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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】光造形装置、造形方法及び三次元造形物
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/129 20170101AFI20231120BHJP
   B29C 64/286 20170101ALI20231120BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20231120BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20231120BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20231120BHJP
【FI】
B29C64/129
B29C64/286
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y80/00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019224423
(22)【出願日】2019-12-12
(65)【公開番号】P2021091186
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】303018827
【氏名又は名称】Tianma Japan株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100183955
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 悟郎
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100180334
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 洋美
(74)【代理人】
【識別番号】100177149
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 浩義
(74)【代理人】
【識別番号】100174067
【弁理士】
【氏名又は名称】湯浅 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136342
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 成美
(72)【発明者】
【氏名】溝口 親明
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-052078(JP,A)
【文献】特開2012-215614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/129
B29C 64/286
B33Y 10/00
B33Y 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二色性重合開始剤を含む光硬化樹脂を保持する樹脂槽と、
前記光硬化樹脂を硬化させる光を照射する光照射部と、を備え、
前記二色性重合開始剤を所定の方向に配向させる配向膜が、前記樹脂槽の底部に設けられ、
前記光照射部は、前記光を、前記二色性重合開始剤が前記配向膜により配向する方向と直交する方向に偏光方向を有する直線偏光として、前記樹脂槽の前記底部を透過させて、前記光硬化樹脂に照射する、
光造形装置。
【請求項2】
前記光照射部は、前記光を出射する光源部と、前記光源部から出射された前記光を三次元造形物の断面形状に基づくパターンに変調する光変調部と、を備える、
請求項1に記載の光造形装置。
【請求項3】
前記光照射部は、前記光を出射する光源部と、前記光源部から出射された前記光を前記直線偏光として出射する偏光板と、を備え、
前記樹脂槽の前記底部は、前記樹脂槽の前記底部に平行な横電界を前記光硬化樹脂に印加する電極を有し、
前記横電界を、前記光硬化樹脂の三次元造形物の断面形状に基づく領域に印加することによって、前記二色性重合開始剤を前記配向膜により配向する方向と直交する方向に配向させた状態で、前記光照射部は前記直線偏光を前記光硬化樹脂に照射する、
請求項1に記載の光造形装置。
【請求項4】
前記配向膜は、水平配向膜である、
請求項1から3のいずれか1項に記載の光造形装置。
【請求項5】
前記配向膜は、垂直配向膜である、
請求項1から3のいずれか1項に記載の光造形装置。
【請求項6】
前記配向膜は、光異性化型の光配向膜である、
請求項1から5のいずれか1項に記載の光造形装置。
【請求項7】
前記二色性重合開始剤は液晶性を有する、
請求項1から6のいずれか1項に記載の光造形装置。
【請求項8】
前記光硬化樹脂は、液晶性モノマーと液晶性オリゴマーの少なくとも一方を含む、
請求項1から7のいずれか1項に記載の光造形装置。
【請求項9】
配向膜により配向した二色性重合開始剤を含む光硬化樹脂に、前記二色性重合開始剤が前記配向膜により配向する方向と直交する方向に偏光方向を有する直線偏光を照射することによって、前記光硬化樹脂を硬化させる工程と、
硬化した前記光硬化樹脂を前記直線偏光の照射方向に移動させる工程と、を含む、
三次元造形物の造形方法。
【請求項10】
前記光硬化樹脂の三次元造形物の断面形状に基づく領域に、横電界を印加することにより、前記領域の内の前記二色性重合開始剤を前記配向膜により配向する方向と直交する方向に配向させる工程を含む、
請求項9に記載の三次元造形物の造形方法。
【請求項11】
凹凸を含む、三次元の外形形状を有し、
二色性重合開始剤を含む硬化した光硬化樹脂が層状に積層されている
三次元造形物。
【請求項12】
前記二色性重合開始剤が所定の方向に配向している、
請求項11に記載の三次元造形物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光造形装置、造形方法及び三次元造形物に関する。
【背景技術】
【0002】
光硬化樹脂を保持している容器の底を介して、光を光硬化樹脂に照射することにより、三次元造形物を造形する技術が知られている。光を容器の底を介して光硬化性樹脂に照射する場合、硬化した光硬化樹脂が容器の底に付着するおそれがある。そこで、硬化した光硬化樹脂を容器の底から剥離する方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1は、規制窓を介して光を放射することにより規制窓と移動台との間に硬化層を形成し、硬化層を積層することにより立体モデルを造形する光造形装置を開示している。特許文献1の光造形装置では、移動台を光硬化性樹脂の表面に垂直な方向に移動させることにより、形成された硬化層を規制窓から剥離している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-137049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の製造装置では、移動台を移動させることにより、規制窓に付着した硬化層を剥離した後に、次の硬化層を形成する位置に移動台を移動させて次の硬化層を形成するので、三次元造形物の製造のスループットが低下する。
【0006】
本開示は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、硬化した光硬化樹脂の樹脂槽の底部への付着を抑制できる、光造形装置、造形方法及び三次元造形物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、第1の観点に係る光造形装置は、
二色性重合開始剤を含む光硬化樹脂を保持する樹脂槽と、
前記光硬化樹脂を硬化させる光を照射する光照射部と、を備え、
前記二色性重合開始剤を所定の方向に配向させる配向膜が、前記樹脂槽の底部に設けられ、
前記光照射部は、前記光を、前記二色性重合開始剤が前記配向膜により配向する方向と直交する方向に偏光方向を有する直線偏光として、前記樹脂槽の前記底部を透過させて、前記光硬化樹脂に照射する。
【0008】
第2の観点に係る三次元造形物の造形方法は、
配向膜により配向した二色性重合開始剤を含む光硬化樹脂に、前記二色性重合開始剤が前記配向膜により配向する方向と直交する方向に偏光方向を有する直線偏光を照射することによって、前記光硬化樹脂を硬化させる工程と、
硬化した前記光硬化樹脂を前記直線偏光の照射方向に移動させる工程と、を含む。
【0009】
第3の観点に係る三次元造形物は、
凹凸を含む、三次元の外形形状を有し、
二色性重合開始剤を含む硬化した光硬化樹脂が層状に積層されている
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、光硬化樹脂に、二色性重合開始剤が配向膜により配向する方向と直交する方向に偏光方向を有する直線偏光を照射するので、硬化した光硬化樹脂の樹脂槽の底部への付着を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1に係る光造形装置の構成を示す図である。
図2】実施形態1に係る光造形装置を示す模式図である。
図3】実施形態1に係る二色性重合開始剤の一例を示す図である。
図4】実施形態1に係る硬化した光硬化樹脂の形成を説明するための模式図である。
図5】実施形態1に係る三次元造形物の造形方法を示すフローチャートである。
図6】実施形態2に係る光造形装置の構成を示す図である。
図7】実施形態2に係る光造形装置を示す模式図である。
図8】実施形態2に係る底部を示す上面図である。
図9】実施形態2に係る印加部の電極を示す上面図である。
図10】実施形態2に係る横電界を印加されていない状態の光硬化樹脂を説明するための模式図である。
図11】実施形態2に係る横電界を印加された状態の光硬化樹脂を説明するための模式図である。
図12】実施形態2に係る三次元造形物の造形方法を示すフローチャートである。
図13】変形例に係る横電界を印加された状態の光硬化樹脂を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態に係る光造形装置について、図面を参照して説明する。
<実施形態1>
図1図5を参照して、本実施形態に係る光造形装置100を説明する。光造形装置100は、二色性重合開始剤を含む光硬化樹脂RLから三次元造形物Obを造形する。
【0013】
光造形装置100は、図1図2に示すように、樹脂槽10と造形プレート20と移動部30と光照射部40と制御部50とを、筐体5内に備える。樹脂槽10は、二色性重合開始剤を含む光硬化樹脂RLを保持する。造形プレート20は、面20aに三次元造形物Obを造形される。移動部30は造形プレート20を移動させる。光照射部40は、二色性重合開始剤を含む光硬化樹脂RLに、二色性重合開始剤を含む光硬化樹脂RLを硬化させる光を照射する。制御部50は、光造形装置100の各部を制御する。
本明細書では、理解を容易にするため、図2における光造形装置100の右方向(紙面の右方向)を+X方向、上方向(紙面の上方向)を+Z方向、+X方向と+Z方向に垂直な方向(紙面の手前方向)を+Y方向として説明する。また、二色性重合開始剤を含む光硬化樹脂RLを、光硬化樹脂RLと記載する場合がある。
【0014】
光造形装置100の樹脂槽10は、図2に示すように、光硬化樹脂RLを保持する。樹脂槽10は、+Z方向の面が開口した箱形状の容器である。樹脂槽10は、底部12と配向膜14と壁部16とを有する。配向膜14は、光硬化樹脂RLに含まれる二色性重合開始剤を所定の方向に配向させる。
【0015】
ここで、樹脂槽10に保持される光硬化樹脂RLについて説明する。光硬化樹脂RLは、所定の波長の光を照射されることにより硬化する樹脂である。光硬化樹脂RLに所定の波長の光を照射することにより、硬化した光硬化樹脂RSが形成される。本実施形態では、光硬化樹脂RLはUV(Ultraviolet)硬化型樹脂である。また、光硬化樹脂RLは液晶性を有することが好ましい。
【0016】
光硬化樹脂RLは、二色性重合開始剤と、モノマー、オリゴマー等とを含む。二色性重合開始剤は、光硬化樹脂RLを硬化させる光(UV光)を吸収してラジカル、イオン等の活性種を発生し、モノマー、オリゴマー等に重合反応を開始させる。二色性とは、偏光方向が互いに直交する2つの直線偏光を物質に照射した場合に、その物質における2つの直線偏光の吸収強度に差があることを指す。本実施形態の二色性重合開始剤では、配向膜14により配向される方向(二色性重合開始剤の分子長軸)に平行な偏光方向を有する直線偏光の吸収強度が大きく、配向膜14により配向される方向に垂直な偏光方向を有する直線偏光の吸収強度が小さい。二色性重合開始剤としては、図3に示すような、液晶性重合開始剤が挙げられる。二色性重合開始剤の濃度は、例えば10重量%以下である。
なお、以下の実施形態では、二色性重合開始剤の誘電率異方性を正として、説明する。
【0017】
光硬化樹脂RLに含まれるモノマーとオリゴマーは、液晶性を有することが好ましい。光硬化樹脂RLは、液晶性モノマーと液晶性オリゴマーの少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0018】
樹脂槽10の底部12は、光照射部40から出射される光硬化樹脂RLを硬化させる光(UV光)を透過する。底部12は、例えば、平板状のガラスである。図2に示すように、配向膜14が底部12の内面12aに設けられる。
【0019】
樹脂槽10の配向膜14は、底部12の内面12aに設けられる。配向膜14は、配向規制力により二色性重合開始剤(二色性重合開始剤の分子長軸)を所定の方向に配向させる。また、光硬化樹脂RLが液晶性を有する場合、配向膜14は光硬化樹脂RLを所定の方向に配向させる。
【0020】
本実施形態では、配向膜14は、水平配向膜であり、二色性重合開始剤をY方向に配向させる。配向膜14は、例えば、光異性化型の光配向膜である。光異性化型の光配向膜は、内面12aに塗布された異性化反応を起こす配向膜材料に、直線偏光を照射して形成される。光異性化型の光配向膜は光(UV光)に対する耐性が高いので、配向膜14として光異性化型の光配向膜を用いることにより、樹脂槽10の耐久性を向上できる。
【0021】
樹脂槽10の壁部16は、光硬化樹脂RLを硬化させる光を遮る。壁部16は、樹脂、金属等から形成される。なお、樹脂槽10の壁部16と底部12は、分離可能に形成されている。
【0022】
光造形装置100の造形プレート20は、樹脂製又は金属製の平板である。造形プレート20は、樹脂槽10の底部12に対して+Z側に配置されている。また、光造形装置100の初期状態では、造形プレート20は樹脂槽10内に位置している(造形プレート20の初期位置)。造形プレート20は、樹脂槽10の底部12に対向する面20aに、三次元造形物Obを造形される。造形プレート20は、移動部30によって+Z方向と-Z方向とに移動される。
【0023】
光造形装置100の移動部30は、造形プレート20を+Z方向と-Z方向とに移動させる。移動部30は、アーム32と移動機構34とを有する。移動部30のアーム32は、造形プレート20と移動機構34とを接続する。移動部30の移動機構34は、アーム32を介して、造形プレート20を+Z方向と-Z方向に移動させる。移動機構34は、モータ、ボールネジ、スライダ等(図示せず)を備えている。
【0024】
光造形装置100の光照射部40は、光硬化樹脂RLを硬化させる光(UV光)を光硬化樹脂RLに照射する。光照射部40は、光硬化樹脂RLを硬化させる光を、二色性重合開始剤が配向膜14により配向する方向と直交する方向に偏光方向を有する直線偏光として、光硬化樹脂RLに照射する。光照射部40は、光源部42と光変調部44とを備える。以下では、二色性重合開始剤が配向膜14により配向する方向を、二色性重合開始剤の配向膜14による配向方向と記載する場合がある。
【0025】
光照射部40の光源部42は、光硬化樹脂RLを硬化させる光(UV光)を光硬化樹脂RLに向けて出射する。本実施形態では、光源部42は、樹脂槽10に対して-Z側に配置される。光源部42は、樹脂槽10側に位置する上面42aから非偏光の光硬化樹脂RLを硬化させる光を+Z方向へ出射する。光源部42は、反射シート、光硬化樹脂RLを硬化させる光を出射するLED(Light emitting diode)、拡散シート等を備えている。
【0026】
光照射部40の光変調部44は、光源部42から出射された光硬化樹脂RLを硬化させる光(UV光)を、三次元造形物Obの断面形状に基づくパターンに変調する。また、光変調部44は、変調された光を、直線偏光として、樹脂槽10の底部12を透過させて三次元造形物Obの断面形状に対応したパターンで光硬化樹脂RLに照射する。光変調部44から出射される直線偏光の偏光方向は、二色性重合開始剤の配向膜14による配向方向と直交している。
【0027】
具体的には、光変調部44は、樹脂槽10と光源部42との間に配置された液晶素子である。液晶素子は、例えば、複数の液晶セルを有しアクティブマトリクス駆動されるTN(Twisted Nematic)型液晶素子である。液晶セルは、マトリクス状に配列され、光硬化樹脂RLを硬化させる光を透過又は遮蔽する。液晶素子は、三次元造形物Obの+Z方向に垂直な断面の形状を表す断面形状データに基づいて、光源部42から出射された光硬化樹脂RLを硬化させる光を、三次元造形物Obの断面形状に基づくパターンに変調する。そして、液晶素子は、光硬化樹脂RLを硬化させる光を、三次元造形物Obの断面形状に対応するパターンで、二色性重合開始剤の配向膜14による配向方向(Y方向)と直交する偏光方向(X方向)を有する直線偏光として出射する。
【0028】
ここで、光硬化樹脂RLの硬化について説明する。
本実施形態では、二色性重合開始剤を所定の方向(Y方向)に配向させる配向膜14が、底部12の内面12aに設けられている。したがって、樹脂槽10に保持されている光硬化樹脂RLでは、配向膜14の配向規制力が及ぶ配向膜14近傍の領域R1の、二色性重合開始剤の分子Mは、図4に示すように、所定の方向(Y方向)に配向している。一方、配向膜14の規制力が及ばない配向膜14から離れた領域R2の、二色性重合開始剤の分子Mは、ランダムな方向に向いている。
【0029】
本実施形態では、このような状態の光硬化樹脂RLに、光硬化樹脂RLを硬化させる光(UV光)が、二色性重合開始剤の配向膜14による配向方向(Y方向)と直交する偏光方向(X方向)を有する直線偏光として照射される。配向膜14から離れた領域R2では、偏光方向(X方向)又は偏光方向に近い方向を向いた二色性重合開始剤の分子Mが、光硬化樹脂RLを硬化させる光を吸収するので、光硬化樹脂RLが素早く硬化する。したがって、硬化した光硬化樹脂RSの層が、配向膜14から離れた領域R2に位置する造形プレート20の面20aに形成される。
【0030】
一方、配向膜14近傍の領域R1では、配向方向(Y方向)又は配向方向に近い方向を向いた二色性重合開始剤の分子Mは、光硬化樹脂RLを硬化させる光をほとんど吸収しないので、硬化した光硬化樹脂RSはほとんど形成されない。したがって、本実施形態では、硬化した光硬化樹脂RSの底部12への付着を抑制できる。なお、配向膜14の配向規制力が及ぶ配向膜14近傍の領域R1の厚さは、一般に0.5μm以下である。
【0031】
図1に戻り、光造形装置100の制御部50は、移動部30と光照射部40とを制御する。また、制御部50は、三次元造形物Obの三次元形状を表す三次元形状データから、三次元造形物Obの+Z方向に垂直な断面の形状を表す断面形状データを生成する。+Z方向に垂直な断面の形状を表す断面形状データは、+Z方向に沿って所定の間隔で生成される。
【0032】
制御部50は、図1に示すように、各種の処理を実行するCPU(Central Processing Unit)52と、プログラムとデータとを記憶しているROM(Read Only Memory)54と、データを記憶するRAM(Random Access Memory)56と、各部の間の信号を入出力する入出力インタフェース58とを備える。制御部50の機能は、CPU52が、ROM54に記憶されたプログラムを実行することによって、実現される。入出力インタフェース58は、CPU52と、移動部30と光照射部40と図示しない外部装置との信号を入出力する。
【0033】
次に、図5を参照して、三次元造形物Obの造形方法を説明する。本実施形態では、三次元造形物Obは、光造形装置100によって、硬化した光硬化樹脂RSの層をn層積層することにより造形される。
【0034】
図5は、三次元造形物Obの造形方法を示すフローチャートである。三次元造形物Obの造形方法は、光硬化樹脂RLと断面形状データとを準備する工程(ステップS10)と、造形プレート20を初期位置に配置する工程(ステップS20)と、配向膜14により配向した二色性重合開始剤を含む光硬化樹脂RLに、二色性重合開始剤が配向膜14により配向する方向と直交する方向に偏光方向を有する直線偏光を照射することによって、光硬化樹脂RLを硬化させる工程(ステップS30)と、硬化した光硬化樹脂RSを直線偏光の照射方向に移動させる工程(ステップS40)と、硬化した光硬化樹脂RSの層がn層積層されたか否か判別する工程(ステップS50)と、を含む。本実施形態では、ステップS30とステップS40が繰り返される。
【0035】
ステップS10では、三次元造形物Obを造形するため光硬化樹脂RLと、三次元造形物Obの+Z方向に垂直な断面の形状を表す断面形状データとを準備する。本実施形態では、光硬化樹脂RLは、二色性重合開始剤を含むUV硬化型樹脂である。断面形状データは、外部装置から入力された三次元造形物Obの三次元形状を表す三次元形状データから、光造形装置100の制御部50によって生成される。断面形状データは、+Z方向に沿って所定の間隔で、硬化した光硬化樹脂RSの層数分生成される。三次元形状データは、例えば、三次元造形物Obの三次元CAD(Computer-Aided Design)データである。
【0036】
本実施形態では、光硬化樹脂RLは光造形装置100の樹脂槽10に保持されている。配向膜14が樹脂槽10の底部12の内面12aに設けられているので、光硬化樹脂RLに含まれる二色性重合開始剤は、配向規制力が及ぶ配向膜14近傍の領域R1において、配向膜14により所定の方向(Y方向)に配向している。一方、二色性重合開始剤は、配向膜14から離れた領域R2において、ランダムな方向に向いている。
【0037】
ステップS20では、移動部30によって造形プレート20を移動させて、造形プレート20を初期位置に配置する。具体的には、造形プレート20の面20aが、配向膜14近傍の領域R1から硬化した光硬化樹脂RSの層の厚さ分(所定の間隔分)だけ+Z側(すなわち配向膜14から離れた領域R2)に配置される。
【0038】
ステップS30では、光照射部40の光源部42からUV光を出射させる。そして、1層目の断面形状データに基づいて、出射されたUV光を光照射部40の光変調部44より変調する。変調された光は、二色性重合開始剤の配向膜14による配向方向(Y方向)と直交する方向(X方向)に偏光方向を有する直線偏光として、光硬化樹脂RLに照射される。これにより、直線偏光(UV光)を照射された配向膜14から離れた領域R2では、偏光方向(X方向)又は偏光方向に近い方向を向いた二色性重合開始剤が、UV光を吸収して、光硬化樹脂RLが硬化する。そして、1層目の硬化した光硬化樹脂RSが造形プレート20の面20aに形成される。
【0039】
一方、直線偏光(UV光)を照射された配向膜14近傍の領域R1では、配向方向(Y方向)又は配向方向に近い方向を向いた二色性重合開始剤は、UV光をほとんど吸収しないので、硬化した光硬化樹脂RSはほとんど形成されない。したがって、本実施形態の造形方法では、硬化した光硬化樹脂RSの底部12への付着を抑制できる。
【0040】
ステップS40では、移動部30によって、硬化した光硬化樹脂RS(造形プレート20)を、硬化した光硬化樹脂RSを直線偏光(UV)の照射方向(+Z方向)に、硬化した光硬化樹脂RSの層の厚さ分(所定の間隔分)移動させる。本実施形態では、硬化した光硬化樹脂RSの底部12への付着が抑制されるので、硬化した光硬化樹脂RSを底部12から剥離する工程が不要になり、三次元造形物Obの製造のスループットを向上できる。
【0041】
ステップS50では、ステップS30を実行した回数がn回よりも小さい場合、硬化した光硬化樹脂RSの層がn層積層されていないと判別する(ステップS50;NO)。n層積層されていないと判別されると、造形処理はステップS30に戻り、2層目以降の硬化した光硬化樹脂RSを形成する。ステップS30を実行した回数がn回である場合、硬化した光硬化樹脂RSの層がn層積層されたと判別され(ステップS50;YES)、造形処理は終了する。以上により、光造形装置100は三次元造形物Obを造形できる。なお、硬化した光硬化樹脂RSは二色性重合開始剤を含んでおり、三次元造形物Obは二色性重合開始剤を含む硬化した光硬化樹脂RSから形成されている。
【0042】
以上のように、光造形装置100は、光硬化樹脂RLを硬化させる光を、二色性重合開始剤が配向膜14により配向する方向と直交する方向に偏光方向を有する直線偏光として、光硬化樹脂RLに照射するので、硬化した光硬化樹脂RSの底部12への付着を抑制できる。さらに、硬化した光硬化樹脂RSの底部12への付着を抑制できるので、三次元造形物Obの造形のスループットを向上できる。また、本実施形態の三次元造形物Obの造形方法は、硬化した光硬化樹脂RSの底部12への付着を抑制でき、造形のスループットを向上できる。
【0043】
<実施形態2>
実施形態1の光造形装置100では、光照射部40の光変調部44が変調した光を光硬化樹脂RLに照射するが、光硬化樹脂RLに横電界を印加する電極が樹脂槽10の底部12に設けられ、光変調部44は設けられなくともよい。
【0044】
図6図12を参照して、本実施形態の光造形装置100について説明する。本実施形態の光造形装置100は、図6に示すように、樹脂槽10と造形プレート20と移動部30と光照射部40と制御部50とを、備える。本実施形態の造形プレート20と移動部30の構成は、実施形態1の造形プレート20と移動部30の構成と同様であるので、ここでは、樹脂槽10と光照射部40と制御部50とを説明する。
【0045】
本実施形態の樹脂槽10は、実施形態1の樹脂槽10と同様に、光硬化樹脂RLを保持する。本実施形態の樹脂槽10は、+Z方向の面が開口した箱形状の容器である。本実施形態の樹脂槽10は、図7に示すように、底部12と配向膜14と壁部16とを有する。さらに、本実施形態の樹脂槽10は、図8に示すように、底部12の内面12aに印加部70を有する。本実施形態の壁部16の構成は、実施形態1の壁部16の構成と同様であるので、ここでは、底部12と配向膜14と印加部70とを説明する。なお、樹脂槽10に保持される光硬化樹脂RLは、実施形態1の光硬化樹脂RLと同様である。
【0046】
本実施形態の底部12は、実施形態1の底部12と同様に、光照射部40から出射される光硬化樹脂RLを硬化させる光(UV光)を透過する。底部12は、例えば、平板状のガラスである。本実施形態では、図8に示すように、配向膜14と印加部70が底部12の内面12aに設けられる。
【0047】
本実施形態の配向膜14は、図8に示すように、印加部70と底部12の内面12aとを覆う。配向膜14のその他の構成は実施形態1の配向膜14と同様であり、配向膜14は二色性重合開始剤をY方向に配向させる。
【0048】
印加部70は、底部12に平行で二色性重合開始剤の配向膜14による配向方向(Y方向)に直交する方向(X方向)の横電界を、光硬化樹脂RLに印加する。印加部70は、図8に示すように、底部12の内面12aにマトリクス状に配置されている。印加部70は、図9に示すように、電極72、74と図示しないスイッチング素子とを備える。
【0049】
印加部70の電極72と電極74は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)から櫛歯状に形成される。電極72と電極74は、それぞれ、「く」の字状の櫛歯部72aと櫛歯部74aを有している。櫛歯部72aと櫛歯部74aはX方向に沿って交互に、互いに平行に配置される。これにより、底部12に平行でX方向の横電界が、櫛歯部72aと櫛歯部74aと間に生じる。底部12に平行でX方向の横電界を印加された二色性重合開始剤は、X方向、すなわち二色性重合開始剤の配向膜14による配向方向に直交する方向に配向する。
印加部70のスイッチング素子は、横電界を光硬化樹脂RLに印加する印加部70を選択するためのトランジスタ(例えばTFT:Thin Film Transistor)である。
【0050】
なお、底部12の内面12aには、複数の信号配線と複数の走査配線と複数の共通配線(いずれも図示せず)が形成されている。信号配線は電極72に電圧を供給し、走査配線はスイッチング素子を動作させる電圧を供給する。印加部70は信号配線と走査配線とに囲まれ、スイッチング素子が走査配線と信号配線との交差部に設けられている。信号配線と電極72は、スイッチング素子を介して接続されている。また、共通配線は、電極74に共通電位を供給する。信号配線と走査配線と共通配線は、図示しない駆動回路を介して、制御部50に接続されている。
【0051】
本実施形態の光照射部40は、実施形態1の光照射部40と同様に、光硬化樹脂RLを硬化させる光(UV光)を、二色性重合開始剤の配向膜14による配向方向(Y方向)と直交する方向(X方向)に偏光方向を有する直線偏光として、光硬化樹脂RLに照射する。本実施形態の光照射部40は、図6図7に示すように、光源部42と偏光板46とを備える。本実施形態の光照射部40は、光変調部44を備えていない。
【0052】
本実施形態の光源部42の構成は、実施形態1の光源部42の構成と同様である。偏光板46は、光源部42から出射された光硬化樹脂RLを硬化させる光(UV光)を、二色性重合開始剤の配向膜14による配向方向(Y方向)と直交する方向(X方向)に偏光方向を有する直線偏光として、出射する。以下では、直線偏光として出射される光硬化樹脂RLを硬化させる光を、光硬化樹脂RLを硬化させる直線偏光と記載する場合がある。
【0053】
ここで、本実施形態における光硬化樹脂RLの硬化について説明する。
本実施形態では、二色性重合開始剤は、配向膜14によりY方向に配向されている。したがって、横電界が光硬化樹脂RLに印加されていない状態では、配向規制力が及ぶ配向膜14近傍の領域R1の二色性重合開始剤の分子Mは、図10に示すように、Y方向に配向している。
【0054】
このような状態の光硬化樹脂RLに、電極72の櫛歯部72aと電極74の櫛歯部74aとによって底部12に平行でX方向の横電界を印加すると、図11に示すように、領域R1内の電界強度の強い領域R3(後述する、配向膜14の表面付近の領域R4を除く)では、二色性重合開始剤の分子Mは、XY平面内で90°回転してX方向に配向する。すなわち、電界強度の強い領域R3(領域R4を除く)では、二色性重合開始剤は、底部12に平行でX方向の横電界により、配向膜14による配向方向(Y方向)と直交する方向(X方向)に配向する。横電界を印加された光硬化樹脂RLに、X方向に偏光方向を有する光硬化樹脂RLを硬化させる直線偏光が光照射部40から照射されると、二色性重合開始剤が光硬化樹脂RLを硬化させる直線偏光を吸収し、光硬化樹脂RLが素早く硬化する。そして、硬化した光硬化樹脂RSの層が電界強度の強い領域R3(領域R4を除く)に位置する造形プレート20の面20aに形成される。
【0055】
一方、領域R1内の配向膜14の表面付近の領域R4では、配向膜14の配向規制力が極めて強いために、底部12に平行でX方向の横電界が光硬化樹脂RLに印加されても、二色性重合開始剤はY方向に配向した状態を維持する。Y方向に配向した二色性重合開始剤は、X方向に偏光方向を有する光硬化樹脂RLを硬化させる直線偏光をほとんど吸収しないので、硬化した光硬化樹脂RSはほとんど形成されない。したがって、硬化した光硬化樹脂RSの底部12への付着を抑制できる。なお、配向膜14の表面付近の領域R4の厚さは、一般に0.1μm以下である。
【0056】
図6に戻り、本実施形態の制御部50は、移動部30と光照射部40と印加部70とを制御する。本実施形態の制御部50は、三次元造形物Obの断面形状に基づいて、三次元造形物Obの断面形状に対応した光硬化樹脂RLを硬化させる領域の印加部70を選択する。本実施形態の制御部50は、選択した印加部70に底部12に平行な横電界を光硬化樹脂RLに印加させる。本実施形態の制御部50のその他の構成は、実施形態1の制御部50と同様である。
【0057】
次に、図12を参照して、三次元造形物Obの造形方法を説明する。実施形態1と同様に、三次元造形物Obは、光造形装置100によって、硬化した光硬化樹脂RSの層をn層積層することにより造形される。
【0058】
図12は、本実施形態の三次元造形物Obの造形方法を示すフローチャートである。本実施形態の三次元造形物Obの造形方法は、光硬化樹脂RLと断面形状データとを準備する工程(ステップS10)と、造形プレート20を初期位置に配置する工程(ステップS20)と、光硬化樹脂RLの三次元造形物Obの断面形状に基づく領域に、横電界を印加することにより、二色性重合開始剤が配向膜14により配向する方向と直交する方向に配向させる工程(ステップS25)と、二色性重合開始剤が配向膜14により配向する方向と直交する方向に偏光方向を有する直線偏光を照射することによって、光硬化樹脂RLを硬化させる工程(ステップS30)と、硬化した光硬化樹脂RSを直線偏光の照射方向に移動させる工程(ステップS40)と、硬化した光硬化樹脂RSの層がn層積層されたか否か判別する工程(ステップS50)と、を含む。本実施形態では、ステップS25~ステップS40が繰り返される。
【0059】
本実施形態のステップS10は、実施形態1のステップS10と同様である。本実施形態では、光硬化樹脂RLはUV硬化型樹脂である。また、光硬化樹脂RLに含まれる二色性重合開始剤は、配向規制力が及ぶ配向膜14近傍の領域R1において、配向膜14により所定の方向(Y方向)に配向している。
【0060】
ステップS20では、移動部30によって造形プレート20を移動させて、造形プレート20を初期位置に配置する。具体的には、造形プレート20の面20aが、配向膜14の表面付近の領域R4から硬化した光硬化樹脂RSの層の厚さ分(所定の間隔分)だけ+Z側(すなわち、領域R4を除く電界強度の強い領域R3)に配置される。
【0061】
ステップS25では、1層目の断面形状データに基づいて、1層目の断面形状に対応する底部12の領域内の印加部70を選択し、選択された印加部70により光硬化樹脂RLに横電界を印加する。これにより、底部12に平行でX方向の横電界が光硬化樹脂RLの三次元造形物Obの1層目の断面形状に基づく領域に印加され、電界強度の強い領域R3(領域R4を除く)の二色性重合開始剤がX方向(すなわち配向膜14による配向方向と直交する方向)に配向される。
【0062】
ステップS30では、光照射部40の光源部42からUV光を出射させる。光照射部40の偏光板46は光源部42から出射されたUV光をX方向に偏光方向を有する直線偏光として出射するので、光硬化樹脂RLにX方向に偏光方向を有する直線偏光(UV光)が照射される。これにより、横電界を印加された領域の内の電界強度の強い領域R3(領域R4を除く)では、横電界によりX方向に配向された二色性重合開始剤がUV光を吸収して、光硬化樹脂RLが硬化する。一方、横電界を印加された領域の内の配向膜14の表面付近の領域R4では、Y方向に配向している二色性重合開始剤はUV光をほとんど吸収しないので、硬化した光硬化樹脂RSはほとんど形成されない。したがって、本実施形態の造形方法では、硬化した光硬化樹脂RSの底部12への付着を抑制できる。
【0063】
また、横電界を印加されていない領域(すなわち、1層目の断面形状に対応していない領域)では、二色性重合開始剤はY方向に配向しているので、X方向に偏光方向を有する直線偏光(UV光)を照射されても、硬化した光硬化樹脂RSはほとんど形成されない。したがって、1層目の硬化した光硬化樹脂RSが造形プレート20の面20aに形成される。
【0064】
ステップS40では、移動部30によって、硬化した光硬化樹脂RS(造形プレート20)を、硬化した光硬化樹脂RSを直線偏光(UV光)の照射方向(+Z方向)に、硬化した光硬化樹脂RSの層の厚さ分移動させる。本実施形態では、硬化した光硬化樹脂RSの底部12への付着が抑制されるので、硬化した光硬化樹脂RSを底部12から剥離する工程が不要になり、三次元造形物Obの製造のスループットを向上できる。
【0065】
ステップS50では、ステップS30を実行した回数がn回よりも小さい場合、硬化した光硬化樹脂RSの層がn層積層されていないと判別する(ステップS50;NO)。n層積層されていないと判別されると、造形処理はステップS25に戻り、2層目以降の硬化した光硬化樹脂RSを形成する。ステップS30を実行した回数がn回である場合、硬化した光硬化樹脂RSの層がn層積層されたと判別され(ステップS50;YES)、造形処理は終了する。以上により、光造形装置100は三次元造形物Obを造形できる。なお、硬化した光硬化樹脂RSは、所定の方向(X方向)に配向した二色性重合開始剤を含んでいる。
【0066】
以上のように、本実施形態の光造形装置100は、横電界により二色性重合開始剤を配向膜14による配向方向と直交する方向に配向させた状態で、二色性重合開始剤の配向膜14による配向方向と直交する方向に偏光方向を有する直線偏光(光硬化樹脂RLを硬化させる光)を照射するので、硬化した光硬化樹脂RSの底部12への付着を抑制できる。さらに、硬化した光硬化樹脂RSの底部12への付着を抑制できるので、三次元造形物Obの造形のスループットを向上できる。本実施形態の光造形装置100は、光変調部44を備えておらず、簡易な構成で三次元造形物Obを造形できる。さらに、本実施形態の光造形装置100は、光硬化樹脂RLに接している底部12の横電界により、光硬化樹脂RLを硬化させる領域を制御するので、三次元造形物Obの解像度を向上できる。
本実施形態の三次元造形物Obの造形方法は、硬化した光硬化樹脂RSの底部12への付着を抑制でき、造形のスループットを向上できる。
【0067】
<変形例>
以上、実施形態を説明したが、本開示は、要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0068】
例えば、実施形態1、2の樹脂槽10の底部12は平板状のガラスから形成されている。樹脂槽10の底部12は、光硬化樹脂RLを硬化させる光を透過させる樹脂、高分子フィルム等から形成されてもよい。
【0069】
光硬化樹脂RLはUV硬化型樹脂に限られない。光硬化樹脂RLは、例えば、可視光を照射されることにより硬化する樹脂であってもよい。また、光硬化樹脂RLは、重合禁止剤、金属微粒子、顔料等を含んでもよい。また、実施形態2における二色性重合開始剤の誘電率異方性は負であってもよい。二色性重合開始剤の配向膜14による配向方向(Y方向)に平行な横電界を印加することにより、二色性重合開始剤を配向膜14による配向方向(Y方向)と直交する方向(X方向)に配向できる。
【0070】
配向膜14は光異性化型の光配向膜に限られない。配向膜14は、光分解を利用した分解型の光配向膜、二量化反応を利用した二量化型の光配向膜等であってもよい。また、配向膜14は、ラビング処理を施されたポリイミド配向膜であってもよい。
【0071】
さらに、配向膜14は、二色性重合開始剤又は液晶性を有する光硬化樹脂RLを垂直方向に配向する垂直配向膜であってもよい。例えば、実施形態2の光造形装置100の配向膜14を垂直配向膜とした場合、図13に示すように、横電界を印加された領域における電界強度の強い領域R3(領域R4を除く)の二色性重合開始剤はX方向に配向し、横電界を印加された領域における配向膜14の表面付近の領域R4の二色性重合開始剤はZ方向に配向する。このような状態の光硬化樹脂RLに、X方向に偏光方向を有する直線偏光(UV光)が照射されるので、電界強度の強い領域R3(領域R4を除く)の光硬化樹脂RLは硬化し、配向膜14の表面付近の領域R4の光硬化樹脂RLはほとんど硬化しない。したがって、硬化した光硬化樹脂RSの底部12への付着を抑制できる。
【0072】
光源部42から出射される光はUV光に限られない。光源部42は光硬化樹脂RLを硬化させる光を出射する。光源部42は、二色性重合開始剤が活性種を発生させる波長に応じて、可視光を出射してもよい。また、光源部42は、LEDに代えてランプを備えてもよい。さらに、光源部42は、光硬化樹脂RLを硬化させる光を平行光とするコリメータを備えてもよい。
【0073】
光変調部44はTN型液晶素子に限られない。光変調部44は、VA(Vertical Alignment)型液晶素子、FFS(Fringe Field Switching)型液晶素子等であってもよい。また、光変調部44は、光硬化樹脂RLを硬化させる光の透過と遮蔽だけでなく、光硬化樹脂RLを硬化させる光の光量を変調してもよい。
【0074】
実施形態1、2では、光造形装置100は、層状の硬化した光硬化樹脂RSを順次に積層して三次元造形物Obを造形している。光造形装置100は、造形プレート20を連続的に移動しつつ、光照射部40によって、光硬化樹脂RLを硬化させる光を光硬化樹脂RLに連続的に照射して、三次元造形物Obを連続的に造形してもよい。
【0075】
以上、好ましい実施形態について説明したが、本開示は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、本開示には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲が含まれる。
【符号の説明】
【0076】
5 筐体、10 樹脂槽、12 底部、12a 内面、14 配向膜、16 壁部、20 造形プレート、20a 面、30 移動部、32 アーム、34 移動機構、40 光照射部、42 光源部、42a 上面、44 光変調部、46 偏光板、50 制御部、52 CPU、54 ROM、56 RAM、58 入出力インタフェース、70 印加部、72,74 電極、72a,74a 櫛歯部、100 光造形装置、Ob 三次元造形物、M 二色性重合開始剤の分子、RL 光硬化樹脂、RS 硬化した光硬化樹脂、R1 配向膜近傍の領域、R2 配向膜から離れた領域、R3 電界強度の強い領域、R4 配向膜の表面付近の領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11
図12
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