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特許7387571極限タップ制限装置および負荷時タップ切換器の電動操作装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】極限タップ制限装置および負荷時タップ切換器の電動操作装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 29/04 20060101AFI20231120BHJP
【FI】
H01F29/04 502K
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020167768
(22)【出願日】2020-10-02
(65)【公開番号】P2022059887
(43)【公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江口 直紀
(72)【発明者】
【氏名】石川 拓
【審査官】後藤 嘉宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/152775(WO,A1)
【文献】実開昭48-98610(JP,U)
【文献】特開昭57-96511(JP,A)
【文献】国際公開第2019/244235(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータから負荷時タップ切換器へのトルク伝達経路に配置される主動軸から、前記主動軸の径方向の外側に突出する主動軸係止部と、
前記主動軸に接近する第1方向に移動可能なスライダと、
前記スライダを移動可能に支持するベース部材と、を有し、
前記スライダは、
前記スライダの前記第1方向への移動により、前記主動軸の周方向において前記主動軸係止部と当接可能なスライダ係止部と、
前記スライダの前記第1方向への移動により、前記主動軸の径方向のうち前記第1方向と交差する方向において前記主動軸と直接的または間接的に当接可能なスライダ突部と、
前記スライダ係止部を挟んで前記主動軸の反対側に配置されたスライダガイドと、
を有し、
前記ベース部材は、前記第1方向と交差する第2方向において前記スライダガイドと当接可能なベースガイドを有する、
極限タップ制限装置。
【請求項2】
前記ベース部材は、ベース板を有し、
前記スライダは、前記ベース板を挟んで配置される一対のスライダ板を有し、
前記ベースガイドは、前記ベース板を貫通し、前記第1方向に伸びるガイド孔であり、
前記スライダガイドは、前記一対のスライダ板の間に配置され、前記ガイド孔に挿通されるガイドピンである、
請求項1に記載の極限タップ制限装置。
【請求項3】
前記主動軸と共に回転する係止ロータをさらに有し、
前記係止ロータは、
前記主動軸の外周に沿って配置されるカラーと、
前記主動軸の軸方向において前記カラーの中間部に形成され、前記カラーの外周から前記主動軸の径方向の外側に突出する係止板と、
を有し、
前記主動軸係止部は、前記係止板であり、
前記スライダ係止部は、前記一対のスライダ板の間に配置された係止ピンであり、
前記スライダ突部は、前記一対のスライダ板の前記第1方向の端部に形成され、前記カラーの外周面に当接可能であり、
前記係止板の少なくとも一部は、前記スライダの前記第1方向への移動により、前記一対のスライダ板の間に収容される、
請求項2に記載の極限タップ制限装置。
【請求項4】
前記スライダを前記第1方向に付勢する第1付勢部材と、
回動アームと、
前記回動アームを中立位置に付勢する第2付勢部材と、
前記回動アームに設けられ、前記中立位置において前記スライダの前記第1方向に当接するストッパと、
前記回動アームを挟んで、前記回動アームの回動方向の両側に配置される一対のプッシャと、
前記一対のプッシャが固定され、前記主動軸の回転により回動する取付部材と、をさらに有する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の極限タップ制限装置。
【請求項5】
前記主動軸に連動して回転する第1ウォームギアと、
前記第1ウォームギアに噛み合う第1ウォームホイールと、
前記第1ウォームホイールと一体に形成された第2ウォームギアと、
前記第1ウォームギアに噛み合う第2ウォームホイールと、をさらに有し、
前記取付部材は、前記第2ウォームホイールと共に回動する、
請求項4に記載の極限タップ制限装置。
【請求項6】
前記一対のプッシャは、前記取付部材の周方向における任意の位置に固定可能である、
請求項4または5に記載の極限タップ制限装置。
【請求項7】
前記ベース部材に固定された第1シャフトおよび第2シャフトをさらに有し、
前記第1ウォームホイールおよび前記第2ウォームギアは、前記第1シャフトの周りを回動可能であり、
前記第2ウォームホイールは、前記第2シャフトの周りを回動可能である、
請求項5に記載の極限タップ制限装置。
【請求項8】
前記第1シャフトおよび前記第2シャフトは、筒状の前記ベース部材の内側に両端部が固定され、相互にねじれの位置に配置される、
請求項7に記載の極限タップ制限装置。
【請求項9】
前記主動軸にタイミングベルトを介して接続される副動軸をさらに有し、
前記第1ウォームギアは、前記副動軸に装着される、
請求項5に記載の極限タップ制限装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の極限タップ制限装置と、
前記モータと、
前記モータから負荷時タップ切換器へのトルク伝達経路に配置される前記主動軸と、を有する、
負荷時タップ切換器の電動操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、極限タップ制限装置および負荷時タップ切換器の電動操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
負荷時タップ切換器は、運転状態において変圧器の巻数比(変圧比)を変えることで電圧を調整する装置である。負荷時タップ切換器の電動操作装置は、モータにより主動軸を回転させて負荷時タップ切換器の切換操作を行う。電動操作装置は、主動軸の回転位置を検出して負荷時タップ切換器のタップ位置を把握する。負荷時タップ切換器が極限タップ位置に到達した場合に、電動操作装置は電気的に主動軸の回転を停止させる。電動操作装置は、極限タップ制限装置を有する。極限タップ制限装置は、電気的な主動軸の回転停止が機能しない場合に、機械的に主動軸の回転を停止させる。
極限タップ制限装置には、製造コストを抑制することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特公昭58-4808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、製造コストを抑制することができる極限タップ制限装置および負荷時タップ切換器の電動操作装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の極限タップ制限装置は、主動軸係止部と、スライダと、ベース部材と、を持つ。主動軸係止部は、モータから負荷時タップ切換器へのトルク伝達経路に配置される主動軸から、主動軸の径方向の外側に突出する。スライダは、主動軸に接近する第1方向に移動可能である。ベース部材は、スライダを移動可能に支持する。スライダは、スライダ係止部と、スライダ突部と、スライダガイドと、を有する。スライダ係止部は、スライダの第1方向への移動により、主動軸の周方向において主動軸係止部と当接可能である。スライダ突部は、スライダの第1方向への移動により、主動軸の径方向のうち第1方向と交差する方向において主動軸と直接的または間接的に当接可能である。スライダガイドは、スライダ係止部を挟んで主動軸の反対側に配置される。ベース部材は、第1方向と交差する第2方向においてスライダガイドと当接可能なベースガイドを有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態の負荷時タップ切換器の電動操作装置の斜視図。
図2】駆動機構部の斜視図。
図3】第1の実施形態の極限タップ制限装置の斜視図。
図4】極限タップ制限装置の分解図。
図5図3のV-V線における断面図。
図6】極限設定機構の分解図。
図7】回動アームの周辺の斜視図。
図8】ストッパの周辺の平面図。
図9】極限タップ制限装置の第1状態の第1説明図。
図10】極限タップ制限装置の第1状態の第2説明図。
図11】極限タップ制限装置の第2状態の第1説明図。
図12】極限タップ制限装置の第2状態の第2説明図。
図13】極限タップ制限装置の第3状態の第1説明図。
図14】極限タップ制限装置の第3状態の第2説明図。
図15】主動軸の回転停止作用の説明図。
図16】第2の実施形態の極限タップ制限装置の第1斜視図。
図17】第2の実施形態の極限タップ制限装置の第2斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の極限タップ制限装置および負荷時タップ切換器の電動操作装置を、図面を参照して説明する。
図1は、実施形態の負荷時タップ切換器の電動操作装置の斜視図である。負荷時タップ切換器LTCは、運転状態において変圧器の巻数比(変圧比)を変えることで電圧を調整する装置である。電動操作装置1は、負荷時タップ切換器LTCのタップ位置を高位側(昇圧側)および低位側(降圧側)に切り換える。電動操作装置1は、主動軸10を回転させることにより、伝動軸(不図示)を介して負荷時タップ切換器LTCの切換操作を行う。電動操作装置1は、筐体1aと、駆動機構部2と、制御基板部3と、を有する。筐体1aは、駆動機構部2および制御基板部3を収容する。制御基板部3は、駆動機構部2の動作を制御する。
【0008】
図2は、駆動機構部の斜視図である。本願において、直交座標系のX方向、Y方向およびZ方向が以下のように定義される。Z方向は、主動軸10の軸方向である。+Z方向は、第1ウォームギア31から係止ロータ80に向かう方向である。X方向は、スライダ70のスライド方向である。+X方向は、スライダ70が主動軸10に接近する方向である。Y方向は、X方向およびZ方向に垂直な方向である。例えば、Z方向は鉛直方向であり、X方向およびY方向は水平方向である。
θ方向は、Z軸の周方向である。+θ方向は、+Z方向に進む右ネジの回転方向である。φ方向は、Y軸の周方向である。+φ方向は、+Y方向に進む右ネジの回転方向である。
【0009】
駆動機構部2は、モータ5と、主動軸10と、トルクリミッタ12と、回転検出器18と、極限タップ制限装置15と、を有する。
モータ5の回転軸は、Z方向と平行に配置される。モータ5の回転軸には、モータプーリ6が装着される。
【0010】
主動軸10は、モータ5から負荷時タップ切換器LTC(図1参照)へのトルク伝達経路に配置される。主動軸10は、モータ5の-X方向に配置される。主動軸10の軸方向は、Z方向と平行に配置される。主動軸10の+Z方向には、主動軸第1プーリ13が装着される。主動軸第1プーリ13とモータプーリ6との間には、第1タイミングベルト8が掛け渡される。モータ5から、モータプーリ6、第1タイミングベルト8および主動軸第1プーリ13を介して、主動軸10へのトルク伝達が可能である。第1タイミングベルト8を利用することにより、トルク伝達経路の潤滑が不要になる。
【0011】
トルクリミッタ12は、外周側と内周側との間の伝達トルクを所定トルク以下に制限する。トルクリミッタ12の外周側(入力側)は、主動軸第1プーリ13に接続される。トルクリミッタ12の内周側(出力側)は、主動軸10に接続される。後述されるように、極限タップ制限装置15は、主動軸10の回転を停止させることが可能である。極限タップ制限装置15が主動軸10の回転を停止させているとき、モータ5から主動軸10への伝達トルクが所定トルクに制限される。
【0012】
回転検出器18は、主動軸10の-Z方向の端部に配置される。回転検出器18は、多回転絶対位置検出型の回転検出器(多回転型エンコーダ)である。多回転型エンコーダは、主動軸に対してn(n>1)倍の回転をする多回転部材を有する。多回転型エンコーダは、多回転部材の回転位置を検出することで、主動軸10の回転位置を精度良く検出する。回転検出器18は、主動軸10の回転位置に相当する信号を制御基板部3(図1参照)に出力する。
【0013】
図1に示される制御基板部3は、主動軸10の回転位置に基づいて、負荷時タップ切換器LTCのタップ位置を把握する。負荷時タップ切換器LTCが極限タップ位置に到達したとき、制御基板部3は電気信号を出力してモータ5を停止させる。すなわち、電動操作装置1は、電気的に主動軸10の回転を停止させる。回転検出器18、制御基板部3またはモータ5が故障したとき、電気的な主動軸10の回転停止が機能しない場合がある。極限タップ制限装置15は、電気的な主動軸10の回転停止が機能しないとき、機械的に主動軸10の回転を停止させる。
【0014】
極限タップ制限装置15は、図2に示されるように、小型のユニットとして主動軸10の-X方向に配置される。これにより、負荷時タップ切換器LTCの電動操作装置1が小型化される。極限タップ制限装置15は、ベース部材20を有する。極限タップ制限装置15の構成要素の多くは、ベース部材20に直接的または間接的に支持される。ベース部材20は、図1に示される電動操作装置1の筐体1aに固定される。ベース部材20の詳細は後述される。
【0015】
(第1の実施形態)
図3は、第1実施形態の極限タップ制限装置の斜視図である。極限タップ制限装置15は、ベース部材20と、減速機構30と、極限設定機構50と、回動アーム60と、スライダ70と、係止ロータ80と、を有する。
図4は、極限タップ制限装置の分解図である。ベース部材20は、主動軸10の-X方向に配置される。ベース部材20は、スライダ70をX方向に移動可能に支持する。ベース部材20は、ベース板21と、底板22と、一対の側板24,25と、を有する。
【0016】
ベース板21および底板22は、それぞれXY平面と平行であって、Z方向に間隔を置いて配置される。ベース板21は+Z方向に配置され、底板22は-Z方向に配置される。ベース板21は、バネ突起27と、ガイド孔(ベースガイド)26と、ベース突部28と、を有する。
バネ突起27は、ベース板21の中央部に形成された貫通孔の-X方向の端部から、+X方向に突出する。バネ突起27は、スライダバネ76の-X方向の端部の内側に挿入される。
【0017】
ガイド孔26は、ベース板21の-X方向の端部に形成される。ガイド孔26は、ベース板21を貫通し、X方向に伸びる。ガイド孔26には、スライダ70のガイドピン73が挿通される。ガイド孔26は、+X方向と交差するY方向において、ガイドピン73と当接可能である。
ベース突部28は、ベース板21の+X方向の端部から、+X方向に突出する。一対のベース突部28が、Y方向に間隔を置いて配置される。一対のベース突部28の間には、スライダ70の係止ピン78が配置される。
ベース部材20のベース板21のガイド孔26およびベース突部28は、スライダ70のX方向への移動をガイドする。
【0018】
一対の側板24,25は、底板22のY方向の両端部から+Z方向に立ち上がる。底板22および一対の側板24,25は、鋼板の打ち抜き加工および折り曲げ加工により、一体に形成される。ベース板21のY方向の両端部は、-Z方向に折り曲げられて、一対の側板24,25に連結される。ベース板21も、鋼板の打ち抜き加工および折り曲げ加工により、一体に形成される。ベース板21、一対の側板24,25および底板22により、ベース部材20は四角筒状に形成される。
【0019】
減速機構30は、主動軸10の回転を減速する。減速機構30は、第1ウォームギア31と、中間部材35と、第2ウォームホイール38と、を有する。
第1ウォームギア31は、主動軸10と同軸状に配置される。第1ウォームギア31は、主動軸10に連動して回転する。
【0020】
中間部材35は、第1ウォームホイール32と、第2ウォームギア34と、を有する。第1ウォームホイール32は、第1ウォームギア31と噛み合う。第2ウォームギア34は、第2ウォームホイール38と噛み合う。第1ウォームホイール32および第2ウォームギア34は、同軸状に配置される。第1ウォームホイール32および第2ウォームギア34は、軸方向に間隔を置いて配置され、連結部33により連結される。これにより、第1ウォームホイール32および第2ウォームギア34は、中間部材35として一体に形成される。
【0021】
中間部材35は、中心軸に沿って貫通孔を有する。中間部材35の貫通孔に中間スリーブ(第1シャフト)36が配置される。中間部材35は、中間スリーブ36の周りを回動可能である。中間部材35および中間スリーブ36は、ベース部材20の一対の側板24,25の間に配置される。中間スリーブ36は、ベース部材20のベース板21および底板22と平行に配置される。中間スリーブ36は、Z方向において第1ウォームギア31と同等の位置に配置される。一対の側板24,25の貫通孔h2および中間スリーブ36の中心孔に、締結部材が配置される。これにより、中間スリーブ36がベース部材20に固定される。
【0022】
第2ウォームホイール38は、中心軸に沿って貫通孔を有する。第2ウォームホイール38の貫通孔に回動スリーブ(第2シャフト)40が配置される。
図5は、図3のV-V線における断面図である。回動スリーブ40は、第1スリーブ41、第2スリーブ42および第3スリーブ43を有する。第1スリーブ41、第2スリーブ42および第3スリーブ43は、-Z方向から+Z方向にかけてこの順番に並んで、同軸状に配置される。第2ウォームホイール38の貫通孔には第2スリーブ42が配置される。第2ウォームホイール38は、第2スリーブの周りを回動可能である。第3スリーブ43は、回動アーム60の貫通孔に配置される。回動アーム60は、第3スリーブ43の周りを回動可能である。
【0023】
回動スリーブ40、第2ウォームホイール38および回動アーム60は、ベース部材20の底板22とベース板21との間に配置される。回動スリーブ40は、主動軸10と平行に、主動軸10の-X方向に配置される。ベース板21および底板22の貫通孔h1並びに回動スリーブ40の中心孔に、締結部材が配置される。これにより、回動スリーブ40がベース部材20に固定される。
【0024】
図4に示されるように、中間スリーブ36および回動スリーブ40は、筒状のベース部材20の内側に配置される。中間スリーブ36および回動スリーブ40の両端部がベース部材20に固定される。中間スリーブ36の中心軸は、XY平面と平行に配置される。回動スリーブ40の中心軸は、Z方向と平行に配置される。中間スリーブ36および回動スリーブ40は、相互にねじれの位置に配置される。中間スリーブ36および回動スリーブ40により、筒状のベース部材20が補強される。ベース部材20を薄い鋼板から形成しても、ベース部材20の剛性が確保される。ベース部材20を薄い鋼板から形成することにより、製造コストが抑制される。
【0025】
図6は、極限設定機構の分解図である。極限設定機構50は、第2ウォームホイール38の+Z方向に配置される。極限設定機構50は、取付溝51と、取付板(取付部材)52,53と、プッシャ55と、を有する。
取付溝51は、第2ウォームホイール38の+Z方向の端面に形成される。取付溝51は、第2ウォームホイール38と同軸状に、円環状に形成される。取付溝51は、第2ウォームホイール38の径方向の中間部に配置される。
【0026】
取付板52,53は、第2ウォームホイール38の+Z方向の端面に固定される。取付板52,53は、主動軸10の回転により、第2ウォームホイール38と共に回動する。取付板52,53は、円環状に形成され、第2ウォームホイール38と同軸状に配置される。取付板52,53は、内側取付板52と、外側取付板53と、を有する。第2ウォームホイール38の径方向において、内側取付板52は取付溝51の内側に配置され、外側取付板53は取付溝51の外側に配置される。内側取付板52の外周は、取付溝51の内周より、径方向の外側に配置される。外側取付板53の内周は、取付溝51の外周より、径方向の内側に配置される。すなわち、取付板52,53は、取付溝51の内側に張り出す張出部を有する。
【0027】
プッシャ55は、高位側プッシャ55aと、低位側プッシャ55bと、を有する。高位側プッシャ55aは、負荷時タップ切換器LTCが高位側極限タップ位置に到達するとき、回動アーム60を+θ方向に押す。低位側プッシャ55bは、負荷時タップ切換器LTCが低位側極限タップ位置に到達するとき、回動アーム60を-θ方向に押す。
【0028】
高位側プッシャ55aの中心軸は、Z方向と平行に配置される。高位側プッシャ55aは、スリーブ56と、ボルト57と、ナット58と、を有する。スリーブ56は、取付板52,53の+Z方向に配置される。ナット58は、取付溝51の内部に配置される。スリーブ56およびナット58は、取付板52,53の張出部を挟んで配置される。ナット58が六角ナットの場合に、取付溝51の径方向の幅は、六角ナットの2面幅よりも少し広い程度に形成される。これにより、ナット58の回転が取付溝51により制限される。ボルト57は、スリーブ56の+Z方向からスリーブ56の中心孔に挿通され、ナット58に締結される。六角ボルト57の頭部を取付溝51の内部に配置し、ナット58をスリーブ56の+Z方向に配置して、両者を締結してもよい。これにより、高位側プッシャ55aが取付板52,53に固定される。ボルト57とナット58との締結を緩めることにより、高位側プッシャ55aをθ方向に移動させることが可能である。高位側プッシャ55aは、取付板52,53の周方向における任意の位置に固定可能である。
低位側プッシャ55bの構成は、高位側プッシャ55aと同様である。
【0029】
図7は、回動アームの周辺の斜視図である。回動アーム60は、第2ウォームホイール38および極限設定機構50の+Z方向に配置される。回動アーム60は、鋼板の打ち抜き加工および折り曲げ加工により、一体に形成される。前述されたように、回動アーム60は、回動スリーブ40の第3スリーブ43の周りを回動可能である。回動アーム60は、アーム突起61と、バネ接続部65と、アームバネ66と、ストッパ68と、を有する。
【0030】
アーム突起61は、回動アーム60の-X方向の端部から、-X方向に突出する。アーム突起61を挟んで、回動アーム60の回動方向の両側に、一対のプッシャ55a,55bが配置される。アーム突起61の-θ方向に高位側プッシャ55aが配置され、アーム突起61の+θ方向に低位側プッシャ55bが配置される。
【0031】
バネ接続部65は、回動アーム60の中央部に形成された貫通孔の+X方向の端部から、-X方向に突出し、-Z方向に屈曲する。バネ接続部65には、アームバネ(第2付勢部材)66の-X方向の端部が接続される。
アームバネ66は、例えばコイルバネである。アームバネ66の+X方向の端部は、例えば主動軸10の軸受支持部材11に接続される。アームバネ66は、回動アーム60を中立位置に付勢する。中立位置において、主動軸10の-X方向にストッパ68が配置される。
【0032】
ストッパ68は、回動アーム60の+X方向の端部から、+X方向に突出し、+Z方向に屈曲する。ストッパ68は、中立位置において、スライダ70のストッパ当接部71の+X方向に当接する。
図8は、ストッパの周辺の平面図である。ストッパ68の-X方向の表面は、Y方向の中央部が+X方向に窪む曲面である。ストッパ68の-X方向の表面に、スライダ70のストッパ当接部71が当接する。ストッパ当接部71の+X方向の端面は、Y方向の中央部が+X方向に突出する曲面である。これにより、ストッパ68およびストッパ当接部71が係合し、両者の当接状態が安定的に保持される。
【0033】
スライダ70は、図4に示されるように、回動アーム60の+Z方向に配置される。スライダ70は、一対のスライダ板70a,70bと、スライダバネ(第1付勢部材)76と、ガイドピン(スライダガイド)73と、係止ピン(スライダ係止部)78と、を有する。
【0034】
一対のスライダ板70a,70bは、ベース部材20のベース板21を挟んで、ベース板21のZ方向の両側に配置される。一対のスライダ板70a,70bは、同一形状であり、ベース板21のZ方向の中心面を対称面として面対称に配置される。一対のスライダ板70a,70bは、第1スライダ板70aと、第2スライダ板70bと、を有する。第1スライダ板70aはベース板21の-Z方向に配置され、第2スライダ板70bはベース板21の+Z方向に配置される。
【0035】
第1スライダ板70aは、X方向を長辺方向としY方向を短辺方向とする略長方形状である。第1スライダ板70aは、鋼板から打ち抜き加工および折り曲げ加工により形成される。第1スライダ板70aは、ストッパ当接部71と、ベース接触部72と、バネ突起75と、スライダ突部79と、を有する。
【0036】
ストッパ当接部71は、第1スライダ板70aの+X方向に形成された貫通孔の-X方向の端部から、+X方向に突出する。図5に示されるように、ストッパ当接部71は、さらに-Z方向および+X方向に屈曲する。前述されたように、ストッパ当接部71の+X方向の先端部は、回動アーム60のストッパ68に当接する。
【0037】
ベース接触部72は、図4に示されるように、第1スライダ板70aの四隅に形成される。図5に示されるように、ベース接触部72は、ベース部材20のベース板21に向かって突出する。ベース接触部72の先端部は、ベース板21に接触可能である。ベース接触部72とガイドピン73およびスペーサ74とにより、一対のスライダ板70a,70bとベース板21とのZ方向の相対位置が保持される。
【0038】
バネ突起75は、図4に示されるように、第1スライダ板70aの-X方向に形成された貫通孔の+X方向の端部から、-X方向に突出する。図5に示されるように、バネ突起75は、さらに+Z方向および-X方向に屈曲する。バネ突起75は、スライダバネ76の+X方向の端部の内側に挿入される。
スライダバネ76は、例えばコイルバネである。スライダバネ76は、スライダ70とベース部材20との間に配置される。スライダバネ76は、スライダ70を+X方向に付勢する。
【0039】
スライダ突部79は、図4に示されるように、第1スライダ板70aの+X方向の端部から、+X方向に突出する。一対のスライダ突部79が、Y方向に間隔を置いて配置される。スライダ70の+X方向への移動により、一対のスライダ突部79の間には、係止ロータ80のカラー82が侵入する。スライダ突部79は、カラー82の外周面に当接可能である。
第2スライダ板70bの構成は、第1スライダ板70aと同様である。
【0040】
ガイドピン73は、円筒形状である。ガイドピン73の中心軸は、Z方向と平行に配置される。ガイドピン73は、スライダ70の-X方向の端部に配置される。ガイドピン73は、係止ピン78を挟んで主動軸10の反対側に配置される。ガイドピン73は、一対のスライダ板70a,70bの間に配置される。ガイドピン73は、締結部材により一対のスライダ板70a,70bに固定される。ガイドピン73は、ベース部材20のガイド孔26に挿通される。
【0041】
係止ピン78は、円柱形状である。係止ピン78の中心軸は、Z方向と平行に配置される。係止ピン78は、スライダ70の+X方向の端部に配置される。係止ピン78は、一対のスライダ板70a,70bの間に配置される。係止ピン78は、ベース部材20の一対のベース突部28の間に配置される。ガイドピン73、係止ピン78およびスライダ突部79は、スライダ70のX方向への移動をガイドする。係止ピン78は、回転可能な状態で一対のスライダ板70a,70bに支持される。スライダ70の+X方向への移動により、係止ピン78は、回転する係止ロータ80の係止板84に接触する。係止ピン78の回転により、係止板84との摩擦が抑制される。
【0042】
係止ロータ80は、図3に示されるように、第1ウォームギア31の+Z方向に配置される。係止ロータ80は、Z方向においてスライダ70と同等の位置に配置される。係止ロータ80は、主動軸10と同軸状に配置される。係止ロータ80は、主動軸10と共に回転する。係止ロータ80は、カラー82と、係止板(主動軸係止部)84と、を有する。
カラー82は、主動軸10の外周に沿って配置される。スライダ70の+X方向への移動により、スライダ70の一対のスライダ突部79の間にカラー82が侵入する。スライダ突部79は、主動軸10の径方向のうち+X方向と交差するY方向において、カラー82と当接可能である。スライダ突部79は、Y方向において、カラー82を介して間接的に主動軸10と当接可能である。
【0043】
係止板84は、Z方向においてカラー82の中央部に配置される。係止板84は、カラー82の外周から主動軸10の径方向の外側に突出する。カラー82の外周にフランジが形成され、フランジの一部に切り欠き85が形成され、フランジの残部が係止板84である。一対の係止板84が、主動軸10を挟んで径方向の両側に配置される。スライダ70の+X方向への移動により、スライダ70の係止ピン78が切り欠き85に侵入する。係止ピン78は、主動軸10の周方向において係止板84と当接可能である。スライダ70の+X方向への移動により、係止板84の一部が、一対のスライダ板70a,70bの間に収容される。
【0044】
極限タップ制限装置15の動作について説明する。以下には、極限タップ制限装置15が負荷時タップ切換器LTCを高位側極限タップ位置において停止させる動作を例にして説明する。低位側極限タップ位置において停止させる動作も同様である。
【0045】
図1に示される電動操作装置1において、制御基板部3がモータ5を回転させる。制御基板部3は、負荷時タップ切換器LTCのタップ位置が高位側にシフトする方向に、モータ5を回転させる。モータ5のトルクは、図2に示されるモータプーリ6、第1タイミングベルト8および主動軸第1プーリ13を介して、トルクリミッタ12の外周側(入力側)に伝達される。トルクリミッタ12の内周側(出力側)には主動軸10が接続され、主動軸10に負荷時タップ切換器LTCが接続される。負荷時タップ切換器LTCの負荷トルクは、トルクリミッタの制限トルク(所定トルク)より小さい。そのため、トルクリミッタ12を介してトルクが伝達され、主動軸10が回転する。
【0046】
主動軸10の回転により、図1に示される負荷時タップ切換器LTCのタップ位置が高位側にシフトする。例えば、主動軸10が33回転すると、負荷時タップ切換器LTCのタップ位置が1段階シフトする。制御基板部3は、回転検出器18により検出した主動軸10の回転位置に基づいて、負荷時タップ切換器LTCのタップ位置を把握する。制御基板部3は、負荷時タップ切換器LTCのタップ位置が1段階シフトする度に、モータ5を停止させる。負荷時タップ切換器LTCが高位側極限タップ位置に到達したとき、制御基板部3は電気信号を出力してモータ5を停止させる。すなわち、電動操作装置1は、電気的に主動軸10の回転を停止させる。極限タップ制限装置15は、電気的な主動軸10の回転停止が機能しないとき、機械的に主動軸10の回転を停止させる。
【0047】
図9は極限タップ制限装置の第1状態の第1説明図であり、図10は第2説明図である。図11は極限タップ制限装置の第2状態の第1説明図であり、図12は第2説明図である。図13は極限タップ制限装置の第3状態の第1説明図であり、図14は第2説明図である。図9図11および図13は、スライダ70のストッパ当接部71、回動アーム60、および第2ウォームホイール38の平面図である。図10図12および図14は、第2スライダ板70bを取り外した状態のスライダ70、ベース部材20のベース板21、および係止ロータ80の平面図である。
【0048】
図9および図10に示される極限タップ制限装置の第1状態は、主動軸10の回転開始前の状態である。図9に示されるように、回動アーム60のアーム突起61は、回動アーム60の回動軸の-X方向に配置される。負荷時タップ切換器LTCのタップ位置に基づいて、第2ウォームホイール38における一対のプッシャ55a,55bのθ方向の位置が調整される。現在のタップ位置から高位側極限タップ位置までの角度に基づいて、アーム突起61から高位側プッシャ55aまでのθ方向の角度が調整される。現在のタップ位置から低位側極限タップ位置までの角度に基づいて、アーム突起61から低位側プッシャ55bまでのθ方向の角度が調整される。
【0049】
図9に示されるように、スライダ70のストッパ当接部71は、回動アーム60のストッパ68に係合している。図10に示されるように、スライダ70は、ベース部材20の-X方向の端部に配置されている。
【0050】
図3に示されるように、主動軸10が回転すると、第1ウォームギア31、中間部材35および第2ウォームホイール38が順番に回転する。主動軸10の回転が減速機構30により減速されて、第2ウォームホイール38が回動する。
【0051】
図11および図12に示される極限タップ制限装置の第2状態は、負荷時タップ切換器LTCが高位側極限タップ位置に到達した状態である。図11に示されるように、第2ウォームホイール38が+θ方向に回動して、高位側プッシャ55aがアーム突起61を+θ方向に押す。回動アーム60は、回動スリーブ40の周りを+θ方向に回動する。回動アーム60のストッパ68は、スライダ70のストッパ当接部71の先端から、+θ方向にずれる。ただし、ストッパ68とストッパ当接部71との係合は、未だ維持されている。図12に示されるように、スライダ70は、未だベース部材20の-X方向の端部に配置されている。
【0052】
図13および図14に示される極限タップ制限装置の第3状態は、負荷時タップ切換器LTCが高位側極限タップ位置を越えた状態である。図13に示されるように、高位側プッシャ55aがアーム突起61をさらに+θ方向に押す。ストッパ68がさらに+θ方向に回動して、ストッパ68とストッパ当接部71との係合が解除される。
【0053】
スライダ70は、図12に示される状態から、スライダバネ76の付勢力により+X方向に移動する。スライダ70のガイドピン73は、ベース部材20のガイド孔26に沿って+X方向に移動する。スライダ70の係止ピン78は、ベース部材20のベース突部28に沿って+X方向に移動する。このように、ベース部材20は、スライダ70の+X方向への移動をガイドする。
【0054】
スライダ70の+X方向への移動により、係止ピン78は、係止ロータ80の係止板84の外周に衝突する。主動軸10および係止ロータ80は、+θ方向に回転を続けている。図14に示されるように、係止ピン78は、ベース突部28から離脱して、係止板84の外周から切り欠き85に侵入する。スライダ70の一対のスライダ板70a,70b(図4参照)の間に、係止板84の一部が侵入する。スライダ70の一対のスライダ突部79の間に、係止ロータ80のカラー82が侵入する。ガイドピン73がガイド孔26の+X方向の端部に当接して、スライダ70の+X方向への移動が停止する。
【0055】
係止ピン78は、主動軸10の周方向において係止板84と当接する。係止ピン78は、係止板84からX方向およびY方向の力を受ける。一方のスライダ突部79が、Y方向においてカラー82の外周面に当接する。ガイドピン73は、X方向およびY方向においてガイド孔26に当接する。これにより、主動軸10および係止ロータ80の回転が停止する。
【0056】
負荷時タップ切換器LTCが高位側極限タップ位置に到達してから、高位側極限タップ位置の1段階高位のタップ位置に到達する前に、主動軸10の回転が停止される。例えば、高位側極限タップ位置に到達してから、主動軸10が約5回転した時点で、主動軸10の回転が停止される。これにより、負荷時タップ切換器LTCが高位側極限タップ位置を越えたタップ位置に切り換えられることがない。
【0057】
極限タップ制限装置15が主動軸10の回転を停止させても、電動操作装置1のモータ5は回転を続ける。この場合でも、図2に示されるトルクリミッタ12が、モータ5から主動軸10へのトルク伝達を所定トルクに制限する。これにより、主動軸10の回転を停止させている極限タップ制限装置15に対して過大なトルクが作用するのを抑制できる。なお、トルクリミッタ12が伝達トルクを制限するのは、極限タップ位置に到達してもモータ5の電気的な停止が機能しない異常時のみである。
【0058】
これにより、極限タップ位置に到達してもモータ5が停止しない異常時に、モータ5から主動軸10へのトルク伝達を遮断することが不要になる。これに伴って、トルク伝達を遮断するための滑り機構が不要になる。モータ5の回転方向を反転させてタップ切換の進行方向を反転させる場合でも、主動軸10は滑り機構を介することなく回転する。そのため、滑り機構の摩擦による消耗を考慮する必要がない。また、滑り機構の摩擦バランスを考慮する必要がない。すなわち、滑り機構の部品の精度への特別な配慮が不要である。また、極限タップ制限装置15の組み立てが容易になる。したがって、極限タップ制限装置15の信頼性が向上し、製造コストが抑制される。
【0059】
極限タップ制限装置15が機械的に主動軸10の回転を停止させた後に、電動操作装置1を平常動作可能な状態に復帰させる作業について説明する。作業者が、図3に示されるスライダ70を-X方向の端部まで移動させる。スライダ70の係止ピン78が、係止ロータ80の切り欠き85から離脱して、主動軸10が回転可能な状態になる。作業者は、負荷時タップ切換器LTCのタップ位置が低位側にシフトする方向に、モータ5または手動により主動軸10を回転させる。第2ウォームホイール38が-θ方向に回転し、高位側プッシャ55aがアーム突起61から離れる。図8に示されるように、回動アーム60は、アームバネ66の付勢力により中立位置に戻る。スライダ70のストッパ当接部71が、回動アーム60のストッパ68に係合する。以上により、電動操作装置1が平常動作可能な状態に復帰する。
【0060】
図15は、主動軸の回転停止作用の説明図である。図15は、第2スライダ板70b、係止ロータ80、およびベース部材20の一部の平面図である。係止ピン78と係止板84との第1当接点P1において、係止ピン78は係止板84からX方向およびY方向の力F1を受ける。スライダ突部79とカラー82との第2当接点P2において、スライダ突部79はカラー82からY方向の力F2を受ける。ガイドピン73は、ガイド孔26からX方向およびY方向の力F3を受ける。バネ突起75は、スライダバネ76からX方向の力F4を受ける。スライダ70が受ける力F1,F2、F3およびF4は、X方向およびY方向においてつり合っている。
【0061】
第2当接点P2を支点として、スライダ70が受ける力のY方向成分によるモーメントのつり合いを考える。力F1のY方向成分をF1yとし、力F3のY方向成分をF3yとする。第2当接点P2から第1当接点P1までのX方向の距離をA1とし、第2当接点P2からガイドピン73までのX方向の距離をA3とする。スライダ70が受けるモーメントA1×F1yおよびA3×F3yには、以下の関係が成立する。
A1×F1y = A3×F3y ・・・(1)
【0062】
ガイドピン73は、係止ピン78を挟んで、主動軸10および係止ロータ80の反対側に配置される。係止ピン78はスライダ70の+X方向の端部に配置され、ガイドピン73はスライダ70の-X方向の端部に配置される。そのため、距離A3は距離A1より大きい。数式(1)が成立するので、F3yはF1yより小さい。ガイドピン73は、ガイド孔26からY方向にF3yの力を受ける。ベース部材20のガイド孔26は、ガイドピン73からF3yの反力を受ける。ベース部材20に作用する力が小さいので、ベース部材20を薄い鋼板から形成しても、ベース部材20の強度が確保される。ベース部材20を薄い鋼板から形成することにより、製造コストが抑制される。
【0063】
以上に詳述されたように、図4に示される実施形態の極限タップ制限装置15は、係止板84と、スライダ70と、ベース部材20と、を持つ。係止板84は、モータ5から負荷時タップ切換器LTC(図1参照)へのトルク伝達経路に配置される主動軸10から、主動軸10の径方向の外側に突出する。スライダ70は、主動軸10に接近する+X方向に移動可能である。ベース部材20は、スライダ70を移動可能に支持する。スライダ70は、係止ピン78と、スライダ突部79と、ガイドピン73と、を有する。係止ピン78は、スライダ70の+X方向への移動により、主動軸10の周方向において係止板84と当接可能である。スライダ突部79は、スライダ70の+X方向への移動により、主動軸10の径方向のうち+X方向と交差するY方向において主動軸10と直接的または間接的に当接可能である。ガイドピン73は、係止ピン78を挟んで主動軸10の反対側に配置される。ベース部材20は、+X方向と交差するY方向においてガイドピン73と当接可能なガイド孔26を有する。
【0064】
スライダ70は、+X方向への移動により主動軸10の回転を停止させる。スライダ突部79と主動軸10との当接点から、係止ピン78までの距離に比べて、ガイドピン73までの距離が長い。ガイドピン73からガイド孔26に作用するY方向の力は小さい。ベース部材20に作用する力が小さいので、ベース部材20を薄板化および小型化しても、ベース部材20の強度が確保される。ベース部材20を薄板化することにより、製造コストを抑制することができる。また、極限タップ制限装置15の動作信頼性が向上する。
【0065】
ベース部材20は、ベース板21を有する。スライダ70は、ベース板21を挟んで配置される一対のスライダ板70a,70bを有する。ガイド孔26は、ベース板21を貫通し、+X方向に伸びる。ガイドピン73は、一対のスライダ板70a,70bの間に配置され、ガイド孔26に挿通される。
この構成により、スライダ70の剛性が向上する。ベース部材20は、スライダ70の+Xへの移動を安定的に支持する。
【0066】
極限タップ制限装置15は、主動軸10と共に回転する係止ロータ80をさらに有する。係止ロータ80は、カラー82と、係止板84と、を有する。カラー82は、主動軸10の外周に沿って配置される。係止板84は、主動軸10の軸方向においてカラー82の中間部に形成され、カラー82の外周から主動軸10の径方向の外側に突出する。係止ピン78は、一対のスライダ板70a,70bの間に配置される。スライダ突部79は、一対のスライダ板70a,70bの+X方向の端部に形成され、カラー82の外周面に当接可能である。係止板84の少なくとも一部は、スライダ70の+X方向への移動により、一対のスライダ板70a,70bの間に収容される。
【0067】
一対のスライダ板70a,70bのスライダ突部79が、係止板84の軸方向の両側においてカラー82に当接する。係止板84の少なくとも一部が、一対のスライダ板70a,70bの間に収容される。主動軸10の径方向および軸方向におけるスライダ70の移動が規制される。したがって、スライダ70による主動軸10の回転停止動作の信頼性が向上する。
【0068】
極限タップ制限装置15は、スライダバネ76と、回動アーム60と、アームバネ66と、ストッパ68と、一対のプッシャ55a,55bと、取付板52,53と、をさらに有する。スライダバネ76は、スライダ70を+X方向に付勢する。アームバネ66は、回動アーム60を中立位置に付勢する。ストッパ68は、回動アーム60に設けられ、中立位置においてスライダ70の+X方向に当接する。一対のプッシャ55a,55bは、回動アーム60を挟んで、回動アーム60の回動方向の両側に配置される。取付板52,53は、一対のプッシャ55a,55bが固定され、主動軸10の回転により回動する。
【0069】
主動軸10の回転により、取付板52,53に固定された一対のプッシャ55a,55bが回動する。一対のプッシャ55a,55bのうち一方が、回動アーム60を押して中立位置から回動させる。回動アーム60のストッパ68とスライダ70との当接が解除される。スライダバネ76の付勢力により、スライダ70が+X方向に移動して、主動軸10の回転が停止する。一対のプッシャ55a,55bの位置の調整のみにより、主動軸の回転停止のタイミングが調整される。したがって、極限タップ制限装置15の調整作業が容易になり、動作信頼性が向上する。
【0070】
極限タップ制限装置15は、第1ウォームギア31と、第1ウォームホイール32と、第2ウォームギア34と、第2ウォームホイール38と、をさらに有する。第1ウォームギア31は、主動軸10に連動して回転する。第1ウォームホイール32は、第1ウォームギア31に噛み合う。第2ウォームギア34は、第1ウォームホイール32と一体に形成される。第2ウォームホイール38は、第1ウォームギア31に噛み合う。取付板52,53は、第2ウォームホイール38と共に回動する。
主動軸10の回転が減速されて取付板52,53が回動するので、極限タップ位置において精度良く主動軸の回転を停止させることができる。また、部品点数が抑制されるので、極限タップ制限装置が小型化されるとともに、製造コストが抑制される。
【0071】
一対のプッシャ55a,55bは、取付板52,53の周方向における任意の位置に固定可能である。
この構成により、負荷時タップ切換器LTCの極限タップ位置に対応する一対のプッシャ55a,55bの位置を、自在に調整することができる。極限タップ制限装置15を電動操作装置1に組み付ける前に、負荷時タップ切換器LTCのタップ位置との位相合わせをする必要がない。したがって、極限タップ制限装置15の調整作業が容易になる。
【0072】
極限タップ制限装置15は、ベース部材20に固定された中間スリーブ36および回動スリーブ40をさらに有する。第1ウォームホイール32および第2ウォームギア34は、中間スリーブ36の周りを回動可能である。第2ウォームホイール38は、回動スリーブ40の周りを回動可能である。
主動軸10の回転が減速されて、第1ウォームホイール32、第2ウォームギア34および第2ウォームホイール38が回転する。これらの部品は、軸受により回転可能に支持される必要がないので、ベース部材20に固定された中間スリーブ36および回動スリーブ40の周りを回動可能に支持される。これにより、製造コストが抑制される。
【0073】
中間スリーブ36および回動スリーブ40は、筒状のベース部材20の内側に両端部が固定され、相互にねじれの位置に配置される。
この構成により、筒状のベース部材20が補強される。ベース部材20を薄い鋼板から形成しても、ベース部材20の剛性が確保される。ベース部材20を薄い鋼板から形成することにより、製造コストが抑制される。
【0074】
実施形態の負荷時タップ切換器LTCの電動操作装置1は、モータ5と、主動軸10と、前述された極限タップ制限装置15と、を有する。主動軸10は、モータ5から負荷時タップ切換器LTCへのトルク伝達経路に配置される。
前述されたように、極限タップ制限装置15の製造コストが抑制される。これにより、負荷時タップ切換器LTCの電動操作装置1の製造コストが抑制される。
【0075】
(第2の実施形態)
図16は第2の実施形態の極限タップ制限装置の第1斜視図であり、図17は第2斜視図である。図16に示されるように、第2の実施形態の極限タップ制限装置215は、動力伝達部290を有する点で、第1の実施形態とは異なる。第1の実施形態と同様である点についての第2の実施形態の説明は省略される。
【0076】
極限タップ制限装置215は、ベース部材220と、動力伝達部290と、減速機構230(図17参照)と、極限設定機構250と、回動アーム260と、スライダ70と、係止ロータ80と、を有する。
ベース部材220は、ベース板221と、第1側板224と、第2側板225と、を有する。第1側板224は、ベース板221の-Y方向の端部から、-Z方向に折れ曲がる。第2側板225は、第1側板224と平行に、第1側板224の+Y方向に配置される。第2側板225は、支柱228を介して第1側板224に支持される。図17では支柱228の記載が省略されている。
【0077】
動力伝達部290は、図16および図17に示されるように、主動軸第2プーリ291と、副動軸293と、副動軸プーリ294と、第2タイミングベルト295と、を有する。主動軸第2プーリ291は、主動軸10の-Z方向に装着される。副動軸293は、Z方向と平行に配置される。副動軸293は、転がり軸受を介して回転可能な状態で、ベース部材220の第1側板224に支持される。副動軸プーリ294は、副動軸293の+Z方向に装着される。第2タイミングベルト295は、主動軸第2プーリ291と副動軸プーリ294との間に掛け渡される。
【0078】
減速機構230は、図17に示されるように、第1ウォームギア231と、中間部材235と、第2ウォームホイール238と、を有する。第1ウォームギア231は、副動軸293の-Z方向に装着される。中間部材235は、第1ウォームホイール232と、第2ウォームギア234と、を有する。中間部材235の回動軸241は、X方向と平行に配置される。中間部材235は、回転可能な状態で、ベース部材220の第2側板225に支持される。第2ウォームホイール238の回動軸242は、Y方向と平行に配置される。第2ウォームホイール238は、回動可能な状態で、第1側板224および第2側板225に支持される。多段のギヤを軸で連結する構造により、ギヤ配置の自由度が向上するとともに、極限タップ制限装置215が小型化される。
【0079】
極限設定機構250は、第2側板225の+Y方向に配置される。極限設定機構250は、一対の取付板(取付部材)252,253と、プッシャ255と、を有する。取付板252,253は、円盤状である。一対の取付板252,253は、Y方向に間隔を置いて配置される。一対の取付板252,253は、第2ウォームホイール238と共に回動する。一対の取付板252,253の外周に沿って、φ方向に伸びる取付孔251が形成される。プッシャ255は、一対の取付板252,253の間に配置される。プッシャ255は、取付孔251に挿通されたボルトにより、一対の取付板252,253に固定される。ボルトの締結を緩めることにより、プッシャ255を取付孔251に沿ってφ方向に移動させることが可能である。図16に示されるように、プッシャ255は、高位側プッシャ255aと、低位側プッシャ255bと、を有する。
【0080】
回動アーム260は、平板状に形成され、XY面と平行に配置される。回動アーム260は、θ方向に回動可能な状態で、第2側板225に支持される。回動アーム260は、アーム突起261を有する。アーム突起261は、回動アーム260の+Y方向の端部から、-Z方向に折れ曲がる。アーム突起261は、一対の取付板252の間に配置される。
【0081】
主動軸10が回転すると、図17に示される第1ウォームギア231、中間部材235および第2ウォームホイール238が回動する。第2ウォームホイール238と共に、一対の取付板252,253およびプッシャ255が回動する。プッシャ255が、アーム突起261をφ方向に押す。回動アーム260がθ方向に回動して、スライダ70との係合が外れる。スライダ70が+X方向に移動して、係止ロータ80および主動軸10の回転を停止させる。
【0082】
以上に詳述されたように、第2の実施形態の極限タップ制限装置215は、副動軸293をさらに有する。副動軸293は、主動軸10に第2タイミングベルト295を介して接続される。第1ウォームギア231は、副動軸293に装着される。
主動軸10と極限タップ制限装置215との間に第2タイミングベルト295が配置される。これにより、主動軸10と極限タップ制限装置215との相対位置の設定自由度が大きくなる。
【0083】
実施形態において、主動軸10の径方向の外側に突出する主動軸係止部は、係止板84である。主動軸10の周方向において主動軸係止部と当接可能なスライダ係止部は、係止ピン78である。これに対して、主動軸係止部が係止板84以外の形態であり、スライダ係止部が係止ピン78以外の形態であってもよい。例えば、主動軸係止部が係止ピンであり、スライダ係止部が係止板であってもよい。
【0084】
実施形態において、スライダ係止部を挟んで主動軸10の反対側に配置されるスライダガイドは、ガイドピン73である。Y方向においてスライダガイドと当接可能なベースガイドは、ガイド孔26である。これに対して、スライダガイドがガイドピン73以外の形態であり、ベースガイドがガイド孔26以外の形態であってもよい。例えば、スライダガイドがガイド孔であり、ベースガイドがガイドピンであってもよい。
【0085】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、スライダ70と、ベース部材20と、を持つ。スライダ70は、係止ピン78と、スライダ突部79と、ガイドピン73と、を有する。これにより、スライダ70からベース部材20に作用する力が小さくなる。ベース部材20を薄い鋼板から形成することにより、製造コストを抑制することができる。
【0086】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0087】
LTC…負荷時タップ切換器、1…電動操作装置、5…モータ、10…主動軸、15,215…極限タップ制限装置、20,220…ベース部材、21,221…ベース板、26…ガイド孔(ベースガイド)、31,231…第1ウォームギア、32,232…第1ウォームホイール、34,234…第2ウォームギア、36…中間スリーブ(第1シャフト)、38,238…第2ウォームホイール、40…回動スリーブ(第2シャフト)、52,53,252,253…取付板(取付部材)、55a,55b,255a,255b…一対のプッシャ、60,260…回動アーム、66…アームバネ(第2付勢部材)、68…ストッパ、70…スライダ、70a,70b…一対のスライダ板、73…ガイドピン(スライダガイド)、76…スライダバネ(第1付勢部材)、78…係止ピン(スライダ係止部)、79…スライダ突部、80…係止ロータ、82…カラー、84…係止板(主動軸係止部)、293…副動軸、295…第2タイミングベルト。
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