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特許7387368工作機械の主軸監視装置及び主軸監視方法
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  • 特許-工作機械の主軸監視装置及び主軸監視方法 図1
  • 特許-工作機械の主軸監視装置及び主軸監視方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】工作機械の主軸監視装置及び主軸監視方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 17/00 20060101AFI20231120BHJP
   B23B 19/02 20060101ALI20231120BHJP
   B23B 25/06 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
B23Q17/00 A
B23B19/02 Z
B23B25/06
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019183960
(22)【出願日】2019-10-04
(65)【公開番号】P2021058957
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-04-28
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】北郷 匠
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-078126(JP,A)
【文献】特開昭57-158538(JP,A)
【文献】特開2006-205350(JP,A)
【文献】特開平06-099335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 17/00
B23B 19/02、25/06
G01M 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸に取り付けた工具又はワークを回転させ、移動体を送り軸により駆動させながらワークの加工を行う工作機械において、前記主軸の異常を判断する主軸監視装置であって、
前記主軸の動作状態の変化を主軸負荷に基づいて監視する主軸動作監視手段と、
前記送り軸の動作状態の変化を送り軸負荷に基づいて監視し、前記送り軸負荷の単位時間当たりの絶対値の変化量が予め設定してあるしきい値を下回った場合、及び、前記送り軸負荷の単位時間当たりの変動幅の変化があらかじめ設定してあるしきい値を下回った場合に、前記送り軸の動作状態に変化なしと判断する送り軸動作監視手段と、を備え、
前記主軸に一定の回転速度が指令され、前記送り軸が駆動している状態で、前記主軸動作監視手段により前記主軸の動作状態の変化が検知され、且つ前記送り軸動作監視手段により前記送り軸の動作状態の変化が検知されなかった場合にのみ、前記主軸の異常と判断することを特徴とする工作機械の主軸監視装置。
【請求項2】
前記主軸動作監視手段は、前記主軸負荷の単位時間当たりの絶対値の変化量を算出し、前記絶対値の変化量が予め設定してあるしきい値を超えた場合に、前記主軸の動作状態に変化ありと判断することを特徴とする請求項1に記載の工作機械の主軸監視装置。
【請求項3】
主軸に取り付けた工具又はワークを回転させ、移動体を送り軸により駆動させながらワークの加工を行う工作機械において、前記主軸の異常を判断する主軸監視方法であって、
前記主軸が一定の回転速度で回転している状態で前記主軸の動作状態の変化を主軸負荷に基づいて監視する主軸動作監視ステップと、
前記送り軸が駆動している状態で前記送り軸の動作状態の変化を送り軸負荷に基づいて監視し、前記送り軸負荷の単位時間当たりの絶対値の変化量が予め設定してあるしきい値を下回った場合、及び、前記送り軸負荷の単位時間当たりの変動幅の変化があらかじめ設定してあるしきい値を下回った場合に、前記送り軸の動作状態に変化なしと判断する送り軸動作監視ステップと、
前記主軸動作監視ステップにより前記主軸の動作状態の変化が検知され、且つ前記送り軸動作監視ステップにより前記送り軸の動作状態の変化が検知されなかった場合にのみ、前記主軸の異常と判断する判断ステップと、
を実行することを特徴とする工作機械の主軸監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主軸に取り付けた工具又はワークを回転させながらワークの加工を行う工作機械において、主軸の異常を判断するための主軸監視装置及び主軸監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
主軸に取り付けた工具又はワークを回転させながらワークの加工を行う工作機械では、経年劣化により軸受が摩耗し予圧抜けが発生したり、異物の混入、潤滑不良などにより損傷が発生したりして、動作精度の低下や動作時の異音などの不具合を引き起こす場合がある。このような状態となると、加工物の形状不良や加工面性状不良といった加工不良が生じ、生産に悪影響を与える。また、主軸の焼き付きといった故障が発生すると、主軸が回転不能となり、工作機械を稼働させることすらできなくなる場合もある。
そのため、工作機械では、工作機械の負荷などを監視し、しきい値を超えた時に警報を発したり、工作機械の動作を停止させたりする監視装置が組み込まれている。しかしながら、加工の影響を想定したしきい値を設定するため、比較的大きい値となり、加工負荷の過大といった重大な異常となるまで検知されず、主軸自体の状態の変化は検知されないという問題があった。
そこで、工作機械の主軸監視装置として、特許文献1には、主軸は回転しているが送り軸が動いていない状態など切削加工が行われていない状態を機械の制御装置で判断し、主軸に取り付けられたAE振動センサのデータを計測値として取り込むことにより、加工の影響を回避し、主軸の軸受の状態変化を早期段階から感知する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-74545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の方法では、切削加工が行われていない際のデータを用いるため、主軸潤滑ユニットの故障や異物の咬み込みといった切削加工時での初期の異常現象や突発的に発生する予兆を見逃してしまうという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、このような問題に鑑みなされたものであり、切削加工中においても主軸の状態を監視可能な工作機械の主軸監視装置及び主軸監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、主軸に取り付けた工具又はワークを回転させ、移動体を送り軸により駆動させながらワークの加工を行う工作機械において、前記主軸の異常を判断する主軸監視装置であって、
前記主軸の動作状態の変化を主軸負荷に基づいて監視する主軸動作監視手段と、
前記送り軸の動作状態の変化を送り軸負荷に基づいて監視し、前記送り軸負荷の単位時間当たりの絶対値の変化量が予め設定してあるしきい値を下回った場合、及び、前記送り軸負荷の単位時間当たりの変動幅の変化があらかじめ設定してあるしきい値を下回った場合に、前記送り軸の動作状態に変化なしと判断する送り軸動作監視手段と、を備え、
前記主軸に一定の回転速度が指令され、前記送り軸が駆動している状態で、前記主軸動作監視手段により前記主軸の動作状態の変化が検知され、且つ前記送り軸動作監視手段により前記送り軸の動作状態の変化が検知されなかった場合にのみ、前記主軸の異常と判断することを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、上記構成において、前記主軸動作監視手段は、前記主軸負荷の単位時間当たりの絶対値の変化量を算出し、前記絶対値の変化量が予め設定してあるしきい値を超えた場合に、前記主軸の動作状態に変化ありと判断することを特徴とする。
上記目的を達成するために、請求項に記載の発明は、主軸に取り付けた工具又はワークを回転させ、移動体を送り軸により駆動させながらワークの加工を行う工作機械において、前記主軸の異常を判断する主軸監視方法であって、
前記主軸が一定の回転速度で回転している状態で前記主軸の動作状態の変化を主軸負荷に基づいて監視する主軸動作監視ステップと、
前記送り軸が駆動している状態で前記送り軸の動作状態の変化を送り軸負荷に基づいて監視し、前記送り軸負荷の単位時間当たりの絶対値の変化量が予め設定してあるしきい値を下回った場合、及び、前記送り軸負荷の単位時間当たりの変動幅の変化があらかじめ設定してあるしきい値を下回った場合に、前記送り軸の動作状態に変化なしと判断する送り軸動作監視ステップと、
前記主軸動作監視ステップにより前記主軸の動作状態の変化が検知され、且つ前記送り軸動作監視ステップにより前記送り軸の動作状態の変化が検知されなかった場合にのみ、前記主軸の異常と判断する判断ステップと、を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、切削加工中においても主軸の状態を監視可能となり、工作機械の主軸の異常の早期検知が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】工作機械の一例を示すブロック構成図である。
図2】主軸監視方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、工作機械の一例を示すブロック構成図である。工作機械の主軸ハウジング1には、主軸モータで回転可能な主軸2が備えられ、主軸2の先端には工具3が取り付けられる。移動体である主軸ハウジング1は、Z軸方向に移動が可能となっている。また、移動体であるテーブル4の上にはワーク5が固定され、テーブル4をベッド6上で互いに直交するX軸、Y軸方向に移動が可能となっている。ここでは工具3とワーク5とを相対的に移動させることでワーク5の加工が行われる。
工作機械を制御するNC装置10は、オペレータが図示しない入力手段で入力したプログラムを主軸回転指令、送り軸動作指令に解釈するプログラム解釈部11と、プログラム解釈部11から送られた指令に基づいて主軸モータや各送り軸モータ等を制御する機械動作指令部12とを備えてワーク5の加工を行う。
【0010】
また、NC装置10には、主軸監視部13が設けられている。この主軸監視部13は、機械動作指令部12にて生成された主軸負荷、X軸、Y軸、Z軸といった各送り軸の負荷といった制御に関する情報を、主軸動作監視部14および送り軸動作監視部15により監視し、主軸動作および送り軸動作の状態を統合する。そして、主軸2に異常な動作があると判断した場合、主軸監視部13は、機械動作指令部12に機械の停止指令を送る、或いはモニタ16に主軸2の異常が検知されたことを通知する等の処理を行う。
【0011】
次に、主軸監視部13における監視方法について、図2のフローチャートに基づいて説明する。
まず、主軸負荷の絶対値変化量Saを算出し(S1)、主軸負荷の絶対値変化量Saと、予め設定してある主軸負荷の絶対値変化量しきい値Salとの比較を行う(S2)。この処理は主軸動作監視部14において行われる。
主軸負荷の絶対値変化量Saは、工作機械の制御周期により生成された主軸負荷(例えば主軸モータの所要電力又は所要トルクに相当する負荷信号)について、主軸1回転周期毎に平均値を算出し、1回転前の周期で算出した平均値との差を絶対値とすることにより算出される。但し、この算出は、主軸回転速度の指令が一定速の場合に実施し、主軸2の加減速が行われている際は、対象外とする。
S2の判別で、主軸負荷の絶対値変化量Saが主軸負荷の絶対値変化量しきい値Sal以上となっている場合(S2でYESの場合)は、主軸の動作状態に変化ありとして次の処理へ進む。一方、主軸負荷の絶対値変化量Saが主軸負荷の絶対値変化量しきい値Sal未満の場合は、主軸の動作状態に変化なしとしてS1の次の周期の処理へ戻る。
【0012】
次に、送り軸負荷の絶対値変化量Aaを算出し(S3)、送り軸負荷の絶対値変化量Aaと、予め設定してある送り軸負荷の絶対値変化量しきい値Aalとを比較する(S4)。
送り軸負荷の絶対値変化量Aaは、主軸負荷と同様に、X軸、Y軸、Z軸といった各送り軸毎の負荷(例えば送り軸モータの所要電力又は所要トルクに相当する負荷信号)について、1回転周期毎に平均値を算出し、1回転前の周期で算出した平均値との差を絶対値とすることにより算出される。ここでは、各送り軸の負荷の絶対値変化量の最大値を送り軸負荷の絶対値変化量Aaとして採用する。なお、ここではしきい値Aalを1つとしているが、各送り軸毎にしきい値を設けて判定してもよい。
S4の判別で、送り軸負荷の絶対値変化量Aaが送り軸負荷の絶対値変化量しきい値Aalを下回っている場合(S4でYESの場合)は、送り軸の動作状態に変化なしとして次の処理へ進み、送り軸負荷の絶対値変化量Aaが送り軸負荷の絶対値変化量しきい値Aal以上の場合は、送り軸の動作状態に変化ありとしてS1へ戻る。
【0013】
次に、送り軸負荷の変動幅変化量Avを算出し(S5)、送り軸負荷の変動幅変化量Avと、予め設定してある送り軸負荷の変動幅変化量しきい値Avlとを比較する(S6)。
送り軸負荷の変動幅変化量Avは、X軸、Y軸、Z軸といった各送り軸毎の負荷を、1回転周期毎の最大値と最小値の差を変動幅として算出し、1回転前の周期で算出した変動幅との差を絶対値とすることにより算出される。ここでは、各送り軸の負荷の変動幅変化量の最大値を送り軸負荷の変動幅変化量Avとして採用する。ここではしきい値Avlを1つとしているが、各送り軸毎にしきい値を設けて判定してもよい。
S6の判別で、送り軸負荷の変動幅変化量Avが送り軸負荷の変動幅変化量しきい値Avlを下回っている場合(S6でYESの場合)は、送り軸の動作状態に変化がないにもかかわらず主軸の動作状態に変化が生じていることになる。よって、S7で、主軸2に異常があると判定し、機械を停止させる。この処理は送り軸動作監視部15において行われる。一方、送り軸負荷の変動幅変化量Avが送り軸負荷の変動幅変化量しきい値Avl以上の場合は、送り軸の動作状態に変化ありとしてS1へ戻る。
【0014】
このように、上記形態の主軸監視装置(NC装置10)及び主軸監視方法によれば、主軸2の動作状態の変化を主軸負荷に基づいて監視する(S1,S2の主軸動作監視ステップを実行する)主軸動作監視部14(主軸動作監視手段)と、送り軸の動作状態の変化を送り軸負荷に基づいて監視する(S3~S6の送り軸動作監視ステップを実行する)送り軸動作監視部15(送り軸動作監視手段)と、を備え、主軸2に一定の回転速度が指令され、送り軸が駆動している状態で、主軸動作監視部14により主軸2の動作状態の変化が検知され、且つ送り軸動作監視部15により送り軸の動作状態の変化が検知されなかった場合に、主軸2の異常と判断する(S7の判断ステップを実行する)ことで、切削加工中においても主軸2の状態を監視可能となり、主軸潤滑ユニットの故障や異物の咬み込みといった切削加工時での初期の異常現象や突発的に発生する予兆も検知できる。よって、主軸2の異常の早期検知が可能となる。
【0015】
なお、上記形態では、S2で主軸負荷の絶対値変化量Saが絶対値変化量しきい値Sal以上となった場合に、送り軸の動作状態の変化なしを条件として異常と判定しているが、S2で比較するしきい値に段階を設け、小さいしきい値を上回った場合はS7でモニタへの通知のみとし、大きいしきい値を上回った場合にS7で異常と判定して機械停止させてもよい。
また、ここでは、主軸負荷の絶対値変化量を例に説明を行ったが、主軸に別途設置した振動センサを用いて、RMS値(実効値)の変化量や変動幅の変化量に置き換えることにより、同様の効果を得ることができる。
【0016】
さらに、S4の判別で送り軸負荷の絶対値変化量Aaが送り軸負荷の絶対値変化量しきい値Aalを下回っている場合で、且つS6の判別で送り軸負荷の変動幅変化量Avが送り軸負荷の変動幅変化量しきい値Avlを下回っている場合に送り軸の動作状態に変化なしと判定しているが、S3~S4とS5~S6との何れか一方のみの処理を採用して送り軸の動作状態を判定してもよい。
そして、上記形態では、工作機械のNC装置に主軸監視装置を組み込んだ構成としているが、NC装置と別個に設けた主軸監視装置を無線或いは有線でNC装置と接続して主軸監視方法を実行させるようにしてもよい。この場合、複数の工作機械のNC装置と接続すれば、主軸の異常を一括して判断可能となる。
【符号の説明】
【0017】
1・・主軸ハウジング、2・・主軸、3・・工具、4・・テーブル、5・・ワーク、6・・ベッド、10・・NC装置、11・・プログラム解釈部、12・・機械動作指令部、13・・主軸監視部、14・・主軸動作監視部、15・・送り軸動作監視部、16・・モニタ。
図1
図2