(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】中空糸膜の膜汚染速度推定方法および中空糸膜を有する浸漬型膜モジュールの薬品洗浄間隔推定方法
(51)【国際特許分類】
B01D 65/10 20060101AFI20231120BHJP
B01D 63/02 20060101ALI20231120BHJP
B01D 65/06 20060101ALI20231120BHJP
B01D 69/02 20060101ALI20231120BHJP
B01D 69/08 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
B01D65/10
B01D63/02
B01D65/06
B01D69/02
B01D69/08
(21)【出願番号】P 2020143231
(22)【出願日】2020-08-27
【審査請求日】2023-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】貝谷 吉英
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特表平11-503065(JP,A)
【文献】特開2007-152192(JP,A)
【文献】特開2007-125465(JP,A)
【文献】特開2009-233511(JP,A)
【文献】国際公開第2020/030956(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0114905(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 23/00-35/04
B01D 35/08-37/08
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
G01N 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実際に使用する中空糸膜と前記中空糸膜よりも膜汚染性が高い疎水性MF膜との間で成立する二つの相関式
R
m
Pt=αR
m
Lab (1)
(式(1)中、R
m
Ptは実際に使用する中空糸膜の膜ろ過抵抗(1/m)であり、R
m
Labは前記中空糸膜よりも膜汚染性が高い疎水性MF膜の膜ろ過抵抗(1/m)である。)および
I
Pt=βI
Lab (2)
(式(2)中、I
Ptは実際に使用する中空糸膜の膜閉塞指数(1/m
2)であり、I
Labは前記中空糸膜よりも膜汚染性が高い疎水性MF膜の膜閉塞指数(1/m
2)である。)
の係数αおよびβを決定する係数決定工程と、
前記係数α及びβを決定した前記二つの相関式に、被処理水を用いて実測した前記疎水性MF膜のR
m
LabおよびI
Labの値をそれぞれ代入してR
m
PtおよびI
Ptの値をそれぞれ求め、前記中空糸膜で前記被処理水を膜ろ過した場合の膜汚染速度を推定する膜汚染速度推定工程と、
を有することを特徴とする中空糸膜の膜汚染速度推定方法。
【請求項2】
前記膜汚染速度推定工程における前記中空糸膜で前記被処理水を膜ろ過した場合の膜汚染速度の推定が、前記R
m
PtおよびI
Ptの値を求めることに加えて、前記R
m
PtおよびI
Ptの値を以下の式(3)
K
Pt=I
Pt/R
m
Pt (3)
(式(3)中、K
Ptは実際に使用する中空糸膜の膜閉塞速度(1/m)であり、I
Ptは実際に使用する中空糸膜の膜閉塞指数(1/m
2)であり、R
m
Ptは実際に使用する中空糸膜の膜ろ過抵抗(1/m)である。)
に代入し、K
Ptを求めることにより行われることを特徴とする請求項1に記載の中空糸膜の膜汚染速度推定方法。
【請求項3】
実際に使用する中空糸膜を有する浸漬型膜モジュールと前記中空糸膜よりも膜汚染性が高い疎水性MF膜との間で成立する二つの相関式
R
m
LFB=αR
m
Lab (4)
(式(4)中、R
m
LFBは実際に使用する中空糸膜を有する浸漬型膜モジュールの膜ろ過抵抗(1/m)であり、R
m
Labは前記中空糸膜を有する浸漬型膜モジュールよりも膜汚染性が高い疎水性MF膜の膜ろ過抵抗(1/m)である。)および
I
LFB=βI
Lab (5)
(式(5)中、I
LFBは実際に使用する中空糸膜を有する浸漬型膜モジュールの膜閉塞指数(1/m
2)であり、I
Labは前記中空糸膜よりも膜汚染性が高い疎水性MF膜の膜閉塞指数(1/m
2)である。)
の係数αおよびβを決定する係数決定工程と、
前記決定した係数α、βから以下の式(6)
β=α(K
LFB/K
Lab) (6)
(式(6)中、K
LFBは実際に使用する中空糸膜を有する浸漬型膜モジュールの膜閉塞速度(1/m)であり、K
Labは前記中空糸膜よりも膜汚染性が高い疎水性MF膜の膜閉塞速度(1/m)である。)
に当てはめてK
LFBを算出するK
LFB値算出工程と、
前記算出したK
LFB値を以下の式(7)
t=(L
e-L
s)/(K
LFBf) (7)
(式(7)中、L
sはろ過開始時(t=0)のR
t/R
LFB(Rtは全ろ過抵抗であり、R
LFBは実際に使用する中空糸膜を有する浸漬型膜モジュールの膜ろ過抵抗(1/m)である)であり、Leはろ過終了時のR
t/R
LFBであり、tは積算ろ過時間、すなわち、薬品洗浄間隔である。)
に当てはめて薬品洗浄間隔tを算出する薬品洗浄間隔算出工程と、
を有することを特徴とする実際に使用する中空糸膜を有する浸漬型膜モジュールの薬品洗浄間隔推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空糸膜の膜汚染速度推定方法および中空糸膜を有する浸漬型膜モジュールの薬品洗浄間隔推定方法に関し、特に、中空糸膜より膜汚染性が高い疎水性MF膜を用いて推定する中空糸膜の膜汚染速度推定方法および中空糸膜を有する浸漬型膜モジュールの薬品洗浄間隔推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浄水処理では固液分離プロセスとして砂ろ過が主流であったが、近年では、より高度な固液分離が期待できる精密ろ過膜や限外ろ過膜を用いた低圧膜ろ過法の導入が進んでいる。
【0003】
しかし、水道原水などを膜でろ過すると、膜供給水中のバイオポリマーやフミン物質などの有機物により膜汚染が生じ、また、色度除去のための膜前処理として凝集処理を行う場合には、凝集剤に由来するアルミニムにより、これもまた同じように膜汚染が生じる。
【0004】
膜汚染により膜差圧が上昇するため、長期間の安定運転を行うためには、安定運転が可能な膜ろ過流束の選択が非常に重要であり、また、運転継続ができない膜差圧になった場合、膜の薬品洗浄が必要となるが、その洗浄間隔がどの程度になるかを事前に把握する事はランニングコストを算出する上で非常に重要である。
【0005】
しかし、膜汚染速度及び薬品洗浄間隔を正確に把握するためには、パイロット規模の長期間の実証実験が必要となるが、事業計画コストの莫大な増加をもたらす。
【0006】
そこで、ラボスケールの比較的簡単な膜ろ過試験により膜汚染性を評価し、膜ろ過流束や薬品洗浄間隔などの運転条件を推定しようとする試みがなされている。
【0007】
一般にラボレベルとして、いわゆる、マイクロモジュール、ミニモジュールと呼ばれる数~数十cm2程度の膜面積を有する膜モジュールで連続ろ過試験を行う報告が散見されるが、このようなろ過試験は、最短でも半日から一日程度、長い場合では、一週間から一ヶ月程度が必要になり、ラボスケールとしても大量の原水を使用し、加えて、自動制御の高価な機器が必要となる。
【0008】
このような課題を解決することを目的とした従来法として、特許文献1、2に記載の方法が挙げられる。
【0009】
特許文献1は、実プラントに使用している中空糸膜と膜仕様(膜材質、膜孔径)が全く同じ中空糸膜を用いてミニモジュールを作製し、両者を比較する事により実験的に最大膜ろ過流束を推定する事を提案している。具体的には、特許文献1の実施例では、膜ろ過に供する水を変更した3つのプラントで安定流束の最大値を予め求め、これらのプラントで使用される水と膜を同じにしたミニモジュールでそれぞれ定圧単純ろ過抵抗Kの値を求め、これら求めた値から検量線を作成し、この検量線により実プラントで使用される水と膜を同じにしたミニモジュールを用いて定圧単純ろ過抵抗Kの値を求め、当該K値を検量線に当てはめて安定流束の最大値が未知の実プラントでの安定流束の最大値を推定している。
【0010】
特許文献2は、実際に使用する中空糸膜と同じ表面組成(材質、孔径など)の平膜を作成し、ラボスケールのろ過試験をする事を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特許第5072366号公報
【文献】特開2011-115705号公報
【非特許文献】
【0012】
【文献】貝谷吉英、「浄水処理におけるファウリングポテンシャルの提案と浸漬型膜ろ過システムの適用事例」、膜(MEMBRANE)、Vol.39,No.4,pp.194-200(2014)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1は定圧単純ろ過抵抗Kの値を用いていることから、定圧単純ろ過抵抗Kの値が上昇する要因まではつかめておらず、定圧単純ろ過抵抗Kの値が上昇する要因に対する理論的説明を欠き、定圧単純ろ過抵抗Kの値が上昇した場合にどのような対策が有効かの示唆を与えない。
【0014】
また、特許文献2は、上述のとおり実際に使用する中空糸膜と同じ表面組成(材質、孔径など)の平膜を作成しているが、市販されていない膜をその都度ユーザーが製膜して使用する事は、非常に困難な作業であり、非現実的な提案である。また、中空糸膜で逆洗する事では、ケーキ層の剥離ができない事を指摘している事は、発明者の知見と一致する処ではあるが、平膜のろ過試験時の物理洗浄に洗瓶を用いて純水を吹き付ける洗浄を行っており、そのような洗浄強度では、凝集処理水をろ過した時に形成される強固なケーキ層を完全に剥離する事は困難である。
【0015】
そもそも、実プラントは、膜仕様を含めて膜汚染に強い運転条件が求められており、その観点で実用化をしているのであるので、短時間で膜汚染を生じさせる事は困難であり、逆に、ラボスケールの膜ろ過試験は、より短時間で加速的に膜汚染を評価する事が求められており、相反する事が求められているので、安易に実プラントと同じ膜仕様の膜を選択する評価手法そのものに課題がある。
【0016】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来のラボレベルの膜ろ過試験よりも少量の試料水量および短時間の試験で、膜汚染要因に対する示唆を与え得る、膜ろ過に供される水の膜汚染性を評価する評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、実際の膜ろ過設備で使用する膜の膜汚染速度をラボレベルの試験により推定するにあたり、実際の膜ろ過設備の膜と同一の膜を用いてラボレベルの試験を行うのでは無く、より膜汚染性が高い仕様の膜を用いることで短時間および少量の試料水量でラボレベルの試験が可能となること、および、膜汚染性を選択した複数の因子で評価することにより従来より膜汚染要因に対する示唆が得られることを見出したことに基づき膜面的ベルなされたものである。
【0018】
すなわち、上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、
実際に使用する中空糸膜と前記中空糸膜よりも膜汚染性が高い疎水性MF膜との間で成立する二つの相関式
【0019】
Rm
Pt=αRm
Lab (1)
(式(1)中、Rm
Ptは実際に使用する中空糸膜の膜ろ過抵抗(1/m)であり、Rm
Labは前記中空糸膜よりも膜汚染性が高い疎水性MF膜の膜ろ過抵抗(1/m)である。)および
IPt=βILab (2)
(式(2)中、IPtは実際に使用する中空糸膜の膜閉塞指数(1/m2)であり、ILabは前記中空糸膜よりも膜汚染性が高い疎水性MF膜の膜閉塞指数(1/m2)である。)
の係数αおよびβを決定する係数決定工程と、前記係数α及びβを決定した前記二つの相関式に、被処理水を用いて実測した前記疎水性MF膜のRm
LabおよびILabの値をそれぞれ代入してRm
PtおよびIPtの値をそれぞれ求め、前記中空糸膜で前記被処理水を膜ろ過した場合の膜汚染速度を推定する膜汚染速度推定工程と、を有することを特徴とする中空糸膜の膜汚染速度推定方法によって達成される。
【0020】
また、本発明の中空糸膜の膜汚染速度推定方法は、前記膜汚染速度推定工程における前記中空糸膜で前記被処理水を膜ろ過した場合の膜汚染速度の推定が、前記Rm
PtおよびIPtの値を求めることに加えて、前記Rm
PtおよびIPtの値を以下の式(3)
KPt=IPt/Rm
Pt (3)
(式(3)中、KPtは実際に使用する中空糸膜の膜閉塞速度であり、IPtは実際に使用する中空糸膜の膜閉塞指数(1/m2)であり、Rm
Ptは実際に使用する中空糸膜の膜ろ過抵抗(1/m)である。)
に代入し、KPtを求めることにより行われることが好ましい。
【0021】
さらに、上記目的は、実際に使用する中空糸膜を有する浸漬型膜モジュールと前記中空糸膜よりも膜汚染性が高い疎水性MF膜との間で成立する二つの相関式
Rm
LFB=αRm
Lab (4)
(式(4)中、Rm
LFBは実際に使用する中空糸膜を有する浸漬型膜モジュールの膜ろ過抵抗(1/m)であり、Rm
Labは前記中空糸膜を有する浸漬型膜モジュールよりも膜汚染性が高い疎水性MF膜の膜ろ過抵抗(1/m)である。)および
ILFB=βILab (5)
(式(5)中、ILFBは実際に使用する中空糸膜を有する浸漬型膜モジュールの膜閉塞指数(1/m2)であり、ILabは前記中空糸膜よりも膜汚染性が高い疎水性MF膜の膜閉塞指数(1/m2)である。)の係数αおよびβを決定する係数決定工程と、
前記決定した係数α、βから以下の式(6)
β=α(KLFB/ KLab) (6)
(式(6)中、KLFBは実際に使用する中空糸膜を有する浸漬型膜モジュールの膜閉塞速度(1/m)であり、KLabは前記中空糸膜よりも膜汚染性が高い疎水性MF膜の膜閉塞速度(1/m)である。)に当てはめてKLFBを算出するKLFB値算出工程と、
前記算出したKLFB値を以下の式(7)
t=(Le-Ls)/(KLFBf) (7)
(式(7)中、Lsはろ過開始時(t=0)のRt/RLFB(Rtは全ろ過抵抗であり、RLFBは実際に使用する中空糸膜を有する浸漬型膜モジュールの膜ろ過抵抗(1/m)である)であり、Leはろ過終了時のRt/RLFBであり、tは積算ろ過時間、すなわち、薬品洗浄間隔である。)に当てはめて薬品洗浄間隔tを算出する薬品洗浄間隔算出工程と、を有することを特徴とする実際に使用する中空糸膜を有する浸漬型膜モジュールの薬品洗浄間隔推定方法によっても達成することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の中空糸膜の膜汚染速度推定方法によれば、まず、係数決定工程において係数α、βが決定され、KはI/Rmであることから、上記式(1)および式(2)のように分けて考える事により、どちらの因子によりK値が異なるかが明確になり、実際に使用する膜と水質評価用の膜の膜汚染速度の原因、膜の選定理由が明確となり、評価用膜の選択が可能となる。
【0023】
また、実際に使用する中空糸膜よりも膜汚染性が高い疎水性MF膜(以下、単にLabともいう)を用いてRm
LabおよびILabの値を測定し、これを上記式(4)および(5)にそれぞれ代入してRm
PtおよびIPtの値をそれぞれ求めていることから、実際に使用する中空糸膜の膜汚染速度を推定するにあたり、使用する被処理水の量も少なくて済み、且つ短時間の試験でよいこととなる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の中空糸膜の膜汚染速度推定方法を説明するフローチャートである。
【
図2】本発明の中空糸膜を有する浸漬型膜モジュールの薬品洗浄間隔推定方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明の好ましい実施の形態を示す。ただし、本発明が以下に示す実施形態に限定される訳ではない。
【0026】
<中空糸膜の膜汚染速度推定方法>
本発明の中空糸膜の膜汚染速度推定方法は、ケーキろ過理論に基づいて構築された方法である。ここでは、その理論に、実際に使用する中空糸膜よりも膜汚染性が高い疎水性MF膜を用いた膜ろ過試験として本発明者が考案した上記非特許文献1~4に示す“ファウリングポテンシャル(FP)”を導入した場合を説明する。
【0027】
本発明において、“膜汚染性が高い”とは、比較する2つの膜の間で同じ被処理水を同条件で膜ろ過した場合に膜閉塞速度が大きくなることをいう。例えば、疎水性MF膜の孔径が実際に使用する中空糸膜の孔径より大きいために疎水性MF膜の孔径より小さい閉塞物質が疎水性MF膜の膜孔内に入り込んで中空糸膜よりも膜閉塞が生じやすくなる場合や、疎水性MF膜が実際に使用する中空糸膜よりも疎水性が高い場合に、実際に使用する中空糸膜よりも疎水性MF膜の膜汚染性が高くなる。
【0028】
なお、上記手法では、疎水性MF膜として、メルク社製のPVDF製GVHP膜(公称孔径0.22μm)を用いているが、本発明はこれに限定されるものではなく、別のPVDF膜でも適用できる。身近な例では、これよりも孔径が小さい、同社のVVHP膜(公称孔径0.1μm)でも構わない。また、実際に使用する中空糸膜として、ここでは三菱ケミカルアクア・ソリューションズ社(以下、MCAS社ともいう)製EX540Tを使用しているが、本発明ではこれに限定されるものではない。
【0029】
以下、説明する。
【0030】
本発明の中空糸膜の膜汚染速度推定方法は、
図1に示すように、係数決定工程(S110)と、膜汚染速度推定工程(S120)と、を有する。
【0031】
[係数決定工程(S110)]
本工程は、実際に使用する中空糸膜と前記中空糸膜よりも膜汚染性が高い疎水性MF膜との間で成立する二つの相関式
Rm
Pt=αRm
Lab (1)
(式(1)中、Rm
Ptは実際に使用する中空糸膜の膜ろ過抵抗(1/m)であり、Rm
Labは前記中空糸膜よりも膜汚染性が高い疎水性MF膜の膜ろ過抵抗(1/m)である。)および
IPt=βILab (2)
(式(2)中、IPtは実際に使用する中空糸膜の膜閉塞指数(1/m2)であり、ILabは前記中空糸膜よりも膜汚染性が高い疎水性MF膜の膜閉塞指数(1/m2)である。)
の係数αおよびβを決定する。
【0032】
上記二つの関係式(1)および(2)に至る前に、まず、ルースのろ過式では、全ろ過抵抗Rt(1/m)を次の式(8)
Rt=Rm+Rc (8)
(式(8)中、Rmは膜ろ過抵抗(1/m)であり、Rcはケーキろ過抵抗(1/m)である。)
で表すことができる。
【0033】
ここで、ケーキろ過抵抗Rcは、以下の式(9)
Rc=αvVs (9)
(式(9)中、αvはろ過水量基準の平均ケーキ比抵抗(1/m2)であり、Vsは膜面積当たりのろ過水量(m)である。)
で表すことができ、式(8)に式(9)を代入して整理すると以下の式(10)
Rt/Rm=1+(αv/Rm)Vs
=1+(I/Rm)Vs (10)
(式(10)中、Iはαvの置き換えであり、膜閉塞指数と定義される。その他の符号は式(8)および式(9)の定義と同じである。)
ように表わせる。
【0034】
膜閉塞指数Iは、単位体積の膜供給水を単位面積の膜でろ過する場合に形成される不可逆的ケーキ層のろ過抵抗であり、水質指標的には、閉塞物質濃度に似た概念を意味する。使用する膜や操作条件に影響される値である。
【0035】
この式(10)は、以下の式(11)
Rt/Rm=1+KVs (11)
(式(11)中、KはI/Rmであり、その他の符号は式(10)の定義と同じである。)
と書き換えることができる。
【0036】
ここで、Kは、ろ過データをRt/Rm(縦軸)-Vs(横軸)のグラフとして整理した時の直線の傾きであり、膜の閉塞速度を意味する。
【0037】
また、ファウリングポテンシャルの値(FP値)は、ろ過データの膜差圧(縦軸、m-Aq)-Vs(横軸)のグラフとして整理した時の直線の傾きであるため、FP値とGVHP膜(すなわち、実際に使用する中空糸膜よりも膜汚染性が高い疎水性MF膜)のK値(KLab)は次の式(12)
KLab=FP/P0 (12)
(式(12)中、KLabは実際に使用する中空糸膜よりも膜汚染性が高い疎水性MF膜の閉塞速度であり、FPはファウリングポテンシャルの値であり、P0はGVHP膜の初期膜差圧(本実施の形態で使用したGVHP膜では、0.9m-Aq(at 20m/日,25℃)であった)である。)
の関係にある。
【0038】
ケーキろ過における膜の閉塞速度、すなわち、K値は、式(10)から解るように、単なる膜の清水透水性能(膜ろ過抵抗Rm)と膜材質や孔径のような膜特性などが反映される膜閉塞指数Iの二つの因子に影響される。
【0039】
そこで、本発明の中空糸膜の膜汚染速度推定方法においては、この二つの因子を分けて評価するため、新たにα値及びβ値を上記式(1)および式(2)のように定義した。
【0040】
式(11)に示すように、KはI/Rmであることから、本発明によれば、上記式(1)および式(2)のように分けて考える事により、どちらの因子によりK値が異なるかが明確になり、実際に使用する膜と水質評価用の膜の膜汚染速度の原因、膜の選定理由が明確となり、評価用膜の選択が可能となる。
【0041】
また、MCAS社製EX540T(実際に使用する中空糸膜)のK値(KPt)は以下の式(13)
KPt=IPt/Rm
Pt (13)
(式(13)中、KPtは、MCAS社製EX540T(実際に使用する中空糸膜)の膜の閉塞速度であり、IPtはMCAS社製EX540Tの膜閉塞指数であり、Rm
PtはMCAS社製EX540Tの膜ろ過抵抗(1/m)である。)
式(13)に、式(1)および式(2)を代入し、βについて解くと以下の式(14)
β=α(KPt/KLab) (14)
(式(14)中、KPtはMCAS社製EX540T(実際に使用する中空糸膜)の閉塞速度であり、KLabはメルク社製のPVDF製GVHP膜(実際に使用する中空糸膜よりも膜汚染性が高い疎水性MF膜)の閉塞速度である。)
以上の式(1)~(14)を用い、αおよびβは以下のように算出する。
【0042】
まず、Rm
Pt、Rm
Labをそれぞれの膜を用いて測定する。各Rm値は、例えば、Rm=P/μJの式により求めることができる。式中、Rmはろ過抵抗を、Pはろ過圧力を、Jは膜ろ過流束(flux)を、μは粘性を、それぞれ示す。
【0043】
Rm
Pt、Rm
Labは、ケーキ層が膜に付着する前の値であるから、それぞれ固定値として得ることができる。得られたRm
PtおよびRm
Labのそれぞれの値を式(1)に代入することで、αを算出することができる。
【0044】
次に、βを算出するが、その前に式(12)により、KLab、すなわち、メルク社製のPVDF製GVHP膜(実際に使用する中空糸膜よりも膜汚染性が高い疎水性MF膜)の閉塞速度を求める。
【0045】
メルク社製のPVDF製GVHP膜(実際に使用する中空糸膜よりも膜汚染性が高い疎水性MF膜)のファウリングポテンシャルの値(FP値)は、上述のとおり、ろ過データの膜差圧(縦軸、m-Aq)-Vs(横軸)のグラフとして整理した時の直線の傾きとして求める。
【0046】
FP値は、例えば、非特許文献1に記載の手法により求めることができる。具体的には、まず、被処理水を予め0.45μmのメンブレンフィルターでろ過する前処理を行う。次に、公称孔径0.22μmの疎水性PVDF膜(ミリポア社製GVHP、直径25mm)を使用し、これを撹拌式加圧セルに装着し、HPLC用送液ポンプで加圧ろ過を行う。
前記被処理水のろ過は、セルの攪拌子を1,450rpmで回転させながら全量定速ろ過(膜ろ過流束20m/日)で行い、膜差圧がある程度上昇した後、膜をセルから取り外し、1%-シュウ酸洗浄(洗浄時間60分、洗浄温度20℃程度)と膜面のスポンジ洗浄を行う。洗浄後、膜をセルに再び装着し、供試水のGVHP膜ろ過水でろ過を行い、再び膜差圧を測定する。この膜差圧とろ過開始時の膜差圧の差(m-Aq at25℃)を総ろ過水量(m3/m2-膜)で除した値が被処理水のFP値となる。
【0047】
なお、本発明において、被処理水は、水道原水が用いられる。水道原水は、例えば、河川水、地下水、ダム湖水、湖沼水、伏流水、地下水などが挙げられる。
【0048】
次に、PVDF製GVHP膜(実際に使用する中空糸膜よりも膜汚染性が高い疎水性MF膜)の初期膜差圧P0(0.9m-Aq(at 20m/日,25℃))およびFP値を式(12)に代入することで、KLab値を求めることができる。
【0049】
さらに、KPtの値を実測により求める。具体的には、被処理水をMCAS社製EX540T(実際に使用する中空糸膜)に通水して得られた運転データを式(11)の形に整理して上記KPtの値を求める。
【0050】
すると、上記算出したKPt、KLabおよびαの値を式(14)に代入することで、βを求めることができる(以上、係数決定工程(S110))。
【0051】
[膜汚染速度推定工程(S120)]
本工程では、前記係数α及びβを決定した前記二つの相関式に、被処理水を用いて実測した前記疎水性MF膜のRm
LabおよびILabの値をそれぞれ代入してRm
PtおよびIPtの値をそれぞれ求め、前記中空糸膜で前記被処理水を膜ろ過した場合の膜汚染速度を推定する。
【0052】
α及びβが決定されたので、後はMCAS社製EX540T(実際に使用する中空糸膜)に通水したい任意の被処理水をメルク社製のPVDF製GVHP膜(実際に使用する中空糸膜よりも膜汚染性が高い疎水性MF膜)に通水し、Rm
LabおよびILabの値を実測する。
【0053】
そして、得られたRm
LabおよびILabの値を上記式(1)および(2)にそれぞれ代入して、Rm
PtおよびIPtの値をそれぞれ求め、得られたRm
PtおよびIPtの値から、膜汚染速度を推定する。
【0054】
なお、本実施の形態において、膜汚染速度推定工程における中空糸膜で被処理水を膜ろ過した場合の膜汚染速度の推定が、Rm
PtおよびIPtの値を求めることに加えて、Rm
PtおよびIPtの値を以下の式(3)
KPt=IPt/Rm
Pt (3)
(式(3)中、KPtは実際に使用する中空糸膜の膜閉塞速度であり、IPtは実際に使用する中空糸膜の膜閉塞指数(1/m2)であり、Rm
Ptは実際に使用する中空糸膜の膜ろ過抵抗(1/m)である。)
に代入し、KPtを求めることにより行われることが好ましい。
【0055】
ここで、Rm
Ptは単なる膜の清水透水性能を意味し、IPtは膜材質や孔径のような膜特性が反映される膜閉塞指数を意味し、両者はK値(膜閉塞速度)を含めて式(13)の関係で表される。したがって、ある被処理水をMCAS社製EX540T(実際に使用する中空糸膜)で膜ろ過したK値がある値をとる場合に、たとえば、このK値を小さくさせるために膜特性を変更してIPtを小さくすることや、実際に使用する中空糸膜の内径を大きくしたり、実際に使用する中空糸膜の膜厚を小さくしたりすることでRm
Ptを相対的に大きくすることが考えられる。
【0056】
さらに本発明の中空糸膜の膜汚染速度推定方法によれば、実際に使用する中空糸膜よりも膜汚染性が高い疎水性MF膜を用いてRm
LabおよびILabの値を測定し、これを上記式(1)および(2)にそれぞれ代入してRm
PtおよびIPtの値をそれぞれ求めていることから、MCAS社製EX540T(実際に使用する中空糸膜)の膜汚染速度を推定するにあたり、使用する被処理水の量も少なくて済み、且つ短時間の試験でよいこととなる。
【0057】
<中空糸膜を有する浸漬型膜モジュールの薬品洗浄間隔推定方法>
次に、本発明の中空糸膜を有する浸漬型膜モジュールの薬品洗浄間隔推定方法について説明する。
【0058】
本発明の中空糸膜を有する浸漬型膜モジュールの薬品洗浄間隔推定方法は、
図2に示すように、係数決定工程(S210)と、K
LFB値算出工程(S220)と、薬品洗浄間隔算出工程(S230)と、を有する。
【0059】
[係数決定工程(S210)]
本工程は、実際に使用する中空糸膜を有する浸漬型膜モジュールと前記中空糸膜よりも膜汚染性が高い疎水性MF膜との間で成立する二つの相関式
Rm
LFB=αRm
Lab (4)
(式(4)中、Rm
LFBは実際に使用する中空糸膜を有する浸漬型膜モジュールの膜ろ過抵抗(1/m)であり、Rm
Labは前記中空糸膜を有する浸漬型膜モジュールよりも膜汚染性が高い疎水性MF膜の膜ろ過抵抗(1/m)である。)および
ILFB=βILab (5)
(式(5)中、ILFBは実際に使用する中空糸膜を有する浸漬型膜モジュールの膜閉塞指数(1/m2)であり、ILabは前記中空糸膜よりも膜汚染性が高い疎水性MF膜の膜閉塞指数(1/m2)である。)
の係数αおよびβを決定する。
【0060】
上記二つの相関式に至る前に、MCAS社製EX540T(実際に使用する中空糸膜)を有する浸漬型膜モジュール(以下、LFBともいう)の閉塞挙動がケーキろ過理論に従うとすると、以下の式(15)
Rt/Rm
LFB=1+KLFBVs
=1+(ILFB/Rm
LFB)Vs (15)
(式(15)中、Rtは全ろ過抵抗(1/m)であり、Rm
LFBはLFBの膜ろ過抵抗(1/m)であり、KLFBはLFBの閉塞速度(1/m)であり、VsはLFBの膜面積当たりのろ過水量(m)である。)
で表せる。
【0061】
また、LFBよりも膜汚染性が高い疎水性MF膜(以下、Labともいう)のK値(KLab)とLFBのK値(KLFB)は以下の式(6)
β=α(KLFB/KLab) (6)
の関係にあり、αおよびβの係数についても、上記式(4)および(5)の二つの相関式で表現することができる。
【0062】
αおよびβの係数の決定については、本発明の中空糸膜の膜汚染速度推定方法の[係数決定工程(S110)]と同様にして行ってもよい。あるいは、αについて、Rm
LFBおよびRm
Labを清水(膜が汚れていない水、水道水の膜ろ過水、純水等)を用いてそれぞれの膜で測定して求め、式(4)に代入することで求めてもよい。このとき、Rmは膜ろ過抵抗であるから、固定の値となる。
【0063】
同様に、βについては、有機物濃度等の異なる複数の原水(被処理水)を用いてLFBおよびLabで膜ろ過試験を行い、ILFBとILabの関係、すなわち、βを求めることができる(以上、係数決定工程(S210))。
【0064】
[KLFB値算出工程(S220)]
本工程では、前記決定した係数α、βから以下の式(6)
β=α(KLFB/KLab) (6)
(式(6)中、KLFBは実際に使用する中空糸膜を有する浸漬型膜モジュールの膜閉塞速度(1/m)であり、KLabは前記中空糸膜よりも膜汚染性が高い疎水性MF膜の膜閉塞速度(1/m)である。)
に当てはめてKLFBを算出する。
【0065】
本工程では、まずKLabの値を求める。KLabの値は、LabにおいてFP値を求め、上記式(12)(本発明の中空糸膜の膜汚染速度推定方法の[係数決定工程(S110)]の項目参照)に代入することで求めることができる。
【0066】
したがって、以降は物性が未知の被処理水についてFP値を求めてKLabを算出することで、上記式(6)にα、βおよび算出したKLabを代入することで、LFBについて実証試験を行うことなくKLFBの値を決定することができる(以上、KLFB値算出工程(S220))。
【0067】
[薬品洗浄間隔算出工程(S230)]
本工程では、前記算出したKLFB値を以下の式(7)
【0068】
t=(Le-Ls)/(KLFBf) (7)
(式(7)中、Lsはろ過開始時(t=0)のRt/RLFB(Rtは全ろ過抵抗であり、RLFBは実際に使用する中空糸膜を有する浸漬型膜モジュールの膜ろ過抵抗(1/m)である)であり、Leはろ過終了時のRt/RLFBであり、tは積算ろ過時間、すなわち、薬品洗浄間隔である。)
に当てはめて薬品洗浄間隔tを算出する。
【0069】
式(7)に至る前に、式(15)について考えると、積算ろ過時間をt(日)、膜透過流束をf(m/日)とすれば、式(15)は以下の式(16)
Rt/Rm
LFB=1+KLFBft (16)
(式(16)中、Rtは全ろ過抵抗(1/m)であり、Rm
LFBはLFBの膜ろ過抵抗(1/m)であり、KLFBはLFBの閉塞速度(1/m)であり、fは膜透過流束(m/日)であり、tは積算ろ過時間(日)である。)
と表すことができ、式(16)をtについて解くと、以下の式(17)
t=(Rt/Rm
LFB-1)/(KLFBf) (17)
(式(17)中、符号の定義は式(16)と同一である。)
を得る。
【0070】
ここで、Rt/Rm
LFBは、積算ろ過時間tにおける透水性能保持率(新膜の透水性能に対する割合)と同義であり、右辺分子第二項の1は、新品膜におけるろ過開始時の全ろ過抵抗とLFBのろ過抵抗の比、すなわち、透水性能保持率100%を意味する。これを洗浄を繰り返しながら使用する膜のろ過開始時のRt/Rm
LFB(t=0)と置き換えると、以下の式(18)
t=(Le-Ls)/(KLFBf) (18)
(式(18)中、Lsはろ過開始時(t=0)のRt/Rm
LFBであり、Leはろ過終了時のRt/Rm
LFBであり、t、KLFBおよびfの定義は式(17)と同一である。)
を得る。
【0071】
Rt/Rm
LFBがLeに到達する時点で薬品洗浄を行うとすれば、式(17)の積算ろ過時間tが薬品洗浄間隔(日)となる(以上、薬品洗浄間隔算出工程(S230))。
【0072】
本発明の中空糸膜を有する浸漬型膜モジュールの薬品洗浄間隔推定方法によれば、まず、係数決定工程(S210)において係数α、βが決定され、KはI/Rmであることから、上記式(4)および式(5)のように分けて考える事により、どちらの因子によりK値が異なるかが明確になり、実際に使用する膜と水質評価用の膜の膜汚染速度の原因、膜の選定理由が明確となり、評価用膜の選択が可能となる。
【0073】
また、Labを用いてRm
LabおよびILabの値を測定し、これを上記式(4)および(5)にそれぞれ代入してRm
LFBおよびILFBの値をそれぞれ求めていることから、LFBの膜汚染速度を推定するにあたり、使用する被処理水の量も少なくて済み、且つ短時間の試験でよいこととなる。
【0074】
さらに、式(18)を解くことで、より簡単なLabを用いた膜ろ過試験から、実規模のLFBの薬品洗浄間隔(日)を算出することができる。
【0075】
なお、上記式の計算は、例えば、理論式を電子計算機の表計算ソフトを用いて計算できるようにすれば簡単に階を求めることができるし、いくつかの条件を検討することもできる。
【実施例】
【0076】
以下、実施例を示して本発明の中空糸膜を有する浸漬型膜モジュールの薬品洗浄間隔推定方法の主にKLFB値算出工程(S220)以降について具体的に説明する。なお、本発明はこの実施例のみに限定されるものではない。
【0077】
<1.αおよびβの係数の決定>
有機物由来のβ値(βFP)を0.2、閉塞抵抗の有機物寄与率を0.7とすると、合計のβ値(βTotal)は0.2/0.7=0.2857となる。
【0078】
次に、LFBの透水性能は20.9m/日(at100kPa,25℃)なので、LFBのろ過抵抗Rm
LFBは46.4×1010(1/m)である。また、Labの透水性能は227m/日(at100kPa,25℃)であるから、Labのろ過抵抗Rm
Labは4.281×1010(1/m)である。両者のろ過抵抗を式(4)に代入すると、αは10.84と決定される。
【0079】
<2.KLFB値の算出>
まず、KLab値を式(12)により求めた。
【0080】
ここで、FP値の実測値が1.00であり、P0は0.9m-Aq(at 20m/日,25℃)であるから、これらを式(12)に代入すると、KLab値は1.11(1/m)となった。
【0081】
すると、KLab=1.11(1/m)、β=0.2857、α=10.84であるから、これらを式(6)に代入すると、KLFB=0.0293(1/m)と算出された。
【0082】
<3.LFBの薬品洗浄間隔(日)の算出>
LFBのろ過開始時の透水性能は70%(Ls=1.43)であり、薬品洗浄実施時(ろ過終了時)の透水性能保持率は20%(Le=5.00)であり、膜透過流束fは0.4(m/日)であり、KLFBは0.0293(1/日)であるとすると、これらを式(18)に代入すると、tは305(日)と算出される。
【0083】
よって、本実施例のLFBの運転条件において、LFBの薬品洗浄間隔は305日と推定することができた。