(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】光学積層体および画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20231120BHJP
G02B 1/14 20150101ALI20231120BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20231120BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20231120BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
G02B5/30
G02B1/14
G09F9/00 350Z
B32B7/023
B32B27/00 M
G09F9/00 342
(21)【出願番号】P 2019177150
(22)【出願日】2019-09-27
【審査請求日】2022-06-29
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】田中 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】品川 玲子
(72)【発明者】
【氏名】伊▲崎▼ 章典
【審査官】酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-159911(JP,A)
【文献】国際公開第2017/057101(WO,A1)
【文献】特開2018-092119(JP,A)
【文献】特開2017-058444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02B 1/14
G09F 9/00
B32B 7/023
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異形加工部を有し、
粘着剤層と、
厚みが1μm以上8μm未満である偏光子と、厚みが
2μm~12μm
であり、アクリル系粘着剤で構成される接着層と、
複屈折性を有する層Aと複屈折性を実質的に有さない層Bとが交互に積層された多層積層体であり、A層がナフタレンジカルボン酸ポリエステル、ポリカーボネート、または、アクリル系樹脂から構成され、B層がナフタレンジカルボン酸とテレフタル酸とのコポリエステルから構成される輝度向上フィルムと、厚みが1.5μm以下の表面処理層と、をこの順に備える、光学積層体であって、
該表面処理層が
アクリル系樹脂の硬化層であるハードコート層である、光学積層体。
【請求項2】
請求項
1に記載の光学積層体を含む、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層体および画像表示装置に関する。より詳細には、異形加工された部分(例えば、切り欠き、開口部)を有する光学積層体および該光学積層体を含む画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光子等の光学積層体は、携帯電話およびノート型パーソナルコンピューター(PC)等の様々な画像表示装置に用いられている。光学積層体は、用途に応じて、切り欠き、開口部等の異形加工を施され得る。例えば、カメラが搭載される画像表示装置において、カメラに対応する部分に開口部を形成することが知られている(特許文献1)。しかしながら、光学積層体に異形加工が施されることにより、異形加工部に応力集中が生じ、クラックが発生しやすくなるという問題がある。
【0003】
光学積層体には、用途に応じて様々な光学フィルムが用いられる。例えば、画像表示装置の輝度を向上させる目的で、輝度向上フィルムが用いられる。輝度向上フィルムは、延伸フィルムまたは液晶層から構成されており、力学的に脆いフィルムである。そのため、輝度向上フィルムを含む光学積層体では、異形加工によるクラック発生という問題がより顕著となる傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、異形加工部を有していても、耐クラック性に優れた光学積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光学積層体は、異形加工部を有し、粘着剤層と、偏光子と、接着層と、輝度向上フィルムと、厚みが2.5μm以下の表面処理層とをこの順に備える。
1つの実施形態においては、上記接着層の厚みは20μm以下である。
1つの実施形態においては、上記表面処理層はハードコート層である。
1つの実施形態においては、上記偏光子の厚みが30μm以下である。
本発明の別の局面においては、画像表示装置が提供される。この画像表示装置は、上記光学積層体を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、異形加工部を有していても、耐クラック性に優れた光学積層体を提供することができる。本発明の光学積層体は、異形加工部を有し、粘着剤層と、偏光子と、接着層と、輝度向上フィルムと、厚みが2.5μm以下の表面処理層とをこの順に備える。異形加工された光学積層体では、異形加工部に応力集中が起こり、局所的にフィルム曲げ応力が発生し得る。そのため、特に輝度向上フィルムにクラックが発生しやすい傾向がある。表面処理層の厚みを薄く(より詳細には2.5μm以下に)することにより、曲げモーメントが減少し、輝度向上フィルムにかかる曲げ応力が緩和され得る。そのため、光学積層体の耐クラック性が向上し得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の1つの実施形態における光学積層体の概略断面図である。
【
図2】本発明の1つの実施形態における光学積層体の概略平面図であり、
図2(a)は異形加工部として円形の開口部を有する光学積層体の概略平面図であり、
図2(b)は異形加工部として切り欠き部を有する光学積層体の概略平面図である。
【
図3】本発明の他の実施形態における光学積層体の概略平面図である。
【
図4】本発明の光学積層体に用いられ得る直線偏光分離型輝度向上フィルムの一例の概略斜視図である。
【
図5】実施例で作製した異形加工部を有する光学積層体の異形加工部を説明する概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0010】
A.光学積層体
図1は本発明の1つの実施形態における光学積層体の概略断面図である。図示例の光学積層体100は、粘着剤層10と、偏光子20と、接着層30と、輝度向上フィルム40と、厚みが2.5μm以下の表面処理層50とをこの順に備える。表面処理層50の厚みが2.5μm以下であることにより、輝度向上フィルムにかかる曲げ応力が緩和され、異形加工部を有する場合であっても耐クラック性に優れた光学積層体を提供することができる。表面処理層としては、例えば、ハードコート層、反射防止層、アンチグレア層、防眩層等が挙げられる。表面処理層は、好ましくはハードコート層である。また、図示しないが、上記粘着剤層10、偏光子20、接着層30、輝度向上フィルム40、および、表面処理層50以外にも任意の適切な他の層をさらに備えていてもよい。他の層としては、偏光子等の保護層が挙げられる。また、実用的には、使用までの間、粘着剤層10を適切に保護するため、セパレータが剥離可能に仮着される。
【0011】
図2は本発明の1つの実施形態における光学積層体の概略平面図である。本発明の光学積層体は、用途等に応じて任意の適切な異形加工部を有する。例えば、図示例のような円形の開口部(貫通孔)である異形加工部11(
図2(a))、切り欠き部(ノッチ)である異形加工部11(
図2(b))等が挙げられる。図示例では、1つの異形加工部のみが形成されているが、必要に応じて2以上の異形加工部が形成されていてもよい。また、後述するように、光学積層体の形状自体が異形、すなわち光学積層体の外縁全体が異形加工部であってもよい。
【0012】
光学積層体100は用いられる用途等に応じて任意の適切な形状に設計され得る。1つの実施形態においては、光学積層体の形状自体が異形となるよう加工されていてもよい。光学積層体100の形状としては、例えば、矩形、円形、ひし形、異形等が挙げられる。
【0013】
図3は本発明の別の実施形態における光学積層体の概略平面図である。図示例の光学積層体100は、自動車のインストゥルメントパネルに好適に用いられる。光学積層体100は、第1の表示部60と第2の表示部70とが連設されて構成され、各表示部の中心付近には、各種メータ針を固定するための貫通穴61,71がそれぞれ形成されている。貫通穴の直径は、例えば0.5mm~100mmである。表示部60,70の外縁は、メータ針の回転方向に沿った円弧状に形成されている。
【0014】
異形加工部は任意の適切な方法により形成され得る。例えば、トムソン刃およびピナクル刃等の打ち抜き刃、スピンドル等による切削加工、カッター、または、レーザー等による加工が挙げられる。異形加工部形成時の加工条件は、用いる形成手段、各層の厚み等に応じて任意の適切な条件に設定され得る。
【0015】
以下、粘着剤層10、偏光子20、接着層30、輝度向上フィルム40、および、表面処理層50について、詳細に説明する。
【0016】
B.粘着剤層
粘着剤層10の厚みは、任意の適切な厚みに設定され得る。例えば、1μm~100μm程度であり、好ましくは2μm~50μm、より好ましくは2μm~40μm、さらに好ましくは5μm~35μmである。
【0017】
粘着剤層10は任意の適切な粘着剤を用いて形成され得る。粘着剤としては、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤等が挙げられる。好ましくは、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性、接着性等の粘着特性を示し、耐候性および耐熱性等に優れるものが用いられる。具体的には、アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
【0018】
粘着剤層は任意の適切な方法により形成され得る。例えば、上記粘着剤を剥離処理したセパレータ等に塗布し、乾燥させることにより重合溶剤等を除去して粘着剤層を形成した後に転写する方法、または、上記粘着剤を塗布し、乾燥させることにより重合溶剤等を除去して粘着剤層を偏光子に形成する方法等が挙げられる。剥離処理したセパレータとしては、好ましくはシリコーン剥離ライナーが用いられる。なお、粘着剤を塗布する際に、必要に応じて、重合溶剤以外の1種以上の溶剤をさらに加えてもよい。
【0019】
粘着剤層の形成方法(塗布方法)としては、任意の適切な方法が用いられる。具体的には、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーター等による押出しコート法等の方法があげられる。
【0020】
粘着剤を乾燥させる方法としては、目的に応じて任意の適切な方法を用いることができる。好ましくは、加熱乾燥する方法が用いられる。加熱乾燥温度は、好ましくは40℃~200℃であり、より好ましくは50℃~180℃であり、さらに好ましくは70℃~170℃である。加熱温度を上記の範囲とすることによって、優れた粘着特性を有する粘着剤層が形成され得る。乾燥時間は、任意の適切な時間が採用され得る。上記乾燥時間は、好ましくは5秒~20分、より好ましくは5秒~10分、さらに好ましくは、10秒~5分である。
【0021】
粘着剤層10は、実用に供されるまで剥離処理したシート(セパレータ)で保護されていてもよい。セパレータの構成材料としては、任意の適切な材料を用いることができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルム等のプラスチックフィルム、紙、布、不織布等の多孔質材料、ネット、発泡シート、金属箔、および、これらのラミネート体等の薄葉体等が挙げられる。表面平滑性に優れる点から、好ましくはプラスチックフィルムである。
【0022】
プラスチックフィルムとしては、粘着剤層を保護し得るフィルムであればよい。例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフイルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム等が挙げられる。
【0023】
セパレータの厚みは、任意の適切な厚みに設定することができる。セパレータの厚みは、通常5μm~200μm、好ましくは5μm~100μmである。セパレータには、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉等による離型および防汚処理、および、塗布型、練り込み型、蒸着型等の帯電防止処理が施されていてもよい。セパレータの表面にシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理等の剥離処理を行うことにより、粘着剤層からの剥離性が向上し得る。
【0024】
C.偏光子
偏光子は、代表的には、二色性物質を含む樹脂フィルムで構成される。樹脂フィルムとしては、偏光子として用いられ得る任意の適切な樹脂フィルムを採用することができる。樹脂フィルムは、代表的には、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、「PVA系樹脂」と称する)フィルムである。
【0025】
上記PVA系樹脂フィルムを形成するPVA系樹脂としては、任意の適切な樹脂が用いられ得る。例えば、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体が挙げられる。ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルをケン化することにより得られる。エチレン-ビニルアルコール共重合体は、エチレン-酢酸ビニル共重合体をケン化することにより得られる。PVA系樹脂のケン化度は、通常85モル%~100モル%であり、好ましくは95.0モル%~99.95モル%、さらに好ましくは99.0モル%~99.93モル%である。ケン化度は、JIS K 6726-1994に準じて求めることができる。このようなケン化度のPVA系樹脂を用いることによって、耐久性に優れた偏光子を得ることができる。ケン化度が高すぎる場合には、ゲル化してしまうおそれがある。
【0026】
PVA系樹脂の平均重合度は、目的に応じて適切に選択され得る。平均重合度は、通常1000~10000であり、好ましくは1200~4500、さらに好ましくは1500~4300である。なお、平均重合度は、JIS K 6726-1994に準じて求めることができる。
【0027】
樹脂フィルムに含まれる二色性物質としては、例えば、ヨウ素、有機染料等が挙げられる。これらは、単独で、または、2種以上組み合わせて用いられ得る。好ましくは、ヨウ素が用いられる。
【0028】
樹脂フィルムは、単層の樹脂フィルムであってもよく、二層以上の積層体であってもよい。
【0029】
単層の樹脂フィルムから構成される偏光子の具体例としては、PVA系樹脂フィルムにヨウ素による染色処理および延伸処理(代表的には、一軸延伸)が施されたものが挙げられる。上記ヨウ素による染色は、例えば、PVA系樹脂フィルムをヨウ素水溶液に浸漬することにより行われる。上記一軸延伸の延伸倍率は、好ましくは3~7倍である。延伸は、染色処理後に行ってもよいし、染色しながら行ってもよい。また、延伸してから染色してもよい。必要に応じて、PVA系樹脂フィルムに、膨潤処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等が施される。例えば、染色の前にPVA系樹脂フィルムを水に浸漬して水洗することで、PVA系樹脂フィルム表面の汚れおよびブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、PVA系樹脂フィルムを膨潤させて染色ムラ等を防止することができる。
【0030】
積層体を用いて得られる偏光子の具体例としては、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体、あるいは、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子が挙げられる。樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を偏光子とすること;により作製され得る。本実施形態においては、延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することをさらに含み得る。得られた樹脂基材/偏光子の積層体はそのまま用いてもよく(すなわち、樹脂基材を偏光子の保護フィルムとしてもよく)、樹脂基材/偏光子の積層体から樹脂基材を剥離し、当該剥離面に目的に応じた任意の適切な保護フィルムを積層して用いてもよい。このような偏光子の製造方法の詳細は、例えば特開2012-73580号公報に記載されている。当該公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0031】
偏光子は、好ましくは、波長380nm~780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示す。偏光子の単体透過率は、好ましくは43.0%~46.0%であり、より好ましくは44.5%~46.0%である。偏光子の偏光度は、好ましくは97.0%以上であり、より好ましくは99.0%以上であり、さらに好ましくは99.9%以上である。
【0032】
偏光子の厚みは、任意の適切な値に設定され得る。厚みは、代表的には0.5μm以上80μm以下であり、好ましくは30μm以下であり、より好ましくは25μm以下であり、さらに好ましくは18μm以下であり、特に好ましくは12μm以下であり、さらに特に好ましくは8μm未満である。偏光子の厚みは好ましくは1μm以上である。
【0033】
D.接着層
接着層は、接着剤または粘着剤で構成される。接着剤または粘着剤としては、任意の適切な接着剤または粘着剤を用いることができる。粘着剤としては、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤等が挙げられる。好ましくは、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性、接着性等の粘着特性を示し、耐候性および耐熱性等に優れるものが用いられる。具体的には、アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
【0034】
接着剤としては、光学的に透明であればよく、任意の適切な接着剤を用いることができる。例えば、溶剤系、ホットメルト系、活性エネルギー線硬化型等の各種形態のものを用いることができる。好ましくは、活性エネルギー線硬化型接着剤が用いられる。
【0035】
接着層の厚みは、好ましくは20μm以下であり、より好ましくは18μm以下であり、さらに好ましくは12μm以下である。接着層の厚みは、好ましくは2μm以上である。接着層の厚みがこのような範囲であることにより、偏光子と輝度向上フィルムの積層状態を良好に保持することができる。また、輝度向上フィルムにかかる曲げ応力がより緩和され得る。
【0036】
このような接着層を構成する粘着剤の詳細は、例えば、特開2008-46147号公報に開示されている。当該公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0037】
E.輝度向上フィルム
輝度向上フィルムは、偏光を分離して、輝度向上を図るフィルムであり、直線偏光分離型であってもよく、円偏光分離型であってもよい。輝度向上フィルムとしては、延伸フィルムから構成されるフィルム、液晶層から構成されるフィルム等が挙げられる。輝度向上フィルムは、自然光(例えば、画像表示装置のバックライトからの光)が入射すると、該光を2つの偏光成分に分離し、所定偏光軸の直線偏光または所定方向の円偏光を透過させ、透過しない偏光を反射させる機能を有する。透過しない偏光を反射板等を経由させて、偏光解消された光を輝度向上フィルムに再入射させることにより、所定の偏光の利用効率を向上させることができる。以下、一例として、直線偏光分離型輝度向上フィルム(反射型偏光子)について説明する。
【0038】
直線偏光分離型輝度向上フィルムは、入射する光を直交する2つの偏光成分に分離し、一方の偏光成分を透過させ、他方の偏光成分を反射させる機能を有する。
図4は、直線偏光分離型輝度向上フィルムの一例の概略斜視図である。図示例の直線偏光分離型輝度向上フィルムは、複屈折性を有する層Aと複屈折性を実質的に有さない層Bとが交互に積層された多層積層体である。このような多層積層体の層の総数は、例えば、50~1000であり得る。図示例では、A層のx軸方向の屈折率nxがy軸方向の屈折率nyより大きく、B層のx軸方向の屈折率nxとy軸方向の屈折率nyとは実質的に同一である。したがって、A層とB層との屈折率差は、x軸方向において大きく、y軸方向においては実質的にゼロである。その結果、x軸方向が反射軸となり、y軸方向が透過軸となる。A層とB層とのx軸方向における屈折率差は、好ましくは0.2~0.3である。なお、x軸方向は、輝度向上フィルムの延伸方向に対応する。
【0039】
上記A層は、好ましくは、延伸により複屈折性を発現する材料で構成される。このような材料の代表例としては、ナフタレンジカルボン酸ポリエステル(例えば、ポリエチレンナフタレート)、ポリカーボネートおよびアクリル系樹脂(例えば、ポリメチルメタクリレート)が挙げられる。ポリエチレンナフタレートが好ましい。上記B層は、好ましくは、延伸しても複屈折性を実質的に発現しない材料で構成される。このような材料の代表例としては、ナフタレンジカルボン酸とテレフタル酸とのコポリエステルが挙げられる。
【0040】
直線偏光分離型輝度向上フィルムは、A層とB層との界面において、第1の偏光方向を有する光(例えば、p波)を透過し、第1の偏光方向とは直交する第2の偏光方向を有する光(例えば、s波)を反射する。反射した光は、A層とB層との界面において、一部が第1の偏光方向を有する光として透過し、一部が第2の偏光方向を有する光として反射する。輝度向上フィルムの内部において、このような反射および透過が多数繰り返されることにより、光の利用効率を高めることができる。
【0041】
1つの実施形態においては、直線偏光分離型輝度向上フィルムは、
図4に示すように、偏光子と反対側の最外層として反射層Rを含んでいてもよい。反射層Rを設けることにより、最終的に利用されずに輝度向上フィルムの最外部に戻ってきた光をさらに利用することができるので、光の利用効率をさらに高めることができる。反射層Rは、代表的には、ポリエステル樹脂層の多層構造により反射機能を発現する。
【0042】
直線偏光分離型輝度向上フィルムは、代表的には、共押出と横延伸とを組み合わせて作製され得る。共押出は、任意の適切な方式で行われ得る。例えば、フィードブロック方式であってもよく、マルチマニホールド方式であってもよい。例えば、フィードブロック中でA層を構成する材料とB層を構成する材料とを押出し、次いで、マルチプライヤーを用いて多層化する。なお、このような多層化装置は当業者に公知である。次いで、得られた長尺状の多層積層体を代表的には搬送方向に直交する方向(TD)に延伸する。A層を構成する材料(例えば、ポリエチレンナフタレート)は、当該横延伸により延伸方向においてのみ屈折率が増大し、結果として複屈折性を発現する。B層を構成する材料(例えば、ナフタレンジカルボン酸とテレフタル酸とのコポリエステル)は、当該横延伸によってもいずれの方向にも屈折率は増大しない。結果として、延伸方向(TD)に反射軸を有し、搬送方向(MD)に透過軸を有する輝度向上フィルム(反射型偏光子)が得られ得る(TDが
図4のx軸方向に対応し、MDがy軸方向に対応する)。なお、延伸操作は、任意の適切な装置を用いて行われ得る。
【0043】
輝度向上フィルムとしては、例えば、特表平9-507308号公報に記載のものが使用され得る。輝度向上フィルムは、市販品をそのまま用いてもよく、市販品を2次加工(例えば、延伸)して用いてもよい。市販品としては、例えば、日東電工株式会社製の商品名APCF、3M社製の商品名DBEF、3M社製の商品名APFが挙げられる。
【0044】
F.表面処理層
表面処理層50としては、光学積層体の用途に応じて、任意の適切な表面処理層が形成される。表面処理層の厚みは2.5μm以下であり、好ましくは2μm以下であり、より好ましくは1.5μm以下である。また、表面処理層の厚みは、好ましくは0.5μm以上である。表面処理層の厚みを上記範囲にすることにより、異形加工された場合であっても光学積層体への曲げモーメントを減少させ得る。そのため、光学積層体に含まれる輝度向上フィルムへの曲げ応力が緩和され、光学積層体の耐クラック性(より詳細には、輝度向上フィルムの耐クラック性)が向上し得る。
【0045】
表面処理層としては、例えば、ハードコート層、反射防止層、アンチグレア層、防眩層等が挙げられる。好ましくは、表面処理層はハードコート層である。ハードコート層は硬度が高い層であるため、より大きな曲げ応力が発生し得る。表面処理層の厚みが2.5μm以下であることにより、表面処理層をハードコート層とした場合であっても、光学積層体の耐クラック性が向上し得る。さらに、表面処理層自体の耐クラック性も向上し得る。
【0046】
ハードコート層は、好ましくは、任意の適切な紫外線硬化樹脂の硬化層である。紫外線硬化樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。ハードコート層は、必要に応じて、任意の適切な添加剤を含み得る。当該添加剤の代表例としては、無機系微粒子および/または有機系微粒子が挙げられる。微粒子を含むことにより、例えば、適切な屈折率を備え得る。
【0047】
ハードコート層は、代表的には、予め、基材上にハードコート処理を施して積層体とした状態で光学積層体に供される。基材は、任意の適切な樹脂フィルムを採用し得る。樹脂フィルムを構成する樹脂としては、代表的には、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂等が挙げられる。なお、本明細書において「(メタ)アクリル系樹脂」とは、アクリル系樹脂および/またはメタクリル系樹脂をいう。
【0048】
G.その他の層
光学積層体は、上記粘着剤層、偏光子、接着層、輝度向上フィルム、および、表面処理層以外に任意の適切な他の層を含み得る。例えば、保護層が挙げられる。保護層の形成材料としては、例えば、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂等のエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、これらの共重体樹脂等が挙げられる。
【0049】
保護層の厚みは、好ましくは10μm~100μmである。保護フィルムは、代表的には、任意の接着層(具体的には、接着剤層、粘着剤層)を介して偏光子に積層される。接着剤層は、代表的にはPVA系接着剤や活性化エネルギー線硬化型接着剤で形成される。粘着剤層は、代表的にはアクリル系粘着剤で形成される。
【0050】
H.画像表示装置
本発明の画像表示装置は、上記光学積層体を備える。画像表示装置としては、例えば、液晶表示装置、有機ELデバイスが挙げられる。画像表示装置において、上記光学積層体は好ましくはバックライト側に配置される。上記の通り、本発明の光学積層体は異形加工された場合であっても、耐クラック性に優れる。そのため、自動車のインストゥルメントパネルおよびスマートウォッチに代表される異形の画像表示部を有する画像表示装置にも好適に用いることができる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0052】
[製造例1]偏光子の作製
基材として、長尺状で、吸水率0.75%、Tg75℃の非晶質のイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(IPA共重合PET)フィルム(厚み:100μm)を用いた。基材の片面に、コロナ処理を施し、このコロナ処理面に、ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性PVA(重合度1200、アセトアセチル変性度4.6%、ケン化度99.0モル%以上、日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマーZ200」)を9:1の比で含む水溶液を25℃で塗布および乾燥して、厚み11μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を、120℃のオーブン内で周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に2.0倍に自由端一軸延伸した(空中補助延伸)。
次いで、積層体を、液温30℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴に、偏光板が所定の透過率となるようにヨウ素濃度、浸漬時間を調整しながら浸漬させた。本実施例では、水100重量部に対して、ヨウ素を0.2重量部配合し、ヨウ化カリウムを1.5重量部配合して得られたヨウ素水溶液に60秒間浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温30℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を3重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温70℃のホウ酸水溶液(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合し、ヨウ化カリウムを5重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸)。
その後、積層体を液温30℃の洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを4重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させた(洗浄処理)。
続いて、上記積層体のPVA系樹脂層の表面に、紫外線硬化型接着剤を硬化後の接着剤層の厚さが0.5μmになるように塗布し、保護フィルム(厚み20μm、TACフィルム)を貼合せた。次いで、活性エネルギー線として紫外線を照射して接着剤を硬化させ、総厚25.5μmの偏光板(偏光子(透過率42.3%、厚み5μm)/保護フィルム)を得た。
【0053】
[製造例2]接着層形成組成物の調製
撹拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート91部、N-アクリロイルモルホリン6部、アクリル酸2.7部、2-ヒドロキシブチルアクリレート0.3部、重合開始剤として2,2’-ゾビスイソブチロニトリル0.1重量部、酢酸エチル200重量部を仕込み、緩やかに撹拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した。次いで、フラスコ内の液温を55℃付近に保ちながら8時間重合反応を行い、アクリル系ポリマー溶液を調製した。アクリル系ポリマーの重量平均分子量は220万であった。
【0054】
[製造例3]ハードコート層形成組成物の調製
アクリル系樹脂原料(大日本インキ社製、商品名:GRANDIC PC1071)に、レベリング剤0.5重量%を加え、さらに、固形分濃度が50重量%となるように酢酸エチルで希釈することにより、ハードコート層形成用の塗工溶液を調製した。なお、レベリング剤は、ジメチルシロキサン:ヒドロキシプロピルシロキサン:6-イソシアネートヘキシルイソシアヌル酸:脂肪族ポリエステル=6.3:1.0:2.2:1.0のモル比で共重合させた共重合物である。
【0055】
[製造例4]粘着剤組成物の調製
撹拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート100重量部、アクリル酸5重量部、2-ヒドロキシブチルアクリレート0.1重量部、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部、酢酸エチル200重量部を仕込み、緩やかに撹拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した。次いで、フラスコ内の液温を55℃付近に保って8時間重合反応を行い、アクリル系ポリマー溶液を調製した。アクリル系ポリマーの重量平均分子量は192万であった。得られたアクリル系ポリマー溶液の固形分100部に対して、架橋剤としてトリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物からなるポリイソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業社製、コロネートL)0.6重量部を配合し、アクリル系粘着剤溶液を調製した。
【0056】
[実施例1]
製造例4で得られた粘着剤組成物を厚みが20μmとなるようシリコーン処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製、厚み:38μm)の片面に塗布し、130℃で3分間乾燥させ、粘着剤層を形成した。形成した粘着剤層を製造例1で得られた偏光板の偏光子側表面に転写した。
輝度向上フィルム(3M社製、製品名「APF V4」、厚み:16μm)に製造例3で得られたハードコート層形成組成物を乾燥後の厚みが0.5μmとなるよう塗布し、ハードコート層を形成した。
粘着剤層を形成した偏光板の保護フィルム側表面と、ハードコート層を形成した輝度向上フィルムの輝度向上フィルム側表面とを表1に記載の各厚みとなるよう塗布した製造例2で得られた接着層形成組成物を介して貼り合わせ、積層体を得た。
得られた積層体をエンドミル加工により、
図5の下部(逆U字部)に示すような曲率半径R
1が2.5mm、長さW
1が5mm、および、最大深さDが6.5mmの欠け部を積層体に形成して、異形加工部を有する光学積層体を得た。なお、偏光子の吸収軸が光学積層体の長辺Lに平行になるようにした。
【0057】
[実施例2~8]
ハードコート層の厚みが表1に記載の厚みとなるようハードコート層形成組成物を塗布した以外は実施例1と同様にして、異形加工部を有する光学積層体を得た。
【0058】
(比較例1~2)
ハードコート層の厚みが表1に記載の厚みとなるようハードコート層形成組成物を塗布した以外は実施例1と同様にして、異形加工部を有する光学積層体を得た。
【0059】
実施例1~8および比較例1~2で得られた光学積層体を用いて、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
(耐クラック性評価)
実施例および比較例で得られた光学積層体を用いて、冷熱衝撃装置(エスペック株式会社製、製品名:TSA-303EL-W)内でヒートサイクル試験を100回行った。ヒートサイクルは-40℃から30分間かけて85℃まで昇温し、庫内が85℃に達した時点で30分間かけて-40℃まで冷却するサイクルを1サイクルとした。100サイクルのヒートサイクル試験後の異形加工部におけるクラックの有無を目視で確認し、クラックが確認できた場合にはクラックの長さを、光学顕微鏡を用いて測定した。複数のクラックが確認できた場合には、最大のクラックの長さをクラック長さとした。
各光学積層体を以下の基準で評価した。
5:光学積層体のどの層にもクラックがない
4:光学積層体のいずれかの層に100μm未満のクラックあり
3:光学積層体のいずれかの層に100μm以上200μm未満のクラックあり
2:光学積層体のいずれかの層に200μm以上300μm未満のクラックあり
1:光学積層体のいずれかの層に300μmを超えるクラックあり
【0060】
【0061】
実施例1~8の光学積層体では、100サイクルのヒートサイクル試験後であっても光学積層体にクラックがないことが確認され、耐クラック性に優れるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の光学積層体は、液晶表示装置、有機ELデバイス等の画像表示装置に好適に用いられる。本発明の光学積層体は、自動車のインストゥルメントパネルおよびスマートウォッチに代表される異形の画像表示部を有する画像表示装置にも好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0063】
10 粘着剤層
20 偏光子
30 接着層
40 輝度向上フィルム
50 表面処理層
100 光学積層体