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特許7387575対象情報に基づく優先度を用いて端末通信制御を行う装置、システム、プログラム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】対象情報に基づく優先度を用いて端末通信制御を行う装置、システム、プログラム及び方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 28/24 20090101AFI20231120BHJP
   H04W 88/12 20090101ALI20231120BHJP
【FI】
H04W28/24
H04W88/12
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020175478
(22)【出願日】2020-10-19
(65)【公開番号】P2022066884
(43)【公開日】2022-05-02
【審査請求日】2023-02-10
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、総務省、「第5世代移動通信システムの更なる高度化に向けた研究開発」委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】599108264
【氏名又は名称】株式会社KDDI総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100135068
【弁理士】
【氏名又は名称】早原 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100141313
【弁理士】
【氏名又は名称】辰巳 富彦
(72)【発明者】
【氏名】三原 翔一郎
(72)【発明者】
【氏名】村上 隆秀
(72)【発明者】
【氏名】新保 宏之
【審査官】伊東 和重
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-6844(JP,A)
【文献】特開2018-148297(JP,A)
【文献】特開2021-90088(JP,A)
【文献】伊藤智史、他3名,機械学習を用いたミリ波向け遮蔽影響予測の屋外環境への適用検証,信学技報,vol.120,no.89,RCS2020-59,2020年07月,pp.7-12
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局に接続して通信を行う複数の端末の各々に対し、当該端末と当該基地局との接続を制御する通信制御装置であって、
当該端末と通信を行う当該基地局の通信手段から、通信品質に係る情報、通信方式若しくは種別に係る情報、通信状態に係る情報、及び当該端末の種別若しくは状態に係る情報のうちの少なくとも1つを、少なくとも1つの通信関連項目として含む通信情報を取得する通信情報取得手段と、
当該端末の存在し得る環境をセンシングするセンサから、当該環境に係る情報であって所定の対象を含み得る環境情報を取得し、当該環境情報から当該対象を検出して、当該対象の種別に係る情報、当該対象の状態に係る情報、及び当該対象と他の対象との関係に係る情報である対象関係情報のうちの少なくとも1つを、少なくとも1つの対象関連項目として含む対象情報を決定する対象情報決定手段と、
当該通信情報と当該対象情報とに基づいて、当該通信情報に係る端末と、当該対象情報に係る対象との対応関係に係る情報を決定する対応関係決定手段と、
少なくとも、当該端末に対応すると決定された対象についての当該対象情報に基づいて、当該端末の優先度を決定する優先度決定手段と、
決定された当該端末の優先度に基づいて、前記複数の端末の各々における当該基地局との接続についての制御を行う接続制御手段と
を有することを特徴とする通信制御装置。
【請求項2】
前記優先度決定手段は、当該端末に対応すると決定された対象についての当該対象情報に含まれる対象関連項目毎に予め設定された優先度スコアを総合して、当該端末の優先度を決定することを特徴とする請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項3】
前記優先度決定手段は、当該端末についての当該通信情報にも基づいて、当該端末の優先度を決定することを特徴とする請求項1又は2に記載の通信制御装置。
【請求項4】
前記優先度決定手段は、当該端末についての当該通信情報に含まれる通信関連項目毎に予め設定された優先度スコアを総合して、当該端末の優先度を決定することを特徴とする請求項3に記載の通信制御装置。
【請求項5】
当該対象情報は、対象関連項目として当該対象関係情報を含み、
前記優先度決定手段は、当該対象についての当該通信情報に含まれる通信関連項目毎に予め設定された重みを用い、当該端末に対応すると決定された対象についての当該対象情報に含まれる当該対象関係情報に対し予め設定された優先度スコアを重み付けすることによって、当該端末の優先度を決定する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の通信制御装置。
【請求項6】
当該対象情報は、対象関連項目として当該対象関係情報を含み、
前記優先度決定手段は、当該対象についての当該対象情報に含まれる、当該対象関係情報以外の対象関連項目毎に予め設定された重みを用い、当該端末に対応すると決定された対象についての当該対象情報に含まれる当該対象関係情報に対し予め設定された優先度スコアを重み付けすることによって、当該端末の優先度を決定する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の通信制御装置。
【請求項7】
当該対応関係に係る情報において、当該端末に対応する可能性を有する対象である対応対象候補が複数存在している場合に、前記優先度決定手段は、当該複数の対応対象候補の各々に対し、当該対応対象候補が当該端末に真に対応するものであるならば決定すべき優先度を仮優先度として決定し、このうちで最も高い仮優先度を、当該端末の優先度に決定することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の通信制御装置。
【請求項8】
当該通信情報は、当該通信状態に係る情報としての、通信の電波に係る情報である通信電波情報を含み、当該対象情報は、当該対象の状態に係る情報としての、当該対象の検出位置の変化に係る情報である対象運動状態情報を含み、
前記対応関係決定手段は、
当該通信電波情報に基づいて、当該端末の位置変化に係る情報である端末運動状態情報を決定し、
当該端末運動状態情報と当該対象運動状態情報とが対応する度合いを算出し、当該対応する度合いに基づいて、当該端末運動状態情報に係る端末と、当該対象運動状態情報に係る対象とが対応関係にあるか否かを判定し、当該端末と当該対象との対応関係に係る情報を決定する
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の通信制御装置。
【請求項9】
当該通信情報は、当該通信状態に係る情報を含み、当該対象情報は、当該対象の状態に係る情報としての対象通信状態情報であって、当該対象が端末を含むならば当該対象との間で具現することになる通信状態に係る情報である対象通信状態情報を含み、
前記対応関係決定手段は、
当該通信状態に係る情報と、当該対象通信状態情報とが対応する度合いを算出し、当該度合いに基づいて、当該通信状態に係る情報に係る端末と、当該対象通信状態情報に係る対象とが対応関係にあるか否かを判定し、当該端末と当該対象との対応関係に係る情報を決定する
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の通信制御装置。
【請求項10】
当該通信情報は、当該通信方式若しくは種別に係る情報を含み、当該対象情報は、当該当該対象の種別に係る情報を含み、
前記対応関係決定手段は、
当該通信方式若しくは種別に係る情報と当該当該対象の種別に係る情報とを予め対応付けた情報である種別対応関係情報に基づいて、当該通信方式若しくは種別に係る情報に係る端末と、当該当該対象の種別に係る情報に係る対象とが対応関係にあるか否かを判定し、当該端末と当該対象との対応関係に係る情報を決定する
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の通信制御装置。
【請求項11】
当該対象情報における1つの対象関連項目としての当該対象関係情報は、
当該対象における他の対象による遮蔽の発生の有無、当該遮蔽の発生までの時間、当該遮蔽の継続時間、当該遮蔽の程度、及び当該遮蔽の発生の確からしさのうちの少なくとも1つと、
当該対象と他の対象との衝突若しくは接触の発生の有無、当該衝突若しくは接触の発生までの時間、当該衝突若しくは接触の継続時間、当該衝突若しくは接触の程度、及び当該衝突若しくは接触の発生の確からしさのうちの少なくとも1つと
のうちの一方又は両方を含むことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の通信制御装置。
【請求項12】
当該通信情報における1つの通信関連項目としての当該通信方式若しくは種別に係る情報は、eMBB(enhanced Mobile BroadBand)対応の通信方式、URLLC(Ultra-Reliable and Low Latency Communications)対応の通信方式、及びmMTC(massive Machine Type Communication)対応の通信方式のうちの少なくとも1つを含む通信方式群の中から決定されたもの、または、音声通話データ通信、動画配信データ通信、ウェブページデータ通信、電子メールデータ通信、投稿データ通信、アプリケーションデータ通信、機器制御データ通信、及びセンサデータ通信のうちの少なくとも1つを含む通信種別群の中から決定されたものであることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の通信制御装置。
【請求項13】
基地局に接続して通信を行う複数の端末の各々に対し、当該端末と当該基地局との接続を制御する通信制御システムであって、
当該端末と通信を行う当該基地局の通信手段から、通信品質に係る情報、通信方式若しくは種別に係る情報、通信状態に係る情報、及び当該端末の種別若しくは状態に係る情報のうちの少なくとも1つを、少なくとも1つの通信関連項目として含む通信情報を取得する通信情報取得手段と、
当該端末の存在し得る環境をセンシングするセンサから、当該環境に係る情報であって所定の対象を含み得る環境情報を取得し、当該環境情報から当該対象を検出して、当該対象の種別に係る情報、当該対象の状態に係る情報、及び当該対象と他の対象との関係に係る情報である対象関係情報のうちの少なくとも1つを、少なくとも1つの対象関連項目として含む対象情報を決定する対象情報決定手段と、
当該通信情報と当該対象情報とに基づいて、当該通信情報に係る端末と、当該対象情報に係る対象との対応関係に係る情報を決定する対応関係決定手段と、
少なくとも、当該端末に対応すると決定された対象についての当該対象情報に基づいて、当該端末の優先度を決定する優先度決定手段と、
決定された当該端末の優先度に基づいて、前記複数の端末の各々における当該基地局との接続についての制御を行う接続制御手段と
を有することを特徴とする通信制御システム。
【請求項14】
基地局に接続して通信を行う複数の端末の各々に対し、当該端末と当該基地局との接続を制御するコンピュータを機能させるプログラムであって、
当該端末と通信を行う当該基地局の通信手段から、通信品質に係る情報、通信方式若しくは種別に係る情報、通信状態に係る情報、及び当該端末の種別若しくは状態に係る情報のうちの少なくとも1つを、少なくとも1つの通信関連項目として含む通信情報を取得する通信情報取得手段と、
当該端末の存在し得る環境をセンシングするセンサから、当該環境に係る情報であって所定の対象を含み得る環境情報を取得し、当該環境情報から当該対象を検出して、当該対象の種別に係る情報、当該対象の状態に係る情報、及び当該対象と他の対象との関係に係る情報である対象関係情報のうちの少なくとも1つを、少なくとも1つの対象関連項目として含む対象情報を決定する対象情報決定手段と、
当該通信情報と当該対象情報とに基づいて、当該通信情報に係る端末と、当該対象情報に係る対象との対応関係に係る情報を決定する対応関係決定手段と、
少なくとも、当該端末に対応すると決定された対象についての当該対象情報に基づいて、当該端末の優先度を決定する優先度決定手段と、
決定された当該端末の優先度に基づいて、前記複数の端末の各々における当該基地局との接続についての制御を行う接続制御手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする通信制御プログラム。
【請求項15】
基地局に接続して通信を行う複数の端末の各々に対し、当該端末と当該基地局との接続を制御するコンピュータにおける通信制御方法であって、
当該端末と通信を行う当該基地局の通信手段から、通信品質に係る情報、通信方式若しくは種別に係る情報、通信状態に係る情報、及び当該端末の種別若しくは状態に係る情報のうちの少なくとも1つを、少なくとも1つの通信関連項目として含む通信情報を取得し、また、当該端末の存在し得る環境をセンシングするセンサから、当該環境に係る情報であって所定の対象を含み得る環境情報を取得し、当該環境情報から当該対象を検出して、当該対象の種別に係る情報、当該対象の状態に係る情報、及び当該対象と他の対象との関係に係る情報である対象関係情報のうちの少なくとも1つを、少なくとも1つの対象関連項目として含む対象情報を決定するステップと、
当該通信情報と当該対象情報とに基づいて、当該通信情報に係る端末と、当該対象情報に係る対象との対応関係に係る情報を決定するステップと、
少なくとも、当該端末に対応すると決定された対象についての当該対象情報に基づいて、当該端末の優先度を決定するステップと、
決定された当該端末の優先度に基づいて、前記複数の端末の各々における当該基地局との接続についての制御を行うステップと
を有することを特徴とする通信制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
通信端末と基地局とにおける通信接続の制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
第5世代移動通信システム(5G)は、ミリ波帯の電波を利用し、高速、大容量、低遅延、多端末接続といった高性能の通信を実現可能とする。ここで、ミリ波は、高い直進性を有していて回折が起きにくく、端末(通信端末)と基地局との間に存在する物体によってその伝播が遮られたり減衰したりする可能性が高くなる。したがって、特に5Gにおいて、通信品質は、端末と基地局との位置関係、その間に存在する物体の状況や、その間の電波伝搬環境に大きく依存することになる。
【0003】
そこで従来、無線通信においてより良好な通信品質を維持すべく、その場の通信品質に基づき端末と接続する基地局を切り替える技術が開発されてきた。例えば非特許文献1には、LTE(Long Term Evolution)仕様におけるRRC(Radio Resource Control)プロトコルに従い、端末で計測される各基地局からの参照信号の強度を用いて、接続する基地局の切り替え制御を行う技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献1には、端末が、過去に通信品質の劣化した位置についての履歴情報を保持しておき、次回、通信品質の劣化した当該位置に来た際、この履歴情報を参照して、品質劣化を回避可能な基地局を接続先として選択する技術が開示されている。さらに、特許文献2及び非特許文献2においては、カメラ画像を用いてミリ波の遮蔽を予測し、この遮蔽によって無線通信リンクが切断されないように、端末が接続する基地局を適宜切り替える技術が開示されている。
【0005】
一方で従来、多数の端末が無線通信を実施するような環境では、通信リソースの限定される中、QoS(Quality of Service)要求の高い通信における通信品質を確保するため、QoS識別子を用いて通信の優先制御が行われてきた。例えば、非特許文献3に開示された優先制御技術では、Ethernet(登録商標)フレームにおいて定義されたタグフィールドに対し優先度を表すCOS値を埋め込んでおき、通信機器が、このCOS値を参照して通信パケットに対する処理の順序を決定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-022089号公報
【文献】特開2018-148297号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】3rd Generation Partnership Project (3GPP); Protocol specification, "Evolved Universal Terrestrial Radio Access (E-UTRA); Radio Resource Control (RRC); Protocol specification", 3GPP TS 36.331 V16.1.1, 2020年7月
【文献】Yuta Oguma et.al., "Proactive Base Station Selection Based on Human Blockage Prediction Using RGB-D Cameras for mmWave Communications", Conference paper: 2015 IEEE Global Communications Conference (GLOBECOM), 2015年
【文献】IEEE Std. 802.1Q-2005, "IEEE Standard for Local and Metropolitan Area Networks---Virtual Bridged Local Area Networks", [online], [令和2年9月28日検索], インターネット<URL: https://standards.ieee.org/standard/802_1Q-2005.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特に多数の端末と基地局との同時接続を可能にする5Gにおいて、上述したような従来技術では依然、通信品質の維持・向上を図ることに大きな困難が存在する。
【0009】
例えば、QoS識別子を用いて優先制御を行う非特許文献3に記載の技術においては、無線通信の接続が確保されていることを大前提としており、通信環境内の物体により通信電波(特にミリ波)の遮蔽が生じやすい、すなわち通信断が発生しやすい状況では、QoS識別子を確実に取得することができず、結局、優先制御そのものを実施することが困難となる。
【0010】
また、各基地局からの参照信号を用いる非特許文献1に記載された技術においてもやはり、無線通信の接続が確保されていることが大前提であり、例えば、物体の遮蔽によって急激に受信信号強度が低下した際、無線通信リンクが切断される前に基地局の切り替え処理を完了することができないといった問題が生じてしまう。
【0011】
さらに、特許文献1に記載の技術では、過去に通信品質が劣化した位置についての履歴情報に基づいて基地局の選択処理を行うが、特に通信電波がミリ波の場合、端末の周囲に存在する人体等の物体が例えば数十センチメートル(cm)変位しただけでも、電波伝搬状況が大きく変化する。そのため、端末が過去と概ね同一の位置に来たとしても、特にその時点で移動物体が通信電波を低減させたり遮蔽したりする場合には、当該位置における電波伝搬状況は、当該過去の履歴情報に係る電波伝搬状況とは大きく異なるものになってしまう可能性が高く、現状に適合した基地局選択処理を行うことが困難となってしまう。
【0012】
一方、特許文献2や非特許文献2に記載された技術においてはたしかに、カメラ画像を用いてミリ波の遮蔽を予測するので、例えば突発的な無線通信リンクの切断を回避することも可能とはなる。しかしながら、これらの技術は、多数の端末と基地局とが同時接続し得る状況であって、それ故そのための通信リソースが十分とは言えない状況において、これらの端末と基地局との接続制御を如何に実施するかについて、何ら解答を与えるものではない。したがって、これらの技術によっても、例えば5Gで想定される多端末接続環境において、端末通信制御を確実に実施することは困難であると言わざるを得ない。
【0013】
そこで、本発明は、通信電波の遮蔽が発生し得る状況であって通信リソースに限りがある状況において、複数の端末と基地局との通信接続をより適切に制御することの可能な通信制御装置、システム、プログラム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、基地局に接続して通信を行う複数の端末の各々に対し、当該端末と当該基地局との接続を制御する通信制御装置であって、
当該端末と通信を行う当該基地局の通信手段から、通信品質に係る情報、通信方式若しくは種別に係る情報、通信状態に係る情報、及び当該端末の種別若しくは状態に係る情報のうちの少なくとも1つを、少なくとも1つの通信関連項目として含む通信情報を取得する通信情報取得手段と、
当該端末の存在し得る環境をセンシングするセンサから、当該環境に係る情報であって所定の対象を含み得る環境情報を取得し、当該環境情報から当該対象を検出して、当該対象の種別に係る情報、当該対象の状態に係る情報、及び当該対象と他の対象との関係に係る情報である対象関係情報のうちの少なくとも1つを、少なくとも1つの対象関連項目として含む対象情報を決定する対象情報決定手段と、
当該通信情報と当該対象情報とに基づいて、当該通信情報に係る端末と、当該対象情報に係る対象との対応関係に係る情報を決定する対応関係決定手段と、
少なくとも、当該端末に対応すると決定された対象についての当該対象情報に基づいて、当該端末の優先度を決定する優先度決定手段と、
決定された当該端末の優先度に基づいて、複数の端末の各々における当該基地局との接続についての制御を行う接続制御手段と
を有する通信制御装置が提供される。
【0015】
この本発明による通信制御装置において、優先度決定手段は、当該端末に対応すると決定された対象についての当該対象情報に含まれる対象関連項目毎に予め設定された優先度スコアを総合して、当該端末の優先度を決定することも好ましい。
【0016】
また、本発明による通信制御装置の一実施形態として、優先度決定手段は、当該端末についての当該通信情報にも基づいて、当該端末の優先度を決定することも好ましい。またこの場合、優先度決定手段は、当該端末についての当該通信情報に含まれる通信関連項目毎に予め設定された優先度スコアを総合して、当該端末の優先度を決定することも好ましい。
【0017】
さらに、本発明による通信制御装置の他の実施形態として、当該対象情報は、対象関連項目として当該対象関係情報を含み、優先度決定手段は、当該対象についての当該通信情報に含まれる通信関連項目毎に予め設定された重みを用い、当該端末に対応すると決定された対象についての当該対象情報に含まれる当該対象関係情報に対し予め設定された優先度スコアを重み付けすることによって、当該端末の優先度を決定することも好ましい。
【0018】
さらにまた、本発明による通信制御装置の更なる他の実施形態として、当該対象情報は、対象関連項目として当該対象関係情報を含み、優先度決定手段は、当該対象についての当該対象情報に含まれる、当該対象関係情報以外の対象関連項目毎に予め設定された重みを用い、当該端末に対応すると決定された対象についての当該対象情報に含まれる当該対象関係情報に対し予め設定された優先度スコアを重み付けすることによって、当該端末の優先度を決定することも好ましい。
【0019】
さらに、本発明による通信制御装置に係る当該対応関係に係る情報において、当該端末に対応する可能性を有する対象である対応対象候補が複数存在している場合に、優先度決定手段は、当該複数の対応対象候補の各々に対し、当該対応対象候補が当該端末に真に対応するものであるならば決定すべき優先度を仮優先度として決定し、このうちで最も高い仮優先度を、当該端末の優先度に決定することも好ましい。
【0020】
また、本発明による通信制御装置における対応関係決定処理の一実施形態として、当該通信情報は、当該通信状態に係る情報としての、通信の電波に係る情報である通信電波情報を含み、当該対象情報は、当該対象の状態に係る情報としての、当該対象の検出位置の変化に係る情報である対象運動状態情報を含み、
対応関係決定手段は、
当該通信電波情報に基づいて、当該端末の位置変化に係る情報である端末運動状態情報を決定し、
当該端末運動状態情報と当該対象運動状態情報とが対応する度合いを算出し、当該対応する度合いに基づいて、当該端末運動状態情報に係る端末と、当該対象運動状態情報に係る対象とが対応関係にあるか否かを判定し、当該端末と当該対象との対応関係に係る情報を決定することも好ましい。
【0021】
さらに、本発明による通信制御装置における対応関係決定処理の他の実施形態として、当該通信情報は、当該通信状態に係る情報を含み、当該対象情報は、当該対象の状態に係る情報としての対象通信状態情報であって、当該対象が端末を含むならば当該対象との間で具現することになる通信状態に係る情報である対象通信状態情報を含み、
対応関係決定手段は、当該通信状態に係る情報と、当該対象通信状態情報とが対応する度合いを算出し、当該度合いに基づいて、当該通信状態に係る情報に係る端末と、当該対象通信状態情報に係る対象とが対応関係にあるか否かを判定し、当該端末と当該対象との対応関係に係る情報を決定することも好ましい。
【0022】
さらにまた、本発明による通信制御装置における対応関係決定処理の更なる他の実施形態として、当該通信情報は、当該通信方式若しくは種別に係る情報を含み、当該対象情報は、当該当該対象の種別に係る情報を含み、
対応関係決定手段は、当該通信方式若しくは種別に係る情報と当該当該対象の種別に係る情報とを予め対応付けた情報である種別対応関係情報に基づいて、当該通信方式若しくは種別に係る情報に係る端末と、当該当該対象の種別に係る情報に係る対象とが対応関係にあるか否かを判定し、当該端末と当該対象との対応関係に係る情報を決定することも好ましい。
【0023】
また、本発明による通信制御装置に係る当該対象情報における1つの対象関連項目としての当該対象関係情報は、
当該対象における他の対象による遮蔽の発生の有無、当該遮蔽の発生までの時間、当該遮蔽の継続時間、当該遮蔽の程度、及び当該遮蔽の発生の確からしさのうちの少なくとも1つと、
当該対象と他の対象との衝突若しくは接触の発生の有無、当該衝突若しくは接触の発生までの時間、当該衝突若しくは接触の継続時間、当該衝突若しくは接触の程度、及び当該衝突若しくは接触の発生の確からしさのうちの少なくとも1つと
のうちの一方又は両方を含むことも好ましい。
【0024】
さらに、本発明による通信制御装置に係る当該通信情報における1つの通信関連項目としての当該通信方式若しくは種別に係る情報は、eMBB(enhanced Mobile BroadBand)対応の通信方式、URLLC(Ultra-Reliable and Low Latency Communications)対応の通信方式、及びmMTC(massive Machine Type Communication)対応の通信方式のうちの少なくとも1つを含む通信方式群の中から決定されたもの、または、音声通話データ通信、動画配信データ通信、ウェブページデータ通信、電子メールデータ通信、投稿データ通信、アプリケーションデータ通信、機器制御データ通信、及びセンサデータ通信のうちの少なくとも1つを含む通信種別群の中から決定されたものであることも好ましい。
【0025】
本発明によれば、また、基地局に接続して通信を行う複数の端末の各々に対し、当該端末と当該基地局との接続を制御する通信制御システムであって、
当該端末と通信を行う当該基地局の通信手段から、通信品質に係る情報、通信方式若しくは種別に係る情報、通信状態に係る情報、及び当該端末の種別若しくは状態に係る情報のうちの少なくとも1つを、少なくとも1つの通信関連項目として含む通信情報を取得する通信情報取得手段と、
当該端末の存在し得る環境をセンシングするセンサから、当該環境に係る情報であって所定の対象を含み得る環境情報を取得し、当該環境情報から当該対象を検出して、当該対象の種別に係る情報、当該対象の状態に係る情報、及び当該対象と他の対象との関係に係る情報である対象関係情報のうちの少なくとも1つを、少なくとも1つの対象関連項目として含む対象情報を決定する対象情報決定手段と、
当該通信情報と当該対象情報とに基づいて、当該通信情報に係る端末と、当該対象情報に係る対象との対応関係に係る情報を決定する対応関係決定手段と、
少なくとも、当該端末に対応すると決定された対象についての当該対象情報に基づいて、当該端末の優先度を決定する優先度決定手段と、
決定された当該端末の優先度に基づいて、複数の端末の各々における当該基地局との接続についての制御を行う接続制御手段と
を有する通信制御システムが提供される。
【0026】
本発明によれば、さらに、基地局に接続して通信を行う複数の端末の各々に対し、当該端末と当該基地局との接続を制御するコンピュータを機能させるプログラムであって、
当該端末と通信を行う当該基地局の通信手段から、通信品質に係る情報、通信方式若しくは種別に係る情報、通信状態に係る情報、及び当該端末の種別若しくは状態に係る情報のうちの少なくとも1つを、少なくとも1つの通信関連項目として含む通信情報を取得する通信情報取得手段と、
当該端末の存在し得る環境をセンシングするセンサから、当該環境に係る情報であって所定の対象を含み得る環境情報を取得し、当該環境情報から当該対象を検出して、当該対象の種別に係る情報、当該対象の状態に係る情報、及び当該対象と他の対象との関係に係る情報である対象関係情報のうちの少なくとも1つを、少なくとも1つの対象関連項目として含む対象情報を決定する対象情報決定手段と、
当該通信情報と当該対象情報とに基づいて、当該通信情報に係る端末と、当該対象情報に係る対象との対応関係に係る情報を決定する対応関係決定手段と、
少なくとも、当該端末に対応すると決定された対象についての当該対象情報に基づいて、当該端末の優先度を決定する優先度決定手段と、
決定された当該端末の優先度に基づいて、複数の端末の各々における当該基地局との接続についての制御を行う接続制御手段と
してコンピュータを機能させる通信制御プログラムが提供される。
【0027】
本発明によれば、さらにまた、基地局に接続して通信を行う複数の端末の各々に対し、当該端末と当該基地局との接続を制御するコンピュータにおける通信制御方法であって、
当該端末と通信を行う当該基地局の通信手段から、通信品質に係る情報、通信方式若しくは種別に係る情報、通信状態に係る情報、及び当該端末の種別若しくは状態に係る情報のうちの少なくとも1つを、少なくとも1つの通信関連項目として含む通信情報を取得し、また、当該端末の存在し得る環境をセンシングするセンサから、当該環境に係る情報であって所定の対象を含み得る環境情報を取得し、当該環境情報から当該対象を検出して、当該対象の種別に係る情報、当該対象の状態に係る情報、及び当該対象と他の対象との関係に係る情報である対象関係情報のうちの少なくとも1つを、少なくとも1つの対象関連項目として含む対象情報を決定するステップと、
当該通信情報と当該対象情報とに基づいて、当該通信情報に係る端末と、当該対象情報に係る対象との対応関係に係る情報を決定するステップと、
少なくとも、当該端末に対応すると決定された対象についての当該対象情報に基づいて、当該端末の優先度を決定するステップと、
決定された当該端末の優先度に基づいて、複数の端末の各々における当該基地局との接続についての制御を行うステップと
を有する通信制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0028】
本発明の通信制御装置、システム、プログラム及び方法によれば、通信電波の遮蔽が発生し得る状況であって通信リソースに限りがある状況において、複数の端末と基地局との通信接続をより適切に制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明による通信制御装置及び通信制御システムの一実施形態を示す模式図、及び本発明による通信制御装置の一実施形態における機能構成を示す機能ブロック図である。
図2】本発明に係る対応関係決定処理の一実施形態を説明するための模式図である。
図3】本発明に係る対応関係決定処理の他の実施形態を説明するための模式図である。
図4】本発明に係る対応関係決定処理の更なる他の実施形態を説明するための模式図である。
図5】本発明に係る優先度決定処理の一実施形態を説明するための模式図である。
図6】本発明に係る優先度決定処理の他の実施形態を説明するための模式図である。
図7】本発明に係る優先度決定処理の更なる他の実施形態を説明するための模式図である。
図8】本発明に係る優先度決定処理の更なる他の実施形態を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0031】
[通信制御装置,システム]
図1は、本発明による通信制御装置及び通信制御システムの一実施形態を示す模式図、及び本発明による通信制御装置の一実施形態における機能構成を示す機能ブロック図である。
【0032】
図1に示した、本発明による通信制御装置としての中継装置1は、本実施形態において5G(第5世代移動通信方式)に対応した、フロントホールにおける通信中継装置であり、また、同じく5Gに対応した通信端末である複数の端末3と複数の基地局2との間の通信接続を制御可能な通信制御装置となっている。
【0033】
ここで本実施形態において、各基地局2は、通信エリアの状況を所定の画角をもって撮影可能なRGB-Dカメラであるカメラ21を備えている。このカメラ21によって生成されたRGB画像(映像)データやデプス画像(映像)データには、
(a)端末3を所持・携帯した人物や、
(b)端末3を搭載した、含む又は搭乗させた自動車、二輪車、鉄道車両、ロボット、ドローン等の移動体、さらには
(c)端末3の付与・設置された物品、設備、施設、建造物、固定物
といったような「対象」が含まれている(撮像されている)可能性がある。またさらに、端末3に関わらない人物、移動体や、物品、設備、施設、建造物、(樹木等の植物も含む)固定物といったような「対象」も含まれ得るのである。
【0034】
ちなみに、このような「対象」は、後述する対応関係決定部113において端末3との対応関係を決定すべきものとなり得る一方、端末3と基地局2との間に存在することによって、通信電波の遮蔽物・障害物ともなり得る。特に、本実施形態の通信方式である5Gは、ミリ波帯の電波を通信に利用しているが、ミリ波は高い直進性を有していて回折が起きにくく、それ故、端末3と基地局2との間に存在する「対象」によってその伝播が遮られたり減衰したりする可能性が高い。
【0035】
したがって、このように「対象」が介在すると、基地局2での受信信号電力が急激に低下して、通信品質が大幅に劣化したり通信断が頻発したりすることが大きな問題となる。これに対し、例えばこのような「対象」による基地局2での受信信号電力の低下を予測できれば、端末3の通信経路、すなわち接続先の基地局2を切り替える等の制御によって通信品質を維持することも可能となる。
【0036】
しかしながら、例えば5Gで実現される多端末接続環境において、そのような予測結果を用いて、多数の端末3と基地局2群とにおける通信接続の制御を如何に実施するかについては従来、何ら方策が見出されていなかった。特に、5Gといえども基地局リソースを含む通信リソースに限りがある状況において、多数の端末3に対し当該基地局リソースを含む通信リソースを如何に適切に割り振るかについては依然、大きな問題となってきたのである。
【0037】
この点、本実施形態の中継装置1は、カメラ21で生成され基地局2から送信されてきた画像(映像)データを駆使し、このような端末・基地局間の通信接続の制御をより適切に実施するのである。具体的に中継装置1は、図1の機能ブロック図に示したように、
(ア)端末3と通信を行う基地局2の通信手段から、(a)通信品質に係る情報、(b)通信方式若しくは種別に係る情報、(c)通信状態に係る情報、及び(d)端末3の種別若しくは状態に係る情報、のうちの少なくとも1つを、少なくとも1つの通信関連項目として含む「通信情報」を取得する通信情報取得部111と、
(イ)端末3の存在し得る環境をセンシングするセンサ(本実施形態ではカメラ21)から、当該環境に係る情報であって所定の対象を含み得る環境情報(本実施形態では画像データ)を取得し、当該環境情報(画像データ)から「対象」を検出して、(a)「対象」の種別に係る情報、(b)「対象」の状態に係る情報、及び(c)「対象」と他の「対象」との関係に係る情報である「対象関係情報」のうちの少なくとも1つを、少なくとも1つの対象関連項目として含む「対象情報」を決定する対象情報決定部112と、
(ウ)上記(ア)の「通信情報」と上記(イ)の「対象情報」とに基づいて、「通信情報」に係る端末3と、「対象情報」に係る「対象」との対応関係に係る情報を決定する対応関係決定部113と、
(エ)少なくとも、端末3に対応すると決定された「対象」についての「対象情報」に基づいて、端末3の「優先度」を決定する優先度決定部114と、
(オ)決定された端末3の「優先度」に基づいて、複数の端末3の各々における基地局2との接続についての制御を行う接続制御部115aと
を有することを特徴としている。
【0038】
ここで、上記(ア)の(b)通信方式(若しくは種別)に係る情報は例えば、5Gで規定された若しくは5G用に設定された通信方式である、
(b1)eMBB(enhanced Mobile BroadBand,高速大容量)対応の通信方式、
(b2)URLLC(Ultra-Reliable and Low Latency Communications,超高信頼低遅延)対応の通信方式、及び
(b3)mMTC(massive Machine Type Communication,超大量端末)対応の通信方式
のうちの少なくとも1つを含む通信方式種別群の中から選択された、通信方式種別の情報とすることができる。
【0039】
また、上記(イ)の「対象」の種別に係る情報は、例えば"人物"、"自動車"や、"段ボール(梱包荷物)"といったような「対象」のモノとしての種類を特定する情報である。本実施形態では、環境情報としてのRGB画像データやデプス画像データから、公知の画像認識技術を用いて「対象」を検出する際、検出対象として出力される"クラス"を、この「対象」の種別に係る情報とすることができる。
【0040】
さらに、同じく上記(イ)の「対象関係情報」は、後に詳細に説明するが本実施形態において、「対象」における他の「対象」による(基地局2との間の電波伝搬路の)遮蔽に係る情報や、「対象」と他の「対象」との衝突若しくは接触に係る情報とすることができる。またそれ故、この「対象関係情報」は、「優先度」決定の基となる「対象情報」に含まれることが好ましいのである。
【0041】
このように、本発明による通信制御装置としての中継装置1は、端末3と「対象」との対応関係を把握した上で、少なくとも、端末3に対応すると決定された「対象」についての「対象情報」に基づき、この端末3における通信接続制御に関する「優先度」を決定する。ここで、この「優先度」は「対象情報」を考慮して決められているので、例えば端末3の受け得る遮蔽の影響を反映した値とすることも可能となっている。
【0042】
いずれにしても、少なくとも「対象情報」を反映したこのような「優先度」を利用することによって、通信電波の遮蔽が発生し得る状況であって通信リソースに限りがある状況において、「優先度」の高い端末3の接続制御をより優先することにより(例えば優先的に通信リソースを割り当てることによって)、複数の端末3と基地局2との通信接続をより適切に制御することができる。例えば、多数の端末3による多数の無線通信リンクが存在する混雑時においても、「優先度」の高い端末3の通信接続を優先的に確保し、さらに、全体における通信速度低下や通信断を大幅に抑制することも可能となるのである。
【0043】
なお、本実施形態における基地局2と端末3との間の通信方式には、さらに中継装置1による基地局2の制御方式には5Gが採用されているが、当然にLTE(Long Term Evolution)等、他の通信方式を用いてもよく、また、他の様々な無線通信規格に基づくものであってもよい。例えば物体による遮蔽問題が5Gほど顕著ではない通信方式であっても、環境情報から検出された「対象」を用いて、配下の端末を正確に同定しそれらの通信接続制御を行いたい状況は少なからず発生する。これに対し、中継装置1によれば、そのような端末同定処理(対応関係決定処理)及び端末通信制御処理をより高い精度で実施することも可能になるのである。
【0044】
また、本発明による通信制御装置は、図1に示した中継装置1に限定されるものでもない。例えば、フロントホールやバックホールに設置された通信中継装置・設備に接続される形で設けられた端末通信制御の専用装置であってもよい。さらに、基地局2に上記構成(ア)~(オ)を具備させ、当該基地局2を本発明による通信制御装置とすることもできる。また、本発明による通信制御装置として、後述する本発明による通信制御プログラムを搭載した、クラウドサーバ、非クラウドのサーバ装置、パーソナル・コンピュータ(PC)、又はノート型若しくはタブレット型コンピュータ等を用いることも可能である。
【0045】
さらに言えば、本発明による通信制御装置(中継装置1)の構成要素である上記(ア)~(オ)のうちの少なくとも1つが、他の構成要素とは別の装置に含まれるような形態をとってもよい。例えば、複数のサーバの全体によって上記(ア)~(オ)の機能を実現することも可能となっている。ここでこのような場合、これらの全体をもって、本発明による通信制御方法を実施する通信制御システムと捉えることができるのである。
【0046】
[通信制御装置の機能構成,通信制御プログラム・方法]
同じく図1の機能ブロック図において、中継装置1は、通信中継装置であって且つ本発明による通信制御装置の一実施形態を具現しており、通信インタフェース101と、通信履歴情報蓄積部102と、カメラ画像蓄積部103と、プロセッサ・メモリとを有する。ここで、プロセッサ・メモリは、本発明による通信制御プログラムを包含する通信中継プログラムの一実施形態を保存しており、また、コンピュータ機能を有していて、この通信中継プログラムを実行することによって、通信制御処理及び通信中継処理を実施する。
【0047】
また、プロセッサ・メモリは、機能構成部として、通信情報取得部111と、環境情報取得部112aを含む対象情報決定部112と、端末運動状態情報決定部113aを含む対応関係決定部113と、優先度決定部114と、接続制御部115aを含む通信制御部115とを有する。なお、これらの機能構成部は、プロセッサ・メモリに保存された通信制御プログラム(を包含する通信中継プログラム)の機能と捉えることができ、また、図1の機能ブロック図における中継装置1の機能構成部間を矢印で接続して示した処理の流れは、本発明による通信制御方法(及び通信中継方法)の一実施形態としても理解される。
【0048】
同じく図1の機能ブロック図において、通信制御部115は、通信インタフェース101と通信接続された各基地局2とバックホール側との通信を中継する機能を果たし、さらに、各基地局2の通信手段から、配下にある端末3との通信に係る各種情報を取得して当該情報を時系列で整理した通信履歴情報を生成し、通信履歴情報蓄積部102に保存・管理させる。
【0049】
ここで通信制御部115は当然に、各基地局2と端末3との間の通信における通信方式を認識しており、本実施形態において通信履歴情報は、端末3毎に、当該端末3の端末ID(識別子)と、当該端末3との間で実施している5G通信における通信方式(の対応する規格)、具体的にはeMBB、URLLC及びmMTCのうちのいずれか1つとを対応付けたレコードを含んでいる。
【0050】
また、通信履歴情報は、端末3毎に、従来のQoS(Quality of Service)優先制御で使用されるQoS識別子といったような通信品質に係る情報や、通信状態(例えば基地局2における受信信号電力(RSSI))に係る情報や、(音声通話、動画配信等の)通信データ種別、通信プロトコル、ビットレート、誤り訂正、さらには再送制御の有無の情報といったような通信種別に係る情報を対応付けて記録していてもよい。またさらに、当該端末3の端末種別(例えばスマートフォン、自動運転車、ロボット等)に係る情報や、端末状態(例えば端末3におけるRSSIや、自立運行制御モード等のモード種別)に係る情報を含むことも可能である。
【0051】
なお、この通信制御部115の一部となっている接続制御部115aについては、後に詳細に説明を行う。
【0052】
同じく図1の機能ブロック図において、通信情報取得部111は、通信履歴情報蓄積部102から、(a)通信品質情報(例えばQoS識別子)、(b)通信方式若しくは種別情報、(c)通信状態情報(例えば基地局2でのRSSI)、及び(d)端末3の種別(例えば自動運転車等)若しくは状態(例えば端末3でのRSSI)情報、のうちの少なくとも1つを、少なくとも1つの通信関連項目として含む「通信情報」を取得する。
【0053】
ここで、1つの通信関連項目としての(b)通信方式若しくは種別情報は、上述したようにeMBB対応の通信方式、URLLC対応の通信方式、及びmMTC対応の通信方式のうちの少なくとも1つを含む通信方式群の中から決定されたもの、または、音声通話データ通信、動画配信データ通信、ウェブページデータ通信、電子メールデータ通信、投稿データ通信、アプリケーションデータ通信、機器制御データ通信、及びセンサデータ通信のうちの少なくとも1つを含む通信種別群の中から決定されたものとすることができる。
【0054】
同じく図1の機能ブロック図において、カメラ画像蓄積部103は、端末3の存在し得る環境である通信環境を撮影可能なカメラ21で生成され基地局2から送信されてきた画像(映像)データを、保存・管理又はバッファし、当該画像(映像)データを、環境情報として対象情報決定部112の環境情報取得部112aへ適宜、出力する。
【0055】
ここで、当該画像(映像)データの生成元であるカメラ21は、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等の固体撮像素子を備えた可視光、近赤外線又は遠赤外線対応の撮影デバイスであってもよく、ウェブ(Web)カメラ、ステレオカメラ、全天球(全方位)カメラ等とすることもできる。ちなみに上述したように、カメラ21は、本実施形態においてRGB-Dカメラであり、RGB画像(映像)データ及びデプス画像(映像)データを環境情報として生成する。勿論、カメラ21の代わりに、例えばLiDAR、レーザ・赤外線測位器、TOFカメラ、サーモグラフィデバイスといったような、端末3の存在し得る環境をセンシングし環境情報を生成可能な他のセンサを採用することも可能である。
【0056】
なお、カメラ21は、本実施形態では基地局2内に設置されているが、例えば基地局2とは離隔した位置に設置されたカメラ、例えば街中の監視カメラであって、基地局2と通信接続されたものであってもよい。また後に説明するが、1つの基地局2について、当該基地局2の内外を問わず、カメラ21が、互いに異なる位置に複数設けられている実施形態をとることも可能である。
【0057】
同じく図1の機能ブロック図において、対象情報決定部112は、
(i)環境情報取得部112aにおいて、カメラ21から(直接的にはカメラ画像蓄積部103から)画像(映像)データを、所定の対象を含み得る環境情報として取得し、
(ii)この取得した画像(映像)データに対し公知の画像認識技術を適用して、当該画像(映像)データから「対象」を検出し、(a)対象種別情報、(b)対象状態情報、及び(c)対象関係情報のうちの少なくとも1つを、少なくとも1つの対象関連項目として含む「対象情報」を決定する。
【0058】
ここで、1つの対象関連項目としての(c)対象関係情報は、
(c1)「対象」における他の対象による(基地局2との間の電波伝搬路の)遮蔽の発生の有無、(c2)当該遮蔽の発生までの時間、(c3)当該遮蔽の継続時間、(c4)当該遮蔽の程度、及び(c5)当該遮蔽の発生の確からしさ
のうちの少なくとも1つと、
(c6)「対象」と他の対象との衝突若しくは接触の発生の有無、(c7)当該衝突若しくは接触の発生までの時間、(c8)当該衝突若しくは接触の継続時間、(c9)当該衝突若しくは接触の程度、及び(c10)当該衝突若しくは接触の発生の確からしさ
のうちの少なくとも1つと
のうちの一方又は両方を含む情報となっている。
【0059】
また、対象情報決定部112は、上記の(a)対象種別情報を以下のように決定することができる。最初に、カメラ画像蓄積部104から(RGB及びデプス)画像データを取得し、取得した画像データから、端末3を含む可能性のある「対象」を検出し、例えば"人物"、"自動車"や"段ボール"といったような、検出された「対象」に係る"クラス"を、当該対象の種類に係る情報である対象種別情報に決定する。この場合具体的に、(a)対象種別情報は、検出された「対象」に付与された対象IDと、当該「対象」に係る"クラス"とを対応付けた情報とすることができる。
【0060】
ここで「対象」は例えば、(i)携帯端末である端末3を所持・携帯した人物(ユーザ)、(ii)ドライブレコーダ機能、CAN情報転送機能、サーバによる自動運転制御のインタフェース機能等を有する端末3の搭載された自動車や、(iii)サーバによる自律移動制御のインタフェース機能を有する端末3を搭載した自律移動型ロボットや自律飛行型ドローン、さらには、(iv)センサ情報転送機能を有する端末3の付与・設置された物品
といったような、通信履歴情報に係る通信先である端末3を含む可能性のある人物、移動体や物品等とすることができる。また場合によっては、端末3を含む可能性のある設備、施設、建造物、固定物等も「対象」とすることがあり得るのである。
【0061】
さらに、この対象種別情報として、"金属"や"布"といったような物体(表面)の構成材料の種類に係る情報や、人物の"年齢層"や"性別"といったような属性に係る情報を採用することも可能である。
【0062】
また、上記の画像データから「対象」を検出する処理としては、例えば、各種画像認識用として公知の機械学習アルゴリズム(例えばDNN(Deep Neural Network)を用いたアルゴリズム)に基づき対象検出用のモデルを構築し、当該モデルを用いて、画像データ内における、設定された"クラス"に相当する「対象」が存在すると推定される検出領域(例えばbounding box)を特定し、さらに、当該検出領域が対象である確からしさを示すスコアも算出して、所定条件を満たすだけの高いスコアを有する検出領域を対象領域に決定する、といったような画像認識処理が採用可能である。またこの場合、「対象」の検出位置は、この決定された対象領域の代表点(例えば重心や下端中点等)とすることができる。
【0063】
ちなみに、カメラ21としてRGBカメラやステレオカメラを採用する場合、生成された環境情報であるカメラ画像データに対し、例えば、非特許文献:Wei Liu, Dragomir Anguelov, Dumitru Erhan, Christian Szegedy, Scott Reed, Cheng-Yang Fu, Alexander C. Berg, “SSD: single shot multibox detector”, European Conference on Computer Vision, Computer Vision-ECCV 2016, pp.21-37, 2016年に記載された物体検出器を適用することによって、対象領域及び検出位置を決定することが可能となっている。
【0064】
また、カメラ21に代わりにLiDARを本発明に係るセンサとして用いる場合、生成された環境情報であるポイントクラウド(点群)に対しては、例えば、Charles R. Qi, Hao Su, Kaichun Mo, Leonidas J. Guibas, “PointNet: Deep Learning on Point Sets for 3D Classification and Segmentation”, Journal of 2017 IEEE Conference on Computer Vision and Pattern Recognition (CVPR), pp.77-85, 2016年に記載された物体検出器を用いることによって、対象領域及び検出位置を決定することができる。
【0065】
さらに、例えば特開2019-174164号公報に開示された、RGBカメラ画像から機械学習アルゴリズムを用いて(通信端末を含み得る)「対象」の位置を推定する技術を応用することも可能である。
【0066】
またさらに、対象情報決定部112における対象検出処理では、上述したように、検出した「対象」の位置(検出位置)も決定することができるが、本実施形態ではさらに、検出した「対象」毎に、「対象」を各時点における検出領域(検出位置)に対応付けた上で、「対象」の位置の時系列情報(移動履歴情報)を生成する。これにより、検出した各「対象」を個別に追跡することも可能となる。
【0067】
ここでこのような対象追跡処理については、決定した対象領域(bounding box)に対し、例えば周知の状態推定手法であるカルマンフィルタを適用して、過去の時点での状態から現時点における対象の検出領域(bounding box)を予測し、この予測した検出領域(bounding box)と、現時点で検出された検出領域(bounding box)との重畳面積を評価値として、当該評価値に基づき対象領域を決定していくことも好ましい。ちなみにこのような対象追跡処理は、例えば非特許文献:Alex Bewley, Zongyuan Ge, Lionel Ott, Fabio Ramos, Ben Upcroft, “Simple Online and Realtime Tracking”, Journal of 2016 IEEE International Conference on Image Processing (ICIP), pp.3464-3468, 2016年に記載されている。
【0068】
さらに他の対象検出処理として、通信環境中に「対象」が存在しない時間における環境情報を背景情報として記憶しておき、センシングした環境情報と背景情報との差分を取ることで、「対象」を抽出することも可能である。このような対象検出技術は、例えば非特許文献:Zivkovic, Z., "Improved adaptive Gaussian mixture model for background subtraction", Proceedings of the 17th International Conference on Pattern Recognition (ICPR), Vol.2, pp.28-31, 2004年に記載されている。
【0069】
またさらに、複数のセンサを用いる実施形態として、カメラ21又は上述したようなカメラ以外のセンサが、基地局2の内外を問わず、互いに異なる位置に複数設けられている場合において、対象情報決定部112は、
(a)これら複数のカメラ21(又はセンサ)のそれぞれから複数の環境情報を取得し、
(b)これら複数の環境情報のそれぞれから対象種別情報を決定し、
(c)決定した対象種別情報のうちで、
(c1)当該対象種別情報に係る「対象」の検出位置が所定以上に近いもの(例えば互いの距離が所定閾値未満であるもの)同士について、及び/又は、
(c2)当該対象種別情報に係る「対象」の検出領域(bounding box)の画像特徴量が所定以上に類似しているもの(例えば画像特徴量空間における互いの距離が所定閾値未満であるもの)同士について、
それらの対象種別情報は、同一の「対象」に係るものとすることも好ましい。またこの場合、それらの対象種別情報に係る「対象」についての検出位置群の代表値(例えば平均値)を、当該同一の「対象」の位置として取り扱ってもよい。これにより、ある端末3が、取得された環境情報の中に含まれず、その結果、当該端末3の検出処理に失敗してしまうといった事態を回避することも可能となる。
【0070】
ちなみに、以上に述べたような複数のカメラ21(又はセンサ)に係る対象種別情報を利用する典型例として、基地局2が、自らの周囲に存在する他の1つ以上の基地局2の各々から、当該基地局2に設置されたカメラ21(又はセンサ)によって生成された対象種別情報を受信・取得して、上述したような同一対象判定処理を実施することが挙げられる。この場合、複数の基地局2が連携して、本発明に係る端末3と「対象」との対応関係決定処理をより好適に実施することも可能となるのである。
【0071】
さらに、対象情報決定部112は、上記の(b)対象状態情報として、検出された「対象」の検出位置及び/又は当該検出位置の変化から、この「対象」の位置、速度及び/又は加速度に係る情報(例えば位置の時系列情報、速度の時系列情報、及び/又は加速度の時系列情報)を含む対象運動状態情報を決定することも好ましい。
【0072】
また、対象情報決定部112は、上記の(c)対象関係情報を、(端末3を含み得る)「対象」の対象運動状態情報と、他の「対象」の対象運動状態情報を用いて決定してもよい。具体的には、これらの情報を用いて、所定時間後であるT秒後に、「対象」の予測位置と基地局2の位置とを結ぶ直線分を軸とした円筒状又は他の回転体状の電波伝搬路を、他の「対象」が遮るか否かの遮蔽発生有無情報、さらには、その遮る度合いである遮蔽度合いRを決定することができる。
【0073】
ここで、遮蔽度合いRは、次式
(1) R=(Sa∩Sb)/Sa
をもって算出してもよい。ここで、Saは、電波伝搬路における他の「対象」位置での伝播軸に垂直な断面積(例えば当該断面をなす面積単位要素数)であり、Sbは、他の「対象」における当該軸に垂直な断面積(同じく例えば当該断面をなす面積単位要素数)であって、Sa∩Sbは、両断面積の重畳部分(例えば両者に共通の面積単位要素数)となっている。なお、遮蔽の発生の有無に係る上記の遮蔽発生有無情報は、この遮蔽度合いRが所定閾値を超えているか否かによって決定されてもよい。この場合、超えていれば「遮蔽の発生有り」とされ、超えていなければ「遮蔽の発生無し」とされるのである。
【0074】
またさらに、非特許文献:伊藤智史,三原翔一郎,村上隆秀,新保宏之,「機械学習を用いたミリ波向け遮蔽影響予測の屋外環境への適用検証」,信学技報,Vol. 120, No. 89, pp. 7,2020年 に開示されているように、一連の時系列画像データを入力として通信電波(ミリ波)の受信信号強度を推定可能な深層学習器を訓練し、当該深層学習器を用いて将来の通信電波(ミリ波)の遮蔽を予測し、対象関係情報を生成することも好ましい。
【0075】
同じく図1の機能ブロック図において、対応関係決定部113は、通信情報取得部111から受け取った「通信情報」と、対象情報決定部112から受け取った「対象情報」とに基づいて、「通信情報」に係る端末3と、「対象情報」に係る「対象」との対応関係に係る端末対象対応情報を決定する。以下、この対応関係決定部113で実施される対応関係決定処理(端末同定処理)についての3つの実施形態を、それぞれ図2、3及び4を用いて説明する。
【0076】
<対応関係決定処理1>
図2は、本発明に係る対応関係決定処理の一実施形態を説明するための模式図である。なお、図2に示した対応関係決定処理では、「通信情報」は、通信状態情報としての、通信電波に係る情報である通信電波情報を含んでおり、「対象情報」は、対象状態情報としての、「対象」の検出位置の変化に係る情報である対象運動状態情報を含んでいる。
【0077】
図2に示した実施形態において、対応関係決定部113は、
(a)端末運動状態情報決定部113aにおいて、通信電波情報に基づき、当該端末の位置変化に係る情報である端末運動状態情報(図2では速度ベクトルv_eの時系列情報)を決定し、
(b)端末運動状態情報(速度ベクトルv_eの時系列情報)と対象運動状態情報(図2では速度ベクトルv_mの時系列情報)とが対応する度合い(図2では対応度C(v_e,v_m))を算出し、当該対応する度合いに基づいて、端末運動状態情報に係る端末3と、対象運動状態情報に係る「対象」とが対応関係にあるか否かを判定し、端末3と「対象」との対応関係に係る情報である端末対象対応情報(図2では端末対象対応テーブル)を決定する。
【0078】
ここで、上記(a)の通信電波情報は、受信した電波の周波数の時系列情報、受信した電波の強度の時系列情報、通信に係る電波の放射向きの時系列情報、及び通信におけるラウンドトリップタイムの時系列情報のうちの少なくとも1つを含む。また、そこから決定される端末運動状態情報は、受信した電波の周波数の偏移、受信した電波の強度の時間当たりの変動、通信に係る電波の放射向きの時間当たりの変動、及び通信におけるラウンドトリップタイムの時間当たりの変動のうちの少なくとも1つから決定される、端末3の速度又は角速度に係る情報であることも好ましい。
【0079】
より具体的に本実施形態では、図2に示したように、自動車に搭載されて移動している端末3が、周波数f0_tの電波を発信し、この端末3と通信接続している基地局2は、この端末3から周波数(f0_t+Δf_t)の電波を受信する。対応関係決定部113の端末運動状態情報決定部113aは、この端末3の端末IDに受信電波周波数(f0_t+Δf_t)を対応付けた通信履歴である通信電波情報を取得し、周波数偏移分Δf_tの時系列情報から、周知のドップラー効果物体速度計測法を用いて、端末3の速度ベクトルv_eの時系列情報(端末運動状態情報)を生成する。
【0080】
一方、端末3を搭載した自動車は、その移動状態を含めカメラ21によって撮影されており、対象情報決定部112は、この自動車を含む環境情報として、この自動車を撮像した画像データを取得して、当該画像データに対し、所定の対象として予め設定されていた"自動車"の検出処理を実施し、端末3を搭載した自動車の検出位置の時系列情報を生成する。また次いで、この検出位置の時系列情報から変位(位置変化分)ベクトルΔl_mの時系列情報を生成し、当該情報から、単位時間当たりの変位ベクトルに相当する速度ベクトルv_mの時系列情報(対象運動状態情報)を生成するのである。
【0081】
この後、対応関係決定部113は、生成された端末3の速度ベクトルv_eの時系列情報と、検出された自動車(所定の対象)の速度ベクトルv_mの時系列情報とから、所定時間区間の各時点におけるベクトル差の大きさの逆数(1/|v_e-v_m|)を算出して、これらの値から対応度C(v_e,v_m)を決定する。対応関係決定部113は次いで、決定した対応度C(v_e,v_m)が所定の閾値C_thを超える場合(C>C_thである場合)、端末3と検出された自動車(所定の対象)とが対応関係にあると判定し、最後に、端末3の端末IDと、検出された自動車の対象IDとを対応付けて記録した端末対象対応テーブル(端末対象対応情報)を生成するのである。
【0082】
このように、本実施形態によれば、端末3と、端末3の存在し得る環境に存在する「対象」(図2では自動車)との対応関係を、端末3及び「対象」の速度(運動状態)を互いに比較することによって、決定可能となっている。すなわち、端末3及び「対象」における互いの位置関係に頼ることなく、それぞれの速度(運動状態)の比較から端末対象対応情報を決定することができ、特に、端末3が移動(運動)し得る端末であっても、その対応関係決定処理をより確実に実施することができるのである。
【0083】
以上、図2を用いて対応関係決定処理の一実施形態を説明したが、この実施形態では、受信した電波の周波数から速度に係る情報を生成している。これに対し、他の好適な実施形態として、端末運動状態情報を、(a)端末3から受信した電波の周波数の偏移、(b)端末3から受信した電波の強度(受信信号電力,RSSI)の時間当たりの変動、(c)端末3との通信に係る電波の放射向きの時間当たりの変動、及び(d)端末3との通信におけるRTTの時間当たりの変動のうちの少なくとも2つ(例えば4つ全て)のそれぞれから決定される複数の端末3の速度又は角速度に係る情報とすることも好ましい。
【0084】
この場合、対応度Cは、これら複数の端末3の速度又は角速度に係る情報の各々と、検出された「対象」の速度又は角速度に係る情報とが一致する度合い(例えば両ベクトル差の大きさの逆数)とすることができ、複数算出されることとなる。ここで、対応関係決定部113は、例えば、
(a)これら複数の対応度Cのうち所定の閾値C_th以上であるものの割合が所定値(例えば0.5)以上である場合に、または、
(b)これら複数の対応度Cの総和若しくは重み付けの総和が所定値以上である場合に、
端末3と検出された所定の対象とが対応関係にあるとの判定を行うことも好ましい。
【0085】
いずれにしても、このように複数の対応度Cを統合して端末3の対応関係決定処理を実施する実施形態では、速度又は角速度に係る情報が異なる手法によって多角的に推定されるので、様々な環境の状況下においても、端末3の対応関係決定処理の精度が維持される又は向上するのである。
【0086】
またさらに、他の好適な実施形態として、対応関係決定部113(図1)は、端末運動状態情報決定部113a(図1)で決定された端末位置情報と、対象情報決定部112(図1)で決定された対象位置情報とが一致する度合いである位置対応度(位置一致度合い)LCを算出し、上述した運動状態の対応度Cのみならず、位置対応度LCにも基づいて、端末3と検出された「対象」とが対応関係にあるか否かを判定することも好ましい。
【0087】
ここで、位置対応度LCは、例えば、所定時間区間の各時点における端末3の位置と所定の対象の位置との差の絶対値(距離)の逆数についての、当該所定時間区間での代表値(例えば平均値)とすることができる。また、対応関係決定部113は、例えば、運動状態の対応度Cが所定の閾値C_thを超え(C>C_thであり)、且つ位置対応度LCが所定の閾値LC_thを超える(LC>LC_thである)場合に、端末3と検出された「対象」とが対応関係にあるとの判定を行うことも好ましい。
【0088】
このように、位置対応度LCも勘案して端末3の対応関係決定処理を実施することによって、端末3と「対象」とのより確度の高い対応関係を決定することも可能となるのである。
【0089】
さらに、運動状態の対応度Cに関する他の好適な実施形態を説明する。この実施形態では、基地局2の周囲には少なくとも1つの基地局2が存在しており、各基地局2は、自らのカメラ21による環境情報から対象運動状態情報を決定し、さらに、自ら決定した対象運動状態情報を互いにやり取り可能となっている。
【0090】
ここで、対象情報決定部112(図1)は、周囲の基地局2で決定された対象運動状態情報を取得し、さらに、対応関係決定部113(図1)は、このように取得された対象運動状態情報と、決定された端末運動状態情報との対応度C'も算出し、自ら決定した対象運動状態情報の対応度Cだけでなく、この対応度C'にも基づいて、端末3と「対象」とが対応関係にあるか否かを判定することも好ましい。なおこの場合、既に説明したような、基地局2が複数のカメラ21と接続されている実施形態において実施される対応関係決定処理と同様の対応関係決定処理を実施することができる。またこれにより、ある端末3が、自らのカメラ21による環境情報の中に含まれず、結果的に、基地局2が当該端末3の対応関係決定処理に失敗してしまう、といった事態を回避することも可能となるのである。
【0091】
<対応関係決定処理2>
図3は、本発明に係る対応関係決定処理の他の実施形態を説明するための模式図である。なお、図3に示した対応関係決定処理では、「通信情報」は、通信状態情報を含み、「対象情報」は、対象状態情報としての対象通信状態情報であって、「対象」が端末3を含むならば当該「対象」との間で具現することになる通信状態に係る情報である対象通信状態情報を含んでいる。
【0092】
図3に示した実施形態において、対応関係決定部113は、端末通信状態情報(図3では受信信号電力変数E_tの時系列情報)と、対象通信状態情報(図3では受信電力相当変数E'_tの時系列情報)とが対応する度合い(図3では対応度C(E_t,E'_t))を算出し、当該度合いに基づいて、当該端末通信状態情報に係る端末3と、当該対象通信状態情報に係る「対象」とが対応関係にあるか否かを判定し、端末3と「対象」との対応関係に係る情報である端末対象対応情報(図3では端末対象対応テーブル)を決定する。
【0093】
ここで、上記の端末通信状態情報は、(a)端末3との通信接続の有無に係る情報、又は(b)端末3から受信された電波の強度に係る情報(例えば受信信号電力,RSSI(Received Signal Strength Indicator))とすることができる。
【0094】
一方、上記の対象通信状態情報は、上記の端末通信状態情報に合わせて、(a’)障害となる「対象」が検出された場合における当該障害となる「対象」の検出位置を用いて決定される、「対象」との通信接続の可否に係る情報、又は(b’)障害となる「対象」が検出された場合における当該障害となる「対象」の検出位置を用いて決定される電波の強度に係る情報、若しくは環境情報から対象電波情報推定モデルを用いて推定される、「対象」が端末3を含むならば「対象」から受信されることになる電波の強度に係る情報とすることができる。
【0095】
より具体的に本実施形態においては、図3に示したように、自動車に搭載されて移動している端末3は、基地局2との間で通信接続を確立しており、基地局2は、この端末3との通信に係る通信履歴情報を生成している。ここで、通信情報取得部111は、生成されたこの通信履歴情報に基づき、各時点tにおいて、端末3の端末ID(図3では003)と当該端末3から受信された電波信号の受信信号電力値とを対応付けて記録したレコードを含む受信信号電力テーブルを生成し、さらに、このテーブルから、端末3についての受信信号電力情報、すなわち受信信号電力変数E_tの時系列情報を生成する。
【0096】
一方、端末3を搭載した自動車は、その移動状態を含め基地局2のカメラ21によって撮影されている。対象情報決定部112は、この自動車を含む環境情報として、この自動車を撮像した画像データを取得して、当該画像データに対し、「対象」及び障害となる「対象」として予め設定されていた"自動車"の検出処理を実施し、端末3を搭載した自動車や、周囲を走行している他の(障害となる対象としての)自動車の各々における検出位置の時系列情報を生成する。
【0097】
ここで図3では、端末3を搭載した自動車には対象IDとして008が付与され、また、障害となる「対象」として検出された大型自動車(バス)には対象IDとして905が付与されて、これらの対象IDの下、これらの自動車の追跡処理が行われるのである。なお以下、対象IDが008である自動車(以下、自動車008と略称)を、端末3を含む可能性のある所定の「対象」として対象通信状態情報を生成する。
【0098】
次いで、対象情報決定部112は、
(a)所定の「対象」である自動車008と、基地局2(のアンテナ)とを結ぶ直線分を決定し、
(b)ある時間tにおいて、障害となる「対象」である大型自動車905が「当該直線分を軸とする円柱領域」を遮る度合いに係る上式(1)(R=(Sa∩Sb)/Sa)の遮蔽度合いRを算出し、C×(1-R)値(Cは電波伝搬条件に合わせて設定される定数)を受信電力相当変数E'_t値として、自動車008についての受信電力相当変数E'_tの時系列情報を生成する。
【0099】
この後、対応関係決定部113は、所定時間区間(t=k~k+Mの時間区間)の各時点tにおける端末3について生成された受信信号電力変数E_tの時系列情報と、同じ時間区間(t=k~k+Mの時間区間)の各時点tにおける自動車008について生成された受信電力相当変数E'_tの時系列情報との相互相関に相当する対応度C(E_t,E'_t)を、次式
(2) C=Σt=k k+ME_t*E'_t
を用いて算出する。ここで上式(2)において、Σt=k k+Mは、時点t(=k, k+1, …, k+M)についての総和(summation)を示す演算子である。
【0100】
対応関係決定部113は次いで、決定した対応度C(E_t,E'_t)が所定の閾値C_thを超える場合(C>C_thである場合)、端末3と自動車008(所定の「対象」)とが対応関係にあると判定し、最後に、端末3の端末ID(003)と、自動車008の対象ID(008)とを対応付けて記録したレコードを含む端末対象対応テーブル(端末対象対応情報)を生成するのである。
【0101】
このように、本実施形態の基地局2によれば、端末3と、端末3の存在し得る環境に存在する「対象」(図3では自動車008)との対応関係を、端末3及び「対象」についての受信電波の強度に係る情報(通信状態)を互いに比較することによって、決定可能となっている。すなわち、端末3及び「対象」における互いの位置関係に頼ることなく、それぞれの通信状態の比較から端末対象対応情報を決定することができ、特に、端末3が移動し得る端末であっても、その対応関係決定処理をより確実に実施することができるのである。
【0102】
以上、図3を用いて対応関係決定処理の一実施形態を説明したが、この実施形態では、端末3及び所定の対象の対応度C(E_t,E'_t)(以下、電波強度対応度とも称する)に基づいて両者の対応関係を判定している。これに対し勿論、上述した通信接続有無変数B_tと通信接続可否変数B'_tとの相互相関として同様に算出される対応度C(B_t,B'_t)(以下、通信接続対応度とも称する)に基づいて、両者の対応関係を判定してもよい。
【0103】
またさらに、他の好適な実施形態として、端末3及び「対象」について、端末通信状態情報に、通信接続有無変数B_tの時系列情報も受信信号電力変数E_tの時系列情報も含め、さらに、対象通信状態情報に、通信接続可否変数B'_tの時系列情報も受信電力相当変数E'_tの時系列情報も含めて、通信接続対応度C(B_t,B'_t)及び電波強度対応度C(E_t,E'_t)を算出した上で、対応関係決定部113(図1)は、
(a)通信接続対応度C(B_t,B'_t)及び電波強度対応度C(E_t,E'_t)のうち、両方が、若しくはいずれか一方が、所定の閾値C_th以上である場合に、又は、
(b)通信接続対応度C(B_t,B'_t)及び電波強度対応度C(E_t,E'_t)の和若しくは重み付けした和が、所定閾値以上である場合に、
端末3と検出された「対象」とが対応関係にあるとの判定を行ってもよい。また、上記(a)の場合において、通信接続対応度C(B_t,B'_t)及び電波強度対応度C(E_t,E'_t)のそれぞれに対し、互いに異なる所定の閾値CB_th及びCE_thを適用して判定を行うことも好ましい。
【0104】
このように、互いに異なる通信状態について算出された2つの対応度Cを統合して端末3の対応関係決定処理を行う実施形態では、通信状態に関し互いに異なる手法によって多角的に対応関係を推定することになり、その結果、様々な通信環境下においても、端末3の対応関係決定処理の精度が維持される又は向上するのである。
【0105】
またさらに、他の好適な実施形態として、対応関係決定部113(図1)は、
(a)端末運動状態情報決定部113a(図1)で決定された端末位置情報と、
(b)対象情報決定部112(図1)で決定された対象位置情報と
が一致する度合いである位置対応度(位置一致度合い)LCを算出し、上述した通信状態の対応度(通信接続対応度及び/又は電波強度対応度)Cのみならず、位置対応度LCにも基づいて、端末3と検出された「対象」とが対応関係にあるか否かを判定することも好ましい。
【0106】
ここで、位置対応度LCは、例えば、所定時間区間の各時点における端末3の位置と「対象」の位置との差の絶対値(距離)の逆数についての、当該所定時間区間での代表値(例えば平均値)とすることができる。また、対応関係決定部113は、例えば、
(a)通信状態の対応度C(通信接続対応度C(B_t,B'_t)及び/又は電波強度対応度C(E_t,E'_t))が、所定の閾値C_thを超え(C>C_thであり)、且つ
(b)位置対応度LCが所定の閾値LC_thを超える(LC>LC_thである)場合に、
端末3と検出された「対象」とが対応関係にあるとの判定を行うことも好ましい。なお上記(a)において、通信状態の対応度CとしてC(B_t,B'_t)及びC(E_t,E'_t)の両方が採用される場合は、いずれもが所定の閾値C_thを超えることが条件となる。このように、位置対応度LCも勘案して端末3の対応関係決定処理を実施することによって、より確度の高い対応関係を決定することも可能となるのである。
【0107】
さらに、通信状態の対応度Cに関する他の好適な実施形態を説明する。この実施形態では、基地局2の周囲には複数の基地局2が存在しており、各基地局2は、自らのカメラ21による環境情報から対象通信状態情報(通信接続可否変数B'_t及び/又は受信電力相当変数E'_tの時系列情報)を決定し、さらに、この自ら決定した対象通信状態情報を互いにやり取り可能となっている。
【0108】
ここで、対象情報決定部112(図1)は、周囲の基地局2で決定された対象通信状態情報(B'_t及び/又はE'_tの時系列情報)を取得し、さらに、対応関係決定部113(図1)は、このように取得された対象通信状態情報と、決定された端末通信状態情報(通信接続有無変数B_t及び/又は受信信号電力変数E_tの時系列情報)との対応度(通信接続対応度及び/又は電波強度対応度)C'も算出し、自ら決定した対象通信状態情報の対応度Cだけでなく、この対応度C'にも基づいて、端末3と「対象」とが対応関係にあるか否かを判定することも好ましい。
【0109】
なおこの場合、既に説明したような、基地局2が複数のカメラ21と接続されている実施形態において実施される対応関係決定処理と同様の対応関係決定処理を実施することができる。またこれにより、ある端末3が、自らのカメラ21による環境情報の中に含まれず、結果的に基地局2が当該端末3の対応関係決定処理に失敗してしまう、といった事態を回避することも可能となるのである。
【0110】
<対応関係決定処理3>
図4は、本発明に係る対応関係決定処理の更なる他の実施形態を説明するための模式図である。なお、図4に示した対応関係決定処理では、「通信情報」は、通信方式情報又は通信種別情報を含み、「対象情報」は、対象種別情報を含んでいる。
【0111】
図4に示した実施形態において、対応関係決定部113は、通信方式情報又は通信種別情報(図4では5Gに係る通信方式種別)と、対象種別情報(図4では"自動車","人物","段ボール"等の対象のクラス)とを予め対応付けた情報である種別対応関係情報(図4では種別対応関係テーブル)に基づいて、当該通信方式情報又は通信種別情報に係る端末3と、当該対象種別情報に係る「対象」とが対応関係にあるか否かを判定し、端末3と「対象」との対応関係に係る情報である端末対象対応情報(図4では端末対象対応テーブル)を決定する。
【0112】
ここで、上記の種別対応関係情報は、一般の通信エリアに共通した汎用のものとして準備されてもよいが、例えば、街中エリアや工場敷地内エリアといったような、端末を同定すべき所定のエリアにおける通信や対象の状況に合わせ、設定者が通信種別とその対象種別とを予め対応付けて設定したものであることも好ましい。
【0113】
より具体的に本実施形態においては、図4に示したように、基地局2は、
(a)段ボールに貼付された、端末IDが001である端末3_001、
(b)自動車に搭載された、端末IDが002である端末3_002、及び
(c)人物に所持された、端末IDが003である端末3_003
と通信を行っている。
【0114】
ここで、通信情報取得部111は、各端末との間で行っている通信方式情報を取得し、端末3_001(端末ID=001)に通信種別「mMTC」を対応付け、端末3_002(端末ID=002)に通信種別「URLLC」を対応付け、さらに端末3_003(端末ID=003)に通信種別「eMBB」を対応付けた通信方式テーブル(通信方式情報)を生成する。
【0115】
一方、対象情報決定部112は、カメラ21による画像データから、上記(b)の自動車、及び上記(c)の人物、及び上記(a)の段ボールを、それぞれ"自動車"、"人物"及び"段ボール"として検出し、それぞれに対象IDとして001、002及び003を付与する。
【0116】
次いで、対象情報決定部112は、これらの処理結果をまとめることにより、自動車(対象ID=001)に対象種別「自動車」を対応付け、人物(対象ID=002)に対象種別「人物」を対応付け、さらに段ボール(対象ID=003)に対象種別「段ボール」を対応付けた対象種別テーブル(対象種別情報)を生成する。
【0117】
最後に、対応関係決定部113は、(図3に示したような)対象種別と通信方式とが一対一に対応付けられた種別対応関係情報である種別対応関係テーブルを用いて、生成された通信方式テーブル及び対象種別テーブルから、端末対象対応情報である端末対象対応テーブルを生成するのである。
【0118】
ここでさらに具体的に、対応関係決定部113は、
(a1)通信方式テーブルにおいて、同定対象である1つの端末(例えば端末3_001)の端末ID(例えば端末ID=001)に対応付けられた1つの通信方式(例えば「mMTC」)を読み出し、
(a2)図4の種別対応関係テーブルにおいて、上記(a1)で読み出した1つの通信方式(例えば「mMTC」)と対応関係にある1つの対象種別(例えば「段ボール」)を読み出し、
(a3)対象種別テーブルにおいて、上記(a2)で読み出した1つの対象種別(例えば「段ボール」)が対応付けられた1つの対象ID(例えば対象ID=003)を読み出し、
(a4)上記(a1)における同定対象である1つの端末(例えば端末3_001)の端末ID(例えば端末ID=001)と、上記(a3)で読み出した1つの対象ID(例えば対象ID=003)とを対応付けて記録した1つのレコードを生成し、
(a5)同定対象である端末(端末3_001、端末3_002及び端末3_003)毎に、上記(a1)~(a4)のステップを繰り返して、(例えば図4に示したような)端末対象対応テーブルを生成することも好ましい。
【0119】
ちなみに、対応関係決定部113は、上記(a1)~(a4)のステップとは真逆の手順で端末対象対応テーブルを生成することもできる。すなわち、
(a1’)対象種別テーブルにおいて、端末同定先の候補である1つの対象(例えば自動車)の対象ID(例えば対象ID=001)に対応付けられた1つの対象種別(例えば「自動車」)を読み出し、
(a2’)図4の種別対応関係テーブルにおいて、上記(a1’)で読み出した1つの対象種別(例えば「自動車」)と対応関係にある1つの通信方式(例えば「URLLC」)を読み出し、
(a3’)通信方式テーブルにおいて、上記(a2’)で読み出した1つの通信方式(例えば「URLLC」)が対応付けられた1つの端末ID(例えば端末ID=002)を読み出し、
(a4’)上記(a1’)における端末同定先の候補である1つの対象(例えば自動車)の対象ID(例えば対象ID=001)と、上記(a3’)で読み出した1つの端末ID(例えば端末ID=002)とを対応付けて記録した1つのレコードを生成し、
(a5’)端末同定先の候補である対象(自動車、人物及び段ボール)毎に、上記(a1’)~(a4’)のステップを繰り返して、(図4に示したような)端末対象対応テーブルを生成することも好ましい。
【0120】
以上、種別対応関係テーブル(種別対応関係情報)が通信方式と対象種別とについて一対一の対応付けがなされた情報である場合の処理を説明した。以下これに対し、種別対応関係テーブル(種別対応関係情報)の少なくとも一部が一対多、多対一又は多対多の対応付けに係る情報である場合の処理について説明を行う。
【0121】
この場合においても基本的に、種別対応関係テーブルに基づき、通信方式テーブル(通信方式情報)と対象種別テーブル(対象種別情報)との対応関係を調査する処理を行うことになるが、対応関係決定部113(図1)は、1つの好適な手法として、対応が一意に決定される端末3及び対象の組から順次対応関係を決定していく貪欲アルゴリズムによって、端末対象対応テーブルを生成することも好ましい。
【0122】
具体的に対応関係決定部113は、
(a)対象種別テーブル(又は通信方式テーブル)において、端末同定先の候補である1つの対象の対象ID(又は同定対象である1つの端末3の端末ID)に対応付けられた対象種別(又は通信方式)を読み出し、
(b)種別対応関係テーブルにおいて、この読み出した対象種別(又は通信方式)と対応関係を有する通信方式(又は対象種別)を読み出し、
(c)通信方式テーブル(又は対象種別テーブル)において、この読み出した通信方式(又は対象種別)が対応付けられた端末ID(又は対象ID)を特定する
との処理(a)~(c)を、特に処理(b)及び(c)のステップにおいて読み出し(特定)を一意に行うことが可能な対象ID(又は端末ID)について順次、実施していくことも好ましい。
【0123】
また他の好適な手法として、対応関係決定部113は、グラフ理論の最大流問題を解決可能な組合せ最適化アルゴリズムによって、端末対象対応テーブルを生成してもよい。具体的には、
(a)通信方式テーブルの各要素(レコード)と、対象種別テーブルの各要素(レコード)とをノードとした2部グラフを構成し、
(b)上記(a)の2部グラフを間に挟むソースソード(始点ノード)及びシンクノード(終点ノード)を設けて、各リンクの最大流量が規定された最大流問題(ソースからシンクまでの最大合計流量を求める問題)のグラフを設定し、
(c)グラフ理論の分野で周知であるフォード・ファルカーソンのアルゴリズム(Ford-Fulkerson algorithm)を用いて、通信方式テーブルの各要素(レコード)と、対象種別テーブルの各要素(レコード)との対応関係を決定する(端末対象対応テーブルを生成する)
ことも好ましい。また勿論、他の組み合わせ最適化アルゴリズムを用いて端末対象対応テーブルを生成することも可能である。
【0124】
<優先度決定処理>
図1の機能ブロック図に戻って、優先度決定部114は、各端末3について、基地局2との通信接続制御を優先する度合いである「優先度」を決定する。ここで、「優先度」は、少なくとも当該端末3に対応すると決定された「対象」についての「対象情報」に基づき決定されるが、当該端末3についての「通信情報」にも基づいて決定することも好ましい。
【0125】
また好適な1つの実施形態として、優先度決定部114は、
(a)優先度決定対象である端末3に対応すると決定された「対象」についての「対象情報」に含まれる対象関連項目毎に予め設定された優先度スコアを総合して、例えば加算して、当該端末3の優先度を決定することも好ましく、また、
(b)優先度決定対象である端末3についての「通信情報」に含まれる通信関連項目毎に予め設定された優先度スコアを総合して、例えば加算して、当該端末3の優先度を決定することも好ましい。
【0126】
ここで本実施形態において、優先度は、実数値(整数値でもよい)をとり、大きな値であるほど、より優先して通信接続制御をすべきことを示すものとなっている。または、優先度は、予め設定しておいた優先度合いを示す記号やタグであってもよい。いずれにしても、端末3間における通信接続制御の優先関係を表し得る指標であれば様々なものが、優先度として採用可能である。
【0127】
また、優先度決定に用いる上記の「対象情報」には、「対象関係情報」が含まれていることが好ましい。「対象関係情報」は、すでに述べたように、
・(端末3と対応関係にあると決定された)「対象」における他の対象による(基地局2との間の電波伝搬路の)遮蔽の発生の有無、・当該遮蔽の発生までの時間、・当該遮蔽の継続時間、・当該遮蔽の程度、及び・当該遮蔽の発生の確からしさのうちの少なくとも1つと、
・(端末3と対応関係にあると決定された)「対象」と他の対象との衝突若しくは接触の発生の有無、・当該衝突若しくは接触の発生までの時間、・当該衝突若しくは接触の継続時間、・当該衝突若しくは接触の程度、及び・当該衝突若しくは接触の発生の確からしさのうちの少なくとも1つと
のうちの一方又は両方を含む情報となっている。
【0128】
このような「対象関係情報」に基づき決定された優先度を用いて通信接続制御を行うことによって、(特に5Gを用いた多端末接続状況や自動運転車等の制御状況等における)通信電波の遮蔽や制御対象の衝突・接触事故等を極力回避することも可能となる。言い換えると、そのような事態が発生する可能性の高い端末3に対しより高い優先度を付与し、当該端末3の基地局2との通信接続をより優先して制御することによって、そのような事態の発生が抑制可能となるのである。
【0129】
図5は、本発明に係る優先度決定処理の一実施形態を説明するための模式図である。
【0130】
図5に示した実施形態では、「対象関係情報」のうち、優先度決定対象である端末3と対応関係にあると決定された「対象」における、所定時間後であるT秒後(例えば0.5秒後)での他の対象による遮蔽の発生の有無に係る情報(遮蔽発生有無情報)を用いて、優先度が決定されている。
【0131】
具体的に図5において、優先度決定部114(図1)は、
(a)基地局2Aと通信接続している端末3Aに対し、対応する自動車Aの遮蔽発生有無情報が「T秒後に(大型自動車Aによる)遮蔽有り」であることを受け、優先度スコアとして+100を付加し、一方、
(b)同じく基地局2Aと通信接続している端末3Bに対し、対応する自動車Bの遮蔽発生有無情報が「T秒後に遮蔽無し」であることを受け、優先度スコアとして0を付加する(優先度を増分しない)。
【0132】
このような優先度スコアの付加処理によって、端末3Aの優先度は、上記(a)の優先度スコア(=+100)以外に優先度スコアの付加がなければ、最終的に100に決定される。一方、端末3Bの優先度は、同じく上記(b)の優先度スコア(=0)以外に優先度スコアの付加がなければ、最終的に0に決定される。
【0133】
その結果、将来通信電波の遮蔽が発生すると予測された端末3Aについての通信接続制御が、遮蔽発生はないとされた端末3Bよりも優先して実施されることになる。例えば、より優先度の高い端末3Aの通信接続先である基地局を、基地局2Aから基地局2Bへ優先的に切り替え(より安全な基地局リソースを優先的に配分して)、基地局2Aのままだと切断されてしまう端末3Aの無線通信リンクを、優先して確保することが可能となるのである。
【0134】
ここで、このような対象関係情報に基づいて決定される優先度(を構成する優先度スコア)は、上述したように「遮蔽発生有り」の場合により大きな値とすることができるが、その他にも、遮蔽の発生までの時間が短いほど、遮蔽の継続時間が長いほど、遮蔽の程度(例えば上式(1)の遮蔽度合いR)が大きいほど、さらには遮蔽予測の確からしさが高いほど、優先度(優先度スコア)をより大きな値に設定することも好ましい。
【0135】
また、他の対象関係情報に係るものとはなるが、優先度(優先度スコア)は、衝突・接触有無情報が「「対象」と他の対象との衝突若しくは接触の発生有り」の場合により大きな値とすることができ、さらに、衝突若しくは接触の発生までの時間が短いほど、衝突若しくは接触の継続時間が長いほど、衝突若しくは接触の程度(例えば互いを結ぶ軸に垂直な互いの断面積の重畳度合)が大きいほど、さらには衝突若しくは接触の発生の確からしさが高いほど、優先度(優先度スコア)をより大きな値に設定することも好ましいのである。
【0136】
さらに、例えば端末3Aが(特に自動運転車である場合に)、
(a)対応する自動車Aの遮蔽発生有無情報が「T秒後に遮蔽有り」であることによる優先度スコア(=+100)と、
(b)対応する自動車Aの衝突・接触有無情報が「T秒後に衝突若しくは接触有り」であることによる優先度スコア(=+100)と
を付加された場合、結局、端末3Aの優先度は200(=100+100)となり、緊急事態に陥る可能性の高い端末3Aは、さらに優先して通信接続制御を受けることが可能となる。またこれにより、端末3Aは、例えば自動車Aの制御関連信号を途切れることなくサーバとやり取りすることができ、より確実に緊急事態を脱することも可能となるのである。
【0137】
また、優先度決定処理に関する他の実施形態として、優先度決定部(図1)は、
(a)「対象」についての「通信情報」に含まれる通信関連項目毎に予め設定された「重み」を用い、優先度決定対象である端末(3A,3B,・・)に対応すると決定された「対象」についての「対象情報」に含まれる対象関係情報に対し予め設定された優先度スコアを重み付けすることによって、当該端末(3A,3B,・・)の優先度を決定する
ことも好ましく、また、
(b)「対象」についての「対象情報」に含まれる、対象関係情報以外の対象関連項目毎に予め設定された「重み」を用い、優先度決定対象である端末(3A,3B,・・)に対応すると決定された「対象」についての「対象情報」に含まれる対象関係情報に対し予め設定された優先度スコアを重み付けすることによって、当該端末(3A,3B,・・)の優先度を決定する
ことも好ましい。
【0138】
例えば図5に示したように、「通信情報」に通信方式情報が含まれている場合に、
(a)通信方式情報が「URLLC」であるならば、「重み」は×1.0に設定され、
(b)通信方式情報が「eMBB」であるならば、「重み」は×0.7に設定され、
(c)通信方式情報が「mMTC」であるならば、「重み」は×0.3に設定されてもよい。
【0139】
この場合例えば、上述した優先度が200(=100+100)である端末3Aについて、端末3Aについての通信方式情報が「URLLC」であるならば、端末3Aの優先度は、最終的に200(=(100+100)×1.0)となる。その結果、高い信頼性が求められ且つ制御の遅延が許されない端末3Aは、優先度がその「重み」分だけ縮小する他の通信方式の端末と比較して、より優先的に必要な通信接続制御を享受する可能性が十分に高まるのである。
【0140】
なお勿論、このような「重み」は、上記の通信方式情報以外の「通信情報」に含まれる通信関連項目について設定されてもよい。また、「対象情報」に含まれる対象関係情報以外の対象関連項目について設定されることも可能である。例えば1つの好適な例として、「通信情報」に含まれる端末種別情報(例えばスマートフォン、自動運転車、ロボット等の種別を特定した情報)によって「重み」を設定することもできる。例えば、対象となる通信環境において、ロボットの通信接続制御を優先すべき状況であるならば、端末種別情報が「ロボット」である端末(3A,3B,・・)の「重み」をより大きく設定することも好ましい。
【0141】
さらに、このような「重み」によって最終的な値が決定される優先度(優先度スコア)は、上述したような対象関係情報(例えば遮蔽発生有無情報や衝突・接触有無情報)についてのものに限定されるものではない。しかしながらすでに説明したように、優先度は、少なくとも対象関係情報に基づいて決定されることが好ましいので、以上に説明したような「重み」は、対象関係情報に基づく優先度スコアを含む(当該優先度スコアの加算されている)優先度に対して使用されることがより好ましいものとなっている。
【0142】
図6は、本発明に係る優先度決定処理の他の実施形態を説明するための模式図である。
【0143】
最初に、図6(A)に示した実施形態では、「対象情報」のうち、「対象」の速度の時系列情報を含む対象運動状態情報を用いて優先度が決定されている。具体的に、優先度決定部114(図1)は、
(a)基地局2Aと通信接続している端末3Aに対し、対応する自動車Aの対象運動状態情報が「速度は60km/時」であることを受け、優先度スコアとして(時速値である)+60を付加し、一方、
(b)同じく基地局2Aと通信接続している端末3Bに対し、対応する自動車Bの対象運動状態情報が「速度は10km/時」であることを受け、優先度スコアとして(時速値である)+10を付加する。
【0144】
このような優先度スコアの付加処理によって、端末3Aの優先度は、上記(a)の優先度スコア(=+60)以外に優先度スコアの付加がなければ、最終的に60に決定される。一方、端末3Bの優先度は、同じく上記(b)の優先度スコア(=+10)以外に優先度スコアの付加がなければ、最終的に10に決定される。
【0145】
その結果、速度がより大きい故に将来(遮蔽や衝突等の)緊急事態の発生し易いと判断される端末3Aについての通信接続制御が、速度のより小さな端末3Bよりも優先して実施されることになる。例えば、より優先度の高い端末3Aの通信接続先を、基地局2Aから基地局2Bへ優先的に切り替え(より安全な基地局リソースを優先的に配分して)、基地局2Aのままだと切断されてしまう可能性を有する端末3Aの無線通信リンクを、優先して確保することが可能となるのである。
【0146】
ここで本実施形態ではさらに、図6(B)に示したように、「対象関係情報」のうち、優先度決定対象である端末3と対応関係にあると決定された「対象」における、所定時間後であるT秒後(例えば0.5秒後)での他の対象との衝突若しくは接触の発生の有無に係る情報(衝突・接触有無情報)を用いて、最終的に優先度が決定される。
【0147】
具体的に図6(B)において、優先度決定部114(図1)は、
(a)基地局2Aと通信接続している端末3Aに対し、対応する自動車Aの衝突・接触有無情報が「T秒後に衝突若しくは接触無し」であることを受け、優先度スコアとして0を付加し(優先度を増分せず)、一方、
(b)同じく基地局2Aと通信接続している端末3Bに対し、対応する自動車Bの衝突・接触有無情報が「T秒後に(自動車Cとの)衝突若しくは接触有り」であることを受け、優先度スコアとして+100を付加する。
【0148】
このような優先度スコアの付加処理によって、端末3Aの優先度は、最終的に60(=60+0)に決定される。一方、端末3Bの優先度は、最終的に110(=10+100)に決定される。その結果、速度はより小さいが衝突若しくは接触の危険性を有する端末3Bについての通信接続制御が、速度はより大きいが衝突若しくは接触の危険性は無いとされる端末3Aよりも優先して実施されることになる。例えば、より優先度の高い端末3Bの通信接続先として、すでに接続している基地局2Aとともに基地局2Bも追加し、これにより、一方の無線通信リンクが切断されても通信接続を維持することが可能となるのである。
【0149】
なお、例えば端末3Bについて、上述したように「T秒後に衝突若しくは接触有り」との判断をした後、「T秒後に衝突若しくは接触無し」との判断をした際、端末3Bの優先度110から、加算した優先度スコア分を減算し、最終的に優先度を10(=110-100)とすることも好ましい。
【0150】
以上、対象運動状態情報(速度情報)の優先度スコアと、対象関係情報(衝突・接触有無情報)の優先度スコアとを総合して最終的な優先度を決定する処理を説明したが、勿論、他の優先度スコアを総合して優先度を決定することも可能である。すなわち、「通信情報」に含まれる通信関連項目、及び「対象情報」に含まれる対象関連項目のうちから2つ又は3つ以上の項目を設定し、各項目についての優先度スコアを総合(加算)して優先度を決定することも好ましい。
【0151】
例えば、上述した速度情報の優先度スコア、及び衝突・接触有無情報の優先度スコアに加え、「対象情報」に含まれる対象密度情報(「対象」を中心とした所定範囲内に存在する他の対象の密度(密集度))についての優先度スコアであって、当該密度が高いほど大きな値をとるように設定された優先度スコアも合わせて(加算して)、優先度を決定することも好ましい。例えば、ある端末3を中心とした半径5mの円範囲内に他の端末が10台存在している場合、当該端末3に対し優先度スコアとして+10を付加することも好ましい。
【0152】
図7は、本発明に係る優先度決定処理の更なる他の実施形態を説明するための模式図である。ここで、図7に示した実施形態では、「対象情報」に含まれる対象種別情報を用いて、優先度が決定されている。
【0153】
具体的に、優先度決定部114(図1)は予め、通信接続制御を優先すべき対象種別「ロボット」の優先度スコアを+100に設定し、対象種別「人物(歩行者)」の優先度スコアを+0に設定しておく。次いで図7に示した状況において、ロボットに搭載された端末3A、3D、3E、3F及び3Iの優先度を(他の優先度スコアがない場合に)100に決定し、一方、人物(歩行者)に携帯された端末3B、3C、3G及び3Hの優先度を(他の優先度スコアがない場合に)0に決定する。
【0154】
このような優先度決定処理によって、通信接続制御を優先すべきロボットに搭載された端末との無線通信リンクを、優先して確保することが可能となるのである。例えば、当初基地局2Aに接続されている端末3A~3Iのうち、ロボットに搭載された端末3A、3D、3E、3F及び3Iについては追加で基地局2Bにも接続させ、これにより、例えば大型自動車Aによる将来の通信電波の遮蔽にも対処することが可能となるのである。
【0155】
なお、上述したような対象種別に基づく優先度スコアは、予め対象種別と優先度スコアとの対応テーブルを準備しておき、この対応テーブルを用いて決定してもよい。また変更態様として、予め特定の「対象」を監視又は制御対象として登録しておき、さらに当該「対象」に係る優先度スコアを予め設定しておいて、当該「対象」の対象種別が検出された際、当該「対象」に対応する端末3に対し、設定しておいた優先度スコアを付加することも好ましい。
【0156】
また、対象情報決定部112(図1)において自動車の種別(例えば、乗用車、バス、救急車や、消防車等)も認識可能な場合に、乗車定員の多い種別の自動車(例えばバス)に対し、より大きい優先度スコアを付与したり、所定の種別の、例えば緊急用・公務用の自動車(例えば救急車や消防車)に対し、より大きい優先度スコアを付与したりすることも好ましい。さらに、対象情報決定部112(図1)において自動車の運転者の"年齢層"も認識可能な場合に、自動車の運転者が高齢層であるほど、当該自動車に対応した端末3に対しより大きな優先度スコアを付加することも可能である。
【0157】
また、優先度決定部114(図1)は、以上に説明したような対象種別の他にも、「通信情報」に含まれる端末種別情報に基づいて優先度を決定してもよい。例えば、端末種別が「スマートフォン」であれば、対応する端末3に対し優先度スコア+10を付加し、また、端末種別が「自動運転車」であれば、対応する端末3に対し優先度スコア+100を付加することも好ましい。
【0158】
さらに、優先度決定部114(図1)は、「通信情報」に含まれる端末状態情報に基づいて優先度を決定してもよい。例えば、端末状態が「自律運航制御モード」であれば、対応する端末3に対し優先度スコア+100を付加し、また、端末状態が「環境監視制御モード」であれば、対応する端末3に対し優先度スコア+10を付加することも好ましい。
【0159】
またさらに、公知のQoS優先制御で用いられるQoS識別子(通信品質情報)に基づき優先度を決定することもできる。例えば、QoS識別子によって優先すべき通信であると指定された通信に係る端末3に対し、より大きな優先度スコアを付加してもよい。また、上述したように5Gの通信方式種別に基づき優先度を決定することも好ましい。例えば、通信方式「URLLC」に係る端末3に対し最も大きい優先度スコアを付加し、通信方式「eMBB」に係る端末3には中間の大きさの優先度スコアを付加し、通信方式「mMTC」に係る端末3に対しては最も小さい優先度スコアを付加することができる。
【0160】
図8は、本発明に係る優先度決定処理の更なる他の実施形態を説明するための模式図である。
【0161】
ここで、図8(A)及び(B)に示した実施形態は、対応関係決定部113(図1)で決定された端末対象対応情報において、端末3に対応する可能性を有する「対象」である対応対象候補が複数存在している状況のものとなっている。ちなみに、このような端末3と「対象」とを一対一に対応付けできない状況は、通信環境における端末3や「対象」の混雑の具合い等によっては、少なからず発生し得る。
【0162】
このような状況において、本実施形態の優先度決定部114(図1)は、複数の対応対象候補の各々に対し、当該対応対象候補が端末3に真に対応するものであるならば決定すべき優先度を仮優先度として決定し、このうちで最も高い仮優先度を、当該端末3の優先度に決定するのである。
【0163】
具体的には図8(A)において、基地局2Aに接続している端末3Aについての対応対象候補として、自動車Aと自動車Bとが決定されている。ここで、自動車の速度に基づき優先度スコアを付与する設定において、それぞれ速度60km/時及び速度10km/時である自動車A及び自動車Bに対し、それぞれ例えば優先度スコア+60及び+10が付加され、他の優先度スコアがない場合において、それぞれの仮優先度が60及び10に決定される。次いで、仮優先度の最も高い(仮優先度が60(>10)である)自動車Aを端末3Aに対応する「対象」として、端末3Aの優先度が60に決定されるのである。
【0164】
またこの後、図8(B)に示したように、この優先度60に基づいて、例えば端末3Aの通信接続先を基地局2Aから基地局2Bに切り替えるといったような通信接続制御が実施されるのである。
【0165】
ここで、端末3Aが実際に自動車Aに搭載された端末である場合、基地局2Bへの切り替えによって、自動車Aの速度が大きい故に右折待ちの大型自動車Aによる通信電波の遮蔽を受ける可能性が高くなっている状況を覆し、端末3Aの無線通信リンクは維持されることになる。一方、端末3Aが実際には自動車Bに搭載された端末である場合には、基地局2Bへの切り替えによって大型自動車Aによる遮蔽を受ける可能性が生じるものの、自動車Bの速度が小さい分、無線通信リンクが切断されている間の移動量は自動車Aよりも短くなる可能性が高いので、その間に衝突や接触等が生じる危険性は、自動車Aで無線通信リンクが切断される場合と比較してより低いことが見込まれるのである。
【0166】
以上、優先度決定処理についての種々の実施形態を説明したが、このように決定された優先度は、逐次的に又は定期的に(例えば0.5秒毎に)更新される「対象情報」や「通信情報」に合わせ、逐次的に又は定期的に(例えば0.5秒毎に)更新されてもよい。また、優先度の更新間隔又は更新周期、さらには「対象情報」や「通信情報」の更新間隔又は更新周期は、過去の優先度の実績に応じ、高い優先度のものほどより短い期間とすることも可能である。
【0167】
<通信接続制御処理>
図1の機能ブロック図に戻って、通信制御部115の接続制御部115aは、決定された端末3の優先度に基づいて、通信環境内に存在する複数の端末3の各々における基地局2との接続についての制御を行う。
【0168】
具体的に、接続制御部115aは例えば、優先度の高い端末3から順に、基地局リソースを割り当て、優先度の高い端末3の無線通信リンクの確保を優先してもよい。または、各端末3に対し、その優先度の高さに応じた基地局リソースを配分することも可能である。例えば、上述した図7の実施形態において、優先度が100である(ロボットに搭載された)端末3A、3D、3E、3F及び3Iについては、基地局リソース全体の20%ずつを配分し、これらの端末の通信接続を優先して確保することも好ましい。
【0169】
ちなみに、基地局リソースとは、以下のような制約を持つ通信リソースとなっている。
(a)制御信号や基地局の信号処理能力によって決まる、一度に切り替え可能な端末数、
(b)切替先基地局での混雑状況によって決まる、割り当て可能な無線リソース分、及び
(c)基地局の信号処理能力によって決まる、基地局における端末の同時接続数
【0170】
また、好適な実施形態として、接続制御部115aは、接続制御先の端末3に対応する「対象」についての対象情報、特に対象関係情報にも基づいて、当該端末3の通信接続制御を実施することも好ましい。
【0171】
例えば、その優先度に応じて基地局2の切り替え制御を行おうとしている端末3について、対象関係情報が「T秒後に遮蔽発生有り」である場合に、基地局2群の設置位置を含むマップを用いて、当該端末3や関係する対象の位置情報から、T秒後に当該遮蔽を回避可能となる基地局2を特定し、特定した基地局2への切り替え制御を実施してもよい。または、当該端末3の現状接続先である基地局2に加えて、当該端末3を、上記の特定した基地局2へも更に接続する制御を実施することも好ましい。この場合、具現する複数の無線通信リンクのうちの1つでも当該遮蔽を回避できれば、当該端末3の通信接続は維持されることになるのである。
【0172】
また、接続制御部115aは、逐次的に又は定期的に(例えば0.5秒毎に)更新される優先度に合わせ、各端末3の通信接続制御を逐次的に又は定期的に(例えば0.5秒毎に)実施してもよい。
【0173】
さらに、各時点における端末3の優先度や通信接続先の基地局2の情報を含む通信接続制御結果や、取得・決定された「通信情報」及び「対象情報」、さらには決定された対応関係情報等を束ねて特徴量化した教師データを用いて、好適な通信接続制御の態様を出力可能な機械学習モデルを構築しておくことも好ましい。この場合、接続制御部115aは、当該機械学習モデルを利用して、通信接続制御を実施することができるのである。
【0174】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、少なくとも「対象情報」を反映した「優先度」を利用することによって、通信電波の遮蔽が発生し得る状況であって通信リソースに限りがある状況において、「優先度」の高い端末の接続制御をより優先することにより(例えば優先的に通信リソースを割り当てることによって)、複数の端末と基地局との通信接続をより適切に制御することができる。例えば、多数の端末による多数の無線通信リンクが存在する混雑時においても、「優先度」の高い端末の通信接続を優先的に確保し、さらに、全体における通信速度低下や通信断を大幅に抑制することも可能となるのである。
【0175】
また、このような本発明による優先度を用いた通信制御処理は特に、5G(第5世代移動通信システム)における通信路遮蔽物による通信障害の問題を解決したり、市街地等の多端末環境において5G本来の通信品質や低遅延特性を実現したサービスを提供したりすることに、大いに貢献するものとなっている。
【0176】
以上に述べた本発明の種々の実施形態において、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【符号の説明】
【0177】
1 中継装置(通信中継装置)
101 通信インタフェース
102 通信履歴情報蓄積部
103 カメラ画像蓄積部
111 通信情報取得部
112 対象情報決定部
112a 環境情報取得部
113 対応関係決定部
113a 端末運動状態情報決定部
114 優先度決定部
115 通信制御部
115a 接続制御部
2、2A、2B 基地局
21 カメラ(センサ)
3、3_001、3_002、3_003、3A、3B、3C、3D、3E、3F、3G、3H、3I 端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8