(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】水中油型乳化組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/29 20060101AFI20231120BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20231120BHJP
A61K 8/891 20060101ALI20231120BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20231120BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20231120BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20231120BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
A61K8/29
A61K8/37
A61K8/891
A61K8/36
A61K8/34
A61K8/06
A61Q1/00
(21)【出願番号】P 2020046860
(22)【出願日】2020-03-17
【審査請求日】2022-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】田辺 勇輝
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-197485(JP,A)
【文献】特開2007-262032(JP,A)
【文献】特開2002-179521(JP,A)
【文献】特開2010-248120(JP,A)
【文献】特開2009-242321(JP,A)
【文献】特開平08-245363(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
C09K 23/00-23/56
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)、下記成分(B)、及び下記成分(C)を含有し、前記成分(C)中の水の割合が5.0~100質量%である水中油型乳化組成物。
成分(A):雲母チタン
成分(B):下記成分(B1)
、下記成分(B2)、
及び下記成分(B3)を少なくとも含む、炭化水素油、エステル油、シリコーン油、植物油、及び脂肪酸からなる群より選択される油性成分
成分(B1):エステル油及び/又はメチルフェニルポリシロキサン
成分(B2):炭素数12~18の脂肪酸
成分(B3):シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコール
成分(C):水、又は、水及びエタノール
【請求項2】
前記成分(B3)と前記成分(A)の質量比[成分(B3)/成分(A)]が0.04~8.0である請求項
1に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項3】
界面活性剤の含有割合が0.3質量%以下である請求項1又は2に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項4】
下記成分(A)、下記成分(B)、及び下記成分(C)を含有し、前記成分(C)中の水の割合が5.0~100質量%であり、界面活性剤の含有割合が0.3質量%以下である水中油型乳化組成物。
成分(A):雲母チタン
成分(B):下記成分(B1)及び下記成分(B2)を少なくとも含む、炭化水素油、エステル油、シリコーン油、植物油、及び脂肪酸からなる群より選択される油性成分
成分(B1):エステル油及び/又はメチルフェニルポリシロキサン
成分(B2):炭素数12~18の脂肪酸
成分(C):水、又は、水及びエタノール
【請求項5】
前記成分(B2)と前記成分(A)の質量比[成分(B2)/成分(A)]が0.04~15.0である請求項1~
4のいずれか1項に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項6】
前記成分(B)中の前記成分(B1)の割合が10.0~95.0質量%である請求項1~
5のいずれか1項に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項7】
前記成分(A)と前記成分(B)の質量比[成分(A)/成分(B)]が0.03~5.0である請求項1~
6のいずれか1項に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項8】
前記成分(B)の含有割合が0.1~70.0質量%である請求項1~
7のいずれか1項に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項9】
前記成分(C)の含有割合が5.0~95.0質量%である請求項1~
8のいずれか1項に記載の水中油型乳化組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
界面活性剤を必要としないエマルションとして、粉体を用いたピッカリングエマルションが知られている。従来、水中油型のピッカリングエマルションを形成するためには、粉体の油相及び水相への濡れ性の観点から、比較的親水性が高い粉体が使用されることが一般的であった。例えば、粉体としてシリカ被覆酸化亜鉛等を用いた水中油型エマルションが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
一方、雲母チタンは、光輝性顔料、いわゆるパール顔料として、ファンデーション、アイメイクなどの化粧料に幅広く用いられている。例えば、雲母チタンを顔用化粧料に配合することで、顔の肌色を明るくし、見た目の印象を改善することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者は、雲母チタンは、水相との濡れ性が高すぎ、油相との濡れ性が低すぎることに起因すると考えられるが、従来のピッカリングエマルション組成において、粉体として単に雲母チタンを使用したのみでは、安定的に水中油型のピッカリングエマルションを形成することが困難であることを見出した。
【0006】
従って、本発明の目的は、雲母チタンを粉体として配合した、安定な水中油型のピッカリングエマルションを形成可能な水中油型乳化組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、雲母チタンを粉体として配合した場合において、二種の特定の油性成分を用いることによって、安定な水中油型のピッカリングエマルションを形成可能な水中油型乳化組成物が得られることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0008】
すなわち、本発明は、下記成分(A)、下記成分(B)、及び下記成分(C)を含有し、上記成分(C)中の水の割合が5.0~100質量%である水中油型乳化組成物を提供する。
成分(A):雲母チタン
成分(B):下記成分(B1)及び下記成分(B2)を少なくとも含む、炭化水素油、エステル油、シリコーン油、植物油、及び脂肪酸からなる群より選択される油性成分
成分(B1):エステル油及び/又はメチルフェニルポリシロキサン
成分(B2):炭素数12~18の脂肪酸
成分(C):水、又は、水及びエタノール
【0009】
上記成分(B)は、さらに下記成分(B3)を含むことが好ましい。
成分(B3):シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコール
【0010】
上記成分(B3)と上記成分(A)の質量比[成分(B3)/成分(A)]は0.04~8.0であることが好ましい。
【0011】
上記成分(B2)と上記成分(A)の質量比[成分(B2)/成分(A)]は0.04~15.0であることが好ましい。
【0012】
上記成分(B)中の上記成分(B1)の割合は10.0~95.0質量%であることが好ましい。
【0013】
上記成分(A)と上記成分(B)の質量比[成分(A)/成分(B)]は0.03~5.0であることが好ましい。
【0014】
上記成分(B)の含有割合は0.1~70.0質量%であることが好ましい。
【0015】
上記成分(C)の含有割合は5.0~95.0質量%であることが好ましい。
【0016】
上記水中油型乳化組成物中の界面活性剤の含有割合は0.3質量%以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の水中油型乳化組成物によれば、粉体として雲母チタンを配合した、安定な水中油型のピッカリングエマルションが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の水中油型乳化組成物は、雲母チタンと、エステル油及び/又はメチルフェニルポリシロキサン、並びに炭素数12~18の脂肪酸を少なくとも含む、炭化水素油、エステル油、シリコーン油、植物油、及び脂肪酸からなる群より選択される油性成分と、水を少なくとも含む。また、本発明の水中油型乳化組成物は、エタノールを含んでいてもよい。
【0019】
なお、本明細書において、雲母チタンを「成分(A)」と称する場合がある。また、エステル油及び/又はメチルフェニルポリシロキサンを「成分(B1)」、炭素数12~18の脂肪酸を「成分(B2)」とそれぞれ称する場合がある。そして、上記成分(B1)及び上記成分(B2)を少なくとも含む、炭化水素油、エステル油、シリコーン油、植物油、及び脂肪酸からなる群より選択される油性成分を「成分(B)」と称する場合がある。また、本発明の水中油型乳化組成物がエタノールを含まない場合は水を、本発明の水中油型乳化組成物がエタノールを含む場合は水及びエタノールを、「成分(C)」と称する場合がある。
【0020】
本発明の水中油型乳化組成物は、上記成分(B)として、さらにシクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコールを含むことが好ましい。なお、本明細書において、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコールを「成分(B3)」と称する場合がある。
【0021】
すなわち、本発明の水中油型乳化組成物は、成分(A)、成分(B)、及び成分(C)を少なくとも含む。また、成分(B)は、成分(B1)及び成分(B2)を少なくとも含み、成分(B3)を含むことが好ましい。本発明の水中油型乳化組成物は、上記成分(A)~(C)以外の成分を含んでいてもよい。また、本発明の水中油型乳化組成物に含まれる各成分、例えば、成分(A)、成分(B1)、成分(B2)、成分(C)、及び他の成分などの各成分は、それぞれ、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0022】
本発明の水中油型乳化組成物は、ピッカリングエマルションである、水中油型(O/W型)エマルション層を少なくとも有する。本発明の水中油型乳化組成物は、上記O/W型エマルション層とそれ以外の層を有していてもよい。上記それ以外の層としては、例えば、O/Wエマルションのマトリックスである水相がO/Wエマルション相との比重差によって、分離したものなどが挙げられる。
【0023】
[成分(A)]
成分(A)は、雲母チタンである。雲母チタンは、天然の雲母(マイカ)粒子の表面が酸化チタン(主として二酸化チタン)によって被覆されている。成分(A)は、例えば、表面処理が施されていない雲母チタンが挙げられる。成分(A)は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0024】
成分(A)の市販品としては、商品名「Ronaflair Extender W」、商品名「Bronze Fine」、商品名「Colorona Bronze」、商品名「Bronze Fine」、商品名「Bronze Sparkle」、商品名「Copper」、商品名「Sienna」(以上、メルク社製)などが挙げられる。
【0025】
本発明の水中油型乳化組成物中の成分(A)の含有割合は、特に限定されないが、本発明の水中油型乳化組成物100質量%に対して、0.1~10.0質量%が好ましく、より好ましくは0.5~8.0質量%、さらに好ましくは1.0~6.0質量%である。上記下限以上とすることにより、成分(A)による顔の肌色を明るくする効果がより一層高くなり、上記上限以下とすることにより、成分(A)による軋み感がより一層低減される。
【0026】
成分(A)と成分(B)の質量比[成分(A)/成分(B)]は、特に限定されないが、0.03~5.0であることが好ましく、より好ましくは0.05~4.0である。上記質量比が上記範囲内であると、O/W型のピッカリングエマルションをより安定的に形成することができる。
【0027】
[成分(B)]
成分(B)は、炭化水素油、エステル油、シリコーン油、植物油、及び脂肪酸からなる群より選択される油性成分である。成分(B)は、エステル油及び/又はメチルフェニルポリシロキサン[成分(B1)]及び炭素数12~18の脂肪酸[成分(B2)]を少なくとも含む。上述のように、成分(B)は、さらにシクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコール[成分(B3)]を含むことが好ましい。成分(B)は、成分(B1)~(B3)のみから構成されていてもよいし、成分(B1)~(B3)に加えてその他の成分(B)を含んでいてもよい。成分(B1)~(B3)以外の成分(B)は、配合されていなくてもよいし、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0028】
成分(B)は、エマルションにおける油相を形成する。成分(B2)は成分(A)の表面改質剤として作用すると推定され、また油性成分の極性を高める。これにより、粉体として成分(A)を用いたO/W型のピッカリングエマルションを安定的に形成することができるものと推測される。また、成分(B3)も、成分(B2)と同様に、成分(A)の表面改質剤として作用すると推定され、また油性成分の極性を高める。このため、成分(B2)と成分(B3)の相乗効果により、粉体として成分(A)を用いたO/W型のピッカリングエマルションをより安定なものとすることができる。特にピッカリングエマルションの油水界面への成分(A)の付着率が著しく向上する。
一方、成分(B1)は極性油であり、成分(B2)や成分(B3)との親和性が高いため、成分(B2)や成分(B3)との相溶性に優れ、また成分(B2)が固形である場合は成分(B2)の溶解性に優れ、油相の分離が抑制される。これにより、粉体として成分(A)を用いたO/W型のピッカリングエマルションを安定的に形成することができるものと推測される。
【0029】
上記炭化水素油としては、例えば、α-オレフィンオリゴマー、ワセリン、イソパラフィン、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、スクワラン、合成スクワラン、植物性スクワラン、流動イソパラフィン、流動パラフィン、水添ポリイソブテン、水添(テトラデセニル/メチルペンタデセン)、イソドデカンなどが挙げられる。
【0030】
成分(B1)に該当する上記エステル油としては、例えば、オクタン酸セチル、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸プロピレングリコール、2-エチルヘキサン酸セチル、2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、イソノナン酸イソノニル、アジピン酸イソプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジエチルヘキシル、テトラオクタン酸ペンタエリスリチル、テトライソステアリン酸ペンタエリトリット、リンゴ酸ジイソステアリル、トリエチルヘキサン酸エリスリチル、ヒドロキシステアリン酸2-エチルヘキシル、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、テトラ(ヒドロキシステアリン酸/イソステアリン酸)ジペンタエリスリチル、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、(エチルヘキサン酸/ステアリン酸/アジピン酸)グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸/ミリスチン酸/ステアリン酸)グリセリル、ヘキサ(ベヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ジペンタエリスリチル、安息香酸アルキル(C12-15)などが挙げられる。
【0031】
上記シリコーン油としては、例えば、メチルポリシロキサン(ジメチコン)、高重合メチルポリシロキサンなどのジメチルシリコーン油;メチルフェニルポリシロキサン(成分(B1)に該当)などのメチルフェニルシリコーン油;メチルシクロポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンなどの環状シリコーン油;アミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体などのアミノ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、脂肪酸変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、脂肪族アルコール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、アルキル変性シリコーンなどの変性シリコーン;メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチコノールなどが挙げられる。
【0032】
上記植物油としては、例えば、マカデミアナッツ油、ユーカリ油、ヤシ油、アボカド油、サフラワー油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、ククイナッツ油、シア脂(シアバター)、カカオバター、アーモンド油、ヒマワリ油、ローズヒップ油、オリーブスクワラン、カメリアオイル、キウイフルーツシード油、ツバキ油、杏仁油、ゴマ油、大豆油、ホホバ油、ヒマシ油、ヘーゼルナッツ油、メドホーム油、ハッカ油、アルガンオイル、カロットオイル、ラベンダー油、シュガースクワラン、ダマスクバラ花ロウ、センチフォリアバラ花ロウ、ソケイ花ワックス、これらの水素添加物(例えば、水素添加ヒマシ油、水素添加ホホバ油、水素添加パーム油、水素添加アボカド油、水素添加大豆油等)などが挙げられる。
【0033】
上記脂肪酸としては、例えば、炭素数が12~22(より好ましくは12~18、さらに好ましくは16~18)の脂肪酸が好ましく、例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、ラウリン酸、ラノリン酸、ベヘニン酸、リノール酸、オレイン酸などが挙げられる。
【0034】
成分(B2)としては、25℃で流動性を有するもの及びラウリン酸が好ましく、より好ましくはラウリン酸、イソステアリン酸、リノール酸、オレイン酸、さらに好ましくはラウリン酸である。25℃で流動性を有するもの及びラウリン酸は、成分(B1)との相溶性により優れ、成分(B2)を用いることの効果をより発揮しやすく、また油相の分離がより生じにくい。成分(B2)は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0035】
成分(B)中の成分(B1)の割合は、特に限定されないが、成分(B)100質量%に対して、10.0~95.0質量%が好ましく、より好ましくは10.0~90.0質量%、さらに好ましくは20.0~80.0質量%である。上記割合が上記範囲内であると、成分(B2)や成分(B3)との親和性が高くなり、より安定的にO/W型のピッカリングエマルションを形成できる。
【0036】
成分(B2)と成分(A)の質量比[成分(B2)/成分(A)]は、特に限定されないが、0.04以上であることが好ましく、より好ましくは0.07以上である。また、上記質量比は、15.0以下であることが好ましく、より好ましくは5.0以下、さらに好ましくは1.0以下である。上記質量比が0.04以上であると、成分(B2)による成分(A)の表面改質の効果がより一層高くなるためと推定されるが、成分(A)を用いたO/W型のピッカリングエマルションをより安定的に形成することができる。また、上記質量比が15.0以下であると、成分(B2)による油性成分の極性をある程度の高さに調節できるためと推定されるが、成分(A)を用いたO/W型のピッカリングエマルションをより安定的に形成することができる。
【0037】
成分(B3)と成分(A)の質量比[成分(B3)/成分(A)]は、特に限定されないが、0.04以上であることが好ましく、より好ましくは0.07以上である。また、上記質量比は、8.0以下であることが好ましく、より好ましくは5.0以下、さらに好ましくは1.0以下である。上記質量比が0.04以上であると、成分(B3)による成分(A)の表面改質の効果がより一層高くなるためと推定されるが、成分(A)を用いたO/W型のピッカリングエマルションをより安定的に形成することができる。また、上記質量比が8.0以下であると、成分(B3)による油性成分の極性をある程度の高さに調節できるためと推定されるが、成分(A)を用いたO/W型のピッカリングエマルションをより安定的に形成することができる。
【0038】
成分(B)中の成分(B2)の割合は、特に限定されないが、成分(B)100質量%に対して、4.0~90.0質量%が好ましく、より好ましくは5.0~80.0質量%である。上記割合が上記範囲内であると、より安定的にO/W型のピッカリングエマルションを形成できる。
【0039】
本発明の水中油型乳化組成物中の成分(B)の含有割合は、特に限定されないが、本発明の水中油型乳化組成物100質量%に対して、0.1~70.0質量%が好ましく、より好ましくは0.5~60.0質量%である。上記含有割合が上記範囲内であると、より安定的にO/W型のピッカリングエマルションを形成できる。
【0040】
[成分(C)]
成分(C)は水、又は、水及びエタノールである。言い換えると、本発明の水中油型乳化組成物がエタノールを含まない場合の成分(C)は水であり、本発明の水中油型乳化組成物がエタノールを含む場合の成分(C)は水及びエタノールである。水は、特に限定されないが、精製水が好ましい。
【0041】
成分(C)は、本発明の水中油型乳化組成物におけるO/W型のピッカリングエマルションの水相(マトリックス)を形成する成分である。エタノールは、水に可溶であり水と共に水相を形成する。さらに、本発明の水中油型乳化組成物に防腐性や塗布後の速乾性を付与する。
【0042】
成分(C)中の水の割合は、成分(C)100質量%に対して、5.0~100質量%であり、使用感や低刺激性の観点から、好ましくは20.0~100質量%、より好ましくは60.0~100質量%である。水相中のエタノールが多すぎる場合には、O/W型のピッカリングエマルションを形成しない。
【0043】
本発明の水中油型乳化組成物中の成分(C)の含有割合は、特に限定されないが、本発明の水中油型乳化組成物100質量%に対して、5.0~95.0質量%が好ましく、より好ましくは10.0~90.0質量%、さらに好ましくは30.0~80.0質量%である。上記含有割合が上記範囲内であると、より安定的にO/W型のピッカリングエマルションを形成できる。
【0044】
本発明の水中油型乳化組成物は、さらに、電解質を含んでいてもよい。成分(A)は組成物中の電解質の影響を受けにくい。このため、本発明の水中油型乳化組成物は、電解質を比較的高い濃度で配合することができる。また、電解質により、成分(A)の負電荷が中和され正電荷のみが残ることで、成分(A)の油水界面への吸着が促進されると推定される。
【0045】
上記電解質としては、例えば、金属塩(例えば、一価の金属塩、二価以上の多価金属塩等)などが挙げられる。上記金属塩は、無機塩であってもよいし、有機塩であってもよい。上記金属塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、アンモニウム塩、アルミニウム塩などが挙げられる。上記電解質としては、具体的には、パラフェノールスルホン酸亜鉛、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、ミョウバン、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、塩化アンモニウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム(クエン酸三ナトリウム)、エデト酸二ナトリウム、硫酸アルミニウムカリウム、乳酸ナトリウム、乳酸マグネシウムなどが挙げられる。また、塩化ベンザルコニウム、クロルヒドロキシアルミニウムも挙げられる。上記電解質は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0046】
本発明の水中油型乳化組成物中の電解質の含有割合は、特に限定されないが、本発明の水中油型乳化組成物100質量%に対して、例えば、0.1質量%以上であってもよく、1.0質量%以上であってもよい。また、上記含有割合は、本発明の水中油型乳化組成物100質量%に対して、15.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは10.0質量%以下である。
【0047】
本発明の水中油型乳化組成物は、ピッカリングエマルションの安定性の観点から、界面活性剤を少量しか含まない又は実質的に含まないことが好ましい。本発明の水中油型乳化組成物中の界面活性剤の含有割合は、特に限定されないが、本発明の水中油型乳化組成物100質量%に対して、0.3質量%以下(例えば、0~0.3質量%)が好ましく、より好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0.01質量%以下、特に好ましくは0質量%である。上記含有割合が0.3質量%以下であると、形成されたO/W型のピッカリングエマルションがより安定的に存在することができる。また、本発明の水中油型乳化組成物を化粧料組成物として使用する場合、塗布時のべたつき、ぬるつき、皮膚への刺激を抑制することができる。
【0048】
上記界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、及びこれらのアルキレンオキシド付加物、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェノール、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルホルムアルデヒド縮合物、ポリオキシエチレンステロール及びその誘導体、ポリオキシエチレンラノリン及びその誘導体、ポリオキシエチレンミツロウ誘導体、シュガーエステル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油などが挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸石鹸、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルエーテルリン酸エステル、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシルメチルタウリン塩、N-アシル-N-メチル-β-アラニン塩、N-アシルグリシン塩、N-アシルグルタミン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルカルボン酸塩、アルキルフェニルエーテルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸及びその塩、N-アシルサルコシン及びその塩、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸塩などが挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、脂肪酸アミドアミン塩、エステル含有第3級アミン塩などのアミン塩、モノアルキル型第4級アンモニウム塩、ジアルキル型第4級アンモニウム塩、トリアルキル型第4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム型第4級アンモニウム塩などのアルキル第4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩などの環式第4級アンモニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどが挙げられる。両性界面活性剤としては、アルキルグリシン塩、カルボキシメチルグリシン塩、N-アシルアミノエチル-N-2-ヒドロキシエチルグリシン塩などのグリシン型両性界面活性剤、アルキルアミノプロピオン酸塩、アルキルイミノジプロピオン酸塩などのアミノプロピオン酸型両性界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインなどのアミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤、アルキルヒドロキシスルホベタインなどのスルホベタイン型両性界面活性剤などが挙げられる。
【0049】
本発明の水中油型乳化組成物は、多価アルコールを含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。上記多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-デカンジオール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリンなどが挙げられる。本発明の水中油型乳化組成物中の多価アルコールの含有割合は、ピッカリングエマルションの安定性の観点から、本発明の水中油型乳化組成物100質量%に対して、60.0質量%以下(例えば、0~60.0質量%)が好ましい。
【0050】
[その他の成分]
本発明の水中油型乳化組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲内で、上述の各成分以外の成分(その他の成分)を含んでいてもよい。上記その他の成分しては、特に限定されないが、例えば、エタノール以外の低級アルコール;ロウなどの成分(B)以外の油性成分;ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キサンタンガムなどの増粘剤;保湿剤;殺菌剤;成分(A)以外のパール化剤;グリチルリチン酸及びその塩などの抗炎症剤;メントールなどの清涼剤;リン酸及びその塩類、クエン酸及びその塩類、乳酸及びその塩類、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミンなどのpH調整剤;香料;紫外線吸収剤;酸化防止剤;金属イオン封鎖剤(キレート剤);ポリビニルピロリドンなどの皮膜形成性高分子化合物;色素;顔料;ビタミン類;アミノ酸類;収斂剤;美白剤;動植物抽出物;酸;アルカリなどが挙げられる。
【0051】
本発明の水中油型乳化組成物の用途としては、特に限定されないが、皮膚化粧料が好ましく、例えば、デオドラント剤、サンスクリーン、メイクアップ化粧料(化粧下地、ファンデーション)、スキンケア化粧料(保湿化粧料、美白化粧料、アクネケア用化粧料、アンチエージング化粧料(しわ抑制、たるみ抑制などを目的とする化粧料)など)などが挙げられる。また、本発明の水中油型乳化組成物は、化粧品、医薬部外品、医薬品、雑貨の何れの形態であってもよい。
【0052】
本発明の水中油型乳化組成物を適用する部位は、特に限定されない。一例として、上記組成物の適用部位は、顔(額、目元、目じり、頬、口元など)、腕、肘、手の甲、指先、足、膝、かかと、首、脇、背中などである。
【0053】
本発明の水中油型乳化組成物の剤型としては、例えば、乳液、ジェル、クリームなどが挙げられる。
【0054】
本発明の水中油型乳化組成物は、エタノールを配合する系においても、安定的にO/W型のピッカリングエマルション層を形成し得る。このため、例えば、エタノールの配合により、優れた速乾性や防腐性の効果を得ることができる。本発明の水中油型乳化組成物は、エマルションの形成に界面活性剤を必要としないため、界面活性剤によるべたつきの抑制効果を得ることができる。さらに、雲母チタンは、組成物中の電解質の影響を受けにくい。このため、組成物中に、制汗剤や乳酸ナトリウムなどの電解質や、角質柔軟剤やピーリング剤として用いられるα-ヒドロキシ酸(フルーツ酸等)などの酸を配合することができる。
【0055】
本発明の水中油型乳化組成物は、安定なO/W型のピッカリングエマルション層を有するため、化粧料組成物として用いることが好ましい。化粧料組成物として用いた場合、特に限定されないが、下記の効果などを発揮することもできる。例えば、本発明の水中油型乳化組成物である化粧料組成物は、界面活性剤層を有する化粧料や油中水型のエマルションを有するものとは異なり、油分のべたつきを粉体でマスキングでき、塗布時のべたつきやぬるつきを抑制することができる。また、成分(A)を用いることにより、肌色の明るさ向上、見た目の印象の向上など、パール化剤を用いた公知の効果が得られる。また、乳化剤を使用しないため、本発明の水中油型乳化組成物を化粧料として肌や毛髪に使用した場合、肌や毛髪上で汗などの水分により再乳化して流れ落ちにくく、持続性(所謂、化粧もち)に優れる。
【0056】
本発明の水中油型乳化組成物は、特に限定されず、公知乃至慣用の方法により製造することができる。例えば、上記各成分を混合し、ホモミキサー、パドルミキサーなどで攪拌して製造することができる。
【実施例】
【0057】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。なお、表に記載の配合量は、各成分の配合量(すなわち、各原料中の有効成分の配合量。所謂純分)であり、特記しない限り「質量%」で表す。
【0058】
実施例1~43、比較例1~13
表に記した各成分(成分(A)~(C)など)を用い、実施例及び比較例の各組成物を常法により調製した。
【0059】
表に記載の主な成分は、以下の通りである。
【0060】
<成分(A)>
雲母チタン:商品名「Ronaflair Extender W」、メルク社製
<成分(B1)>
メチルフェニルポリシロキサン:商品名「KF-56A」、信越化学工業株式会社製
<成分(B3)>
シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコール:商品名「Neosolue-Aqulio」、日本精化株式会社製
<その他の成分(B)>
流動パラフィン:商品名「CARNATION」、Sonneborn社製
メチルポリシロキサン:商品名「DOWDIL SH200 Fluid 10cSt」、ダウ・東レ株式会社製
【0061】
(評価)
実施例及び比較例で得られた各組成物について以下の通り評価した。評価結果は表に記載した。
【0062】
(1)エマルション形成性
実施例及び比較例で得られた各組成物を24時間放置した後、性状を目視及び微分干渉顕微鏡(倍率100倍)にて観察し、エマルション形成状態を以下の基準で判定した。
[エマルション形成性の判定基準]
◎(優良):O/W型エマルション層が形成されており、エマルション粒子表面全体に粉体が密に覆っている。なおかつ、油相の分離が見られない。
○(良好):O/W型エマルション層が形成されており、エマルション粒子表面全体に粉体が均一に吸着しているものの、エマルション粒子表面全体に粉体が密には覆っていない。なおかつ、油相の分離が見られない。
×(不良):O/W型エマルション層が形成されておらず、水相、油相、粉体が完全に分離している。
×※(不良):O/W型エマルション層が形成されているものの、油相の分離が見られる。
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
本発明の水中油型乳化組成物(実施例)は、目視でO/W型エマルション層の形成を確認でき、そして顕微鏡(倍率100倍)で観察したところ、エマルション粒子表面全体に粉体が均一に覆っており、O/W型エマルション層の安定性に優れていた。中でも、成分(B2)としてラウリン酸を用いた場合(実施例2,6,及び10)、及び成分(B3)を配合した場合(実施例21~28及び33~43)、エマルション粒子表面全体に粉体が均一に且つ密に覆っており、O/W型エマルション層の安定性に極めて優れていた。一方、成分(B2)を用いなかった場合(比較例1~8)、成分(B1)を用いなかった場合(比較例9)、成分(C)として水を配合しなかった場合(比較例12)、及び成分(C)を配合しなかった場合(比較例13)のいずれも、O/W型エマルション層の形成は確認できなかった。また、成分(B1)の代わりにその他の成分(B)を用いた場合(比較例10及び11)、その他の成分(B)と成分(B2)の相溶性が悪く、油相の分離が確認された。
【0071】
さらに、以下に、本発明の水中油型乳化組成物の処方例を示す。
[化粧下地(乳液状)]
イソペンチルジオール 2.0質量%
シリカ 1.0質量%
ポリアクリレーツクロスポリマー-6 0.5質量%
クエン酸 0.01質量%
クエン酸Na 0.1質量%
雲母チタン 5.0質量%
2-エチルヘキサン酸グリセリル 1.0質量%
イソステアリン酸 0.5質量%
シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコール
0.5質量%
ジプロピレングリコール 13.0質量%
ビスPEG-18メチルエーテルジメチルシラン 0.5質量%
精製水 残 部
合計 100.0質量%