(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20231120BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20231120BHJP
H02J 3/40 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
H02M7/48 R
H02M7/48 N
H02J3/38 180
H02J3/38 130
H02J3/38 170
H02J3/40
(21)【出願番号】P 2020041699
(22)【出願日】2020-03-11
【審査請求日】2023-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 佑介
(72)【発明者】
【氏名】森島 洋一
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-009648(JP,A)
【文献】特開2001-008464(JP,A)
【文献】特開2015-104292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02J 3/38
H02J 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源と、
前記電源から供給される直流電力
を交流電力に変換し、電力系統から供給される交流電力を直流電力に変換するインバータと、
前記インバータ
と前記電力系統
との間に設けられた交流ラインの電気的接続状態を切り替える開閉器と、
前記インバータの出力電圧を検出する第1電圧検出器と、
前記電力系統の系統電圧を検出する第2電圧検出器と、
前記インバータと前記開閉器との動作を制御する制御回路と、を備え、
前記制御回路は、
前記電力系統の系統電圧および周波数の値に基づいて、前記電力系統が停電か否かを判断
し、
前記電力系統が復電したと
判断すると、
前記インバータの出力電圧の位相と前記系統電圧の位相との位相差を演算し、
前記位相差を用いて
、予め設定された周波数変化率で前記周波数を変化させる期間を含み、前記インバータの出力電圧の周波数を変化させる出力周波数パターンを生成
し、
前記
生成した出力周波数パターンに沿って前記インバータの出力電圧の周波数が変化するように前記インバータを制御し
、
前記
制御によりインバータの出力電圧の位相と前記系統電圧の位相差が閾値以下となった後に前記開閉器を投入させる、
電力変換装置。
【請求項2】
前記出力周波数パターンは、
周波数が一定値である期間を更に含む請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記出力周波数パターンは、周波数上限値又は周波数下限値の一定値とする期間を更に含む、請求項
1記載の電力変換装置。
【請求項4】
電源と、
前記電源から供給される直流電力を交流電力に変換し、電力系統から供給される交流電力を直流電力に変換するインバータと、
前記インバータと前記電力系統との間に設けられた交流ラインの電気的接続状態を切り替える開閉器と、
前記インバータの出力電圧を検出する第1電圧検出器と、
前記電力系統の系統電圧を検出する第2電圧検出器と、
前記インバータと前記開閉器との動作を制御する制御回路と、を備え、
前記制御回路は、
前記電力系統の系統電圧および周波数の値に基づいて、前記電力系統が停電か否かを判断し、
前記電力系統が復電したと判断すると、
前記インバータの出力電圧の位相と前記系統電圧の位相との位相差を演算し、
前記位相差を用いて前記インバータの出力電圧の周波数を変化させる第1出力周波数パターンを生成し、
前記生成した第1出力周波数パターンに沿って前記インバータの出力電圧の周波数が変化するように前記インバータを制御し、
前記第1出力周波数パターンを用いた制御の結果、前記インバータの出力電圧の位相と前記系統電圧の位相差が所定の閾値よりも大きいとき、前記位相差を再度演算し、当該再度演算された前記位相差を用いて前記インバータの出力電圧の周波数を変化させる第2出力周波数パターンを生成し、
前記生成した第2出力周波数パターンに沿って前記インバータの出力電圧の周波数が変化するように前記インバータを制御し、
前記第1出力周波数パターンを用いた制御または前記第2出力周波数パターンを用いた制御により前記インバータの出力電圧の位相と前記系統電圧の位相差が閾値以下となった後に前記開閉器を投入させる、
電力変換装置。
【請求項5】
前記第1出力周波数パターンおよび前記第2出力周波数パターンは、周波数を予め設定された周波数変化率で変化させる期間を含む、請求項4記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記第1出力周波数パターンおよび前記第2出力周波数パターンは、周波数が一定値である期間を更に含む、請求項4記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記第1出力周波数パターンおよび前記第2出力周波数パターンは、周波数上限値又は周波数下限値の一定値とする期間を更に含む、請求項4記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池や二次電池などの電源から出力可能な直流電力を交流電力に変換して、電源から出力された電力を負荷に供給したり、電力系統へ売電したりするPCS(Power Conditioning System)が普及している。
【0003】
分散電源用のPCSは、電力系統の停電時に自立運転を行うことにより負荷へ電力供給が可能である。自立運転を行うPCSは、電力系統が復電すると自立運転から連系運転に切り替わるが、インバータの出力電圧と系統電圧とに位相差があると、過電圧や過電流によりPCSが停止する恐れがある。そのため、電力系統が復電したときに、自立運転中のPCSを一度停止してから、電力系統との連系運転に切り替わるものが用いられている。
【0004】
しかしながら、PCSが一度停止すると、負荷への電力供給が停止され、瞬間的な停電状態となり得るため、電力系統が復電時にPCSを自立運転から連系運転に無瞬断で切り替え、連続的に負荷へ電力を供給することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
PCSが自立運転から連系運転に切り替わるときに、インバータの出力電圧の位相を系統電圧の位相に急激に同期させると負荷に悪影響を及ぼす虞があり、また緩やかに同期させると電源に含まれる蓄電装置の蓄電エネルギーを無駄に消費することとなる。したがって、負荷の耐量範囲内においてインバータの出力電圧の周波数を変化させ、かつ、速やかにインバータの出力電圧の位相を系統電圧の位相と同期させる必要があった。
【0007】
本発明の実施形態は上記事情を鑑みて成されたものであって、電力系統との連携を円滑に行い、連続的に負荷へ電力を供給可能な電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態による電力変換装置は、電源と、インバータと、開閉器と、第1電圧検出器と、第2電圧検出器と、制御回路とを備える。インバータは、電源から供給される直流電力を交流電力に変換し、電力系統から供給される交流電力を直流電力に変換する。開閉器は、インバータと電力系統との間に設けられた交流ラインの電気的接続状態を切り替える。第1電圧検出器は、インバータの出力電圧を検出する。第2電圧検出器は、電力系統の系統電圧を検出する。制御回路は、インバータと開閉器との動作を制御する。制御回路は、電力系統の系統電圧および周波数の値に基づいて、電力系統が停電か否かを判断する。電力系統が復電したと判断すると、制御回路は、インバータの出力電圧の位相と系統電圧の位相との位相差を演算する。制御回路は、位相差を用いて、予め設定された周波数変化率で周波数を変化させる期間を含み、インバータの出力電圧の周波数を変化させる出力周波数パターンを生成する。制御回路は、生成した出力周波数パターンに沿ってインバータの出力電圧の周波数が変化するように、インバータを制御する。制御回路は、制御によりインバータの出力電圧の位相と系統電圧の位相差が閾値以下となった後に開閉器を投入させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態の電力変換装置の一構成例を概略的に示す図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の電力変換装置において、出力周波数パターン演算部で演算される出力周波数パターンの一例を概略的に示す図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の電力変換装置の動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図4】
図4は、第1実施形態の電力変換装置の動作をシミュレーションした結果の一例を示す図である。
【
図5A】
図5Aは、第2実施形態の電力変換装置の動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図5B】
図5Bは、第2実施形態の電力変換装置の動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図6】
図6は、第2実施形態の電力変換装置の動作をシミュレーションした結果の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、比較例の電力変換装置のシミュレーション結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態の電力変換装置について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、第1実施形態の電力変換装置の一構成例を概略的に示す図である。
なお、
図1では、電力系統4および負荷5に対して複数の電力変換装置1が接続された例を示している。負荷5は、種々の需要者にて使用される負荷を適用することが可能であり、例えば一般家庭や商業施設や工業施設や医療施設などにおいて、プラグを介して電力が供給されるような種々の電子機器や、施設に設置された照明機器、エレベータ、空調設備など、電力により動作する種々の機器を適用することができる。
【0011】
複数の電力変換装置1は、少なくとも1つのマスター装置1Mと、複数のスレーブ装置1Sとを含み得る。スレーブ装置1Sは、マスター装置1Mからの指令に基づいて動作する。マスター装置1Mは、複数の電力変換装置1が協調して動作するようにスレーブ装置1Sへ指令を出力する。
【0012】
以下では、一例としてマスター装置1Mを電力変換装置1とし、電力変換装置1の構成について説明する。スレーブ装置1Sは、通常、マスター装置1Mと共通の構成を備えている。また、スレーブ装置1Sは省略されても構わない。
【0013】
本実施形態の電力変換装置は、主回路2と制御回路3と開閉器9とを含む。
主回路2は、分散電源7と、インバータ6と、リアクトルFLと、トランスTRと、コンデンサFCと、を備えている。
【0014】
分散電源7は、例えば太陽電池、燃料電池、二次電池などの直流電源を少なくとも1つ含み得る。分散電源7は、上記複数種類の直流電源を組み合わせて構成されていてもよい。分散電源7は、例えば、インバータ6へ直流電力を出力するとともに、インバータ6から供給される直流電力により充電され得る。
【0015】
インバータ6は、直流電力と三相交流電力とを相互に変換可能な三相交流インバータである。インバータ6は、正側の直流端子と負側の直流端子との間に電気的に接続されたU相、V相、W相のアームを備えている。各相アームは、上側のスイッチング素子と下側のスイッチング素子とを備え、上側スイッチング素子と下側スイッチング素子との間において対応する交流端子と電気的に接続されている。
【0016】
リアクトルFLおよびコンデンサFCとは、インバータ6から出力された交流電力からノイズを除くフィルタ回路を構成し、インバータ6の各相交流端子とトランスTRとの間に介在している。リアクトルFLは、インバータ6の交流端子とトランスTRとの間に接続される交流ラインに直列に接続している。
【0017】
トランスTRは、第1コイルと、第2コイルとを備えている。第1コイルと第2コイルとは絶縁されている。第1コイルは、フィルタ回路を介してインバータ6の交流端子と電気的に接続されている。第2コイルは、開閉器9および開閉器8を介して電力系統4と電気的に接続されるとともに、負荷5と電気的に接続されている。トランスTRは、インバータ6と電力系統4との間で授受される交流電力の電圧を変圧可能な絶縁変圧器である。
【0018】
制御回路3は、ハードウエアにより構成されてもよく、ソフトウエアにより構成されてもよく、ハードウエアとソフトウエアとの組み合わせにより構成されてもよい。制御回路3は、例えば、少なくとも1つのプロセッサと、プロセッサにより実行されるプログラムが記録されたメモリと、を備え、以下に説明する種々の機能を実現するよう構成されている。
【0019】
制御回路3は、インバータ6から出力される交流電力の電流値および電圧値と、電力系統4から出力される交流電力の電圧値(系統電圧値)と、外部から供給される指令値と、に基づいて、インバータ6のスイッチング素子の動作を制御するゲート信号を生成して出力する。
【0020】
制御回路3は、電圧制御部(AVR)21と、電流制御部(ACR)22と、第1周波数演算部23と、インバータ周波数選択部26と、インバータ電圧指令値選択部27と、第1位相演算部30と、第2周波数演算部24と、自立運転判定部29と、第2位相演算部31と、変調波/ゲート信号生成部32と、出力周波数パターン演算部25と、開閉指令生成部28と、第1電圧検出器11と、第2電圧検出器12と、電流検出器13と、を備えている。
【0021】
第1電圧検出器11は、インバータ6から出力される交流電力の電圧Vの値を検出する。第1電圧検出器11にて検出された電圧(インバータ出力電圧)Vの値は、電圧制御部21と第1周波数演算部23とに供給される。
【0022】
第2電圧検出器12は、電力系統4から出力された交流電力の電圧Vgの値を検出する。第2電圧検出器12にて検出された電圧(系統電圧)Vgの値は、第2周波数演算部24と、自立運転判定部29とに供給される。
【0023】
電流検出器13は、インバータ6から出力される交流電力の電流Iinvの値を検出する。なお、電流検出器13は、例えば、インバータ6から出力される三相の交流電力の少なくとも二相について電流Iinvの値を検出する。電流検出器13にて検出された電流(インバータ電流)Iinvの値は、電流制御部22へ供給される。
【0024】
第1周波数演算部23は、第1電圧検出器11からインバータの出力電圧Vの値を取得し、インバータ6の出力電圧の周波数fiを演算して出力する。第1周波数演算部23から出力された周波数の値は、電圧制御部21と、電流制御部22と、インバータ周波数選択部26と、に供給される。
【0025】
第2周波数演算部24は、第2電圧検出器12から系統電圧Vgの値を取得し、電力系統4の出力電圧の周波数fgの値を演算して出力する。第2周波数演算部24から出力される周波数fgの値は、自立運転判定部29と、第2位相演算部31とに供給される。
【0026】
第2位相演算部31は、第2周波数演算部24から電力系統の出力電圧の周波数fgの値を取得し、周波数fgの値を積分して位相θgの値を演算する。第2位相演算部31から出力される位相θgの値は、出力周波数パターン演算部25と、自立運転判定部29とに供給される。
【0027】
自立運転判定部29は、第2電圧検出器12から系統電圧Vgの値を取得し、第2周波数演算部24から系統電圧の周波数fgの値を取得し、電力系統4が停電か否かを判断する。自立運転判定部29は、系統電圧Vgの値および系統周波数fgの値とのそれぞれが所定値の範囲内であるか否かにより、電力系統4が停電か否かを判断することができる。電力系統4が停電であると判断したときに、例えば停電フラグを「1」とし、電力系統4が正常であると判断したときに、例えば停電フラグを「0」とする。
【0028】
また、自立運転判定部29は、第2位相演算部31から系統電圧Vgの位相値θgを取得し、また後述する第1位相演算部30からインバータ6の出力電圧Vの位相値θを取得し、位相値θgと位相値θとに基づいて、電力変換装置1の運転モードを自立運転と連系運転とで切り替える制御を行う。例えば、自立運転判定部29は、系統電圧Vgの位相値θgとインバータ6の出力電圧Vの位相値θとの差が所定の閾値よりも小さいときに、自立運転中の電力変換装置1を電力系統4との連系運転へ切り替え可能であると判断し、自立運転フラグを「1」から「0」とする。また、例えば、自立運転判定部29は、電力系統4が停電であると判断したときに、電力系統4と連系運転中の電力変換装置1を自立運転へ切り替えると判断し、自立運転フラグを「0」から「1」とする。
【0029】
自立運転判定部29は、停電フラグと自立運転フラグとを、インバータ周波数選択部26と、インバータ電圧指令値選択部27と、開閉指令生成部28と、出力周波数パターン演算部25と、に供給する。
【0030】
開閉指令生成部28は、自立運転判定部29から供給される停電フラグと自立フラグとの値に応じて開閉器9への開閉指令を生成して出力する。開閉指令生成部28は、停電フラグが「1」であるときに、開閉器9を開くように開閉指令を生成し、停電フラグが「0」であって自立運転フラグが「0」であるときに、開閉器9を閉じるように開閉指令を生成する。
【0031】
電圧制御部21は、外部から入力される電圧指令値と、インバータ6の出力電圧Vの値と、第1周波数演算部23の出力値と、を受信する。なお、電圧制御部21は、電力変換装置1の自立運転時に外部から電圧指令値を受信し、インバータ6の電圧指令値を演算することが可能である。
【0032】
電圧制御部21は、受信した値を用いて、出力電圧Vの値が電圧指令値に追従するように、インバータ6の電圧指令値を演算して出力する。電圧制御部21は、例えば、出力電圧Vの値と電圧指令値との差がゼロとなるように電圧指令値を演算する比例積分(PI)制御部である。電圧制御部21から出力された電圧指令値は、インバータ電圧指令値選択部27に供給される。
【0033】
電流制御部22は、外部から入力される電流指令値と、インバータ6の出力電流Iinvの値と、第1周波数演算部23の出力値と、を受信する。なお、電流制御部22は、電力変換装置1の連系運転時に外部から電流指令値を受信し、インバータ6の電圧指令値を演算することが可能である。
【0034】
電流制御部22は、受信した値を用いて、出力電流Iinvの値が電流指令値に追従するように、インバータ6の電圧指令値を演算して出力する。電流制御部22は、例えば、出力電流Iinvの値と電流指令値との差がゼロとなるように電圧指令値を演算する比例積分(PI)制御部である。電流制御部22から出力された電圧指令値は、インバータ電圧指令値選択部27に供給される。
【0035】
インバータ周波数選択部26は、自立運転判定部29から供給される停電フラグおよび自立運転フラグの値に基づいて、第1周波数演算部23の出力値と出力周波数パターン演算部25の出力値とのいずれかを選択して、インバータ6の出力電圧の周波数fの値として出力する。インバータ周波数選択部26から出力される周波数fの値は、第1位相演算部30に供給される。
【0036】
電力変換装置1が電力系統4との連系運転を行っているときには、インバータ周波数選択部26は、第1周波数演算部23の出力値をインバータ6の出力電圧の周波数fの値として選択する。すなわち、停電フラグが「0」であり自立運転フラグが「0」のとき、インバータ周波数選択部26は、第1周波数演算部23の出力値をインバータ6の出力電圧の周波数fの値として選択する。
【0037】
電力変換装置1が自立運転を行っているとき、インバータ周波数選択部26は、出力周波数パターン演算部25の出力値をインバータ6の出力電圧の周波数fの値として選択する。すなわち、停電フラグが「1」であり自立運転フラグが「1」のとき、インバータ周波数選択部26は、出力周波数パターン演算部25の出力値であって、予め設定された定格周波数の値をインバータ6の出力電圧の周波数fの値として選択する。
【0038】
電力変換装置1が自立運転中に電力系統4が復電したとき、すなわち自立運転フラグが「1」であり、停電フラグが「1」から「0」となったときに、後述するように出力周波数パターン演算部25の出力値は出力周波数パターンに基づいて変化する値となり、インバータ周波数選択部26からインバータ6の出力電圧の周波数fの値として出力される。
【0039】
第1位相演算部30は、インバータ周波数選択部26から供給された周波数fの値を積分して、インバータ6の出力電圧の位相θの値を演算する。第1位相演算部30は、演算した位相θの値を、自立運転判定部29と、出力周波数パターン演算部25と、変調波/ゲート信号生成部32とに供給する。
【0040】
インバータ電圧指令値選択部27は、自立運転判定部29から供給される停電フラグおよび自立運転フラグの値に基づいて、電圧制御部21の出力値と電流制御部22の出力値との一方を選択して、インバータ6の電圧指令値として出力する。インバータ電圧指令値選択部27から出力される電圧指令値は、変調波/ゲート信号生成部32に供給される。
【0041】
インバータ電圧指令値選択部27は、電力変換装置1が電力系統4と連系運転を行っているときには、電流制御部22の出力値をインバータ6の電圧指令値として出力する。すなわち、停電フラグが「0」であり自立運転フラグが「0」であるときに、インバータ電圧指令値選択部27は、電流制御部22の出力値をインバータ6の電圧指令値として出力する。
【0042】
インバータ電圧指令値選択部27は、電力変換装置1が自立運転を行っているときには、電圧制御部21の出力値をインバータ6の電圧指令値として出力する。すなわち、自立運転フラグが「1」であるときに、インバータ電圧指令値選択部27は、電圧制御部21の出力値をインバータ6の電圧指令値として出力する。
【0043】
変調波/ゲート信号生成部32は、第1位相演算部30から受信したインバータ6の出力電圧の位相θの値と、インバータ電圧指令値選択部27から受信した電圧指令値とに基づいて変調波を生成する。変調波/ゲート信号生成部32は、生成した変調波と、キャリア波とを比較して、インバータ6のスイッチング素子のゲート信号を生成し、インバータ6へ出力する。
【0044】
出力周波数パターン演算部25は、電力変換装置1を自立運転から電力系統4との連系運転に切り替えるとき(停電フラグが「1」から「0」となったとき)に、系統電圧Vgの周波数と同期するようにインバータ6の出力電圧Vの周波数fのパターンを演算する。
【0045】
図2は、第1実施形態の電力変換装置において、出力周波数パターン演算部で演算される周波数パターンの一例を概略的に示す図である。
出力周波数パターンは、周波数を予め設定された周波数変化率で変化させる期間T
A、T
Cを少なくとも含む。
図2に示す例では、出力周波数パターンは、周波数上限値又は周波数下限値の一定値とする期間T
Bを更に含んでいる。ここでは、インバータ6の出力電圧Vの位相θに対して、系統電圧Vgの位相θgが進んでいるときに、位相θを位相θgに同期させる出力周波数パターンの例を示している。
【0046】
なお、インバータ6の出力電圧Vの位相θに対して系統電圧Vgの位相θgが遅れている場合には、インバータ6の出力電圧Vの周波数fを、予め設定された周波数変化率で所定期間TA下降させた後に、必要に応じて周波数下限値の一定値とする期間TBを経て、予め設定された周波数変化率で所定期間TC上昇させて、定格周波数に戻す出力周波数パターンが生成される。
【0047】
以下の説明において、系統電圧Vgの位相θgとインバータ6の出力電圧Vの位相θとの位相差をΔθとする。また、定格周波数をF[Hz]、周波数変動上限値をΔFL[Hz]、周波数変化率(上昇方向)をΔfU[Hz/s]、周波数変化率(下降方向)を-ΔfD[Hz/s]とする。また、上昇方向の周波数変化率で動作する期間をTA[s]、周波数上限値(又は周波数下限値)の一定値で動作する期間をTB[s]、下降方向の周波数変化率で動作する期間をTC[s]とする。
【0048】
まず、期間T
Aにおいて、定格周波数Fから周波数上限値F+ΔF
Lまで周波数fを変化させるため、期間T
Aは式(1)により表すことができる。
【数1】
【0049】
また、期間T
Aにおける位相変化量Δθ
Aは、下記式(2)により表すことができる。
【数2】
【0050】
同様に、期間T
Cで周波数上限値F+ΔF
Lから定格周波数Fに戻るため、期間T
Cと位相変化量Δθ
Cとは、下記式(3)、(4)により表すことができる。
【数3】
【0051】
期間T
Bにおける位相変化量Δθ
Bと期間T
Bとは、下記式(5)、(6)で求められる。
【数4】
【0052】
以上の式(1)、(3)、(6)より、それぞれの期間TA、TB、TCは一意に決まる。したがって、出力周波数パターン演算部25は、系統電圧Vgの位相θgとインバータ6の出力電圧Vの位相θとの位相差Δθを演算し、予め設定された値とΔθとを用いて上記式(1)、(3)、(6)を演算することにより、インバータ6の出力電圧Vの出力周波数パターンを決定することができる。
【0053】
ただし、Δθの値によっては、インバータ6の出力電圧の周波数を周波数上限値まで上昇させることなく、位相θと位相θgとを同期させることが可能な場合もあり得る。その条件は、式(6)においてT
B≦0となる場合であり、下記式(7)となる。
【数5】
【0054】
この場合、ΔθはΔθ
AとΔθ
Cとの和であって、期間T
Aと期間T
Cとにおける周波数の変化量は等しくなるため、下記式(8)、(9)が成り立つ。
【数6】
【0055】
上記式(8)、(9)より、期間T
Aと期間T
Cとは下記式(10)、(11)で表すことができる。
【数7】
【0056】
以上の式(10)、(11)より、期間TBがない場合の期間TAおよび期間TCが一意に決まる。したがってこの場合でも、出力周波数パターン演算部25は、系統電圧Vgの位相θgとインバータ6の出力電圧Vの位相θとの位相差Δθを演算し、予め設定された値とΔθとを用いて上記式(10)、(11)を演算することにより、インバータ6の出力電圧Vの出力周波数パターンを決定することができる。
【0057】
出力周波数パターン演算部25は、演算した出力周波数パターンに基づいて変化する周波数の値を、インバータ周波数選択部26へ供給する。
【0058】
上記電力変換装置1において、電力系統4が正常であるときには、開閉器8および開閉器9が投入されており、主回路2が電力系統4に連系されている状態である。制御回路3は、電流検出器13からインバータ6の出力電流Iinvを取得し、外部(上位制御装置)から与えられた電流指令値に追従するように電流制御部22にて電圧指令値を演算する。このとき、自立運転判定部29にて設定される停電フラグは「0」であり自立運転フラグは「0」である。
【0059】
電力系統4で異常が発生した場合には、電力系統に設けられた開閉器8が開放されることで開閉器8より下流は停電状態となり、制御回路3は、自立運転判定部29において第2電圧検出器12で検出される系統電圧Vgの周波数fgの値が所定値(正常範囲)を外れたことを検知し、停電フラグが「1」、自立運転フラグが「1」となる。この場合、開閉指令生成部28から出力される開閉指令により開閉器9が開放される。
【0060】
電力系統4の停電時には、外部(上位制御装置)から与えられる電圧指令に追従するように電圧制御部21にて電圧指令値を演算し、インバータ電圧指令値選択部27の入力値を切り替えるとともに、出力周波数パターン演算部25の出力値(予め設定された固定の定格周波数の値)を、インバータ6の出力電圧の周波数fとする。
【0061】
電力系統4が復電したときには、第2電圧検出器12で検出される系統電圧Vgの値および系統電圧Vgの周波数fgの値が所定値(正常範囲)以内となったことにより自立運転判定部29で復電と判定される。このとき、自立運転判定部29は、停電フラグを「1」から「0」とする。出力周波数パターン演算部25は、インバータ6の出力電圧の位相θと系統電圧の位相θgとの位相差Δθを演算し、上述のようにインバータ出力周波数パターンを演算する。
【0062】
出力周波数パターン演算部25は、演算された出力周波数パターンに基づいて、インバータ周波数選択部26に供給する周波数の値を変化させる。インバータ周波数選択部26は、出力周波数パターン演算部25の出力値をインバータ6の周波数fとして出力する。このとき、外部から供給される電圧指令値に基づいて、インバータ6の出力電圧Vの実効値も、系統電圧Vgの実効値に所定の変化率で合わせておく。または、電圧指令値を系統電圧Vgの実効値に合わせて電力変換装置内で補正して制御しても良い。
【0063】
インバータ6の出力電圧Vの位相θと系統電圧Vgの位相θgとの位相差が所定値以下となったときに、自立運転判定部29で連系運転(自立運転フラグ「0」)と判定する。自立運転フラグが「0」となると、開閉指令生成部28からインバータ6側の開閉器9を投入する指令が出力される。
【0064】
電力系統4との連系運転が開始されると、電流制御部22による制御に切り替わり、インバータ電圧指令値選択部27の入力値が、電流制御部22の出力値に切り替えられる。ここで、連系運転開始時の電流指令値を零と設定しておくことで、再連系時の過電流を軽減することが可能となる。
【0065】
なお、電圧制御部21による制御と電流制御部22による制御との切り替えは、自立運転フラグの値に応じて行われてもよく、上位制御装置により入力される指令値が切り替わることにより行われてもよい。自立運転フラグの値に応じて電圧制御と電流制御とを切り替える場合には、電圧制御部21と電流制御部22とに、自立運転フラグの値が供給され得る。
【0066】
図3は、第1実施形態の電力変換装置の動作の一例を説明するためのフローチャートである。
自立運転判定部29は、電力系統4の系統電圧Vgの値および周波数fgの値を取得し(ステップSA1)、系統電圧Vgの値と周波数fgの値とが正常範囲(所定の上限値以下であって所定の下限値以上)であるかを判定し(ステップSA2)、電力系統4が正常であるか停電であるかを監視する。
【0067】
系統電圧Vgの値と周波数fgの値とが正常範囲でないとき、自立運転判定部29は停電フラグを「1」とする(ステップSA3)。
続いて、自立運転判定部29は、電力変換装置1が自立運転中であるか否か(自立運転フラグが「0」であるか「1」であるか)を判断し(ステップSA4)、自立運転中であれば自立運転フラグが「1」の状態を継続させ、電力変換装置1の自立運転を継続させる(ステップSA5)。
【0068】
電力変換装置1が連系運転中であれば、自立運転フラグを「0」から「1」に更新する(ステップSA6)。自立運転フラグが「1」となると、開閉指令生成部28は、開閉器9を開放する指令により開閉器9を開放させる(ステップSA7)。
【0069】
ステップSA2において系統電圧Vgの値と周波数fgの値とが正常範囲であるとき、自立運転判定部29は停電フラグを「0」とする(ステップSA8)。
続いて、自立運転判定部29は、電力変換装置1が連系運転中であるか否か(自立運転フラグが「0」であるか「1」であるか)を判断し(ステップSA9)、連系運転中であれば自立運転フラグが「0」の状態を継続させ、電力変換装置1の連系運転を継続させる(ステップSA10)。
【0070】
電力変換装置1が連系運転中でないとき、自立運転判定部29は、電圧正常判定の立ち上がりタイミングであるか否かを判定する(ステップSA11)。電圧正常判定の立ち上がりであるか否かは、例えば、前回の判定フローのステップSA2においても系統電圧Vgの値が正常範囲内であったか(停電フラグが「0」であったか)により判定することができる。自立運転判定部29は、例えば、前回の判定フローのステップSA2では系統電圧Vgの値が正常範囲ではないと判定され(停電フラグが「1」であり)、今回の判定フローのステップSA2の判定により停電フラグが「1」から「0」となったときに、電圧正常判定の立ち上がりであると判定する。自立運転判定部29は、例えば、前回の判定フローのステップSA2で系統電圧Vgの値が正常範囲であり(停電フラグが「0」であり)、今回の判定フローのステップSA2でも系統電圧Vgの値が正常範囲であるとき(停電フラグが「0」のままであるとき)に、電圧正常判定の立ち上がりではないと判定する。
【0071】
電圧正常判定の立ち上がりであると判定されたときに、自立運転判定部29は、電力系統4の復電立ち上がりを検知する(ステップSA12)。
停電フラグが「1」から「0」となり、自立運転フラグが「1」であるとき、出力周波数パターン演算部25は、現在(復電時)の系統電圧Vgの位相θgと、インバータ6の出力電圧Vの位相θとの位相差Δθを演算し(ステップSA13)、上述の式(1)、(3)、(6)又は式(10)、(11)を用いて、インバータ6の出力電圧Vの出力周波数パターンを生成する(ステップSA14)。
【0072】
出力周波数パターン演算部25は、生成した出力周波数パターンに沿って変化する周波数の値をインバータ周波数選択部26へ供給し、インバータ周波数選択部26からインバータ6の出力電圧の周波数fの値として出力される。したがって、インバータ6の出力電圧は、出力周波数パターン演算部25にて生成された出力周波数パターンに基づいて、周波数が変化するように制御される。
【0073】
ステップSA14の後、若しくは、ステップSA11にて電圧正常判定の立ち上がりではないと判断されたとき、自立運転判定部29は、系統電圧Vgの位相θgと、インバータ6の出力電圧Vの位相θとの位相差Δθが所定の閾値以下であるか否か判断する(ステップSA15)。
【0074】
位相θgと位相θとの位相差Δθが所定の閾値より大きい場合、自立運転判定部29は、自立運転フラグが「1」である状態を継続し、電力変換装置1の自立運転を継続させる(ステップSA16)。この場合、インバータ6の出力電圧は、出力周波数パターン演算部25にて生成された出力周波数パターンに基づいて、周波数が変化する制御が継続される(ステップSA17)。
【0075】
自立運転判定部29は、位相θgと位相θとの位相差Δθが所定の閾値よりも大きい間は、出力周波数パターンによる周波数制御を継続し、ステップSA15において、位相差Δθが所定の閾値以下と判断されたら、自立運転フラグを「1」から「0」に更新する(ステップSA18)。
【0076】
自立運転フラグが「1」から「0」になると、開閉指令生成部28は、自立運転フラグの値に基づいて開閉器9を投入する指令を生成して出力し、開閉器9が投入される(ステップSA19)。
【0077】
図4は、第1実施形態の電力変換装置の動作をシミュレーションした結果の一例を示す図である。
ここでは、電力系統4が復電したタイミングで、系統電圧Vgの位相θgとインバータ6の出力電圧Vの位相θとの位相差Δθが180°であるときに、出力周波数パターンに沿ってインバータ6の出力電圧Vの周波数fを変化させて、系統電圧Vgに同期させるシミュレーション結果の一例を示している。
【0078】
出力周波数パターン演算部25にて生成された出力周波数パターンは、期間TAにおいて周波数を定格周波数から所定の変化率ΔfUで変化させ、期間TBにおいて周波数上限値とし、期間TCにおいて所定の周波数変化率-ΔfDで周波数を変化させて、期間TC終了時T1に定格周波数とするパターンである。この出力周波数パターンに沿って、インバータ6の出力電圧Vの周波数fを変化させたところ、位相差Δθは、期間TCの終了時T2には略ゼロとなり、電力変換装置1は電力系統4と連系運転可能な状態となった。
【0079】
上記のように、本実施形態の電力変換装置1では、電力系統4が復電する際に一時停止することなく自立運転から連系運転へ切り替えることが可能であって、負荷5に対して連続的に電力を供給することが可能である。すなわち、本実施形態によれば、電力系統との連携を円滑に行い、連続的に負荷へ電力を供給可能な電力変換装置を提供することができる。
【0080】
次に、第2実施形態の電力変換装置について図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明において上述の第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0081】
本実施形態の電力変換装置1は、出力周波数パターン演算部25にて出力周波数パターンを演算する動作が上述の第1の実施形態と異なっている。
例えば、電力系統4が復電した直後は系統電圧Vgが不安定である可能性があるため、出力周波数パターンの期間TCが終了したタイミングにおいて、系統電圧Vgの位相θgとインバータ6の出力電圧Vの位相θとの位相差Δθが、所定の閾値よりも大きい場合があり得る。
【0082】
図7は、比較例の電力変換装置のシミュレーション結果の一例を示す図である。
ここでは、電力系統4が復電したタイミングで、系統電圧Vgの位相θgとインバータ6の出力電圧Vの位相θとの位相差Δθが180°であるときに、出力周波数パターンに沿ってインバータ6の出力電圧Vの周波数fを変化させて、系統電圧Vgに同期させるシミュレーション結果の一例を示している。
【0083】
出力周波数パターン演算部25にて生成された出力周波数パターンは、上述の第1実施形態と同様に、期間TAにおいて周波数を定格周波数から所定の変化率ΔfUで変化させ、期間TBにおいて周波数上限値とし、期間TCにおいて所定の周波数変化率-ΔfDで周波数を変化させて、期間TC終了時T1に定格周波数とするパターンである。この出力周波数パターンに沿って、インバータ6の出力電圧Vの周波数fを変化させたところ、位相差Δθは、期間TCの終了時T2に略ゼロとならなかった。この状態で開閉器9が投入されると、過電圧や過電流により電力変換装置1が停止する恐れがある。
【0084】
そこで、本実施形態の電力変換装置では、期間TCが終了したタイミングで、位相差Δθが所定の閾値以下か否かを判断し、位相差Δθが閾値よりも大きいときには現時点のΔθを用いて再度出力周波数パターン(第2出力周波数パターン)を生成し、生成した出力周波数パターンに沿ってインバータ6の出力電圧Vの周波数fを変化させてインバータ6の出力電圧Vの位相θを系統電圧Vgの位相θgに同期させる。
【0085】
図5Aおよび
図5Bは、第2実施形態の電力変換装置の動作の一例を説明するためのフローチャートである。
本実施形態では、電力系統4が復電したときに電力変換装置1を自立運転から連系運転に切り替えるときの動作が上述の第1実施形態と異なっている。
【0086】
図5Aおよび
図5Bに示すステップSB1-SB15は、上述の第1実施形態における
図3のステップSA1-SA15と同様である。
ステップSB14の後、若しくは、ステップSB11にて電圧正常判定の立ち上がりではないと判断されたとき、自立運転判定部29は、系統電圧Vgの位相θgと、インバータ6の出力電圧Vの位相θとの位相差Δθが所定の閾値以下であるか否か判断する(ステップSB15)。
【0087】
自立運転判定部29は、位相θgと位相θとの位相差Δθが所定の閾値よりも大きい間は、出力周波数パターンによる周波数制御を継続し、ステップSB15において、位相差Δθが所定の閾値以下と判断されたら、自立運転フラグを「1」から「0」に更新する(ステップSB16)。
【0088】
自立運転フラグが「1」から「0」になると、開閉指令生成部28は、自立運転フラグの値に基づいて開閉器9を投入する指令を生成して出力し、開閉器9が投入される(ステップSB17)。
【0089】
ステップSB15において、位相θgと位相θとの位相差Δθが所定の閾値より大きいと判断された場合、自立運転判定部29は、出力周波数パターンによる周波数制御が完了した(期間TCが終了した)か否かを更に判断する(ステップSB18)。
【0090】
出力周波数パターンによる周波数制御が完了していない(期間TCが終了していない)と判断された場合には、自立運転判定部29は、自立運転フラグが「1」である状態を継続し、電力変換装置1の自立運転を継続させる(ステップSB21)。この場合、ステップSB14において出力周波数パターン演算部25により生成された出力周波数パターンに基づいて、インバータ6の出力電圧の周波数が変化する制御が継続される(ステップSB22)。
【0091】
ステップSB18において、出力周波数パターンによる周波数制御が完了した(期間TCが終了した)と判断された場合、自立運転判定部29は出力周波数パターン演算部25に対して出力周波数パターン(第2出力周波数パターン)を生成させる。出力周波数パターン演算部25は、現在の系統電圧Vgの位相θgと、インバータ6の出力電圧Vの位相θとの位相差Δθを演算し(ステップSB19)、上述の式(1)、(3)、(6)又は式(10)、(11)を用いて、インバータ6の出力電圧Vの出力周波数パターンを生成する(ステップSB20)。
【0092】
出力周波数パターン演算部25は、再度生成した出力周波数パターン(第2出力周波数パターン)に沿って変化する周波数の値をインバータ周波数選択部26へ供給し、インバータ周波数選択部26からインバータ6の出力電圧の周波数fの値として出力される。したがって、インバータ6の出力電圧は、出力周波数パターン演算部25にて生成された出力周波数パターンに基づいて、周波数が変化するように制御される。
【0093】
ステップSB20の後、自立運転判定部29は、自立運転フラグが「1」である状態を継続し、電力変換装置1の自立運転を継続させる(ステップSB21)。この場合、ステップSB20において出力周波数パターン演算部25により生成された出力周波数パターンに基づいて、インバータ6の出力電圧の周波数が変化する制御が継続される(ステップSB22)。
【0094】
図6は、第2実施形態の電力変換装置の動作をシミュレーションした結果の一例を示す図である。
ここでは、電力系統4が復電したタイミングで、系統電圧Vgの位相θgとインバータ6の出力電圧Vの位相θとの位相差Δθが180°であるときに、出力周波数パターンに沿ってインバータ6の出力電圧Vの周波数fを変化させて、系統電圧Vgに同期させるシミュレーション結果の他の例を示している。
【0095】
出力周波数パターン演算部25にて生成された出力周波数パターンは、期間TAにおいて周波数を定格周波数から所定の変化率ΔfUで変化させ、期間TBにおいて周波数上限値とし、期間TCにおいて所定の周波数変化率-ΔfDで周波数を変化させて、期間TC終了時T1に定格周波数とするパターンである。この出力周波数パターンに沿って、インバータ6の出力電圧Vの周波数fを変化させたところ、位相差Δθは、期間TCの終了時T2には所定の閾値よりも大きい値となった。
【0096】
この場合、出力周波数パターン演算部25は、期間TCの終了時点における系統電圧Vgの位相θgとインバータ6の出力電圧Vの位相θとの位相差Δθを演算し、演算した位相差Δθを用いて出力周波数パターンを生成する。出力周波数パターン演算部25が2回目に生成した出力周波数パターンは、周波数が上限値となる期間を含まず、期間TA´において周波数を定格周波数から所定の変化率ΔfUで変化させ、期間TC´において所定の周波数変化率-ΔfDで周波数を変化させて、期間TC´終了時T3に定格周波数とするパターンである。
【0097】
この2回目に生成された出力周波数パターンに沿って、インバータ6の出力電圧Vの周波数fを変化させたところ、位相差Δθは、期間TC´の終了時T4には略ゼロとなり、電力変換装置1は電力系統4と連系運転可能な状態となった。
【0098】
上記のように、本実施形態の電力変換装置1では、電力系統4が復電する際に一時停止することなく自立運転から連系運転へ切り替えることが可能であって、負荷5に対して連続的に電力を供給することが可能である。また、例えば電力系統4が復電後に不安定な状態となった場合であっても、電力系統との連携を円滑に行うことが可能である。すなわち、本実施形態によれば、電力系統との連携を円滑に行い、連続的に負荷へ電力を供給可能な電力変換装置を提供することができる。
【0099】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0100】
1…電力変換装置、2…主回路、3…制御回路、4…電力系統、5…負荷、6…インバータ、7…電源、8…開閉器、9…開閉器、11…電圧検出器、12…電圧検出器、13…電流検出器、23…第1周波数演算部、24…第2周波数演算部、25…出力周波数パターン演算部、26…インバータ周波数選択部、27…インバータ電圧指令値選択部、28…開閉指令生成部、29…自立運転判定部、30…第1位相演算部、31…第2位相演算部、32…変調波/ゲート信号生成部