(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】生細胞および生物の増殖および活性を制御するためのポリマー性金属キレート組成物およびその調製方法
(51)【国際特許分類】
C08F 220/60 20060101AFI20231120BHJP
C08F 2/38 20060101ALI20231120BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20231120BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231120BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231120BHJP
A61K 31/787 20060101ALI20231120BHJP
A61P 39/04 20060101ALI20231120BHJP
A61L 15/24 20060101ALI20231120BHJP
A61L 15/44 20060101ALI20231120BHJP
A61L 29/14 20060101ALI20231120BHJP
A61L 31/14 20060101ALI20231120BHJP
A61L 17/00 20060101ALI20231120BHJP
A61L 29/08 20060101ALI20231120BHJP
A61L 29/04 20060101ALI20231120BHJP
A61L 29/16 20060101ALI20231120BHJP
A61L 31/04 20060101ALI20231120BHJP
A61L 31/10 20060101ALI20231120BHJP
A61L 31/16 20060101ALI20231120BHJP
A61K 31/43 20060101ALI20231120BHJP
A61K 31/545 20060101ALI20231120BHJP
A61K 31/407 20060101ALI20231120BHJP
A61K 31/351 20060101ALI20231120BHJP
A61K 31/397 20060101ALI20231120BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20231120BHJP
A61K 31/421 20060101ALI20231120BHJP
A61K 31/165 20060101ALI20231120BHJP
A61K 31/575 20060101ALI20231120BHJP
A61K 31/395 20060101ALI20231120BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20231120BHJP
A61K 31/505 20060101ALI20231120BHJP
A61K 31/522 20060101ALI20231120BHJP
A61K 31/13 20060101ALI20231120BHJP
A61K 31/49 20060101ALI20231120BHJP
A61K 31/122 20060101ALI20231120BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20231120BHJP
C07D 499/46 20060101ALN20231120BHJP
C07D 501/00 20060101ALN20231120BHJP
C07D 487/04 20060101ALN20231120BHJP
C07D 309/10 20060101ALN20231120BHJP
C07D 205/085 20060101ALN20231120BHJP
C07H 17/04 20060101ALN20231120BHJP
C07D 263/20 20060101ALN20231120BHJP
C07D 407/06 20060101ALN20231120BHJP
C07J 9/00 20060101ALN20231120BHJP
C07D 498/08 20060101ALN20231120BHJP
C07D 215/56 20060101ALN20231120BHJP
C07D 239/49 20060101ALN20231120BHJP
C07D 473/18 20060101ALN20231120BHJP
C07D 453/04 20060101ALN20231120BHJP
【FI】
C08F220/60
C08F2/38
A61P31/04
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K31/787
A61P39/04
A61L15/24 100
A61L15/44 100
A61L29/14 300
A61L31/14 300
A61L17/00 100
A61L29/08 100
A61L29/04 100
A61L29/16
A61L31/04 100
A61L31/10
A61L31/16
A61K31/43
A61K31/545
A61K31/407
A61K31/351
A61K31/397
A61K31/7048
A61K31/421
A61K31/165
A61K31/575
A61K31/395
A61K31/496
A61K31/505
A61K31/522
A61K31/13
A61K31/49
A61K31/122
A61K9/08
C07D499/46
C07D501/00
C07D487/04 133
C07D309/10
C07D205/085 104
C07H17/04
C07D263/20
C07D407/06
C07J9/00
C07D498/08
C07D215/56
C07D239/49
C07D473/18
C07D453/04
(21)【出願番号】P 2019511638
(86)(22)【出願日】2017-08-25
(86)【国際出願番号】 CA2017050999
(87)【国際公開番号】W WO2018035613
(87)【国際公開日】2018-03-01
【審査請求日】2020-08-20
(32)【優先日】2016-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513309100
【氏名又は名称】キレーション パートナーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホルベイン、ブルース イー.
(72)【発明者】
【氏名】エイエヌジー、エム. トリーシャ シー.
(72)【発明者】
【氏名】パラスカー、ドニャネシュワール ビトーバー
(72)【発明者】
【氏名】サティヤナラヤナ、ガヌガパティ
(72)【発明者】
【氏名】マヘンドル、ジリーッシュ
(72)【発明者】
【氏名】レッディー、エス ヴィジャヤ バースカラ
(72)【発明者】
【氏名】アリ、サジド
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-522070(JP,A)
【文献】特表2014-522405(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0274945(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F220/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
必須金属に対するキレート活性を有する、水性媒体に可溶性のキレート組成物であって、
前記キレート組成物が、少なくとも第1および第2のモノマー単位から調製され、前記第1のモノマー単位が、それに組み込まれているかまたは付加されている1つまたは複数の金属結合化学基を含み、
化合物(I)
【化1】
(式中、R
1
は、H、アルキル、およびO、N、またはSで置換されているアルキルからなる群から独立して選択され、
R
2
は、H、アルキル、およびO、N、またはSで置換されているアルキルからなる群から独立して選択され、
R
3
は、H、アルキル、およびO、N、またはSで置換されているアルキルからなる群から独立して選択され、
nは、1~12である)
により表され、
前記第1および第2のモノマー単位が、付加開裂連鎖移動剤の使用による可逆的付加開裂連鎖移動機序により重合され、
得られたキレート組成物が、生細胞または生物の環境中にある1つまたは複数の必須金属と結合し、それにより前記生細胞または生物に影響を及ぼすキレート組成物。
【請求項2】
前記化合物(I)が、化合物(Ia)を、
【化2】
(式中、R
1は、H、アルキル、およびO、N、またはSで置換されているアルキルからなる群から独立して選択され、
R
2は、H、アルキル、およびO、N、またはSで置換されているアルキルからなる群から独立して選択され
PGは、保護基である)
化合物(Ib)と重合させ、
【化3】
(式中、nは、1~12であり、
R
4は、COCCH
2R
3または保護基である)
その後、
R
4がCOCCH
2R
3の場合、PGを除去して、化合物(I)を得るか、または
R
4が保護基の場合、R
4を除去し、アクリレート供給源と反応させ、PGを除去して化合物(I)を得ることにより調製される、請求項
1に記載のキレート組成物。
【請求項3】
R
1が、Hであり
R
2が、メチルであり、
R
3が、メチルであり、
nが、1~6である、請求項
1又は2に記載のキレート組成物。
【請求項4】
nが、少なくとも2である、請求項
3に記載のキレート組成物。
【請求項5】
前記第1のモノマー単位が、化合物(II)
【化4】
により表される、請求項1~
4のいずれか一項に記載のキレート組成物。
【請求項6】
前記第2のモノマー単位が、1-ビニル-2-ピロリドン、アクリル酸、メタクリル酸メチル、N,N-ジメチル-アクリルアミド、メタクリル酸エチル、N-ビニルイミダゾール、およびスチレンからなる群から独立して選択される、請求項1~
5のいずれか一項に記載のキレート組成物。
【請求項7】
前記第2のモノマー単位が、1-ビニル-2-ピロリドンである、請求項1~
5のいずれか一項に記載のキレート組成物。
【請求項8】
前記第2のモノマー単位が、N,N-ジメチル-アクリルアミドである、請求項1~
5のいずれか一項に記載のキレート組成物。
【請求項9】
前記付加開裂連鎖移動剤が、2-エトキシチオカルボニルスルファニル-プロピオン酸エチルエステルおよび2-エトキシチオカルボニルスルファニル-2-メチル-プロピオン酸からなる群から独立して選択される、請求項1~
8のいずれか一項に記載のキレート組成物。
【請求項10】
前記付加開裂連鎖移動剤の残基が、重合後に前記キレート組成物から全部または部分的に除去される、請求項1~
9のいずれか一項に記載のキレート組成物。
【請求項11】
前記キレート組成物が、交互型、周期型、ジブロック型、トリブロック型、およびマルチブロック型からなる群から独立して選択される1つまたは複数の異なる構造アーキテクチャを含み、直鎖形、分岐鎖形、ブラシ形、櫛形、星形からなる群から独立して選択される1つまたは複数の形態を含む、請求項1~
10のいずれか一項に記載のキレート組成物。
【請求項12】
前記キレート組成物が、1500ダルトンの下限分子量を有し、前記金属との結合前に水性媒体に依然として可溶性である限り、上限分子量を有さない、請求項1~
11のいずれか一項に記載のキレート組成物。
【請求項13】
前記必須金属が、必須遷移系列金属である、請求項1~
12のいずれか一項に記載のキレート組成物。
【請求項14】
前記必須金属が、鉄、マンガン、銅、コバルト、マグネシウム、またはニッケルである、請求項1~
12のいずれか一項に記載のキレート組成物。
【請求項15】
前記生細胞または生物は、その使用に利用可能な前記必須金属の量が不十分であることにより、その増殖または活性が影響を受ける、請求項1~
14のいずれか一項に記載のキレート組成物。
【請求項16】
治療有効量の請求項1~
15のいずれか一項に記載のキレート組成物を投与することにより、魚を含む動物(ヒトを除く)の疾患を治療するための方法であって、前記疾患が、1つもしくは複数の細胞または前記1つもしくは複数の細胞の活性により引き起こされ、前記疾患を引き起こす前記1つまたは複数の細胞が、微生物細胞、がん細胞、または単細胞もしくは多細胞寄生生物の1つまたは複数である方法。
【請求項17】
前記キレート組成物が、抗細胞剤と共に投与され、前記抗細胞剤が、抗微生物剤、抗代謝剤、抗ウイルス剤、抗寄生生物剤、または抗がん剤の1つまたは複数である、請求項
16に記載の方法。
【請求項18】
請求項1~
15のいずれか一項に記載のキレート組成物および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項19】
前記第1のモノマー単位が、化合物(III)
【化5】
(式中、R
1は、H、アルキル、およびO、N、またはSで置換されているアルキルからなる群から独立して選択され、
R
2は、H、アルキル、およびO、N、またはSで置換されているアルキルからなる群から独立して選択され、
R
3は、H、アルキル、およびO、N、またはSで置換されているアルキルからなる群から独立して選択され、
nは、1~12であり、
PGは、保護基である)
により表される、請求項1~
4のいずれか一項に記載のキレート組成物。
【請求項20】
nが、少なくとも2である、請求項
19に記載のキレート組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性媒体に可溶性である金属キレートポリマー組成物に関する。また、本発明は、鉄を隔離し、標的とされている細胞への鉄の取込みを防止、阻害、または低減する金属キレート組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄は、生細胞の生理および代謝の多数の必須局面に必要とされており、他の金属に置き換えることができない。上記細胞は、ヒトにより使用されることが意図されている製品中の腐敗を引き起こす微生物であるか、またはヒトおよび魚を含む動物に疾患を引き起こすことが可能な体内にある微生物病原体(細菌性、真菌性、寄生生物性)もしくは病原性動物がん細胞などの病原性細胞であるかを問わない。このような鉄の必須要求性の唯一の既知の例外は、ある非病原性乳酸桿菌の場合である。
【0003】
したがって、この一般に普遍的な鉄要求性は、細胞の増殖を妨害または停止させるための新しい手段の有用な標的であり得る。現在に至るも、必要とされる特徴を有する好適な化学化合物が欠如しているため、細胞の鉄栄養に影響を及ぼすための進歩は限定的なもの過ぎない。細菌細胞、真菌細胞、寄生生物細胞、および動物細胞は、通常、細胞膜/外部環境の境界で作用する種々の鉄の取込み機序の1つまたは複数を有し、こうした細胞機序は、本質的に、細胞内で使用するために鉄を外部環境から内部移行させる役目を果たす。
【0004】
表面受容体/還元/輸送系による鉄の還元は、好気性環境では大部分が不溶性のFe3+である鉄を、より可溶性のFe2+形態にするために重要である。この機序は、ほとんどの細菌細胞、真菌細胞、および動物細胞に見出される。病原性細菌および酵母は、一般に、複数の鉄の取込み機序を有するが、動物細胞は、微生物型シデロフォアを産生または使用しない。シデロフォアは、主に微生物細胞により産生されるキレート化合物である。脊椎動物細胞は、シデロフォアを使用するのではなく、典型的には動物の肝細胞により産生され、循環して、鉄を腸から血流を介して体内のあらゆる他の細胞へと行き来させるタンパク質トランスフェリンを使用する。ある病原性微生物は、トランスフェリンFeと結合し、トランスフェリン分子を細胞内に取り込まずに、膜にてトランスフェリンFeをシャトル運搬体へと転送することにより、トランスフェリンFeを使用する能力を発達させてきた。他の細菌および真菌は、微生物細胞および動物細胞により産生される別の鉄運搬化合物であるヘムを取り込むことができる。一部の病原性微生物は、受容体/輸送系によりヘムを細胞内へと直接取り込むことができ、その後、細胞は、ヘム鉄を内部で使用する。種々の細菌および真菌は、細胞表面シャトル系でヘムから鉄を取り出すことにより、他の微生物が産生した種々の異種性シデロフォアを使用することができる。一部の細胞では、異種性シデロフォアまたはトランスフェリンから鉄を取り出す際に、鉄還元機序が役割を果たし得る可能性がある。種々の細菌性および真菌性病原体は、鉄の必要性に応じてそれら自体の自己シデロフォアを産生し、それらを細胞外環境へと分泌し、その後シデロフォアを、キレートされた鉄と共に外部環境から再び取り込む。寄生動物の細胞は、あまり研究されていないが、一部はヘムを取得することが知られており、真菌細胞または動物細胞などの他の真核細胞と類似した取得機序を使用する可能性が高い。
【0005】
水性媒体に可溶性である金属キレートコポリマー組成物は、以前に特許文献1に開示されており(参照により本明細書に組み込まれる)、この文献に記載されている組成物は、1つまたは複数の必須金属および任意選択で微量金属をキレートするのに好適である。この文献に記載されているキレート組成物は、水性媒体に可溶性であり、1つまたは複数の好適な金属結合化学基で構成されており、金属結合化学基は、金属結合第1モノマー単位を含むモノマー基の部分であり、このモノマー基は、第2のモノマー基と混合され、得られるコポリマーが依然として水性媒体に可溶性であり、金属キレート活性を有するように、2つのモノマー基が重合されることを含む。特許文献1には、上記で概説した組成物の好ましい実施形態としては、金属結合第1モノマー単位が、3-ヒドロキシ-1-(β-メタクリルアミドエチル)-2-メチル-4(1H)-ピリジノン(MAHMP)であり、第2のモノマーは、1-ビニル-2-ピロリドンまたはN,N-ジメチル-アクリルアミドのいずれかであり、最終キレート組成物は、第1および第2のモノマー基の直鎖可溶性コポリマーである組成物が挙げられることがさらに開示されている。
【0006】
しかしながら、上記に記載されている第1および第2のモノマーの共重合は、予期せぬ問題を提示する。こうした問題は、部分的には、重合反応における不完全なモノマー使用に関連しており、未反応量のモノマー、特に第1の金属結合モノマーMAHMPが残留する場合がある。さらに、この以前に開示された組成物の重合は、同じ反応で広範囲の分子量の組成物を生成した。
【0007】
動物には、一般に、より狭い重量分布を有するキレート組成物の使用が有益だろう。特に動物の身体上または身体内での医学的応用の場合、ポリマー性金属結合組成物の使用は、特定の好ましいサイズ範囲のポリマー性組成物から利益を得ることになるか、またはある応用ではそれが必要とされる場合がある。例えば、皮膚または他の身体表面領域への局所塗布の場合、塗布部位にまたはその付近に組成物を保持し易くするために、比較的高分子量の組成物がより有用であり得るが、身体内での全身性使用の場合、より良好な全身分布を可能にし、最終的には体内から組成物が排出されることを可能にするために、比較的低分子量の組成物が有用であり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許出願公開第2016/0038604号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
重合中にモノマー単位をより効果的におよび完全に使用して、最終キレート組成物を生成することが望ましいだろう。また、キレート組成物の分子量、および特にキレート組成物分子の集団のより高い均一性を、より効果的に制御することが望ましいだろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
水性媒体に可溶性であり、必須金属をキレートするキレートコポリマー組成物が、それらの調製方法およびそれらの使用と共に提供される。キレート組成物は、2つまたはそれよりも多くの異なるモノマーであって、それらの少なくとも1つが金属結合または金属キレート活性を有するモノマーから調製することができる。キレート組成物は、好適なRAFT媒介剤を用いた可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合により合成することができる。また、本明細書には、ヒドロキシピリジノン金属結合基を含むキレート組成物が記載されており、ある実施形態では、ヒドロキシピリジノンは、任意選択で、3-ヒドロキシ-1-(β-メタクリルアミドエチル)-2-メチル-4(1H)-ピリジノンであってもよい。キレート組成物が金属と結合する能力を活用して、そうした金属を細胞機能のために必要とする生細胞および/または生物の活性に影響を及ぼすことができる。
【0011】
本発明の態様によると、必須金属に対するキレート活性を有し、水性媒体に可溶性のキレート組成物であって、
キレート組成物が、少なくとも第1および第2のモノマー単位から調製され、第1のモノマー単位が、それに組み込まれているかまたは付加されている1つまたは複数の好適な金属結合化学基を含み、
第1および第2のモノマー単位が、好適な付加開裂連鎖移動剤の使用による可逆的付加開裂連鎖移動機序により重合され、
得られたキレート組成物が、生細胞または生物の環境中にある1つまたは複数の必須金属と結合し、それにより生細胞または生物に影響を及ぼすキレート組成物が提供される。
【0012】
上記で概説したキレート組成物のさらなる実施形態では、1つまたは複数の好適な金属結合化学基は、カルボキシル、ヒドロキシル、フェノレート、カテコレート、ヒドロキサメート、ヒドロキシピリジノン、およびヒドロキシフェニルトリアゾール化学タイプからなる群から独立して選択される。
【0013】
上記で概説した1つまたは複数のキレート組成物のさらなる実施形態では、1つまたは複数の好適な金属結合化学基は、ヒドロキシピリジノン化学タイプであり、
【化1】
式中、X、Y、およびZは、独立してNまたはCであり、ただし
XがNである場合、YおよびZはCであり、
YがNである場合、XおよびZはCであり、
ZがNである場合、XおよびYはCである。
【0014】
上記で概説した1つまたは複数のキレート組成物のさらなる実施形態では、第1のモノマー単位は、化合物(I)により表される。
【化2】
(式中、R
1は、H、アルキル、およびO、N、またはSで置換されているアルキルからなる群から独立して選択され、
R
2は、H、アルキル、およびO、N、またはSで置換されているアルキルからなる群から独立して選択され、
R
3は、H、アルキル、およびO、N、またはSで置換されているアルキルからなる群から独立して選択され、
nは、1~12である)
【0015】
上記で概説した1つまたは複数のキレート組成物のさらなる実施形態では、化合物(I)は、化合物(Ia)を
【化3】
(式中、R
1は、H、アルキル、およびO、N、またはSで置換されているアルキルからなる群から独立して選択され、
R
2は、H、アルキル、およびO、N、またはSで置換されているアルキルからなる群から独立して選択され、
PGは、保護基である)
化合物(Ib)と重合させ、
【化4】
(式中、nは、1~12であり、
R
4は、COCCH
2R
3または保護基である)
その後、
R
4がCOCCH
2R
3の場合、PGを除去して化合物(I)を得るか、または
R
4が保護基の場合、R
4を除去し、好適なアクリレート供給源と反応させ、PGを除去して化合物(I)を得ることにより調製される。
【0016】
上記で概説した1つまたは複数のキレート組成物のさらなる実施形態では、R4がCOCCH2R3である場合、化合物(Ib)は、好適なアクリレート供給源をアルカンジイルジアミンと反応させることにより調製される。
【0017】
上記で概説した1つまたは複数のキレート組成物のさらなる実施形態では、PGは、ベンジルエーテル保護基である。
【0018】
上記で概説した1つまたは複数のキレート組成物のさらなる実施形態では、R4が保護基である場合、保護基は、tert-ブチルオキシカルボニル保護基である。
【0019】
上記で概説した1つまたは複数のキレート組成物のさらなる実施形態では、
R1は、Hであり
R2は、メチルであり、
R3は、メチルであり、
nは、1~6である。
【0020】
上記で概説した1つまたは複数のキレート組成物のさらなる実施形態では、第1のモノマー単位は、化合物(II)により表される。
【化5】
【0021】
上記で概説した1つまたは複数のキレート組成物のさらなる実施形態では、第2のモノマー単位は、1-ビニル-2-ピロリドン、アクリル酸、メタクリル酸メチル、N,N-ジメチル-アクリルアミド、メタクリル酸エチル、N-ビニルイミダゾール、およびスチレンからなる群から独立して選択される。
【0022】
上記で概説した1つまたは複数のキレート組成物のさらなる実施形態では、第2のモノマー単位は、1-ビニル-2-ピロリドンである。
【0023】
上記で概説した1つまたは複数のキレート組成物のさらなる実施形態では、第2のモノマー単位は、N,N-ジメチル-アクリルアミドである。
【0024】
上記で概説した1つまたは複数のキレート組成物のさらなる実施形態では、好適な付加開裂連鎖移動剤は、2-エトキシチオカルボニルスルファニル-プロピオン酸エチルエステルおよび2-エトキシチオカルボニルスルファニル-2-メチル-プロピオン酸からなる群から独立して選択される。
【0025】
上記で概説した1つまたは複数のキレート組成物のさらなる実施形態では、付加開裂連鎖移動剤の残基は、重合後にキレート組成物から全部または部分的に除去される。
【0026】
上記で概説した1つまたは複数のキレート組成物のさらなる実施形態では、キレート組成物は、交互型、周期型、ジブロック型、トリブロック型、およびマルチブロック型からなる群から独立して選択される1つまたは複数の異なる構造アーキテクチャを含み、直鎖形、分岐鎖形、ブラシ形、櫛形、星形からなる群から独立して選択される1つまたは複数の形態を含む。
【0027】
上記で概説した1つまたは複数のキレート組成物のさらなる実施形態では、キレート組成物は、1500ダルトン付近の下限分子量を有し、金属との結合前に水性媒体に依然として可溶性である限り、上限分子量を有さない。
【0028】
上記で概説した1つまたは複数のキレート組成物のさらなる実施形態では、必須金属は、必須遷移系列金属である。
【0029】
上記で概説した1つまたは複数のキレート組成物のさらなる実施形態では、必須金属は、鉄、マンガン、銅、コバルト、マグネシウム、またはニッケルである。
【0030】
上記で概説した1つまたは複数のキレート組成物のさらなる実施形態では、必須金属は鉄である。
【0031】
上記で概説した1つまたは複数のキレート組成物のさらなる実施形態では、生細胞または生物は、その使用に利用可能な必須金属の量が不十分であることにより、その増殖または活性が影響を受ける。
【0032】
本発明の態様によると、魚またはヒトを含む動物の疾患を治療するための、上記で概説した1つまたは複数のキレート組成物の使用であって、疾患が、1つもしくは複数の細胞または1つもしくは複数の細胞の活性により引き起こされ、疾患を引き起こす1つまたは複数の細胞が、微生物細胞、がん細胞、または単細胞もしくは多細胞寄生生物の1つまたは複数である使用が提供される。
【0033】
本発明の態様によると、魚またはヒトを含む動物の疾患を治療するための薬剤を製造するための、上記で概説した1つまたは複数のキレート組成物の使用であって、疾患が、1つもしくは複数の細胞または1つもしくは複数の細胞の活性により引き起こされ、疾患を引き起こす1つまたは複数の細胞が、微生物細胞、がん細胞、または単細胞もしくは多細胞寄生生物の1つまたは複数である使用が提供される。
【0034】
上記で概説した使用のさらなる実施形態では、キレート組成物は、動物に投与するためのものである。
【0035】
上記で概説した使用のさらなる実施形態では、キレート組成物は、抗細胞剤と共に投与するためのものであり、抗細胞剤は、抗微生物剤、抗代謝剤、抗ウイルス剤、抗寄生生物剤、または抗がん剤の1つまたは複数である。
【0036】
本発明の態様によると、治療有効量の上記で概説したキレート組成物を投与することにより、魚またはヒトを含む動物の疾患を治療するため方法であって、疾患が、1つもしくは複数の細胞または1つもしくは複数の細胞の活性により引き起こされ、疾患を引き起こす1つまたは複数の細胞が、微生物細胞、がん細胞、または単細胞もしくは多細胞寄生生物の1つまたは複数である方法が提供される。
【0037】
上記で概説した方法のさらなる実施形態では、キレート組成物は、抗細胞剤と共に投与され、抗細胞剤は、抗微生物剤、抗代謝剤、抗ウイルス剤、抗寄生生物剤、または抗がん剤の1つまたは複数である。
【0038】
本発明の態様によると、上記で概説したキレート組成物および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が提供される。
【0039】
本発明の態様によると、上記で概説したキレート組成物ならびに抗細胞剤および/または抗微生物保存剤を含む医薬組成物が提供される。
【0040】
本発明の態様によると、化合物(I)
【化6】
(式中、R
1は、H、アルキル、およびO、N、またはSで置換されているアルキルからなる群から独立して選択され、
R
2は、H、アルキル、およびO、N、またはSで置換されているアルキルからなる群から独立して選択され、
R
3は、H、アルキル、およびO、N、またはSで置換されているアルキルからなる群から独立して選択され、
nは、1~12である)
により表される金属結合化合物であって、
化合物(I)が、化合物(Ia)を
【化7】
(式中、R
1は、H、アルキル、およびO、N、またはSで置換されているアルキルからなる群から独立して選択され、
R
2は、H、アルキル、およびO、N、またはSで置換されているアルキルからなる群から独立して選択され、
PGは、保護基である)
化合物(Ib)と、
【化8】
(式中、nは、1~12であり、
R
4は、COCCH
2R
3または保護基である)
好適な付加開裂連鎖移動剤の使用による可逆的付加開裂連鎖移動機序により重合させ、その後、
R
4がCOCCH
2R
3の場合、PGを除去して、化合物(I)を得るか、または
R
4が保護基の場合、R
4を除去し、好適なアクリレート供給源と反応させ、PGを除去して化合物(I)を得ることにより調製され、
化合物(I)が、1つまたは複数の必須金属と結合する、金属結合化合物が提供される。
【0041】
上記で概説した金属結合化合物のさらなる実施形態では、
R1は、Hであり
R2は、メチルであり、
R3は、メチルであり、
nは、1~6である。
【0042】
上記で概説した1つまたは複数のキレート組成物のさらなる実施形態では、第1のモノマー単位は、化合物(III)により表される。
【化9】
(式中、R
1は、H、アルキル、およびO、N、またはSで置換されているアルキルからなる群から独立して選択され、
R
2は、H、アルキル、およびO、N、またはSで置換されているアルキルからなる群から独立して選択され、
R
3は、H、アルキル、およびO、N、またはSで置換されているアルキルからなる群から独立して選択され、
nは、1~12であり、
PGは、保護基である)
【0043】
上記で概説したキレート組成物のさらなる実施形態では、PGは、重合後に好適な手段により除去される。
【0044】
本発明の態様によると、必須金属に対するキレート活性を有し、水性媒体に可溶性のキレート組成物を調製するための方法であって、
それに組み込まれているかまたは付加されている1つまたは複数の好適な金属結合化学基を含む第1のモノマー単位を準備すること、および
第1のモノマー単位を、好適な付加開裂連鎖移動剤の使用による可逆的付加開裂連鎖移動機序により、少なくとも第2のモノマー単位と重合させることを含み、
得られたキレート組成物が、生細胞または生物の環境中にある1つまたは複数の必須金属と結合し、それにより生細胞または生物に影響を及ぼす方法が提供される。
【0045】
上記で概説した方法のさらなる実施形態では、1つまたは複数の好適な金属結合化学基は、カルボキシル、ヒドロキシル、フェノレート、カテコレート、ヒドロキサメート、ヒドロキシピリジノン、およびヒドロキシフェニルトリアゾール化学タイプからなる群から独立して選択される。
【0046】
上記で概説した方法のさらなる実施形態では、1つまたは複数の好適な金属結合化学基は、ヒドロキシピリジノン化学タイプであり、
【化10】
式中、X、Y、およびZは、独立してNまたはCであり、ただし
XがNである場合、YおよびZはCであり、
YがNである場合、XおよびZはCであり、
ZがNである場合、XおよびYはCである。
【0047】
上記で概説した1つまたは複数の方法のさらなる実施形態では、第1のモノマー単位は、化合物(I)により表される。
【化11】
(式中、R
1は、H、アルキル、およびO、N、またはSで置換されているアルキルからなる群から独立して選択され、
R
2は、H、アルキル、およびO、N、またはSで置換されているアルキルからなる群から独立して選択され、
R
3は、H、アルキル、およびO、N、またはSで置換されているアルキルからなる群から独立して選択され、
nは、1~12である)
【0048】
上記で概説した1つまたは複数の方法のさらなる実施形態では、化合物(I)は、化合物(Ia)を
【化12】
(式中、R
1は、H、アルキル、およびO、N、またはSで置換されているアルキルからなる群から独立して選択され、
R
2は、H、アルキル、およびO、N、またはSで置換されているアルキルからなる群から独立して選択され、
PGは、保護基である)
化合物(Ib)と重合させ、
【化13】
(式中、nは、1~12であり、
R
4は、COCCH
2R
3または保護基である)
その後、
R
4がCOCCH
2R
3の場合、PGを除去して、化合物(I)を得るか、または
R
4が保護基の場合、R
4を除去し、好適なアクリレート供給源と反応させ、PGを除去して化合物(I)を得ることにより調製される。
【0049】
上記で概説した1つまたは複数の方法のさらなる実施形態では、R4がCOCCH2R3である場合、化合物(Ib)は、好適なアクリレート供給源をアルカンジイルジアミンと反応させることにより調製される。
【0050】
上記で概説した1つまたは複数の方法のさらなる実施形態では、PGはベンジルエーテル保護基である。
【0051】
上記で概説した1つまたは複数の方法のさらなる実施形態では、R4が保護基である場合、保護基は、tert-ブチルオキシカルボニル保護基である。
【0052】
上記で概説した1つまたは複数の方法のさらなる実施形態では、
R1は、Hであり
R2は、メチルであり、
R3は、メチルであり、
nは、1~6である。
【0053】
上記で概説した1つまたは複数の方法のさらなる実施形態では、第1のモノマー単位は、化合物(II)により表される。
【化14】
【0054】
上記で概説した1つまたは複数の方法のさらなる実施形態では、第2のモノマー単位は、1-ビニル-2-ピロリドン、アクリル酸、メタクリル酸メチル、N,N-ジメチル-アクリルアミド、メタクリル酸エチル、N-ビニルイミダゾール、およびスチレンからなる群から独立して選択される。
【0055】
上記で概説した1つまたは複数の方法のさらなる実施形態では、第2のモノマー単位は、1-ビニル-2-ピロリドンである。
【0056】
上記で概説した1つまたは複数の方法のさらなる実施形態では、第2のモノマー単位は、N,N-ジメチル-アクリルアミドである。
【0057】
上記で概説した1つまたは複数の方法のさらなる実施形態では、好適な付加開裂連鎖移動剤は、2-エトキシチオカルボニルスルファニル-プロピオン酸エチルエステルおよび2-エトキシチオカルボニルスルファニル-2-メチル-プロピオン酸からなる群から独立して選択される。
【0058】
上記で概説した1つまたは複数の方法のさらなる実施形態では、付加開裂連鎖移動剤の残基は、重合後に全部または部分的にキレート組成物から除去される。
【0059】
上記で概説した1つまたは複数の方法のさらなる実施形態では、第1のモノマー単位は、化合物(III)により表される。
【化15】
(式中、R
1は、HおよびC
1~3アルキルからなる群から独立して選択され、
R
2は、HおよびC
1~3アルキルからなる群から独立して選択され、
R
3は、H、C
1~3アルキル、およびOまたはNで置換されているC
1~3アルキルからなる群から独立して選択され、
nは、1~12であり、
PGは、保護基である)
【0060】
上記で概説した方法のさらなる実施形態では、PGは、重合後に好適な手段により除去される。
【0061】
上記で概説した組成物、化合物、および方法のさらなる実施形態では、nは、少なくとも2である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1】(従来技術)実施例1に詳述されているように、重要中間体1-アミノエチル-3-ヒドロキシ-2-メチル-4(1H)-ピリジノン(AHMP)の調製を介して、キレート組成物を調製するために有用な3-ヒドロキシ-1-(β-メタクリルアミドエチル)-2-メチル-4(1H)-ピリジノン(MAHMP、化合物(II))キレートモノマーの従来合成の全体的化学合成順序を示す図である。
【
図2A】実施例2に詳述されているように、従来の重要中間体1-アミノエチル-3-ヒドロキシ-2-メチル-4(1H)-ピリジノン(AHMP)を調製する必要なく、キレート組成物を調製するために有用な3-ヒドロキシ-1-(β-メタクリルアミドエチル)-2-メチル-4(1H)-ピリジノン(MAHMP、化合物(II))キレートモノマーの新規合成の全体的化学合成順序を示す図である。
【
図2B】
図2Aの構造bの2つの代替的合成スキーム(経路AおよびB)を示す図である。
【
図3】実施例3に詳述されている、MAHMP-アクリルアミドまたは-ピロリドンコポリマーキレート組成物のMAHMP含有量のプロトン核磁気共鳴(
1H NMR)分光法検量線を示す図である。
【
図4】(従来技術)実施例4の手順により実施される、コポリマーキレート組成物の従来のフリーラジカル重合(FRP)反応順序を示す図である。
【
図5】実施例5の手順に記載されている、キレートコポリマー組成物の鉄結合特性を測定する際に得られたデータのグラフである。
【
図6】実施例7に記載されている、相対分子量を含む物理的特性を示すキレートコポリマー組成物の特徴付けから得られたデータのグラフである。
【
図7】(従来技術)実施例8に記載されている、FRPプロセスを使用した金属キレートアクリルアミドコポリマー組成物の合成スキームである。
【
図8】実施例9に記載されている、化学開始剤APSの前に重合促進剤TMEDAが添加される、逆添加によるFRPプロセスを使用した、金属キレートアクリルアミドコポリマー組成物の合成スキームである。
【
図9】実施例9に記載されている、RAFT剤RAFT-3、RAFT-4、およびRAFT-5の合成スキームを示す図である。
【
図10A】実施例11に記載されている、RAFT重合手順を使用した金属キレート組成物MAHMP-アクリルアミドコポリマーの化学合成スキームを示す図である。
【
図10B】実施例11に記載されている、RAFT重合手順を使用した金属キレート組成物MAHMP-ピロリドンコポリマーの化学合成スキームを示す図である。
【
図11A】実施例13に示されている手順により特徴付けられるFRP重合手順により調製された、3-ヒドロキシ-1-(β-メタクリルアミドエチル)-2-メチル-4(1H)-ピリジノン(MAHMP)および1-ビニル-2-ピロリドンで構成されているキレート組成物の分子量分布の比較を示す図である。
【
図11B】実施例13に示されている手順により特徴付けられるRAFT重合手順により調製された、3-ヒドロキシ-1-(β-メタクリルアミドエチル)-2-メチル-4(1H)-ピリジノン(MAHMP)および1-ビニル-2-ピロリドンで構成されているキレート組成物の分子量分布の比較を示す図である。
【
図12A】実施例13に示されている手順により特徴付けられるFRP重合手順により調製された、3-ヒドロキシ-1-(β-メタクリルアミドエチル)-2-メチル-4(1H)-ピリジノン(MAHMP)および1-ビニル-2-ピロリドンで構成されているキレート組成物の分子量分布の比較を示す図である。
【
図12B】実施例13に示されている手順により特徴付けられるRAFT重合手順により調製された、3-ヒドロキシ-1-(β-メタクリルアミドエチル)-2-メチル-4(1H)-ピリジノン(MAHMP)および1-ビニル-2-ピロリドンで構成されているキレート組成物の分子量分布の比較を示す図である。
【
図13A】実施例13に示されている手順により特徴付けられるRAFT重合手順により調製された、3-ヒドロキシ-1-(β-メタクリルアミドエチル)-2-メチル-4(1H)-ピリジノン(MAHMP)と、N,N-ジメチル-アクリルアミドとで構成されているキレート組成物の分子量分布の比較を示す図である。
【
図13B】実施例13に示されている手順により特徴付けられるRAFT重合手順により調製された、3-ヒドロキシ-1-(β-メタクリルアミドエチル)-2-メチル-4(1H)-ピリジノン(MAHMP)と、1-ビニル-2-ピロリドンとで構成されているキレート組成物の分子量分布の比較を示す図である。
【
図13C】実施例13に示されている手順により特徴付けられるRAFT重合手順により調製された、3-ヒドロキシ-1-(β-メタクリルアミドエチル)-2-メチル-4(1H)-ピリジノン(MAHMP)と、N,N-ジメチル-アクリルアミドとで構成されているキレート組成物の分子量分布の比較を示す図である。
【
図13D】実施例13に示されている手順により特徴付けられるRAFT重合手順により調製された、3-ヒドロキシ-1-(β-メタクリルアミドエチル)-2-メチル-4(1H)-ピリジノン(MAHMP)と、1-ビニル-2-ピロリドンとで構成されているキレート組成物の分子量分布の比較を示す図である。
【
図14】実施例14に記載されている、RAFT剤の使用によるRAFT媒介性機序により製作されたキレート組成物からRAFT剤の一部分を除去するために使用される例示的な手順を示す図である。
【
図15A】N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミドを合成するための例示的な手順を示す図である。
【
図15B】実施例16に記載されている、3-ヒドロキシ-1-(β-メタクリルアミド-R)-2-メチル-4(1H)-ピリジノンを形成するための基本スキームを示す図である。
【
図15C】実施例16に記載されている、3-ヒドロキシ-1-(β-メタクリルアミド-R)-2-メチル-4(1H)-ピリジノンを形成するための基本スキームを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
本明細書には、水性媒体または有機媒体に可溶性のキレート組成物、それらの調製方法、およびそれらの使用を例示する実施形態が記載されている。本明細書に記載されている実施形態および例は、当業者を念頭においた例示目的のためのものであり、いかなる点でも限定することは意図されていないことが理解されるだろう。本開示の全体にわたって実施形態または例への参照はすべて、例示的で非限定的な実施形態、または例示的で非限定的な例への参照とみなされるべきである。
【0064】
本発明の実施形態によると、必須金属に対するキレート活性を有する水性または有機媒体に可溶性である組成物が提供される。
【0065】
本発明の実施形態によると、必須金属に対するキレート活性を有する水性または有機媒体に可溶性である組成物を調製するための方法が提供される。
【0066】
本発明の状況では、必須金属に対するキレート活性は、鉄を含む遷移金属を隔離する能力を包含する。これは、遷移金属がキレート組成物により隔離されている間、標的とされている細胞による遷移金属の取込みを防止する能力も包含することができる。この点に関して、キレート組成物は、キレートされた金属が潜在的にもはや細胞または生物の正常な金属取得機序に容易に接近可能ではなくなるように、生細胞または生物の環境中にある鉄および/または他の必須金属をキレートすることができる。
【0067】
本発明は、必須金属に対するキレート活性を有し、少なくとも第1および第2のモノマー単位から調製される、水性媒体に可溶性のキレート組成物であって、第1のモノマー単位は、それに組み込まれているかまたは付加されている1つまたは複数の好適な金属結合化学基を含む。第1および第2のモノマー単位は、好適な付加開裂連鎖移動剤の使用による可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)機序により重合される。得られるポリマー組成物は、コポリマー組成物と呼ばれる。
【0068】
また、本発明は、必須金属に対するキレート活性を有し、水性媒体に可溶性のキレート組成物を調製するための方法を提供する。本方法は、それに組み込まれているかまたは付加されている1つまたは複数の好適な金属結合化学基を含む第1のモノマー単位を提供すること、および好適な付加開裂連鎖移動剤の使用による可逆的付加開裂連鎖移動機序により、第1のモノマー単位を少なくとも第2のモノマー単位と重合させることを含む。得られたキレート組成物は、生細胞または生物の環境中にある1つまたは複数の必須金属と結合し、それにより生細胞または生物に影響を及ぼす。
【0069】
RAFT重合は、フリーラジカル重合(FRP)と比較して、重合に対するより高度な制御が達成されるリビング型の重合とみなされる。本発明の状況では、RAFT重合を使用することにより、FRPと比較して、得られる産物の品質および収率を向上させることができる。RAFT重合は、典型的には調製が難しくなると共にコストがより高くなる第1のモノマー単位の、より効率的な使用およびポリマーへの組込みを可能にする。得られるポリマーに第1のモノマー単位を効率的に組み込む能力は、重合反応の全収率を大きく向上させる。加えて、RAFT重合は、重合中に分子量の制御を可能にし、多分散指数(PDI)が1に接近することをもたらし、それは、得られた重合化合物の分子量の分布範囲が狭いことにより特徴付けられる。
【0070】
RAFT重合では、重合反応自体に参加し、ラジカル移動速度を効率的に制御して、より均一な重合を媒介する、RAFT剤としても知られている好適な付加開裂連鎖移動剤が使用される。幅広く様々な付加開裂連鎖移動剤が当技術分野で公知であり、それらは、一般に商業的に入手可能であり、非水溶媒系での重合に使用されることが多い。1つの実施形態では、付加開裂連鎖移動剤は、水性媒体で可溶性および活性であり、つまり水性の調製された金属キレートコポリマーを得るための水系での重合におけるラジカル移動に参加することが可能である。別の実施形態では、付加開裂連鎖移動剤は、有機媒体に可溶性である。この実施形態では、重合は、有機溶媒中で実施することができ、重合された産物をさらに処理して水性媒体に可溶性にすることができる。しかしながら、本発明のキレート組成物の重合は、得られるキレート組成物産物が、使用する水性媒体に実質的に可溶性であれば、有機溶媒などの非水性媒体でも実施することができることに留意すべきである。一般に、付加開裂連鎖移動剤は、下記の構造による表される3つのクラスに分類される:
【化16】
【0071】
本発明は、これらクラスのおよび任意の他のクラスの作用剤の任意の好適な付加開裂連鎖移動剤の使用を企図する。
【0072】
RAFT化学プロセスは、当技術分野で周知であり、ホモポリマー材料を含む種々のポリマー材料の調製し、その後それらを化学的に修飾し(つまり重合後修飾)、化学基を含む金属結合ピリジノン化学基を化学コンジュゲーションにより付加するために使用されている(Junpei Liら、Polymer、2016年、87巻、64~72頁、参照により本明細書に組み込まれる)。しかしながら、RAFTプロセスは、1つまたは複数の非キレートモノマーと直接共重合させる場合、金属キレートモノマー単位を用いて調製されるコポリマー組成物には適用されていない。
【0073】
キレート組成物およびその調製方法の実施形態では、1つまたは複数の好適な金属結合化学基は、カルボキシル、ヒドロキシル、フェノレート、カテコレート、ヒドロキサメート、ヒドロキシピリジノン、およびヒドロキシフェニルトリアゾール化学タイプからなる群から独立して選択される。
【0074】
特定の実施形態では、1つまたは複数の好適な金属結合化学基は、ヒドロキシピリジノン化学タイプであり、
【化17】
式中、X、Y、およびZは、独立してNまたはCであり、ただし
XがNである場合、YおよびZはCであり、
YがNである場合、XおよびZはCであり、
ZがNである場合、XおよびYはCである。
【0075】
キレート組成物およびその調製方法のさらなる実施形態では、第1のモノマー単位は、化合物(I)により表される。
【化18】
(式中、R
1は、H、アルキル、およびO、N、またはSで置換されているアルキルからなる群から独立して選択され、
R
2は、H、アルキル、およびO、N、またはSで置換されているアルキルからなる群から独立して選択され、
R
3は、H、アルキル、およびO、N、またはSで置換されているアルキルからなる群から独立して選択され、
nは、1~12である)
【0076】
化合物(I)は、化合物(Ia)を、
【化19】
(式中、R
1は、H、アルキル、およびO、N、またはSで置換されているアルキルからなる群から独立して選択され、
R
2は、H、アルキル、およびO、N、またはSで置換されているアルキルからなる群から独立して選択され、
PGは、保護基である)
化合物(Ib)と、
【化20】
(式中、nは、1~12であり、
R
4は、COCCH
2R
3または保護基である)
好適な付加開裂連鎖移動剤の使用による可逆的付加開裂連鎖移動機序により重合させることにより調製することができる。
【0077】
化合物(I)の調製は、
R4がCOCCH2R3の場合、PGを除去することにより、または
R4が保護基の場合、R4を除去し、好適なアクリレート供給源と反応させ、PGを除去することにより完了する。
【0078】
化合物(Ib)の調製では、R4がCOCCH2R3である場合、化合物(Ib)は、好適なアクリレート供給源をアルカンジイルジアミンと反応させることにより調製することができる。
【0079】
本発明では、任意の好適なヒドロキシ保護基およびアミン保護基の使用が企図されることが理解される。好適な保護基の例は、Greene(Wuts,Peter G.M.およびGreene,Theodora W、Greene’s protective groups in organic synthesis. John Wiley&Sons、2006年)およびJarowicki(Jarowicki、Krzysztof、およびKocienski、Philip.Contemp.Org.Synth.1997年、4巻、454~492頁、参照により本明細書に組み込まれる)に示されている。例えば、好適なヒドロキシ保護基は、ベンジルエーテル、アルキルエーテル、置換アルキルエーテル、アリルエーテル、シリルエーテル、アセテート、ベンゾエート、またはアルコキシアルキルエーテル保護基であってもよく、好適なアミン保護基は、アルキルカルバメート、置換アルキルカルバメート、ベンジルカルバメート、アセトアミド、置換アセトアミド、フタルイミド、ベンジルアミン、ベンジリデンアミン、または置換スルホンアミド保護基であってもよい。
【0080】
1つの実施形態では、化合物(Ia)のPGは、ベンジルエーテル保護基である。
【0081】
さらなる実施形態では、化合物(Ib)のR4が保護基である場合、保護基は、tert-ブチルオキシカルボニル保護基である。
【0082】
さらに、ベンジルエーテル保護基およびtert-ブチルオキシカルボニル保護基は、酸による処理で除去することができる。しかしながら、保護基を除去するための任意の他の好適な手段が企図され、当業者であればそれらを知ることになるだろう。
【0083】
キレート組成物の1つの実施形態では、組成物は、化合物(I)から調製され、
式中、R1は、Hであり
R2は、メチルであり、
R3は、メチルであり、
nは、1~6である。
【0084】
キレート組成物のさらなる実施形態では、組成物は、化合物(I)から調製され、
式中、R1は、Hであり
R2は、メチルであり、
R3は、メチルであり、
nは、2である。
【0085】
上記化合物用の化学名は、3-ヒドロキシ-1-(β-メタクリルアミドエチル)-2-メチル-4(1H)-ピリジノンであり、MAHMPと省略され、下記の化合物(II)により表される。
【化21】
【0086】
米国特許出願公開第2016/0038604号明細書には、化合物(II)の合成が開示されており、この文献は、参照により本明細書に組み込まれる。化合物(II)の合成は、
図1に示されている。この合成によると、MAHMPを、3-ヒドロキシ-2-メチル-4-ピロン(構造1)から始まり、1-アミノエチル-3-ヒドロキシ-2-メチル-4(1H)-ピリジノン(AHMP、構造4)の調製までの一連の化学ステップにより調製し、後者を塩化メタクリロイルで処理して、最終的に化合物(II)を得る。
【0087】
本発明の合成手順を使用すると、化合物(II)を、以前の方法と比較して、より高い収率で生成することができる。これは、部分的には、中間産物を調製する必要がなく、全体的に低減された数の合成ステップを必要とする本合成の結果である。
【0088】
また、本発明は、第2のモノマー単位が、1-ビニル-2-ピロリドン、アクリル酸、メタクリル酸メチル、N,N-ジメチル-アクリルアミド、メタクリル酸エチル、N-ビニルイミダゾール、およびスチレンからなる群から独立して選択される、キレート組成物およびその調製方法を提供する。
【0089】
キレート組成物およびその調製法の1つの例では、第1のモノマー単位は、化合物(II)であり、第2のモノマー単位は、1-ビニル-2-ピロリドンである。
【0090】
キレート組成物およびその調製方法の別の例では、第1のモノマー単位は、化合物(II)であり、第2のモノマー単位は、N,N-ジメチル-アクリルアミドである。
【0091】
さらなる実施形態では、限定することは望まないが、付加開裂連鎖移動剤は、
図9に示されている、2-エトキシチオカルボニルスルファニル-2-メチル-プロピオン酸(ETSPA)、2-エトキシチオカルボニルスルファニル-プロピオン酸エチルエステル(ETSPE)、およびポリ(N,N-ジメチルアクリルアミド)4-シアノ-4-[(ドデシルスルホニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸(ポリ-DMA CTA)からなる群から独立して選択される。さらなる実施形態では、付加開裂連鎖移動剤は、ETSPAおよびETSPEであり、特にETSPAである。特筆すべきことには、本発明は、上記の付加開裂連鎖移動剤に限定されず、他の付加開裂連鎖移動剤も好ましく作用する。
【0092】
さらに、付加開裂連鎖移動剤は、重合後に全部または部分的にキレート組成物から除去されることが企図される。これは、当技術分野で公知の任意の手段、例えば、付加開裂連鎖移動剤を濾過して取り除くこと、または付加開裂連鎖移動剤が可溶化されている溶液からキレート組成物を沈殿させることにより達成することができる。
【0093】
本明細書に記載されているキレート組成物は、コポリマーに個々のモノマーがどのように配置されているかに応じて、1つまたは複数の異なる構造アーキテクチャを有していてもよい。こうした構造アーキテクチャのタイプとしては、一般に、以下のものを挙げることができる。
交互型:第1および第2のモノマーが規則的に交互に現れ、各鎖における量がほぼ等しい。例えば、A-B-A-B-A-B-A-B;
周期型:モノマーの区画が鎖内で繰り返される。例えば、A-B-B-A-B-B-A-B-B;
ジブロック型:異なるモノマーで構成される第2のブロックにグラフトされた1つのモノマーで構成される1つのブロックを含む。例えば、A-A-A-A-B-B-B-B;
トリブロック型:3つのブロックを含み、各ブロックが、同じモノマーで構成されており、一緒にグラフトされている。A-A-A-A-B-B-B-B-A-A-A-AもしくはA-A-A-A-B-B-B-B-C-C-C-C;または
マルチブロック型:異なる組合せおよび数のブロックを含む。
【0094】
加えて、キレート組成物は、1つまたは複数の異なる形態学的特徴を有していてもよい。そうした形態学的形態としては、直鎖形、分岐鎖形、ブラシ形、櫛形、または星形が挙げられる。
【0095】
キレート組成物および調製方法のさらなる実施形態は、重合ステップ後に、3-ヒドロキシ保護基(PG)を除去することを含む。したがって、キレート組成物および調製方法の実施形態では、第1のモノマー単位は、化合物(III)により表される。
【化22】
(式中、R
1は、H、アルキル、およびO、N、またはSで置換されているアルキルからなる群から独立して選択され、
R
2は、H、アルキル、およびO、N、またはSで置換されているアルキルからなる群から独立して選択され、
R
3は、H、アルキル、およびO、N、またはSで置換されているアルキルからなる群から独立して選択され、
nは、1~12であり、
PGは、保護基である)
【0096】
好適な付加開裂連鎖移動剤の使用によるRAFT機序により、第2のモノマーと重合させた後、3-ヒドロキシ保護基は、好適な手段により除去される。
【0097】
本明細書に記載されているキレート組成物は、細菌細胞、真菌細胞、寄生生物細胞、またはがん細胞に容易に取り込まれないように、または組成物からの鉄の取出しを容易にして、細胞の内部側に鉄を送達することができる細胞表面受容体により容易に認識および結合されないように、一般に十分に大きな分子サイズを有していてもよい。その一方で、上限分子量が、少なくとも水性媒体および意図されている使用環境で金属と結合する前は、キレート組成物が依然として可溶性であることを可能するのに十分に小さい限り、上限分子量に制限はない。本発明の1つの実施形態では、キレート組成物は、1500ダルトン付近の下限分子量を有し、金属との結合前に水性媒体に依然として可溶性である限り、上限分子量を有さない。例えば、キレート組成物は、少なくとも1500、5000、10000、50000、100000、200000、300000、400000、500000、1000000、1500000、2000000、2500000、または3000000ダルトンであってもよい。さらに、分子量は、上記に列挙されている任意の2つの値またはそれらの間の任意の2つの量により画定される範囲を含むことができる。1つの実施形態では、可溶性キレート組成物は、低分子量組成物として提供されている場合でさえ、細胞または細胞の受容体および取込み機序により容易に認識されないだろう。
【0098】
種々の実施形態では、必須金属は、鉄、マンガン、銅、コバルト、マグネシウム、またはニッケルであることが理解されるだろう。特定の実施形態では、必須金属は、鉄である。
【0099】
本発明のキレート組成物に関して、生細胞または生物は、その使用に利用可能な必須金属の量が不十分であることにより、その増殖または活性が影響を受ける。
【0100】
1つの実施形態では、金属キレート組成物は、1つもしくは複数の細胞または1つもしくは複数の細胞の活性が原因である疾患を有する、魚またはヒトを含む動物の疾患の治療に使用することができ、疾患を引き起こす1つまたは複数の細胞は、微生物細胞、がん細胞、または単細胞もしくは多細胞寄生生物の1つまたは複数である。
【0101】
1つの実施形態では、金属キレート組成物は、1つもしくは複数の細胞または1つもしくは複数の細胞の活性が原因である疾患を有する、魚またはヒトを含む動物の疾患を治療するための薬剤の製造に使用することができ、疾患を引き起こす1つまたは複数の細胞は、微生物細胞、がん細胞、または単細胞もしくは多細胞寄生生物の1つまたは複数である。
【0102】
さらなる実施形態では、治療有効量の本明細書に記載のキレート組成物を投与することにより、魚またはヒトを含む動物の疾患を治療するため方法であって、疾患が、1つもしくは複数の細胞または1つもしくは複数の細胞の活性により引き起こされ、疾患を引き起こす1つまたは複数の細胞が、微生物細胞、がん細胞、または単細胞もしくは多細胞寄生生物の1つまたは複数である方法も提供される。
【0103】
さらなる実施形態では、金属キレート組成物は、ヒトまたは魚を含む動物に投与するためのものである。キレート組成物は、例えば、注射により体内に投与してもよく、または身体上に、例えば上皮表面上に塗布してもよい。また、キレート組成物は、創傷被覆材、例えば、ヒドロゲル、被膜、縫合糸、包帯、および他の被覆材と組み合わせて、創傷部位での微生物増殖の制御を支援することができ、またはカテーテル、シャント、および他の留置医療デバイスなどの留置医療デバイスの製造に使用される材料と組み合わせて、そのようなデバイス上での微生物増殖を妨害することができる。キレート組成物は水性媒体に可溶性であるため、創傷部位内へとまたは医療デバイスから拡散して、金属と結合し、病原性細胞に対するその利用能を制限することができる。
【0104】
またさらなる実施形態では、金属キレート組成物は、抗微生物剤、抗代謝剤、抗ウイルス剤、抗寄生生物剤、または抗がん剤の1つまたは複数を含む別の抗細胞剤と共に、ヒトまたは魚を含む動物に投与するためのものである。参照されている抗細胞剤は、一般に標的細胞内に透過し、その後標的細胞を傷害し最終的には死滅させる作用剤であり、この場合、標的細胞は、病原性真菌細胞、細菌細胞、寄生生物細胞、またはがん細胞である。本発明のキレート組成物を抗細胞剤と共に使用することにより、処置された細胞の増殖または活性を制御する代替能力、または抗細胞剤の細胞死滅効果の増強を提供することができる。
【0105】
抗微生物剤、抗代謝剤、抗ウイルス剤、抗寄生生物剤、または抗がん抗細胞剤は、限定ではないが、以下のものから独立して選択することができる:例えば、ペニシリン、セフェム、セファロスポリン、カルバペネム、ペネム、単環式β-ラクタム、マクロライド、ケトライド、ストレプトグラミン、リンコサミン、フルオロキノロン、クマリン抗生物質、グリコペプチド、モノバクタム、リポグリコペプチド、アンサマイシン、フェニコール、ニトロイミダゾール、ホスホマイシン、オルトソマイシン、パルジマイシン、プリマイシン、ベンゾナフチリドン、ムチリン、オキサゾリジノン、スルホンアミド、ニトロフラン、ポリエン、ベンジルピリミジン、バシトラシン、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、エリスロマイシン、クリンダマイシン、ゲンタマイシン、アミノグリコシド、ムピロシン、フシジン酸、スペクチノマイシン、リファマイシン、キノロン、シプロフロキサシン、ニトロフラントイン、5-フルオロサイトシン、トリメトプリム、スルホンアミド、トリメトレキサート、イミダゾール、トリアゾール、ジドブジン、ガンシクロビル、ビジラビン(vidirabine)、アシクロビル、アマンタジン、イドクスウリジン、ホスカルネット、トリフルリジン、リバビリン、ペンシクロビル、スタブジン、キノリン、キノリン誘導体、ジアミノピリミジン、ハロファントリン、ピリメタミン、クロログアニド、キニーネ、アトバクオン、フロ酸ジロキサニド、エフロルニチン、メラルソプロール、メトロンジアゾール(metrondiazole)、ニトロフラン、ペンタミジン、他のジアミジン、スチボグルコン酸ナトリウム、スラミン、ニトロソ尿素、フルオロウラシルブレオマイシン、抗微生物ペプチド、抗微生物界面活性剤、ハロゲン、アルデヒド、他の抗微生物有機化学物質、または先述のもののいずれかの化学的関連化合物および/もしくは先述のもののいずれかの誘導体。
【0106】
さらなる実施形態では、キレート組成物は、抗微生物保存剤と共に投与してもよい。本発明のキレート組成物を保存剤と共に使用することにより、処置された細胞の増殖または活性を制御する代替能力、または保存剤の保存効果の増強を提供することができる。抗微生物保存剤は、限定ではないが、以下のものから独立して選択される:プロピオン酸およびプロピオン酸塩;ソルビン酸およびソルビン酸塩;安息香酸および安息香酸塩;二酢酸ナトリウム;乳酸;二酸化硫黄、亜硫酸塩;亜硝酸ナトリウム;塩化ナトリウム;アルデヒド含有または放出化合物、水銀含有化合物;酸化防止剤;四級アンモニウム化合物などの界面活性剤およびエチレンジアミン四酢酸などの錯化剤。
【0107】
キレート組成物を抗細胞剤および抗微生物剤と組み合わせることは、化学的抗細胞剤に対して耐性度を有する細胞または寄生生物に特に有用であり得る。上記のようなキレート組成物を探求する目的は、以下の1つまたは複数である:細胞または寄生生物の増殖能力を損なうこと;使用されている化学的抗細胞剤に対する、望ましくない細胞もしくは寄生生物の感受性を増加させること、または治療に使用されている化学的抗細胞剤もしくは抗微生物保存剤に対して、望ましくない細胞もしくは寄生生物が有する耐性度の克服を支援すること。
【0108】
また、本発明は、本明細書に記載されているキレート組成物および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0109】
また、本発明は、本明細書に記載されているキレート組成物、ならびに抗細胞剤および/または微生物保存剤を含む医薬組成物を提供する。
【0110】
本発明のキレート剤組成物は、細胞増殖の所望のまたは必要な制御を提供するか、または細胞活性に影響を及ぼすような任意の好適な有効量で、処置しようとする水性媒体に添加または組み込むことができる。水性媒体と共に使用するための本発明のキレート剤組成物の量は、例えば、処置しようとする水系のタイプ(in vitroまたはin vivo)、キレーター組成物と結合することになる鉄および/または他の必須金属の含有量、標的としようとする細胞のタイプ、例えば、細菌細胞、酵母細胞、寄生生物細胞、またはがん細胞、ならびに所望の結果、例えば、増殖を防止することまたは特定の細胞活性に影響を及ぼすことに依存するだろう。
【0111】
ヒトまたは魚を含む動物に対する本明細書に記載の可溶性キレート化組成物の投与は、可溶性キレート組成物が、例えば血液または膣液中で機能することになる場合、宿主部位における有効濃度を達成するために十分な用量の投与を必要とすることになることが理解されるべきである。一般に、キレート化組成物は、増殖制御が所望の結果である場合および抗細胞剤を用いずに使用される場合、処置しようとする部位の水性環境に存在する鉄および/または他の金属濃度の量よりも過剰な、例えば2倍~5倍過剰な鉄および/または他の必須金属キレート能力を達成するように添加または投与されるだろう。可溶性キレート組成物が、抗細胞剤に対する細胞の耐性を低下させる目的で抗細胞剤と共に投与される場合、有効用量はより少ないことが予想されることになることが理解されるべきである。
【0112】
上記に記載されている種々のキレート組成物は、その使用が意図されている環境を考慮して選択されることになる。つまり、キレート組成物は、意図されている使用環境において許容可能な様式で作用するように選択されることになる。例えば、薬学応用または食品応用の状況では、キレート組成物は、薬学的に許容される物質、例えば薬学的に安全な調製物などを提供するように選択されることになる。本明細書に記載されているキレート組成物は、例えば、化粧品に関連する応用、例えば、保存タイプの材料としての応用を有していてよく、したがって、本発明のこのタイプの応用の状況で許容可能でなければならない。
【0113】
本明細書における「必須金属」に対する参照は、細胞が増殖および/または維持に必要とする金属に対する参照であることが理解されるだろう。
【0114】
「系列のメンバー」、「物質の群」、「置換基の群」、または特定の特徴(例えば、分子量、温度、濃度、および時間など)の「範囲」などが言及される場合、本発明は、その内のありとあらゆる特定のメンバーおよびサブ範囲またはサブ群の組合せに関し、それらは本明細書に明示的に組み込まれることがさらに理解されるべきである。したがって、任意の指定された系列、範囲、または群は、系列、範囲、または群のありとあらゆるメンバーならびにその内のありとあらゆる考え得るサブ系列、サブ範囲、またはサブ群を個々に指すための省略様式であると理解されるべきである。したがって、例えば、
- 炭素原子の数に関して、1~12個の炭素原子の範囲が言及される場合、ありとあらゆる個々の炭素原子数ならびに例えば2個の炭素原子、4~6個の炭素原子などのサブ範囲が本明細書に組み込まれることが理解されるべきである。;
- 1500ダルトンよりも大きな分子量(例えば、平均分子量)に関して、(本明細書で言及されている溶解度必要性に応じて)、分子量は、それを超える範囲、例えば、5000ダルトンよりも大きな分子量、1500ダルトンよりも大きな分子量、1500~10000000ダルトンの分子量、15000~10000000ダルトンの分子量、1500~3000000ダルトンの分子量、1500~2000000ダルトン、10000ダルトンの分子量、80000ダルトンの分子量、100000ダルトンの分子量などであってもよいことが理解されるべきである。
- 反応時間に関して、1分またはそれよりも長い時間は、1分よりも長いありとあらゆる個々の時間ならびにサブ範囲、例えば、1分、3~15分、1分~20時間、1~3時間、16時間、3時間~20時間などが、具体的に本明細書に組み込まれることが理解されるべきである。
- 濃度、要素などの他のパラメーターに関しても同様である。
【0115】
本明細書では、アルキルに対する参照は、直鎖アルキル基、例えば、限定ではないが、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、およびドデシルを含むことが理解されるべきである。1つの実施形態では、アルキルは、C1~12アルキルまたはそのサブセット、例えば、C1~6アルキルおよびC1~3アルキルを指す。また、分岐アルキル基、例えば限定ではないが、イソブチル、tert-ブチル、2-ペンチル(つまり、2-メチル-ブチル)、3-ペンチル(つまり、3-メチル-ブチル、イソペンチル)、ネオペンチル、およびtert-ペンチルが含まれる。また、アルキルは、独立して飽和、不飽和、または置換されていてもよい。アルキルの置換としては、ヘテロ原子置換、例えば限定ではないが、O、N、およびSが挙げられる。
【0116】
本明細書では、クラスまたはサブクラスは、本明細書では、一切のありとあらゆる考え得る様式で固有に定義されることが理解されるべきである。クラスもしくはサブクラスまたはクラスもしくはサブクラスの個々の構成要素は、ポジティブ定義ならびにネガティブ定義または排他的定義を含む。つまり、本明細書中の定義は、特定の個々の化合物、クラス、またはサブクラスをポジティブに含むように、および/または特定の個々の化合物、クラス、もしくはサブクラス、またはそれらの組合せを除外するように記述することができるありとあらゆる定義を含む。例えば、化合物式を定義するための除外定義は、以下のように記載される:「ただし、R1およびR2の一方がメチルであり、他方がHである場合、R8は、2位に存在してはならない」。
【0117】
また、本発明の状況では、好適なRAFT剤としては、以前に記載されているかまたはこれから設計されるもの、例えばKeddie(Keddie、D.Jら、Macromolecules、2012年、45巻、5321~5342頁、参照により本明細書に組み込まれる)により記載されているもののいずれかが挙げられ、ただし、それらは、好適なRAFT媒介性ポリマー組成物を得るのに有用であることが理解されるべきである。
【0118】
キレート組成物の種々の実施形態を記載する。上述の実施形態は、例であることが意図されており、当業者であれば、本教示の趣旨および範囲から逸脱することなく、それらに変更および改変をなすことができる。
【0119】
実施例
以下の非限定的な例は、本発明の種々の態様を例示するために提供されており、いかなる点でも本発明の範囲を限定することは意図されていない。
【0120】
実施例1:中間体1-アミノエチル-3-ヒドロキシ-2-メチル-4(1H)-ピリジノン(AHMP)の調製を介する、キレート組成物の調製に有用な3-ヒドロキシ-1-(β-メタクリルアミドエチル)-2-メチル-4(1H)-ピリジノン(MAHMP)キレートモノマーの従来合成
このキレートモノマー中間体の合成は、以前に他所で記載されている(米国特許出願第14124619号明細書、PCT/CA2012/000562)。この例は、この以前に開示されている合成手順の性質が比較的複雑であり、種々の時間がかかるステップを有し、得られる産物収率が低いという問題があることを示すために提供されている。
図1は、全体的なステップの順序を示し、下記の例における化学中間体(構造1)~(構造5)が参照されている。
【0121】
A.保護されたピリジノン前駆体の調製
20Lフラスコに、7.93molの3-ヒドロキシ-2-メチル-4-ピロン(構造1、
図1)、10.2Lのメタノール、11.9molの塩化ベンジル、および1.12L水中8.33mol水酸化ナトリウムの溶液を添加して、淡黄色透明溶液を得た。混合物を6時間還流し、その後室温で一晩撹拌した。真空を使用してメタノールを蒸発させ、残渣(黄橙色油状物)を4.5Lの水と混合し、3つの別々の2.5Lアリコートの塩化メチレンを使用して抽出した。3つの塩化メチレン抽出物をプールし、1.2Lの5%NaOHを3回換えて洗浄し、その後1.2Lの水を3回換えて洗浄した。その後、塩化メチレン抽出物を、固体MgSO
4で乾燥した。濾過してMgSO
4を除去し、溶媒を蒸発させた後、1.8kgの粗3-ベンジルオキシ-2-メチル-4-ピロン(構造2、
図1)を回収した。粗収率は105%だった。
1H NMR in CDCl
3(400MHz)δ7.58(d、1H)、7.40~7.29(m、5H)、6.35(d、1H)、5.13(s、2H)、2.06(s、1H)。
【0122】
構造2は、メタクリルアミドエチル-2-メチル-4(1H)-ピリジノン(MAHMP)またはその関連3-ヒドロキシ-1-(β-メタクリルアミド-R)-2-メチル-4(1H)-ピリジノン系列の化合物へのその後の合成ステップに好ましい中間体としての保護されたピリジノン化合物の例であり、式中、Rは、長さが≧1および≦12個の炭素単位の炭化水素鎖である。異なるピリジノン出発物質を準備するための代替方法、代替保護基、および保護されたピリジノン前駆体を調製するため代替方法が可能であり、そのような方法は、ピリジノン基の好適な保護を提供し、かつ3-ヒドロキシ-1-(β-メタクリルアミドエチル)-2-メチル-4(1H)-ピリジノン(MAHMP)またはその関連3-ヒドロキシ-1-(β-メタクリルアミド-R)-2-メチル-4(1H)-ピリジノンシ系列の化合物であり、式中、Rは、長さが≧1および≦12個の長さの炭素単位の炭化水素鎖である化合物のその後の調製も可能である限り、好適である。
【0123】
B.中間体1-アミノエチル-3-ヒドロキシ-2-メチル-4(1H)-ピリジノン(AHMP)の調製
Aで調製した粗3-ベンジルオキシ-2-メチル-4-ピロン材料から、6.01molを、20Lフラスコ中で、8.5Lのエタノール、27.95molのエチレンジアミン、および34mLの水と混合し、室温で一晩撹拌した。溶媒および過剰なエチレンジアミンを減圧下で除去して、7Lの水ですりつぶした黄褐色油状液を得、その後水層を、3つの別々の3Lアリコートの塩化メチレンを使用して抽出した(注:塩化メチレンで抽出する前に水ですりつぶすことにより、小規模合成中に固形物がもたらされた)。大規模の場合、このプロトコールに従っても、材料は固形化せず、したがって塩化メチレンで抽出され、濃縮された。3つの塩化メチレン抽出物を一緒にし、減圧下で濃縮して、1.17kg(76%)の1-(2-アミノエチル)-3-ベンジルオキシ-2-メチル-4-(1H)-ピリジノン(構造3、
図1)を黄褐色油様材料として得た。
1H NMR in d
6-DMSO(400MHz)δ7.54(d、1H)、7.38-7.30(m、5H)、6.11(d、1H)、4.99(s、2H)、3.8(t、2H)、3.70(t、2H)、2.15(s、3H)。20Lフラスコに、4.57molの1-(2-アミノエチル)-3-ベンジルオキシ-2-メチル-4-(1H)-ピリジノン(構造3、
図1)、8.96Lの6M HCl水溶液を投入し、溶液を室温で一晩撹拌した。真空中で蒸発させて乾燥した後、淡黄色固形物を回収した。これを、8.96Lの6M HCl水溶液に再溶解し、4日間室温で撹拌し、再び蒸発させて乾燥した。固形残渣を、アセトンで洗浄し(固形物が無くなり、濾過可能にするのに十分な程度に)、濾過して粗黄色固形物を得た。この粗材料に、4M HCl水溶液(2L)およびエタノール(1L)を添加し、固形物が溶解するまで、混合物を還流した。その後、産物を、冷蔵庫に保管することにより再結晶させ、濾過し、アセトンで洗浄し、減圧下で乾燥して、AHMP(130g、14%収率)を得た。最終1-アミノエチル-3-ヒドロキシ-2-メチル-4(1H)-ピリジノン(AHMP)産物(構造4、
図1)は黄色だった。
1H NMR in d
6-DMSO(400MHz)δ10.41(bs、1H)、8.56(s、3H)、8.33(d、1H)、7.35(d、1H)、4.66(t、2H)、3.27(t、2H)、2.55(s、3H)。
【0124】
C.3-ヒドロキシ-1-(β-メタクリルアミドエチル)-2-メチル-4(1H)-ピリジノン(MAHMP)モノマーの調製
磁気撹拌機および滴下漏斗が取り付けられた2Lフラスコ中で、上記Bで調製した0.488molのAHMP(構造4、
図1)を、413mLの水に溶解した。その後、1.46molのトリエチルアミン(Et
3N)および826mLのCH
3CN(アセトニトリル)を添加し、混合物を氷浴に設置した。その後、混合物を氷浴に置いたまま(0~5℃)、0.488molの塩化メタクリロイル(C
3H
3ClO)を、1.5時間かけて滴加した。この添加後、混合物が室温に加温されることを可能にし、撹拌を2時間継続した。その後、混合物を蒸発させて乾燥し、2Lの高温アセトンを固形残渣に添加し、濾過した。濾過した固形物に加えて、多少の塩化トリエチルアンモニウムの結晶が濾過液に観察された。それらを第2の濾過で除去し、濾過液を蒸発させて、およそ800mLのアセトンを除去し、その後それを冷蔵庫で一晩保管した。塩化トリエチルアンモニウムの初期針状結晶が形成された場合、それを濾過で除去し、濾過液を18時間冷蔵庫に戻し、濾過して淡黄色固形物(76g)を得た。得られた固形物を、190mLのアセトンと共に4時間撹拌し、濾過して、50g(43.4%)の3-ヒドロキシ-1-(β-メタクリルアミドエチル)-2-メチル-4(1H)-ピリジノン(MAHMP)(構造5、
図1)を白色に近い固形物として得た[注:上記のプロセス全体を実施した後、NMR分析は、一部のバッチで塩化トリエチルアンモニウムが不純物として存在すること示す場合があった。これは、クロロホルム(2.5容積、3時間)でスラリー化した後、濾過により除去した。]
1H NMR in d
6-DMSO(400MHz)δ8.08(bs、1H、NH)、7.37(d、1H、ArH)、6.06(d、1H、ArH)、5.59(s、1H、=CHaHb)、5.33(s、1H、=CHaHb)、4.86(bs、1H、-OH)、4.02(t、2H、-NCH
2)、3.37(t、2H、-NCH
2)、2.28(s、3H、-CH
3)、1.81(s、3H、-CH
3)は、産物3-ヒドロキシ-1-(β-メタクリルアミドエチル)-2-メチル-4(1H)-ピリジノン(MAHMP)(構造5、
図1)であることを確認したが、合成経路の全収率は、わずか8.9%(重量/重量)だった。
【0125】
この例(上記のAからC)は、従来の合成経路が比較的複雑であり、種々のステップを有しており、最終MAHMP産物の収率が低く、つまり全収率が10%未満であるという問題があることを示している。
【0126】
実施例2A:中間体1-アミノエチル-3-ヒドロキシ-2-メチル-4(1H)-ピリジノン(AHMP)を調製しない、キレート組成物の調製に有用な3-ヒドロキシ-1-(β-メタクリルアミドエチル)-2-メチル-4(1H)-ピリジノン(MAHMP)キレートモノマーの新規合成
図2Aは、全体的なステップの順序を示し、下記の例における化学中間体(構造1から化合物IIまで、ならびに構造aおよび構造b)が参照されている。
【0127】
3-ヒドロキシ-2-メチル-4-オン(構造1、
図2A)を使用して、実施例1Aに記載のように、3-(ベンジルオキシ)-2-メチル-4H-ピラン-4-オン(構造2、
図2A)を調製した。
【0128】
N-(2-アミノエチル)メタクリルアミド(構造b、
図2A)の合成を、以下のようにして完了させた:20Lの丸底フラスコに、エチレンジアミン(320mL;0.91当量;4.35mol)(構造a、
図2A)および水(4.8L)を投入した。その後、0℃にて3N HClを用いて、pHを8.5に調整した。この撹拌溶液に、クロロホルム(3.2L)中の塩化メタクリロリル(methacrylolyl chloride)(500g;1.0当量;4.78mol)溶液を、0℃で3時間にわたって滴加した。混合物を、RTで一晩撹拌した。その後、二相性反応混合物から、有機相および水相を分離し、水層をクロロホルム(1L)で洗浄した。その後、水層を真空下で濃縮して白色固形物を得、それをメタノール(4L)中で撹拌し、その後濾過して白色固形物を除去した。その後、濾過液を濃縮して白色半固形物を得、それを2M NaOH溶液(3容積)中で撹拌し、CHCl
3中10%イソプロピルアルコール(IPA)(5×1500mL)で抽出した。5つの有機画分を一緒にし、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮して淡黄色半固形物(145g)を得た。産物収率は、23.6%だった。
1H NMRにより、N-(2-アミノエチル)メタクリルアミド(構造b、
図2A)の同一性を確認し、HPLCにより、99.3%の純度を確認し、LCMSにより98.6であることを確認した。
1H NMR(400MHz、d
6-DMSO)δ7.82(bs、1H)、5.69(s、1H)、5.29(s、1H)、3.09(t、2H)、2.57(t、2H)、1.84(s、3H).1.38(bs、2H)。
【0129】
実施例2B:N-ヒドロキシサクシニミドメタクリレート(経路A)およびメタクリル酸無水物(経路B)をメタクリレート供給源として使用した、N-(2-アミノエチル)メタクリルアミドの代替合成。
N-(2-アミノエチル)メタクリルアミド(構造b、
図2B、経路A)を合成するための代替手順は、まず、N-ヒドロキシサクシニミドメタクリレートを合成することにより完了させた。N-ヒドロキシサクシニミド(11g、95.7mmol)を窒素雰囲気下で3口フラスコに添加し、その際に、300mLの無水テトラヒドロフラン(THF)を添加した。これに対し、トリエチルアミン(13.3mL、95.7mmol)を溶液に添加し、室温で1時間撹拌したままにした。その後、溶液を0℃に冷却し、塩化メタクリロイル(9.3mL、95.7mmol)を溶液に滴加した。その後、溶液が室温に加温されることを可能にし、一晩撹拌したままにしておいた。沈殿物を濾過して取り除き、溶媒を減圧下で除去した。メタノールから結晶化した残渣は、N-ヒドロキシサクシニミドメタクリレート(75%収率)だった。
1H NMR(400MHz、d
6-DMSO):δ6.35(s、1H)、6.10(s、1H)、2.84(s、4H)、2.00(s、3H)。N-ヒドロキシサクシニミドメタクリレート(5g、27mmol)を、窒素雰囲気下で3口フラスコに添加した。これに、400mLの無水THFを、撹拌しながら添加した。得られた混合物を0℃に冷却した。冷却した混合物に、エチレンジアミン(3.6mL、54mmol)を添加し、その際に、白色沈殿物が直ちに生じた。反応混合物が室温に加温されることを可能にし、一晩撹拌した。翌日、白色沈殿物を重力濾過により濾過して取り除き、THF(3×100mL)で洗浄した。濾過液およびTHF洗液を収集し、溶媒を減圧下で除去して白色に近い半固形物を得た。これは、構造bおよびジ置換エチレンジアミンとメタクリレートとの混合物であることが見出された。
1H NMRは、開始エステルから90%モノアミン(構造b)を確認した。
1H NMR(400MHz、d
6-DMSO):δ7.84(bs、1H)、5.64(s、1H)、5.31(m、1H)、3.11(q、2H)、2.49(t、2H)、1.85(s、3H)、1.36(bs、2H)。
【0130】
N-(2-アミノエチル)メタクリルアミドの塩酸塩(構造b・HCl、
図2B、経路B)を合成し、構造3の合成に直接使用することができる。エチレンジアミン(11.1mL、0.2mol、2.0当量)を、100mL水中のエチレンジアミン二塩酸塩(11g、0.08mol、1.0当量)溶液に添加した。室温で1.5時間撹拌した後、メタノール(110mL)を添加し、混合物を0℃に冷却し、15分間の温度平衡化を可能にした。メタノール(40mL)に溶解したメタクリル酸無水物(37mL、0.25mol、3.0当量)を、冷却した溶液に30分間かけて滴加した。メタクリル酸無水物の添加が完了した後、溶液温度を1時間0℃に維持した。この溶液に塩酸(20mL)を添加し、1時間撹拌し、溶液が室温に加温されることを可能にした。溶媒を減圧下で除去して粗粘性生成物を得、その後それをゆっくりとアセトンに送達した。沈殿物を、真空濾過により単離および収集し、その後、高温2-プロパノール(150mL)で抽出した。2-プロパノール抽出物を減圧下で濃縮し、最小限の量のアセトンを使用して、産物を沈殿させた。その後、それを真空濾過により単離および乾燥して、20.5g(48%収率)の産物を白色に近い粉末として得た。
1H NMR(400MHz、DMSO-d
6):δ8.60~7.82(4H、m)、5.79(1H、s)、5.36(1H、s)3.38(2H、q)、2.89(2H、t)、1.87(3H、s)。
13C{
1H}NMR(100MHz、DMSO-d
6):δ168.3、139.9、120.4、38.9、37.2、19.1。
【0131】
構造3、
図2Aを、以下のように調製した:10L丸底フラスコに、3-(ベンジルオキシ)-2-メチル-4H-ピラン-4-オン(230.0g、1.0当量、1.064モル)(構造2、
図2A)を添加し、その後メタノール(2.3L、10容積)および水(2.3L、10容積)を添加した。この溶液を、5分間撹拌し、その後N-(2-アミノエチル)メタクリルアミド(構造b、
図2A)(272g、2.0当量、2.129mol)を添加した。5分間撹拌した後、反応混合物に、2M NaOH溶液(230mL、1容積)を10分間かけてゆっくりと投入した。その後、混合物を一晩還流した。一晩加熱した後、反応混合物を室温に冷却し、メタノールおよび水を、減圧下で蒸留して取り除いた。その後、得られた半固形物を、水(5容積)で希釈し、pHを、2N HClで7.0に維持した。その後、水層を塩化メチレン(3×500mL)で抽出した。これらの抽出中に、典型的にエマルジョンが生じ、それを、セライトでの濾過を繰り返すことにより破壊して、有機相を水相から分離した。別々の有機画分をプールし、Na
2SO
4で乾燥し、その後、減圧下で濃縮して、茶色半固形物を得た。その後、この材料を、酢酸エチル(3容積)中で一晩スラリー化し、濾過して淡黄色固形物を得た(200g、57.5%)。
1H NMR分光法により、
図2Aの構造3の同一性が、N-(2-(3-(ベンジルオキシ)-2-メチル-4-オキソピリジン-1(4H)-イル)エチル)メタクリルアミドであることが確認され、HPLCにより、その純度が96.6%であることが確認された。
1H NMR in d
6-DMSO(400MHz)δ8.11(bs、1H)、7.45~7.31(m、6H)、6.11(d、1H)、5.59(s、1H)、5.34(s、1H)、4.99(s、2H)、3.95(t、2H)、3.34(t、2H)、2.19(s、3H)、1.81(s、3H)。
【0132】
図2Aの構造5を、以下のように調製した。5L丸底フラスコに、N-(2-(3-(ベンジルオキシ)-2-メチル-4-オキソピリジン-1(4H)-イル)エチル)メタクリルアミド(
図2の構造3)(200g;1.0当量;0.612mol)、11.6M HCl(10容積)を投入し、混合物をRTで一晩撹拌した。一晩撹拌した後、HClを減圧下で蒸留して反応生成物から取り除いた。その後、得られた固形物を、最小限の量のH
2O(5容積)に溶解し、10%NaHCO
3溶液(ゆっくりと添加した)で中性pH(pH7.0)を達成し、その際に溶液から固形物が沈殿した。固形物を濾過により回収し、フィルター上にて冷却H
2Oで洗浄し、高真空下で乾燥して、90gの薄茶色固形物を得た。産物収率は62.1%だった。
1H NMRにより、固形物の同一性が、N-(2-(3-ヒドロキシ-2-メチル-4-オキソピリジン-1(4H)-イル)エチル)メタクリルアミドまたはいわゆる3-ヒドロキシ-1-(β-メタクリルアミドエチル)-2-メチル-4(1H)-ピリジノン(MAHMP)(構造5、
図2A)であることが確認され、HPLCにより、純度が99.8%であることが確認された。
1H NMR in d
6-DMSO(400MHz)δ8.09(bs、1H、NH)、7.37(d、1H、ArH)、6.07(d、1H、ArH)、5.59(s、1H、=CHaHb)、5.33(s、1H、=CHaHb)、4.86(bs、2H、-OH)、4.01(t、2H、-NCH
2)、3.37(t、2H、-NCH
2)、2.28(s、3H、-CH
3)、1.18(s、3H、-CH
3)により、3-ヒドロキシ-1-(β-メタクリルアミドエチル)-2-メチル-4(1H)-ピリジノン(MAHMP)(構造5、
図2A)の構造同一性が確認された。
【0133】
この例は、本新規合成経路では全収率が非常により高く、62.1%(重量/重量)と非常に向上され、つまり、実施例1の従来手順で得られた8.9%(重量/重量)よりもおよそ7倍高かったことを示す。
【0134】
実施例3:キレート組成物中のMAHMPの測定。
プロトン核磁気共鳴(
1H NMR)分光法を使用して、コポリマーの3-ヒドロキシ-1-(β-メタクリルアミドエチル)-2-メチル-4(1H)-ピリジノン(MAHMP)含有量を以下のように評価した。実施例2と同様に調製したMAHMPを、種々の既知濃度で既知量のポリアクリルアミドまたはポルビニルピロリドン(polvinylpyrrolidone)に添加し、試料を、重水素化d
6-DMSO中で、ポリアクリルアミドまたはポルビニルピロリドン基準シグナル対して6.1ppmのMAHMP特性シグナルピークについて分析した。これにより、
図3に示されているような、MAHMP-アクリルアミドコポリマーキレート組成物またはMAHMP-ピロリドンコポリマーキレート組成物のMAHMP含有量の検量線が提供された。その後、この検量線の線形性が優れていることにより(r
2=0.95~0.98)、実施例4、実施例5、実施例11、および実施例12で調製したコポリマー組成物のいずれのタイプでも、MAHMP組込みのmol%を直接的に測定および決定することが可能だった。
【0135】
実施例4:FRP手順を使用して1-ビニル-2-ピロリドンと共重合されたMAHMPの形態の活性ピリジノン金属結合基を含む水可溶性コポリマーキレート組成物の合成
A.合成を最適化する試み
MAHMPの使用を向上させる試み、つまり、以前に開示されているバルクフリーラジカル(FRP)手順を使用した重合によるキレート組成物へのその組込みを増加させる試みを実施した。こうした試みは、重合反応の終了時に薄層クロマトグラフィー(TLC)により検出可能な残留MAHMPを測定することによりモニターした。こうした試みは、
図4に示されている反応順序に図示されているコポリマー産物の質量収率を増加させる試みでもあった。種々の化学反応物(A~E)の調整は、下記の表に示されている通りだった。
【0136】
【0137】
その後、MAHMPの完全な消費をもたらした、つまり残留物がTLCにより検出不能であった上記の最適化された合成手順を、下記のように繰り返した。
【0138】
B.反応物当量を調整することよる合成の最適化
3Lフラスコに、水(1.7L、MAHMPに対して(wrt)85容積)を投入した。その後、MAHMP(20g、0.0847mol、1当量)を導入し、反応生成物を10分間撹拌して、透明溶液を得た。その後、この溶液を50℃に加熱した。1-ビニル-2-ピロリドン(NVP)(271mL、2.54mol、MAHMPに対して30当量)を、添加漏斗を使用して滴下で投入した。添加の完了後、加熱を中止し、混合物を1時間かけてRTに冷却した。その後、過硫酸アンモニウム(3.86g、0.0167mol、MAHMPに対して0.2当量)を添加し、得られた透明溶液を、窒素で20分間フラッシュした。その後、TMEDA(6.8mL、MAHMPに対して0.34容積)を、15分間かけて滴加し、重合を40℃で2時間にわたって実施した。2時間の加熱後、反応を停止させ、その後、反応生成物を1時間かけてRTに冷却した。得られたポリマー溶液(1.98L)を、ビスキング透析バッグに封入し、48時間にわたって蒸留水(100L)に対して透析し、水を5時間間隔で10回交換した。透析後、溶液(3L)を2つの画分AおよびB(各1.5L)に分割した。画分Aを凍結乾燥し、画分Bは、トルエン(7L)を使用して共沸処理して、水を除去した。淡黄色から微かに橙色気味のコポリマー金属キレート組成物A+Bを合わせた収量は、20.6gだった。質量収率は、使用したMAHMPおよびNVPを合わせた合計質量に対してわすか7%だった。実施例3の手順を使用して、この組成物(参照番号P315-A00279-029)のMAHMP含有量を分析したところ、MAHMP含有量は21.4%(w/w)であることが示された。この例は、コポリマー組成物へのより完全なMAHMP組込みを保証するためには、過剰なNVPを使用しなければならず、そのため大過剰の遊離未反応NVPがもたらされたという収率および合成効率問題があったことを示している。この問題は、下記の実施例12に記載されているRAFT合成手順を使用するにより克服された。
【0139】
C.高分子量を得るための典型的なFRP合成手順の最適化(バッチ番号IS09758-045)
FRP手順は、得られる金属キレートコポリマー組成物の一部の用途に望ましいと思われる比較的高分子量のMAHMP-ピロリドンコポリマーを得るために有用であることが見出された。例えば、創傷部位に、または外耳もしくは膣などの粘膜表面に塗布されるより高分子量の材料は、塗布部位からより急速に拡散および除去されることになるより低分子量の材料と比較して、より長期間にわたって保持され、つまり活性を保持することになる。この例は、より高い反応温度(70℃対40℃)でFRP重合の反応時間を延長することにより(18時間対2時間)、そのようなより高分子量のMAHMP-ピロリドンコポリマー材料を得るための手段を示す。下記の手順は、
図4の反応成分を参照する。
【0140】
磁気撹拌機、還流冷却器を装備した3口50mL丸底フラスコにて、(0.5g、0.0021mol)MAHMP(A)および(7.05g、0.063mol)N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)(B)を、26mLの脱イオン水(Eの一部分)に溶解し、混合物を、N2下で20分間撹拌した。その後、(0.49g、0.0042mol)テトラメチルエチレンジアミン(促進剤)(D)を添加し、得られた混合物を、N2で20分間パージすることにより脱気した。脱気後、4mLの脱気DI水(Eの残り)中の(0.48g、0.0021mol)過硫酸アンモニウム(開始剤)(C)を、フラスコに添加した。その後、混合物を、30分間かけて70℃にゆっくりと加熱し、反応を、N2下で18時間にわたって同じ温度で継続した。18時間後、反応生成物を試験し、薄層クロマトグラフィー(TLC)による測定では、検出可能な残留未反応(未重合)MAHMPは存在しなかったが、残留NVPが存在したことが決定された。混合物をロータリーエバポレータに入れ、減圧下(35~50mmHg)で50℃にて水を除去した。粗生成物をメタノールに溶解し、濾過してあらゆる不溶性不純物を除去した。濾過液を濃縮して、およそ50重量%ポリマー溶液にし(例えば、等容積のメタノール中、およそ8.5gの粗コポリマー産物生成物)、この溶液を、一定の撹拌下で50(容積)過剰のMTBE(メチルターシャリーブチルエーテル)でゆっくりと沈殿させたその後、沈殿を濾過し、MTBEで洗浄し、一定の重量が観察されるまで、減圧下(35~50mmHg)で4~6時間にわたって50℃にてロータリーエバポレータで乾燥した。コポリマー産物(試料ISO9758-045)収率は、MAHMPおよびNVPを一緒にした開始質量に対して42%だった。
【0141】
実施例5:鉄結合活性に関するキレートコポリマー組成物の特徴付け
既知重量の金属キレートコポリマー組成物の試料を、中性pHの水に溶解し、周囲温度にて最低2時間にわたって過剰なクエン酸鉄溶液と反応させ、鉄とポリマー含有MAHMPとの相互作用により発色する赤色を、分光光度計で450nmにて測定した。遊離MAHMPと反応させた様々な既知量の鉄の標準物質を使用して、赤色が、コポリマー組成物に組み込まれたMAHMPと鉄との結合に直接起因していたことを確認した。実施例4(B)と同様に調製した組成物について示されている鉄キレートコポリマー組成物の飽和曲線を、
図5に示されているように作成した。この飽和曲線から、組成物の相対的鉄結合能を、450nmでの最大吸光度をもたらし、イオンをさらに添加してもほとんど変化を示さない鉄の量として決定した。これに基づくと、実施例4(B)と同様に調製した組成物は、およそ1umol Fe/mg組成物の鉄受容能力を有していた。この例は、鉄と結合した際のヒドロキシル-ピリジノンで生成される発色団に特徴的な450nmの光を吸収する測定可能な発色団の鉄用量依存性発色を示す。したがって、これは、MAHMPがコポリマーに組み込まれたこと、およびそのように組み込まれたMAHMPが鉄と結合することを示す。
【0142】
実施例6:生物学的活性に関するキレートコポリマー組成物の特徴付け
キレート組成物は、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(Mark Wilcox博士、ニューサウスウェールズ大学、オーストラリアから得た、角膜感染症の臨床分離株である菌株038、またはアメリカ培養細胞系統保存機関から得た、原型臨床分離株および基準菌株である菌株ATCC43300)およびカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)(アメリカ培養細胞系統保存機関から得た、原型臨床分離株および基準菌株であるSC5314、またはQueen Elizabeth II病院、ハリファックス、カナダから得た、臨床分離株である菌株3969)の増殖阻害活性を決定することにより、それらの生物学的活性をin vitroで評価した。微生物を、RPMI1640培養培地で増殖させ、RPMI1640培地の新鮮なアリコートで、またはHolbeinおよびMiraの方法(Holbein B.E、Mira de Orduna R.2010年、FEMS Microbiol Lett.307巻(1号):19~24頁、参照により本明細書に組み込まれる)により部分的に脱鉄されており、低い鉄レベルでのまたはこの脱鉄培地に既知濃度の鉄を再添加しての試験を可能にする培地で試験した。試験試料をチューブでインキュベートした場合は光学濃度により、または増殖をマイクロタイター皿ウェルで試験した場合は視覚的に30℃での増殖を測定した。下記の表の結果は、実施例4(B)および(C)で調製した金属キレート組成物の阻害活性(48時間のインキュベーション期間にわたって増殖を完全に抑制する最小阻止濃度(MIC)として表されている)を示す。こうした結果は、組成物が増殖を阻害することを示し、また、阻害の度合いが、増殖培地で利用可能な鉄の量と関連しており、濃度がより高いほど、金属キレート組成物の阻害活性が低減されることを示す。したがって、こうした結果により、金属キレート組成物の活性が、それらの鉄キレート活性と関連し、組成物と結合した培養培地中の鉄は、病原性細菌および病原性真菌酵母の両方で、微生物増殖に必要な鉄としての要求を満たさなかったことが確認される。
【0143】
【0144】
実施例7:相対分子量を含む物理的特性に関する、キレートコポリマー組成物の特徴付け
キレート組成物を、以下の方法によりPolymer Laboratories社製PLGPC50機器を使用して、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で分析した。試料を、非水性分離物の場合はジメチルホルムアミド、または水性分離物の場合は0.2M硝酸ナトリウム水溶液のいずれかに、2.5mg/mLで溶解した。非水性分離物の場合、試料(50uL)をJordi DVB混合床にアプライし、50℃にて0.8mL/分の流速のジメチルホルムアミドで溶出した。既知分子量の狭幅範囲のポリメチメタクリレート(polymethymethacrylate)標準物質を使用して系を較正し、試料を、相対分子量(MnおよびMw)およびさらに多分散指数PDI(Mw/Mn)について分析した。水性分離物の場合、(100uL)をPL-アクアゲル混合OH30床にアプライし、30℃にて1.0mL/分の流速の0.2M硝酸ナトリウム水溶液で溶出した。既知分子量の狭幅範囲ポルビニルピロリドン(PVP)標準物質を使用して、Mn、Mw、およびPDI(Mw/Mn)を決定するための水性分離物を較正した。この相対的GPC分析は、比較的幅広い分子量分布を示し、この組成物の測定された多分散(Poly Dispersion)指数PDIは2.4だったが、狭い分布であれば、PDIは<1.5であろう。フリーラジカル重合プロセスは、通常、より幅広い分布の分子量をもたらすことが十分に理解されている。また、この試料の相対的GPC分析は、わずか3.7kDaの平均分子量(Mw)を示したが、これは、実施例13に記載されており、
図6に示されているような代替GPC法を使用してレーザ光散乱により組成物の真の分子量を測定すると、はるかにより高いことが見出された。この代替GPC法により、この試料のPDIは2.4であることも見出された。比較的高分子量の幅広いMW分布を、
図6に見ることができる。レーザ光散乱測定は、この試料の真のMW(平均)が32kDaであること、つまり、この値が、相対的GPC分析により、つまりPVP標準物質と比較して推定された値のおよそ10倍であることを示した。この例は、バルクフリーラジカル重合技法で調製されたキレート組成物の分子量分布が非常に幅広いことを示す。
【0145】
実施例8:FRP手順を使用してメチルアクリルアミドと共重合されたMAHMPの形態の活性ピリジノン金属結合基を含む水可溶性コポリマーキレート組成物の合成
図7に示されているバルクFRP化学手順により調製した場合、このコポリマーは、上記の実施例4に記載されているコポリマーを含むピロリドンの場合に遭遇するものとはさらに異なる問題を示した。こうしたアクリルアミド含有組成物の重合は迅速であり、非常に高分子量の固体ゲル材料をもたらすことが多く、したがってそれらは水溶性ではなく、求められている所望の水溶性コポリマー組成物ではなかった。
【0146】
A.合成を最適化する試み
MAHMPおよびアクリルアミドを含むコポリマー組成物の基本的FRP合成手順が、
図7に示されている化学成分を参照して下記に提供されている。
【0147】
実施例2と同様に調製したMAHMP、3-ヒドロキシ-1-(β-メタクリルアミドエチル)-2-メチル-4(1H)-ピリジノン(A)(2.5mmol、0.59g)を、50℃にて、機械的撹拌機を有する250mLフラスコ中の50mL水(E)に溶解した。N,N-ジメチル-アクリルアミド(B)(54mmol、5.6mL)を、撹拌しながら添加し、混合物を室温に冷却した。過硫酸アンモニウム開始剤(C)(0.057g)を添加し、フラスコを窒素で20分間フラッシュした後、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン促進剤(TMEDA)(D)(0.1mL)を添加し、40℃で2時間にわたって重合を実施した。ポリマー溶液を、溶解度およびゲル不形成について観察した。この手順は、ほとんど常に、2時間の重合手順内でまたはTMEDA(D)の添加局面中にゲル形成をもたらした。アクリルアミドのホモ重合、つまりMAHMP(A)を介在させない別々の試行を含む、別々の試行で種々の反応条件を変動させて、ゲル形成を回避することができるか否かを観察した。重合反応に使用される温度を40℃から5℃と低い温度まで変更しても、典型的には、すべての場合で依然としてTMEDA促進剤の添加局面中にゲル形成がもたらされた。水(E)の量または開始剤(C)および促進剤(B)の化学量論比を調整することによる反応物の濃度の変更は、ゲル形成の回避に有用であるとは見出されなかった。驚くべきことには、ゲル形成は、下記に記載されているように、開始剤(C)および促進剤(D)の添加順序を変更することにより回避された。
【0148】
B.APSおよびTMEDAの逆添加による合成の最適化
MAHMPおよびアクリルアミドコポリマー組成物バッチ番号IS09732-047の最適化されたFRPプロセスが、下記で、
図8に示されているA~Eの化学成分を参照して記載されている。ここでは、重合促進作用剤TMEDA(D)は、化学開始剤APS(C)の前に添加された。
【0149】
磁気撹拌機が装備されている3口250mL丸底フラスコにて、(2.5g、0.025mol)N,N’-ジメチルアクリルアミド(DMA)(B)、(0.55g、0.0023mol)MAHMP(A)を、140mLの脱イオン水(Eの一部分)に溶解し、混合物を、N2下で20分間撹拌した。この混合物に、5mL脱イオン水(Eの一部分)中の(0.15g、0.00129mol)TMEDA促進剤(D)を添加し、全混合物をN2で20分間パージすることにより脱気した。脱気後、5mLの脱気DI水(Eの一部分)中の(0.105g、0.00046mol)過硫酸アンモニウム(開始剤)(C)を、フラスコ中の撹拌混合物に30分かけて徐々に添加した。その後、混合物を、30分間かけてゆっくりと40℃に加熱し、反応を、N2下で2時間にわたって同じ温度で継続した。2時間後、反応生成物をロータリーエバポレータに入れ、減圧下(35~50mmHg)で水を除去した。粗脱水生成物をメタノールに溶解し、濾過してあらゆる不溶性不純物を除去した。濾過液を、およそ50重量%に濃縮し、このポリマー溶液を、一定の撹拌下で、過剰メチルターシャリ-ブチルエーテル(MTBE)でゆっくりと沈殿させた。その後、沈殿物を濾過し、rotovaporのフラスコ内で50℃にて35~50mmHg下で4~6時間にわたって、重量が一定になるまで乾燥した。白色から淡黄色の産物コポリマーが得られた。また、この例には、このコポリマー組成物がMTBE沈殿により精製および回収されたため、コポリマー産物を回収するための透析および凍結乾燥に代わる重要な代替法が示されている。コポリマー金属キレート組成物の総合的収量は2.6gであり、重量収率は、重合反応に供給されたMAHMPおよびDMAを一緒にした合計質量に対して85%だった。このキレートコポリマー組成物の特徴は、下記の表に要約されている。このキレート組成物のMAHMP含有量を、実施例3に記載されている方法により決定し、その鉄結合特性を実施例5と同様に決定し、その生物学的活性を実施例6と同様に決定した。分子量MnおよびMwならびにPDIのGPC分析を、実施例7の方法により決定した。組成物は、鉄と結合し、S.アウレウスのその利用能を隔離することが見出された。この例は、開始剤および促進剤の逆添加が、重合のより良好な制御を提供し、ゲル形成を回避し、比較的高いMWを有する組成物を高収率で提供した。しかしながら、PDIは>2.5だった。したがって、この産物組成物鎖のMw分布はかなり幅広く、したがって、これは、FRP合成化学を使用する際の問題の1つであることを示す。金属キレートコポリマー組成物の生成には、狭いMW分布、つまり、より低いPDIが有利だろう。
【0150】
【0151】
実施例9:RAFT手順を使用してビニル-ピロリドンまたはメチル-アクリルアミドと共重合された活性ピリジノン金属結合基を含む可溶性コポリマーキレート組成物の合成に好適なRAFT剤の調製
好ましい水性RAFT重合手順に基づいて、候補RAFT剤の選択を絞り込み、
図9の反応スキームに従って、下記に記載のように、例を実験室で調製した。
【0152】
RAFT-3:2-エトキシチオカルボニルスルファニル-プロピオン酸エチルエステル(ETSPE)
2口50mL丸底フラスコに、(5g、0.0312mol)エチルキサントゲン酸カリウムおよびエチル-2-ブロモプロピオネート(6.2g、0.0343mol)を添加した。この混合物に、20mLエタノールを添加し、反応生成物を窒素雰囲気下で12時間RTにて撹拌した。反応混合中に形成された白色沈殿物(KBr)を濾過して取り除き、濾過液を150mLのエーテルで希釈した。エーテル溶液をDI水4×20mLで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ロータリーエバポレータに入れ、減圧下(0.075mmHg)で30℃にて残留水を除去し、黄色液体を得た。この液体を、シリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより、ヘキサン/酢酸エチル(95:5)溶出を使用して精製し、油状黄色液体産物、2-エトキシチオカルボニルスルファニル-プロピオン酸エチルエステル(ETSPE)得た。
【0153】
RAFT-4:2-エトキシチオカルボニルスルファニル-2-メチル-プロピオン酸(ETSPA)
2口50mL丸底フラスコに、(5.27g、0.0329mol)エチルキサントゲン酸カリウムおよび2-ブロモイソ酪酸(5.0g、0.0299mol)を取り入れた。この混合物に、14mLの脱イオン水を添加し、混濁黄色溶液を、窒素雰囲気下で48時間RTにて撹拌した。反応後、水層を、およそ6mLの濃HClで酸性化し、40mLのジエチルエーテルで2回抽出した。およそ80mLの一緒にしたエーテル画分を、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、その後、ロータリーエバポレータに入れ、減圧下(0.075mmHg)で30℃にて黄色液体を得た。黄色油状残渣を、0℃に冷却して再結晶させた。その後、結晶を石油エーテルで洗浄し、固形物をエタノールに再溶解し、その後、脱イオン水を添加して再結晶させた。こうした結晶を濾過し、高真空下で乾燥して、産物2-エトキシチオカルボニルスルファニル-2-メチル-プロピオン酸(ETSPA)とした。
【0154】
RAFT-5:ポリ-DMAマクロ-CTA(目標ポリアクリルアミド重合度は15)
磁気撹拌子およびセプタムアダプターを装備した50mL丸底フラスコに、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)(5g、0.05mol)、4-シアノ-4-[(ドデシルスルホニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸(CTA)(0.8134g、0.002mol)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(0.108g、0.00066mol)、およびジオキサン15mLを添加した。反応混合物の溶解を可能にし、その後、アルゴンでパージして重合混合物を脱気した。その後、フラスコをゴムセプタムで密封し、60℃で4時間加熱した。粗ポリマーを、過剰のMTBEに沈殿させ、メタノールに再溶解し、過剰のMTBEで再び沈殿させた。その後、沈殿物を濾過し、50℃の減圧下(35~50mmHg)で4から6時間にわたって、産物ポリ-DMAマクロ-CTAの重量が一定になるのが観察されるまでrotovaporで乾燥した。
【0155】
上記のRAFT剤を、それらが水に容易に可溶性であるかを試験するための例として選択した。水溶性は低いが有機系に可溶性であるRAFT剤を使用した非水性RAFT重合スキームも可能であり、非水性合成媒体から回収した後で、本明細書に開示されている使用目的のための水系に十分に可溶性であるキレート組成物を産出することが可能である。
【0156】
実施例10:重合および得られるコポリマーMWの制御に対する適合性に関するRAFT剤の試験
まず、RAFT剤3および4を、以下の手順により、アクリルアミドのホモ重合を使用した水性重合を誘導するための能力に関して試験した。試験した追加のRAFT剤には、市販の4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸(CTA、下記の試験ではRAFT-1と称されている)およびビス(カルボキシメチル)トリチオカルボネート(下記の試験ではRAFT-2と称されている)が含まれていた。各RAFT剤は、ジメチルアクリルアミド(DMA)の重合を、同じ化学量論比のDMA:RAFT:APS:TMEDAを使用して比較した。こうしたRAFT媒介性アクリルアミドホモ重合試験の結果は、下記の表に要約されている。
【0157】
【0158】
こうした結果により、水に可溶性ではないRAFT剤は、水性RAFT重合に有用ではないことが確認された。なお、ここでも、上記のRAFT剤は、それらが水に容易に可溶性であるかを試験するための例として選択した。水溶性は低いが有機系に可溶性であるRAFT剤を使用した非水性RAFT重合スキームも可能であり、非水性合成媒体から回収した後で、本明細書に開示されている使用目的のための水系に十分に可溶性であるキレート組成物を産出することが可能である。加えて、従来の作用剤RAFT-2、ビス(カルボキシメチル)トリチオカルボネートは、非常に幅広いMW分布のアクリルアミドポリマーをもたらし、意図されているコポリマー組成物合成に好適ではなかったことを示した。RAFT-3およびRAFT-4は両方とも、効率的な重合を提供し、水溶解度を保持するために十分に低いMW、つまりおよそ30kDa以下のポリマー産物を形成した。また、両RAFT剤は、かなり狭いMW分布(PDI≦1.45)を提供し、これらRAFT剤の両方がMAHMP-アクリルアミドまたはMAHMP-ピロリドンコポリマーとの共重合合成の潜在能力を有することを示した。
【0159】
実施例11:RAFT手順を使用してジメチルメチルアクリルアミドと共重合されたMAHMPの形態の活性ピリジノン金属結合基を含むコポリマーキレート組成物の合成
A.典型的なRAFT重合手順
合成(バッチ番号IS09758-031)は、
図10(A)に示されている反応物を参照する。磁気撹拌機が装備されている2口50mL丸底フラスコにて、(4.0g、0.4035mol)N,N’-ジメチルアクリルアミド(B)および(0.44g、0.0018mol)MAHMP(A)を、10mLの脱イオン水(Eの一部分)に溶解し、混合物を、N
2下で20分間撹拌した。この混合物に、RAFT-4(0.011g、5.27E-5mol)(F)および(0.010g、8.96E-5mol)テトラメチルエチレンジアミン(D)(促進剤)を添加し、混合物をN
2で20分間パージすることにより脱気した。脱気後、過硫酸アンモニウム開始剤(C)(0.034g、1.47E-4mol)を、反応混合物に添加した。その後、混合物を、40℃に加熱し、反応を、N
2下で18時間にわたって同じ温度で継続した。18時間後、反応生成物を、減圧下でロータリーエバポレータに入れ、水を除去した。粗生成物をメタノールに溶解し、濾過してあらゆる不溶性不純物を除去した。濾過液を濃縮して、およそ50重量%のポリマー溶液にし、この溶液を、一定の撹拌下で50容積過剰のMTBE(メチルtert-ブチルエーテル)でゆっくりと沈殿させた。その後、沈殿物を濾過し、35~50mmHg下で50℃にて4~6時間にわたって、一定の重量が観察されるまでロータリーエバポレータで乾燥して、白色から微かに黄色の産物MAHMP-アクリルアミドコポリマー試料ISO9758-031を得た。
【0160】
B.異なるRAFT剤の比較
上記の合成手順を繰り返したが、代替RAFT剤を用いて、どのRAFT剤が、モノマー(A)および(B)のコポリマー産物への変換の産物分子量に関して最も高いレベルの制御を提供することができるかを確立した。得られたコポリマー組成物の特徴を、上記の実施例11Aで調製したバッチISO9758-031aの特徴と比較した。こうした試験は、RAFT-3およびRAFT-4の性能は同様であったが、RAFT-5は、MAHMP使用の保証にそれほど有用ではなかったことを示した。RAFT-3およびRAFT-4により媒介されるMAHMPのコポリマーへの組込みは、重合に供給されたMAHMPの>70%であったが、RAFT-5媒介性コポリマー産物の場合、この組込みは<60%に低下した。こうした結果は、RAFT-3およびRAFT-4が、水溶性MAHMP-アクリルアミドコポリマーチーティング(cheating)組成物の調製に好ましいRAFT剤であることを示した。得られたコポリマー組成物は、水に可溶性であり、RAFT-3またはRAFT-4媒介性重合の場合、20kDa付近の平均分子量(Mw)を有していた。また、Mwは、RAFT-5媒介性重合の場合、実質的により低かった。
【0161】
【0162】
C.より高分子量のMAHMP-アクリルアミドコポリマーを達成するための最適化
一連の重合試験は、上記のAに詳述されている合成手順を使用したが、MAHMPの導入を改変した、MAHMPおよびアクリルアミドのRAFT-4媒介性重合で実施した。MAHMPは、恐らくは、重合進行に必要なラジカルを受け取り、したがって成長中のコポリマー鎖の早期終了により重合進行を妨害するその化学的能力に関連して、重合を妨害することが見出された。合成手順は、MAHMPを初期反応混合物に添加しなかったことを除いて、上記(A)と同様に実施した。より正確に言えば、MAHMPは、2つの方法で実際の重合中に導入した。一方の試験では、MAHMPの半分を、上記Aの手順と同様に初期添加し、他方の半分を、重合開始1分後に添加した。第2の試験では、MAHMPを、DMAと共に使用される水の一部分に別々に溶解し、それを脱気し、その後、このMAHMP/DMA混合物を、2つの等しい部分に分けて添加した。第1の部分は、反応開始0.5時間後に添加し、第2の部分は、1時間の時点で添加した。このようにMAHMPを溶液に連続導入する技法は、異なる比の反応物でも試験した。こうした試験の結果は、下記の表に示されている。固体MAHMPを添加すると、バッチIS09733-26で観察することができるように、MAHMPのコポリマーへの組込みが非常に低くなった。これは、系異質性により引き起こされた可能性が高い。DMAを共に含む溶液として、つまり2つの部分に分けて系に添加される可溶化混合物としてMAHMPを添加すると、得られたコポリマーへの60%MAHMP組込みが決定されたバッチIS09865-007およびIS09865-006)で観察されたように、2つの異なるDMA対MAHMP比においてMAHMP組込みの向上がもたらされた。こうした観察は、この系におけるMAHMPの阻害効果は、重合の模倣(imitation)時にすべてを添加するのではなく、重合プロセス中にMAHMPを部分に分けて添加して重合の経過中のその有効濃度を低下させることにより低減させることができることを示した。
【0163】
【0164】
実施例12:RAFT手順を使用してビニル-ピロリドンと共重合されたMAHMPの形態の活性ピリジノン金属結合基を含む可溶性コポリマーキレート組成物の合成
A.典型的な最適化されたRAFT重合手順
この例(バッチ番号IS09865-025)は、一般に、モノマーのコポリマー産物への高収率変換を得る点で最適化された合成条件を示し、
図10Bで参照されている。磁気撹拌機および環流冷却器が装備されている2口50mL丸底フラスコにて、(3.5g、0.0315mol)N-ビニル-2-ピロリドン(B)および(0.25g、0.00106mol)MAHMP(A)を、4mLの脱イオン水(E)に溶解し、混合物を、N
2下で20分間撹拌した。この混合物に、(0.136g、0.000652mol)RAFT剤、2-エトキシチオカルボニルスルファニル-2-メチル-プロピオン酸(ETSPA)(F)、および(0.227g、0.0.00195mol)TMEDA(促進剤(D))を添加し、全混合物をN
2で20分間パージすることにより脱気した。脱気後、ターシャリーブチルヒドロペルオキシド(0.35g、0.00388mol)(開始剤(C))を混合物に添加した。その後、混合物を、40℃に加熱し、反応を、N
2下で18時間にわたって同じ温度で継続した。18時間後、反応生成物をロータリーエバポレータに入れ、減圧下で水を除去した。粗生成物をメタノールに溶解し、濾過してあらゆる不溶性不純物を除去し、濾過液を、濃縮しておよそ50重量%のポリマー溶液にした。その後、この溶液を、50容積過剰のMTBEを用いて一定の撹拌下でゆっくりと沈殿させた。その後、沈殿物を濾過し、35~50mmHg下で50℃にて4~6時間にわたって、産物コポリマー(バッチISO9865-025)の重量が一定になるのが観察されるまで、ロータリーエバポレータで乾燥した。MAHMP-ピロリドンコポリマーの質量収率は、重合反応に初期供給されたモノマー(A+B)の質量に対して80%だった。コポリマーは、実施例3の方法を使用して
1H NMR分光法により決定したところ、5.7%のMAHMP含有量を含むことが見出された。金属キレートコポリマーは、実施例7のGPC分析法を使用したところ、7.3kDaの分子量(Mw)を有し、PDI(Mw/Mn)は1.7だったことが見出された。このコポリマーの生物学的活性は、実施例6の方法を使用して試験したところ、S.アウレウスおよびC.アルビカンスの両方で、2μg/mLのMICを示した。
【0165】
その代わりに、さらなる実施形態では、水の除去後に粗ポリマー生成物を過剰量の濃HClで処理することにより、ベンジルエーテルヒドロキシル保護基を、重合後に除去してもよい。その後、得られた溶液を、室温で撹拌したままにしておき、ポリマー溶液の連続アリコートの1H NMRスペクトルを経時的に収集することにより、保護基除去の度合いをモニターしてもよい。保護基を完全に除去したら、10%NaHCO3を使用することにより、溶液のpHを中性に調整し、過剰量のアセトンを添加することによりポリマー生成物を沈殿させてもよい。その後、粗生成物を収集し、メタノールに溶解してもよく、それからポリマーを精製するステップを、上記に記載されているように継続することになる。
【0166】
B.重合の代替的開始剤の試験
共重合のための2つの異なる開始剤系の相対的効率を比較した。これは、上記の例Aと同様に使用された開始剤ターシャリーブチルヒドロペルオキシド(TBHP)と比較して、実施例4に記載されているMAHMP-ピロリドンコポリマー組成物のFRP合成に有用であることが見出されたAPSを含んでいた。こうした試験の結果は、下記の表に示されている。両試験には、上記のAと同じ反応手順を使用した(つまり、MAHMP(A):NVP(B)比は、1:30)。バッチISO9758-062の場合、開始剤(C)TBHPの代わりに、過硫酸アンモニウム(APS)を使用した。
【0167】
【0168】
APS開始剤を使用した場合、全収率低下が観察され、コポリマーのMwはより大きく、MAHMP含有量は増加した。
【0169】
C.MAHMP:NVPモノマー比の最適化
図10Bを参照すると、全体の合計モノマー(A+B)含有量を重合反応に対して50当量に保持し、他の化学成分(C)、(D)、(E)、および(F)を、各試行で同じに維持しつつ、金属チーティングモノマーMAHMP(A)のコモノマーNVP(B)に対する比を変化させたこと以外は、実施例A(上記)の手順を使用して、一連の試験重合を実施した。下記の表の結果は、重合に供給されたMAHMP(A)の量が、NVP(B)に対して増加すると共に、全コポリマー収率は減少したが、産物コポリマー中のMAHMP含有量の割合は増加したことを示した。理想的には、キレートコポリマー組成物の場合、高い金属結合能力を有する点で、10~20%のコポリマーMAHMP含有量が好ましい。しかしながら、効率的なモノマー使用には、高いコポリマー収率を保持することも、非常に重要である。RAFT剤4、2-エトキシチオカルボニルスルファニル-2-メチル-プロピオン酸(ETSPA)を使用したRAFT媒介性重合は、かなり狭い分子量分布のコポリマー産物を提供し、組成物の平均Mwは、異なるMAHMP:NVP条件でも、ある程度類似していたことが見出された。こうした結果に基づくと、1:10~1:15のMAHMP:NVP比が、最も良好な全MAHMP含有量(10~15%)を提供しつつ、1.4~2.0付近のPDIでおよそ80%の産物収率を保持すると考えられる。
【0170】
【0171】
D.最適化条件下での反復精度
MAHMP-NVPを共重合して金属キレート組成物を形成する反復精度を試験するための一連の重合試験を、上記の例Cで実施したように、1:15および1:10の2つのMAHMP:NVP比にて二重重複で実施した。結果は、下記の表に示されている。
【0172】
【0173】
こうした結果は、上記の例Cの反復精度を確認し、1:10~1:15のMAHMP:NVP比が、>80%の高いコポリマー産物収率、PDIが低く(1.5~1.8)3kDaよりも大きな産物コポリマーMw、および9.6~15.3%(w/w)のコポリマー産物のMAHMP含有量をもたらしたことを示した。
【0174】
実施例13:FRPおよびRAFTで調製したコポリマーの真の分子量および分子量分布の比較
既知分子量の標準物質を基準にして推定される分子量(Mn(分子量数平均およびMw、平均分子の両方)および分子分布(Mw/MnとしてのPDI)について、実施例7と同様のコポリマーの調査を、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により実施した。そのため、そのようなMwは、相対的な評価に過ぎず、したがって、真のMw値ではないだろう。GPC分析は、分離および溶出された材料の粘度、屈折率、紫外光吸収、および小角レーザ光散乱を同時に測定するために4つの個別の検出器が取り付けられたMalvern社製GPC装置を使用して、実施例3、8、11、および12で得られた種々のコポリマー産物試料について実施した。屈折率および粘度は両方とも、GPCにより分離された材料の相対的質量の検出器であり、紫外線吸収は、分離された材料の相対的MAHMP含有量を検出するだろう。レーザ光散乱(LS)は、コポリマーの絶対的分子量の測定を可能にする。コポリマー試料の絶対的MWは、角度θで散乱した光の強度(Rθ)がMWに比例するという、静的光散乱に関するレイリー理論に従って測定した。LSとMWとの関係性は、Zimm式により記述され、式中、光学定数Kは、(dn/dc)2に依存し、散乱光の強度(Rθ)と関連付けられる。
【0175】
【数1】
式中、K=光学定数、c=濃度、R
θ=レイリー散乱係数(光散乱強度)、M
w=分子量、P(θ)=粒子散乱係数、A
i=ビリアル係数、n=屈折率、λ=入射レーザビームの真空波長、N
A=アボガドロ数(mol
-1)、およびdn/dc=屈折率増分
【0176】
コポリマーの絶対的MWを決定する場合、GPCシステムOmniSECソフトウェアで、対応するモノマーのdn/dc値に基づき実際のdn/dc値を生成した。RI検出器は、ホモ-ポリマーPVPおよびMAHMPモノマーを含む較正材料のdn/dc値の測定を可能にし、PVPの場合は0.1218±0.0005mL/gの、MAHMPの場合は0.1958±0.0016mL/gのdn/dc値を提供した。0.2M NaNO3溶液中のホモ-ポリアクリルアミドの0.1420mL/gのdn/dc値は、American Polymer Standards Corporationから得た。コポリマーのMAHMP含有量の組成分析は、280nmでの紫外線(UV)吸光度を測定することにより実施した。ポリアクリルアミドホモポリマーは、280nmで検出可能なUV吸光度を示さず、PVPホモ-ポリマーは、UV吸光度が無視できる程度であり、ウシ血清アルブミンタンパク質校正標準物質と比較した相対的dA/dc値が4.76%だった。MAHMPは、非常に強いUV吸光度を示し、BSA標準物質で得られたものと比較して非常に高い相対的dA/dc値を示した。
【0177】
GPCで分離したコポリマー組成物をこうした検出器で分析することにより、こうしたコポリマー組成物のサイズ分布および化学組成に関する有用な情報が提供された。
図11(A)は、実施例4Bから得られたFRP調製MAHMP-NVPコポリマーおよび実施例12Aから得られたRAFT調製MAHMP-NVPコポリマー(11B)の検出器応答を併記した溶出プロファイルを示す。実施例4B(
図11A)で調製したFRP処理MAHMP-ピロリドンコポリマー試料の分子量分布がより幅広く、平均Mwがより高いことは、実施例12A(
図11B)で調製したFRP処理組成物と比較することにより理解することができる。FRP処理コポリマーは、実施例4Bで調製したFRP処理MAHMP-ピロリドンコポリマー試料について
図12Aに示されているように、Mwが異なるコポリマー材料の2つの幅広いピークを有するように見えた。これは、実施例12Aから得られたRAFT調製MAHMP-NVPコポリマーについて
図12Bに示されている分布と対照的だった。分子量に対する固有粘度の調査は、分子量が増加すると共に粘度が増加することを明らかにした。紫外光吸収により測定したMAHMP含有量は、FRP調製コポリマーおよびRAFT調製コポリマーの両方で、分子量分布にわたって比較的均一なMAHMP含有量を示した。こうした結果は、MAHMPピロリドンコポリマーが、こうした2つのモノマー単位のランダムコポリマーであり、MAHMP含有量が、FRP調製コポリマーおよびRAFT調製コポリマーの両方で、コポリマー分子量分布にわたって均一に分布していたことを示唆した。同様の知見が、
図13の2つの追加の試料について示されているように、ピロリドンまたはアクリルアミドのいずれかを有するMAHMPで構成された他のコポリマーで得られた。MAHMP/DMA溶液を2つの部分に分けてMAHMP添加した実施例11Cで得られたMAHMP-アクリルアミドコポリマーの試料(試料FS9758-037)は、
図13Aに示されているように、平均Mwが76.4kDaであり、コポリマー鎖の分子量分布は比較的狭いことが見出された。また、この試料のMAHMP含有量は、
図13Cに示されているように、コポリマー分子のサイズ範囲にわたって均一に、つまりランダムに分布していた。
図13Cにも示されているように、比較的高分子量であり、それに応じてより高い粘度を有するそのような金属キレートコポリマーは、より低い分子量組成物よりも、粘膜または身体の他の表面への塗布により好適であり得る。その場合、かさ高さおよびより高い粘度などの金属キレートコポリマーの物理的特性は、塗布部位におけるその物理的滞留時間を増加させるように作用するだろう。
【0178】
実施例12Aと同じ方法で調製したRAFT調製MAHMP-ピロリドンコポリマー組成物(FS10912-058)の追加の試料を、
図13Bおよび
図13Dに示されているように分析した。それによると、MAHMPコポリマーの合成に再現性があることも明らかである。この試料のコポリマー分子のサイズ範囲にわたる分子量分布、粘度プロファイル、およびMAHMP含有量の均一性は、
図11Bおよび
図12Bに示されているように、同様に調製した試料の特徴と類似していた。
【0179】
レーザ光散乱により決定した金属キレートコポリマー組成物の真の分子量は、下記の表に要約されているように、実施例7の方法により決定した相対分子量決定により示されたものよりも、実質的により大きいことが見出された。PDI値は、両GPC法で類似しており、2つのGPCカラムシステムによる試料のサイズ分離が同様であることを示した。しかしながら、真のMwは、RAFT調製コポリマーの場合、(較正標準物質に対する)相対的Mw決定を使用して推定されたものよりも、平均で4.5倍大きかった。実施例3と同様に1H NMR分光法により、および紫外線吸収測定により決定したMAHMP含有量は、適度なレベルの一致を示したが、下記の表からわかるようにすべての場合でそうである訳ではなかった。
【0180】
【0181】
実施例14:金属結合組成物からのRAFT剤の除去
RAFTプロセスにより調製された金属キレートポリマー鎖の一方の末端に存在するRAFT剤の一部分または全体の除去は、ポリマーの硫黄含有量を低減するために望ましい場合がある。実施例12で調製したキレートポリマー組成物からのRAFT剤の部分的除去を、
図14に示されているように、3つの異なる方法を使用して、つまりアミノリシスにより、熱処理により、および穏やかな還元剤である水素化ホウ素ナトリウムにより試験した。
【0182】
キレートポリマー組成物(9732-075)の試料の熱分解は、まず150℃での熱処理で行ったが、熱重量分析により測定したところ、硫黄含有量の喪失はなく、元素分析は硫黄含有量の喪失を示さなかった。その後、180℃で熱分解を実施した。5時間の加熱後、硫黄含有量は、0.53%(w/w)から0.16%(w/w)へと低減された。この熱処理は、硫黄含有量を約50%低減させた。これは、
図16(2)に示されている反応スキームおよび産物で一貫していた。また、熱処理の代替としてアミノリシスを試験した。キレート組成物(9865-040または9865-044)を、室温にて24時間にわたってジクロロメタン中のキシル-アミンで処理し、その後、処理した組成物を回収し、下記の表に示されているように、実施例3の方法を使用して、そのMAHMP含有量ならびに元素C、H、N、およびSの含有量を未処理組成物の試料と比較して分析した。また、実施例6の方法を使用してS.アウレウスに対するMIC値を決定することにより、試料の生物学的活性を試験した。下記の表の結果は、アミノリシス処理後にキレート組成物から硫黄が除去され、硫黄含有量が0.5%から0.4%へと低下したこと示す。組成物のアミノリシス処理によるMAHMP含有量または生物学的活性の喪失はなかった。アミノリシス処理により、組成物の硫黄含有量のおよそ20%が除去されたが、
図14に示されている処理後の構造が完全に形成されれば、50%の初期硫黄含有量の喪失が示されると予想することができる。
【0183】
【0184】
RAFT剤を除去するための代替方法を、Zelikinら(Zelikin,A.N.;Such,G.K.;Postma,A.;Caruso,F.;「Poly(vinylpyrrolidone) for Bioconjugation and Surface Ligand Immobilization」、Biomacromolecules、2007年、8巻、2950~2953頁)の手順の変法を使用して試験した。コポリマー試料(0.2mg)を脱イオン水(16mL)に溶解した。その後、溶液を、針を通したN2ガスで10分間飽和した。この溶液に、水素化ホウ素ナトリウム(2N、4mL)を室温で滴加した。それにより激しい気泡が生じた。得られた混合物を室温で一晩撹拌したままにしておいた。過剰量の水素化ホウ素ナトリウムを濃塩酸と反応させ、2Nの水酸化ナトリウムを使用して、溶液のpHを8に調整した。その後、水を真空中で除去し、ベージュ色の薄膜を得た。その後、薄膜を、脱イオン水(16mL)に再溶解し、3.5kDaの孔径を有する膜で2日間水に対して透析した。
【0185】
実施例15:微生物細胞に対する金属キレートコポリマーの活性は、構造に組み込まれた金属結合モノマーの量と関連する
実施例12Cと同様に調製した、ポリマー構造に組み込まれたMAHMPの量が異なるキレート組成物を、スタフィロコッカス・アウレウス増殖の阻害活性について、実施例6に記載されている方法を使用して試験した。下記の表に示されている結果は、ポリマーキレート組成物に組み込まれたMAHMPの量と、細菌に対するキレート組成物の活性との間に直接的な関係性があることを示す。示されている3つの組成物は、実施例7に記載されているように相対的な従来のGPCにより測定したところ、2~4kDa付近のいくらか類似した相対分子量および比較的低いPDIを有していた。また、細菌細胞の増殖を阻害する組成物の活性を、MAHMP単独、つまり遊離しており、キレート組成物に組み込まれていないMAHMPと比較した。また、この例は、キレート組成物の活性が比較的高いこと(細菌に対するMICが低いこと)およびキレート組成物の構造の一部として組み込まれていない場合の遊離MAHMP鉄結合分子に対する活性が比較的低いこと(それに応じてMICが高いこと)を示す。キレート組成物はすべて、1500Da分子量よりも大きく、増殖阻害を引き起こす細菌細胞に対する活性を示した。
【0186】
【0187】
実施例16:>2および≦12個の炭素単位の炭素鎖を含むRを有する3-ヒドロキシ-1-(β-メタクリルアミド-R)-2-メチル-4(1H)-ピリジノン化合物の調製
A.N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミドの合成(
図15A)。
N-ヒドロキシサクシニミドメタクリレート(100mg、0.5mmol)を、窒素雰囲気下で25mLのシュレンクチューブに添加した。これに、10mLの無水THFを撹拌しながら添加した。得られた混合物を0℃に冷却した。冷却した混合物に、1,3-プロパンジアミン(0.28mL、2.7mmol)を注射器で添加し、その際に白色沈殿物が直ちに生じた。反応混合物が室温に加温されることを可能にし、一晩撹拌した。翌日、白色沈殿物を重力濾過により濾過して取り除き、THF(3×10mL)で洗浄した。濾過液およびTHF洗液を収集し、溶媒を減圧下で除去して、透明な油状物を得た。d
6-DMSO中での
1H NMRスペクトルにより、粗油状物は、1,3-プロパンジアミン、N、N’-1,3-プロパンジイルビス(2-メチル-2-プロペンアミド)、およびN-(3-アミノプロピル)メタクリルアミドの混合物であることが特定された。
1H NMRスペクトルによると、N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミドは、N,N’-1,3-プロパンジイルビス(2-メチル-2-プロペンアミド)に対して90%だった。
1H NMR(400MHz、d
6-DMSO):δ8.00(bs、1H)5.62(s、1H)、5.30(s、1H)、3.15(q、2H)、1.85(s、3H)、1.49(pent、2H)、1.43~1.16
*(m、2H)。
*シグナルは、1,3-プロパンジアミンのシグナルとオーバーラップしていた。
【0188】
tert-ブチルオキシカルボニル保護基(Boc)を、
図15Bに示されている基本手順による合成3-ヒドロキシ-1-(β-メタクリルアミド-R)-2-メチル-4(1H)-ピリジノンに向けて、アルカンジイルジアミンのアミン基を保護するために使用した。1,8-ジアミノオクタンのBoc-保護から開始した代表的な例が、下記に記載されている(Maris Cinelliら、Bioorg.Med.Chem.、2009年、17巻(20号)、7145~7155の手順を採用)。
【0189】
B.3-ヒドロキシ-1-(β-メタクリルアミドオクチル)-2-メチル-4(1H)-ピリジノンの合成(
図15Bに示されている基本手順)。
ジ-tert-ブチルジカルボネート(40mLのCHCl
3中、1.9g、8.7mmol)を、CHCl
3(200mL)中の1,8-ジアミノオクタン(6.3g mL、44mmol)溶液に、室温で1時間かけて滴加し、一晩撹拌した。その後、溶液をCHCl
3(100mL)で希釈し、飽和K
2CO
3(2×50mL)で、その後H
2O(2×50mL)で洗浄した。有機層を分離し、MgSO
4で乾燥し、真空中で濃縮した。その後、粗粘性溶液を、SiO
2に吸着させ、カラムクロマトグラフィーで精製し、CHCl
3中10%MeOH/1%NEt
3で溶出して、Boc保護1,8-ジアミノオクタンを、無色透明の油状物(1.9g)として90%の収率で得た(
図15Bのステップ1)。
1H NMR(400MHz、d
6-DMSO):δ3.35(bs、1H)、2.88(q、2H)、2.49(t、2H)、1.37(s、9H)、1.35~1.28(m、4H)、1.27~1.13(m、8H)。Boc保護1,8-ジアミノオクタン(1.9g)を、MeOH:H
2O(1.5:1 50mL)に溶解した。得られた溶液を、MeOH:H
2O(1.5:1、50mL)中の3-ベンジルオキシ-2-メチル-4-ピロン(1.68g、7.8mmol)撹拌溶液に添加した。5分間撹拌した後、反応混合物に、2N NaOH溶液(10mL)を投入した。最終溶液を90℃で2時間加熱した。反応混合物を室温に冷却し、溶媒を減圧下で除去した。その後、得られた油状残渣を、水(50mL)で希釈し、2N HClでpHを7.0に維持した。その後、水層を塩化メチレン(3×25mL)で抽出した。その後、有機層を収集し、Na
2SO
4で乾燥し、その後、減圧下で濃縮して、茶色油状物(2.9g)を85%収率で得た。
1H NMR分光法により、N-Boc-(2-(3-(ベンジルオキシ)-2-メチル-4-オキソピリジン-1(4H)-イル)オクチル)-カルバメートの構造が確認された(
図15Bのステップ2)。
1H NMR(400MHz、d
6-DMSO):δ7.40(d、1H)、7.38~7.29(m、5H)、6.77(bs、1H)、6.13(d、1H)、5.02(s、2H)、3.84(t、2H)、2.88(q、2H)、2.14(s、3H)、1.57~1.52(m、2H)、1.36(s、9H)、1.23~1.21(m、10H)。
13C NMR(100MHz、DMSO-d
6):δ172.2、156.0、145.6、141.0、139.9、138.2、128.9、128.8、128.6、128.3、128.1、116.4、77.7、72.1、53.1、39.3、30.5、29.9、29.0、28.7、26.7、26.1、12.3。Boc基の除去は、油状物を、過剰量のTFA(4mL)と共に30mLのジクロロメタンに溶解し、溶液を室温で一晩撹拌することにより達成した。翌日、4mLの2N NaOHを添加して、任意の残留量のTFAと反応させた。20mLのジクロロメタンを粗溶液に添加し、3×20mLの水で抽出した。水層を収集し、容積を半分に低減した。炭酸カリウムの飽和溶液(40mL)を、TFA塩の溶液に添加し、室温で一晩撹拌した。その後、水相をジクロロメタン(3×25mL)で抽出した。その後、有機層を収集し、Na
2SO
4で乾燥し、その後、減圧下で濃縮して、1-アミノオクチル-3-ヒドロキシ-2-メチル-4(1H)-ピリジノンを茶色油状物(1.1g)として、49%の収率で得た(
図15Bのステップ3)。
1H NMR(400MHz、d
6-DMSO):δ7.60(d、1H)、7.46~7.25(m、5H)、6.14(d、1H)、5.02(s、2H)、3.84(t、2H)、2.6~2.48(m、2H)、2.14(s、3H)、1.63~1.44(m、2H)、1.41~1.01(m、10H)(
図15Bのステップ3)。その後、油状物を、窒素雰囲気下で30mLのジクロロメタンに溶解し、溶液にNa
2CO
3(1.6g)を添加し、得られた混合物を室温で30分間撹拌した。溶液を0℃に冷却し、10分後、塩化メタクリロイル(0.3mL)を10分間かけて滴加した。得られた溶液をそのままにして室温に加温し、1時間撹拌した。その後、反応混合物を、ジクロロメタンおよび水の1.5:1溶液に注いた。溶液を、1N HCl(2×10mL)および水(2×10mL)で抽出した。有機層を収集し、Na
2SO
4で乾燥し、溶媒を減圧下で除去した。粗産物(0.9g)を、さらなる精製を行わずに使用し、37重量%のHCl(8mL)を残渣に添加し、得られた溶液を室温で一晩撹拌した。翌日、酸性水層を減圧下で除去し、単離された茶色油状物を、10mLの水に溶解し、10%NaHCO
3溶液を添加して、pH7を達成した。その後、水層をジクロロメタン(3×10mL)で抽出し、有機層を収集し、Na
2SO
4で乾燥した。溶媒の除去は、3-ヒドロキシ-1-(β-メタクリルアミドオクチル)-2-メチル-4(1H)-ピリジノンが(
図15Bのステップ4)を、82%収率の茶色油状物(0.56g)として明らかにした。
1H NMR(400MHz、d
6-DMSO):δ7.89(bs、1H)、7.59(d、1H)、7.13(d、1H)、5.63~5.59(m、1H)、5.32~5.27(m、1H)、3.92(t、2H)、3.08(q、2H)、2.28(s、3H)、1.84(s、3H)、1.69~1.52(m、2H)、1.49~1.34(m、2H)、1.32~1.16(m、10H)。
13CNMR(100MHz、DMSO-d
6):δ168.7、167.8、145.8、140.6、138.1、129.6、119.1、110.9、53.4、30.7、29.5、29.1、28.9、26.8、26.2、19.2、11.8。ESI-MS[M+H]
+ C
18H
29N
2O
3の理論値:321.22、測定値321.23。
【0190】
構造b・HCl(
図2B、経路B)を、メタクリル酸無水物およびエチレンジアミンを使用して生成した。同じ方法を採用し、より長鎖のアルカンジイルジアミンを使用して、対応する3-ヒドロキシ-1-(β-メタクリルアミド-R)-2-メチル-4(1H)-ピリジノンに向けて、対応するN-(2-アミノ-R-)メタクリルアミドを生成した(
図15Cの基本手順)。3-ヒドロキシ-1-(β-メタクリルアミドブチル)-2-メチル-4(1H)-ピリジノンを合成するための代表的な例が、下記に示されている。
【0191】
C.3-ヒドロキシ-1-(β-メタクリルアミドブチル)-2-メチル-4(1H)-ピリジノンの合成(
図15Cの基本手順)。
1,4-ジアミノブタン(5.0g、57mmol、2.0当量)を、50mL水中の1,4-ジアミノブタン二塩酸塩(4.6g、28mmol、1.0当量)溶液に添加した。室温で1.5時間撹拌した後、メタノール(55mL)を添加し、混合物を0℃に冷却し、15分間の温度平衡化を可能にした。メタノール(15mL)に溶解したメタクリル酸無水物(12.6mL、85mmol、3.0当量)を、冷却した溶液に15分間かけて滴加した。メタクリル酸無水物の添加が完了した後、溶液温度を1時間0℃で維持した。37重量%の塩酸(10mL)を、冷却した溶液に添加し、1時間継続し、溶液が室温に加温されることを可能にした。溶媒を減圧下で除去して粗粘性生成物を得、その後粗粘性生成物をゆっくりとアセトン(400mL)に送達した。沈殿物を、真空濾過により単離および収集し、その後、高温2-プロパノール(150mL)で抽出した。2-プロパノール抽出物を減圧下で濃縮し、最小限の量のアセトンを使用して、産物を沈殿させた。その後、それを真空濾過により単離および乾燥して、6g(48%収率)の産物を白色に近い粉末として得た。
1H NMR(400MHz、DMSO-d
6):δ8.26~7.79(m、4H)、5.66(bs、1H)、5.31(bs、1H)3.11(q、2H)、2.84~2.68(m、2H)、1.85(s、3H)、1.66~1.37(m、4H)。
13CNMR(100MHz、DMSO-d
6):δ167.9、140.5、119.4、38.9、38.5、26.5、24.9、19.2。N-(2-アミノブチル)メタクリルアミド二塩酸塩(5.5g、29mmol)を、MeOH:H
2O(1.5:1、75mL)の溶液に溶解し、MeOH:H
2O(1.5:1、75mL)中の3-(ベンジルオキシ)-2-メチル-4H-ピラン-4-オン撹拌溶液に添加した。28mLの2N NaOHでpHを10に調整し、得られた溶液を85℃で3時間加熱した。反応を冷却し、容積の半分を減圧下で除去した。50mLの水を溶液に添加し、その後、20mLの1N HClで溶液pHを7に調整した。その後、水相をジクロロメタン(3×30mL)で抽出した。有機層を収集し、Na
2SO
4で乾燥し、溶媒を減圧下で除去した。その後、粗粘性油状物を、カラムクロマトグラフィーで精製し、CHCl
3中の10%MeOH/1%NEt
3で溶出して、N-[2-(3-(ベンジルオキシ)-2-メチル-4-オキソピリジン-1(4H)-イル)ブチル]メタクリルアミドを、60%収率の茶色油状物(5.1g)として単離した。
1H NMR(400MHz、DMSO-d
6):δ7.95(t、1H)、7.60(d、2H)、7.46~7.27(m、5H)、6.14(d、2H)、5.63(bs、1H)、5.31(bs、1H)、3.87(t、2H)、3.12(q、2H)、2.15(s、3H)、1.85(s、3H)、1.62~1.50(m、2H)、1.47~1.35(m、2H).
13C NMR(100MHz、DMSO-d
6):δ172.2、167.9、145.7、141.0、140.5、141.0、140.5、139.9、138.2、128.9、128.6、128.3、119.3、116.4、72.2、52.9、38.6、28.0、26.4、19.2、12.3。N-[2-(3-(ベンジルオキシ)-2-メチル-4-オキソピリジン-1(4H)-イル)ブチル]メタクリルアミド(2.9g)を、21mLの37重量%HClで処理し、得られた混合物を、室温で一晩撹拌した。水層を減圧下で除去し、茶色油状残渣を生成した。これに、30mLの水を添加し、20mLの10%NaHCO
3を使用して、溶液pHを7に調整した。不溶性沈殿物を重力濾過により水層から除去した。その後、水層を減圧下で最小限の容積に低減し、産物3-ヒドロキシ-1-(β-メタクリルアミドブチル)-2-メチル-4(1H)-ピリジノンを溶液から沈殿させた。産物を収集し、5mLの水で洗浄し、真空濾過で乾燥した。薄茶色固形物(1.1g)を52%収率で単離した。
1H NMR(400MHz、DMSO-d
6):δ8.03~7.89(m、1H)、7.57(d、1H)、6.11(d、1H)、5.62(bs、1H)、5.31(bs、1H)、3.93(t、2H)、3.13(q、2H)、2.28(s、3H)、1.84(s、3H)、1.68~1.54(m、2H)、1.50~1.37(m、2H)。
13C NMR(100MHz、DMSO-d
6):δ169.3、167.9、146.0、138.0、128.9、119.3、110.9、52.9、38.6、28.2、26.4、19.1、11.8。ESI-MS[M+H]
+ C
14H
21N
2O
3の理論値:265.16、測定値265.1570。
【0192】
E.N-(2-アミノ-R-)メタクリルアミド、N-[2-(3-(ベンジルオキシ)-2-メチル-4-オキソピリジン-1(4H)-イル)-R]メタクリルアミド 3-ヒドロキシ-1-(β-メタクリルアミド-R)-2-メチル-4(1H)-ピリジノン(R=プロピルまたはヘキシル)のNMR化学シフト。
R=プロピル:
N-(2-アミノプロピル)メタクリルアミド。1H NMR(400MHz、DMSO-d6):δ8.37~8.20(m、1H)、8.20~7.98(m、3H)、5.68(bs、1H)、5.31(bs、1H)、3.16(q、2H)、2.81~2.67(m、2H)、1.83(s、3H)、1.79~1.69(m、2H)。13C{1H}NMR(100MHz、DMSO-d6):δ168.3、140.0、119.9、37.1、36.2、27.5、19.1。
N-[2-(3-(ベンジルオキシ)-2-メチル-4-オキソピリジン-1(4H)-イル)プロピル]メタクリルアミド。1H NMR(400MHz、DMSO-d6):δ7.99(t、1H)、7.63(d、1H)、7.45~7.28(m、5H)、6.15(d、1H)、5.65(bs、1H)、5.33(bs、1H)、5.02(s、2H)、3.88(t、2H)、3.13(q、2H)、2.15(s、3H)、1.86(s、3H)、1.83~1.72(m、2H)。13C{1H}NMR(100MHz、DMSO-d6):δ172.3、168.2、145.9、140.9、140.4、139.9、138.2、128.9、128.7、128.3、119.5、116.5、72.2、51.1、36.4、30.5、19.1、12.2。ESI-MS[M+H]+ C20H25N2O3の理論値:341.19、測定値341.1868。
3-ヒドロキシ-1-(β-メタクリルアミドプロピル)-2-メチル-4(1H)-ピリジノン。1H NMR(400MHz、DMSO-d6):δ8.19~8.10(m、1H)、7.64(d、1H)、6.11(d、1H)、5.68(bs、1H)、5.33(bs、1H)、3.95(t、2H)、3.15(q、2H)、2.27(s、3H)、1.86(s、3H)、1.85~1.75(m、2H)。13C{1H}(100MHz、DMSO-d6)169.3、168.2、146.0、140.3、138.1、128.8、119.6、110.9、51.2、36.4、30.6、19.1、11.7。ESI-MS[M+H]+ C13H19N2O3の理論値:251.14、測定値251.1400。
R=ヘキシル:
N-(2-アミノヘキシル)メタクリルアミド。1H NMR(400MHz、DMSO-d6):δ8.28~8.03(m、3H)、8.02~7.90(m、1H)、5.64(bs、1H)、5.29(bs、1H)、3.09(q、2H)、2.79~2.67(m、2H)、1.84(s、3H)、1.62~1.49(m、2H)、1.49~1.37(m、2H)、1.36~1.18(m、4H)。13C{1H}NMR(100MHz、DMSO-d6):δ167.8、140.5、119.2、39.1、39.0、29.3、27.3、26.4、26.0。
N-[2-(3-(ベンジルオキシ)-2-メチル-4-オキソピリジン-1(4H)-イル)ヘキシル]メタクリルアミド。1H NMR(400MHz、DMSO-d6):δ7.91(t、1H)、7.59(d、1H)、7.44~7.27(m、5H)、6.15(d、1H)、5.63(bs、1H)、5.29(bs、1H)、5.03(s、2H)、3.84(t、2H)、3.09(q、2H)、2.14(s、3H)、1.84(s、3H)、1.61~1.49(m、2H)、1.47~1.37(m、2H)、1.31~1.15(m、4H)。13C{1H}NMR(100MHz、DMSO-d6):δ172.29、167.85、145.76、141.1、140.6、139.9、138.2、128.9、128.6、128.3、119.2、116.4、72.2、53.2、30.5、29.4、26.5、19.2、12.3。
3-ヒドロキシ-1-(β-メタクリルアミドヘキシル)-2-メチル-4(1H)-ピリジノン。1H NMR(400MHz、DMSO-d6):δ7.88(m、1H)、7.56(d、1H)、6.10(d、1H)、5.62(bs、1H)、5.30(bs、1H)、3.91(t、2H)、3.08(q、2H)、2.28(s、3H)、1.84(s、3H)、1.68~1.56(m、2H)、1.49~1.36(m、2H)、1.34~1.19(m、4H)。13C{1H}NMR(100MHz、DMSO-d6):δ169.3、167.8、149.9、140.6、138.0、128.8、119.1、110.9、53.2、30.7、29.4、26.5、25.9、19.2、11.8.ESI-MS[M+H]+ C16H25N2O3の理論値:293.19、測定値293.1869。
【0193】
実施例17:3-ヒドロキシ-1-(β-メタクリルアミドブチル)-2-メチル-4(1H)-ピリジノンおよび3-ヒドロキシ-1-(β-メタクリルアミドヘキシル)-2-メチル-4(1H)-ピリジノンから形成されたコポリマーの微生物活性。
各同族体では、鉄の存在下で赤色が検出された。これは、各同族体が金属結合親和性を保持することを示した。ブチルおよびヘキシルアルカンジイルジアミンに由来する化合物I関連同族体を、40~50℃の反応温度範囲を使用して、実施例12Aに記載されている最適化条件でNVPと共重合させた。化合物(I)関連コポリマーを、最適化条件(実施例12A)に従って合成した化合物(II)(MAHMP)を含むコポリマーと共に、スタフィロコッカス・アウレウスおよびカンジダ・アルビカンス増殖の阻害活性について、微量希釈ブロスアッセイにより試験した。ブチルおよびヘキシル化合物(I)関連同族体のコポリマー(エントリー3および4)は、ジメチルスルホキシド(DMSO)中の化合物(II)コポリマー(エントリー2)と同等の活性を示した。これにより、モノマー鎖長を変化させても、微生物活性を阻害しないことが示された。
【0194】
【0195】
キレート組成物、調製方法、および使用の種々の実施形態を記載した。上述の実施形態は、例であることが意図されており、当業者であれば、本教示の趣旨および範囲から逸脱することなく、それらに変更および改変をなすことができる。