(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】霧環境形成装置及び霧環境形成方法
(51)【国際特許分類】
G01N 17/00 20060101AFI20231120BHJP
F24F 6/08 20060101ALI20231120BHJP
F24F 6/12 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
G01N17/00
F24F6/08
F24F6/12 101
(21)【出願番号】P 2020192282
(22)【出願日】2020-11-19
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100187908
【氏名又は名称】山本 康平
(72)【発明者】
【氏名】長沢 敬男
(72)【発明者】
【氏名】北邨 亨
(72)【発明者】
【氏名】榎 浩之
【審査官】鴨志田 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-134261(JP,A)
【文献】特開平11-051823(JP,A)
【文献】特開2017-110966(JP,A)
【文献】米国特許第04869874(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 17/00
F24F 6/08
F24F 6/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内を加湿する加湿部と、
前記室内の温度と湿度と霧濃度関連値との相関データが格納された記憶部と、
前記室内の温度及び霧濃度関連値の目標値を入力するための入力部と、
前記入力部に入力された目標値と前記相関データとに基づいて、前記室内の湿度の目標値を算出する演算部と、
前記演算部により算出された目標値に基づいて、前記加湿部の動作を制御する加湿制御部と、を備えた、霧環境形成装置。
【請求項2】
前記加湿部は、加熱型加湿器と、非加熱型加湿器と、を含む、請求項1に記載の霧環境形成装置。
【請求項3】
前記加湿制御部は、前記加熱型加湿器の作動中において前記加熱型加湿器の出力又は前記室内の湿度が基準値以上となることに基づいて、前記非加熱型加湿器を作動させる、請求項2に記載の霧環境形成装置。
【請求項4】
前記加湿制御部は、前記非加熱型加湿器を作動させた後、前記加熱型加湿器の出力を下げる、請求項3に記載の霧環境形成装置。
【請求項5】
室内に霧環境を形成する方法であって、
前記室内の温度及び霧濃度関連値の目標値を設定するステップと、
前記室内の温度及び霧濃度関連値の目標値と予め調査された前記室内の温度と湿度と霧濃度関連値との相関データとに基づいて、前記室内の湿度の目標値を得るステップと、
前記室内の湿度の目標値に基づいて、前記室内の湿度を制御するステップと、を含む、霧環境形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、霧環境形成装置及び霧環境形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されているように、室内に霧環境を形成する装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、環境試験室と、当該環境試験室内に水の微粒子を噴霧する2流体ノズルと、2流体ノズルに供給される空気を生成する空気圧縮機と、2流体ノズルに供給される水を貯留する水タンクと、を備えた環境試験装置が記載されている。この装置では、環境試験室内の湿度が100%の状態で2流体ノズルから水の微粒子を噴霧することにより、空気中に水の微粒子が浮遊して霧が形成される。また環境試験室内には、加湿された外気を導入するための空気吹出し口が設けられており、当該外気による換気量と2流体ノズルからの水の噴霧量とを調節することにより、環境試験室内の霧の濃度が一定に保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、外気の導入により環境試験室内の霧の濃度が調整されるため、霧の濃度を一定に保持することができる一方、環境試験室内の温度が外気温度の影響を受けて変動することは避けられない。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、室内の温度変動を抑制しつつ室内の霧濃度を調整可能な霧環境形成装置及び霧環境形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に係る霧環境形成装置は、室内を加湿する加湿部と、前記室内の温度と湿度と霧濃度関連値との相関データが格納された記憶部と、前記室内の温度及び霧濃度関連値の目標値を入力するための入力部と、前記入力部に入力された目標値と前記相関データとに基づいて、前記室内の湿度の目標値を算出する演算部と、前記演算部により算出された目標値に基づいて、前記加湿部の動作を制御する加湿制御部と、を備える。
【0008】
この霧環境形成装置では、室内の温度と湿度と霧濃度関連値との相関データに基づいて室内の温度及び霧濃度関連値の目標値に対応する室内の湿度の目標値を算出し、当該湿度の目標値に基づいて加湿部を制御することにより、室内の霧濃度を調整することができる。このため、室内の霧濃度を調整するに当たり室内に外気を導入する必要がなく、室内の温度変動を抑制しつつ霧濃度を調整することができる。しかも、室内の霧濃度を直接監視せずに湿度制御により霧濃度が間接的に調整されるため、室内に視程計を設置する必要もない。
【0009】
「霧濃度関連値」としては、室内の視程距離、照度減衰率又は透過率等を採用することができる。また本発明における「霧」には、靄(視程が1km以上10km未満)が含まれる。
【0010】
上記霧環境形成装置において、前記加湿部は、加熱型加湿器と、非加熱型加湿器と、を含んでいてもよい。
【0011】
この構成によれば、加熱型加湿器のみが用いられる場合に比べて、室内の湿度を上げる際に発生する顕熱の量を抑えることができるため、室内の温度上昇を抑えることができる。
【0012】
上記霧環境形成装置において、前記加湿制御部は、前記加熱型加湿器の作動中において前記加熱型加湿器の出力又は前記室内の湿度が基準値以上となることに基づいて、前記非加熱型加湿器を作動させてもよい。
【0013】
加熱型加湿器のみを用いて室内の湿度を目標値まで上げようとすると、加熱型加湿器から発生する熱により室内の温度が上がる。この場合、室内の温度上昇を抑えるために冷凍機の能力を上げる必要があり、その結果冷凍機の除湿能力も上がるため、室内の湿度を効率的に上げるのが困難になる。これに対し、加熱型加湿器の出力又は室内の湿度が基準値以上になるタイミングで加熱型加湿器及び非加熱型加湿器の両者を作動させることにより、室内の湿度を効率的に上げることが可能になる。
【0014】
上記霧環境形成装置において、前記加湿制御部は、前記非加熱型加湿器を作動させた後、前記加熱型加湿器の出力を下げてもよい。
【0015】
この構成によれば、加熱型加湿器からの熱量を抑え、室内の温度上昇をより確実に抑制することができる。
【0016】
本発明の他の局面に係る霧環境形成方法は、室内に霧環境を形成する方法であって、前記室内の温度及び霧濃度関連値の目標値を設定するステップと、前記室内の温度及び霧濃度関連値の目標値と予め調査された前記室内の温度と湿度と霧濃度関連値との相関データとに基づいて、前記室内の湿度の目標値を得るステップと、前記室内の湿度の目標値に基づいて、前記室内の湿度を制御するステップと、を含む。
【0017】
この方法によれば、室内の温度と湿度と霧濃度関連値との相関データに基づいて室内の温度及び霧濃度関連値の目標値に対応する室内の湿度の目標値を取得し、当該湿度の目標値に基づいて室内の湿度を制御することにより、室内の霧濃度を調整することができる。このため、室内の霧濃度を調整するに当たり室内に外気を導入する必要がなく、室内の温度変動を抑制しつつ霧濃度を調整することができる。しかも、室内の霧濃度を直接監視せずに湿度制御により霧濃度が間接的に調整されるため、室内に視程計を設置する必要もない。
【発明の効果】
【0018】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、室内の温度変動を抑制しつつ室内の霧濃度を調整可能な霧環境形成装置及び霧環境形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態1に係る霧環境形成装置の構成を模式的に示す図である。
【
図2】相対湿度と照度減衰率との関係を示すグラフである。
【
図3】本発明の実施形態1に係る霧環境形成方法を説明するためのフローチャートである。
【
図4】本発明の実施形態2に係る霧環境形成方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態に係る霧環境形成装置及び霧環境形成方法を詳細に説明する。
【0021】
(実施形態1)
<霧環境形成装置>
まず、本発明の実施形態1に係る霧環境形成装置100の構成を、
図1及び
図2に基づいて説明する。霧環境形成装置100は、試験室11内に霧を発生させる装置であり、当該試験室11内の相対湿度を制御することにより当該試験室11内の霧濃度を制御する。
図1に示すように、霧環境形成装置100は、試験槽18と、送風機13と、加熱器1と、蒸発器17及び圧縮機16を含む冷凍機と、加湿部2と、制御部4とを備える。
【0022】
試験槽18は、断熱壁からなり、その内面がステンレス板等により覆われている。試験槽18内には、試験室11と空調室12とがそれぞれ設けられている。試験室11は、供試体(図示しない)が設置される空間であり、壁18aにより空調室12に対して仕切られている。なお、試験槽18の壁には、内部空間と外部空間とを連通させる孔(図示しない)が形成されているため、試験槽18内は大気圧となっている。
【0023】
図1に示すように、壁18aの上部には、空調室12から試験室11に空調空気を吹き出すための吹出口11bが設けられており、壁18aの下部には、試験室11から空調室12に空調空気を吸い込むための吸込口11aが設けられている。試験室11のうち吹出口11bの近傍には、吹出側温度センサ14A及び吹出側湿度センサ15Aがそれぞれ設置されている。また試験室11のうち吸込口11aの近傍には、吸込側温度センサ14B及び吸込側湿度センサ15Bがそれぞれ設置されている。吹出側温度センサ14Aは、吹出口11bから吹き出される空調空気の温度を検知し、一方で吸込側温度センサ14Bは吸込口11aから吸い込まれる空調空気の温度を検知する。吹出側湿度センサ15Aは、吹出口11bから吹き出される空調空気の相対湿度を検知し、一方で吸込側湿度センサ15Bは吸込口11aから吸い込まれる空調空気の相対湿度を検知する。これらの検知データは、各センサから制御部4に送信される。
【0024】
送風機13は、試験室11と空調室12との間で空調空気を循環させるためのファンであり、空調室12の上部(吹出口11bに臨む位置)に設置されている。送風機13を作動させることにより、試験室11内において空調空気が下向きに流れると共に空調室12において空調空気が上向きに流れる循環流が形成される。
【0025】
加熱器1は、空調空気を加熱するためのヒータであり、空調室12のうち送風機13よりも上流側に設置されている。なお、本明細書における上下流は、空調空気の流れ方向(
図1中に矢印で示す方向)を基準とする。
【0026】
冷凍機は、蒸発器17及び圧縮機16の他、図略の凝縮器及び膨張弁をさらに含み、これらの機器が冷媒回路により接続されたものである。蒸発器17は、冷媒と空調空気とを熱交換させ、当該冷媒を蒸発させることにより空調空気を冷却する熱交換器(冷却器)であり、空調室12内において加熱器1よりも上流側に設置されている。
【0027】
加湿部2は、試験室11内を加湿するためのものである。本実施形態における加湿部2は、加熱型加湿器3と、非加熱型加湿器5とを含む。加熱型加湿器3は、空調空気を加湿する際に熱を発生するものであり、一方で非加熱型加湿器5は、空調空気を加湿する際に熱を発生しないものである。
図1に示すように、本実施形態では、加熱型加湿器3が空調室12の下部(蒸発器17よりも上流側)に設置されており、非加熱型加湿器5が空調室12内において送風機13よりも上流側で且つ加熱器1よりも下流側に設置されている。しかし、加湿部2の配置はこれに限定されず、例えば加熱型加湿器3が蒸発器17よりも下流側に設置されていてもよい。
【0028】
加熱型加湿器3は、例えばパン皿式の加湿器であり、加湿用水が溜まった蒸発皿3bと、当該蒸発皿3b内に設置された加湿ヒータ3aとを含む。加湿ヒータ3aによって加湿用水を加熱して蒸発させることにより、吸込口11aから空調室12に吸い込まれた空調空気が加湿される。このとき、加湿ヒータ3aから発生する熱によって、空調空気の温度が上がる。なお、加熱型加湿器3は、ボイラー式のものでもよい。
【0029】
非加熱型加湿器5は、例えば超音波加湿器であり、加熱型加湿器3により加湿された後の空調空気をさらに加湿する。非加熱型加湿器5は、微粒化された水滴を空調空気に向けて放出するものであり、当該水滴が蒸発する際の気化熱により空調空気が冷却される。なお、加熱型加湿器3とは異なり、非加熱型加湿器5の出力は制御されない。すなわち、非加熱型加湿器5の出力は一定であり、一定量の水滴が空調空気に向けて放出される。
【0030】
制御部4は、霧環境形成装置100の各種動作(送風機13、加熱器1、冷凍機及び加湿部2等の動作)を制御するコンピュータであり、受付部21と、入力部22と、記憶部24と、演算部23と、判定部25と、加湿制御部26とを含む。受付部21、演算部23、判定部25及び加湿制御部26は、制御部4を構成するコンピュータの中央演算処理装置(CPU;Central Processing Unit)により実行される各機能である。入力部22は、例えばタッチパネル等の入力装置により構成されている。記憶部24は、メモリ等の記憶装置により構成されている。
【0031】
受付部21は、各センサ(吹出側温度センサ14A、吹出側湿度センサ15A、吸込側温度センサ14B及び吸込側湿度センサ15B)から送信される検知データを受け付ける。入力部22は、試験室11内の温度及び霧濃度関連値の目標値を入力するためのものである。本実施形態では、霧濃度関連値は、試験室11内の視程距離である。
【0032】
記憶部24には、試験室11内の温度と相対湿度と霧濃度関連値(例えば照度減衰率)との相関データが格納されている。
図2のグラフは、この相関データの一例であり、任意の温度における相対湿度(横軸)と照度減衰率(縦軸)との関係を示している。照度減衰率は、1から透過率を引いたものを表しており、この透過率は透過率計(視程計)を用いた測定における投光強度に対する受光強度の比率である。照度減衰率又は透過率は、視程距離に換算することができる。すなわち、照度減衰率が大きくなると視程距離が短くなり、透過率が小さくなると視程距離が短くなる。
【0033】
図2に示すように、相対湿度が増加するに従って照度減衰率が増加する(視程距離が短くなる)。この相対湿度と照度減衰率との相関関係は、温度毎に異なる。このため、相対湿度と照度減衰率との相関関係を示すグラフやデータテーブルが温度毎に準備されており、これらのデータが記憶部24に格納されている。
【0034】
演算部23は、入力部22に入力された試験室11内の温度及び視程距離の目標値と記憶部24に格納された上記相関データとに基づいて、試験室11内の相対湿度の目標値を算出する。具体的には、演算部23は、まず、記憶部24に格納されたデータのうち、試験室11内の温度の目標値に対応するデータを選択する。すなわち、当該温度目標値における相対湿度と照度減衰率との相関関係を示すデータが選択される。次に、演算部23は、選択されたデータに基づいて、試験室11内の視程距離の目標値を試験室11内の相対湿度の目標値に換算する。具体的には、まず視程距離の目標値を照度減衰率に換算し、当該換算された照度減衰率と選択された相関データに基づいて相対湿度の目標値が得られる。
【0035】
また演算部23は、以下のようにして、試験室11内の中央部における相対湿度の推定値を算出する。まず、演算部23は、受付部21が受け付けた吹出側温度センサ14A及び吹出側湿度センサ15Aの各検知データに基づいて、試験室11内の空調空気中の水分量を算出する。一方、演算部23は、吹出側温度センサ14A及び吸込側温度センサ14Bの各検知データに基づいて、試験室11内の中央部における温度の推定値を平均値として算出する。そして、演算部23は、算出された上記水分量と温度の推定値とに基づいて、試験室11内の中央部における相対湿度の推定値を算出する。以下、この推定値を試験室11内の相対湿度の測定値として説明する。
【0036】
判定部25は、演算部23により算出された相対湿度の目標値と試験室11内の相対湿度の測定値とを比較し、これらの大小関係を判定する。この判定結果の情報は、加湿制御部26に送信される。
【0037】
加湿制御部26は、演算部23により算出された試験室11内の相対湿度の目標値に基づいて、加湿部2の動作を制御する。具体的には、加湿制御部26は、試験室11内の相対湿度の測定値がその目標値に近づくように、加熱型加湿器3の加湿ヒータ3aの出力を調整する。
【0038】
<霧環境形成方法>
次に、本実施形態に係る霧環境形成方法を、
図3のフローチャートに従って説明する。この方法は、試験室11内に霧環境を形成する方法であり、制御部4を用いて行われる。
【0039】
まず、試験室11内の温度及び視程距離の目標値を設定する(ステップS10)。このステップS10では、試験室11内の温度及び視程距離の目標値が、入力部22に入力される。温度目標値は例えば5~25℃の範囲で設定され、また視程距離の目標値は例えば10mに設定される。
【0040】
次に、試験室11内の相対湿度の目標値を設定する(ステップS20)。このステップS20では、ステップS10で設定された試験室11内の温度及び視程距離の目標値と、予め調査された試験室11内の温度と相対湿度と霧濃度関連値(例えば照度減衰率)との相関データとに基づいて、試験室11内の相対湿度の目標値を得る。
【0041】
具体的には、まず、記憶部24に格納された試験室11内の温度と相対湿度と霧濃度関連値との相関データのうち、ステップS10で設定された温度目標値に対応する相関データが選択される。次に、選択された相関データに基づいて、ステップS10で設定された試験室11内の視程距離の目標値が試験室11内の相対湿度の目標値に換算される。具体的には、視程距離の目標値が照度減衰率に換算され、当該換算値と選択された相関データに基づいて、試験室11内の相対湿度の目標値が導き出される。この相対湿度の目標値は、例えば0.1%間隔の精度で算出され、90.0%以上100.0%未満の範囲内である。
【0042】
次に、ステップS20で得られた試験室11内の相対湿度の目標値に基づいて、試験室11内の湿度を制御する(ステップS30~S60)。
【0043】
まず、ステップS30では、加湿制御部26が加熱型加湿器3の加湿ヒータ3aを作動させる。これにより、蒸発皿3b内の加湿用水が蒸発して水蒸気となり、当該水蒸気が試験槽18内を循環する空調空気と混ざることにより、試験室11内の湿度が上がる。加湿制御部26は、試験室11内の相対湿度の測定値がその目標値に近づくように、加湿ヒータ3aの出力を徐々に上げる。なおこの段階では、非加熱型加湿器5は、作動オフの状態となっている。
【0044】
加湿制御部26は、加熱型加湿器3の作動中において当該加熱型加湿器3の出力が基準値以上となることに基づいて、非加熱型加湿器5を作動させる。また加湿制御部26は、非加熱型加湿器5を作動させた後、加熱型加湿器3の出力を下げる。具体的には以下の通りである。
【0045】
まず、判定部25が、加熱型加湿器3の加湿ヒータ3aの出力が基準値に到達しているか否かを判定する(ステップS40)。そして、当該ヒータ出力が基準値に到達していると判定されると(ステップS40のYES)、加湿制御部26が非加熱型加湿器5を作動させ(ステップS50)、加熱型加湿器3の加湿ヒータ3aの出力を下げる(ステップS60)。このとき、加湿ヒータ3aの出力を下げた後に非加熱型加湿器5を作動させてもよいし、両者を同じタイミングで行ってもよい。一方、加湿ヒータ3aの出力が基準値に到達していないと判定されると(ステップS40のNO)、非加熱型加湿器5が作動せずに加熱型加湿器3のみが作動して加湿ヒータ3aの出力を徐々に上げる状態が継続される。なお、非加熱型加湿器5を、加熱型加湿器3と共に初めから作動させてもよいし、加熱型加湿器3の作動開始後であって当該加熱型加湿器3の出力が基準値に到達する前の途中で作動させてもよい。
【0046】
ステップS60の後、加湿制御部26は、非加熱型加湿器5の作動を継続しつつ、試験室11内の相対湿度の測定値がその目標値に近づくように加湿ヒータ3aの出力を調整する(ヒータ出力を増減させる)。このように試験室11内の湿度制御を行う間、試験室11内の温度制御も行われる。具体的には、ステップS10で設定された目標値と測定値(吹出側温度センサ14Aによる検知データと吸込側温度センサ14Bによる検知データの平均値)とに基づいて、試験室11内の温度がフィードバック制御される。
【0047】
これにより、試験室11内の視程距離が相対湿度の目標値に対応する値に制御され、所望の濃度の霧環境を試験室11内に形成することができる。所定の試験終了条件が満たされると(ステップS70のYES)、加熱器1、冷凍機、加湿部2及び送風機13の作動をそれぞれ停止させ、本方法が終了する。
【0048】
またステップS10において、相対湿度100%に相当する視程距離以下の視程距離の目標値が入力部22に入力されたときは、加湿制御部26は、試験室11内の相対湿度が100%に維持されるように加湿部2(加湿ヒータ3a)の出力を調整する。このとき、加湿ヒータ3aの出力は最大に維持されることもあるが、これに限定されない。
【0049】
以上の通り、本実施形態に係る霧環境形成装置100では、試験室11内の温度と相対湿度と照度減衰率との相関データに基づいて、試験室11内の温度及び視程距離の目標値に対応する試験室11内の相対湿度の目標値を算出し、当該相対湿度の目標値に基づいて加湿部2を制御することにより、試験室11内の視程距離が目標値に調整される。このため、試験室11内の視程距離を調整するに当たって試験室11内に外気を導入する必要がなく、試験室11内の温度変動を抑制しつつ視程距離(霧濃度)を調整することができる。しかも、試験室11内の視程距離を直接監視せずに湿度制御により視程距離が間接的に調整されるため、試験室11内に視程計を設置する必要もない。このため、視程計の光が試験室11の内面(ステンレス板)や供試体により反射するという問題が生じず、また試験槽18のサイズ以上の視程距離に制御することも可能である。
【0050】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2に係る霧環境形成装置及び霧環境形成方法を、
図4のフローチャートに基づいて説明する。実施形態2は基本的に実施形態1と同様であるが、非加熱型加湿器5を作動させるタイミングが異なっている。以下、実施形態1と異なる点についてのみ説明する。
【0051】
図4のフローチャートは、
図3のフローチャートに対応しており、ステップS41を除いて
図3のフローチャートと基本的に同じである。すなわち、
図4中のステップS11~S31,S51~S71は、
図3中のステップS10~S30,S50~S70と同じである。
【0052】
実施形態2では、加湿制御部26は、加熱型加湿器3の作動中において試験室11内の相対湿度が基準値以上となることに基づいて、非加熱型加湿器5を作動させる。すなわち、ステップS41では、判定部25が、試験室11内の相対湿度の測定値が基準値に到達しているか否かを判定する。この基準値は、相対湿度の目標値よりも小さい値である。そして、当該測定値が基準値に到達していると判定されると(ステップS41のYES)、加湿制御部26が非加熱型加湿器5を作動させると共に(ステップS51)、加熱型加湿器3の加湿ヒータ3aの出力を下げる(ステップS61)。一方、試験室11内の相対湿度の測定値が基準値に到達していないと判定されると(ステップS41のNO)、非加熱型加湿器5が作動せずに加熱型加湿器3のみが作動する状態が継続される。
【0053】
加熱型加湿器3のみを用いて試験室11内の相対湿度を目標値まで上げようとすると、加湿ヒータ3aから発生する熱により空調空気が加熱され、試験室11内の温度が上がる。この場合、試験室11内の温度上昇を抑えるために冷凍機の能力を上げる必要があり、それにより冷凍機の除湿能力も上がるため、試験室11内の湿度を効率的に上げるのが困難になる。これに対し、試験室11内の相対湿度が基準値以上になるタイミングで加熱型加湿器3及び非加熱型加湿器5の両者を作動させ且つ加熱型加湿器3のヒータ出力を下げることにより、試験室11内の湿度を効率的に上げることができる。この効果は、実施形態1のように加熱型加湿器3の出力が基準値以上になるタイミングで非加熱型加湿器5を作動させ且つ加熱型加湿器3のヒータ出力を下げる場合でも同様に得られる。
【0054】
(実施形態3)
次に、本発明の実施形態3に係る霧環境形成装置の構成を説明する。実施形態3は基本的に実施形態1と同様であるが、非加熱型加湿器5が設けられていない点が異なっている。以下、実施形態1と異なる点についてのみ説明する。
【0055】
実施形態3では、加湿部2が加熱型加湿器3のみからなり、非加熱型加湿器5を含まない。このため、試験室11内の湿度は、加熱型加湿器3のみにより調整される。具体的には、
図3中のステップS10,S20において相対湿度の目標値を算出した後、当該目標値に基づいて加湿ヒータ3aの出力を調整することにより、試験室11内の相対湿度がその目標値に近づくように制御される。この構成では、非加熱型加湿器5が省略されるため、装置構成をより簡素化することができる。
【0056】
(その他実施形態)
ここで、本発明のその他実施形態を説明する。
【0057】
実施形態1では、視程距離の目標値が入力部22に入力される場合を一例として説明したが、これに代えて照度減衰率又は透過率の目標値が入力部22に入力されてもよい。
【0058】
記憶部24に格納された相関データにおいて、照度減衰率に代えて視程距離又は透過率が採用されてもよい。また当該相関データにおいて、相対湿度に代えて絶対湿度が採用されてもよい。この場合、演算部23が試験室11内の絶対湿度の目標値を算出し、加湿制御部26がこれに基づいて加湿部2の動作を制御する。
【0059】
実施形態1では、加熱型加湿器3としてパン皿式の加湿器が用いられ、非加熱型加湿器5として超音波加湿器が用いられる場合を例として説明したが、加湿器の種類はこれらに限定されない。例えば、非加熱型加湿器として、スプレー式の加湿器(2流体ノズル)が用いられてもよい。この場合、2流体ノズルに水を供給する水供給部(タンク、配管、ポンプ及びバルブ等を含む、図示しない)と、2流体ノズルに圧縮空気を供給する空気供給部(エアーコンプレッサ、配管及びバルブ等を含む、図示しない)とがそれぞれ設けられる。そして、水温、水量、空気圧及び空気温度等を調整することにより、ノズルから噴霧される水滴の粒径が一定に調整されることが好ましい。
【0060】
実施形態1では、試験室11内の中央部における相対湿度の推定値を用いて湿度制御する場合を例として説明したが、これに限定されない。吹出側湿度センサ15Aの検知データを目標値と比較して湿度制御を行ってもよいし、吸込側湿度センサ15Bの検知データを目標値と比較して湿度制御を行ってもよい。また吹出側湿度センサ15Aの検知データと吸込側湿度センサ15Bの検知データの平均値を目標値と比較して湿度制御を行ってもよい。
【0061】
加熱型加湿器について、試験槽18内(空調室12)に蒸発皿3bが設置される場合に限定されず、例えば、試験槽18の外に設置されたボイラー(図示しない)で発生させた蒸気を、配管等を用いて空調室12内に導く構成が採用されてもよい。
【0062】
実施形態1では、非加熱型加湿器5が1台設置される場合を例として説明したが、非加熱型加湿器5が複数台設置されてもよい。
【0063】
実施形態1では、霧環境形成装置が環境試験に用いられる場合を例として説明したが、試験装置以外の他の施設において用いられてもよい。
【0064】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0065】
2 加湿部
3 加熱型加湿器
5 非加熱型加湿器
11 試験室
22 入力部
23 演算部
24 記憶部
26 加湿制御部
100 霧環境形成装置