(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 9/02 20060101AFI20231120BHJP
B60C 9/18 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
B60C9/02 B
B60C9/18 K
(21)【出願番号】P 2019181350
(22)【出願日】2019-10-01
【審査請求日】2022-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】小泉 照平
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-081873(JP,A)
【文献】特開2011-251646(JP,A)
【文献】特開2010-18123(JP,A)
【文献】特開平11-20406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部と、
前記トレッド部の両端からタイヤ径方向内側にそれぞれ延びる一対のサイドウォール部と、
個々の前記サイドウォール部から連続してタイヤ径方向内側に設けられた一対のビード部と、
前記トレッド部に配置される
2枚のベルトと、
前記一対のビード部に配置される一対のビードコアと、
前記
2枚のベルトのタイヤ径方向内側に配置され、前記一対のビードコアにそれぞれ巻き上げられた
、一対の
第1プライ片からなる不連続な
第1カーカスプライ
および一対の第2プライ片からなる不連続な第2カーカスプライを
含むカーカスプライ群と
を備え、
前記トレッド部のタイヤ幅方向中央部には、前記カーカスプライ群が存在しない領域である中抜き部が設けられており、
前記
第1カーカスプライの前記一対の
第1プライ片の一対のそれぞれの一端部は、前記トレッド部に配置され、
前記
第1カーカスプライの前記一対の
第1プライ片の一対のそれぞれの他端部は、タイヤ幅方向において前記
2枚のベルトと重複して配置され
、
前記第2カーカスプライは、前記第1カーカスプライを少なくとも部分的に被覆するように配置され、
前記2枚のベルトのベルトコードは、互いに交差するとともにタイヤ周方向から26度以内の傾斜角で配置され、
前記第2カーカスプライの前記一対の第2プライ片の一対のそれぞれの一端部は、前記トレッド部に配置され、
前記第2カーカスプライの前記一対の第2プライ片の一対のそれぞれの他端部は、前記一対のサイドウォール部にて終端している、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記一対の第1プライ片の前記一対の一端部および前記一対の他端部の少なくとも一方は、前記トレッド部においてタイヤ幅方向の最も外側に配置された主溝である最外主溝の内壁よりもタイヤ幅方向内側に位置する、請求項1
に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記一対の第1プライ片の前記一対の一端部は、前記一対の他端部よりもタイヤ幅方向内側に位置する、請求項1
または請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された空気入りタイヤのカーカスプライは、不連続であり、一対のプライ片からなる。トレッド部の中央には、プライ片が存在しない領域、つまり中抜き部が設けられている。この中抜き部によって、一枚の連続したカーカスプライを備える空気入りタイヤと比べて軽量化を図ることができ、軽量化に伴って転がり抵抗低減も図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
空気入りタイヤでは、軽量化と転がり抵抗低減を図る場合、剛性の低下とそれに伴う操縦安定性の低下を招くおそれがある。しかし、特許文献1に開示された構造には、剛性とそれに伴う操縦安定性について詳細な言及なく、改善の余地がある。
【0005】
本発明は、中抜き部を構成する不連続なカーカスプライを備える空気入りタイヤにおいて、剛性の向上とそれに伴う操縦安定性の向上を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部と、前記トレッド部の両端からタイヤ径方向内側にそれぞれ延びる一対のサイドウォール部と、個々の前記サイドウォール部から連続してタイヤ径方向内側に設けられた一対のビード部と、前記トレッド部に配置される2枚のベルトと、前記一対のビード部に配置される一対のビードコアと、前記2枚のベルトのタイヤ径方向内側に配置され、前記一対のビードコアにそれぞれ巻き上げられた、一対の第1プライ片からなる不連続な第1カーカスプライおよび一対の第2プライ片からなる不連続な第2カーカスプライを含むカーカスプライ群とを備え、前記トレッド部のタイヤ幅方向中央部には、前記カーカスプライ群が存在しない領域である中抜き部が設けられており、前記第1カーカスプライの前記一対の第1プライ片の一対のそれぞれの一端部は、前記トレッド部に配置され、前記第1カーカスプライの前記一対の第1プライ片の一対のそれぞれの他端部は、タイヤ幅方向において前記2枚のベルトと重複して配置され、前記第2カーカスプライは、前記第1カーカスプライを少なくとも部分的に被覆するように配置され、前記2枚のベルトのベルトコードは、互いに交差するとともにタイヤ周方向から26度以内の傾斜角で配置され、前記第2カーカスプライの前記一対の第2プライ片の一対のそれぞれの一端部は、前記トレッド部に配置され、前記第2カーカスプライの前記一対の第2プライ片の一対のそれぞれの他端部は、前記一対のサイドウォール部にて終端している、空気入りタイヤを提供する。
【0007】
この構成によれば、一対のプライ片からなる不連続なカーカスプライ(以降、中抜きプライともいう。)を少なくとも1つ備える空気入りタイヤにおいて、トレッド部のタイヤ幅方向中央部には、カーカスプライ群が存在しない領域である中抜き部が設けられる。これにより、中抜き部が設けられてない空気入りタイヤと比較して軽量化およびそれに伴う転がり抵抗の低減を実現できる。また、カーカスプライの一対のプライ片は、一対の他端部がタイヤ幅方向においてベルトと重複する位置まで巻き上げられているので、ベルトによって強固に保持される。従って、一対の他端部がサイドウォール部で終端する空気入りタイヤに比べて剛性を向上でき、それに伴って操縦安定性を向上できる。なお、カーカスプライ群が2つ以上の中抜きプライを含む場合も上記構成に含まれるが、トレッド部のタイヤ幅方向中央部に中抜き部が設けられることから全てのカーカスプライが中抜きプライとして構成される。換言すると、上記構成では、一対のビードコア間に架け渡される連続したカーカスプライは含まれない。また、高い剛性を確保できる。空気入りタイヤは、ベルトコードをタイヤ周方向に沿って(タイヤ周方向に対して0度で)配置すると、剛性が最も高くなり、傾斜角が大きくなるほど剛性が低下する。従って、上記構成では、傾斜角を26度以内に設定することにより、一定以上の高い剛性を確保できる。従って、一定以上の高い剛性に伴って一定以上の高い操縦安定性を確保できる。
【0010】
前記一対の第1プライ片の前記一対の一端部および前記一対の他端部の少なくとも一方は、前記トレッド部においてタイヤ幅方向の最も外側に配置された主溝である最外主溝の内壁よりもタイヤ幅方向内側に位置してもよい。
【0011】
この構成によれば、高い剛性を確保できる。トレッド部の主溝は、トレッド部の表面において凹形状を有する。即ち、トレッド部の主溝は、加硫成形の際に金型から押圧されて形成される。従って、トレッド部の最外主溝の内壁よりもタイヤ幅方向内側にカーカスプライを配置することで、加硫成形の際に金型からの押圧力を受けてカーカスプライを強固に保持できる。従って、一層剛性を向上でき、それに伴って一層操縦安定性を向上できる。
【0012】
前記一対の第1プライ片の前記一対の一端部は、前記一対の他端部よりもタイヤ幅方向内側に位置してもよい。
【0013】
この構成によれば、巻き上げた一対の他端部を一対のプライ片自体に貼り付けることができ、安定したカーカスプライの配置を実現できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、中抜き部を構成する不連続なカーカスプライを備える空気入りタイヤにおいて、カーカスプライの一対の他端部がタイヤ幅方向においてベルトと重複する位置まで巻き上げられているので、剛性の向上とそれに伴う操縦安定性の向上を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る空気入りタイヤの子午線断面図。
【
図2】第1実施形態に係る空気入りタイヤの構成部品の模式的な配置図。
【
図3】カーカスプライとベルト層の模式的な展開図。
【
図4】第2実施形態に係る空気入りタイヤの構成部品の模式的な配置図。
【
図5】
図4の第1変形例に係る空気入りタイヤの構成部品の模式的な配置図。
【
図6】
図4の第2変形例に係る空気入りタイヤの構成部品の模式的な配置図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0017】
(第1実施形態)
図1を参照して、空気入りタイヤ1(以降、単にタイヤ1ともいう。)は、トレッド部2、一対のサイドウォール部3、およびリング状の一対のビード部4を備える。
図1では、タイヤ1の半分が示されるとともに、破線円で示される部分が拡大して示されている。
【0018】
トレッド部2はタイヤ幅方向に延びている。
図1において、タイヤ幅方向は、符号TWで示され、以降の図でも同様である。トレッド部2の表面、つまり踏面にはタイヤ周方向に延びる主溝2aが設けられている。本実施形態では、複数の主溝2aが形成されており、特にタイヤ幅方向の最も外側に配置された主溝2aを最外主溝2bとして示す。
【0019】
一対のサイドウォール部3は、トレッド部2の両端からタイヤ径方向の内側にそれぞれ延びている。
図1において、タイヤ径方向は、符号TRで示され、以降の図でも同様である。
【0020】
一対のビード部4は、一対のサイドウォール部3のタイヤ径方向内側の端部からそれぞれ連続して配置されている。個々のビード部4は、ビードコア5とビードフィラー6を備える。ビードコア5は、図示しないリング状に束ねられた多数の鋼線を備える。ビードフィラー6は、リング状で、トレッド部2及びサイドウォール部3を構成するゴムよりも硬質のゴムからなる。ビードフィラー6は、ビードコア5のタイヤ径方向外側に隣接して配置された基端6aと、基端6aとは反対側の先端6bとを備え、基端6aから先端6bに向かってタイヤ径方向外側へテーパ状に延びている。個々のビード部4は、ビードコア5とビードフィラー6とを部分的に包むように設けられたストリップゴム7を備える。
【0021】
図2を合わせて参照して、タイヤ1は、一対のプライ片11Aからなる不連続なカーカスプライ11(いわゆる中抜きプライ)を含むカーカスプライ群10を備える。本実施形態では、カーカスプライ群10は1つのカーカスプライ11からなるため、カーカスプライ群10とカーカスプライ11は同じ意味で使用される。ただし、カーカスプライ群10は、2つ以上のカーカスプライを含んでもよい。カーカスプライ群10が2つ以上のカーカスプライを含む場合については、第2実施形態で説明する。
【0022】
カーカスプライ11の一対のプライ片11Aは、一対のビードコア5にそれぞれ巻き上げられ、一対の一端部11aから一対の他端部11bまで延びている。具体的には、一対のそれぞれの一端部11aは、トレッド部2に配置されている。一対の一端部11aからは、一対の内側サイド部11cがタイヤ径方向内側に延びている。一対の内側サイド部11cからは、一対のビードコア5に巻き上げられた一対の巻上部11dが連続している。一対の巻上部11dからは、一対の外側サイド部11eがタイヤ径方向外側に延びている。一対の外側サイド部11eは、一対の他端部11bにて終端している。一対のそれぞれの他端部11bは、タイヤ幅方向において後述するベルト層20(ベルト21,22)と重複して配置されている。
【0023】
好ましくは、一対の一端部11aおよび一対の他端部11bの少なくとも一方は、トレッド部2の最外主溝2bの内壁2b1よりもタイヤ幅方向内側に位置する。換言すると、一対の一端部11aおよび一対の他端部11bの少なくとも一方が、タイヤ幅方向において、最外主溝2bと重複して配置されるか、最外主溝2bよりも内側に配置されることが好ましい。本実施形態では、一対の一端部11aは最外主溝2bの内壁2b1よりもタイヤ幅方向内側に位置し、一対の他端部11bは最外主溝2bの内壁2b1よりもタイヤ幅方向外側に位置している。一対の一端部11aと一対の他端部11bとの位置関係では、本実施形態のように一対の一端部11aが一対の他端部11bよりもタイヤ幅方向内側に位置していることが好ましい。
【0024】
図1を参照して、カーカスプライ群10(カーカスプライ11)のタイヤ径方向内側、つまりタイヤ1の最内周面には、インナーライナ8が設けられている。
【0025】
上記カーカスプライ群10(カーカスプライ11)の構成によって、トレッド部2のタイヤ幅方向中央部には、カーカスプライ群10(カーカスプライ11)が存在しない領域である中抜き部CHが設けられている。中抜き部CHでは、後述するベルト層20がインナーライナ8と接触している。
【0026】
トレッド部2においてカーカスプライ群10(カーカスプライ11)のタイヤ径方向外側には、無端状のベルト層20が設けられている。本実施形態では、ベルト層20は、2枚のベルト21,22を含む。ベルト21はカーカスプライ群10(カーカスプライ11)のタイヤ径方向外側に隣接して配置され、ベルト22はベルト21のタイヤ径方向外側に隣接して配置されている。本実施形態では、ベルト21のタイヤ幅方向の寸法は、ベルト22のタイヤ幅方向の寸法よりも大きい。ベルト21の端部21aは、ベルト22の端部22aよりもタイヤ幅方向外側に位置している。
【0027】
前述のように、本実施形態では、一対の他端部11bは、タイヤ幅方向においてベルト層20(ベルト21,22)と重複して配置されている。この重複配置により、カーカスプライ11をベルト層20によって保持できる。詳細には、カーカスプライ11をベルト層20によって保持するためには、一対の他端部11bがベルト21,22のいずれかとタイヤ幅方向において重複していればよい。そのため、本実施形態では、ベルト21の端部21aはベルト22の端部22aよりもタイヤ幅方向外側に位置するため、一対の他端部11bがタイヤ幅方向においてベルト21と重複するとともにベルト22とは重複していなくてもよい。
【0028】
また、ベルト層20のタイヤ径方向外側には、無端状のキャッププライ30が設けられている。キャッププライ30は、端部21a,22aを含むベルト21,22全体を1枚で覆う幅広の部材である。キャッププライ30は、2枚以上配置されてもよいし、省略されてもよい。
【0029】
特に
図1の破線円内を参照して、ベルト層20のタイヤ幅方向外側の両端の部分とカーカスプライ11との間には、ゴム製で無端状のパッド40が配置されている。パッド40の断面形状は、偏平な三角形状である。ベルト21,22の端部21a,22a及びキャッププライ30の端部30aのタイヤ幅方向の位置は、パッド40のタイヤ幅方向の外側の端部40aと内側の端部40bとの間の領域、つまりパッド40が存在する領域に設定されている。なお、パッド40を省略してもよい。
【0030】
図3は、
図1において矢視III方向からトレッド部2の外表面ゴム(トレッドゴム)およびキャッププライ30を省略してタイヤ1を見たときのカーカスプライ11(一対のプライ片11A)とベルト層20(ベルト21,22)の模式的な展開図である。
図3において、タイヤ周方向は、符号TCで示されている。
【0031】
図3を参照して、ベルト21の構成要素であるスチール製又は有機繊維製のベルトコード21bは、タイヤ周方向から(0度以上かつ)26度以内の傾斜角θ1で配置されていることが好ましい(0°≦θ1≦26°)。本実施形態では、ベルトコード21bは、タイヤ周方向から例えば20度の傾斜角で配置されている(θ1=20°)。同様に、ベルト22の構成要素であるスチール製又は有機繊維製のベルトコード22bは、タイヤ周方向から(0度以上かつ)26度以内の傾斜角θ2で配置されていることが好ましい(0°≦θ2≦26°)。本実施形態では、ベルトコード22bは、タイヤ周方向から例えば20度の傾斜角で配置されている(θ2=20°)。ここで、傾斜角θ1,θ2は、絶対値で示されている。そのため、図示の例では、ベルトコード21b,22bは、互いに交差するように配置されているが、傾斜角は同じ20度となっている。また、ベルト層20は、1枚のベルトで構成されていてもよいし、3枚以上のベルトで構成されてもよい。
【0032】
次に、本実施形態の空気入りタイヤ1の特徴を説明する。
【0033】
図1,2を参照して、本実施形態では、一対のプライ片11Aからなる不連続なカーカスプライ11を備える空気入りタイヤ1において、トレッド部2のタイヤ幅方向中央部にはカーカスプライ群10が存在しない中抜き部CHが設けられている。これにより、本実施形態の空気入りタイヤ1は、中抜き部CHが設けられてない空気入りタイヤと比較して軽量化及びそれに伴う転がり抵抗の低減を実現できる。また、カーカスプライ11の一対のプライ片11Aは、一対の他端部11bがタイヤ幅方向においてベルト層20と重複する位置まで巻き上げられているので、ベルト層20によって強固に保持される。従って、一対の他端部11bがサイドウォール部3で終端する空気入りタイヤに比べて剛性を向上でき、それに伴って操縦安定性を向上できる。
【0034】
また、ベルト21,22をそれぞれ構成するベルトコード21b,22bは、タイヤ周方向から26度以内(本実施形態では20度)の傾斜角θ1,θ2で配置されているため、空気入りタイヤ1において高い剛性を確保できる。空気入りタイヤ1は、ベルトコード21b,22bをタイヤ周方向に沿って(タイヤ周方向に対して0度で)配置すると、剛性が最も高くなり、傾斜角θ1,θ2が大きくなるほど剛性が低下する。従って、本実施形態の構成では、傾斜角θ1,θ2を例えば20度に設定することにより、一定以上の高い剛性を確保している。従って、一定以上の高い剛性に伴って一定以上の高い操縦安定性を確保している。
【0035】
また、一対の一端部11aが最外主溝2bの内壁2b1よりもタイヤ幅方向内側に位置するため、空気入りタイヤ1において高い剛性を確保できる。トレッド部2の主溝2aは、トレッド部2の表面において凹形状を有する。即ち、トレッド部2の主溝2aは、加硫成形の際に金型から押圧されて形成される。従って、トレッド部2の最外主溝2bの内壁2b1よりもタイヤ幅方向内側にカーカスプライ11を配置することで、加硫成形の際に金型からの押圧力を受けてカーカスプライ11を強固に保持できる。従って、一層剛性を向上でき、それに伴って一層操縦安定性を向上できる。
【0036】
また、一対の一端部11aが一対の他端部11bよりもタイヤ幅方向内側に位置するため、巻き上げた一対の他端部11bを一対のプライ片11A自体に貼り付けることができ、安定したカーカスプライ11の配置を実現できる。
【0037】
(第2実施形態)
図4に示す第2実施形態の空気入りタイヤ1は、カーカスプライ群10が一対の第1プライ片12Aからなる不連続な第1カーカスプライ12と、一対の第2プライ片13Aからなる不連続な第2カーカスプライ13とによって構成されている。ここで、第1カーカスプライ12および第2カーカスプライ13は、いわゆる中抜きプライである。カーカスプライ群10に関する構成以外は、第1実施形態の空気入りタイヤ1の構成と実質的に同じである。従って、第1実施形態にて示した構成と同じ部分については説明を省略する場合がある。
【0038】
本実施形態では、カーカスプライ群10が、第1カーカスプライ12および第2カーカスプライ13からなる。第2カーカスプライ13の一対の第2プライ片13Aは、第1カーカスプライ12の一対の第1プライ片12Aをそれぞれ概ね被覆している。トレッド部2のタイヤ幅方向中央部にはカーカスプライ群10が存在しない領域である中抜き部CHが設けられている。
【0039】
一対の第1プライ片12Aは、一対のビードコア5にそれぞれ巻き上げられ、一対の一端部12aから一対の他端部12bまで延びている。具体的には、一対の一端部12aは、トレッド部2に配置されている。一対の一端部12aからは、一対の内側サイド部12cがタイヤ径方向内側に延びている。一対の内側サイド部12cからは、一対のビードコア5に巻き上げられた一対の巻上部12dが連続している。一対の巻上部12dからは、一対の外側サイド部12eがタイヤ径方向外側に延びている。一対の外側サイド部12eは、一対の他端部12bにて終端している。一対の他端部12bは、タイヤ幅方向において後述するベルト層20(ベルト21,22)と重複して配置されている。
【0040】
一対の第2プライ片13Aは、一対のビードコア5にそれぞれ巻き上げられ、一対の一端部13aから一対の他端部13bまで延びている。具体的には、一対の一端部13aは、トレッド部2に配置されている。一対の一端部13aからは、一対の内側サイド部13cがタイヤ径方向内側に延びている。一対の内側サイド部13cからは、一対のビードコア5に巻き上げられた一対の巻上部13dが連続している。一対の巻上部13dからは、一対の外側サイド部13eがタイヤ径方向外側に延びている。一対の外側サイド部13eは、一対の他端部13bにて終端している。一対の他端部13bは、タイヤ幅方向において後述するベルト層20(ベルト21,22)と重複して配置されている。
【0041】
本実施形態では、一端部12a,13aと他端部12b,13bが、トレッド部2のタイヤ幅方向の最外主溝2bの内壁2b1よりもタイヤ幅方向内側に位置している。一端部12a,13aと他端部12b,13bとの位置関係では、タイヤ幅方向内側から順に、第2プライ片13Aの一端部13a、第1プライ片12Aの一端部12a、第1プライ片12Aの他端部12b、第2プライ片13Aの他端部13bが配置されている。
【0042】
(第2実施形態の第1変形例)
図5に示す第2実施形態の第1変形例では、一対の第2プライ片13Aの他端部13bの位置が上記第2実施形態のものとは異なる。これに関する構成以外は、第2実施形態の空気入りタイヤ1の構成と実質的に同じである。
【0043】
本変形例では、一対の第2プライ片13Aの他端部13bがサイドウォール部3にて終端している。図示の例では、第2プライ片13Aの他端部13bは、タイヤ径方向においてビードフィラー6の基端6aと先端6bとの間に位置している。
【0044】
(第2実施形態の第2変形例)
図6に示す第2実施形態の第2変形例では、一対の第1プライ片12Aの他端部12bの位置が上記第2実施形態のものとは異なる。これに関する構成以外は、第2実施形態の空気入りタイヤ1の構成と実質的に同じである。
【0045】
本変形例では、一対の第1プライ片12Aの他端部12bがサイドウォール部3にて終端している。図示の例では、第1プライ片12Aの他端部12bは、タイヤ径方向においてビードフィラー6の基端6aと先端6bとの間に位置している。
【0046】
第2実施形態およびその2つの変形例にて示したように、カーカスプライ群10は2つのカーカスプライ12,13を含んでもよい。第1実施形態に比べて、カーカスプライの数が増加したことにより剛性を向上でき、それに伴って操縦安定性を向上できる。また、一端部12a,13aと他端部12b,13bの位置は、例として図示したものに限らず、様々に変更され得る。
【0047】
以上より、本発明の具体的な実施形態およびその変形例について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。例えば、カーカスプライ群10は、中抜き部CHが設けられるように3つ以上の中抜きプライを含んでもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 タイヤ(空気入りタイヤ)
2 トレッド部
2a 主溝
2b 最外主溝
2b1 内壁
3 サイドウォール部
4 ビード部
5 ビードコア
6 ビードフィラー
6a 基端
6b 先端
7 ストリップゴム
8 インナーライナ
10 カーカスプライ群
11 カーカスプライ
11A プライ片
11a 一端部
11b 他端部
11c 内側サイド部
11d 巻上部
11e 外側サイド部
12 第1カーカスプライ(カーカスプライ)
12A 第1プライ片(プライ片)
12a 一端部
12b 他端部
12c 内側サイド部
12d 巻上部
12e 外側サイド部
13 第2カーカスプライ(カーカスプライ)
13A 第2プライ片(プライ片)
13a 一端部
13b 他端部
13c 内側サイド部
13d 巻上部
13e 外側サイド部
20 ベルト層(ベルト)
21 ベルト
21a 端部
21b ベルトコード
22 ベルト
22a 端部
22b ベルトコード
30 キャッププライ
30a 端部
40 パッド
40a,40b 端部