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特許7387440MT1-MMPに結合するためのペプチドリガンド
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】MT1-MMPに結合するためのペプチドリガンド
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/08 20060101AFI20231120BHJP
   C07K 1/02 20060101ALI20231120BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20231120BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20231120BHJP
   A61K 38/10 20060101ALI20231120BHJP
   A61K 31/537 20060101ALI20231120BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
C07K7/08 ZNA
C07K1/02
A61K47/65
A61K47/64
A61K38/10
A61K31/537
A61P35/00
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019555716
(86)(22)【出願日】2017-12-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 EP2017083954
(87)【国際公開番号】W WO2018115204
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-11-10
(31)【優先権主張番号】1622142.6
(32)【優先日】2016-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1713560.9
(32)【優先日】2017-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519226757
【氏名又は名称】バイスクルテクス・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】トイフェル,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】マッド,ジェンマ
(72)【発明者】
【氏名】パヴァン,シルヴィア
【審査官】上村 直子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/067035(WO,A1)
【文献】特表2011-514803(JP,A)
【文献】特表2014-528245(JP,A)
【文献】特表2011-522794(JP,A)
【文献】特表2011-513298(JP,A)
【文献】特表2006-514104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システイン、L-2,3-ジアミノプロピオン酸(Dap)、N-ベータ-アルキル-L-2,3-ジアミノプロピオン酸(N-AlkDap)およびN-ベータ-ハロアルキル-L-2,3-ジアミノプロピオン酸(N-HAlkDap)から選択される3つの残基であって、少なくとも2つのループ配列によって分離されている3つの残基を含むポリペプチドと、分子足場とを含むMT1-MMPに特異的な二環ペプチドリガンドであって、前記二環ペプチドが、前記ポリペプチドの前記DapまたはN-AlkDapまたはN-HAlkDap残基との、共有結合によるアルキルアミノ連結によって、かつ前記3つの残基がシステインを含む場合、前記ポリペプチドの前記システイン残基とのチオエーテル連結によって前記足場に連結しており、その結果、2つのポリペプチドループが前記分子足場上に形成され、前記二環ペプチドリガンドが、
【表1】
またはその薬学的に許容される塩からなる群から選択される二環ペプチドリガンド。
【請求項2】
適切なアミノ反応性化学を使用するN末端修飾、および/または適切なカルボキシ反応性化学を使用するC末端修飾を含む、請求項に記載のペプチドリガンド。
【請求項3】
前記N末端修飾が、エフェクター基のコンジュゲーションおよびその標的に対する前記二環ペプチドの効力の保持を容易にする分子スペーサー基を含む、請求項に記載のペプチドリガンド。
【請求項4】
前記N末端および/またはC末端の修飾が、細胞毒性剤の付加を含む、請求項2または3に記載のペプチドリガンド。
【請求項5】
前記二環ペプチドリガンドが、ヒト、マウスおよびイヌのMT1-MMPヘモペキシンドメインの高親和性結合剤である、請求項1からのいずれか1項に記載のペプチドリガンド。
【請求項6】
前記二環ペプチドリガンドが、MT1-MMPに対して選択性であるが、MMP-1、MMP-2、MMP-15およびMMP-16と交差反応しない、請求項1からのいずれか1項に記載のペプチドリガンド。
【請求項7】
請求項1からのいずれか1項に記載のアミノ酸配列を含む直鎖状ペプチド。
【請求項8】
請求項1からのいずれか1項に記載のペプチドリガンドを作製する方法であって、ペプチドを準備することと、前記ペプチドの前記システインの側鎖およびジアミノプロピオン酸またはβ-N-アルキルジアミノプロピオン酸残基の-SH基およびアミノ基とのチオエーテル連結およびアルキルアミノ連結を形成するための少なくとも3つの反応性部位を有する足場分子を準備することと、前記ペプチドと前記足場分子の間に前記チオエーテル連結およびアルキルアミノ連結を形成することとを含む方法。
【請求項9】
1つまたは複数のエフェクター基および/または官能基にコンジュゲートした、請求項1からのいずれか1項に記載のペプチドリガンドを含む薬物コンジュゲート。
【請求項10】
前記エフェクター基および/または官能基が、細胞毒性剤または金属キレーターを含む、請求項に記載の薬物コンジュゲート。
【請求項11】
前記細胞毒性剤が、切断可能な結合によって前記二環ペプチドに連結する、請求項10に記載の薬物コンジュゲート。
【請求項12】
前記細胞毒性剤が、DM1またはMMAEから選択される、請求項10または請求項11に記載の薬物コンジュゲート。
【請求項13】
以下の構造:
【化1】
(式中、R、R、RおよびRは、水素またはC1~C6アルキル基を表し、
毒素は、本明細書で定義した任意の適切な細胞毒性剤を指し、
二環は、請求項1~6のいずれか1項に記載の二環ペプチドを表し、
nは、1から10から選択される整数を表し、
mは、0から10から選択される整数を表す)
を有する、請求項10から12のいずれか1項に記載の薬物コンジュゲート。
【請求項14】
、R、RおよびRがすべてHであるか;またはR、R、RがすべてHでありR=メチル;またはR、R=メチルかつR、R=H;またはR、R=メチルかつR、R=H;またはR、R=HかつR、R=C1~C6アルキルのいずれかである、請求項13に記載の薬物コンジュゲート。
【請求項15】
以下の構造:
【化2】
を有する、請求項10から12のいずれか1項に記載の薬物コンジュゲート。
【請求項16】
以下の構造:
【化3】
(式中、(alk)は、式C2n(nは、1から10である)の直鎖状アルキレン基または分枝状アルキレン基である)
を有する、請求項10から12のいずれか1項に記載の薬物コンジュゲート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MT1-MMPへの高い結合親和性を示すペプチドリガンドに関する。詳細には、本発明は、ペプチドと足場分子の間に2つまたはそれより多い結合を形成するための新規化学を有するこのタイプのペプチドリガンドに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な研究チームは、以前に、ペプチドのシステイン残基と足場分子の適切な官能基の間に2つまたはそれより多いチオエーテル結合を形成することによって、ペプチドを足場部分に係留してきた。例えば、トリス(ブロモメチル)ベンゼンのように、システイン含有ペプチドを分子足場に連結させることによる、候補薬物化合物の生成のための方法がWO2004/077062およびWO2006/078161に開示されている。
【0003】
環化を達成することを目的として、共有結合によるチオエーテル連結を生じさせるためにシステインチオールを利用する利点は、システインチオールの選択的かつ生体直交型の反応性にある。チオール含有直鎖状ペプチドは、1,3,5トリス-ブロモメチルベンゼン(TBMB)などのチオール反応性足場化合物を用いて環化され、二環性ペプチドを形成する場合があり、得られた生成物はベンジル位に3つのチオエーテルを含有する。チオエーテル連結を有するループ状二環性ペプチドを形成するための、直鎖状ペプチドのTBMBを用いる反応全体は、図1に示される。
【0004】
ペプチドを足場部分にカップリングさせて、チオエーテル部位の適切な置き換えを用いるループ状ペプチド構造を形成し、それによって、異なるペプチドとの適合性、溶解度の改善などの物理化学特性の変化、生体分布の変化および他の利点を達成するための代替化学に対する需要が存在する。
【0005】
WO2011/018227には、第1のペプチドリガンドまたはペプチドリガンドの群のコンフォメーションを変更するための方法であって、各ペプチドリガンドが、第2のペプチドリガンドまたはペプチドリガンドの群を生成するために、少なくとも2つの反応性基と共有結合を形成する分子足場に共有結合により連結したループ配列によって分離された前記反応性基を含み、上記方法が、ペプチド由来の前記第2の誘導体または誘導体の群と前記第1の誘導体または誘導体の群の足場とをアセンブルすることを含み、(a)少なくとも1つの反応性基を変更すること;または(b)分子足場の性質を変更すること;または(c)少なくとも1つの反応性基と分子足場の間の結合を変更すること;または(a)、(b)もしくは(c)の任意の組合せのうちの1つが組み込まれている、方法が記載されている。
【0006】
本発明者らの以前に公開された出願WO2016/067035と2016年5月4日に提出された係属中の出願GB1607827.1には、MT1-MMPに対して高い結合親和性を有する二環性ペプチドリガンドが記載されている。これらの出願には、ペプチドリガンドの治療剤との、特に細胞毒性剤とのコンジュゲートについてもさらに記載されている。これらの出願の開示全体は、明示的に本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0007】
本発明者らは、アルキルアミノ連結による、MT1-MMPに対する親和性を有するループ状ペプチドにおけるチオエーテル連結の置き換えにより、すべてチオエーテル連結を用いて作製された対応するコンジュゲートと、MT1-MMPに対する同様の親和性を呈するループ状ペプチドコンジュゲートを生じることを見出した。アルキルアミノ連結によるチオエーテル連結の置き換えは、本発明によるコンジュゲートの溶解度の改善および/または酸化安定性の改善をもたらすことが期待される。
【0008】
したがって、第1の態様では、本発明は、システイン、L-2,3-ジアミノプロピオン酸(Dap)、N-ベータ-アルキル-L-2,3-ジアミノプロピオン酸(N-AlkDap)およびN-ベータ-ハロアルキル-L-2,3-ジアミノプロピオン酸(N-HAlkDap)から選択される3つの残基であって、少なくとも2つのループ配列によって分離されている3つの残基を含むポリペプチドと、分子足場とを含むMT1-MMPに特異的なペプチドリガンドであって、ペプチドが、ポリペプチドのDapまたはN-AlkDapまたはN-HAlkDap残基との、共有結合によるアルキルアミノ連結によって、かつ前記3つの残基がシステインを含む場合、ポリペプチドのシステイン残基とのチオエーテル連結によって足場に連結しており、その結果、2つのポリペプチドループが分子足場上に形成され、ペプチドリガンドが、式(II):
-A-X-U/O-X-X-G-A-E-D-F-Y-X10-X11-A-(配列番号1) (II)
またはその薬学的に許容される塩
(式中A、A、およびAは、独立して、システイン、L-2,3-ジアミノプロピオン酸(Dap)、N-ベータ-アルキル-L-2,3-ジアミノプロピオン酸(N-AlkDap)、またはN-ベータ-ハロアルキル-L-2,3-ジアミノプロピオン酸(N-HAlkDap)であり、但し、A、A、およびAのうちの少なくとも1つはDap、N-AlkDapまたはN-HAlkDapであることを条件とし;
Xは、任意のアミノ酸残基を表し;
Uは、N、C、Q、M、SおよびTから選択される、極性の、無電荷アミノ酸残基を表し;
Oは、G、A、I、L、PおよびVから選択される、非極性の、脂肪族アミノ酸残基を表す)
のアミノ酸配列を含む、ペプチドリガンドを提供する。
【0009】
本発明の誘導体は、N-HAlkDap残基のDapまたはN-AlkDapへの少なくとも1つのアルキルアミノ連結とシステインへの最大2つのチオエーテル連結とによって、足場にカップリングしたペプチドループを含むことを見て取ることができる。適切には、A、A、およびAは、1つのシステインと、Dap、N-AlkDapまたはN-HAlkDapから選択される2つの残基からなる。N-AlkDapおよびN-HAlkDapの接頭語「アルキル」は、1から4個の炭素原子を有するアルキル基、好ましくはメチルを指す。接頭語「ハロ」は、1つまたは複数の、適切には1つの、フルオロ-、クロロ-、ブロモ-またはヨード-置換基を有するアルキル基を示す通常の意味で、この文脈において使用される。
【0010】
システインが存在する場合、チオエーテル連結は、以下でさらに説明される環状ペプチドの形成の間にアンカーをもたらす。これらの実施形態では、チオエーテル連結は、適切には、二環性ペプチドコンジュゲートの中央の連結であり、すなわち、ペプチド配列において、ペプチドのアルキルアミノ連結を形成する2つの残基は、チオエーテル連結を形成するシステイン残基の両側と一定の距離を保ち、その両側に位置する。したがって、ループ状ペプチド構造は、中央のチオエーテル連結と2つの周辺のアルキルアミノ連結とを有する二環性ペプチドコンジュゲートである。代替的実施形態では、チオエーテル連結は、ペプチドのN末端またはC末端に配置され、中央の連結と他の末端の連結は、Dap、N-AlkDapまたはN-HAlkDapから選択される。
【0011】
本発明の実施形態では、A、A、およびAの3つすべては、適切には、Dap、N-AlkDapまたはN-HAlkDapであってもよい。これらの実施形態では、本発明のペプチドリガンドは、適切には、中央のアルキルアミノ連結と2つの周辺のアルキルアミノ連結とを有する二環性コンジュゲートであり、2つのループを形成するペプチドは、中央のアルキルアミノ連結を共有する。これらの実施形態では、A、A、およびAは、アルキル化Dapに関する反応速度論が好ましいため、適切にはすべて、N-AlkDapまたはN-HAlkDap、最も適切にはN-AlkDapから選択される。
【0012】
適切には、Xは、以下のアミノ酸、すなわち、Y、M、FまたはV、例えば、Y、MまたはF、特にYまたはM、さらに特にYのうちのいずれか1つから選択される。
【0013】
適切には、U/Oは、U、例えば、N、またはO、例えば、Gから選択される。
【0014】
適切には、Xは、UまたはZから選択され、Uは、N、C、Q、M、SおよびTから選択される、極性の、無電荷アミノ酸残基を表し、Zは、DまたはEから選択される、極性の、負電荷アミノ酸残基を表し、特に3位のUは、Qから選択されるかまたは3位のZは、Eから選択される。
【0015】
適切には、Xは、Jから選択され、Jは、F、WおよびYから選択される、非極性の、芳香族アミノ酸残基を表す。
【0016】
適切には、X10は、Zから選択され、Zは、DまたはE、例えば、Dから選択される、極性の、負電荷アミノ酸残基を表す。
【0017】
適切には、X11は、Oから選択され、Oは、G、A、I、L、PおよびV、例えば、Iから選択される、非極性の、脂肪族アミノ酸残基を表す。
【0018】
適切には、式(II)の二環は、式(IIa)の化合物:
-A-Y/M/F/V-U/O-U/Z-J-G-A-E-D-F-Y-Z-O-A- (配列番号6)(IIa)
(式中、U、O、JおよびZは、上記に定義した通りである);または
式(IIb)の化合物:
-A-Y/M/F/V-N/G-E/Q-F-G-A-E-D-F-Y-D-I-A- (配列番号7)(IIb);または
式(IIc)の化合物:
-A-Y/M/F-N/G-E/Q-F-G-A-E-D-F-Y-D-I-A- (配列番号8)(IIc);または
式(IId)の化合物:
-A-Y/M-N-E/Q-F-G-A-E-D-F-Y-D-I-A- (配列番号9)(IId);または
式(IIe)の化合物:
-A-Y-N-E-F-G-A-E-D-F-Y-D-I-A- (17-69-07)(配列番号2)(IIe)
である。
【0019】
適切には、式(II)の二環は、
-A-Y-N-E-F-G-A-E-D-F-Y-D-I-A- (17-69-07) (配列番号2);
-A-M-N-Q-F-G-A-E-D-F-Y-D-I-A- (17-69-12) (配列番号10);
-A-F-G-E-F-G-A-E-D-F-Y-D-I-A- (17-69-02) (配列番号11);
-A-V-N-E-F-G-A-E-D-F-Y-D-I-A- (17-69-03) (配列番号12);
-A-F-N-E-F-G-A-E-D-F-Y-D-I-A- (17-69-04) (配列番号13);
-A-Y-N-E-Y-G-A-E-D-F-Y-D-I-A- (配列番号14);および
-A-Y-N-E-W-G-A-E-D-F-Y-D-I-A- (配列番号15)、
例えば、
-A-Y-N-E-F-G-A-E-D-F-Y-D-I-A- (17-69-07) (配列番号2);および
-A-M-N-Q-F-G-A-E-D-F-Y-D-I-A- (17-69-12) (配列番号10)、
特に、
-A-Y-N-E-F-G-A-E-D-F-Y-D-I-A- (17-69-07) (配列番号2)、
最も特に、
配列番号16:((bAla)-Sar10-AA(D-Ala)NE(1Nal)(D-Ala)AEDFYD(tBuGly)Aとして示される17-69-07-N241のDapホモログ;
および配列番号17:AA(D-Ala)NE(1Nal)(D-Ala)AEDFYD(tBuGly)Aとして示される17-69-07-N268のDapホモログ
から選択される配列を含む。
【0020】
上記配列のすべてにおいて、A、A、およびAは、上記に定義した通りである。A、A、およびAの適切かつ好ましいタイプおよび位置は、上記に定義した通りである。
【0021】
実施形態では、本発明のペプチドリガンドは、さらに、N末端および/またはC末端の修飾、1つまたは複数のアミノ酸残基の1つまたは複数の非天然アミノ酸残基による置き換え(例えば、1つまたは複数の極性アミノ酸残基の1つまたは複数の等配電子アミノ酸または等電子アミノ酸による置き換え、1つまたは複数の疎水性アミノ酸残基の他の非天然の、等配電子アミノ酸または等電子アミノ酸による置き換え)、スペーサー基の付加、1つまたは複数の酸化感受性アミノ酸残基の1つまたは複数の酸化抵抗性アミノ酸残基による置き換え、1つまたは複数のアミノ酸残基のアラニンによる置き換え、1つまたは複数のL-アミノ酸残基の1つまたは複数のD-アミノ酸残基による置き換え、二環性ペプチドリガンド内の1つまたは複数のアミド結合のNアルキル化、1つまたは複数のペプチド結合のサロゲート結合(surrogate bond)による置き換え、ペプチド主鎖長の改変、1つまたは複数のアミノ酸残基のα炭素上の水素の別の化学基による置換、ならびにシステイン、リシン、グルタミン酸およびチロシンなどのアミノ酸の適切なアミン、チオール、カルボン酸およびフェノール反応性試薬による、合成後の生体直交型修飾から選択される1つまたは複数の修飾を含む。
【0022】
適切には、これらの実施形態は、適切なアミノ反応性化学を使用するN末端修飾、および/または適切なカルボキシ反応性化学を使用するC末端修飾を含んでもよい。例えば、N末端修飾は、エフェクター基のコンジュゲーションおよびその標的に対する二環性ペプチドの効力の保持を容易にする分子スペーサー基の付加を含んでもよい。スペーサー基は、適切には、Alaなどの約5から約30個のアミノ酸を含有するオリゴペプチド基、G-Sar10-A基またはbAla-Sar10-A基である。あるいはまたはさらに、N末端および/またはC末端の修飾は、細胞毒性剤の付加を含む。
【0023】
さらに可能なペプチド修飾は、アミノ酸位1および/または9における修飾を含む。
【0024】
実施形態では、ペプチド修飾は、1つまたは複数のアミノ酸残基の1つまたは複数の非天然アミノ酸残基による置き換えを含む。例えば、ここで、非天然アミノ酸残基は、4位において置換され、1-ナフチルアラニン、2-ナフチルアラニン、3,4-ジクロロフェニルアラニン、およびホモフェニルアラニン、例えば、1-ナフチルアラニン、2-ナフチルアラニン、および3,4-ジクロロフェニルアラニン、特に、1-ナフチルアラニンから選択される。あるいはまたはさらに、非天然アミノ酸残基は、9位および/または11位において置換され、9位について4-ブロモフェニルアラニンもしくはペンタフルオロ-フェニルアラニン、および/または11位についてtert-ブチルグリシンから選択される。これらの実施形態では、非天然アミノ酸残基、例えば、9位に存在する非天然アミノ酸残基は、4-ブロモフェニルアラニンから選択され、および/または非天然アミノ酸残基、例えば、11位に存在する非天然アミノ酸残基はtert-ブチルグリシンから選択される。
【0025】
実施形態では、1位のアミノ酸残基は、D-アミノ酸、例えば、D-アラニンで置換されている。他の実施形態では、5位のアミノ酸残基は、D-アミノ酸、例えば、D-アラニンまたはD-アルギニンで置換されている。
【0026】
適切には、ペプチドリガンドは、複数の上述の修飾、例えば、1および/または5位におけるD-アラニン、4位における1-ナフチルアラニン、9位における4-ブロモフェニルアラニンならびに11位におけるtert-ブチルグリシンなどの修飾のうちの2、3、4もしくは5またはそれより多い修飾、例えば、上記5つの修飾のすべてを含んでもよい。
【0027】
本明細書で定義するペプチド配列のすべてにおいて、1つまたは複数のチロシン残基は、フェニルアラニンによって置き換えられていてもよい。このことは、ペプチドの足場分子への塩基触媒カップリング中の二環性ペプチド生成物の収率を改善することが見出された。
【0028】
適切には、本発明のペプチドリガンドは、ヒト、マウスおよびイヌのMT1-MMPヘモペキシンドメインの高親和性結合剤である。適切には、結合親和性kは、約100nM未満、約50nM未満、約25nM未満、または約10nM未満である。
【0029】
適切には、本発明のペプチドリガンドは、MT1-MMPに対して選択性であるが、MMP-1、MMP-2、MMP-15およびMMP-16と交差反応しない。適切には、これらのリガンドそれぞれとの結合親和性kiは、約500nMを超えるか、約1000nMを超えるか、または約10000nMを超える。
【0030】
適切には、足場は、(ヘテロ)芳香族または(ヘテロ)脂環式部分を含む。適切には、足場は、トリス置換(ヘテロ)芳香族または(ヘテロ)脂環式部分、例えば、トリスメチレン置換(ヘテロ)芳香族または(ヘテロ)脂環式部分を含む。(ヘテロ)芳香族または(ヘテロ)脂環式部分は、適切には、足場が三回対称軸を有するように、好ましくはトリス置換された、6員環構造である。したがって、ある特定の好ましい実施形態では、足場は、1,3,5-トリスメチルベンゼンである。他の好ましい実施形態では、足場は、以下にさらに記載されるように、ペプチドを1,3,5-トリス-(ブロモアセトアミド)ベンゼン(TBAB)にカップリングさせることによって導出され得る1,3,5-トリス-(アセトアミド)ベンゼン基である。
【0031】
第2の態様では、本発明は、本発明の第1の態様に関して上記で定義した式(II)のアミノ酸配列を含むペプチドを提供する。適切には、ペプチドは、以下に記載される適切な足場分子への連結によって、本発明によるペプチドリガンドを作製するのに適している。適切には、ペプチドは、直鎖状ペプチドである。
【0032】
さらなる態様では、本発明は、本発明の第1の態様に記載のペプチドリガンドを作製する方法であって、本発明の第2の態様に従ってペプチドを準備することと、前記システインおよびジアミノプロピオン酸またはβ-N-アルキルジアミノプロピオン酸残基の側鎖アミノ基とのアルキルアミノ連結を形成するための少なくとも3つの反応性部位を有する足場分子を準備することと、ペプチドと足場分子の間に前記アルキルアミノ連結を形成することとを含む方法を提供する。
【0033】
反応性部位は、第3の残基がシステインである実施形態では、システインの-SH基とのチオエーテル連結を形成するのにも適している。システインの-SH基は求核性が高く、これらの実施形態では、最初に、足場分子の求電子中心と反応してペプチドを足場分子に固定し、その後、アミノ基は、足場分子の残りの求電子中心と反応してループ状ペプチドリガンドを形成することが期待される。
【0034】
実施形態では、ペプチドは、アルキルアミノ連結を形成することを意図したアミノ基および-SH基(存在する場合)以外に、求核基に保護基を有する。
【0035】
適切には、本発明の方法は、求核置換反応において、本明細書で定義されるペプチドを3つまたはそれより多い脱離基を有する足場分子と反応させることを含む。
【0036】
代替方法では、本発明の化合物は、ペプチドの2つまたはそれより多い側鎖基を脱離基に変換させ、続いて、求核置換反応において、ペプチドを2つまたはそれより多いアミノ基を有する足場分子と反応させることによって作製され得る。
【0037】
例えば、脱離基が従来のアニオン性脱離基である求核置換反応は、塩基の存在下で実施されてもよい。本発明者らは、環化ペプチドリガンドの収率は、求核置換反応に対する溶媒および塩基の適切な選択によって大いに増加する可能性があり、さらに、好ましい溶媒および塩基は、チオエーテル連結の形成にのみ関与する従来技術の溶媒と塩基の組合せとは異なることを見出した。特に、本発明者らは、収率の改善は、トリアルキルアミン塩基、すなわち、式NR(式中、R、RおよびRは、独立して、C1~C5アルキル基、適切には、C2~C4アルキル基、特に、C2~C3アルキル基である)の塩基を使用する場合に達成されることを見出した。特に適切な塩基は、トリエチルアミンおよびジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)である。これらの塩基は、わずかに弱い求核性の特性を有し、この特性によって、これらの塩基に関して観察される副反応の少なさと高収率について説明されると考えられる。本発明者らは、求核置換反応に好ましい溶媒が、極性かつプロトン性の溶媒、特にMeCN/HO(50:50)であることをさらに見出した。
【0038】
さらなる態様では、本発明は、1つまたは複数のエフェクター基および/または官能基、例えば、細胞毒性剤または金属キレーターにコンジュゲートした本発明によるペプチドリガンドを含む薬物コンジュゲートを提供する。
【0039】
適切には、コンジュゲートは、切断可能な結合、例えば、ジスルフィド結合によってペプチドリガンドに連結した細胞毒性剤を有する。適切には、細胞毒性剤は、DM1またはMMAEから選択される。
【0040】
実施形態では、薬物コンジュゲートは、以下の構造:
【化1】
(式中、R、R、RおよびRは、水素またはC1~C6アルキル基を表し、
毒素は、任意の適切な細胞毒性剤を指し、
二環は、ループ状ペプチド構造を表し、
nは、1から10から選択される整数を表し、
mは、0から10から選択される整数を表す)
を有する。
【0041】
適切には、R、R、RおよびRはすべてHであるか;またはR、R、RはすべてHでありR=メチル;またはR、R=メチルかつR、R=H;またはR、R=メチルかつR、R=H;またはR、R=HかつR、R=C1~C6アルキルのいずれか。
【0042】
毒素と二環性ペプチドの間のリンカーは、アジド官能基化毒素とアルキン官能基化二環性ペプチド構造(またはその逆)の間のクリック反応によって形成されるトリアゾール基を含んでもよい。他の実施形態では、二環性ペプチドは、カルボキシレート官能基化毒素と二環性ペプチドのN末端アミノ基の間の反応によって形成されるアミド連結を含有してもよい。
【0043】
毒素と二環性ペプチドの間のリンカーは、標的細胞内で毒素の選択的放出をもたらす、カテプシンにより切断可能な基を含んでもよい。適切なカテプシンにより切断可能な基は、バリン-シトルリンである。
【0044】
毒素と二環性ペプチドの間のリンカーは、コンジュゲートに対する所望の官能性、例えば、結合親和性またはカテプシンによる切断可能性をもたらす、1つまたは複数のスペーサー基を含んでもよい。適切なスペーサー基は、バリン-シトルリン基と毒素部分の中間に位置し得るパラ-アミノベンジルカルバメート(PABC)である。
【0045】
したがって、実施形態では、二環性ペプチド-薬物コンジュゲートは、毒素-PABC-cit-val-トリアゾール-二環から構成される以下の構造:
【化2】
を有してもよい。
【0046】
さらなる実施形態では、二環性ペプチド-薬物コンジュゲートは、毒素-PABC-cit-val-ジカルボキシレート-二環から構成される以下の構造:
【化3】
を有してもよい。
ここで、(alk)は、式C2n(式中、nは、1から10であり、直鎖状または分枝状であってもよく、適切には、(alk)は、n-プロピレンまたはn-ブチレンである)のアルキレン基である。
【0047】
別の態様では、本発明は、本発明による少なくともペプチドリガンドまたはコンジュゲートを含むキットをさらに提供する。
【0048】
またさらなる態様では、本発明は、本発明のペプチドリガンドまたはコンジュゲート、および薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む組成物を提供する。
【0049】
さらに、本発明は、本発明によるペプチドリガンド、コンジュゲート、または組成物を使用する、疾患の処置のための方法を提供する。適切には、疾患は、新生物疾患、例えば、がんである。
【0050】
さらなる態様では、本発明は、本発明によるペプチドリガンド、または組成物を使用する、疾患の診断を含む、診断のための方法を提供する。したがって、一般的に、分析物のペプチドリガンドへの結合が、薬剤を押しのけるために活用され、押しのけが生じるとシグナルの発生につながる場合がある。例えば、特に、酵素が、活性部位を介してペプチドリガンドに保持される場合、分析物(第2の標的)の結合により、ペプチドリガンドに結合した酵素(第1の標的)を押しのけることができ、これは結合アッセイの基礎となる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】先行技術によるチオエーテルにより連結した二環性ペプチドリガンドの調製に対する反応スキームを示す図である。
図2】17-69-07-N241として示される、先行技術によるチオエーテルにより連結した二環性ペプチドリガンドを示す図である。
図3】本発明による、第1の第二級アミノにより連結した二環性ペプチドリガンドを示す図である。
図4】本発明による、第三級N-メチルアミノにより連結した二環性ペプチドリガンドを示す図である。
図5】17-69-07-N241のDapアナログである、本発明による、第3の第二級アミノにより連結した二環性ペプチドリガンドを示す図である。
図6】TBAB足場により環化された、本発明による、第4の第二級アミノにより連結した二環性ペプチドリガンドを示す図である。
図7図3の誘導体に関する、MT1-MMPに対する競合的結合親和性アッセイのデータを示すグラフである。
図8図4の誘導体に関する、MT1-MMPに対する競合的結合親和性アッセイのデータを示すグラフである。
図9】本発明によるさらなる誘導体に関する、MT1-MMPに対する競合的結合親和性アッセイのデータを示すグラフである。
図10】本発明に従う、ある特定の二環性ペプチド-TBMB誘導体の模式構造を示す図である。
図11】本発明に従う、さらなる二環性ペプチド-TBMB誘導体の模式構造を示す図である。
図12】本発明に従う、さらなる二環性ペプチド-TBMB誘導体の模式構造を示す図である。
図13】本発明に従う、さらなる二環性ペプチド-TBMB誘導体の模式構造を示す図である。
図14】トリアゾール連結を形成するためのクリック反応による、本発明による二環性ペプチド-薬物コンジュゲートの調製のための反応スキームを示す図である。
図15】アミド連結を有することによる、本発明による二環性ペプチド-薬物コンジュゲートの調製のための反応スキームを示す図である。
図16】本発明による二環性ペプチド-薬物コンジュゲートによる処置後のHT1020腫瘍細胞腫瘍を有するBalb/cヌードマウスに関して、腫瘍体積と体重を経時的に示すグラフである。
図17】本発明によるさらなる二環性ペプチド-薬物コンジュゲートによる処置後のHT1020腫瘍細胞腫瘍を有するBalb/cヌードマウスに関して、腫瘍体積と体重を経時的に示すグラフである。
図18】本発明によるさらなる二環性ペプチド-薬物コンジュゲートによる処置後のHT1020腫瘍細胞腫瘍を有するBalb/cヌードマウスに関して、腫瘍体積と体重を経時的に示すグラフである。
図19】本発明によるさらなる二環性ペプチド-薬物コンジュゲートによる処置後のHT1020腫瘍細胞腫瘍を有するBalb/cヌードマウスに関して、腫瘍体積と体重を経時的に示すグラフである。
図20】本発明によるさらなる二環性ペプチド-薬物コンジュゲートによる処置後のHT1020腫瘍細胞腫瘍を有するBalb/cヌードマウスに関して、腫瘍体積と体重を経時的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0052】
別段定義されていなければ、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、ペプチド化学、細胞培養およびファージディスプレイ、核酸化学および生化学の技術分野などの当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。分子生物学、遺伝学的方法および生化学的方法に対する標準的技術が使用され(Sambrook et al.,Molecular Cloning: A Laboratory Manual,3rd ed.,2001,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;Ausubel et al.,Short Protocols in Molecular Biology (1999) 4th ed.,John Wiley & Sons,Inc.を参照のこと)、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0053】
本発明は、請求項1に定義したループ状ペプチド構造であって、分子足場の3つの連結間を結ぶ2つのペプチドループを含み、中央の連結は2つのループに共通している、ループ状ペプチド構造を提供する。中央の連結は、適切には、ペプチドのシステイン残基に対して形成されるチオエーテル連結であるか、またはペプチドのDapもしくはN-AlkDap残基に対して形成されるアルキルアミノ連結である。2つの外側の連結は、適切には、ペプチドのDapもしくはN-AlkDap残基に対して形成されるアルキルアミノ連結であるか、または外側の連結のうちの1つがペプチドのシステイン残基に対して形成されるチオエーテル連結であってもよい。
【0054】
式(II)の1、3、4、10および11位のXは、これらの位置において耐容性の良好な置換を可能にするアラニンスキャンと選択アウトプットの結果を受けて、任意のアミノ酸を表してもよいことが当業者によって認識される。
【0055】
一実施形態では、式(II)の1位のXは、以下のアミノ酸、すなわち、Y、M、FまたはVのうちのいずれか1つから選択される。さらなる実施形態では、式(II)の1位のXは、Y、MまたはFから選択される。なおさらなる実施形態では、式(II)の1位のXは、YまたはMから選択される。またなおさらなる実施形態では、式(II)の1位のXは、Yから選択される。
【0056】
一実施形態では、式(II)の2位のU/Oは、U、例えば、Nから選択される。代替の実施形態では、式(II)の2位のU/Oは、O、例えば、Gから選択される。
【0057】
一実施形態では、式(II)の3位のXは、UまたはZから選択され、Uは、N、C、Q、M、SおよびTから選択される、極性の、無電荷アミノ酸残基を表し、Zは、DまたはEから選択される、極性の、負電荷アミノ酸残基を表す。さらなる実施形態では、式(II)の3位のUは、Qから選択される。代替の実施形態では、式(II)の3位のZは、Eから選択される。
【0058】
一実施形態では、式(II)の4位のXは、Jから選択され、Jは、F、WおよびYから選択される、非極性の、芳香族アミノ酸残基を表す。さらなる実施形態では、式(II)の4位のJは、Fから選択される。代替の実施形態では、式(II)の4位のJは、Yから選択される。代替の実施形態では、式(II)の4位のJは、Wから選択される。
【0059】
一実施形態では、式(II)の10位のXは、Zから選択され、Zは、DまたはEから選択される、極性の、負電荷アミノ酸残基を表す。一実施形態では、式(II)の10位のZは、Dから選択される。
【0060】
一実施形態では、式(II)の11位のXは、Oから選択され、Oは、G、A、I、L、PおよびVから選択される、非極性の、脂肪族アミノ酸残基を表す。一実施形態では、式(II)の11位のOは、Iから選択される。
【0061】
一実施形態では、式(II)の化合物は、式(IIa):
-A-Y/M/F/V-U/O-U/Z-J-G-A-E-D-F-Y-Z-O-A- (配列番号6)(IIa)
(式中、U、O、JおよびZは上記に定義した通りである)
の化合物である。
【0062】
一実施形態では、式(II)の化合物は、式(IIb):
-A-Y/M/F/V-N/G-E/Q-F-G-A-E-D-F-Y-D-I-A- (配列番号7)(IIb)
の化合物である。
【0063】
一実施形態では、式(II)の化合物は、式(IIc):
-A-Y/M/F-N/G-E/Q-F-G-A-E-D-F-Y-D-I-A- (配列番号8)(IIc)
の化合物である。
【0064】
一実施形態では、式(II)の化合物は、式(IId):
-A-Y/M-N-E/Q-F-G-A-E-D-F-Y-D-I-A- (配列番号9)(IId)
の化合物である。
【0065】
一実施形態では、式(II)の化合物は、式(IIe):
-A-Y-N-E-F-G-A-E-D-F-Y-D-I-A- (17-69-07) (配列番号2)(IIe)
の化合物である。
【0066】
なおさらなる実施形態では、式(II)のペプチドは、
-A-Y-N-E-F-G-A-E-D-F-Y-D-I-A- (17-69-07) (配列番号2);
-A-M-N-Q-F-G-A-E-D-F-Y-D-I-A- (17-69-12) (配列番号10);
-A-F-G-E-F-G-A-E-D-F-Y-D-I-A- (17-69-02) (配列番号11);
-A-V-N-E-F-G-A-E-D-F-Y-D-I-A- (17-69-03) (配列番号12);
-A-F-N-E-F-G-A-E-D-F-Y-D-I-A- (17-69-04) (配列番号13);
-A-Y-N-E-Y-G-A-E-D-F-Y-D-I-A- (17-69-07-N057) (配列番号14);および
-A-Y-N-E-W-G-A-E-D-F-Y-D-I-A- (17-69-44-N002) (配列番号15)
から選択される配列を含む。
【0067】
この実施形態のペプチドは、MT1-MMPのヘモペキシンドメインに対する親和性成熟後の有効な候補であると特定された。
【0068】
またなおさらなる実施形態では、式(II)のペプチドは、
-A-Y-N-E-F-G-A-E-D-F-Y-D-I-A- (17-69-07) (配列番号2);および
-A-M-N-Q-F-G-A-E-D-F-Y-D-I-A- (17-69-12) (配列番号10)
から選択される配列を含む。
【0069】
この実施形態のペプチドは、MT1-MMPのヘモペキシンドメインに対する親和性成熟、コア二環性配列の合成、および競合実験を使用する親和性の定量的測定後の親和性の最も高い候補であると特定された。
【0070】
またなおさらなる実施形態では、式(II)のペプチドは、-A-Y-N-E-F-G-A-E-D-F-Y-D-I-A- (17-69-07)(配列番号2)から選択される配列を含む。この実施形態のペプチドは、式(II)内のペプチドリガンドのファミリーの最も有効、かつ安定なメンバーであると特定された。
【0071】
またなおさらなる実施形態では、式(II)のペプチドは、
(bAla)-Sar10-AA(D-Ala)NE(1Nal)(D-Ala)AEDFYD(tBuGly)A,);または
AA(D-Ala)NE(1Nal)(D-Ala)AEDFYD(tBuGly)A
(ここで、それぞれ、N末端は、適切には、遊離アミノ基として存在し、C末端は、適切には、アミド化されている)
から選択される配列を含む。
【0072】
上記配列のすべてにおいて、A、A、およびAは、上記に定義した通りである。A、A、およびAの適切かつ好ましいタイプおよび位置は、上記に定義した通りである。
【0073】
一実施形態では、式(II)のある特定のペプチドは、マウス、イヌ、カニクイザルおよびヒトのMT1-MMPと十分に交差反応性である。さらなる実施形態では、本発明の具体的に例示されたペプチドリガンドは、マウス、イヌ、カニクイザルおよびヒトのMT1-MMPと十分に交差反応性である。例えば、17-69-07(すなわち、17-69-07-N219、17-69-07-N241および17-69-07-N268)の不安定な誘導体および安定な誘導体の両方は、十分に交差反応性である。
【0074】
なおさらなる実施形態では、式(II)のペプチドは、MT1-MMPに対して選択的であるが、MMP-1、MMP-2、MMP-15およびMMP-16と交差反応性ではない。17-69-07コア配列、および安定したバリアント17-69-07-N258は、MT1-MMPに対して特有に選択的である。適切には、MT1-MMPに対する結合親和性kは、約100nM未満、約50nM未満、約25nM未満、または約10nM未満である。適切には、MMP-1、MMP-2、MMP-15およびMMP-16との結合親和性kiは、約500nMを超えるか、約1000nMを超えるか、または約10000nMを超える。
【0075】
本明細書で定義されるペプチドリガンドの修飾誘導体は、本発明の範囲内であると認識されることとなる。このような適切な修飾誘導体の例として、N末端および/またはC末端の修飾、1つまたは複数のアミノ酸残基の1つまたは複数の非天然アミノ酸残基による置き換え(例えば、1つまたは複数の極性アミノ酸残基の1つまたは複数の等配電子アミノ酸または等電子アミノ酸による置き換え、1つまたは複数の非極性アミノ酸残基の他の非天然の、等配電子アミノ酸または等電子アミノ酸による置き換え)、スペーサー基の付加、1つまたは複数の酸化感受性アミノ酸残基の1つまたは複数の酸化抵抗性アミノ酸残基による置き換え、1つまたは複数のアミノ酸残基のアラニンによる置き換え、1つまたは複数のL-アミノ酸残基の1つまたは複数のD-アミノ酸残基による置き換え、二環性ペプチドリガンド内の1つまたは複数のアミド結合のNアルキル化、1つまたは複数のペプチド結合のサロゲート結合による置き換え、ペプチド主鎖長の改変、1つまたは複数のアミノ酸残基のアルファ炭素上の水素の別の化学基による置換、システイン、リシン、グルタミン酸/アスパラギン酸およびチロシンなどのアミノ酸を官能基化するための、前記アミノ酸の適切なアミン、チオール、カルボン酸およびフェノール反応性試薬による修飾、ならびに官能基化に適する直交型反応性を導入するアミノ酸、例えば、それぞれ、アルキンまたはアジド保有部分による官能基化を可能にする、アジドまたはアルキン基保有アミノ酸の導入または置き換えから選択される1つまたは複数の修飾を含む。
【0076】
一実施形態では、修飾誘導体は、アミノ酸位1および/または9に修飾を含む。これらの位置は、特に、チロシンが存在する場合、タンパク質分解による分解に最も感受性が高い。
【0077】
一実施形態では、修飾誘導体は、N末端および/またはC末端の修飾を含む。さらなる実施形態では、修飾誘導体は、適切なアミノ反応性化学を使用するN末端修飾、および/または適切なカルボキシ反応性化学を使用するC末端修飾を含む。さらなる実施形態では、前記N末端またはC末端修飾は、これらに限定されないが、細胞毒性剤、ラジオキレーター(radiochelator)または発色団を含むエフェクター基の付加を含む。
【0078】
さらなる実施形態では、修飾誘導体は、N末端修飾を含む。さらなる実施形態では、N末端修飾は、N末端アセチル基を含む。この実施形態では、N末端システイン基(本明細書ではCと称される基)は、ペプチド合成の間に無水酢酸または他の適当な試薬でキャップされ、N末端アセチル化されている分子がもたらされる。この実施形態は、アミノペプチダーゼの潜在的認識ポイントを除去するという利点を提供し、二環性ペプチドの分解の可能性を回避する。
【0079】
代替の実施形態では、N末端修飾は、エフェクター基のコンジュゲーションおよびその標的に対する二環性ペプチドの効力の保持を容易にする分子スペーサー基の付加を含む。スペーサー基は、適切には、Ala、G-Sar10-AまたはbAla-Sar10-A基などの約5から約30個のアミノ酸を含有するオリゴペプチド基である。一実施形態では、スペーサー基は、bAla-Sar10-A(すなわち、17-69-07-N241)から選択される。これらのスペーサー基の二環性ペプチド17-69-07への付加は、標的タンパク質に対する効力を変更しない。
【0080】
さらなる実施形態では、修飾誘導体は、C末端修飾を含む。さらなる実施形態では、C末端修飾は、アミド基を含む。この実施形態では、C末端システイン基(本明細書ではCiiiと称される基)は、ペプチド合成の間にアミドとして合成され、C末端アミド化されている分子がもたらされる。この実施形態は、カルボキシペプチダーゼの潜在的な認識ポイントを除去するという利点を提供し、二環性ペプチドのタンパク質分解による分解の可能性を低下させる。
【0081】
一実施形態では、修飾誘導体は、1つまたは複数のアミノ酸残基の1つまたは複数の非天然アミノ酸残基による置き換えを含む。この実施形態では、分解性プロテアーゼによって認識もされず、標的効力にいかなる悪影響も及ぼさない等配電子/等電子側鎖を有する非天然のアミノ酸が選択されてもよい。
【0082】
あるいは、近くのペプチド結合のタンパク質分解による加水分解がコンフォメーション的および立体的に妨害されるような、制約されたアミノ酸側鎖を有する非天然のアミノ酸が使用されてもよい。特に、これらは、プロリンアナログ、巨大な側鎖、C-二置換誘導体(例えば、アミノイソ酪酸、Aib)、およびシクロアミノ酸、アミノ-シクロプロピルカルボン酸である単純な誘導体に関する。
【0083】
一実施形態では、非天然アミノ酸残基は、4位で置換される。いくつかの非天然アミノ酸残基は、この位置で耐容性が良好である。さらなる実施形態では、非天然アミノ酸残基、例えば、4位に存在する残基は、1-ナフチルアラニン;2-ナフチルアラニン;シクロヘキシルグリシン、フェニルグリシン;tert-ブチルグリシン;3,4-ジクロロフェニルアラニン;シクロヘキシルアラニン;およびホモフェニルアラニンから選択される。
【0084】
なおさらなる実施形態では、非天然アミノ酸残基、例えば、4位に存在するアミノ酸残基は、1-ナフチルアラニン;2-ナフチルアラニン;および3,4-ジクロロフェニルアラニンから選択される。これらの置換は、未修飾の野性型配列と比較して親和性を向上させる。
【0085】
なおさらなる実施形態では、非天然アミノ酸残基、例えば、4位に存在するアミノ酸残基は、1-ナフチルアラニンから選択される。この置換は、野性型と比較して親和性の最大レベルの向上(7倍を超える)をもたらした。
【0086】
一実施形態では、非天然アミノ酸残基を、9位および/または11位で導入する。いくつかの非天然アミノ酸残基は、これらの位置で耐容性が良好である。
【0087】
さらなる実施形態では、非天然アミノ酸残基、例えば、9位に存在する非天然アミノ酸残基は、4-ブロモフェニルアラニン、ペンタフルオロ-フェニルアラニン、例えば、4-ブロモフェニルアラニンから選択される。
【0088】
なおさらなる実施形態では、非天然のアミノ酸残基、例えば、11位に存在する非天然アミノ酸残基は、tert-ブチルグリシンから選択される。タンパク質分解による加水分解からの近接するアミノ酸骨格の活性および強力な保護の向上は、立体妨害によって達成される。
【0089】
一実施形態では、修飾誘導体は、複数の上述の修飾、例えば、2、3、4または5以上の修飾を含む。さらなる実施形態では、修飾誘導体は、1位および5位のD-アラニン、4位の1-ナフチルアラニン、9位の4-ブロモフェニルアラニン、および11位のtert-ブチルグリシン修飾のうちの2、3、4もしくは5またはそれより多い修飾、例えば、上記5つの修飾のうちのすべてを含む。この多重置換は、野性型よりも優れた効力と共に耐容される。なおさらなる実施形態では、修飾誘導体は、以下の修飾、すなわち、1位および5位のD-アラニン、4位の1-ナフチルアラニンおよび11位のtert-ブチルグリシンを含む。この多重置換は、野性型よりも優れた効力と共に耐容される。
【0090】
一実施形態では、修飾誘導体は、スペーサー基の付加を含む。
【0091】
一実施形態では、修飾誘導体は、1つまたは複数の酸化感受性アミノ酸残基の1つまたは複数の酸化耐性アミノ酸残基による置き換えを含む。さらなる実施形態では、修飾誘導体は、トリプトファン残基のナフチルアラニンまたはアラニン残基による置き換えを含む。この実施形態によって、得られた二環性ペプチドリガンドの医薬品安定性プロファイルを改善するという利点が得られる。
【0092】
一実施形態では、修飾誘導体は、1つまたは複数の荷電アミノ酸残基の1つまたは複数の疎水性アミノ酸残基による置き換えを含む。代替の実施形態では、修飾誘導体は、1つまたは複数の疎水性アミノ酸残基の1つまたは複数の荷電アミノ酸残基による置き換えを含む。荷電対疎水性アミノ酸残基の妥当なバランスは、二環性ペプチドリガンドの重要な特徴である。例えば、疎水性アミノ酸残基は、血漿タンパク質結合の程度、およびこれにより血漿における遊離した利用可能な画分の濃度に影響を与え、一方、荷電アミノ酸残基(特にアルギニン)は、ペプチドの、細胞表面におけるリン脂質膜との相互作用に影響を与え得る。両者は、組み合わさると、半減期、分布の体積およびペプチド薬物への曝露に影響を与える場合があり、臨床エンドポイントに応じ目的に合わせて調整することができる。加えて、荷電対疎水性アミノ酸残基の正確な組合せおよび数は、注射部位における刺激を低減する場合がある(ペプチド薬物を皮下投与した場合)。
【0093】
一実施形態では、修飾誘導体は、1つまたは複数のL-アミノ酸残基の1つまたは複数のD-アミノ酸残基による置き換えを含む。この実施形態は、立体障害によって、およびターンコンフォメーションを安定化させるD-アミノ酸の傾向によってタンパク質分解安定性を増加させるためと考えられる(Tugyi et al(2005) PNAS, 102(2),413-418)。
【0094】
本明細書で定義されるペプチド配列のすべてにおいて、1つまたは複数のチロシン残基は、フェニルアラニンによって置き換えられてもよい。これは、ペプチドの足場分子への塩基に触媒されるカップリング中の二環性ペプチド生成物の収率を改善することが分かった。
【0095】
さらなる実施形態では、1位のアミノ酸残基は、D-アラニンなどのD-アミノ酸が置換される。この置換によって、結果としての分解なしで効力の保持が達成される。
【0096】
さらなる実施形態では、5位のアミノ酸残基は、D-アミノ酸、例えば、D-アラニンまたはD-アルギニンが置換される。この置換によって、結果としての分解なしで効力の保持が達成される。
【0097】
一実施形態では、修飾誘導体は、任意のアミノ酸残基の除去およびアラニンでの置換を含む。この実施形態によって、潜在的なタンパク質分解性攻撃部位を除去するという利点が得られる。
【0098】
上述の修飾のそれぞれは、ペプチドの効力または安定性を意図的に改善するために供されることに留意されたい。修飾に基づくさらなる効力改善は、以下の機序を通じて達成され得る。
- より高い親和性が達成されるように、疎水性効果を活用し、より低いオフレートにつながる疎水性部分を組み込むこと、
- 長期にわたりイオン性相互作用を活用する荷電された基を組み込み、より速いオンレートおよびより高い親和性をもたらすこと(例えば、Schreiber et al, Rapid, electrostatically assisted association of proteins(1996), Nature Struct. Biol. 3, 427-31を参照のこと)、および
- 例えば、エントロピーの損失が標的結合の際に最小であるように、アミノ酸の側鎖を正確に制約すること、エントロピーの損失が標的結合の際に最小であるように、骨格の二面角を制約すること、および同一の理由のために分子中に追加の環化を導入することによって、ペプチドに追加的な制約を組み込むこと。
(総説のため、Gentilucci et al, Curr. Pharmaceutical Design, (2010), 16, 3185-203、およびNestor et al, Curr. Medicinal Chem (2009), 16, 4399-418を参照のこと)。
【0099】
本発明は、本発明のすべての薬学的に許容される(放射性)同位体標識化合物、すなわち、式(II)の化合物(式中、1つまたは複数の原子が、同じ原子番号を有する原子によって置き換えられているが、原子質量または質量数が、自然に通常みられる原子質量または質量数とは異なる)、および式(II)の化合物(式中、関連の(放射性)同位体を保持できる金属キレート基が結合される(「エフェクター」と命名))、および式(I)の化合物(式中、ある特定の官能基が、関連の(放射性)同位体または同位体で標識された官能基で共有結合的に置き換えられている)を含む。
【0100】
本発明の化合物中に含むのに適切な同位体の例は、水素の同位体、例えば、H(D)およびH(T)、炭素の同位体、例えば、11C、13Cおよび14C、塩素の同位体、例えば、36Cl、フッ素の同位体、例えば、18F、ヨウ素の同位体、例えば、123I、125Iおよび131I、窒素の同位体、例えば、13Nおよび15N、酸素の同位体、例えば、15O、17Oおよび18O、リンの同位体、例えば、32P、イオウの同位体、例えば、35S、銅の同位体、例えば、64Cu、ガリウムの同位体、例えば、67Gaまたは68Ga、イットリウムの同位体、例えば、90Y、およびルテチウムの同位体、例えば、177Lu、およびビスマスの同位体、例えば、213Biを含む。
【0101】
ある特定の同位体により標識された式(II)の化合物、例えば、放射活性同位体を組み込む化合物は、薬物および/または基質の組織分布研究で有用であり、ならびに腫瘍および他の場所などの疾患組織上のMT1-MMP標的の存在および/または非存在を臨床的に評価するために有用である。式(II)の化合物はさらに、標識された化合物および他の分子、ペプチド、タンパク質、酵素または受容体の間の複合体の形成を検出または特定するために使用され得る有用な診断特性をさらに有し得る。検出または特定する方法では、放射性同位体、酵素、蛍光物質、発光性物質などの標識剤で標識される化合物を使用し得る(例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、エクオリンおよびルシフェラーゼ)などで標識される化合物を使用することができる。放射活性同位体トリチウム、すなわち、H(T)、および炭素-14、すなわち、14Cは、組み込みの容易さ、およびすぐ検出できる手段であるという観点で、この目的に特に有用である。
【0102】
重水素、すなわち、H(D)のようなより重い同位体による置換によって、より大きい代謝安定性から生じるある特定の治療利点、例えば、インビボ半減期の延長、または投薬必要性の低減が生じ得、したがって、ある状況では好ましい場合がある。
【0103】
ポジトロン放出同位体、例えば、11C、18F、15Oおよび13Nなどによる置換は、標的占有率を検査するために、ポジトロン放出断層撮影(PET)研究で有用であり得る。
【0104】
64Cu、67Ga、68Ga、および177Luなどの、金属キレートエフェクター基への同位体の組み込みは、PETまたはSPECT画像化を用いる腫瘍特異的抗原を可視化するために有用であり得る。
【0105】
これらに限定されないが、90Y、177Lu、および213Biなどの金属キレートエフェクター基への同位体の組み込みは、標的放射線治療の選択肢であり得、それによって式(II)の金属-キレーター保有化合物は、標的タンパク質および作用部位に対する治療用の放射性核種を有する。
【0106】
式(II)の同位体標識化合物は、一般には、当業者に公知の従来技術によって、または以前に用いられた非標識試薬の代わりに適当な同位体標識の試薬を使用して、添付の実施例に記載のプロセスと同様のプロセスによって調製されてもよい。
【0107】
本明細書の文脈における特異性は、標的と類似の実体を除外したその同族標的と結合するか、さもなければ相互作用するリガンドの能力を指す。例えば、特異性は、ヒト酵素の相互作用を阻害するが、異なる種由来の相同酵素の相互作用を阻害しないリガンドの能力を指すことができる。本明細書に記載されているアプローチを使用して、意図される標的のホモログまたはパラログとリガンドがより相互作用できるようにまたはできなくなるように、特異性が増加または減少するようモジュレートすることができる。特異性は、活性、親和性またはアビディティーと同義であるとは企図されておらず、その標的におけるリガンドの作用の効力(例えば、結合親和性または阻害のレベルなど)は、必ずしもその特異性に関係しない。
【0108】
本明細書で使用される結合活性は、例えば、本明細書に記載される結合アッセイから得られる定量的結合測定値を指す。したがって、結合活性は、所与の標的濃度で結合しているペプチドリガンドの量を指す。
【0109】
多重特異性は、2種以上の標的に結合する能力である。典型的には、結合ペプチドは、そのコンフォメーション特性により、抗体の場合はエピトープなど、単一の標的と結合することができる。しかし、2種以上の標的に結合することができるペプチド、例えば、上記のように当技術分野において公知の通り、二重特異的抗体を開発することができる。本発明において、ペプチドリガンドは、2種以上の標的に結合することができ、したがって多重特異的である。適切には、これらは、2種の標的に結合し、二重特異的である。結合は、独立であってよく、これは、ペプチドにおける標的に対する結合部位が、標的の一方または他方の結合により構造的に妨げられないことを意味する。この場合、両方の標的に対し、独立に結合が生じ得る。より一般的には、一方の標的の結合が、他方の結合を少なくとも部分的に妨害するであろうと予想される。
【0110】
二重特異的リガンドと2つの関連の標的を包含する特異性を有するリガンドとの間に基本的な相違が存在する。第1の事例では、リガンドは両方の標的について個々に特異的であり、それぞれと特異的な様式で相互作用する。例えば、リガンド中の第1のループは、第1の標的に結合する場合があり、第2のループは第2の標的に結合する場合がある。第2の事例では、リガンドは非特異的であり、これは、リガンドが、例えば、両方に共通の標的のエピトープと相互作用することによって、2つの標的間を区別しないためである。
【0111】
本発明の文脈では、例えば、標的およびオルソログについて活性を有するリガンドは、二重特異性リガンドであり得ることが可能である。しかし、一実施形態では、リガンドは二重特異性ではなく、正確性の低い特異性を有し、その結果、リガンドは、標的と1つまたは複数のオルソログの両方に結合する。一般的に、標的とそのオルソログの両方に対して選択されていないリガンドは、二重特異性に向かう選択的圧力がないせいで、二重特異性である可能性が低い。二環性ペプチドのループ長は、関連の少ないホモログに対する高い選択性を維持したままで、良好な標的およびオルソログの交差反応性が得られるように適合された結合表面を提供する上で、決定的であり得る。
【0112】
このリガンドが真に二重特異性である場合、一実施形態では、リガンドの標的特異性のうちの少なくとも1つは、選択されるリガンドついて一般的であり、その特異性のレベルは、本明細書に開示される方法によってモジュレートすることができる。第2のまたはさらなる特異性は共有される必要はなく、本明細書に示される手順の対象となる必要もない。
【0113】
分子足場とは、複数の点でペプチドと接続して、ペプチドに1つまたは複数の構造的特長を与えることができる、任意の分子である。好ましくは、分子足場は、足場反応基と称されるペプチドの結合点を少なくとも3つ含む。これらの基は、ペプチド上のDapまたはN-AlkDapまたはシステイン(存在する場合)残基と反応して、安定した、共有結合によるアルキルアミノおよびチオエーテル連結を形成することができる。分子足場の好ましい構造を以下に記載する。
【0114】
したがって、本発明の化合物は、分子足場に共有結合により結合したペプチドを含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる。本明細書における用語「足場」または「分子足場」は、本発明の化合物のアルキルアミノ連結およびチオエーテル連結(第3の残基がシステインである場合)でペプチドに結合する化学的部分を指す。本明細書における用語「足場分子」または「分子足場分子」は、アルキルアミノ結合、およびある特定の実施形態ではまた、チオエーテル結合を有する本発明の誘導体を形成するペプチドまたはペプチドリガンドと反応することができる分子を指す。したがって、足場分子は、分子のそれぞれの反応性基(例えば、脱離基)が、足場部分のペプチドに結合したアルキルアミノ結合およびチオエーテル結合によって置き換えられていることを除いて、足場部分と同じ構造を有する。
【0115】
分子足場分子とは、複数の点でペプチドと接続して、ペプチドに対するチオエーテル結合およびアルキルアミノ結合を形成することができる任意の分子である。分子足場は、通常、2つのペプチドに連結しないという点において、架橋剤ではなく、代わりに、単一のペプチドに対して2つ以上の結合点をもたらす。分子足場分子は、足場反応性基と称される、ペプチドに対する少なくとも3つの結合点を含む。これらの基は、ペプチド上の-SH基およびアミノ基と反応してチオエーテル連結およびアルキルアミノ連結を形成することができる。したがって、分子足場は、本発明のコンジュゲートにおけるチオエーテル連結およびアルキルアミノ連結までの足場部分を表すが、本発明のコンジュゲートにおけるチオエーテル連結およびアルキルアミノ連結は含まない。足場分子は足場の構造を有するが、本発明のコンジュゲートにおけるチオエーテル結合およびアルキルアミノ結合の位置に反応性基を有さない。
【0116】
適切には、足場は、(ヘテロ)芳香族部分または(ヘテロ)脂環式部分を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。
【0117】
本明細書で使用する場合、「(ヘテロ)アリール」は、芳香族環、例えば、4から12員を有する芳香環、例えば、フェニル環を含むことを意図する。これらの芳香環、例えば、チエニル環、ピリジル環、およびフラニル環は、任意選択で、1つまたは複数のヘテロ原子(例えば、1つまたは複数のN、O、S、およびP)を含有することができる。芳香環は、任意選択で、置換され得る。「(ヘテロ)アリール」はまた、1つまたは複数の他のアリール環または非アリール環が縮合した芳香環を含むことを意味する。例えば、ナフチル基、インドール基、チエノチエニル基、ジチエノチエニル、および5,6,7,8-テトラヒドロ-2-ナフチル基(そのそれぞれは、任意選択で、置換されてもよい)は、本出願の目的のためのアリール基である。上記で示したように、アリール環は、任意選択で置換されてもよい。適切な置換基として、アルキル基(任意選択で、置換されてもよい)、他のアリール基(それ自身が置換されていてもよい)、複素環(飽和または不飽和)、アルコキシ基(アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基)を含むことを意味する)、水酸基、アルデヒド基、ニトロ基、アミン基(例えば、無置換、またはアリール基もしくはアルキル基で一置換もしくは二置換された)、カルボン酸基、カルボン酸誘導体(例えば、カルボン酸エステル、アミドなど)、ハロゲン原子(例えば、Cl、Br、およびI)などが挙げられる。
【0118】
本明細書で使用する場合、「(ヘテロ)脂環式」は、同素環または複素環の飽和環を指す。環は、置換されていなくてもよく、または1つまたは複数の置換基で置換されていてもよい。置換基は、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であってもよく、適切な置換基の例として、アルキル基およびアリール基に関する置換基に関連する議論において上記したものが挙げられる。さらに、2つ以上の環置換基を組み合わさって別の環を形成することがあり、その結果、本明細書で使用する場合、「環」は、縮合環系を含むことを意味する。
【0119】
適切には、足場は、トリス置換(ヘテロ)芳香族または(ヘテロ)脂環式部分、例えば、トリスメチレン置換(ヘテロ)芳香族または(ヘテロ)脂環式部分を含む。(ヘテロ)芳香族または(ヘテロ)脂環式部分は、適切には、6員環構造、好ましくは、足場が3回対称軸を有するトリス置換である。
【0120】
実施形態では、足場は、トリス-メチレン(ヘテロ)アリール部分、例えば、1,3,5-トリスメチレンベンゼン部分である。これらの実施形態では、対応する足場分子は、適切には、メチレン炭素上に脱離基を有する。次いで、メチレン基は、本明細書で定義されるアルキルアミノ連結のR部分を形成する。これらのメチレン置換(ヘテロ)芳香族化合物では、芳香環の電子が、求核置換の間の遷移状態を安定化させることができる。したがって、例えば、ハロゲン化ベンジルは、(ヘテロ)芳香族基に接続していないハロゲン化アルキルよりも求核置換に対して100~1000倍反応性である。
【0121】
これらの実施形態では、足場および足場分子は、一般式:
【化4】
(式中、LGは、足場分子について、以下にさらに説明される脱離基を表すか、またはLG(アルキルアミノ基のR部分を形成する隣接するメチレン基を含む)は、本発明のコンジュゲートにおけるペプチドに対するアルキルアミノ連結を表す)
を有する。
【0122】
実施形態では、上記の基LGは、これらに限定されないが、足場分子が1,3,5-トリス(ブロモメチル)ベンゼン(TBMB)である場合の臭素原子などのハロゲンであってもよい。別の適切な分子足場分子は、2,4,6-トリス(ブロモメチル)メシチレンである。これは、1,3,5-トリス(ブロモメチル)ベンゼンと同様であるが、ベンゼン環に結合したさらに3つのメチル基を含有する。この足場の場合には、さらなるメチル基はペプチドとのさらなる接触を形成することができ、それゆえ、さらなる構造上の制約を付加する。したがって、1,3,5-トリス(ブロモメチル)ベンゼンに関するよりも異なる多様性範囲が実現される。
【0123】
求核置換によってペプチドと反応するための足場を形成するための別の好ましい分子は、1,3,5-トリス(ブロモアセトアミド)ベンゼン(TBAB):
【化5】
である。
【0124】
他の実施形態では、分子足場は、コードペプチドの4つの官能基の分子足場との反応により2つ以下の生成物異性体しか生じないように四面体幾何構造を有してもよい。他の幾何構造も可能であり、実際に、ほぼ無限の数の足場の幾何構造が可能であり、ペプチドリガンド多様化に対するより大きな可能性をもたらす。
【0125】
本発明のリガンドを形成するために使用されるペプチドは、足場へのアルキルアミノ連結を形成するためのDapまたはN-AlkDapまたはN-HAlkDap残基を含む。ジアミノプロピオン酸の構造は、NHによってシステインの末端-SH基が置き換えられた、先行技術において足場へのチオエーテル結合を形成するために使用されたシステインのアナログであり、等配電子体である。
【化6】
【0126】
用語「アルキルアミノ」は、2つの炭素原子に結合したNHまたはN(R)(炭素原子は、独立して、アルキル、アルキレン、またはアリール炭素原子から選択され、Rはアルキル基である)からなる連結を示す通常の化学的意味で、本明細書において使用される。適切には、本発明のアルキルアミノ連結は、2つの飽和炭素原子、最も適切には、メチレン(-CH-)炭素原子に結合したNH部分を含む。本発明のアルキルアミノ連結は、一般式
S-R-N(R)-R-P
(式中、
Sは、足場コア、例えば、以下でさらに説明される(ヘテロ)芳香族または(ヘテロ)脂環式環を表し、
は、C1からC3アルキレン基、適切にはメチレン基またはエチレン基、最も適切にはメチレン(CH)であり、
は、DapまたはN-AlkDap側鎖のメチレン基であり、
は、分枝状アルキルおよびシクロアルキル、例えばメチル、またはHを含むC1~4アルキルであり、
Pは、ペプチド主鎖を表し、すなわち、上記連結のR部分は、DapまたはN-AlkDap残基のカルボン酸炭素に隣接するペプチド主鎖の炭素原子に連結している)
を有する。
【0127】
式(II)のある特定の二環性ペプチドは、いくつかの有利な特性を有しており、これによって、注射、吸入、経鼻、眼、口腔または局所投与について適切な薬物様の分子とみなすことができる。このような有利な特性として、以下のものが挙げられる。
- 種交差反応性。これは、前臨床の薬力学および薬物動態学的評価のための典型的な要件である。
- プロテアーゼ安定性。二環性ペプチドリガンドは、理想的には、血漿プロテアーゼ、上皮(「膜アンカー型(membrane-anchored)」)プロテアーゼ、胃および腸のプロテアーゼ、肺表面プロテアーゼ、細胞内プロテアーゼなどに対する安定性を実証するはずである。プロテアーゼ安定性は、二環リード候補が動物モデルで開発可能であり、ヒトに信頼性をもって投与可能であるように、異なる種の間で維持されるはずである。
- 望ましい溶解度プロファイル。これは、製剤化および吸収の目的に重要である、荷電および親水性対疎水性残基の割合ならびに分子内/分子間のH結合の関数である。
- 循環中の最適血漿半減期。臨床指標および処置レジメンに応じて、急性疾患管理の設定では、短期間曝露用の二環性ペプチドを開発する必要がある場合があり、または循環中には保持が増強される二環性ペプチドを開発する必要がある場合があり、したがって、より慢性の疾患状態の管理に最適である。望ましい血漿半減期を後押しする他の要因は、最大の治療効率のための持続性曝露の必要性と、薬剤の持続性曝露に起因する、付随する毒性との兼ね合いである。
【0128】
塩形態は、本発明の範囲内であることが認識され、式(II)の二環性ペプチド化合物に対する言及は前記化合物の塩形態を含む。
【0129】
本発明の塩は、Pharmaceutical Salts: Properties, Selection,and Use, P. Heinrich Stahl (Editor), Camille G. Wermuth (Editor), ISBN: 3-90639-026-8, Hardcover, 388 pages, August 2002に記載の方法などの従来の化学的方法によって、塩基性または酸性の部分を含有する親化合物から合成することができる。一般的には、このような塩は、これらの化合物の遊離の酸または塩基形態と適当な塩基または酸とを水中でもしくは有機溶媒中で、または2つの混合物中で反応させることによって調製することができる。
【0130】
酸付加塩(一塩または二塩)は、無機および有機の両方の多種多様な酸と形成されてもよい。酸付加塩の例としては、酢酸、2,2-ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸(例えば、L-アスコルビン酸)、L-アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4-アセトアミド安息香酸、ブタン酸、(+)ショウノウ酸、ショウノウ-スルホン酸、(+)-(1S)-ショウノウ-10-スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、ケイ皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチシン酸、グルコヘプトン酸、D-グルコン酸、グルクロン酸(例えば、D-グルクロン酸)、グルタミン酸(例えば、L-グルタミン酸)、α-オキソグルタル酸、グリコール酸、馬尿酸、ハロゲン化水素酸(例えば、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸)、イセチオン酸、乳酸(例えば、(+)-L-乳酸および(±)-DL-乳酸)、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸、(-)-L-リンゴ酸、マロン酸、(±)-DL-マンデル酸、メタンスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、オロチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、リン酸、プロピオン酸、ピルビン酸、L-ピログルタミン酸、サリチル酸、4-アミノ-サリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、タンニン酸、(+)-L-酒石酸、チオシアン酸、p-トルエンスルホン酸、ウンデシレン酸および吉草酸からなる群から選択される酸、ならびにアシル化アミノ酸および陽イオン交換樹脂を用いて形成された一塩または二塩が挙げられる。
【0131】
塩の1つの特定のグループは、酢酸、塩酸、ヨウ化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、マレイン酸、リンゴ酸、イセチオン酸、フマル酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、硫酸、メタンスルホン酸(メシレート)、エタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、吉草酸、プロパン酸、ブタン酸、マロン酸、グルクロン酸およびラクトビオン酸から形成された塩からなる。1つの特定の塩は、塩酸塩である。別の特定の塩は、酢酸塩である。
【0132】
化合物が陰イオン性であるか、または陰イオン性であり得る(例えば、-COOHは-COOであってもよい)官能基を有する場合、塩が、有機塩基または無機塩基との間で形成されて、適切な陽イオンを生じ得る。適切な無機陽イオンの例としては、これらに限定されないが、アルカリ金属イオン、例えば、Li、NaおよびK、アルカリ土類金属陽イオン、例えば、Ca2+およびMg2+、ならびに他の陽イオン、例えば、Al3+またはZnが挙げられる。適切な有機陽イオンの例としては、これらに限定されないが、アンモニウムイオン(すなわち、NH )および置換されているアンモニウムイオン(例えば、NH、NH 、NHR 、NR )が挙げられる。いくつかの適切な置換されたアンモニウムイオンの例は、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、プロピルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン、ベンジルアミン、フェニルベンジルアミン、コリン、メグルミン、およびトロメタミン、ならびにアミノ酸、例えば、リシンおよびアルギニンに由来するイオンである。一般的な第四級アンモニウムイオンの例は、N(CH である。
【0133】
式(II)の化合物がアミン機能を含有する場合、これらは、例えば、当業者に周知の方法に従って、アルキル化剤との反応によって第四級アンモニウム塩を形成し得る。このような第四級アンモニウム化合物は、式(II)の範囲内である。
【0134】
いくつかのコンジュゲートペプチドは、本発明に従って、同一の分子に一緒に組み込まれてもよい。例えば、同一の特異性の2つのこのようなペプチドコンジュゲートは、分子足場を介して一緒に連結され、その標的に対する誘導体のアビディティーを増加させることができる。あるいは、別の実施形態では、複数のペプチドコンジュゲートを組み合わせて多量体を形成する。例えば、2つの異なるペプチドコンジュゲートを組み合わせて多重特異的分子を作出する。あるいは、同一であっても異なっていてもよい3つ以上のペプチドコンジュゲートを組み合わせて多重特異的誘導体を形成することができる。一実施形態では、多価複合体は、同一であっても異なっていてもよい分子足場を一緒に連結させることによって構築されてもよい。
【0135】
さらなる態様では、本発明は、本発明によるペプチドリガンドを作製する方法であって、本発明によるペプチドと分子足場とを準備することと、ペプチドと分子足場の間にチオエーテル連結(第3の残基がシステインである場合)とアルキルアミノ連結とを形成することとを含む方法を提供する。
【0136】
分子足場およびペプチドの詳細は、適切には、本発明の第1の態様に関連して上述されている。
【0137】
本発明の方法において使用するためのペプチドは、アミノ酸出発材料から、従来の固相合成を使用して作製することができ、本明細書に記載した適当な保護基を含んでもよい。ペプチドを作製するこれらの方法は、当技術分野で周知である。
【0138】
適切には、ペプチドは、アルキルアミノ連結を形成することを意図した、-SH基およびアミン基以外の求核基に保護基を有する。アミノ酸側鎖の求核性はいくつかの研究の対象とされ、降順で、システインにおけるチオレート、リシンにおけるアミン、ヒスチジンおよびトリプトファンにおける第二級アミン、アルギニンにおけるグアニジノアミン、セリン/トレオニンにおけるヒドロキシル、ならびに最後にアスパラギン酸およびグルタミン酸におけるカルボキシレートが列挙されている。したがって、一部の場合では、これらの基に関する望ましくない副反応を防ぐために、ペプチド上のより求核性の基に保護基を適用する必要がある場合がある。
【0139】
実施形態では、本発明の方法は、アルキルアミノ連結を形成することを意図したアミン基以外の求核基における保護基とアルキルアミノ連結を形成することを意図したアミン基における第2の保護基とを有するペプチドを合成することであって、アルキルアミノ連結を形成することを意図したアミン基における保護基を、他の求核基における保護基とは異なる条件下で除去することができることと、続いて、他の求核基を脱保護することなく、アルキルアミノ連結を形成することを意図したアミン基を脱保護するために選択される条件下で、ペプチドを処理することとを含む。次に足場部分へのカップリング反応を行い、その後、残りの保護基を除去してペプチドコンジュゲートを得る。
【0140】
適切には、本発明の方法は、求核置換反応において、反応性側鎖-SH基およびアミン基を有するペプチドを、3つ以上の脱離基を有する足場分子と反応させることを含む。
【0141】
本明細書において、用語「脱離基」は、アミン基による求核置換を可能とする部分を意味する通常の化学的意味において使用される。ここで、任意のこのような脱離基は、アミンによる求核置換によって容易に除去されることを条件として、使用することができる。適切な脱離基は、約5未満のpKaを有する酸のコンジュゲート塩基である。本発明において有用な脱離基の非限定例として、ハロ、例えば、ブロモ、クロロ、ヨード、O-トシレート(OTos)、O-メシレート(OMes)、O-トリフレート(OTf)またはO-トリメチルシリル(OTMS)が挙げられる。
【0142】
求核置換反応は、例えば、脱離基が従来の陰イオン性脱離基である場合、塩基の存在下で実施され得る。本発明者らは、環化ペプチドリガンドの収率が、求核置換反応のための溶媒および塩基(およびpH)の適切な選択によって非常に増加する可能性があり、さらに、好ましい溶媒および塩基は、チオエーテル連結の形成にのみ関与する先行技術の溶媒および塩基の組合せと異なることを見出した。特に、本発明者らは、トリアルキルアミン塩基、すなわち、式NRの塩基(式中、R、RおよびRは、独立して、C1~C5アルキル基、適切にはC2~C4アルキル基、特にC2~C3アルキル基である)を使用する場合に収率の改善が達成されることを見出した。特に、適切な塩基は、トリエチルアミンおよびジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)である。これらの塩基は、ほんのわずかに求核性であるという特性を有し、この特性が、これらの塩基について観察される副反応の少なさと高い収率を説明すると考えられる。本発明者らは、求核置換反応について好ましい溶媒が、極性のプロトン性溶媒、特に体積比1:10から10:1、適切には2:10から10:2、より適切には3:10から10:3、特に4:10から10:4のMeCNとHOを含有するMeCN/HOであることをさらに見出した。
【0143】
さらなる結合または機能活性は、分子足場に共有結合による連結したペプチドのN末端またはC末端に結合されてもよい。官能基は、例えば、インビボでペプチドリガンドの半減期を延長する分子に結合することができる基、およびインビボでペプチドリガンドの半減期を延長する分子からなる群から選択される。このような分子は、例えば、HSAまたは細胞マトリックスタンパク質であってもよく、インビボでペプチドリガンドの半減期を延長する分子に結合することができる基は、HSAまたは細胞マトリックスタンパク質に特異的な抗体または抗体断片である。このような分子はまた、高分子量PEGとのコンジュゲートであってもよい。
【0144】
一実施形態では、官能基は、分子足場に共有結合により連結したペプチドを含む第2のペプチドリガンドからなる群から選択される結合分子、および抗体または抗体断片である。2、3、4、5またはそれより多いペプチドリガンドは一緒に接合することができる。任意の2つ以上のこれらの誘導体の特異性は同一であっても異なっていてもよく、これらが同一である場合、多価結合構造が形成されることになり、一価の結合分子と比較して、標的に対するアビディティーが増加した。さらに、分子足場は、同一であっても異なっていてもよく、同一または異なる数のループを結んでもよい。
【0145】
官能基は、さらに、エフェクター基、例えば、抗体のFc領域であってもよい。
【0146】
N末端またはC末端への結合は、ペプチドの分子足場への結合の前になされてもよく、または後になされてもよい。したがって、N末端またはC末端ペプチド基が既に存在するペプチドが生成されてもよい(合成により、または生物学的に派生させた発現系により)。しかし、好ましくは、N末端またはC末端への付加は、ペプチドが分子骨格と組み合わされてコンジュゲートを形成した後に起こる。例えば、フルオレニルメチルオキシカルボニルクロリドを使用して、ペプチドのN末端にFmoc保護基を導入することができる。Fmocは、親和性の高いHSAを含む血清アルブミンに結合し、Fmoc-TrpまたはFmoc-Lysは、親和性が増加したものに結合する。ペプチドは、残されたFmoc保護基と合成され、次いで、アルキルアミノを介して足場にカップリングされ得る。選択肢は、HSAにも結合し、例えば、リラグルチドにおいて使用され、このGLP-1アナログの半減期を延長するパルミトイル部分である。
【0147】
あるいは、ペプチドの足場とのコンジュゲートが作製され、次いで、N末端において、例えば、アミンおよびスルフヒドリル反応性リンカーN-e-マレイミドカプロイルオキシスクシンイミドエステル(EMCS)で修飾され得る。このリンカーを介して、ペプチドコンジュゲートは、他のペプチド、例えば、抗体Fc断片に連結され得る。
【0148】
結合機能は、多量体を作出する分子足場に結合した別のペプチド、抗体もしくは抗体断片を含む別の結合タンパク質、または血清アルブミンもしくはエフェクター基、例えば、抗体Fc領域を含む任意の他の所望の実体であってもよい。
【0149】
さらなる結合または機能活性が、さらに、分子足場に直接結合され得る。
【0150】
実施形態では、足場は、さらなる活性が結合され得る反応性基をさらに含んでもよい。好ましくは、この基は、ペプチドとの相互作用を避けるために、分子足場上の他の反応性基に対して直交型である。一実施形態では、反応性基は、さらなる活性にコンジュゲートするのに必要な場合、保護されても脱保護されてもよい。
【0151】
したがって、本発明のさらなる態様では、1つまたは複数のエフェクター基および/または官能基にコンジュゲートした、本明細書で定義されるペプチドリガンドを含む薬物コンジュゲートが提供される。
【0152】
エフェクター基および/または官能基は、例えば、ポリペプチドのN末端もしくはC末端、または分子足場に結合することができる。
【0153】
適当なエフェクター基として、抗体およびその一部または断片が挙げられる。例えば、エフェクター基は、1つまたは複数の定常領域ドメインに加えて、抗体軽鎖定常領域(CL)、抗体CH1重鎖ドメイン、抗体CH2重鎖ドメイン、抗体CH3重鎖ドメイン、またはこれらの任意の組合せを含むことができる。エフェクター基はまた、抗体のヒンジ領域(このような領域は、通常、IgG分子のCH1ドメインとCH2ドメインの間にみられる)を含んでもよい。
【0154】
本発明のこの態様のさらなる実施形態では、本発明によるエフェクター基は、IgG分子のFc領域である。有利には、本発明によるペプチドリガンド-エフェクター基は、1日間以上、2日間以上、3日間以上、4日間以上、5日間以上、6日間以上または7日間以上のtβ半減期を有するペプチドリガンドFc融合を含むかまたはそれからなる。最も有利には、本発明によるペプチドリガンドは、1日間以上のtβ半減期を有するペプチドリガンドFc融合を含むかまたはそれからなる。
【0155】
官能基として、一般的に、結合基、薬物、他の実体の結合のための反応性基、大環状ペプチドの細胞内への取り込みを助ける官能基などが挙げられる。
【0156】
細胞内へと浸透するペプチドの能力は、細胞内標的に対するペプチドを有効なものとする。細胞内へと浸透する能力を有するペプチドによりアクセスされ得る標的は、転写因子、チロシンキナーゼなどの細胞内シグナル伝達分子およびアポトーシス経路に関与する分子を含む。細胞の浸透を可能にする官能基は、ペプチドまたは分子足場のいずれかに付加されたペプチドまたは化学基を含む。ペプチド、例えば、VP22、HIV-Tat、ショウジョウバエ(Drosophila)のホメオボックスタンパク質(アンテナペディア)などに由来するペプチドは、例えば、Chen and Harrison, Biochemical Society Transactions (2007) Volume 35, Part 4, p821;Gupta et al. in Advanced Drug Discovery Reviews (2004) Volume 57 9637に記載されている。原形質膜を通した転位置において効率的であることが示された短いペプチドの例として、ショウジョウバエアンテナペディアタンパク質由来の16アミノ酸ペネトラチン(penetratin)ペプチド(Derossi et al (1994) J Biol. Chem. Volume 269 p10444)、18アミノ酸「モデル両親媒性ペプチド」(Oehlke et al (1998) Biochim Biophys Acts Volume 1414 p127)およびHIV TATタンパク質のアルギニンリッチ領域が挙げられる。非ペプチド性アプローチは、生体分子に容易に付着することができる小分子模倣物またはSMOCの使用を含む(Okuyama et al (2007) Nature Methods Volume 4 p153)。分子にグアニジウム基を付加する他の化学的戦略も、細胞浸透を増強させる(Elson-Scwab et al (2007) J Biol Chem Volume 282 p13585)。ステロイド等、低分子量の分子を分子足場に付加して、細胞内への取り込みを増強させてもよい。
【0157】
ペプチドリガンドに結合することができる官能基の1つのクラスは、抗体およびFab、Fvまたはシングルドメイン断片などの、その結合断片を含む。特に、インビボにおけるペプチドリガンドの半減期を増加させることができるタンパク質に結合する抗体を使用してもよい。
【0158】
多くの細胞上に存在するインテグリンに結合するRGDペプチドを組み込んでもよい。
【0159】
一実施形態では、本発明によるペプチドリガンド-エフェクター基は、12時間以上、24時間以上、2日間以上、3日間以上、4日間以上、5日間以上、6日間以上、7日間以上、8日間以上、9日間以上、10日間以上、11日間以上、12日間以上、13日間以上、14日間以上、15日間以上または20日間以上からなる群から選択されるtβ半減期を有する。有利には、本発明によるペプチドリガンド-エフェクター基または組成物は、12から60時間の範囲内のtβ半減期を有することとなる。さらなる実施形態では、これは、1日間以上のtβ半減期を有することとなる。さらなる実施形態ではまた、これは、12から26時間の範囲内となる。
【0160】
本発明の特定の一実施形態では、ループ状ペプチドにコンジュゲートした官能基は、医薬関連の複合金属放射性同位体に適切な金属キレーターから選択される。このようなエフェクターは、前記放射性同位体と複合された場合、がん療法に有用な薬剤であり得る。適切な例としては、DOTA、NOTA、EDTA、DTPA、HEHA、SarArなどが挙げられる(Targeted Radionuclide therapy, Tod Speer, Wolters/Kluver Lippincott Williams & Wilkins, 2011)。
【0161】
可能なエフェクター基としてはまた、酵素、例えば、酵素/プロドラッグ療法での使用のためのカルボキシペプチダーゼG2などが挙げられ、ここで、このペプチドリガンドは、ADEPTにおいては抗体を置き換えられている。
【0162】
本発明のこの態様の特定の一実施形態では、官能基は、がん療法の細胞毒性剤のような薬物から選択される。適切な例としては、シスプラチンおよびカルボプラチンなどのアルキル化剤、ならびにオキサリプラチン、メクロレタミン、シクロホスファミド、クロラムブシル、イホスファミド;プリンアナログ アザチオプリンおよびメルカプトプリンを含む抗代謝剤またはピリミジンアナログ;ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビンおよびビンデシンなどのビンカアルカロイドを含む植物アルカロイドおよびテルペノイド;ポドフィロトキシンおよびその誘導体エトポシドおよびテニポシド;元々はタキソールとして知られた、パクリタキセルを含むタキサン;カンプトテシンを含むトポイソメラーゼ阻害剤;イリノテカンおよびトポテカン、ならびにアムサクリン、エトポシド、エトポシドホスフェート、およびテニポシドを含むII型阻害剤が挙げられる。さらなる薬剤は、免疫抑制薬ダクチノマイシン(腎臓移植において使用される)、ドキソルビシン、エピルビシン、ブレオマイシンなどを含む抗腫瘍抗生物質を含むことができる。
【0163】
この態様による本発明のさらに特定の一実施形態では、細胞毒性剤はDM1またはMMAEから選択される。
【0164】
DM1は、メイタンシンのチオール含有誘導体であり、以下の構造:
【化7】
を有する細胞毒性剤である。
【0165】
モノメチルオーリスタチンE(MMAE)は、合成の抗新生物薬であり、以下の構造:
【化8】
を有する。
【0166】
一実施形態では、細胞毒性剤は、ジスルフィド結合などの切断可能な結合によって二環性ペプチドに連結している。さらなる実施形態では、ジスルフィド結合に隣接する基は、ジスルフィド結合の妨害を制御するために、そしてこれによって切断の速度および細胞毒性剤の同時の放出を制御するために修飾される。
【0167】
公開された研究によって、ジスルフィド結合のいずれかの側に対して立体障害を導入することによって、還元に対するジスルフィド結合の感受性を改変する能力が確立された(Kellogg et al(2011) Bioconjugate Chemistry, 22, 717)。立体障害の程度が大きいほど、細胞内グルタチオンおよびまた細胞外(全身性)還元剤による還元の速度は低下し、結果として、毒素が、細胞の内側および外側の両方で放出されにくくなる。したがって、循環中のジスルフィド安定性(毒素の望ましくない副作用を最小限にする)、対、細胞内環境における効率的な放出(治療効果を最大にする)における最適条件の選択は、ジスルフィド結合のいずれかの側における障害の程度を注意深く選択することによって達成され得る。
【0168】
ジスルフィド結合のいずれかの側にある障害は、分子構築物の標的化実体(ここでは、二環性ペプチド)または毒素側のいずれかに対して1つまたは複数のメチル基を導入することによりモジュレートされる。
【0169】
したがって、一実施形態では、細胞毒性剤は、式:
【化9】
(式中、nは、1から10から選択される整数を表し、
およびRは、独立して、水素またはメチル基を表す)
の化合物から選択される。
【0170】
上記式の化合物の一実施形態では、nは、1を表し、RおよびRは両方、水素を表す(すなわち、メイタンシン誘導体DM1)。
【0171】
上記式の化合物の代替の実施形態では、nは、2を表し、Rは、水素を表し、Rは、メチル基を表す(すなわち、メイタンシン誘導体DM3)。
【0172】
化合物の一実施形態では、nは、2を表し、RおよびRは両方、メチル基を表す(すなわち、メイタンシン誘導体DM4)。
【0173】
細胞毒性剤は、ジスルフィド結合を形成することができ、二環性ペプチドとのコンジュゲート構造では、チオール毒素とチオール二環性ペプチドの間のジスルフィド接続性は、いくつかの可能な合成スキームを介して導入されることが認識される。
【0174】
一実施形態では、コンジュゲートの二環性ペプチド構成要素は、以下の構造:
【化10】
(式中、mは、0から10から選択される整数を表し、
二環は、本明細書に記載される任意の適切なループ状ペプチド構造を表し、
およびRは、独立して、水素またはメチルを表す)
を有する。
【0175】
およびRが両方とも水素である、上記式の化合物を、障害を受けていないとみなし、RおよびRの一方または両方がメチルを表す上記式の化合物を障害を受けているとみなす。
【0176】
上記式の二環性ペプチドがジスルフィド結合を形成することができ、上記の細胞毒性剤とのコンジュゲート構造において、チオール毒素とチオール二環性ペプチドの間のジスルフィド接続性は、いくつかの可能な合成スキームを通じて導入されることが認識されることとなる。
【0177】
一実施形態では、細胞毒性剤は、以下のリンカー:
【化11】
(式中、R、R、RおよびRは、水素またはC1~C6のアルキル基を表し、
毒素は、本明細書で定義される任意の適切な細胞毒性剤を指し、
二環は、本明細書に記載される任意の適切なループ状ペプチド構造を表し、
nは、1から10から選択される整数を表し、
mは、0から10から選択される整数を表す)
によって、二環性ペプチドに連結される。
【0178】
、R、RおよびRが各々水素である場合、ジスルフィド結合は、障害が最小であって、還元に対して最も感受性である。R、R、RおよびRが各々アルキルである場合、ジスルフィド結合は、障害が最大であって、還元に対する感受性が最小である。水素およびアルキルの部分的置換によって、還元、ならびにそれにともなう切断および毒素の放出に対する耐性の段階的な増大が生じる。好ましい実施形態は、R、R、RおよびRがすべてH;R、R、RがすべてHおよびR=メチル;R、R=メチルおよびR、R=H;R、R=メチルおよびR、R=H;およびR、R=H、R、R=C1~C6アルキルを含む。
【0179】
一実施形態では、化合物の毒素はメイタンシンであり、コンジュゲートは以下の式の化合物:
【化12】
(式中、R、R、RおよびRは、上記で定義された通りであり、
二環は、本明細書で定義された任意の適切なループ状ペプチド構造を表し、
nは、1から10から選択される整数を表し、
mは、0から10から選択される整数を表す)
を含む。
【0180】
毒素を有する二環性ペプチドリガンドの上述のコンジュゲートを調製するさらなる詳細および方法は、本発明者らの公開された特許出願WO2016/067035および2016年5月4日に提出した係属中の出願GB1607827.1に詳細に記載されている。これらの出願の開示全体は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0181】
毒素と二環性ペプチドの間のリンカーは、アジド官能基化毒素とアルキン官能基化二環性ペプチド構造(またはその逆も同様)の間のクリック反応によって形成されるトリアゾール基を含んでもよい。他の実施形態では、二環性ペプチドは、カルボキシレート官能基化毒素と二環性ペプチドのN末端アミノ基の間の反応によって形成されたアミド連結を含有してもよい。
【0182】
毒素と二環性ペプチドの間のリンカーは、毒素の標的細胞内への選択的放出をもたらすカテプシンにより切断可能な基を含んでもよい。適切なカテプシンにより切断可能な基はバリン-シトルリンである。
【0183】
毒素と二環性ペプチドの間のリンカーは、所望の官能性、例えば、コンジュゲートに対する結合親和性またはカテプシン切断可能性をもたらす1つまたは複数のスペーサー基を含んでもよい。適切なスペーサー基は、バリン-シトルリン基と毒素部分の中間に位置し得るパラ-アミノベンジルカルバメート(PABC)である。
【0184】
したがって、実施形態では、二環性ペプチド-薬物コンジュゲートは、毒素-PABC-cit-val-トリアゾール-二環から構成される以下の構造:
【化13】
を有してもよい。
【0185】
さらなる実施形態では、二環性ペプチド-薬物コンジュゲートは、毒素-PABC-cit-val-ジカルボキシレート-二環から構成される以下の構造:
【化14】
(式中、(alk)は、式C2n(nは、1から10である)のアルキレン基であり、直鎖状または分枝状であってもよく、適切な(alk)は、n-プロピレンまたはn-ブチレンである)
を有してもよい。
【0186】
適切には、二環性ペプチド-薬物コンジュゲートは、本明細書の以下に定義したBT17BDC53、BT17BDC59、BT17BDC61、BT17BDC62、およびBT17BDC68からなる群から選択される。
【0187】
本発明によるペプチドリガンドは、インビボ治療適用および予防適用、インビトロおよびインビボ診断適用、インビトロアッセイおよび試薬適用などで用いることができる。
【0188】
一般的に、ペプチドリガンドの使用によって、抗体の使用を置き換えることができる。本発明により選択される誘導体は、ウエスタン分析および標準的な免疫組織化学手順によるインサイチュタンパク質検出において、診断上有用であり、これらの適用における使用では、誘導体の選択されるレパートリーは、当技術分野で公知の技法に従って標識されてもよい。さらに、このようなペプチドリガンドは、クロマトグラフの支持体、例えば、樹脂と複合体を形成する場合、アフィニティークロマトグラフィー手順において予備的に使用することができる。すべてのこのような技法は、当業者に周知である。本発明によるペプチドリガンドは、抗体の結合能と同様の結合能を有し、このようなアッセイにおいて抗体を置き換えることができる。
【0189】
診断的使用には、試験片アッセイ、実験室アッセイおよび免疫診断アッセイを含む、抗体が通常置かれている任意の使用が含まれる。
【0190】
本発明に従って調製されるペプチドリガンドの治療的および予防的使用は、本発明に従って選択される誘導体のレシピエント哺乳動物、例えば、ヒトへの投与に関与する。少なくとも90から95%の均一性である実質的に純粋なペプチドリガンドが哺乳動物への投与に好ましく、98から99%またはそれより高い均一性が、特に哺乳動物がヒトである場合に、医薬としての使用に最も好ましい。所望に応じて部分的にまたは均一性まで精製した後、選択されたポリペプチドを、診断もしくは治療(体外が含まれる)において、またはアッセイ手順、免疫蛍光染色などの展開および実行において使用し得る(Lefkovite and Pernis, (1979 and 1981) Immunological Methods, Volumes I and II, Academic Press, NY)。
【0191】
一般的に、本発明のペプチドリガンドは、精製された形態で、薬理学的に適当な担体と一緒に利用される。典型的には、これらの担体には、生理食塩水および/または緩衝媒体を含む、水性またはアルコール/水性の溶液、乳濁液または懸濁液が含まれる。非経口ビヒクルとして、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウムならびに乳酸加リンゲルが挙げられる。ペプチド複合体を懸濁液中に保つために必要な場合は、適切な生理学的に許容されるアジュバントを、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチンおよびアルギネートなどの増粘剤から選択することができる。
【0192】
静脈内ビヒクルには、リンゲルデキストロースに基づくものなどの、体液および栄養素補充液ならびに電解質補充液が含まれる。また、抗微生物剤、抗酸化剤、キレート化剤および不活性ガスなどの保存料および他の添加剤も存在し得る(Mack (1982) Remington’s Pharmaceutical Sciences, 16th Edition)。
【0193】
本発明のペプチドリガンドは、別個に投与される組成物として使用されてもよく、または他の薬剤と併せて使用されてもよい。これらには、シクロスポリン、メトトレキサート、アドリアマイシンまたはシスプラチン、および免疫毒素などの、抗体、抗体断片および様々な免疫治療薬が含まれる場合がある。医薬組成物には、それらを投与前にプールするかどうかに関わらず、様々な細胞毒性がある薬剤または他の薬剤と、本発明の選択された抗体、受容体もしくは結合タンパク質、またはさらには、様々な標的誘導体を使用して選択されたペプチドなどの様々な特異性を有する本発明によって選択されたペプチドの組合せとを併せた「カクテル」が含まれる場合がある。
【0194】
本発明による医薬組成物の投与経路は、当業者に一般的に知られているもののうちの任意のものであり得る。限定されるものではないが、免疫療法を含む治療のために、本発明の選択された抗体、受容体または結合タンパク質は、標準の技法に従って任意の患者に投与することができる。投与は、非経口、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮、肺の経路、また、適当には、カテーテルを用いた直接輸液によるものを含む任意の適当な様式によるものであり得る。投薬量および投与頻度は、患者の年齢、性別および状態、他の薬物の同時投与、対抗適応症ならびに臨床家が考慮すべき他のパラメータに依存する。
【0195】
この発明のペプチドリガンドは、貯蔵用に凍結乾燥し、使用前に適切な担体で復元することができる。この技法は有効であることが示されており、当分野で知られている凍結乾燥および復元の技法を用いることができる。当業者には、凍結乾燥および復元は様々な度合の活性の損失をもたらす場合があり、補償するために使用レベルを上方調節する必要があり得ることが認識されよう。
【0196】
本発明のペプチドリガンドまたはそのカクテルを含有する組成物は、予防的および/または治療的な処置のために投与することができる。ある特定の治療適用では、選択された細胞の集団の少なくとも部分的な阻害、抑制、変調、死滅、または何らかの他の測定可能なパラメータを達成するために十分な量が、「治療上有効な用量」として定義される。この投薬量を達成するために必要な量は、疾患の重度および患者自身の免疫系の一般的状態に依存するが、一般的に、体重1キログラム当たり0.005から5.0mgの選択されたペプチドリガンドの範囲であり、0.05から2.0mg/kg/用量の用量がより一般的に使用される。予防適用では、本発明のペプチドリガンドまたはそのカクテルを含有する組成物を、同様またはわずかに低い投薬量で投与してもよい。
【0197】
本発明によるペプチドリガンドを含有する組成物は、哺乳動物における選択された標的細胞集団の変更、不活性化、死滅または除去を支援するために、予防的および治療的な設定で利用し得る。さらに、本明細書に記載のペプチドの選択されたレパートリーは、不均一な細胞のコレクションから標的細胞集団を死滅、枯渇または他の様式で有効に除去するために、体外またはインビトロで選択的に使用することができる。哺乳動物由来の血液を体外で選択されたペプチドリガンドと合わせ、それによって、所望しない細胞を死滅させるかまたは他の様式で血液から除去して、標準的技法に従って哺乳動物に戻すことができる。
【0198】
本発明は、以下の実施例を参照してさらに説明される。
【実施例
【0199】
材料および方法
タンパク質発現
ヒト遺伝子由来の残基Cys319-Gly511であるMT1-MMPヘモペキシン様リピート(MT1-MMPヘモペキシンドメインとしても公知)は、pEXPR-IBA42(IBA)発現ベクターを使用して、分泌されたN末端His6タグ化可溶性タンパク質として、HEK293細胞において一過性に発現された。発現後、タンパク質を、ゲル濾過後にニッケル-NTAアフィニティークロマトグラフィーによって精製し、純度をSDS-PAGEによってチェックした。バッチ間のばらつきはまた、ヘモペキシンドメイン結合性の二環の有無において蛍光熱シフト実験によってもモニターした。
【0200】
ペプチド合成
ペプチド合成は、Peptide Instrumentsが製造した、Symphonyペプチドシンセサイザー、およびMultiSynTechが製造したSyro IIシンセサイザーを使用する、Fmoc化学に基づいた。以下の側鎖保護基、すなわち、Arg(Pbf);Asn(Trt);Asp(OtBu);Cys(Trt);GIu(OtBu);Gln(Trt);His(Trt);Lys(Boc);Ser(tBu);Thr(tBu);Trp(Boc);およびTyr(tBu)(Sigma)を伴って、標準のFmoc-アミノ酸(Sigma、Merck)を用いた。カップリング試薬は、HCTU(Pepceuticals)であって、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、Sigma)を塩基として用いて、脱保護は、DMF(AGTC)中の20%のピペリジンで達成した。合成は、0.37mmol/grのFmoc-RinkアミドAM樹脂(AGTC)を使用して実施し、Fmoc-アミノ酸を4倍過剰で利用し、塩基はアミノ酸に関して4倍過剰であった。アミノ酸を0.2MでDMSO中に、HCTUを0.4MでDMF中に、およびDIPEAを1.6MでN-メチルピロリドン(Alfa Aesar)中に溶解した。条件は、カップリング反応がDMF中に20から50%の間のDMSOを含有した条件であって、これによって、固相合成の間に凝集および欠失を低下させ、収率を向上させた。カップリング時間は、一般的に、30分であって、脱保護時間は2×5分間であった。Fmoc-N-メチルグリシン(Fmoc-Sar-OH、Merck)を、1時間カップリングして、以下の残基についての脱保護およびカップリング時間はそれぞれ20分および1時間であった。合成後、樹脂をジクロロメタンで洗浄して、乾燥した。側鎖保護基のおよび支持体からの切断は、10mLの95:2.5:2.5:2.5(v/v/v/w)のTFA/HO/iPrSiH/ジチオトレイトールを使用して3時間行った。切断後、使用済みの樹脂を濾過によって取り除き、濾液を、-80℃で冷却された35mLのジエチルエーテルに添加した。ペプチドペレットを遠心分離して、エーテルの上清を廃棄して、冷エーテルを用いてペプチドペレットを2回以上洗浄した。次いで、ペプチドを5~10mLのアセトニトリル-水中に再溶解させて凍結乾燥させた。わずかな試料を、質量分析法(MALDI-TOF、Voyager DE(Applied Biosystems))による粗生成物の純度の分析のために取り出した。凍結乾燥後、ペプチド粉末を10mLの6Mグアニジニウム塩酸塩(HO中)中に採取し、0.5mLの1Mジチオトレイトールを補充し、C8 Luna分取HPLC カラム(Phenomenex)上にロードした。溶媒(HO、アセトニトリル)を0.1%のヘプタフルオロ酪酸を用いて酸性化した。勾配は、Gilson分取HPLCシステムを使用して、15~20mL/分の流速で、15分で30~70%のアセトニトリルにわたって行った。純粋な直鎖状ペプチド物質を含有する画分(MALDIによって特定される通り)を、以下にさらに説明する足場分子へのカップリングによって、二環性誘導体の調製のために使用した。
【0201】
別段留意されていなければ、すべてのアミノ酸をL-立体配置で使用した。非天然アミノ酸は、上述の一般的方法を使用してペプチド配列に組み込んだ。本明細書で用いる非天然アミノ酸前駆体のリストを以下の表にまとめる。
【0202】
【表1】
【0203】
さらに、以下の非天然アミノ酸前駆体を、DAPおよびN-MeDAP修飾ペプチドの調製のために使用した。
【0204】
【表2】
【0205】
MT1-MMPに対する結合親和性
蛍光偏光(異方性)を使用する競合アッセイを使用して、結合親和性を測定した。
【0206】
本明細書中で言及した蛍光トレーサーは、5,6-カルボキシフルオレセインを使用して蛍光標識化された二環性ペプチドである。蛍光標識化は、サルコシンスペーサー(通常はSar5)によって、二環性コア配列から隔てられる、ペプチドのN末端アミノ基で実施されてもよい。これは、N末端アミノ基がペプチドに固有である場合、Fmoc固相合成の間に、または合成後(TBMBおよび精製での環化後)に行われ得る。蛍光標識化はまた、C末端で、通常は、最初のC末端残基として導入されたリシンで実施してもよく、この残基は、次いで、サルコシンスペーサー(通常はSar6)によって二環性コア配列から隔てられている。したがって、N末端トレーサーは、C末端蛍光標識化構築物について、Fluo-Gly-Sar5-A(二環性コア配列)および(二環性コア配列)-A-Sar6-K(Fluo)として記載された分子フォーマットを有してもよい。実施例で使用される蛍光トレーサーは、A-(17-69)-A-Sar6-K(Fluo)、A-(17-69-07)-A-Sar6-K(Fluo)、およびA-(17-69-12)-A-Sar6-K(Fluo)である。17-69蛍光ペプチドの酸性の性質に起因して、それらは、典型的には、濃縮DMSOストックとして調製され、それから希釈液を、100mMのTris pH8緩衝液中で調製した。
【0207】
MT1-MMPヘモペキシンドメイン(PEX)に対するそれらの高い親和性に起因して、本明細書の蛍光標識された誘導体を、競合実験(検出のためのFPを使用する)に使用してもよい。蛍光性PEX-結合トレーサーとのPEXの事前に形成された複合体を、遊離の非蛍光標識された二環性ペプチドで滴定する。すべての17~69ベースのペプチドは、同一部位で結合すると期待されるので、滴定剤は、PEXから蛍光トレーサーを押しのけることになる。複合体の解離は、定量的に測定することができ、標的タンパク質に対する競合因子(滴定剤)のKdが決定され得る。競合方法の利点は、非蛍光標識の二環性ペプチドの親和性が、正確かつ迅速に決定され得るということである。
【0208】
トレーサーの濃度は、通常、Kd以下(ここでは、1nM)であり、結合タンパク質(ここでは、MT1-MMPのヘモペキシン)は、15倍過剰であり、その結果トレーサーの90%より多くが結合する。次に、非蛍光性競合因子二環性ペプチド(通常は、ほぼ二環性コア配列)が滴定され、その結果、標的タンパク質由来の蛍光トレーサーを押しのける。トレーサーが押しのけられるのを、測定して、蛍光偏光の低下と関連付ける。蛍光偏光における低下は、非蛍光性滴定剤と結合した標的タンパク質の画分と比例しており、したがって、標的タンパク質に対する滴定剤の親和性の尺度である。
【0209】
生のデータは、蛍光トレーサー、滴定剤、および結合タンパク質の間の平衡を記載する三次方程式の解析解にあてはめられる。このあてはめは、直接結合FP実験によって別々に決定され得る(前のセクションを参照のこと)、標的タンパク質に対する蛍光トレーサーの親和性の値を必要とする。曲線のあてはめは、Sigmaplot 12.0を使用して実施し、Zhi-Xin Wang(FEBS Letters 360(1995) 111-114)に記載の式の適合したバージョンを使用した。
【0210】
参照例1
アルキルアミノに対するチオエーテルの足場連結の比較のために選択された二環性ペプチドを17-69-07-N241と示した。これは、チオエーテル形成ペプチドのトリメチレンベンゼン足場との二環性コンジュゲートである。この二環性誘導体の構造を図2に模式的に示す。コンジュゲーション前の直鎖状ペプチドは配列:
H-(β-Ala)-Sar10-Ala-Cys-(D-Ala)-Asn-Glu-(1Nal)-(D-Ala)-Cys-Glu-Asp-Phe-Tyr-Asp-(tBuGly)-Cys-NH
を有する。
【0211】
1,3,5-トリス(ブロモメチル)ベンゼン(TBMB、Sigma)へのコンジュゲーションは以下のように行った。直鎖状ペプチドを約35mLまでHOで希釈し、アセトニトリル中100mMのTBMB 約500μLを添加し、反応をHO中1MのNHHCO 5mLで開始した。反応を室温で約30~60分間進行させ、反応が完了したら(MALDIによって判断した)、凍結乾燥した。凍結乾燥後、修飾ペプチドを上記のように精製し、一方、Luna C8をGemini C18カラム(Phenomenex)によって置き換え、酸を0.1%のトリフルオロ酢酸に変更した。正しいTMB修飾材料を含有する純粋な画分をプールし、凍結乾燥し、保存のために-20℃に保った。
【0212】
17-69-07-N241と示した得られた二環性誘導体は、MT1-MMPに対する高い親和性を示した。誘導体のMT1-MMPに対する親和性(Kd)の測定値は0.23nMであった。したがって、誘導体を、細胞表面メタロプロテアーゼMT1-MMPを発現する、腫瘍細胞を標的とするための有望な候補とみなす。
【0213】
[実施例1]
17-69-07-N385と示した二環性ペプチドを、b-Ala-Sar10テイルを除き、第1および第3のシステイン残基を、TBMB足場に対してアルキルアミノ連結を形成するDAP残基によって置き換えた、参照例1のペプチドリガンドの二環性領域に対応するものとして作製した。この誘導体の構造を図3に模式的に示す。
【0214】
この二環を形成するために使用される直鎖状ペプチドは:
Ac-A(Dap)(D-Ala)NE(1Nal)(D-Ala)CEDFYD(tBuGly)(Dap)
であった。
【0215】
直鎖状ペプチドと二環性ペプチドは、以下のLCMS特徴を有した。
【0216】
【表3】
【0217】
環化ステップのための種々の試薬は次のように試された。試薬は、選択された溶媒中で以下の表に示した濃度に調合した。ペプチド溶液の体積に対して、半分の体積のTBMB溶液を添加し、混合物を十分に撹拌し、次いで、塩基溶液の体積の半分を添加した。反応物を混合し、LCMS分析のために定期的にサンプリングした。
【0218】
【表4】
【0219】
実施例:50μLのペプチド溶液に、25μLのTBMB溶液を添加した。溶液を全体的に混合し、次いで、25μLの塩基溶液を添加した。
【0220】
使用した溶媒がDMFである場合には、すべての試薬をDMF中で調合した。使用した溶媒がDMSOである場合には、すべての試薬をDMSO中で調合した。使用した溶媒がMeCN/HOである場合には、ペプチド溶液は50%のMeCN/HO中で調合し、TBMB溶液はMeCN中で調合し、塩基溶液は、塩基がDIPEAである場合(この場合には、塩基溶液はMeCN中で調合する)を除き、HO中で調合する。すべての環化は室温で実施した。結果は以下の通りである(スペクトルの範囲を3.5~5.5分に設定した。220nmのスペクトルを積分し、主要ピークの合計を得た)。
【0221】
【表5】
【0222】
環化後の純度は塩基の選択に高度に依存することが理解され得る。生成物の純度は2から66%の範囲であり、後者は、DIPEAの存在下におけるアセトニトリル/水の混合物に関与する。参照例1の環化と異なり、塩基として従来のNaHCOを使用する場合、収率は比較的低い。最も高い収率は、トリアルキルアミン、すなわち、トリエチルアミンとジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を使用して達成される。
【0223】
MT1-MMPに対する結合の比較データを図7に示す。Kdの測定値は0.45nMであり、これは、参照例1のチオエーテル連結誘導体と比較して、この例のアルキルアミノ連結に対する変化は、結合親和性において、顕著なほど少ない変化しか生じなかったことを実証する。
【0224】
[実施例2]
17-69-07-N426と示した二環性ペプチドを、DAP残基をN-MeDAP残基に置き換えた、実施例1の二環性ペプチドに対応するものとして作製した。この誘導体の構造を図4に模式的に示す。この二環を形成するために使用した直鎖状ペプチドは:
Ac-A(Dap(Me))(D-Ala)NE(1Nal)(D-Ala)CEDFYD(tBuGly)(Dap(Me))
であった。
【0225】
直鎖状ペプチドと二環性ペプチドは、以下のLCMS特徴を有した。
【0226】
【表6】
【0227】
実施例1に記載された環化ステップに対して、種々の異なる反応条件、溶媒、および塩基を使用して、以下の結果を得た(すべての環化は室温で実施した)。
【0228】
【表7】
【0229】
環化後の純度は、再度、塩基の性質に依存する。塩基としてNaCOを用いた純度は、予期した通り、低い(実施例1を参照のこと)。DIPEAの存在下におけるアセトニトリル/水の最適条件を使用すると、環化後の純度は非常に高く(93%)、DapのN-メチル化によって副反応のレベルが低減されることを実証する。
【0230】
MT1-MMPに対する結合の比較データを図8に示す。Kdの測定値は0.36nMであり、参照例1のチオエーテル連結誘導体からほとんど変化していない。この効力は、連結における2つのN-メチル化にもかかわらず保持され、したがって、本発明の誘導体は大いに興味深い。
【0231】
[実施例3]
17-69-07-N428と示した二環性ペプチドを、Tyr9をPhe9に置き換えた(Tyrヒドロキシルの除去)、実施例1の二環性ペプチドに対応するものとして作製した。この二環を形成するために使用した直鎖状ペプチドは:
Ac-A(Dap)(D-Ala)NE(1Nal)(D-Ala)CEDFFD(tBuGly)(Dap)
であった。
【0232】
直鎖状ペプチドと二環性ペプチドは、以下のLCMS特徴を有した。
【0233】
【表8】
【0234】
実施例1に記載された環化ステップに対して、種々の異なる反応条件、溶媒、および塩基を使用して、以下の結果を得た(スペクトルのLCMS範囲を4~6分に設定した。220nmのスペクトルを積分し、主要ピークの合計を得た)。
【0235】
【表9】
【0236】
生成物の純度は2から71%の範囲であり、後者は、DIPEAの存在下におけるアセトニトリル/水の混合物に関与することが理解され得る。Tyr-OHの除去(Tyr→Phe9)により、MeCN/HO/TMG/室温またはMeCN/H0/KCO/室温の条件下でチロシン含有ペプチドと同じ反応と比較して、生成物の収率が著しく増加する。溶媒としてのDMSOの使用は、容易に分析することができない複数のピークを有する非常に乱雑なクロマトグラムを与えた。
【0237】
MT1-MMPに対するこの17-69-07-N428誘導体の結合の比較データを図9に示す。Kdの測定値は3.5nMである。参照例1のチオエーテル連結誘導体と比較した結合親和性のわずかな低減は、主に、Tyr9のPhe9による置き換えのせいであると思われる。
【0238】
[実施例4]
17-69-07-N434と示した二環性ペプチドを、参照例1のものと同様のN末端Sar10スペーサー、およびコンジュゲート基PYA(毒素に関する「クリック」誘導体化のための4-ペンチン酸)を有する、実施例1の二環性ペプチドに対応するものとして作製した。この誘導体の構造を図5に模式的に示す。この二環を形成するために使用した直鎖状ペプチドは:
(PYA)-(B-Ala)-Sar10-A(Dap)(D-Ala)NE(1Nal)(D-Ala)CEDFYD(tBuGly)(Dap)
であった。
【0239】
直鎖状ペプチドと二環性ペプチドは、以下のLCMS特徴を有した。
【0240】
【表10】
【0241】
環化は以下のように実施した。
【0242】
【表11】
【0243】
得られた誘導体17-69-07-N434は、エフェクター、すなわち、毒素の誘導体化に必要とされるN末端アルキンを有するN241(参照例1)のDap1/3当量である。このペプチドは、60%の純度のTBMBを用いて環化することができる。MT1-MMPに関するkの測定値は1.52nMであり、この二環性ペプチドをMT1-MMPを標的とするのに非常に適切にする。
【0244】
[実施例5]
実施例1から3で使用したTBMB足場分子のTBABによる置き換えを以下のように実施した。
【0245】
実施例1から3において、17-69-07-N385、17-69-07-N426および17-69-07-N428を形成するために使用した直鎖状ペプチドを、TBMBに対して使用したものと同一の濃度および当量のTBABを用いて環化した。N385ペプチドを有するTBAB誘導体の構造を図6に模式的に示す。
【0246】
室温で、MeCN/HOの溶媒混合物に関して選択した塩基として、DIPEAを用いた。以下の結果が達成された。
【0247】
【表12】
【0248】
これらの結果は、TBAB(ハロアセチル-)化学により、生成物カラムの%から理解できるように、TBMBより高い環化率とより高い選択性がもたらされる。
【0249】
[実施例6]
17-69-07-N474と示した二環性ペプチドを、Cys6をDap(Me)で置き換えた実施例1の二環性ペプチドに対応するものとして作製した。この二環を形成するために使用した直鎖状ペプチドは:
Ac-A(Dap(Me))(D-Ala)NE(1Nal)(D-Ala)(Dap(Me))EDFYD(tBuGly)(Dap(Me))
であった。
【0250】
N385ペプチドを有するTBMB誘導体の構造を図10に模式的に示す。
【0251】
直鎖状ペプチドと二環性ペプチドは、以下のLCMS特徴を有した。
【0252】
【表13】
【0253】
環化は以下の手順に従って実施した:MeCN/HO(1:1)中1mMのペプチド溶液50μLを、MeCN中2.6mMのTBMB 25μLと混合し、次いで、MeCN/HO(酢酸を用いてpHを10に調整した)中200mMのDIPEA 25μLを添加し、溶液を混合した。(反応中に存在するペプチドに対し1.3当量のTBMBおよび100当量の塩基)LCMS試料を4時間後に採取し、以下の表に示したように終夜反応を進行させた。
【0254】
【表14】
【0255】
MT1-MMPに対する結合を、他の実施例と同様の手法で評価した。Kdの測定値は8.0nMであり、参照例1のチオエーテル連結誘導体より低い。この化合物は、連結における3つのN-メチルDapにもかかわらず、依然として高い親和性で結合し、したがって、本実施例の誘導体は大いに興味深い。
【0256】
[実施例7]
本発明による以下のさらなる二環性ペプチドを、上述の方法を使用して調製し、MT1-MMPに関する結合親和性について試験した。これらの二環性ペプチド化合物の模式的構造を図10~13に示す。
【0257】
【表15】
【0258】
本発明によるこれらのアルキルアミノ連結二環性化合物に関して、MT1-MMPに対する高い親和性が達成されることが理解され得る。さらなる研究により、イヌ、マウス/ラットおよびヒトのMT1-MMPに関して、本発明による二環性ペプチドの十分な交差反応性が示された。さらなる研究により、MMP1外部ドメイン、MMP2外部ドメイン、MMP15外部ドメイン(ヘモペキシンドメイン)またはMMP16ヘモペキシンドメインとの有意な交差反応性を有さない、本発明による二環性ペプチドの高い特異性が示された。本発明による二環性ペプチドの薬物動態はまた、足場に対する3つのチオエーテル連結を有する対応する二環性ペプチドと同様であることが決定されたが、本発明の二環性ペプチドに対する血清測定値ではわずかにより長い半減期しか有さなかった。
【0259】
[実施例8]
本発明による二環性ペプチドが、トリアゾール環化反応によって、モノメチルオーリスタチンE(MMAE)にカップリングされる二環性ペプチド-薬物コンジュゲート(BCD)を、図14に示す反応スキームに従って調製した。トリアゾール基に加えて、コンジュゲートのリンカー基は、バリン-シトルリン(カテプシンにより切断可能な基)およびパラアミノベンジルカルバメート(PABC)、スペーサー基を含む。反応スキームのステップを以下のように実施した。
【0260】
化合物3の調製のための一般的手順
【化15】
【0261】
DCM(300mL)およびMeOH(150mL)中の化合物2(30g、80mmol)の溶液に、暗所で、4-アミノフェニルメタノール(11g、88mmol)およびEEDQ(40g、160mmol)を添加した。混合物を30℃で16時間撹拌した。TLC(DCM:MeOH=10/1、R=0.43)は、化合物2が完全に消費され、多くの新たなスポットが形成されたことを示した。反応物はTLCにより清浄であった。得られた反応混合物を濃縮して残渣を得て、これを、フラッシュシリカゲルクロマトグラフィー(ISCO(登録商標);330gx3 SepaFlash(登録商標) シリカフラッシュカラム、0~20%のMeOH/ジクロロメタンを100mL/分で溶出)によって精製した。化合物3(20g、52%の収率)を白色固体として得た。
【0262】
化合物4の調製のための一般的手順
【化16】
【0263】
DMF(40mL)中の化合物3(5.0g、10.4mmol)の溶液に、DIEA(5.4g、7.26mL、41.7mmol)およびビス(4-ニトロフェニル)カーボネート(12.7g、41.7mmol)を添加した。混合物を、0℃にて、窒素下で1時間撹拌した。TLC(DCM:MeOH=10/1、R=0.66)は、化合物3が完全に消費され、1つの新たなスポットが形成されたことを示した。反応物はTLCにより清浄であり、LCMS(ES8241-10-P1A、生成物:RT=1.15分)は、所望の生成物が形成されたことを示した。得られた反応混合物を、中性条件下で、prep-HPLCによって直接精製した。化合物4(12g、60%の収率)を白色固体として得た。
【0264】
化合物5の調製のための一般的手順
【化17】
【0265】
反応の1つのバッチを以下のように実行した:DMF(10mL)中の化合物4の溶液(1.2g、1.68mmol)を、窒素雰囲気下で、DIEA(1.22mL、6.98mmol)に添加し、溶液を0℃で10分間撹拌し、次いで、HOBt(226mg、1.68mmol)およびMMAE(1.00g、1.40mmol)をそれに添加し、混合物を脱気して、Nを3時間パージし、これを35℃で16時間撹拌した。LC-MS(ES8396-1-P1A1、生成物:RT=1.19分)は、化合物4が完全に消費され、所望の質量を有する1つの主要なピークが検出されたことを示した。5つのバッチの得られた反応混合物を1Lのビーカー内で合わせ、500mLの水を添加し、次いで、沈殿物を形成し、濾過して回収した。沈殿物をEtOAcで終夜滴定した。化合物5(5g、59%の収率)を白色固体として得た。
【0266】
化合物6の調製のための一般的手順
【化18】
【0267】
化合物5(3.3g、2.7mmol)を、TFA(44mmol、3.5mL)の存在下で、DCM(18mL)中に溶解させ、次いで、溶液を25℃で3時間撹拌した。次に、反応混合物を減圧下で濃縮し、DCMとTFAを除去して残渣を得た。残渣はTHF(20mL)中に溶解させ、KCO(1.8g、13mmol)で処理し、さらに、混合物を25℃でさらに12時間撹拌した。LC-MS(ES8396-2-P1B1、生成物:RT=1.04分)は、所望の質量を有する1つの主要なピークが検出されたことを示した。反応混合物を濾過し、減圧下で濃縮して、残渣を得た。残渣を10mLのDMFに溶解させ、prep-HPLC(中性条件)によって精製した。化合物6(1.6g、53%の収率)を白色固体として得た。
【0268】
化合物7-1の調製のための一般的手順
【化19】
【0269】
化合物6(1.2g、1.1mmol)および2-アジド酢酸(162mg、1.6mmol)をDMF(10mL)中に溶解させた。TEA(450uL、3.2mmol)、HOBt(217mg、1.6mmol)およびEDCI(307mg、1.6mmol)を、窒素下で、この溶液に添加し、混合物を0℃で30分間撹拌し、次いで、混合物を、さらに15.5時間撹拌しながら、25℃までゆっくりと温めた。LC-MS(ES8396-3-P1A、生成物:RT=1.04分)は、化合物6が完全に消費され、所望の質量を有する1つの主要なピークが検出されたことを示した。2mLの水を反応混合物に添加して、清澄な溶液を形成した。次いで、この溶液を、中性条件下で、prep-HPLCによって直接精製した。化合物7-1(0.9g、70%の収率)を白色固体として得た。
【0270】
BT17BDC-53の調製のための一般的手順
【化20】
【0271】
DMF(3mL)およびHO(2mL)中(2-アジド酢酸)-Val-Cit-PABC-MMAE(16mg、13.26umol、1当量)と二環性アルキン(17-69-07-N434、30mg、11.09umol、0.8当量)の混合物に、CuI(1.26mg、6.63umol、0.5当量)を添加した。混合物を、25℃にて、N下で20時間撹拌した。LC-MSは、(2-アジド酢酸)-Val-Cit-PABC-MMAEが完全に消費され、所望のMSを有する1つの主要なピークが検出されたことを示した。得られた反応混合物をprep-HPLC(TFA条件)によって精製した。化合物BT17BDC-53(23.7mg、6.06umol、54.64%の収率)を白色固体として得た。
【0272】
BT17BDC-59の調製のための一般的手順
【化21】
【0273】
DMF(3mL)中(2-アジド酢酸)-Val-Cit-PABC-MMAE(31mg、25.69umol、1.2当量)と(17-69-07-N438、40mg、20.8umol、1当量)の混合物に、水(0.4mL)中のCuSO(10.25mg、64.24umol、3当量)溶液と水(0.4mL)中のアスコルビン酸(37.71mg、214.12umol、10当量)溶液を、窒素下で、添加した。次いで、混合物を25℃で1時間撹拌した。LC-MSは、(2-アジド酢酸)-Val-Cit-PABC-MMAEが完全に消費され、所望のMSを有する1つの主要なピークが検出されたことを示した。得られた反応混合物を、prep-HPLC(TFA条件)によって精製した。BT17BDC-59(26.7mg、8.53umol、41.02%の収率)を白色固体として得た。
【0274】
BT17BDC61の調製のための一般的手順
【化22】
【0275】
化合物7-1(250mg、207umol)とBICY-アルキン17-69-07-N450(515mg、188umol)を、50mLの丸底フラスコに入れ、DMF(5mL)を添加し、続いて、窒素雰囲気下で、アスコルビン酸水溶液(1M、1.88mL)とCuSO水溶液(1M、570uL)を添加し、次いで、混合物を25℃で1時間撹拌した。LC-MS(ES8396-8-P1A、生成物:RT=1.03分)は、BICY-アルキンが完全に消費され、所望の質量を有する1つの主要なピークが検出されたことを示した。反応混合物を濾過して、溶解していない物質を除去し、濾液をprep-HPLC(TFA条件)によって直接精製した。BT17BDC61(262mg、35%の収率)を白色固体として得た。
【0276】
BT17BDC62の調製のための一般的手順
化合物7-1(250mg、207umol)とBICY-アルキン17-69-07-N443(368mg、188umol)を、50mLの丸底フラスコに入れた。DMF(5mL)を添加し、続いて、アスコルビン酸水溶液(1M、1.88mL)とCuSOの水溶液(1M、570uL)を添加した。次いで、混合物を25℃で1時間撹拌した。LC-MS(ES8396-9-P1A、生成物:RT=1.07分)は、BICY-アルキンが完全に消費され、所望の質量を有する1つの主要なピークが検出されたことを示した。反応混合物を濾過して、溶解していない物質を除去した。得られた濾液をprep-HPLC(TFA条件)によって直接精製した。BT17BDC62(253mg、42%の収率)を白色固体として得た。
【0277】
[実施例9]
本発明による二環性ペプチドがリンカーの末端グルタリル基とペプチドの末端アミノの間のアミド形成によって、モノメチルオーリスタチンE(MMAE)にカップリングする二環-薬物コンジュゲート(BCD)を、図15に示す反応スキームに従って調製した。反応スキームのステップは以下のように実施した。
【0278】
化合物3の調製のための一般的手順
【化23】
【0279】
DCM(80.00mL)およびMeOH(40.00mL)中の化合物2(7.00g、18.70mmol、1.00当量)の溶液に、暗所で、(4-アミノフェニル)メタノール(2.53g、20.56mmol、1.10当量)およびEEDQ(9.25g、37.39mmol、2.00当量)を添加した。混合物を25℃で8時間撹拌した。LC-MSは、化合物2が完全に消費され、所望のMSを有する1つの主要なピークが検出されたことを示した。得られた反応混合物を減圧下で濃縮して溶媒を除去し、残渣を得た。残渣を、フラッシュシリカゲルクロマトグラフィー(ISCO(登録商標);120g SepaFlash(登録商標) シリカフラッシュカラム、0~10%のMeOH/DCMを85mL/分で溶出)によって精製した。化合物3(7.00g、14.60mmol、78.06%の収率)を白色固体として得た。
【0280】
化合物4の調製のための一般的手順
【化24】
【0281】
THF(20.00mL)およびDCM(10.00mL)中の化合物3(4.00g、8.34mmol、1.00当量)および4-ニトロフェニルカルボノクロリデート(6.72g、33.36mmol、4.00当量)の溶液に、ピリジン(2.64g、33.36mmol、2.69mL、4.00当量)を添加した。反応混合物を25℃で5時間撹拌した。LC-MSは、化合物3が完全に消費され、所望のMSを有する1つの主要なピークが検出されたことを示した。反応混合物を減圧下で濃縮して、残渣を得て、これを、フラッシュシリカゲルクロマトグラフィー(ISCO(登録商標);120g SepaFlash(登録商標) シリカフラッシュカラム、0~20%のDM/MeOHを85mL/分で溶出)によって精製した。化合物4(2.20g、3.41mmol、40.92%の収率)を白色固体として得た。
【0282】
化合物5の調製のための一般的手順
【化25】
【0283】
DMF(10.00mL)中の化合物4(500.00mg、775.59umol、1.00当量)とDIEA(1.00g、7.76mmol、1.35mL、10.00当量)の混合物を、窒素下で、0℃で30分間撹拌した。MMAE(445.49mg、620.47umol、0.80当量)とHOBt(104.80mg、775.59umol、1.00当量)を上記混合物に添加した。反応混合物を、窒素下で、0℃で10分間撹拌し、30℃でさらに18時間撹拌した。LC-MSは、化合物4が完全に消費され、所望のMSを有する1つの主要なピークが検出されたことを示した。得られた反応混合物を、フラッシュC18ゲルクロマトグラフィー(ISCO(登録商標);330g SepaFlash(登録商標) C18フラッシュカラム、0~50%のMeCN/HOを85mL/分で溶出)によって直接精製した。化合物5(400.00mg、326.92umol、42.15%の収率)を白色固体として得た。
【0284】
化合物6の調製のための一般的手順
【化26】
【0285】
DCM(36.00mL)中の化合物5(430.00mg、351.44umol、1.00当量)の溶液に、TFA(6.16g、54.03mmol、4.00mL、153.73当量)を添加し、混合物を25℃で2時間撹拌した。次いで、混合物を減圧下で濃縮し、残渣を得て、これを、THF(10.00mL)中に溶解させ、KCO(1.21g、8.79mmol、25.00当量)をこの混合物に添加した。反応物を25℃で12時間撹拌した。LC-MSは、化合物5が完全に消費され、所望のMSを有する1つの主要なピークが検出されたことを示した。得られた反応混合物を濾過し、濾液を減圧下で濃縮して残渣を得て、これを、フラッシュC18ゲルクロマトグラフィー(ISCO(登録商標);120g SepaFlash(登録商標) C18フラッシュカラム、0~50%のMeCN/HOを85mL/分で溶出)によって精製した。化合物6(290.00mg、258.14umol、73.45%の収率)を白色固体として得た。
【0286】
化合物7の調製のための一般的手順
【化27】
【0287】
(400mg、356umol)を含有するバイアルに、窒素バルーンを使用してパージした。無水DMA(5mL)を撹拌しながら添加し、溶液を氷水浴中で0℃まで冷却した。次いで、DIEA(130uL、712umol)を添加し、反応物を0℃で10分間撹拌した。テトラヒドロピラン-2,6-ジオン(81mg、712umol)を添加し、次いで、氷浴を除去した。反応物を25℃で1時間撹拌した。LC-MS(ES8396-4-P1A、生成物:RT=1.08分)は、化合物6が完全に消費され、所望の質量を有する1つの主要なピークが検出されたことを示した。混合物を5mLの水で希釈し、次いで、prep-HPLC(中性条件)によって精製した。化合物7-2(330mg、75%の収率)を白色固体として得た。
【0288】
化合物8の調製のための一般的手順
【化28】
【0289】
無水DMA(4.5mL)およびDCM(1.5mL)中の化合物7-2(330mg、267umol)を、窒素下で、氷浴を使用して、0℃で10分間撹拌しながら、HOSu(92mg、800umol)に添加した。次いで、EDCI(154mg、800umol)を、25℃で16時間さらに撹拌しながら、この混合物に添加した。LC-MS(ES8396-5-P1A、生成物:RT=1.15分)は、化合物7-2が完全に消費され、所望の質量を有する1つの主要なピークが検出されたことを示した。得られた反応混合物を5mLの水で希釈し、次いで、prep-HPLC(中性条件)によって精製した。化合物8(250mg、70%の収率)を白色固体として得た。
【0290】
BT17BDC68の調製のための一般的手順
DMA(4mL)中にBICY-NH 17-69-07-N451(80.0mg、30umol)を含有した50mLの丸底フラスコを、窒素バルーンを使用してパージした。次いで、DIEA(20uL、114umol)を、25℃で10分間撹拌しながら添加した。次いで、化合物8(40mg、30umol)を添加し、反応物を、正の窒素雰囲気下で、25℃で18時間撹拌した。LC-MS(ES6635-127-P1A1、生成物:RT=1.06分)は、化合物8が完全に消費され、所望のMSを有する1つの主要なピークが検出されたことを示した。得られた反応混合物を、prep-HPLC(TFA条件)によって精製した。BT17BDC68(33.9mg、29%の収率)を白色固体として得た。
【0291】
[実施例10]
上記で調製した二環性ペプチド-薬物コンジュゲートのインビトロでの結合親和性を、本明細書で以前に記載したように、MT1-MMPについて測定した。結果は以下の通りであった。
【0292】
【表16】
【0293】
すべての場合に、二環性ペプチドの結合親和性は、MMAEへのコンジュゲーション後に維持されることが理解され得る。
【0294】
[実施例11]
マウスおよびヒトの血清中のBT17BDC-53の血漿安定性について研究した。マウスとヒトの血清の両方で、コンジュゲートが安定である(4μmの濃度でT1/2が50時間を超える)ことが分かった。この安定性は、ペプチドが3つのチオエーテル連結によって足場に連結する対応するコンジュゲートの安定性よりわずかに大きいようである。
【0295】
[実施例12]
上記で調製した二環性ペプチド薬物コンジュゲートの腫瘍に対するインビボでの有効性を、以下のように評価した。
37℃で、5%のCOと空気の雰囲気下で、10%の熱不活性化ウシ胎仔血清を補充したEMEM培地中の単層培養として、HT1080腫瘍細胞をインビトロで維持した。腫瘍細胞を、トリプシン-EDTA処理によって、週に2回、日常的に継代培養した。指数増殖期に増殖する細胞を採取し、腫瘍接種用に計数した。
【0296】
腫瘍形成のために、0.2mlのPBS中のHT1080腫瘍細胞(%×10)を、BALB/cヌードマウスの右脇腹に皮下接種した。平均腫瘍体積が134mmに到達したら、39頭の動物を無作為化した。
【0297】
25mMのヒスチジンと10%のショ糖を含有するビヒクル緩衝液中に、BDC化合物を、0.03mg/mlで配合した。配合物を、0.3、1、3および10mg/kgで、週に2回(biw)投与した。腫瘍体積と体重を、最初の投与から14日まで測定した。結果を図16~20に示す。
【0298】
結果は、試験したコンジュゲートの5つすべてが、強い用量依存腫瘍阻害を呈することを示す。3mg/kgと10mg/kgの用量で、腫瘍が完全に根絶されたようであった。BT17BDC53、61および68は、10mg/kgまで耐容性が良好であった。BT17BDC62は、約5mg/kgまで耐容性であった。BT17BDC59は、3mg/kgまで耐容性であった。このことは、BT17BDC53、61および68におけるN末端Sar10スペーサーの存在が、コンジュゲートの全身毒性を低減することを示唆する。
【0299】
上記明細書で言及されたすべての刊行物は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。本発明について記載した態様および実施形態の種々の修正および変更は、本発明の範囲から逸脱することなく、当業者にとって明らかであろう。本発明は、特定の好ましい実施形態に関連して記載したが、特許請求された本発明は、このような特定の実施形態に不当に限定されるべきではないことが理解されるべきである。実際に、当業者に明らかである本発明を実行するために記載された方式の種々の修正は、以下の請求項の範囲内にあることが意図される。
出願時の特許請求の範囲は以下の通り。
[請求項1]
システイン、L-2,3-ジアミノプロピオン酸(Dap)、N-ベータ-アルキル-L-2,3-ジアミノプロピオン酸(N-AlkDap)およびN-ベータ-ハロアルキル-L-2,3-ジアミノプロピオン酸(N-HAlkDap)から選択される3つの残基であって、少なくとも2つのループ配列によって分離されている3つの残基を含むポリペプチドと、分子足場とを含むMT1-MMPに特異的なペプチドリガンドであって、前記ペプチドが、前記ポリペプチドの前記DapまたはN-AlkDapまたはN-HAlkDap残基との、共有結合によるアルキルアミノ連結によって、かつ前記3つの残基がシステインを含む場合、前記ポリペプチドの前記システイン残基とのチオエーテル連結によって前記足場に連結しており、その結果、2つのポリペプチドループが前記分子足場上に形成され、前記ペプチドリガンドが、式(II):
-A-X-U/O-X-X-G-A-E-D-F-Y-X10-X11-A-(配列番号1) (II)
またはその薬学的に許容される塩
(式中A、A、およびAは、独立して、システイン、L-2,3-ジアミノプロピオン酸(Dap)、N-ベータ-アルキル-L-2,3-ジアミノプロピオン酸(N-AlkDap)、またはN-ベータ-ハロアルキル-L-2,3-ジアミノプロピオン酸(N-HAlkDap)であり、但し、A、A、およびAのうちの少なくとも1つはDap、N-AlkDapまたはN-HAlkDapであることを条件とし;
Xは、任意のアミノ酸残基を表し;
Uは、N、C、Q、M、SおよびTから選択される、極性の、無電荷アミノ酸残基を表し;
Oは、G、A、I、L、PおよびVから選択される、非極性の、脂肪族アミノ酸残基を表す)
のアミノ酸配列を含む、ペプチドリガンド。
[請求項2]
が、以下のアミノ酸、すなわち、Y、M、FまたはV、例えば、Y、MまたはF、特にYまたはM、さらに特にYのうちのいずれか1つから選択される、請求項1に記載のペプチドリガンド。
[請求項3]
U/Oが、U、例えば、N、またはO、例えば、Gから選択される、請求項1または2に記載のペプチドリガンド。
[請求項4]
が、UまたはZから選択され、Uが、N、C、Q、M、SおよびTから選択される、極性の、無電荷アミノ酸残基を表し、Zが、DまたはEから選択される、極性の、負電荷アミノ酸残基を表し、特に3位のUが、Qから選択されるかまたは3位のZが、Eから選択される、請求項1から3のいずれか1項に記載のペプチドリガンド。
[請求項5]
が、Jから選択され、Jが、F、WおよびYから選択される、非極性の、芳香族アミノ酸残基を表す、請求項1から4のいずれか1項に記載のペプチドリガンド。
[請求項6]
10が、Zから選択され、Zが、DまたはE、例えば、Dから選択される、極性の、負電荷アミノ酸残基を表す、請求項1から5のいずれか1項に記載のペプチドリガンド。
[請求項7]
11が、Oから選択され、Oが、G、A、I、L、PおよびV、例えば、Iから選択される、非極性の、脂肪族アミノ酸残基を表す、請求項1から6のいずれか1項に記載のペプチドリガンド。
[請求項8]
式(II)の二環が、式(IIa)の化合物:
-A-Y/M/F/V-U/O-U/Z-J-G-A-E-D-F-Y-Z-O-A- (配列番号6)(IIa)
(式中、U、O、JおよびZは、上記に定義した通りである);または
式(IIb)の化合物:
-A-Y/M/F/V-N/G-E/Q-F-G-A-E-D-F-Y-D-I-A- (配列番号7)(IIb);または
式(IIc)の化合物:
-A-Y/M/F-N/G-E/Q-F-G-A-E-D-F-Y-D-I-A- (配列番号8)(IIc);または
式(IId)の化合物:
-A-Y/M-N-E/Q-F-G-A-E-D-F-Y-D-I-A- (配列番号9)(IId);または
式(IIe)の化合物:
-A-Y-N-E-F-G-A-E-D-F-Y-D-I-A- (17-69-07)(配列番号2)(IIe)
である、請求項1から7のいずれか1項に記載のペプチドリガンド。
[請求項9]
式(II)の二環が、
-A-Y-N-E-F-G-A-E-D-F-Y-D-I-A- (17-69-07) (配列番号2);
-A-M-N-Q-F-G-A-E-D-F-Y-D-I-A- (17-69-12) (配列番号10);
-A-F-G-E-F-G-A-E-D-F-Y-D-I-A- (17-69-02) (配列番号11);
-A-V-N-E-F-G-A-E-D-F-Y-D-I-A- (17-69-03) (配列番号12);
-A-F-N-E-F-G-A-E-D-F-Y-D-I-A- (17-69-04) (配列番号13);
-A-Y-N-E-Y-G-A-E-D-F-Y-D-I-A- (17-69-07-N057)(配列番号14);および
-A-Y-N-E-W-G-A-E-D-F-Y-D-I-A- (17-69-44-N002)(配列番号15)、
例えば、
-A-Y-N-E-F-G-A-E-D-F-Y-D-I-A- (17-69-07) (配列番号2);および
-A-M-N-Q-F-G-A-E-D-F-Y-D-I-A- (17-69-12) (配列番号10)、
特に、
-A-Y-N-E-F-G-A-E-D-F-Y-D-I-A- (17-69-07) (配列番号2)、
最も特に、
配列番号16:((bAla)-Sar10-AA(D-Ala)NE(1Nal)(D-Ala)AEDFYD(tBuGly)Aとして示されるDapホモログ;
および配列番号17:AA(D-Ala)NE(1Nal)(D-Ala)AEDFYD(tBuGly)Aとして示されるDapホモログ
から選択される配列を含む、請求項1から8のいずれか1項に記載のペプチドリガンド。
[請求項10]
、AおよびAのうちの2つが、Dap、N-AlkDapまたはN-HAlkDapから選択され、A、AおよびAのうちの3つ目がシステインであり、好ましくは、Aがシステインである、請求項1から9のいずれか1項に記載のペプチドリガンド。
[請求項11]
、AおよびAがそれぞれ、N-AlkDapまたはN-HAlkDapである、請求項1から9のいずれか1項に記載のペプチドリガンド。
[請求項12]
1つまたは複数のチロシン残基が、フェニルアラニン残基によって置き換えられている、請求項1から11のいずれか1項に記載のペプチドリガンド。
[請求項13]
N末端および/またはC末端の修飾、1つまたは複数のアミノ酸残基の1つまたは複数の非天然アミノ酸残基による置き換え(例えば、1つまたは複数の極性アミノ酸残基の1つまたは複数の等配電子アミノ酸または等電子アミノ酸による置き換え、1つまたは複数の疎水性アミノ酸残基の他の非天然の、等配電子アミノ酸または等電子アミノ酸による置き換え)、スペーサー基の付加、1つまたは複数の酸化感受性アミノ酸残基の1つまたは複数の酸化抵抗性アミノ酸残基による置き換え、1つまたは複数のアミノ酸残基のアラニンによる置き換え、1つまたは複数のL-アミノ酸残基の1つまたは複数のD-アミノ酸残基による置き換え、二環性ペプチドリガンド内の1つまたは複数のアミド結合のNアルキル化、1つまたは複数のペプチド結合のサロゲート結合による置き換え、ペプチド主鎖長の改変、1つまたは複数のアミノ酸残基のα炭素上の水素の別の化学基による置換、ならびにシステイン、リシン、グルタミン酸およびチロシンなどのアミノ酸の適切なアミン、チオール、カルボン酸およびフェノール反応性試薬による、合成後の生体直交型修飾から選択される1つまたは複数の修飾をさらに含む、請求項1から12のいずれか1項に記載のペプチドリガンド。
[請求項14]
適切なアミノ反応性化学を使用するN末端修飾、および/または適切なカルボキシ反応性化学を使用するC末端修飾を含む、請求項13に記載のペプチドリガンド。
[請求項15]
前記N末端修飾が、エフェクター基のコンジュゲーションおよびその標的に対する前記二環性ペプチドの効力の保持を容易にする分子スペーサー基、例えば、Ala、G-Sar10-A基またはbAla-Sar10-A基の付加を含む、請求項13または14に記載のペプチドリガンド。
[請求項16]
前記N末端および/またはC末端の修飾が、細胞毒性剤の付加を含む、請求項13から15のいずれか1項に記載のペプチドリガンド。
[請求項17]
アミノ酸位1および/または9における修飾を含む、請求項13から16のいずれか1項に記載のペプチドリガンド。
[請求項18]
1つまたは複数のアミノ酸残基の1つまたは複数の非天然アミノ酸残基による置き換えを含む、請求項13から17のいずれか1項に記載のペプチドリガンド。
[請求項19]
前記非天然アミノ酸残基が、4位において置換され、1-ナフチルアラニン、2-ナフチルアラニン、3,4-ジクロロフェニルアラニン、およびホモフェニルアラニン、例えば、1-ナフチルアラニン、2-ナフチルアラニン、および3,4-ジクロロフェニルアラニン、特に、1-ナフチルアラニンから選択される、請求項18に記載のペプチドリガンド。
[請求項20]
前記非天然アミノ酸残基が、9位および/または11位において置換され、9位について4-ブロモフェニルアラニンもしくはペンタフルオロ-フェニルアラニン、および/または11位についてtert-ブチルグリシンから選択される、請求項18または請求項19に記載のペプチドリガンド。
[請求項21]
前記非天然アミノ酸残基、例えば、9位に存在する非天然アミノ酸残基が、4-ブロモフェニルアラニンから選択される、請求項20に記載のペプチドリガンド。
[請求項22]
前記非天然アミノ酸残基、例えば、11位に存在する非天然アミノ酸残基が、tert-ブチルグリシンから選択される、請求項20に記載のペプチドリガンド。
[請求項23]
1位のアミノ酸残基が、D-アミノ酸、例えば、D-アラニンで置換されている、請求項13に記載のペプチドリガンド。
[請求項24]
5位のアミノ酸残基が、D-アミノ酸、例えば、D-アラニンまたはD-アルギニンで置換されている、請求項13に記載のペプチドリガンド。
[請求項25]
複数の上述の修飾、例えば、1および/または5位におけるD-アラニン、4位における1-ナフチルアラニン、9位における4-ブロモフェニルアラニンならびに11位におけるtert-ブチルグリシンなどの修飾のうちの2、3、4もしくは5またはそれより多い修飾、例えば、前記5つの修飾のすべてを含む、請求項18に記載のペプチドリガンド。
[請求項26]
式(II)の二環が、ヒト、マウスおよびイヌのMT1-MMPヘモペキシンドメインの高親和性結合剤である、請求項1から25のいずれか1項に記載のペプチドリガンド。
[請求項27]
式(II)の二環が、MT1-MMPに対して選択性であるが、MMP-1、MMP-2、MMP-15およびMMP-16と交差反応しない、請求項1から26のいずれか1項に記載のペプチドリガンド。
[請求項28]
請求項1から25のいずれか1項に記載の式(II)のアミノ酸配列を含む直鎖状ペプチド。
[請求項29]
請求項1から27のいずれか1項に記載のペプチドリガンドを作製する方法であって、請求項25に記載のペプチドを準備することと、前記ペプチドの前記システインの側鎖およびジアミノプロピオン酸またはβ-N-アルキルジアミノプロピオン酸残基の-SH基およびアミノ基とのチオエーテル連結およびアルキルアミノ連結を形成するための少なくとも3つの反応性部位を有する足場分子を準備することと、前記ペプチドと前記足場分子の間に前記チオエーテル連結およびアルキルアミノ連結を形成することとを含む方法。
[請求項30]
1つまたは複数のエフェクター基および/または官能基にコンジュゲートした、請求項1から27のいずれか1項に記載のペプチドリガンドを含む薬物コンジュゲート。
[請求項31]
前記エフェクター基および/または官能基が、細胞毒性剤または金属キレーターを含む、請求項30に記載の薬物コンジュゲート。
[請求項32]
前記細胞毒性剤が、切断可能な結合、例えば、ジスルフィド結合によって前記二環性ペプチドに連結する、請求項31に記載の薬物コンジュゲート。
[請求項33]
前記細胞毒性剤が、DM1またはMMAEから選択される、請求項31または請求項32に記載の薬物コンジュゲート。
[請求項34]
以下の構造:
【化29】
(式中、R、R、RおよびRは、水素またはC1~C6アルキル基を表し、
毒素は、本明細書で定義した任意の適切な細胞毒性剤を指し、
二環は、本明細書で定義した任意の適切な二環性ペプチドを表し、
nは、1から10から選択される整数を表し、
mは、0から10から選択される整数を表す)
を有する、請求項30から33のいずれか1項に記載の薬物コンジュゲート。
[請求項35]
、R、RおよびRがすべてHであるか;またはR、R、RがすべてHでありR=メチル;またはR、R=メチルかつR、R=H;またはR、R=メチルかつR、R=H;またはR、R=HかつR、R=C1~C6アルキルのいずれかである、請求項34に記載の薬物コンジュゲート。
[請求項36]
以下の構造:
【化30】
を有する、請求項30から33のいずれか1項に記載の薬物コンジュゲート。
[請求項37]
以下の構造:
【化31】
(式中、(alk)は、式C2n(nは、1から10である)の直鎖状アルキレン基または分枝状アルキレン基である)
を有する、請求項30から33のいずれか1項に記載の薬物コンジュゲート。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10-1】
図10-2】
図10-3】
図11
図12-1】
図12-2】
図13-1】
図13-2】
図13-3】
図14
図15
図15a
図15b
図15c
図15d
図16
図17
図18
図19
図20
【配列表】
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