(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】超音波自動スキャンシステム、超音波診断装置、超音波スキャン支援装置
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20231120BHJP
【FI】
A61B8/14
(21)【出願番号】P 2020048967
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2023-01-13
(31)【優先権主張番号】P 2019050609
(32)【優先日】2019-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 祐介
(72)【発明者】
【氏名】岡田 健吾
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-186555(JP,A)
【文献】特開2012-235850(JP,A)
【文献】特開2008-289732(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0216648(US,A1)
【文献】特開平08-117233(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
A61B 34/00 - 34/37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を送受信する少なくとも1つの超音波プローブと、
前記超音波プローブを保持し、当該超音波プローブにおける超音波の送受信面を被検体に向けた状態で前記超音波プローブを移動させるメカ機構と、
前記超音波プローブによって送受信された超音波に基づいて、前記被検体の体表に沿った第1のスキャン位置及び第2のスキャン位置における前記被検体の体表面と前記超音波プローブの送受信面との距離情報をそれぞれ検出する検出部と、
前記距離情報に基づいて、前記超音波プローブを移動させるように前記メカ機構を制御する制御部と、
前記第1のスキャン位置及び前記第2のスキャン位置において前記メカ機構によって移動された前記超音波プローブによる前記被検体の超音波スキャンを制御するスキャン制御部と、
を備え、
前記検出部は、前記第1のスキャン位置において、前記第1のスキャン位置及び前記第2のスキャン位置における前記被検体の体表面と前記超音波プローブにおける送受信面との距離情報をそれぞれ検出し、
前記制御部は、
前記検出部による検出結果に基づいて、前記第1のスキャン位置で
の超音波スキャン
と前記第2のスキャン位置
での超音波スキャンとが実行されるように前記メカ機構をさらに制御する、超音波自動スキャンシステム。
【請求項2】
前記検出部は、
前記第1のスキャン位置に移動された後に送受信された超音波に基づいて、当該
第1のスキャン位置における前記被検体の体表面と前記超音波プローブにおける送受信面との距離情報を検出し、
前記制御部は、前記
第1のスキャン位置における前記被検体の体表面と前記送受信面との距離が前記距離情報に基づく距離となるように、前記超音波プローブを移動させ、
前記スキャン制御部は、前記
第1のスキャン位置において移動後の前記超音波プローブによる前記被検体の超音波スキャンを制御する、請求項1に記載の超音波自動スキャンシステム。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1のスキャン位置における超音波スキャンが実行された後に、前記第
2のスキャン位置に前記超音波プローブを移動させるとともに、前記第
2のスキャン位置における前記被検体の体表面と前記送受信面との距離が前記第
2のスキャン位置における距離情報に基づく距離となるように、前記超音波プローブを移動させ、
前記スキャン制御部は、前記第
2のスキャン位置における超音波スキャンを制御する、請求項1に記載の超音波自動スキャンシステム。
【請求項4】
前記スキャン制御部は、超音波の送受信方向を変化させる偏向走査によって、前記第1のスキャン位置から前記第
2のスキャン位置の体表面を走査し、
前記検出部は、前記偏向走査によって取得された超音波に基づいて、前記第
2のスキャン位置における前記被検体の体表面と前記超音波プローブにおける送受信面との距離情報を検出する、請求項3に記載の超音波自動スキャンシステム。
【請求項5】
前記被検体の体表に対する前記超音波プローブの位置は、前記超音波の焦点が関心領域内に収まる位置となるように、前記距離情報から導出される、請求項1~4のいずれか1つに記載の超音波自動スキャンシステム。
【請求項6】
前記超音波プローブは、第1の超音波プローブと第2の超音波プローブとを含み、
前記検出部は、前記第1の超音波プローブによって送受信された超音波に基づいて、前記被検体の体表面と前記超音波プローブの送受信面との距離情報を検出し、
前記スキャン制御部は、前記第2の超音波プローブによる超音波の送受信を制御することで、前記被検体の超音波スキャンを制御する、請求項1~5のいずれか1つに記載の超音波自動スキャンシステム。
【請求項7】
前記第1の超音波プローブと前記第2の超音波プローブは、同一筐体内に含まれ、前記メカ機構に保持される、請求項6に記載の超音波自動スキャンシステム。
【請求項8】
前記第1の超音波プローブと前記第2の超音波プローブは、異なる筐体内に含まれ、前記メカ機構にそれぞれ保持される、請求項6に記載の超音波自動スキャンシステム。
【請求項9】
前記被検体の体表に沿った複数のスキャン位置間の距離は、2mm以下である、請求項1~8のいずれか1つに記載の超音波自動スキャンシステム。
【請求項10】
超音波を送受信する少なくとも1つの超音波プローブと、
前記超音波プローブを保持し、当該超音波プローブにおける超音波の送受信面を被検体に向けた状態で前記超音波プローブを移動させるメカ機構によって移動される超音波プローブによって送受信された超音波に基づいて、前記被検体の体表に沿った第1のスキャン位置及び第2のスキャン位置における前記被検体の体表面と前記超音波プローブにおける送受信面との距離情報をそれぞれ検出する検出部と、
前記距離情報に基づいて、前記超音波プローブを移動させるように前記メカ機構を制御する制御部と、
前記第1のスキャン位置及び前記第2のスキャン位置において前記メカ機構によって移動された前記超音波プローブによる前記被検体の超音波スキャンを制御するスキャン制御部と、
を備え、
前記検出部は、前記第1のスキャン位置において、前記第1のスキャン位置及び前記第2のスキャン位置における前記被検体の体表面と前記超音波プローブにおける送受信面との距離情報をそれぞれ検出し、
前記制御部は、
前記検出部による検出結果に基づいて、前記第1のスキャン位置で
の超音波スキャン
と前記第2のスキャン位置
での超音波スキャンとが実行されるように前記メカ機構をさらに制御する、超音波診断装置。
【請求項11】
超音波を送受信する少なくとも1つの超音波プローブを保持し、当該超音波プローブにおける超音波の送受信面を被検体に向けた状態で前記超音波プローブを移動させるメカ機構と、
前記メカ機構によって移動される超音波プローブによって送受信された超音波に基づいて、前記被検体の体表に沿った第1のスキャン位置及び第2のスキャン位置における前記被検体の体表面と前記超音波プローブの送受信面との距離情報をそれぞれ検出する検出部と、
前記距離情報に基づいて、前記超音波プローブを移動させるように前記メカ機構を制御する制御部と、
を備え、
前記検出部は、前記第1のスキャン位置において、前記第1のスキャン位置及び前記第2のスキャン位置における前記被検体の体表面と前記超音波プローブにおける送受信面との距離情報をそれぞれ検出し、
前記制御部は、
前記検出部による検出結果に基づいて、前記第1のスキャン位置で
の超音波スキャン
と前記第2のスキャン位置
での超音波スキャンとが実行されるように前記メカ機構をさらに制御する、超音波スキャン支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超音波自動スキャンシステム、超音波診断装置、超音波スキャン支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波診断は、技師または医師が超音波プローブを被検体の体表上で操作して、人体内部の組織構造、血流等の情報を得ることによって実施される。例えば、技師や医師は、診断部位や診断内容に応じて、超音波を送受信する超音波プローブを体表上で操作することによって被検体内を超音波で走査して、組織構造を示す超音波画像や、血流等の情報を示す超音波画像を収集する。
【0003】
このような超音波診断において、近年、ロボットによる走査が提案されている。例えば、カメラで被検体を撮影した写真から被検体の体表面の位置情報を取得し、取得した位置情報から超音波プローブの移動軌跡を示すスキャンパスを生成し、生成したスキャンパスに沿って、ロボットにより超音波プローブを移動させる技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2017/0143303号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、ロボットによる走査を効率化することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の超音波自動スキャンシステムは、少なくとも1つの超音波プローブと、メカ機構と、検出部と、制御部と、スキャン制御部とを備える。少なくとも1つの超音波プローブは、超音波を送受信する。メカ機構は、前記超音波プローブを保持し、当該超音波プローブにおける超音波の送受信面を被検体に向けた状態で前記超音波プローブを移動させる。検出部は、前記超音波プローブによって送受信された超音波に基づいて、前記被検体の体表に沿った第1のスキャン位置及び第2のスキャン位置における前記被検体の体表面と前記超音波プローブの送受信面との距離情報をそれぞれ検出する。制御部は、前記距離情報に基づいて、前記超音波プローブを移動させるように前記メカ機構を制御する。スキャン制御部は、前記第1のスキャン位置及び前記第2のスキャン位置において前記メカ機構によって移動された前記超音波プローブによる前記被検体の超音波スキャンを制御する。前記制御部は、前記第1のスキャン位置での前記距離情報の検出及び前記超音波スキャンが実行された後に、前記第2のスキャン位置へ前記超音波プローブを移動させるように前記メカ機構をさらに制御する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係るメカ機構の一例を示す外観図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係るスキャン対象部位の載置台の一例を説明するための図である。
【
図4A】
図4Aは、第1の実施形態に係る腕置きの一例を示す図である。
【
図4B】
図4Bは、第1の実施形態に係る腕置きの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係る超音波診断装置による自動スキャンの一例を説明するための図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【
図7】
図7は、第2の実施形態に係る超音波診断装置による自動スキャンの一例を説明するための図である。
【
図8】
図8は、
図8は、第2の実施形態に係る検出機能による処理の一例を説明するための図である。
【
図9】
図9は、第2の実施形態に係る超音波診断装置の処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【
図10】
図10は、第3の実施形態に係る超音波プローブの一例を説明するための図である。
【
図11】
図11は、第3の実施形態に係る超音波プローブの一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本願に係る超音波自動スキャンシステム、超音波診断装置、超音波スキャン支援装置の実施形態を詳細に説明する。なお、本願に係る超音波自動スキャンシステム、超音波診断装置、超音波スキャン支援装置は、以下に示す実施形態によって限定されるものではない。また、以下の説明において、同様の構成要素には共通の符号を付与するとともに、重複する説明を省略する。
【0009】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る超音波診断装置について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施形態に係る超音波診断装置1は、超音波プローブ2と、ディスプレイ3と、入力インターフェース4と、装置本体5とを有し、超音波プローブ2と、ディスプレイ3と、入力インターフェース4とが装置本体5と通信可能に接続される。ここで、本実施形態に係る超音波診断装置1は、さらに、メカ機構6が装置本体5と通信可能に接続される。なお、超音波診断装置1とメカ機構6とを含む構成が、本願に係る超音波自動スキャンシステムの一例である。
【0010】
超音波プローブ2は、装置本体5に含まれる送受信回路51に接続される。超音波プローブ2は、例えば、プローブ本体に複数の圧電振動子を有し、これら複数の圧電振動子は、送受信回路51から供給される駆動信号に基づき超音波を発生する。また、超音波プローブ2は、被検体Pからの反射波を受信して電気信号に変換する。また、超音波プローブ2は、プローブ本体において、圧電振動子に設けられる整合層と、圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有する。なお、超音波プローブ2は、装置本体5と着脱自在に接続される。例えば、超音波プローブ2は、セクタ型、リニア型又はコンベックス型などの超音波プローブである。
【0011】
超音波プローブ2から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として超音波プローブ2が有する複数の圧電振動子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
【0012】
なお、本実施形態は、複数の圧電振動子が一列で配置された1次元超音波プローブである超音波プローブ2により、被検体Pを2次元でスキャンする場合であっても、1次元超音波プローブの複数の圧電振動子を機械的に揺動する超音波プローブ2や複数の圧電振動子が格子状に2次元で配置された2次元超音波プローブである超音波プローブ2により、被検体Pを3次元でスキャンする場合であっても、適用可能である。
【0013】
ここで、超音波プローブ2は、プローブ本体がメカ機構6によって保持され、超音波の送受信面が被検体に向けた状態で移動される。なお、この詳細については、後述する。
【0014】
ディスプレイ3は、超音波診断装置1の操作者が入力インターフェース4を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、装置本体5において生成された超音波画像等を表示したりする。また、ディスプレイ3は、装置本体5の処理状況や処理結果を操作者に通知するために、各種のメッセージや表示情報を表示する。また、ディスプレイ3は、スピーカーを有し、音声を出力することもできる。
【0015】
入力インターフェース4は、所定の位置(例えば、関心領域等)の設定等を行うためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチモニタ、光学センサを用いた非接触入力回路、及び音声入力回路等によって実現される。入力インターフェース4は、後述する処理回路55に接続されており、操作者から受け付けた入力操作を電気信号へ変換し処理回路55へと出力する。なお、本明細書において入力インターフェース4は、マウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路55へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェースの例に含まれる。
【0016】
メカ機構6は、超音波プローブ2のプローブ本体を保持する保持部61と、超音波プローブ2を被検体の体表上の所望の位置に移動させるための機構部62とを有する。すなわち、メカ機構6は、保持部61によって保持した超音波プローブ2を、機構部62の動きによって所望の位置に移動させる。例えば、メカ機構6は、装置本体5の制御に応じて、超音波プローブ2を移動させる。以下、メカ機構6の一例について、
図2を用いて説明する。なお、
図2に示すメカ機構6は、あくまでも一例であり、実施形態はこれに限定されるものではない。
【0017】
図2は、第1の実施形態に係るメカ機構6の一例を示す外観図である。
図2に示すように、メカ機構6は、第1の保持部611、第2の保持部612、第3の保持部613、及び、第4の保持部614を有する保持部61と、第1の機構部621、第2の機構部622、及び、第3の機構部623を有する機構部62とを有する。保持部61は、アルミニウムなどを材料とした鋳物であり、保持部間を接合するための接合部や、機構部62との間で係合する係合部、超音波プローブ2を保持するプローブホルダー等を有する。また、機構部62は、モータやアクチュエータなどの駆動部や、保持部との間を係合するための係合部等を有する。
【0018】
例えば、第1の保持部611は、メカ機構6全体を支持する基部(不図示)に対して長手方向の一端が接合され、他端に第2の保持部612が接合されている。これにより、第1の保持部611は、第2の保持部612に直接的或いは間接的に保持される全ての部材を支持する。第2の保持部612は、長手方向の一端が第1の保持部611に接合され、長手方向に沿って第1の機構部621がスライド移動可能となるように、第1の機構部621が係合されている。例えば、第2の保持部612は、第1の機構部621と係合するレールを長手方向に沿って有し、レール上に第1の機構部621をスライド移動可能に保持している。
【0019】
ここで、
図2に示すように、第2の保持部612の長手方向が水平方向となるように、第1の保持部611に対して第2の保持部612が接合されることで、第1の機構部621が、矢印a1で示す水平方向にスライド移動する。第1の機構部621は、第2の保持部612に係合して保持され、モータやアクチュエータなどの駆動部による駆動力により第2の保持部612の長手方向に沿って移動する。例えば、第1の機構部621は、第2の保持部612のレールと係合して、装置本体5の制御に基づく駆動部による駆動力によってレール上をスライド移動する。また、第1の機構部621は、第2の機構部622が接合されている。
【0020】
第2の機構部622は、第1の機構部621と接合されることで第2の保持部612に保持されている。また、第2の機構部622は、第3の保持部613がスライド移動可能となるように第3の保持部613と係合して、第3の保持部613を保持している。すなわち、第2の機構部622は、第1の機構部621のスライド移動とともに第2の保持部612の長手方向に沿って移動するとともに、第3の保持部613をスライド移動させる。ここで、第2の機構部622は、第1の機構部621の移動方向と直交する方向に第3の保持部613をスライド移動させる。例えば、第2の機構部622は、装置本体5の制御に基づく駆動部による駆動力によって、矢印a2で示す鉛直方向に第3の保持部613をスライド移動させる。
【0021】
第3の保持部613は、長手方向の一端が第2の機構部622と係合され、第2の機構部622上をスライド移動する。例えば、第3の保持部613は、第2の機構部622と係合するレールを長手方向に沿って有し、矢印a2で示す鉛直方向に第2の機構部622上をスライド移動する。また、第3の保持部613は、他端が第3の機構部623と係合される。ここで、第3の保持部613では、第3の機構部623が第2の保持部612の長手方向を軸として回転移動するように、第3の機構部623を保持している。例えば、第3の保持部613は、矢印a3で示す方向に回転移動可能となるように、第3の機構部623を保持する。
【0022】
第3の機構部623は、第3の保持部613と係合されることで第3の保持部613に保持されている。また、第3の機構部623は、第4の保持部614が接合されている。例えば、第3の機構部623は、装置本体5の制御に基づく駆動部による駆動力によって、第4の保持部614を保持した状態(第4の保持部614の向きが変わらない状態)で、矢印a3で示す方向に回転移動する。これにより、第3の機構部623は、第4の保持部614によって保持された超音波プローブ2の角度を変化させることができる。
【0023】
第4の保持部614は、第3の機構部623に接合され、超音波プローブ2を保持する。例えば、第4の保持部614は、
図2に示すように、超音波プローブ2の超音波の送受信面の面方向が第3の保持部613の長手方向と直交するように、超音波プローブ2を保持する。
【0024】
上述したように、メカ機構6は、第1の機構部621による移動と、第2の機構部622による移動と、第3の機構部623による移動とによって、第4の保持部614に保持された超音波プローブ2を、矢印a1、矢印a2、矢印a3によって示す方向にそれぞれ移動させることができる。すなわち、メカ機構6は、水平方向及び鉛直方向に超音波プローブ2を移動させるとともに、超音波プローブ2の角度を変えることができる。なお、
図2に示すメカ機構6は、メカ機構の一例であり、メカ機構は、図示のものに限られない。例えば、メカ機構6は、矢印a1に直交し、かつ、矢印a2に直交する方向に、超音波プローブ2を移動させる機構部を備える場合でもよい。
【0025】
図1に戻って、装置本体5は、送受信回路51と、Bモード処理回路52と、ドプラ処理回路53と、メモリ54と、処理回路55とを有する。
図1に示す超音波診断装置1においては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ54へ記憶されている。送受信回路51、Bモード処理回路52、ドプラ処理回路53、及び、処理回路55は、メモリ54からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の各回路は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。
【0026】
送受信回路51は、パルス発生器、送信遅延回路、パルサ等を有し、超音波プローブ2に駆動信号を供給する。パルス発生器は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。また、送信遅延回路は、超音波プローブ2から発生される超音波をビーム状に集束し、かつ送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの遅延時間を、パルス発生器が発生する各レートパルスに対し与える。また、パルサは、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ2に駆動信号(駆動パルス)を印加する。すなわち、送信遅延回路は、各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、圧電振動子面から送信される超音波の送信方向を任意に調整する。
【0027】
なお、送受信回路51は、後述する処理回路55の指示に基づいて、所定のスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧等を瞬時に変更可能な機能を有している。特に、送信駆動電圧の変更は、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、又は、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
【0028】
また、送受信回路51は、プリアンプ、A/D(Analog/Digital)変換器、受信遅延回路、加算器等を有し、超音波プローブ2が受信した反射波信号に対して各種処理を行って反射波データを生成する。プリアンプは、反射波信号をチャネル毎に増幅する。A/D変換器は、増幅された反射波信号をA/D変換する。受信遅延回路は、受信指向性を決定するために必要な遅延時間を与える。加算器は、受信遅延回路によって処理された反射波信号の加算処理を行なって反射波データを生成する。加算器の加算処理により、反射波信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的なビームが形成される。
【0029】
Bモード処理回路52は、送受信回路51から反射波データを受信し、対数増幅、包絡線検波処理等を行なって、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。
【0030】
ドプラ処理回路53は、送受信回路51から受信した反射波データから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、速度、分散、パワー等の移動体情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。例えば、移動体は、血管内を流動する血液や、リンパ管内を流動するリンパ液等の流体である。
【0031】
なお、Bモード処理回路52及びドプラ処理回路53は、2次元の反射波データ及び3次元の反射波データの両方について処理可能である。すなわち、Bモード処理回路52は、2次元の反射波データから2次元のBモードデータを生成し、3次元の反射波データから3次元のBモードデータを生成する。また、ドプラ処理回路53は、2次元の反射波データから2次元のドプラデータを生成し、3次元の反射波データから3次元のドプラデータを生成する。3次元のBモードデータは、3次元走査範囲の各走査線上で設定された複数の点(サンプル点)それぞれに位置する反射源の反射強度に応じた輝度値が割り当てられたデータとなる。また、3次元のドプラデータは、3次元走査範囲の各走査線上で設定された複数の点(サンプル点)それぞれに、血流情報(速度、分散、パワー)の値に応じた輝度値が割り当てられたデータとなる。
【0032】
メモリ54は、処理回路55が生成した表示用の画像データを記憶する。また、メモリ54は、Bモード処理回路52やドプラ処理回路53が生成したデータを記憶することも可能である。また、メモリ54は、超音波送受信、画像処理及び表示処理を行なうための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見等)や、診断プロトコルや各種ボディーマーク等の各種データを記憶する。
【0033】
処理回路55は、超音波診断装置1の処理全体を制御する。具体的には、処理回路55は、
図1に示す制御機能551、画像生成機能552、検出機能553、メカ制御機能554に対応するプログラムをメモリ54から読み出して実行することで、種々の処理を行う。ここで、制御機能551は、スキャン制御部の一例である。また、検出機能553は、検出部の一例である。また、メカ制御機能554は、制御部の一例である。
【0034】
例えば、処理回路55は、入力インターフェース4を介して操作者から入力された各種設定要求や、メモリ54から読込んだ各種制御プログラム及び各種データに基づき、送受信回路51、Bモード処理回路52、ドプラ処理回路53の処理を制御する。また、処理回路55は、メモリ54が記憶する表示用の超音波画像データ(以下、超音波画像とも記す)をディスプレイ3にて表示するように制御する。また、処理回路55は、処理結果をディスプレイ3にて表示するように制御する。例えば、処理回路55が制御機能551に対応するプログラムを読み出して実行することで、装置全体の制御を行い、上述したような処置を制御する。
【0035】
画像生成機能552は、Bモード処理回路52及びドプラ処理回路53が生成したデータから超音波画像データを生成する。すなわち、画像生成機能552は、Bモード処理回路52が生成した2次元のBモードデータから反射波の強度を輝度にて表したBモード画像データを生成する。Bモード画像データは、超音波走査された領域内の組織形状が描出されたデータとなる。また、画像生成機能552は、ドプラ処理回路53が生成した2次元のドプラデータから移動体情報を表すドプラ画像データを生成する。ドプラ画像データは、速度画像データ、分散画像データ、パワー画像データ、又は、これらを組み合わせた画像データである。ドプラ画像データは、超音波走査された領域内を流動する流体に関する流体情報を示すデータとなる。
【0036】
ここで、画像生成機能552は、一般的には、超音波走査の走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用の超音波画像データを生成する。具体的には、画像生成機能552は、超音波プローブ2による超音波の走査形態に応じて座標変換を行なうことで、表示用の超音波画像データを生成する。また、画像生成機能552は、スキャンコンバート以外に種々の画像処理として、例えば、スキャンコンバート後の複数の画像フレームを用いて、輝度の平均値画像を再生成する画像処理(平滑化処理)や、画像内で微分フィルタを用いる画像処理(エッジ強調処理)等を行なう。また、画像生成機能552は、超音波画像データに、種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディーマーク等を合成する。
【0037】
すなわち、Bモードデータ及びドプラデータは、スキャンコンバート処理前の超音波画像データであり、画像生成機能552が生成するデータは、スキャンコンバート処理後の表示用の超音波画像データである。なお、Bモードデータ及びドプラデータは、生データ(Raw Data)とも呼ばれる。
【0038】
更に、画像生成機能552は、Bモード処理回路52が生成した3次元のBモードデータに対して座標変換を行なうことで、3次元のBモード画像データを生成する。また、画像生成機能552は、ドプラ処理回路53が生成した3次元のドプラデータに対して座標変換を行なうことで、3次元のドプラ画像データを生成する。3次元のBモードデータ及び3次元のドプラデータは、スキャンコンバート処理前のボリュームデータとなる。すなわち、画像生成機能552は、「3次元のBモード画像データや3次元のドプラ画像データ」を「3次元の超音波画像データであるボリュームデータ」として生成する。
【0039】
更に、画像生成機能552は、ボリュームデータをディスプレイ3にて表示するための各種の2次元画像データを生成するために、ボリュームデータに対してレンダリング処理を行なうことができる。検出機能553は、超音波プローブ2の送受信面と被検体の体表面との距離情報を検出する。メカ制御機能554は、メカ機構6を制御する。なお、検出機能553及びメカ制御機能554による処理の詳細については、後述する。
【0040】
以上、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の全体構成について説明した。かかる構成のもと、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、ロボットによる走査を効率化することを可能にする。具体的には、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、超音波プローブ2を移動させながら、プローブ位置の決定と超音波画像の収集とを実行することで、スキャンパスを生成することなく、ロボットによる走査を効率化することを可能にする。
【0041】
上述したように、超音波診断においては、近年、ロボットによって超音波プローブを移動させる際のスキャンパスを生成し、生成したスキャンパスに沿って超音波プローブを移動させて走査する技術が提案されてきている。しかしながら、この技術の場合、まずスキャンパスを生成することとなるため、時間を要し、効率をあげる上で一定の限界がある。また、時間を要するため、被検体が動いてしまった場合に最適なスキャンパスで走査することができなくなり、画像が劣化する場合がある。そこで、第1の実施形態に係る超音波診断装置1においては、超音波プローブ2を移動させながら、プローブ位置の決定と超音波画像の収集とを実行することで、スキャンパスを生成することなく、ロボットによる走査を効率化することを可能にする。
【0042】
以下、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の詳細について説明する。検出機能553は、超音波プローブ2によって送受信された超音波に基づいて、被検体の体表面と超音波プローブにおける送受信面との距離情報を検出する。具体的には、検出機能553は、被検体に対して非接触で超音波プローブ2が移動されて収集された反射波データに基づいて、被検体の体表面と超音波プローブ2における超音波の送受信面との距離情報を検出する。すなわち、検出機能553は、被検体に対して非接触の状態で超音波プローブ2から送信された超音波が被検体の体表面で反射された反射波データに基づいて、被検体の体表面と送受信面との距離情報を検出する。
【0043】
メカ制御機能554は、メカ機構6における機構部62に含まれる駆動部に対して制御信号を送信することで、機構部62の移動を制御する。例えば、メカ制御機能554は、第1の機構部621に対して制御信号を送信することで、第1の機構部621の駆動部を制御して、矢印a1に示す方向への第1の機構部621のスライド移動を制御する。また、例えば、メカ制御機能554は、第2の機構部622に対して制御信号を送信することで、第2の機構部622の駆動部を制御して、矢印a2に示す方向への第3の保持部613のスライド移動を制御する。また、例えば、メカ制御機能554は、第3の機構部623に対して制御信号を送信することで、第3の機構部623の駆動部を制御して、矢印a3に示す方向への第3の機構部623の回転移動を制御する。また、メカ制御機能554は、制御情報を検出機能553に送信する。
【0044】
ここで、第1の実施形態に係る超音波診断装置1においては、上述したように、メカ機構6が被検体に対して非接触で超音波プローブ2を移動させながら、スキャン対象部位の反射波データを収集する。そこで、第1の実施形態では、超音波プローブ2が被検体の体表面に非接触な状態でも超音波の送受信が行えるように、音響媒体として水を用いる。
図3は、第1の実施形態に係るスキャン対象部位の載置台7の一例を説明するための図である。なお、
図3においては、スキャン対象部位が前腕部から手までである場合の載置台の一例を示す。
【0045】
例えば、載置台7は、
図3に示すように、水槽71と、腕置き72とを有し、水槽71内に水が入れられる。腕置き72は、肘置き部分と、肘置き部分から緩やかに下り傾斜がついたスロープ部分とを有する。ここで、載置台7は、
図3に示すように、腕置き72に腕を載置した際に、前腕部から手までが水に浸るように、水槽71内に水が入れられる。そして、載置台7に載置された腕に対して、超音波プローブ2が
図3の矢印で示す方向に移動可能となるようにメカ機構6が配置される。例えば、
図2に示す第2の保持部612の長手方向が、載置台7に載置された前腕の長手方向と平行となるように、かつ、第4の保持部614に保持された超音波プローブ2から送信された超音波によってスキャン対象部位が走査されるように、メカ機構6が配置される。
【0046】
そして、スキャン対象部位をスキャンする場合に、超音波プローブ2が水槽71内の水の中に入れられ、スキャン対象部位の体表面とは非接触な状態で超音波が送受信される。例えば、超音波プローブ2が水槽71内の水の中に入り、かつ、超音波プローブ2が体表面に接触しないように、第2の機構部622の駆動によって第3の保持部613が鉛直方向にスライド移動される。なお、以下では、
図3に示すように、超音波プローブ2の移動方向をX方向、X方向に直交しかつ平行な方向をY方向、X方向及びY方向に直交する方向をZ方向と記載する場合がある。
【0047】
ここで、載置台7は、スキャン対象部位の載置状態を安定させるために、腕置き72に凹部や凸部を設けることができる。すなわち、被検体がスキャン対象部位を載置台7に載置したときに、載置台7に対してスキャン対象部位を常に略同一位置に載置できるように、腕置き72はスキャン対象部位を固定するための凹部や凸部を設けることができる。
【0048】
図4A及び
図4Bは、第1の実施形態に係る腕置き72の一例を示す図である。例えば、
図4Aに示すように、腕置き72は、肘置き部分からスロープ部分にかけて、肘から前腕が載置される凹部721と、手を支持する凸部722とを有する。この腕置き72を用いることで、例えば、被検体は、肘から前腕を凹部721に載置して、凸部722を軽く把持することで、腕を常に略同一位置に載置することができる。
【0049】
また、例えば、
図4Bに示すように、腕置き72は、肘置き部分からスロープ部分にかけて、肘から手までが載置される凹部723を有する場合でもよい。ここで、凹部723は、手形で凹みができており、例えば、被検体は、肘から手を凹部723に載置することで、腕を常に略同一位置に載置することができる。
【0050】
第1の実施形態では、このような載置台7に腕を載置して、メカ機構6によって非接触でスキャンが実行される。具体的には、検出機能553は、メカ機構6における超音波プローブ2の移動方向に沿った少なくとも1以上のスキャン位置における被検体の体表面と超音波プローブ2における送受信面との距離情報を検出する。メカ制御機能554は、検出機能553によって距離情報が検出されるごとに、検出された距離情報に基づいて導出される少なくとも1以上のスキャン位置におけるプローブ位置に超音波プローブ2を移動させるようにメカ機構6を制御する。そして、制御機能551は、プローブ位置において超音波画像を収集するように制御する。
【0051】
例えば、第1の実施形態においては、まず、被検体がスキャン対象部位を載置台に載置する。ここでスキャン対象部位が腕の場合、被検体は、上述した載置台7に腕を載置する。そして、メカ制御機能554は、メカ機構6における機構部62を制御して、超音波プローブ2を初期位置に移動させる。ここで、初期位置は、例えば、操作者等のユーザによって決定される場合でもよく、或いは、載置台ごとに予め決定されている場合でもよい。
【0052】
例えば、ユーザによって決定される場合、操作者が、入力インターフェース4を介してメカ制御機能554に超音波プローブ2の移動を制御させることで、超音波プローブ2を初期位置に移動させる。また、例えば、初期位置が載置台ごとに予め決定されている場合、メカ制御機能554は、載置台と初期位置との対応関係を示す情報に基づいて使用される載置台の初期位置を特定し、特定した初期位置に超音波プローブ2を移動させるように、メカ機構6における機構部62を制御する。なお、載置台と初期位置との対応関係を示す情報は、例えば、載置台のサイズや形状などが考慮されて、載置台ごとに初期位置が設定され、予めメモリ54に格納される。
【0053】
ここで、初期位置は、超音波プローブ2が水槽71内の水中にあり、かつ、超音波プローブ2が体表面に接触しない位置である。例えば、初期位置は、腕置き72の肘置き側で超音波プローブ2が水中に入り、かつ、超音波プローブ2が体表面に接触しない位置である。
【0054】
そして、初期位置に超音波プローブ2が配置されると、制御機能551、検出機能553及びメカ制御機能554が被検体の体表面と超音波プローブ2の送受信面との距離を計測しながら超音波プローブ2の位置を移動させ、移動方向における各スキャン位置において超音波画像を収集するように制御する。
【0055】
具体的には、検出機能553は、超音波プローブ2によって送受信された超音波に基づいて、被検体の体表に沿った第1のスキャン位置及び第2のスキャン位置における被検体の体表面と超音波プローブの送受信面との距離情報をそれぞれ検出する。すなわち、検出機能553は、メカ制御機能554によって超音波プローブ2が移動方向に沿ったスキャン位置に移動された後に送受信された超音波に基づいて、当該スキャン位置における被検体の体表面と超音波プローブ2における送受信面との距離を検出する。そして、メカ制御機能554は、検出機能553によって距離が検出されるごとに、距離情報に基づくプローブ位置(被検体の体表に対する超音波プローブ2の位置)に超音波プローブ2を移動させる。制御機能551は、第1のスキャン位置及び第2のスキャン位置において、メカ機構6によってプローブ位置に移動された超音波プローブによる被検体の超音波スキャンを制御する。メカ制御機能554は、当該プローブ位置での超音波画像収集後に、移動方向に沿ったスキャン位置に超音波プローブ2を移動させる。すなわち、メカ制御機能554は、第1のスキャン位置での距離情報の検出及び超音波スキャンが実行された後に、第2のスキャン位置へ超音波プローブ2を移動させるようにメカ機構6をさらに制御する。ここで、距離情報に基づいて導出されるプローブ位置は、例えば、超音波の焦点が関心領域内に収まる位置である。また、関心領域は、例えば、体表面からの距離などによって予め設定される。
【0056】
すなわち、第1の実施形態に係る超音波診断装置1においては、超音波プローブ2の移動方向におけるスキャン位置への超音波プローブ2の移動と、超音波プローブ2の送受信面と体表面との距離計測と、距離計測の結果に基づいて導出されるプローブ位置への超音波プローブ2の移動と、プローブ位置での超音波画像の収集とを繰り返すことで、スキャンパスを生成することなく、最適なプローブ位置での走査をロボットで実行することができる。
【0057】
図5は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1による自動スキャンの一例を説明するための図である。ここで、
図5においては、横方向が超音波プローブ2の移動方向(X方向)を示し、縦方向が超音波プローブ2と被検体との距離方向(Z方向)を示す。また、
図5においては、説明の便宜上、超音波プローブ2の移動方向に沿ったスキャン対象部位(腕)の超音波画像の断面図を示しているが、実際には、スキャン対象部位の超音波画像はまだ収集されていない。
【0058】
例えば、超音波プローブ2を
図5に示す初期位置に移動した後、メカ制御機能554は、スキャン位置P1(第1のスキャン位置)に超音波プローブ2を移動させるように、メカ機構6を制御する。一例を挙げると、メカ制御機能554は、第1の機構部621における駆動部のみを駆動させるように制御することで、鉛直方向における超音波プローブ2の位置を変化させずに、水平方向へ超音波プローブ2をスライド移動させるように制御する。すなわち、メカ制御機能554は、前腕部から手までの方向に沿って超音波プローブ2をスライド移動させる。
【0059】
なお、スキャン位置は、予め設定されたスキャン間隔に基づいて、決定される。すなわち、ロボットによる走査において、予め設定される超音波プローブ2の移動方向におけるスキャン間隔に基づいて、初期位置からスキャン位置P1までの距離が決定される。メカ制御機能554は、決定された距離分、超音波プローブ2がX方向に移動するように、第1の機構部621における駆動部を駆動させる。なお、スキャン間隔(被検体の体表に沿った複数のスキャン位置間の距離)は、空間分解能を考慮すると、2mm以下であることが好ましい。
【0060】
スキャン位置P1に到達すると、制御機能551は、超音波プローブ2から超音波を送信して、反射波を受信するように、送受信回路51を制御する。そして、画像生成機能552は、送受信回路51によって生成された反射波データに基づいて、超音波画像データを生成する。さらに、画像生成機能552は、生成した超音波画像データを検出機能553に送信する。
【0061】
検出機能553は、画像生成機能552から受信した超音波画像データを用いて、スキャン対象部位の体表面と超音波プローブ2における超音波の送受信面との距離を算出する。例えば、検出機能553は、スキャン位置P1における超音波画像データから体表面を検出し、検出した体表面から超音波の送受信面までの距離を算出する。なお、超音波画像データにおける体表面の検出は、既存の任意の方法によって実行される。また、上述した例では、超音波画像データから体表面を検出し、検出した体表面から送受信面までの距離を算出する場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、超音波の送信から反射波の受信までの時間と、水中での超音波の速度とから距離を算出する場合でもよい。
【0062】
上述したように、超音波プローブ2と体表面との距離を検出すると、メカ制御機能554は、検出された距離情報に基づいて導出されるプローブ位置に超音波プローブ2を移動させるようにメカ機構6を制御する。すなわち、メカ制御機能554は、スキャン位置における被検体の体表面と送受信面との距離が距離情報に基づく距離となるように、超音波プローブ2を移動させる。ここで、距離情報に基づいて導出されるプローブ位置は、上述したように、例えば、超音波の焦点が関心領域内に収まる位置として設定される。一例を挙げると、体表面から1cmの深さまでの領域が関心領域として設定された場合、超音波の焦点の位置が、体表面から1cmの深さまでの領域に含まれるように、プローブ位置が決定される。
【0063】
すなわち、メカ制御機能554は、超音波プローブ2の焦点距離と、検出機能553によって検出された距離情報に基づいて、Z方向における現時点の焦点の位置を特定する。そして、メカ制御機能554は、特定した焦点の位置を関心領域内に収めるための超音波プローブ2のZ方向における移動距離を算出し、算出した移動距離だけ超音波プローブ2を移動させるように、メカ機構6を制御する。
【0064】
例えば、メカ制御機能554は、超音波プローブ2の焦点距離と、
図5におけるスキャン位置P1における距離情報に基づいて、矢印a4で示す移動距離を算出し、矢印a4で示す移動距離だけ超音波プローブ2を移動させるように、メカ機構6を制御する。一例を挙げると、メカ制御機能554は、第2の機構部622における駆動部のみを駆動させるように制御することで、X方向における超音波プローブ2の位置を変化させずに、Z方向へ超音波プローブ2をスライド移動させることで、超音波プローブ2をプローブ位置に移動させる。
【0065】
超音波プローブ2がプローブ位置に移動されると、制御機能551は、超音波プローブ2から超音波を送信して、反射波を受信するように、送受信回路51を制御する。そして、画像生成機能552は、送受信回路51によって生成された反射波データに基づいて、超音波画像データを生成する。画像生成機能552は、生成した超音波画像データをメモリ54に格納する。ここで、画像生成機能552は、超音波画像データの位置情報として、メカ機構6の駆動量(例えば、第1の機構部621における駆動量)を対応付けて格納することもできる。
【0066】
制御機能551がスキャン位置P1における超音波画像データを収集すると、メカ制御機能554は、スキャン位置P2(第2のスキャン位置)に超音波プローブ2を移動させるように、メカ機構6を制御する。なお、スキャン位置P2までの距離は、上述したように、スキャン間隔から取得される。
【0067】
そして、スキャン位置P2においても、上述したスキャン位置P1での処理と同様に、制御機能551が反射波データを収集して、検出機能553が距離情報を検出する。そして、メカ制御機能554が矢印a5で示す移動距離を算出して、超音波プローブ2をプローブ位置に移動させ、制御機能551がスキャン位置P2における超音波画像データを収集する。
【0068】
第1の実施形態に係る超音波診断装置1においては、上述したように、被検体の体表面と超音波プローブ2の送受信面との距離情報の検出と、超音波プローブ2のプローブ位置への移動と、超音波画像データの収集とを逐次的に実行することで、スキャンパスを生成することなく、最適なスキャン位置(例えば、超音波の焦点が関心領域内に含まれる位置)での自動スキャンを実行することができる。
【0069】
次に、
図6を用いて、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の処理について説明する。
図6は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の処理の手順を説明するためのフローチャートである。ここで、
図6に示すステップS101~S103、S105、S106は、処理回路55がメモリ54からメカ制御機能554に対応するプログラムを読み出して実行されるステップである。また、ステップS104は、処理回路55がメモリ54から制御機能551及び検出機能553に対応するプログラムを読み出して実行されるステップである。ステップS107、S108は、処理回路55がメモリ54から制御機能551に対応するプログラムを読み出して実行されるステップである。
【0070】
第1の実施形態に係る超音波診断装置1では、処理回路55が、超音波プローブ2を初期位置に移動させる(ステップS101)。そして、処理回路55は、超音波プローブ2が被検体に接触しないように、超音波プローブ2をX方向に移動させ(ステップS102)、スキャン位置に到達したか否かを判定する(ステップS103)。
【0071】
ここで、スキャン位置に到達した場合には(ステップS103肯定)、処理回路55は、スキャン位置における超音波の反射点の座標を取得する(ステップS104)。すなわち、処理回路55は、スキャン位置における超音波プローブ2と被検体の体表面との距離情報を検出する。なお、スキャン位置に到達するまで、処理回路55は、超音波プローブ2をX方向に移動させる(ステップS103否定)。
【0072】
続いて、処理回路55は、スキャン位置におけるZ方向の移動距離を算出して(ステップS105)、超音波プローブ2をZ方向に移動させて(ステップS106)、プローブ位置に配置する。その後、処理回路55は、スキャン位置における超音波画像を収集して(ステップS107)、スキャンが終了したか否かを判定する(ステップS108)。
【0073】
ここで、スキャンが終了していない場合には、処理回路55は、ステップS102に戻って処理を継続する。一方、スキャンが終了している場合には、処理を終了する。なお、スキャンが終了したか否かの判定は、例えば、ユーザによる入力インターフェース4を介した操作に基づいて判定される場合でもよく、或いは、検出機能553によって検出される距離情報に基づいて判定される場合でもよい。距離情報に基づいて判定する場合、例えば、処理回路55は、移動後のスキャン位置で検出した距離情報と、1つ手前のスキャン位置で検出した距離情報との差分が閾値以上となった場合に、超音波プローブ2の位置がスキャン対象部位から外れたと判定して、スキャンが終了したと判定する場合でもよい。
【0074】
上述したように、第1の実施形態によれば、超音波プローブ2が、超音波を送受信する。メカ機構6が、超音波プローブ2を保持し、当該超音波プローブ2における超音波の送受信面を被検体に向けた状態で移動させる。検出機能553が、超音波プローブ2によって送受信された超音波に基づいて、被検体の体表面と超音波プローブ2における送受信面との距離情報を検出する。メカ制御機能554は、距離情報に基づくプローブ位置に超音波プローブ2を移動させるようにメカ機構6を制御する。検出機能553による距離情報の検出とメカ制御機能554によるメカ機構6の制御とを逐次的に実行する。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、スキャンパスを生成することなく自動スキャンができ、スキャンに係る時間を短縮して、ロボットによる走査を効率化することを可能にする。
【0075】
すなわち、検出機能553は、超音波プローブ2によって送受信された超音波に基づいて、被検体の体表に沿った第1のスキャン位置及び第2のスキャン位置における被検体の体表面と超音波プローブ2の送受信面との距離情報をそれぞれ検出する。メカ制御機能554は、距離情報に基づいて、超音波プローブ2を移動させるようにメカ機構6を制御する。制御機能551は、第1のスキャン位置及び第2のスキャン位置において、メカ機構6によって移動された超音波プローブ2による被検体の超音波スキャンを制御する。メカ制御機能554は、第1のスキャン位置での距離情報の検出及び超音波スキャンが実行された後に、第2のスキャン位置へ超音波プローブ2を移動させるようにメカ機構6をさらに制御する。このように、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、スキャン位置ごとに距離計測と超音波スキャンとを順次行うことにより、例えば、体動によって被検体の位置が変化したとしても、それに応じた自動スキャンを行うことができる。
【0076】
また、第1の実施形態によれば、検出機能553は、メカ機構6における超音波プローブ2の移動方向に沿った少なくとも1以上のスキャン位置における被検体の体表面と超音波プローブ2における送受信面との距離情報を検出する。メカ制御機能554は、検出機能553によって距離情報が検出されるごとに、検出された距離情報に基づいて導出される少なくとも1以上のスキャン位置におけるプローブ位置に超音波プローブ2を移動させるようにメカ機構6を制御する。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、スキャンパスを生成することなく自動スキャンを実行することを可能にする。
【0077】
また、第1の実施形態によれば、検出機能553は、メカ制御機能554によって超音波プローブ2が移動方向に沿ったスキャン位置に移動された後に送受信された超音波に基づいて、当該スキャン位置における被検体の体表面と超音波プローブ2における送受信面との距離情報を検出する。メカ制御機能554は、検出機能553によって距離情報が検出されるごとに、距離情報に基づくプローブ位置に超音波プローブ2を移動させ、当該プローブ位置での超音波画像収集後に、移動方向に沿ったスキャン位置に超音波プローブ2を移動させる。すなわち、メカ制御機能554は、スキャン位置における被検体の体表面と送受信面との距離が距離情報に基づく距離となるように、超音波プローブ2を移動させる。そして、メカ制御機能554は、制御機能551によって超音波スキャンが実行された後に、被検体の体表に沿った次のスキャン位置に、超音波プローブ2を移動させる。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、検体の体表面と超音波プローブ2の送受信面との距離情報の検出と、超音波プローブ2のプローブ位置への移動と、超音波画像データの収集とを逐次的に実行することを可能にする。
【0078】
また、第1の実施形態によれば、プローブ位置は、超音波の焦点が関心領域内に収まる位置となるように、距離情報から導出される。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、最適な位置での自動スキャンを実行することを可能にする。
【0079】
また、第1の実施形態によれば、制御機能551は、プローブ位置において超音波画像を収集するように制御する。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、関心領域における画質がよい超音波画像を収集することを可能にする。
【0080】
また、第1の実施形態によれば、被検体の体表に沿った複数のスキャン位置間の距離は、2mm以下である。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、空間分解能が高い超音波画像を収集することを可能にする。
【0081】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、スキャン位置ごとに距離情報を検出する場合について説明した。第2の実施形態では、複数のスキャン位置における距離情報を同時に検出する場合について説明する。なお、第2の実施形態に係る超音波診断装置1は、第1の実施形態と比較して、制御機能551と、検出機能553と、メカ制御機能554による処理が異なる。以下、これらを中心に説明する。
【0082】
第2の実施形態に係る制御機能551は、距離情報を検出するための超音波の送受信において、方向を変えながら超音波の送受信を行う。具体的には、制御機能551は、超音波の送受信方向を変化させる偏向走査によって、第1のスキャン位置から第3のスキャン位置の体表面を走査する。
【0083】
また、第2の実施形態に係る検出機能553は、超音波プローブ2の移動方向に沿った複数のスキャン位置における被検体の体表面と超音波プローブ2における送受信面との距離情報をそれぞれ検出する。具体的には、検出機能553は、第1のスキャン位置において、被検体の体表に沿った第3のスキャン位置における被検体の体表面と超音波プローブ2における送受信面との距離情報を検出する。例えば、検出機能553は、偏向走査によって取得された超音波に基づいて、第3のスキャン位置における被検体の体表面と超音波プローブにおける送受信面との距離情報を検出する。
【0084】
また、メカ制御機能554は、検出機能553によって距離情報が検出されるごとに、各スキャン位置の距離情報に基づくスキャン位置ごとのプローブ位置に超音波プローブ2を順次移動させる。具体的には、メカ制御機能554は、第1のスキャン位置における超音波スキャンが実行された後に、第3のスキャン位置に超音波プローブ2を移動させるとともに、第3のスキャン位置における被検体の体表面と送受信面との距離が第3のスキャン位置における距離情報に基づく距離となるように、超音波プローブ2を移動させる。
【0085】
また、第2の実施形態に係る制御機能551は、距離情報が検出されたスキャン位置のそれぞれにおいて、超音波スキャンを実行するように制御する。例えば、制御機能551は、第3のスキャン位置における超音波スキャンを制御する。
【0086】
図7は、第2の実施形態に係る超音波診断装置1による自動スキャンの一例を説明するための図である。ここで、
図7においては、横方向が超音波プローブ2の移動方向(X方向)を示し、縦方向が超音波プローブ2と被検体との距離方向(Z方向)を示す。また、
図7においては、説明の便宜上、超音波プローブ2の移動方向に沿ったスキャン対象部位(腕)の超音波画像の断面図を示しているが、実際には、スキャン対象部位の超音波画像はまだ収集されていない。
【0087】
第2の実施形態においては、例えば、超音波プローブ2を
図7に示す初期位置に移動した後、制御機能551は、超音波プローブ2から超音波を送信して、反射波を受信するように、送受信回路51を制御する。ここで、第2の実施形態においては、制御機能551は、超音波の送受信方向を変化させる偏向走査によって、現時点の超音波プローブ2の位置よりも移動方向で先となる位置に対応する被検体の体表面を走査する。
【0088】
例えば、制御機能551は、超音波プローブ2が
図7における初期位置に配置された状態で、スキャン位置P1~P3(第3のスキャン位置)に対応する(各位置に相当する)体表面に対して超音波を送受信する。検出機能553は、制御機能551によって収集された反射波データに基づいて、超音波プローブ2と各スキャン位置に対応する体表面までの距離を検出し、検出した距離に基づいて、各スキャン位置に超音波プローブ2が配置された場合の、超音波プローブ2から体表面までの距離を算出する。
【0089】
図8は、第2の実施形態に係る検出機能553による処理の一例を説明するための図である。なお、
図8では、スキャン位置P1及びスキャン位置P2における距離の算出のみを示す。例えば、
図8の上段の図に示すように、制御機能551が、超音波の送受信方向を変化させながら超音波プローブ2から被検体の方向に超音波を送信すると、検出機能553は、各角度からの反射波データに基づいて、各角度における被検体の体表面までの距離を算出する。すなわち、検出機能553は、各角度における被検体の体表面の位置を検出する。
【0090】
そして、検出機能553は、例えば、
図8の中段の図に示すように、スキャン位置P1、スキャン位置P2に対応する体表面を検出し、検出した体表面にて反射された反射波データの角度をそれぞれ抽出する。そして、検出機能553は、抽出した角度における距離情報と、現時点の超音波プローブ2の位置から各スキャン位置までのX方向の距離とを用いて、各スキャン位置に超音波プローブ2が配置された場合の超音波プローブ2の送受信面と体表面との距離を算出する。
【0091】
例えば、検出機能553は、
図8の下段の図に示すように、矢印b1で示す距離と距離cとを用いて、超音波プローブ2がスキャン位置P1に配置された場合の超音波プローブ2の送受信面と体表面との距離を算出する。一例を挙げると、検出機能553は、3平方の定理に基づいて、超音波プローブ2がスキャン位置P1に配置された場合の超音波プローブ2の送受信面と体表面との距離を算出する。同様に、検出機能553は、矢印b2で示す距離と距離2cとを用いて、超音波プローブ2がスキャン位置P2に配置された場合の超音波プローブ2の送受信面と体表面との距離を算出する。
【0092】
このように、検出機能553は、制御機能551による超音波の偏向走査によって収集された反射波データに基づいて、複数のスキャン位置における距離情報を同時に検出する。例えば、検出機能553が、
図7におけるスキャン位置P1~P3までの距離情報を検出すると、メカ制御機能554は、スキャン位置P1~P3におけるプローブ位置をそれぞれ導出して、超音波プローブ2をプローブ位置に移動させるようにメカ機構6を制御する。
【0093】
例えば、メカ制御機能554は、第1の機構部621における駆動部及び第2の機構部622における駆動部を駆動させることで、
図7の矢印a6に示すように、超音波プローブ2を移動させる。制御機能551は、超音波プローブ2がスキャン位置P1に到達すると、超音波プローブ2から超音波を送信して、反射波を受信するように、送受信回路51を制御する。そして、画像生成機能552は、送受信回路51によって生成された反射波データに基づいて、超音波画像データを生成する。画像生成機能552は、生成した超音波画像データをメモリ54に格納する。ここで、画像生成機能552は、超音波画像データの位置情報として、メカ機構6の駆動量(例えば、第1の機構部621における駆動量)を対応付けて格納することもできる。
【0094】
スキャン位置P1における超音波画像の収集が終了すると、メカ制御機能554は、第1の機構部621における駆動部及び第2の機構部622における駆動部を駆動させることで、
図7の矢印a7に示すように、超音波プローブ2をスキャン位置P2におけるプローブ位置に移動させる。そして、スキャン位置P2における超音波画像の収集が終了すると、メカ制御機能554は、第1の機構部621における駆動部及び第2の機構部622における駆動部を駆動させることで、
図7の矢印a8に示すように、超音波プローブ2をスキャン位置P3におけるプローブ位置に移動させる。
【0095】
プローブ位置を導出したスキャン位置まで超音波プローブ2が移動されると、制御機能551が、再度偏向走査を行い、検出機能553が複数のスキャン位置に距離情報を算出する。このように、第2の実施形態に係る超音波診断装置1においては、複数のスキャン位置における距離情報を同時に検出して、各スキャン位置における超音波画像の収集を逐次的に実行する。
【0096】
なお、上述した実施形態では、制御機能551が超音波の送受信方向を電子的に変化させる場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、超音波プローブ2を把持するメカ機構6によって超音波の送受信方向を変化させる場合でもよい。かかる場合には、メカ機構6は、超音波プローブ2の移動方向に沿って超音波プローブ2を回転移動させる機構部を有する。そして、メカ制御機能554は、当該機構部の駆動部を駆動させることで、超音波プローブ2を移動方向に沿って回転移動させる。制御機能551は、回転移動中に超音波を送受信する。検出機能553は、駆動部の駆動量の情報(超音波プローブ2の角度の情報)と、各角度において受信した反射波データに基づいて、各スキャン位置に相当する体表面の位置を検出する。
【0097】
次に、
図9を用いて、第2の実施形態に係る超音波診断装置1の処理について説明する。
図9は、第2の実施形態に係る超音波診断装置1の処理の手順を説明するためのフローチャートである。ここで、
図9に示すステップS201、S203、S204、S206、S207、S209は、処理回路55がメモリ54からメカ制御機能554に対応するプログラムを読み出して実行されるステップである。また、ステップS202は、処理回路55がメモリ54から制御機能551及び検出機能553に対応するプログラムを読み出して実行されるステップである。ステップS205、S208は、処理回路55がメモリ54から制御機能551に対応するプログラムを読み出して実行されるステップである。
【0098】
第2の実施形態に係る超音波診断装置1では、処理回路55が、超音波プローブ2を初期位置に移動させる(ステップS201)。そして、処理回路55は、n個のスキャン位置について、距離情報を取得するように制御して(ステップS202)、取得された距離情報がn個であるか否かを判定する(ステップS203)。
【0099】
ここで、1回の偏向走査によって収集される距離情報が取得されるスキャン位置の数は、偏向可能な角度と、スキャン間隔によって決定される。また、取得された距離情報がn個であるか否かの判定は、例えば、検出機能553によって検出される距離情報に基づいて判定される場合でもよい。かかる場合には、例えば、処理回路55は、各スキャン位置で検出した距離情報を比較して、隣接するスキャン位置で検出した距離情報間での差分が閾値以上となった場合に、差分が閾値以上となった距離情報間において後側のスキャン位置がスキャン対象部位から外れたと判定して、取得した距離情報をカウントせずに、取得された距離情報がn個ではないと判定する場合でもよい。
【0100】
一例を挙げると、スキャン位置P2における距離情報とスキャン位置P3における距離情報との差分が閾値以上となった場合に、処理回路55は、スキャン位置P3の距離情報をカウントしない。
【0101】
ステップS203の判定において、n個取得している場合(ステップS203肯定)、処理回路55は、次のスキャン位置の距離情報に基づいて、超音波プローブ2を最適位置(プローブ位置)に移動させる(ステップS204)。その後、処理回路55は、スキャン位置における超音波画像を収集して(ステップS205)、未収集のスキャン位置があるか否かを判定する(ステップS206)。
【0102】
ここで、未収集のスキャン位置がある場合には(ステップS206肯定)、処理回路55は、ステップS204に戻って処理を継続する。一方、未収集のスキャン位置がない場合には(ステップS206否定)、処理回路55は、ステップS202に戻って処理を継続する。
【0103】
ステップS203の判定において、n個取得していない場合(ステップS203否定)、処理回路55は、次のスキャン位置の距離情報に基づいて、超音波プローブ2を最適位置(プローブ位置)に移動させる(ステップS207)。その後、処理回路55は、スキャン位置における超音波画像を収集して(ステップS208)、未収集のスキャン位置があるか否かを判定する(ステップS209)。
【0104】
ここで、未収集のスキャン位置がある場合には(ステップS209肯定)、処理回路55は、ステップS207に戻って処理を継続する。一方、未収集のスキャン位置がない場合には(ステップS209否定)、処理回路55は、処理を終了する。
【0105】
上述したように、第2の実施形態によれば、検出機能553は、超音波プローブ2の移動方向に沿った複数のスキャン位置における被検体の体表面と超音波プローブ2における送受信面との距離情報をそれぞれ検出する。メカ制御機能554は、検出機能553によって距離情報が検出されるごとに、各スキャン位置の距離情報に基づくスキャン位置ごとのプローブ位置に超音波プローブ2を順次移動させる。
【0106】
すなわち、検出機能553は、第1のスキャン位置において、被検体の体表に沿った第3のスキャン位置における被検体の体表面と超音波プローブ2における送受信面との距離情報を検出する。メカ制御機能554は、第1のスキャン位置における超音波スキャンが実行された後に、第3のスキャン位置に超音波プローブ2を移動させるとともに、第3のスキャン位置における被検体の体表面と送受信面との距離が第3のスキャン位置における距離情報に基づく距離となるように、超音波プローブ2を移動させる。制御機能551は、第3のスキャン位置における超音波スキャンを制御する。従って、第2の実施形態に係る超音波診断装置1は、自動スキャンに係る時間をさらに短縮させることができ、ロボットによる走査をより効率化することを可能にする。
【0107】
また、第2の実施形態によれば、制御機能551は、超音波の送受信方向を変化させる偏向走査によって、第1のスキャン位置から第3のスキャン位置の体表面を走査する。検出機能553は、偏向走査によって取得された超音波に基づいて、第3のスキャン位置における被検体の体表面と超音波プローブにおける送受信面との距離情報を検出する。従って、第2の実施形態に係る超音波診断装置1は、複数のスキャン位置における距離情報の同時検出を容易に行うことを可能にする。
【0108】
(第3の実施形態)
さて、これまで第1~第2の実施形態について説明したが、上述した第1~第2の実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
【0109】
上述した第1~第2の実施形態では、単一の超音波プローブ2によって距離計測と超音波スキャンを実行する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、距離計測に用いられる超音波プローブと超音波スキャンに用いられる超音波プローブとが備えられる場合でもよい。
【0110】
かかる場合には、第3の実施形態に係る超音波プローブ2は、第1の超音波プローブと第2の超音波プローブとを含む。第3の実施形態に係る検出機能553は、第1の超音波プローブによって送受信された超音波に基づいて、被検体の体表面と超音波プローブの送受信面との距離情報を検出する。第3の実施形態に係る制御機能551は、第2の超音波プローブによる超音波の送受信を制御することで、被検体の超音波スキャンを制御する。
【0111】
ここで、第1の超音波プローブと第2の超音波プローブは、同一筐体に含まれる場合でもよく、或いは、異なる筐体内に含まれる場合でもよい。以下、
図10及び
図11を用いて、第3の実施形態に係る超音波プローブの一例を説明する。
図10及び
図11は、第3の実施形態に係る超音波プローブの一例を説明するための図である。なお、
図10においては、第1の超音波プローブと第2の超音波プローブが、同一筐体に含まれる場合を示す。
図11は、第1の超音波プローブと第2の超音波プローブが、異なる筐体に含まれる場合を示す。
【0112】
図10に示すように、第3の実施形態に係る超音波プローブ2は、筐体内に圧電振動子群21と、圧電振動子群22とを有する。各圧電振動子には、整合層とバッキング材等がそれぞれ設けられる。そして、各圧電振動子は、送受信回路51から供給される駆動信号に基づき、それぞれ超音波を発生する。
【0113】
例えば、圧電振動子群21(第2の超音波プローブ)は、制御機能551による制御のもと送受信回路51から供給された駆動信号に基づいて、被検体に対して超音波を送受信することで、生体情報を収集するための超音波スキャンを実行する。また、例えば、圧電振動子22(第1の超音波プローブ)は、制御機能551による制御のもと送受信回路51から供給された駆動信号に基づいて、被検体に対して超音波を送受信することで、距離情報を収集するための超音波スキャンを実行する。
【0114】
図5を用いて、第3の実施形態に係る超音波プローブ2による処理の一例を説明すると、例えば、超音波プローブ2がスキャン位置P1に到達すると、制御機能551は、超音波プローブ2における圧電振動子22から超音波を送信して、反射波を受信するように、送受信回路51を制御する。そして、画像生成機能552は、送受信回路51によって生成された反射波データに基づいて、超音波画像データを生成する。検出機能553は、画像生成機能552から受信した超音波画像データを用いて、スキャン対象部位の体表面と超音波プローブ2における超音波の送受信面との距離を算出する。
【0115】
超音波プローブ2と体表面との距離が検出されると、メカ制御機能554は、検出された距離情報に基づいて導出されるプローブ位置に超音波プローブ2を移動させるようにメカ機構6を制御する。
【0116】
超音波プローブ2がプローブ位置に移動されると、制御機能551は、超音波プローブ2における圧電振動子21から超音波を送信して、反射波を受信するように、送受信回路51を制御する。そして、画像生成機能552は、送受信回路51によって生成された反射波データに基づいて、超音波画像データを生成する。被検体の体表面に沿った各スキャン位置において、上記した処理が実行される。
【0117】
また、第1の超音波プローブと第2の超音波プローブが異なる筐体内に含まれる場合、例えば、
図11に示すように、第3の実施形態に係る超音波診断装置1は、超音波プローブ2(第2の超音波プローブ)と、超音波プローブ2a(第1の超音波プローブ)とを有する。各超音波プローブは、送受信回路51から供給される駆動信号に基づき、それぞれ超音波を発生する。
【0118】
例えば、超音波プローブ2は、制御機能551による制御のもと送受信回路51から供給された駆動信号に基づいて、被検体に対して超音波を送受信することで、生体情報を収集するための超音波スキャンを実行する。また、例えば、超音波プローブ2aは、制御機能551による制御のもと送受信回路51から供給された駆動信号に基づいて、被検体に対して超音波を送受信することで、距離情報を収集するための超音波スキャンを実行する。
【0119】
図5を用いて、第3の実施形態に係る超音波プローブ2及び超音波プローブ2aによる処理の一例を説明すると、例えば、超音波プローブ2aがスキャン位置P1に到達すると、制御機能551は、超音波プローブ2aから超音波を送信して、反射波を受信するように、送受信回路51を制御する。そして、画像生成機能552は、送受信回路51によって生成された反射波データに基づいて、超音波画像データを生成する。検出機能553は、画像生成機能552から受信した超音波画像データを用いて、スキャン対象部位の体表面と超音波プローブ2aにおける超音波の送受信面との距離を算出する。
【0120】
超音波プローブ2aと体表面との距離が検出されると、メカ制御機能554は、検出された距離情報に基づいて導出されるプローブ位置に超音波プローブ2を移動させるようにメカ機構6を制御する。ここで、メカ制御機能554は、超音波プローブ2と超音波プローブ2aとがメカ機構6に保持された状態での送受信面の位置の違いを考慮して、プローブ位置を導出する。すなわち、超音波プローブ2と超音波プローブ2aとがメカ機構6に保持された状態で、鉛直方向におけるそれぞれの送受信面の位置が同一である場合には、メカ制御機能554は、超音波プローブ2と超音波プローブ2aの送受信面の位置に違いがないものとして、検出された距離情報からプローブ位置を導出する。
【0121】
一方、超音波プローブ2と超音波プローブ2aとがメカ機構6に保持された状態で、鉛直方向におけるそれぞれの送受信面の位置が異なる場合には、メカ制御機能554は、鉛直方向における送受信面の位置の差と、検出された距離情報とからプローブ位置を導出する。例えば、メカ制御機能554は、検出された距離情報に対して、鉛直方向における送受信面の位置の差をオフセット情報として加え、オフセット情報を加えた後の距離情報に基づいてプローブ位置を導出する。
【0122】
超音波プローブ2がスキャン位置P1におけるプローブ位置に移動されると、制御機能551は、超音波プローブ2から超音波を送信して、反射波を受信するように、送受信回路51を制御する。そして、画像生成機能552は、送受信回路51によって生成された反射波データに基づいて、超音波画像データを生成する。被検体の体表面に沿った各スキャン位置において、上記した処理が実行される。
【0123】
上述した第1~第2の実施形態では、メカ機構6における第1の機構部621及び第2の機構部622のみを用いる自動スキャンの例について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、第3の機構部623が用いられる場合でもよい。
【0124】
また、上述した実施形態では、超音波プローブ2が装置本体5にケーブルを介して接続される場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、超音波プローブによる超音波の送受信が無線で制御される場合であってもよい。かかる場合には、例えば、超音波プローブのプローブ本体に送受信回路が内蔵され、超音波プローブによる超音波の送受信は、無線によって他の装置から制御される。本実施形態に係る超音波診断装置は、このような無線式の超音波プローブのみを含む形態のものであってもよい。
【0125】
また、上述した実施形態では、超音波診断装置1が各種処理を実行する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、超音波診断装置1が実行するものとして説明した処理の一部をメカ機構6にて実行する場合でもよい。また、例えば、超音波診断装置1が実行するものとして説明した処理の全部を、超音波スキャン支援装置としてのメカ機構6において実行する場合でもよい。
【0126】
なお、上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。
【0127】
なお、上記の実施形態の説明で図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。更に、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0128】
また、上述した実施形態で説明した処理方法は、あらかじめ用意された処理プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この処理プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この処理プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO、DVD、USBメモリ及びSDカードメモリ等のFlashメモリ等のコンピュータで読み取り可能な非一時的な記録媒体に記録され、コンピュータによって非一時的な記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0129】
以上、説明したとおり、実施形態によれば、ロボットによる走査を効率化することを可能にする。
【0130】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0131】
1 超音波診断装置
2 超音波プローブ
6 メカ機構
551 制御機能
553 検出機能
554 メカ制御機能