(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】化学洗浄システム及び発電プラント、並びに化学洗浄方法
(51)【国際特許分類】
F28G 9/00 20060101AFI20231120BHJP
F22B 37/56 20060101ALI20231120BHJP
F22B 37/52 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
F28G9/00 L
F22B37/56 Z
F22B37/52 B
(21)【出願番号】P 2020028658
(22)【出願日】2020-02-21
【審査請求日】2023-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】野口 良典
(72)【発明者】
【氏名】江川 薫
(72)【発明者】
【氏名】大塚 瑞希
(72)【発明者】
【氏名】河崎 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】和田 貴行
(72)【発明者】
【氏名】真保 陽一
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-017659(JP,A)
【文献】特開2019-128053(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28G 1/00-15/10
F22B 1/00-37/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラの蒸発管と、前記蒸発管よりも上流側に一端が接続され、前記蒸発管よりも下流側に他端が接続され、洗浄剤を含む洗浄流体を流通して前記蒸発管を洗浄する化洗用系統とを有する発電プラントに適用される化学洗浄システムであって、
前記化洗用系統における洗浄流体の性状をモニタリングするモニタリング部と、
洗浄流体の性状に基づいて、所定期間の経過後における前記性状に対応した洗浄性能に関する指標を予測する予測部と、
を備える化学洗浄システム。
【請求項2】
洗浄流体の性状は、分極抵抗、pH、及び電気伝導率の少なくともいずれか1つである請求項1に記載の化学洗浄システム。
【請求項3】
洗浄流体の性状は、濁度、酸化還元電位、及び溶存酸素濃度の少なくともいずれか1つである請求項2に記載の化学洗浄システム。
【請求項4】
前記モニタリング部は、洗浄流体の性状として分極抵抗をモニタリングし、
前記予測部は、モニタリングした分極抵抗に基づいて洗浄流体が流通する部材の腐食量を推定し、前記腐食量の経時変化により、前記所定期間の経過後における前記指標として前記腐食量を予測する請求項1から3のいずれか1項に記載の化学洗浄システム。
【請求項5】
前記モニタリング部は、洗浄流体の性状としてpHをモニタリングし、
前記予測部は、モニタリングしたpHの経時変化により、前記所定期間の経過後における前記指標としてpHを予測する請求項1から4のいずれか1項に記載の化学洗浄システム。
【請求項6】
前記モニタリング部は、洗浄流体の性状として電気伝導率をモニタリングし、
前記予測部は、モニタリングした電気伝導率に基づいて、前記所定期間の経過後における前記指標として前記洗浄剤の主剤の有効成分濃度を予測する請求項1から5のいずれか1項に記載の化学洗浄システム。
【請求項7】
前記予測部は、モニタリングによる電気伝導率の計測値と、洗浄流体の鉄濃度に基づく電気伝導率の推定値とに基づいて、前記洗浄剤の主剤の希釈速度を推定し、鉄濃度の経時変化と前記希釈速度とに基づいて前記有効成分濃度を予測する請求項6に記載の化学洗浄システム。
【請求項8】
前記予測部は、前記指標に関する過去実績データに基づいて、前記所定期間の経過後における前記指標を予測する請求項1から7のいずれか1項に記載の化学洗浄システム。
【請求項9】
前記所定期間の経過後における前記指標の予測値が許容範囲外となる場合に、前記指標に対応する調整剤を洗浄流体へ添加する調整制御を行う制御部を備える請求項1から8のいずれか1項に記載の化学洗浄システム。
【請求項10】
前記所定期間の経過後における前記腐食量の予測値が許容範囲外となる場合に、調整剤として腐食抑制剤を洗浄流体へ添加する調整制御を行う制御部を備える請求項4に記載の化学洗浄システム。
【請求項11】
前記所定期間の経過後における洗浄流体のpHの予測値が許容範囲外となる場合に、調整剤として還元剤を洗浄流体へ添加する調整制御を行う制御部を備える請求項5に記載の化学洗浄システム。
【請求項12】
前記所定期間の経過後における前記有効成分濃度の予測値が許容範囲外となる場合に、調整剤として前記洗浄剤の主剤を洗浄流体へ添加する調整制御を行う制御部を備える請求項6に記載の化学洗浄システム。
【請求項13】
前記制御部は、前記所定期間の経過後における前記指標の予測値が許容範囲外となる場合に、前記所定期間の経過後までに前記指標が前記許容範囲内となるように、前記調整剤の添加量及び添加タイミングの少なくともいずれか一方を設定し、調整制御を行う請求項9から12のいずれか1項に記載の化学洗浄システム。
【請求項14】
前記制御部は、洗浄流体の性状のモニタリング位置と、前記調整剤の添加位置との応答遅れに基づいて、前記添加タイミングを設定する請求項13に記載の化学洗浄システム。
【請求項15】
前記制御部は、複数の前記調整剤を添加する場合に、各前記調整剤に対して予め設定された優先順位に基づいて、各前記調整剤を添加する請求項13に記載の化学洗浄システム。
【請求項16】
ボイラの蒸発管と、
前記蒸発管よりも上流側に一端が接続され、前記蒸発管の下流側よりも他端が接続され、洗浄剤を含む洗浄流体を流通して前記蒸発管を化洗する化洗用系統と、
請求項1から15のいずれか1項に記載の化学洗浄システムと、
を備える発電プラント。
【請求項17】
ボイラの蒸発管と、前記蒸発管よりも上流側に一端が接続され、前記蒸発管よりも下流側に他端が接続され、洗浄剤を含む洗浄流体を流通して前記蒸発管を洗浄する化洗用系統とを有する発電プラントに適用される化学洗浄方法であって、
前記化洗用系統における洗浄流体の性状をモニタリングする工程と、
洗浄流体の性状に基づいて、所定期間の経過後における前記性状に対応した洗浄性能に関する指標を予測する工程と、
を有する化学洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、化学洗浄システム及び発電プラント、並びに化学洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発電プラントなどに用いられる大型のボイラは、中空形状をなして鉛直方向に設置される火炉を有し、この火炉壁に複数の燃焼バーナが火炉の周方向に沿って配設されている。また、大型のボイラは、火炉の鉛直方向上方に煙道が連結されており、この煙道に蒸気を生成するための熱交換器が配置されている。そして、燃焼バーナが火炉内に燃料と空気(酸化性ガス)との混合気を噴射することで火炎が形成され、燃焼ガスが生成されて煙道に流れる。燃焼ガスが流れる領域に熱交換器が設置され、熱交換器を構成する伝熱管内を流れる水や蒸気を加熱して過熱蒸気が生成される。
【0003】
ボイラの火炉壁を構成する蒸発管では酸化鉄などの酸化物を主とするスケールが発生し、蒸発管の内表面に付着して成長する場合がある。このため、保守点検時等においてスケール付着量を調査して化学洗浄(ボイラ化洗、または化洗)が行われている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6071856号公報
【文献】特許第6071857号公報
【文献】特許第5721888号公報
【文献】特許第6522293号公報
【文献】特許第6370651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ボイラ化洗として、80℃から90℃程度に昇温した有機酸等の酸液を用いる場合がある(酸性・高温洗浄)。このような場合には、酸性のガスが発生して大気中の水分と結合して酸性の霧状ガス(ヒューム)が生じる場合がある。また、ボイラ蒸発管の母材金属と酸液が反応し、水素ガスが発生する場合がある。このため、ボイラ化洗に際して、作業環境における安全性の配慮が必要となる。また、酸性・高温洗浄では、ボイラの蒸発管で付着、成長するスケールのうち、難溶解性のスケール(ヘマタイト)は完全に溶解できないため、洗浄液の流通による搬送力等を用いて物理的にボイラ系統から排出する必要があり、ボイラの蒸発管内で流れが滞留しやすい箇所等では物理的な洗浄力が低下してスケールが堆積、残留する可能性がある。
【0006】
酸性・高温洗浄の課題を解決するために、中性洗浄技術が提案されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5)。中性洗浄技術では、常温環境下でもヘマタイトを含むスケールを効果的に除去することができ、また水素ガスの発生を抑制することができる。
【0007】
このようにボイラ化洗への改善が行われているが、洗浄対象となるボイラの蒸発管内の環境がボイラ化洗開始からの時間経過等によって、洗浄液の性状(液性)が変化する場合があり、洗浄性能が変化する可能性がある。例えば、液比が小さい環境、すなわち洗浄対象であるボイラの蒸発管の表面に発生したスケール量(または洗浄対象面積)に対して洗浄に用いる洗浄液量を少なくしてボイラ化洗を行うことがあり、洗浄液の性状が変化することによって適正な洗浄条件から逸脱する可能性がある。
【0008】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、安定的にボイラ化洗を行うことのできる化学洗浄システム及び発電プラント、並びに化学洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第1態様は、ボイラの蒸発管と、前記蒸発管よりも上流側に一端が接続され、前記蒸発管よりも下流側に他端が接続され、洗浄剤を含む洗浄流体を流通して前記蒸発管を洗浄する化洗用系統とを有する発電プラントに適用される化学洗浄システムであって、前記化洗用系統における洗浄流体の性状をモニタリングするモニタリング部と、洗浄流体の性状に基づいて、所定期間の経過後における前記性状に対応した洗浄性能に関する指標を予測する予測部と、を備える化学洗浄システムである。
【0010】
本開示の第2態様は、ボイラの蒸発管と、前記蒸発管よりも上流側に一端が接続され、前記蒸発管よりも下流側に他端が接続され、洗浄剤を含む洗浄流体を流通して前記蒸発管を洗浄する化洗用系統とを有する発電プラントに適用される化学洗浄方法であって、前記化洗用系統における洗浄流体の性状をモニタリングする工程と、洗浄流体の性状に基づいて、所定期間の経過後における前記性状に対応した洗浄性能に関する指標を予測する工程と、を有する化学洗浄方法である。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、安定的にボイラ化洗を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の一実施形態に係るボイラを表す概略構成図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係るボイラに設けられた熱交換器を表す概略図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係る化学洗浄を行う場合の系統例を示す図である。
【
図4】本開示の一実施形態に係るボイラ化学洗浄にて行われる各工程の例を示す図である。
【
図5】本開示の一実施形態に係る計測部の具体的構成例を示す図である。
【
図6】本開示の一実施形態に係る制御装置のハードウェア構成の一例を示した図である。
【
図7】本開示の一実施形態に係る制御装置が備える機能を示した機能ブロック図である。
【
図8】本開示の一実施形態に係る洗浄時間と分極抵抗及び積算腐食推定量との関係の例を示した図である。
【
図9】本開示の一実施形態に係る腐食量の経時変化の例を示す図である。
【
図10】本開示の一実施形態に係るpHの経時変化の例を示す図である。
【
図11】本開示の一実施形態に係るpHの経時変化の例を示す図である。
【
図12】本開示の一実施形態に係る電気伝導率の経時変化の例を示す図である。
【
図13】本開示の一実施形態に係るFe濃度と電気伝導率との関係の例を示す図である。
【
図14】本開示の一実施形態に係る電気伝導率と主剤の有効成分濃度との関係の例を示す図である。
【
図15】本開示の一実施形態に係る腐食量の時間変化における腐食抑制剤の濃度依存性の例を示す図である。
【
図16】本開示の一実施形態に係る腐食量を調整する場合の例を示す図である。
【
図17】本開示の一実施形態に係るpHを調整する場合の例を示す図である。
【
図18】本開示の一実施形態に係る腐食量に係る調整処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図19】本開示の一実施形態に係るpHに係る調整処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図20】本開示の一実施形態に係るpHを調整する場合の例を示す図である。
【
図21】本開示の一実施形態に係る主剤の有効成分濃度の状態遷移を示す図である。
【
図22】本開示の一実施形態に係るFe濃度と電気伝導率の乖離ΔECとの関係例を示す図である。
【
図23】本開示の一実施形態に係る主剤の有効成分濃度に係る調整処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本開示に係る化学洗浄システム及び発電プラント、並びに化学洗浄方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
以下に添付図面を参照して、本実施形態に係る好適な実施形態を図面を参照して説明する。なお、この実施形態により限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0015】
図1は、本実施形態のボイラ10を表す概略構成図である。
【0016】
本実施形態のボイラ10は、例えば、石炭(炭素含有固体燃料)を粉砕した微粉炭を微粉燃料として用い、この微粉燃料を燃焼バーナにより燃焼させ、この燃焼により発生した熱を給水や蒸気と熱交換して過熱蒸気を生成することが可能な石炭焚き(微粉炭焚き)ボイラである。以降の説明で、上や上方とは鉛直方向上側を示し、下や下方とは鉛直方向下側を示すものであり、鉛直方向は厳密ではなく誤差を含むものでる。
【0017】
本実施形態において、
図1に示すように、ボイラ10は、火炉11と燃焼装置12と燃焼ガス通路13を有している。火炉11は、四角筒の中空形状をなして鉛直方向に沿って設置されている。火炉11を構成する火炉壁101は、複数の伝熱管とこれらを接続するフィンとで構成され、微粉燃料の燃焼により発生した熱を伝熱管の内部を流通する水や蒸気と熱交換して、火炉壁の温度上昇を抑制している。
【0018】
燃焼装置12は、火炉11を構成する火炉壁の下部側に設けられている。本実施形態では、燃焼装置12は、火炉壁に装着された複数の燃焼バーナ(例えば21,22,23,24,25)を有している。例えば燃焼バーナ21,22,23,24,25は、火炉11の周方向に沿って均等間隔で配設されたものが1セットとして、鉛直方向に沿って複数段配置されている。但し、火炉11の形状や一つの段における燃焼バーナの数、段数、配置などはこの実施形態に限定されるものではない。
【0019】
各燃焼バーナ21,22,23,24,25は、微粉炭供給管26,27,28,29,30を介して複数の粉砕機(ミル)31,32,33,34,35に連結されている。この粉砕機31,32,33,34,35は、図示しないが、例えば粉砕機のハウジング内に回転テーブルが駆動回転可能に支持され、この回転テーブルの上方に複数のローラが回転テーブルの回転に連動して回転可能に支持されて構成されている。石炭が複数のローラと回転テーブルとの間に投入されると、ここで所定の微粉炭の大きさに粉砕され、搬送用ガス(一次空気、酸化性ガス)により図示しない粉砕機のハウジング内の分級機に搬送されて所定の粒径範囲内に分級された微粉燃料を微粉炭供給管26,27,28,29,30から燃焼バーナ21,22,23,24,25に供給することができる。
【0020】
また、火炉11は、各燃焼バーナ21,22,23,24,25の装着位置に風箱36が設けられており、この風箱36に空気ダクト(風道)37の一端部が連結されている。空気ダクト37は、他端部に押込通風機(FDF:Forced Draft Fan)38が設けられている。
【0021】
燃焼ガス通路13は、
図1に示すように、火炉11の鉛直方向上部に連結されている。燃焼ガス通路13は、燃焼ガスの熱を回収するための熱交換器として、過熱器102、103、104、再熱器105、106、節炭器107が設けられており、火炉11での燃焼で発生した燃焼ガスと各熱交換器を流通する給水や蒸気との間で熱交換が行われる。
【0022】
燃焼ガス通路13は、
図1に示すように、その下流側に熱交換を行った燃焼ガスが排出される煙道14が連結されている。煙道14は、空気ダクト37との間にエアヒータ(空気予熱器)42が設けられ、空気ダクト37を流れる空気と、煙道14を流れる燃焼ガスとの間で熱交換を行い、燃焼バーナ21,22,23,24,25に供給する燃焼用空気を昇温することができる。
【0023】
また、煙道14は、エアヒータ42より上流側の位置に脱硝装置43が設けられている。脱硝装置43は、アンモニア、尿素水等の窒素酸化物を還元する作用を有する還元剤を煙道14内に供給し、還元剤が供給された燃焼ガスを窒素酸化物と還元剤との反応を、脱硝装置43内に設置された脱硝触媒の触媒作用により促進させることで、燃焼ガス中の窒素酸化物を除去、低減するものである。そして、煙道14に連結されるガスダクト41は、エアヒータ42より下流側の位置に電気集塵機などの集塵装置44、誘引通風機(IDF:Induced Draft Fan)45、脱硫装置46などが設けられ、下流端部に煙突50が設けられている。
【0024】
一方、複数の粉砕機31,32,33,34,35が駆動すると、生成された微粉燃料が搬送用ガス(一次空気、酸化性ガス)と共に微粉炭供給管26,27,28,29,30を通して燃焼バーナ21,22,23,24,25に供給される。また、ボイラ10の煙道14から排出された排ガスとエアヒータ42で熱交換することで、加熱された燃焼用空気(二次空気、酸化性ガス)が空気ダクト37から風箱36を介して各燃焼バーナ21,22,23,24,25に供給される。すると、燃焼バーナ21,22,23,24,25は、微粉燃料と搬送用ガスとが混合した微粉燃料混合気を火炉11に吹き込むと共に燃焼用空気を火炉11に吹き込み、このときに微粉燃料混合気が着火することで火炎を形成することができる。火炉11内の下部で火炎が生じ、高温の燃焼ガスがこの火炉11内を上昇し、燃焼ガス通路13に排出される。なお、酸化性ガスとして、本実施形態では空気を用いる。空気よりも酸素割合が多いものや逆に少ないものであってもよく、燃料流量との適正化を図ることで使用可能になる。
【0025】
また、火炉11は、各燃焼バーナ21,22,23,24,25の装着位置より上方にアディショナル空気ポート39が設けられている。アディショナル空気ポート39に空気ダクト37から分岐したアディショナル空気ダクト40の端部が連結されている。従って、押込通風機38により送られた燃焼用空気(二次空気、酸化性ガス)を空気ダクト37から風箱36に供給し、この風箱36から各燃焼バーナ21,22,23,24,25に供給することができると共に、押込通風機38により送られた燃焼用追加空気(アディショナル空気)をアディショナル空気ダクト40からアディショナル空気ポート39に供給することができる。
【0026】
火炉11は、下部の領域Aにて、微粉燃料混合気と燃焼用空気(二次空気、酸化性ガス)とが燃焼して火炎が生じる。ここで火炉11は、空気の供給量が微粉炭の供給量に対して理論空気量未満となるように設定されることで、内部が還元雰囲気に保持される。即ち、微粉炭の燃焼により発生した窒素酸化物(NOx)が火炉11の領域Bで還元され、その後、アディショナル空気ポート39からアディショナル空気が追加供給されることで微粉炭の酸化燃焼が完結され、微粉炭の燃焼によるNOxの発生量が低減される。
【0027】
その後、燃焼ガスは、
図1に示すように、燃焼ガス通路13に配置される第2過熱器103、第3過熱器104、第1過熱器102、(以下単に過熱器と記載する場合もある)、第2再熱器106、第1再熱器105(以下単に再熱器と記載する場合もある)、節炭器107で熱交換した後、脱硝装置43により窒素酸化物が還元除去され、集塵装置44で粒子状物質が除去され、脱硫装置46にて硫黄酸化物が除去された後、煙突50から大気中に排出される。なお、各熱交換器は燃焼ガス流れに対して、必ずしも前記記載順に配置されなくともよい。
【0028】
次に、熱交換器として、燃焼ガス通路13に設けられた過熱器102,103,104、再熱器105,106、節炭器107について詳細に説明する。
図2は、ボイラ10に設けられた熱交換器を表す概略図である。なお、
図1では燃焼ガス通路13内の各熱交換器(過熱器102,103,104、再熱器105,106、節炭器107)の位置を正確に示しているものではなく、各熱交換器の燃焼ガス流れに対する配置順も
図1の記載に限定されるものではない。
【0029】
図2には、本実施形態のボイラ発電プラント1に設けられたボイラ10の熱交換器と、ボイラ10が生成した蒸気によって回転駆動される蒸気タービン110と、蒸気タービン110に連結され、蒸気タービン110の回転に応じて発電を行う発電機115とを備える。
【0030】
ボイラ10で生成した蒸気により運転される蒸気タービン110は、例えば、高圧タービン111と中圧タービン112と低圧タービン113とから構成され、後述する再熱器からの蒸気が中圧タービンに流入したのちに低圧タービンに流入する。低圧タービン113には、復水器114が連結されており、低圧タービン113を回転駆動した蒸気がこの復水器114で冷却水(例えば、海水)により冷却されて復水となる。復水器114は、給水ラインL1を介して節炭器107に連結されている。給水ラインL1には、例えば、復水ポンプ(CP)121、低圧給水ヒータ122、ボイラ給水ポンプ(BFP)123、高圧給水ヒータ124が設けられている。低圧給水ヒータ122と高圧給水ヒータ123には、蒸気タービン111,112,113を駆動する蒸気の一部が抽気されて、図示しない抽気ラインを介して高圧給水ヒータ124と低圧給水ヒータ122に熱源として供給され、節炭器107へ供給される給水が加熱される。
【0031】
例えば、ボイラ10が貫流ボイラの場合につき、説明をする。節炭器107は、火炉壁101の各蒸発管101aに連結されている。節炭器107で加熱された給水は、火炉壁101の蒸発管101aを通過する際に、火炉11内の火炎から輻射を受けて加熱され、汽水分離器126へと導かれる。汽水分離器126にて分離された蒸気は、過熱器102,103,104へと供給され、汽水分離器126にて分離されたドレン水は、汽水分離器ドレンタンク127に貯められ、ドレン水ラインL2を介して復水器114へと導かれる。
【0032】
また、貫流ボイラの起動時や低負荷運転時等においては、節炭器107から供給される給水が火炉壁101の各蒸発管101aを通過する際に全量が蒸発せず、その結果、汽水分離器126に水位が存在する運転状態(ウエット運転状態)となることがある。このウエット運転状態においては、汽水分離器126にて分離されたドレン水は、ボイラ循環ポンプ(BCP)128を用いて循環ラインL6により、給水ラインL1の途中に合流させることで、節炭器107から火炉壁101の各蒸発管101aへと循環して供給してもよい。
【0033】
燃焼ガスが燃焼ガス通路13を流れるとき、この燃焼ガスは、過熱器102,103,104、再熱器105,106、節炭器107で熱回収される。一方、ボイラ給水ポンプ(BFP)123から供給された給水は、節炭器107によって予熱された後、火炉壁101の各蒸発管101aを通過する際に加熱されて蒸気となり、汽水分離器126に導かれる。汽水分離器126で分離された蒸気は、過熱器102,103,104に導入され、燃焼ガスによって過熱される。過熱器102,103,104で生成された過熱蒸気は、蒸気ラインL3を介して高圧タービン111に供給され、この高圧タービン111を回転駆動する。高圧タービン111から排出された蒸気は、蒸気ラインL4を介して再熱器105,106に導入される。再度過熱された蒸気は、蒸気ラインL5を介して、中圧タービン112を経て低圧タービン113に供給され、この中圧タービン112および低圧タービン113を回転駆動する。各蒸気タービン111,112,113の回転軸は、発電機115を回転駆動して、発電が行われる。低圧タービン113から排出された蒸気は、復水器114で冷却されることで復水となり、給水ラインL1を介して、再び、節炭器107に送られる。
【0034】
また、燃焼ガス通路13には、過熱器102,103,104、再熱器105,106、節炭器107など各熱交換器の伝熱管の間隙、または各熱交換器の間隙に図示しないスーツブロワ(除灰装置)が配置されていてもよい。スーツブロワは、燃焼ガス通路13の壁面に対して略垂直な方向に延在して配置される。スーツブロワは、燃焼ガス通路13の壁面に対して垂直方向を軸方向として、軸方向に直交する方向に蒸気(気体)を噴射し、また噴射方向も変動することができる噴射装置である。スーツブロワから過熱器102,103,104、再熱器105,106、節炭器107など熱交換器に向けて噴射された蒸気は、熱交換器の各伝熱管の表面に堆積した燃焼灰を除去し、熱交換器の各伝熱管における熱交換効率の低下を抑制する。
【0035】
次に、本実施形態では、ボイラの蒸発管101aを洗浄対象として化学洗浄する場合について説明する。
図3は、蒸発管101aを洗浄対象として化学洗浄を行う場合の系統例を示している。
【0036】
図2に示すように、高圧給水ヒータ124は、管P1を介して節炭器107へ接続されており、節炭器107は、管P2を介して火炉壁101の蒸発管101a(
図2参照)へ接続されている。また
図3に示すように、蒸発管101aは、管P3を介して汽水分離器126へ接続され、汽水分離器126は、管P4を介して汽水分離器ドレンタンク127へ接続されている。発電を行う場合には、上述の通り節炭器107へ給水が供給されて蒸発管101a及びその下流側に位置する各系統へ接続する。ボイラの蒸発管101aでは、例えば、酸化鉄などの酸化物を主とするスケールが発生する可能性がある。このため、ボイラの化学洗浄が実施される。化学洗浄工事では、例えば、
図4のように各工程が実行される。すなわち、洗浄工程(
図4の破線枠内の工程)を行う前に、洗浄対象よりも上流側の適所と洗浄対象よりも下流側の適所を繋ぐ仮設循環系統(後述する化洗用系統L7、
図3参照)が接続される。その後、洗浄工程を行い、洗浄工程を行った後に仮設循環系統が解体される。具体的には、ボイラの化学洗浄工事を行う場合には、発電プラントの運転が停止され、化洗用系統L7の接続が行われる。そして、化洗用系統L7及び洗浄対象からなる循環系統を構成する。洗浄工程は、例えば、化学洗浄、水洗工程、リンス工程、及び防錆の各工程が順番に行われる。なお、洗浄工程の各工程は、必要に応じて独立して複数回実施してもよいし、一部を省略してもよく、上記の工程及び順番に限定されるものではない。
【0037】
化洗用系統L7は、洗浄対象(本実施形態では、スケールが発生した蒸発管101a)よりも上流側の適所に一端が接続され、洗浄対象よりも下流側の適所に他端が接続される。そして、化洗用系統L7は、洗浄剤を含む洗浄流体(以下、「洗浄液」という)を流通して洗浄対象の内部を洗浄する。本実施形態では、具体的には、化洗用系統L7は、
図3に示すように、一端が洗浄対象である火炉壁101を構成する蒸発管101aに対して給水流れの上流側である管P2(蒸発管入口)へ接続される。なお、化洗用系統L7における該一端については、洗浄液に対する耐久性のある機器や配管であれば洗浄対象に対して給水流れの上流側に接続されればよく、例えば、節炭器107に対して給水流れの上流側である管P1(節炭器入口)へ接続されてもよい。
【0038】
また、化洗用系統L7の他端は、本実施形態では洗浄対象に対して給水流れの下流側であるドレン水ラインL2(汽水分離器ドレンタンク127の出口)へ接続される。なお、化洗用系統L7における該他端については、洗浄液に対する耐久性のある機器や配管であれば洗浄対象に対して給水流れの下流側に接続されればよく、例えば、蒸発管101aに対して給水流れの下流側である管P3(蒸発管出口)へ接続されてもよいし、汽水分離器126または汽水分離器126に対して給水流れの下流側である管P4(汽水分離器の液体側出口)へ接続されてもよい。したがい、化洗用系統L7の一端と他端の接続位置については、洗浄対象を有して洗浄液に対する耐久性のある機器や配管に対して循環系統を構成することができれば
図3の構成に限定されない。また、洗浄液に対する耐久性のない機器としては、例えば過熱器102,103,104の系統がある。例えば過熱器102,103,104の伝熱管内面のスケール(水蒸気酸化スケール)は水に対して難溶解性であるため、洗浄液が不均一に作用し不十分な洗浄性能による部分溶解をして、スケールに亀裂が生じる場合がある。スケールに亀裂が生じると、亀裂から母材(伝熱管)に洗浄液が到達し、伝熱管材の一部を溶解してスケールと伝熱管内表面に空隙を発生させて伝熱を阻害して、過熱器での伝熱性能の低下が発生する可能性がある。また、伝熱管内表面のスケールの亀裂からスケールが剥離すると、洗浄後にボイラの過熱器系統で堆積して、伝熱管内を閉塞させる可能性がある。したがい、過熱器102,103,104では洗浄液に対して、伝熱性能の低下や伝熱管の損傷を発生する可能性がある。
【0039】
このように化洗用系統L7が接続されることによって、蒸発管101a(洗浄対象)と化洗用系統L7とを含む循環系統が構成され、洗浄液が循環系統を循環することで洗浄対象に対する化学洗浄が行われる。
【0040】
図3のように循環系統が構成されるため、循環系統以外の系統(非洗浄系統)へ洗浄液が流入しないように封止処理が行われる。例えば、
図3に示すように、過熱器102、103、104の下流側に接続された水封装置75によって、過熱器102、103、104へ水張りが行なわれ、洗浄液が汽水分離器126から過熱器102、103、104へ流入することを抑制する(水封処理)。また、節炭器107に対しても同様に水封装置(不図示)で水張りによる水封処理が行われ、洗浄液が管P2から節炭器107へ流入することを抑制する。また、循環ラインL6に対しても同様に水封装置(不図示)で水封処理が行われ、洗浄液が汽水分離器ドレンタンク127から循環ラインL6へ流入することを抑制する。また、ドレン水ラインL2に対しては、バルブ(不図示)により、洗浄液が汽水分離器ドレンタンク127からドレン水ラインL2へ流入することを抑制する。
【0041】
化洗用系統L7は、
図3に示すように、計測部71と、注入部72と、洗浄液循環ポンプ73とを備えている。そして、注入部72は、後述する制御装置60によって制御が行われる。すなわち、計測部71と、制御装置60と、注入部72とで、化学洗浄システムが構成される。なお、制御装置60を化学洗浄システムとしてもよい。
【0042】
計測部71は、洗浄液の性状(液性)を計測する。計測部71の具体的構成の例を
図5に示す。
図5に示すように、計測部71は、化洗用系統L7から一部の洗浄液を抽出し、抽出した洗浄液の性状を計測している。本実施形態では、スキッドSA及びスキッドSBにおいて、それぞれ異なる性状を計測する場合について説明するが、例えば、スキッドをまとめることとしてもよい。その場合、スキッドはスキッドSAとスキッドSBのそれぞれで異なる性状を計測できるものとする。計測部71における各機器は、洗浄液(例えば中性化洗液や有機酸等)に対して腐食耐性を有する機器が使用される。
【0043】
洗浄液は、例えば主に、主剤、還元剤、腐食抑制剤から構成される。主剤は、錆などの金属酸化物を含むスケールに対する溶解能を有する、例えば、有機酸やキレート剤等である。還元剤は、スケール成分還元性を有し、その還元作用によってスケール成分の溶解を促す。例えば、脱酸素剤等である。腐食抑制剤は、スケールが付着していない母材金属やスケールが除去された後の母材金属の表面に吸着し、母材金属の防食性を高める、例えば界面活性剤等である。
【0044】
化洗用系統L7に接続された抽出系統PAによって洗浄液の一部を抽出し、スキッドSAで性状の計測を行い、洗浄液は化洗用系統L7へ戻される。また、化洗用系統L7に接続された抽出系統PBによって洗浄液の一部を抽出し、スキッドSBで性状の計測を行い、洗浄液は化洗用系統L7へ戻される。
【0045】
スキッドSAでは、引き込みポンプ81によって洗浄液の一部をスキッドSAへ引き込む。引き込みポンプ81の下流側には洗浄液の液状を計測する各計測器を設けてある。本実施形態では、更に引き込みポンプ81の下流側には流量計83、ヒータ84、温度計88が設けられており、計測部71に設けた各計測器の洗浄液の状態が、化洗用系統L7を流れる洗浄液の状態と略等しくなるように、引き込みポンプ81の動力とヒータ84の出力が制御されていてもよい。このように、計測部71に設けた各計測器で計測される洗浄液と化洗用系統L7を流れる洗浄液とが略等しい環境とされることで、より正確に洗浄液の性状を計測することが可能となる。
【0046】
スキッドSAには、計測器として、例えば、濁度計86と、分極抵抗計87とが設けられている。それぞれの計測結果は、後述するモニタリング部61に出力される。
【0047】
濁度計86は、洗浄液の濁度(洗浄液中の固形分の濃度)を計測する。濁度から洗浄により発生したスラッジの発生量を把握することができる。なお、濁度計86の代わりに、所定位置(例えば計測部71)の前後に圧力計を設け、差圧によってスラッジの発生量を把握することとしてもよい。洗浄系統内のスラッジ量は、洗浄液による溶解により、洗浄時間の経過とともに、減少するため、洗浄液中のスラッジ量を計測することで、スラッジ溶解の進行状況を確認することができる。
【0048】
分極抵抗計87は、洗浄液の分極抵抗値を計測する。後述する通り、分極抵抗値から洗浄液が流通する部材の腐食量を判断する。
【0049】
スキッドSBでは、引き込みポンプ91によって洗浄液の一部をスキッドSBへ引き込む。引き込みポンプ91の下流側には洗浄液の液状を計測する各計測器を設けてある。本実施形態では、更に引き込みポンプ91の下流側には流量計93、ヒータ94、温度計99が設けられており、計測部71の各計測器の洗浄液の状態が、化洗用系統L7を流れる洗浄液の状態と略等しくなるように、引き込みポンプ91の動力とヒータ94の出力が制御されていてもよい。このように、計測部71の各計測器で計測される洗浄液と化洗用系統L7を流れる洗浄液とが略等しい環境とされることで、より正確に洗浄液の性状を計測することが可能となる。
【0050】
スキッドSBには、計測器として、例えば、溶存酸素濃度計96と、電気伝導率計97と、pH計98aと、酸化還元電位計98bとが設けられている。なお、計測原理が類似している計測器、例えば、pH計98aと酸化還元電位計98bは一体となっていてもよい。それぞれの計測結果は、後述するモニタリング部61に出力される。
【0051】
溶存酸素濃度計96は、洗浄液の溶存酸素濃度を計測する。溶存酸素濃度から洗浄対象系統への酸化剤(酸素)のリークを検知できる。酸化剤(酸素)のリークは、例えば洗浄系統内の管、機器の接続部などの気密性が不十分な場合や、洗浄系統内に設置される空気抜き部の弁操作で洗浄中に誤って開操作してしまった場合等に、大気中の空気が洗浄系統内に侵入することで発生していると考えられる。還元剤を含む洗浄液を用いた洗浄において、洗浄対象系統への酸化剤(酸素)のリークが発生すると、還元剤が酸化剤(酸素)によって消失し、洗浄液の還元性が損なわれるため、スケール溶解性が低下してしまう。また、溶存酸素濃度からリンス工程における酸化処理の進行具合を定量的に把握することができる。
【0052】
電気伝導率計97は、洗浄液の電気伝導率を計測する。後述する通り、電気伝導率から洗浄剤の主剤の有効成分濃度を把握する。また、電気伝導率は迅速に計測結果を得られることから、換算を行うことで、洗浄液のpHを素早く推定することが出来る。
【0053】
pH計98aは、洗浄液のpHを計測する。後述する通り、pHから洗浄液の洗浄性能を把握する。
【0054】
酸化還元電位計98bは、洗浄液の酸化還元電位を計測する。酸化還元電位から洗浄対象系統内における洗浄中の還元雰囲気の維持状況を判断できる。また、洗浄対象系統への酸化剤(酸素)のリークが発生した際には、還元雰囲気の失活影響を検知することができる。
【0055】
本実施形態では、上記のようにスキッドSAとスキッドSBに各計測器を設けることとしているが、洗浄液の性状を把握するにあたり、洗浄性能への影響のより大きなものとして、分極抵抗計87、電気伝導率計97、及びpH計98aの少なくともいずれか1つを設けることとしてもよい。
【0056】
注入部72は、タンク74と、注入ポンプ76とを備えている。本実施形態では、調整剤として、腐食抑制剤、還元剤、及び主剤の3種類を用いる場合を例として説明を行う。このため、各タンク74には、腐食抑制剤(例えば界面活性剤)、還元剤(例えば脱酸素剤)、及び主剤(例えばキレート剤)のそれぞれが貯められている。そして、各タンク74にはそれぞれ注入ポンプ76が接続されており、タンク74に貯められた調整剤を化洗用系統L7を流通する洗浄液へ注入する。
【0057】
注入部72の構成については、使用する洗浄剤の種類に応じて
図3の構成には限定されない。また、各薬品の有効成分の希釈がないように原液を注入することとしてもよいし、洗浄液を分取して薬品を溶解させて添加し、化洗用系統L7の洗浄液へ戻すこととしてもよい。
【0058】
洗浄液循環ポンプ73は、化洗用系統L7及び洗浄対象からなる循環系統内において洗浄液が循環するように、洗浄液を圧送している。すなわち、洗浄液循環ポンプ73によって循環系統内を洗浄液が流通してボイラ化洗が行われる。
【0059】
制御装置60は、洗浄液の性状監視を行う。そして、性状に応じて予測制御や洗浄剤の投入制御等を行い、洗浄液の管理を行う。後述するように、制御装置60では、フィードフォワード制御を行っている。各調整剤は注入してから洗浄系統内の性状が変化するまでに時間を要する場合がある(例えば約1時間)ため、フィードフォワード制御をすることによって、より確実に洗浄液の管理を行うことができる。
【0060】
図6は、本実施形態に係る制御装置60のハードウェア構成の一例を示した図である。
図6に示すように、制御装置60は、コンピュータシステム(計算機システム)であり、例えば、CPU160と、CPU160が実行するプログラム等を記憶するためのROM(Read Only Memory)131と、各プログラム実行時のワーク領域として機能するRAM(Random Access Memory)130と、大容量記憶装置としてのハードディスクドライブ(HDD)140と、ネットワーク等に接続するための通信部150とを備えている。なお、大容量記憶装置としては、ソリッドステートドライブ(SSD)を用いることとしてもよい。これら各部は、バス180を介して接続されている。
【0061】
また、制御装置60は、キーボードやマウス等からなる入力部や、データを表示する液晶表示装置等からなる表示部などを備えていてもよい。
【0062】
なお、CPU160が実行するプログラム等を記憶するための記憶媒体は、ROM131に限られない。例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ等の他の補助記憶装置であってもよい。
【0063】
後述の各種機能を実現するための一連の処理の過程は、プログラムの形式でハードディスクドライブ140等に記録されており、このプログラムをCPU160がRAM130等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、後述の各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROM131やその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0064】
図7は、制御装置60が備える機能を示した機能ブロック図である。
図7に示されるように、制御装置60は、モニタリング部61と、予測部62と、制御部63とを備えている。
【0065】
モニタリング部61は、化洗用系統L7における洗浄液の性状をモニタリングする。具体的には、モニタリング部61は、計測部71における各計測器から計測結果を取得することにより、洗浄液の性状情報を取得する。
【0066】
なお、モニタリング部61では、洗浄液の性状を把握するにあたり、洗浄性能への影響のより大きなものとして、分極抵抗、pH、及び電気伝導率の少なくともいずれか1つを優先的に取得することが好ましい。そして更に、モニタリング部61では、洗浄液の性状を把握するにあたり、上述より影響は少ないものの、洗浄性能への影響が大きなものとして、濁度、酸化還元電位、及び溶存酸素濃度の少なくともいずれか1つを第二優先として取得することとしてもよい。濁度、酸化還元電位、及び溶存酸素濃度の少なくともいずれか1つを用いることによって、洗浄性能の予測精度をより向上させることが可能となる。例えば、洗浄系統内の濁度を取得することで、洗浄液中のスラッジ量を把握できる。スラッジ量は、洗浄液によってスラッジが溶解するため、洗浄時間の経過とともに減少する。そのため、洗浄液中にスラッジ量を計測することで、スラッジ溶解の進行状況を確認することができる。また、洗浄時間の経過とともに、スラッジ量の減少がみられない場合、洗浄性能の影響(洗浄性能低下)を判断することができる。また、還元剤を含む洗浄液を用いた洗浄において、洗浄対象系統への酸化剤(酸素)のリークの発生を検知することが可能な、酸化還元電位、溶存酸素濃度を計測することで、洗浄性能の影響を判断することができる。
【0067】
予測部62は、洗浄液の性状に基づいて、所定期間の経過後における洗浄性能に関する指標を予測する。洗浄性能に関する指標とは、例えば、洗浄対象の中でも洗浄液が流通する部材(以下、洗浄液が流通する部材と記載)の腐食量や、洗浄液のpH、洗浄剤の主剤の有効成分濃度であるが、洗浄性能に関する指標であれば上記に限定されない。本実施形態では、予測部62では、将来における洗浄液が流通する部材の腐食量、洗浄液のpH、洗浄剤の主剤の有効成分濃度のそれぞれを予測する場合について説明する。
【0068】
予測部62における処理について、本実施形態における洗浄液が流通する部材の腐食量を予測する場合と、洗浄液のpHを予測する場合と、洗浄剤の主剤の有効成分濃度を予測する場合とをそれぞれ分けて以下に説明する。
【0069】
(洗浄性能に関する指標として、洗浄液の分極抵抗により洗浄液が流通する部材の腐食量を予測する場合)
まず、洗浄液が流通する部材の腐食量を予測する場合について説明する。なお、この場合には、モニタリング部61では、洗浄液の性状として分極抵抗がモニタリングされる。
【0070】
予測部62は、モニタリングした洗浄液の分極抵抗に基づいて洗浄液が流通する部材の腐食量を推定する。具体的には、交流インピーダンス法による電荷移動抵抗から、Stern-Geary式(金属の溶解速度は分極抵抗の逆数に比例する関係を示した式)を用いて腐食速度を導出する。Stern-Geary式は以下の式(1)となる。
【0071】
[数1]
Icorr=K/Rp (1)
【0072】
上記の式(1)において、Icorrは腐食速度であり、Rpは分極抵抗であり、KはStern-Geary定数(金属の種類や環境などに依存する定数)である。Kについては、予め設定される。
【0073】
このため、式(1)により計測した分極抵抗から腐食速度Icorrが導出される。このため、腐食速度を洗浄時間を用いて積算することによって、腐食量(積算腐食推定量)が算出される。
図8は、本実施形態での例として、洗浄時間と、分極抵抗及び積算腐食推定量との関係の例を示した図である。
図8に示すように、分極抵抗が計測されると、式(1)を用いて腐食量(積算腐食推定量)が導出される。
【0074】
そして、予測部62では、腐食量の経時変化により、所定期間の経過後における腐食量を予測する。本実施形態では、所定期間の経過後とは、化学洗浄の終了時(例えばボイラ化洗開始から100時間)とする。
【0075】
すなわち、予測部62は、現在(予測を行う時点)までの分極抵抗の計測結果により算出した腐食量の経時変化に基づいて、化学洗浄の終了時の腐食量を予測する。予測については、現在までの腐食量の経時変化に基づくものであれば方法は限定されない。例えば、現在までの腐食量の経時変化を近似的に延長して、化学洗浄の終了時の腐食量を予測することとしてもよい。また、相似計算として、腐食抑制剤の濃度及び分極抵抗の経時変化から化学洗浄の終了時の腐食量を予測することとしてもよい。この場合には、例えば、所定濃度毎における分極抵抗の推移データベースから、計測時の分極抵抗値の推移の倍率を計算し、これを基に、以降の挙動を推定することとしてもよいし、蓄積されたデータベースから機械学習により予測することとしてもよい。また、過去実績をデータベースに蓄積しておき、現在までの分極抵抗の計測結果の変化傾向の近いものを選定して、このデータの今後の傾向事例に基づいて、所定期間の経過後における腐食量を予測することとしてもよい。
【0076】
図9は、分極抵抗の計測結果により算出した腐食量の経時変化の例を示す図である。
図9において正常状態の経時変化をJ1として示している。ここで、例えば現在までにJ2のように腐食量が変化した場合には、該変化に基づいてJ3のように腐食量が推移すると予測される。J3は、化学洗浄の終了時には腐食量許容値(洗浄液が流通する部材の腐食量クライテリア)を超えてしまっている。また、J4は例えば腐食量が急変して、従来の正常状態の経時変化であるJ1から腐食量の推移が外れた場合を示している。このように、ボイラ化洗中において腐食量の変化を監視することができるためJ4のような急変(所定変化量以上の変化が生じた場合)についても検知することができる。
【0077】
このように、洗浄液の分極抵抗の計測値に基づき、洗浄液が流通する部材の腐食量をモニタリング及び予測することで、腐食の発生状況を把握することができる。例えば洗浄液に腐食抑制剤(界面活性剤)が含まれる場合には、洗浄液に含まれる腐食抑制剤の洗浄液が流通する部材(母材)への保護性能(分極抵抗値)を継続的に把握し、腐食抑制剤による保護性能の失活状況や回復状況を把握することができる。そして、後述の
図15のように、特性結果に基づいて、腐食抑制剤の添加量及び添加タイミングを設定することができる。
【0078】
(洗浄性能に関する指標として、洗浄液のpHの予測する場合)
次に、洗浄液のpHを予測する場合について説明する。なお、この場合には、モニタリング部61では、洗浄液の性状としてpHがモニタリングされる。
【0079】
予測部62は、モニタリングしたpHの経時変化により、ボイラ化洗を開始後に所定期間の経過後におけるpHを予測する。
【0080】
図10は、本実施形態での例として、洗浄時間と洗浄液のpHの経時変化の例を示す図である。
図10のように時間が経つにつれて洗浄液のpHが上昇する場合がある。例えば、洗浄液が流通する部材の腐食に伴い、洗浄液中の水から水酸化物イオンが生成され、水酸化物イオンの濃度が増加することで、pHが上昇する。洗浄液が中性洗浄液の場合、性状が中性から塩基性側へ移動することで洗浄性能として例えば溶解速度が低下する場合がある。
【0081】
このため、予測部62では、ボイラ化洗が所定期間の経過後に計測したpHを基として、化学洗浄の終了時におけるpHを予測する。予測については、現在(予測を行う時点)までのpHの経時変化に基づくものであれば方法は限定されない。例えば、現在までの推移から近似線により将来の推移を予測することとしてもよい。また、過去実績をデータベースに蓄積しておき、現在までの洗浄液のpHの計測結果の変化傾向の近いものを選定して、このデータの今後の傾向事例に基づいて、所定期間の経過後におけるpHを予測することとしてもよい。
【0082】
図11は、洗浄液のpHの経時変化の例を示す図である。
図11において正常状態の経時変化を実線で示したM1として示している。例えば現在までに破線で示したM2のように洗浄液のpHが変化した場合には、該変化に基づいて点線で示したM3のようにpHが推移すると予測される。なお、
図11では、現在までのpHの経時変化を一次関数近似して将来のpHの変化推移を予測している。この予測によればM3は、化学洗浄の終了時にはpH上限値(例えばpH=8)を超えてしまっている。
【0083】
このように、洗浄液のpHをモニタリング及び予測することで、洗浄液のpHの変化状況、すなわち、洗浄液の洗浄性能の変化状況を把握することができる。そして、後述の
図17のように、還元剤の添加によるpHの調整制御が行うことで、pHの増加が抑制することができる。
【0084】
(洗浄性能に関する指標として、洗浄剤の主剤の有効成分濃度を予測する場合)
次に、洗浄剤の主剤の有効成分濃度を予測する場合について説明する。なお、この場合には、モニタリング部61では、洗浄液の性状として電気伝導率がモニタリングされる。例えば主剤とはキレート剤である。有効成分濃度とは、Feイオンと結合していない主剤の濃度であり、洗浄液の全量に対するFeイオンと結合していない主剤の量で算出する。
【0085】
予測部62は、本実施形態での例として、洗浄時間の経過でモニタリングした洗浄液の電気伝導率に基づいて、ボイラ化洗が所定期間の経過後における指標として洗浄剤の主剤の有効成分濃度を予測する。具体的には、予測部62は、モニタリングによる洗浄液の電気伝導率の計測値と、洗浄液の鉄濃度(Fe濃度)に基づく洗浄液の電気伝導率の推定値との比較に基づいて、洗浄液の希釈速度(水封処置により、ボイラ化洗の進行に伴い水封用の水がボイラ化洗洗浄系統へ流入して薬液濃度が希釈される速度)を推定し、さらに、洗浄液のFe濃度の経時変化と洗浄液の希釈速度とに基づいて、主剤の有効成分濃度を予測する。
【0086】
まず予測部62は、洗浄液の電気伝導率の計測値を所定時間間隔で取得する。このため、
図12の破線で示したN1に示すように、電気伝導率の計測値の経時変化を得る。
【0087】
他方で、予測部62は、洗浄液中のFe濃度の情報を取得する。Fe濃度は、洗浄液中のFeイオン分と鉄粒子分とを合わせた全鉄濃度である。Fe濃度の情報については、所定時間間隔で分析を行ってもよい。分析等が行われた場合には、使用者によって予測部62に入力される。なお、Fe濃度を計測することが可能な場合には、計測値を用いることとしてもよい。例えば、洗浄液の濁度とFe濃度との関係を予め取得しておくことで、濁度計86によって計測した濁度に基づいてFe濃度を推定して特定することができる。
【0088】
洗浄剤の主剤(キレート剤)においては、主剤液中の鉄イオンの増加に伴い、電気伝導率が低下する性質がある。これは、主剤がFeイオンと結合していない状態より、主剤がFeイオンと結合している状態の方が電気伝導率が低下するためである。従って、洗浄液中の鉄濃度(Fe濃度)と洗浄液の電気伝導率には、
図13に示すような負の相関関係がある。
図13の関係に基づいて、洗浄液中のFe濃度の変化に対応した洗浄液の電気伝導率が導出される。このようにして、
図12のN2に示すように、洗浄液のFe濃度に基づく電気伝導率の推定値の経時変化を得る。
【0089】
ここで、
図12において、N1は洗浄液の電気伝導率の計測値の経時変化であり、N2は洗浄液のFe濃度から導出された電気伝導率の推定値の経時変化である。
図12に示すように計測値のN1と推定値のN2とは乖離する。これは、主として、ボイラ化洗中に発生した洗浄液の希釈の影響によるものである。例えば、洗浄液の希釈はボイラ化洗中は水封等で洗浄系統を非洗浄系統と分離しているが、化学洗浄の進行に伴って、非洗浄系統内に満たした水封用の水の一部が、洗浄対象系統に流入する場合がある。このような場合には、洗浄液は、流入した水によって希釈されることとなる。希釈の影響は、電気伝導率の計測値に現れるため、N1とN2との乖離ΔECは、洗浄液の希釈の程度と相関を有している。すなわち、乖離ΔECより希釈度合いを、乖離ΔECの変化より洗浄液の希釈速度を求めることができる。
【0090】
このため、予測部62では、現在までの洗浄液のFe濃度の推移から化学洗浄の終了時におけるFe濃度に基づく電気伝導率を推定する。換言すると、化学洗浄の終了時におけるFe濃度に基づく電気伝導率とは、
図12におけるN2の将来の推移となる。そしてさらに、現在までの希釈速度の推移に基づいて化学洗浄の終了時における乖離ΔECを推定する。そして、化学洗浄の終了時における洗浄液のFe濃度に基づく電気伝導率の推定値と、化学洗浄の終了時における乖離ΔECの推定値とを加算することによって、化学洗浄の終了時における洗浄液の電気伝導率を予測する。このように算出された電気伝導率(終了時電気伝導率予測値)は、洗浄液の性状変化及び希釈の影響が考慮された電気伝導率値となる。
【0091】
そして、
図14に示すような洗浄液の電気伝導率と主剤の有効成分濃度との関係を用いて、終了時電気伝導率予測値から主剤の有効成分濃度を導出する。洗浄液中にFeイオンが存在しない場合には、
図14に示すように、主剤濃度と電気伝導率とは正の相関を有するため、洗浄液の電気伝導率から主剤の有効成分濃度を導出することができる。
【0092】
このようにして、主剤の有効成分濃度の状況を把握することができる。また、電気伝導率は、洗浄液のFe濃度や水封等で洗浄系統を非洗浄系統と分離するための水封の水の侵入による希釈によって影響を受けるが、Fe濃度と希釈速度を用いることによって、より正確に電気伝導率に基づいて主剤の有効成分濃度を導出することが可能となる。
【0093】
制御部63は、所定期間の経過後における洗浄性能に関する指標の予測値が許容範囲外となる場合に、対応する調整剤を洗浄液へ添加する調整制御を行う。すなわち、制御部63は、予測された洗浄液の終了時の状態が、許容範囲外となる場合に、洗浄液に調整剤を添加する制御(調整制御)を実施する。なお、調整剤については、洗浄液に含まれる洗浄剤を用いることとしてもよいし、洗浄液の成分とは別の、調整のための薬剤とすることとしてもよい。
【0094】
制御部63における調整制御について、洗浄液が流通する部材の腐食量を調整する場合と、洗浄液のpHを調整する場合と、洗浄剤の主剤の有効成分濃度を調整する場合とをそれぞれ分けて以下に説明する。
【0095】
(洗浄液の調整制御により、洗浄液が流通する部材の腐食量を調整する場合)
まず、洗浄液が流通する部材の腐食量を調整する場合について説明する。なお、本実施形態では、この場合には、予測部62では、ボイラ化洗の化学洗浄終了時における洗浄液が流通する部材の腐食量が予測される。
【0096】
制御部63は、所定期間の経過後における腐食量の予測値が許容範囲外となる場合に、調整剤として腐食抑制剤を洗浄液へ添加する。許容範囲の上限は、腐食量に対して予め設定された上限値(下限は腐食量が零)となる。
【0097】
図9に示すように、J1のように腐食量が推移した場合には、化学洗浄の終了時に腐食量が腐食量許容値を超えないため、予測値が許容範囲内であるとして調整制御は行われない。
図9のJ3のように、化学洗浄の終了時に腐食量が腐食量許容値を超える場合には、予測値が許容範囲外であるとして調整制御が実行される。
【0098】
制御部63は、化学洗浄の終了時における腐食量の予測値が許容範囲を超える場合に、化学洗浄の終了までに腐食量が許容範囲を超えないように、調整剤として腐食抑制剤の添加量及び添加タイミングの少なくともいずれか一方を設定し、調整制御を行う。本実施形態では、添加量及び添加タイミングの両方を設定する場合について説明する。
【0099】
具体的には、制御部63は、
図15に示すように、腐食量の時間変化における腐食抑制剤の濃度依存性の情報に基づいて調整剤としての腐食抑制剤の添加量及び添加タイミングを設定する。
図15では、例えば腐食抑制剤の濃度毎に、腐食量の時間変化が複数パターン(特性O1、O2、O3、O4、O5、O6)示されている。このような腐食抑制剤の濃度に対する腐食量の時間変化のパターンは、過去実績をデータベースに蓄積しておき、計測結果の変化を整理することで得ることができる。
【0100】
図9のJ2及びJ3のように推移して化学洗浄の終了時における腐食量の予測値が許容範囲を超えると推定される場合には、現在から終了時までの間に腐食量が腐食量許容値より大きくならないように、
図15のような特性に基づいて、相似計算や、DB機械学習により必要な腐食抑制剤の添加量及び添加タイミングが設定される。
【0101】
例えば、現在から化学洗浄の終了時までを調整期間とし、現在の腐食量と腐食量許容値との差分を許容増加量とする。そして、
図15のような特性から、該調整期間と対応する期間内において該許容増加量以下の増加量となる変化特性を特定する。そして、該変化特性の腐食抑制剤濃度となるように、腐食抑制剤の添加量を設定する。
【0102】
例えば、現在までJ2のように腐食量が推移している場合には、現在から化学洗浄の終了時までを調整期間T1において、許容増加量はΔC(
図9参照)となる。このため、
図15において、調整期間T1において増加量が許容増加量であるΔC以下となる特性を特定すると、例えば、特性O1、O2、O3が選定となる。腐食抑制剤の添加量はなるべく少ない方が好ましいため、腐食抑制剤の濃度が最も低い特性O3に対応する濃度となるように、腐食抑制剤の添加量が特定される。なお、添加タイミングについては、少ない添加量で腐食量の増加を抑制するためにはなるべく早く腐食抑制剤を添加することが好ましい。このため、添加タイミングは、添加量を設定後、なるべく早く添加するように設定される。
【0103】
図16は、腐食抑制剤による腐食量の調整制御が行われた場合の例を示している。調整前は、J3のように推移し腐食量許容値を超えてしまう可能性があったが、現状において適切に腐食抑制剤が添加されることによって、腐食量の推定は調整前のJ3から低下して、J5のように腐食量の増加が抑制される。このため、化学洗浄の終了時において腐食量が腐食量許容値を超えてしまうことを抑制することができる。なお、J4のような推移についても同様に調整制御が行われ、J6のように、化学洗浄の終了時において腐食量が腐食量許容値を超えてしまうことが抑制される。
【0104】
上記例では、添加量を設定後なるべく早く添加タイミングを設定する場合について説明したが、添加量との兼ね合いで添加タイミングは、適宜設定可能である。例えば、添加量を多く設定可能な場合には、なるべく早く添加を実行しなくても化学洗浄の終了時において腐食量が腐食量許容値を超えてしまうことを抑制することができる。このため、化学洗浄の終了時に腐食量が腐食量許容値へ達しなければ、添加タイミングは上記に限定されない。例えば、所定の添加量で、化学洗浄の終了時に腐食量が腐食量許容値(もしくは腐食量許容値から所定のマージンを引いた腐食量閾値)に達するように添加タイミングを逆算することとしてもよい。
【0105】
(洗浄液の調整制御により、洗浄液のpHを調整する場合)
次に、洗浄液のpHを調整する場合について説明する。なお、この場合には、本実施形態では、予測部62では、ボイラ化洗で化学洗浄終了時における洗浄液のpHが予測される。
【0106】
制御部63は、所定期間の経過後におけるpHの予測値が許容範囲を超える場合に、調整剤として還元剤を洗浄液へ添加する。許容範囲の上限は、pHに対して予め設定された上限値(下限はpHに対して予め設定された下限値)となる。許容範囲は、pHに依存する洗浄性能に基づいて予め設定される。
【0107】
図11のM1のようにpHが推移した場合には、化学洗浄の終了時にpHがpH上限値を超えないため、予測値が許容範囲を超えないとして調整制御は行われない。
図11のM3のように、化学洗浄の終了時にpHがpH上限値を超える場合には、予測値が許容範囲を超えるとして調整制御が実行される。
【0108】
制御部63は、化学洗浄の終了時におけるpHの予測値が許容範囲を超える場合に、化学洗浄の終了までにpHが許容範囲を超えないように、還元剤の添加量及び添加タイミングの少なくともいずれか一方を設定し、調整制御を行う。本実施形態では、添加量及び添加タイミングの両方を設定する場合について説明する。
【0109】
具体的には、pHの推移特性に基づいて、洗浄液のpH上昇特性を特定する。pH上昇特性とは、例えば、ボイラ化洗の洗浄時間の伴う洗浄液のpHの経時変化を一次関数によって近似した場合には、該一次関数の傾きとなる。そして、該傾きを用いて、化学洗浄の終了時にpHがpH上限値(もしくはpH上限値から所定のマージンを引いたpH閾値)に達するように添加量と添加タイミングを逆算する。例えば、該傾きでpHが上昇し、かつ、化学洗浄の終了時にpHがpH上限値(またはpH上限値から所定のマージンを引いたpH閾値)に達すると予測した場合に、pHが計画値となる時刻を特定する。そして、該時刻を添加タイミングとし、該時刻においてpHを計画値(例えばpH=6)とするためのpH調整剤の添加量を設定する。そして、設定した添加量及び添加タイミングで添加制御が実施される。
【0110】
図17は、還元剤によるpHの調整制御が行われた場合の例を示している。調整前は、M3のように推移しpH上限値を超えてしまう可能性があったが、適切に還元剤が添加されることによって、例えばM5のようにpHの値が計画値へと低下させることで、pHの増加が抑制される。このため、化学洗浄の終了時において洗浄性能が許容範囲を超えて低下することを抑制することができる。
【0111】
なお、化学洗浄の終了時にpHがpH上限値以下となれば、添加量及び添加タイミングの設定方法については前述の方法に限定されない。
【0112】
(洗浄液の調整制御により、洗浄剤の主剤の有効成分濃度を調整する場合)
次に、洗浄剤の主剤の有効成分濃度を調整する場合について説明する。なお、この場合には、本実施形態では、予測部62では、化学洗浄終了時における洗浄剤の主剤の有効成分濃度が予測される。
【0113】
制御部63は、所定期間の経過後における洗浄剤の主剤(キレート剤)の有効成分濃度の予測値が許容範囲外となる場合に、調整剤として主剤を洗浄液へ添加する。許容範囲の下限は、有効成分濃度に対して予め設定された下限値(例えば零)となる。許容範囲の上限は、洗浄開始前の洗浄液の主剤の有効成分濃度となる。許容範囲は、主剤の有効成分濃度に依存する洗浄液の洗浄性能に基づいて予め設定される。
【0114】
制御部63は、化学洗浄の終了時における主剤の有効成分濃度の予測値が許容範囲外となる場合に、化学洗浄の終了までに主剤の有効成分濃度が許容範囲外とならないように、主剤の添加量及び添加タイミングの少なくともいずれか一方を設定し、調整制御を行う。本実施形態では、添加量及び添加タイミングの両方を設定する場合について説明する。
【0115】
具体的には、主剤の有効成分濃度の調整制御は、前述のpHの調整制御と同様である。すなわち、主剤の有効成分濃度の推移特性に基づいて、主剤の有効成分濃度の減少特性を特定する。減少特性とは、例えば、ボイラ化洗が所定期間の経過後に推定した主剤の有効成分濃度の経時変化を一次関数によって近似した場合には、該一次関数の傾きとなる(特にシール水の加圧調整をしていない範囲)。主剤の有効成分濃度の経時変化は、例えば電気伝導率の計測値に基づいて求められることとしてもよいし、Fe濃度及び希釈速度を考慮した電気伝導率の推定値に基づいて求められることとしてもよい。そして、該傾きを用いて、化学洗浄の終了時に主剤の有効成分濃度が下限値(もしくは下限値に対して所定のマージンを足した閾値)以上となるように、主剤の添加量と添加タイミングを逆算する。下限値が零に設定されている場合には、零に対して所定のマージンを足した閾値が用いられることが好ましい。例えば、該傾きで主剤の有効成分濃度が減少し、かつ、化学洗浄の終了時に主剤の有効成分濃度が下限値(または閾値)未満になると予測した場合に、主剤の有効成分濃度が計画値(洗浄開始前の主剤の有効成分濃度)となる時刻を特定する。そして、該時刻を添加タイミングとし、該時刻において主剤の有効成分濃度を計画値とするための主剤の添加量、または、該傾きで主剤の有効成分濃度が減少し、かつ、添加後の主剤の有効成分濃度が、化学洗浄の終了時に主剤の有効成分濃度が下限値(または閾値)以上となる必要最小限の主剤の添加量を設定する。そして、設定した添加量及び添加タイミングで添加制御が実施される。
【0116】
なお、化学洗浄の終了時に主剤の有効成分濃度が下限値(零)とならなければ、主剤の添加量及び添加タイミングの設定方法については前述の方法に限定されない。
【0117】
(洗浄液の調整制御による、洗浄液が流通する部材の腐食量を調整処理の一例)
本実施形態では、次に、上述の制御装置60による洗浄液が流通する部材の腐食量に係る調整処理の一例について
図18を参照して説明する。
図18は、洗浄液が流通する部材の腐食量に係る調整処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図18に示すフローは、例えば、化学洗浄を行っている場合において所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0118】
まず、洗浄液が流通する部材の腐食量の経時変化に基づいて、化学洗浄の終了時における腐食量(積算腐食量)を推定する(S101)。
【0119】
次に、化学洗浄の終了時における洗浄液が流通する部材の腐食量が腐食量許容値以下であるか否かを判定する(S102)。化学洗浄の終了時における腐洗浄液が流通する部材の食量が腐食量許容値以下である場合(S102のYES判定)には、処理を終了する。すなわち、ボイラ化洗が継続的に実施される。
【0120】
化学洗浄の終了時における洗浄液が流通する部材の腐食量が腐食量許容値以下でない場合(S102のNO判定)には、化学洗浄の終了時における腐食量が腐食量許容値以下となるように、調整剤として腐食抑制剤の添加量及び添加タイミングを設定する(S103)。
【0121】
設定した添加量及び添加タイミングにて、腐食抑制剤の投入を行う(S104)。
【0122】
このようにして、洗浄液が流通する部材の腐食量に係る調整処理が行われる。
【0123】
(洗浄液の調整制御による、洗浄液のpHに係る調整処理の一例)
次に、上述の制御装置60による洗浄液のpHに係る調整処理の一例について
図19を参照して説明する。
図19は、pHに係る調整処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図19に示すフローは、例えば、化学洗浄を行っている場合において所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0124】
本実施形態では、まず、pHの経時変化に基づいて、ボイラ化洗の化学洗浄の終了時における洗浄液のpHを推定する(S201)。例えば、現在までのpHの経時変化を基に一次関数近似によって化学洗浄の終了時のpHが推定される。
【0125】
次に、化学洗浄の終了時におけるpHがpH上限値以下であるか否かを判定する(S202)。化学洗浄の終了時におけるpHがH上限値以下である場合(S202のYES判定)には、処理を終了する。すなわち、ボイラ化洗が継続的に実施される。
【0126】
化学洗浄の終了時におけるpHがpH上限値以下でない場合(S202のNO判定)には、化学洗浄の終了時におけるpHがpH上限値以下となるように、調整剤として還元剤(例えばアスコルビン酸)の添加量及び添加タイミングを設定する(S203)。例えば、化学洗浄の終了時におけるpHがpH上限値以下となるように、pHを計画値へ戻す操作を行う添加量と添加タイミングが逆算される。
【0127】
設定した添加量及び添加タイミングにて、還元剤の投入を行う(S204)。すなわち設定した添加タイミングで、pHが計画値へ戻される。
【0128】
このようにして、還元剤に係る調整処理が行われる。なお、還元剤に係る調整処理については、
図11のように、化学洗浄の終了時にpHがpH上限値(またはpH閾値)に達するように還元剤の添加量及び添加タイミングを設定することとしてもよいし、
図20に示すように、pHの計測値の経時変化に基づいてpHがpH上限値(またはpH閾値)に達すると推定されるタイミングを添加タイミングとして、pHを計画値へと低下させて戻すように調整剤の添加量を設定してもよい。
【0129】
このようにして、洗浄液のpHに係る調整処理が行われる。
【0130】
(洗浄液の主剤の有効成分濃度の状態遷移の例)
次に、主剤の有効成分濃度の状態遷移について説明する。
図21は、主剤の有効成分濃度の状態遷移を示す図である。
【0131】
まず、主剤の初期投入が完了される(ST1)。ST1が実施されると、洗浄液の電気伝導率は計画値となる。また、洗浄液中ではFeが未溶解状態のため、Fe濃度は零(略零)である。
【0132】
化学洗浄の進行に伴って洗浄対象系統内に存在する鉄が溶解し、洗浄液のFe濃度が増加する(ST2)。また、化学洗浄の進行に伴って洗浄液に水(例えば水封用シール水)が流入して薬液濃度の希釈が発生する(ST3)。Fe濃度の増加(ST2)及び洗浄液の希釈(ST3)の影響によって、経時的に電気伝導率の計測値N1が減少する(ST4)。
【0133】
一方で、洗浄液中のFe濃度が取得される(ST5)。Fe濃度は、例えば所定時間間隔で分析等によって取得される。化学洗浄の進行に伴って洗浄液のFe濃度が増加するため、主剤がFeイオンと結合し、Fe濃度に基づく電気伝導率の推定値N2が減少する(ST6)。ここで、電気伝導率の計測値N1の減少量は、前述の通り、洗浄液の希釈の影響が加味されているため、Fe濃度に基づく電気伝導率の推定値N2の減少量より大きくなる。したがって、
図22に示すように、化学洗浄の進行に伴って洗浄液中のFe濃度が増加すると、電気伝導率の計測値N1とFe濃度に基づく電気伝導率の推定値N2とは乖離する。このため計測値のN1と推定値のN2との差である乖離ΔEC=N1-N2は増加する。
【0134】
電気伝導率の計測値、及びFe濃度に基づく電気伝導率の推定値の経時変化を整理することによって、
図12のような洗浄時間に伴う経時変化特性を得る(ST7)。
【0135】
ST7において得た経時変化特性は、後述する主剤の有効成分濃度に係る調整処理において用いられる。
【0136】
(洗浄液の調整制御による、洗浄液の主剤の有効成分濃度に係る調整処理の一例)
次に、上述の制御装置60による主剤の有効成分濃度に係る調整処理の一例について
図23を参照して説明する。
図23は、主剤の有効成分濃度に係る調整処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図23に示すフローは、例えば、化学洗浄を行っている場合において所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0137】
本実施形態では、まず、電気伝導率の計測値、及びFe濃度に基づく電気伝導率の推定値の経時変化特性に基づいて洗浄液の希釈速度を推定する(S301)。具体的には、
図12における電気伝導率の乖離ΔECに基づいて洗浄液の希釈速度が推定される。
【0138】
次に、Fe濃度の推移から化学洗浄の終了時におけるFe濃度に基づく電気伝導率を推定する(S302)。そして、希釈速度に基づいて化学洗浄の終了時における電気伝導率の乖離ΔECを推定する(S303)。そして、終了時におけるFe濃度に基づく電気伝導率の推定値と、終了時における電気伝導率の乖離ΔECの推定値とを加算することによって、化学洗浄の終了時における電気伝導率を予測する(S304)。
【0139】
そして、予測した電気伝導率に基づいて、
図14の関係から化学洗浄の終了時における主剤の有効成分濃度を推定する(S305)。
【0140】
次に、化学洗浄の終了時における主剤の有効成分濃度が零より大きいか否かを判定する(S306)。なお、下限値を零より大きい値とする場合には、S306では、化学洗浄の終了時における主剤の有効成分濃度が下限値以上か否かを判定する。化学洗浄の終了時における主剤の有効成分濃度が零より大きい場合(S306のYES判定)には、処理を終了する。すなわち、ボイラ化洗が継続的に実施される。
【0141】
化学洗浄の終了時における主剤の有効成分濃度が零より大きくない場合(S306のNO判定)には、化学洗浄の終了時における主剤の有効成分濃度が零より大きくなるように、調整剤として主剤の添加量及び添加タイミングを設定する(S307)。例えば、化学洗浄の終了時における主剤の有効成分濃度が零より大きくなるように、主剤の有効成分濃度を計画値へ戻す操作、または、所定の主剤の有効成分濃度とする操作を行うための主剤の添加量と添加タイミングが逆算される。
【0142】
設定した主剤の添加量及び添加タイミングにて、主剤の投入を行う(S308)。すなわち設定した添加タイミングで、主剤の有効成分濃度が計画値、または所定の主剤の有効成分濃度へ増加される。
【0143】
このようにして、主剤の有効成分濃度に係る調整処理が行われる。なお、主剤の有効成分濃度に係る調整処理については、pHにおける
図20と同様に、主剤の有効成分濃度が下限値に達すると推定されるタイミングを添加タイミングとして、主剤の有効成分濃度を計画値、または所定の主剤の有効成分濃度へ増加するように添加量を設定してもよい。
【0144】
このようにして、主剤の有効成分濃度に係る調整処理が行われる。
【0145】
上記例では、添加タイミングの設定例を説明したが、応答遅れを考慮して添加タイミングを設定することとしてもよい。すなわち、洗浄液の性状のモニタリング位置と、調整剤の添加位置との応答遅れに基づいて、添加タイミングを設定することも可能である。洗浄流体の性状のモニタリング位置と、調整剤の添加位置とが異なると調整制御による影響に時間的ずれが生じてしまうため、応答遅れを考慮することで、より効果的に洗浄液の性状調整を実施し、洗浄を行うことが可能となる。
【0146】
また、上記例では、各調整剤の添加により対応する洗浄液の性状を個別に調整する場合について説明したが、複数の調整剤を添加する場合に、各調整剤に対して予め設定された優先順位に基づいて、各調整剤を添加することとしてもよい。複数の調整剤を添加する場合に、優先順位に基づいて各調整剤を添加することによって各調整剤の干渉等を抑制して、効率的に洗浄液の性状の調整を行うことが可能となる。例えば、洗浄能力(pH、電気伝導率)よりも腐食抑制(分極抵抗)を優先する場合には、腐食抑制剤の添加を第1優先とし、還元剤の添加を第2優先とし、主剤の添加を第3優先とすることが効果的である。また、還元剤や主剤は、腐食抑制効果を低下させる可能性があるため、還元剤や主剤を添加する際には腐食抑制剤を追加添加することとしてもよい。また、洗浄能力(pH)よりも腐食抑制(分極抵抗)を優先しつつも、希釈の影響から速やかに洗浄能力(電気伝導度)を回復させる必要がある場合には、腐食抑制剤の添加を第1優先とし、主剤の添加を第2優先とし、還元剤の添加を第3優先とすることが効果的である。なお、優先する目的に応じて、各調整剤の投入の優先順位が設定されることによって、より効率的に洗浄液の性状の調整を実施し、効果的な洗浄を行うことが期待できる。
【0147】
以上説明したように、本実施形態に係る化学洗浄システム及び発電プラント、並びに化学洗浄方法によれば、ボイラの蒸発管101aでは酸化鉄などの酸化物を主とするスケールが発生することで、ボイラ蒸発管における伝熱効率の低下により、ボイラ性能の低下を招く可能性がある。そこで、蒸発管101a内を化学洗浄するにあたり、洗浄液の性状をモニタリングし、所定期間の経過後における洗浄性能に関する指標を予測する。予測の結果、洗浄液によって洗浄を行うことができるものの、洗浄液が流通する系統内の環境変化等に起因して、それぞれの指標の計画値や許容範囲値から外れて、洗浄性能が低下する可能性がある場合には、事前に洗浄液に必要な量の調整剤の添加などを行うことで、それぞれの指標の値を回復させることが出来る。このため、洗浄中にモニタリングして得た洗浄液の性状に基づいて洗浄開始から所定期間の経過後において、今後の洗浄性能に関する指標を予測することにより、洗浄性能の変化を把握して、計画値や許容範囲値から外れる場合などでは、必要に応じて洗浄液に必要な量の調整剤の添加などの有効な対策をすることができる。このため、より安定的に洗浄性能の低下を防ぐ等の対策を行うことが可能となる。
【0148】
また、洗浄液の性状として、分極抵抗、pH、及び電気伝導率の少なくともいずれか1つを用いることによって、洗浄性能へより大きな影響があり、より効果的に洗浄性能を予測して、適切な対応をすることができる。分極抵抗に基づくことで洗浄液が流通する部材の腐食量を推定することができるため、腐食量の経時変化より、洗浄開始から所定期間の経過後の洗浄液が流通する部材の腐食量(積算腐食推定量)を得ることができる。すなわち、洗浄性能に関する指標として、洗浄液による洗浄液が流通する部材の腐食発生性を評価することができる。所定期間の経過後の腐食量が予測されるため、計画値や許容範囲値から外れる場合は、事前に適切な対応を図ることも可能となる。また、pHの経時変化より、洗浄開始から所定期間の経過後のpHを得ることができる。すなわち、洗浄性能に関する指標として、例えば洗浄能力に関係する洗浄液の水素イオン指数を評価することができる。所定期間の経過後のpHが予測されるため、計画値や許容範囲値から外れる場合は、事前に適切な対応を図ることも可能となる。また、電気伝導率に基づくことで洗浄開始から所定期間の経過後の洗浄剤の主剤の有効成分濃度を得ることができる。すなわち、洗浄性能に関する指標として、例えば洗浄能力に関係する主剤の有効成分濃度を評価することができる。洗浄開始から所定期間の経過後の主剤の有効成分濃度が予測されるため、計画値や許容範囲値から外れる場合は、事前に適切な対応を図ることも可能となる。
【0149】
また、洗浄時間として所定期間の経過後における指標の予測値が許容範囲外となる場合には、指標に対応する調整剤を洗浄液へ添加する調整制御を行うことで、指標が許容範囲外となってしまうことを事前に抑制することが可能となる。洗浄液が流通する部材の腐食量の予測値が許容範囲外となる場合に必要な量の腐食抑制剤を洗浄液へ添加することで、腐食量の増加を事前に抑制することが可能となる。pHの予測値が許容範囲外となる場合に必要な量の還元剤を洗浄液へ添加することで、事前にpHを適切な値へ調整することが可能となる。例えば、pHは洗浄能力に関係するため、洗浄能力の低下を事前に抑制することが可能となる。主剤の有効成分濃度の予測値が許容範囲外となる場合に必要な量の主剤を洗浄液へ添加することで、事前に有効成分濃度を適切な値へ調整することが可能となる。例えば、有効成分濃度は洗浄能力に関係するため、洗浄能力の低下を事前に抑制することが可能となる。
【0150】
また、所定期間の経過後までに指標が許容範囲外とならないように調整剤の添加量及び添加タイミングの少なくともいずれか一方を設定されることで、所定期間内において必要量を超える調整剤の添加を行うことなく、より安定的に洗浄を行うことが可能となる。
【0151】
本開示は、上述の実施形態のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々変形実施が可能である。
【0152】
上述した実施形態では、ボイラを石炭焚きのボイラとしたが、固体燃料としては、バイオマス燃料や石油精製時に発生するPC(石油コークス:Petroleum Coke)燃料、石油残渣などを使用するボイラであってもよい。また、燃料として固体燃料に限らず、重質油などの液体燃料も使用することができ、更には、燃料として気体燃料(副生ガスなど)も使用することができる。そして、これら燃料の混焼焚きにも適用することができる。
【0153】
予測に用いる性状の計測値は、全洗浄工程(総化学洗浄時間)内の前半部のものを使用することが好ましい。なお、前半部とは、全洗浄時間の50%以下、好ましくは30%以下である。すなわち、より早いタイミングで所定期間の経過後までに指標が許容範囲外となることを予測することで、化学洗浄の終了時に液性(積算腐食量、pH、電気伝導率)がそれぞれ設定された下限値(または閾値)以上または上限値以下となる必要最小限の調整剤の添加量で液性をそれぞれの計画値へと調整でき、調整剤の添加量を削減できる。
【0154】
本実施形態は、中性キレート洗浄剤での化学洗浄にて活用する場合を主として説明したが、有機酸等の洗浄剤を用いた従来の化学洗浄工事でも適用可能である。
【0155】
以上説明した各実施形態に記載の化学洗浄システム及び発電プラント、並びに化学洗浄方法は例えば以下のように把握される。
本開示に係る化学洗浄システムは、ボイラの蒸発管(101a)と、前記蒸発管(101a)よりも上流側に一端が接続され、前記蒸発管(101a)よりも下流側に他端が接続され、洗浄剤を含む洗浄流体を流通して前記蒸発管(101a)を洗浄する化洗用系統(L7)とを有する発電プラントに適用される化学洗浄システムであって、前記化洗用系統(L7)における洗浄流体の性状をモニタリングするモニタリング部(61)と、洗浄流体の性状に基づいて、所定期間の経過後における前記性状に対応した洗浄性能に関する指標を予測する予測部(62)と、を備える。
【0156】
本開示に係る化学洗浄システムによれば、ボイラの蒸発管(101a)では酸化鉄などの酸化物を主とするスケールが発生して蒸発管の伝熱性能が低下してボイラ性能の低下を招く可能性があるため、蒸発管内に洗浄液を流通させて化洗を実施する。その際に、洗浄流体の性状をモニタリングし、蒸発管内の洗浄を開始してから所定期間の経過後における蒸発管の洗浄性能に関する指標を予測する。その結果、洗浄流体によって洗浄を行うことができるものの、洗浄流体が流通する系統内の環境変化等に起因して、指標が計画値や許容範囲値を外れて、洗浄性能が低下する可能性がある場合には、事前に洗浄流体に必要な量の調整剤の添加などを行うことで、指標の値を回復させることが出来る。このため、洗浄中にモニタリングして得た洗浄流体の性状に基づいて洗浄開始から所定期間の経過後における洗浄性能に関する指標を予測することにより、今後の洗浄性能の変化を把握することができる。予測した指標が、計画値や許容範囲値から外れる場合などでは、必要に応じて洗浄流体に必要な量の調整剤の添加などの有効な対策をすることができる。このため、事前に(洗浄時間が経過して洗浄を終了する前に)、より安定的に洗浄性能の低下を防ぐ等の対策を行うことが可能となる。なお、洗浄性能に関する指標とは、例えば、洗浄液が流通する部材の腐食量や、洗浄流体のpH、洗浄剤の主剤の有効成分濃度である。
【0157】
本開示に係る化学洗浄システムは、洗浄流体の性状は、分極抵抗、pH、及び電気伝導率の少なくともいずれか1つであることとしてもよい。
【0158】
本開示に係る化学洗浄システムによれば、分極抵抗、pH、及び電気伝導率の少なくともいずれか1つを用いることによって、洗浄性能への影響がより大きなものとして、より効果的に洗浄性能を予測することができる。
【0159】
本開示に係る化学洗浄システムは、洗浄流体の性状は、濁度、酸化還元電位、及び溶存酸素濃度の少なくともいずれか1つであることとしてもよい。
【0160】
本開示に係る化学洗浄システムによれば、分極抵抗、pH、及び電気伝導率よりも影響は少ないものの、洗浄性能への影響が大きなものとして、濁度、酸化還元電位、及び溶存酸素濃度の少なくともいずれか1つを用いることによって、洗浄性能の予測精度をより向上させることが可能となる。
【0161】
本開示に係る化学洗浄システムは、前記モニタリング部(61)は、洗浄流体の性状として分極抵抗をモニタリングし、前記予測部(62)は、モニタリングした分極抵抗に基づいて洗浄流体が流通する部材の腐食量を推定し、前記腐食量の経時変化により、前記所定期間の経過後における前記指標として前記腐食量を予測することとしてもよい。
【0162】
本開示に係る化学洗浄システムによれば、分極抵抗に基づくことで洗浄流体が流通する部材の腐食量を推定することができるため、腐食量の経時変化より、所定期間の経過後の腐食量(積算腐食推定量)を得ることができる。すなわち、洗浄性能に関する指標として、洗浄流体による腐食発生性を評価することができる。洗浄開始より所定期間の経過後の腐食量が予測されるため、事前に適切な対応を図ることも可能となる。
【0163】
本開示に係る化学洗浄システムは、前記モニタリング部(61)は、洗浄流体の性状としてpHをモニタリングし、前記予測部(62)は、モニタリングしたpHの経時変化により、前記所定期間の経過後における前記指標としてpHを予測することとしてもよい。
【0164】
本開示に係る化学洗浄システムによれば、pHの経時変化より、所定期間の経過後の洗浄流体のpHを得ることができる。すなわち、洗浄性能に関する指標として、例えば洗浄能力に関係する洗浄流体の水素イオン指数を評価することができる。洗浄開始より所定期間の経過後の洗浄流体のpHが予測されるため、事前に適切な対応を図ることも可能となる。
【0165】
本開示に係る化学洗浄システムは、前記モニタリング部(61)は、洗浄流体の性状として電気伝導率をモニタリングし、前記予測部(62)は、モニタリングした電気伝導率に基づいて、前記所定期間の経過後における前記指標として前記洗浄剤の主剤の有効成分濃度を予測することとしてもよい。
【0166】
本開示に係る化学洗浄システムによれば、電気伝導率に基づくことで洗浄開始より所定期間の経過後の有効成分濃度を得ることができる。すなわち、洗浄性能に関する指標として、例えば洗浄能力に関係する有効成分濃度を評価することができる。所定期間の経過後の有効成分濃度が予測されるため、事前に適切な対応を図ることも可能となる。洗浄剤の主剤の有効成分濃度とは、例えば、Feイオンと結合していないキレート剤の濃度である。
【0167】
本開示に係る化学洗浄システムは、前記予測部(62)は、モニタリングによる電気伝導率の計測値と、洗浄流体の鉄濃度に基づく電気伝導率の推定値とに基づいて、前記洗浄剤の主剤の希釈速度を推定し、鉄濃度の経時変化と前記希釈速度とに基づいて前記有効成分濃度を予測することとしてもよい。
【0168】
本開示に係る化学洗浄システムによれば、モニタリングによる電気伝導率の計測値と、洗浄流体の鉄濃度に基づく電気伝導率の推定値とに基づくことで、主剤の希釈速度を推定することができる。この希釈は、例えば、蒸発管(101a)及び化洗用系統(L7)からなる閉回路外(例えば水封処理)から水張り用の水が洗浄液へと侵入した場合には、主剤は希釈されることを示していて、洗浄性能に影響する。希釈速度と鉄濃度の経時変化とに基づくことで、主剤の有効成分濃度を予測することができる。
【0169】
本開示に係る化学洗浄システムは、前記予測部(62)は、前記指標に関する過去実績データに基づいて、前記所定期間の経過後における前記指標を予測することとしてもよい。
【0170】
本開示に係る化学洗浄システムによれば、過去実績データに基づくことで、より効率的に、洗浄開始から所定期間の経過後における指標を予測することが可能となる。
【0171】
本開示に係る化学洗浄システムは、前記所定期間の経過後における前記指標の予測値が許容範囲外となる場合に、前記指標に対応する調整剤を洗浄流体へ添加する調整制御を行う制御部(63)を備えることとしてもよい。
【0172】
本開示に係る化学洗浄システムによれば、所定期間の経過後における指標の予測値が許容範囲外となる場合には、指標に対応する調整剤を洗浄流体へ添加する調整制御を行うことで、指標が許容範囲外となってしまうことを事前に抑制することが可能となる。
【0173】
本開示に係る化学洗浄システムは、前記所定期間の経過後における前記腐食量の予測値が許容範囲外となる場合に、調整剤として腐食抑制剤を洗浄流体へ添加する調整制御を行う制御部(63)を備えることとしてもよい。
【0174】
本開示に係る化学洗浄システムによれば、腐食量の予測値が許容範囲外となる場合に腐食抑制剤を洗浄流体へ添加することで、腐食量の増加を事前に抑制することが可能となる。
【0175】
本開示に係る化学洗浄システムは、前記所定期間の経過後における洗浄流体のpHの予測値が許容範囲外となる場合に、調整剤として還元剤を洗浄流体へ添加する調整制御を行う制御部(63)を備えることとしてもよい。
【0176】
本開示に係る化学洗浄システムによれば、pHの予測値が許容範囲外となる場合に還元剤を洗浄流体へ添加することで、事前にpHを適切な値へ調整することが可能となる。例えば、pHは洗浄能力に関係するため、洗浄能力の低下を事前に抑制することが可能となる。
【0177】
本開示に係る化学洗浄システムは、前記所定期間の経過後における前記有効成分濃度の予測値が許容範囲外となる場合に、調整剤として前記洗浄剤の主剤を洗浄流体へ添加する調整制御を行う制御部(63)を備えることとしてもよい。
【0178】
本開示に係る化学洗浄システムによれば、有効成分濃度の予測値が許容範囲外となる場合に主剤を洗浄流体へ添加することで、事前に有効成分濃度を適切な値へ調整することが可能となる。例えば、有効成分濃度は洗浄能力に関係するため、洗浄能力の低下を事前に抑制することが可能となる。
【0179】
本開示に係る化学洗浄システムは、前記制御部(63)は、前記所定期間の経過後における前記指標の予測値が許容範囲外となる場合に、前記所定期間の経過後までに前記指標が前記許容範囲内となるように、前記調整剤の添加量及び添加タイミングの少なくともいずれか一方を設定し、調整制御を行うこととしてもよい。
【0180】
本開示に係る化学洗浄システムによれば、所定期間の経過後までに指標が許容範囲外とならないように調整剤の添加量及び添加タイミングの少なくともいずれか一方を設定されることで、所定期間内においてより安定的に洗浄を行うことが可能となる。
【0181】
本開示に係る化学洗浄システムは、前記制御部(63)は、洗浄流体の性状のモニタリング位置と、前記調整剤の添加位置との応答遅れに基づいて、前記添加タイミングを設定することとしてもよい。
【0182】
本開示に係る化学洗浄システムによれば、浄流体の性状のモニタリング位置と、調整剤の添加位置とが異なると調整制御による影響に時間的ずれが生じてしまうため、応答遅れを考慮することで、より効果的に洗浄を行うことが可能となる。
【0183】
本開示に係る化学洗浄システムは、前記制御部(63)は、複数の前記調整剤を添加する場合に、各前記調整剤に対して予め設定された優先順位に基づいて、各前記調整剤を添加することとしてもよい。
【0184】
本開示に係る化学洗浄システムによれば、複数の調整剤を添加する場合に、優先順位に基づいて各調整剤を添加することによって各調整剤の干渉等を抑制して、効率的に調整を行うことが可能となる。
【0185】
本開示に係る発電プラントは、ボイラの蒸発管(101a)と、前記蒸発管(101a)よりも上流側に一端が接続され、前記蒸発管(101a)の下流側よりも他端が接続され、洗浄剤を含む洗浄流体を流通して前記蒸発管(101a)を化洗する化洗用系統(L7)と、上記の化学洗浄システムと、を備える。
【0186】
本開示に係る化学洗浄方法は、ボイラの蒸発管(101a)と、前記蒸発管(101a)よりも上流側に一端が接続され、前記蒸発管(101a)よりも下流側に他端が接続され、洗浄剤を含む洗浄流体を流通して前記蒸発管(101a)を洗浄する化洗用系統(L7)とを有する発電プラントに適用される化学洗浄方法であって、前記化洗用系統(L7)における洗浄流体の性状をモニタリングする工程と、洗浄流体の性状に基づいて、所定期間の経過後における前記性状に対応した洗浄性能に関する指標を予測する工程と、を有する。
【符号の説明】
【0187】
1 :ボイラ発電プラント
10 :ボイラ
11 :火炉
12 :燃焼装置
13 :燃焼ガス通路
14 :煙道
21 :燃焼バーナ
22 :燃焼バーナ
23 :燃焼バーナ
24 :燃焼バーナ
25 :燃焼バーナ
26 :微粉炭供給管
27 :微粉炭供給管
28 :微粉炭供給管
29 :微粉炭供給管
30 :微粉炭供給管
31 :粉砕機
32 :粉砕機
33 :粉砕機
34 :粉砕機
35 :粉砕機
36 :風箱
37 :空気ダクト
38 :押込通風機
39 :アディショナル空気ポート
40 :アディショナル空気ダクト
41 :ガスダクト
42 :エアヒータ
43 :脱硝装置
44 :集塵装置
46 :脱硫装置
50 :煙突
60 :制御装置
61 :モニタリング部
62 :予測部
63 :制御部
71 :計測部
72 :注入部
73 :洗浄液循環ポンプ
74 :タンク
75 :水封装置
76 :注入ポンプ
81 :引き込みポンプ
83 :流量計
84 :ヒータ
86 :濁度計
87 :分極抵抗計
88 :温度計
91 :引き込みポンプ
93 :流量計
94 :ヒータ
96 :溶存酸素濃度計
97 :電気伝導率計
98a :pH計
98b :酸化還元電位計
99 :温度計
101 :火炉壁
101a :蒸発管
102 :第1過熱器
103 :第2過熱器
104 :第3過熱器
105 :第1再熱器
106 :第2再熱器
107 :節炭器
110 :蒸気タービン
111 :高圧タービン(蒸気タービン)
112 :中圧タービン(蒸気タービン)
113 :低圧タービン(蒸気タービン)
114 :復水器
115 :発電機
122 :低圧給水ヒータ
123 :ボイラ給水ポンプ
124 :高圧給水ヒータ
126 :汽水分離器
127 :汽水分離器ドレンタンク
130 :RAM
131 :ROM
140 :ハードディスクドライブ
150 :通信部
160 :CPU
180 :バス
L1 :給水ライン
L2 :ドレン水ライン
L3 :蒸気ライン
L4 :蒸気ライン
L5 :蒸気ライン
L6 :循環ライン
L7 :化洗用系統
PA :抽出系統
PB :抽出系統
SA :スキッド
SB :スキッド