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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】衝撃試験装置及び衝撃試験方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/303 20060101AFI20231120BHJP
   G01N 3/31 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
G01N3/303 D
G01N3/31 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020060166
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021156842
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006839
【氏名又は名称】日鉄建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】佐野 翔太郎
(72)【発明者】
【氏名】半沢 賢二
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 博明
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-023438(JP,A)
【文献】特開2004-257774(JP,A)
【文献】特開2018-173380(JP,A)
【文献】特開2001-235412(JP,A)
【文献】米国特許第5457984(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/303
G01N 3/30
G01M 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験体に重錘を衝突させて衝撃力を付与することで、当該被試験体の耐衝撃性を測定するための衝撃試験装置において、
支持ロープに吊り下げられ、上記被試験体に対して振り子状に揺動させて衝突させることにより衝撃力を付与する重錘と、
上記重錘に取り付けられ、上記重錘が上記被試験体に衝突して跳ね返った後に、その跳ね返り方向に張力が付与される引張ロープと、
張力が付与された上記引張ロープの上記跳ね返り方向への緊張状態を継続させる緊張器とを備えること
を特徴とする衝撃試験装置。
【請求項2】
被試験体に重錘を衝突させて衝撃力を付与することで、当該被試験体の耐衝撃性を測定するための衝撃試験装置において、
支持ロープに吊り下げられ、上記被試験体に対して落下させて衝突させることにより衝撃力を付与する重錘と、
上記重錘に取り付けられ、上記重錘が上記被試験体に衝突して跳ね返った後に、その跳ね返り方向への張力が付与される引張ロープと、
張力が付与された上記引張ロープの上記跳ね返り方向への緊張状態を継続させる緊張器とを備えること
を特徴とする衝撃試験装置。
【請求項3】
上記重錘の上記被試験体への衝突を検出する衝突検出部と、
上記引張ロープに上記跳ね返り方向への張力を付与する張力付与部と、
上記衝突検出部により衝突が検出された場合、上記引張ロープに張力が付与されるように上記張力付与部を制御する制御部とを備えること
を特徴とする請求項1または2記載の衝撃試験装置。
【請求項4】
上記緊張器を固定するフレームを備えること
を特徴とする請求項1~3のうち何れか1項記載の衝撃試験装置。
【請求項5】
被試験体に重錘を衝突させて衝撃力を付与することで、当該被試験体の耐衝撃性を測定するための衝撃試験方法において、
上記被試験体に対して支持ロープに吊り下げられた重錘を振り子状に揺動させて衝突させることにより衝撃力を付与し、
上記重錘が上記被試験体に衝突して跳ね返った後に、上記重錘に取り付けられた引張ロープに上記跳ね返り方向への張力を付与し、
張力が付与された上記引張ロープの上記跳ね返り方向への緊張状態を継続させること
を特徴とする衝撃試験方法。
【請求項6】
被試験体に重錘を衝突させて衝撃力を付与することで、当該被試験体の耐衝撃性を測定するための衝撃試験方法において、
上記被試験体に対して支持ロープに吊り下げられた重錘を落下させて衝突させることにより衝撃力を付与し、
上記重錘が上記被試験体に衝突して跳ね返った後に、上記重錘に取り付けられた引張ロープに上記跳ね返り方向への張力を付与し、
張力が付与された上記引張ロープの上記跳ね返り方向への緊張状態を継続させること
を特徴とする衝撃試験方法。
【請求項7】
上記重錘の上記被試験体への衝突を検出し、
衝突が検出された場合、上記引張ロープに上記跳ね返り方向への張力が付与されるように制御すること
を特徴とする請求項5または6記載の衝撃試験方法。
【請求項8】
フレームに固定された緊張器により、張力が付与された上記引張ロープの上記跳ね返り方向への緊張状態を継続させること
を特徴とする請求項5~7のうち何れか1項記載の衝撃試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃試験装置及び衝撃試験方法に関し、特に被試験体に重錘を衝突させて衝撃力を付与することで、当該被試験体の耐衝撃性を測定するための衝撃試験装置及び衝撃試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、重錘を被試験体に衝突させることで、被試験体の強度を測定することが行われている。重錘を被試験体に衝突させる際には、重錘を被試験体に衝突した後に跳ね返り、再び落下して衝突してしまう。つまり、同じ被試験体への複数回の衝突が生じてしまう。同じ被試験体に複数回の衝突が発生すると、1回の衝突による被試験体の損傷度を評価することは難しい。このため、複数回の衝突を防止するための様々な装置・技術が提案されている。
【0003】
特許文献1に開示された落下試験装置では、ロープに繋がれた重錘が被試験材上に落下して跳ね返ったときに、ロープが掛け渡された3つのローラーのうちで真ん中のローラーでロープを押し込んで重錘を引き上げて、ロック機構により重錘が被試験材に対して複数回衝突するのを防止している。特許文献1の開示技術において、ロック機構は、真ん中のローラーを両側のローラーの間に例えばバネの力で挿入し、且つ、ソレノイドあるいはモータで真ん中のローラーを両側のローラーに対してロープの通路を邪魔にしない位置に当該バネの力に逆らって戻してロックしている。
【0004】
また、特許文献2に開示された落球試験装置は、紐の一方の端に重錘が繋がれ、且つ、紐の他方の端に錘が繋がれており、重錘と錘とが間隔を離してそれぞれ垂直に設けられた2箇所の案内部内に沿って同時に落下するように構成されている。特許文献2の開示技術では、重錘を落下させて被試験材に衝突して跳ね上がったときに、錘に発生する落下力により紐を介して重錘を引き上げることにより、重錘が被試験材に複数回衝突することを防止できる。
【0005】
また、特許文献3では、移動体に対して移動可能に収納されている重錘を被試験材に向けて落下させたときに、被試験体に衝突して跳ね返った重錘が移動体に係止されることにより重錘が被試験材に複数回衝突することを防止できる落錘験装置が開示されている。
【0006】
また、特許文献4に開示された落球試験装置は、再衝突防止手段は、コンクリート板に装着された衝撃センサにより被試験体のコンクリート板への衝突を感知し、その感知信号が供給された巻取りモータが、巻取りロープを高速で巻き上げて被試験体を急上昇させる。特許文献4の開示技術によれば、被試験体がコンクリート板に衝突してからバウンドしてもその直後に急上昇させられ、コンクリート板への再衝突を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2004-257774号公報
【文献】特開2004-177352号公報
【文献】特許第5109993号公報
【文献】特開平11-23438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1-4に記載の落下試験装置等には、以下の問題点があった。具体的には、特許文献1に開示された落下試験装置では、重錘の被試験体への一度目の衝突後に跳ね返ったことをタイマーなどの時間で判断をしており電気的なノイズや電源電圧の変動等の外乱で装置が誤作動を起こす恐れがあった。また、特許文献2に開示された落球試験装置では、衝突させる重錘と同等の錘をもう1つ用意する必要があり装置の大規模化につながるという問題点があった。また、数十キロ~数トン規模の錘を使用する場合には安全面のリスクも大きくなるという問題点もあった。
【0009】
また、特許文献3に開示された落錘験装置では、数百キロ~数トン規模の重錘を使用する場合には大規模な装置、機構が必要となり、実使用を考えると現実的ではないという問題点があった。また、特許文献4に開示された落球試験装置では、数百キロ~数トン規模の重錘を高速で巻き上げる装置が必要となり、実使用を考えると現実的ではないという問題点があった。
【0010】
更に、特許文献1-4に記載の問題点を解決するために、重錘に複数回衝突することを防止するためのロープを衝突側と反対側に2本取り付け、各ロープを作業者が持ち、一度目の衝突後に跳ね返った際に人力で引っ張り、複数回の衝突を防止することも行われてきた。しかしながら、この方法では、一度目の衝突で跳ね返ったエネルギーを作業者が人力で直接受け止めるため、作業者に瞬間的に大きな衝撃力が作用することとなりケガが発生する可能性があるという問題点があった。
【0011】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、被試験体に重錘を衝突させた場合に、衝突して跳ね返った重錘の被試験体への複数回の衝突を安全に防止することができる衝撃試験装置及び衝撃試験方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上述した問題点を解決するために、支持ロープに吊り下げられ、被試験体に対して振り子状に揺動させて衝突させることにより衝撃力を付与する重錘と、重錘に取り付けられ、重錘が被試験体に衝突して跳ね返った後に、その跳ね返り方向に張力が付与される引張ロープと、張力が付与された引張ロープの跳ね返り方向への緊張状態を継続させる緊張器と、緊張器を固定するフレームとを備える衝撃試験装置を発明した。
【0013】
第1発明に係る衝撃試験装置は、被試験体に重錘を衝突させて衝撃力を付与することで、当該被試験体の耐衝撃性を測定するための衝撃試験装置において、支持ロープに吊り下げられ、上記被試験体に対して振り子状に揺動させて衝突させることにより衝撃力を付与する重錘と、上記重錘に取り付けられ、上記重錘が上記被試験体に衝突して跳ね返った後に、その跳ね返り方向に張力が付与される引張ロープと、張力が付与された上記引張ロープの上記跳ね返り方向への緊張状態を継続させる緊張器とを備えることを特徴とする。
【0014】
第2発明に係る衝撃試験装置は、被試験体に重錘を衝突させて衝撃力を付与することで、当該被試験体の耐衝撃性を測定するための衝撃試験装置において、支持ロープに吊り下げられ、上記被試験体に対して落下させて衝突させることにより衝撃力を付与する重錘と、上記重錘に取り付けられ、上記重錘が上記被試験体に衝突して跳ね返った後に、その跳ね返り方向への張力が付与される引張ロープと、張力が付与された上記引張ロープの上記跳ね返り方向への緊張状態を継続させる緊張器とを備えることを特徴とする。
【0015】
第3発明に係る衝撃試験装置は、第1発明又は第2発明において、上記重錘の上記被試験体への衝突を検出する衝突検出部と、上記引張ロープに上記跳ね返り方向への張力を付与する張力付与部と、上記衝突検出部により衝突が検出された場合、上記引張ロープに張力が付与されるように上記張力付与部を制御する制御部とを備えることを特徴とする。
【0016】
第4発明に係る衝撃試験装置は、第1発明~第3発明の何れかにおいて、上記緊張器を固定するフレームを備えることを特徴とする。
【0017】
第5発明に係る衝撃試験方法は、被試験体に重錘を衝突させて衝撃力を付与することで、当該被試験体の耐衝撃性を測定するための衝撃試験方法において、上記被試験体に対して支持ロープに吊り下げられた重錘を振り子状に揺動させて衝突させることにより衝撃力を付与し、上記重錘が上記被試験体に衝突して跳ね返った後に、上記重錘に取り付けられた引張ロープに上記跳ね返り方向への張力を付与し、張力が付与された上記引張ロープの上記跳ね返り方向への緊張状態を継続させることを特徴とする。
【0018】
第6発明に係る衝撃試験方法は、被試験体に重錘を衝突させて衝撃力を付与することで、当該被試験体の耐衝撃性を測定するための衝撃試験方法において、上記被試験体に対して支持ロープに吊り下げられた重錘を落下させて衝突させることにより衝撃力を付与し、上記重錘が上記被試験体に衝突して跳ね返った後に、上記重錘に取り付けられた引張ロープに上記跳ね返り方向への張力を付与し、張力が付与された上記引張ロープの上記跳ね返り方向への緊張状態を継続させることを特徴とする。
【0019】
第7発明に係る衝撃試験方法は、第5発明又は第6発明において、上記重錘の上記被試験体への衝突を検出し、衝突が検出された場合、上記引張ロープに上記跳ね返り方向への張力が付与されるように制御することを特徴とする。
【0020】
第8発明に係る衝撃試験方法は、第5発明~第7発明の何れかにおいて、フレームに固定された緊張器により、張力が付与された上記引張ロープの上記跳ね返り方向への緊張状態を継続させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
上述した構成からなる本発明によれば、支持ロープに吊り下げられ、被試験体に対して振り子状に揺動させて衝突させることにより衝撃力を付与する重錘と、重錘に取り付けられ、重錘が被試験体に衝突して跳ね返った後に、その跳ね返り方向に張力が付与される引張ロープと、張力が付与された引張ロープの跳ね返り方向への緊張状態を継続させる緊張器とを備える。これにより、被試験体に重錘を衝突させた場合に、衝突して跳ね返った重錘の被試験体への複数回の衝突を安全に防止することができる。
【0022】
また、支持ロープに吊り下げられ、被試験体に対して落下させて衝突させることにより衝撃力を付与する重錘と、重錘に取り付けられ、重錘が被試験体に衝突して跳ね返った後に、その跳ね返り方向への張力が付与される引張ロープと、張力が付与された引張ロープの跳ね返り方向への緊張状態を継続させる緊張器とを備える。これにより、被試験体に重錘を衝突させた場合に、衝突して跳ね返った重錘の被試験体への複数回の衝突を安全に防止することができる。また、被試験体に対して重錘を鉛直方向下向きに落下させて衝突させるため、簡易な構成により落下試験を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、第1実施形態の衝撃試験装置の全体構成図である。
図2図2は、重錘及びその周辺の部材を拡大して示す図である。
図3図3は、緊張器を示す図である。
図4図4は、緊張器の固定状態を示す他の例である。
図5図5は、第1実施形態の衝撃試験装置により衝撃試験を行う際の手順を示す図である。
図6図6は、第1実施形態で衝撃試験の2度当たり防止を自動化する場合の衝撃試験装置の全体構成図である。
図7図7は、第2実施形態の衝撃試験装置の全体構成図である。
図8図8は、第2実施形態の衝撃試験装置により衝撃試験を行う際の手順を示す図である。
図9図9は、第2実施形態で衝撃試験の2度当たり防止を自動化する場合の衝撃試験装置の全体構成図である。
図10図10は、第2実施形態の衝撃試験装置の全体構成図である。
図11図11は、第2実施形態の衝撃試験装置により衝撃試験を行う際の手順を示す図である。
図12図12は、第2実施形態で衝撃試験の2度当たり防止を自動化する場合の衝撃試験装置の全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を適用した衝撃試験装置及び衝撃試験方法を実施するための一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
第1実施形態
本発明の第1実施形態に係る衝撃試験装置の構成について説明する。図1は、本発明を適用した衝撃試験装置100の全体構成図を示している。この衝撃試験装置100は、試験機構10と、支持機構30と、被試験体50とを備えている。
【0026】
試験機構10は、重錘11と、重錘11に取り付けられる引張ロープ15と、引張ロープ15を保持する緊張器20と、緊張器20を固定するフレーム16とを備えている。支持機構30は、重錘11に取り付けられる切り離し装置31と、切り離し装置31に引掛けられるシャックル32と、シャックル32を吊り下げるクレーン33と、クレーン33を吊り下げる連結部材34と、連結部材34を支持する支柱35と、重錘11を支持する支持ロープ36と、被試験体50を支持する支持台37と、切り離し装置31に接続された油圧ポンプ40とを備えている。
【0027】
重錘11は、支持ロープ36により支持機構30に吊り下げられ、被試験体50に対して振り子状に揺動させて衝突させることにより衝撃力を付与する。即ち、図1に示すように、連結部材34において支持ロープ36が取り付けられている箇所を支点Aとした場合、重錘11は支点Aを中心として揺動可能に支持されている。支持ロープ36は鉛直方向に対して傾斜角度θ傾斜した状態で支点Aと重錘11との間で張設されていればよい。なお、傾斜角度θは、被試験体50に付与する衝撃力を考慮して任意に設定されればよい。図1に示すように、衝突方向と跳ね返り方向はいずれも略水平方向である。
【0028】
図2に示すように、重錘11は切り離し装置31に取り付けられており、切り離し装置31はシャックル32に吊り下げられている。シャックル32はクレーン33のフック33aに吊り下げられ、クレーン33は、連結部材34に取り付けられている。即ち、重錘11は、鉛直方向に延びるクレーン33により連結部材34に支持されている。
【0029】
切り離し装置31は、クレーン33から重錘11を切り離す装置であり、油圧ポンプ40から供給される油圧の供給を制御することにより、クレーン33に吊り下げられた重錘11を切り離すことができる。油圧の供給制御は、例えば被試験体50に重錘11を衝突させようとするタイミングで、作業者Wによる油圧ポンプ40の操作によって行われる。
【0030】
重錘11は、球状の部材であり、例えば鋼等の金属製の素材により構成されている。なお、重錘11の形状は球に限定されず、如何なる形状であってもよい。また、重錘11の素材は、鉄等の金属に限定されず、被試験体50を破壊することができる程度の硬度を有するのであれば、如何なる素材であってもよい。重錘11の重量は、衝撃試験の内容に応じて適宜決定されればよい。
【0031】
重錘11の表面には、第1取付部12と、第2取付部13と、第3取付部14が設けられている。第1取付部12は第1環状部12aと、第1環状部12aから延びる第1延設部12bを備えている。第2取付部13は第2環状部13aと、第2環状部13aから延びる第2延設部13bを備えている。第3取付部14は第3環状部14aと、第3環状部14aから延びる第3延設部14bを備えている。第1環状部12aには支持ロープ36が取り付けられ、第2環状部13aには切り離し装置31が取り付けられ、第3環状部14aには引張ロープ15が取り付けられている。第1延設部12b、第2延設部13b、第3延設部14bはそれぞれ重錘11に対して固定されている。
【0032】
引張ロープ15は、重錘11が被試験体50に衝突して跳ね返った後に、その跳ね返り方向に張力が付与される。図1に示すように、引張ロープ15の一端側は、重錘11に取り付けられ、他端側は緊張器20を介して作業者Wに把持されている。切り離し装置31が作動する前の状態では、引張ロープ15は弛んだ状態で配置されている。
【0033】
フレーム16は、地面Gに固定された状態で緊張器20を固定する。重錘11の重量に比して緊張器20の重量が小さいことを考慮し、重錘11が揺動しても緊張器20が固定された状態を保つためにフレーム16が設けられている。
【0034】
緊張器20は、フレーム16により地面Gから所定の高さに配置されている。図3に、緊張器20の詳細を示す。図3(a)に示すように、緊張器20は、フック21と、フック21に連結される連結具22と、連結具22に連結されるホルダ23を備えている。フック21は開閉自在に構成されており、緊張器20はフック21によりフレーム16に取り付けられる。ホルダ23には引張ロープ15が挿通される。
【0035】
ホルダ23は、図3(b)に示すように、保持部23aと、係合爪23bと、ばね23cとを備えている。引張ロープ15は、保持部23aと係合爪23bとの間に挿通されている。係合爪23bは、ばね23cにより引張ロープ15を圧接係合する方向(矢印P方向)に付勢されている。この圧接係合により、引張ロープ15は保持部23aと係合爪23bにより強く挟み込まれて固定される。これにより、引張ロープ15は、緊張器20と重錘11との間では、被試験体50に近接する方向(図中Y方向)への張力が付与されて緊張状態が維持される。緊張器20と作業者Wとの間では、引張ロープ15には張力が付与された状態ではなく、引張ロープ15の被試験体50から離間する方向(図中X方向)への移動が許容される。
【0036】
なお、緊張器20は、フレーム16に固定される構成に限定されるものではない。具体的には、図4(a)に示すように、フック17を介して地面Gに固定されてもよく、あるいは図4(b)に示すように、アンカー18及びチェーン19を介して地面Gに固定されてもよい。
【0037】
また、引張ロープ15を緊張状態に維持するための構成は、緊張器20のみに限定されず、被試験体50への近接を抑制し被試験体50からの離間を許容することができるのであれば、ラチェット機構その他の如何なる構成に代替されてもよい。
【0038】
被試験体50は、例えばポリカーボネート板又はアクリル板等の合成樹脂製のパネルである。なお、被試験体50としては、これ以外にも、鋼管柱、照明柱、フェンス等、屋外に設置される構造物を対象とした上で、対象とされる構造物に応じて任意の素材、大きさが選択されることとすればよい。
【0039】
被試験体50は、支持台37上に略垂直に立設されている。即ち、被試験体50は衝突面50Sを備え、衝突面50Sが地面Gに対して垂直となるように立設されている。なお、被試験体50は、支点Aのほぼ真下に配置されることにより、運動エネルギーが最大となる状態の重錘11により衝突されることが望ましい。
【0040】
次に、衝撃試験における一連の処理について図5により説明する。なお、図5では、説明の簡略化のために、衝撃試験装置100の要部のみを模式的に示す。
【0041】
図5(a)に示すように、切り離し装置31から解放される前には、重錘11は鉛直方向に対して傾斜角度θ傾斜した状態で支持されている。切り離し装置31から重錘11を解放する場合には、作業者Wが油圧ポンプ40を操作して切り離し装置31を作動させる。
【0042】
切り離し装置31から重錘11が解放されると、重錘11は支持ロープ36のみに支持された状態となり、重錘11は支点Aを中心として振り子運動しながら衝突面50Sに垂直に衝突する。即ち、重錘11は、運動エネルギーを有した状態で、水平方向において、衝突面50Sに近接する方向(図1中衝突方向)に揺動する。なお、引張ロープ15は、緊張器20を挿通し、弛んだ状態で作業者Wに把持されている。
【0043】
図5(b)は、重錘11が被試験体50に衝突して跳ね返った直後の状態を示している。衝突面50Sに側方から衝突した重錘11は、衝突面50Sに衝突した後、跳ね返り方向に沿って跳ね返る。作業者Wは、重錘11が被試験体50に衝突して跳ね返った旨を判断した時に、少なくとも重錘11が被試験体50に再び衝突する前に、跳ね返り方向への張力を引張ロープ15に付与する。重錘11には、被試験体50に衝突して跳ね返った後に被試験体50に近接しようとする力が作用しているが、作業者Wが跳ね返り方向への張力を付与することにより重錘11が被試験体50に再度衝突することを防止することができる。
【0044】
図5(c)は、重錘11が緊張器20により保持された状態を示している。緊張器20は、引張ロープ15の被試験体50から離間する方向への移動を許容するとともに、被試験体50に近接する方向への移動を抑制する。このため、重錘11に衝突方向への力が付与された場合には、張力が付与された引張ロープ15の跳ね返り方向への緊張状態が継続され、緊張器20により重錘11の被試験体50への近接しようとする動きを抑制することができる。これにより、重錘11の複数回の被試験体50への衝突が防止される。
【0045】
このような衝撃試験装置100を使用することにより、被試験体50に衝突して跳ね返った重錘11は、取り付けられている引張ロープ15が緊張器20により緊張状態とされるため、重錘11の被試験体50側への揺動が抑制される。即ち、緊張器20が引張ロープ15を保持するため、作業者Wが引張ロープ15に対して張力を付与し続けなくても重錘11の被試験体50側への近接が阻止される。これにより、衝突して跳ね返った重錘11の複数回の被試験体50への衝突を安全に防止することができる。
【0046】
また、衝撃試験においては、衝突面50Sに重錘11を衝突させて、被試験体50の破壊の状況を観察することが行われる。被試験体50の側方から重錘11を衝突させることで、実際の衝突の状況により即した試験結果を得ることができる。さらに、振り子状に揺動する重錘11の運動エネルギーが最大となる付近に被試験体50が配置されているため、エネルギーの損失を防止しながら効率よく衝撃試験を行うことができる。
【0047】
なお、上述の説明では、重錘11の被試験体50への衝突の判断、衝突後の引張ロープ15の跳ね返り方向への引張作業は作業者Wにより行われていたが、これらの一連の作業は自動化することができる。具体的には、図6に示すように、自動化のためには、衝撃試験装置100は衝突検出部71と、衝突検出部71に電気的に接続された情報処理装置72と、情報処理装置72に電気的に接続された張力付与部73とを備える。
【0048】
衝突検出部71は、被試験体50の近傍に配置され、例えば赤外線センサ等の光センサによって構成されている。衝突検出部71は重錘11の被試験体50への衝突を検出し、その検出結果を情報処理装置72に出力する。なお、衝突検出部71は赤外線センサに限られず、重錘11の被試験体50への衝突を検出できるのであれば、重錘11の被試験体50への衝突を直接検出する衝突検出センサ、重錘11の変位を検知する変位検知センサ等、如何なる構成であってもよい。
【0049】
情報処理装置72は、例えばPC(Personal Computer)などであり、衝突検出部71により重錘11の被試験体50への衝突が検出された場合、引張ロープ15に張力が付与されるように張力付与部73を制御する。情報処理装置72には衝突から張力付与までの処理を実行するためのソフトウェアがインストールされる。
【0050】
張力付与部73は、例えば引張ロープ15を巻き取る巻き取り機構、あるいはこの機構を駆動するモータ等によって構成されている。張力付与部73は、情報処理装置72からの指示に基づいて引張ロープ15に対して跳ね返り方向への張力を付与する。これにより、重錘11の被試験体50側への近接が抑制される。なお、張力付与部73は、巻き取り機構やモータに限られず、引張ロープ15に張力を付与することができるものであれば如何なるものであってもよい。
【0051】
重錘11が切り離し装置31から解放され被試験体50に衝突すると、衝突検出部71は重錘11の被試験体50への衝突を検出する。衝突検出部71により重錘11の被試験体50への衝突が検出されると、衝突検出部71は検出した旨の通知信号を情報処理装置72に送信する。情報処理装置72は、衝突検出部71からの通知信号を受けて張力付与部73に制御信号を送信し、引張ロープ15に張力が付与されるように張力付与部73を制御する。張力付与部73は、情報処理装置72からの制御信号に基づいて引張ロープ15に対して跳ね返り方向への張力を付与する。これにより、重錘11の被試験体50側への近接が抑制され、重錘11の複数回の被試験体50への衝突が防止される。
【0052】
このように、自動化された衝撃試験装置100を使用することにより、作業者Wによる重錘11の被試験体50への衝突の検出、衝突後の引張ロープ15の跳ね返り方向への引張作業を省略した衝撃試験を行うことができる。即ち、衝突検出部71により重錘11の被試験体50への衝突が検出されるため、作業者Wが自ら重錘11の被試験体50への衝突を目視により判断する工程が省略される。また、衝突検出部71により衝突が検出された後に、張力付与部73により自動的に重錘11の被試験体50側への近接が阻止されるため、作業者Wが重量のある重錘11の揺動を抑制するために、引張ロープ15を引っ張る工程が省略される。このように、重錘11が落下してから被試験体50へ衝突し跳ね返った後に揺動が抑制されるまでの工程が省略されるため、作業者Wの負担を軽減することができる。
【0053】
第2実施形態
次に、図7~9により、本発明の第2実施形態に係る衝撃試験装置200について説明する。第1実施形態と相違する点は、第1実施形態では重錘11が被試験体50に側方から衝突するのに対し、第2実施形態では重錘11が被試験体50に上方から落下して衝突する点であるため、これらの相違点を主に説明し、重複する部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0054】
図7に示すように、被試験体50は、衝突面50Sが地面Gと平行となるような状態で配置されている。重錘11は、衝突面50Sから距離h1隔てた状態で切り離し装置31に取り付けられている。切り離し装置31はシャックル32、クレーン33を介して連結部材34に保持されている。引張ロープ15の一端側は、方向変換機構80及び緊張器20を介して重錘11に取り付けられ、他端側は作業者Wに把持されている。なお、図7に示すように、衝突方向とは鉛直方向における下方に向かう方向であり、跳ね返り方向とは鉛直方向における上方に向かう方向である。
【0055】
方向変換機構80は、緊張器20と作業者Wとの間に配置され、水平方向の張力を鉛直方向の張力へと方向を変換する。具体的には、方向変換機構80は2個のローラー80a、80bにより構成されており、引張ロープ15はローラー80a、80bにかけ回されている。ローラー80a、80bはいずれも支柱35に取り付けられている。ローラー80a、80bは、それぞれ引張ロープ15の鉛直方向の移動を水平方向の移動に変換し、あるいは引張ロープ15の水平方向の移動を鉛直方向の移動に変換する。なお、重錘11の張力の方向を変換することができるのであれば、方向変換機構80は如何なる構成であってもよい。
【0056】
次に、衝撃試験における一連の処理について図8により説明する。なお、図8では、説明の簡略化のために、衝撃試験装置200の要部のみを模式的に示す。
【0057】
図8(a)に示すように、切り離し装置31から解放される前には、重錘11は衝突面50Sから距離h1隔てた状態で被試験体50上に位置している。切り離し装置31から重錘11を解放する場合には、作業者Wが油圧ポンプ40を操作して切り離し装置31を作動させる。
【0058】
切り離し装置31から重錘11が解放されると、重錘11は自由落下し、衝突面50Sに垂直に衝突する。なお引張ロープ15は、緊張器20を挿通し、弛んだ状態で作業者Wに把持されている。
【0059】
図8(b)は、重錘11が被試験体50に衝突して跳ね返った直後の状態を示している。衝突面50Sに上方から落下した重錘11は、衝突面50Sに衝突した後、跳ね返り方向に跳ね返る。作業者Wは、重錘11が跳ね返った旨を判断した時に、少なくとも重錘11が被試験体50に再び衝突する前に、跳ね返り方向への張力を引張ロープ15に付与する。重錘11には、被試験体50に衝突して跳ね返った後に被試験体50に落下しようとする力が作用しているため、作業者Wが跳ね返り方向への張力を付与することにより重錘11が被試験体50に再度衝突することを防止することができる。
【0060】
図8(c)は、重錘11が緊張器20により保持された状態を示している。緊張器20は、引張ロープ15の被試験体50から離間する方向への移動を許容するとともに、被試験体50に近接する方向への移動を抑制する。このため、重錘11に衝突方向への力が付与された場合には、張力が付与された引張ロープ15の跳ね返り方向への緊張状態が継続され、緊張器20により重錘11の被試験体50へ落下しようとする動きを抑制することができる。これにより、重錘11の複数回の被試験体50への衝突が防止される。
【0061】
このような衝撃試験装置200を使用することにより、被試験体50に衝突して跳ね返った重錘11は、取り付けられている引張ロープ15が緊張器20により緊張状態とされるため、重錘11の被試験体50側への近接が抑制される。これにより、衝突して跳ね返った重錘11の複数回の被試験体50への衝突を安全に防止することができる。また、単に切り離し機構を解放するだけで重錘11を鉛直方向下向きに落下させて被試験体50に衝突させるため、簡易な構成により衝撃試験を行うことができる。
【0062】
なお、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に重錘11の被試験体50への衝突の判断、衝突後の引張ロープ15の跳ね返り方向への引張作業を自動化することとしてもよい。具体的には、図9に示すように、衝撃試験装置200は衝突検出部71と、衝突検出部71に電気的に接続された情報処理装置72と、情報処理装置72に電気的に接続された張力付与部73とを備える。
【0063】
重錘11が切り離し装置31から解放され被試験体50に衝突すると、衝突検出部71は重錘11の被試験体50への衝突を検出する。衝突検出部71により重錘11の被試験体50への衝突が検出されると、衝突検出部71は検出した旨の通知信号を情報処理装置72に送信する。情報処理装置72は、衝突検出部71からの通知信号を受けて張力付与部73に制御信号を送信し、引張ロープ15に張力が付与されるように張力付与部73を制御する。張力付与部73は、情報処理装置72からの制御信号に基づいて引張ロープ15に対して跳ね返り方向への張力を付与する。
【0064】
このように、第2実施形態でも重錘11の被試験体50への衝突の検出から張力の付与までの工程を自動化することにより、作業者Wによる重錘11の被試験体50への衝突の検出、衝突後の引張ロープ15の跳ね返り方向への引張作業を省略した衝撃試験を行うことができるため、衝撃試験を行う際の作業者Wの負担を軽減することができる。
【0065】
第3実施形態
次に、図10~12により、本発明の第3実施形態に係る衝撃試験装置300について説明する。第3実施形態も第2実施形態と同様に重錘11が被試験体50に上方から落下して衝突するものであるため、第2実施形態との相違点を主に説明し、重複する部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0066】
図10に示すように、被試験体50は、衝突面50Sが地面Gと平行となるような状態で配置されている。重錘11は、衝突面50Sから距離h2隔てた状態で切り離し装置31に取り付けられている。切り離し装置31はシャックル32、クレーン33を介して連結部材34に保持されている。引張ロープ15の一端側は、方向変換機構90を介して重錘11に取り付けられ、他端側は緊張器20を介して作業者Wに把持されている。なお、図10に示すように、衝突方向とは鉛直方向における下方に向かう方向であり、跳ね返り方向とは鉛直方向における上方に向かう方向である。
【0067】
方向変換機構90は、重錘11と緊張器20との間に配置され、水平方向の張力を鉛直方向の張力へと方向を変換する。具体的には、方向変換機構80は2個のローラー90a、90bにより構成されており、引張ロープ15はローラー90a、90bの間に挿通されている。ローラー90a、90bは、引張ロープ15の鉛直方向の移動を水平方向の移動に変換し、あるいは引張ロープ15の水平方向の移動を鉛直方向の移動に変換する。なお、重錘11の張力の方向を変換するための構成は、方向変換機構90のみに限定されず、張力の方向を変換することができるのであれば、他の如何なる構成に代替されてもよい。
【0068】
次に、衝撃試験における一連の処理について図11により説明する。なお、図11では、説明の簡略化のために、衝撃試験装置300の要部のみを模式的に示す。
【0069】
図11(a)に示すように、切り離し装置31から解放される前には、重錘11は衝突面50Sから距離h2隔てた状態で被試験体50上に位置している。切り離し装置31から重錘11を解放する場合には、作業者Wが油圧ポンプ40を操作して切り離し装置31を作動させる。
【0070】
切り離し装置31から重錘11が解放されると、重錘11は自由落下し、衝突面50Sに垂直に衝突する。なお引張ロープ15は、緊張器20を挿通し、弛んだ状態で作業者Wに把持されている。
【0071】
図11(b)は、重錘11が被試験体50に衝突して跳ね返った直後の状態を示している。衝突面50Sに上方から落下した重錘11は、衝突面50Sに衝突した後、跳ね返り方向に跳ね返る。作業者Wは、重錘11が跳ね返った旨を判断した時に、少なくとも重錘11が被試験体50に再び衝突する前に、跳ね返り方向への張力を引張ロープ15に付与する。重錘11には、被試験体50に衝突して跳ね返った後に被試験体50に落下しようとする力が作用しているため、作業者Wが跳ね返り方向への張力を付与することにより重錘11が被試験体50に再度衝突することを防止することができる。
【0072】
図11(c)は、重錘11が緊張器20により保持された状態を示している。緊張器20は、引張ロープ15の被試験体50から離間する方向への移動を許容するとともに、被試験体50に近接する方向への移動を抑制する。このため、重錘11に衝突方向への力が付与された場合には、張力が付与された引張ロープ15の跳ね返り方向への緊張状態が継続され、緊張器20により重錘11の被試験体50へ落下しようとする動きを抑制することができる。これにより、重錘11の複数回の被試験体50への衝突が防止される。
【0073】
このような衝撃試験装置200を使用することにより、被試験体50に衝突して跳ね返った重錘11は、取り付けられている引張ロープ15が緊張器20により緊張状態とされるため、重錘11の被試験体50側への近接が抑制される。これにより、衝突して跳ね返った重錘11の複数回の被試験体50への衝突を安全に防止することができる。また、単に切り離し機構を解放するだけで重錘11を鉛直方向下向きに落下させて被試験体50に衝突させるため、簡易な構成により衝撃試験を行うことができる。
【0074】
なお、第3実施形態においても、第1実施形態と同様に重錘11の被試験体50への衝突の判断、衝突後の引張ロープ15の跳ね返り方向への引張作業を自動化することとしてもよい。具体的には、図12に示すように、衝撃試験装置200は衝突検出部71と、衝突検出部71に電気的に接続された情報処理装置72と、情報処理装置72に電気的に接続された張力付与部73とを備える。
【0075】
重錘11が切り離し装置31から解放され被試験体50に衝突すると、衝突検出部71は重錘11の被試験体50への衝突を検出する。衝突検出部71により重錘11の被試験体50への衝突が検出されると、衝突検出部71は検出した旨の通知信号を情報処理装置72に送信する。情報処理装置72は、衝突検出部71からの通知信号を受けて張力付与部73に制御信号を送信し、引張ロープ15に張力が付与されるように張力付与部73を制御する。張力付与部73は、情報処理装置72からの制御信号に基づいて引張ロープ15に対して跳ね返り方向への張力を付与する。
【0076】
このように、第3実施形態でも重錘11の被試験体50への衝突の検出から張力の付与までの工程を自動化することにより、作業者Wによる重錘11の被試験体50への衝突の検出、衝突後の引張ロープ15の跳ね返り方向への引張作業を省略した衝撃試験を行うことができるため、衝撃試験を行う際の作業者Wの負担を軽減することができる。
【0077】
以上、本発明の実施形態に係る衝撃試験装置100、200、300について詳細に説明したが、前述した又は図示した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎない。よって、前述の実施形態により本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【符号の説明】
【0078】
10 試験機構
11 重錘
12 第1取付部
12a 環状部
12b 延設部
13 第2取付部
13a 環状部
13b 延設部
15 引張ロープ
16 フレーム
17 フック
18 アンカー
19 チェーン
20 緊張器
21 フック
22 連結具
23 ホルダ
23a 保持部
23b 係合爪
23c ばね
30 支持機構
31 切り離し装置
32 シャックル
33 クレーン
33a フック
34 連結部材
35 支柱
36 支持ロープ
40 油圧ポンプ
50 被試験体
50S 衝突面
71 衝突検出部
72 情報処理装置
73 張力付与部
80 方向変換機構
80a ローラー
80b ローラー
90 方向変換機構
90a ローラー
90b ローラー
100 衝撃試験装置
200 衝撃試験装置
300 衝撃試験装置
A 支点
G 地面
W 作業者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12