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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】物流制御装置、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B65G 61/00 20060101AFI20231120BHJP
   G06Q 10/083 20230101ALI20231120BHJP
【FI】
B65G61/00 544
G06Q10/083
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020011552
(22)【出願日】2020-01-28
(65)【公開番号】P2021116170
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-08-12
(73)【特許権者】
【識別番号】399035766
【氏名又は名称】エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】浅田 隆介
【審査官】福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-175477(JP,A)
【文献】国際公開第2018/229871(WO,A1)
【文献】特開2018-081685(JP,A)
【文献】特開2003-097969(JP,A)
【文献】特開2003-300624(JP,A)
【文献】特開2004-099311(JP,A)
【文献】特表2017-523543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 61/00
G06Q 10/083
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷物の搬送ルートとして、少なくとも、道路を利用する地上搬送ルートと、地下道を利用する地下搬送ルートとを備える物流システムで使用される物流制御装置であって、
前記荷物の属性情報を取得する第1の取得部と、
前記地上搬送ルートおよび地下搬送ルートのそれぞれについて、搬送に影響を与える環境条件に関する情報を取得する第2の取得部と、
取得された前記荷物の属性情報と前記環境条件に関する情報とに基づいて、前記荷物の搬送ルートとして、前記地上搬送ルートおよび前記地下搬送ルートのいずれを選択するかを判定する判定部と
を具備する物流制御装置。
【請求項2】
前記第1の取得部は、前記荷物の属性情報として、前記荷物のサイズおよび重量の少なくとも一方を表す情報を取得し、
前記判定部は、取得された前記サイズおよび重量の少なくとも一方を表す情報に基づいて、前記サイズおよび重量の少なくとも一方が前記地下搬送ルートにより規定される制限値を超えている場合には、前記荷物の搬送ルートとして前記地上搬送ルートを選択する
請求項1に記載の物流制御装置。
【請求項3】
前記第2の取得部は、前記環境条件に関する情報として、気象条件に関する情報と、交通条件に関する情報との少なくとも一方を取得し、
前記判定部は、取得された前記気象条件に関する情報および前記交通条件に関する情報の少なくとも一方に基づいて、前記荷物の搬送ルートとして前記地上搬送ルートおよび前記地下搬送ルートのいずれを選択するかを判定する
請求項1に記載の物流制御装置。
【請求項4】
前記第1の取得部は、前記荷物の属性情報として、搬送の急ぎ度合いを表す情報を取得し、
前記判定部は、取得された前記搬送の急ぎ度合いを表す情報と、前記環境条件に関する情報とに基づいて、前記荷物の搬送ルートとして前記地上搬送ルートを選択するか、または前記地下搬送ルートを選択するかを判定する
請求項1に記載の物流制御装置。
【請求項5】
前記判定部は、
前記地上搬送ルートおよび前記地下搬送ルートのそれぞれについて、前記属性情報を反映した優先度スコアを算出すると共に前記環境条件を反映した優先度スコアを算出し、算出された各優先度スコアをもとに前記地上搬送ルートおよび前記地下搬送ルートの評価値をそれぞれ算出し、算出された前記各評価値に基づいて、前記荷物の搬送ルートとして前記地上搬送ルートおよび前記地下搬送ルートのいずれを選択するかを判定する
請求項1に記載の物流制御装置。
【請求項6】
前記判定部の判定結果に基づいて、前記地上搬送ルートおよび前記地下搬送ルートに対する前記荷物の分配を制御する分配制御部を、さらに具備する請求項1に記載の物流制御装置。
【請求項7】
荷物の搬送ルートとして、道路を利用する地上搬送ルートと、地下道を利用する地下搬送ルートと、空中を利用する空中搬送ルートとを備える物流システムで使用される物流制御装置であって、
前記荷物の属性情報を取得する第1の取得部と、
前記地上搬送ルート、地下搬送ルートおよび前記空中搬送ルートのそれぞれについて、搬送に影響を与える環境条件に関する情報を取得する第2の取得部と、
取得された前記荷物の属性情報と前記環境条件に関する情報とに基づいて、前記荷物の搬送ルートとして、前記地上搬送ルート、前記地下搬送ルートおよび前記空中搬送ルートのいずれを選択するかを判定する判定部と
を具備する物流制御装置。
【請求項8】
前記判定部の判定結果に基づいて、前記地上搬送ルート、前記地下搬送ルートおよび前記空中搬送ルートに対する前記荷物の分配を制御する分配制御部を、さらに具備する請求項7に記載の物流制御装置。
【請求項9】
荷物の搬送ルートとして、少なくとも、道路を利用する地上搬送ルートと、地下道を利用する地下搬送ルートとを備える物流システムで使用される物流制御装置が実行する物流制御方法であって、
前記荷物の属性情報を取得する過程と、
前記地上搬送ルートおよび地下搬送ルートのそれぞれについて、搬送に影響を与える環境条件に関する情報を取得する過程と、
取得された前記荷物の属性情報と前記環境条件に関する情報とに基づいて、前記荷物の搬送ルートとして、前記地上搬送ルートおよび前記地下搬送ルートのいずれを選択するかを判定する過程と
を具備する物流制御方法。
【請求項10】
前記判定の結果に基づいて、前記地上搬送ルートおよび前記地下搬送ルートに対する前記荷物の分配を制御する過程を、さらに具備する請求項9に記載の物流制御方法。
【請求項11】
荷物の搬送ルートとして、道路を利用する地上搬送ルートと、地下道を利用する地下搬送ルートと、空中を利用する空中搬送ルートとを備える物流システムで使用される物流制御装置が実行する物流制御方法であって、
前記荷物の属性情報を取得する過程と、
前記地上搬送ルート、地下搬送ルートおよび前記空中搬送ルートのそれぞれについて、搬送に影響を与える環境条件に関する情報を取得する過程と、
取得された前記荷物の属性情報と前記環境条件に関する情報とに基づいて、前記荷物の搬送ルートとして、前記地上搬送ルート、前記地下搬送ルートおよび前記空中搬送ルートのいずれを選択するかを判定する過程と
を具備する物流制御方法。
【請求項12】
前記判定する過程の判定結果に基づいて、前記地上搬送ルート、前記地下搬送ルートおよび前記空中搬送ルートに対する前記荷物の分配を制御する過程を、さらに具備する請求項11に記載の物流制御方法。
【請求項13】
請求項1乃至8のいずれかに記載の物流制御装置が具備する前記各部の処理を、前記物流制御装置が備えるプロセッサに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、例えば荷物等の物品の搬送ルートを制御する物流制御装置、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
荷物を配送する物流システムは、配送効率の向上のため様々な技術が導入されている。例えば、特許文献1には、配送始点ターミナルから終着ターミナルまでの搬送ルートを事前に複数設定しておき、荷物毎にその配送時間帯等が含まれる発送側荷物情報と着店データとに基づいて搬送ルートを選択し、選択された搬送ルートに従い荷物を配送する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-89429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、近年物流業界では、物流網の拡充と通信販売の増加に伴い荷物の取扱量が急速に増加している。その一方で、ドライバ不足や交通渋滞の影響等により陸路を使用した配送能力に限界が生じており、荷物のさらなる増加に対応しきれなくなるおそれがある。
【0005】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、荷物の搬送をさらに効率良く行えるようにする技術を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明に係る物流制御装置または方法の第1の態様は、荷物の搬送ルートとして、少なくとも、道路を利用する地上搬送ルートと、地下道を利用する地下搬送ルートとを備える物流システムで使用される物流制御装置にあって、前記荷物の属性情報を取得する第1の取得部と、前記地上搬送ルートおよび地下搬送ルートのそれぞれについて、搬送に影響を与える環境条件に関する情報を取得する第2の取得部と、取得された前記荷物の属性情報と前記環境条件に関する情報とに基づいて、前記荷物の搬送ルートとして、前記地上搬送ルートおよび前記地下搬送ルートのいずれを選択するかを判定する判定部と、を具備するものである。
【0007】
またこの発明に係る物流制御装置または方法の第2の態様は、荷物の搬送ルートとして、道路を利用する地上搬送ルートと、地下道を利用する地下搬送ルートと、空中を利用する空中搬送ルートとを備える物流システムで使用される物流制御装置において、前記荷物の属性情報を取得する第1の取得部と、前記地上搬送ルート、地下搬送ルートおよび前記空中搬送ルートのそれぞれについて、搬送に影響を与える環境条件に関する情報を取得する第2の取得部と、取得された前記荷物の属性情報と前記環境条件に関する情報とに基づいて、前記荷物の搬送ルートとして、前記地上搬送ルート、前記地下搬送ルートおよび前記空中搬送ルートのいずれを選択するかを判定する判定部と、を具備するものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明の各態様によれば、荷物の搬送をさらに効率良く行うことを可能にした技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、この発明の一実施形態に係る物流制御装置を備えた物流システムの構成を示す図である。
図2図2は、この発明の一実施形態に係る物流制御装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3図3は、この発明の一実施形態に係る物流制御装置のソフトウェア構成を示すブロック図である。
図4図4は、図2および図3に示す物流制御装置により実行される物流制御の処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
図5図5は、図4に示した物流制御手順のうち優先度スコアの計算処理内容を示すフローチャートである。
図6図6は、搬送経路の選択動作の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照してこの発明に係わる実施形態を説明する。
【0011】
[一実施形態]
(構成例)
(1)システム
図1は、この発明の一実施形態に係る物流制御装置を備えた物流システムの概略構成図である。この発明の一実施形態に係る物流システムは、荷物BGの搬送ルートとして、道路を利用する地上搬送ルートGRと、地下道CTを利用する地下搬送ルートURと、空中を利用する空中搬送ルートARとを備える。
【0012】
地上搬送ルートGRは、主としてトラック等の陸上輸送用の車両MTを使用する。なお、輸送用車両MTとしては、トラック以外の車種を使用してもよいし、鉄路を利用する貨物列車等を使用してもよい。
【0013】
地下搬送ルートURは、地下道CTとしては、例えば通信ケーブルや電力ケーブル等を収容する洞道(とう道またはどう道とも云う)を使用する。とう道は、一般に人が立って作業可能な内径を有し、とう道内の例えば天井部または床部、或いは側面部の余剰スペースに、荷物を自動搬送するための搬送装置が設置される。搬送装置としては、例えば、ベルトコンベアを使用するもの、ロープ牽引方式によりケーブルラックを走行させるもの、自律走行する搬送ロボットを使用するものが使用される。また、とう道内に分岐や段差がある場合、搬送装置は上記分岐や段差に対応するための分岐機構や昇降機構を有する。とう道の施工方式としては、開削設置方式およびシールド設置方式のいずれも採用可能である。なお、地下道としては、とう道以外にも例えば地下鉄や地下道路のトンネル、ヒューム管等を使用する下水道トンネル等を使用することができる。
【0014】
空中搬送ルートARの輸送手段としては、例えばドローンDRが使用される。ドローンDRは、例えば事前に与えられたルート情報をGPS(Global Positioning System)により得られた現在位置情報と照合することにより自律飛行する。
【0015】
ところで、以上のように構成された物流システムにおいて、拠点となる複数の位置には配送ターミナルDC1,DC2が設置されている。配送ターミナルDC1,DC2は、それぞれ例えば図6に示すように、荷物を搬入して集積する荷物集積ヤードBYと、上記地上搬送ルートGRへ荷物を送り出すためのトラックヤードGYと、上記地下搬送ルートURへ荷物を送り出すための地下ヤードUYと、上記空中搬送ルートARへ荷物を送り出すためのドローンヤードAYを備えている。
【0016】
また配送ターミナルDC1,DC2には、それぞれ荷物BGの分配装置LCと、荷物BGを撮像するカメラ6と、物流制御装置SVが設けられている。分配装置LCは、上記荷物集積ヤードBYと、上記トラックヤードGY、地下ヤードUYおよびドローンヤードAYとの間に設置され、上記荷物集積ヤードBYから送り出された荷物を上記トラックヤードGY、地下ヤードUYまたはドローンヤードAYへ分配搬送する。
【0017】
カメラ6は、上記荷物集積ヤードBYから上記分配装置LCへ荷物を搬送する、ベルトコンベア等の搬送路上に配置され、荷物BGごとに貼付されている帳票を含む全体を撮像してその画像データを物流制御装置SVへ出力する。なお、帳票として無線タグが用いられる場合には、カメラ6の代わりに無線タグリーダが用いられる。
【0018】
(2)物流制御装置SV
図2および図3は、それぞれ上記物流制御装置SVのハードウェア構成およびソフトウェア構成を示すブロック図である。
物流制御装置SVは、例えばエッジコンピュータ又はパーソナルコンピュータにより構成される。物流制御装置SVは、中央処理ユニット(Central Processing Unit:CPU)等のハードウェアプロセッサを有する制御部1を備え、この制御部1に対し、記憶部2、入出力インタフェース(入出力I/F)3および通信インタフェース(通信I/F)4を、バス5を介して接続したものとなっている。
【0019】
入出力I/F3には、カメラ6および分配装置LCが例えば有線LANまたは無線LANにより接続される。入出力I/F3は、カメラ6により撮像された荷物BGの画像データを受信してバス5を介して制御部1に供給する。また入出力I/F3は、制御部1から出力される分配制御信号を上記分配装置LCへ出力する。
【0020】
通信I/F4は、例えば、インターネット等の広域データネットワークに対応したインタフェースを備え、制御部1の指示に従いネットワークNWを介してWeb上の気象情報サイトWSおよび交通情報サイトTSに対しアクセスし、これらのサイトWS,TSからそれぞれ気象情報および交通情報を受信する。
【0021】
記憶部2は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)等の随時書込みおよび読出しが可能な不揮発性メモリと、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)とを組み合わせて構成される記憶媒体を備えたもので、プログラム記憶領域とデータ記憶領域とを有する。なお、記憶媒体の構成は上記構成に限るものではない。プログラム記憶領域には、OS(Operating System)等のミドルウェアに加えて、この発明の一実施形態に係る各種制御処理を実行するために必要なプログラムが格納されている。
【0022】
データ記憶領域には、属性・環境情報記憶部21と、デフォルトデータ記憶部22が設けられている。属性・環境情報記憶部21は、気象情報サイトWSおよび交通情報サイトTSからそれぞれ取得された気象情報および交通情報を記憶するために使用される。デフォルトデータ記憶部は、後述する優先度スコアを計算する際に用いる条件別のデフォルトデータを記憶するために使用される。
【0023】
制御部1は、この発明の一実施形態を実現するための各種制御機能として、荷物属性情報取得部11と、環境情報取得部12と、第1の搬送ルート判定部13と、優先度スコア計算部14と、第2の搬送ルート判定部15と、搬送ルート決定部16と、搬送履歴取得部17と、係数補正処理部18とを備えている。これらの制御機能は、何れも記憶部2のプログラム記憶領域に格納されたプログラムを、制御部1のハードウェアプロセッサに実行させることにより実現される。
【0024】
荷物属性情報取得部11は、カメラ6により撮像された荷物BGの画像データを入出力I/F3を介して取り込み、当該画像データから画像認識処理により荷物BGの送り先情報および急ぎ度合いを示す情報を認識すると共に外形寸法を検出し、認識された上記送り先情報および急ぎ度合いを表す情報と、検出された外形寸法を示す値を、荷物属性を表す情報として荷物IDと関連付けて属性・環境情報記憶部21に記憶させる処理を行う。
【0025】
なお、荷物毎に、荷物BGの送り先情報や急ぎ度合いを示す情報、サイズおよび重量を示す情報等を含む荷物属性情報が記載されたバーコード、または上記荷物属性情報が記憶された無線タグが付けられている場合には、カメラ6の代わりにバーコードリーダまたは無線タグリーダを使用して上記荷物属性情報を取得するようにしてもよい。
【0026】
環境情報取得部12は、定期的または任意のタイミングで気象情報サイトWSおよび交通情報サイトTSから気象情報および交通情報を通信I/F4を介して取得し、取得された気象情報および交通情報を属性・環境情報記憶部21に記憶させる処理を行う。
【0027】
第1の搬送ルート判定部13は、荷物毎に、上記属性・環境情報記憶部21に記憶された属性情報に含まれる外形寸法を示す値を、地下搬送ルートURにより搬送可能なサイズの上限値と比較することにより、荷物を地下搬送ルートURにより搬送可能か否かを判定する処理を行う。
【0028】
優先度スコア計算部14は、上記第1の搬送ルート判定部13により荷物を地下搬送ルートURにより搬送可能と判定された場合に、上記属性・環境情報記憶部21に記憶された属性情報に含まれる急ぎ度合いを表す情報と、記憶された気象情報および交通情報とに基づいて、地上搬送ルートGR、地下搬送ルートURおよび空中搬送ルートARのそれぞれについて優先度スコアを計算する処理を行う。
【0029】
第2の搬送ルート判定部15は、上記優先度スコア計算部14により計算された各ルートの優先度スコアに基づいて、上記荷物の搬送ルートとして上記地上搬送ルートGR、地下搬送ルートURおよび空中搬送ルートARのいずれが適しているかを判定する処理を行う。
【0030】
搬送ルート決定部16は、上記第1の搬送ルート判定部13による判定結果と、上記第2の搬送ルート判定部15による判定結果とに基づいて、上記地上搬送ルートGR、地下搬送ルートURおよび空中搬送ルートARの中から搬送ルートを選択し、その選択結果に応じた分配制御データを分配装置LCへ出力する処理を行う。
【0031】
搬送履歴取得部17は、荷物毎に、搬送先の配送ターミナルの物流制御装置SVから到達時刻を表す情報を通信I/F4を介して取得し、取得された到達時刻を表す情報をもとに当該荷物の搬送所要時間を算出し、算出された搬送所要時間を搬送履歴情報として係数補正処理部18に通知する処理を行う。
【0032】
係数補正処理部18は、所定期間分の上記搬送履歴情報に基づいて、上記優先度スコア計算部14が優先度スコアの計算に使用する条件別の係数値を補正する処理を行う。
【0033】
(動作例)
次に、以上のように構成された装置の動作例を説明する。
図4は物流制御装置SVによる実行される物流制御処理の手順と処理内容を示すフローチャート、図5は各搬送ルートにおける優先度スコアの計算処理の一例を示すフローチャートである。
【0034】
(1)サイズ/重量の大きな荷物の搬送制御
配送ターミナルDC1では、例えば図6に示したように荷物集積ヤードBYを備えており、図示しない宅配業者の営業所等から運ばれた荷物BGが上記荷物集積ヤードBYに搬入されて一旦蓄積される。そして、蓄積された上記荷物BGは、例えばベルトコンベア等の搬送機構により順次分配装置LCへ搬送される。その搬送路上において、荷物BGごとにその全体と当該荷物BGに貼付された帳票がカメラ6により撮像され、その撮像画像データが物流制御装置SVへ送られる。
【0035】
物流制御装置SVは、荷物属性情報取得部11の制御の下、ステップS10において、上記カメラ6から送られた撮像画像データを入出力I/F3を介して受信する。そして、受信された上記撮像画像データから画像認識処理等により荷物BGの形状を認識してサイズ(縦×横×高さ)を算出すると共に、帳票に記載された荷物ID、送り先情報および急ぎ度合いを表す情報を文字認識処理により読み取る。急ぎ度合いを表す情報は、例えば至急か普通かを示す。
【0036】
なお、荷物BGの重量については、搬送路に設けられた重量センサ(図示省略)により検出することができる。なお、帳票に荷物BGのサイズと重量が記載されている場合には、サイズおよび重量を帳票から読み取るようにしてもよい。荷物属性情報取得部11は、取得された上記荷物BGの荷物ID、サイズと重量、送り先および急ぎ度合いを表す情報を、荷物属性情報として属性・環境情報記憶部21に一時保存する。
【0037】
物流制御装置SVは、次に第1の搬送ルート判定部13の制御の下、ステップS11において、上記属性・環境情報記憶部21から荷物BG毎に上記荷物属性情報を読み込み、この荷物属性情報に含まれるサイズと重量を表す情報に基づいて、サイズまたは重量がしきい値以上か否かを判定する。そして、荷物BGのサイズまたは重量がしきい値以上と判定された場合には、搬送ルート決定部16の制御の下、ステップS12により上記荷物BGの搬送ルートとして地上搬送ルートGRを選択し、ステップS13において上記選択結果に応じた分配制御データを入出力I/F3から分配装置LCへ出力する。
【0038】
分配装置LCは、上記分配制御データに従い例えば分岐ポイントを切り替えることにより、上記荷物BGをトラックヤードGYへ配送する。この結果、上記荷物BGは、トラックヤードGYにおいて、送り先情報に従い方面別のトラックに積載され、地上搬送ルートGRを使用して搬送される。すなわち、サイズまたは重量が大きい荷物BGは、無条件で地上搬送ルートGRにより搬送される。
【0039】
(2)サイズ/重量が比較的小さい荷物の搬送制御
物流制御装置SVは、上記ステップS11において荷物BGのサイズまたは重量がしきい値未満と判定されると、ステップS14により当該荷物BGの搬送ルート候補としてすべての搬送ルートを選択する。すなわち、地上搬送ルートGR、地下搬送ルートURおよび空中搬送ルートARのいずれも選択可能とする。
【0040】
(2-1)環境情報の取得
物流制御装置SVは、環境情報取得部12の制御の下、ステップS15において、定期的にネットワークNWを介して気象情報サイトWSおよび交通情報サイトTSからそれぞれ最新の気象情報および交通情報を取得し、取得された上記気象情報および交通情報を属性・環境情報記憶部21に保存する。
【0041】
気象情報には、例えば天候(特に雨と雪)、降水量、風速、各種警報・注意報が含まれる。交通情報には、例えば道路別の渋滞状況や渋滞予測情報、通行止めの情報、推奨される迂回路の情報が含まれる。なお、台風や地震等の異常気象が発生した場合や季節による渋滞が予想される期間については、気象情報および交通情報の取得周期を適宜変更し、常に最新の情報を取得するようにしてもよい。
【0042】
(2-2)搬送ルート別の優先度スコアの計算
物流制御装置SVは、次に優先度スコア計算部14の制御の下、ステップS20において、荷物BG毎に、上記属性・環境情報記憶部21に保存されている荷物属性情報および環境情報に基づいて、地上搬送ルートGR、地下搬送ルートURおよび空中搬送ルートARのそれぞれについて優先度スコアGs ,Us ,As を計算する。
【0043】
優先度スコアGs ,Us ,As は、例えば
Gs =Gd ×Gw ×Gt ×Gk
Us =Ud ×Uw ×Ut ×Uk
As =Ad ×Aw ×At ×Ak
により計算することができる。
【0044】
ここで、Gd ,Ud ,Ad はそれぞれ各搬送ルートGR,UR,ARが本来持っている搬送能力に応じて設定される搬送力を示す基礎値(デフォルト値)であり、例えばGd =100,Ud =60,Ad =20に設定される。
【0045】
Gw ,Uw ,Aw はそれぞれ各搬送ルートGR,UR,ARに対し気象条件に応じて1.0~0の範囲で設定される係数で、気象条件が悪化した場合には空中搬送ルートARおよび地上搬送ルートGRが選択され難くし、代わりに地下搬送ルートURが選択され易くするように設定される。例えば、地上搬送路および空中搬送路に対応する係数Gw ,Aw は気象条件が悪化するほど小さな値となるように可変設定され、地下搬送路に対応する係数Uw は気象条件の影響を受けないため1.0のまま固定される。
【0046】
Gt ,Ut ,At はそれぞれ各搬送ルートGR,UR,ARに対し交通条件に応じて1.0~0の範囲で設定される係数で、渋滞や通行止等の影響で交通条件が悪化した場合には地上搬送ルートGRが選択され難くし、代わりに地下搬送ルートURおよび空中搬送ルートARが選択され易くするように可変設定される。例えば、地上搬送路に対応する係数Gt は交通条件が悪化するほど小さな値に設定され、地下搬送路および空中搬送路に対応する係数Ut ,At はいずれも地上の交通条件の影響を受けないため1.0に固定される。
【0047】
Gk ,Uk ,Ak は、荷物BGの配送の急ぎ度合い、つまり至急便か普通便かに応じて各搬送ルートGR,UR,ARに対しそれぞれ設定される係数で、例えば至急便については空中搬送ルートARが選択され易くなるようにAk =1.0、Gk =0.7、Uk =0.5にそれぞれ設定される。これに対し普通便に対しては、搬送能力の高い地上搬送ルートGR又は地下搬送ルートURが優先的に選択されるように、例えばAk =0.3、Gk =1.0、Uk =0.7に設定される。
【0048】
物流制御装置SVの優先度スコア計算部14は、荷物BG毎に、以上したように荷物属性、気象および交通条件に応じて各係数値を設定すると、続いてステップS25により各搬送ルートGR,UR,ARに対する優先度スコアGs ,Us ,As を計算する。すなわち、優先度スコア計算部14では、各搬送ルートGR,UR,ARがそれぞれ本来備える搬送能力を基礎として、これに気象条件、交通条件および荷物BGの配送の急ぎ度合いを総合的に反映させた優先度スコアが計算される。
【0049】
物流制御装置SVは、続いて第2の搬送ルート判定部15の制御の下、ステップS17において、計算された上記各搬送ルートGR,UR,ARに対する優先度スコアGs ,Us ,As に基づいて、上記荷物BGの搬送ルートを上記各搬送ルートGR,UR,ARの中から選択する。そして、搬送ルート決定部16の制御の下、ステップS17において、選択された上記搬送ルートへ荷物BGが分配されるように、分配装置LCに対し入出力I/F3から分配制御データを出力する。
【0050】
分配装置LCは、物流制御装置SVから送られた分配制御信号に従い分岐ポイントを切替制御し、これにより上記荷物BGが上記選択された搬送ルートGR,UR,ARに対応するヤードGY,UY,AYへ移送される。
【0051】
トラックヤードGY、地下ヤードUYおよびドローンヤードAYでは、それぞれ移送された荷物BGがトラック等の輸送用車両MT、ベルトコンベア等の地下搬送機構、ドローン等の飛行体DRにより、送り先に近い配送ターミナルDC2に向けて搬送される。
【0052】
(3)搬送結果に基づく係数値の補正
物流制御装置SVは、搬送履歴取得部17の制御の下、荷物BG毎に、搬送先となった配送ターミナルDC2の物流制御装置SVから到達時刻を表す情報を通信I/F4を介して取得し、取得された到達時刻を表す情報をもとに当該荷物の搬送所要時間を算出して、記憶部2内の搬送履歴情報記憶部(図示せず)に蓄積させる。
【0053】
そして物流制御装置SVは、係数補正処理部18の制御の下、所定量の荷物の搬送が終了する毎に、または所定の期間(例えば1時間)が経過するごとに、上記搬送履歴情報記憶部から搬送履歴情報を読み出し、搬送ルートGR,UR,AR別に搬送所要時間の平均を算出する。そして、算出された搬送所要時間の平均値を、各搬送ルートGR,UR,ARの搬送能力に応じて設定された搬送所要時間の基準値と比較し、その差に応じて優先度スコア計算部14で設定される係数値を補正する。
【0054】
このようにすると、例えば優先度スコアによる搬送ルートの選択の結果、特定の搬送ルートにおける荷物搬送の混雑度合いがその搬送能力を超えるような場合に、当該搬送ルートの選択頻度を低下させることが可能となる。なお、係数値を補正する代わりに、デフォルトデータ記憶部22に記憶されているデフォルト値を補正するようにしてもよい。
【0055】
(作用・効果)
以上述べたように一実施形態では、配送ターミナルDC1,DC2に設けられた物流制御装置SVにおいて、荷物BG毎に、その属性情報と搬送ルートにおける気象情報および交通情報とに基づいて、地上搬送ルートGR、地下搬送ルートURおよび空中搬送ルートARに対する優先度スコアをそれぞれ計算し、計算された各優先度スコアをもとに搬送ルートを選択するようにしている。
【0056】
従って、荷物BG毎に、その配送の急ぎ度合いと、送り先までの搬送ルート上の気象条件および交通条件とを総合的に考慮して、最適な搬送ルートを選択することが可能となる。この結果、これまで地上搬送ルートのみに頼っていた荷物BGの搬送を、上記各条件を考慮した上で地下搬送ルートURおよび空中搬送ルートARにも分配することができ、これにより物流の最適化を図ることが可能となる。
【0057】
[その他の実施形態]
(1)最適な搬送ルートを選択する手段として、機械学習を適用してもよい。例えば、荷物属性情報から荷物特徴量を抽出する共に、気象情報および交通情報からそれぞれ気象特徴量および交通特徴量を抽出する。そして、抽出された上記各特徴量を、例えばニューラルネットワークを用いた学習モデルに入力して、最適な搬送ルートが選択されるように上記学習モデルを学習させる。そして、学習後の学習モデルを用いて搬送ルートを選択する。このようにすれば、各特徴量に基づいてより一層最適な搬送ルートを選択することが可能となる。
【0058】
(2)また、一実施形態では、配送ターミナルDC1,DC2ごとに物流制御装置SVを設けた場合を例にとって説明したが、例えばクラウド上に複数の配送ターミナルを統轄する統合物流制御装置を設け、この統合物流制御装置により複数の配送ターミナルにおける荷物の搬送ルートの選択を集中制御するようにしてもよい。
【0059】
(3)さらに、環境情報としては気象情報および交通情報の他に、暦や曜日等のカレンダ情報やトラックやドライバの稼働数等の運用スケジュール情報等を取得し、これらを優先度スコアに反映させるようにしてもよい。
【0060】
(4)また、荷物特徴量として、サイズと重量以外に「要冷蔵」、「振動不可」などの荷物の取り扱いに関する情報を含め、搬送ルートを選択する際に、これらの情報を加味するようにしてもよい。例えば、「要冷蔵」の荷物については、比較的温度が低く変化が少ない地下搬送ルートを選択する。このようにすると、「要冷蔵」の荷物を搬送するための大掛かりな冷蔵室を用意する必要がなくなる。
【0061】
(5)また、ドローンを使用した空中搬送ルートを選択する際の条件には、ドローンのバッテリ容量や飛行ルート(例えば住宅地の上空を避けるように設定される)等が反映されて設定される搬送可能距離をさらに考慮するようにしてもよい。
【0062】
(6)その他、地下搬送ルートの構造、物流制御装置の設置位置や構成、物流制御装置の処理動作の手順と内容、配送ターミナル内における分配装置の設置位置やその構成等についても、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。
【0063】
以上、この発明の実施形態を詳細に説明してきたが、前述までの説明はあらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。つまり、本発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。
【0064】
要するにこの発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0065】
DC1,DC2…配送ターミナル
SV…物流制御装置
LC…分配装置
MT…輸送用車両
DR…飛行体
CT…とう道
GR…地上搬送ルート
AR…空中搬送ルート
UR…地下搬送ルート
BG…荷物
WS…気象情報サイト
TS交通情報サイト
NW…ネットワーク
1…制御部
2…記憶部
3…入出力インタフェース(入出力I/F)
4…通信インタフェース(通信I/F)
5…バス
6…カメラ
11…荷物属性情報取得部
12…環境情報取得部
13…第1の搬送ルート判定部
14…優先度スコア計算部
15…第2の搬送ルート判定部
16…搬送ルート決定部
17…搬送履歴取得部
18…係数補正処理部
21…属性・環境情報記憶部
22…デフォルトデータ記憶部
図1
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図3
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図5
図6