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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】スムージー様飲料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/02 20060101AFI20231120BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20231120BHJP
   A23L 29/269 20160101ALI20231120BHJP
【FI】
A23L2/02 Z
A23L2/52 101
A23L29/269
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020062348
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021158951
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006884
【氏名又は名称】株式会社ヤクルト本社
(74)【代理人】
【識別番号】100145517
【弁理士】
【氏名又は名称】宮原 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】芳川 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】牧野 譲
【審査官】高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-154461(JP,A)
【文献】特開2018-000170(JP,A)
【文献】「フルーツ青汁」を新発売,Yakult News Release[オンライン],2020年02月19日,検索日:2023年8月15日,https://www.yakult.co.jp/company/news/file.php?type=release&id=158330382012.pdf
【文献】加藤和子,スクシノグリカンの特徴と用途展開,月刊フードケミカル,2020年03月01日,36号,31-32頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
野菜搾汁液または果実搾汁液と、不溶性食物繊維と、アグロバクテリウムスクシノグリカンとを含有することを特徴とするスムージー様飲料を製造する方法であって、下記の工程(a)、(b)及び(c)を有することを特徴とするスムージー様飲料の製造方法。
工程(a):不溶性食物繊維を水に添加し、剪断力を加えながら65~90℃の温度で30~75分間分散溶解する工程。
工程(b):工程(a)で得られた分散溶解液に、アグロバクテリウムスクシノグリカンを加え、混合液を得る工程。
工程(c):工程(b)で得られた混合液と、野菜搾汁液または果実搾汁液とを混合する工程。
【請求項2】
工程(b)が、工程(a)で得られた分散溶解液にアグロバクテリウムスクシノグリカンを加えた後、更に65~90℃の温度で、剪断力を加えながら1~15分間アグロバクテリウムスクシノグリカンを分散溶解し混合液を得るものである、請求項記載のスムージー様飲料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スムージー特有のざらつき感(繊維感)ともったり感を併せ持つとともに、経時的な安定性を有するスムージー様飲料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スムージーは、野菜や果物を組み合わせシャーベット状にした飲料で、伝統的には凍らせた野菜や果物をミキサーにかけて製造されていた。近年では、素材を凍らせず生のまま氷とミキサーにかけることも多く、その特有のざらつき感(繊維感)、もったり感から市場での人気も高まっている。
【0003】
このため、スムージー飲料の商品化が行われているものの、工業的に製造する場合に野菜や果物の破砕、裁断物を使用すると製造コストが上昇し、最終製品の物性を安定させ難い。野菜や果物を裏ごし等で搾汁した搾汁液やピューレを用い、スムージー飲料特有のざらつきのある繊維感やもったりとした粘度感を得るためには、搾汁液やピューレを多量に使用することが必要となりコスト上昇に繋がると共に、原料の安定確保が難しくなるという問題があった。
【0004】
こうした嗜好面、物性面での課題に対応するため、野菜や果物の搾汁液やピューレの配合量を必要最小限に抑え、キサンタンガム等の増粘剤を併用したスムージー様飲料が製造されてきたが、増粘剤は、もったりとした粘度感を付与できるものの、食感がなめらかであり、スムージー飲料特有のざらつき感(繊維感)を付与できるものではなかった。また、搾汁液に由来する不溶性固形分の経時的な沈殿、分離の抑止効果も十分とは言い難いものであった。
【0005】
増粘剤の利用について、例えば特許文献1には、タンパク質含有飲食品に、増粘剤としてキサンタンガム、ラムダカラギーナン及びグアーガムを特定比率で配合し、溶解することで、短時間にスムージー様の食感と良好な風味を有する飲料を調製できることが記載されている。しかし、当該飲料は、調製後即時に飲むことを想定したものであり、容器入り飲料のように、長期保存の必要な飲料の安定性を保証できるものではなく、嗜好的にもスムージー特有の繊維感等を十分に得られるものではなかった。
【0006】
特許文献2には、野菜の粉砕物、野菜汁の乾燥粉末、果実の粉砕物、及び果汁の乾燥粉末からなる群より選択される1種以上と、不溶性食物繊維と、水溶性食物繊維とを含有する粉末状組成物を用いることで、水と混合するだけで簡便に食感に優れたスムージー様飲料を製造できることが開示されている。しかし、当該飲料も長期保存の必要な飲料を製造する場合の安定性やコスト面の問題を改善できるものではなかった。
【0007】
一方、アグロバクテリウムスクシノグリカンは、増粘剤等を用途として食品添加物に認められており、各種飲食品に利用されている。例えば、特許文献3には、スクシノグリカンを飲料用安定化組成物として使用することが開示されている。非特許文献1にもスクシノグリカンの飲食品への使用例が複数開示されている。飲料に使用した場合には、すっきりとした後口のトロミを付与できるとされており、スムージー特有の繊維感は得られないものとされている。
【0008】
また、アグロバクテリウムスクシノグリカンには、単純に温水で溶解させようとすると、ダマが生じやすく溶解に長時間を要するという問題もあった。こうした状況から、スムージー特有の嗜好性を有する飲料を低コストかつ円滑に製造することが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第5755435号公報
【文献】特開2016-154461号公報
【文献】特開2018-000170号公報
【非特許文献】
【0010】
【文献】岩本怜著 「スクシノグリカンの食品への応用」日本調理科学会誌 Vol.48,No.4,331~332 2015年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明は、スムージー特有の食感を有し、不溶性固形分の沈殿、分離が抑えられたスムージー様飲料を簡易に製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、野菜搾汁液または果実搾汁液と、不溶性食物繊維と、アグロバクテリウムスクシノグリカンとを混合溶液とすることで、スムージーが有するざらつきのある繊維感やもったりとした粘度感を有し、経時的な安定性に優れたスムージー様飲料を製造できることを見出した。また、不溶性食物繊維を水に添加し、一定温度下で剪断力を加えながら分散溶解し、当該分散溶解液にアグロバクテリウムスクシノグリカンを混合した後、野菜搾汁液または果実搾汁液と混合することで、円滑にスムージー感に優れたスムージー様飲料を製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明は野菜搾汁液または果実搾汁液と、不溶性食物繊維と、アグロバクテリウムスクシノグリカンとを含有することを特徴とするスムージー様飲料を提供するものである。
【0014】
また、本発明は、下記の工程(a)、(b)及び(c)を有することを特徴とするスムージー様飲料の製造方法を提供するものである。
【0015】
工程(a):不溶性食物繊維を水に添加し、剪断力を加えながら65~90℃の温度で30~75分間分散溶解する工程。
【0016】
工程(b):工程(a)で得られた分散溶解液に、アグロバクテリウムスクシノグリカンを加え、混合液を得る工程。
【0017】
工程(c):工程(b)で得られた混合液と、野菜搾汁液または果実搾汁液とを混合する工程。
【発明の効果】
【0018】
発明のスムージー様飲料の製造方法は、従来の課題であった不溶性食物繊維の分散、溶解時のダマ発生を改善する。従って、本発明により、風味良好なスムージー様飲料を低コストかつ円滑に提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明でいうスムージー様飲料とは、スムージーのようなざらつきのある繊維感やもったりとした粘度感を併せ持つ飲料をいう。ここでのもったり感とは、摂食時に、口内で感じられる重量感があり、やや粘性のある舌触りと飲みごたえを指す。また、ここでの繊維感(ざらつき感)とは、植物組織を粗濾ししたような舌触りと歯ざわりを指す。
【0020】
本発明において、「搾汁液」は特に限定されるものではなく、野菜または果実を絞って得た野菜汁または果汁であればよい。野菜汁、果汁には、ピューレ(野菜または果物を生のままもしくは加熱し、電動ミキサーなどですり潰した後、細かな網状の裏ごし器を通過させて得たもの)も含まれる。野菜または果実として、乾燥後、微粉末とした素材を使用することもできる。野菜汁には、青汁、すなわちケールまたは大麦若葉の搾汁液も含まれる。搾汁前に加水やブランチング処理等の前処理を行ったものや、搾汁後にアミラーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ等を用い酵素処理した処理液、加熱により水分を蒸発させて濃縮した濃縮液、適切な濃度に加水した搾汁液等も含まれる。搾汁液を得る具体的な方法としては、例えば、野菜または果実を洗浄し、熱水または蒸気でブランチング処理した後、冷却、水切りをして、ミル、ホモジナイザー、グレーダー等を用いて破砕し、デカンタ、フィルタープレス等を用いて搾汁することが挙げられる。
【0021】
搾汁に供する野菜としては、例えばケール、大麦若葉、トマト、にんじん、有色甘藷、赤ピーマン、いんげん豆、モロヘイヤ、メキャベツ、レタス、ケール、ピーマン、大根、白菜、アスパラガス、グリーンピース、セロリ、しそ、ブロッコリー、かぼちゃ、あしたば、小松菜、ごぼう、ゴーヤ、しょうが、緑豆スプラウト(もやし)、パセリ、クレソン、キャベツ、ラディッシュ、ほうれん草、 みつばなどが挙げられる。搾汁に供する果物としては、例えばアップル、バナナ、グレープ、オレンジ、ピーチ、キウイ、パイナップル、グレープフルーツなどが挙げられ、スムージー様飲料の繊維感、もったり感が十分に得られる点で、ケール、大麦若葉、アップル、バナナのいずれかを用いることが好ましい。
【0022】
本発明のスムージー様飲料において、野菜汁は、スムージー様飲料全量に対し、ストレート野菜汁換算で、10~50質量部の割合で配合することが、良好な野菜汁感を付与し、製品の風味を良好にする点から好ましく、特に、10~30質量%が好ましい。果汁は、スムージー様飲料全量に対し、ストレート果汁換算で、10~50質量部の割合で配合することが、良好な果汁感を付与し、製品の風味を良好にする点から好ましく、特に20~50質量部が好ましい。野菜汁と果汁を併用する場合、両者の配合比率は、ストレート野菜汁または果汁換算で、野菜汁:果汁を2:8~4:6とすることが好ましく、特に2:8~3:7が好ましく、総配合量は10~50質量%とすることが好ましい。なお、本発明において、ストレート搾汁液(ストレート野菜汁、ストレート果汁)換算とは、JAS法で定められている果汁および野菜汁については、規定のストレートBrix時の重量であり、定められていないものについては、水等を加えずに搾汁した搾汁液のBrix時の重量をいう。
【0023】
本発明の不溶性食物繊維には、セルロース、ヘミセルロース、シトラスファイバーなどが含まれる。セルロース、ヘミセルロースとしては、植物の細胞壁由来の抽出、精製物が挙げられる。不溶性食物繊維の配合比は0.4質量%~0.7質量%が好ましい。
【0024】
アグロバクテリウムスクシノグリカンとは、アグロバクテリウム・ツメファシエンスが菌体外に生産する細胞外多糖類であり、この微生物の種菌を培養後、ガム質抽出、乾燥、粉砕したものであり、既存添加物名簿(平成8年4月16日厚生省告示第120号)に収載され、食品添加物としての使用が許可されている。アグロバクテリウムスクシノグリカンの配合比は0.03質量%~0.07質量%が好ましい。
【0025】
本発明のスムージー様飲料は、野菜または果実の搾汁液、不溶性食物繊維分散溶解液、アグロバクテリウムスクシノグリカン溶液をそれぞれ調製し、混合することで製造できる。
【0026】
不溶性食物繊維分散溶解液は、水または温水に不溶性食物繊維を分散溶解することで得られる。分散溶解工程では、65~90℃、好ましくは70~80℃の温水に不溶性食物繊維を投入し、剪断力を加えながら、30~75分間、好ましくは45~60分間、攪拌分散溶解することにより、スムージー様飲料特有のざらつき感(繊維感)、もったり感が増強される。剪断力を加える手段は特に限定されず、分散溶解を行うタンクまたは容器内で攪拌処理する方法、タンク等にホモミキサーを設置し、攪拌と同時にホモミキサーにより剪断力を加える方法などが挙げられる。または、溶解タンクと粉体溶解機(例:オサメ工業株式会社製パウブレンダー1500B型)を配管で接続し、溶解タンク内で攪拌分散溶解を行うと同時に、分散溶解液を粉体溶解機と溶解タンク間で循環させて、粉体溶解機のブレードの回転により剪断力を加えてもよい。
【0027】
アグロバクテリウムスクシノグリカンは、水または温水に溶解できるが、単独で溶解させた場合、ダマが発生しやすく、溶け残りが発生する可能性が高いため、作業効率面からは好ましくない。前記のように、65~90℃の温水に分散溶解した不溶性食物繊維の分散溶解液に、アグロバクテリウムスクシノグリカンを添加することで、ダマの発生が抑止され、短時間で溶解できるとともに、スムージー感が増強されるため好ましい。このとき、引き続き、1~15分間剪断力を加えながら溶解することが好ましい。この製造方法によれば、不溶性食物繊維とアグロバクテリウムスクシノグリカンの溶解タンクを別々に用意する必要がなく、生産効率も向上する。アグロバクテリウムスクシノグリカン添加後の分散溶解温度について、同溶解液は低温において粘度が高く、高温において低くなるため、送液性の観点から、60~80℃が好ましく、70~80℃が特に好ましい。不溶性食物繊維とアグロバクテリウムスクシノグリカンとは、同時に水に分散溶解してもよいが、スムージー様飲料の繊維感、もったり感を得るためには、不溶性食物繊維を水に分散溶解させた後、アグロバクテリウムスクシノグリカンを加えることが好ましい。
【0028】
野菜汁または果汁、不溶性食物繊維溶液、アグロバクテリウムスクシノグリカン分散溶解液の混合は、具体的には次のとおり行うことが好ましい。まず、野菜または果実を洗浄し、ブランチング処理した後、冷却、水切りをして、ミル破砕し、搾汁液を調製する。得られた搾汁液を濾過した後、調製用タンクに添加する。並行して、別の調製用タンク内で不溶性食物繊維を70℃の温水に加え、45分間攪拌溶解する。分散溶解が十分に行われたことを確認した後、アグロバクテリウムスクシノグリカンを加え、更に同様の温度で10分間攪拌溶解を継続する。その後、不溶性食物繊維とアグロバクテリウムスクシノグリカンの分散溶解液に搾汁液を加え、必要に応じて、甘味料、酸味料、色素、香料、安定剤等を投入する。得られた調合液は、均質化機で10~25MPa、好ましくは15~20MPaの均質化処理を行い、均質化後の調合液を加熱殺菌し、無菌的に容器へ充填することで容器入り飲料とできる。
【0029】
甘味料等の副原料としては、具体的には、蔗糖、異性化糖、グルコース、フラクトース、パラチノース、トレハロース、ラクトース、キシロース等の糖類、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、ラクチトール、パラチニット、還元水飴、還元麦芽糖水飴等の糖アルコール類、スクラロース、ステビア抽出物、ラカンカ抽出物等の高甘味度甘味料、蔗糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、レシチン等の乳化剤、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸等の酸味料、シトラス系、ベリー系等の香料等が挙げられる。この他にも、牛乳、ヤギ乳等の生乳、脱脂乳、粉乳からの還元乳、発酵乳等の乳成分、ビタミンA、ビタミンB類、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE等のビタミン類やカルシウム、鉄、マンガン、亜鉛等のミネラル類等を添加することが可能である。なお、これらの食品素材を添加する際の添加順序について、特に制限はない。
【0030】
こうして得られるスムージー様飲料は、スムージー特有の繊維感、もったり感を有し、保存安定性に優れている。
【実施例1】
【0031】
以下、実施例を挙げて本発明の内容をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら制約されるものではない。
【0032】
実施例1
【0033】
(1)野菜搾汁液、果実搾汁液の調製
【0034】
野菜搾汁液(野菜汁)は、原料野菜を洗浄後、ブランチングして、デカンタを用いて搾汁し、得られた搾汁液を加熱殺菌して遠心分離機で異物を取り除いて調製した。果実搾汁液(果汁)は、果実を洗浄後、グラインダーミルにて破砕して、ベルトプレスにて搾汁し、得られた搾汁液を加熱殺菌した後に遠心分離機で異物を取り除いて調製した。
【0035】
(2)混合液の調製
【0036】
表1に示す処方で飲料を調製した。表中の数値は全て全量100g中の質量(g)である。不溶性食物繊維または水溶性食物繊維を80℃の温水に投入し、粉体溶解機(オサメ工業株式会社製パウブレンダー1500B型)で剪断力をかけながら、45分間、攪拌分散溶解した。この溶液に、増粘安定剤を加え、更に75℃で同様に剪断力をかけながら、10分間、分散溶解を継続した。その後、(1)の野菜及び果実搾汁液と混合し、酸味料としてリンゴ酸をpH3.5となるように添加し、甘味料としてステビア抽出物およびラカンカ抽出物、香料を適量添加した。得られた混合液を、均質化機を用いて20MPaで均質化し、加熱殺菌することで、飲料を製造した。
【0037】
こうして製造した飲料を専門パネラー10名で飲用し、以下のようにスムージー特有の繊維感、もったり感、全体的な風味を評価した。また、25℃以下で14日保管した場合の安定性を上清部の液層の高さを主な指標として確認した。なお、以下の実施例では全て、アップル濃縮果汁は、アップル混濁濃縮果汁(ブラジルヤクルト商工社製)を、大麦若葉濃縮汁は、大麦若葉濃縮汁(株式会社長野サンヨーフーズ社製)を、不溶性食物繊維はヘルバセルAQプラスCF-D/100(ヘルバフード社製)を、水溶性食物繊維は、イヌリン(フジ日本精糖株式会社製)を、アグロバクテリウムスクシノグリカンはサクシノグリカンJ(DSP五協フード&ケミカル株式会社製)を、キサンタンガムはビストップD-3000(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)を、発酵セルロースはサンアーティストPN(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)を、寒天はウルトラ寒天イーナ(伊那食品工業株式会社製)を使用した。
【0038】
<繊維感、もったり感評価指標>
【0039】
(指標) (評価)
-1 : 繊維感、もったり感のどちらかが感じられない。
0 : 繊維感、もったり感がわずかに感じられる。
+1 : 繊維感、もったり感が感じられる。
+2 : 繊維感、もったり感が十分に感じられる。
【0040】
<風味評価指標>
【0041】
(指標) (評価)
-1 : 風味が悪い。
0 : 風味が普通。
+1 : 風味が良い。
+2 : 風味が非常に良い。
【0042】
<物性安定性評価指標>
【0043】
(指標) (評価)
-1 : 50%以上が上清部であるか、または凝集物が見られる。
0 : 20~50%が上清部である。
+1 : 20%程度が上清部である。
+2 : 上清部がない。
【0044】
【表1】
【0045】
その結果、表2に示す通り、実施品1では、スムージー特有の繊維感、もったり感を併せ持つ良好な風味が得られ、安定性も良好なものであった。なお、表2の「繊維」は「繊維感ともったり感」をいい、以下の表中では、同義として記載する。
【0046】
【表2】
【0047】
実施例2
【0048】
実施例1と同様に、表3の処方にて飲料を調製した(表中の数値の単位は質量%)。ただし、添加する野菜搾汁液、果実搾汁液の配合比を変化させた。なお、不溶性食物繊維とアグロバクテリウムスクシノグリカン、リンゴ酸、ステビア抽出物およびラカンカ抽出物、香料の添加量は、実施例1と同量として評価した。
【0049】
得られた飲料を、専門パネラー10名で飲用し、以下のように野菜汁感または果汁感を評価した。また、実施例1と同様に全体的な風味を評価した。
【0050】
<野菜感、果汁感評価指標>
【0051】
(指標) (評価)
-2 : 野菜汁感または果汁感がない。
-1 : 野菜汁感または果汁感がわずかに感じられる。
0 : 野菜汁感または果汁感が感じられる。
+1 : 野菜汁感または果汁感が十分に感じられる。
+2 : 野菜汁感または果汁感が強く、土臭さや苦み等が感じられる
【0052】
【表3】
【0053】
その結果、表4に示す通り、野菜搾汁液については、10~50質量%、特に10~30質量%の添加量で、果実搾汁液については、10~50質量%、特に20~50質量%の添加量で、野菜汁感または果汁感が優れ、良好な風味であった。
【0054】
【表4】
【0055】
実施例3
【0056】
実施例1と同様に、表5の処方にて飲料を調製した。ただし、添加する野菜搾汁液、果実搾汁液の総量は、質量比で40%とし、その中で、野菜搾汁液と果実搾汁液の配合比率を変更した。
【0057】
なお、不溶性食物繊維とアグロバクテリウムスクシノグリカン、リンゴ酸、ステビア抽出物およびラカンカ抽出物、香料の添加量は、実施例1と同量として評価した。得られた飲料を、専門パネラー10名で飲用し、以下のように野菜汁感と果汁感のバランスを評価した。
【0058】
<バランス評価指標>
【0059】
(指標) (評価)
-1 : 野菜汁感および果汁感のバランスが悪い。
0 : 野菜汁感および果汁感のバランスが普通。
+1 : 野菜汁感および果汁感のバランスがちょうどよい。
+2 : 野菜汁感および果汁感のバランスが良い。
【0060】
【表5】
【0061】
その結果、表6に示す通り、野菜搾汁液と果実搾汁液の配合比率は、2:8~4:6において、野菜汁感と果汁感がバランスよく感じられ、健康感があり良好な風味であった。
【0062】
【表6】
【0063】
実施例4
【0064】
実施例1と同様に、表7の処方にて飲料を調製した。ただし、添加する不溶性食物繊維の添加量を変更し、野菜搾汁液、果実搾汁液の総量は、質量比で40%とし、その中で、野菜搾汁液と果実搾汁液の配合比率は2:8とした。
【0065】
また、アグロバクテリウムスクシノグリカン、リンゴ酸、ステビア抽出物およびラカンカ抽出物、香料の添加量は、実施例1と同量として評価した。得られた飲料を、専門パネラー10名で飲用し、以下のように繊維感ともったり感を評価した。また、実施1と同様に、全体的な風味を評価した。
【0066】
<繊維感、もったり感評価指標>
【0067】
(指標) (評価)
-1 : 繊維感、もったり感がない。
0 : 繊維感、もったり感がわずかに感じられる。
+1 : 繊維感、もったり感が感じられる。
+2 : 繊維感、もったり感が十分に感じられる。
+3 : 繊維感、もったり感が強すぎる
【0068】
【表7】
【0069】
その結果、表8に示す通り、不溶性食物繊維の添加量は、0.4~0.7%において、良好な繊維感が感じられ、良好な風味であった。
【0070】
【表8】
【0071】
実施例5
【0072】
実施例1と同様に、表9の処方にて飲料を調製した。ただし、添加するアグロバクテリウムスクシノグリカンの添加量を変更し、野菜搾汁液、果実搾汁液の総量は、質量比で40%とし、その中で、野菜搾汁液と果実搾汁液の配合比率は2:8とした。不溶性食物繊維の添加量は、0.5%とした。また、リンゴ酸、ステビア抽出物およびラカンカ抽出物、香料の添加量は実施例1と同量として評価した。
【0073】
得られた飲料を、専門パネラー10名で飲用し、実施例4と同様に繊維感ともったり感を、実施例1と同様に全体的な風味を評価した。また、25℃下で14日保管した場合の安定性を判定するため上清部の液層の高さを確認した。
【0074】
<物性安定性評価指標>
【0075】
(指標) (評価)
-1 : 50%以上が上清部
0 : 20~50%が上清部
+1 : 20%程度が上清部
+2 : 上清部がない
【0076】
【表9】
【0077】
その結果、表10に示す通り、アグロバクテリウムスクシノグリカンの添加量は、0.03~0.07%において、良好な繊維感が感じられながらも滑らかな舌触りで良好な風味であった。また、物性安定性については、0.03%以上で上清部は認められず良好であった。
【0078】
【表10】
【0079】
実施例6
【0080】
70~80℃の熱水に2質量%濃度で不溶性食物繊維を分散し、粉体溶解機を用いて75分間の循環溶解を実施し、不溶性食物繊維分散溶解液を得た。循環溶解時間中に、不溶性食物繊維溶液を15分毎にサンプリングし、それぞれの混合液に、(1)アグロバクテリウムスクシノグリカン(製品中の濃度0.06質量%)、(2)野菜汁(同10質量%)、(3)果汁(同30質量%)、(4)酸味料(適量)、(5)甘味料(適量)を混合し、得られた調合液を、均質化機を用いて20MPaで均質化した。均質化後の液を加熱殺菌し、無菌的に容器に充填し、製品(製造例1~6)を得た(不溶性食物繊維濃度は0.5質量%)。各製品について、以下の指標により風味評価を行った。
【0081】
また、70~80℃の熱水(原料水)または2質量%不溶性食物繊維分散液(70~80℃の熱水に2質量%濃度で不溶性食物繊維を分散し、粉体溶解機を用いて60分間の循環溶解を実施して得た分散溶解液)に、アグロバクテリウムスクシノグリカンを混合し、粉体溶解機を用いて0~15分間の循環溶解を実施し、得られた調合液を、均質化機を用いて、20MPaで均質化して混合液(製造例7~16)を得て、以下の指標により溶解性評価を行った。
【0082】
さらに、70~80℃の熱水に2質量%濃度で不溶性食物繊維を分散し、粉体溶解機を用いて60分間の循環溶解を実施して得られた不溶性食物繊維溶液に、(1)アグロバクテリウムスクシノグリカン、(2)野菜汁、(3)果汁、(4)酸味料、(5)甘味料等を混合し、粉体溶解機を用いて10分間の循環溶解を実施し、得られた調合液を、均質化機を用いて、10~25MPaで均質化した。均質化後の液を加熱殺菌し、無菌的に容器に充填し、製品(製造例17~20)を得て、以下の指標により風味評価を行った。
【0083】
<繊維感、もったり感評価指標>
【0084】
(指標) (評価)
-1 : 繊維感、もったり感がない。
0 : 繊維感、もったり感がわずかに感じられる。
+1 : 繊維感、もったり感が感じられる。
+2 : 繊維感、もったり感が十分に感じられる。
【0085】
<溶解性評価指標>
【0086】
(指標) (評価)
-1 : ダマが多く発生。
0 : ダマが少量発生。
+1 : ダマなし。
【0087】
その結果、循環溶解が30分間以上の場合に、最終製品で十分な繊維感が得られ、特に45分間以上が好ましかった(表11)。アグロバクテリウムスクシノグリカンは、単独溶解するとダマとなり溶け残りが発生しやすいが、不溶性食物繊維の分散液に添加し、溶解することで溶解性が上がり、ダマにならないことが明らかとなった(表12)。均質化条件については、10MPa~25MPaの間で調製した結果、いずれも良好なもったり感および繊維感が得られたが、よりスムージーらしい風味を得るためには、15MPa~25MPaが好ましかった(表13)。なお、(1)~(5)の混合順序はいずれの順番であっても製品の風味に影響を与えなかった。
【0088】
【表11】
【0089】
【表12】
【0090】
【表13】