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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】足関節不安定性評価用装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/11 20060101AFI20231120BHJP
【FI】
A61B5/11 230
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020128669
(22)【出願日】2020-07-29
(65)【公開番号】P2022025696
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005061
【氏名又は名称】バンドー化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩根 雅史
(72)【発明者】
【氏名】寺本 篤史
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-198621(JP,A)
【文献】国際公開第2015/133479(WO,A1)
【文献】特開2012-149372(JP,A)
【文献】特開平11-299758(JP,A)
【文献】米国特許第5957869(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/11
G01B 7/30
A41D 13/00-13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
足関節不安定性の評価テストに用いる装置であって、
被検者の前記足関節に固定されるサポート部材と、
前記サポート部材に取り付けられ、検者によって動かされた前記足関節の移動量を検出するためのセンサ素子と、
前記センサ素子の検出部の変形量を測定する計測部と、
前記計測部の測定結果に基づき、前記足関節の前記移動量を表示する表示部と、を備え、
前記サポート部材は、
前記被検者の下腿、及び足の少なくとも一方の所定位置に配置する、基準指標と、
前記足関節に固定された前記サポート部材の、固定状態の指標とする固定指標と、
前記評価テストを実施する際の、足関節の角度の指標とする評価テスト指標と、を有し、
前記固定指標が、前記基準指標に基づき、前記足関節に固定された前記サポート部材の、固定状態を確認する指標であり、
前記評価テスト指標が、前記基準指標に基づき、前記評価テストを実施する際の、足関節の角度を確認する指標である、
足関節不安定性評価用装置。
【請求項2】
前記固定指標が、前記足関節の解剖学的肢位が、0°の状態における、前記サポート部材の固定状態の指標である、請求項1に記載の足関節不安定性評価用装置。
【請求項3】
前記足関節不安定性の評価テストが、前距腓靱帯の損傷の有無を評価する前方引き出しテストである、請求項1又は2に記載の足関節不安定性評価用装置。
【請求項4】
前記評価テスト指標が、前記前方引き出しテストを実施する前記足関節の、底屈15~35°から選択される少なくとも一つの角度の指標である、請求項に記載の足関節不安定性評価用装置。
【請求項5】
前記表示部は、前記移動量の最大移動量を表示する、請求項1~のいずれか一項に記載の足関節不安定性評価用装置。
【請求項6】
前記センサ素子は、前記移動量に応じて、検出部の静電容量が変化するセンサ素子であり、
エラストマー製の誘電層と、前記誘電層の上面に形成された第1電極層と、前記誘電層の下面に形成された第2電極層とを有し、前記第1電極層及び前記第2電極層の対向する部分を前記検出部とする、伸縮可能なセンサ部材を含む、
請求項1~のいずれか一項に記載の足関節不安定性評価用装置。
【請求項7】
前記センサ素子は、前記センサ部材の伸長状態を調整して、前記センサ素子を前記サポート部材に取り付けるための、取付部材を含む、請求項に記載の足関節不安定性評価用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足関節不安定性の評価に使用する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
足関節の靱帯の損傷等に起因する足関節不安定性の評価は、医師等の検者によって徒手的に行われ、その診断・評価は検者の主観的評価に委ねられることが多い。
一方、靱帯の損傷状態を客観的に評価する手法も提案されている。例えば、特許文献1では、膝関節における靱帯の損傷度を評価する医療機器が提案されている。この靱帯の損傷度計測装置は、被検者を座席に座らせ、被検者の膝関節における靱帯の損傷度を評価するように構成されている(特許文献1の図1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-276252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で提案された装置は、構成が複雑であり、また、大型であるため設置には広いスペースが必要であるという課題があった。また、この装置は、膝関節の不安定性を評価するものであり、足関節の不安定性を評価するものではなかった。
本発明者らは、足関節の不安定性の、客観的、且つ正確な評価を簡便に行うべく鋭意検討を行い、新たな技術思想に基づき本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)足関節不安定性の評価テストに用いる装置であって、
被検者の上記足関節に固定されるサポート部材と、
上記サポート部材に取り付けられ、検者によって動かされた上記足関節の移動量を検出するためのセンサ素子と、
上記センサ素子の検出部の変形量を測定する計測部と、
上記計測部の測定結果に基づき、上記足関節の上記移動量を表示する表示部と、を備え、
上記サポート部材は、
上記被検者の下腿、及び足の少なくとも一方の所定位置に配置する、基準指標と、
上記足関節に固定された上記サポート部材の、固定状態の指標とする固定指標と、
上記評価テストを実施する際の、足関節の角度の指標とする評価テスト指標と、を有し、
上記固定指標が、上記基準指標に基づき、上記足関節に固定された上記サポート部材の、固定状態を確認する指標であり、
上記評価テスト指標が、上記基準指標に基づき、上記評価テストを実施する際の、足関節の角度を確認する指標である、
足関節不安定性評価用装置。
【0006】
上記(1)に記載の足関節不安定性評価用装置(以下、単に評価用装置ともいう)を用いて足関節不安定性の評価テストを実施することにより、これまで検者が主観的に判断していた、当該評価テストにおける足関節の移動量の大小を、上記センサ素子による検出値に基づいて、客観的に評価することができる。
また、上記サポート部材は、上記基準指標、及び上記固定指標を有しているため、評価対象の足関節への適切な装着が、可能となる。さらに、上記サポート部材は、上記評価テスト指標を有しているため、足関節不安定性評価の適切な実施が、可能となる。そのため、上記(1)に記載の評価用装置によれば、正確な足関節の不安定評価が可能となる。
【0008】
また、上記()に記載の評価用装置によれば、上記基準指標、及び上記固定指標の組み合わせで、上記サポート部材の固定状態が確認されるため、被検者への上記サポート部材の、より適切な固定が、可能となる。また、上記基準指標、及び上記評価テスト指標の組み合わせで、上記評価テストを実施する際の足関節の角度が確認されるため、足関節不安定性評価の、より適切な実施が、可能となる。そのため、上記()に記載の評価用装置によれば、より正確な足関節の不安定評価が可能となる。
【0009】
)上記固定指標が、上記足関節の解剖学的肢位が、0°の状態における、上記サポート部材の固定状態の指標である、(1)に記載の足関節不安定性評価用装置。
【0010】
上記()に記載の評価用装置は、上記サポート部材を固定する際の、上記足関節の角度が明確なため、被検者への上記サポート部材の、より適切な固定が、可能となる。そのため、上記()に記載の評価用装置によれば、より正確な足関節の不安定評価が可能となる。
【0011】
)上記足関節不安定性の評価テストが、前距腓靱帯の損傷の有無を評価する前方引き出しテストである、(1)又は(2)に記載の足関節不安定性評価用装置。
【0012】
上記(1)又は(2)に記載の評価用装置は、前距腓靱帯の損傷の有無を評価する前方引き出しテストに好適に用いることができる。
【0013】
)上記評価テスト指標が、上記前方引き出しテストを実施する上記足関節の、底屈15~35°から選択される少なくとも一つの角度の指標である、()に記載の足関節不安定性評価用装置。
【0014】
上記()に記載の評価用装置によれば、検者は、上記前方引き出しテストに適した、軽度底屈位を確認できるため、より正確な足関節の不安定評価が可能となる。
【0015】
)上記表示部は、上記移動量の最大移動量を表示する、(1)~()のいずれか一つに記載の足関節不安定性評価用装置。
【0016】
上記()に記載の評価用装置は、被検者の足関節の最大移動量を、上記表示部に表示するため、検者は、評価テストの手技中に、現状の足関節の移動量を確認する必要がなくなり、簡便に足関節の不安定性評価を行うことができる。
【0017】
)上記センサ素子は、上記移動量に応じて、静電容量が変化するセンサ素子であり、
エラストマー製の誘電層と、上記誘電層の上面に形成された第1電極層と、上記誘電層の下面に形成された第2電極層とを有し、上記第1電極層及び上記第2電極層の対向する部分を上記検出部とする、伸縮可能なセンサ部材を含む、
(1)~()のいずれか一つに記載の足関節不安定性評価用装置。
【0018】
上記()に記載の評価用装置によれば、上記移動量に応じて、静電容量が変化するセンサ素子は、高精度で上記移動量を検出することができる。また、上記センサ部材は、面方向に伸長変形するのに適しているため、上記足関節不安定性評価用装置を構成する静電容量型のセンサ部材として特に適している。
【0019】
)上記センサ素子は、上記センサ部材の伸長状態を調整して、上記センサ素子を上記サポート部材に取り付けるための、取付部材を含む、()に記載の足関節不安定性評価用装置。
【0020】
上記()に記載の評価用装置の上記センサ素子は、上記評価テストの実施前に、上記センサ部材の伸長状態(以下、プリテンションともいう)を調整し、上記サポート部材に取り付けることができる。これにより、上記評価テストの実施中に、上記センサ部材が、弛む、及び検出限界まで伸びることを、防ぐことができる。そのため、上記()に記載の評価用装置によれば、より正確な足関節の不安定評価が可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、足関節不安定性の客観的且つ正確な評価を簡便に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第一実施形態に係る足関節不安定性評価用装置を、被検者の右足の足関節に装着した状態の模式図である。
図2図1の評価用装置を構成するサポート部材の、表側を示す図である。
図3図1の評価用装置を構成するサポート部材の、裏側を示す図である。
図4図1の評価用装置を構成するサポート部材の分解図である。
図5】第一実施形態に係るサポート部材を、被検者の左足の足関節に装着した状態において、被検者の左足の解剖学的に外側の側から見た模式図である。
図6図5の、被検者の左足の解剖学的に前の側から見た模式図である。
図7図1の評価用装置を構成するセンサ素子を示す模式図である。
図8図7のセンサ部材を示す斜視図である。
図9図8のセンサ部材のA-A線断面図である。
図10】第一実施形態に係る接続器の模式図である。
図11】第一実施形態に係る足関節不安定性評価用装置を示す概略図である。
図12】実施形態に係る表示ユニットの模式図である。
図13】第一実施形態に係る表示ユニットの表示器の演算回路による、モード切替処理の、フローチャートである。
図14】第一実施形態に係る表示ユニットの表示器の演算回路による、リアルモード処理の、フローチャートである。
図15】第一実施形態に係る表示ユニットの表示器の演算回路による、ホールドモード処理の、フローチャートである。
図16】第一実施形態に係る評価用装置を用いた、右足の足関節の前方引出しテストの手法を説明するための図である。
図17】第二実施形態に係る関節不安定性評価用器具を構成するセンサ部材を示す斜視図である。
図18図17のセンサ部材のB-B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0026】
(第一実施形態)
以下、足関節の前距腓靭帯損傷を前方引き出しテストで評価する場合を例に、本実施形態を説明する。
<足関節不安定性評価用装置>
図1は、本実施形態に係る足関節不安定性評価用装置100を、被検者51の右足の足関節に装着した状態を模式的に示す図である。図2は、図1の評価用装置100を構成するサポート部材110の、表側(被検者の体表側と反対側)を示す図である。図3は、図1の評価用装置100を構成するサポート部材110の、裏側(被検者の体表側)を示す図である。図4は、図1の評価用装置100を構成するサポート部材110の分解図である。なお、図4では、サポート部材片110A、及び110Bは、サポート部材110の表側に相当する面が示されている。
【0027】
本実施形態に係る評価用装置100は、図1に示すように、被検者の足関節に装着して使用する装置である。評価用装置100は、サポート部材110、センサ素子120、表示ユニット5、及び接続器31を備えている。
本実施形態に係る評価用装置100は、両足の足関節に装着可能である。図1では、サポート部材110の、被検者51の右足の解剖学的に外側(以下、単に外側ともいう)の側に配置された、第一基準指標130A、第一固定指標140A、及び評価テスト指標150Aが、示されている。第一基準指標130A、第一固定指標140A、及び評価テスト指標150Aは、評価用装置100を右足で使用する際に用いられる指標である。なお図1には示していないが、被検者51の右足の解剖学的に内側(以下、単に内側ともいう)の側には、後述の第一基準指標130B、第一固定指標140B、及び評価テスト指標150Bが、配置されている。第一基準指標130B、第一固定指標140B、及び評価テスト指標150Bは、評価用装置100を左足で使用する際に用いられる指標である。図1に示される、第二基準指標131、及び第二固定指標141は、評価用装置100を使用する際、右足、及び左足のいずれの場合にも用いる指標である。
【0028】
図2に示されるように、サポート部材110は、第一基準指標130A、第一基準指標130B、第一固定指標140A、第一固定指標140B、評価テスト指標150A、評価テスト指標150B、第二基準指標131、及び第二固定指標141のラインを有している。
サポート部材110は、第一基準指標130A、第一固定指標140A、第二基準指標131、及び第二固定指標141を指標とし、被検者51の右足の足関節に固定される。また、サポート部材110は、第一基準指標130B、第一固定指標140B、第二基準指標131、及び第二固定指標141を指標とし、被検者51の左足の足関節に固定される。
評価用装置100を用いた前距腓靭帯損傷を前方引き出しテストにおいて、検者は、第一基準指標130A、及び評価テスト指標150Aを指標とし、被検者51の右足の足関節の角度を確認する。また、検者は、第一基準指標130B、及び評価テスト指標150Bを指標とし、被検者51の左足の足関節の角度を確認する。
【0029】
図2及び図3に示すサポート部材110は、図4に示す2枚のサポート部材片110A、及び110Bで構成されている。2枚のサポート部材片110A、及び110Bは、外縁形状が面対称である。サポート部材110を被検者51の右足に固定した場合、サポート部材片110Aが、被検者51の右足の外側に配置される。サポート部材110を被検者51の左足に固定した場合、サポート部材片110Bが、被検者51の左足の外側に配置される。
サポート部材110は、サポート部材片110A及びサポート部材片110Bの所定の箇所が縫合された部材である。具体的には、サポート部材110は、サポート部材片110Aの外縁部の一部であってPからPに至る部分と、サポート部材片110Bの外縁の一部であってQからQに至る部分とを縫い合わせ、さらに、サポート部材片110Aの外縁部の一部であってPからPに至る部分と、サポート部材片110Bの外縁の一部であってQからQに至る部分とを縫い合わせた部材である。
【0030】
サポート部材110の表側において、上記PからPに至る部分と、QからQに至る部分とを縫い合わせ部分は、第二基準指標131のラインとなる。また、サポート部材110の表側において、上記PからPに至る部分と、QからQに至る部分とを縫い合わせ部分は、第二固定指標141のラインとなる。
【0031】
サポート部材片110Aは、表側がナイロン素材、裏側がポリウレタン素材からなり、伸縮性を有する貼り合わせ生地をベース生地111Aとしている。
ベース生地111Aの表側には、ベース生地の外縁部の一部を残し、伸縮性を有する伸縮シート112Aが貼り付けられている。また、伸縮シート112Aの、Xで示した部分、及び伸縮シート112Aの外縁部の一部以外を残し、ナイロン製の起毛生地113A、114Aが、貼り付けられている。なお、起毛生地113A、114Aの裏面には、複数の伸縮フィルム(ポリウレタンフィルム)を複層構造(図示せず)とした、難伸縮性素材が、貼り付けられている。起毛生地113A、114Aは、サポート部材片110Aの第一基準指標130A、第一固定指標140A、及び評価テスト指標150Aのラインに相当する部分が、切り抜かれている。さらに、第一基準指標130Aのラインにおいて、被検者の右足の外果に位置する外果指標RLMは、他の第一基準指標130Aのラインの幅に比べ大きくなるように、起毛生地113Aが、略円形に切り抜かれている。そのため、起毛生地113A、114Aが、伸縮シート112Aに貼り付けられた際、起毛生地113A、114Aの切り抜かれた部分の、下地の伸縮シート112Aが、見えるようになる。起毛生地113A、114Aと、伸縮シート112Aとは、外観が異なるため、第一基準指標130A、第一固定指標140A、評価テスト指標150A、及び外果指標RLMが、サポート部材110の表側から、視認可能となる。
【0032】
サポート部材片110Aの、外果指標RLMの近傍には、外果指標RLMを挟むように、2つのスナップボタンのオス160Aが、起毛生地113A上に配置されている。第二固定指標141となる、サポート部材片110Aの、PからPに至る部分と、評価テスト指標150Aのラインとの間の起毛生地114A上には、1つのスナップボタンのオス161Aが、配置されている。
【0033】
サポート部材片110Bは、サポート部材片110Aと同様に構成されたベース生地111B、伸縮シート112B、起毛生地113B、起毛生地114B、スナップボタンのオス160B、及びスナップボタンのオス161Bを有する。
本実施形態に係る評価用装置100は、両足の足関節に装着可能である。そのため、サポート部材片110Bは、サポート部材片110Aと同様に、第一基準指標130B、第一固定指標140B、及び評価テスト指標150Bのラインを有している。また、サポート部材片110Bの第一基準指標130Bは、被検者の左足の外果に位置する外果指標LLMを有している。なお、本実施形態に係る評価用装置100では、起毛生地113A、起毛生地113B、起毛生地114A、及び起毛生地114Bを切り抜くことで、第一基準指標130A、第一基準指標130B、第一固定指標140A、第一固定指標140B、評価テスト指標150A、評価テスト指標150B、外果指標RLM、及び外果指標LLMが、構成されているが、必ずしも起毛生地の切り抜きにより、上記指標が、構成される必要は無い。例えば、伸縮シート112A、及び112Bの表側を凸となるように厚く形成することで、上記指標が、構成されても良い。その他、上記起毛生地の、上記指標の部分に、プリントや、刺繍等を施すことで、上記指標が、構成されても良い。さらに、本実施形態では、ラインを指標として用いているが、必ずしもラインである必要はない。例えば、ラインに代えて、指標となるドット等を用いることができる。
また、本実施形態に係る評価用装置100では、起毛生地113A、起毛生地113B、起毛生地114A、及び起毛生地114Bの裏面に、伸縮フィルムを複層構造とした、難伸縮性素材が、貼り付けられているが、起毛生地113A、起毛生地113B、起毛生地114A、及び起毛生地114Bの裏面に、非伸縮フィルムを貼り付ける構成としても良い。
なお、貼り合わせ生地の作製、伸縮シート、起毛生地、及び面ファスナの貼り付けには、接着剤(図示せず)が用いられている。
【0034】
サポート部材110(サポート部材片110A、110B)において、起毛生地113A、113B、114A、及び114Bは、面ファスナ115、116、及び117との貼り合わせのために設けられている。なお、図3に示されるように、本実施形態では、サポート部材110のサポート部材片110Aに相当する、ベース生地111Bの裏側(被検者と接する側)に、面ファスナ115、116、及び117が、貼り付けられている。
スナップボタンのオス160A、及び161Aは、サポート部材110を被検者51の右足に固定する際、サポート部材110にセンサ素子120を取り付けるために設けられている。また、スナップボタンのオス160B、及び161Bは、サポート部材110を被検者51の左足に固定する際、サポート部材110にセンサ素子120を取り付けるために設けられている。
ナイロン製の起毛生地113A、113B、114A、及び114Bは、上記ベース生地の伸長を抑え、被検者51の足関節の移動量の計測時に、センサ素子120のズレが発生することを抑制する役割も有している。この役割を果たすために、起毛生地113A、114A、113B、及び114Bの裏面には、難伸縮性素材が、貼り付けられている。サポート部材110は、計測時に起毛生地が積層されていない部分が伸長する。具体的には、図1において、サポート部材110のうち、被検者51の下腿に固定されている部分と、被検者51の足に固定されている部分とを接続する、図1~4にXで示した部分が、主に伸長する。
このように、サポート部材110には、伸縮性素材と、難伸縮性素材とが、組み合わせて配置されている。そのため、サポート部材110は、凹凸の大きい足関節の体表に密着し、且つ計測時におけるセンサ素子のズレの発生を抑制するのに適している。
【0035】
検者による、サポート部材110の足関節への固定方法の一例を、以下に記載する。
図5は、サポート部材110を被検者51の左足の足関節に固定した状態において、被検者51の左足の解剖学的に外側の側から見た模式図である。図6は、図5の、被検者51の左足の解剖学的に前(以下、単に前ともいう)の側から見た模式図である。
【0036】
検者は、サポート部材110の外果指標LLMが、被検者51の左足の外果の上になるように、サポート部材110を配置した状態で、面ファスナ115を起毛生地113Bに貼り付けることで、被検者51の下腿にサポート部材110を装着する。次に、検者は、外果指標LLMが、被検者51の左足の外果の上にある状態で、第一基準指標130Bのラインが、被検者51の腓骨のラインFLと重なり、第二基準指標131のラインが、被検者51の下腿軸CAと重なるよう、面ファスナ115の起毛生地113Aへの貼り付け位置を調整する。その後、検者は、被検者51の左足の足関節を、解剖学的肢位0°の状態にし、面ファスナ116、及び117を起毛生地114Bに貼り付けることで、被検者51の左足にサポート部材110を装着する。より具体的には、検者は、被検者51の第5中足骨が、腓骨への垂直線FV上にあり、被検者51の第2中足骨を軸とするラインCLが、被検者51の足を前の側から見た際に、下腿軸CAの直線上にある状態し、被検者51の左足にサポート部材110を装着する。次に、検者は、被検者51の左足の足関節が、解剖学的肢位0°の状態で、第一固定指標140Bのラインが、第一基準指標130Bのラインと重なり、第二固定指標141が、被検者51の左足の第2中足骨を軸とするラインCL上に配置され、被検者51の左足を前の側から見た際に、第二基準指標131のラインの直線上になるよう、面ファスナ116、及び117の起毛生地114Bへの貼り付け位置を調整する。最後に、検者は、第一基準指標130B、第一固定指標140B、第二基準指標131、及び第二固定指標141が、上記の所定の状態で配置されていることを確認し、サポート部材110の被検者51への固定を完了する。
なお、サポート部材110の左足の足関節への固定方法は、図5及び図6に示される状態に、サポート部材110を被検者51の左足に固定できれば良く、上記固定方法に限定されない。例えば、検者は、被検者51の下腿、及び左足の、おおよその位置にサポート部材110を取り付けた後、被検者51の左足の足関節が、解剖学的肢位0°の状態で、外果指標LLM、第一基準指標130B、第二基準指標131、第一固定指標140B、及び第二固定指標141が、上記所定の配置になるよう、面ファスナの起毛生地への貼り付け位置を調整しても良い。
【0037】
サポート部材110を被検者51の右足の足関節に固定する場合、上述の左足の足関節への固定で用いる、外果指標LLMに代えて、外果指標RLMを、第一固定指標140Bに代えて、第一固定指標140Aを、及び第一基準指標130Bに代えて、第一基準指標130Aを用い、検者は、被検者51の右足の足関節にサポート部材110を固定する。
なお、サポート部材110において、被検者の所定位置に配置する指標は、必ずしも上述の第一基準指標130A、第一基準指標130B、及び第二基準指標131である必要はない。すなわち、被検者の所定位置に配置する指標は、サポート部材110が固定される、下腿、及び足における、他の部位や軸等を基準とする、他の指標とすることができる。例えば、足の内側の側から見た際の脛骨のライン、及び内果や、足の解剖学的に後の側から見た際の下腿軸や、足底の踵骨隆起等を基準とする、基準指標が考えられる。また、サポート部材110の足関節への固定状態の指標は、必ずしも第一固定指標140A、第一固定指標140B、及び第二固定指標141である必要はない。例えば、足の脛骨のライン、及び内果の基準指標に基づき、サポート部材110の足関節への固定状態の指標とする固定指標等が考えられる。なお、上記の他の基準指標や、他の固定指標は、サポート部材110に追加で設けることもできる。
【0038】
検者は、被検者51の左足の足関節に固定されたサポート部材110に、センサ素子120を取り付け、評価用装置100の装着を完了する。具体的には、右足にサポート部材110を固定する場合は、スナップボタンのオス160Aに、後述の図7に示される、センサ素子120に配置されている、2つのスナップボタンのメス170が、取り付けられる。同様に、左足にサポート部材110を固定する場合は、スナップボタンのオス160Bに、センサ素子120の2つのスナップボタンのメス170が、取り付けられる。また、右足にサポート部材110を固定する場合は、スナップボタンのオス161Aに、後述の図7に示される、センサ素子120に配置されている、2つのスナップボタンのメス171A、及び171Bのいずれか一方が、取り付けられる。同様に、左足にサポート部材110を固定する場合は、スナップボタンのオス161Bに、センサ素子120のスナップボタンのメス171A、及び171Bのいずれか一方が、取り付けられる。
【0039】
センサ素子120は、図7に示すように、センサ部材10と、センサ部材10の周囲に設けられた被覆部材21と、センサ部材10を接続器31のメスの接続端子29A(図10参照)と電気的に接続するためのオスの接続端子30Aと、センサ素子120をサポート部材110に取り付けるための、スナップボタンのメス170、171A、及び171Bとを備えている。センサ素子120は、静電容量型センサを構成する部材である。
【0040】
センサ部材10は、図8及び図9に示すように、誘電層、電極層、電極接続部などを備えた積層体である。
センサ部材10は、帯状を有し、長手方向(図中、左右方向)に伸縮可能に構成されている。
センサ部材10は、伸縮性を有するシート状の誘電層11と、誘電層11のおもて面に形成された表側電極層(第1電極層)12Aと、誘電層11の裏面に形成された裏側電極層(第2電極層)12Bと、表側電極層12Aに連結された上記長手方向に延びる表側配線13Aと、裏側電極層12Bに連結された上記長手方向に延びる裏側配線13Bとを備える。
誘電層11は、ウレタンゴム等のエラストマーを含むエラストマー組成物からなる。表側電極層12A、裏側電極層12B、表側配線13A及び裏側配線13Bは、いずれも、例えば、カーボンナノチューブ等の導電材料を含む導電性組成物からなる。
【0041】
センサ部材10は、非伸縮性の樹脂シート17の上面に銅箔からなる2つの電極接続部16A、16Bが形成されたシート状の接続部材18を備えている。センサ部材10では、表側配線13Aと電極接続部16A、及び裏側配線13Bと電極接続部16B、がそれぞれ導電性接着剤14A、14Bを介して電気的に接続されている。
誘電層11の表側及び裏側のそれぞれには、表側電極層12A及び裏側電極層12Bを覆うように表側保護層15A及び裏側保護層15Bが形成されている。電極接続部16A、16Bのそれぞれには、オスの接続端子30Aと接続するための接続部材(リード線)22が半田付けされている。また、接続部材(リード線)22は、オスの接続端子30Aの接続ピン24に接続されている。
【0042】
表側電極層12Aと裏側電極層12Bとは、同一の平面視形状を有しており、誘電層11を挟んで表側電極層12Aと裏側電極層12Bとは全体が対向している。センサ部材10では、表側電極層12Aと裏側電極層12Bとの対向した部分が検出部19となる。
上記センサ部材において、表側電極層と裏側電極層とは、必ずしも誘電層を挟んでその全体が対向している必要はなく、少なくともその一部が対向していれば良い。
【0043】
センサ部材10において、誘電層11は、上記長手方向に伸縮可能である。従って、誘電層11は、表裏面の面積が変化するように変形することができる。また、誘電層11が変形した際には、その変形に追従して表側電極層12A及び裏側電極層12B、並びに、表側保護層15A及び裏側保護層15B(以下、両者を合わせて単に保護層ともいう)も変形することができる。
そのため、センサ部材10では、検出部19の静電容量が、誘電層11の変形量(電極層の面積変化)と相関をもって変化する。よって、上記検出部の静電容量の変化を検出することで、センサ部材10の変形量を検出することができる。
また、センサ部材10において、平面視した際に樹脂シート17と重なる部分は、上記長手方向(センサ部材の面方向)に実質的に伸縮することができない。
【0044】
なお、センサ部材10は、裏面側であって、長手方向の一端側(図8中、左右方向の右側)にのみ非伸縮性の部材を備えているが、本発明の実施形態に係るセンサ部材は、当該センサ部材の裏面側であって、長手方向の他端側(図8中、左右方向の左側)にも非伸縮性の部材(例えば、樹脂シート)を備えていても良い。
【0045】
図7に戻って、センサ素子120の両面には、伸縮性の布生地からなる被覆部材21が設けられている。被覆部材21は、長手方向の長さがセンサ部材10の長手方向の長さより長い2枚の伸縮性布生地からなる。センサ部材10は、この2枚の布生地同士の間に挟み込まれている。被覆部材21を設けることによりセンサ部材10を保護することができる。
【0046】
センサ素子120は、サポート部材110に、センサ素子120を取り付けるための、スナップボタンのメスを有している。スナップボタンのメス170は、センサ素子120のオスの接続端子30A側に配置されている。スナップボタンのメス171A、及び171Bは、センサ部材10を介して、センサ素子120のオスの接続端子30A側とは反対側に配置されている。
2つのスナップボタンのメス170は、サポート部材110が、図1に示されるように、被検者51の右足に固定される場合、サポート部材110の外果指標RLMの近傍に配置されている、2つのスナップボタンのオス160Aに取り付けられる。また、2つのスナップボタンのメス170は、サポート部材110が、図5に示されるように、被検者51の左足に固定される場合、サポート部材110の外果指標LLMの近傍に配置されている、2つのスナップボタンのオス160Bに取り付けられる。
サポート部材110が、被検者51の右足に固定される場合、スナップボタンのメス171A、及び171Bのいずれか一方が、サポート部材110の第二固定指標141のラインと、評価テスト指標150Aのラインとの間に配置されている、スナップボタンのオス161Aに取り付けられる。また、サポート部材110が、被検者51の左足に固定される場合、スナップボタンのメス171A、及び171Bのいずれか一方が、サポート部材110の第二固定指標141のラインと、評価テスト指標150Bのラインとの間に配置されている、スナップボタンのオス161Bに取り付けられる。
【0047】
2つのスナップボタンのオス160Aは、外果指標RLMを挟むように配置されている。また、2つのスナップボタンのオス160Bは、外果指標LLMを挟むように配置されている。図1のように、サポート部材110を被検者51の右足に固定する場合、サポート部材110のスナップボタンのオス160Aに、センサ素子120のスナップボタンのメス170を取り付けると、接続端子30Aは、外果指標RLMの略上の位置に固定される。同様に、図5のように、サポート部材110を被検者51の左足に固定する場合、サポート部材110のスナップボタンのオス160Bに、センサ素子120のスナップボタンのメス170を取り付けると、接続端子30Aは、外果指標LLMの略上の位置に固定される。接続端子30Aが、2つのスナップボタンにより、外果指標RLM、又は外果指標LLMの略上の位置に固定されるため、足関節の不安定性評価中に、接続端子30Aが、動くことを抑制できる。その結果、後述する、図10に示される接続器31の接続コード26が、足関節の不安定性評価中に動き、検者の手技の妨げになることを抑制することができる。
【0048】
足関節の前方引出しテストを開始するにあたり、後述の図16に示される、センサ部材10は、適度なプリテンションを有していることが好ましい。前方引出しテスト開始時に、センサ部材10が、弛んだ状態の場合、足関節の移動量が、センサ部材10の弛みに吸収され、正確な足関節の移動量が計測できなくなる。また、前方引出しテスト開始時に、センサ部材10が、無伸長状態又は弛んだ状態の場合、前方引出しテストにおけるマイナスの移動量(足関節の押出し量)の正確な計測が難しくなる。逆に、前方引出しテスト開始時に、センサ部材10が、検出限界の近くまで伸びた状態(プリテンションが極めて過剰な状態)の場合、センサ部材10の検出限界を超えた足関節の移動量が、計測できなくなる。
本実施形態に係る評価用装置100は、サポート部材110にセンサ素子120を取り付けに使用する、スナップボタンのメス171A、及び171Bの選択により、センサ部材10のプリテンションを、調整できる。例えば、スナップボタンのメス171Aを用いて、サポート部材110にセンサ素子120を取り付けた際、センサ部材10のプリテンションが過剰であれば、スナップボタンのメス171Bを用いて、サポート部材110にセンサ素子120を取り付けることで、センサ部材10のプリテンションを弱めることができる。逆に、スナップボタンのメス171Bを用いて、サポート部材110にセンサ素子120を取り付けた際、センサ部材10のプリテンションが不足していれば、スナップボタンのメス171Aを用いて、サポート部材110にセンサ素子120を取り付けることで、センサ部材10のプリテンションを強めることができる。
なお、本実施形態に係る評価用装置100は、センサ部材10のプリテンションを、スナップボタンのメス171A、及び171Bにより、2段階に調節可能であるが、必ずしも2段階の調整に限る必要はない。例えば、スナップボタンのメス171A、及び171Bに加え、スナップボタンのメスをさらに配置すれば、3段階以上のプリテンションの調節が可能となる。また、本実施形態では、センサ素子120側に、プリテンションを調節するための、スナップボタンのメス171A、及び171Bを設けているが、必ずしもセンサ素子120に、プリテンションを調節するための、複数のスナップボタンのメスを設ける必要はない。例えば、サポート部材110に、プリテンションを調節するための、複数のスナップボタンのオスを設けることで、プリテンションの調節が可能となる。
【0049】
本実施形態では、センサ素子120のサポート部材110への取り付けに、スナップボタンを用いているが、例えば、磁石や面ファスナ等であっても良い。また、本実施形態において、サポート部材110のスナップボタンのオス160A、160B、161A、及び161Bは、評価用装置100を被検者に装着した際に、センサ素子120の検出部19が、被検者の前距腓靭帯にほぼ沿うように、サポート部材110に配置されている。なお、スナップボタンの取り付けの組み合わせとなる、オス、及びメスの関係は、当然ながら逆にすることもできる。
【0050】
図10は、本実施形態に係る接続器31の模式図である。接続器31は、接続コード26と、接続コード26の末端に接続されたメスの接続端子29Aと、接続コード26の他端に接続されたメスの接続端子29Bと、を有している。メスの接続端子29Aは、センサ素子120のオスの接続端子30A、又は後述のオスの接続端子57に接続される端子である。メスの接続端子29Bは、後述する表示ユニット5のオスの接続端子30Bに接続される端子である。メスの接続端子29A、及び29Bは、オスの接続端子の接続ピンを挿入するための接続穴25を有している。接続器31のメスの接続端子29A、及び29Bを、オスの接続端子30A(57)、及び30Bに接続することで、センサ素子120、及び表示ユニット5は、接続器31を介して、電気的に接続される。
本実施形態の接続器31は、センサ素子120、及び表示ユニット5と脱着可能であるが、必ずしも脱着可能である必要はない。例えば、接続器31は、センサ素子120、及び表示ユニット5の少なくとも一つと、脱着できない状態で固定されていても良い。また、センサ素子120、及び表示ユニット5は、接続コード26を介した有線による接続に代え、無線で接続することも可能である。この場合、例えば、接続器31は、センサ素子120に接続される発信機と、表示ユニット5に接続される受信機と、を有する構成とすることができる。
【0051】
図11は、本実施形態の足関節不安定性評価用装置100を示す概略図である。
評価用装置100は、図11に示すように、サポート部材110、評価静電容量型のセンサ素子120、及びセンサ素子120と電気的に接続された表示ユニット5を備える。表示ユニット5は、センサ素子120の静電容量の変化を計測する計測器3、及び計測器3で取得した計測結果を表示する表示器4を備える。なお、表示ユニット5は、表示器4への計測結果の表示方式として、表示器4に足関節の移動量を表示させるリアルモード、及び表示器4に足関節の最大移動量を表示させるホールドモードの、2つのモードを有している。
【0052】
計測器3は、静電容量Cを周波数信号Fに変換するためのシュミットトリガ発振回路3a、周波数信号Fを電圧信号Vに変換するF/V変換回路3b、及び電源回路(図示せず)を備える。計測器3は、センサ部材10の検出部19の静電容量Cを周波数信号Fに変換した後、更に電圧信号Vに変換し、表示器4に送信する。
【0053】
表示器4は、モニター4a、演算回路4b、及び記憶部4cを備える。記憶部4cは、計測器3から受信した電圧信号Vを、足関節の移動量(mm)に変換するためのデータテーブルを記憶している。使用するセンサ素子により、センサ部材の変形量に対する静電容量の出力が異なるため、データテーブルは、使用するセンサ素子毎に設定されることが好ましい。データテーブルにより、評価用装置間の電圧信号から足関節の移動量への変換誤差が、抑制される。また、記憶部4cは、表示ユニット5のモード設定、及び演算回路4bの処理フローを記憶している。演算回路4bは、記憶部4cに記憶されているデータテーブル、及び計測器3より受信した電圧信号Vに基づき、足関節の移動量(mm)を算出する。リアルモードの場合、演算回路4bは、上記の算出した移動量を、モニター4aに表示させる。また、ホールドモードの場合、演算回路4bは、算出した移動量から、足関節の最大移動量を算出し、モニター4aに表示させる。なお、演算回路4bは、測定終了時の最大移動量を、記憶部4cに記憶させても良い。
【0054】
図12は、本実施形態に係る表示ユニット5の模式図である。表示ユニット5は、オスの接続端子30B、モニター4a、入力ボタン27、及び面ファスナ(図示せず)を備える。接続端子30Bは、上述の接続器31のメスの接続端子29Bを接続するための端子である。
入力ボタン27は、表示ユニット5の電源のON・OFF、表示ユニット5のモード切替、及び測定終了に用いられる。表示ユニット5の電源がOFFで、入力ボタン27が、1秒未満押されると、表示ユニット5の電源がONとなり、記憶部4cに記憶されている、モードでの測定が開始される。また、表示ユニット5の電源がONの状態で、入力ボタン27が、1秒以上押されると、表示ユニット5の電源がOFFとなる。表示ユニット5の電源がOFFで、入力ボタン27が、5秒以上押されると、表示ユニット5の電源がONとなり、モード切替が可能な状態となる。モード切り替えが可能な状態で、入力ボタン27が、1秒未満押されると、リアルモード、及びホールドモードの切り替えが行われる。モード切り替えが可能な状態で、入力ボタン27が、1秒以上押されると、モード切り替えが終了し、表示ユニット5の電源が、OFFとなる。
なお、表示ユニット5のモニター4aには、測定開始前、表示ユニット5の電源がONの状態において、現在のモードが、表示されている。リアルモードの場合、モニター4aには、「REAL」の文字が表示される。ホールドモードの場合、モニター4aには、「HOLD」の文字が表示される。また、測定開始後、エラーが生じた場合、モニター4aに、エラーを示す情報が、表示される。エラーを示す情報としては、図形や、エラーコード等の文字が、挙げられる。例えば、電池残量が少ない場合、モニター4aには、電池を示す図形が、表示される。なお、エラーが、電池残量が少ない等の復旧ができないエラーの場合、モニター4aに表示されているエラーを示す情報は、3回点滅する。エラーを示す情報が、3回点滅した後、表示ユニット5の電源は、OFFとなる。
【0055】
図13図14、及び図15のフローチャートは、演算回路4bの処理フローを示す。図13は、演算回路4bによる、モード切替処理の、フローチャートである。図14は、演算回路4bによる、リアルモード処理の、フローチャートである。図15は、演算回路4bによる、ホールドモード処理の、フローチャートである。
【0056】
図13に示すモード切替処理のフローチャートを説明する。上述のように、表示ユニット5の電源がOFFで、入力ボタン27が、5秒以上押されると、モード切替が可能な状態となる(図13のスタート)。S1において、演算回路4bは、記憶部4cに記憶されている、現在の表示ユニット5のモードを取得する。本実施形態では、評価用装置100を最後に使用した際のモードが、記憶部4cに記憶されている。なお、初期設定のモードは、ホールドモードである。S2において、演算回路4bは、モード切替の入力の有無を判定する。S2において、モード切替の入力が無いと判断された場合、処理はS4の処理にスキップする。S2において、モード切替の入力が有ると判断された場合、S3において、演算回路4bは、切替後のモードを、記憶部4cに記憶する。S4において、演算回路4bは、電源OFFの指示の有無を判定する。S4において、電源OFFの指示が無いと判定された場合、処理はS2に戻る。S4において、電源OFFの指示が有ると判定された場合、演算回路4bは、表示ユニット5の電源を、OFFにし、処理を完了する。なお、本実施形態における、モード切替処理のフローチャートでは、表示ユニット5の電源を、OFFにし、処理を完了するが、必ずしも電源をOFFにし、処理を完了する必要は無い。例えば、S4において、電源OFFの指示が無い判定された後、演算回路4bが、測定開始の指示の有無を判定するステップを更に設けることもできる。この場合、測定開始の指示が有ると判定されると、演算回路4bは、記憶部4cに記憶されている、現在の表示ユニット5のモードの処理フローに移行する。
【0057】
表示ユニット5の電源がOFFで、入力ボタン27が、1秒未満押され、電源がONになった際(図14のスタート)、記憶部4cにリアルモードが記憶されている場合(S101)、図14のフローチャートに示される、リアルモード処理となる。S101において、記憶部4cにリアルモードが記憶されている場合、S102において、演算回路4bは、記憶部4cに、足関節の移動量の初期値として0mmを記憶させる。すなわち、S102における、センサ素子120のセンサ部材10のプリテンション状態が、足関節の移動量の初期値である0mmとなる。次に、S103において、演算回路4bは、計測器3からの電圧信号Vの受信の有無を判定する。S103において、計測器3からの電圧信号Vの受信が無い場合、演算回路4bの処理は、S105にスキップする。S103において、計測器3からの電圧信号Vを受信した場合、演算回路4bは、記憶部4cに記憶されている上述のデータテーブルに基づき、受信した電圧信号Vを移動量(mm)に変換し、足関節の移動量を取得する(S104)。ここで、演算回路4bにより変換される足関節の移動量は、上述の初期値0mmを基準として、センサ部材10が縮んだ場合は、マイナスの移動量となり、センサ部材10が伸びた場合は、プラスの移動量となる。例えば、センサ部材10のプリテンション状態から、センサ部材10が10mm縮んだ場合、移動量は、-10mmとなる。逆に、センサ部材10のプリテンション状態から、センサ部材10が10mm伸びた場合、移動量は、+10mmとなる。S105において、演算回路4bは、モニター4aに足関節の移動量を表示させる。S105において、モニター4aに足関節の移動量が表示された後、S106において、演算回路4bは、ゼロリセットの指示の有無を判定する。ゼロリセットは、測定中に、足関節の移動量を初期値に戻す指示である。ゼロリセットの指示は、測定中に、入力ボタン27を、1秒以未満押すことで行われる。S106において、ゼロリセットの指示が有ると判定された場合、処理はS102へ戻る。S106において、ゼロリセットの指示が無いと判定された場合、S107において、演算回路4bは、電源OFFの指示の有無を判断する。S107において、電源OFFの指示が有ると判断された場合、演算回路4bは、表示ユニット5の電源を、OFFにし、処理を完了する。S107において、電源OFFの指示が無いと判断された場合、処理はS103に戻る。
【0058】
表示ユニット5の電源がOFFで、入力ボタン27が、1秒未満押され、電源がONになった際(図15のスタート)、記憶部4cにホールドモードが記憶されている場合(S201)、図15のフローチャートに示される、ホールドモード処理となる。S201において、記憶部4cにホールドモードが記憶されている場合、S202において、演算回路4bは、憶部4cに、足関節の移動量、並びにマイナス側最大移動量、及びプラス側最大移動量の初期値として0mmを記憶させる。S203において、演算回路4bは、計測器3からの電圧信号Vの受信の有無を判定する。S203において、計測器3からの電圧信号Vの受信が無い場合、演算回路4bの処理は、S212にスキップする。S203において、計測器3からの電圧信号Vを受信した場合、演算回路4bは、記憶部4cに記憶されている上述のデータテーブルに基づき、受信した電圧信号Vを移動量(mm)に変換し、足関節の移動量を取得する(S204)。S204において、足関節の移動量を取得した後、演算回路4bは、足関節の移動量が、マイナスの移動量か否かを判定する(S205)。S205において、足関節の移動量が、マイナスの移動量と判定された場合、S206において、演算回路4bは、記憶部4cに記憶されているマイナス側最大移動量を取得する。マイナス側最大移動量の取得後、S207において、演算回路4bは、現在の移動量が、マイナス側最大移動量よりも小さいか否かを判定する。現在の移動量が、マイナス側最大移動量以上の場合、演算回路4bの処理は、S212にスキップする。現在の移動量が、マイナス側最大移動量よりも小さい場合、S208において、演算回路4bは、記憶部4cに記憶されているマイナス側最大移動量を、現在の移動量に書き換え、S212のステップに移る。S205において、足関節の移動量が、プラスの移動量、又は0と判定された場合、S209において、演算回路4bは、記憶部4cに記憶されているプラス側最大移動量を取得する。プラス側最大移動量の取得後、S210において、演算回路4bは、現在の移動量が、プラス側最大移動量よりも大きいか否かを判定する。現在の移動量が、プラス側最大移動量以下の場合、演算回路4bの処理は、S212にスキップする。現在の移動量が、プラス側最大移動量よりも大きい場合、S211において、演算回路4bは、記憶部4cに記憶されているプラス側最大移動量を、現在の移動量に書き換え、S212のステップに移る。S212において、演算回路4bは、記憶部4cに記憶されているマイナス側最大移動量、及びプラス側最大移動量から、足関節の最大移動量を算出し、モニター4aに、算出した最大移動量を表示させる。ここで、最大移動量は、マイナス側最大移動量の絶対値と、プラス側最大移動量とを足すことで得られる値である。最大移動量は、プラスの値のため、表示ユニット5がホールドモードの場合、モニター4aには、プラスの値が表示される。S212において、足関節の最大移動量が、モニター4aに、表示された後、S213において、演算回路4bは、ゼロリセットの指示の有無を判定する。S213において、ゼロリセットの指示が有ると判定された場合、処理は、S202へ戻る。S213において、ゼロリセットの指示が無いと判定された場合、S214において、演算回路4bは、電源OFFの指示の有無を判断する。S214において、電源OFFの指示が有ると判断された場合、演算回路4bは、表示ユニット5の電源を、OFFにし、処理を完了する。S214において、電源OFFの指示が無いと判断された場合、処理はS203に戻る。
【0059】
<足関節不安定性の評価>
本実施形態の評価用装置100は、足関節の前距腓靭帯の損傷を前方引き出しテストの評価に用いられる。
前距腓靭帯の損傷を評価する上記前方引き出しテストは、整形外科分野で知られている公知の評価手法である。図16は、本実施形態に係る評価用装置100を用いた、右足の足関節の前方引出しテストの手法を説明するための図である。
上記前方引出しテストでは、まず、検者は、評価用装置100を右足に装着した被検者51に、ベッドの上で座位をとらせ、ベッド52の端から下腿53を出させる。そして、検者の一方の手55で下腿遠位部を上から下方向に抑えて固定し、他方の手56で被検者51の踵を包むように持つ。
次に、検者は、第一基準指標130Aのライン、及び評価テスト指標150Aのラインが、被検者51の右足の外側の側から見て略直線上に重なり、第二基準指標131のライン、及び第二固定指標141のラインが、被検者51の右足の前の側から見て略直線上に重なるように、被検者51の右足を調整する。これにより、被検者51の右足の足関節は、評価用装置100による前方引き出しテストの評価に適した、軽度底屈位となる。ここで、前方引き出しテストの評価に適した、軽度底屈位は、底屈15~35°である。なお、本実施形態の評価テスト指標150Aのラインは、被検者51の右足の足関節が、底屈30°となるよう、サポート部材110に配置されている。
【0060】
検者は、被検者51の右足の足関節を、評価用装置100による前方引き出しテストの評価に適した、軽度底屈位にした状態で、被検者51の踵を持つ手56で、踵部を前方に引き出す、及び後方に押し込むことで、評価用装置100に、足関節の移動量を計測させる。評価用装置100の表示ユニット5が、リアルモードの場合、踵部を前方に引き出した際の足関節の移動量(引出し量)は、プラスの移動量として、表示ユニット5のモニター4aに表示される。また、踵部を後方に押し込んだ際の足関節の移動量(押出し量)は、マイナスの移動量として、表示ユニット5のモニター4aに表示される。評価用装置100の表示ユニット5が、ホールドモードの場合、踵部を前方に引き出した際のプラスの移動量の最大値、及び踵部を後方に押し込んだ際のマイナスの移動量の最大値の絶対値の合計が、足関節の最大移動量として、表示ユニット5のモニター4aに表示される。なお、表示ユニット5の電源がOFFで、入力ボタン27が、1秒未満押され、表示ユニット5の電源がONとなり、記憶部4cに記憶されている、モードでの測定が開始された場合、測定開始時における、センサ素子120のセンサ部材10のプリテンション状態が、足関節の移動量の初期値である0mmとなる。また、測定中、入力ボタン27が、1秒未満押され、ゼロリセットが行われた場合、ゼロリセット時における、センサ素子120のセンサ部材10のプリテンション状態が、足関節の移動量の初期値である0mmとなる。
リアルモードは、足関節の前方引出しテストの手技をゆっくりと行う検者に好ましいモードである。リアルモードであれば、検者は、現状の足関節の引出し量、及び押出し量を、モニター4aで確認して、手技を行うことができる。一方、ホールドモードは、評価テスト中の被検者の痛みを最小限にするため、素早く手技を行う検者に好ましいモードである。ホールドモードでは、現状の足関節の移動量ではなく、最大移動量がモニター4aされる。そのため、検者は、モニター4aを確認する必要がなく、手技に集中することができる。
ここで、前距腓靭帯の損傷の有無は、例えば、上記最大移動量が5mmを超えると、前距腓靭帯が損傷していると評価することができる。上記前方引出しテストにおいて、最大移動量は、腓骨と距骨と距離の変化に相関し、前距腓靭帯が損傷して関節が緩むと最大移動量が多くなる。
【0061】
評価用装置100を被検者51の左足に装着した場合、検者は、上記の第一基準指標130Aのライン、及び評価テスト指標150Aのラインに代えて、第一基準指標130Bのライン、及び評価テスト指標150Bのラインを用い、左足の足関節の前距腓靭帯の損傷を前方引き出しテストを行う。すなわち、検者は、評価用装置100の第一基準指標130Bのライン、及び評価テスト指標150Bのラインが、被検者51の左足の外側の側から見て略直線上に重なり、第二基準指標131のライン、及び第二固定指標141のラインが、被検者51の右足の前の側から見て略直線上に重なるように、被検者51の右足を調整する。これにより、被検者51の左足の足関節は、評価用装置100による前方引き出しテストの評価に適した、軽度底屈位となる。
足関節の角度の指標は、上記の軽度底屈位が確認できる指標であればよく、必ずしも評価テスト指標150A及び150Bである必要はない。例えば、足の内果、及び脛骨のラインの基準指標に基づき、足関節の角度の指標とする評価テスト指標が考えられる。
【0062】
本実施形態では、評価用装置100を被検者51の足関節に装着した状態で、上記前方引出しテストを行う。そのため、センサ素子120の検出部19の静電容量の変化に基づいて、上記前方引出しテストにおける引出量を計測することができる。
従って、本実施形態によれば、従来、検者の主観によって行っていた関節非安定性の評価を、客観的データに基づいて行うことができる。
また、本実施形態では、第一基準指標130A、第一基準指標130B、第二基準指標131、第一固定指標140A、第一固定指標140B、第二固定指標141、評価テスト指標150A、及び評価テスト指標150Bを用い、評価用装置100の被検者51の足関節への装着、及び評価用装置100による被検者51の足関節不安定性評価が行われる。
従って、本実施形態によれば、評価用装置100の被検者51への装着、及び足関節不安定性評価の不備が、抑制される。その結果、検者は、足関節不安定性の正確な評価を行うことができる。
【0063】
なお、本実施形態では、足関節の前距腓靭帯損傷の前方引き出しテストを行なうための、足関節不安定性評価用装置100を例に説明したが、足関節不安定性評価用装置の対象となる、足関節の靭帯損傷の評価テストは、必ずしも前距腓靭帯損傷の前方引き出しテストである必要はない。本発明の足関節不安定性評価用装置は、他の足関節の靭帯損傷の評価テストを対象とする評価用装置を含む。この場合、上述のセンサ素子120は、センサ素子120の検出部19が、評価用装置100を被検者に装着した際に、被検者51の評価テストの対象とする靭帯にほぼ沿うようにサポート部材110に取り付けられる。そのため、上述のスナップボタンのオスのサポート部材110における配置は、センサ素子120のサポート部材110の取付位置に応じて、変更、又は追加される。
本発明の足関節不安定性評価用装置の対象となる、足関節の靭帯損傷の評価テストを、下記表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
(第二実施形態)
本実施形態は、センサ部材が第1実施形態と異なる。
具体的には、第1実施形態におけるセンサ部材10に代えて、図17、及び図18に示したセンサ部材40とする。センサ部材40は、誘電層(第1誘電層)及びその両面に形成された第1電極層及び第2電極層に加えて、第2誘電層及び第3電極層を備えている。
図17は、本実施形態で使用するセンサ部材を示す斜視図である。図18は、図17のB-B線断面図である。
【0066】
図17、及び図18に示すセンサ部材40は、伸縮性を有するシート状の第1誘電層41Aと、第1誘電層41Aのおもて面に形成された第1電極層42Aと、第1誘電層41Aの裏面に形成された第2電極層42Bと、第1誘電層41Aの表側に第1電極層42Aを覆うように積層された第2誘電層41Bと、第2誘電層41Bのおもて面に形成された第3電極層42Cとを備える。
また、センサ部材40は、第1電極層42Aに連結された第1配線43Aと、第2電極層42Bに連結された第2配線43Bと、第3電極層42Cに連結された第3配線43Cとを備える。
ここで、第3配線43Cの一部は、第2配線43B上に積層され、第2配線43Bと一体化されている。
【0067】
更に、センサ部材40は、上面に銅箔からなる2つの電極接続部46A、46Bが非伸縮性の樹脂シート47上に形成された接続部材48を備え、第1配線43Aと電極接続部46A、並びに、一体化された第2配線43B及び第3配線43Cと電極接続部46B、がそれぞれ導電性接着剤44A、44Bを介して電気的に接続されている。
また、センサ部材40は、第1誘電層41Aの裏側及び第2誘電層41Bの表側のそれぞれに裏側保護層45B及び表側保護層45Aが形成されている。電極接続部46A、46Bのそれぞれには、オスの接続端子57と接続するための接続部材(リード線)32が半田付けされている。また、接続部材(リード線)32は、オスの接続端子57の接続ピン58に接続されている。オスの接続端子57は、上述の接続コード26のメスの接続端子29Aと、接続される端子である。
【0068】
センサ部材40において、第1~第3電極層42A~42Cは、同一の平面視形状を有している。第1電極層42Aと第2電極層42Bとは第1誘電層41Aを挟んで全体が対向しており、第1電極層42Aと第3電極層42Cとは第2誘電層41Bを挟んで全体が対向している。
センサ部材40では、第1電極層42Aと第2電極層42Bとの対向した部分、及び第1電極層42Aと第3電極層42Cとの対向した部分が検出部49となり、第1電極層42Aと第2電極層42Bとの対向した部分の静電容量と第1電極層42Aと第3電極層42Cとの対向した部分の静電容量との和が検出部49の静電容量となる。
【0069】
このような構成を備えたセンサ部材40を用いて計測を行う場合、第2電極層42Bと第3電極層42Cとが電気的に接続されているため、導体である生体を発生源とするノイズによって生じる測定誤差を低減することができる。
そのため、センサ部材40を用いることによって、より精度良く、関節の不安定性を評価する際の関節の移動量を検出することができる。
【0070】
本発明の実施形態で採用するセンサ素子は、静電容量型のセンサ素子に限定されるわけではなく、例えば、変形量に応じて検出部の電気抵抗が変動する抵抗式のセンサ素子であって良いし、レーザードップラー変位計であって良い。
【0071】
以下、静電容量型のセンサ素子120を採用する場合を例に、上記足関節不安定性評価用装置100の構成部材を説明する。
[静電容量型のセンサ素子]
<センサ部材>
<<誘電層>>
上記誘電層はエラストマー組成物からなるシート状物である。上記誘電層は、その表裏面の面積が変化するように可逆的に変形することができる。本発明において、シート状の誘電層の表裏面とは、誘電層のおもて面及び裏面を意味する。
上記エラストマー組成物としては、例えば、エラストマーと、必要に応じて他の任意成分とを含有するものが挙げられる。
上記エラストマーとしては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、水素添加ニトリルゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上併用しても良い。
上記エラストマーは、ウレタンゴム、シリコーンゴムが好ましい。永久歪み(または永久伸び)が小さいからである。
また、上記エラストマー組成物は、エラストマー以外に、可塑剤、酸化防止剤、老化防止剤、着色剤等の添加剤、誘電性フィラー等を含有しても良い。
【0072】
上記誘電層の平均厚さは10~1000μmが好ましい。この場合、上記誘電層は、平面視時の面積が大きくなるように伸長するのに適している。上記平均厚さは、30~200μmがより好ましい。
上記誘電層は、その表裏面の面積が無伸長状態から30%以上増大するように変形可能であることが好ましい。
ここで、30%以上増大するように変形可能であるとは、荷重をかけて面積を30%増大させても破断することがなく、かつ、荷重を解放すると元の状態に復元する(即ち、弾性変形範囲にある)ことを意味する。
なお、上記誘電層の面方向に変形可能な範囲は誘電層の設計(材質や形状等)により制御することができる。
【0073】
<<電極層(表側電極層及び裏側電極層)>>
上記電極層は、導電材料を含有する導電性組成物からなる。
上記表側電極層及び上記裏側電極層は通常同一の材料を用いて形成されるが、必ずしも同一材料を用いる必要はない。
上記導電材料としては、例えば、カーボンナノチューブ、導電性カーボンブラック、グラファイト、金属ナノワイヤー、金属ナノ粒子、導電性高分子等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上併用しても良い。
上記導電材料としては、カーボンナノチューブや、金属ナノワイヤーなどアスペクト比が大きいものが好ましい。誘電層の変形に追従して変形する電極層の形成に適しているからである。
【0074】
上記導電性組成物は、上記導電材料以外に、例えば、導電材料のつなぎ材料として機能するバインダー成分や、各種添加剤を含有しても良い。
上記添加剤としては、例えば、導電材料のための分散剤、バインダー成分のための架橋剤、加硫促進剤、加硫助剤、老化防止剤、可塑剤、軟化剤、更には着色剤等が挙げられる。
【0075】
<<保護層>>
上記センサ部材は、上記保護層(表側保護層及び裏側保護層)を備えていても良い。上記保護層を設けることにより、電極層等を外部から電気的に絶縁することができる。また、上記保護層を設けることにより、センサ部材の強度や耐久性を高めることができる。
上記保護層の材質としては、例えば、上記誘電層の材質と同様のエラストマー組成物等が挙げられる。
【0076】
<<接続部材>>
上記接続部材は、シート状の基材と、上記基材の上面に形成された複数の電極接続部とからなる。
上記シート状の基材としては、例えば、樹脂フィルムや樹脂板、不織布等の布生地等を使用することができる。上記シート状の基材は、上記伸縮性基材が伸縮しても実質的に伸縮(変形)しないものが好ましい。当該基材が容易に変形すると、電極接続部等が破断する等の不都合が発生しやすくなるからである。
上記樹脂フィルムや樹脂板の樹脂材料としては特に限定されず、例えば、PET等のポリエステル、硬質ポリ塩化ビニル、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)等が挙げられる。
【0077】
上記電極接続部としては、例えば、銅箔等の金属箔からなるもの等が挙げられる。更に、上記電極接続部は銅箔以外にも、例えば、金属材料からなる印刷層やメッキ層であっても良い。
上記電極接続部は、例えば、接着剤を用いて上記基材に固定されている。
【0078】
上記電極接続部は、電極層に接続された配線(表側配線や裏側配線、第1~第3配線)と導電性接着剤を介して電気的に接続されている。上記導電性接着剤としては特に限定されず、従来公知の導電性接着剤を使用することができ、市販品も使用することができる。
なお、上記電極層に接続された配線としては、例えば、上記電極層と同様の導電性組成物からなるものが挙げられる。
【0079】
このような構成を備えたセンサ部材は、例えば、特開2016-90487号公報に記載されたセンサシートの作製方法と同様の方法を用いて、誘電層の表裏面に電極層と保護層とが積層された部材を作製した後、上記接続部材を取り付け、その後、電極層(配線)と電極接続部とを電気的に接続することにより製造することができる。
【0080】
<被覆部材>
上記被覆部材は、上記センサ部材の周囲に設けられた絶縁性の部材である。
上記被覆部材としては、例えば、伸縮性を有する布生地や、エラストマー組成物からなる部材が挙げられる。上記被覆部材は、伸縮異方性を有する部材が好ましい。
上記伸縮性を有する布生地は特に限定されず、織物であっても良いし、編物であっても良く、更には不織布であっても良い。
上記布生地は、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着材、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等の粘着剤を用いて上記センサ部材と一体化されている。ここで、上記粘着剤は、上記誘電層の伸縮を阻害しない柔軟性が必要である。
【0081】
[サポート部材]
上記サポート部材としては、例えば、ナイロン、ポリウレタン、ポリエステル等の素材を用いて作製された部材が挙げられる。
上記サポート部材は、凹凸の大きい関節部分の体表に密着させながらも、計測時にセンサ素子にズレが発生しないことが求められる部材である。このような要求を満たすため、上記サポート部材は、例えば、伸縮性素材と、難伸縮性素材、又は非伸縮性素材とを組み合わせて作製したものが好ましい。この場合、サポート部材のセンサ素子が取り付けられる部分を、例えば難伸縮性素材からなるフィルムで形成することにより、当該サポート部材は、被検者の測定対象関節に密着することができ、かつ計測時にセンサ素子の関節に対する取り付け位置がズレにくくなる。
【0082】
第1実施形態においてサポート部材は1つの部材で構成されているが、本発明の実施形態に係る評価用装置において、サポート部材は必ずしも1つの部材で構成されている必要はなく、複数の部材で構成されていても良い。
例えば、被検者の足に固定される部分と、下腿に固定される部分とが2つの部材で構成されていても良い。この場合の具体例としては、例えば、図2、及び図3に示したサポート部材110において、図中のXの部分付近で2つの部材に分断されたサポート部材が挙げられる。
【0083】
[表示ユニット]
<計測器>
上記計測器は、上記センサ部材と電気的に接続されている。上記計測器は、上記センサ部材が備える上記検出部の静電容量を計測する。上記静電容量を計測する方法としては従来公知の方法を用いることができる。そのため、上記計測器は、必要となる静電容量測定回路、演算回路、増幅回路、電源回路等を備える。
上記静電容量を計測する方法(回路)としては、例えば、自動平衡ブリッジ回路を利用したCV変換回路(LCRメータなど)、反転増幅回路を利用したCV変換回路、半波倍電圧整流回路を利用したCV変換回路、シュミットトリガ発振回路を用いたCF発振回路、シュミットトリガ発振回路とF/V変換回路とを組み合わせて用いる方法等が挙げられる。
【0084】
<表示器>
上記表示器により検者は、関節の移動量に関する情報、及び評価装置の計測モードを確認することができる。
上記表示器は、モニター、演算回路、増幅回路、記憶部、及び電源回路等を備える。
上記記憶部は、上述のデータテーブル、及び足関節の移動量に関する情報等のデジタルデータを記憶できるものであれば良い。記憶部としては、例えば、RAM、ROM、HDD等が挙げられる。なお、上記記憶部は、上記計測器が備えていても良い。また、上記記憶部は、上記表示器、及び上記計測器の両方が備えることもできる。
【0085】
上記表示器、及び上記計測器の両方が、上記記憶部を備える場合、例えば、電圧信号Vを、足関節の移動量(mm)に変換するためのデータテーブルが、上記計測器に記憶されることができる。この場合、上記計測器は、変換した足関節の移動量(mm)を、上記表示器に送信することもできる。
また、上記表示ユニットは、上記表示器の記憶部に、電圧信号Vを、静電容量Cに変換するデータテーブルを記憶し、上記計測器の記憶部に、静電容量Cを、足関節の移動量(mm)に変換するためのデータテーブルを記憶することもできる。この場合、上記表示器側で、上記計測器から受信した電圧信号Vが、静電容量Cに変換され、変換された静電容量Cが、上記計測器側で、足関節の移動量(mm)に変換される。上述のように、使用するセンサ素子により、センサ部材の変形量に対する静電容量の出力が異なる。さらに、足関節不安定性評価用装置が対象とする、足関節の靭帯損傷の評価テストによって、使用するセンサ素子の長さや幅が異なる。そのため、センサ部材が接続される、上記計測器側の記憶部が、静電容量Cを、足関節の移動量(mm)に変換するためのデータテーブルを記憶することで、センサ部材の切り替えに対し、柔軟な対応が可能となる。
【0086】
上述の第一実施形態では、上記計測器、及び上記表示器は、表示ユニット5として一体化されているが、それぞれが別々に構成されても良い。この場合、上記計測器、及び上記表示器は、有線で接続されていても良いし、無線で接続されていても良い。
また、上記計測器、及び上記表示器が別々に構成されている場合、上記表示器としては、パソコン、スマートフォン、タブレット等の端末機器を利用しても良い。
【符号の説明】
【0087】
3 計測器
3a シュミットトリガ発振回路
3b F/V変換回路
4 表示器
4a モニター
4b 演算回路
4c 記憶部
5 表示ユニット
10、40 センサ部材
11 誘電層
12A 表側電極層
12B 裏側電極層
13A 表側配線
13B 裏側配線
14A、14B、44A、44B 導電性接着剤
15A、45A 表側保護層
15B、45B 裏側保護層
16A、16B、46A、46B 電極接続部
17、47 樹脂シート
18、48 接続部材
19、49 検出部
21 被覆部材
22、32 接続部材
24、58 接続ピン
25 接続穴
26 接続コード
27 入力ボタン
29A、29B メスの接続端子
30A、30B、57 オスの接続端子
31 接続器
41A 第1誘電層
41B 第2誘電層
42A 第1電極層
42B 第2電極層
42C 第3電極層
43A 第1配線
43B 第2配線
43C 第3配線
51 被検者
52 ベッド
53 下腿
55、56 手
100 足関節不安定性評価用装置
110 サポート部材
110A、110B サポート部材片
111A、111B ベース生地
112A、112B 伸縮シート
113A、113B、114A、114B 起毛生地
115、116、117 面ファスナ
120 センサ素子
130A、130B 第一基準指標
131 第二基準指標
140A、140B 第一固定指標
141 第二固定指標
150A、150B 評価テスト指標
160A、160B、161A、161B スナップボタンのオス
170、171A、171B スナップボタンのメス
CA 下腿軸
CL 第2中足骨を軸とするライン
FL 腓骨のライン
FV 腓骨への垂直線FV
RLM、LLM 外果指標
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17
図18