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特許7387386熱可塑性樹脂組成物及びその製造方法と、成形品
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  • 特許-熱可塑性樹脂組成物及びその製造方法と、成形品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物及びその製造方法と、成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20231120BHJP
   C08L 15/00 20060101ALI20231120BHJP
   C08L 51/00 20060101ALI20231120BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20231120BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L15/00
C08L51/00
C08K3/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019194511
(22)【出願日】2019-10-25
(65)【公開番号】P2021066837
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】396021575
【氏名又は名称】テクノUMG株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】田口 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】内藤 吉孝
(72)【発明者】
【氏名】熱田 裕之
(72)【発明者】
【氏名】垰 幸作
(72)【発明者】
【氏名】岩永 崇
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-016524(JP,A)
【文献】国際公開第2018/221742(WO,A1)
【文献】特開2003-049042(JP,A)
【文献】特開2005-272699(JP,A)
【文献】特開2006-143785(JP,A)
【文献】特開2005-343925(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/14
C08K 3/00 - 13/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:熱可塑性樹脂(ただし、下記(B)成分を除く)と、
(B)成分:未変性のビニル系重合体(B1)の存在下に酸基含有化合物とビニル系単量体成分(m3)をグラフト重合した酸基変性グラフト、酸基変性アクリロニトリル-スチレン共重合体、未変性のビニル系重合体(B2)の存在下にエポキシ基含有化合物とビニル系単量体成分(m4)をグラフト重合したエポキシ変性グラフト、及びエポキシ変性アクリロニトリル-スチレン共重合体からなる群より選ばれる1種以上と、
(C)成分:平均粒子径が2~35μmである架橋硬質樹脂及び平均粒子径が2~35μmである無機粒子の少なくとも一方と、
を含む、熱可塑性樹脂組成物であって、
前記(A)成分の含有量が、前記熱可塑性樹脂組成物の総質量に対して40~90質量%であり、
前記(B)成分及び前記(C)成分の含有量の合計が、前記熱可塑性樹脂組成物の総質量に対して10~60質量%であり、
前記(B)成分/前記(C)成分で表される質量比が0.1~10である、熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記ビニル系単量体成分(m3)がアクリロニトリル及びスチレンを含み、前記ビニル系単量体成分(m4)がアクリロニトリル及びスチレンを含む、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、
前記(A)成分と、前記(B)成分と、前記(C)成分とを含む混合物を溶融混練する工程を含む、熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物を用いた、成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物及びその製造方法と、成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車内装用部品(ダッシュボード、インストルメントパネル等)、家具、電気機器のハウジング、住宅用樹脂化建材などとして、光沢が著しく低減された成形品、いわゆる艶消し成形品に対する需要が高まりつつある。
低光沢性の成形品として、例えば特許文献1には、最表面が凹凸面であり、該凹凸面の算術平均粗さ(Ra)が0.1~0.7μmであるシートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-99671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
成形品には、例えば蛍光灯の光や外光などの映り込みによる像が不鮮明であること(低写像性)が求められることがある。
しかしながら、特許文献1に記載のシートは、必ずしも低写像性を満足するものではない。
【0005】
本発明は、低光沢性及び低写像性に優れ、成形外観が良好な成形品が得られる熱可塑性樹脂組成物及びその製造方法と、成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の態様を包含する。
[1](A)成分:熱可塑性樹脂と、
(B)成分:酸基変性ゴム、酸基変性グラフト、酸基変性アクリロニトリル-スチレン共重合体、エポキシ変性ゴム、エポキシ変性グラフト、エポキシ変性アクリロニトリル-スチレン共重合体からなる群より選ばれる1種以上と、
(C)成分:平均粒子径が2~35μmである架橋硬質樹脂及び平均粒子径が2~35μmである無機粒子の少なくとも一方と、
を含む、熱可塑性樹脂組成物であって、
前記(A)成分の含有量が、前記熱可塑性樹脂組成物の総質量に対して40~90質量%であり、
前記(B)成分及び前記(C)成分の含有量の合計が、前記熱可塑性樹脂組成物の総質量に対して10~60質量%であり、
前記(B)成分/前記(C)成分で表される質量比が0.1~10である、熱可塑性樹脂組成物。
[2]前記[1]の熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、
前記(A)成分と、前記(B)成分と、前記(C)成分とを含む混合物を溶融混練する工程を含む、熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
[3]前記[1]の熱可塑性樹脂組成物を用いた、成形品。
【発明の効果】
【0007】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、低光沢性及び低写像性に優れ、成形外観が良好な成形品が得られる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法によれば、上述した熱可塑性樹脂組成物を容易に製造できる。
本発明の成形品は、低光沢性及び低写像性に優れ、成形外観が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の成形品の一例を示す平面図である。
図2図1中のX-X線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の用語の定義は、本明細書及び特許請求の範囲にわたって適用される。
「平均粒子径」は、レーザー顕微鏡等の粒度分布測定器を用いて体積基準の粒子径分布を測定し、得られた粒子径分布より算出される値(体積平均粒子径)である。
「成形品」とは、熱可塑性樹脂組成物を成形してなるものである。
「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及びメタクリル酸の総称である。
「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの総称である。
数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0010】
[熱可塑性樹脂組成物]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、以下に示す(A)成分と、(B)成分と、(C)成分とを含む。熱可塑性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、必要に応じて(A)成分と(B)成分及び(C)成分以外の成分(任意成分)を含んでいてもよい。
【0011】
<(A)成分>
(A)成分は、熱可塑性樹脂である。
(A)成分としては、ビニル系重合体(A1)、ビニル系重合体(A1)にビニル系単量体成分(m2)をグラフト重合して得られたグラフト重合体(A2)などが挙げられる。
【0012】
ビニル系重合体(A1)は、ビニル系単量体成分(m1)を重合して得られるものである。すなわち、ビニル系重合体(A1)は、ビニル系単量体単位を有する。
ビニル系単量体成分(m1)は、重合性不飽和二重結合を有するビニル系単量体を1種以上含む成分である。ビニル系単量体成分(m1)に含まれるビニル系単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸エステル、シアン化ビニル化合物、芳香族ビニル化合物、N-置換マレイミド、マレイン酸などが挙げられる。
【0013】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸i-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸i-ブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸オクチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸デシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸i-プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸i-ブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル等のメタクリル酸エステルなどが挙げられる。
シアン化ビニル化合物としては、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。
芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、α-メチルスチレン、o-,m-又はp-メチルスチレン、ビニルキシレン、p-t-ブチルスチレン、エチルスチレンなどが挙げられる。
N-置換マレイミドとしては、例えばN-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-n-プロピルマレイミド、N-i-プロピルマレイミド、N-n-ブチルマレイミド、N-i-ブチルマレイミド、N-tert-ブチルマレイミド等のN-アルキルマレイミド;N-シクロヘキシルマレイミド等のN-シクロアルキルマレイミド;N-フェニルマレイミド、N-(2-メチルフェニル)マレイミド、N-(4-ヒドロキシフェニル)マレイミド、N-クロロフェニルマレイミド等のN-アリールマレイミド;N-アラルキルマレイミドなどが挙げられる。
これらのビニル系単量体は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0014】
成形品の耐衝撃性が向上する観点では、ビニル系単量体成分(m1)は(メタ)アクリル酸エステルを含むことが好ましい。すなわち、ビニル系重合体(A1)は、(メタ)アクリル酸エステル単位を有することが好ましく、特に、アクリル酸n-ブチル単位及びメタクリル酸メチル単位の少なくとも一方を有することがより好ましい。
【0015】
ビニル系重合体(A1)は、ビニル系単量体成分(m1)を重合して得られる。
重合方法としては、塊状重合法、溶液重合法、塊状懸濁重合法、懸濁重合法、乳化重合法、ミニエマルション重合等の公知の方法が挙げられる。ビニル系重合体(A1)の粒子径を制御しやすいことから、乳化重合、ミニエマルション重合が好ましい。
ビニル系重合体(A1)の乳化重合法による製造方法としては、水系溶媒にラジカル重合開始剤とビニル系単量体成分(m1)とを加えて、乳化剤の存在下で共重合させる方法が挙げられる。ラジカル開始剤及びビニル系単量体成分(m1)の添加方法は、一括、分割、連続のいずれでもよい。
ラジカル重合を行う際には、各種公知の連鎖移動剤を添加してもよい。
【0016】
グラフト重合体(A2)は、ビニル系重合体(A1)の存在下にて、ビニル系単量体成分(m2)をグラフト重合して得られる重合体である。
グラフト重合体(A2)は、ビニル系重合体(A1)部分と、ビニル系単量体成分(m2)が重合した重合体(m21)部分とからなる。
なお、グラフト重合体(A2)においては、ビニル系重合体(A1)にビニル系単量体成分(m2)がどのように重合しているか、特定することは困難である。例えば、重合体(m21)としては、ビニル系重合体(A1)に結合したものと、ビニル系重合体(A1)に結合していないものとが存在する。また、ビニル系重合体(A1)に結合した重合体(m21)の分子量、構成単位の割合等を特定することも困難である。すなわち、グラフト重合体(A2)をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情(不可能・非実際的事情)が存在する。
【0017】
ビニル系単量体成分(m2)は、重合性不飽和二重結合を有するビニル系単量体を1種以上含む成分である。ビニル系単量体成分(m2)に含まれるビニル系単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸エステル、シアン化ビニル化合物、芳香族ビニル化合物、N-置換マレイミド、マレイン酸などが挙げられる。これら(メタ)アクリル酸エステル、シアン化ビニル化合物、芳香族ビニル化合物、N-置換マレイミドとしては、ビニル系重合体(A1)の説明において先に例示した(メタ)アクリル酸エステル、シアン化ビニル化合物、芳香族ビニル化合物、N-置換マレイミドがそれぞれ挙げられる。
これらのビニル系単量体は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0018】
成形品の機械特性が向上する観点から、ビニル系単量体成分(m2)はシアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物とを含むことが好ましく、特に、アクリロニトリルとスチレンとを含むことがより好ましい。
シアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物とを併用する場合、シアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物との割合は、シアン化ビニル化合物が10~60質量%、芳香族ビニル化合物が40~90質量%であることが好ましく、シアン化ビニル化合物が15~55質量%、芳香族ビニル化合物が45~85質量%であることがより好ましく、シアン化ビニル化合物が20~50質量%、芳香族ビニル化合物が50~80質量%であることがさらに好ましい。ただし、シアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物との合計を100質量%とする。
【0019】
グラフト重合体(A2)としては、アクリロニトリル-スチレン-アルキル(メタ)アクリレート共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂、SAN樹脂)などが好ましい。
【0020】
グラフト重合体(A2)は、ビニル系重合体(A1)の存在下にて、ビニル系単量体成分(m2)をグラフト重合して得られる。
重合方法としては、反応が安定して進行するように制御可能である点から、乳化重合法が好ましい。
乳化重合は、通常、ラジカル重合開始剤及び乳化剤を用いて行われる。例えば、ビニル系重合体(A1)と水と乳化剤とを含むビニル系重合体(A1)のラテックスにビニル系単量体成分(m2)を加え、ラジカル重合開始剤の存在下でビニル系単量体成分(m2)をラジカル重合させる。
ラジカル重合を行う際には、各種公知の連鎖移動剤を添加してもよい。
【0021】
ビニル系重合体(A1)とビニル系単量体成分(m2)との割合は、ビニル系重合体(A1)が10~80質量%、ビニル系単量体成分(m2)が20~90質量%であることが好ましく、ビニル系重合体(A1)が30~70質量%、ビニル系単量体成分(m2)が30~70質量%であることがより好ましい。ただし、ビニル系重合体(A1)とビニル系単量体成分(m2)との合計を100質量%とする。
【0022】
熱可塑性樹脂の平均粒子径は300μm以下が好ましく、250μm以下がより好ましい。特に、熱可塑性樹脂が(メタ)アクリル酸エステル単位を含む場合、熱可塑性樹脂の平均粒子径は1μm未満が好ましく、0.08~0.6μmがより好ましく、0.1~0.5μmがさらに好ましい。
熱可塑性樹脂の平均粒子径は、例えば熱可塑性樹脂を乳化重合で製造する場合、乳化剤の使用量により制御できる。具体的には、乳化剤の使用量を多くすると、熱可塑性樹脂の平均粒子径は小さくなる傾向にある。
【0023】
(A)成分は、成形品の耐衝撃性等の機械特性が向上する観点からビニル系重合体(A1)とグラフト重合体(A2)とを含むことがより好ましい。
ビニル系重合体(A1)とグラフト重合体(A2)とを併用する場合、ビニル系重合体(A1)とグラフト重合体(A2)との割合は、ビニル系重合体(A1)が30~90質量%、グラフト重合体(A2)が10~70質量%であることが好ましく、ビニル系重合体(A1)が40~85質量%、グラフト重合体(A2)が15~60質量%であることがより好ましく、ビニル系重合体(A1)が50~80質量%、グラフト重合体(A2)が20~50質量%であることがさらに好ましい。ただし、ビニル系重合体(A1)とグラフト重合体(A2)との合計を100質量%とする。
【0024】
(A)成分の含有量は、熱可塑性樹脂組成物の総質量に対して40~90質量%であり、45~85質量%が好ましく、50~80質量%がより好ましい。(A)成分の含有量が上記下限値以上であれば、熱可塑性樹脂組成物の成形性が高まる。加えて、成形外観が良好な成形品が得られる。(A)成分の含有量が上記上限値以下であれば、(B)成分及び(C)成分を充分に配合できるので、成形品の低光沢性及び低写像性がより高まる。
【0025】
<(B)成分>
(B)成分は、酸基変性ゴム、酸基変性グラフト、酸基変性アクリロニトリル-スチレン共重合体、エポキシ変性ゴム、エポキシ変性グラフト、エポキシ変性アクリロニトリル-スチレン共重合体からなる群より選ばれる1種以上である。
なお、以下の明細書において、アクリロニトリル-スチレン共重合体を「SAN樹脂」ともいう。
【0026】
酸基変性ゴムは、酸基含有化合物で変性されたゴムである。
酸基変性ゴムは、未変性ゴムと酸基含有化合物を共重合することで得られる。
未変性ゴムとしては、例えばアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン-アルキル(メタ)アクリレート共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル-エチレン-プロピレン-ジエン-スチレン共重合体(AES樹脂)等の樹脂などが挙げられる。これらの未変性ゴムは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
酸基含有化合物としては、例えば(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、マレイン酸モノアミドなどが挙げられる。これらの酸基含有化合物は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
酸基変性グラフトは、酸基含有化合物で変性されたグラフト重合体である。
酸基変性グラフトは、ビニル系重合体(B1)の存在下にて酸基含有化合物とビニル系単量体成分(m3)をグラフト重合することで得られる。
ビニル系重合体(B1)としては、(A)成分の説明において先に例示したビニル系重合体(A1)が挙げられる。
酸基含有化合物としては、酸基変性ゴムの説明において先に例示した酸基含有化合物が挙げられる。
【0028】
ビニル系単量体成分(m3)は、重合性不飽和二重結合を有するビニル系単量体を1種以上含む成分である。
ビニル系単量体成分(m3)に含まれるビニル系単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸エステル、シアン化ビニル化合物、芳香族ビニル化合物、N-置換マレイミド、マレイン酸などが挙げられる。これら(メタ)アクリル酸エステル、シアン化ビニル化合物、芳香族ビニル化合物、N-置換マレイミドとしては、ビニル系重合体(A1)の説明において先に例示した(メタ)アクリル酸エステル、シアン化ビニル化合物、芳香族ビニル化合物、N-置換マレイミドがそれぞれ挙げられる。これらのビニル系単量体は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
成形品の機械特性が向上する観点から、ビニル系単量体成分(m3)はシアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物とを含むことが好ましく、特に、アクリロニトリルとスチレンとを含むことがより好ましい。
【0029】
酸基変性アクリロニトリル-スチレン共重合体(酸基変性SAN樹脂)は、酸基含有化合物で変性されたSAN樹脂である。
酸基変性SAN樹脂としては、例えば(メタ)アクリル酸変性SAN樹脂、マレイン酸変性SAN樹脂、イタコン酸変性SAN樹脂などが挙げられる。これらの中でも、重合安定性の観点から、(メタ)アクリル酸変性SAN樹脂が好ましい。
酸基変性SAN樹脂は、SAN樹脂に酸基含有化合物を付加反応させることで得られる。具体的には、酸基含有化合物とアクリロニトリルとスチレンとを重合することで得られる。酸基含有化合物としては、酸基変性ゴムの説明において先に例示した酸基含有化合物が挙げられる。
【0030】
エポキシ変性ゴムは、エポキシ基含有化合物で変性されたゴムである。
エポキシ変性ゴムは、未変性ゴムとエポキシ基含有化合物を共重合することで得られる。
未変性ゴムとしては、酸基変性ゴムの説明において先に例示した未変性ゴムが挙げられる。
エポキシ基含有化合物としては、例えば(メタ)アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、(4-ビニルベンジル)グリシジルエーテルなどが挙げられる。これらのエポキシ基含有化合物は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
エポキシ変性グラフトは、エポキシ基含有化合物で変性されたグラフト重合体である。
エポキシ変性グラフトは、ビニル系重合体(B2)の存在下にてエポキシ基含有化合物とビニル系単量体成分(m4)をグラフト重合することで得られる。
ビニル系重合体(B2)としては、(A)成分の説明において先に例示したビニル系重合体(A1)が挙げられる。
エポキシ基含有化合物としては、エポキシ変性ゴムの説明において先に例示したエポキシ基含有化合物が挙げられる。
【0032】
ビニル系単量体成分(m4)は、重合性不飽和二重結合を有するビニル系単量体を1種以上含む成分である。
ビニル系単量体成分(m4)に含まれるビニル系単量体は、ビニル系単量体成分(m3)に含まれるビニル系単量体と同様であり、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
成形品の機械特性が向上する観点から、ビニル系単量体成分(m4)はシアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物とを含むことが好ましく、特に、アクリロニトリルとスチレンとを含むことがより好ましい。
【0033】
エポキシ変性アクリロニトリル-スチレン共重合体(酸基変性SAN樹脂)は、エポキシ基含有化合物で変性されたSAN樹脂である。
エポキシ変性SAN樹脂としては、例えばアリルグリシジルエーテル変性SAN樹脂、グリシジル(メタ)アクリレート変性SAN樹脂などが挙げられる。
エポキシ変性SAN樹脂は、エポキシ基含有化合物と、アクリロニトリルと、スチレンとを重合することで得られる。エポキシ基含有化合物としては、エポキシ変性ゴムの説明において先に例示したエポキシ基含有化合物が挙げられる。
【0034】
酸基変性ゴムの平均粒子径は0.08~0.5μmが好ましく、0.1~0.3μmがより好ましい。
酸基変性グラフトの平均粒子径は0.1~0.52μmが好ましく、0.12~0.32μmがより好ましい。
酸基変性SAN樹脂の平均粒子径は0.05~3μmが好ましく、0.08~2.5μmがより好ましい。
エポキシ変性ゴムの平均粒子径は0.08~0.5μmが好ましく、0.1~0.3μmがより好ましい。
エポキシ変性グラフトの平均粒子径は0.1~0.52μmが好ましく、0.12~0.32μmがより好ましい。
エポキシ変性SAN樹脂の平均粒子径は0.05~3μmが好ましく、0.08~2.5μmがより好ましい。
【0035】
<(C)成分>
(C)成分は、平均粒子径が2~35μmである架橋硬質樹脂(C1)及び平均粒子径が2~35μmである無機粒子(C2)の少なくとも一方である。
【0036】
架橋硬質樹脂(C1)としては、例えばアクリル系架橋粒子、スチレン系架橋粒子などが挙げられる。これらの中でも、低写像性の観点から、アクリル系架橋粒子が好ましい。
アクリル系架橋粒子は、架橋剤の存在下で、アクリル系単量体を重合することで得られる。アクリル系単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、ビニル系重合体(A1)の説明において先に例示した(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。これらアクリル系単量体は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
架橋剤としては、例えばメタクリル酸アリル、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル、ジビニルベンゼン、ジメタクリル酸エチレングリコールジエステル、ジメタクリル酸プロピレングリコールジエステル、ジメタクリル酸1,3-ブチレングリコールジエステル、ジメタクリル酸1,4-ブチレングリコールジエステルなどが挙げられる。これら架橋剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、アクリル系単量体を重合する際には、アクリル系単量体と共重合可能な単量体(他の単量体)を併用してもよい。他の単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等シアン化ビニル化合物などが挙げられる。これら他の単量体は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
架橋硬質樹脂(C1)の平均粒子径は、2~35μmであり、2~30μmが好ましく、5~30μmがより好ましく、5~25μmがさらに好ましく、7~20μmが特に好ましい。架橋硬質樹脂(C1)の平均粒子径が上記範囲内であれば、成形品に凸部が形成されやすくなり、成形品の低写像性が高まる。
なお、架橋硬質樹脂(C1)として市販品を用いる場合、架橋硬質樹脂(C1)の平均粒子径としてカタログ値を採用してもよい。
【0038】
無機粒子(C2)としては、シリカ、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、酸化チタンなどが挙げられる。
これら無機粒子(C2)は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
無機粒子(C2)の平均粒子径は、2~35μmであり、2~30μmが好ましく、5~30μmがより好ましく、5~25μmがさらに好ましく、7~20μmが特に好ましい。無機粒子(C2)の平均粒子径が上記範囲内であれば、成形品に凸部が形成されやすくなり、成形品の低写像性が高まる。
なお、無機粒子(C2)として市販品を用いる場合、無機粒子(C2)の平均粒子径としてカタログ値を採用してもよい。
【0040】
(B)成分及び(C)成分の含有量の合計は、熱可塑性樹脂組成物の総質量に対して、10~60質量%であり、15~55質量%が好ましく、20~50質量%がより好ましい。(B)成分及び(C)成分の含有量の合計が上記下限値以上であれば、成形品に凹部と凸部が形成されやすくなり、成形品の低光沢性及び低写像性が高まる。(B)成分及び(C)成分の含有量の合計が上記上限値以下であれば、熱可塑性樹脂組成物の成形性が高まる。加えて、成形外観が良好な成形品が得られる。
【0041】
(B)成分/(C)成分で表される質量比が0.1~10であり、0.5~5が好ましく、1~3がより好ましい。前記質量比が上記範囲内であれば、低光沢性及び低写像性をより良好に維持できる。(C)成分に対して(B)成分が少なすぎる、すなわち前記質量比が0.1を下回ると、低光沢性が低下しやすくなる。(C)成分に対して(B)成分が多すぎる、すなわち前記質量比が10を上回ると、低写像性が低下しやすくなる。
【0042】
<任意成分>
任意成分としては、例えば酸化防止剤、光安定剤等、可塑剤、離型剤、滑剤、染料、顔料、帯電防止剤、難燃剤、無機充填剤、金属粉末などが挙げられる。これら任意成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
<製造方法>
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、(A)成分と、(B)成分と、(C)成分とを含む混合物(X)を溶融混練する工程(溶融混練工程)を含む。
混合物(X)は、必要に応じて任意成分を含んでいてもよい。
混合物(X)を溶融混練する方法は特に制限はなく、一般的な混合・混練方法を何れも採用することができ、例えば、軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサ、混練ロール等にて混練した後、ペレタイザ等で切断しペレット化する方法などが挙げられる。
熱可塑性樹脂組成物の製造は、回分式、連続式のいずれで行ってもよい。また、各成分の混合順序についても特に制限はなく、全ての成分が十分に均一に混合されればよい。
【0044】
混合物(X)を溶融混練することにより、(B)成分同士が熱により反応して化学的に凝集する。(B)成分同士が凝集した状態の熱可塑性樹脂組成物を成形すると、(B)成分同士の凝集物により成形品の表面に複数の凹部が形成されると共に、(C)成分により成形品の表面に複数の凸部が形成される。
これら凸部と凹部の存在により、成形品の低光沢性及び低写像性が高まる。
【0045】
<作用効果>
以上説明した本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上述した特定量の(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含むので、低光沢性及び低写像性に優れ、成形外観が良好な成形品が得られる。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法によれば、上述した熱可塑性樹脂組成物を容易に製造できる。
【0046】
「成形品」
本発明の成形品は、本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いたものである。
以下、図1、2を参照しながら、本発明の成形品の一実施形態について説明する。
なお、図1、2において、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせてある。
【0047】
本実施形態の成形品10は、表面に複数の凹部11と複数の凸部12とを有する。
ここで、「表面」とは、艶消し外観が求められる面のことである。「凹部」とは、前記表面のうち、平坦な面13を基準としたときに、この平坦な面(以下、「基準面」ともいう。)13よりも凹んでいる部分である。「凸部」とは、平坦な面13よりも突出している部分である。すなわち、成形品10の表面は、複数の凹部11及び複数の凸部12に加えて、平坦な面13を有する。
【0048】
凹部11の平均長径は50μm以上が好ましく、50~500μmがより好ましく、50~400μmがさらに好ましく、50~300μmがさらに好ましく、70~300μmが特に好ましく、90~300μmが最も好ましい。凹部11の平均長径が上記下限値以上であれば、成形品の低光沢性がより高まる。凹部11の平均長径が上記上限値以下であれば、成形品の低写像性がより高まる。
凹部11の平均長径は、レーザー顕微鏡により凹部11の長径r1を50点測定し、これらの値を平均したものである。
なお、凹部11の長径r1は、平坦な面13よりも凹んでいる部分の最大径である。
【0049】
凹部11の平均深さは0.5~10μmが好ましく、1~5μmがより好ましく、2~4μmがさらに好ましい。凹部11の平均深さが上記下限値以上であれば、成形品の低光沢性がより高まる。凹部11の平均深さが上記上限値以下であれば、成形品の低写像性がより高まる。
凹部11の平均深さは、レーザー顕微鏡により平坦な面13から凹部11の最低部11aまでの垂直距離h1を50点測定し、これらの値を平均したものである。
【0050】
凸部12の平均長径は2~35μmが好ましく、2~30μmがより好ましく、5~30μmがさらに好ましく、5~25μmが特に好ましく、7~20μmが最も好ましい。凸部12の平均長径が上記下限値以上であれば、成形品の低光沢性がより高まる。凸部12の平均長径が上記上限値以下であれば、成形品の低写像性がより高まる。
凸部12の平均長径は、レーザー顕微鏡により凸部12の長径r2を50点測定し、これらの値を平均したものである。
なお、凸部12の長径r2は、平坦な面13よりも突出している部分の最大径である。
【0051】
凸部12の平均高さは1~100μmが好ましく、1~50μmがより好ましく、1~30μmがさらに好ましく、1~10μmが特に好ましく、1~5μmが最も好ましい。凸部12の平均高さが上記下限値以上であれば、成形品の低光沢性がより高まる。凸部12の平均高さが上記上限値以下であれば、成形品の低写像性がより高まる。
凸部12の平均高さは、レーザー顕微鏡により平坦な面13から凸部12の最頂部12aまでの垂直距離h2を50点測定し、これらの値を平均したものである。
【0052】
凸部12は、凹部11の中に存在していてもよいし、平坦な面13上に存在していてもよいが、成形品の低光沢性及び低写像性がより高まる観点から、複数の凹部11の少なくとも1つの中に、複数の凸部12の少なくとも1つが存在していることが好ましい。
【0053】
成形品10の表面の算術平均粗さRaは0.60μm以上が好ましく、0.70μm以上がより好ましい。算術平均粗さRaが上記下限値以上であれば、成形品の低光沢性がより高まる。算術平均粗さRaの上限値については特に制限されないが、通常は20.00μm程度である。すなわち、算術平均粗さRaは0.60~20.00μmが好ましく、0.60~15.00μmがより好ましく、0.70~10.00μmがさらに好ましい。
算術平均粗さRaは、JIS B 0601:2013に準拠して測定される。
【0054】
成形品10の表面の展開面積比Sdrは0.10以上が好ましい。展開面積比Sdrが上記下限値以上であれば、成形品の低光沢性がより高まる。展開面積比Sdrの上限値については特に制限されないが、通常は2.00程度である。すなわち、展開面積比Sdrは0.10~2.00がより好ましく、0.10~1.00がさらに好ましく、0.10~0.80が特に好ましい。
展開面積比Sdrは、成形品10の表面の展開面積(凹凸が反映された表面積)が、成形品10の表面の面積(凹凸が反映されていない面積)に対してどれだけ増大しているかを示す指標である。展開面積比Sdrは、ISO 25178-2:2012に準拠して測定される。
【0055】
<成形品の製造方法>
成形品10は、本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形することで得られる。
上述したように、本発明の熱可塑性樹脂組成物は(A)成分と、(B)成分と、(C)成分とを含む混合物(X)を溶融混練することにより得られるが、混合物(X)を溶融混練すると(B)成分同士が凝集する。(B)成分同士が凝集した状態の熱可塑性樹脂組成物を成形すると、(B)成分同士の凝集物により成形品の表面に複数の凹部が形成されると共に、(C)成分により成形品の表面に複数の凸部が形成され、例えば図1、2に示すような表面構造を有する成形品が得られる。
【0056】
成形方法としては、公知の成形方法を利用でき、例えば、射出成形法、プレス成形法、押出成形法、真空成形法、ブロー成形法等が挙げられる。これらの中でも、複数の凹部11の少なくとも1つの中に、複数の凸部12の少なくとも1つが存在している成形品10が容易に得られる観点から、射出成形が好ましい。
成形品10を射出成形で製造する場合、凹部11の長径r1は流動方向における凹部11の長さであり、射出速度が速くなるほど凹部11は細長くなる、すなわち長径r1が大きくなる傾向にある。なお、図1中の矢印Fは射出成形における流動方向である。
【0057】
<作用効果>
以上説明した本発明の成形品は、本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いたものであり、表面に複数の凹部と凸部とを有するので、低光沢性及び低写像性に優れ、成形外観が良好である。すなわち、本発明の成形品は蛍光灯の光や外光などの映り込みによる像が不鮮明であり、艶消し外観に優れた艶消し成形品である。具体的に、本発明の成形品は、光沢度が30%以下になりやすく、鮮映度が15%以下になりやすい。光沢度及び鮮映度の詳しい測定条件は後述する実施例に記載のとおりである。
【0058】
本発明の成形品は、自動車内装用部品、家具、電気機器のハウジング、住宅用樹脂化建材、日用品などとして好適である。
自動車内装用部品としては、例えばダッシュボード、インストルメントパネル、シートベルトのバックル、アッパーボックス、カップホルダー、ドアトリム、ドアノブ、ドアポケット、ドアライニング、ピラーガーニッシュ、コンソール、コンソールボックス、ルームミラー、サンバイザー、センターパネル、ベンチレータ、エアコン、エアコンパネル、ヒーターコンパネル、板状羽根、バルブシャッター、ルーバー等、ダクト、メーターパネル、メーターケース、メーターバイザー、インパネアッパーガーニッシュ、インパネロアガーニッシュ、A/Tインジケーター、オンオフスイッチ類(スライド部、スライドプレート)、スイッチベゼル、グリルフロントデフロスター、グリルサイドデフロスター、リッドクラスター、カバーインストロアー等のマスク類(マスクスイッチ、マスクラジオ等)、ポケット類(ポケットデッキ、ポケットカード等)、ステアリングホイールホーンパッド、カップホルダー、スイッチ部品、スイッチボックス、アシストグリップ等のグリップ、ハンドル、グラブハンドルカーナビゲーション用外装部品、カメラカバー、カメラモニタリングシステム、ヘッドアップディスプレイ、リアエンターテイメントシステム、グローブボックス、グローブボックスラチェット、小物入れ、小物入れ等の蓋にあるラチェット、ルームミラー、ルームランプ、アームレスト、スピーカーグリル、ナビパネル、オーバーヘッドコンソール、クロックインジケーター、SOSスイッチなどが挙げられる。
家具としては、例えばキャビネット、スツールなどが挙げられる。
電気機器のハウジングとしては、例えば掃除機ハウジング、テレビジョンハウジング、エアコンハウジングなどが挙げられる。
住宅用樹脂化建材としては、例えばフェンス、スクリーン、門柱、デッキ、ガーデンファニチャー、カーポート、破風板、壁付け柱、雨樋、窓枠、間柱、各種ホースカバー、外壁化粧材などが挙げられる。
日用品としては、例えば風呂蓋、すのこ、バケツ、布団ケース、棚板、棚受け、額縁、トレー、トイレタリー用品などが挙げられる。
【実施例
【0059】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。なお、以下の例中の「%」及び「部」は明記しない限りは質量基準である。
以下の例における各種測定・評価方法と、各成分は以下の通りである。
【0060】
「測定・評価」
<平均粒子径の測定>
動的光散乱式粒子径分布測定装置(日機装株式会社製、「Nanotrac UPA-EX150」)を用い、動的光散乱法によってラテックスにおける重合体の体積基準の粒子径分布を測定し、粒子径分布から平均粒子径(体積平均粒子径)を求めた。
【0061】
<低光沢性の評価>
デジタル変角光沢計(スガ試験機株式会社製、「UGV-5D」)を使用して、JIS Z 8741で定義される、入射角60°における成形品の表面の光沢度(Gs)を測定した。光沢度が低いほど、低光沢性に優れる、すなわち艶消し外観として優れる。
【0062】
<低写像性の評価>
写像性測定装置(スガ試験機株式会社製、「ICM-1DP型」)を使用して、スリット間隔1mm、反射角度60°の条件で成形品の表面の鮮映度を測定した。鮮映度が小さいほど、低写像性に優れる、すなわち艶消し外観として優れる。
【0063】
<成形外観の評価>
成形品の表面外観を目視にて観察し、以下の評価基準にて成形外観を評価した。
〇:ブツやシルバーストリークが発生していない。
△:ブツやシルバーストリークがわずかに発生している。
×:ブツやシルバーストリークが目立つ。
【0064】
「(A)成分」
<製造例1:ビニル系重合体(A1-1)の製造>
攪拌装置、温度計及びジャケット式温度調節器を有した反応器に、脱イオン水400部、アルケニルコハク酸ジカリウム(花王株式会社製、「ラテムルASK」)0.2部、アクリル酸n-ブチル100部、メタクリル酸アリル0.1部、t-ブチルヒドロパーオキシド0.2部を撹拌下で仕込んだ。次いで、反応器内を攪拌しながら窒素置換した後、内容物を55℃まで昇温した。内温55℃にて、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.3部、硫酸第一鉄七水和物0.00016部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.00048部、脱イオン水0.5部からなる水溶液を添加し、重合を開始させた。重合発熱が確認された後、ジャケット温度を75℃とし、重合発熱が確認されなくなるまで重合を継続し、さらに1時間保持し、平均粒子径が0.1μmのビニル系重合体(A1-1)のラテックスを得た。組成を表1に示す。
【0065】
<製造例2:ビニル系重合体(A1-2)の製造>
攪拌装置、温度計及びジャケット式温度調節器を有した反応器に、脱イオン水100部、アルケニルコハク酸ジカリウム(花王株式会社製、「ラテムルASK」)0.2部、アクリロニトリル34部、スチレン66部、メタクリル酸アリル0.1部、t-ドデシルメルカプタン0.5部を撹拌下で仕込んだ。反応器内を攪拌しながら、内容物を70℃まで昇温した。反応器内が懸濁状態であることを確認した後、内温70℃にて、過硫酸カリウム0.1部と脱イオン水1.4部からなる水溶液を添加した。ジャケット温度をその温度のまま維持すると30分後位から急激に発熱し、内温は85℃に上昇した。発熱が収まってから内温が70℃になった後、その温度を1時間保持し、その後30℃に冷却した。これにより得られた懸濁液を脱水し、乾燥して、平均粒子径が200μmのビニル系重合体(A1-2)を得た。組成を表1に示す。
得られたビニル系重合体(A1-2)0.2gをN,N-ジメチルホルムアミドの100mLに溶解した溶液について、25℃における還元粘度を測定したところ、0.61dl/gであった。
【0066】
<製造例3:ビニル系重合体(A1-3)の製造>
アクリル酸n-ブチルをメタクリル酸メチルに変更した以外は、製造例1と同様にして、平均粒子径が0.1μmのビニル系重合体(A1-3)のラテックスを得た。組成を表1に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
<製造例4:グラフト重合体(A2-1)の製造>
攪拌装置、温度計及びジャケット式温度調節器を有した反応器に、脱イオン水(ビニル系重合体ラテックス中の水を含む)210部、ビニル系重合体(A1-1)のラテックス50部(固形分として)、アルケニルコハク酸ジカリウム(花王株式会社製、「ラテムルASK」)0.9部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート)0.3部を仕込んだ。次いで、反応器内を攪拌しながら窒素置換した後、内容物を70℃まで昇温した。次いで、アクリロニトリル17部、スチレン33部、t-ブチルヒドロパーオキシド0.2部からなる混合液を100分間にわたって滴下しながら、80℃まで昇温した。滴下終了後、温度80℃の状態を30分間保持した後、冷却し、グラフト重合体(A2-1)のラテックスを得た。
次いで、1.5%硫酸水溶液100部を80℃に加熱し、該水溶液を攪拌しながら、該水溶液にグラフト重合体(A2-1)のラテックス100部を徐々に滴下し、グラフト重合体(A2-1)を固化させ、さらに95℃に昇温して10分間保持した。次いで、固化物を脱水、洗浄、乾燥し、平均粒子径が0.12μmのグラフト重合体(A2-1)を得た。組成を表2に示す。
【0069】
<製造例5:グラフト重合体(A2-2)の製造>
ビニル系重合体(A1-1)のラテックスをビニル系重合体(A1-2)のラテックスに変更した以外は、製造例4と同様にして、平均粒子径が210μmのグラフト重合体(A2-2)を得た。組成を表2に示す。
【0070】
<製造例6:グラフト重合体(A2-3)の製造>
ビニル系重合体(A1-1)のラテックスをビニル系重合体(A1-3)のラテックスに変更した以外は、製造例4と同様にして、平均粒子径が0.12μmのグラフト重合体(A2-3)を得た。組成を表2に示す。
【0071】
【表2】
【0072】
「(B)成分」
<製造例7:エポキシ変性グラフト(B-1)の製造>
攪拌装置、温度計及びジャケット式温度調節器を有した反応器に、脱イオン水(ビニル系重合体ラテックス中の水を含む)210部、ビニル系重合体(A1-1)のラテックス50部(固形分として)、アルケニルコハク酸ジカリウム(花王株式会社製、「ラテムルASK」)0.9部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート)0.3部を仕込んだ。次いで、反応器内を攪拌しながら窒素置換した後、内容物を70℃まで昇温した。次いで、アクリロニトリル17部、スチレン33部、メタクリル酸グリシジル0.5部、t-ブチルヒドロパーオキシド0.2部からなる混合液を100分間にわたって滴下しながら、80℃まで昇温した。滴下終了後、温度80℃の状態を30分間保持した後、冷却し、エポキシ変性ゴム(B-1)のラテックスを得た。
次いで、1.5%硫酸水溶液100部を80℃に加熱し、該水溶液を攪拌しながら、該水溶液にエポキシ変性ゴム(B-1)のラテックス100部を徐々に滴下し、エポキシ変性ゴム(B-1)を固化させ、さらに95℃に昇温して10分間保持した。次いで、固化物を脱水、洗浄、乾燥し、平均粒子径が0.12μmのエポキシ変性グラフト(B-1)を得た。組成を表3に示す。
【0073】
<製造例8:エポキシ変性グラフト(B-2)の製造>
ビニル系重合体(A1-1)のラテックスをビニル系重合体(A1-2)のラテックスに変更した以外は、製造例7と同様にして、平均粒子径が0.12μmのエポキシ変性グラフト(B-2)を得た。組成を表3に示す。
【0074】
<製造例9:エポキシ変性グラフト(B-3)の製造>
ビニル系重合体(A1-1)のラテックスをビニル系重合体(A1-3)のラテックスに変更した以外は、製造例7と同様にして、平均粒子径が0.12μmのエポキシ変性グラフト(B-3)を得た。組成を表3に示す。
【0075】
【表3】
【0076】
<製造例10:エポキシ変性SAN樹脂(B-4)の製造>
蒸留水150部に高分子分散剤としてアルケニルコハク酸カリウム0.003部、硫酸ナトリウム0.5部を反応釜に仕込み攪拌した。これにメタクリル酸グリシジル3部、アクリロニトリル24.2部、スチレン72.8部、t-ドデシルメルカプタン0.25部、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.18部の混合物を加え懸濁液状にした後、昇温し、内温が77℃になった時点で重合を開始した。重合発熱ピークを温度計にて確認した後、内温95℃の状態で120分保持した。その後、冷却し、得られたスラリー状の生成物を濾過した後、水洗、乾燥させて、平均粒子径が2μmのビーズ状のエポキシ変性SAN樹脂(B-4)を得た。
【0077】
<製造例11:酸基変性SAN樹脂(B-5)の製造>
メタクリル酸グリシジルをメタクリル酸に変更した以外は、製造例10と同様にして、平均粒子径が2μmのビーズ状の酸基変性SAN樹脂(B-5)を得た。この酸基変性SAN樹脂(B-5)は、メタクリル酸変性SAN樹脂である。
【0078】
「(C)成分」
<架橋硬質樹脂(C1-1)>
架橋硬質樹脂(C1-1)として、平均粒子径が10μmの架橋アクリル単分散粒子(綜研化学株式会社製、「MX-1000」)を用いた。
【0079】
<無機粒子(C2-1)>
無機粒子(C2-1)として、平均粒子径が11μmのシリカ(AGC株式会社製、「サンスフェアH-121」)を用いた。
【0080】
「実施例1~19、比較例1~5」
表4~7に示す種類と量の(A)成分、(B)成分及び(C)成分を、ヘンシェルミキサを用いて混合した。得られた混合物(X)を、スクリュー式押出機(株式会社日本製鋼所製、「TEX-30α型二軸押出機」)を用い、250℃の条件で溶融混練した。これにより得た溶融混練物を冷却後、ペレタイザを用いてペレット化して、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を得た。なお、表4~7中の空欄は、その成分が配合されていないことを示す。
得られた熱可塑性樹脂組成物を、射出成形機(株式会社日本製鋼所製)を用いて成形して、100mm四方、厚み3mmの試験片(成形品)を作製した。
得られた成形品について、低光沢性、低写像性及び成形外観を評価した。これらの結果を表4~7に示す。
【0081】
【表4】
【0082】
【表5】
【0083】
【表6】
【0084】
【表7】
【0085】
表4~6に示すように、各実施例の成形品は光沢性及び写像性が充分に低く、艶消し外観に優れていた。また、各実施例の成形品は成形外観も良好であった。
これに対し、表7に示すように、各比較例の成形品では低光沢性、低写像性及び成形外観のいずれかが不充分であった。具体的には、比較例1、2の成形品は、表面に凹部又は凸部が形成されておらず、低光沢性及び低写像性の少なくとも一方が不充分であった。比較例3の成形品は、(B)成分/(C)成分で表される質量比が小さいため、低光沢性が不充分であった。比較例4の成形品は、(A)成分の含有量が多く、(B)成分及び(C)成分の含有量の合計が少ないため、低光沢性及び低写像性が不充分であった。比較例5の成形品は、(A)成分の含有量が少なく、(B)成分及び(C)成分の含有量の合計が多いため、成形外観が不充分であった。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の成形品は、低光沢性及び低写像性に優れ、成形外観が良好であり、自動車内装用部品(ダッシュボード、インストルメントパネル等)、家具、電気機器のハウジング、住宅用樹脂化建材、日用品などとしての利用価値は極めて高い。
【符号の説明】
【0087】
10 成形品
11 凹部
11a 最低部
12 凸部
12a 最頂部
13 平坦な面(基準面)
r1 長径
r2 長径
h1 垂直距離
h2 垂直距離
図1
図2