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特許7387525乗客コンベア、乗客コンベアの利用者移動監視装置、及び乗客コンベアの利用者移動監視プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】乗客コンベア、乗客コンベアの利用者移動監視装置、及び乗客コンベアの利用者移動監視プログラム
(51)【国際特許分類】
   B66B 31/00 20060101AFI20231120BHJP
【FI】
B66B31/00 C
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020069653
(22)【出願日】2020-04-08
(65)【公開番号】P2021165194
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2022-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】591036457
【氏名又は名称】三菱電機エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】浅野 博樹
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-013745(JP,A)
【文献】特開2017-088381(JP,A)
【文献】特開2018-203496(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0084660(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108052991(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環することにより利用者を搬送する搬送体と同期して循環する移動手摺を有している循環部に、前記循環部の移動方向に互いに間隔をおいて設けられており、それぞれ対応する通信領域内にいる前記利用者が携帯している電子媒体に識別情報を送信する複数のIDタグ、及び
前記電子媒体によって受信された前記識別情報に基づいて、前記搬送体に乗っている間の前記利用者の前記搬送体に対する移動を検出する移動検出部を有している制御装置
を備え
前記制御装置は、
前記移動検出部における検出結果に基づいて、前記利用者に対応する情報保持装置にサービス情報を付与する情報付与部
をさらに有し、
前記制御装置は、
前記電子媒体によって受信された前記識別情報に基づいて、回数制限設定時間内に前記利用者が同一の前記搬送体に乗る回数を検出する回数検出部
をさらに有しており、
前記回数検出部は、検出された回数が設定回数以上となったとき、前記情報付与部によって前記情報保持装置に付与された前記サービス情報の少なくとも一部を無効化する乗客コンベアの利用者移動監視装置。
【請求項2】
前記情報付与部は、前記利用者が前記搬送体に乗っている間に前記搬送体に対して継続して停止していたことを検出すると、前記情報保持装置に前記サービス情報を付与する請求項記載の乗客コンベアの利用者移動監視装置。
【請求項3】
循環することにより利用者を搬送する搬送体と同期して循環する移動手摺を有している循環部に、前記循環部の移動方向に互いに間隔をおいて設けられており、それぞれ対応する通信領域内にいる前記利用者が携帯している電子媒体に識別情報を送信する複数のIDタグ、及び
前記電子媒体によって受信された前記識別情報に基づいて、前記搬送体に乗っている間の前記利用者の前記搬送体に対する移動を検出する移動検出部を有している制御装置
を備え
前記利用者を誘導するための光を前記搬送体上に投射する投光装置
をさらに備え、
前記制御装置は、
前記電子媒体によって受信された前記識別情報に基づいて、前記投光装置を制御する投光制御部
をさらに有している乗客コンベアの利用者移動監視装置。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記移動検出部における検出結果に基づいて、前記利用者に対応する情報保持装置にサービス情報を付与する情報付与部
をさらに有している請求項記載の乗客コンベアの利用者移動監視装置。
【請求項5】
前記情報付与部は、前記利用者が前記搬送体に乗っている間に前記搬送体に対して継続して停止していたことを検出すると、前記情報保持装置に前記サービス情報を付与する請求項記載の乗客コンベアの利用者移動監視装置。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記電子媒体によって受信された前記識別情報に基づいて、回数制限設定時間内に前記利用者が同一の前記搬送体に乗る回数を検出する回数検出部
をさらに有しており、
前記回数検出部は、検出された回数が設定回数以上となったとき、前記情報付与部によって前記情報保持装置に付与された前記サービス情報の少なくとも一部を無効化する請求項又は請求項に記載の乗客コンベアの利用者移動監視装置。
【請求項7】
請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の利用者移動監視装置
を備えている乗客コンベア。
【請求項8】
循環することにより利用者を搬送する搬送体と同期して循環する移動手摺を有している循環部に、前記循環部の移動方向に互いに間隔をおいて設けられており、それぞれ対応する通信領域内にいる前記利用者が携帯している電子媒体に識別情報を送信する複数のIDタグのうち、少なくともいずれか1つの前記IDタグから送信され、前記電子媒体によって受信された前記識別情報に基づいて、前記搬送体に乗っている間の前記利用者の前記搬送体に対する移動を検出する移動検出処理
をコンピュータに実行させ
前記移動検出処理における検出結果に基づいて、前記利用者に対応する情報保持装置に、サービス情報を付与する情報付与処理
を前記コンピュータに実行させ、
前記電子媒体によって受信された前記識別情報に基づいて、回数制限設定時間内に前記利用者が同一の前記搬送体に乗る回数を検出し、検出された回数が設定回数以上となったとき、前記情報付与処理によって前記情報保持装置に付与された前記サービス情報の少なくとも一部を無効化する回数検出処理
を前記コンピュータに実行させる乗客コンベアの利用者移動監視プログラム。
【請求項9】
前記情報付与処理は、前記利用者が前記搬送体に乗っている間に前記搬送体に対して継続して停止していたことを検出すると、前記サービス情報を前記情報保持装置に付与する処理である請求項8記載の乗客コンベアの利用者移動監視プログラム。
【請求項10】
循環することにより利用者を搬送する搬送体と同期して循環する移動手摺を有している循環部に、前記循環部の移動方向に互いに間隔をおいて設けられており、それぞれ対応する通信領域内にいる前記利用者が携帯している電子媒体に識別情報を送信する複数のIDタグのうち、少なくともいずれか1つの前記IDタグから送信され、前記電子媒体によって受信された前記識別情報に基づいて、前記搬送体に乗っている間の前記利用者の前記搬送体に対する移動を検出する移動検出処理
をコンピュータに実行させ
前記利用者を誘導するための光を前記搬送体上に投射する投光装置を、前記電子媒体によって受信された前記識別情報に基づいて制御する投光制御処理
を前記コンピュータに実行させる乗客コンベアの利用者移動監視プログラム。
【請求項11】
前記移動検出処理における検出結果に基づいて、前記利用者に対応する情報保持装置に、サービス情報を付与する情報付与処理
を前記コンピュータに実行させる請求項10記載の乗客コンベアの利用者移動監視プログラム。
【請求項12】
前記情報付与処理は、前記利用者が前記搬送体に乗っている間に前記搬送体に対して継続して停止していたことを検出すると、前記サービス情報を前記情報保持装置に付与する処理である請求項11記載の乗客コンベアの利用者移動監視プログラム。
【請求項13】
前記電子媒体によって受信された前記識別情報に基づいて、回数制限設定時間内に前記利用者が同一の前記搬送体に乗る回数を検出し、検出された回数が設定回数以上となったとき、前記情報付与処理によって前記情報保持装置に付与された前記サービス情報の少なくとも一部を無効化する回数検出処理
を前記コンピュータに実行させる請求項11又は請求項12に記載の乗客コンベアの利用者移動監視プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乗客コンベア、乗客コンベアの利用者移動監視装置、及び乗客コンベアの利用者移動監視プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のエスカレーター踏段歩行抑制システムは、踏段歩行判定装置と、ポイント付与装置とを有している。踏段歩行判定装置は、上階端末装置と、下階端末装置とを有している。上階端末装置は、上階の階床に設けられている。下階端末装置は、下階の階床に設けられている。
【0003】
上階端末装置及び下階端末装置は、利用者が所持している電子媒体との間でそれぞれ非接触通信を行う。踏段歩行判定装置は、上階端末装置と電子媒体との間で非接触通信を行った時刻と、下階端末装置と電子媒体との間で非接触通信を行った時刻とに基づいて、利用者が踏段を歩行したか否かを判定する。
【0004】
踏段歩行判定装置によって、利用者が踏段を歩行していないと判定されると、ポイント付与装置は、利用者が所持している電子媒体にポイントを付与する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-203496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような従来のエスカレーター踏段歩行抑制システムでは、エスカレーターに乗ってから降りるまでの時間によって、利用者の歩行の有無が判定される。このため、エスカレーターに乗ってから降りるまでの途中における利用者の状態は、把握することができない。従って、例えば、利用者が踏段を上がったり下がったりした場合でも、エスカレーターに乗ってから降りるまでの時間が適正であれば、歩行していないと判定されてしまう。
【0007】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、搬送体に乗っている間の搬送体に対する利用者の移動をより正確に検出することができる乗客コンベア、乗客コンベアの利用者移動監視装置、及び乗客コンベアの利用者移動監視プログラムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る乗客コンベアの利用者移動監視装置は、循環することにより利用者を搬送する搬送体と同期して循環する移動手摺を有している循環部に、循環部の移動方向に互いに間隔をおいて設けられており、それぞれ対応する通信領域内にいる利用者が携帯している電子媒体に識別情報を送信する複数のIDタグ、及び電子媒体によって受信された識別情報に基づいて、搬送体に乗っている間の利用者の搬送体に対する移動を検出する移動検出部を有している制御装置を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本開示の乗客コンベア、乗客コンベアの利用者移動監視装置、及び乗客コンベアの利用者移動監視プログラムによれば、搬送体に乗っている間の搬送体に対する利用者の移動をより正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1によるエスカレーターを示す平面図である。
図2】実施の形態1による利用者移動監視装置を示すブロック図である。
図3図2のIDタグの一例を示すブロック図である。
図4図2の制御装置の動作を示すフローチャートである。
図5】利用者が搬送体に対して移動しなかった場合における利用者移動監視装置及び電子媒体の信号処理工程を示すシーケンス図である。
図6】実施の形態2による利用者移動監視装置を示すブロック図である。
図7図6の投光装置による投光状態の一例を示す平面図である。
図8図6の投光制御部の動作の一例を示すフローチャートである。
図9】実施の形態1、2の制御装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1によるエスカレーターを示す平面図である。図において、エスカレーターは、循環部1を有している。循環部1は、搬送体2と一対の移動手摺3とを有している。搬送体2は、複数の踏段4を有している。複数の踏段4は、無端状に連結されている。
【0012】
搬送体2は、循環することにより利用者を搬送する。図1では、利用者として、1つの踏段4上に停止している利用者5Aと、搬送体2上を矢印方向へ歩行している利用者5Bとが示されている。
【0013】
搬送体2の循環経路は、往路区間と、復路区間と、上階折り返し区間と、下階折り返し区間とを有している。往路区間は、利用者を乗せる区間である。復路区間は、往路区間の下方に位置している。上階折り返し区間は、上階において往路区間と復路区間とを繋ぐ区間である。下階折り返し区間は、下階において往路区間と復路区間とを繋ぐ区間である。
【0014】
一対の移動手摺3は、搬送体2の幅方向両側に配置されている。搬送体2の幅方向は、図1の左右方向である。また、一対の移動手摺3は、搬送体2と同期して循環する。
【0015】
各移動手摺3には、全周に渡って複数のIDタグ11が設けられている。複数のIDタグ11は、移動手摺3の移動方向に互いに等間隔をおいて設けられている。実施の形態1では、各移動手摺3において、全ての踏段4のそれぞれに対して1つずつのIDタグ11が設けられている。各IDタグ11は、移動手摺3の上面に固定されている。移動手摺3の上面とは、移動手摺3の往路において上となる面である。
【0016】
各IDタグ11としては、例えばRFID(Radio Frequency Identification)タグが用いられている。また、RFIDタグとしては、例えばIC(Integrated Circuit)タグが用いられている。各IDタグ11は、固有の識別情報を保持している。
【0017】
図2は、実施の形態1による利用者移動監視装置を示すブロック図である。図において、利用者移動監視装置10は、複数のIDタグ11と、制御装置12とを有している。制御装置12は、図示しない制御盤に設けられている。制御盤は、エスカレーターの制御盤と共用の制御盤であっても、エスカレーターの制御盤とは別の制御盤であってもよい。また、制御盤は、例えば、図示しないトラス内に設置されている。
【0018】
制御装置12は、利用者が携帯している電子媒体6と無線通信可能となっている。また、電子媒体6は、複数のIDタグ11のそれぞれと非接触で通信可能となっている。複数のIDタグ11は、それぞれ対応する通信領域内にいる利用者が携帯している電子媒体6に識別情報を送信する。
【0019】
各IDタグ11は、通信領域内で設定通信時間以上通信できないと識別情報を取得できないように調整されている。このため、例えば、利用者がIDタグ11に電子媒体6をかざしたままにするか、又は利用者が移動手摺3に近づいて停止していないと、電子媒体6は、識別情報を受信できない。
【0020】
電子媒体6としては、例えば、リーダが内蔵されている携帯電話、又は専用のリーダが用いられる。リーダは、識別情報を受信する。電子媒体6は、識別情報を受信すると、識別情報と、その電子媒体6に対応する媒体情報とを制御装置12に送信する。
【0021】
また、電子媒体6は、識別情報を受信すると、その識別情報を受信している時間をカウントする。また、電子媒体6は、いずれの識別情報も受信されなくなると、媒体情報と、識別情報と、その識別情報を受信した時間の累積値の情報である累積時間情報とを制御装置12に送信する。
【0022】
また、電子媒体6は、1つ目の識別情報を受信してから、いずれの識別情報も受信されなくなるまでに、受信した識別情報が変化した場合、識別情報毎の受信累積時間をカウントする。この場合、電子媒体6は、累積時間が最も長い識別情報とその累積時間情報とを制御装置12に送信する。
【0023】
制御装置12は、機能ブロックとして、移動検出部13、情報付与部としてのポイント付与部14、回数検出部15、及び通信部16を有している。
【0024】
移動検出部13は、電子媒体6によって受信された識別情報に基づいて、利用者が搬送体2に乗っている間の利用者の搬送体2に対する移動を検出する。具体的には、移動検出部13は、同一の電子媒体6によって受信された識別情報が、監視設定時間以上同じであった否か監視する。
【0025】
電子媒体6によって受信された識別情報が、監視設定時間以上同じであった場合、移動検出部13は、その電子媒体6を携帯している利用者が、搬送体2に乗っている間に搬送体2に対して移動していなかったと判定する。即ち、移動検出部13は、利用者が搬送体2に対して継続して停止していたことを検出する。
【0026】
電子媒体6によって受信された識別情報が、監視設定時間以上同じでなかった場合、移動検出部13は、その電子媒体6を携帯している利用者が、搬送体2に乗っている間に搬送体2に対して移動したと判定する。即ち、移動検出部13は、利用者が搬送体2に対して移動したことを検出する。
【0027】
ポイント付与部14は、移動検出部13における検出結果に基づいて、利用者に対応する情報保持装置にサービス情報を付与する。実施の形態1におけるサービス情報は、ポイントプログラムにおけるポイントである。また、実施の形態1における情報保持装置は、電子媒体6である。
【0028】
実施の形態1では、ポイント付与部14は、利用者が搬送体2に乗っている間に搬送体2に対して継続して停止していたことを検出すると、ポイントを電子媒体6に付与する。
【0029】
ポイント付与部14によって付与されるポイントとしては、店舗での支払いに利用できるポイント、店舗での割引特典として利用できる割引ポイント、交通施設における乗車料金又は定期券代の還元ポイント等が挙げられる。付与されるポイントの種類は、エスカレーターが設置されている施設に応じて切り替えられるようにしてもよい。
【0030】
IDタグ11からの識別情報の受信、制御装置12への情報の送信、及びポイントの受け取りは、電子媒体6にインストールされているソフトウエアによって実行される。
【0031】
回数検出部15は、電子媒体6によって受信された識別情報に基づいて、回数制限設定時間内に利用者が同一の搬送体2に乗る回数を検出する。また、回数検出部15は、検出された回数が設定回数以上となったとき、ポイント付与部14によって電子媒体6に付与されたポイントの少なくとも一部を無効化する。
【0032】
例えば、回数検出部15は、検出された回数が設定回数以上となったとき、最後に電子媒体6に付与されたポイントを無効化する。又は、回数検出部15は、設定回数の利用によって電子媒体6に付与された全てのポイントを無効化する。
【0033】
通信部16は、電子媒体6と制御装置12との間の信号の送信及び受信を行う。
【0034】
図3は、図2のIDタグ11の一例を示すブロック図である。IDタグ11は、タグIC21と、アンテナ22とを有している。タグIC21は、識別情報を記憶している。
【0035】
アンテナ22は、電子媒体6からのRF信号を受信しタグIC21に伝送するとともに、タグIC21に記憶されている識別情報をRF信号として電子媒体6に送信する。
【0036】
なお、IDタグ11は、アクティブタグでもパッシブタグでもよい。
【0037】
アクティブタグの場合、例えば、振動により自らが発電する方式としても、電池などでの電源を持つ方式としてもよい。
【0038】
パッシブタグの場合、例えば、図示しない欄干の内側板に設置されている電源からワイレスで給電する方式としても、電子媒体6からワイヤレスで給電する方式としてもよい。
【0039】
図4は、図2の制御装置12の動作を示すフローチャートである。制御装置12は、電子媒体6からの信号を受けると、電子媒体6毎に図4の動作を開始する。制御装置12は、電子媒体6からの信号を受けると、ステップS101において、時間のカウントを開始する。また、制御装置12は、ステップS102において、電子媒体6の媒体情報を記憶する。
【0040】
次に、制御装置12は、ステップS103において、累積時間情報を受信するまで待つ。累積時間情報を受信すると、制御装置12は、ステップS104において、ステップS101において開始した時間のカウントを終了する。そして、制御装置12は、ステップS105において、カウント開始からカウント終了までの計測時間を算出する。
【0041】
この後、制御装置12は、ステップS106において、累積時間情報における累積時間が監視設定時間以上であるか否かを判定する。監視設定時間は、計測時間を基準として設定される。例えば、監視設定時間は、計測時間に対して予め設定された割合、例えば90%の時間に設定される。
【0042】
累積時間が監視設定時間以上であった場合、制御装置12は、ステップS107において、電子媒体6に対してポイントを付与して、処理を終了する。累積時間が監視設定時間以上でなかった場合、制御装置12は、電子媒体6に対してポイントを付与せずに、処理を終了する。
【0043】
なお、図4では、回数検出部15の動作は省略されている。
【0044】
図5は、利用者が搬送体2に対して移動しなかった場合における利用者移動監視装置10及び電子媒体6の信号処理工程を示すシーケンス図である。
【0045】
図5において、S1は、電子媒体6の動作を表している。S2は、複数のIDタグ11のうち、電子媒体6に識別情報を送信しているIDタグであるIDタグ♯1の動作を表している。即ち、電子媒体6は、IDタグ♯1に対応する通信領域内に位置している。
【0046】
S3は、電子媒体6に識別情報を送信していない複数のIDタグ11のうちの1つであるIDタグ♯2の動作を表している。利用者がいないときのIDタグ11の動作も、S3と同じである。
【0047】
S4は、移動検出部13の動作を表している。S5は、ポイント付与部14の動作を表している。
【0048】
S111において、電子媒体6を携帯した利用者がエスカレーターに乗る。上方向運転及び下方向運転のどちらの場合も動作は同じであるので、特にエスカレーターの走行方向は限定しない。
【0049】
S121において、電子媒体6がIDタグ♯1と通信を行う。利用者が搬送体2に対して停止している場合、電子媒体6とIDタグ♯1とは、S112及びS221において、電子媒体6と通信したままとなる。
【0050】
また、S112において、電子媒体6は、IDタグ♯1を検出している時間を累積する。このとき、IDタグ♯2は、電子媒体6によって検出されていない。
【0051】
S141において、電子媒体6は、移動検出部13に対してIDタグ♯1を検出したことの情報を送信する。このとき、電子媒体6は、その媒体情報も移動検出部13に送信する。
【0052】
S441において、移動検出部13は、電子媒体6がIDタグ♯1を検出したことの情報を記憶する。また、移動検出部13は、電子媒体6から情報を受信した時刻を記憶し、時間のカウントを開始する。
【0053】
S113において、電子媒体6を携帯した利用者がエスカレーターから降りる。このとき、電子媒体6は、S142において、移動検出部13に対して、IDタグ♯1が非検出になったことの情報とIDタグ♯1を検出した累積時間情報とを送信する。この後、電子媒体6は、S113において、IDタグ♯1に関する情報をクリアする。
【0054】
S442において、移動検出部13は、時間のカウントを終了し、IDタグ♯1を検出したことの情報の受信からIDタグ♯1が非検出になったことの情報の受信までの時間を算出する。そして、移動検出部13は、累積時間情報における累積時間が監視設定時間以上であるか否かを判定する。図5の例では、累積時間は監視設定時間以上である。
【0055】
S451において、移動検出部13は、ポイント付与部14に対してポイントの付与を指示する。
【0056】
S551及びS511において、ポイント付与部14は、指定された電子媒体6にポイントを送信する。そして、S114において、電子媒体6は、ポイントを受信する。この後、S151において、電子媒体6は、ポイントを受信が完了したことをポイント付与部14に対して送信する。
【0057】
S552において、ポイント付与部14は、電子媒体6の情報を更新し、図5のシーケンスを終了する。
【0058】
制御装置12には、移動検出処理をコンピュータに実行させる利用者移動監視プログラムが保存されている。移動検出処理は、複数のIDタグ11のうち、少なくともいずれか1つのIDタグ11から送信され、電子媒体6によって受信された識別情報に基づいて、搬送体2に乗っている間の利用者の搬送体2に対する移動を検出する処理である。
【0059】
また、実施の形態1の利用者移動監視プログラムは、移動検出処理に加えて、情報付与処理をコンピュータに実行させる。情報付与処理は、移動検出処理における検出結果に基づいて、利用者に対応する情報保持装置に、サービス情報として、ポイントプログラムにおけるポイントを付与する処理である。
【0060】
また、実施の形態1の情報付与処理は、利用者が搬送体2に乗っている間に搬送体2に対して継続して停止していたことを検出すると、情報保持装置にポイントを付与する処理である。
【0061】
また、実施の形態1の利用者移動監視プログラムは、移動検出処理及び情報付与処理に加えて、回数検出処理をコンピュータに実行させる。回数検出処理は、電子媒体6によって受信された識別情報に基づいて、回数制限設定時間内に利用者が同一の搬送体2に乗る回数を検出する処理である。また、回数検出処理は、検出された回数が設定回数以上となったとき、情報付与処理によって情報保持装置に付与されたポイントの少なくとも一部を無効化する処理である。
【0062】
このような乗客コンベア、利用者移動監視装置10、及び利用者移動監視プログラムでは、電子媒体6によって受信された識別情報に基づいて、搬送体2に乗っている間の利用者の搬送体2に対する移動を検出する。このため、搬送体2に乗っている間の搬送体2に対する利用者の移動をより正確に検出することができる。
【0063】
また、乗降口のみで利用者の通過を検出する方法に比べて、乗降口で利用者が立ち止まることが抑制される。これにより、利用者がエスカレーターにスムーズに乗降することができる。
【0064】
また、移動検出部13における検出結果に基づいて、電子媒体6にポイントが付与される。このため、搬送体2上での利用者の歩行を抑制することができる。
【0065】
また、利用者が搬送体2に乗っている間に搬送体2に対して継続して停止していたことが検出されると、電子媒体6にポイントが付与される。このため、搬送体2上での利用者の歩行をより確実に抑制することができる。
【0066】
また、回数制限設定時間内に利用者が同一の搬送体2に乗る回数が設定回数以上となったとき、電子媒体6に付与されたポイントの少なくとも一部が無効化される。このため、利用者がポイント収集のために不必要にエスカレーターへの乗降を繰り返すことを抑制することができる。
【0067】
実施の形態2.
次に、図6は、実施の形態2による利用者移動監視装置10を示すブロック図である。実施の形態2の利用者移動監視装置10は、複数のIDタグ11及び制御装置12に加えて、投光装置31を有している。投光装置31は、利用者を誘導するための光を搬送体2上に投射する。光の投射方法としては、例えば、LED表示、又はプロジェクションマッピングが挙げられる。
【0068】
制御装置12は、機能ブロックとして、移動検出部13、ポイント付与部14、回数検出部15、及び通信部16に加えて、投光制御部17を有している。
【0069】
投光制御部17は、電子媒体6によって受信された識別情報に基づいて、投光装置31を制御する。通信部16は、電子媒体6と制御装置12との間の信号の送信及び受信を行うとともに、投光装置31と制御装置12との間の信号の送信及び受信を行う。
【0070】
実施の形態2の利用者移動監視プログラムは、移動検出処理、情報付与処理、及び回数検出処理に加えて、投光制御処理をコンピュータに実行させる。投光制御処理は、電子媒体6によって受信された識別情報に基づいて、投光装置31を制御する処理である。
【0071】
図7は、図6の投光装置31による投光状態の一例を示す平面図である。図7では、利用者として、搬送体2上の左側を矢印方向へ歩行している利用者5Cと、搬送体2上の右側を矢印方向へ歩行している利用者5Dとが示されている。
【0072】
投光装置31から投射される光として、利用者5Cの前方の踏段4上に停止位置マーク32Aが投射され、利用者5Dの前方の踏段4上に停止位置マーク32Bが投射されている。停止位置マーク32A及び停止位置マーク32Bは、単に投射しても、断続的に投射して点滅させてもよい。また、投光装置31は、「乗車位置」、「止まれ」等の文字情報を投射してもよい。
【0073】
図8は、図6の投光制御部17の動作の一例を示すフローチャートである。投光制御部17は、図8の動作を周期的に繰り返し実行する。
【0074】
投光制御部17は、ステップS801において、電子媒体6からの信号に基づいて、エスカレーターに利用者が乗ったかどうかを判定する。利用者が検知されなければ、投光制御部17は、処理を終了する。
【0075】
利用者が検知された場合、投光制御部17は、ステップS802において、電子媒体6から送信された識別情報に基づいて、利用者が搬送体2の進行方向の左右どちら側に乗ったかを判定する。
【0076】
利用者が左側に乗ったと判定された場合、投光制御部17は、ステップS803において、搬送体2の進行方向の左側の複数のIDタグ11のうち、利用者の前方に位置し、かつ乗り口に近い非検出のIDタグ11を探索する。非検出のIDタグ11とは、どの電子媒体6とも通信を行っていないIDタグである。
【0077】
利用者が右側に乗ったと判定された場合、投光制御部17は、ステップS804において、搬送体2の進行方向の右側の複数のIDタグ11のうち、利用者の前方に位置し、かつ乗り口に近い非検出のIDタグ11を探索する。
【0078】
この後、投光制御部17は、ステップS805において、探索されたIDタグ11に対応する踏段4上に投光装置31から光を投射させる。このとき、ステップS802において利用者が左側に乗ったと判定されている場合、投光装置31は、踏段4の幅方向の中心から左側に光を投射させる。また、ステップS802において利用者が右側に乗ったと判定されている場合、投光装置31は、踏段4の幅方向の中心から右側に光を投射させる。
【0079】
なお、探索されたIDタグ11に対応する踏段4は、探索されたIDタグ11の真横に位置する踏段4である。また、制御装置12には、複数のIDタグ11の識別情報と、各識別情報に対応するIDタグ11が搬送体2の左右どちら側に配置されているかの情報とが予め記憶されている。
【0080】
また、探索されたIDタグ11がどこに位置しているかは、それぞれIDタグ11の識別情報を読取可能な複数のセンサーを欄干に設置し、複数のセンサーからの情報を制御装置12で受信することにより検出することができる。
【0081】
また、探索されたIDタグ11がどこに位置しているかは、搬送体2の移動速度と、電子媒体6が検出したIDタグ11から探索されたIDタグ11までの距離とに基づいて、推定することもできる。この場合、制御装置12には、搬送体2の移動速度に関する情報と、複数のIDタグ11間の距離に関する情報と、複数のIDタグ11の並び順に関する情報とが予め記憶されている。
【0082】
また、エスカレーターの制御装置が各踏段4の位置を把握している場合、制御装置12は、各踏段4の位置情報をエスカレーターの制御装置から受けることによって、探索されたIDタグ11に対応する踏段4がどこに位置しているかを検出することもできる。この場合、制御装置12には、各IDタグ11の識別情報と、対応する踏段4とを関連付ける情報が予め記憶されている。
【0083】
実施の形態2の利用者移動監視プログラムは、移動検出処理、情報付与処理、及び回数検出処理に加えて、投光制御処理をコンピュータに実行させる。投射制御処理は、利用者を誘導するための光を搬送体2上に投射する投光装置31を、電子媒体6によって受信された識別情報に基づいて制御する処理である。
【0084】
他の構成及び動作は、実施の形態1と同様である。
【0085】
このような乗客コンベア、利用者移動監視装置10、及び利用者移動監視プログラムでは、電子媒体6によって受信された識別情報に基づいて、投光装置31が制御される。このため、利用者を効率的に搬送できるように、投光装置31からの光によって利用者を誘導することができる。
【0086】
また、搬送体2上の左側と右側とに分散するように利用者を誘導することによって、利用者をより効率的に搬送することができるとともに、搬送体2上での利用者の歩行を抑制することができる。
【0087】
なお、実施の形態2において、投光装置31からの光の投射は、利用者がエスカレーターに乗ってから投射設定時間の間だけ行っても、利用者がエスカレーターに乗ってから降りるまで行ってもよい。
【0088】
また、実施の形態2において、利用者の前方に他の利用者がいる場合、利用者の斜め前方に利用者を誘導してもよい。この場合、利用者の横に他の利用者がいないこと、利用者の斜め後方から歩行して来る他の利用者がいないこと等を確認することが必要である。
【0089】
また、実施の形態2では、1人の利用者に対して、1つの踏段4の半分の領域に光を投射したが、周囲に利用者がいないことが検出されている場合には、より広い領域に光を投射してもよい。これにより、高齢者、子供等の利用者に対しても、慌てさせずに誘導することができる。
【0090】
また、実施の形態1、2において、1つの踏段4上に2人の利用者が止まって乗っている場合に、付与するポイントを増加させてもよい。これにより、利用者をより効率的に搬送することができる。また、後方から歩いて来る利用者の追い越しが難しくなるため、搬送体2上での利用者の歩行をさらに抑制することができる。
【0091】
また、制御装置12は、電子媒体6にアプリケーションとしてインストールされてもよい。
【0092】
また、複数のIDタグ11は、移動手摺3の上面ではなく、側面に設けられてもよい。また、複数のIDタグ11は、移動手摺3に埋め込まれてもよい。また、複数のIDタグ11は、搬送体2に設けられてもよい。
【0093】
また、電子媒体6とIDタグ11との通信を行うためのアプリケーションは、電子媒体6に予めインストールされており、エスカレーターに乗り込む際に自動的に起動することが好ましい。これにより、利用者がアプリケーションを起動する手間を軽減することができる。
【0094】
また、電子媒体6のアプリケーションは、IDタグ11を検出しなくなってから終了設定時間後に自動的に終了することが好ましい。これにより、複数のエスカレーターを乗り継ぐ場合に、乗り継ぎの度にアプリケーションが終了したり起動したりすることを抑制できる。
【0095】
また、搬送体2に対する利用者の移動が検出された場合、移動を中止させるための警告メッセージを、建物、乗客コンベア、又は電子媒体6に設けられているスピーカーから流してもよい。
【0096】
また、搬送体2に対する利用者の移動が検出された場合、移動を中止させるための警告メッセージを、電子媒体6に設けられている表示装置又は他の表示装置に表示してもよい。
【0097】
また、情報保持装置は、利用者が携帯している電子媒体6に限定されず、例えば、利用者が予め登録した電子装置であってもよい。
【0098】
また、移動検出部13は、識別情報に基づいて、利用者が移動した移動範囲を検出することもできる。このため、許容移動範囲を設定し、許容移動範囲内の移動であれば、移動とは判定せず、ポイントを付与してもよい。
【0099】
また、各踏段4に対して、必ずしも1つ以上のIDタグ11が設けられていなくてもよい。
【0100】
また、複数のIDタグ11は、必ずしも等間隔で配置されていなくてもよい。
【0101】
また、複数のIDタグ11には、同じ識別情報を保持している複数のIDタグ11が含まれていてもよい。但し、隣り合う2つのIDタグ11の識別情報は異なっていることが好ましい。
【0102】
また、隣り合う2つのIDタグ11の通信領域が部分的に重なっていてもよい。この場合、2つのIDタグ11の識別情報を同時に受信し続けていれば、通信領域が重なっている領域に利用者が停止していると判定することができる。
【0103】
また、サービス情報は、ポイントプログラムにおけるポイントに限定されず、例えば、コンピュータゲームにおいて利用可能な情報、コンピュータゲーム以外のアプリケーションにおいて利用可能な情報等であってもよい。
【0104】
また、乗客コンベアは、エスカレーターに限定されず、踏段式の動く歩道、ベルト式の動く歩道等であってもよい。また、動く歩道は、水平型の動く歩道であっても、傾斜型の動く歩道であってもよい。
【0105】
ここで、図9は、実施の形態1、2の制御装置12のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。制御装置12は、通信装置51、プロセッサ52、及びメモリ53を有している。制御装置12の機能は、図9に示すコンピュータにより実現される。メモリ53には、制御装置12の機能を実行するプログラムが格納されている。プロセッサ52は、メモリ53に格納されたプログラムに従って演算処理を実行する。
【符号の説明】
【0106】
1 循環部、2 搬送体、3 移動手摺、5A,5B,5C,5D 利用者、6 電子媒体、10 利用者移動監視装置、11 IDタグ、12 制御装置、13 移動検出部、14 ポイント付与部(情報付与部)、15 回数検出部、17 投光制御部、31 投光装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9