(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】オーディオ回路、それを用いた電子機器および車載オーディオシステム
(51)【国際特許分類】
H03F 3/217 20060101AFI20231120BHJP
H03F 3/185 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
H03F3/217
H03F3/185
(21)【出願番号】P 2019198287
(22)【出願日】2019-10-31
【審査請求日】2022-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】酒井 光輝
(72)【発明者】
【氏名】荒木 秀夫
【審査官】竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-029185(JP,A)
【文献】特表2004-538694(JP,A)
【文献】特開2006-129366(JP,A)
【文献】特開2010-157941(JP,A)
【文献】国際公開第2016/194651(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 3/00ー3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
D級アンプ回路を備え、
前記D級アンプ回路は、
正の第1電源電圧
および接地電圧が供給されるプッシュプルの出力段と、
前記第1電源電圧
および前記接地電圧が供給され、入力オーディオ信号および前記出力段の出力信号に応じたフィードバック信号を受ける積分器と、
前記第1電源電圧
および前記接地電圧が供給され、前記積分器の出力をPWM
(Pulse Width Modulation)信号に変換するコンパレータと、
前記第1電源電圧より低い
正の第2電源電圧と前記
接地電圧が供給され、前記コンパレータの出力
である前記PWM信号にもとづいて前記出力段を駆動するドライバと、
を含むことを特徴とするオーディオ回路。
【請求項2】
前記入力オーディオ信号はアナログ信号であることを特徴とする請求項1に記載のオーディオ回路。
【請求項3】
デジタルオーディオ信号を受信するオーディオインタフェース回路と、
前記デジタルオーディオ信号をアナログの前記入力オーディオ信号に変換するD/Aコンバータと、
前記オーディオインタフェース回路が受信するマスタークロックを分周し、三角波またはのこぎり波の周期信号を生成する分周器と、
をさらに備え、
前記コンパレータは、前記積分器の出力を、前記周期信号と比較し、前記PWM信号を生成することを特徴とする請求項2に記載のオーディオ回路。
【請求項4】
アナログオーディオ信号を調節可能なゲインで増幅し、前記入力オーディオ信号を生成する入力ゲインコントロール回路と、
所定の周波数を有する三角波またはのこぎり波の周期信号を生成するオシレータと、
をさらに備え、
前記コンパレータは、前記積分器の出力を前記周期信号と比較し、前記PWM信号を生成することを特徴とする請求項2に記載のオーディオ回路。
【請求項5】
前記入力オーディオ信号はPWM
形式の信号であり、
前記コンパレータは、前記積分器の出力を所定のしきい値電圧と比較し、前記PWM信号を生成することを特徴とする請求項1に記載のオーディオ回路。
【請求項6】
デジタルオーディオ信号を受信するオーディオインタフェース回路と、
前記デジタルオーディオ信号をPWM
形式の前記入力オーディオ信号に変換するプロセッサと、
をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載のオーディオ回路。
【請求項7】
PWM
形式の前記入力オーディオ信号を受信し、前記積分器に出力するオーディオインタフェース回路をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載のオーディオ回路。
【請求項8】
ひとつの基板に一体集積化されることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のオーディオ回路。
【請求項9】
請求項1から7のいずれかに記載のオーディオ回路を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項10】
請求項1から7のいずれかに記載のオーディオ回路を備えることを特徴とする車載オーディオシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカやヘッドホンを駆動するオーディオアンプ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
スピーカやヘッドホンなどの電気音響変換素子を駆動するパワーアンプとして、高効率なD級アンプが用いられる。
図1は、D級アンプを用いたオーディオシステム100Rのブロック図である。オーディオシステム100Rは主として、スピーカ102、フィルタ104およびD級アンプ回路900を備える。
【0003】
D級アンプ回路900は、入力オーディオ信号SINに応じたデューティ比を有するパルス信号SOUTを発生する。フィルタ104は、D級アンプ回路900の出力信号SOUTの高周波成分を除去し、スピーカ102に供給する。
【0004】
図1のD級アンプ回路900は、出力段902、積分器904、コンパレータ906、ドライバ908を備える。積分器904は、入力オーディオ信号S
INと出力信号S
OUTに応じたフィードバック信号S
FBの差分を積分する。コンパレータ906は、積分器904の出力を、クロック信号CLKと比較し、パルス信号S
Dを出力する。ドライバ908は、パルス信号S
Dに応じて、出力段902を駆動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
車載用やテレビ用のオーディオシステムでは、D級アンプ回路900の電源として12~15V程度の高電圧が採用される。この場合、D級アンプ回路900の出力段902のパワートランジスタを5V耐圧のMOSFETで構成することができず、ドレインソース間耐圧が大きい(たとえば20V)DMOS(Double-Diffused MOS)で構成する必要がある。
【0007】
DMOSトランジスタは、ドレインソース間の耐圧は大きいが、ゲートソース間の耐圧は、5V程度とそれほど大きくない。DMOSトランジスタのゲートソース間の耐圧をさらに大きくしようとすると、素子サイズが大きくなるという問題がある。
図1のオーディオシステム100Rでは、ドライバ908より前段の回路ブロック(904,906,908)を3.3V系や5V系で構成することで、DMOSトランジスタのゲートソース間電圧を5V以下に抑え、DMOSトランジスタのサイズを抑制している。
【0008】
このD級アンプ回路900は、14.4V/5V=9.2dBのゲインgを有することとなる。そのため積分器904やその前段で発生するノイズや歪み、オフセット電圧がゲイン倍(×g)されて悪化されるという問題がある。
【0009】
本発明は係る課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、特性を改善したオーディオ回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のある態様は、D級アンプ回路を備えるオーディオ回路に関する。D級アンプ回路は、第1電源電圧が供給されるプッシュプルの出力段と、第1電源電圧が供給され、入力オーディオ信号および出力段の出力信号に応じたフィードバック信号を受ける積分器と、第1電源電圧が供給され、積分器の出力をPWM信号に変換するコンパレータと、第1電源電圧より低い第2電源電圧が供給され、コンパレータの出力にもとづいて出力段を駆動するドライバと、を含む。
【0011】
このD級アンプ回路のゲインは1倍となり、前段のノイズ、歪み、オフセット電圧等は増幅されないため、特性を改善できる。なお、「第1電源電圧が供給される」とは、第1電源電圧が直接供給される場合のほか、間接的に供給される場合も含む。「間接的に供給される」とは、レギュレータやバッファ、分圧回路、クランプ回路などを介して、第1電源電圧よりわずかに低い(ただし、第2電源電圧より高い)電圧レベルに安定化した中間的な電圧が供給される場合も含みうる。
【0012】
入力オーディオ信号はアナログ信号であってもよい。
【0013】
オーディオ回路は、デジタルオーディオ信号を受信するオーディオインタフェース回路と、デジタルオーディオ信号をアナログの入力オーディオ信号に変換するD/Aコンバータと、オーディオインタフェース回路が受信するマスタークロックを分周し、三角波またはのこぎり波の周期信号を生成する分周器と、をさらに備えてもよい。コンパレータは、積分器の出力を、周期信号と比較し、PWM信号を生成してもよい。この場合、オーディオインタフェース回路やD/Aコンバータにおいて発生するノイズ、歪み、オフセット電圧が、D級アンプ回路において増幅されるのを防止できる。
【0014】
オーディオ回路は、アナログオーディオ信号を調節可能なゲインで増幅し、入力オーディオ信号を生成する入力ゲインコントロール回路と、所定の周波数を有する三角波またはのこぎり波の周期信号を生成するオシレータと、をさらに備えてもよい。コンパレータは、積分器の出力を周期信号と比較し、PWM信号を生成してもよい。この場合、入力ゲインコントロール回路において発生するノイズ、歪み、オフセット電圧が、D級アンプ回路において増幅されるのを防止できる。
【0015】
入力オーディオ信号はPWM(Pulse Width Modulation)信号であってもよい。コンパレータは、積分器の出力を所定のしきい値電圧と比較し、PWM信号を生成してもよい。
【0016】
オーディオ回路は、デジタルオーディオ信号を受信するオーディオインタフェース回路と、デジタルオーディオ信号をPWM信号の入力オーディオ信号に変換するプロセッサと、をさらに備えてもよい。この場合、オーディオインタフェース回路やプロセッサにおいて発生するノイズ、歪み、オフセット電圧が、D級アンプ回路において増幅されるのを防止できる。
【0017】
オーディオ回路は、PWMオーディオ信号を受信し、積分器に出力するオーディオインタフェース回路をさらに備えてもよい。この場合、オーディオインタフェース回路において発生するノイズ、歪み、オフセット電圧が、D級アンプ回路において増幅されるのを防止できる。
【0018】
オーディオ回路は、ひとつの基板に一体集積化されてもよい。「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが基板の外部に設けられていてもよい。回路を1つのチップ上に集積化することにより、回路面積を削減することができるとともに、回路素子の特性を均一に保つことができる。
【0019】
本発明の別の態様は電子機器に関する。電子機器は、上述のいずれかのオーディオ回路を備える。
【0020】
本発明の別の態様は車載オーディオシステムに関する。車載オーディオシステムは、上述のいずれかのオーディオ回路を備える。
【0021】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。さらに、この項目(課題を解決するための手段)の記載は、本発明の欠くべからざるすべての特徴を説明するものではなく、したがって、記載されるこれらの特徴のサブコンビネーションも、本発明たり得る。
【発明の効果】
【0022】
本発明のある態様によれば、特性を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】D級アンプを用いたオーディオシステムのブロック図である。
【
図2】実施の形態に係るオーディオ回路を備えるオーディオシステムのブロック図である。
【
図3】
図3(a)、(b)は、積分器の構成例を示す回路図である。
【
図4】
図4(a)、(b)は、コンパレータの構成例を示す回路図である。
【
図5】実施例1に係るオーディオ回路の回路図である。
【
図6】実施例2に係るオーディオ回路の回路図である。
【
図7】実施例3に係るオーディオ回路の回路図である。
【
図8】実施例4に係るオーディオ回路の回路図である。
【
図9】実施の形態に係るオーディオ回路を利用した車載オーディオシステムのブロック図である。
【
図10】
図10(a)、(b)は、実施の形態に係るオーディオ回路を利用した電子機器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0025】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合や、部材Aと部材Bが、電気的な接続状態に影響を及ぼさず、あるいは機能を阻害しない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、電気的な接続状態に影響を及ぼさず、あるいは機能を阻害しない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0026】
図2は、実施の形態に係るオーディオ回路300を備えるオーディオシステム100のブロック図である。オーディオシステム100は、スピーカ102、フィルタ104およびオーディオ回路300を備える。
【0027】
D級アンプ回路200は、入力オーディオ信号S
INを受け、入力オーディオ信号S
INに応じたデューティ比を有するパルス信号S
OUTを発生する。D級アンプ回路200は、出力段202、積分器204、レベルシフト機能付きコンパレータ(以下、単にコンパレータと称する)208、ドライバ210を備え、オーディオ回路300に集積化されている。
図2には、1チャンネルの構成のみが示されるが、実際のオーディオ回路300には、複数チャンネル分のD級アンプ回路200が集積化される。
【0028】
プッシュプルの出力段202には、第1電源電圧VDDHが供給される。出力段202は、ハイサイドトランジスタMHとローサイドトランジスタMLを含むインバータである。出力段202の出力信号SOUTは、0VとVDDHの間でスイングし、フィルタ104を経由してスピーカ102に供給される。ハイサイドトランジスタMHは、NMOSトランジスタであってもよい。
【0029】
積分器204には、出力段202と同じ第1電源電圧VDDHが供給される。積分器204は、入力オーディオ信号SINおよび出力段202の出力信号SOUTに応じたフィードバック信号SFBを受け、それらの差分(誤差)に相当する信号を積分する。積分器204の入力信号SIN,SFBおよび出力信号SINTはいずれも、0~VDDHの間で変化することとなる。
【0030】
図3(a)は、積分器204の構成例を示す回路図である。積分器204は、演算増幅器OP1、キャパシタC11、抵抗R11、R12を含む。演算増幅器OP1の反転入力端子は、抵抗R11を介して入力信号S
INを受け、抵抗R12を介してフィードバック信号S
FBを受ける。演算増幅器OP1の反転入力端子には基準電圧V
REFが入力されている。
図3(b)に示すように、基準電圧V
REFは、4個の抵抗R41~R41を含む抵抗ネットワークによって生成してもよい。R41=R42=R11,R43=R44=R12の関係を満たすように抵抗値を定めることにより、振幅が異なる2つの信号S
INとS
FBが適切にスケーリング(レベルシフト)される。
【0031】
図2に戻る。コンパレータ208は、積分器204の出力S
INTをPWM信号S
PWMに変換する。コンパレータ208の入力段は第1電源電圧V
DDHで動作するが、その出力段には、第1電源電圧V
DDHより低い第2電源電圧V
DDLが供給されており、0V-V
DDLの二値を取るPWM信号S
PWMを出力する。
【0032】
図4(a)、(b)は、コンパレータ208の構成例を示す回路図である。
図4(a)のコンパレータ208は、前段の差動アンプDA1と、後段のバッファ(増幅段)BUF1を含む。この構成では、差動アンプDA1には第1電源電圧V
DDHが供給され、後段のバッファBUF1に第2電源電圧V
DDLが供給される。これにより、0V~V
DDHの範囲で電圧比較が可能となり、比較結果を示す出力信号S
PWMの振幅は0~V
DDLとなる。
【0033】
図4(b)のコンパレータ208は、前段の電圧比較器COMP1と、後段のレベルシフタ209を含む。この構成では、前段の電圧比較器COMP1には第1電源電圧V
DDHが供給され、電圧比較器COMP1は、0Vをロー、V
DDHをハイとする比較信号を出力する。後段のレベルシフタ209には、第1電源電圧V
DDHと第2電源電圧V
DDLが供給されており、電圧比較器COMP1が生成する比較信号を、0Vをロー、V
DDLをハイとする出力信号S
PWMに変換する。
【0034】
図2に戻る。ドライバ210には、第2電源電圧V
DDLが供給され、コンパレータ208の出力S
PWMにもとづいて出力段202を駆動する。
【0035】
以上がオーディオシステム100の構成である。続いてその利点を説明する。
このD級アンプ回路200のゲインは1倍となる。したがって、
図1のD級アンプよりもゲインが小さくなるため、図示しない前段の回路ブロックのノイズ、歪み、オフセット電圧等は増幅されないため、特性を改善できる。
【0036】
本発明は、
図2の回路図として把握され、あるいは上述の説明から導かれるさまざまな装置、回路に及ぶものであり、特定の構成に限定されるものではない。以下、本発明の範囲を狭めるためではなく、発明の本質や回路動作の理解を容易、明確化するために、より具体的な構成例を説明する。
【0037】
(実施例1)
図5は、実施例1に係るオーディオ回路300Aの回路図である。オーディオ回路300Aは、音源106からデジタルオーディオ信号を受信する。たとえば音源106とオーディオ回路300Aの間の、I
2S(Inter IC Sound)などのシリアルインタフェースで接続される。
【0038】
オーディオ回路300Aは、D級アンプ回路200Aに加えて、インタフェース回路301Aを含む。インタフェース回路301は、デジタルオーディオインタフェース302、D/Aコンバータ304、分周器306を備える。デジタルオーディオインタフェース302は、音源106からデジタルオーディオ信号を受信する。D/Aコンバータ304は、デジタルオーディオインタフェース302が受信したデジタルオーディオ信号をアナログの入力オーディオ信号SINに変換する。D/Aコンバータ304には、第1電源電圧VDDHと第2電源電圧VDDLが供給されており、前段のデジタルブロックは3V(あるいは5V)で動作し、出力段のアナログブロックは14.4Vで動作する。
【0039】
分周器306は、デジタルオーディオインタフェース302が受信したマスタークロックMCLKを受け、それを分周し、三角波あるいはのこぎり波の周期信号SOSCを生成する。この周期信号SOSCは、0VとVDDHの間で変化する。コンパレータ208は、積分器204の出力信号SINTを周期信号SOSCと比較し、比較結果を示すPWM信号SPWMを出力する。
【0040】
以上がオーディオ回路300Aの構成である。このオーディオ回路300Aによれば、デジタルオーディオインタフェース302やD/Aコンバータ304において発生するノイズ、歪み、オフセット電圧が、D級アンプ回路200Aにおいて増幅されるのを防止できる。
【0041】
(実施例2)
図6は、実施例2に係るオーディオ回路300Bの回路図である。オーディオ回路300Bは、音源106からデジタルオーディオ信号を受信する。たとえば音源106とオーディオ回路300Aの間の、I
2S(Inter IC Sound)などのシリアルインタフェースで接続される。
【0042】
オーディオ回路300Bのインタフェース回路301Bは、デジタルオーディオインタフェース302、PWMプロセッサ308および基準電圧源310を備える。デジタルオーディオインタフェース302は、音源106からデジタルオーディオ信号を受信する。PWMプロセッサ308は、デジタルオーディオインタフェース302が受信したデジタルオーディオ信号を、パルス幅変調された入力オーディオ信号SINに変換する。PWMプロセッサ308には、第1電源電圧VDDHと第2電源電圧VDDLが供給されており、前段のデジタルブロックは3V(あるいは5V)で動作し、出力段は、14.4Vで動作する。この実施例2における入力オーディオ信号SINは、0VとVDDHの二値でスイッチングするパルス信号となる。またD級アンプ回路200Bにおいて、積分器204の出力信号SINTは周期信号となる。
【0043】
基準電圧源310は所定の電圧レベルを有する基準電圧VREFを生成する。コンパレータ208は、積分器204の出力信号SINTを、基準電圧VREFと比較し、比較結果に応じたPWM信号SPWMを出力する。
【0044】
以上がオーディオ回路300Bの構成である。このオーディオ回路300Bによれば、デジタルオーディオインタフェース302やPWMプロセッサ308において発生するノイズ、歪み、オフセット電圧が、D級アンプ回路200Bにおいて増幅されるのを防止できる。
【0045】
(実施例3)
図7は、実施例3に係るオーディオ回路300Cの回路図である。オーディオ回路300Cは、音源106からパルス幅変調されたオーディオ信号を受信する。このオーディオ信号は、たとえば0VとV
DDLの2値でスイッチングするパルス信号である。
【0046】
オーディオ回路300Cにおいて、インタフェース回路301Cは、PWMドライバ312を備える。PWMドライバ312は、音源106から供給されたPWM信号の信号レベルを、0V-VDDHに変換し、入力オーディオ信号SINとして積分器204に供給する。
【0047】
D級アンプ回路200Cの構成は、
図6のD級アンプ回路200Bと同様である。
【0048】
以上がオーディオ回路300Cの構成である。このオーディオ回路300Cによれば、PWMドライバ312において発生するノイズ、歪み、オフセット電圧が、D級アンプ回路200Cにおいて増幅されるのを防止できる。
【0049】
(実施例4)
図8は、実施例4に係るオーディオ回路300Dの回路図である。オーディオ回路300Dは、音源106から、アナログのオーディオ信号S
ANLを受信する。このオーディオ信号S
ANLは、所定の電圧範囲で変動する。
【0050】
オーディオ回路300Dのインタフェース回路301Dは、入力ゲインコントローラ314およびオシレータ316を備える。入力ゲインコントローラ314は外部入力されるオーディオ信号S
ANLを適切な利得で増幅し、0VとV
DDHの間で変化する入力オーディオ信号S
INを生成する。オシレータ316は、0VとV
DDHの間で変化する三角波あるいはのこぎり波の周期信号S
OSCを生成する。D級アンプ回路200Dの構成は、
図5のD級アンプ回路200Aと同様である。
【0051】
以上がオーディオ回路300Dの構成である。このオーディオ回路300Dによれば、入力ゲインコントローラ314において発生するノイズ、歪み、オフセット電圧が、D級アンプ回路200Cにおいて増幅されるのを防止できる。
【0052】
(用途)
オーディオ回路300の用途を説明する。
図9は、実施の形態に係るオーディオ回路を利用した車載オーディオシステムのブロック図である。
【0053】
車載オーディオシステム500は、4個のスピーカ502FL,502FR,502RL,502RR、4個のフィルタ504FL,504FR,504RL,504RR、音源506およびオーディオ回路300を備える。
【0054】
音源106は、左右(LR)2チャンネルあるいはマルチチャンネルのデジタルオーディオ信号を出力する。オーディオ回路300は、4チャンネルのD級アンプ回路200と、音源106とのインタフェース回路301を備える。インタフェース回路301の形式は限定されず、
図5~
図8のいずれかの構成を有してもよいし、別の構成であってもよい。
【0055】
フィルタ504、音源506およびオーディオ回路300は、オーディオヘッドユニットやカーナビゲーション装置に内蔵される。あるいはオーディオ回路300は、音源106とは独立した製品であってもよい。
【0056】
図10(a)、(b)は、実施の形態に係るオーディオ回路を利用した電子機器を示す図である。
図10(a)の電子機器は、テレビなどのディスプレイ装置600である。ディスプレイ装置600は、スピーカ602L,602R、フィルタ604L,604R、音源606およびオーディオ回路300、ディスプレイパネル610を備える。
【0057】
図10(b)の電子機器は、オーディオコンポーネント装置800である。オーディオコンポーネント装置800は、音源に相当するオーディオ信号処理回路806、オーディオ回路300、図示しないフィルタを備える。オーディオ回路300は、スピーカケーブルを介して接続される802L,802Rを駆動する。
【0058】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0059】
(変形例1)
実施の形態では、ハーフブリッジ型のD級アンプを説明したが、フルブリッジ型(BTL:Bridge-Tied Load)のD級アンプにも本発明は適用可能であり、この場合、フィルタ104のDCブロックコンデンサが不要となる。さらに、フルブリッジ型のD級アンプでは、ローパスフィルタ104を省略したフィルタレス変調方式を採用してもよい。
【0060】
(変形例2)
実施の形態では、積分器204およびコンパレータ208に、出力段202と共通の第1電源電圧VDDHが供給されたがその限りでない。出力段202に、第1電源電圧VDDHを直接供給する一方、積分器204およびコンパレータ208には、第1電源電圧VDDHを間接的に供給してもよい。たとえば、レギュレータやバッファ、分圧回路、クランプ回路などを利用して、第1電源電圧VDDHよりわずかに低い(ただし、第2電源電圧VDDLより高い)電圧レベルに安定化した中間的な電圧VDDH’を、積分器204およびコンパレータ208に供給してもよい。これにより、ロードダンプ試験時に、積分器204やコンパレータ208に過電圧が印加されるのを抑制できる。
【0061】
(変形例3)
オーディオ回路300には、デジタルのオーディオ信号を処理するDSP(Digital Signal ProcessorあるいはDigital Sound Processor)が集積化されてもよい。
【符号の説明】
【0062】
100 オーディオシステム
102 スピーカ
104 フィルタ
106 音源
200 D級アンプ回路
202 出力段
204 積分器
208 コンパレータ
210 ドライバ
300 オーディオ回路
301 インタフェース回路
302 デジタルオーディオインタフェース
304 D/Aコンバータ
306 分周器
308 PWMプロセッサ
310 基準電圧源
312 PWMドライバ
314 入力ゲインコントローラ
316 オシレータ