数の磁石211、212を備えた増分センサとして構成されており、これらの磁石211、212は、互いに反発し合う即ちそれぞれ異なる極性を有する第1の磁極211及び第2の磁極212を備えている。第1のポジションセンサ21の磁石211、212は、正確に言えば、これらの磁石の第1及び第2の磁極211、212は、図2の場合には、磁極ホイール200の内壁において磁極ホイール200の周囲に沿って交互に配置されている。ただし、選択的に、第1及び第2の磁極211、212を、磁極ホイール200の外壁において磁極ホイール200の周囲に沿って交互に配置することができる。図2の場合には、見やすくするために、すべての磁極211、212に参照符号が付されているわけではない。本実施例の場合、第1のポジションセンサ21は角度センサである。例えば、角度センサは、約90°ずらされて1つのチップに取り付けられた2つの磁気センサである。選択的に角度センサは、約90°ずらされて1つの配線板上に取り付けられた2つの磁気センサである。ただし、角度センサについて、角度を検出可能な他のあらゆる実施形態が考えられる。
【0035】
第1のポジションセンサ21を磁界検出器として構成することができ、これは特にTMRセンサ(TMR=tunnel magnetoresistance トンネル磁気抵抗)である。
【0036】
第1のポジションセンサ21における第1及び第2の磁極211、212のペア数によって、シャフト13が回転軸130を中心に回転したときにこのシャフト13のポジションの検出を行える分解能が決定される。本実施例の場合、第1及び第2の磁極211、212から成る11個のペアが設けられている。第1及び第2の磁極211、212から成るペアがより多く設けられるにつれて、検出分解能が高くなる。これに加えて、以下のことも当てはまる。即ち、第1及び第2の磁極211、212から成るペアがより多く設けられるにつれて、より高い品質及びより高い分解能を達成することができ、換言すれば、第1の制御ユニット210による増分ポジション評価を、より良好に実施することができる。
【0037】
第1のポジションセンサ21が磁石211、212において磁界H1の変化を検出すると、第1のポジションセンサ21は、その検出結果即ちその信号215を、第1の制御ユニット210へ送出する。検出結果即ち信号215は、予め定められたタイミング又は予め定められたタイムインターバルで第1のポジションセンサ21により検出され、第1の制御ユニット210へ送信される。センサ21は、場合によっては、アナログ信号を検出結果215として送出するセンサとして構成されている。選択的にセンサ21を、ディジタル信号を検出結果215として送出するセンサとして構成することができる。
【0038】
第2のポジションセンサ22の磁石221、222は、磁極ホイール200の中央に配置されている。磁石221、222は、互いに反発し合う即ちそれぞれ異なる極性を有する第1の磁極221及び第2の磁極222を備えている。磁石221、222は、図2の実施例の場合には円形磁石である。第2のポジションセンサ22の磁石221、222は、第1のポジションセンサ21の磁石211、212の中央にも配置されている。磁石221、222の中央とシャフト13の中央は、図2の実施例の場合には、同一である。本実施例の場合、第2のポジションセンサ22は、第1のポジションセンサ21に関して既述のように構成可能な角度センサである。第2のポジションセンサ22を磁界検出器として構成することができ、これは特にTMRセンサ(TMR=tunnel magnetoresistance トンネル磁気抵抗)である。
【0039】
第2のポジションセンサ22が、磁石221、222において磁界H2の変化を検出すると、第2のポジションセンサ22は、その検出結果即ちその信号225を、通信ライン227を介して第2の制御ユニット220へ送出する。この場合、検出結果即ち信号225は、予め定められたタイミング又は予め定められたタイムインターバルで第2のポジションセンサ22により検出され、第2の制御ユニット220へ送信される。センサ22は、場合によっては、アナログ信号を検出結果225として送出するセンサとして構成されている。選択的にセンサ22を、ディジタル信号を検出結果225として送出するセンサとして構成することができる。
【0040】
リニアドライブの場合には、磁極ホイール200の代わりに、リニアドライブのステータの長さに沿って一列に相前後して並べられた多数の磁石211、212を用いることができる。斯かるケースの場合、第1及び第2のポジションセンサ21、22は、長さ検出センサである。この場合には、長さ単位ごとに、可能な限り多くのピッチ周期が必要とされる。
【0041】
第1の制御ユニット210は、特に、中央処理ユニット(CPU)213と少なくとも1つの記憶ユニット214とを備えたマイクロコントローラである。これに加えて、第2の制御ユニット220は、特に、中央処理ユニット(CPU)223と少なくとも1つの記憶ユニット224とを備えたマイクロコントローラである。
【0042】
評価装置205は、制御ユニット210、220を有する。第1の制御ユニット210は、2チャネルプロセッサシステムにおける第1のチャネルを形成する。第2の制御ユニット220は、2チャネルプロセッサシステムにおける第2のチャネルを形成する。制御ユニット210、220は、制御ユニット210、220間でデータ230を伝送することができるように、互いに接続されている。これによって、制御ユニット210、220の各々が、両方のセンサ21、22の検出結果即ち信号215、225を、それらを評価する際に用いることができる。これに加えて、制御ユニット210、220の評価結果を、データ230として制御ユニット210、220間で伝送することができ、従って、制御ユニット210、220各々は、評価結果にもアクセスすることができるようになる。
【0043】
評価装置205は、本実施例の場合には機械10の一部分である。選択的に、制御ユニット210、220の少なくとも一方を、機械10の外部に設けることができる。しかも、評価装置205は、外部の装置50に接続されており、これは、例えば制御センタ(ホスト)である。評価装置205は、上述の評価結果をデータ240として外部の装置50へ送信するように構成されている。評価結果即ちデータ240は、評価結果に従う絶対ポジション又は確実な絶対ポジションを含む。
【0044】
このようにしてポジション検出システム20は、シャフト13又はロータ11の絶対ポジションの検出を、第2のポジションセンサ22によって提供し、シャフト13又はロータ11の絶対ポジションの評価を、第2の制御ユニット220によって提供する。第2の制御ユニット220だけが、第2のポジションセンサ22を用いることによって1回転内での絶対ポジションを提供することができる。第1の制御ユニット210は、第2の制御ユニット220から絶対ポジションを受け取るが、絶対ポジションを自身で求めることはできない。これに加えて、制御ユニット210、220各々において、受信された検出結果即ち信号215、225を、シャフト13が機械10の部材として運動する方向を識別するために用いることができる。
【0045】
他方、ポジション検出システム20は、第1のポジションセンサ21を用いて増分ポジション検出も提供し、さらに第1の制御ユニット210を用いて増分ポジション評価を提供し、これは高分解能のポジションのために必要とされる。この場合、本願においては、単一回転(シングルターン)であると考えて解釈される、第2のポジションセンサ22を用いた絶対ポジション検出と、第1のポジションセンサ21を用いた高分解能のポジション検出とによって、1つの全体システムが形成される。この全体システムにおいて、絶対ポジション検出及び高分解能ポジション検出は、互いに依存し合うシステムである。
【0046】
特に同期モータの場合には、部材11、13の位置を調整し、電子モジュール203のパワーエレクトロニクスの動作制御のために最適な転流角を可能にする目的で、第2のポジションセンサ22により求められたポジションを用いることができる。パワーエレクトロニクスを電子モジュール203の構成部分としてもよいし、又は、電子モジュール203の外部に設けてもよい。第2のポジションセンサ22と制御ユニット220とによって、機械10の1回の電気的回転内でのシャフト13のポジションを明確に特定することができる。求められたポジションは、同期モータの位置制御のために完全に十分なものである。この場合、360°の電気的回転は、電気機械10におけるステータの磁極ペアのうち一方の磁極の上を通過する機械的回転に対応する。例えば、機械10においてステータに2つの磁極ペアが設けられているならば、180°の機械的回転ごとに360°の電気的回転が生じる。3つの磁極ペアが設けられているならば、120°の機械的回転ごとに360°の電気的回転が生じる、という具合である。
【0047】
従って、スイッチオン後にさらなるアクションをとることなく、機械10の1回の電気的回転内でのポジションを明確に得るようにする目的で、第2のポジションセンサ22により形成されたポジションが用いられる。
【0048】
ポジションの高い品質及び分解能のために、第1のポジションセンサ21は、機械的回転ごとに、可能な限り多くのピッチ周期が提供されるように構成されている。このため、第1のポジションセンサ21は、必要とされる個数の磁石211、212を有する。リニアポジション検出システムの場合には、長さ単位ごとに、可能な限り多くのピッチ周期が提供される。
【0049】
この構造の利点は、単一回転ポジション(シングルターン情報)も高分解能ポジションも形成することができることである。
【0050】
ただし、安全技術においては、ポジションの高分解能は必要とされない。ポジション特定のためには、第2のポジションセンサ22によって達成される分解能であれば十分である。
【0051】
このため、両方のポジションセンサ21、22によって冗長的なポジションを利用することができるようになり、これは速度/ポジションの信頼に足る監視のために必要とされる。必要に応じて、機械10のための、特に同期モータのための位置調整において、確実なポジション又は速度を用いることができる。
【0052】
図2の実施例の場合には、既述のように構成された2つの制御ユニット210、220が設けられているので、高い安全レベルを達成することができる。安全レベルに従い、技術的装置を駆動するための技術的規則に準拠して、予め定められた安全基準を遵守しなければならない。
【0053】
このため、付加的なハードウェアを設けることなく、信頼に足る2チャネルの、即ち、冗長的なポジション検出又はポジション特定を行うことができる。このような冗長性を、第2のポジションセンサ22により検出される確実な絶対ポジションにおけるエラーの識別のために利用することができる。この場合、両方のセンサ21、22の両方の検出結果即ち信号215、225を、予め定められた比較規則によって互いに比較することができる。検出結果即ち信号215、225が、ポジションに関して互いに異なる結果をもたらしているならば、評価装置205はポジション結果をエラーとして識別する。エラーが識別されたならば、評価装置205は、エラーメッセージを送出することができる。エラーを識別するため、既述の監視を介して許容範囲窓を設定することができ、これによってノイズにより発生する差異が考慮される。例えば、磁極ホイール200の磁石211、212又は磁石221、222の剥離によって、エラーが発生する可能性がある。
【0054】
このため評価装置205は、機械10の部材11、13のポジションの機能上の特定のために、第1のポジションセンサ21の少なくとも1つの検出結果及び第2のポジションセンサ22の少なくとも1つの検出結果の評価を実施することができる。1つの機能は、例えば、既述のように機械10の部材11、13の1回の電気的回転内でのポジションを特定することである。このために評価装置205は、好ましくは第2のポジションセンサ22の検出結果を用い、この検出結果はシングルターン情報を含み、比較的低い分解能を提供する。これに加えて、高い又は比較的高い分解能を提供する第1のポジションセンサ21の検出結果が用いられる。両方のポジションがまとめられ、次いでそれらから1つの情報がもたらされる。
【0055】
ポジション特定の既述の形式によれば、両方のセンサ21、22によって2チャネルシステム(冗長性)が形成されるようになる。許容することができない偏差が確認されると、確実なポジションの伝送が停止され、エラーメッセージが送出される。
【0056】
ポジション検出システム20の斯かる構造及び構成の利点とは、シャフト13又はロータ11の確実な絶対ポジションを形成するために用いられる、第2のポジションセンサ22及び制御ユニット220のような構造部分を、確実な増分ポジションを形成するためにも利用可能なことである。
【0057】
図3には、第2の実施例によるポジション検出システム20Aが示されている。この場合、第1の実施例との相違点として、電子モジュール204には1つの制御ユニット、即ち、例えば、第1の制御ユニット210だけしか設けられていない。このケースにおいては、両方のポジションセンサ21、22は、それらの検出結果をこの1つの制御ユニットに、即ち、この場合には第1の制御ユニット210に送信する。これに加えて、この1つの制御ユニット210は、これまで第1の実施例に関して説明したように、検出結果即ち信号215、225の必要な評価を実施する。
【0058】
従って、完全に2チャネルのシステムは設けられていないので、達成可能な安全レベルは、第1の実施例によるポジション検出システム20の場合よりも低い。
【0059】
第3の実施例によれば、磁極ホイール200の磁石211、212の磁界H1又は磁界H1の変化を検出し、検出結果即ち信号215を評価装置205が利用することができるようにする目的で、1つの第1のポジションセンサ21の代わりに複数のポジションセンサを設けることができる。このようにすれば、シャフト13のポジション特定の分解能及び品質をよりさらに高めることができる。
【0060】
要求される安全レベルに応じて、種々の第1のポジションセンサ21の検出結果即ち信号215を、評価装置205へ別個に送信することができる。しかも、評価装置205は、要求される安全レベルに応じて、第1のポジションセンサ21の検出結果即ち信号215を別個に評価する目的で、種々の制御ユニット210を有することができる。これに加えて、個々の制御ユニット210間でデータ230を伝送するために、通信コネクションを設けることができる。
【0061】
ポジション検出システム20、20Aの装置1及びこのシステムによって実施される方法の既述のすべての実施形態を、個別に又はすべての可能な組み合わせとして、適用することができる。特に、既述の実施例のすべての特徴及び/又は機能を、任意に組み合わせることができる。これに加えて、特に以下の変更が考えられる。
【0062】
図面に示されている部分は概略的に描かれており、それらの既述の機能が保証される限り、正確な形態において図面に示されている形状とは異なる可能性がある。
【0063】
通信ライン217、227のうちの少なくとも1つは、場合によってはシリアルバスとして、特にICバスとして構成されている。
【0064】
これに加えて又は選択的に、少なくとも1つの第1のポジションセンサ21を、パラメータ設定可能なホールセンサとすることができる。これによって、第1のポジションセンサ21を多種多様な適用事例に整合させることができる。
図1
図2
図3