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  • 特許-冷却水浄化装置の運用方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】冷却水浄化装置の運用方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/42 20230101AFI20231120BHJP
   G21F 9/30 20060101ALI20231120BHJP
   G21F 9/12 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
C02F1/42 B
C02F1/42 A
G21F9/30 571B
G21F9/12 512B
G21F9/12 512F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020162453
(22)【出願日】2020-09-28
(65)【公開番号】P2022055079
(43)【公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】石原 伸夫
【審査官】高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-093149(JP,A)
【文献】特開2009-300163(JP,A)
【文献】特開2005-003598(JP,A)
【文献】特開平09-026499(JP,A)
【文献】特開2013-068512(JP,A)
【文献】特表2003-513253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/42
B01J 39/00 - 49/90
G21F 9/00 - 9/36
G21C 19/00 - 19/50
23/00
G21D 1/00 - 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Li型陽イオン交換樹脂が充填された第一脱塩塔と、
前記第一脱塔と並列に設けられて、H型陽イオン交換樹脂が充填された第二脱塩塔と、
を備える冷却水浄化装置の運用方法であって、
前記第二脱塩塔への通水量が前記第一脱塩塔への通水量よりも小さくなるように、前記第一脱塩塔、及び前記第二脱塩塔に冷却水を通水する第一通水工程と、
前記第一通水工程の後に、前記第一脱塩塔から使用済みの前記Li型陽イオン交換樹脂を除去し、新規のH型陽イオン交換樹脂を前記第一脱塩塔に充填する交換工程と、
前記交換工程の後に、前記新規のH型陽イオン交換樹脂が充填された前記第一脱塩塔への通水量が前記第二脱塩塔への通水量よりも小さくなるように、前記第一脱塩塔、及び前記第二脱塩塔に冷却水を通水する第二通水工程と、
を含む冷却水浄化装置の運用方法。
【請求項2】
前記第一通水工程では、前記第二脱塩塔への前記冷却水の通水を間欠的に行い、前記第一脱塩塔への前記冷却水の通水を常態的に行う請求項に記載の冷却水浄化装置の運用方法。
【請求項3】
前記第二通水工程では、前記第一脱塩塔への前記冷却水の通水を間欠的に行い、前記第二脱塩塔への前記冷却水の通水を常態的に行う請求項に記載の冷却水浄化装置の運用方法。
【請求項4】
前記第一通水工程の後に、Liよりも吸着力が高い物質を系統中に添加することで、前記使用済みのLi型陽イオン交換樹脂に吸着されていたLiを系統中に放出させる放出工程をさらに含む請求項1からのいずれか一項に記載の冷却水浄化装置の運用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷却水浄化装置の運用方に関する。
【背景技術】
【0002】
加圧水型原子力発電所(PWR型発電所)は、原子炉を有する一次冷却系と、蒸気発生器で発生させた水蒸気を用いてタービンを駆動することにより発電を行う二次冷却系とが、蒸気発生器を介して接続されている。一次冷却系で使用される一次冷却水は、原子炉を冷却して高温高圧となる。蒸気発生器では、高温高圧となった一次冷却水が、二次冷却系の二次冷却水と熱交換を行い、二次冷却水を蒸発させて高圧の水蒸気を発生させる。そして、二次冷却系では、蒸気発生器において発生した水蒸気によりタービン駆動することにより発電を行う。
【0003】
一次冷却系では、一次冷却水に含まれる塩化物イオン、フッ化物イオン等の不純物や、131I等の核分裂生成物、および、58Co、60Co、ニッケル、鉄等の腐食生成物を除去するために、一次冷却水の一部を原子炉の外部に導き出して、化学体積制御(CVCS)系統およびホウ酸回収(BRS)系統の脱塩装置によって処理している。このような一次冷却水の浄化を目的とし、CVCS系統、BRS系統には、混床式の脱塩装置が設置されている(例えば下記特許文献1)。この種の脱塩装置は、陽イオン交換樹脂が充填された脱塩塔を有しており、当該樹脂に一次冷却水を通水することで、冷却水に含まれる余剰なLiが吸着される。これにより、一次冷却水中のLi濃度が一定の基準値に維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-93149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、Li型陽イオン交換樹脂は一般に高価でありながらも、除去すべきイオンの吸着性能が低下した段階で都度交換する必要があった。このため、運用コスト上昇の原因となっていた。
【0006】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、より経済的に運用することが可能な冷却水浄化装置の運用方を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る冷却水浄化装置の運転方法は、Li型陽イオン交換樹脂が充填され第一脱塩塔と、前記第一脱塔と並列に設けられて、H型陽イオン交換樹脂が充填された第二脱塩塔と、を備える冷却水浄化装置の運用方法であって、前記第二脱塩塔への通水量が前記第一脱塩塔への通水量よりも小さくなるように、前記第一脱塩塔、及び前記第二脱塩塔に冷却水を通水する第一通水工程と、前記第一通水工程の後に、前記第一脱塩塔から使用済みの前記Li型陽イオン交換樹脂を除去し、新規のH型陽イオン交換樹脂を前記第一脱塩塔に充填する交換工程と、前記交換工程の後に、前記新規のH型陽イオン交換樹脂が充填された前記第一脱塩塔への通水量が前記第二脱塩塔への通水量よりも小さくなるように、前記第一脱塩塔、及び前記第二脱塩塔に冷却水を通水する第二通水工程と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、より経済的に運用することが可能な冷却水浄化装置の運用方を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施形態に係る冷却水浄化装置の構成を示す系統図である。
図2】本開示の実施形態に係る冷却水浄化装置の運用方法を示すフローチャートである。
図3】本開示の実施形態に係る冷却水浄化装置の各サイクルにおける脱塩塔の使用状況を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(冷却水浄化装置の構成)
以下、本開示の実施形態に係る冷却水浄化装置100について、図1から図3を参照して説明する。本実施形態に係る冷却水浄化装置100は、原子力発電所における加圧水型軽水炉の冷却に用いられる一次冷却水を浄化するための装置である。図1に示すように、この冷却水浄化装置100は、通水ラインL1と、並列ラインL2と、分岐ラインL3と、オリフィス並列ラインL4と、三方弁V1と、逆止弁V2と、調整部90としてのオンオフ弁V3,V4,V5,及びV6と、流量調整弁V7,V8と、オンオフ弁V9と、第一脱塩塔1Aと、第二脱塩塔1Bと、フィルターF1,F2と、サンプリングラインS1,S2と、を備えている。
【0012】
通水ラインL1は、冷却水抽出ラインから一次冷却水を抽出して、VCTタンク(体積制御タンク)まで流通させる。(なお、以下の説明では、冷却水抽出ライン側を上流側と呼び、VCTタンク側を下流側と呼ぶことがある。)通水ラインL1上には、三方弁V1、逆止弁V2、並列に配置された一対のフィルターF1、オンオフ弁V3、第一脱塩塔1A、オンオフ弁V4、流量調整弁V7、及びフィルターF2が、上流側から下流側に向かってこの順番で配列されている。
【0013】
三方弁V1は、後述する分岐ラインL3と通水ラインL1との接続部とサンプリングラインS2との間と、通水ラインL1とを接続している。図1の例では、分岐ラインL3への通水が閉止されている状態を示している。逆止弁V2は、通水ラインL1内での冷却水の流通方向を一方向のみに規制するために設けられている。一対のフィルターF1は、冷却水中に含まれるチリ等の大きな不純物を除去するために設けられている。
【0014】
(第一脱塩塔、第二脱塩塔の構成)
フィルターF1の下流側には、第一脱塩塔1Aが設けられている。第一脱塩塔1Aは、通水ラインL1を流通する冷却水に含まれるLi(特にLi-7)を吸着・除去することで系統中のLi濃度を一定に保つ機能と、通水ラインL1中の不純物を除去する機能とを持つ装置である。詳しくは後述するが、第一脱塩塔1Aの内部には、Li型陽イオン交換樹脂か、又はH型陽イオン交換樹脂が充填される。なお、第一脱塩塔1Aに陰イオン交換樹脂を併せて充填することも可能である。つまり、第一脱塩塔1Aは混床式である。この第一脱塩塔1Aへの通水量は、オンオフ弁V3,V4を開閉することによって決定される。なお、ここで言う「通水量」とは、系統の運転サイクルにおける冷却水の流量の積算値である。つまり、これらオンオフ弁V3,V4を開閉することによって、第一脱塩塔1Aへの通水を、間欠的に、又は常態的に行うことが可能である。
【0015】
通水ラインL1におけるフィルターF1とオンオフ弁V3との間には、並列ラインL2の一端が接続されている。この並列ラインL2上には、オンオフ弁V5、第二脱塩塔1B、及びオンオフ弁V6が配置されている。並列ラインL2の他端は通水ラインL1に接続されている。つまり、この並列ラインL2によって、第一脱塩塔1Aと第二脱塩塔1Bとが並列に配置されている。第二脱塩塔1Bの内部には、第一脱塩塔1Aと同様に、Li型陽イオン交換樹脂か、又はH型陽イオン交換樹脂が充填される。この第二脱塩塔1Bへの通水量は、オンオフ弁V5,V6を開閉することによって決定される。なお、ここで言う「通水量」とは、系統の運転サイクルにおける冷却水の流量の積算値である。つまり、これらオンオフ弁V5,V6を開閉することによって、第二脱塩塔1Bへの通水を、間欠的に、又は常態的に行うことが可能である。
【0016】
(陽イオン脱塩塔の構成)
第一脱塩塔1A、及び第二脱塩塔1Bの下流側には、流量調整弁V7と、この流量調整弁V7と並列となるように配置された分岐ラインL3とが設けられている。分岐ラインL3上には、上流側から下流側に向かって、一対のオリフィス2A,2Bと、陽イオン脱塩塔1Cと、がこの順番で配置されている。一対のオリフィス2A,2Bは互いに並列となるように配置されている。これらオリフィス2A,2Bの下流側にはそれぞれ流量調整弁V8,オンオフ弁V9が設けられている。
【0017】
陽イオン脱塩塔1Cは、オリフィス2A,2Bの下流側に設けられている。陽イオン脱塩塔1Cは、冷却水に含まれるLiのうち、余剰な成分のみを吸着・除去するために設けられている。この陽イオン脱塩塔1Cの下流側には、Li濃度を測定するためのサンプリングラインS1が設けられている。サンプリングラインS1を通じて測定されたLi濃度が、予め定められた一定の基準値以下となるように、陽イオン脱塩塔1Cに流入する冷却水の量が決定される(具体的には、流量調整弁V7、V8、及びオンオフ弁V9の開閉が調整される。)。また、分岐ラインL3と通水ラインL1の合流部とVCTタンク(体積制御タンク)との間にも、同様のサンプリングラインS2が設けられている。さらに、このサンプリングラインS2の下流側にはフィルターF2が隣接して設けられている。
【0018】
(冷却水浄化装置の運用方法)
続いて、図2図3を参照して、上述の冷却水浄化装置の運用方法について説明する。図2に示すように、この運用方法は、第一通水工程S1と、交換工程S2と、第二通水工程S3と、を含む。また、図3は、あるサイクルにおける第一脱塩塔1A、及び第二脱塩塔1Bに充填されている樹脂の種類と機能を示している。図3における「Nサイクル」、及び「Nサイクル末期」は、第一通水工程S1に相当する。図3における「Nサイクル停止時」は、交換工程S2に相当する。さらに、図3における「N+1サイクル」、及び「N+1サイクル末期」は、第二通水工程S3に相当する。なお、「Nサイクル」とは、原子力発電所の運転サイクルのうち、任意の一サイクルを指す。又は、「Nサイクル」は、後述するH型陽イオン交換樹脂及びLi型陽イオン交換樹脂の交換サイクルであってもよい。
【0019】
まず、第一通水工程S1では、上記の第二脱塩塔1Bへの通水量が、第一脱塩塔1Aへの通水量よりも小さくなるように、第一脱塩塔1A、及び第二脱塩塔1Bに冷却水を通水する。具体的には、上述の調整部90としてのオンオフ弁V3~V6の開閉を行う。さらに詳細には、一定期間のみオンオフ弁V5,V6をオフ(閉止状態)とすることで、第二脱塩塔1Bへの通水を間欠的にのみ行う。これにより、後述する運用サイクルごとの第二脱塩塔1Bへの通水量の積算値が、第一脱塩塔1Aへの通水量の積算値よりも小さくなる。
【0020】
この第一通水工程S1では、図3に示すように、第一脱塩塔1Aには、Li型陽イオン交換樹脂が充填されている。これにより、第一脱塩塔1Aでは、冷却水の浄化(Li以外の成分を主対象とする不純物の除去)が行われる(図3中、NサイクルとNサイクル末期の期間)。なお、Nサイクル末期の期間は、Liの吸着を、上述した陽イオン脱塩塔1Cによって行う。
【0021】
一方で、第二脱塩塔1Bには、H型陽イオン交換樹脂が充填されている。このH型陽イオン交換樹脂に対して、Liを含む冷却水が間欠的に通水される。これにより、当該H型陽イオン交換樹脂はLiを吸着して、次第にLi型陽イオン交換樹脂に転換する(図3中、Nサイクルの期間)。なお、以下の説明では、このLi型に転換した後のH型陽イオン交換樹脂を「転換済みH型陽イオン交換樹脂」と呼ぶことがある。
【0022】
また、第一通水工程S1では、H型陽イオン交換樹脂がLi型に転換し切るまでの間、系統中のLi濃度、及びホウ素濃度を制御しながら、H型陽イオン交換樹脂が充填された第二脱塩塔1Bへの冷却水の通水量が調整されることが望ましい。このような調整は、上述した調整部90を、サンプリングラインS1,S2の計測結果に基づいて自律的に動作させる制御装置(コンピュータとプログラム)を実装することによって実現される。また、この場合、調整部90を構成する各弁装置は、電気信号によって開閉を制御可能な電磁弁であることが望ましい。また、一例としてホウ素濃度は3ppm/日で低下させ続け、Li濃度は、ホウ素のうち核反応によって生成される分を除去しながらpHのコントロール幅に応じた濃度管理を行う。
【0023】
第一通水工程S1の後に、交換工程S2を実行する。交換工程S2では、第一脱塩塔1Aから使用済みのLi型陽イオン交換樹脂を除去し、新規のH型陽イオン交換樹脂を第一脱塩塔1Aに充填する(図3中のNサイクル停止時に相当する。)。
【0024】
交換工程S2の後に、第二通水工程S3を実行する。この第二通水工程S3では、新規のH型陽イオン交換樹脂が充填された第一脱塩塔1Aへの通水量が第二脱塩塔1Bへの通水量よりも小さくなるように、第一脱塩塔1A、及び第二脱塩塔1Bに冷却水を通水する。具体的には、上述の調整部90としてのオンオフ弁V3~V6の開閉を行う。さらに詳細には、一定期間のみオンオフ弁V3,V4をオフ(閉止状態)とすることで、第一脱塩塔1Aへの通水を間欠的にのみ行う。これにより、運用サイクルごとの第一脱塩塔1Aへの通水量の積算値が、第二脱塩塔1Bへの通水量の積算値よりも小さくなる。
【0025】
このような第二通水工程S3を実行することで(図3のN+1サイクルとN+1サイクル末期に相当)、第一脱塩塔1Aでは、H型陽イオン交換樹脂によるLiの吸着が行われる。一方で、第二脱塩塔1Bでは、NサイクルにおいてH型からLi型に転換することで形成されたLi型陽イオン交換樹脂(以下では、転換済みH型陽イオン交換樹脂と呼ぶことがある。)によって、冷却水の浄化(不純物の除去)が行われる。なお、N+1サイクル末期には、陽イオン脱塩塔1CによってLiの吸着が行われる。
【0026】
このようなサイクルが連続的に繰り返されることによって、冷却水浄化装置100が運用される。なお、上記の構成では、交換する前の使用済みのLi型陽イオン交換樹脂に対して、交換直前のサイクル起動準備中に、冷却水浄化装置100の後流側に設けられる薬品注入タンクにLi-7以外のもの物質を添加することにより、使用済みのLi型陽イオン交換樹脂に吸着されていたLi-7を系統中に放出させることが可能である。添加される物質としては、Li-7よりも吸着力が高いものであればいかなるものも用いることが可能である。具体的には、Ca、Mg、天然Li、Znが挙げられる。このうち、特にZnが好適である。
【0027】
(作用効果)
上記方法、及び構成によれば、第一通水工程S1では、第二脱塩塔1Bへの通水量が第一脱塩塔1Aへの通水量よりも小さくなるように、第一脱塩塔1A、及び第二脱塩塔1Bに冷却水を通水する。第一脱塩塔1AにはLi型陽イオン交換樹脂が充填されている。当該Li型陽イオン交換樹脂は、冷却水に含まれるLiを吸着することなく、Li以外の不純物を吸着する。これにより、冷却水が浄化される。一方で、第二脱塩塔1BにはH型陽イオン交換樹脂が充填されている。当該H型陽イオン交換樹脂は、冷却水に含まれるLiを吸着する。さらに、第二脱塩塔1Bへの通水量は、第一脱塩塔1Aへの通水量よりも小さいことから、このLiの吸着は緩慢に進む。Liの吸着が完全に進むと、H型陽イオン交換樹脂は、Li型陽イオン交換樹脂に転換された状態となる。このように、上記方法によれば、高価なLi型陽イオン交換樹脂を、系統中のLiによってH型陽イオン交換樹脂を転換させることで安価かつ容易に得ることができる。
【0028】
さらに、上記方法によれば、交換工程S2によって、新規のH型陽イオン交換樹脂が第一脱塩塔1Aに充填される。これにより、系統中のLiによって当該H型陽イオン交換樹脂をLi型に転換させることができる。その結果、新規に既成のLi型陽イオン交換樹脂を得る頻度が減少し、装置の運用コストを削減することができる。
【0029】
加えて、上記方法によれば、第二通水工程S2では、転換済みH型陽イオン交換樹脂(つまり、Li型陽イオン交換樹脂)が充填された第二脱塩塔1Bによって、冷却水を継続的に浄化することができる。さらに、上述の交換工程S2では、使用済みLi型陽イオン交換樹脂が取り出された後の第一脱塩塔1Aには、新規のH型陽イオン交換樹脂が充填されている。第一脱塩塔1Aへの通水量は、第二脱塩塔1Bへの通水量よりも小さいことから、Liの吸着が緩慢に進む。Liの吸着が完全に進むと、H型陽イオン交換樹脂は、Li型陽イオン交換樹脂に転換された状態となる。このように、上記方法によれば、高価なLi型陽イオン交換樹脂を、系統中のLiによってH型陽イオン交換樹脂を転換させることによって安価かつ容易に得続けることができる。
【0030】
また、上記方法によれば、通水を間欠的に、又は常態的に行うことによって、通水量の積算値を容易に調節・監視することができる。また、これにより、第二脱塩塔1Bに充填されているH型陽イオン交換樹脂に対するLiの吸着量がコントロールされ、系統中のLi濃度を一定に保つことが可能となる。
【0031】
さらに、上記方法によれば、通水を間欠的に、又は常態的に行うことによって、通水量の積算値を容易に調節・監視することができる。また、これにより、第一脱塩塔1Aに充填されているH型陽イオン交換樹脂に対するLiの吸着量がコントロールされ、系統中のLi濃度を一定に保つことが可能となる。
【0032】
さらに加えて、上記方法によれば、系統中のLi濃度、及びホウ素濃度を制御できるように第二脱塩塔1Bへの通水量が調整される。これにより、炉心制御への影響が及ぶ可能性を低減することができる。
【0033】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、図1で説明した冷却水浄化装置100の各種弁装置の配置は一例に過ぎず、設計や仕様に応じて適宜変更することが可能である。
【0034】
<付記>
各実施形態に記載の冷却水浄化装置100の運用方法、及び冷却水浄化装置100は、例えば以下のように把握される。
【0035】
(1)第1の態様に係る冷却水浄化装置100の運用方法は、Li型陽イオン交換樹脂が充填された第一脱塩塔1Aと、H型陽イオン交換樹脂が充填された第二脱塩塔1Bと、を備える冷却水浄化装置100の運用方法であって、前記第二脱塩塔1Bへの通水量が前記第一脱塩塔1Aへの通水量よりも小さくなるように、前記第一脱塩塔1A、及び前記第二脱塩塔1Bに冷却水を通水する第一通水工程S1を含む。
【0036】
上記方法によれば、第一通水工程S1では、第二脱塩塔1Bへの通水量が第一脱塩塔1Aへの通水量よりも小さくなるように、第一脱塩塔1A、及び第二脱塩塔1Bに冷却水を通水する。第一脱塩塔1AにはLi型陽イオン交換樹脂が充填されている。当該Li型陽イオン交換樹脂は、冷却水に含まれるLiを吸着することなく、Li以外の不純物を吸着する。これにより、冷却水が浄化される。一方で、第二脱塩塔1BにはH型陽イオン交換樹脂が充填されている。当該H型陽イオン交換樹脂は、冷却水に含まれるLiを吸着する。さらに、第二脱塩塔1Bへの通水量は、第一脱塩塔1Aへの通水量よりも小さいことから、このLiの吸着は緩慢に進む。Liの吸着が完全に進むと、H型陽イオン交換樹脂は、Li型陽イオン交換樹脂に転換された状態となる。このように、上記方法によれば、高価なLi型陽イオン交換樹脂を、系統中のLiによってH型陽イオン交換樹脂を転換させることで安価かつ容易に得ることができる。
【0037】
(2)第2の態様に係る冷却水浄化装置100の運用方法は、前記第一通水工程S1の後に、前記第一脱塩塔1Aから使用済みの前記Li型陽イオン交換樹脂を除去し、新規のH型陽イオン交換樹脂を前記第一脱塩塔1Aに充填する交換工程S2をさらに含む。
【0038】
上記方法によれば、交換工程S2によって、新規のH型陽イオン交換樹脂が第一脱塩塔1Aに充填される。これにより、系統中のLiによって当該H型陽イオン交換樹脂をLi型に転換させることができる。その結果、新規に既成のLi型陽イオン交換樹脂を得る頻度が減少し、装置の運用コストを削減することができる。
【0039】
(3)第3の態様に係る冷却水浄化装置100の運用方法は、前記交換工程S2の後に、前記新規のH型陽イオン交換樹脂が充填された前記第一脱塩塔1Aへの通水量が前記第二脱塩塔1Bへの通水量よりも小さくなるように、前記第一脱塩塔1A、及び前記第二脱塩塔1Bに冷却水を通水する第二通水工程S2をさらに含む。
【0040】
上記方法によれば、第二通水工程S2では、転換済みH型陽イオン交換樹脂(つまり、Li型陽イオン交換樹脂)が充填された第二脱塩塔1Bによって、冷却水を継続的に浄化することができる。さらに、上述の交換工程S2では、使用済みLi型陽イオン交換樹脂が取り出された後の第一脱塩塔1Aには、新規のH型陽イオン交換樹脂が充填されている。第一脱塩塔1Aへの通水量は、第二脱塩塔1Bへの通水量よりも小さいことから、Liの吸着が緩慢に進む。Liの吸着が完全に進むと、H型陽イオン交換樹脂は、Li型陽イオン交換樹脂に転換された状態となる。このように、上記方法によれば、高価なLi型陽イオン交換樹脂を、系統中のLiによってH型陽イオン交換樹脂を転換させることによって安価かつ容易に得続けることができる。
【0041】
(4)第4の態様に係る冷却水浄化装置100の運用方法において、前記第一通水工程S1では、前記第二脱塩塔1Bへの前記冷却水の通水を間欠的に行い、前記第一脱塩塔1Aへの前記冷却水の通水を常態的に行う。
【0042】
上記方法によれば、通水を間欠的に、又は常態的に行うことによって、通水量の積算値を容易に調節・監視することができる。また、これにより、第二脱塩塔1Bに充填されているH型陽イオン交換樹脂に対するLiの吸着量がコントロールされ、系統中のLi濃度を一定に保つことが可能となる。
【0043】
(5)第5の態様に係る冷却水浄化装置100の運用方法において、前記第二通水工程S2では、前記第一脱塩塔1Aへの前記冷却水の通水を間欠的に行い、前記第二脱塩塔1Bへの前記冷却水の通水を常態的に行う。
【0044】
上記方法によれば、通水を間欠的に、又は常態的に行うことによって、通水量の積算値を容易に調節・監視することができる。また、これにより、第一脱塩塔1Aに充填されているH型陽イオン交換樹脂に対するLiの吸着量がコントロールされ、系統中のLi濃度を一定に保つことが可能となる。
【0045】
(6)第6の態様に係る冷却水浄化装置100の運用方法において、前記第一通水工程S1では、前記H型陽イオン交換樹脂がLi型に転換し切るまでの間、系統中のLi濃度、及びホウ素濃度を制御できるように、該H型陽イオン交換樹脂が充填された前記第二脱塩塔1Bへの前記冷却水の通水量を調整する。
【0046】
上記方法によれば、系統中のLi濃度、及びホウ素濃度を制御できるように第二脱塩塔1Bへの通水量が調整される。これにより、炉心制御への影響が及ぶ可能性を低減することができる。
【0047】
(7)第7の態様に係る冷却水浄化装置100の運用方法において、前記第一通水工程の後に、Liよりも吸着力が高い物質を系統中に添加することで、前記使用済みのLi型陽イオン交換樹脂に吸着されていたLiを系統中に放出させる放出工程をさらに含む。
【0048】
上記方法によれば、冷却水浄化装置100の後流側に設けられる薬品注入タンクにLi以外のもの物質を添加することにより、使用済みのLi型陽イオン交換樹脂に吸着されていたLi(特にLi-7)を系統中に放出させることが可能である。これにより、外部から新たにLiを添加することなく、系統中のLi濃度を維持することができる。
【0049】
(8)第8の態様に係る冷却水浄化装置100は、Li型陽イオン交換樹脂が充填された第一脱塩塔1Aと、H型陽イオン交換樹脂が充填された第二脱塩塔1Bと、前記第二脱塩塔1Bへの冷却水の通水量が前記第一脱塩塔1Aへの通水量よりも小さくなるように調整する調整部90と、を備える。
【0050】
上記構成によれば、調整部90は、第二脱塩塔1Bへの通水量が第一脱塩塔1Aへの通水量よりも小さくなるように、第一脱塩塔1A、及び第二脱塩塔1Bに冷却水を通水する。第一脱塩塔1AにはLi型陽イオン交換樹脂が充填されている。当該Li型陽イオン交換樹脂は、冷却水に含まれるLiを吸着することなく、Li以外の不純物を吸着する。これにより、冷却水が浄化される。一方で、第二脱塩塔1BにはH型陽イオン交換樹脂が充填されている。当該H型陽イオン交換樹脂は、冷却水に含まれるLiを吸着する。さらに、第二脱塩塔1Bへの通水量は、第一脱塩塔1Aへの通水量よりも小さいことから、このLiの吸着は緩慢に進む。Liの吸着が完全に進むと、H型陽イオン交換樹脂は、Li型陽イオン交換樹脂に転換された状態となる。このように、上記方法によれば、高価なLi型陽イオン交換樹脂を、系統中のLiによってH型陽イオン交換樹脂を転換させることで安価かつ容易に得ることができる。
【0051】
(9)第9の態様に係る冷却水浄化装置100では、前記調整部90は、前記第二脱塩塔1Bへの前記冷却水の通水を間欠的に行い、前記第一脱塩塔1Aへの前記冷却水の通水を常態的に行う。
【0052】
上記構成によれば、通水を間欠的に、又は常態的に行うことによって、通水量の積算値を容易に調節・監視することができる。また、これにより、第二脱塩塔1Bに充填されているH型陽イオン交換樹脂に対するLiの吸着量がコントロールされ、系統中のLi濃度を一定に保つことが可能となる。
【符号の説明】
【0053】
100 冷却水浄化装置
90 調整部
1A 第一脱塩塔
1B 第二脱塩塔
1C 陽イオン脱塩塔
F1,F2 フィルター
L1 通水ライン
L2 並列ライン
L3 分岐ライン
L4 オリフィス並列ライン
S1,S2 サンプリングライン
V1 三方弁
V2 逆止弁
V3,V4,V5,V6,V9 オンオフ弁
V7,V8 流量調整弁
図1
図2
図3