(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】半導体装置及び半導体記憶装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/786 20060101AFI20231120BHJP
H10B 12/00 20230101ALI20231120BHJP
H10B 99/00 20230101ALI20231120BHJP
【FI】
H01L29/78 618B
H01L29/78 613B
H10B12/00 671A
H10B12/00 671Z
H10B99/00 441
(21)【出願番号】P 2020019361
(22)【出願日】2020-02-07
【審査請求日】2022-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】服部 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】上田 知正
(72)【発明者】
【氏名】池田 圭司
【審査官】田付 徳雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-003798(JP,A)
【文献】特開2018-021254(JP,A)
【文献】特開2015-111663(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0057186(US,A1)
【文献】特開2018-014495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/786
H01L 21/336
H10B 12/00
H10B 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の領域と、第2の領域と、前記第1の領域と前記第2の領域との間の第3の領域と、を有する第1の酸化物半導体層と、
ゲート電極と、
前記第3の領域と前記ゲート電極との間に設けられたゲート絶縁層と、
前記第1の領域に電気的に接続された第1の電極と、
前記第2の領域に電気的に接続された第2の電極と、
前記第1の領域と前記第1の電極との間、及び、前記第2の領域と前記第2の電極との間の少なくとも一方に設けられ、インジウム(In)、アルミニウム(Al)、及び、亜鉛(Zn)を含み、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和に対するアルミニウムの原子比が8%以上23%以下であり、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和に対するインジウムの原子比が45%以下である第2の酸化物半導体層と、
を備え
、
前記第2の酸化物半導体層が前記第1の領域と前記第1の電極との間に設けられた場合、前記ゲート電極と前記第1の電極との間の距離が30nm以上であり、
前記第2の酸化物半導体層が前記第2の領域と前記第2の電極との間に設けられた場合、前記ゲート電極と前記第2の電極との間の距離が30nm以上である、半導体装置。
【請求項2】
前記第1の領域と前記第1の電極との間、及び、前記第2の領域と前記第2の電極との間の他方に設けられ、インジウム(In)、アルミニウム(Al)、及び、亜鉛(Zn)を含み、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和に対するアルミニウムの原子比が8%以上23%以下であり、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和に対するインジウムの原子比が45%以下である第3の酸化物半導体層を、更に備える請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1の酸化物半導体層は、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び、亜鉛(Zn)を含む請求項1又は請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1の酸化物半導体層はインジウム(In)、アルミニウム(Al)、及び、亜鉛(Zn)を含み、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和に対するアルミニウムの原子比が8%以上23%以下であり、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和に対するインジウムの原子比が70%以下である請求項1又は請求項2記載の半導体装置。
【請求項5】
前記ゲート電極は、前記第1の酸化物半導体層を囲む請求項1ないし請求項4いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第2の酸化物半導体層のインジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和に対するインジウムの原子比が35%以上である請求項1ないし請求項5いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1の領域、及び、前記第2の領域はn型半導体である請求項1ないし請求項6いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項8】
第1の方向に延びる第1の配線と、
前記第1の方向と交差する第2の方向に延びる第2の配線と、
メモリセルと、を備え、
前記メモリセルは、
前記第1の配線に電気的に接続された第1の領域と、第2の領域と、前記第1の領域と前記第2の領域との間の第3の領域と、を有する第1の酸化物半導体層と、
前記第1の酸化物半導体層を囲み、前記第2の配線に電気的に接続されたゲート電極と、
前記第1の酸化物半導体層と前記ゲート電極との間に設けられたゲート絶縁層と、
前記第2の領域に電気的に接続されたキャパシタと、
前記第1の領域と前記第1の配線との間、及び、前記第2の領域と前記キャパシタとの間の少なくとも一方に設けられ、インジウム(In)、アルミニウム(Al)、及び、亜鉛(Zn)を含み、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和に対するアルミニウムの原子比が8%以上23%以下であり、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和に対するインジウムの原子比が45%以下である第2の酸化物半導体層と、を有
し、
前記第2の酸化物半導体層が前記第1の領域と前記第1の配線との間に設けられ、前記ゲート電極と前記第1の配線との間の距離が30nm以上である、半導体記憶装置。
【請求項9】
前記第1の領域と前記第1の配線との間、及び、前記第2の領域と前記キャパシタとの間の他方に設けられ、インジウム(In)、アルミニウム(Al)、及び、亜鉛(Zn)を含み、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和に対するアルミニウムの原子比が8%以上23%以下であり、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和に対するインジウムの原子比が45%以下である第3の酸化物半導体層を、更に備える請求項
8記載の半導体記憶装置。
【請求項10】
前記第1の酸化物半導体層は、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び、亜鉛(Zn)を含む請求項
8又は請求項
9記載の半導体記憶装置。
【請求項11】
前記第1の酸化物半導体層はインジウム(In)、アルミニウム(Al)、及び、亜鉛(Zn)を含み、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和に対するアルミニウムの原子比が8%以上23%以下であり、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和に対するインジウムの原子比が70%以下である請求項
8又は請求項
9記載の半導体記憶装置。
【請求項12】
前記第2の酸化物半導体層のインジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和に対するインジウムの原子比が35%以上である請求項
8ないし請求項
11いずれか一項記載の半導体記憶装置。
【請求項13】
前記第1の領域、及び、前記第2の領域はn型半導体である請求項
8ないし請求項
12いずれか一項記載の半導体記憶装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置及び半導体記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化物半導体層にチャネルを形成する酸化物半導体トランジスタは、オフ動作時のチャネルリーク電流が極めて小さいという優れた特性を備える。このため、例えば、酸化物半導体トランジスタを、Dynamic Random Access Memory(DRAM)のメモリセルのスイッチングトランジスタに適用することが検討されている。
【0003】
例えば、酸化物半導体トランジスタをメモリセルのスイッチングトランジスタに適用する場合、酸化物半導体トランジスタは、メモリセルや配線の形成に伴う熱処理を経ることになる。したがって、熱処理を経ても特性の変動が少ない、耐熱性の高い酸化物半導体トランジスタの実現が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、耐熱性の高い半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の半導体装置は、第1の領域と、第2の領域と、前記第1の領域と前記第2の領域との間の第3の領域と、を有する第1の酸化物半導体層と、ゲート電極と、前記第3の領域と前記ゲート電極との間に設けられたゲート絶縁層と、前記第1の領域に電気的に接続された第1の電極と、前記第2の領域に電気的に接続された第2の電極と、前記第1の領域と前記第1の電極との間、及び、前記第2の領域と前記第2の電極との間の少なくとも一方に設けられ、インジウム(In)、アルミニウム(Al)、及び、亜鉛(Zn)を含み、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和に対するアルミニウムの原子比が8%以上23%以下であり、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和に対するインジウムの原子比が45%以下である第2の酸化物半導体層と、を備え、前記第2の酸化物半導体層が前記第1の領域と前記第1の電極との間に設けられた場合、前記ゲート電極と前記第1の電極との間の距離が30nm以上であり、前記第2の酸化物半導体層が前記第2の領域と前記第2の電極との間に設けられた場合、前記ゲート電極と前記第2の電極との間の距離が30nm以上である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1の実施形態の半導体装置の模式断面図。
【
図2】第1の実施形態の半導体装置の第2の酸化物半導体層及び第3の酸化物半導体層の化学組成範囲を示す図。
【
図4】第1の実施形態の半導体装置の作用及び効果の説明図。
【
図5】第1の実施形態の半導体装置の作用及び効果の説明図。
【
図6】第2の実施形態の半導体装置の第1の酸化物半導体層の化学組成範囲を示す図。
【
図11】第5の実施形態の半導体記憶装置のブロック図。
【
図12】第5の実施形態の半導体記憶装置のメモリセルアレイの模式断面図。
【
図13】第5の実施形態の半導体記憶装置のメモリセルアレイの模式断面図。
【
図14】第5の実施形態の半導体記憶装置の第1のメモリセルの模式断面図。
【
図15】第5の実施形態の半導体記憶装置の第2のメモリセルの模式断面図。
【
図16】第6の実施形態の半導体装置の模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、同一又は類似の部材などには同一の符号を付し、一度説明した部材などについては適宜その説明を省略する。
【0009】
また、本明細書中、便宜上「上」、又は、「下」という用語を用いる場合がある。「上」、又は、「下」とはあくまで図面内での相対的位置関係を示す用語であり、重力に対する位置関係を規定する用語ではない。
【0010】
本明細書中の半導体装置及び半導体記憶装置を構成する部材の化学組成の定性分析及び定量分析は、例えば、二次イオン質量分析法(Secondary Ion Mass Spectrometry:SIMS)、エネルギー分散型X線分光法(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy:EDX)、ラザフォード後方散乱分析法(Rutherford Back-Scattering Spectroscopy:RBS)により行うことが可能である。また、半導体装置を構成する部材の厚さ、部材間の距離等の測定には、例えば、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)を用いることが可能である。
【0011】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の半導体装置は、第1の領域と、第2の領域と、第1の領域と第2の領域との間の第3の領域と、を有する第1の酸化物半導体層と、ゲート電極と、第3の領域とゲート電極との間に設けられたゲート絶縁層と、第1の領域に電気的に接続された第1の電極と、第2の領域に電気的に接続された第2の電極と、第1の領域と第1の電極との間、及び、第2の領域と第2の電極との間の少なくとも一方に設けられ、インジウム(In)、アルミニウム(Al)、及び、亜鉛(Zn)を含み、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和に対するアルミニウムの原子比が8%以上23%以下であり、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和に対するインジウムの原子比が45%以下である第2の酸化物半導体層と、を備える。
【0012】
図1は、第1の実施形態の半導体装置の模式断面図である。
【0013】
第1の実施形態の半導体装置は、トランジスタ100である。トランジスタ100は、酸化物半導体層にチャネルが形成される酸化物半導体トランジスタである。トランジスタ100は、チャネルが形成される酸化物半導体層の下側にゲート電極、上側にソース電極及びドレイン電極が設けられた、いわゆるボトムゲート型のトランジスタである。
【0014】
トランジスタ100は、第1の酸化物半導体層10、ゲート電極12、ゲート絶縁層14、ソース電極16、ドレイン電極18、第2の酸化物半導体層20、第3の酸化物半導体層22、第1の絶縁層24、第2の絶縁層26を備える。ソース電極16は第1の電極の一例である。ドレイン電極18は第2の電極の一例である。
【0015】
第1の酸化物半導体層10は、第1の領域10a、第2の領域10b、及び、第3の領域10cを有する。
【0016】
第1の酸化物半導体層10には、トランジスタ100のオン動作時に、電流経路となるチャネルが形成される。チャネルの中で電子が流れる方向を、チャネル長方向と称する。
図1中にチャネル長方向を両矢印で示す。
【0017】
第1の酸化物半導体層10は、酸化物半導体である。第1の酸化物半導体層10は、金属酸化物である。第1の酸化物半導体層10は、例えば、アモルファスである。
【0018】
第1の酸化物半導体層10は、例えば、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び、亜鉛(Zn)を含む。第1の酸化物半導体層10の中に含まれる金属元素の中の、インジウム、ガリウム、及び、亜鉛の総和の原子比は、例えば、90%以上である。また、第1の酸化物半導体層10の中に含まれる酸素以外の元素の中の、インジウム、ガリウム、及び、亜鉛の総和の原子比は、例えば、90%以上である。例えば、第1の酸化物半導体層10の中には、酸素以外の元素で、インジウム、ガリウム、及び、亜鉛のいずれか一つよりも大きな原子比を有する元素は存在しない。
【0019】
第1の酸化物半導体層10は、第1の領域10a、第2の領域10b、及び、第3の領域10cを有する。第3の領域10cの少なくとも一部が、第1の領域10aと第2の領域10bとの間に設けられる。
【0020】
第1の領域10aはトランジスタ100のソース領域、第2の領域10bはトランジスタ100のドレイン領域として機能する。また、第3の領域10cにトランジスタ100のオン動作時にチャネルが形成される。
【0021】
第1の領域10aと第2の領域10bは、例えば、n型半導体である。第1の領域10aの酸素欠損濃度、及び、第2の領域10bの酸素欠損濃度は、例えば、第3の領域10cの酸素欠損濃度よりも高い。第1の酸化物半導体層10の中の酸素欠損は、ドナーとして機能する。
【0022】
第1の領域10aのn型キャリア濃度、及び、第2の領域10bのn型キャリア濃度は、例えば、第3の領域10cのn型キャリア濃度よりも高い。第1の領域10aの電気抵抗、及び、第2の領域10bの電気抵抗は、例えば、第3の領域10cの電気抵抗よりも低い。
【0023】
第1の酸化物半導体層10の厚さは、例えば、10nm以上100nm以下である。
【0024】
第1の酸化物半導体層10は、例えば、原子層堆積法(Atomic Layer Deposition法:ALD法)により形成される。
【0025】
ゲート電極12は、第1の酸化物半導体層10の下側に設けられる。ゲート電極12は、例えば、金属、金属化合物、又は、半導体である。ゲート電極12は、例えば、タングステン(W)である。ゲート電極12のゲート長は、例えば、20nm以上100nm以下である。
【0026】
ゲート絶縁層14は、第1の酸化物半導体層10とゲート電極12との間に設けられる。ゲート絶縁層14は、第3の領域10cとゲート電極12との間に設けられる。
【0027】
ゲート絶縁層14は、例えば、酸化物、又は、酸窒化物である。ゲート絶縁層14は、例えば、酸化シリコン、又は、酸化アルミニウムである。ゲート絶縁層14の厚さは、例えば、2nm以上10nm以下である。
【0028】
なお、第1の酸化物半導体層10とゲート絶縁層14との間に、ゲート絶縁層14と異なる材料の図示しない酸化物層を設けることも可能である。
【0029】
ソース電極16は、第1の酸化物半導体層10の上側に設けられる。第1の酸化物半導体層10は、ゲート電極12とソース電極16との間に挟まれる。
【0030】
ソース電極16は、第1の領域10aの上側に設けられる。ソース電極16は、第1の領域10aに電気的に接続される。
【0031】
ソース電極16は、例えば、金属、又は、金属化合物である。ソース電極16は、例えば、タングステン(W)である。
【0032】
ドレイン電極18は、第1の酸化物半導体層10の上側に設けられる。第1の酸化物半導体層10は、ゲート電極12とドレイン電極18との間に挟まれる。
【0033】
ドレイン電極18は、第2の領域10bの上側に設けられる。ドレイン電極18は、第2の領域10bに電気的に接続される。
【0034】
ドレイン電極18は、例えば、金属、又は、金属化合物である。ソース電極16は、例えば、タングステン(W)である。
【0035】
第2の酸化物半導体層20は、第1の酸化物半導体層10とソース電極16との間に設けられる。第2の酸化物半導体層20は、第1の領域10aとソース電極16との間に設けられる。第2の酸化物半導体層20は、第1の酸化物半導体層10に接する。
【0036】
第2の酸化物半導体層20は、酸化物半導体である。第2の酸化物半導体層20は、金属酸化物である。第2の酸化物半導体層20は、例えば、アモルファスである。
【0037】
第2の酸化物半導体層20は、インジウム(In)、アルミニウム(Al)、及び、亜鉛(Zn)を含む。第2の酸化物半導体層20は、インジウム(In)、アルミニウム(Al)、及び、亜鉛(Zn)を含む酸化物である。
【0038】
第2の酸化物半導体層20の、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和に対するアルミニウムの原子比は8%以上23%以下である。すなわち、第2の酸化物半導体層20のAl/(In+Al+Zn)で表記される原子比が、8%以上23%以下である。
【0039】
第2の酸化物半導体層20の、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和に対するインジウムの原子比は45%以下である。すなわち、第2の酸化物半導体層20のIn/(In+Al+Zn)で表記される原子比が45%以下である。
【0040】
第2の酸化物半導体層20の、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和に対するインジウムの原子比は、例えば、1%以上である。すなわち、第2の酸化物半導体層20のIn/(In+Al+Zn)で表記される原子比が、1%以上である。
【0041】
第2の酸化物半導体層20の中に含まれる金属元素の中の、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和の原子比は、例えば、90%以上である。また、第2の酸化物半導体層20の中に含まれる酸素以外の元素の中の、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和の原子比は、例えば、90%以上である。例えば、第2の酸化物半導体層20の中には、酸素以外の元素で、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛のいずれか一つよりも大きな原子比を有する元素は存在しない。
【0042】
また、第2の酸化物半導体層20の中に含まれる金属元素の中のガリウム(Ga)、スズ(Sn)、及び、チタン(Ti)の原子比が、例えば、それぞれ10%未満である。
【0043】
第3の酸化物半導体層22は、第1の酸化物半導体層10とドレイン電極18との間に設けられる。第3の酸化物半導体層22は、第2の領域10bとドレイン電極18との間に設けられる。第3の酸化物半導体層22は、第1の酸化物半導体層10に接する。
【0044】
第3の酸化物半導体層22は、酸化物半導体である。第3の酸化物半導体層22は、金属酸化物である。第3の酸化物半導体層22は、例えば、アモルファスである。
【0045】
第3の酸化物半導体層22は、インジウム(In)、アルミニウム(Al)、及び、亜鉛(Zn)を含む。第3の酸化物半導体層22は、インジウム(In)、アルミニウム(Al)、及び、亜鉛(Zn)を含む酸化物である。
【0046】
第3の酸化物半導体層22の、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和に対するアルミニウムの原子比は8%以上23%以下である。すなわち、Al/(In+Al+Zn)で表記される原子比が、8%以上23%以下である。
【0047】
第3の酸化物半導体層22の、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和に対するインジウムの原子比は45%以下である。すなわち、第3の酸化物半導体層22の、In/(In+Al+Zn)で表記される原子比が45%以下である。
【0048】
第3の酸化物半導体層22の、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和に対するインジウムの原子比は、例えば、1%以上である。すなわち、第3の酸化物半導体層22の、In/(In+Al+Zn)で表記される原子比が、1%以上である。
【0049】
第3の酸化物半導体層22の中に含まれる金属元素の中の、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和の原子比は、例えば、90%以上である。また、第3の酸化物半導体層22の中に含まれる酸素以外の元素の中の、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和の原子比は、例えば、90%以上である。例えば、第3の酸化物半導体層22の中には、酸素以外の元素で、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛のいずれか一つよりも大きな原子比を有する元素は存在しない。
【0050】
また、第3の酸化物半導体層22の中に含まれる金属元素の中のガリウム(Ga)、スズ(Sn)、及び、チタン(Ti)の原子比が、例えば、それぞれ10%未満である。
【0051】
図2は、第1の実施形態の半導体装置の第2の酸化物半導体層及び第3の酸化物半導体層の化学組成範囲を示す図である。
図2は、三角ダイアグラムである。
図2のハッチングされた領域が、第2の酸化物半導体層20及び第3の酸化物半導体層22の化学組成範囲である。
【0052】
図2のハッチングされた領域は、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和に対するアルミニウムの原子比は8%以上23%以下である。すなわち、Al/(In+Al+Zn)で表記される原子比が、8%以上23%以下である。また、
図2のハッチングされた領域は、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和に対するインジウムの原子比は、45%以下である。すなわち、In/(In+Al+Zn)で表記される原子比が、45%以下である。
【0053】
ゲート電極12とソース電極16との間のチャネル長方向の距離(
図1中のd1)、及び、ゲート電極12とドレイン電極18との間のチャネル長方向の距離(
図1中のd2)をゲートオフセット距離と称する。ゲートオフセット距離d1は、例えば、30nm以上である。ゲートオフセット距離d2は、例えば、30nm以上である。
【0054】
第1の絶縁層24は、第1の酸化物半導体層10の下側に設けられる。第1の絶縁層24は、例えば、酸化物、窒化物、又は、酸窒化物である。第1の絶縁層24は、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、又は、酸窒化シリコンである。
【0055】
第2の絶縁層26は、第1の酸化物半導体層10の上側に設けられる。第2の絶縁層26は、ソース電極16とドレイン電極18の間に設けられる。
【0056】
第2の絶縁層26は、ソース電極16とドレイン電極18とを電気的に分離する。第2の絶縁層26は、第2の絶縁層26は、例えば、酸化物、窒化物、又は、酸窒化物である。第2の絶縁層26は、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、又は、酸窒化シリコンである。
【0057】
以下、第1の実施形態の半導体装置の作用及び効果について説明する。
【0058】
図3は、比較例の半導体装置の模式断面図である。比較例の半導体装置は、トランジスタ800である。トランジスタ800は、酸化物半導体にチャネルが形成される酸化物半導体トランジスタである。トランジスタ800は、チャネルが形成される酸化物半導体層の下側にゲート電極、上側にソース電極及びドレイン電極が設けられたボトムゲート型のトランジスタである。
【0059】
トランジスタ800は、第1の酸化物半導体層10、ゲート電極12、ゲート絶縁層14、ソース電極16、ドレイン電極18、第1の絶縁層24、第2の絶縁層26、金属酸化物層30を備える。ソース電極16は第1の電極の一例である。ドレイン電極18は第2の電極の一例である。
【0060】
第1の酸化物半導体層10は、第1の領域10a、第2の領域10b、及び、第3の領域10cを有する。
【0061】
トランジスタ800は、第2の酸化物半導体層20及び第3の酸化物半導体層22を備えない点で第1の実施形態のトランジスタ100と異なる。また。トランジスタ800は、金属酸化物層30を備える点で第1の実施形態のトランジスタ100と異なる。
【0062】
金属酸化物層30は、第1の酸化物半導体層10の上に、ソース電極16及びドレイン電極18を形成した後に加わる熱処理により形成される。すなわち、第1の酸化物半導体層10に含まれる酸素がソース電極16及びドレイン電極18に吸収され、ソース電極16及びドレイン電極18を構成する金属が酸化されることで形成される。
【0063】
金属酸化物層30が形成されることで、第1の酸化物半導体層10とソース電極16との間のコンタクト抵抗、及び、第1の酸化物半導体層10とドレイン電極18との間のコンタクト抵抗が増加する。したがって、トランジスタ800の寄生抵抗が増加し、トランジスタ800のオン電流が減少する問題が生じる。
【0064】
また、第1の酸化物半導体層10の第1の領域10a及び第2の領域10bは、ソース電極16及びドレイン電極18を形成した後に加わる熱処理により、ソース電極16及びドレイン電極18に酸素が吸収されることで形成される。すなわち、第1の酸化物半導体層10に含まれる酸素がソース電極16及びドレイン電極18に吸収されることで、第1の酸化物半導体層10に酸素欠損が生じる。酸素欠損が生じることで、n型キャリア濃度の高い低抵抗な第1の領域10a及び第2の領域10bが形成される。
【0065】
第1の領域10aは、熱処理により、ソース電極16からゲート電極18の方に向かって横方向に伸びる。また、第2の領域10bは、熱処理により、ドレイン電極18からゲート電極18の方に向かって横方向に伸びる。
【0066】
トランジスタ800では、第1の領域10aと第2の領域10bとの間の距離が、チャネル長となる。第1の領域10aと第2の領域10bとの間の距離が短くなると、トランジスタ800のチャネル長が短くなる。トランジスタ800のチャネル長が短くなりすぎると、トランジスタ800の閾値電圧の低下やオフリーク電流の増加が生じ好ましくない。
【0067】
したがって、ゲート電極12とソース電極16との間には所定のゲートオフセット距離d1が設けられることが好ましい。また、ゲート電極12とドレイン電極18との間には所定のゲートオフセット距離d2が設けられることが好ましい。
【0068】
ソース電極16及びドレイン電極18に吸収される酸素が少ない場合、第1の領域10a及び第2の領域10bのチャネル長方向の伸び量が減少する。このため、ゲート電極12と第1の領域10aとの間の離間距離(
図3中のd3)が増加する。また、ゲート電極12と第2の領域10bとの間の離間距離(
図3中のd4)が増加する。
【0069】
離間距離d3及び離間距離d4が大きくなることで、トランジスタ800の寄生抵抗が増加する。したがって、トランジスタ800のオン電流が減少するという問題が生じる。
【0070】
第1の実施形態のトランジスタ100は、第1の酸化物半導体層10とソース電極16との間に第2の酸化物半導体層20、第1の酸化物半導体層10とドレイン電極18との間に第3の酸化物半導体層22を備える。第2の酸化物半導体層20と第3の酸化物半導体層22を備えることにより、ソース電極16及びドレイン電極18の酸化が抑制される。
【0071】
したがって、第2の酸化物半導体層20と第3の酸化物半導体層22を備えることにより、第1の酸化物半導体層10とソース電極16との間のコンタクト抵抗、及び、第1の酸化物半導体層10とドレイン電極18との間のコンタクト抵抗の増加が抑制される。よって、トランジスタ100のオン電流の減少が抑制される。
【0072】
図4は、第1の実施形態の半導体装置の作用及び効果の説明図である。
図4は、トランジスタ形成後の窒素アニール温度とコンタクト抵抗の関係を示す図である。図中、丸印は第1の実施形態の場合、三角印は比較例の場合を示す。
【0073】
第1の実施形態の場合の第2の酸化物半導体層20及び第3の酸化物半導体層22の化学組成は、
図2中の点Xの化学組成を用いている。
【0074】
図4に示すように、比較例の場合は、400℃以上の窒素アニールによりコンタクト抵抗が上昇する。一方、第1の実施形態の場合は、400℃以上の窒素アニールを行っても、コンタクト抵抗に変化が見られない。したがって、第1の実施形態のトランジスタ100は、熱処理を加えてもコンタクト抵抗が増加せず、高い耐熱性を備える。
【0075】
第1の実施形態のトランジスタ100は、第1の酸化物半導体層10とソース電極16との間に第2の酸化物半導体層20、第1の酸化物半導体層10とドレイン電極18との間に第3の酸化物半導体層22を備える。第2の酸化物半導体層20と第3の酸化物半導体層22を備えることにより、第1の領域10a及び第2の領域10bのチャネル長方向の伸び量が増加する。このため、ゲート電極12と第1の領域10aとの間の離間距離が減少する。また、ゲート電極12と第2の領域10bとの間の離間距離が減少する。
【0076】
離間距離が小さくなることで、トランジスタ100の寄生抵抗が減少する。したがって、第1の実施形態のトランジスタ100のオン電流の減少が抑制される。
【0077】
図5は、第1の実施形態の半導体装置の作用及び効果の説明図である。
図5は、トランジスタのゲートオフセット距離を変化させた場合の、トランジスタのオン電流を示す図である。図中、丸印は第1の実施形態の場合、三角印は比較例の場合を示す。
【0078】
第1の実施形態の場合の第2の酸化物半導体層20及び第3の酸化物半導体層22の化学組成は、
図2中の点Xの化学組成を用いている。
【0079】
トランジスタのオン電流は、トランジスタ形成後に320℃の窒素アニールを行った後に測定している。ゲートオフセット距離がマイナスの場合が、ゲート電極12とソース電極16、又は、ゲート電極12とドレイン電極18とがチャネル長方向に重ならずに離れている場合を示す。
【0080】
図5から明らかなように、同一のゲートオフセット距離で比較した場合、第1の実施形態の場合は比較例の場合に比べ、オン電流が低減することがわかる。これは、第1の実施形態の場合の方が、第1の領域10a及び第2の領域10bのチャネル長方向の伸び量が大きく、トランジスタの寄生抵抗が低減するためと考えられる。
【0081】
第2の酸化物半導体層20及び第3の酸化物半導体層22の、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和に対するアルミニウムの原子比は8%以上23%以下である。また、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和に対するインジウムの原子比は、45%以下である。
【0082】
上記化学組成範囲の金属酸化物は、酸素の透過性が低い。上記化学組成範囲の金属酸化物は、酸素の透過性が低いため、第1の酸化物半導体層10とソース電極16との間、及び、第1の酸化物半導体層10とドレイン電極18との間に挟むことにより、ソース電極16及びドレイン電極18の酸化を抑制することが可能となる。
【0083】
特に、第2の酸化物半導体層20及び第3の酸化物半導体層22のインジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和に対するインジウムの原子比を45%以下とすることにより、第2の酸化物半導体層20及び第3の酸化物半導体層22を構成する金属酸化物が結晶化することが抑制される。金属酸化物の結晶化が抑制されることにより、酸素の透過性が低くなる。
【0084】
また、上記化学組成範囲の金属酸化物は、酸素の吸収能力が高い。上記化学組成範囲の金属酸化物は、酸素の吸収能力が高いため、第1の酸化物半導体層10から多くの酸素を吸収する。したがって、第1の領域10a及び第2の領域10bのチャネル長方向の伸び量が増加する。
【0085】
酸素の透過性を低くし、酸素の吸収能力を高くする観点から、第2の酸化物半導体層20及び第3の酸化物半導体層22は、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和に対するインジウムの原子比が、1%以上であることが好ましく、35%以上であることがより好ましい。
【0086】
トランジスタ100の製造を容易にする観点から、ゲート電極12とソース電極16との間の距離、及び、ゲート電極12とドレイン電極18との間の距離は30nm以上であることが好ましい。
【0087】
以上、第1の実施形態によれば、熱処理後のコンタクト抵抗の増加が抑制され高い耐熱性を備えた酸化物半導体トランジスタが実現される。また、第1の実施形態によれば、低い寄生抵抗を備えた酸化物半導体トランジスタが実現される。
【0088】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の半導体装置は、第1の酸化物半導体層はインジウム(In)、アルミニウム(Al)、及び、亜鉛(Zn)を含み、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和に対するアルミニウムの原子比が8%以上23%以下であり、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和に対するインジウムの原子比が70%以下である点で、第1の実施形態の半導体装置と異なる。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する。
【0089】
図6は、第2の実施形態の半導体装置の第1の酸化物半導体層の化学組成範囲を示す図である。
図6は、三角ダイアグラムである。
図6のハッチングされた領域が、第1の酸化物半導体層10の化学組成範囲である。
【0090】
第2の実施形態のトランジスタの第1の酸化物半導体層10はインジウム(In)、アルミニウム(Al)、及び、亜鉛(Zn)を含み、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和に対するアルミニウムの原子比が8%以上23%以下である。すなわち、Al/(In+Al+Zn)で表記される原子比が、8%以上23%以下である。また、
図6のハッチングされた領域は、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和に対するインジウムの原子比は、70%以下である。すなわち、In/(In+Al+Zn)で表記される原子比が、70%以下である。
【0091】
第1の酸化物半導体層10の化学組成は、第2の酸化物半導体層20及び第3の酸化物半導体層22の化学組成と異なる。
【0092】
第1の酸化物半導体層10の中に含まれる金属元素の中の、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和の原子比は、例えば、90%以上である。また、第1の酸化物半導体層10の中に含まれる酸素以外の元素の中の、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和の原子比は、例えば、90%以上である。例えば、第1の酸化物半導体層10の中には、酸素以外の元素で、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛のいずれか一つよりも大きな原子比を有する元素は存在しない。
【0093】
また、第1の酸化物半導体層10の中に含まれる金属元素の中のガリウム(Ga)、スズ(Sn)、及び、チタン(Ti)の原子比が、例えば、それぞれ10%未満である。
【0094】
酸化物半導体トランジスタの形成後に熱処理を加えることで、例えば、閾値電圧の変動が生じるおそれがある。閾値電圧の変動は、チャネルが形成される酸化物半導体層を構成する金属酸化物中の酸素が、金属元素と解離することにより生じることが考えられる。言い換えれば、チャネルが形成される酸化物半導体層を構成する金属酸化物中に酸素欠損が形成されることにより、閾値電圧の変動が生じると考えられる。熱処理を経ても閾値電圧の変動が少ない、耐熱性の高い酸化物半導体トランジスタの実現が期待される。
【0095】
図6に示す化学組成範囲の金属酸化物を第1の酸化物半導体層10に適用した場合、熱処理を経ても閾値電圧の変動が少ない、耐熱性の高い酸化物半導体トランジスタが実現できる。また、移動度の高い酸化物半導体トランジスタが実現できる。
【0096】
トランジスタの耐熱性を向上させる観点から、第1の酸化物半導体層10の、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和に対するアルミニウムの原子比が10%以上20%以下であることが好ましく、11%以上15%以下であることがより好ましい。
【0097】
トランジスタの移動度を向上させる観点から、第1の酸化物半導体層10に含まれるインジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和に対するインジウムの原子比が39%以上であることが好ましい。トランジスタの移動度を向上させる観点から、第1の酸化物半導体層10に含まれるインジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和に対するインジウムの原子比は、第2の酸化物半導体層20及び第3の酸化物半導体層22に含まれるインジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和に対するインジウムの原子比よりも大きいことが好ましい。
【0098】
第1の酸化物半導体層10の結晶化を抑制し、トランジスタの特性を安定させる観点から、第1の酸化物半導体層10に含まれるインジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和に対するインジウムの原子比は45%以下であることが好ましく、41%以下であることがより好ましい。
【0099】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様、熱処理後のコンタクト抵抗の増加が抑制され高い耐熱性を備えた酸化物半導体トランジスタが実現される。また、第1の実施形態と同様、低い寄生抵抗を備えた酸化物半導体トランジスタが実現される。また、熱処理後の閾値電圧の変動が抑制され高い耐熱性を備えた酸化物半導体トランジスタが実現される。また、移動度の高い酸化物半導体トランジスタが実現される。
【0100】
(第3の実施形態)
第3の実施形態の半導体装置は、ゲート電極が第1の酸化物半導体層の上側に位置する点で、第1の実施形態の半導体装置と異なる。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する。
【0101】
図7は、第3の実施形態の半導体装置の模式断面図である。
【0102】
第3の実施形態の半導体装置は、トランジスタ200である。トランジスタ200は、酸化物半導体層にチャネルが形成される酸化物半導体トランジスタである。トランジスタ200は、チャネルが形成される酸化物半導体層の上側にゲート電極、ソース電極、及びドレイン電極が設けられた、いわゆるトップゲート型のトランジスタである。
【0103】
トランジスタ200は、第1の酸化物半導体層10、ゲート電極12、ゲート絶縁層14、ソース電極16、ドレイン電極18、第2の酸化物半導体層20、第3の酸化物半導体層22、第1の絶縁層24を備える。ソース電極16は第1の電極の一例である。ドレイン電極18は第2の電極の一例である。
【0104】
第1の酸化物半導体層10は、第1の領域10a、第2の領域10b、及び、第3の領域10cを有する。
【0105】
第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様、熱処理後のコンタクト抵抗の増加が抑制され高い耐熱性を備えた酸化物半導体トランジスタが実現される。また、第1の実施形態と同様、低い寄生抵抗を備えた酸化物半導体トランジスタが実現される。
【0106】
(第4の実施形態)
第4の実施形態の半導体装置は、ゲート電極が、第1の酸化物半導体層を囲む点で、第1の実施形態の半導体装置と異なっている。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する。
【0107】
図8、
図9は、第4の実施形態の半導体装置の模式断面図である。
図9は、
図8のAA’断面図である。
図8において、水平方向を第1の方向、奥行方向を第2の方向、上下方向を第3の方向と称する。
【0108】
第4の実施形態の半導体装置は、トランジスタ300である。トランジスタ300は、酸化物半導体にチャネルが形成される酸化物半導体トランジスタである。トランジスタ300は、ゲート電極が、チャネルが形成される酸化物半導体層を囲んで設けられる、いわゆるSurrounding Gate Transistor(SGT)である。トランジスタ300は、いわゆる縦型トランジスタである。
【0109】
トランジスタ300は、第1の酸化物半導体層10、ゲート電極12、ゲート絶縁層14、ソース電極16、ドレイン電極18、第2の酸化物半導体層20、第3の酸化物半導体層22、層間絶縁層32を備える。ソース電極16は第1の電極の一例である。ドレイン電極18は第2の電極の一例である。
【0110】
第1の酸化物半導体層10は、第1の領域10a、第2の領域10b、及び、第3の領域10cを有する。
【0111】
第1の酸化物半導体層10は、ソース電極16とドレイン電極18との間に設けられる。第1の酸化物半導体層10には、トランジスタ300のオン動作時に、電流経路となるチャネルが形成される。第1の酸化物半導体層10は、第3の方向に延びる。第1の酸化物半導体層10は、第3の方向に延びる柱状である。第1の酸化物半導体層10は、例えば、円柱状である。
【0112】
チャネルの中で電子が流れる方向を、チャネル長方向と称する。第3の方向が、トランジスタ300のチャネル長方向である。
【0113】
第1の酸化物半導体層10は、酸化物半導体である。第1の酸化物半導体層10は、金属酸化物である。第1の酸化物半導体層10は、例えば、アモルファスである。
【0114】
第1の酸化物半導体層10は、例えば、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び、亜鉛(Zn)を含む。第1の酸化物半導体層10の中に含まれる金属元素の中の、インジウム、ガリウム、及び、亜鉛の総和の原子比は、例えば、90%以上である。また、第1の酸化物半導体層10の中に含まれる酸素以外の元素の中の、インジウム、ガリウム、及び、亜鉛の総和の原子比は、例えば、90%以上である。例えば、第1の酸化物半導体層10の中には、酸素以外の元素で、インジウム、ガリウム、及び、亜鉛のいずれか一つよりも大きな原子比を有する元素は存在しない。
【0115】
第1の酸化物半導体層10は、第1の領域10a、第2の領域10b、及び、第3の領域10cを有する。第3の領域10cは、第1の領域10aと第2の領域10bとの間に設けられる。
【0116】
第1の領域10aはトランジスタ300のソース領域、第2の領域10bはトランジスタ300のドレイン領域として機能する。また、第3の領域10cにトランジスタ300のオン動作時にチャネルが形成される。
【0117】
第1の領域10aと第2の領域10bは、例えば、n型半導体である。第1の領域10aの酸素欠損濃度、及び、第2の領域10bの酸素欠損濃度は、例えば、第3の領域10cの酸素欠損濃度よりも高い。第1の酸化物半導体層10の中の酸素欠損は、ドナーとして機能する。
【0118】
第1の領域10aのn型キャリア濃度、及び、第2の領域10bのn型キャリア濃度は、例えば、第3の領域10cのn型キャリア濃度よりも高い。第1の領域10aの電気抵抗、及び、第2の領域10bの電気抵抗は、例えば、第3の領域10cの電気抵抗よりも低い。
【0119】
第1の酸化物半導体層10の第1の方向の幅は、例えば、20nm以上100nm以下である。 第1の酸化物半導体層10の第3の方向の長さは、例えば、80nm以上200nm以下である。
【0120】
第1の酸化物半導体層10は、例えば、原子層堆積法(Atomic Layer Deposition法:ALD法)により形成される。
【0121】
ゲート電極12は、第1の酸化物半導体層10を囲んで設けられる。ゲート電極12は、第1の酸化物半導体層10の周囲に設けられる。
【0122】
ゲート電極12は、例えば、金属、金属化合物、又は、半導体である。ゲート電極12は、例えば、タングステン(W)である。ゲート電極12のゲート長は、例えば、20nm以上100nm以下である。ゲート電極12のゲート長は、ゲート電極12の第3の方向の長さである。
【0123】
ゲート絶縁層14は、第1の酸化物半導体層10とゲート電極12との間に設けられる。ゲート絶縁層14は、第1の酸化物半導体層10を囲んで設けられる。ゲート絶縁層14は、少なくとも第3の領域10cとゲート電極12との間に設けられる。
【0124】
ゲート絶縁層14は、例えば、酸化物、又は、酸窒化物である。ゲート絶縁層14は、例えば、酸化シリコン、又は、酸化アルミニウムである。ゲート絶縁層14の厚さは、例えば、2nm以上10nm以下である。
【0125】
なお、第1の酸化物半導体層10とゲート絶縁層14との間に、ゲート絶縁層14と異なる材料の図示しない酸化物層を設けることも可能である。
【0126】
ソース電極16は、第1の酸化物半導体層10の下側に設けられる。ソース電極16は、第1の領域10aの下側に設けられる。ソース電極16は、第1の領域10aに電気的に接続される。
【0127】
ソース電極16は、例えば、金属、又は、金属化合物である。ソース電極16は、例えば、タングステン(W)である。
【0128】
ドレイン電極18は、第1の酸化物半導体層10の上側に設けられる。ドレイン電極18は、第2の領域10bの上側に設けられる。ドレイン電極18は、第2の領域10bに電気的に接続される。
【0129】
ドレイン電極18は、例えば、金属、又は、金属化合物である。ソース電極16は、例えば、タングステン(W)である。
【0130】
第2の酸化物半導体層20は、第1の酸化物半導体層10とソース電極16との間に設けられる。第2の酸化物半導体層20は、第1の領域10aとソース電極16との間に設けられる。第2の酸化物半導体層20は、第1の酸化物半導体層10に接する。
【0131】
第2の酸化物半導体層20は、酸化物半導体である。第2の酸化物半導体層20は、金属酸化物である。第2の酸化物半導体層20は、例えば、アモルファスである。
【0132】
第2の酸化物半導体層20は、インジウム(In)、アルミニウム(Al)、及び、亜鉛(Zn)を含む。第2の酸化物半導体層20は、インジウム(In)、アルミニウム(Al)、及び、亜鉛(Zn)を含む酸化物である。
【0133】
第2の酸化物半導体層20の、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和に対するアルミニウムの原子比は8%以上23%以下である。すなわち、第2の酸化物半導体層20のAl/(In+Al+Zn)で表記される原子比が、8%以上23%以下である。
【0134】
第2の酸化物半導体層20の、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和に対するインジウムの原子比は45%以下である。すなわち、第2の酸化物半導体層20のIn/(In+Al+Zn)で表記される原子比が45%以下である。
【0135】
第2の酸化物半導体層20の、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和に対するインジウムの原子比は、例えば、1%以上である。すなわち、第2の酸化物半導体層20のIn/(In+Al+Zn)で表記される原子比が、1%以上である。
【0136】
第2の酸化物半導体層20の中に含まれる金属元素の中の、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和の原子比は、例えば、90%以上である。また、第2の酸化物半導体層20の中に含まれる酸素以外の元素の中の、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和の原子比は、例えば、90%以上である。例えば、第2の酸化物半導体層20の中には、酸素以外の元素で、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛のいずれか一つよりも大きな原子比を有する元素は存在しない。
【0137】
また、第2の酸化物半導体層20の中に含まれる金属元素の中のガリウム(Ga)、スズ(Sn)、及び、チタン(Ti)の原子比が、例えば、それぞれ10%未満である。
【0138】
第3の酸化物半導体層22は、第1の酸化物半導体層10とドレイン電極18との間に設けられる。第3の酸化物半導体層22は、第2の領域10bとドレイン電極18との間に設けられる。第3の酸化物半導体層22は、第1の酸化物半導体層10に接する。
【0139】
第3の酸化物半導体層22は、酸化物半導体である。第3の酸化物半導体層22は、金属酸化物である。第3の酸化物半導体層22は、例えば、アモルファスである。
【0140】
第3の酸化物半導体層22は、インジウム(In)、アルミニウム(Al)、及び、亜鉛(Zn)を含む。第3の酸化物半導体層22は、インジウム(In)、アルミニウム(Al)、及び、亜鉛(Zn)を含む酸化物である。
【0141】
第3の酸化物半導体層22の、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和に対するアルミニウムの原子比は8%以上23%以下である。すなわち、Al/(In+Al+Zn)で表記される原子比が、8%以上23%以下である。
【0142】
第3の酸化物半導体層22の、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和に対するインジウムの原子比は45%以下である。すなわち、第3の酸化物半導体層22の、In/(In+Al+Zn)で表記される原子比が45%以下である。
【0143】
第3の酸化物半導体層22の、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和に対するインジウムの原子比は、例えば、1%以上である。すなわち、第3の酸化物半導体層22の、In/(In+Al+Zn)で表記される原子比が、1%以上である。
【0144】
第3の酸化物半導体層22の中に含まれる金属元素の中の、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和の原子比は、例えば、90%以上である。また、第3の酸化物半導体層22の中に含まれる酸素以外の元素の中の、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和の原子比は、例えば、90%以上である。例えば、第3の酸化物半導体層22の中には、酸素以外の元素で、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛のいずれか一つよりも大きな原子比を有する元素は存在しない。
【0145】
また、第3の酸化物半導体層22の中に含まれる金属元素の中のガリウム(Ga)、スズ(Sn)、及び、チタン(Ti)の原子比が、例えば、それぞれ10%未満である。
【0146】
ゲート電極12とソース電極16との間のチャネル長方向の距離(
図8中のd5)、及び、ゲート電極12とドレイン電極18との間のチャネル長方向の距離(
図8中のd6)をゲートオフセット距離と称する。ゲートオフセット距離d5は、例えば、30nm以上である。ゲートオフセット距離d6は、例えば、30nm以上である。
【0147】
層間絶縁層32は、ゲート電極12、ソース電極16、及び、ドレイン電極18の周囲に設けられる。層間絶縁層32は、例えば、酸化物、窒化物、又は、酸窒化物である。層間絶縁層32は、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、又は、酸窒化シリコンである。
【0148】
図10は、比較例の半導体装置の模式断面図である。比較例の半導体装置は、トランジスタ900である。トランジスタ900は、酸化物半導体にチャネルが形成される酸化物半導体トランジスタである。トランジスタ900は、ゲート電極が、チャネルが形成される酸化物半導体層を囲んで設けられる、いわゆるSGTである。トランジスタ900は、いわゆる縦型トランジスタである。
【0149】
トランジスタ900は、第2の酸化物半導体層20及び第3の酸化物半導体層22を備えない点で第4の実施形態のトランジスタ300と異なる。また。トランジスタ900は、金属酸化物層30を備える点で第4の実施形態のトランジスタ300と異なる。
【0150】
金属酸化物層30は、ソース電極16及びドレイン電極18を形成した後に加わる熱処理により形成される。すなわち、第1の酸化物半導体層10に含まれる酸素がソース電極16及びドレイン電極18に吸収され、ソース電極16及びドレイン電極18を構成する金属が酸化されることで形成される。
【0151】
金属酸化物層30が形成されることで、第1の酸化物半導体層10とソース電極16との間のコンタクト抵抗、及び、第1の酸化物半導体層10とドレイン電極18との間のコンタクト抵抗が増加する。したがって、トランジスタ900の寄生抵抗が増加し、トランジスタ900のオン電流が減少する問題が生じる。
【0152】
また、第1の酸化物半導体層10の第1の領域10a及び第2の領域10bは、ソース電極16及びドレイン電極18を形成した後に加わる熱処理により、ソース電極16及びドレイン電極18に酸素が吸収されることで形成される。すなわち、第1の酸化物半導体層10に含まれる酸素がソース電極16及びドレイン電極18に吸われることで、第1の酸化物半導体層10に酸素欠損が生じる。酸素欠損が生じることで、n型キャリア濃度の高い低抵抗な第1の領域10a及び第2の領域10bが形成される。
【0153】
ソース電極16及びドレイン電極18に吸収される酸素が少ない場合、第1の領域10a及び第2の領域10bのチャネル長方向の伸び量が減少する。このため、ゲート電極12と第1の領域10aとの間の離間距離(
図10中のd7)が増加する。また、ゲート電極12と第2の領域10bとの間の離間距離(
図10中のd8)が増加する。
【0154】
離間距離d7及び離間距離d8が大きくなることで、トランジスタ900の寄生抵抗が増加する。したがって、トランジスタ900のオン電流が減少するという問題が生じる。
【0155】
第4の実施形態のトランジスタ300は、第1の酸化物半導体層10とソース電極16との間に第2の酸化物半導体層20、第1の酸化物半導体層10とドレイン電極18との間に第3の酸化物半導体層22を備える。第2の酸化物半導体層20と第3の酸化物半導体層22は、酸素の透過性が低い。第2の酸化物半導体層20と第3の酸化物半導体層22を備えることにより、ソース電極16及びドレイン電極18の酸化が抑制される。
【0156】
したがって、第1の酸化物半導体層10とソース電極16との間のコンタクト抵抗、及び、第1の酸化物半導体層10とドレイン電極18との間のコンタクト抵抗の増加が抑制される。よって、トランジスタ300のオン電流の減少が抑制される。
【0157】
第4の実施形態のトランジスタ300は、第1の酸化物半導体層10とソース電極16との間に第2の酸化物半導体層20、第1の酸化物半導体層10とドレイン電極18との間に第3の酸化物半導体層22を備える。第2の酸化物半導体層20と第3の酸化物半導体層22は、酸素の吸収能力が高い。第2の酸化物半導体層20と第3の酸化物半導体層22を備えることにより、第1の領域10a及び第2の領域10bのチャネル長方向(第3の方向)の伸び量が増加する。このため、ゲート電極12と第1の領域10aとの間の離間距離が減少する。また、ゲート電極12と第2の領域10bとの間の離間距離が減少する。
【0158】
離間距離が小さくなることで、トランジスタ300の寄生抵抗が減少する。したがって、第4の実施形態のトランジスタ300のオン電流の減少が抑制される。
【0159】
以上、第4の実施形態によれば、第1の実施形態と同様、熱処理後のコンタクト抵抗の増加が抑制され高い耐熱性を備えた酸化物半導体トランジスタが実現される。また、第1の実施形態と同様、低い寄生抵抗を備えた酸化物半導体トランジスタが実現される。また、第4の実施形態によれば、SGTであることにより、単位面積あたりに高い密度でトランジスタを配置することが可能となる。
【0160】
(第5の実施形態)
第5の実施形態の半導体記憶装置は、第1の方向に延びる第1の配線と、第1の方向と交差する第2の方向に延びる第2の配線と、メモリセルと、を備え、メモリセルは、第1の配線に電気的に接続された第1の領域と、第2の領域と、第1の領域と第2の領域との間の第3の領域と、を有する第1の酸化物半導体層と、第1の酸化物半導体層を囲み、第2の配線に電気的に接続されたゲート電極と、第1の酸化物半導体層とゲート電極との間に設けられたゲート絶縁層と、第2の領域に電気的に接続されたキャパシタと、第1の領域と第1の配線との間、及び、第2の領域とキャパシタとの間の少なくとも一方に設けられ、インジウム(In)、アルミニウム(Al)、及び、亜鉛(Zn)を含み、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和に対するアルミニウムの原子比が8%以上23%以下であり、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和に対するインジウムの原子比が45%以下である第2の酸化物半導体層と、を有する。メモリセルが、第4の実施形態の半導体装置の第2の領域に電気的に接続されたキャパシタを備える。以下、第1ないし第4の実施形態と重複する内容については一部記述を省略する。
【0161】
第5の実施形態の半導体記憶装置は、半導体メモリ400である。第5の実施形態の半導体記憶装置は、Dynamic Random Access Memory(DRAM)である。半導体メモリ400は、第4の実施形態のトランジスタ300を、DRAMのメモリセルのスイッチングトランジスタとして使用する。
【0162】
図11は、第5の実施形態の半導体記憶装置のブロック図である。
【0163】
図11に示すように、半導体メモリ400は、メモリセルアレイ210、ワード線ドライバ回路212、ローデコーダ回路214、センスアンプ回路215、カラムデコーダ回路217、及び、制御回路221を備える。
【0164】
図12、
図13は、第5の実施形態の半導体記憶装置のメモリセルアレイの模式断面図である。
図12は、第1の方向と第3の方向を含む面の断面図、
図13は、第2の方向と第3の方向を含む面の断面図である。第1の方向と第2の方向は交差する。第1の方向と第2の方向は、例えば垂直である。第3の方向は、第1の方向及び第2の方向に対して垂直な方向である。第3の方向は、例えば基板に対して垂直な方向である。
【0165】
第5の実施形態のメモリセルアレイ210は、メモリセルが立体的に配置された三次元構造を備える。
図12、
図13において破線で囲まれた領域がそれぞれ1個のメモリセルを表している。
【0166】
メモリセルアレイ210は、シリコン基板250を備える。
【0167】
メモリセルアレイ210は、シリコン基板250の上に、例えば、複数のビット線BLと複数のワード線WLを備える。ビット線BLは第1の方向に伸長する。ワード線WLは第2の方向に伸長する。
【0168】
ビット線BLとワード線WLとは、例えば、垂直に交差する。ビット線BLとワード線WLとの交差する領域に、メモリセルが配置される。メモリセルには、第1のメモリセルMC1及び第2のメモリセルMC2が含まれる。第1のメモリセルMC1及び第2のメモリセルMC2は、メモリセルの一例である。
【0169】
第1のメモリセルMC1及び第2のメモリセルMC2に接続されるビット線BLがビット線BLxである。ビット線BLxは、第1の配線の一例である。第1のメモリセルMC1に接続されるワード線WLがワード線WLxである。ワード線WLxは、第2の配線の一例である。
【0170】
第2のメモリセルMC2に接続されるワード線WLがワード線WLyである。ワード線WLxは、ビット線BLxの一方の側に設けられる。ワード線WLyは、ビット線BLxの他方の側に設けられる。
【0171】
メモリセルアレイ210は、複数のプレート電極線PLを有する。プレート電極線PLは各メモリセルのプレート電極72に接続される。
【0172】
メモリセルアレイ210は、各配線及び各電極の電気的分離のために層間絶縁層260を備える。
【0173】
複数のワード線WLは、ローデコーダ回路214に電気的に接続される。複数のビット線BLは、センスアンプ回路215に電気的に接続される。
【0174】
ローデコーダ回路214は、入力されたローアドレス信号に従ってワード線WLを選択する機能を備える。ワード線ドライバ回路212は、ローデコーダ回路214によって選択されたワード線WLに所定の電圧を印加する機能を備える。
【0175】
カラムデコーダ回路217は、入力されたカラムアドレス信号に従ってビット線BLを選択する機能を備える。センスアンプ回路215は、カラムデコーダ回路217によって選択されたビット線BLに所定の電圧を印加する機能を備える。また、ビット線BLの電位を検知して増幅する機能を備える。
【0176】
制御回路221は、ワード線ドライバ回路212、ローデコーダ回路214、センスアンプ回路215、カラムデコーダ回路217、及び、図示しないその他の回路を制御する機能を備える。
【0177】
ワード線ドライバ回路212、ローデコーダ回路214、センスアンプ回路215、カラムデコーダ回路217、制御回路221などの回路は、例えば、図示しないトランジスタや配線層によって構成される。トランジスタは、例えば、シリコン基板250を用いて形成される。
【0178】
ビット線BL及びワード線WLは、例えば金属である。ビット線BL及びワード線WLは、例えば、窒化チタン、タングステン、又は、窒化チタンとタングステンの積層構造である。
【0179】
図14は、第5の実施形態の半導体記憶装置の第1のメモリセルの模式断面図である。
図15は、第5の実施形態の半導体記憶装置の第2のメモリセルの模式断面図である。
【0180】
第1のメモリセルMC1は、シリコン基板250とビット線BLxとの間に設けられる。シリコン基板250と第2のメモリセルMC2との間に、ビット線BLxが設けられる。
【0181】
第1のメモリセルMC1は、ビット線BLxの下側に設けられる。第2のメモリセルMC2は、ビット線BLxの上側に設けられる。
【0182】
第1のメモリセルMC1は、ビット線BLxの一方の側に設けられる。第2のメモリセルMC2は、ビット線BLxの他方の側に設けられる。
【0183】
第2のメモリセルMC2は、第1のメモリセルMC1を上下反転させた構造を有する。第1のメモリセルMC1及び第2のメモリセルMC2は、それぞれトランジスタ300及びキャパシタ201を備える。
【0184】
トランジスタ300は、第1の酸化物半導体層10、ゲート電極12、ゲート絶縁層14、ソース電極16、ドレイン電極18、第2の酸化物半導体層20、第3の酸化物半導体層22を備える。ソース電極16は第1の電極の一例である。ドレイン電極18は第2の電極の一例である。トランジスタ300は、第4の実施形態のトランジスタ300と同様の構成を備える。
【0185】
第1の酸化物半導体層10は、第1の領域10a、第2の領域10b、及び、第3の領域10cを有する。
【0186】
キャパシタ201は、セル電極71、プレート電極72、キャパシタ絶縁膜73を備える。セル電極71及びプレート電極72は、例えば、窒化チタンである。また、キャパシタ絶縁膜73は、例えば、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムの積層構造を有する。
【0187】
キャパシタ201は、第1のメモリセルMC1及び第2のメモリセルMC2の第1の酸化物半導体層10の一端に電気的に接続される。キャパシタ201のセル電極71は、ドレイン電極18に接続される。プレート電極72はプレート電極線PLに接続される。
【0188】
ソース電極16はビット線BLに接続される。ゲート電極12はワード線WLに接続される。
【0189】
なお、
図12、
図13、
図14、
図15では、ビット線BLとソース電極16、及び、ワード線WLとゲート電極12は、同一の材料で同時形成される場合を例に示している。ビット線BLとソース電極16、及び、ワード線WLとゲート電極12は、それぞれ異なる材料で別々に形成されるものであっても構わない。
【0190】
第1のメモリセルMC1の第1の酸化物半導体層10のキャパシタ201が接続される端部と反対側の端部(他端)に、ビット線BLxが電気的に接続される。第2のメモリセルMC2の第1の酸化物半導体層10のキャパシタ201が接続される端部と反対側の端部(他端)にビット線BLxが電気的に接続される。
【0191】
第1のメモリセルMC1のゲート電極12にワード線WLxが電気的に接続される。また、第2のメモリセルMC2のゲート電極12にワード線WLyが電気的に接続される。
【0192】
ワード線WLとビット線BL間のカップリングによる半導体メモリ400の誤動作を抑制するために、ワード線WLとビット線BL間の距離(
図14中のda)が長いことが好ましい。ワード線WLとビット線BL間の距離daは、30nm以上であることが好ましい。
【0193】
また、ワード線WLとキャパシタ201間のカップリングによる半導体メモリ400の誤動作を抑制するために、ワード線WLとキャパシタ201間の距離が長いことが好ましい。したがって、ワード線WLとドレイン電極18間の距離(
図14中のdb)が長いことが好ましい。ワード線WLとドレイン電極18の距離dbは、30nm以上であることが好ましい。
【0194】
トランジスタ300は、第1の酸化物半導体層10とソース電極16との間に第2の酸化物半導体層20、第1の酸化物半導体層10とドレイン電極18との間に第3の酸化物半導体層22を備える。第2の酸化物半導体層20と第3の酸化物半導体層22を備えることにより、第1の領域10a及び第2の領域10bのチャネル長方向(第3の方向)の伸び量が増加する。
【0195】
このため、ワード線WLとビット線BL間の距離daを長くしても、トランジスタ300の寄生抵抗を低くすることが可能である。また、ワード線WLとドレイン電極18の距離dbを長くしても、トランジスタ300の寄生抵抗を低くすることが可能である。
【0196】
酸化物半導体トランジスタをDRAMのメモリセルのスイッチングトランジスタとして使用する場合、トランジスタ形成後に高温かつ長時間の熱処理が加えられる。熱処理は、例えば、キャパシタ形成のための熱処理である。このため、チャネルが形成される酸化物半導体層に接する金属電極の酸化が進行しやすい。金属電極の酸化が進行し金属酸化物層が形成されるとコンタクト抵抗が増加し問題となる。
【0197】
トランジスタ300は、第1の酸化物半導体層10とソース電極16との間に第2の酸化物半導体層20、第1の酸化物半導体層10とドレイン電極18との間に第3の酸化物半導体層22を備える。第2の酸化物半導体層20と第3の酸化物半導体層22を備えることにより、ソース電極16及びドレイン電極18の酸化が抑制される。
【0198】
したがって、トランジスタ形成後に高温かつ長時間の熱処理が加えられても、第1の酸化物半導体層10とソース電極16との間のコンタクト抵抗、及び、第1の酸化物半導体層10とドレイン電極18との間のコンタクト抵抗の増加が抑制される。よって、トランジスタ300のオン電流の減少が抑制される。
【0199】
第5の実施形態によれば、第4の実施形態のトランジスタ300をDRAMのスイッチングトランジスタとして用いることにより、メモリ特性の向上した半導体メモリが実現される。
【0200】
(第6の実施形態)
第6の実施形態の半導体装置は、第1の酸化物半導体層と、導電層と、第1の酸化物半導体層と導電層との間に設けられ、インジウム(In)、アルミニウム(Al)、及び、亜鉛(Zn)を含み、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和に対するアルミニウムの原子比が8%以上23%以下であり、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和に対するインジウムの原子比が45%以下である第2の酸化物半導体層と、を備える。第6の実施形態の半導体装置は、第1の酸化物半導体層と導電層との間に第2の酸化物半導体層を設ける点で、第1の実施形態と異なっている。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する。
【0201】
図16は、第6の実施形態の半導体装置の模式断面図である。
【0202】
第6の実施形態の半導体装置は、コンタクト構造500を含む。コンタクト構造500は、第1の酸化物半導体層10、第2の酸化物半導体層20、配線層40、コンタクトプラグ42、層間絶縁層44を備える。コンタクトプラグ42は、導電層の一例である。
【0203】
第1の酸化物半導体層10は、酸化物半導体である。第1の酸化物半導体層10は、金属酸化物である。第1の酸化物半導体層10は、例えば、アモルファスである。
【0204】
第1の酸化物半導体層10は、例えば、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び、亜鉛(Zn)を含む。第1の酸化物半導体層10の中に含まれる金属元素の中の、インジウム、ガリウム、及び、亜鉛の総和の原子比は、例えば、90%以上である。また、第1の酸化物半導体層10の中に含まれる酸素以外の元素の中の、インジウム、ガリウム、及び、亜鉛の総和の原子比は、例えば、90%以上である。例えば、第1の酸化物半導体層10の中には、酸素以外の元素で、インジウム、ガリウム、及び、亜鉛のいずれか一つよりも大きな原子比を有する元素は存在しない。
【0205】
配線層40は、例えば、金属、又は、金属化合物である。
【0206】
コンタクトプラグ42は、第1の酸化物半導体層10と配線層40との間に設けられる。コンタクトプラグ42は、金属を含む。コンタクトプラグ42は、例えば、金属、又は、金属化合物である。コンタクトプラグ42は、例えば、タングステン(W)である。
【0207】
第2の酸化物半導体層20は、第1の酸化物半導体層10とコンタクトプラグ42との間に設けられる。第2の酸化物半導体層20は、酸化物半導体である。第2の酸化物半導体層20は、金属酸化物である。第2の酸化物半導体層20は、例えば、アモルファスである。
【0208】
第2の酸化物半導体層20は、インジウム(In)、アルミニウム(Al)、及び、亜鉛(Zn)を含む。第2の酸化物半導体層20は、インジウム(In)、アルミニウム(Al)、及び、亜鉛(Zn)を含む酸化物である。
【0209】
第2の酸化物半導体層20の、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和に対するアルミニウムの原子比は8%以上23%以下である。すなわち、第2の酸化物半導体層20のAl/(In+Al+Zn)で表記される原子比が、8%以上23%以下である。
【0210】
第2の酸化物半導体層20の、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和に対するインジウムの原子比は45%以下である。すなわち、第2の酸化物半導体層20のIn/(In+Al+Zn)で表記される原子比が45%以下である。
【0211】
第2の酸化物半導体層20の、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和に対するインジウムの原子比は、例えば、1%以上である。すなわち、第2の酸化物半導体層20のIn/(In+Al+Zn)で表記される原子比が、1%以上である。
【0212】
第2の酸化物半導体層20の中に含まれる金属元素の中の、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和の原子比は、例えば、90%以上である。また、第2の酸化物半導体層20の中に含まれる酸素以外の元素の中の、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛の総和の原子比は、例えば、90%以上である。例えば、第2の酸化物半導体層20の中には、酸素以外の元素で、インジウム、アルミニウム、及び、亜鉛のいずれか一つよりも大きな原子比を有する元素は存在しない。
【0213】
また、第2の酸化物半導体層20の中に含まれる金属元素の中のガリウム(Ga)、スズ(Sn)、及び、チタン(Ti)の原子比が、例えば、それぞれ10%未満である。
【0214】
層間絶縁層44は、第1の酸化物半導体層10と配線層40との間に設けられる。層間絶縁層44は、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、又は、酸窒化シリコンである。
【0215】
コンタクト構造500が、第2の酸化物半導体層20を備えない場合、コンタクト構造500の形成した後に加わる熱処理によりコンタクトプラグ42が酸化される。すなわち、第1の酸化物半導体層10に含まれる酸素がンタクトプラグ42に吸収され、コンタクトプラグ42を構成する金属が酸化される金属酸化物層が形成される。
【0216】
第1の酸化物半導体層10とコンタクトプラグ42との間に金属酸化物層が形成されることで、第1の酸化物半導体層10とコンタクトプラグ42との間のコンタクト抵抗が増加する。
【0217】
コンタクト構造500は、第1の酸化物半導体層10とコンタクトプラグ42との間に第2の酸化物半導体層20を備える。第2の酸化物半導体層20を備えることにより、コンタクトプラグ42の酸化が抑制される。したがって、第1の酸化物半導体層10とコンタクトプラグ42との間のコンタクト抵抗の増加が抑制される。
【0218】
以上、第6の実施形態によれば、熱処理後のコンタクト抵抗の増加が抑制され高い耐熱性を備えた半導体装置が実現される。
【0219】
第1ないし第5の実施形態では、第2の酸化物半導体層20及び第3の酸化物半導体層22の両方が設けられるトランジスタを例に説明したが、第2の酸化物半導体層20及び第3の酸化物半導体層22のいずれか一方のみを設けるトランジスタとすることも可能である。
【0220】
第1ないし第5の実施形態では、第1の酸化物半導体層10が、インジウム及びガリウムを含む金属酸化物である場合を例に説明したが、第1の酸化物半導体層10にその他の金属酸化物を適用することも可能である。
【0221】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。例えば、一実施形態の構成要素を他の実施形態の構成要素と置き換え又は変更してもよい。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0222】
10 第1の酸化物半導体層
10a 第1の領域
10b 第2の領域
10c 第3の領域
12 ゲート電極
14 ゲート絶縁層
16 ソース電極(第1の電極)
18 ドレイン電極(第2の電極)
20 第2の酸化物半導体層
22 第3の酸化物半導体層
42 コンタクトプラグ(導電層)
100 トランジスタ(半導体装置)
200 トランジスタ(半導体装置)
201 キャパシタ
300 トランジスタ(半導体装置)
400 半導体メモリ(半導体記憶装置)
BLx ビット線(第1の配線)
MC1 第1のメモリセル(メモリセル)
WLx ワード線(第2の配線)