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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】アーム型助力装置
(51)【国際特許分類】
   B66F 19/00 20060101AFI20231120BHJP
   B25J 19/00 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
B66F19/00 D
B25J19/00 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020210598
(22)【出願日】2020-12-18
(65)【公開番号】P2022097170
(43)【公開日】2022-06-30
【審査請求日】2022-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】若杉 諭
(72)【発明者】
【氏名】堀尾 明里
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-181661(JP,A)
【文献】特開平05-163000(JP,A)
【文献】特開2010-076089(JP,A)
【文献】特開2010-241518(JP,A)
【文献】特開2017-178460(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 19/00
B25J 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアーム部材を有し、かつ前記複数の前記アーム部材の各々がアクチュエータによって制御されるアームと、
前記アームによって搬送される負荷の荷重に係る検出荷重を出力する荷重検出装置と、
重量及び前記検出荷重に応じたバランス圧力を前記アクチュエータ毎に演算し、前記アクチュエータ毎の前記バランス圧力に係るバランス圧力信号を出力する演算部と、
前記バランス圧力信号に応じたバランス圧力を前記アーム部材に出力する圧力制御装置と、
前記重量及び前記検出荷重に応じて前記バランス圧力を変更してアンバランスとするアンバランス量を設定し、かつ前記アンバランス量を前記バランス圧力に加算するアンバランス設定部と、
前記アンバランス量は、前記アーム部材の操作力単位である補正単位と、前記補正単位の数である補正数との積算値であり、前記アンバランス設定部は、前記積算値を算出する算出部と、前記積算値を前記バランス圧力に加算する加算部と、前記補正数を正の数又は負の数として入力する増減スイッチと、前記増減スイッチの操作回数をカウントするカウンタと、
を有することを特徴とするアーム型助力装置。
【請求項2】
前記補正単位は、前記アーム部材毎の前記アクチュエータの受圧面積、及び各アーム部材の各々の構造に紐付けされた係数で1を除算した値である請求項に記載のアーム型助力装置。
【請求項3】
前記カウンタは、複数の前記アーム部材の各々に対応して設けられ、前記アンバランス設定部は、複数の前記カウンタのうちの一つを選択するセレクタを有し、前記増減スイッチと、前記セレクタによって選択された一つのカウンタとが紐付けされる請求項又は請求項に記載のアーム型助力装置。
【請求項4】
前記アンバランス量は、複数の前記アクチュエータ毎に異なる値である請求項1~請求項のうちいずれか一項に記載のアーム型助力装置。
【請求項5】
前記アンバランス量は、複数の前記アクチュエータ自身のヒステリシスの幅から外す量である請求項1~請求項のうちいずれか一項に記載のアーム型助力装置。
【請求項6】
前記バランス圧力は、
複数の前記アーム部材の各々の先端側に作用する前記検出荷重と、
予め計測され、かつ前記アームの先端側に装着された被動部材の重量と、
予め計測され、かつ複数の前記アーム部材の各々の重量のうち、負荷として作用する比率を乗算して得られた値と、を加算して得られる加算値を、
前記アーム部材毎の前記アクチュエータの受圧面積、及び複数の前記アーム部材の各々の構造に紐付けされた係数で除算した値である請求項1~請求項のうちいずれか一項に記載のアーム型助力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のアーム部材を有するアームを備えるアーム型助力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
比較的重い部品や荷物などの負荷を搬送するとき、アーム型助力装置が使用される。アーム型助力装置は、負荷をアームによって保持することができるとともに、助力装置を使用して負荷に対してバランスさせることで、作業者の労力を軽減している。
【0003】
アーム型助力装置としては、アームを複数のアーム部材によって構成するとともに、複数のアーム部材の各々を揺動可能に構成したものがある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の多関節アーム装置は、アームを構成する複数の関節駆動装置を備える。複数の関節駆動装置の各々は、対をなす第1のフレーム及び第2のフレームに回動自在に接続されたアーム部材と、アーム部材を揺動させるアクチュエータと、を含む。また、複数の関節駆動装置の各々は平行アーム部材を含む。平行アーム部材は、アーム部材に対して間隔を隔てて平行に延び、基端部が第1のフレームに回動自在に接続され、先端部が第2のフレームに回動自在に接続される。複数の関節駆動装置の各々において、第1のフレーム、第2のフレーム、アーム部材、及び平行アーム部材によって平行リンクが構成されている。
【0004】
そして、多関節アーム装置において、各関節駆動装置の平行リンクによって、第1のフレームに対してアーム部材及び平行アーム部材を揺動させると、第2のフレームが平行移動される。このとき、複数の関節駆動装置の各々のアクチュエータによってアームと負荷とがバランスされ、負荷を吊り上げた状態を維持したバランス状態とすることができる。
【0005】
また、アーム型助力装置としての特許文献2の荷役機械は、アーム部材としての第1~第3のアームを有する昇降機構を備えている。第1のアームは、所定の角度に揺動可能である。また、第1のアームは、アクチュエータとしての空気圧シリンダによって駆動される。第1のアームの先端部には、第2のアームが、関節部を介して常に水平状態を保持する状態で連結され、さらに、第2のアームの先端部には、軸線が鉛直方向に延びる第3のアームが水平方向に旋回可能な状態で連結されている。第3のアームの下端部には、例えばエアの吸引により負荷を保持する吸着機構が取り付けられている。
【0006】
そして、吸着機構で負荷を吸着し持ち上げると、第1~第3のアーム側には、負荷の荷重と荷役機械の第1~第3のアームの重量との和に相当する力が下方向に働く。この下方向に働く力に抗するように空気圧シリンダの内圧を上げることで、昇降装置において、負荷を吊り上げた状態を維持したバランス状態とすることができる。
【0007】
また、近年では、特許文献2の荷役機械における昇降装置において、第1のアームだけでなく、第3のアームに空気圧シリンダをアクチュエータとして内蔵したものが提案されている。このような昇降装置においても、第1のアーム及び第3のアームの各々のアクチュエータによって、昇降装置と負荷とをバランスさせ、負荷を吊り上げた状態に維持したバランス状態とすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2010-76089号公報
【文献】特許第5073923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、アーム型助力装置の設置場所においては、アーム型助力装置の近傍に障害物が配置されている場合がある。特許文献1の多関節アーム装置においては、複数の関節駆動装置の各々のアクチュエータが制御されてバランス状態とされるため、障害物との干渉を避けながら負荷を搬送する際にアームの姿勢が定まりにくい。また、第1のアームを揺動可能とし、かつ第3のアームを上下動可能に構成した昇降装置においても、第1のアーム及び第3のアームの各々のアクチュエータが制御されてバランス状態とされるため、障害物との干渉を避けながら負荷を搬送する際に第1のアーム及び第3のアームの姿勢が定まりにくい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題点を解決するためのアーム型助力装置は、複数のアーム部材を有し、かつ前記複数の前記アーム部材の各々がアクチュエータによって制御されるアームと、前記アームによって搬送される負荷の荷重に係る検出荷重を出力する荷重検出装置と、重量及び前記検出荷重に応じたバランス圧力を前記アクチュエータ毎に演算し、前記アクチュエータ毎の前記バランス圧力に係るバランス圧力信号を出力する演算部と、前記バランス圧力信号に応じたバランス圧力を前記アーム部材に出力する圧力制御装置と、前記重量及び前記検出荷重に応じて前記バランス圧力を変更してアンバランスとするアンバランス量を設定し、かつ前記アンバランス量を前記バランス圧力に加算するアンバランス設定部と、を有することを要旨とする。
【0011】
アーム型助力装置について、前記アンバランス量は、前記アーム部材の操作力単位である補正単位と、前記補正単位の数である補正数との積算値であり、前記アンバランス設定部は、前記積算値を算出する算出部と、前記積算値を前記バランス圧力に加算する加算部と、前記補正数を正の数又は負の数として入力する増減スイッチと、前記増減スイッチの操作回数をカウントするカウンタと、を有していてもよい。
【0012】
アーム型助力装置について、前記補正単位は、前記アーム部材毎の前記アクチュエータの受圧面積、及び各アーム部材の各々の構造に紐付けされた係数で1を除算した値であってもよい。
【0013】
アーム型助力装置について、前記カウンタは、複数の前記アーム部材の各々に対応して設けられ、前記アンバランス設定部は、複数の前記カウンタのうちの一つを選択するセレクタを有し、前記増減スイッチと、前記セレクタによって選択された一つのカウンタとが紐付けされていてもよい。
【0014】
アーム型助力装置について、前記アンバランス量は、複数の前記アクチュエータ毎に異なる値であってもよい。
アーム型助力装置について、前記アンバランス量は、複数の前記アクチュエータ自身のヒステリシスの幅から外す量であってもよい。
【0015】
アーム型助力装置について、前記バランス圧力は、複数の前記アーム部材の各々の先端側に作用する前記検出荷重と、予め計測され、かつ前記アームの先端側に装着された被動部材の重量と、予め計測され、かつ複数の前記アーム部材の各々の重量のうち、負荷として作用する比率を乗算して得られた値と、を加算して得られる加算値を、前記アーム部材毎の前記アクチュエータの受圧面積、及び複数の前記アーム部材の各々の構造に紐付けされた係数で除算した値であってもよい。
【0016】
アーム型助力装置について、複数の前記アーム部材の少なくとも一つは平行四辺形リンク機構を有していてもよい。
アーム型助力装置について、前記アクチュエータは流体圧アクチュエータであってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、障害物との干渉を避けながらの負荷の搬送の際、アームの姿勢を容易に定めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1の実施形態のアーム型助力装置を模式的に示す図。
図2】助力制御系を示すブロック図。
図3】荷重と出力との関係を示すグラフ。
図4】操作力とアーム部材の高さとの関係を示すグラフ。
図5】障害物とアームとの位置関係を示す平面図。
図6】(a)は図1の状態から第1アーム部材を上昇させた図、及び図6(b)の状態から第2アーム部材を下降させた図、(b)は図6(a)の状態から第2アーム部材を上昇させた図。
図7】(a)~(c)は、第1アーム部材を上昇させるときの操作力を示すグラフ。
図8】障害物とアームとの位置関係を示す平面図。
図9】(a)は図1の状態から第2アーム部材を上昇させた図、及び図9(b)の状態から第1アーム部材を下降させた図、(b)は図9(a)の状態から第1アーム部材を上昇させた図。
図10】(a)~(c)は、第2アーム部材を上昇させるときの操作力を示すグラフ。
図11】第2の実施形態のアーム型助力装置を模式的に示す図。
図12】操作力とアーム部材の高さとの関係を示すグラフ。
図13】障害物とアームとの位置関係を示す平面図。
図14】(a)は図11の状態から第1アーム部材を上昇させた図、及び図14(b)の状態から第2アーム部材の操作部を下降させた図、(b)は図11の状態から第2アーム部材の操作部を上昇させた図。
図15】(a)~(c)は、第1アーム部材を上昇させるときの操作力を示すグラフ。
図16】障害物とアームとの位置関係を示す平面図。
図17】(a)は図11の状態から第2アーム部材の操作部を上昇させた図、及び図17(b)の状態から第1アーム部材を下降させた図、(b)は図17(a)の状態から第1アーム部材を上昇させた図。
図18】(a)~(c)は、第2アーム部材の操作部を上昇させるときの操作力を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1の実施形態)
以下、アーム型助力装置を具体化した第1の実施形態を図1図10にしたがって説明する。
【0020】
図1又は図2に示すように、アーム型助力装置10は、アーム11と、荷重検出装置13と、演算部17と、変換部20と、アンバランス設定部60と、を有する。また、アーム型助力装置10は、荷重検出装置13と演算部17とを接続するA/D変換部18と、演算部17と変換部20とを接続するD/A変換部19と、を有する。
【0021】
アーム11は、基台Bに基端部が支持されている。アーム11は、複数のアーム部材としての第1アーム部材21及び第2アーム部材31を有する。第1アーム部材21は、アーム11における基台B寄りを構成し、第2アーム部材31は、アーム11の先端寄りを構成するとともに、負荷Wを支持する。
【0022】
第1アーム部材21は、対をなす第1基端部材22及び第1先端部材23と、第1基端部材22と第1先端部材23を接続する第1フレーム部材24と、第1フレーム部材24に対して間隔を隔てて平行に延びる第1連結部材25と、を有する。また、第1アーム部材21は、アクチュエータとしての第1アクチュエータ26を内蔵して備える。第1アクチュエータ26は、第1基端部材22に対して第1フレーム部材24を揺動させる。第1アクチュエータ26は流体圧としてのエア圧によって駆動する流体圧アクチュエータである。
【0023】
第2アーム部材31は、対をなす第2基端部材32及び第2先端部材33と、第2基端部材32と第2先端部材33を接続する第2フレーム部材34と、第2フレーム部材34に対して間隔を隔てて平行に延びる第2連結部材35と、を有する。また、第2アーム部材31は、アクチュエータとしての第2アクチュエータ36を内蔵して備える。第2アクチュエータ36は、第2基端部材32に対して第2フレーム部材34を揺動させる。第2アクチュエータ36は流体圧としてのエア圧によって駆動する流体圧アクチュエータである。
【0024】
なお、図1においては、第1フレーム部材24と第1連結部材25が水平位置にある状態を示す。水平位置では、第1フレーム部材24と第1連結部材25はほぼ水平であり、第2フレーム部材34と第2連結部材35がほぼ水平である。図1に示す状態において、第1アーム部材21の第1先端部材23の上端での高さをゼロとし、第2アーム部材31の第2先端部材33の上端での高さをゼロとする。そして、第1アーム部材21及び第2アーム部材31は、図1の状態から、第1先端部材23の上端及び第2先端部材33の上端の高さを高くするように移動する。
【0025】
第1アーム部材21において、第1基端部材22は、第1回転ジョイント41を介して基台Bに支持されている。第1基端部材22は、第1鉛直軸L1を旋回中心として旋回可能である。第1フレーム部材24の基端部24aは、第1水平軸H1によって第1基端部材22に連結されている。第1フレーム部材24の基端部24aは、第1水平軸H1により、第1基端部材22に対し揺動可能に支持されている。従って、第1アーム部材21は、先端部24bの軌跡が円弧状となるように基台Bに対し鉛直方向へ揺動可能に支持されている。
【0026】
第1フレーム部材24の先端部24bは、第2水平軸H2によって第1先端部材23に連結されている。第1先端部材23は、第2水平軸H2により、第1フレーム部材24の先端部24bに対し鉛直方向へ揺動可能に支持されている。
【0027】
第1アクチュエータ26は、流体圧アクチュエータの一例であるエアシリンダ27を有する。エアシリンダ27は、シリンダチューブ27aと、シリンダチューブ27a内に摺動可能に収容されたピストン27bと、ピストン27bに連結された作動ロッド27cと、を有する。
【0028】
シリンダチューブ27a内には、ピストン27bによってピストン室27sが区画されている。ピストン27bの外周面には図示しないシール部材が装着されている。ピストン27bには作動ロッド27cの第1端部が連結され、作動ロッド27cの第2端部にはリンク部材28が揺動可能に連結されている。ピストン27bは、作動ロッド27cの移動に伴ってシリンダチューブ27aの軸線方向に沿って移動する。
【0029】
第1アクチュエータ26はリンク部材28を有する。リンク部材28の第1端部は、第1基端部材22に揺動可能に支持されるとともに、リンク部材28の第2端部は作動ロッド27cに対して傾斜して揺動可能に支持されている。また、リンク部材28の第1端部は第3水平軸H3に揺動可能に支持されている。
【0030】
第1連結部材25の図示しない軸線は、第1フレーム部材24の図示しない軸線に対し平行に延びている。第1連結部材25の第1端部は、第3水平軸H3を介して第1基端部材22に対し鉛直方向へ揺動可能に支持されている。第1連結部材25の第2端部は、第4水平軸H4を介して第1先端部材23に対し鉛直方向へ揺動可能に支持されている。
【0031】
第1フレーム部材24と、第1基端部材22と、第1先端部材23と、第1連結部材25とから平行四辺形リンク機構が構成されている。第1アーム部材21において、エアシリンダ27の作動ロッド27cの移動に伴い、第1基端部材22に対して第1フレーム部材24及び第1連結部材25が鉛直方向へ揺動すると、第1先端部材23が鉛直方向へ平行移動する。第1フレーム部材24及び第1連結部材25は、平行四辺形の長辺を構成し、第1基端部材22及び第1先端部材23は、平行四辺形の短辺を構成する。
【0032】
第1先端部材23の上端面には、第2回転ジョイント42が支持されている。第2アーム部材31の第2基端部材32は、第2鉛直軸L2を旋回中心として旋回する。第2フレーム部材34の基端部34aは、第5水平軸H5によって第2基端部材32に連結されている。第2フレーム部材34の基端部34aは、第5水平軸H5により、第2基端部材32に対し鉛直方向へ揺動可能に支持されている。従って、第2アーム部材31は、先端部34bの軌跡が円弧状となるように第1アーム部材21に対し鉛直方向へ揺動可能に支持されている。
【0033】
第2フレーム部材34の先端部34bは、第6水平軸H6によって第2先端部材33に連結されている。第2先端部材33は、第6水平軸H6により、第2フレーム部材34の先端部34bに対し鉛直方向へ揺動可能に支持されている。
【0034】
第2アクチュエータ36は、第1アクチュエータ26と同様に、流体圧アクチュエータの一例であるエアシリンダ37を有するとともに、リンク部材38を有する。第2アクチュエータ36のエアシリンダ37は、第1アクチュエータ26のエアシリンダ27と同じ構成であり、シリンダチューブ37a、ピストン37b、作動ロッド37c、及びピストン室37sを有する。また、第2アクチュエータ36のリンク部材38は、第1アクチュエータ26のリンク部材28と同じ構成である。そして、エアシリンダ37及びリンク部材38は、第1アクチュエータ26のエアシリンダ27及びリンク部材28と同じ構成であるため、その説明を省略する。ただし、第2アクチュエータ36のリンク部材38の第1端部は、第2基端部材32に揺動可能に支持されるとともに、リンク部材38の第2端部は作動ロッド37cに対して傾斜して揺動可能に支持されている。また、リンク部材38の第1端部は第7水平軸H7に揺動可能に支持されている。
【0035】
第2連結部材35の図示しない軸線は、第2フレーム部材34の図示しない軸線に対し平行に延びている。第2連結部材35の第1端部は、第7水平軸H7を介して第2基端部材32に対し鉛直方向へ揺動可能に支持されている。第2連結部材35の第2端部は、第8水平軸H8を介して第2先端部材33に対し鉛直方向へ揺動可能に支持されている。
【0036】
第2フレーム部材34と、第2基端部材32と、第2先端部材33と、第2連結部材35とから平行四辺形リンク機構が構成されている。エアシリンダ37の作動ロッド37cの移動に伴い、第2基端部材32に対して第2フレーム部材34及び第2連結部材35が鉛直方向へ揺動すると、第2先端部材33が鉛直方向へ平行移動する。第2フレーム部材34及び第2連結部材35は、平行四辺形の長辺を構成し、第2基端部材32及び第2先端部材33は、平行四辺形の短辺を構成する。
【0037】
第2先端部材33の上端面には第3回転ジョイント43を介して操作部12が支持されている。操作部12には、図示しない保持部が設けられている。保持部は負荷Wを保持する。そして、保持部に負荷Wが保持されることにより、第2アーム部材31は負荷Wを支持する。
【0038】
次に、アーム型助力装置10の助力制御系について説明する。
図2に示すように、演算部17にはA/D変換部18を介して荷重検出装置13が接続されている。A/D変換部18は、荷重検出装置13から入力されるアナログ信号をデジタル信号に変換して演算部17に入力する。なお、演算部17を含むコントローラ50は、アーム11の近傍に配置されている。演算部17と、荷重検出装置13及び各アクチュエータ26,36とは、アーム11内で配線及び配管によって接続されている。荷重検出装置13は、アーム11によって搬送する負荷Wの荷重を検出する。荷重検出装置13は検出荷重V1に係る検出信号をA/D変換部18を介して演算部17に出力する。
【0039】
演算部17は、重量及び検出荷重V1に対応するバランス圧力を第1アクチュエータ26に対して演算する。また、演算部17は、重量及び検出荷重V1に対応するバランス圧力を第2アクチュエータ36に対して演算する。そして、演算部17は、演算した第1バランス圧力P1に係るデジタル信号を第1バランス圧力信号として出力する。また、演算部17は、演算した第2バランス圧力P2に係るデジタル信号を第2バランス圧力信号として出力する。
【0040】
演算部17にはD/A変換部19を介して変換部20が接続されている。D/A変換部19は第1D/A変換部D1と第2D/A変換部D2を有する。第1D/A変換部D1及び第2D/A変換部D2は、演算部17から入力される各バランス圧力信号をデジタル信号からアナログ信号に変換する。
【0041】
変換部20は、圧力制御装置としての第1電空レギュレータ14と第2電空レギュレータ15を有する。第1電空レギュレータ14には、第1D/A変換部D1が接続される。第2電空レギュレータ15には、第2D/A変換部D2が接続される。第1D/A変換部D1は、アナログ信号に変換した第1バランス圧力信号を第1電空レギュレータ14に出力する。第2D/A変換部D2は、アナログ信号に変換した第2バランス圧力信号を第2電空レギュレータ15に出力する。
【0042】
第1電空レギュレータ14は、第1バランス圧力信号を第1バランス圧力P1に変換して第1アクチュエータ26のエアシリンダ27に出力する。第2電空レギュレータ15は、第2バランス圧力信号を第2バランス圧力P2に変換して第2アクチュエータ36のエアシリンダ37に出力する。
【0043】
ここで、図1に示すように、アーム11の先端となる第2アーム部材31の先端に支持される第3回転ジョイント43、及び荷重検出装置13を含む操作部12は、アーム11の先端側に装着され、かつ操作者の操作によって動作する被動部材である。そして、第3回転ジョイント43の重量と、荷重検出装置13を含む操作部12の重量との和を被動部材の重量としての装着物重量V2とする。また、第1アーム部材21の重量を第1重量V3、第2回転ジョイント42を含む第2アーム部材31の重量を第2重量V4と記載する。
【0044】
なお、負荷Wの検出荷重V1と、第2アーム部材31の先端に支持される装着物重量V2と、第1アーム部材21の第1重量V3に係数K3を乗じた値と、第2アーム部材31の第2重量V4と、を加算した値を第1加算値とする。第1バランス圧力P1は、第1加算値に対し、第1アーム部材21の構造に紐付けされた[荷重-圧力変換係数K1]を乗じた値によって決定される。
【0045】
したがって、第1電空レギュレータ14が生成する第1バランス圧力P1は、以下の式1によって表される。
P1=(V1+V2+V3×K3+V4)×K1…式1
式1における係数K3について説明する。第1アーム部材21は、第2回転ジョイント42を含む、第2回転ジョイント42から先端側の全ての重量を支持する。加えて、第1アーム部材21は自身の重量を支持するが、第1バランス圧力P1を算出する際には、アーム11の重量のうち、第1アーム部材21がアーム11において負荷として作用する比率を考慮して設定される。この比率を考慮するため、係数K3が設定されている。
【0046】
次に、[荷重-圧力変換係数K1]について説明する。なお、[荷重-圧力変換係数K1]は、単に係数K1と記載する。係数K1は以下の式2によって表される。
K1=1/(S1×K7’)…式2
なお、[S1]は、第1アクチュエータ26におけるエアシリンダ27のピストン27bの受圧面積S1である。
【0047】
また、[K7]は、第1アーム部材21の平行四辺形リンク機構におけるリンクの寸法と第1アクチュエータ26の作用角度との関係と、第1アクチュエータ26の図示しないシール部材のヒステリシス特性から決定される係数である。この係数K7は、第1アクチュエータ26の出力に対する垂直方向の出力の割合を示す。そして、係数K7は、アーム11における第1アーム部材21の高さhの関数f1(h)と、ヒステリシスfsとの関数となり、以下の式3によって表される。
【0048】
【数1】
そして、係数K7において、高さの関数f1(h)における中央値であって、ヒステリシスfsを除いた固定値を係数K7’とする。
【0049】
したがって、第1バランス圧力P1は、上記第1加算値(V1+V2+V3×K3+V4)を、第1アーム部材21の受圧面積S1、及び第1アーム部材21の構造に紐付けされた係数K7’で除算した値である。
【0050】
ここで、検出荷重V1と、装着物重量V2と、第2回転ジョイント42を含む第2アーム部材31の第2重量V4に係数K4を乗じた値とを加算した値を第2加算値とする。第2バランス圧力P2は、第2加算値に対し、第2アーム部材31用に予め設定された[荷重-圧力変換係数K2]を乗じた値によって決定される。
【0051】
したがって、第2電空レギュレータ15が生成する第2バランス圧力P2は、以下の式4によって表される。
P2=(V1+V2+V4×K4)×K2…式4
式4における係数K4について説明する。第2アーム部材31は、第3回転ジョイント43、及び荷重検出装置13を含む操作部12を支持する。加えて、第2アーム部材31は、自身の重量を支持するが、第2バランス圧力P2を算出する際は、アーム11の重量のうち、第2アーム部材31がアーム11において負荷として作用する比率を考慮して設定される。この比率を考慮するため、係数K4が設定されている。
【0052】
次に、[荷重-圧力変換係数K2]について説明する。なお、[荷重-圧力変換係数K2]は、単に係数K2と記載する。係数K2は以下の式5によって表される。
K2=1/(S2×K8’)…式5
なお、[S2]は、第2アクチュエータ36におけるエアシリンダ37のピストン37bの受圧面積S2である。
【0053】
また、[K8]は、第2アーム部材31の平行四辺形リンク機構におけるリンクの寸法と第2アクチュエータ36の作用角度との関係と、第2アクチュエータ36の図示しないシール部材のヒステリシス特性から決定される係数である。この係数K8は、第2アクチュエータ36の出力に対する垂直方向の出力の割合を示す。そして、係数K8は、アーム11における第2アーム部材31の高さhの関数f2(h)と、ヒステリシスfsとの関数となり、以下の式6によって表される。
【0054】
【数2】
そして、係数K8において、高さの関数f2(h)における中央値であって、ヒステリシスfsを除いた固定値を係数K8’とする。
【0055】
したがって、第2バランス圧力P2は、上記第2加算値(V1+V2+V4×K4)を、第2アーム部材31の受圧面積S2、及び第2アーム部材31の構造に紐付けされた係数K8’で除算した値である。
【0056】
荷重検出装置13による検出荷重V1は変化する。その一方、第1アーム部材21の第1重量V3、及び第2アーム部材31の第2重量V4は一定である。このため、式1と式4の第2項以降のアーム11の重量へのバランス圧力である[(V2+V3×K3+V4)×K1]と、[(V2+V4×K4)×K2]は負荷Wの荷重によって変化しない。
【0057】
また、負荷Wに対しアーム11をバランス状態とするために必要となる力は、第1アーム部材21と第2アーム部材31とで同じである。
図3のグラフに、負荷Wの荷重と、アーム11をバランス状態とするための第1電空レギュレータ14及び第2電空レギュレータ15の出力との関係を示す。図3の横軸に負荷Wの荷重を示し、図3の縦軸に出力を示す。図3のグラフに示すように、負荷Wの荷重が大きくなるほど、バランス状態とするための出力が大きくなることが分かる。
【0058】
図4のグラフは、第1アーム部材21又は第2アーム部材31を上下動させるときに必要な操作力と、第1アーム部材21又は第2アーム部材31の高さとの関係を示す。操作力と高さとの関係について第1アーム部材21と第2アーム部材31で同じであるため、第1アーム部材21に具体化して説明し、第2アーム部材31の説明は省略する。
【0059】
図4のグラフの横軸は、第1アーム部材21の操作力の方向と大きさを示す。図4のグラフの縦軸は、第1先端部材23の上端での第1アーム部材21の高さを示す。図4の実線に示すグラフは、第1アーム部材21がバランス状態にあるときを示し、図4の破線に示すグラフは、第1アーム部材21に対し、増圧後の第1調整圧力PH1が供給されたときを示す。また、図4の2点鎖線に示すグラフは、第1アーム部材21に対し、減圧後の第1調整圧力PH1が供給されたときを示す。
【0060】
また、図4の実線、破線、及び2点鎖線で示すグラフにおいて、上向きの矢印で示す部分は、第1アーム部材21を上昇させたときの第1先端部材23の上端での高さと、操作力の関係を示す。図4の実線、破線、及び2点鎖線で示すグラフにおいて、下向きの矢印で示す部分は、第1アーム部材21を下降させたときの第1先端部材23の上端での高さと操作力の関係を示す。さらに、図4の実線、破線、及び2点鎖線で示すグラフにおいて、横向きの矢印で示す部分は、第1先端部材23の上端での高さを変えずに第1アーム部材21の操作方向を変えたときの操作力の変位を示す。なお、第1アーム部材21を上昇させるときと下降させるときとで操作力が異なるのは、エアシリンダ27におけるピストン27bの摺動抵抗が上昇時と下降時で作用する方向が異なることに基づき、式3及び式6におけるマイナスプラスfsに相当する。
【0061】
平行四辺形リンク機構において、第1先端部材23が上昇するに従い、リンク部材28に対する作動ロッド27cの作用する角度が変化していく。このため、第1アクチュエータ26の発生力が一定であっても、第1アーム部材21に伝達される力が変化していくのは、式3におけるf1(h)に相当するためである。なお、第2アクチュエータ36の発生力が一定であっても、第2アーム部材31に伝達される力が変化していくのは、式6におけるf2(h)に相当するためである。したがって、第1アーム部材21を上下動させたとき、グラフが「く」の字になる。
【0062】
第1先端部材23の上端が取り得る高さ範囲の中間点付近において、第1アーム部材21を上昇させるための操作力が最も大きくなる。一方、第1先端部材23の上端が取り得る高さ範囲の中で、最低点、及び最高点において、第1アーム部材21を上昇させるための操作力が最も小さくなる。
【0063】
第1先端部材23の上端が取り得る高さ範囲の中間点付近において、第1アーム部材21を下降させるための操作力が最も小さくなる。一方、第1先端部材23の上端が取り得る高さ範囲の中で、最低点、及び最高点において、第1アーム部材21を下降させるための操作力が最も大きくなる。
【0064】
図4の実線のグラフに示すように、第1アーム部材21に第1バランス圧力P1が供給されたバランス状態において、第1アーム部材21を上昇させる場合、第1先端部材23の上端の位置がゼロから高くなるに従い、上昇させるために必要な操作力は徐々に大きくなっていく。第1アーム部材21を上昇させるために必要な操作力が大きくなることは、第1アーム部材21自身が下降する力が大きくなっていると言える。
【0065】
第1先端部材23が高さの中間点付近で、第1アーム部材21を上昇させるために必要な操作力が最大となる。その後、第1先端部材23の上端の位置が、高さの中間点付近から高くなるに従い、第1アーム部材21を上昇させるために必要な操作力は徐々に小さくなっていく。第1アーム部材21を上昇させるために必要な操作力が小さくなることは、第1アーム部材21自身が下降する力が小さくなっていると言える。
【0066】
バランス状態において、第1アーム部材21を下降させる場合、第1先端部材23の上端の位置が最高点から低くなるに従い、第1アーム部材21を下降させるために必要な操作力は徐々に小さくなっていく。第1アーム部材21を下降させるために必要な操作力が小さくなることは、第1アーム部材21自身が上昇する力が小さくなっていると言える。
【0067】
第1アーム部材21が高さの中間点付近で、第1アーム部材21を下降させるために必要な操作力が最小となる。その後、第1先端部材23の上端の位置が中間点付近から低くなるに従い、第1アーム部材21を下降させるために必要な操作力は徐々に大きくなっていく。第1アーム部材21を下降させるために必要な操作力が大きくなることは、第1アーム部材21自身が上昇する力が大きくなっていると言える。
【0068】
図4の実線のグラフに示されたバランス状態では、操作力ゼロの領域が、「く」の字特性のヒステリシスの幅の中に存在している。アーム11では、アーム11が上昇しようとする力、又は下降しようとする力よりもピストン27b,37bの摺動抵抗が勝っている。この場合、アーム11の動作を停止させると、アーム11の操作力がゼロになり、アーム11の動作は姿勢を保持して停止する。このとき、アーム11には、操作力の大小の変化と、方向の変化は生じているが、アーム11を上昇又は下降させる動作は生じず、バランス状態が保持される。
【0069】
操作力がゼロの領域「く」の字特性のヒステリシスの幅から外れ、アンバランスとなる場合を以降に説明する。
上記のように第1バランス圧力P1が供給されている第1アーム部材21において、第1バランス圧力P1を変更してアンバランスとするアンバランス量を設定し、設定したアンバランス量を第1バランス圧力P1に加算して増圧又は減圧することにより、第1アーム部材21の操作力を変化させることができる。
【0070】
第1バランス圧力P1にアンバランス量を加算して得られる圧力を第1調整圧力PH1とする。
図4の破線のグラフに、増圧後の第1調整圧力PH1が供給された第1アーム部材21の高さと操作力の関係を示す。増圧後の第1調整圧力PH1が第1アーム部材21に供給されると、第1アーム部材21は、第1アーム部材21自身が上昇するようになる。このため、増圧後の第1調整圧力PH1が供給された第1アーム部材21の第1先端部材23の高さを維持するには、第1アーム部材21を下降させるための操作力が必要になる。よって、増圧後の第1調整圧力PH1が第1アーム部材21に供給されると、第1バランス圧力P1が供給されている場合に比べると、第1アーム部材21を上昇させやすくなる一方で、第1アーム部材21を下降させ難くなる。つまり、増圧後の第1調整圧力PH1が第1アーム部材21に供給されると、第1バランス圧力P1が供給されている場合に比べると、第1アーム部材21を上昇させるための操作力が小さくなるとともに、第1アーム部材21を下降させるための操作力が大きくなる。
【0071】
図4の2点鎖線のグラフに、減圧後の第1調整圧力PH1が供給された第1アーム部材21における第1先端部材23の上端での高さと操作力の関係を示す。減圧後の第1調整圧力PH1が第1アーム部材21に供給されると、第1アーム部材21は、第1アーム部材21自身が下降するようになる。このため、減圧後の第1調整圧力PH1が供給された第1アーム部材21の第1先端部材23の高さを維持するには、第1アーム部材21を上昇させるための操作力が必要になる。よって、減圧後の第1調整圧力PH1が第1アーム部材21に供給されると、第1バランス圧力P1が供給されている場合に比べると、第1アーム部材21を下降させやすくなる一方で、第1アーム部材21を上昇させ難くなる。つまり、減圧後の第1調整圧力PH1が第1アーム部材21に供給されると、第1バランス圧力P1が供給されている場合に比べると、第1アーム部材21を下降させるための操作力が小さくなるとともに、第1アーム部材21を上昇させるための操作力が大きくなる。
【0072】
図示しないが、第2バランス圧力P2が供給されている第2アーム部材31において、第2バランス圧力P2を変更してアンバランスとするアンバランス量を設定し、設定されたアンバランス量を第2バランス圧力P2に加算して増圧又は減圧することより、第2アーム部材31の操作力を変化させることができる。
【0073】
第2バランス圧力P2にアンバランス量を加算して得られる圧力を第2調整圧力PH2とする。増圧後の第2調整圧力PH2が第2アーム部材31に供給されると、第2アーム部材31は、第2アーム部材31自身が上昇するようになる。このため、増圧後の第2調整圧力PH2が供給された第2アーム部材31における第2先端部材33の高さを維持するには、第2アーム部材31を下降させるための操作力が必要になる。よって、増圧後の第2調整圧力PH2が第2アーム部材31に供給されると、第2バランス圧力P2が供給されている場合に比べると、第2アーム部材31を上昇させやすくなる一方で、第2アーム部材31を下降させ難くなる。つまり、増圧後の第2調整圧力PH2が第2アーム部材31に供給されると、第2バランス圧力P2が供給されている場合に比べると、第2アーム部材31を上昇させるための操作力が小さくなるとともに、第2アーム部材31を下降させるための操作力が大きくなる。
【0074】
減圧後の第2調整圧力PH2が第2アーム部材31に供給されると、第2アーム部材31は、第2アーム部材31自身が下降するようになる。このため、減圧後の第2調整圧力PH2が供給された第2アーム部材31の第2先端部材33の高さを維持するには、第2アーム部材31を上昇させるための操作力が必要になる。よって、減圧後の第2調整圧力PH2が第2アーム部材31に供給されると、第2バランス圧力P2が供給されている場合に比べると、第2アーム部材31を下降させやすくなる一方で、第2アーム部材31を上昇させ難くなる。つまり、減圧後の第2調整圧力PH2が第2アーム部材31に供給されると、第2バランス圧力P2が供給されている場合に比べると、第2アーム部材31を下降させるための操作力が小さくなるとともに、第2アーム部材31を上昇させるための操作力が大きくなる。
【0075】
上記アンバランス設定部60について詳細に説明する。
図2において、アンバランス設定部60は、設定部65のセレクタ61及び増減スイッチ62と、設定部65からのスイッチ信号の入力を行う入力部66とを有する。また、アンバランス設定部60は、入力部66と接続される第1カウンタ63及び第2カウンタ64を有する。さらに、アンバランス設定部60は、第1カウンタ63及び第2カウンタ64の各々のカウンタ値である補正数に補正単位を乗算した積算値を算出する算出部と、算出された積算値をアンバランス量として、各々を対応するバランス圧力に加算する加算部と、を含む。アンバランス設定部60の算出部は、アンバランス量を設定するといえる。
【0076】
アンバランス設定部60の算出部の機能及び加算部の機能は、演算部17が担う。したがって、演算部17は、補正単位と補正数の積算値をアンバランス量として設定し、設定されたアンバランス量をバランス圧力に加算する。なお、設定部65は、演算部17とは別にアーム型助力装置10に設けてもよい。
【0077】
設定部65のセレクタ61は、第1カウンタ63及び第2カウンタ64から一つのカウンタを選択する機器である。また、第1カウンタ63及び第2カウンタ64は、演算部17が備える。第1カウンタ63は、第1アーム部材21に対応して設けられ、第2カウンタ64は、第2アーム部材31に対応して設けられる。そして、セレクタ61によって選択された第1カウンタ63又は第2カウンタ64と、増減スイッチ62とが接続され、関連付けられることにより、第1カウンタ63又は第2カウンタ64が増減スイッチ62の操作回数をカウント可能になる。
【0078】
増減スイッチ62の接続先として第1カウンタ63が選択された場合、アンバランス設定部60の演算部17は、第1アクチュエータ26に出力される第1バランス圧力P1に対するアンバランス量を設定する。さらに、アンバランス設定部60の演算部17は、設定したアンバランス量を第1バランス圧力P1に加算して第1調整圧力PH1を演算する。また、アンバランス設定部60は、増減スイッチ62の接続先として第2カウンタ64が選択された場合、第2アクチュエータ36に出力される第2バランス圧力P2に対するアンバランス量を設定する。さらに、アンバランス設定部60は、設定したアンバランス量を第2バランス圧力P2に加算して第2調整圧力PH2を演算する。
【0079】
増減スイッチ62は、補正数を加算する又は減算する程度を設定するための機器である。つまり、増減スイッチ62は、補正数を正負の数として入力するための機器である。増減スイッチ62は、補正数を加算するときに操作する加算用スイッチ62aと、補正数を減算するときに操作する減算用スイッチ62bとを有する。
【0080】
入力部66は、加算用スイッチ62aから出力されるスイッチ信号が入力される加算用I/O部66aと、減算用スイッチ62bから出力されるスイッチ信号が入力される減算用I/O部66bと、セレクタ61から出力される入力信号が入力されるセレクタ用I/O部66cと、を備える。
【0081】
セレクタ61が操作されない場合、加算用I/O部66a及び減算用I/O部66bの接続先は、第1カウンタ63である。セレクタ61が操作されると、セレクタ用I/O部66cからの入力信号により、加算用I/O部66a及び減算用I/O部66bの接続先は第2カウンタ64に切り換えられる。つまり、セレクタ61が操作されると、設定部65の増減スイッチ62の接続先が、第1カウンタ63から第2カウンタ64に切り換えられ、第2カウンタ64が選択される。
【0082】
セレクタ61が操作されない場合、第1カウンタ63には、加算用I/O部66a及び減算用I/O部66bの2つが接続されている。このため、第1カウンタ63は、加算用スイッチ62aの操作回数と、減算用スイッチ62bの操作回数をカウントし、積算する。セレクタ61が操作されると、第2カウンタ64には、加算用I/O部66a及び減算用I/O部66bの2つが接続される。このため、第2カウンタ64は、加算用スイッチ62aの操作回数と、減算用スイッチ62bの操作回数をカウントし、積算する。
【0083】
加算用スイッチ62aが1回操作される毎に、加算用のスイッチ信号が加算用I/O部66aを介して第1カウンタ63に1回入力されるとともに、第1カウンタ63のカウンタ値がプラス1される。また、減算用スイッチ62bが1回操作される毎に、減算用のスイッチ信号が減算用I/O部66bを介して第1カウンタ63に1回入力されるとともに、第1カウンタ63のカウンタ値がマイナス1される。そして、第1カウンタ63では、プラス1又はマイナス1を積算したカウンタ値が第1カウンタ値V5として記憶される。同様に、第2カウンタ64では、プラス1又はマイナス1を積算したカウンタ値が第2カウンタ値V6として記憶される。第1カウンタ値V5及び第2カウンタ値V6は、補正数として使用される。なお、積算結果がプラスの場合は、増圧補正となり、マイナスの場合は減圧補正となる。つまり、積算値は、補正の方向と度合いを示す。
【0084】
第1アーム部材21用のアンバランス量は、演算部17の乗算機能により、第1カウンタ値V5と規定の係数K5を掛け合わせて演算される。第2アーム部材31用のアンバランス量は、演算部17の演算機能により、第2カウンタ値V6と規定の係数K6を掛け合わせて演算される。
【0085】
なお、係数K5は、第1カウンタ値V5を1あたり変化させる操作力単位を求めるための補正単位であり、係数K6は、第2カウンタ値V6を1あたり変化させる操作力単位を求めるための補正単位である。そして、上記のように第1カウンタ値V5と係数K5との乗算値から、実際にアンバランスとする第1アーム部材21の操作力が決定され、第2カウンタ値V6と係数K6との乗算値から、実際にアンバランスとする第2アーム部材31の操作力が決定される。なお、各操作力単位は圧力値として補正圧力に変換される。
【0086】
なお、係数K5は以下の式7によって表され、係数K6は以下の式8によって表される。
K5=1/(S1×K7’)…式7
K6=1/(S2×K8’)…式8
そして、演算部17によって演算された第1アーム部材21用のアンバランス量は、演算部17の加算機能により、第1バランス圧力P1に加算されて、第1調整圧力PH1が算出される。第1調整圧力PH1はデジタル信号の第1補正信号として演算部17によって生成される。そして、演算部17によって生成された第1補正信号は、第1D/A変換部D1によってアナログ信号に変換され、第1電空レギュレータ14に出力される。
【0087】
演算部17によって演算された第2アーム部材31用のアンバランス量は、演算部17の加算機能により、第2バランス圧力P2に加算されて、第2調整圧力PH2が算出される。第2調整圧力PH2はデジタル信号の第2補正信号として演算部17によって生成される。そして、演算部17によって生成された第2補正信号は、第2D/A変換部D2によってアナログ信号に変換され、第2電空レギュレータ15に出力される。
【0088】
なお、アンバランス量は、第1アクチュエータ26と第2アクチュエータ36とで異なる量である。また、アンバランス量は、第1アクチュエータ26自身のヒステリシスの幅から外すための量であり、第2アクチュエータ36のヒステリシスから外すための量である。
【0089】
したがって、第1調整圧力PH1は、式9によって表され、第2調整圧力PH2は、式10によって表される。
PH1=(V1+V2+V3×K3+V4)×K1+V5×K5…式9
PH2=(V1+V2+V4×K4)×K2+V6×K6…式10
第1アーム部材21及び第2アーム部材31の調整圧力を変更させる場合、演算部17は、セレクタ61の切換位置においてカウンタ値を変更可能なカウンタを判別する。演算部17は、加算用スイッチ62a及び減算用スイッチ62bの操作回数に応じてカウンタ値を変更する。そして、演算部17は、カウンタ値に応じたアンバランス量を演算する。
【0090】
次に、アーム型助力装置10の作用を、負荷Wの搬送方法とともに説明する。
図1又は図5に示すように、アーム型助力装置10における第1アーム部材21の近傍に障害物70が配置され、障害物70を挟んだアーム11の反対側にある搬送先Tに負荷Wを搬送する場合について説明する。なお、搬送先Tは、第2アーム部材31の第2先端部材33よりも高い位置にある。また、障害物70の上端面70aは、図1に示すように、第1アーム部材21の高さゼロのときの第1フレーム部材24の上端面より若干高い位置にある。また、第1アーム部材21の第1アクチュエータ26には第1バランス圧力P1が供給され、第2アーム部材31の第2アクチュエータ36には第2バランス圧力P2が供給されている。このため、アーム11は、負荷Wを保持していない状態でバランス状態にある。
【0091】
搬送先Tに負荷Wを搬送するには、障害物70とアーム11の干渉を避ける必要がある。障害物70とアーム11の干渉を避けて負荷Wを搬送するには、第1アーム部材21のみを上昇させて障害物70の上側を通過させるとともに、負荷Wを搬送先Tの下方に搬送する第1作業と、第2アーム部材31のみを上昇させて負荷Wが搬送先Tに載置されるまで搬送する第2作業と、が行われる。
【0092】
まず、負荷Wを保持部に保持させる。すると、荷重検出装置13によって負荷Wの検出荷重V1が検出される。演算部17は負荷Wの検出荷重V1に応じた第1バランス圧力信号、及び第2バランス圧力信号を生成する。演算部17は、第1バランス圧力信号を第1電空レギュレータ14に出力し、第2バランス圧力信号を第2電空レギュレータ15に出力する。その結果、負荷Wに対しアーム11がバランス状態とされる。
【0093】
第1作業を行う場合、アーム11の負荷Wに対するバランス状態は維持しつつ、各バランス圧力にアンバランス量を加算する。これにより、各アーム部材21,31に対し、異なる微小な操作力を付加することで、第1アーム部材21及び第2アーム部材31の動作順序及び姿勢を制御する。第1作業の作業方法には3つの方法がある。
【0094】
1つ目の方法は、第1アーム部材21に増圧した第1調整圧力PH1を供給するとともに、第2アーム部材31に第2バランス圧力P2を供給する方法である。
2つ目の方法は、第1アーム部材21に第1バランス圧力P1を供給するとともに、第2アーム部材31に減圧した第2調整圧力PH2を供給する方法である。
【0095】
3つ目の方法は、第1アーム部材21に増圧した第1調整圧力PH1を供給するとともに、第2アーム部材31に減圧した第2調整圧力PH2を供給する方法である。
1つ目の方法によって第1アーム部材21のみを上昇させる場合、作業者は、設定部65のセレクタ61を操作しない。次に、作業者は、増減スイッチ62の加算用スイッチ62a及び減算用スイッチ62bを所望する回数操作する。このとき、第1カウンタ値V5がプラスの値となるように増減スイッチ62を操作する。演算部17は、第1カウンタ値V5に係数K5を乗じてアンバランス量を算出する。また、演算部17は、負荷Wの検出荷重V1に応じた第1バランス圧力P1にアンバランス量を加算して増圧した第1調整圧力PH1を演算する。
【0096】
演算部17は、第1調整圧力PH1に応じた第1補正信号を生成する。そして、演算部17から第1D/A変換部D1を介して第1電空レギュレータ14に第1補正信号が出力されると、第1アクチュエータ26には、第1電空レギュレータ14から増圧後の第1調整圧力PH1が供給される。この場合、第1アーム部材21の操作力は、図7(a)の実線のグラフに示すように調整され、第2アーム部材31の操作力は、図7(a)の破線のグラフに示すように調整される。つまり、第1アーム部材21と第2アーム部材31とは異なる操作力で操作可能になる。なお、第2アクチュエータ36には、第2電空レギュレータ15から第2バランス圧力P2が供給されたままである。
【0097】
その結果、第1アーム部材21と第2アーム部材31とでは、相対的に第1アーム部材21が上昇させやすくなり、第1アーム部材21のみを上昇させることが可能になる。また、第1アーム部材21と第2アーム部材31とでは、相対的に第2アーム部材31が下降させやすくなり、第2アーム部材31のみを下降させることが可能になる。
【0098】
2つ目の方法によって第1アーム部材21のみを上昇させる場合、作業者は、設定部65のセレクタ61を操作して第2アーム部材31を選択する。次に、作業者は、増減スイッチ62の加算用スイッチ62a及び減算用スイッチ62bを所望する回数操作する。このとき、第2カウンタ値V6がマイナスの値となるように増減スイッチ62を操作する。演算部17は、第2カウンタ値V6に係数K6を乗じてアンバランス量を算出する。また、演算部17は、負荷Wの検出荷重V1に応じた第2バランス圧力P2にアンバランス量を加算して減圧した第2調整圧力PH2を演算する。
【0099】
演算部17は、第2調整圧力PH2に応じた第2補正信号を生成する。そして、演算部17から第2D/A変換部D2を介して第2電空レギュレータ15に第2補正信号が出力されると、第2アクチュエータ36には、第2電空レギュレータ15から減圧後の第2調整圧力PH2が供給される。この場合、第1アーム部材21の操作力は、図7(b)の実線のグラフに示すように調整され、第2アーム部材31の操作力は、図7(b)の破線のグラフに示すように調整される。つまり、第1アーム部材21と第2アーム部材31とは異なる操作力で操作可能になる。なお、第1アクチュエータ26には、第1電空レギュレータ14から第1バランス圧力P1が供給されたままである。
【0100】
その結果、第1アーム部材21と第2アーム部材31とでは、相対的に第1アーム部材21が上昇させやすくなり、第1アーム部材21のみを上昇させることが可能になる。また、第1アーム部材21と第2アーム部材31とでは、相対的に第2アーム部材31が下降させやすくなり、第2アーム部材31のみを下降させることが可能になる。
【0101】
3つ目の方法によって第1アーム部材21のみを上昇させる場合、作業者は、設定部65のセレクタ61を操作しない。次に、作業者は、まず、増減スイッチ62の加算用スイッチ62a及び減算用スイッチ62bを所望する回数操作する。このとき、第1カウンタ値V5がプラスの値となるように増減スイッチ62を操作する。演算部17は、第1カウンタ値V5に係数K5を乗じてアンバランス量を算出する。また、演算部17は、負荷Wの検出荷重V1に応じた第1バランス圧力P1にアンバランス量を加算して増圧した第1調整圧力PH1を演算する。
【0102】
演算部17は、第1調整圧力PH1に応じた第1補正信号を生成する。そして、演算部17から第1D/A変換部D1を介して第1電空レギュレータ14に第1補正信号が出力されると、第1アクチュエータ26には、第1電空レギュレータ14から増圧後の第1調整圧力PH1が供給される。
【0103】
続いて、作業者は、設定部65のセレクタ61を操作して第2アーム部材31を選択する。次に、作業者は、増減スイッチ62の加算用スイッチ62a及び減算用スイッチ62bを所望する回数操作する。このとき、第2カウンタ値V6がマイナスの値となるように増減スイッチ62を操作する。演算部17は、第2カウンタ値V6に係数K6を乗じてアンバランス量を算出する。また、演算部17は、負荷Wの検出荷重V1に応じた第2バランス圧力P2にアンバランス量を加算して減圧した第2調整圧力PH2を演算する。
【0104】
演算部17は、第2調整圧力PH2応じた第2補正信号を生成する。そして、演算部17から第2D/A変換部D2を介して第2電空レギュレータ15に第2補正信号が出力されると、第2アクチュエータ36には、第2電空レギュレータ15から減圧後の第2調整圧力PH2が供給される。
【0105】
この場合、第1アーム部材21の操作力は、図7(c)の実線のグラフに示すように調整され、第2アーム部材31の操作力は、図7(c)の破線のグラフに示すように調整される。つまり、第1アーム部材21と第2アーム部材31とは異なる操作力で操作可能になる。なお、3つ目の方法では、第1調整圧力PH1を調整するために行う加算用スイッチ62a及び減算用スイッチ62bの操作回数、及び第2調整圧力PH2を調整するために行う加算用スイッチ62a及び減算用スイッチ62bの操作回数は、1つ目の方法及び2つ目の方法より少なくする。
【0106】
その結果、第1アーム部材21と第2アーム部材31とでは、相対的に第1アーム部材21が上昇させやすくなり、第1アーム部材21のみを上昇させることが可能になる。また、第1アーム部材21と第2アーム部材31とでは、相対的に第2アーム部材31が下降させやすくなり、第2アーム部材31のみを下降させることが可能になる。
【0107】
図6(a)に示すように、第1作業時、操作部12を上昇させると、第1アーム部材21全体が上昇し、第1先端部材23が上昇する。その一方で、第2アーム部材31は上昇せず、水平状態のままである。そして、第1アーム部材21のみを上昇させて負荷Wを上昇させた状態でアーム11を旋回させると、障害物70の上端面70aより上側を第1アーム部材21が通過し、障害物70を避けることができる。
【0108】
操作部12を搬送先Tの下方まで位置させた後、第2作業を行う。図6(b)に示すように、作業者は、操作部12を上昇させると第2アーム部材31が上昇し、負荷Wを上昇させることができる。その後、搬送先Tに負荷Wを載置する。
【0109】
アーム11を搬送先Tから元の位置に戻すには、作業者は、操作部12を下降させる。すると、第2アーム部材31が先に下降する。その一方で、第1アーム部材21は下降せず、上昇したままである。そして、操作部12を操作してアーム11を旋回させると、障害物70の上端面70aより上側を第1アーム部材21が通過し、障害物70を避けることができる。
【0110】
その後、作業者は、操作部12を下降させると第1アーム部材21が下降し、図6(a)に示す状態に戻すことができる。
次に、図8に示すように、アーム型助力装置10における第1アーム部材21の上側に障害物70が配置され、障害物70から離れた搬送先Tに負荷Wを搬送する場合について説明する。
【0111】
なお、図9(a)に示すように、搬送先Tは、第2アーム部材31の第2先端部材33よりも高い位置にある。また、障害物70の下端面70bは、上昇する前の第1フレーム部材24の上端面より若干高い位置にある。また、アーム11の第1アーム部材21の第1アクチュエータ26には第1バランス圧力P1が供給され、第2アーム部材31の第2アクチュエータ36には第2バランス圧力P2が供給されている。このため、アーム11は、負荷Wを保持していない状態でバランス状態にある。
【0112】
搬送先Tに負荷Wを搬送するには、第2アーム部材31のみを上昇させて負荷Wを搬送先Tまで搬送する第1作業と、第1アーム部材21のみを上昇させて負荷Wが搬送先Tに載置されるまで搬送する第2作業と、が行われる。
【0113】
まず、負荷Wを保持部に保持させる。演算部17は負荷Wの検出荷重V1に応じた第1バランス圧力信号、及び第2バランス圧力信号を生成する。演算部17は、第1バランス圧力信号を第1電空レギュレータ14に出力し、第2バランス圧力信号を第2電空レギュレータ15に出力する。その結果、負荷Wに対しアーム11がバランス状態とされる。
【0114】
第1作業を行う場合、アーム11の検出荷重V1に対するバランス状態は維持しつつ、各バランス圧力にアンバランス量を加算する。これにより、各アーム部材21,31に対し、異なる微小な操作力を付加することで、第1アーム部材21及び第2アーム部材31の動作順序を制御する。第1作業の作業方法には3つの方法がある。
【0115】
1つ目の方法は、第1アーム部材21に第1バランス圧力P1を供給するとともに、第2アーム部材31に増圧した第2調整圧力PH2を供給する方法である。
2つ目の方法は、第1アーム部材21に減圧した第1調整圧力PH1を供給するとともに、第2アーム部材31に第2バランス圧力P2を供給する方法である。
【0116】
3つ目の方法は、第1アーム部材21に減圧した第1調整圧力PH1を供給するとともに、第2アーム部材31に増圧した第2調整圧力PH2を供給する方法である。
1つ目の方法によって第2アーム部材31のみを上昇させる場合、作業者は、設定部65のセレクタ61を操作して第2アーム部材31を選択する。次に、作業者は、増減スイッチ62の加算用スイッチ62a及び減算用スイッチ62bを所望する回数操作する。このとき、第2カウンタ値V6がプラスの値となるように増減スイッチ62を操作する。演算部17は、第2カウンタ値V6に係数K6を乗じてアンバランス量を算出する。また、演算部17は、負荷Wの検出荷重V1に応じた第2バランス圧力P2にアンバランス量を加算して増圧した第2調整圧力PH2を演算する。
【0117】
演算部17は、第2調整圧力PH2に応じた第2補正信号を生成する。そして、演算部17から第2D/A変換部D2を介して第2電空レギュレータ15に第2補正信号が出力されると、第2アクチュエータ36には、第2電空レギュレータ15から増圧後の第2調整圧力PH2が供給される。
【0118】
この場合、第2アーム部材31の操作力は、図10(a)の破線のグラフに示すように調整され、第1アーム部材21の操作力は、図10(a)の実線のグラフに示すように調整される。つまり、第1アーム部材21と第2アーム部材31とは異なる操作力で操作可能になる。なお、第1アクチュエータ26には、第1電空レギュレータ14から第1バランス圧力P1が供給されたままである。
【0119】
その結果、図9(a)に示すように、第1アーム部材21と第2アーム部材31とでは、相対的に第2アーム部材31が上昇させやすくなり、第2アーム部材31のみを上昇させることが可能になる。また、第1アーム部材21と第2アーム部材31とでは、相対的に第1アーム部材21が下降させやすくなり、第1アーム部材21のみを下降させることが可能になる。
【0120】
2つ目の方法によって第2アーム部材31のみを上昇させる場合、作業者は、設定部65のセレクタ61は操作しない。次に、作業者は、増減スイッチ62の加算用スイッチ62a及び減算用スイッチ62bを所望する回数操作する。このとき、第1カウンタ値V5がマイナスの値となるように増減スイッチ62を操作する。演算部17は、第1カウンタ値V5に係数K5を乗じてアンバランス量を算出する。また、演算部17は、負荷Wの検出荷重V1に応じた第1バランス圧力P1にアンバランス量を加算して減圧した第1調整圧力PH1を演算する。演算部17は、第1調整圧力PH1に応じた第1補正信号を生成する。そして、演算部17から第1D/A変換部D1を介して第1電空レギュレータ14に第1補正信号が出力されると、第1アクチュエータ26には、第1電空レギュレータ14から減圧後の第1調整圧力PH1が供給される。
【0121】
この場合、第2アーム部材31の操作力は、図10(b)の破線のグラフに示すように調整され、第1アーム部材21の操作力は、図10(b)の実線のグラフに示すように調整される。つまり、第1アーム部材21と第2アーム部材31とは異なる操作力で操作可能になる。なお、第2アクチュエータ36には、第2電空レギュレータ15から第2バランス圧力P2が供給されたままである。
【0122】
その結果、図9(a)に示すように、第1アーム部材21と第2アーム部材31とでは、相対的に第2アーム部材31が上昇させやすくなり、第2アーム部材31のみを上昇させることが可能になる。また、第1アーム部材21と第2アーム部材31とでは、相対的に第1アーム部材21が下降させやすくなり、第1アーム部材21のみを下降させることが可能になる。
【0123】
3つ目の方法によって第2アーム部材31のみを上昇させる場合、作業者は、設定部65のセレクタ61は操作しない。次に、作業者は、増減スイッチ62の加算用スイッチ62a及び減算用スイッチ62bを所望する回数操作する。このとき、第1カウンタ値V5がマイナスの値となるように増減スイッチ62を操作する。演算部17は、第1カウンタ値V5に係数K5を乗じてアンバランス量を算出する。また、演算部17は、負荷Wの検出荷重V1に応じた第1バランス圧力P1にアンバランス量を加算して減圧した第1調整圧力PH1を演算する。演算部17は、第1調整圧力PH1に応じた第1補正信号を生成する。そして、演算部17から第1D/A変換部D1を介して第1電空レギュレータ14に第1補正信号が出力されると、第1アクチュエータ26には、第1電空レギュレータ14から減圧後の第1調整圧力PH1が供給される。
【0124】
続いて、作業者は、設定部65のセレクタ61を操作して第2アーム部材31を選択する。次に、作業者は、増減スイッチ62の加算用スイッチ62a及び減算用スイッチ62bを所望する回数操作する。このとき、第2カウンタ値V6がプラスの値となるように増減スイッチ62を操作する。演算部17は、第2カウンタ値V6に係数K6を乗じてアンバランス量を算出する。また、演算部17は、負荷Wの検出荷重V1に応じた第2バランス圧力P2にアンバランス量を加算して増圧した第2調整圧力PH2を演算する。演算部17は、第2調整圧力PH2に応じた第2補正信号を生成する。そして、演算部17から第2D/A変換部D2を介して第2電空レギュレータ15に第2補正信号が出力されると、第2アクチュエータ36には、第2電空レギュレータ15から増圧後の第2調整圧力PH2が供給される。
【0125】
この場合、第2アーム部材31の操作力は、図10(c)の破線のグラフに示すように調整され、第1アーム部材21の操作力は、図10(c)の実線のグラフに示すように調整される。つまり、第1アーム部材21と第2アーム部材31とは異なる操作力で操作可能になる。
【0126】
なお、3つ目の方法では、第1調整圧力PH1を調整するために行う加算用スイッチ62a及び減算用スイッチ62bの操作回数、及び第2調整圧力PH2を調整するために行う加算用スイッチ62a及び減算用スイッチ62bの操作回数は、1つ目の方法及び2つ目の方法より少なくする。
【0127】
その結果、第1アーム部材21と第2アーム部材31とでは、相対的に第2アーム部材31が上昇させやすくなり、第2アーム部材31のみを上昇させることが可能になる。また、第1アーム部材21と第2アーム部材31とでは、相対的に第1アーム部材21が下降させやすくなり、第1アーム部材21のみを下降させることが可能になる。
【0128】
第1作業時、操作部12を上昇させると、図9(a)に示すように、第2アーム部材31全体が上昇し、第2先端部材33が上昇する。その一方で、第1アーム部材21は上昇せず、水平状態のままである。そして、第2アーム部材31のみを上昇させて負荷Wを上昇させた状態でアーム11を旋回させると、障害物70の下端面70bより下側を第1アーム部材21が通過し、障害物70を避けることができる。
【0129】
操作部12を搬送先Tの下方まで位置させた後、第2作業を行う。図9(b)に示すように、作業者は、操作部12を上昇させると第1アーム部材21が上昇し、負荷Wを上昇させることができる。その後、搬送先Tに負荷Wを載置する。
【0130】
アーム11を搬送先Tから元の位置に戻すには、作業者は、操作部12を下降させる。すると、第1アーム部材21が下降する。その一方で、第2アーム部材31は下降せず、上昇したままである。そして、操作部12を操作してアーム11を旋回させると、障害物70の下端面70bより下側を第1アーム部材21が通過し、障害物70を避けることができる。
【0131】
次に、作業者は、操作部12を下降させると第2アーム部材31が下降し、第2アーム部材31を上昇する前の状態に戻すことができる。
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0132】
(1-1)アンバランス設定部60により、第1アーム部材21に供給される第1バランス圧力P1を第1調整圧力PH1にして第1アーム部材21をアンバランスにできる。また、アンバランス設定部60により、第2アーム部材31に供給される第2バランス圧力P2を第2調整圧力PH2にして第2アーム部材31をアンバランスにできる。このため、第1アーム部材21及び第2アーム部材31の一方を他方に対し、相対的に操作させやすくできる。つまり、第1アーム部材21と第2アーム部材31とは異なる操作力で操作可能になる。よって、負荷Wを搬送するとき、第1アーム部材21及び第2アーム部材31が同時に移動することをなくすことができる。その結果、アーム型助力装置10の近傍に配置された障害物70とアーム11との干渉を避けながら負荷Wを搬送する際、作業者が第1アーム部材21及び第2アーム部材31の各々の姿勢を調整することなく、アーム11の姿勢を容易に定めることができる。また、作業者は、操作部12を片方の手で掴んで移動操作させながら、もう片方の手で第1アーム部材21や第2アーム部材31の姿勢を整える必要がなくなり、障害物70を避けながらの負荷Wの搬送が容易となる。
【0133】
(1-2)第1アーム部材21に増圧後の第1調整圧力PH1を供給する一方で、第2アーム部材31に第2バランス圧力P2を供給することにより、第1アーム部材21を第2アーム部材31に対し相対的に上昇させやすくなる。また、第1アーム部材21に第1バランス圧力P1を供給する一方で、第2アーム部材31に減圧後の第2調整圧力PH2を供給することにより、第1アーム部材21を第2アーム部材31に対し相対的に上昇させやすくなる。さらに、第1アーム部材21に増圧後の第1調整圧力PH1を供給する一方で、第2アーム部材31に減圧後の第2調整圧力PH2を供給することにより、第1アーム部材21を第2アーム部材31に対し相対的に上昇させやすくなる。したがって、第1アーム部材21のみを上昇させる方法として3つの方法があり、作業者の要望に応じて負荷Wの搬送の仕方に選択肢を持たせることができる。
【0134】
(1-3)第1アーム部材21に減圧後の第1調整圧力PH1を供給する一方で、第2アーム部材31に第2バランス圧力P2を供給することにより、第2アーム部材31を第1アーム部材21に対し相対的に上昇させやすくなる。また、第1アーム部材21に第1バランス圧力P1を供給する一方で、第2アーム部材31に増圧後の第2調整圧力PH2を供給することにより、第2アーム部材31を第1アーム部材21に対し相対的に上昇させやすくなる。さらに、第1アーム部材21に減圧後の第1調整圧力PH1を供給する一方で、第2アーム部材31に増圧後の第2調整圧力PH2を供給することにより、第2アーム部材31を第1アーム部材21に対し相対的に上昇させやすくなる。したがって、第2アーム部材31のみを上昇させる方法として3つの方法があり、作業者の要望に応じて負荷Wの搬送の仕方に選択肢を持たせることができる。
【0135】
(1-4)第1アーム部材21の横に障害物70が配置されている場合は、第1アーム部材21のみを上昇させることで、負荷Wの搬送時に障害物70とアーム11の干渉をなくすことができる。また、第1アーム部材21の上に障害物70が配置されている場合は、第2アーム部材31のみを上昇させることで、負荷Wの搬送時に障害物70とアーム11の干渉をなくすことができる。したがって、障害物70の位置に応じて、先に昇降させるアーム部材を選択でき、障害物70を避けながらの負荷Wの搬送が容易となる。
【0136】
(1-5)第1アーム部材21は第1アクチュエータ26を備え、第2アーム部材31は第2アクチュエータ36を備える。そして、アンバランス設定部60は、第1アクチュエータ26に出力される第1バランス圧力P1を第1調整圧力PH1にでき、第2アクチュエータ36に出力される第2バランス圧力P2を第2調整圧力PH2にできる。このため、第1アーム部材21及び第2アーム部材31を独立して動かすことができる。また、アンバランスとするアーム部材を選択することで、障害物70を避けやすくなる。
【0137】
(1-6)アンバランス設定部60は、補正数を入力するための増減スイッチ62と、増減スイッチ62の操作回数をカウントする第1カウンタ63及び第2カウンタ64とを有するとともに、加算部の機能を担う演算部17とを含む。このため、アンバランス量の設定を機械的に行うことができるとともに、設定されたアンバランス量をバランス圧力に加算する制御が行いやすい。
【0138】
(1-7)操作力単位、つまり補正単位は、各アクチュエータ26,36の受圧面積S1,S2と、各係数K7’,K8’とで1を除算した値として設定できる。そして、アンバランス量は、補正単位と補正数の積算値であることから、補正単位を定義することで、アンバランス量の設定が容易となり、演算部17の制御負荷を軽減できる。
【0139】
(1-8)アンバランス設定部60は、セレクタ61と、増減スイッチ62と、第1カウンタ63及び第2カウンタ64と、乗算機能及び加算機能を有する演算部17と、を含む。セレクタ61を用いることで、アンバランス量を設定するアーム部材に対応するカウンタを選定しやすい。また、増減スイッチ62を用い、カウンタ値を調整することで、第1調整圧力PH1及び第2調整圧力PH2を所望する圧力に調整しやすく、アーム部材の操作力を所望する値に調整しやすい。
【0140】
(1-9)第1アクチュエータ26及び第2アクチュエータ36のいずれか一方に調整圧力を供給し、他方にバランス圧力を供給することにより、第1アーム部材21及び第2アーム部材31の動作順位を決定することができる。又は、第1アクチュエータ26及び第2アクチュエータ36の各々に調整圧力を供給することにより、第1アーム部材21及び第2アーム部材31の動作順位を決定することができる。このため、第1アーム部材21及び第2アーム部材31の姿勢を定めやすく、障害物70を避けた負荷Wの搬送が行い易くなる。
【0141】
(1-10)第1アーム部材21及び第2アーム部材31は各々平行四辺形リンク機構を有する。そして、アンバランス設定部60によってアンバランス量を設定することにより、第1アーム部材21及び第2アーム部材31の高さ制御が行いやすくなる。
【0142】
(1-11)アーム11の基端及び先端に近づくほど、平行四辺形リンク機構を用いた構成では鉛直方向への移動が行いにくくなる。しかし、第1アーム部材21及び第2アーム部材31の動作順序を決定することで、鉛直方向へ負荷Wを移動させるときのアーム11の姿勢を調整しやすく、負荷Wの搬送が行いやすい。
【0143】
(1-12)第1アーム部材21に設定されるアンバランス量と、第2アーム部材31に設定されるアンバランス量は異なる。このため、第1アーム部材21の操作力と第2アーム部材31の操作力を異ならせることができ、作業者は、操作部12を片方の手で掴んで移動操作させながら、もう片方の手で第1アーム部材21や第2アーム部材31の姿勢を整える必要がなくなる。その結果、アーム型助力装置10を用いることで障害物70を避けながらの負荷Wの搬送が容易となる。
【0144】
(1-13)各バランス圧力P1,P2は、検出荷重V1及び装着物重量V2に加え、各アーム部材21,31の重量、及び係数K1,K2を用いて設定できる。係数K1,K2は、各アーム部材21,31の構造に紐付けされた係数であるため、バランス圧力P1,P2を精度良く調整できる。
【0145】
(第2の実施形態)
次に、アーム型助力装置80を具体化した第2の実施形態を図11図18にしたがって説明する。なお、第2の実施形態は、第1の実施形態の第2アーム部材31を変更したのみの構成であるため、同様の部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0146】
図11に示すように、アーム型助力装置80のアーム11は、第1アーム部材21と、第1アーム部材21の第1先端部材23に第1端部が支持された連結アーム81と、連結アーム81の第2端部に支持された第2アーム部材91と、を有する。
【0147】
アーム型助力装置80は、基台としての支柱Hを備える。支柱Hの上端面には第1回転ジョイント41が支持されている。そして、第1回転ジョイント41に第1アーム部材21の第1基端部材22が旋回可能に支持されている。
【0148】
連結アーム81の第1端部は、第2回転ジョイント42を介して第2鉛直軸L2を旋回中心として旋回可能に支持されている。連結アーム81は、水平方向に延びる水平アーム部82を備える。連結アーム81の第1端部は、水平アーム部82の第1端部によって構成されている。水平アーム部82の第2端部側は、水平アーム部82から下方へ延びる垂直部83と、垂直部83から水平方向に延設される支持板部84とを有する。
【0149】
第2アーム部材91は、水平アーム部82の垂直部83及び支持板部84に支持されている。第2アーム部材91は、筒部92を有する。筒部92は、支持板部84に支持されるとともに、垂直部83の外側面に固定されている。
【0150】
第2アーム部材91は、筒部92に内蔵された流体圧アクチュエータとしての第2アクチュエータ93と、ガイドロッド94とを備える。第2アクチュエータ93は流体圧アクチュエータの一例であるエアシリンダである。第2アクチュエータ93は、シリンダチューブ93aの軸線が鉛直方向に延びる状態で配置されている。シリンダチューブ93a内にはピストン93bが収容されている。ピストン93bの外周面には図示しないシール部材が装着されている。シリンダチューブ93a内において、ピストン93bより下側にはピストン室93dが区画されている。ピストン93bの外周面に設けた図示しないシール部材により、ピストン室93dからのエア漏れが抑止されている。ピストン室93dには第2電空レギュレータ15が接続されている。
【0151】
第2アクチュエータ93において、ピストン93bにはピストンロッド93cの第1端部が連結されている。ピストンロッド93cは、シリンダチューブ93aの下端部及び支持板部84を貫通して第2アーム部材91の下端部から突出している。また、ガイドロッド94は支持板部84を貫通して第2アーム部材91の下端部から突出している。
【0152】
シリンダチューブ93aの下端部及びガイドロッド94の下端部には回転ジョイント95が連結され、この回転ジョイント95の下端面には操作部12が固定されている。操作部12の下端部には負荷Wの保持部96が固定されている。
【0153】
第2の実施形態において、アーム11の先端となる第2アーム部材91の先端に支持されるガイドロッド94、回転ジョイント95、保持部96、及び荷重検出装置13を含む操作部12は、アーム11の先端側に装着され、かつ操作者の操作によって動作する被動部材である。そして、ガイドロッド94の重量と、回転ジョイント95の重量と、保持部96の重量と、荷重検出装置13を含む操作部12の重量との和を被動部材の重量としての装着物重量V2とする。また、第1アーム部材21の重量を第1重量V3、第2回転ジョイント42を含む第2アーム部材91の重量を第2重量V4とする。
【0154】
また、第2アーム部材91は、ガイドロッド94、回転ジョイント95、保持部96及び荷重検出装置13を含む操作部12を支持する。加えて、第2アーム部材91は、自身の重量を支持するが、第2バランス圧力P2を算出する際は、アーム11の重量のうち、第2アーム部材91がアーム11において負荷として作用する比率を考慮して設定される。この比率を考慮するため、係数K4が設定される。なお、第1アーム部材21の係数K3は第1の実施形態と同じ定義で設定される。
【0155】
また、係数K2を設定する際の式5における受圧面積S2は、第2アーム部材91における第2アクチュエータ93のピストン93bの受圧面積S2である。
また、[K8]は、第2アクチュエータ93の図示しないシール部材のヒステリシス特性から決定される係数である。この係数K8は、第2アクチュエータ93の出力に対する垂直方向の出力の割合を示す。そして、係数K8は、アーム11における第2アーム部材91の高さhの関数f2(h)と、ヒステリシスfsとの関数となる。
【0156】
図12のグラフの実線は、第1の実施形態と同様に、負荷Wに対するアーム11のバランス状態において、第1アーム部材21を上下動させるときに必要な操作力と、第1アーム部材21の高さとの関係を示す。
【0157】
図12のグラフの破線は、負荷Wに対するアーム11のバランス状態において、操作部12を上下動させるときに必要な操作力と、第2アーム部材91の高さである操作部12の高さとの関係を示すグラフである。ここでは、第1の実施形態と異なる第2アーム部材91の操作力と高さとの関係について説明する。
【0158】
図12のグラフの横軸は、操作部12の操作力の方向と大きさを示す。図12のグラフの縦軸は、操作部12の高さを示す。また、図12の破線に示すグラフにおける上向きの矢印で示す部分は、操作部12を上昇させたときの高さと、操作力の関係を示し、下向きの矢印で示す部分は、操作部12を下降させたときの高さと操作力の関係を示す。操作部12を上昇させるときと下降させるときとで操作力が異なるのは、第2アクチュエータ93のピストン93bにおける摺動抵抗が上昇時と下降時で作用する方向が異なることに基づく。なお、第2の実施形態において、第2アーム部材91のピストン93bは鉛直方向に摺動するため、係数K8は以下の式11によって表される。
【0159】
【数3】
図12のグラフの破線に示すように、操作部12を上昇させるための操作力、及び操作部12を下降させるための操作力は、いずれの高さにおいても一定である。
【0160】
また、第2バランス圧力P2が供給されている第2アーム部材91において、第2バランス圧力P2に対してアンバランス量を加算して増圧又は減圧することより、第2アーム部材91の操作力を変化させることができる。
【0161】
第1の実施形態と同様に、第2バランス圧力P2にアンバランス量を加算して得られる圧力を第2調整圧力PH2とする。
図18(a)の破線のグラフに示すように、増圧後の第2調整圧力PH2が第2アーム部材91の第2アクチュエータ93に供給されると、第2アーム部材91においては、操作部12自身が上昇するようになる。このため、増圧後の第2調整圧力PH2が供給された第2アーム部材91の操作部12の高さを維持するには、操作部12を下降させるための操作力が必要になる。よって、増圧後の第2調整圧力PH2が第2アーム部材91に供給されると、第2バランス圧力P2が供給されている場合に比べると、操作部12を上昇させやすくなる一方で、操作部12を下降させ難くなる。つまり、増圧後の第2調整圧力PH2が第2アーム部材91に供給されると、第2バランス圧力P2が供給されている場合に比べると、第2アーム部材91の操作部12を上昇させるための操作力が小さくなる。
【0162】
図15(b)の破線のグラフに示すように、減圧後の第2調整圧力PH2が第2アーム部材91の第2アクチュエータ93に供給されると、第2アーム部材91の操作部12は、操作部12自身が下降するようになる。このため、減圧後の第2調整圧力PH2が供給された第2アーム部材91の操作部12の高さを維持するには、操作部12を上昇させるための操作力が必要になる。よって、減圧後の第2調整圧力PH2が第2アーム部材91の第2アクチュエータ93に供給されると、第2バランス圧力P2が供給されている場合に比べると、第2アーム部材91の操作部12を下降させやすくなる一方で、操作部12を上昇させ難くなる。
【0163】
次に、第2の実施形態のアーム型助力装置10の作用を、負荷Wの搬送方法とともに説明する。
図13図14(a)又は図14(b)に示すように、アーム型助力装置80における第1アーム部材21の近傍に障害物70が配置され、障害物70を挟んだアーム11の反対側にある搬送先Tに負荷Wを搬送する場合について説明する。なお、搬送先Tは、上昇する前の第2アーム部材91の操作部12よりも高い位置にある。また、障害物70の上端面70aは、上昇する前の第1フレーム部材24の上端面より若干高い位置にある。また、第1アーム部材21の第1アクチュエータ26には第1バランス圧力P1が供給され、第2アーム部材91の第2アクチュエータ93には第2バランス圧力P2が供給されている。このため、アーム11は、負荷Wを保持していない状態でバランス状態にある。
【0164】
搬送先Tに負荷Wを搬送するには、障害物70とアーム11の干渉を避ける必要がある。障害物70とアーム11の干渉を避けて負荷Wを搬送するには、第1アーム部材21のみを上昇させて障害物70の上側を通過させるとともに、負荷Wを搬送先Tの下方に搬送する第1作業と、第2アーム部材91の操作部12とともに保持部96を上昇させて負荷Wが搬送先Tに載置されるまで搬送する第2作業と、が行われる。
【0165】
まず、負荷Wを保持部96に保持させる。すると、荷重検出装置13によって負荷Wの検出荷重V1が検出される。演算部17は検出荷重V1に応じた第1バランス圧力信号及び第2バランス圧力信号を生成する。演算部17は、第1バランス圧力信号を第1電空レギュレータ14に出力し、第2バランス圧力信号を第2電空レギュレータ15に出力する。その結果、負荷Wに対しアーム11がバランス状態とされる。
【0166】
第1作業を行う場合、アーム11の負荷Wに対するバランス状態は維持しつつ、各バランス圧力にアンバランス量を加算する。これにより、各アーム部材21,91に対し、異なる微小な操作力を付加することで、第1アーム部材21及び第2アーム部材91の動作順序を制御する。なお、第1作業の作業方法には3つの方法がある。
【0167】
1つ目の方法は、第1アーム部材21に増圧した第1調整圧力PH1を供給するとともに、第2アーム部材91に第2バランス圧力P2を供給する方法である。
2つ目の方法は、第1アーム部材21に第1バランス圧力P1を供給するとともに、第2アーム部材91に減圧した第2調整圧力PH2を供給する方法である。
【0168】
3つ目の方法は、第1アーム部材21に増圧した第1調整圧力PH1を供給するとともに、第2アーム部材91に減圧した第2調整圧力PH2を供給する方法である。
なお、3つの方法において、アンバランス設定部60の操作方法は第1の実施形態と同じであるため、その説明を省略する。
【0169】
1つ目の方法によって第1アーム部材21のみを上昇させる場合、演算部17は、増減スイッチ62の操作回数に応じた第1調整圧力PH1を演算するとともに、第1調整圧力PH1に応じた第1補正信号を生成する。そして、演算部17から第1電空レギュレータ14に第1補正信号が出力されると、第1アクチュエータ26には、第1電空レギュレータ14から増圧後の第1調整圧力PH1が供給される。この場合、第1アーム部材21の操作力は、図15(a)の実線のグラフに示すように調整され、第2アーム部材91の操作部12の操作力は、図15(a)の破線のグラフに示すように調整される。つまり、第1アーム部材21と第2アーム部材91とは異なる操作力で操作可能になる。なお、第2アクチュエータ93には、第2電空レギュレータ15から第2バランス圧力P2が供給されたままである。
【0170】
その結果、図14(a)に示すように、第1アーム部材21と第2アーム部材91とでは、相対的に第1アーム部材21が上昇させやすくなり、第1アーム部材21のみを上昇させることが可能になる。また、第1アーム部材21と第2アーム部材91とでは、相対的に第2アーム部材91の操作部12が下降させやすくなり、第2アーム部材91の操作部12のみを下降させることが可能になる。
【0171】
2つ目の方法によって第1アーム部材21のみを上昇させる場合、演算部17は、増減スイッチ62の操作回数に応じた第2調整圧力PH2を演算するとともに、第2調整圧力PH2に応じた第2補正信号を生成する。そして、演算部17から第2電空レギュレータ15に第2補正信号が出力されると、第2アクチュエータ93には、第2電空レギュレータ15から減圧後の第2調整圧力PH2が供給される。この場合、第1アーム部材21の操作力は、図15(b)の実線のグラフに示すように調整され、第2アーム部材91の操作部12の操作力は、図15(b)の破線のグラフに示すように調整される。つまり、第1アーム部材21と第2アーム部材91とは異なる操作力で操作可能になる。なお、第1アクチュエータ26には、第1電空レギュレータ14から第1バランス圧力P1が供給されたままである。
【0172】
その結果、図14(a)に示すように、第1アーム部材21と第2アーム部材91とでは、相対的に第1アーム部材21が上昇させやすくなり、第1アーム部材21のみを上昇させることが可能になる。また、第1アーム部材21と第2アーム部材91とでは、相対的に第2アーム部材91の操作部12が下降させやすくなり、第2アーム部材91の操作部12のみを下降させることが可能になる。
【0173】
3つ目の方法によって第1アーム部材21のみを上昇させる場合、演算部17は、増減スイッチ62の操作回数に応じた第1調整圧力PH1及び第2調整圧力PH2を演算するとともに、第1調整圧力PH1に応じた第1補正信号、及び第2調整圧力PH2に応じた第2補正信号を生成する。第1アクチュエータ26には、第1電空レギュレータ14から増圧後の第1調整圧力PH1が供給される。また、第2アクチュエータ93には、第2電空レギュレータ15から減圧後の第2調整圧力PH2が供給される。この場合、第1アーム部材21の操作力は、図15(c)の実線のグラフに示すように調整され、第2アーム部材91の操作部12の操作力は、図15(c)の破線のグラフに示すように調整される。つまり、第1アーム部材21と第2アーム部材91とは異なる操作力で操作可能になる。
【0174】
その結果、図14(a)に示すように、第1アーム部材21と第2アーム部材91とでは、相対的に第1アーム部材21が上昇させやすくなり、第1アーム部材21のみを上昇させることが可能になる。また、第1アーム部材21と第2アーム部材91とでは、相対的に第2アーム部材91の操作部12が下降させやすくなり、第2アーム部材91の操作部12のみを下降させることが可能になる。
【0175】
第1作業時、操作部12を上昇させると、図14(a)に示すように、第1アーム部材21全体が上昇し、第1先端部材23が上昇する。その一方で、第2アーム部材91の操作部12は上昇しない。そして、第1アーム部材21のみを上昇させて負荷Wを上昇させた状態でアーム11を旋回させると、障害物70の上端面70aより上側を第1アーム部材21が通過し、障害物70を避けることができる。
【0176】
操作部12を搬送先Tまで位置させた後、第2作業を行う。作業者は、操作部12を上昇させると、図14(b)に示すように、第2アーム部材91の操作部12とともに保持部96が上昇し、負荷Wを上昇させることができる。その後、搬送先Tに負荷Wを載置する。
【0177】
アーム11を搬送先Tから元の位置に戻すには、作業者は、操作部12を下降させる。すると、第2アーム部材91の操作部12が保持部96とともに下降する。その一方で、第1アーム部材21は下降せず、上昇したままである。そして、操作部12を操作してアーム11を旋回させると、障害物70の上端面70aより上側を第1アーム部材21が通過し、障害物70を避けることができる。その後、作業者は、操作部12を下降させると第1アーム部材21が下降し、第1アーム部材21を元の状態に戻すことができる。
【0178】
次に、図16図17(a)又は図17(b)に示すように、アーム型助力装置80における第1アーム部材21の上側に障害物70が配置され、障害物70から離れた位置にある搬送先Tに負荷Wを搬送する場合について説明する。なお、搬送先Tは、第1アーム部材21及び第2アーム部材91のいずれも上昇していない状態での第2アーム部材91の操作部12よりも高い位置にある。また、障害物70の下端面70bは、第1アーム部材21及び第2アーム部材91のいずれも上昇していない状態にある第1フレーム部材24の上端面より若干高い位置にある。また、第1アーム部材21の第1アクチュエータ26には第1バランス圧力P1が供給され、第2アーム部材91の第2アクチュエータ93には第2バランス圧力P2が供給されている。このため、アーム11は、負荷Wを保持していない状態でバランス状態にある。
【0179】
搬送先Tに負荷Wを搬送するには、第2アーム部材91の操作部12のみを上昇させて負荷Wを搬送先Tまで搬送する第1作業と、第1アーム部材21のみを上昇させて負荷Wが搬送先Tに載置されるまで搬送する第2作業と、が行われる。
【0180】
まず、負荷Wを保持部96に保持させる。すると、荷重検出装置13によって検出荷重V1が検出される。演算部17は検出荷重V1に応じた第1バランス圧力信号及び第2バランス圧力信号を生成する。演算部17は、第1バランス圧力信号を第1電空レギュレータ14に出力し、第2バランス圧力信号を第2電空レギュレータ15に出力する。その結果、負荷Wに対しアーム11がバランス状態とされる。
【0181】
第1作業を行う場合、アーム11の負荷Wに対するバランス状態は維持しつつ、各バランス圧力にアンバランス量を加算することにより、各アーム部材21,91に対し、異なる微小な操作力を付加することで、第1アーム部材21及び第2アーム部材91の動作順序を制御する。第1作業の作業方法には3つの方法がある。
【0182】
1つ目の方法は、第1アーム部材21に第1バランス圧力P1を供給するとともに、第2アーム部材91に増圧した第2調整圧力PH2を供給する方法である。
2つ目の方法は、第1アーム部材21に減圧した第1調整圧力PH1を供給するとともに、第2アーム部材91に第2バランス圧力P2を供給する方法である。
【0183】
3つ目の方法は、第1アーム部材21に減圧した第1調整圧力PH1を供給するとともに、第2アーム部材91に増圧した第2調整圧力PH2を供給する方法である。
なお、3つの方法において、アンバランス設定部60の操作方法は、第1の実施形態と同じであるため、その説明を省略する。
【0184】
1つ目の方法によって第2アーム部材91の操作部12のみを上昇させる場合、演算部17は、増減スイッチ62の操作回数に応じた第2調整圧力PH2を演算するとともに、第2調整圧力PH2に応じた第2補正信号を生成する。そして、演算部17から第2D/A変換部D2を介して第2電空レギュレータ15に第2補正信号が出力されると、第2アクチュエータ93には、第2電空レギュレータ15から増圧後の第2調整圧力PH2が供給される。この場合、第1アーム部材21の操作力は、図18(a)の実線のグラフに示すように調整され、第2アーム部材91の操作部12の操作力は、図18(a)の破線のグラフに示すように調整される。つまり、第1アーム部材21と第2アーム部材91とは異なる操作力で操作可能になる。なお、第1アクチュエータ26には、第1電空レギュレータ14から第1バランス圧力P1が供給されたままである。
【0185】
その結果、図17(a)に示すように、第1アーム部材21と第2アーム部材91とでは、相対的に第2アーム部材91の操作部12が上昇させやすくなり、第2アーム部材91の操作部12のみを上昇させることが可能になる。また、第1アーム部材21と第2アーム部材91とでは、相対的に第1アーム部材21が下降させやすくなり、第1アーム部材21のみを下降させることが可能になる。
【0186】
2つ目の方法によって第2アーム部材91の操作部12のみを上昇させる場合、演算部17は、増減スイッチ62の操作回数に応じた第1調整圧力PH1を演算するとともに、第1調整圧力PH1に応じた第1補正信号を生成する。そして、演算部17から第1D/A変換部D1を介して第1電空レギュレータ14に第1補正信号が出力されると、第1アクチュエータ26には、第1電空レギュレータ14から減圧後の第1調整圧力PH1が供給される。この場合、第1アーム部材21の操作力は、図18(b)の実線のグラフに示すように調整され、第2アーム部材91の操作部12の操作力は、図18(b)の破線のグラフに示すように調整される。つまり、第1アーム部材21と第2アーム部材91とは異なる操作力で操作可能になる。なお、第2アクチュエータ93には、第2電空レギュレータ15から第2バランス圧力P2が供給されたままである。
【0187】
その結果、図17(a)に示すように、第1アーム部材21と第2アーム部材91とでは、相対的に第2アーム部材91の操作部12が上昇させやすくなり、第2アーム部材91の操作部12のみを上昇させることが可能になる。また、第1アーム部材21と第2アーム部材91とでは、相対的に第1アーム部材21が下降させやすくなり、第1アーム部材21のみを下降させることが可能になる。
【0188】
3つ目の方法によって第2アーム部材91の操作部12のみを上昇させる場合、演算部17は、増減スイッチ62の操作回数に応じた第1調整圧力PH1及び第2調整圧力PH2を演算するとともに、第1調整圧力PH1に応じた第1補正信号、及び第2調整圧力PH2に応じた第2補正信号を生成する。演算部17から第1D/A変換部D1を介して第1電空レギュレータ14に第1補正信号が出力されると、第1アクチュエータ26には、第1電空レギュレータ14から減圧後の第1調整圧力PH1が供給される。また、演算部17から第2D/A変換部D2を介して第2電空レギュレータ15に第2補正信号が出力されると、第2アクチュエータ93には、第2電空レギュレータ15から増圧後の第2調整圧力PH2が供給される。この場合、第1アーム部材21の操作力は、図18(c)の実線のグラフに示すように調整され、第2アーム部材91の操作部12の操作力は、図18(c)の破線のグラフに示すように調整される。つまり、第1アーム部材21と第2アーム部材91とは異なる操作力で操作可能になる。
【0189】
その結果、図17(a)に示すように、第1アーム部材21と第2アーム部材91とでは、相対的に第2アーム部材91の操作部12が上昇させやすくなり、第2アーム部材91の操作部12のみを上昇させることが可能になる。また、第1アーム部材21と第2アーム部材91とでは、相対的に第1アーム部材21が下降させやすくなり、第1アーム部材21のみを下降させることが可能になる。
【0190】
さて、第1作業時、操作部12を上昇させると、図17(a)に示すように、第2アーム部材91の操作部12とともに保持部96が上昇する。その一方で、第1アーム部材21は上昇せず、水平状態のままである。そして、第2アーム部材91の操作部12とともに保持部96を上昇させて負荷Wを上昇させた状態でアーム11を旋回させると、障害物70の下端面70bより下側を第1アーム部材21が通過し、障害物70を避けることができる。
【0191】
操作部12を搬送先Tの下方まで位置させた後、第2作業を行う。作業者は、操作部12を上昇させると、図17(b)に示すように、第1アーム部材21が上昇し、負荷Wを上昇させることができる。その後、搬送先Tに負荷Wを載置する。
【0192】
アーム11を搬送先Tから元の位置に戻すには、作業者は、操作部12を下降させる。すると、第1アーム部材21が下降する。その一方で、第2アーム部材91の操作部12は下降せず、上昇したままである。そして、操作部12を操作してアーム11を旋回させると、障害物70の下端面70bより下側を第1アーム部材21が通過し、障害物70を避けることができる。
【0193】
次に、作業者は、操作部12を下降させると第2アーム部材91の保持部96が下降し、第2アーム部材91を元の状態に戻すことができる。
従って、第2の実施形態によれば、第1の実施形態に記載の(1-1)~(1-9)、(1-12)及び(1-13)の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
【0194】
(2-1)アーム11は、平行四辺形リンク機構を備える第1アーム部材21と、操作部12を鉛直方向に昇降させる第2アクチュエータ93を備える第2アーム部材91と、から構成される。このため、アーム11の可動範囲は、第1アーム部材21による円弧状の軌跡と、第2アーム部材91による直線状の軌跡とを組み合わせた範囲となる。例えば、アーム11がバランス状態にあると、アーム11の可動範囲の中では、第1アーム部材21による円弧状の動作と、第2アーム部材91による直線状の動作とが混同する場合がある。この場合には、第1アーム部材21と第2アーム部材91の動作順序が不安定となりやすく、作業者は、操作部12を片方の手で掴んで移動操作させながら、もう片方の手で第1アーム部材21や第2アーム部材91の姿勢を整える必要がある。しかし、第1アーム部材21と第2アーム部材91とで動作順序を設定することで、第1アーム部材21による円弧状の動作と、第2アーム部材91による直線状の動作とが混同することがなくなり、障害物70を避けながらの負荷Wの搬送が容易となる。
【0195】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
○ アンバランス設定部60において、増減スイッチ62の代わりに、補正数を増減させるためのツマミに変更してもよい。要は、バランス圧力に対しアンバランス量を加算することができれば、増減スイッチ62の構成は適宜変更してもよい。
【0196】
○ 第1アクチュエータ26に供給される圧力と、第2アクチュエータ36,93に供給される圧力とを異ならせることができれば、アンバランス設定部60によるアンバランス量の設定方法は適宜変更してもよい。
【0197】
○ 第1の実施形態において、アーム11は、第1アーム部材21と、第2アーム部材31と、第3アーム部材とから構成されていてもよい。
○ 設定部65の増減スイッチ62について、第1カウンタ63に対応して、加算用スイッチ62aと減算用スイッチ62bが設けられ、第2カウンタ64に対応して、加算用スイッチ62aと減算用スイッチ62bが設けられていれば、セレクタ61はなくてもよい。この場合、入力部66のセレクタ用I/O部66cもなくてよい。
【0198】
○ 各実施形態において、アンバランス量は、複数のアクチュエータ同士で同じ値であってもよい。
○ 第1アクチュエータ26及び第2アクチュエータ36,93は、流体圧アクチュエータとして、油圧シリンダに変更してもよいし、流体圧アクチュエータ以外のアクチュエータであってもよい。
【符号の説明】
【0199】
W…負荷、10,80…アーム型助力装置、11…アーム、12…被動部材としての操作部、13…荷重検出装置、14…圧力制御装置としての第1電空レギュレータ、15…圧力制御装置としての第2電空レギュレータ、17…算出部及び加算部として機能する演算部、21…第1アーム部材、26…第1アクチュエータ、31,91…第2アーム部材、36,93…第2アクチュエータ、43…被動部材としての第3回転ジョイント、60…アンバランス設定部、61…セレクタ、62…増減スイッチ、63…第1カウンタ、64…第2カウンタ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18