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特許7387409医用画像処理装置、医用画像処理方法、医用画像処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】医用画像処理装置、医用画像処理方法、医用画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20231120BHJP
   A61B 6/00 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
A61B6/03 360Q
A61B6/03 360J
A61B6/00 350D
A61B6/00 370
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019217258
(22)【出願日】2019-11-29
(65)【公開番号】P2021083961
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島田 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】坂口 卓弥
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-506949(JP,A)
【文献】特開2006-175057(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0304108(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/14
A61B 5/055
G01T 1/161 - 1/166
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の装置によって被検体が第1の姿勢で撮像された第1の画像データと、前記第1の装置とは撮像形式が異なる第2の装置によって前記被検体が前記第1の姿勢とは異なる第2の姿勢で撮像された第2の画像データとを取得する取得部と、
前記取得部によって取得された前記第1の画像データに含まれる複数の特徴部位の各々を第1の部位画像データとして抽出する第1の抽出部と、
前記取得部によって取得された前記第2の画像データに含まれる複数の特徴部位の各々を、第2の部位画像データとして抽出する第2の抽出部と、
前記第1の抽出部によって抽出された前記第1の部位画像データを、前記第1の部位画像データと同一の特徴部位に対応する前記第2の部位画像データに基づいて変形または回転させる変形部と、
前記変形部によって変形または回転された複数の前記第1の部位画像データを組み合わせることにより、前記第2の姿勢の前記被検体を描出した第3の画像データを生成する生成部と、を備え、
前記生成部は、前記第2の画像データに描出された前記被検体の胸骨の位置、前記胸骨の傾き、前記被検体の肋骨の位置、または前記肋骨の傾きに基づいて、前記被検体の胸郭の厚さを推定し、該推定の結果に基づいて、複数の前記第1の部位画像データの各々の配置を調整する、
医用画像処理装置。
【請求項2】
前記第1の画像データ、前記第3の画像データ、および前記第1の部位画像データは、3次元画像データであり、
前記第2の画像データおよび前記第2の部位画像データは、2次元画像データである、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記変形部は、さらに、前記特徴部位の各々の特性を表す特性情報に基づいて、前記第1の部位画像データを変形または回転させる、
請求項1または2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記複数の特徴部位は、前記被検体の骨格、臓器、または筋組織であり、
前記特性情報は、前記骨格、前記臓器、または前記筋組織の、動きの制約、前記被検体の動作に伴う変形、または剛性を表す、
請求項3に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記第1の画像データは、胸部CT画像データであり、
前記第2の画像データは、胸部X線画像データであり、
前記第1の姿勢は、前記被検体が腕を挙上した姿勢であり、
前記第2の姿勢は、前記被検体が腕を体側に下した姿勢であり、
前記被検体の動きに伴う変形は、前記被検体が腕を挙上した姿勢から腕を体側に下した姿勢に変化した場合における前記骨格、前記臓器、または前記筋組織の形状の変化を表す、
請求項4に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記変形部は、前記特性情報に含まれる前記骨格、前記臓器、および前記筋組織の各々の剛性に基づいて、前記被検体の姿勢の変化に伴う重力方向の変化を加味して前記第1の部位画像データを変形する、
請求項4または5に記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
前記第1の部位画像データは3次元構造であり、
前記変形部は、複数の前記3次元構造のうち前記骨格に相当する第1の3次元構造を変形または回転させた後に、変形または回転された前記第1の3次元構造の形状または向きに合わせて、複数の前記3次元構造のうち前記臓器または前記筋組織に相当する第2の3次元構造を変形または回転させる、
請求項4から6のいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項8】
前記筋組織は筋肉および腱を含み、
前記第2の3次元構造は、前記腱に相当する第3の3次元構造と、前記筋肉に相当する第4の3次元構造とを含み、
前記変形部は、第3の3次元構造と結合する複数の前記第1の3次元構造同士の位置関係に基づいて、前記第3の3次元構造および前記第4の3次元構造を変形または回転させる、
請求項7に記載の医用画像処理装置。
【請求項9】
前記第2の抽出部は、撮像時刻の異なる複数の前記第2の画像データから前記第2の部位画像データを抽出し、
前記変形部は、複数の前記第2の画像データから抽出された前記第2の部位画像データに基づいて、前記第1の部位画像データを変形または回転させる、
請求項1から8のいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項10】
前記第1の姿勢は、臥位の姿勢であり、
前記第2の姿勢は、立位の姿勢であり、
前記被検体の動きに伴う変形は、前記被検体が臥位の姿勢から立位の姿勢に変化した場合における前記骨格、前記臓器、または前記筋組織の形状の変化を表す、
請求項4に記載の医用画像処理装置。
【請求項11】
第1の装置によって被検体が第1の姿勢で撮像された第1の画像データと、前記第1の装置とは撮像形式が異なる第2の装置によって前記被検体が前記第1の姿勢とは異なる第2の姿勢で撮像された第2の画像データとを取得する取得ステップと、
前記取得ステップで取得された前記第1の画像データに含まれる複数の特徴部位の各々を第1の部位画像データとして抽出する第1の抽出ステップと、
前記取得ステップで取得された前記第2の画像データに含まれる複数の特徴部位の各々を、第2の部位画像データとして抽出する第2の抽出ステップと、
前記第1の抽出ステップで抽出された前記第1の部位画像データを、前記第1の部位画像データと同一の特徴部位に対応する前記第2の部位画像データに基づいて変形または回転させる変形ステップと、
前記変形ステップで変形または回転された複数の前記第1の部位画像データを組み合わせることにより、前記第2の姿勢の前記被検体を描出した第3の画像データを生成する生成ステップと、を含み、
前記生成ステップは、前記第2の画像データに描出された前記被検体の胸骨の位置、前記胸骨の傾き、前記被検体の肋骨の位置、または前記肋骨の傾きに基づいて、前記被検体の胸郭の厚さを推定し、該推定の結果に基づいて、複数の前記第1の部位画像データの各々の配置を調整する、
医用画像処理方法。
【請求項12】
第1の装置によって被検体が第1の姿勢で撮像された第1の画像データと、前記第1の装置とは撮像形式が異なる第2の装置によって前記被検体が前記第1の姿勢とは異なる第2の姿勢で撮像された第2の画像データとを取得する取得ステップと、
前記取得ステップで取得された前記第1の画像データに含まれる複数の特徴部位の各々を第1の部位画像データとして抽出する第1の抽出ステップと、
前記取得ステップで取得された前記第2の画像データに含まれる複数の特徴部位の各々を、第2の部位画像データとして抽出する第2の抽出ステップと、
前記第1の抽出ステップで抽出された前記第1の部位画像データを、前記第1の部位画像データと同一の特徴部位に対応する前記第2の部位画像データに基づいて変形または回転させる変形ステップと、
前記変形ステップで変形または回転された複数の前記第1の部位画像データを組み合わせることにより、前記第2の姿勢の前記被検体を描出した第3の画像データを生成する生成ステップと、
をコンピュータに実行させ
前記生成ステップは、前記第2の画像データに描出された前記被検体の胸骨の位置、前記胸骨の傾き、前記被検体の肋骨の位置、または前記肋骨の傾きに基づいて、前記被検体の胸郭の厚さを推定し、該推定の結果に基づいて、複数の前記第1の部位画像データの各々の配置を調整する、
医用画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用画像処理装置、医用画像処理方法、医用画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、診断または検査のために、複数種類のモダリティで患者を撮像する場合がある。例えば、X線CT(Computed Tomography)装置と、X線診断装置との両方で患者を撮像する場合がある。このような場合、X線CT装置で撮像されたX線CT画像上に描出された病変の位置と、X線診断装置で撮像されたX線画像上における該病変に相当する位置と、を対応付けて表示する技術が知られている。
【0003】
しかしながら、モダリティによって撮像時の患者の姿勢が異なるため、異なるモダリティで撮像された複数の医用画像データの位置合わせを高精度に実施することが困難な場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-239796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、撮像形式の異なる複数の装置によって異なる姿勢で被検体が撮像された医用画像データ同士を、高精度に位置合わせすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る医用画像処理装置は、取得部と、第1の抽出部と、第2の抽出部と、変形部と、生成部とを備える。取得部は、第1の装置によって被検体が第1の姿勢で撮像された第1の画像データと、第1の装置とは撮像形式が異なる第2の装置によって被検体が第1の姿勢とは異なる第2の姿勢で撮像された第2の画像データとを取得する。第1の抽出部は、取得部によって取得された第1の画像データに含まれる複数の特徴部位の各々を第1の部位画像データとして抽出する。第2の抽出部は、取得部によって取得された第2の画像データに含まれる複数の特徴部位の各々を、第2の部位画像データとして抽出する。変形部は、第1の抽出部によって抽出された第1の部位画像データを、第1の部位画像データと同一の特徴部位に対応する第2の部位画像データに基づいて変形または回転させる。生成部は、変形部によって変形または回転された複数の第1の部位画像データを組み合わせることにより、第2の姿勢の被検体を描出した第3の画像データを生成する。また、生成部は、第2の画像データに描出された被検体の胸骨の位置、胸骨の傾き、被検体の肋骨の位置、または肋骨の傾きに基づいて、被検体の胸郭の厚さを推定し、該推定の結果に基づいて、複数の第1の部位画像データの各々の配置を調整する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施形態に係る医用情報システムの全体構成の一例を示す図である。
図2図2は、第1の実施形態に係るX線CT装置の一例を示す図である。
図3図3は、第1の実施形態に係るX線診断装置の一例を示す図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る3次元構造の一例を示す図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る2次元部位画像データの一例を示す図である。
図6図6は、被検体が腕を挙上した場合における筋組織の変形および移動について説明する図である。
図7図7は、被検体が腕を体側に下した場合における筋組織の変形および移動について説明する図である。
図8図8は、第1の実施形態に係るX線CT画像データとX線画像データとの位置合わせ処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図9図9は、呼気時と吸気時における胸骨および肋骨の差異を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、画像処理装置、画像処理方法、および画像処理プログラムの実施形態について詳細に説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係る医用情報システムS1の全体構成の一例を示す図である。図1に示すように、医用情報システムS1は、例えば、医用画像処理装置1と、X線CT(Computed Tomography)装置3と、X線診断装置2とを備える。医用画像処理装置1、X線CT装置3、およびX線診断装置2は、病院内に設置された院内LAN(Local Area Network)等のネットワークN2を介して互いに通信可能に接続している。
【0010】
X線CT装置3は、患者(被検体)のX線CT画像データを撮影する装置である。例えば、X線CT装置3は、患者ごとのX線CT画像データを収集する。X線CT装置3は、収集したX線CT画像データを、医用画像処理装置に送信する。また、X線CT装置3は、X線CT画像データに対して各種画像処理を行うことで生成した画像データを、医用画像処理装置1に送信しても良い。X線CT装置3は、本実施形態における第1の装置の一例である。
【0011】
図2は、本実施形態に係るX線CT装置3の一例を示す図である。図2に示すように、X線CT装置3は、例えば、架台装置310と、寝台装置320と、不図示のコンソール装置とを備える。コンソール装置は、X線CT装置3全体を制御する。寝台装置320は、スキャン対象の被検体Pを載置および移動させる装置である。
【0012】
被検体Pは、例えば、腕を挙上した姿勢で寝台装置320に臥位で載置され、架台装置310の空洞内へ移動される。架台装置310は、被検体Pに対してX線を照射するX線管や、被検体Pを透過したX線を検出する検出器等を備え、X線CT画像データ30を撮影する。
【0013】
腕を挙上した姿勢は、本実施形態における第1の姿勢の一例である。一般に、X線CT装置3においては、アーチファクトの発生を低減するために、被検体Pは腕を挙上した姿勢で撮像される。撮像時の最適な姿勢は、モダリティによって異なる。
【0014】
X線CT画像データ30は、X線CT装置3が被検体Pを撮像した3次元の立体画像データである。ここでいう3次元とは、高さ方向(Y方向)、左右方向(X方向)、および奥行方向(Z方向)の3つの次元のことをいう。また、本実施形態におけるX線CT画像データ30は、ある撮像時点における被検体の状態を表す3次元の静止画である。X線CT画像データは、本実施形態に係る第1の画像データの一例である。また、本実施形態のX線CT画像データは、胸部を撮像範囲とした胸部CT画像データであるものとする。
【0015】
図1に戻り、X線診断装置2は、被検体Pに対してX線を照射し、被検体Pを透過したX線を検出することによって、2次元のX線画像データを撮像する。X線診断装置2によって撮像されたX線画像データは、本実施形態における第2の画像データの一例である。また、本実施形態のX線画像データは、胸部を撮像範囲とした胸部X線画像データであるものとする。X線診断装置2は、本実施形態における第2の装置の一例である。
【0016】
図3は、本実施形態に係るX線診断装置2の一例を示す図である。図3に示す例では、X線診断装置2は、立位で腕を体側に下した姿勢の被検体Pを撮像する。
【0017】
被検体が腕を体側に下した姿勢は、本実施形態における第2の姿勢の一例である。
【0018】
図1に戻り、医用画像処理装置1は、例えば、ワークステーション、PC(Personal Computer)、またはサーバ装置等のコンピュータ機器によって実現される。
【0019】
より詳細には、医用画像処理装置1は、NW(Network)インタフェース110と、記憶回路120と、入力インタフェース130と、ディスプレイ140と、処理回路150とを備える。
【0020】
NWインタフェース110は、処理回路150に接続されており、医用画像処理装置1と、X線CT装置3またはX線診断装置2との間で行われる各種データの伝送および通信を制御する。NWインタフェース110は、例えば、ネットワークカードやネットワークアダプタ、NIC(Network Interface Controller)等によって実現される。
【0021】
記憶回路120は、処理回路150で使用される各種の情報を予め記憶する。例えば、記憶回路120は、被検体Pに含まれる複数の特徴部位の各々の特性を表す特性情報を記憶する。複数の特徴部位は、骨格、臓器、または筋組織等である。また、記憶回路120は、特性情報、被検体Pの呼吸周期、または撮像条件等の各種の情報を含む先見情報を記憶しても良い。特性情報および先見情報の詳細については後述する。また、記憶回路120は、各種のプログラムを記憶する。記憶回路120は、記憶部の一例である。
【0022】
入力インタフェース130は、例えば、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチボタン、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、または音声入力回路等であり、操作者からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路150に出力する。なお、本明細書において入力インタフェース130はマウス、キーボードなどの物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、医用画像処理装置1とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路150へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース130の例に含まれる。
【0023】
ディスプレイ140は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機ELディスプレイ(OEL:Organic Electro-Luminescence)等である。ディスプレイ140は、表示部の一例である。
【0024】
処理回路150は、記憶回路120からプログラムを読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。本実施形態の処理回路150は、取得機能151と、第1の抽出機能152と、第2の抽出機能153と、変形機能154と、生成機能155と、出力機能156とを備える。取得機能151は、取得部の一例である。第1の抽出機能152は、第1の抽出部の一例である。第2の抽出機能153は、第2の抽出部の一例である。変形機能154は、変形部の一例である。生成機能155は、生成部の一例である。出力機能156は、出力部の一例である。
【0025】
ここで、例えば、処理回路150の構成要素である取得機能151と、第1の抽出機能152と、第2の抽出機能153と、変形機能154と、生成機能155と、出力機能156とは、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路120に記憶されている。処理回路150は、各プログラムを記憶回路120から読み出し、読み出した各プログラムを実行することで、各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路150は、図1の処理回路150内に示された各機能を有することとなる。なお、図1においては、単一の処理回路150にて、取得機能151、第1の抽出機能152、第2の抽出機能153、変形機能154、生成機能155、および出力機能156の各処理機能が実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路150を構成し、各プロセッサが各プログラムを実行することにより各処理機能を実現するものとしても良い。
【0026】
取得機能151は、X線CT装置3によって被検体Pが第1の姿勢で撮像された第1の画像データと、X線診断装置2によって被検体Pが第2の姿勢で撮像された2次元画像データとを取得する。具体的には、取得機能151は、ネットワークNおよびNWインタフェース110を介して、X線CT装置3からX線CT画像データ30を取得する。また、取得機能151は、ネットワークNおよびNWインタフェース110を介して、X線診断装置2からX線画像データ20を取得する。
【0027】
取得機能151は、取得したX線CT画像データ30を、第1の抽出機能152に送出する。また、取得機能151は、取得したX線画像データ20を、第2の抽出機能153に送出する。
【0028】
また、取得機能151は、X線CT装置3およびX線診断装置2から、X線CT画像データ30およびX線画像データ20の撮像時の被検体Pの姿勢を表す情報を取得する。この場合、取得機能151は、X線CT画像データ30およびX線画像データ20の撮像時の被検体Pの姿勢を表す情報を、変形機能154に送出する。なお、撮像時の被検体Pの姿勢が予め定められている場合には、当該情報は記憶回路120に予め記憶されていても良い。
【0029】
また、取得機能151は、X線診断装置2から、X線画像データ20の撮像方向を表す情報を取得しても良い。なお、X線画像データ20の撮像方向を表す情報は、記憶回路120に予め記憶されていても良い。
【0030】
第1の抽出機能152は、取得機能151によって取得された第1の画像データから、該第1の画像データに含まれる複数の特徴部位の各々を、3次元構造として抽出する。3次元構造は、本実施形態における第1の部位画像データの一例である。
【0031】
複数の特徴部位は、骨格、臓器、または筋組織等である。なお、本実施形態の第1の抽出機能152は、X線CT画像データ30に描出された全ての骨格、臓器、および筋組織を抽出する。筋組織は、筋肉および腱を含む。
【0032】
また、特徴部位は、複数の臓器が連結された単位でも良い。あるいは、特徴部位は、1つの臓器を複数に分割した単位であっても良い。例えば、肺に含まれる複数の肺葉単位で、特徴部位が規定されても良いし、左右の肺を1つにまとめた単位を1つの特徴単位としても良い。また、個々の骨を、1つの特徴部位としても良いし、複数の骨が連結された組み合わせを、1つの特徴単位としても良い。例えば、特徴部位の分割単位を規定する情報が、記憶回路120に予め保存されていても良い。
【0033】
換言すれば、第1の抽出機能152は、X線CT画像データ30を、複数の特徴部位ごとに分割する。なお、第1の抽出機能152は、全ての骨格、臓器、および筋組織を抽出しなくとも良く、X線CT画像データ30に描出された部位のうち、一部の部位を、特徴部位として抽出しても良い。
【0034】
本実施形態においては、3次元構造のうち骨格に相当する3次元構造を、第1の3次元構造という。また、3次元構造のうち臓器または筋組織に相当する3次元構造を、第2の3次元構造という。また、第2の3次元構造のうち、腱に相当する3次元構造を、第3の3次元構造という。また、第2の3次元構造のうち、筋肉に相当する3次元構造を第4の3次元構造、臓器に相当する3次元構造を第5の3次元構造という。X線CT画像データ30には、第1~第3の3次元構造が、それぞれ複数含まれるものとする。
【0035】
図4は、本実施形態に係る3次元構造301a~301dの一例を示す図である。図4に示す例では、第1の抽出機能152は、被検体Pの胸部が撮像されたX線CT画像データ30を、3次元構造301a~301dに分解している。3次元構造301aは、肋骨に相当する。また、3次元構造301bは、肺に相当する。3次元構造301cは、心臓に相当する。3次元構造301dは、肝臓に相当する。以下、3次元構造301a~301dを特に区別しない場合には、単に3次元構造301という。
【0036】
第1の抽出機能152は、例えば、X線CT画像データ30における各特徴部位のCT値の差異等に基づいて、特徴部位の境目を判別する。また、X線CT画像データ30内の各特徴部位の標準的な位置を表す情報が、記憶回路120に予め保存されていても良い。この場合、第1の抽出機能152は、記憶回路120に保存された各特徴部位の標準的な位置を表す情報に基づいて、X線CT画像データ30から各特徴部位に相当する複数の3次元構造301を抽出する。X線CT画像データ30から3次元構造301を抽出する手法は限定されるものではなく、公知の画像処理の手法を適用することができる。
【0037】
また、図4に示す3次元構造301の種類および数は一例であり、撮像範囲等によって異なる。
【0038】
第1の抽出機能152は、抽出した3次元構造301を、変形機能154に送出する。
【0039】
図1に戻り、第2の抽出機能153は、取得機能151によって取得されたX線画像データ20から、該X線画像データ20に含まれる複数の特徴部位の各々を、2次元部位画像データとして抽出する。2次元部位画像データは、本実施形態における第2の部位画像データの一例である。
【0040】
例えば、第2の抽出機能153は、X線画像データ20に描出された骨格、臓器、または筋組織等を、X線画像データ20における各特徴部位の画素値の差異に基づいて、特徴部位の境目を判別する。複数の2次元部位画像データの切り出し単位は、3次元構造301の分割単位と同様であるものとする。
【0041】
図5は、本実施形態に係る2次元部位画像データ201a~201dの一例を示す図である。例えば、図5に示すように、X線画像データ20の撮像範囲が胸部である場合には、第2の抽出機能153は、X線画像データ20から、肋骨、肺、心臓、および肝臓等の特徴部位に相当する画像領域を認識する。第2の抽出機能153は、認識した画像領域を、2次元部位画像データ201a~201dとして抽出する。
【0042】
図5に示す例では、2次元部位画像データ201aは、X線画像データ20に描出された肋骨に相当する。また、2次元部位画像データ201b,201c,201dは、それぞれ、X線画像データ20に描出された肺、心臓、肝臓に相当する。
【0043】
以下、個々の2次元部位画像データ201a~201dを特に区別しない場合には、単に2次元部位画像データ201という。
【0044】
第2の抽出機能153は、抽出した複数の2次元部位画像データ201を、変形機能154に送出する。
【0045】
なお、図4,5に示した特徴部位は一例であり、第1の抽出機能152および第2の抽出機能153は、図4,5に図示しない筋組織等についても、X線CT画像データ30またはX線画像データ20から抽出するものとする。
【0046】
変形機能154は、第1の抽出機能152によって抽出された3次元構造301を、該3次元構造301と同一の特徴部位に対応する2次元部位画像データ201に基づいて変形または回転させる。
【0047】
例えば、図4で説明した3次元構造301dと、図5で説明した2次元部位画像データ201dには、いずれも肝臓が描出されている。このため、変形機能154は、3次元構造301dを、2次元部位画像データ201dと比較し、比較結果に応じて、3次元構造301dを変形または回転させる。
【0048】
本実施形態において、変形とは、3次元構造301の形状を変化させること、または、3次元構造301の大きさを変化させることをいう。
【0049】
また、変形機能154は、さらに、記憶回路120に記憶された特性情報に基づいて、3次元構造301を変形または回転させる。
【0050】
特性情報は、複数の特徴部位の各々の特性を表す情報である。例えば、特性情報は、複数の特徴部位の各々の動きの制約、被検体Pの動作に伴う変形、または剛性を表す。
【0051】
X線画像データ20の撮像時に、被検体Pの動きに伴って各特徴部位が移動または変形する場合がある。一例として、肺は、呼吸に伴って大きさが変化するが、その変化の範囲は予め想定可能である。また、肺、心臓、および肝臓は、肋骨よりも外側には移動しない。特性情報には、このような各特徴部位が移動する位置の範囲、および各特徴部位の大きさの最大値および最小値が定義される。また、動きの制約には、関節の可動域に関する情報等も含まれる。
【0052】
また、被検体Pの動作によって各特徴部位の位置または形状が変化する場合がある。被検体Pの動作とは、例えば被検体Pの姿勢の変化である。具体的には、被検体Pが腕を挙上した場合と、腕を体側に下した場合とでは、骨格および筋組織の位置および形状が変化する。
【0053】
図6、および図7を用いて、は、被検体Pの姿勢の変化に応じた各特徴部位の位置または形状の変化について説明する。
【0054】
図6は、被検体Pが腕を挙上した場合における筋組織の変形および移動について説明する図である。図6に示すように、被検体Pが腕を挙上すると、僧帽筋の上部繊維が太く変形する。また、三角筋の中部繊維、棘上筋、および肩甲挙筋も、被検体Pの腕の挙上に伴って変形する。また、上腕の挙上に伴って、肩甲骨の位置も上方(被検体Pの頭部側)に移動する。なお、図6では記載を省略したが、胸骨および肋骨も、上腕の挙上に伴って移動する。
【0055】
一般に、筋組織は、被検体Pの姿勢の変化に応じて形状が変化するが、体積は変化しない。このため、変形機能154は、3次元構造301の変形の際に、3次元構造301の体積を変化させずに、形状を変化させるものとする。
【0056】
また、図7は、被検体Pが腕を体側に下した場合における筋組織の変形および移動について説明する図である。図7に示すように、被検体Pが腕を体側に下すと、僧帽筋の下部繊維が太く変形する。また、図7では図示していないが、上腕の挙上の際に太くなった僧帽筋の上部繊維は、被検体Pが腕を体側に下した場合には細くなる。また、被検体Pが腕を体側に下すのに伴って、大円筋、および広背筋も太くなる。また、被検体Pが腕を体側に下すのに伴って、肩甲骨の位置も下方(被検体Pの足側)に移動する。
【0057】
図6、および図7に示す筋組織および骨は一例であり、被検体Pの姿勢の変化によって変化する特徴部位はこれらに限定されるものではない。
【0058】
本実施形態においては、特性情報に含まれる“被検体Pの動作に伴う変形”は、例えば、被検体Pが腕を挙上した姿勢から腕を体側に下した姿勢に変化した場合における骨格、臓器、または筋組織の形状の変化を表す。なお、他の姿勢で被検体Pが撮像されることが想定される場合は、特性情報は、さらに他の動作に伴う変形に関する情報を含むものとしても良い。
【0059】
また、変形機能154は、腕の動作により胸郭の形状および大きさ変化することに合わせ、胸郭に内包される臓器に相当する複数の3次元構造301の各々の形状を個別に変化させる。変形機能154は、複数の3次元構造301を均一に変形させるのではなく、隣接する3次元構造301同士の引っ張り、圧縮、押し付け等の関係に基づいて、複数の3次元構造301を変形させる。3次元構造301同士の引っ張り、圧縮、押し付け等の関係は、特性情報に含まれる“動きの制約”および“被検体Pの動作に伴う変形”に関する情報によって規定される。また、各3次元構造301が隣接する他の3次元構造301との接触によってどの程度変形するかは、特性情報に含まれる“剛性”に関する情報によって規定される。
【0060】
また、各特徴部位の剛性によって、各特徴部位の変形の度合が変わる。例えば、剛性の低い臓器は重力の影響を受けて変形し易いため、撮像時の被検体Pの体位に応じて変形する。また、剛性の高い骨等は、変形しにくいため、X線画像データ20の撮像時とX線CT画像データ30の撮像時とで被検体Pの体位が異なっても形状の変化は小さい。
【0061】
変形機能154は、特性情報に含まれる各特徴部位の各々の剛性に基づいて、被検体Pの姿勢の変化に伴う重力方向の変化を加味して、3次元構造301を変形する。
【0062】
なお、特性情報に含まれる情報はこれらに限定されるものではなく、他の解剖学的な情報が含まれても良い。また、特性情報、被検体Pの呼吸周期、または撮像条件等の各種の情報を総称する場合、先見情報という。撮像条件には、被検体Pの体位、またはX線画像データ20の撮像時におけるX線の照射方向(撮像方向)等が含まれる。
【0063】
また、変形機能154は、骨格に相当する3次元構造301の変形または回転を完了した後に、変形または回転後の骨格に相当する3次元構造301(第1の3次元構造)の形状または向きに合わせて、臓器または筋組織に相当する3次元構造301(第2の3次元構造)を変形または回転させる。
【0064】
例えば、変形機能154は、胸部においては、上腕骨、肩甲骨、鎖骨、椎体、胸骨、肋骨などの骨格に相当する3次元構造301の変形または回転を完了した後に、筋肉、腱、血管、心臓、肺、食道等の縦郭臓器を変形または回転させる。
【0065】
また、変形機能154は、腱に相当する3次元構造301(第3の3次元構造)と結合する複数の骨格に相当する複数の3次元構造301(第1の3次元構造)同士の位置関係に基づいて、腱に相当する3次元構造301(第3の3次元構造)または筋肉に相当する3次元構造301(第4の3次元構造)を変形または回転させる。
【0066】
第1の3次元構造同士の位置関係は、例えば、1つの腱に接続する2つの骨の距離および角度である。また、変形機能154は、複数の第3の3次元構造または第4の3次元構造の相互の位置関係に基づいて、第3の3次元構造または第4の3次元構造変形または回転させても良い。
【0067】
本実施形態においては、3次元構造301と2次元部位画像データ201との比較の手法は特に限定されるものではないが、変形機能154は、例えば、仮想の投影視点を基準として、3次元構造301を2次元に変換した投影画像データを生成する。変形機能154は、投影画像データと、該投影画像データに対応する2次元部位画像データ201とが類似するように、投影視点の位置、複数の3次元構造の形状、または複数の3次元構造の大きさを変更する。
【0068】
変形機能154は、例えば、3次元構造301から生成した投影画像データと、該投影画像データと同じ特徴部位に相当する2次元部位画像データ201との一致度が閾値以上となった場合に、投影画像データと2次元部位画像データ201とが類似すると判定する。閾値の値は、特に限定されるものではない。なお、当該手法は一例であり、3次元構造301と2次元部位画像データ201との比較のために、他の手法が用いられても良い。
【0069】
変形機能154は、3次元構造301から生成した投影画像データと、該投影画像データと同じ特徴部位に対応する2次元部位画像データ201の一致度が閾値以上となった場合は、変形または回転後の3次元構造301を、生成機能155に送出する。
【0070】
図1に戻り、生成機能155は、変形機能154によって変形または回転された複数の3次元構造301を組み合わせることにより、第2の姿勢の被検体Pを描出した3次元の画像データを生成する。当該画像データは、本実施形態における第3の画像データの一例である。第3の画像データは、姿勢変更済みの3次元画像データともいう。
【0071】
本実施形態においては、生成機能155は、変形または回転済みの3次元構造301を組み合わせて3次元空間に配置することにより、腕を挙上した姿勢の被検体Pが描出されたX線CT画像データ30を、腕を体側に下した姿勢の被検体Pが描出された3次元画像データに変換する。本実施形態において、X線CT画像データ30をX線画像データ20に合わせて変形および配置することを、X線CT画像データ30とX線画像データ20との位置合わせともいう。
【0072】
具体的には、生成機能155は、3次元空間内に、複数の3次元構造301を、互いに空間座標が重ならないように配置する。生成機能155は、3次元構造301に対応する2次元部位画像データ201のX線画像データ20上の位置に基づいて3次元構造301を配置する。また、生成機能155は、記憶回路120に記憶された特性情報に基づいて、3次元空間における3次元構造301の位置を調整する。例えば、生成機能155は、被検体Pの姿勢の変化による特徴部位の移動、または重力方向の変化による特徴部位の位置の変化を加味して3次元構造301を配置する。
【0073】
生成機能155は、生成した姿勢変更済みの3次元画像データを、出力機能156に送出する。また、生成機能155は、生成した姿勢変更済みの3次元画像データを、記憶回路120に保存しても良い。
【0074】
出力機能156は、生成機能155によって生成された姿勢変更済みの3次元画像データを出力する。例えば、出力機能156は、姿勢変更済みの3次元画像データをディスプレイ140に出力する。また、出力機能156は、姿勢変更済みの3次元画像データを外部装置等に出力しても良い。
【0075】
次に、以上のように構成された医用画像処理装置1で実行されるX線CT画像データ30とX線画像データ20との位置合わせ処理の流れについて説明する。
【0076】
図8は、本実施形態に係るX線CT画像データ30とX線画像データ20との位置合わせ処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0077】
まず、取得機能151は、X線CT装置3からX線CT画像データ30を取得する(S1)。
【0078】
次に、第1の抽出機能152は、X線CT画像データ30から、骨格の3次元構造301(第1の3次元構造)を抽出する(S2)。骨格の3次元構造301(第1の3次元構造)には、上腕骨、肩甲骨、鎖骨、椎体、胸骨、または肋骨等に相当する複数の3次元構造301が含まれる。
【0079】
また、取得機能151は、X線診断装置2から、X線画像データ20を取得する(S3)。
【0080】
そして、第2の抽出機能153は、X線画像データ20から骨格の2次元部位画像データ201を抽出する(S4)。
【0081】
次に、変形機能154は、第1の抽出機能152によって抽出された骨格の3次元構造301を、特性情報に基づいて、変形または回転する(S5)。例えば、変形機能154は、X線CT画像データ30において被検体Pが腕を挙上した状態における各骨に相当する3次元構造301の位置および向きを、被検体Pが腕を体側に下した状態における各骨に相当する3次元構造301の位置および向きに変更する。
【0082】
そして、変形機能154は、骨格の3次元構造301と、該3次元構造301に対応する2次元部位画像データ201の一致度が、閾値以上であるか否かを判定する(S6)。
【0083】
変形機能154は、例えば、3次元構造301から生成した投影画像データと、該投影画像データと同じ特徴部位に相当する2次元部位画像データ201との一致度が閾値以上となった場合に、3次元構造301と2次元部位画像データ201の一致度が閾値以上であると判定する。
【0084】
変形機能154は、骨格の3次元構造301と、該3次元構造301に対応する2次元部位画像データ201の一致度が、閾値未満であると判定した場合(S6“No”)、S5に戻り、3次元構造301の形状または大きさが2次元部位画像データ201に類似するように、3次元構造301を変形または回転させる。
【0085】
また、変形機能154は、骨格の3次元構造301と、該3次元構造301に対応する2次元部位画像データ201の一致度が、閾値以上であると判定した場合(S6“Yes”)、該3次元構造301を生成機能155に送出する。
【0086】
そして、生成機能155は、変形機能154によって変形または回転された骨格の3次元構造301(第1の3次元構造)を、互いに空間座標が重ならないように、3次元空間内に隙間なく配置する(S7)。
【0087】
そして、生成機能155は、骨格の3次元構造301(第1の3次元構造)の配置が完了したか否かを判定する(S8)。生成機能155は、骨格の3次元構造301(第1の3次元構造)の配置が完了していないと判定した場合(S8“No”)、S5に戻る。この場合、変形機能154は、次の、骨格の3次元構造301の変形または回転を行う。
【0088】
変形機能154および生成機能155は、X線CT画像データ30に含まれる全ての骨格の3次元構造301の配置が完了するまで、S5~S8の処理を繰り返す。
【0089】
そして、生成機能155が骨格の3次元構造301(第1の3次元構造)の配置が完了したと判定した場合(S8“Yes”)、第1の抽出機能152は、X線CT画像データ30から、骨格以外の特徴部位の3次元構造301を抽出する(S9)。例えば、第1の抽出機能152は、X線CT画像データ30から、臓器または筋組織に相当する3次元構造301(第2の3次元構造)を抽出する。
【0090】
次に、第2の抽出機能153は、X線画像データ20から骨格以外の2次元部位画像データ201を抽出する(S10)。
【0091】
次に、変形機能154は、第1の抽出機能152によって抽出された骨格以外の3次元構造301を、特性情報に基づいて、変形または回転する(S11)。
【0092】
例えば、変形機能154は、X線CT画像データ30において被検体Pが腕を挙上した状態における各臓器または筋組織に相当する3次元構造301の形状、位置、および向きを、被検体Pが腕を体側に下した状態における各臓器または筋組織に相当する3次元構造301の形状、位置、および向きに変更する。また、臓器および筋組織は剛性が低いため、変形機能154は、被検体Pの姿勢の変化に伴う重力方向の変化に基づいて、臓器および筋組織を変形させる。また、変形機能154は、隣接する3次元構造301同士の引っ張り、圧縮、押し付け等の関係に基づいて、複数の3次元構造301を変形させる。
【0093】
そして、変形機能154は、骨格以外の3次元構造301と、該3次元構造301に対応する2次元部位画像データ201の一致度が、閾値以上であるか否かを判定する(S12)。
【0094】
変形機能154は、骨格以外の3次元構造301と、該3次元構造301に対応する2次元部位画像データ201の一致度が、閾値未満であると判定した場合(S12“No”)、S11に戻り、3次元構造301の形状または大きさが2次元部位画像データ201に類似するように、3次元構造301を変形または回転させる。
【0095】
また、変形機能154は、骨格以外の3次元構造301と、該3次元構造301に対応する2次元部位画像データ201の一致度が、閾値以上であると判定した場合(S12“Yes”)、該3次元構造301を生成機能155に送出する。
【0096】
そして、生成機能155は、変形機能154によって変形または回転された骨格以外の3次元構造301(第2の3次元構造)を、互いに空間座標が重ならないように、3次元空間内に隙間なく配置する(S13)。
【0097】
そして、生成機能155は、骨格以外の3次元構造301(第2の3次元構造)の配置が完了したか否かを判定する(S14)。生成機能155は、骨格以外の3次元構造301(第2の3次元構造)の配置が完了していないと判定した場合(S14“No”)、S11に戻る。この場合、変形機能154は、次の、骨格以外の3次元構造301の変形または回転を行う。
【0098】
変形機能154および生成機能155は、X線CT画像データ30に含まれる全ての骨格以外の3次元構造301の配置が完了するまで、S11~S14の処理を繰り返す。
【0099】
そして、生成機能155は、骨格以外の3次元構造301(第2の3次元構造)の配置が完了したと判定した場合(S14“Yes”)、骨格および骨格以外の3次元構造を組み合わせて3次元空間に配置した姿勢変更済みの3次元画像データ、つまり第3の画像データを、出力機能156に送出する。
【0100】
そして、出力機能156は、生成機能155によって生成された姿勢変更済みの3次元画像データを出力する(S15)。ここで、このフローチャートの処理は終了する。
【0101】
このように、本実施形態の医用画像処理装置1は、X線CT装置3によって被検体Pが第1の姿勢で撮像されたX線CT画像データ30に含まれる特徴部位に対応する3次元構造301を、X線診断装置2によって被検体Pが第2の姿勢で撮像されたX線画像データ20において該3次元構造301と同一の特徴部位に対応する2次元部位画像データ201に基づいて、変形または回転させる。本実施形態の医用画像処理装置1は、変形または回転した複数の3次元構造301を組み合わせることにより、第2の姿勢の被検体Pを描出した3次元画像データを生成する。このため、本実施形態の医用画像処理装置1によれば、撮像形式の異なる複数のモダリティによって異なる姿勢で被検体が撮像された医用画像データ同士を、高精度に位置合わせすることができる。
【0102】
このため、本実施形態の医用画像処理装置1によれば、例えば、あるモダリティで被検体Pが撮像された医用画像に描出された病変等の位置が、他のモダリティにおいて異なる姿勢で被検体Pが撮像された医用画像のどの位置に対応するかを読影者が容易に把握することができる。
【0103】
また、本実施形態の医用画像処理装置1は、3次元画像データであるX線CT画像データ30に描出された被検体Pの姿勢を、2次元画像データであるX線画像データ20に描出された被検体Pの姿勢に合わせて変換した3次元画像データを生成する。このため、本実施形態の医用画像処理装置1によれば、読影者が、3次元画像データと2次元画像データとを読影する際の負荷を低減することができる。
【0104】
また、本実施形態の医用画像処理装置1は、特徴部位の各々の特性を表す特性情報に基づいて、3次元構造301を変形または回転させる。特性情報は、骨格、臓器、または筋組織の、動きの制約、被検体Pの動作に伴う変形、または剛性を表すため、本実施形態の医用画像処理装置1によれば、被検体Pの姿勢の変化に伴う各特徴部位の各々の変化を高精度に反映した姿勢変更済みの3次元画像データを生成することができる。
【0105】
また、本実施形態の医用画像処理装置1は、被検体Pが腕を挙上した姿勢で撮像された胸部CT画像データを、特性情報に定義された被検体Pが腕を挙上した姿勢から腕を体側に下した姿勢に変化した場合における骨格、臓器、または筋組織の形状の変化に基づいて、被検体Pが腕を体側に下した姿勢に変換する。一般に、X線CT装置3においては、被検体Pが腕を下げた状態で撮像するとアーチファクトが発生しやすいが、被検体Pが腕を挙上した姿勢で撮像すると、アーチファクトの発生が低減される。このため、本実施形態の医用画像処理装置1によれば、被検体Pが腕を挙上した姿勢で撮像することで胸部CT画像データにおけるアーチファクトを低減した上で、被検体Pが腕を体側に下した姿勢が描出された3次元画像データを生成することができる。
【0106】
また、上記の処理を行う際に、例えば被検体Pが腕を挙上した姿勢から腕を体側に下した姿勢のデータをもとに片腕を体側に下した姿勢に変換するなどの左右別々の処理を行ってもよい。
【0107】
また、本実施形態の医用画像処理装置1は、特性情報に含まれる骨格、臓器、および筋組織の各々の剛性に基づいて、被検体Pの姿勢の変化に伴う重力方向の変化を加味して3次元構造301を変形する。このため、本実施形態の医用画像処理装置1によれば、被検体Pの姿勢の変化によって生じた重力方向の変化に伴う各特徴部位の各々の変化を、さらに高精度に反映した姿勢変更済みの3次元画像データを生成することができる。
【0108】
また、本実施形態の医用画像処理装置1は、骨格に相当する3次元構造301(第1の3次元構造)を変形または回転させた後に、変形または回転された第1の3次元構造の形状または向きに合わせて、臓器または筋組織に相当する3次元構造301(第2の3次元構造)を変形または回転させる。このため、本実施形態の医用画像処理装置1によれば、姿勢変更済みの3次元画像データにおける骨格の位置を先に特定することにより、臓器または筋肉の配置を特定するための処理の負荷を低減することができる。
【0109】
また、本実施形態の医用画像処理装置1は、腱に相当する3次元構造301(第3の3次元構造)と結合する複数の骨格に相当する3次元構造301(第1の3次元構造)同士の位置関係に基づいて、腱に相当する3次元構造301または筋肉に相当する3次元構造301(第4の3次元構造)を変形または回転させる。このため、本実施形態の医用画像処理装置1は、腱と接続する複数の骨同士の位置関係に応じた腱や筋肉の形状の変化を高精度に反映した姿勢変更済みの3次元画像データを生成することができる。
【0110】
なお、本実施形態において、図2では、臥位の状態の被検体Pを撮像するX線CT装置3を例示したが、X線CT装置3は、立位の状態の被検体Pを撮像する立位CT装置であっても良い。
【0111】
また、図3では立位の状態の被検体Pを撮像するX線診断装置2を例示したが、X線診断装置2は、臥位の状態の被検体Pを撮像するものでも良い。なお、図2、3に記載のX、Y、Z方向の向きは一例であり、これらに限定されるものではない。
【0112】
また、本実施形態の医用情報システムS1の構成は一例であり、これに限定されるものではない。例えば、医用情報システムS1は、PACS(Picture Archiving and Communication System)等の医用画像保管装置と、医用画像処理装置1とを備えるものであっても良い。当該構成を採用する場合は、医用画像処理装置1は、医用画像保管装置から3次元画像および時系列の2次元画像を取得する。また、この場合、X線CT装置3およびX線診断装置2は、医用情報システムS1に含まれなくとも良い。
【0113】
また、本実施形態では、医用画像処理装置1を、X線CT装置3およびX線診断装置2とは別個の装置として記載したが、医用画像処理装置1は当該構成に限定されるものではない。具体的には、X線CT装置3またはX線診断装置2を、医用画像処理装置の一例としても良い。例えば、X線CT装置3のコンソール装置の処理回路が、取得機能151、第1の抽出機能152、第2の抽出機能153、変形機能154、生成機能155、および出力機能156を備える構成を採用しても良い。また、X線CT装置3またはX線診断装置2の代わりに他のモダリティが採用される場合には、当該他のモダリティを、医用画像処理装置の一例としても良い。
【0114】
(第2の実施形態)
上述の第1の実施形態では、3次元構造301に対応する2次元部位画像データ201のX線画像データ20上の位置に基づいて3次元構造301を配置していた。この第2の実施形態では、さらに、X線画像データ20から被検体Pの身体の奥行方向の長さを推定し、当該推定の結果に基づいて、3次元構造301を配置する。
【0115】
本実施形態の医用情報システムS1は、第1の実施形態と同様の構成を備える。また、本実施形態の医用画像処理装置1は、第1の実施形態と同様に、NWインタフェース110と、記憶回路120と、入力インタフェース130と、ディスプレイ140と、処理回路150とを備える。
【0116】
本実施形態の処理回路150は、第1の実施形態と同様に、取得機能151と、第1の抽出機能152と、第2の抽出機能153と、変形機能154と、生成機能155と、出力機能156とを備える。取得機能151と、第1の抽出機能152と、第2の抽出機能153と、変形機能154と、出力機能156とは、第1の実施形態と同様の機能を備える。
【0117】
本実施形態の生成機能155は、第1の実施形態の機能を備えた上で、X線画像データ20に描出された被検体Pの胸骨の位置、胸骨の傾き、被検体Pの肋骨の位置、または肋骨の傾きに基づいて、被検体Pの胸郭の厚さを推定する。生成機能155は、該推定の結果に基づいて、複数の3次元構造301の各々の配置を調整する。
【0118】
図9は、呼気時と吸気時における胸骨および肋骨の差異を説明する図である。胸骨は、吸気と共に、体軸Oに直交する方向に移動する。このため、図9に示すように、吸気時における体軸Oと胸骨とのなす角θ2は、呼気時における体軸Oと胸骨とのなす角θ1よりも大きくなる。また、吸気時の方が被検体Pの胸郭が広がって奥行方向の厚みが増す。このため、吸気時における被検体Pの身体の奥行方向の長さ(奥行)d2は、呼気時における被検体Pの身体の奥行方向の長さd1よりも長くなる。
【0119】
図9においては、被検体Pの側面方向から見た場合における胸骨および肋骨を図示しているが、呼気時と吸気時における胸骨の角度の違いは、被検体Pの腹背方向(正面方向または背面方向)からX線を照射して撮影されたX線画像データ20においても、描出される。また、図9に示すように、吸気時と吸気時とでは肋骨の角度も異なる。当該差異も、被検体Pの腹背方向からX線を照射して撮影されたX線画像データ20に描出される。
【0120】
例えば、本実施形態の生成機能155は、複数のX線画像データ20に描出された被検体Pの胸骨の位置、胸骨の傾き、被検体Pの肋骨の位置、または肋骨の傾きに基づいて、被検体Pが呼気状態であるか吸気状態であるかを判定する。生成機能155は、被検体Pが呼気状態であるか吸気状態であるかに基づいて、被検体Pの身体の奥行方向の長さを推定する。
【0121】
また、胸郭全体が呼吸によって均等に拡大または縮小するのではなく、特徴部位によって変動の大きさに差異がある。具体的には、胸郭のうち、被検体Pの足側に近い方の特徴部位の方が、被検体Pの頭側に近い方の特徴部位よりも、呼吸による大きさの変動が大きくなる。
【0122】
また、被検体Pの姿勢によっても、胸郭の拡大または縮小の程度が異なる。例えば、被検体Pが立位の場合は、横臥位の場合よりも、被検体Pの背中側に向かって胸郭が大きく広がる。本実施形態の生成機能155は、このような被検体Pの姿勢に応じて、呼気時および吸気時の胸郭の大きさ、および被検体Pの身体の奥行方向の長さを推定する。
【0123】
生成機能155は、該推定の結果に基づいて、3次元空間における複数の3次元構造301の各々の配置を調整する。また、生成機能155は、椎体と胸骨をつなぐ肋骨の角度からも情報を得て体厚を推定して、3次元空間における複数の3次元構造301の各々の配置に反映させる。
【0124】
本実施形態の医用画像処理装置1によれば、第1の実施形態と同様の効果に加えて、被検体Pの身体の奥行方向の長さを推定することにより、さらに高精度な姿勢変更済みの3次元画像データを生成することができる。
【0125】
(変形例1)
上述の第1、第2の実施形態では、3次元のX線CT画像データ30を第1の画像データの一例とし、2次元のX線画像データ20を第2の画像データの一例としたが、第1の画像データおよび第2の画像データは、これらに限定されるものではない。
【0126】
また、上述の第1、第2の実施形態では、X線CT装置3を第1の装置の一例とし、X線診断装置2を第2の装置の一例としたが、第1の装置および第2の装置は撮像形式の異なる装置であれば良く、これらに限定されるものではない。
【0127】
例えば、X線CT装置3またはX線診断装置2の代わりに、PET(Positron Emission Tomography)装置、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置、磁気共鳴イメージング装置、X線アンギオグラフィ装置、超音波診断装置、またはその他の撮像装置等の各種のモダリティが採用されても良い。
【0128】
例えば、第1の画像データと第2の画像データとは共に3次元画像データであっても良い。一例として、第1の画像データがX線CT画像データ30、第2の画像データが磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)装置で撮像された3次元の磁気共鳴画像データであっても良い。
【0129】
また、第1の画像データと第2の画像データとは共に2次元画像データであっても良い。なお、第1の画像データが2次元画像データである場合には、生成機能155によって生成される第3の画像データも2次元画像データとなる。
【0130】
例えば、第2の画像データは、光学画像であっても良い。また、第2の画像データは、超音波診断装置によって撮像された超音波画像データであっても良い。
【0131】
(変形例2)
上述の第1、第2の実施形態では、主として胸部のX線CT画像データ30およびX線画像データ20を例示して説明したが、撮像範囲はこれに限定されるものではない。例えば、X線CT画像データ30およびX線画像データ20は、膝または椎体を撮像範囲としても良い。
【0132】
例えば、被検体Pの検査対象部位が、被検体Pが臥位状態では顕現しない場合は、X線CT画像データ30では、被検体Pの検査対象部位の疾病または傷病の状態を描出することが困難な場合がある。
【0133】
より具体的には、被検体Pが椎体側弯患者である場合、臥位状態で撮像されたX線CT画像データ30では、椎体の側弯箇所が伸びてしまい、側弯状態を立体画像で描出することが困難である。立位CT装置であれば、立位状態の被検体Pの椎体の側弯状態を描出することができるが、被検体Pの病状によっては、撮像の間、立位姿勢を維持することが困難なため、立位CT装置での撮像が難しい場合がある。
【0134】
本変形例の変形機能154および生成機能155は、X線CT装置3で臥位撮影した椎体側弯患者である被検体Pの椎体を含むX線CT画像データ30と、被検体Pを立位で撮影した椎体のX線画像データ20とを第1の実施形態と同様の手法により位置合わせすることにより、椎体側弯の3次元画像データを生成する。
【0135】
本変形例においては、臥位が第1の姿勢の一例であり、立位が第2の姿勢の一例である。また、本変形例においては、特性情報は、被検体Pの動きに伴う変形として、被検体Pが臥位の姿勢から立位の姿勢に変化した場合における骨格、臓器、または筋組織の形状の変化を表す情報を含むものとする。
【0136】
本変形例の医用画像処理装置1によれば、立位CT装置を使用しなくとも、立位状態の椎体の3次元画像データを生成することができる。
【0137】
また、椎体側弯患者に限らず、変形性膝関節症患者の膝についても、本変形例を適用することができる。
【0138】
(変形例3)
上述の第1、第2の実施形態では、医用画像処理装置1は、3次元構造301に対応する2次元部位画像データ201のX線画像データ20上の位置に基づいて3次元構造301を3次元空間内に配置していたが、標準人体モデルを基準として位置合わせを行っても良い。
【0139】
標準人体モデルは、一般的な人体の立体画像モデルであり、例えば、予め記憶回路120に記憶される。変形機能154は、X線CT画像データ30とX線画像データ20とを、それぞれ標準人体モデルを基準として大きさや形状の補正を行ってから、X線CT画像データ30に含まれる3次元構造301と、X線画像データ20に含まれる2次元部位画像データ201との比較を行っても良い。
【0140】
また、生成機能155は、標準人体モデルを基準として、3次元構造301を配置することにより、3次元構造301の位置決めの処理を効率化しても良い。
【0141】
(変形例4)
また、医用画像処理装置1は、被検体Pの姿勢の変化によるCT値の変化を、姿勢変更済みの3次元画像データに反映しても良い。
【0142】
例えば、本変形例の生成機能155は、生成した姿勢変更済みの3次元画像データにおける胸郭の大きさの変化に基づいて、姿勢変更済みの3次元画像データにおける肺のCT値を変更する。
【0143】
X線CT画像データ30においては、CT値が画素値に変換されるため、生成機能155によってCT値が変更されることにより、姿勢変更済みの3次元画像データに基づく画像がディスプレイ140に表示される際の画素値が変化する。
【0144】
具体的には、肺に取り込まれた空気の量が少ないほど、肺のCT値は高くなる。このため、生成機能155は、X線CT画像データ30とX線画像データ20の撮像時の被検体Pの姿勢に応じて、被検体Pの胸郭内の空間の体積を推定し、該推定の結果から、肺に取り込まれた空気の量を推定する。
【0145】
被検体Pの胸郭の大きさは、被検体Pが腕を挙上している場合には、腕を体側に沿って降ろしている場合よりも大きくなる。このため、生成機能155は、X線CT画像データ30における肺のCT値を、X線画像データ20の撮像時における被検体Pの姿勢において推定される被検体Pの胸郭内の空間の体積に応じて補正する。このような補正により、医用画像処理装置1は、X線画像データ20の撮像時における被検体Pの姿勢に即した姿勢変更済みの3次元画像データを生成することができる。
【0146】
また、生成機能155は、上述の第2の実施形態のように被検体Pの胸骨および肋骨の位置または角度に基づいて推定された被検体Pの胸郭の厚さに基づいて、肺のCT値を変更しても良い。
【0147】
なお、CT値の補正は、姿勢変更済みの3次元画像データの生成後ではなく、3次元構造301と2次元部位画像データ201との比較の際に、変形機能154が実施するものとしても良い。
【0148】
(変形例5)
また、上述の第1、第2の実施形態では、1回の撮像で撮像されたX線画像データ20を第2の画像データの一例としたが、モダリティによっては、受光面の面積等の問題により、1回の撮影で胸部全体を撮影することができない場合がある。このような場合には、医用画像処理装置1は、X線画像データ20からイメージステッチング等の技術を用いて胸部全体の画像を生成しても良い。当該機能は、例えば第1の抽出機能152に含まれるものとする。
【0149】
(変形例6)
また、医用画像処理装置1は、撮像時刻の異なる複数のX線画像データ20を用いて、姿勢変更済みの3次元画像データを生成しても良い。例えば、本変形例の第2の抽出機能153は、撮像時刻の異なる複数のX線画像データ20から2次元部位画像データ201を抽出する。また、本変形例の変形機能154は、複数のX線画像データ20から抽出された2次元部位画像データ201に基づいて、3次元構造301を変形または回転させる。
【0150】
本変形例の医用画像処理装置1は、例えば連続して撮像された複数のX線画像データ20における特徴部位の位置や形状を加味することにより、より高精度に姿勢変更済みの3次元画像データを生成することができる。
【0151】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、異なる姿勢の被検体を撮像した複数の医用画像データを高精度に位置合わせすることができる。
【0152】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0153】
1 医用画像処理装置
2 X線診断装置
3 X線CT装置
20 X線画像データ
30 X線CT画像データ
140 ディスプレイ
150 処理回路
151 取得機能
152 第1の抽出機能
153 第2の抽出機能
154 変形機能
155 生成機能
156 出力機能
201,201a~201d 2次元部位画像データ
301,301a~301d 3次元構造
P 被検体
S1 医用情報システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9