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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】浮上搬送装置、及びレーザ処理装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 49/07 20060101AFI20231120BHJP
   H01L 21/268 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
B65G49/07 J
H01L21/268 G
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020022269
(22)【出願日】2020-02-13
(65)【公開番号】P2021127204
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】521476506
【氏名又は名称】JSWアクティナシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】藤 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】山口 芳広
(72)【発明者】
【氏名】永井 岳志
【審査官】内田 茉李
(56)【参考文献】
【文献】実開昭48-043394(JP,U)
【文献】特開2000-118712(JP,A)
【文献】実開平01-089533(JP,U)
【文献】特開平08-277536(JP,A)
【文献】特表2010-510453(JP,A)
【文献】特開2018-037449(JP,A)
【文献】特開2000-128346(JP,A)
【文献】特開2019-041002(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1187006(KR,B1)
【文献】韓国登録特許第10-1517992(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 49/07
H01L 21/268
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の下面に気体を噴射して前記基板を浮上させながら前記基板を搬送する浮上搬送装置であって、
前記基板側に配置され、前記気体を噴射する複数の噴射口を有する上板と、
前記上板の下側に配置された下板と、を備え、
前記上板および前記下板の少なくとも一方に、前記複数の噴射口に前記気体を供給するための流路が設けられており
前記浮上搬送装置には、前記浮上搬送装置の下面から下側に突出している複数のレベリングボルトが設けられており、
前記複数のレベリングボルトが設置面と接触することで、前記浮上搬送装置が前記設置面に設置され、
前記浮上搬送装置が備える前記上板および前記下板には、前記レベリングボルトが上下方向に変位可能な貫通孔が形成されており、
前記レベリングボルトは前記上板と螺合するように構成されており、
前記レベリングボルトを回転させることで、前記レベリングボルトの前記浮上搬送装置の下面からの突出量を変更可能に構成されており、
前記貫通孔の前記下板における直径は、前記上板における直径よりも大きい、
浮上搬送装置。
【請求項2】
前記下板の前記上板側の表面には、前記上板が有する前記複数の噴射口に前記気体を供給するための流路が設けられている、請求項1に記載の浮上搬送装置。
【請求項3】
前記下板の厚さが前記上板の厚さよりも薄くなるように構成されている、請求項2に記載の浮上搬送装置。
【請求項4】
前記上板および前記下板は、前記下板側から挿入された締結用ボルトを用いて互いに締結されている、請求項3に記載の浮上搬送装置。
【請求項5】
前記レベリングボルトの前記設置面と接触する面の面精度が前記下板の下面の面精度よりも高い、請求項に記載の浮上搬送装置。
【請求項6】
前記レベリングボルトは、前記浮上搬送装置の上側から貫通孔を介して導入された工具と嵌合する嵌合部を有し、
前記工具を用いて前記レベリングボルトを回転させることで前記突出量を変更可能に構成されている、
請求項に記載の浮上搬送装置。
【請求項7】
前記下板の下面には前記流路に前記気体を供給するための気体供給口が設けられており、
前記下板の下面と前記設置面との間に形成された空間に設けられた配管を通して、前記気体供給口に前記気体が供給される、
請求項に記載の浮上搬送装置。
【請求項8】
基板の下面に気体を噴射して前記基板を浮上させながら前記基板を搬送する浮上搬送装置と、
前記基板に照射するレーザ光を発生させるレーザ発生装置と、を備え、
前記浮上搬送装置は、
前記基板側に配置され、前記気体を噴射する複数の噴射口を有する上板と、
前記上板の下側に配置された下板と、を備え、
前記上板および前記下板の少なくとも一方に、前記複数の噴射口に前記気体を供給するための流路が設けられており
前記浮上搬送装置には、前記浮上搬送装置の下面から下側に突出している複数のレベリングボルトが設けられており、
前記複数のレベリングボルトが設置面と接触することで、前記浮上搬送装置が前記設置面に設置され、
前記浮上搬送装置が備える前記上板および前記下板には、前記レベリングボルトが上下方向に変位可能な貫通孔が形成されており、
前記レベリングボルトは前記上板と螺合するように構成されており、
前記レベリングボルトを回転させることで、前記レベリングボルトの前記浮上搬送装置の下面からの突出量を変更可能に構成されており、
前記貫通孔の前記下板における直径は、前記上板における直径よりも大きい、
レーザ処理装置。
【請求項9】
前記下板の前記上板側の表面には、前記上板が有する前記複数の噴射口に前記気体を供給するための流路が設けられている、請求項に記載のレーザ処理装置。
【請求項10】
前記下板の厚さが前記上板の厚さよりも薄くなるように構成されている、請求項に記載のレーザ処理装置。
【請求項11】
前記上板および前記下板は、前記下板側から挿入された締結用ボルトを用いて互いに締結されている、請求項10に記載のレーザ処理装置。
【請求項12】
前記レベリングボルトの前記設置面と接触する面の面精度が前記下板の下面の面精度よりも高い、請求項に記載のレーザ処理装置。
【請求項13】
前記レベリングボルトは、前記浮上搬送装置の上側から貫通孔を介して導入された工具と嵌合する嵌合部を有し、
前記工具を用いて前記レベリングボルトを回転させることで前記突出量を変更可能に構成されている、
請求項に記載のレーザ処理装置。
【請求項14】
前記下板の下面には前記流路に前記気体を供給するための気体供給口が設けられており、
前記下板の下面と前記設置面との間に形成された空間に設けられた配管を通して、前記気体供給口に前記気体が供給される、
請求項に記載のレーザ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は浮上搬送装置、及びレーザ処理装置に関し、例えば基板を浮上させながら基板を搬送する浮上搬送装置、及びレーザ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイパネルや有機ELパネルなどの製造プロセスでは、使用する基板が大型であるため、基板を浮上させながら基板を搬送する浮上搬送装置が広く用いられている。特許文献1には、基板に気体を吹き付けて基板を浮上させて搬送する浮上搬送装置に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-192681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基板を浮上させながら搬送する浮上搬送装置においては、基板の浮上量のばらつきが生じるという問題がある。特に、基板に対しレーザ照射を行うレーザ処理装置においては、基板の浮上量のばらつきはレーザ処理後の基板上の膜等の品質に大きな影響を与えることから、基板の浮上精度向上が求められる。
【0005】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施の形態にかかる浮上搬送装置は、基板の下面に気体を噴射して基板を浮上させながら基板を搬送する浮上搬送装置であって、基板側に配置され、気体を噴射する複数の噴射口を有する上板と、上板の下側に配置された下板と、を備える。上板および下板の少なくとも一方には、複数の噴射口に気体を供給するための流路が設けられている。
【0007】
一実施の形態にかかるレーザ処理装置は、上述の浮上搬送装置と、基板に照射するレーザ光を発生させるレーザ発生装置と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
前記一実施の形態によれば、基板の浮上精度を向上させることが可能な浮上搬送装置、及びレーザ処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1にかかる浮上搬送装置を説明するための分解斜視図である。
図2】実施の形態1にかかる浮上搬送装置を説明するための上面図である。
図3】実施の形態1にかかる浮上搬送装置の下板の上面図である。
図4】実施の形態1にかかる浮上搬送装置の断面図である。
図5】実施の形態1にかかる浮上搬送装置の断面図である。
図6】実施の形態1にかかる浮上搬送装置の断面図である。
図7】レベリングボルトを説明するための斜視図である。
図8】実施の形態1にかかる浮上搬送装置の断面図である。
図9】実施の形態1にかかる浮上搬送装置の他の構成例を示す断面図である。
図10】レベリングボルトの断面構造を説明するための斜視図である。
図11】実施の形態2にかかるレーザ処理装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施の形態1>
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。図1は、実施の形態1にかかる浮上搬送装置を説明するための分解斜視図である。図2は、実施の形態1にかかる浮上搬送装置を説明するための上面図である。図3は、実施の形態1にかかる浮上搬送装置の下板の上面図である。図4は、実施の形態1にかかる浮上搬送装置の断面図である。図4に示すように、本実施の形態にかかる浮上搬送装置1は、基板30の下面に気体を噴射して基板30を浮上させながら、基板30を搬送方向(x軸プラス方向)に搬送する装置である。
【0011】
図1に示すように、本実施の形態にかかる浮上搬送装置1は、上板10および下板20を備える。上板10は、浮上搬送装置1の上側(z軸方向プラス側)に配置されている。下板20は、上板10の下側(z軸方向マイナス側)に配置されている。例えば、上板10および下板20は、アルミニウム合金等の金属材料(メッキ処理を施してもよい)を用いて構成することができる。
【0012】
図1図2に示すように、上板10の表面には、上側に気体を噴射する複数の噴射口11が設けられている。図4に示すように、本実施の形態にかかる浮上搬送装置1は、複数の噴射口11からz軸方向プラス側に気体を噴射し、この噴射された気体を基板30の下面に衝突させることで、基板30を浮上させる。そして、搬送手段(不図示)を用いて基板30を搬送方向(x軸プラス方向)に移動させることで、基板30を浮上させながら基板を搬送方向に搬送することができる。
【0013】
図2に示す例では、複数の噴射口11がx軸方向およびy軸方向に所定の間隔で規則的に配置されている例を示した。しかし本実施の形態では、複数の噴射口11の配置は図2に示す配置に限定されることはなく、任意の配置とすることができる。また、上板10の外周付近には、後述するレベリングボルト42(図5参照)を挿入するための複数の貫通孔12が形成されている。
【0014】
図1に示すように、上板10の下側には下板20が配置されている。図1図3に示すように、下板20の上板10側(つまりz軸方向プラス側)の表面には、上板10が有する複数の噴射口11に気体を供給するための複数の流路21、22が設けられている。
【0015】
具体的には、図3に示すように、下板20の表面には、第1流路21および第2流路22が形成されている。第1流路21は、気体供給口27から供給された気体を下板20のy軸方向プラス側およびy軸方向マイナス側の各々に供給するための流路である。つまり、第1流路21は、下板20のy軸方向プラス側に設けられた流路21_1と下板20のy軸方向マイナス側に設けられた流路21_2と、気体供給口27から供給された気体を流路21_1および流路21_2の各々に供給する流路21_3と、を有する。
【0016】
第2流路22は、気体供給口27から第1流路21を経由して供給された気体を、上板10に設けられた複数の噴射口11に供給するための流路である。具体的には、第2流路22の上流側の端部は第1流路21と接続されており、第2流路22の下流側の各々の端部23は各々の噴射口11とそれぞれ接続されている。
【0017】
図3に示す例では、第1流路21の断面積は第2流路22の断面積よりも大きくなるように構成されている。つまり、第1流路21は、気体供給口27から供給された気体を各々の第2流路22に供給する流路としての機能を有するので、第1流路21を通過する気体の量は第2流路22を通過する気体の量よりも多い。したがって、第1流路21の断面積を第2流路22の断面積よりも大きくすることで、気体供給口27から噴射口11までの流路抵抗を低減できるため、気体の圧力損失を低減して、気体供給口27に供給された気体の圧力と同等程度の圧力を保持した気体を噴射口11に供給することができる。
【0018】
なお、図3に示す第1流路21および第2流路22の配置は一例であり、本実施の形態では、第1流路21および第2流路22の配置は任意に決定することができる。すなわち、気体供給口27から第1流路21および第2流路22を経由して噴射口11に気体を供給できる構成であれば、第1流路21および第2流路22の配置はどのような配置としてもよい。
【0019】
また、下板20の外周付近には、後述するレベリングボルト42(図5参照)を挿入するための複数の貫通孔25が形成されている。下板20の各々の貫通孔25の位置は、上板10の各々の貫通孔12の位置と対応している。
【0020】
本実施の形態において、上板10および下板20は、締結用ボルトを用いて互いに締結されている。例えば、上板10および下板20は、下板20側から挿入された複数の締結用ボルト41(図5参照)を用いて互いに締結することができる。
【0021】
上述のように、本実施の形態にかかる浮上搬送装置1は、気体供給口27から供給された気体を、第1流路21および第2流路22を経由して、噴射口11に供給している。したがって、図4に示すように、複数の噴射口11から基板30の下面に気体を噴射して、基板30を浮上させることができる。ここで、基板30は典型的にはガラス基板であるが、浮上搬送装置1を用いて搬送する基板30はガラス基板に限定されることはない。
【0022】
また、本実施の形態にかかる浮上搬送装置1は、上板10および下板20の2枚の板を用いて浮上搬送装置1を構成している。このような構成とすることで、上板10と下板20の接触面に隙間が生じることを抑制することができ、上板10と下板20の接触面から気体が漏れることを抑制することができる。よって、複数の噴射口11から噴射される気体の流量にばらつきが生じことを抑制することができ、基板の浮上量(上下方向の位置)にばらつきが生じることを抑制できる。したがって、基板30の浮上精度を向上させることができる。
【0023】
例えば、上板、中板、及び下板の3枚の板を締結用ボルトで締結した場合は、各々の板の位置がずれる等の理由により、3枚の板を適切に締結することは困難である。また、浮上搬送装置の場合は、内部流路を気体が通過するため、各々の板間、つまり上板と中板、中板と下板、上板と下板の3通りでの締結が必要となる。しかしながら、このような3通りの締結を実施すると、使用する締結用ボルトの数が膨大となり現実的ではない。また、ガスケットのような薄い板を挟む場合は、ガスケットの加工精度を確保することが困難であるため、3枚の板を締結することは現実的ではない。
【0024】
これに対して本実施の形態にかかる浮上搬送装置1は、上板10および下板20の2枚の板を用いて浮上搬送装置1を構成している。したがって、ボルト締結が十分に機能し、上板10と下板20との接触面に隙間が生じることを抑制することができる。よって、上板10と下板20との接触面から気体が漏れることを抑制することができる。
【0025】
なお、上記説明では下板に流路21、22を形成した例を示したが、本実施の形態にかかる浮上搬送装置1では、上板10および下板20の少なくとも一方に流路21、22を形成してもよい。すなわち、上記説明のように、下板20のみに流路21、22を形成してもよい。また、上板10のみに流路21、22を形成してもよい。また、上板10および下板20の両方に流路21、22を形成してもよい。
【0026】
また、本実施の形態では、図4図5に示すように、下板20の厚さが上板10の厚さよりも薄くなるように構成してもよい。このように、下板20の厚さを上板10の厚さよりも薄くした場合は、上板10と下板20とを複数の締結用ボルト41(図5参照)で締結した際に、上板10と下板20の接触面において、薄い方の下板20が上板10の表面(接触面)に倣ってたわむため、上板10と下板20の接触面における隙間を塞ぐことができる。したがって、上板10と下板20の接触面から気体が漏れることをより確実に抑制することができる。
【0027】
すなわち、上板10の厚さと下板20の厚さが同程度である場合は、厚さの影響で下板20の剛性が強くなり、上板10および下板20がたわみにくくなる。この場合は、ボルト締結時に上板10と下板20の接触面に隙間ができないように、上板10と下板20の接触面の加工精度を同程度にする必要がある。
【0028】
これに対して、下板20の厚さを上板10の厚さよりも薄くした場合は、ボルト締結時に、薄い方の下板20が上板10の下面(接触面)に倣ってたわむため、上板10と下板20の接触面における隙間を塞ぐことができる。この場合は、上板10と下板20の接触面の加工精度を同程度にする必要がなくなるため、浮上搬送装置を製造する際の製造工程を簡略化することができる。
【0029】
なお、本実施の形態にかかる浮上搬送装置1では、浮上搬送装置1の基板30と対向する面(つまり、上板10の上面)の面精度を高くする必要があるため、上板10の厚さを厚くする必要がある。したがって、本実施の形態では、上板10の厚さを厚くし、下板20の厚さを薄くする構成が好ましい。
【0030】
また、図5図8に示すように、本実施の形態にかかる浮上搬送装置1には、浮上搬送装置1の下面から下側に突出している複数のレベリングボルト42が設けられている。図8に示すように、本実施の形態では、複数のレベリングボルト42が設置面35と接触することで、浮上搬送装置1が設置面35に設置される。このように、複数のレベリングボルト42が設置面35と接触するようにすることで、浮上搬送装置1を設置面35に設置する際の設置精度を向上させることができる。
【0031】
例えば、レベリングボルト42の設置面35と接触する面(接触面45)の面精度を、下板20の下面の面精度よりも高くしてもよい。このような構成とすることで、下板20を設置面35と接触させて浮上搬送装置1を設置するよりも、レベリングボルト42の接触面45を設置面35と接触させて浮上搬送装置1を設置した方が、精度よく浮上搬送装置1を設置面35に設置することができる。
【0032】
つまり、浮上搬送装置1を設置する際に、設置面35と接触する箇所をレベリングボルト42の接触面45に限定した場合は、浮上搬送装置1の設置精度は、接触面45の面精度に依存する。この場合は、レベリングボルト42の接触面45の面精度を確保することで、浮上搬送装置1の設置精度を確保することができる。したがって、浮上搬送装置1の設置精度を容易に向上させることができる。以下、レベリングボルトについて更に詳細に説明する。
【0033】
図5に示すように、上板10および下板20には、レベリングボルト42を配置するための貫通孔12、25がそれぞれ形成されている。つまり、上板10の貫通孔12および下板20の貫通孔25はそれぞれ、平面視した際に互いに対応する位置に形成されている(図1参照)。そしてこれらの貫通孔12、25は、上板10および下板20が締結用ボルト41で締結された際に、浮上搬送装置1をz軸方向に貫通する一つの貫通孔となる。複数のレベリングボルト42の各々は、この貫通孔12、25に配置される。
【0034】
なお、図1図3では、浮上搬送装置1に6つのレベリングボルト42を設けた例を示したが、浮上搬送装置1に設けるレベリングボルト42の数は任意に決定することができる。また、図8に示すように、レベリングボルト42の数は、締結用ボルト41の数よりも少ない。つまり、締結用ボルト41は、上板10と下板20の接触面に隙間が生じないように、比較的多くの場所に設ける必要がある。一方、レベリングボルト42は、浮上搬送装置1を設置面35に設置するために用いられるので、レベリングボルト42の数は、締結用ボルト41の数よりも少なくすることができる。
【0035】
図5図6に示すように、レベリングボルト42は、貫通孔12、25内に設けられており、貫通孔12、25内を上下方向(z軸方向)に変位可能に構成されている。具体的には、レベリングボルト42は上板10と螺合するように構成されており、レベリングボルト42を回転させることで、レベリングボルト42の浮上搬送装置1の下面からの突出量を変更可能に構成されている。
【0036】
つまり、図5に示すように、貫通孔12の内壁にねじ加工を施す(例えば、雌ねじ加工。ねじ加工された箇所を符号15で示す)。また、図7の斜視図に示すように、レベリングボルト42の上側43の側面にもねじ加工を施す(例えば雄ねじ加工)。そして、これらのねじ加工された箇所を螺合させることで、レベリングボルト42を回転させた際に、レベリングボルト42の上下方向(z軸方向)の位置を変更(調整)することができる。なお、図6に示す断面図では、図5に示した場合よりも、レベリングボルト42が下側に突出している場合、換言すると、浮上搬送装置1の位置を高くした場合を示している。
【0037】
図7の斜視図に示すように、レベリングボルト42の上部には嵌合部46が形成されている。嵌合部46は、浮上搬送装置1の上側(z軸方向プラス側)から貫通孔12を介して導入された工具(不図示)と嵌合するように構成されている。したがって、浮上搬送装置1の上側から工具(不図示)を用いてレベリングボルト42を回転させることで、レベリングボルト42の突出量(つまり、上下方向の位置)を変更することができる。このような構成とすることで、浮上搬送装置1の上下方向の位置決めを容易にすることができる。なお、図7では、嵌合部46を六角穴(つまり、六角レンチと嵌合する穴)として例示しているが、嵌合部46の形状はこれに限定されることはない。
【0038】
また、本実施の形態にかかる浮上搬送装置1では、図5に示すように、下板20に形成された貫通孔25の直径は、上板10に形成された貫通孔12の直径よりも大きくしてもよい。このような構成とすることで、レベリングボルト42の下側の土台44の直径を大きくすることができ、浮上搬送装置1を設置面35に設置する際に浮上搬送装置1を安定させることができる。
【0039】
また、図4に示したように、下板20の下面には、下板20に設けた流路21、22に気体を供給するための気体供給口27が設けられている。図8に示すように、レベリングボルト42を設置面35と接触させて浮上搬送装置1を設置した場合は、下板20の下面と設置面35との間に空間が形成される。よって、この空間に配管28を配置し、この配管28を通して気体供給口27に気体を供給するように構成してもよい。例えば、配管28は、下板20の下面と設置面35との間の空間を通過するように設けてもよい。また、配管28は、エリアベース37を貫通する貫通孔(不図示)と接続されるようにしてもよい。この場合は、エリアベース37の上面において貫通孔と配管28とが接続され、エリアベース37の下面の貫通孔の入り口に供給された気体が、エリアベース37の貫通孔と配管28とを通過して、気体供給口27に供給される。
【0040】
また、本実施の形態にかかる浮上搬送装置1では、図9に示すように、固定部材51を用いてレベリングボルト42を設置面35に固定してもよい。レベリングボルト42を設置面35に固定することで、浮上搬送装置1を設置面35に安定して設置することができる。
【0041】
例えば、図10に示すように、レベリングボルト42の土台44の中心部に貫通孔48を形成する。そして図9に示すように、レベリングボルト42の貫通孔48に固定部材51を貫通させ、更に固定部材51の先端を設置面35に固定することで、レベリングボルト42を設置面35に固定することができる。固定部材51を用いてレベリングボルト42を設置面35に固定する場合も、浮上搬送装置1の上側から工具を導入して固定部材51を固定することができる。したがって、浮上搬送装置1の設置作業が容易になる。
【0042】
なお、本実施の形態では、図1に示す上板10と下板20とを備える1つの浮上ユニットを用いて浮上搬送装置1を構成してもよく、また図1に示す上板10と下板20とを備える浮上ユニットを複数組み合わせて浮上搬送装置を構成してもよい。
【0043】
<実施の形態2>
次に、実施の形態2について説明する。実施の形態2では、実施の形態1で説明した浮上搬送装置1をレーザ処理装置に使用した場合について説明する。図11は、実施の形態2にかかるレーザ処理装置2の断面図である。図11に示すように、レーザ処理装置2は、浮上搬送装置1とレーザ発生装置90とを備える。
【0044】
浮上搬送装置1は、基板30の下面に気体を噴射して基板30を浮上させながら基板30を搬送方向(x軸方向プラス側)に搬送する。なお、浮上搬送装置1については上述した浮上搬送装置と同様であるので、重複した説明は省略する。
【0045】
レーザ発生装置90は、基板30に照射するレーザ光91を発生させる。例えば、レーザ処理装置2はレーザアニール装置であり、この場合はレーザ発生装置90にエキシマレーザ等を用いることができる。レーザ発生装置90から供給されたレーザ光は、光学系(不図示)においてライン状(y軸方向に伸びるライン状)となり、基板30の上面にはライン状、具体的には焦点がy軸方向に伸びるレーザ光91(ラインビーム)が照射される。例えば、基板30上には非晶質膜が形成されており、この非晶質膜にレーザ光91を照射してアニール処理することで、非晶質膜を結晶化させることができる。
【0046】
上述のように、浮上搬送装置1は、上板10および下板20の2枚の板を用いて浮上搬送装置1を構成している。このような構成とすることで、上板10と下板20の接触面から気体が漏れることを抑制することができ、複数の噴射口から噴射される気体の流量にばらつきが生じことを抑制することができる。よって、基板の浮上量(上下方向の位置)にばらつきが生じることを抑制できる。したがって、上述の浮上搬送装置1をレーザ処理装置2に使用することで、レーザ照射の際の照射精度を高めることができる。具体的には、レーザ照射時に基板30に照射されるレーザ光の焦点深度(DOF:Depth of Focus)から外れてしまうことを抑制することができる。
【0047】
以上、本発明を上記実施の形態に即して説明したが、本発明は上記実施の形態の構成にのみ限定されるものではなく、本願特許請求の範囲の請求項の発明の範囲内で当業者であればなし得る各種変形、修正、組み合わせを含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0048】
1 浮上搬送装置
2 レーザ処理装置
10 上板
11 噴射口
12 貫通孔
20 下板
21 流路(第1流路)
21_1、21_2、21_3 流路
22 流路(第2流路)
23 端部
25 貫通孔
27 気体供給口
28 配管
30 基板
35 設置面
37 エリアベース
41 締結用ボルト
42 レベリングボルト
43 上側
44 土台
45 接触面
46 嵌合部
48 貫通孔
51 固定部材
90 レーザ発生装置
91 レーザ光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11