(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】マスキングテープの巻取装置および巻取方法
(51)【国際特許分類】
B65H 18/10 20060101AFI20231120BHJP
B65H 23/188 20060101ALI20231120BHJP
B65H 23/195 20060101ALI20231120BHJP
C25D 5/02 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
B65H18/10
B65H23/188
B65H23/195
C25D5/02 H
(21)【出願番号】P 2020002816
(22)【出願日】2020-01-10
【審査請求日】2022-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】506365131
【氏名又は名称】DOWAメタルテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(72)【発明者】
【氏名】荒木 秀憲
(72)【発明者】
【氏名】三島 秀夫
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-124431(JP,A)
【文献】特開平11-060004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 18/10
B65H 23/188
B65H 23/195
C25D 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行する条材から剥ぎ取られたマスキングテープを巻き取る巻取装置であって、
前記マスキングテープを巻き取る巻取機と、
前記巻取機の上流側に配置された、条材の走行速度を変化させるアキューム機構を備え
、
前記アキューム機構を駆動して、前記アキューム機構から導出される条材の走行速度を制御するアキューム駆動部と、前記アキューム機構に導入または前記アキューム機構から導出される条材の走行速度を測定する少なくとも一方の速度センサーを備え、
前記アキューム機構から導出される条材の走行速度の設定値と、前記速度センサーの少なくとも一方で測定される条材の走行速度に基づいて、前記アキューム駆動部が制御される、マスキングテープ巻取装置。
【請求項2】
前記マスキングテープ巻取装置の下流側に条材巻取装置を備える、
請求項1に記載のマスキングテープ巻取装置。
【請求項3】
前記マスキングテープ巻取装置の上流側にめっき加工装置を備える、
請求項1または2に記載のマスキングテープ巻取装置。
【請求項4】
前記めっき加工装置の上流側に条材巻出装置を備える、
請求項3に記載のマスキングテープ巻取装置。
【請求項5】
条材から剥ぎ取られたマスキングテープを巻き取るマスキングテープの剥ぎ取り工程において、マスキングテープの前端部を条材から剥ぎ取り、アキューム機構と巻取機からなるマスキングテープ巻取装置の巻取機に設けられた巻き取りロールに、剥がしたマスキングテープを巻き付けた後、アキューム機構から導出される条材の走行速度を増加させ
、
前記アキューム機構から導出される条材の走行速度を測定する速度センサーを備え、
前記速度センサーで測定される条材の走行速度に基づいて、前記巻取機の巻取速度を制御することを特徴とする、マスキングテープの巻取方法。
【請求項6】
前記マスキングテープの剥ぎ取り工程の上流側にめっき加工工程を備えることを特徴とする、
請求項5に記載のマスキングテープの巻取方法。
【請求項7】
前記めっき加工工程の上流側に設けられた条材巻出装置で、マスキングテープが貼られた条材をめっき加工工程に送り出す条材の送り出し工程を有することを特徴とする、
請求項6に記載のマスキングテープの巻取方法。
【請求項8】
前記マスキングテープ巻取装置の下流側に設けられた条材巻取装置で、マスキングテープが剥がされた条材を巻き取る条材の巻取工程を有することを特徴とする、
請求項5~7のいずれか1項に記載のマスキングテープの巻取方法。
【請求項9】
前記条材の材質が金属または樹脂であることを特徴とする、
請求項5~8のいずれか1項に記載のマスキングテープの巻取方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、条材に貼り付けられたマスキングテープを回収するための巻取装置および巻取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、金属や樹脂などの材料の条材に対して部分めっき処理を行う場合、条材表面の所望の部分のみをめっきすることができるように、めっき処理が不要な部分にマスキングテープを貼り付けて、その状態でめっき処理を行う手法がある。
【0003】
例えば、条材表面の一方の面のみにめっきを施す場合には、他方の面全体にマスキングテープを貼り付ける。また、条材に所謂ストライプめっきを施す場合には、条材表面の一部分にマスキングテープを貼り付ける。このようにマスキングテープを貼り付けた状態でめっき処理を行うと、条材表面のマスキングテープを貼り付けた部分を除く、その他の部分にめっきが施される。
【0004】
条材に貼り付けたマスキングテープは、めっき処理後に剥ぎ取られて回収される。めっき処理の対象となる条材の長さは非常に長いため、マスキングテープの回収作業には、一般に、めっき処理ラインを走行する条材の走行速度に連動したマスキングテープ巻取装置が使用される。
【0005】
従来のマスキングテープ巻取装置として、例えば本出願人により、特許文献1の発明が開示されている。特許文献1には、走行する条材からマスキングテープが剥がれ始める位置を撮影装置で撮影し、撮影された剥がれ位置の位置情報に基づいて、マスキングテープが巻き付けられるボビンの回転速度を自動的に変更するようにした巻取装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
かかる巻取装置では、マスキングテープを剥がす際に、最初に手作業でマスキングテープを条材から剥がして巻き取り装置のボビンにセットすることが必要である。近年、生産性向上のためにめっきラインのラインスピードの高速化が進められており、ラインスピードが速くなると、手作業でマスキングテープを剥がしてセットする作業が間に合わなくなったり、作業の安全面の確保が難しくなる恐れがあった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ラインスピードの高速化に対応して、マスキングテープをはがす作業を容易にさせることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明によれば、走行する条材から剥ぎ取られたマスキングテープを巻き取る巻取装置であって、前記マスキングテープを巻き取る巻取機と、前記巻取機の上流側に配置された、条材の走行速度を変化させるアキューム機構を備え、前記アキューム機構を駆動して、前記アキューム機構から導出される条材の走行速度を制御するアキューム駆動部と、前記アキューム機構に導入または前記アキューム機構から導出される条材の走行速度を測定する少なくとも一方の速度センサーを備え、前記アキューム機構から導出される条材の走行速度の設定値と、前記速度センサーの少なくとも一方で測定される条材の走行速度に基づいて、前記アキューム駆動部が制御される、マスキングテープ巻取装置が提供される。
【0010】
このマスキングテープ巻取装置において、前記マスキングテープ巻取装置の下流側に条材巻取装置を備えても良い。また、前記マスキングテープ巻取装置の上流側にめっき加工装置を備えても良い。また、前記めっき加工装置の上流側に条材巻出装置を備えても良い。
【0011】
また、本発明によれば、条材から剥ぎ取られたマスキングテープを巻き取るマスキングテープの剥ぎ取り工程において、マスキングテープの前端部を条材から剥ぎ取り、アキューム機構と巻取機からなるマスキングテープ巻取装置の巻取機に設けられた巻き取りロールに、剥がしたマスキングテープを巻き付けた後、アキューム機構から導出される条材の走行速度を増加させ、前記アキューム機構から導出される条材の走行速度を測定する速度センサーを備え、前記速度センサーで測定される条材の走行速度に基づいて、前記巻取機の巻取速度を制御することを特徴とする、マスキングテープの巻取方法が提供される。
【0012】
このマスキングテープの巻取方法において、前記マスキングテープの剥ぎ取り工程の上流側にめっき加工工程を備えても良い。また、前記めっき加工工程の上流側に設けられた条材巻出装置で、マスキングテープが貼られた条材をめっき加工工程に送り出す条材の送り出し工程を有していても良い。また、前記マスキングテープ巻取装置の下流側に設けられた条材巻取装置で、マスキングテープが剥がされた条材を巻き取る条材の巻取工程を有していても良い。前記条材の材質が金属または樹脂であっても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明のマスキングテープ巻取装置および巻取方法にあっては、マスキングテープを条材から剥がす際に、アキューム機構によって条材の走行速度を変化させることができる。このため、ラインスピードが速くなった場合でも、条材の走行速度をマスキングテープを剥がしやすい速度にすることによって、マスキングテープを剥がしてセットする作業が間に合わなくなることを回避できる。このように本発明によれば、ラインスピードの高速化に対応して、マスキングテープをはがす作業を容易にさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係るマスキングテープ巻取装置の概略構成を示す平面図である。
【
図2】アキューム機構の説明図であり、アキューム機構から導出される条材の速度を遅くするように制御する状態を示している。
【
図3】アキューム機構の説明図であり、アキューム機構から導出される条材の速度を早くするように制御する状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、マスキングテープが貼り付けられた金属等の条材に連続的に全面めっき又は(ストライプ状の)部分めっきを行うフープめっき(リール to リールめっき)へ好適に適用される。そこで、本発明の実施形態の説明は、フープめっきラインに設けられたマスキングテープを巻き取る巻取装置(以下、単に「巻取装置」という)に基づいて説明する。なお、フープめっきラインの具体的な工程は、金属条材の送り出し(アンコイラー(巻出機))工程→めっき工程(めっき加工)→マスキングテープの剥ぎ取り工程(マスキングテープ巻取装置)→金属条材の巻き取り(リール(巻取機))工程となっている。また、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
図1に示すように、本実施形態における巻取装置1は、走行する帯状の条材2から剥ぎ取られたマスキングテープ3を巻き取る巻取機5と、条材2の走行速度を変化させるアキューム機構6を備えている。
図1中、条材2は右から左に向かって走行する。
図1中、X方向が条材2の走行方向である。したがって、
図1中、右側が上流側であり、左側が下流側である。アキューム機構6は、巻取機5の上流側(
図1中の右側)に配置されており(隣接しており)、アキューム機構から導出された条材2が、次に巻取機5に導入される。なお、図示はしないが、巻取装置1の上流側(アキューム機構6の上流側)には、条材2を送り出すアンコイラー(条材巻出機)と、条材2にめっき処理を行うめっき装置が配置されており、アンコイラーから送り出されて、めっき装置でめっき処理された条材2が、連続的に巻取装置1に導入される。また、図示はしないが、巻取装置1の下流側(巻取機5の下流側)には、条材2を巻き取るリール(条材巻取機)が配置されており、巻取装置1にてマスキングテープ3が剥ぎ取られた条材2が、巻き取るリール(条材巻取機)で巻き取られる。
【0017】
図1に例示される実施形態においては、巻取機5は、条材2を挟んで両側に2つの巻取部(第1巻取部5a、第2巻取部5b)を備えており、第1巻取部5aで条材2の一方の面のマスキングテープ3を巻き取り、第2巻取部5bで他方の面のマスキングテープ3を巻き取るように構成されている。第1巻取部5aと第2巻取部5bは同様の構成を有しているため、以下の説明においては、第1巻取部5aと重複する内容の第2巻取部5bの説明については省略する。
【0018】
図1に示すように、巻取機5は、X方向に走行する条材2の下方に設けられた支持台10と、その支持台10の上面に設けられ、走行する条材2を挟み込むように互い違いに配置された回転可能な3つの支点ロール11を備えている。各支点ロール11は、走行する条材2に接するように配置されており、上流側から2つ目と3つ目の支点ロール11は、後述のマスキングテープの巻き取り時において、条材2から剥ぎ取られたマスキングテープ3が引っ掛けられる支点ロール(以下、「剥ぎ取り用支点ロール11a」という)である。
【0019】
また、支持台10の上面には、走行する条材2の表面を加熱するヒーター12(パネルヒーター等)が設けられている。これにより、マスキングテープの粘着力を弱めることができ、条材2からマスキングテープが剥がしやすくなる。
【0020】
第1巻取部5aには、支持台10と同等の高さを有する台15が設けられている。その台15の上面には、剥ぎ取り用支点ロール11aによって条材2の一方の面から剥ぎ取ったマスキングテープ3を巻き取る巻き取りロール16と、剥ぎ取り用支点ロール11aと巻き取りロール16との間でマスキングテープ3を中継する中継ロール17および剥ぎ取りブライドルロール18とが設けられている。
【0021】
中継ロール17は、マスキングテープ3を巻き取る際に従動して回転するように構成されている。一方、巻き取りロール16と剥ぎ取りブライドルロール18は駆動装置を備えており、剥ぎ取りブライドルロール18は、条材2の走行速度に基づいて、回転速度を変更させるように、剥ぎ取りブライドルロール18の駆動装置が制御される。巻き取りロール16の駆動装置は、剥ぎ取りブライドルロール18から搬送されるマスキングテープ3によって巻き取りロール16に加わる負荷に応じて回転速度を変更させるように制御する。
【0022】
なお、条材2の他方の面から剥ぎ取ったマスキングテープ3を巻き取る第2巻取部5bも同様の構成を有している。そのため、共通の符号を付することにより、重複する説明を省略する。
【0023】
アキューム機構6は、導入ロール20および導出ロール21の間に、一対のガイドロール組22、23を配置した構成を有している。一方のガイドロール組22は複数のガイドロール24を備えており、同様に、他方のガイドロール組23も複数のガイドロール25を備えている。アキューム機構6に設けられている各ロール(導入ロール20、導出ロール21、ガイドロール24、25は何れも従動ロールであるが、一対のガイドロール組22、23(ガイドロール24とガイドロール25)は、アキューム駆動部26の駆動により、互いの距離を変更できるように構成されている。すなわち、
図2に示すように、アキューム駆動部26の駆動により、一方のガイドロール組22(ガイドロール24)と他方のガイドロール組23(ガイドロール25)とを互いに離間するように移動させることができ、また、
図3に示すように、アキューム駆動部26の駆動により、一方のガイドロール組22(ガイドロール24)と他方のガイドロール組23(ガイドロール25)とを互いに近接させるように移動させることができる。
【0024】
アキューム機構6の上流側には、アキューム機構6に導入される条材2の速度を測定するアキューム機構6の上流側速度センサー30が設けられている。また、アキューム機構6の下流側には、アキューム機構6から導出される条材2の速度を測定するアキューム機構6の下流側速度センサー32が設けられている。なお、この実施の形態では、下流側速度センサー32は、巻取機5の下流側に配置されている。後述するように、アキューム駆動部26の駆動は、これら上流側速度センサー30または下流側速度センサー32、或いはこれら両方のセンサーで測定される条材2の速度に基づいて制御することが可能である。すなわち、上流側速度センサー30、下流側速度センサー32の少なくとも一方で測定される条材2の速度に基づいて、一対のガイドロール組22、23(ガイドロール24とガイドロール25)間の距離を変更できるように構成されている。
【0025】
本実施形態における巻取装置1は以上のように構成されている。次に、上記構成の巻取装置1を用いて、条材2から剥ぎ取られたマスキングテープ3を巻き取る方法について説明する。
【0026】
図1は、巻取装置1に条材2が導入され、巻取機5において、条材2の走行速度に合わせてマスキングテープ3が自動的に巻き取られている状態を示している。
このように巻取装置1に条材2を導入する場合、最初にダミー材を(図示しない)アンコイラーから送り出して、(図示しない)めっき装置及び巻取装置1に導入し、ダミー材の後端と条材2の先端を接続することにより、ダミー材に引き続いてアンコイラーから送り出した条材2を巻取装置1に導入することができる。なお、ダミー材を送り出すアンコイラーと、条材2を送り出すアンコイラーは別に設けても良い。
そして、巻取機5において条材2からマスキングテープ3が巻き取られる状態とするための手順としては、まず、ダミー材に引き続いて条材2の先端が第1巻取部5aに到達した後、作業者が条材2の一方の面に貼り付けられたマスキングテープ3の前端部を剥ぎ取る。そして、マスキングテープ3の前端部を引っ張りながら、後続のマスキングテープ3を剥がしていく。
剥がしたマスキングテープ3がある程度の長さとなったら、剥ぎ取り用支点ロール11a、中継ロール17、剥ぎ取りブライドルロール18の順にマスキングテープ3を引っ掛けていき、最後に第1巻取部5aの巻き取りロール16にマスキングテープ3を巻き付ける。こうして、支持台10の上面を走行する条材2からマスキングテープ3を剥ぎ取り、マスキングテープ3を第1巻取部5aにセットする。
【0027】
その後、駆動装置を作動させて剥ぎ取りブライドルロール18と巻き取りロール16を回転させる。これにより、条材2の一方の面から剥ぎ取られたマスキングテープ3は、走行する条材2の走行速度に合わせて自動的に剥ぎ取られ、巻き取りロール16に巻き取られていく。
【0028】
なお、同様の作業を第2巻取部5bにおいても行い、条材2の他方の面に貼り付けられたマスキングテープ3を第2巻取部5bにセットする。これにより、条材2の他方の面から剥ぎ取られたマスキングテープ3は、走行する条材2の走行速度に合わせて自動的に剥ぎ取られ、第2巻取部5bの巻き取りロール16に同様に巻き取られていく。
【0029】
ところで近年、めっきラインのラインスピードの高速化が進められており、めっき加工工程のラインスピードを速く設定すると、マスキングテープの剥ぎ取り工程において手作業でマスキングテープ3を剥がしてセットする作業が間に合わなくなる場合がある。そこで、手作業でマスキングテープ3を条材から剥がすことが困難なほど、めっき加工工程において高速なラインスピードに設定する場合は、手作業でマスキングテープ3を条材から剥がすときに、
図2に示すように、アキューム駆動部26の駆動により、一方のガイドロール組22(ガイドロール24)と他方のガイドロール組23(ガイドロール25)とを互いに離間させるように移動する。これにより、アキューム機構6に導入されている条材2の速度が、一対のガイドロール組22、23との間で吸収され、導出ロール21を経てアキューム機構6から導出される条材2の走行速度が低下させられる。
その結果、巻取機5に導入される条材2の走行速度が低下し、巻取機5の第1巻取部5aおよび第2巻取部5bでは、ゆっくりとした速度で作業者が条材2に貼り付けられたマスキングテープ3の前端部を剥ぎ取り、剥がしたマスキングテープ3を、剥ぎ取り用支点ロール11a、中継ロール17、剥ぎ取りブライドルロール18、巻き取りロール16の順に容易に巻き付けることができる。この場合、前記剥ぎ取り、巻き付け作業に適したアキューム機構6から導出される(アキューム機構6の下流側の)条材の走行速度の設定値と、アキューム機構6の下流側速度センサー32または上流側速度センサー30、或いはこれら両方の速度センサーで測定される条材2の走行速度に基づいてアキューム駆動部26の駆動を制御し、アキューム機構6から導出される支持台10の上面を走行する条材2の走行速度を前記設定値とするよう適切に制御するのが好ましい。そして、剥ぎ取りブライドルロール18と巻き取りロール16の回転駆動により、条材2から剥ぎ取られたマスキングテープ3は、第1巻取部5aおよび第2巻取部5bの巻き取りロール16にそれぞれ巻き取られていく。
【0030】
また、このように条材2から剥がしたマスキングテープ3を第1巻取部5aと第2巻取部5bにセットした後は、
図3に示すように、アキューム駆動部26の駆動により、一対のガイドロール組22、23とが互いに近接させることができる。この場合に、一対のガイドロール組22、23が近接させられた場合は、導出ロール21を経てアキューム機構6から導出される条材2の速度が一時的に大きくなる。すなわち、マスキングテープ3の前端部を条材2から剥ぎ取り、巻取機5に設けられた巻き取りロール16に、剥がしたマスキングテープ3を巻き付けた後、アキューム機構6から導出される条材2の走行速度がめっき加工工程のラインスピードと同じになるまで増加させられる。しかしながら、条材2から剥がしたマスキングテープ3は、既に第1巻取部5aと第2巻取部5bにおいて、剥ぎ取り用支点ロール11a、中継ロール17、剥ぎ取りブライドルロール18、巻き取りロール16の順に巻き付けてセットされているので、剥ぎ取りブライドルロール18と巻き取りロール16の回転駆動により、条材2から剥ぎ取られたマスキングテープ3は、巻き取りロール16に円滑に巻き取ることができる。この場合、アキューム機構6の下流側速度センサー32で測定される支持台10の上面を走行する条材2の走行速度に基づいて、剥ぎ取りブライドルロール18の回転速度が変更させられ、また、剥ぎ取りブライドルロール18から搬送されるマスキングテープ3によって巻き取りロール16に加わる負荷に応じて巻き取りロール16の回転速度を変更させられる。したがって、条材2の速度が一時的に大きくなった場合でも、条材2から剥ぎ取られたマスキングテープ3は、巻き取りロール16に一定の負荷で巻き取られていく。剥ぎ取りブライドルロール18或いは巻き取りロール16の回転速度は、アキューム機構6の下流速度センサー32で測定される条材2の走行速度よりも大きくなるように設定するのが好ましい。
なお、前記アキューム機構6から導出される条材2の走行速度の増加は、めっき加工工程での条材の走行速度の設定値と、アキューム機構の上流側速度センサー30または下流側速度センサー32、或いはこれら両方の速度センサーで測定される条材2の走行速度に基づいてアキューム駆動部26の駆動を制御し、条材2の走行速度を前記設定値とするよう適切に制御するのが好ましい。
【0031】
以上の通り、本実施形態によれば、走行する条材2からマスキングテープ3を剥ぎ取って第1巻取部5aおよび第2巻取部5bにセットする際に、アキューム機構6を駆動することで、条材2の走行速度を変化させることができる。例えば、めっきラインのラインスピードの高速化により、アキューム機構6から導出される条材2の走行速度が速くなっているような場合には、アキューム駆動部26の駆動により、一対のガイドロール組22、23とが互いに離間させられる。これにより、アキューム機構6に導入される条材2の走行速度が、一対のガイドロール組22、23との間で吸収され、導出ロール21を経てアキューム機構6から導出される条材2の走行速度が低下させられる。その結果、巻取機5に導入される条材2の走行速度が低下し、巻取機5の第1巻取部5aおよび第2巻取部5bでは、ゆっくりとした走行速度で作業者が条材2に貼り付けられたマスキングテープ3の前端部を剥ぎ取り、剥がしたマスキングテープ3を、剥ぎ取り用支点ロール11a、中継ロール17、剥ぎ取りブライドルロール18、巻き取りロール16の順に容易に巻き付けることができる。これにより、条材2から剥ぎ取ったマスキングテープ3を第1巻取部5aおよび第2巻取部5bに容易にセットすることが可能となる。このため、条材2に貼り付けられたマスキングテープ3が剥がれなかったり、あるいは、剥ぎ取られたマスキングテープ3が途中で切れたりすることがなくなり、確実にマスキングテープ3を剥ぎ取って巻き取ることができる。これにより、条材表面にマスキングテープ3が残存することに起因するめっき不良を製品に生じさせないようにすることができる。
【0032】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0033】
例えば、条材巻出機から条材2を送り出して、めっき工程(装置)でめっきを行うに際し、条材巻出機の導出側とめっき装置の間に同様のアキューム機構を設置し、めっき工程を行う際の条材2の走行速度を調整することもできる。また、マスキングテープ巻取装置1の導出側と条材の巻取装置の間にアキューム機構を設置し、金属条材の巻き取り(リール(巻取機))工程を行う際の条材2の走行速度を調整することもできる。これらの(マスキングテープ巻取装置1に設けられたアキューム機構6とは異なる)アキューム機構により、ダミー材と条材(被めっき材)の接続や切り離しを、めっき加工工程や条材の巻取工程のラインスピードを小さくすることなく効率的に行うことができる。ヒーター12、中継ぎロール17、剥ぎ取りブライドルロール18は省略することもでき、アキューム機構6の下流側速度センサー32は、アキューム機構6と巻取装置1の間に設けてもよい。
また、アキューム機構6も条材2の速度が制御できればよく、前述のものに限定されず、例えばガイドロールの一方が固定され、他方のガイドロールのみが移動するものでもよい。さらに、マスキングテープ巻取装置1の下流側に条材巻取装置を備えても良い。その場合、条材巻取機において、マスキングテープが剥がされた条材を巻き取る金属条材の巻取工程を有するようにしても良い。また、マスキングテープ巻取装置1の上流側にめっき加工装置を備えても良い。その場合、めっき加工装置の上流側に条材巻出装置を備えても良い。
また、条材巻出装置とマスキングテープ巻取装置1の間、マスキングテープ巻取装置1と条材巻取装置の間の少なくとも一方に、条材を搬送するための駆動装置を備えた駆動ロール(ブライドルロール)を備えることが好ましい。この場合、前記剥ぎ取り、巻き付け作業に適したアキューム機構6から導出される(アキューム機構6の下流側の)条材の走行速度の設定値と、前記駆動ロールの回転速度に基づいてアキューム駆動部26の駆動を制御し、アキューム機構6から導出される支持台10の上面を走行する条材2の走行速度を前記設定値とするよう適切に制御することができる。すなわち上流側速度センサー30や下流側速度センサー32がなくとも駆動ロールで条材2の走行速度を制御することができるが、より正確に条材2の走行速度を制御するためには速度センサーを備えることが望ましい。
前記剥ぎ取り、巻き付け作業に適したアキューム機構6から導出される(アキューム機構6の下流側の)条材の走行速度の設定値と、アキューム機構6の下流側速度センサー32または上流側速度センサー30、或いはこれら両方の速度センサーで測定される条材2の走行速度に基づいてアキューム駆動部26の駆動を制御し、アキューム機構6から導出される支持台10の上面を走行する条材2の走行速度を前記設定値とするよう適切に制御するのが好ましい。
また、前記剥ぎ取り、巻き付け作業に適したアキューム機構6から導出される(アキューム機構6の下流側の)条材の走行速度の設定値と、条材巻出装置の条材巻出ロール、条材巻取装置の条材巻取ロールの少なくとも一方の回転速度に基づいてアキューム駆動部26の駆動を制御し、アキューム機構6から導出される支持台10の上面を走行する条材2の走行速度を前記設定値とするよう制御することもできる。ただし、条材の巻出ロールおよび条材の巻取ロールにそれぞれ条材が巻き出しまたは巻取されるので、条材の厚さを加えた巻き出しロールおよび巻取ロールの直径が変化して制御が難しくなる。よって前記駆動ロールにより、その回転速度に基づいて条材の走行速度を制御する方が好ましい。
また、ダミー材を送り出すアンコイラーと、条材2を送り出すアンコイラーは別に設けても良く、同様に、巻取装置1の下流側(巻取機5の下流側)に、条材2を巻き取るリール(条材巻取機)と、ダミー材を巻き取るリール(ダミー材巻取機)を別に設けても良い。
【実施例】
【0034】
本発明の実施形態における巻取装置において、下記の条件でマスキングテープを剥がす試験を実施した。
・試験材料(条材) : 板厚0.64mm×幅97mmの銅の条材
・めっき用マスキングテープ: ヒタレックスK-2165B(日立化成株式会社製)
サイズ:4.6mm、50mmの2本ストライプテープ
銅条材の片側の面に2本を離間させて貼り付け
・条材の走行速度 : 15m/min.
・剥ぎ取りブライドル速度 : 15.6m/min.
【0035】
実施例において、めっきライン(工程)のラインスピードの高速化(15m/min)した場合でも、アキューム機構を駆動することによりアキューム機構から導出される条材の走行速度を0m/minに低下(条材を停止)させ、手作業で条材からマスキングテープを容易に剥ぎ取ることができることを確認した。また、上述のように剥ぎ取ったマスキングテープを巻取機の剥ぎ取り用支点ロール、中継ロール、剥ぎ取りブライドルロール、巻取ロールに巻き付けた後、アキューム機構を駆動することにより、アキューム機構から導出される条材の走行速度をめっきライン(工程)のラインスピードまで増速することができた。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、走行する条材から剥ぎ取られたマスキングテープを巻き取る際に適用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 巻取装置
2 条材
3 マスキングテープ3
5 巻取機
6 アキューム機構
5a 第1巻取部
5b 第2巻取部
10 支持台
11 支点ロール
11a 剥ぎ取り用支点ロール
12 ヒーター
15 台
16 巻き取りロール
17 中継ロール
18 剥ぎ取りブライドルロール
20 導入ロール
21 導出ロール
22、23 ガイドロール組
24、25 ガイドロール
26 アキューム駆動部
30 上流側速度センサー
32 下流側速度センサー